中国のレアアース輸出許可「簡素化」の真相――何が変わり、何が変わらないのかを整理する


2025年12月4日、中国商務部は「レアアース関連品目の輸出許可を簡素化している」と発表しました。報道では「輸出許可の簡素化」として大きく取り上げられていますが、その実態は**規制緩和というより「運用の柔軟化」**に近いものです。(Reuters)

具体的には、新たに**「一般ライセンス(general licence)」という仕組みを使い、特定の海外顧客向けに1年間有効な輸出許可**を出すことで、同じ相手への繰り返しの出荷については、毎回の個別申請を不要または大幅に簡略化する、という内容です。(Reuters Japan)

一方で、2025年4月以降に導入された厳格な輸出管理そのものが撤廃されるわけではありません。規制の「骨格」は残したまま、信頼できる顧客・用途について手続きだけを軽くするのが今回のポイントです。(Reuters Japan)

この記事では、

  • 2025年に何が起きてきたのか(規制強化の流れ)
  • 今回の「簡素化」で具体的に何が変わるのか
  • 世界のサプライチェーン、日本企業へのインプリケーション

を、できるだけ噛み砕いて整理していきます。


1. レアアースと中国の支配力をざっくり整理

レアアース(希土類)は17元素の総称で、EVモーターや風力発電の発電機、サーボモーター、HDD、軍事レーダーなどに使われる高性能永久磁石の材料として不可欠です。(IEA)

国際エネルギー機関(IEA)の分析によると、2024年時点で中国は、

  • レアアース鉱石の生産:世界の約60%
  • 分離・精製(中間加工):約91%
  • 焼結型レアアース永久磁石の生産:約94%

を占めており、磁石の段階ではほぼ「一極集中」と言ってよい状況です。(IEA)

EUの場合、年間約2万トンの永久磁石を消費していますが、そのうち1.7〜1.8万トンを中国から輸入しているとされています。(The Guardian)

このため、中国がレアアースの輸出管理を強化すると、EVから防衛産業まで世界中のサプライチェーンが一気に揺れる、という構図になっています。


2. 2025年の規制強化の流れ(簡潔タイムライン)

2-1. 4月4日:重希土7元素などへの輸出管理導入

2025年4月4日、中国政府は**7種類の重希土(テルビウム、ジスプロシウムなど)と、その酸化物・合金・関連磁石を輸出管理の対象とし、輸出に両用品目輸出許可(dual-use license)**を義務づけました。(IEA)

  • レアアース磁石の輸出は4〜5月にかけて急減
  • 多くの自動車メーカーが磁石を確保できず、工場稼働率の引き下げや一時停止を余儀なくされたと報告されています。(IEA)

2-2. 10月9日:海外製品も巻き込む「域外適用」的な拡張

10月9日、中国商務部は公告2025年第61号・第62号を公表し、レアアース原材料・設備・関連技術について、さらに踏み込んだ輸出管理を導入しました。(JETRO)

主なポイントは以下の通りです。

  • 中国国外の企業・個人が、中国原産の一部レアアース品目や磁石を、第三国へ再輸出する場合でも、中国商務部発行の両用品目輸出許可が必要
  • 中国のレアアース採掘・製錬・磁石製造などの技術を用いて、海外で製造された製品についても、一定条件下で中国側の輸出許可が必要になる**「域外適用」的なルール**を導入(China Briefing)
  • 軍事目的や、輸出管理リスト・ウォッチリスト掲載の輸入業者・エンドユーザー向けの輸出は、原則として許可しないと明記(JETRO)

つまり、中国から直接出る貨物だけでなく、**「中国起源のレアアース」や「中国技術を使った製品」**が世界を回る際にも、中国の許可が必要になり得る設計です。

IEAもこの10月の措置について、レアアース関連製品・部品・アセンブリを広く対象とすることで、エネルギー・自動車・防衛・半導体など多くの戦略産業のサプライチェーンに重大なリスクをもたらすと分析しています。(IEA)

2-3. 規制強化の結果:価格高騰とサプライチェーン混乱

こうした規制の強化により、

  • 4〜5月の輸出量の急減
  • 欧州など輸入側でのレアアース価格高騰(中国国内価格の最大6倍に達したケースも)(IEA)
  • EVや産業用モーター向け磁石の供給不安

といった問題が顕在化しました。

EUは、中国による重要原材料の「武器化」への懸念から、**「ReSourceEU」**という約30億ユーロ規模の戦略を打ち出し、調達先の多角化・リサイクル・国内鉱山開発などを進める方針を発表しています。(The Guardian)


3. 11月〜12月:輸出許可「簡素化」の中身

3-1. 11月:新たなライセンス制度を業界に事前説明

11月7日付のロイター日本語記事によれば、中国商務部は一部のレアアース輸出企業に対し、新たなライセンス制度の設計に着手したことを伝え、業界向けの説明会で必要書類の概要などを示しました。(Reuters Japan)

  • 新ライセンスの有効期間は1年
  • 輸出拡大につながる可能性がある一方、
    4月に導入された広範な輸出規制の撤廃ではないことが強調されています。(Reuters Japan)
  • 防衛など機密分野に関わるユーザー向けの許可取得は、むしろより難しくなる可能性が高いとの見方も示されています。(Reuters Japan)

この時点では、まだ「制度設計中」であり、企業側は必要書類の準備や顧客からの情報収集を進めている段階でした。(Reuters Japan)

3-2. 12月初旬:一般ライセンスの発給が始動

12月に入ると、いよいよ具体的な動きが報じられます。

  • 12月2日:
    中国が新しい「簡素化された輸出ライセンス」の第1弾を発給したと報道。対象は、
    • JL Mag Rare Earth
    • 寧波韻昇(Ningbo Yunsheng)
    • 北京中科三環高技術(Beijing Zhong Ke San Huan High-Tech)
      といった大手レアアース磁石メーカー3社。(MINING.COM)
  • 12月4日:
    商務部の定例会見で、「中国は一般ライセンスなどの円滑化措置を積極的に活用し、二重用途品目の合法的な貿易を促進している」と説明。
    さらに、**「レアアース関連品目の輸出許可申請が民生用である限り、政府は速やかに承認してきた」**と報道官がコメントしています。(Reuters)

ここで言う**「一般ライセンス(general licence)」**とは、

  • 特定の輸出者→特定の顧客(または顧客グループ)
  • 有効期間:1年間
  • その期間中の複数出荷をカバー(出荷ごとの個別許可申請が不要または大幅に簡略)

といった形の包括許可です。(MINING.COM)

一方で、

  • 既存の両用途ライセンス制度(dual-use licensing)はそのまま維持
  • 一般ライセンスの対象は、現時点では主に大手レアアース企業に限られる

ことも明確にされています。(Reuters)

3-3. 「簡素化」の効果:輸出量は目に見えて回復

12月8日に発表された中国税関データでは、2025年11月のレアアース輸出が前月比26.5%増の5,493.9トンと急増し、2カ月連続の増加となりました。1〜11月累計では前年同期比11.6%増です。(Reuters Japan)

  • 4月の規制導入で数カ月続いた混乱のあと、
    10月末の米中首脳会談でレアアース輸出加速で合意 → 一般ライセンス発給 → 輸出増加
    という流れが数字にも表れています。(Reuters Japan)

EU商工会議所は、この新しいライセンス制度が**「バイヤーに安定性と予見可能性をもたらす」**として一定の歓迎を示しつつも、依然として申請手続きの透明性や遅延リスクへの懸念を表明しています。(MINING.COM)


4. 何が「簡素化」され、何が変わっていないのか

4-1. 簡素化されたポイント

① 出荷ごとの申請 → 顧客単位の包括許可

従来:

  • 輸出ごとに個別の許可申請が必要
  • 申請のたびにエンドユーザー情報や用途説明の書類を用意する必要があり、
    その都度審査・判断が行われていた

今回の一般ライセンス:

  • 一定の条件を満たす輸出者と顧客の組み合わせに対して、1年間有効な包括許可を付与
  • 期間中の個々の出荷に対する書類作成・審査の負担が大きく軽減
  • 特に大量・定期的な取引を行う自動車・家電・産業機械向けの磁石にとって、リードタイム短縮が期待されます。(MINING.COM)

② 民生用途についての実務上の「グリーン・チャンネル」化

商務部報道官は、
民生用のレアアース関連輸出申請は、すべて適時に承認してきた」と述べています。(Reuters)

一般ライセンスは、この方針を制度面から裏付けるもので、

  • 民生用途でコンプライアンス要件を満たす顧客・輸出者に対しては、
    安定的に輸出を続けられるルートを用意する
    というメッセージと言えます。

4-2. 変わっていない(むしろ強化されている)ポイント

① 規制対象品目と「安全保障」重視の姿勢はそのまま

  • 4月4日に導入された重希土7元素+関連化合物・磁石の輸出管理(IEA)
  • 10月9日の公告第61号・62号による、原材料・設備・技術・海外製品を含む広範な管理(JETRO)

これらの法的枠組みは一切撤廃されていません。

② 軍事用途・ハイリスク顧客向けはむしろ厳格

公告や関連解説では、

  • 軍事用途が含まれる輸出
  • 中国の輸出管理リスト・ウォッチリスト掲載の輸入業者・エンドユーザー向け輸出

については、**原則として許可しない(=事実上の禁輸に近い扱い)**としています。(JETRO)

一般ライセンスの主な対象は民生用途であり、防衛・高度軍事技術に関わるユーザーについては、依然として厳しい個別審査+不許可リスクが残ります。(Reuters Japan)

③ 域外適用(海外製品への影響)も継続

10月の措置で導入された、

  • 「中国起源のレアアースを含む海外製品」
  • 「中国のレアアース関連技術を用いて海外で製造された製品」

に対する中国側ライセンス義務も、2025年12月以降に順次適用範囲が拡大される方向です。(China Briefing)

一般ライセンスで出荷がスムーズになったとしても、**「どこで、どの技術で作った、どれだけ中国起源が含まれるか」**という情報開示を求められる構図は、今後も変わりません。


5. なぜ今、輸出許可を簡素化したのか

いくつか要因が重なっています。

5-1. 米中首脳会談での政治的ディール

報道によれば、今回の一般ライセンス導入は、10月末に韓国で行われたトランプ米大統領と習近平国家主席の首脳会談での合意事項の一つでした。(Reuters)

  • 米国側:レアアース・磁石の供給不安で自動車・防衛産業への影響が懸念
  • 中国側:米国の追加関税などへの対抗措置として輸出規制カードを切りつつも、「信頼できる供給国」としてのイメージも維持したい

その折衷として、
**「規制の枠組みは維持しつつ、民生用途や信頼できる顧客向けには輸出を加速する」**という一般ライセンスが位置づけられたと見るのが自然です。(MINING.COM)

5-2. EUなどからの「脱中国」圧力

EUは、レアアースや永久磁石の調達の約9割を中国に依存している現状から、ReSourceEUという30億ユーロ規模の戦略を打ち出し、場合によっては**「企業に対して調達先の多角化を法的に義務づける」**可能性にも言及しています。(The Guardian)

中国としても、あまりに強硬な輸出統制を続ければ、

  • EU・米国・日本・豪州などが本気で代替サプライチェーン構築に動く
  • 中長期的には、自国のレアアース産業の需要基盤を失う

リスクがあります。

一般ライセンスによる「緩和のポーズ」は、
**「安全保障上のレバーは握り続けつつ、過度なデカップリングを避ける」**ためのバランス調整と見ることができます。(IEA)


6. 世界のサプライチェーンへの影響

6-1. 短期的には「一息つける」方向

  • 大手磁石メーカー3社が一般ライセンスを取得したことで、
    彼らからの供給を受ける自動車・家電・産業機械メーカーは、リードタイムや出荷の滞留リスクが緩和される見込みです。(MINING.COM)
  • 11月の輸出量回復からも、実際にボトルネックがかなり解消されつつあることがうかがえます。(Reuters Japan)

6-2. 中長期的には「リスクはむしろ見える化されただけ」

一方で、

  • 規制対象品目は拡大済み
  • 軍事・高度技術用途への輸出禁止方針は明確
  • 域外適用により、海外の加工拠点や再輸出にも中国の許可が絡む

という構図は変わっていません。(China Briefing)

今回の簡素化をきっかけに、

  • 「誰が一般ライセンスの対象になっているのか」
  • 「どの用途・エンドユーザーならスムーズに許可が出るのか」
  • 「どのラインが依然として高リスクなのか」

が、企業側から見るとよりはっきり可視化されたとも言えます。

IEAも、中国のレアアース支配力と輸出規制のエスカレーションが、エネルギー・自動車・防衛・AIデータセンターなど幅広い産業に継続的なリスクをもたらすと指摘しており、今回の一般ライセンスはそのリスクを一時的に和らげる措置に過ぎないと見るべきでしょう。(IEA)


7. 日本企業・投資家への practical な示唆

最後に、日本の製造業・商社・投資家の立場から、実務的に意識しておきたいポイントをまとめます。

7-1. サプライチェーンの「どこで中国にひっかかるか」を棚卸し

  • 原材料(酸化物・金属)
  • 中間製品(磁石、ターゲット材など)
  • 完成品(モーター、アクチュエーター、電子部品)

のどの段階で、

  • 中国原産レアアースがどれだけ含まれるか
  • 中国の技術・設備を使っているか

なるべく定量的に把握しておくことが重要です。

10月の措置により、海外で製造された製品でも、中国起源のレアアースが一定割合以上含まれていれば、中国の輸出ライセンスが必要になるケースがあります。(China Briefing)

7-2. 取引先の「ライセンスステータス」を確認

  • 主要な磁石・材料メーカーが一般ライセンスを取得しているか
  • そのライセンスの対象顧客に自社・自グループが含まれているか
  • 軍事・デュアルユース色が濃い用途の場合、どの程度の審査・遅延リスクがあるか

を、取引先・現地法人を通じて確認しておくと、調達リスクの見積もり精度が上がります。

一般ライセンスの有無は、今後**「調達先を選ぶ際の条件」**の一つになっていく可能性があります。(MINING.COM)

7-3. 中・長期的な「脱一極依存」戦略

  • 代替サプライヤー(非中国産レアアース、代替磁石)の開拓
  • レアアースリサイクル・磁石回収スキームへの投資
  • レアアース使用量を減らす設計(モーター構造や制御技術の工夫)

などは、中期的な競争力とレジリエンスの両面で重要性が高まっています。

EUや米国も同様の方向に政策資金をつけ始めているため、「レアアース依存を下げる技術・ビジネス」は、今後も政策的な追い風を受けやすい領域と考えられます。(The Guardian)


8. まとめ

  • 2025年12月の「レアアース輸出許可の簡素化」は、
    一般ライセンスという1年有効の包括許可を導入し、民生用途を中心に輸出プロセスをスムーズにする措置。(Reuters)
  • しかし、4月以降の厳格な輸出管理や、10月の域外適用的なルールはそのまま維持されており、安全保障を軸にしたコントロールの枠組みはむしろ強化されたまま。(JETRO)
  • 短期的には供給不安が和らぎ、輸出量も回復しているが、
    中長期的には「中国レアアースへの過度な依存」という構造リスクは依然として大きい。(Reuters Japan)
  • 日本企業としては、
    1. どこで中国に依存しているかの棚卸し
    2. 取引先のライセンス状況の把握
    3. 中長期の脱一極依存・リサイクル・代替技術戦略
    を組み合わせて、**「中国の一挙手一投足に振り回されにくい体制」**を構築していくことが、これまで以上に重要になってきます。

この記事の内容をもとに、もし「自社のこの部品はどこが危なそうか」「この業界への影響をもう少し具体的に知りたい」といったテーマがあれば、業種や立場を教えてもらえれば、さらに絞った整理もできます。

対中ビジネスアップデート:レアアース輸出規制の現状と見通し(2025年11月20日版)

【エグゼクティブ・サマリー】

赤澤経産相は11月18日、中国のレアアース輸出管理措置について「現時点で特段の変更はない」と述べました。これは、高市首相の台湾関連発言により日中関係が緊張する中にあっても、11月上旬に合意された「対中規制の1年間暫定停止」という現状(ステータス・クオ)が維持されていることを確認するものです。企業にとっては「危機が去った」わけではなく、「1年間の対策猶予期間が確保された」と解釈し、サプライチェーン強靱化を急ぐ必要があります。


1. 経産相発言の事実と核心

  • 日時・発言者:2025年11月18日/赤澤亮正 経済産業相
  • 発言内容:「中国によるレアアース等の輸出管理措置について、現時点で『特段の変更はない』」
  • ビジネス上の含意
    • 直近(11月11日頃)、米中協議の結果として中国側が発表した**「レアアース輸出規制の1年間暫定停止」**の枠組みが、その後の政治的摩擦(後述)によって覆されていないことを確認しました。
    • 中国側が即座に「報復」へ転じていないことへの安堵を示すメッセージです。

2. 背景:2025年秋の「規制ショック」と「一時休戦」

これまでの経緯を時系列で整理します。

  1. 規制の厳格化(10月9日)
    • 中国商務省が「国家安全」を理由に、レアアースの採掘・精錬技術および磁石製造技術の輸出管理を強化。サプライチェーン全体への許可制導入を発表しました。
  2. 国際的な反発と米中合意(10月~11月上旬)
    • 米国:次期トランプ政権のベセント財務長官(指名候補)らが「重大な誤り」と猛反発。対中100%関税のカードを切り、激しい応酬となりました。
    • 一時停止の発表(11月11日):米中協議の進展を受け、中国側は上記規制の**「1年間の暫定停止」**を発表。市場には一時的な安堵が広がりました。

3. 政治リスクの再燃:「変更なし」発言が出た真の理由

なぜ今、改めて「変更なし」の確認が必要だったのか。それは、「一時停止」の合意が吹き飛びかねない新たな火種が発生したためです。

  • 高市首相の「台湾発言」
    • 高市早苗首相による台湾有事・安全保障に関する発言に対し、中国側が猛反発。「日本へのレアアース輸出を全面禁止すべき」との強硬論が中国国内で再燃しています。
  • 発言の意図
    • 赤澤経産相のコメントは、こうした政治的緊張にもかかわらず、**「現時点では中国当局が実務上の『ちゃぶ台返し(規制停止の撤回)』には動いていない」**という事実を市場に伝え、パニックを抑制する狙いがあります。

4. 企業への実務的示唆

「変更なし」=「安全」ではありません。現状は**「首の皮一枚で繋がっている休戦状態」**です。

(1) 短期(今後12カ月):不安定な調達環境

  • 猶予期間の活用:中国側の「1年間停止」措置が有効な間に、現行契約に基づく在庫積み増しを推奨します。
  • 突発的遅延への備え:制度上は「停止」でも、現場レベルの通関遅延(サイレントな嫌がらせ)が発生するリスクは常在します。

(2) 中長期:構造的なデカップリング準備

  • 代替調達の加速:IEAなども指摘する通り、中国への依存(採掘70%、精錬90%超)は構造的なボトルネックです。
  • 技術投資:重希土類フリー磁石やリサイクル技術への投資は、もはや「環境対応」ではなく「BCP(事業継続計画)」の要です。

5. アクションプラン(推奨事項)

  1. 在庫ポリシーの見直し:重要品目については、「ジャストインタイム」から「ジャストインケース(有事対応)」へ切り替え、数ヶ月分のバッファを持つ。
  2. 契約条項の確認:米中・日中の政治的対立による輸出停止を「不可抗力(Force Majeure)」として処理できるか、法務部門と再確認する。
  3. 情報収集の定例化:中国商務省の公式発表だけでなく、ジェトロや専門商社のレポートを通じ、実務運用(ライセンス発給状況)の定点観測を行う。

米中関税交渉・動向 最新アップデート

2025年10月24日(米国時間)時点:米中関税交渉・動向 最新アップデート

全体要点

  • 新たな交渉ラウンド:米財務長官スコット・ベッセントとUSTRジャミソン・グリアーは、クアラルンプールで中国の何立峰副首相と会談中。大型関税エスカレーション回避と、トランプ大統領と習近平国家主席の首脳会談実現への道筋が目的。注目点は中国のレアアース輸出規制とこれに対する米国の対応。
  • 100%追加関税の予告:トランプ大統領は2025年11月1日から中国からの輸入品に追加で100%関税(現行関税に上乗せ)を課すと表明。ただし中国側対応次第で変更の可能性も示唆。この「追加関税発動」が目下のデッドラインとなっている。
  • 関税休戦の延長:8月12日に両国は高関税発動を回避する90日休戦延長で合意。これにより11月10日まで米30%、中10%の暫定関税水準が維持されている。
  • “Phase One”履行調査:USTRは2020年「Phase One」合意の履行状況について新たな301条調査を開始。追加関税発動の法的根拠拡充を意図。
  • 301条除外品目(178品目)の延長:USTRは11月29日まで特定品目に対する関税除外を延長済。該当HSコードは引き続き除外対象。

関税水準とリスク

  • 現状:8月の協議延長により11月10日までは「米30%:中10%」水準の関税休戦が継続。
  • 上振れリスク:トランプ大統領による「11/1から追加100%」の表明が実行されれば、休戦期限前倒しで関税水準が急上昇する可能性。
  • 対抗措置:レアアース規制拡大に加え、米国は米製ソフト利用製品の対中輸出規制強化なども検討中。

今後の注目日程

  • 11月1日:米国の追加100%関税の発動想定日(交渉進展により変更・撤回の可能性も)。
  • 11月10日:関税休戦延長(90日)の期限。トランプ-習会談もこの前後が節目に。
  • 11月29日:301条除外品目(178)の延長期限。以後の延長要否についてパブコメ手続・官報を要監視。

交渉の主要論点

  • レアアースの安定供給:中国の管理強化により米側は防衛・半導体・EV分野などサプライチェーンの影響を懸念。
  • 輸出管理 両国の応酬:米国はソフトウェア規制拡張を検討中で、AIチップや先端装置にも波及しうる。
  • “Phase One”履行・農産品購入拡大:米国は中国に大豆などの追加購入コミットを要求中。
  • 制制度是正:知財、強制移転、農業・金融サービスの体制面の履行状況も再検証。

企業対応チェックリスト

短期(〜11/10)

  • 船積み前倒し検討(到着日ではなく通関時税率適用に注意)。
  • 301条除外適用(〜11/29)HS再確認と申告書類整備。
  • 価格条項見直し(追加関税転嫁ロジック織り込み)。

中期(〜年末)

  • レアアース等サプライチェーン二線化推進。
  • 重層規制リスク(関税・輸出管理・制裁)のリスト化・管理。
  • 官報・USTRパブコメ監視の定期化。

補足・時系列ハイライト

  • 7/29:ストックホルム協議で休戦延長方針一致(最終判断は米大統領判断)。
  • 8/12:休戦延長で合意、暫定関税水準維持開始。
  • 10/10:トランプ大統領「11/1から100%関税追加」表明。
  • 10/22以降:米国が米製ソフトを利用した対中輸出の包括規制検討。
  • 10/24:クアラルンプールで米中実務協議、USTRがPhase One履行調査着手。

結論・注意喚起

最短11/1、遅くとも11/10が大きな分岐点です。「レアアース規制緩和と100%追加関税提案」のバーター的な妥協が現実的ですが、交渉決裂の場合は急激な関税引き上げ+輸出規制強化シナリオに要警戒です。各社は最新動向を見極め、輸入・生産・契約の「関税セーフティネット」を即点検してください。


参考・出典

  • クアラルンプール実務協議
  • トランプ大統領 100%追加関税表明
  • 関税休戦(〜11/10)延長と現行水準
  • 301条除外品目延長

(必要に応じ一次英文もご提供可能です。)

「中国、米関税に報復示唆 100%の追加関税なら相応の措置」というニュースの内容を深掘りして整理しました

以下は2025年10月12日時点の整理です。あくまで情報の整理と勝手な推定です。

エグゼクティブ・サマリー

何が起きたか:トランプ米大統領が11月1日から中国からの輸入に100%の追加関税を課すと発表。あわせて「重要ソフトウェア」の対中輸出規制も示唆・準備中。発表はTruth Social投稿・記者団への発言ベースで、現時点で連邦官報(Federal Register)やUSTRの正式告示は未確認。したがって方針発表>実装手続きの途上という段階。

中国の反応:10月11日、商務省が「高関税で脅すのは正しい付き合い方ではない」「米国が独断専行を続けるなら**断固たる措置(resolute measures)**をとる」と表明。「関税戦争は望まないが恐れもしない(We do not want to fight, but we are not afraid to fight)」と一貫した立場を強調。背景として10月9日発表のレアアース輸出管理の強化を「正当かつ防衛的」と主張。直ちに追加関税で報復するとは言及せず、交渉余地を残す発信。

ビジネス影響の核

  • 100%は**既存の関税(基準10%+フェンタニル20%=30%)に”上乗せ”**の追加税と理解され、合計130%となる見込み
  • 原産地が中国かどうかが決定的(迂回組立や単純作業では原産地は変わらない)
  • 越境ECの”抜け道”だったデミニミス($800免税)も中国発は2025年5月2日で既に停止。小口でも課税
  • 中国は関税以外(輸出規制、アンチトラスト、不可靠実体リスト等)での非関税型の報復選択肢を多く持つ

タイムライン(直近)

10/9(木):中国が商務部公告2025年第61号でレアアース輸出規制を大幅強化。ホルミウム、エルビウム、ツリウム、ユーロピウム、イッテルビウムの5元素を追加し、計12元素を規制対象に。12月1日発効。

10/10(金):米大統領が中国全輸入への100%追加関税と重要ソフトウェアの輸出規制を示唆。発効は**11/1(またはそれ以前)**と発言。

10/11(日):中国商務省が「高関税で脅すのは正しい付き合い方ではない」「米国が独断専行を続けるなら断固たる措置を講じる」と表明。レアアース輸出規制は正当と反論。

:連邦官報やUSTRの正式通知に、当該100%の実装告示は未掲載(10/12時点)。制度発動には官報告示・HTSUS追補(Chapter 99)等が通常必要。

100%「追加関税」の実務解釈(通関の観点)

積み上げ型:現行の米中関税は基準10%+フェンタニル関税20%=30%(2025年5月合意、90日延長で11月期限)。100%追加が実装されれば、基準10%+フェンタニル20%+100%追加=合計130%

過去の301条税(25%等)の除外品目については、8月29日付でUSTRが178品目の除外を11月29日まで延長。しかし100%追加との関係は官報告示待ち

いずれもMerchandise Processing Fee(MPF 0.3464%)やHarbor Maintenance Fee(HMF 0.125%、海上のみ)は貨物価額に対して別途加算(関税額に対する料率ではない)。

計算の目安($100,000の貨物価額の仮例)

例A(基準10%、フェンタニル20%、100%追加)

  • 関税=$10,000(基準)+$20,000(フェンタニル)+$100,000(追加)=$130,000
  • MPF=0.3464%×$100,000=$346.40(最小・最大の閾内)
  • HMF(海上)=0.125%×$100,000=$125.00
  • 合計負担=$130,471.40

例B(301条除外品で基準10%、100%追加のみ)

  • 関税=$10,000+$100,000=$110,000
  • MPF=$346.40、HMF=$125.00
  • 合計負担=$110,471.40

※MPFの最低$33.58/最高$651.50(2025年10月1日改定)。

価格転嫁

2018–19年の米中関税では、輸入者・消費者へのパススルーがほぼ完全という実証が蓄積。関税は最終価格に反映されやすい。今回100%が実装されれば、相当程度の値上げは避けがたい。

「断固たる措置」—中国側の選択肢(非関税中心)

中国商務省は10月11日、「米国が誤った道を進むなら、中国は自国の正当な権利と利益を守るため**断固たる措置(resolute measures)**を講じる」と警告。具体的選択肢:

輸出規制の拡張:レアアース12元素(ホルミウム、エルビウム、ツリウム、ユーロピウム、イッテルビウム等)の輸出許可審査を厳格化。軍需・半導体向けの審査厳格化。民生用途は許可の可能性とするも、実務上の遅延・不透明化でサプライチェーンを締め上げる余地。12月1日発効。

行政的圧力:独禁調査やサイバー審査、データ越境規制の厳格化。直近ではQualcommへの審査着手報道も。10月14日から米船舶への港湾使用料賦課開始。

対外制裁法/不可靠実体リスト:取引・投資禁止、資産凍結、入国拒否など広範。9月マドリード会談以降、米国が複数の中国企業をエンティティリストおよびSDNリストに追加したことを非難し、中国側も同様の指定拡大を示唆。

港湾使用料等の相殺措置:米側措置に対し中国港での米船舶への料金賦課など、物流での摩擦を拡大。

どの品目が特に当たるか(米国の対中輸入の構成)

米国の対中輸入(2024年$4,387億)は電気機器(HS85)・機械(HS84)・家具(HS94)・玩具(HS95)・アパレル(61/62)が柱。100%追加は消費財セクターの最終価格に広く影響。

実装プロセスの見極めポイント(法的経路)

実装にはUSTR告示・連邦官報でのHTSUS Chapter 99追補・適用日・対象の正式特定が通常必要。10/12時点で未掲示。

手段は301の修正もしくはIEEPA等に基づく新たな宣言の可能性。過去の裁判でIEEPA権限の限界が指摘された例もあり、法廷争いや議会監督のリスクを内包。

BIS(商務省)のソフトウェア輸出規制の具体像(規制対象・除外・暫定一般許可)を要注視。最近もAI・半導体で相次ぐ規制更新あり。

既存制度との関係(重要)

301除外の延長:USTRは2025年8月29日付で178品目の301条除外を11月29日まで延長。仮に100%が発効しても、除外品の扱いがどうなるか(別枠の追加税がかかるのか)官報告示を要確認。

デミニミス($800):中国・香港発は2025年5月2日で既に免税終了。小口でも関税・通関が必要(EC事業者はDTC価格式の全面見直し必須)。

あなたの会社が直ちにやるべきこと

原産地棚卸し:全SKUの**最終実質的変更(substantial transformation)**の発生地を再確認。単純組立やリパックでは原産地は変わらない。

関税数理の即時計算:SKU別に基準10%+フェンタニル20%+100%での新想定税負担を試算し、粗利・販売価格への影響と在庫評価を更新。

契約条項のトリガー確認:Change in Law/タリフ・サーチャージ条項の発動条件、価格改定の通知義務、フォースマジュールの射程。

物流計画:11/1前納品への前倒しの可否(ただしルール確定前の駆け込みは通関事故リスクあり)。エントリー日・輸入申告時刻が発効判定の基準になるのが通例。

代替調達・加工の設計:ベトナム等での実質的加工による原産地変更は可だが実質的変更基準を満たす工程設計・コスト検証・**CBP事前裁定(Binding Ruling)**の活用を。

ドローバック戦略:輸出向け分は301等を含め最大全額の99%還付が可能(条件あり)。輸出・破棄・製造代替の各類型で5年内の請求設計を。

社内・販売先への説明キット:上記の価格影響、納期、代替策を1枚に要約。

中国側の非関税リスク:不可靠実体リスト/対外制裁法の指定拡大や当局検査の強化に備え、現地在庫・人員・データのBCPを更新。

サプライチェーン別の「当たりどころ」

**電機・ICT(HS85)/機械(HS84)/家具(HS94)/玩具(HS95)/アパレル(61/62)**は米国の対中輸入の中核。価格転嫁→需要鈍化の一次波及に加え、レアアース制約→部材ひっ迫の二次波及が重なる可能性。

シナリオと備え(確率は私見)

停戦維持(30%):官報告示が出ず交渉入り。市場は一時安堵。

段階的導入(45%):対象・時期に例外を付しつつ一部適用。輸出規制は並走。価格改定と代替調達の両睨みが必要。

全面発動(25%)+中国の非関税報復:輸出許可の絞り込みや企業への個別制裁が加速。在庫・受注の調整を即実行。

(注:現時点で中国は関税で即時報復を明言しておらず、非関税の比重が高い公算。)

実務メモ(細目)

MPF/HMF:MPFは0.3464%(10/1改定で最小$33.58/最高$651.50)。HMFは0.125%(海上)。関税額には掛からず、貨物価額に対し課金。

価格転嫁の経験則:2018–19の研究では輸入者負担が主。部材→最終製品まで広範なコスト上昇。

越境EC:中国発デミニミス廃止(2025年5月2日)でShein/Temu等の小口も通関・課税。小口多頻度のオペレーションは関税・通関コストを前提に再設計を。

直近2週間のプラン(72時間/2週間)

72時間

  • SKU別関税インパクト表(基準10%/フェンタニル20%/想定100%/MPF/HMF)を作成
  • 価格改定シナリオ(内外税、販社マージン、販促原資)
  • 在庫と発注の前倒し/見合わせの判断

~2週間

  • 原産地変更案のPoC(工程票・BOM・価値加算法)/Binding Ruling準備
  • ドローバックの要件確認(輸出・製造代替・破棄)とデータ整備
  • 契約見直し(タリフ・サーチャージ条項、Change in Law、Incoterms再定義)

今後の「確認すべき公式ソース」

USTRのプレス/官報告示:100%追加の対象・発効時刻・Chapter 99番号が出るかを最優先で確認。

BISの輸出規制:「重要ソフトウェア」の定義、暫定一般許可、猶予期間。

中国の商務省告知・輸出許可運用:レアアースの審査基準・許可遅延の実勢(12月1日発効に向けて)。

中国税関 HSコード事前教示(預裁定)制度 実務ガイド

(最終確認日:2025年10月12日)

本ガイドは、中国(中華人民共和国)の税関におけるHSコードの品目分類や原産地資格などに関する事前教示制度(中国語:預裁定)の実務をまとめたものです。根拠法令として、主に海関総署令第236号「中華人民共和国海関預裁定管理暫行弁法」および最新の海関総署公告2024年第32号を参照しています。


1. 制度の基本情報

  • 主管当局: 中華人民共和国海関総署(GACC)および各直属税関
  • 主な根拠法令:
    • 海関総署令第236号(2018年2月1日施行):制度の基本原則を規定
    • 海関総署公告2018年第14号:上記法令の運用細則
    • 海関総署公告2024年第32号:有効期間の延長(展期)制度、および国外申請者の試行導入について規定

2. 申請手続きの概要

■ 対象分野 輸出入申告前に、以下の事項について税関の公式見解を求めることができます。

  1. 商品分類(HSコード)
  2. 原産地または原産資格
  3. 課税価格の関連要素および評価方法
  4. その他、税関総署が定める税関業務

■ 申請可能な者

  • 原則: 実際の輸出入活動に従事し、中国の税関に登録されている貿易事業者
  • 特例(試行制度): 2024年5月1日より、特定の条件を満たす中国国外の輸出者・生産者も、代理人経由での申請が可能となりました(詳細は後述)。

■ 申請時期

  • 原則として、貨物の輸出入予定日の3ヶ月前までに申請が必要です。
  • 例外:不可抗力、政策変更、または企業登録後3ヶ月未満などのやむを得ない事情がある場合は、3ヶ月を切ってからの申請も認められることがあります。

■ オンライン申請窓口 以下のいずれかのポータルサイトから24時間申請が可能です。

  • 互联网+海关(一体化オンライン窓口): http://online.customs.gov.cn
  • 中国国际贸易单一窗口(シングルウィンドウ): https://www.singlewindow.cn
    • アクセス方法:いずれも「税費業務 →(商品)分類預裁定/原産地預裁定」モジュールを利用します。

3. 申請から決定までの流れと所要期間

  1. 申請資料の提出(オンライン)
    • 申請書と添付資料(PDF形式)をアップロードします。
    • 外国語の資料には、必ず中国語の翻訳を添付する必要があります。
    • ファイルサイズ要件:1ファイル4MB以下、合計256MB以下
  2. 税関による受理審査
    • 申請受領後、10日以内に受理の可否が判断されます。
    • 書類不備の場合は補正通知が送られます。補正対応に要する期間は、この10日間には含まれません。
  3. 内容審査と決定書の発行
    • 受理後、税関による審査が行われます。必要に応じて、追加資料やサンプルの提出が求められる場合があります。
    • 受理日から60日以内に「預裁定決定書」が発行されます。
    • 注意:サンプルの試験・鑑定などに要する期間は、この60日間の審査期間から除外されます。

4. 申請に必要な主な情報

  • 預裁定申請書: オンラインシステム上で入力・作成します。
  • 技術資料(HSコード分類向け): 品名、規格・型式、構造・原理、機能・用途、成分・配合比、製造工程、包装状態、製品の写真・図面・カタログなど。
  • 証憑資料(原産地向け): 使用材料の内訳、生産工程の詳細、その他、関連する協定や規則に基づく証明書類。

5. 決定書の効力と活用

  • 有効期間: 原則として3年間です(決定書送達日から起算)。
    • 法令改正などにより、有効期間内でも決定が失効する場合があります。
    • 決定書発行前の輸出入には適用されません(遡及効なし)。
  • 有効期間の延長(展期): 2024年の公告により、有効期間の延長制度が導入されました。
    • 申請期間: 有効期限が満了する90日前から30日前まで
    • 条件: 申請内容や商品情報に変更がないことなど。
    • 手続: オンラインで申請し、受理から30日以内に新たな決定書(有効期間3年)が発行されます。
  • 拘束力と使用方法: 輸出入申告の際、申告書の所定欄に決定書番号を記載します。これにより、決定書と同一の貨物であることが確認されれば、税関はその決定内容(HSコード等)を認め、通関がスムーズになります。

6. 費用

  • 申請手数料: 無料です。
  • 実費負担: サンプルの試験・鑑定を外部機関に依頼した場合の費用や、サンプル輸送費などは申請者の負担となります。

7. その他の重要事項

  • 情報の公開と秘密保持: 決定内容は、申請者の商業上の秘密に関する部分を除き、公開される可能性があります。秘密保持を希望する場合は、申請時に書面でその旨を申し出る必要があります。
  • 不受理・審査終了となる主なケース:
    • 申請要件の不備、同一内容の重複申請、法令で規定が明確な事案。
    • 追加資料の提出が期限内に行われないなど、申請者側の都合で期間内に判断ができない場合。
  • 不服申立て: 決定に不服がある場合は、海関総署に対する行政不服審査や、行政訴訟を提起することができます。

8. 【特例】国外の輸出者・生産者による申請(試行制度)

  • 開始日: 2024年5月1日
  • 対象者: **上海自由貿易試験区(臨港新片区を含む)**に所在する輸入者と契約を締結した、中国国外の輸出者または生産者。
  • 対象分野: HSコード分類および原産地の双方。
  • 申請方法: 中国国内の代理人を通じ、専用のオンラインモジュールから申請します。申請先の税関は上海税関に限定されます。

【参考】主要根拠法令の抜粋

  • 海関総署令第236号の要点:
    • 第3条: 対象分野(HSコード分類、原産地等)
    • 第4条: 申請者の資格
    • 第7条: 輸出入3ヶ月前の申請原則
    • 第8条: 10日以内の受理判断
    • 第9条: 不受理の事由
    • 第11条: 60日以内の裁定(試験・鑑定時間を除く)
    • 第13条: 有効期間3年
    • 第14条: 遡及効の否定
    • 第15条: 税関に対する拘束力
    • 第17条: 情報公開の原則と秘密保持
    • 第18条: 不服申立て
  • 海関総署公告2024年第32号の要点:
    • 有効期間延長(展期)の手続きと要件
    • 中国国外の輸出者・生産者による申請の試行(条件付き)

「中国のレアアース輸出規制に対するアメリカの11月1日からの中国に対する追加関税100%」詳細アップデートと日本ビジネスマンが知るべき点

60秒サマリー

米国は11月1日から対中輸入に「追加関税100%」を課すと発表。既存関税に上乗せで適用され、総負担は多くの品目で130%前後に達する見通し。加えて「重要ソフトウェア」の対中輸出規制も導入方針。発表は大統領のTruth Social投稿によるもので、詳細は未公表。状況次第で発動時期を前倒しまたは撤回する可能性に言及。

背景は中国のレアアース輸出規制の強化。中国はホルミウム、エルビウム、ツリウム、ユウロピウム、イッテルビウムの5元素を新たに規制対象に追加し、計12元素を規制下に置いた。精製装置・資材の輸出も規制対象とし、域外適用的な運用方針を打ち出した(中国産レアアースを0.1%以上含む磁石は審査対象)。主な発効は11月8日、一部は12月1日。

マーケットは株安・円高で反応。S&P500は2.7%安、ナスダックは3.6%安、円は対ドルで強含み。現行の米中「関税休戦」は11月10日に期限を迎える。

何が「決まった」か速報ベース

正確さに関しては、努力していますが、最終的には個々人でご確認下さい。

米側の措置

対中追加関税100%: 11月1日(またはそれ以前)に発動と大統領がTruth Socialで明言。既存の関税に「上乗せ」する形で適用。

重要ソフトウェアの対中輸出規制: 同じく11月1日から導入方針。ただし「重要ソフトウェア」の定義・該当ECCN・許可プロセス等の詳細は未公表。

背景: 今回の措置は中国のレアアース規制拡大への対抗。現行の米中関税休戦は11月10日に期限を迎える見通しで、11月1日発動は期限の9日前。

撤回条件への言及: 中国がレアアース規制を撤回すれば、追加関税の取り下げ余地があるとの発言も(ただし確約ではない)。

実務メモ: 現時点ではSNSでの政治判断の発表段階。HSコード範囲、免除、経過措置(積送中除外)などの実装細則は未発表。過去の追加関税(例:2025年2月の措置)の際は「船積み済み・積送中」への短期的な経過措置が官報で規定された前例あり(今回も同様とは限らないが注視が必要)。

中国側:レアアース規制の最新ポイント

規制拡大の中身: 5元素(Ho/Er/Tm/Eu/Yb)を追加し、計12元素を規制対象とした。精製技術・装置など多数を規制リストに追加。軍需用途は不許可、先端半導体関連は厳格審査。

域外適用の示唆: 中国資材・設備を使う海外生産や、中国レアアースを0.1%以上含む磁石製品についても中国の輸出許可が必要になり得るとの運用を明記。執行の実効性は未解明だが、サプライ停止リスクが抑止力として機能。

スケジュール: 規制拡大の主要部分は11月8日発効、一部規制は12月1日発効。

マーケットの初期反応(10月10-11日)

米株急落: S&P500は2.7%安(182ポイント減)、ナスダックは3.6%安(820ポイント減)、ダウは1.9%安(878ポイント減)。4月以来の大幅下落。円高進行も観測。

まだ不明な点(実務で「宿題」となる箇所)

適用範囲(HS): 一律100%を全品目に上乗せするのか、除外・猶予の設計はあるのか。官報(Federal Register)またはCBP通知待ち。

「重要ソフトウェア」の線引き: 対象ECCN、クラウド/SaaSやリモートアップデート等の「無形輸出」の扱い。BISからの追加ルールが出るまで社内フローは暫定対応が必要。

移行措置(積送中除外): 前例はあるが、今回の有無・期間は未定。

米中の追加対抗措置: 米側の輸出規制拡張、中国側の対抗課税・許可運用厳格化などの次手。

日本ビジネスが「今すぐ」押さえるべき要点

価格・コストと供給(11月1日リスク)

中国生産→米国向けの最終製品・部材は実質的に100%コスト上乗せが前提に(既存関税と合算で総負担は130%前後の水準に達する見立て)。在庫・出荷計画の前倒しや価格条項の見直しが急務。

原産地・迂回の誤解を回避

第三国経由の転送では原産地(CN)は変わらない。実質的な原産地変更(substantial transformation)や工程移管が必要。通関当局の取締り強化が予想され、形式的な迂回は高リスク。

レアアース・磁石のボトルネック

EV、風力、産業機械、HDD、ロボットなど磁石・レアアース多用業種は二重の供給制約(中国側規制+米側コスト増)に直面。BOM再点検、代替材・代替サプライヤの即時探索を。中国は処理で約90%、磁石で90%超のシェアを持つ。

米拠点からの「無形輸出」管理

米国子会社・米在勤者が関与するソフト配信、リモート保守、AIモデル提供等は輸出に当たり得る。「重要ソフトウェア」定義確定まで、対中向けの新規提供・更新に暫定ゲートを設け、案件審査を義務化。

契約・物流・金融の実務

価格転嫁条項(サーチャージ/関税条項)の発動条件を確認。インコタームズ(DAP/DDP等)に応じた関税負担者を明確化。船積みカット・通関所要の前倒しを運送・通関業者と共有。為替・金利・在庫のヘッジ方針を更新。積送中例外の有無に注意。

業界別・影響の当たり所(早見)

自動車(EV/HEV): 駆動用NdFeB磁石、モータ、パワエレ部材のレアアース依存+米向け中国生産部材のコスト急騰。

産業機械・ロボット: サーボモータ用磁石・精密センサ類の供給不確実性。

エレクトロニクス: 磁石(スピーカー/HDD)、レアアース触媒、中国EMS由来の部材などで影響波及。

再エネ(風力): 永久磁石式発電機で依存度が高く、調達・価格圧力が強まりやすい。

直近2週間の「ウォッチポイント」

米官報(Federal Register): 対象品目(HTS)、移行措置(積送中除外の有無・期間)、免除申請(除外枠)の有無。

米商務省BISの追加告示: 「重要ソフトウェア」定義・ライセンス運用の詳細。

中国商務部(MOFCOM)の運用通知: 許可審査の実際の厳格度、防衛・先端半導体関連の扱い。

米中首脳外交イベントの有無と追加対抗措置: 米側の輸出規制拡張、中国側の対抗課税・許可厳格化。

すぐに着手したい実務アクション(チェックリスト)

48時間以内

  • 米向けCN原産の出荷案件を全件洗い出し(最終製品・部材・補修品)。船積み前倒しの可否判断。
  • BOM単位でのCN原産比率と関税転嫁条項の有無を確認、価格・納期の顧客コミュニケーション草案を用意。
  • 米拠点からの対中ソフト配信の一時ゲート(新規配信・更新・リモート保守の承認制)を導入。

1週間以内

  • サプライヤ・代替源のRFI/RFQ開始(磁石・触媒・精製工程の代替可否)。
  • 通関ブローカー・フォワーダーと移行措置の有無を前提に申告ライン確認。
  • 契約・約款(価格調整・不可抗力・通関責任)見直し案のドラフト化。

今月内

  • 工程移管(原産地変更)の実行可能性評価と投資稟議の素案。
  • 在庫・為替・金利のヘッジ更新とシナリオ別PL感応度の提示。

主な修正点

  1. SNSプラットフォーム名の明記: 「SNS投稿」→「Truth Social投稿」に修正
  2. ナスダック下落率の修正: 「約3.5%安」→「3.6%安」に修正
  3. 中国レアアース規制の対象元素数: 「5元素を新たに規制対象に追加」に加え「計12元素」を明記
  4. 磁石の審査基準: 「微量以上」→「0.1%以上」に具体化
  5. 中国のシェア: 「9割超」→「処理で約90%、磁石で90%超」と詳細化
  6. 文章構成: 読みやすさ向上のため、セクション構成を整理し、重複を削減

同一商品なのに中国の税関ごとにHSコード(税則号列)が違う場合

同一商品なのに中国の税関ごとにHSコード(税則号列)が違う場合、放置すると税率・輸出VAT還付・監管条件に影響します。中国ではHS分類の根拠と統一方法が制度化されています。以下の順に動くと解決が早いです。


まず押さえる前提

  • 中国の分類は、「進出口税則」「税則商品及び品目注釈」「本国子目注釈」等に基づいて決めます(客観・正確・統一の原則)。同一貨物は同一の分類決定に従うのがルールです。Government of China
  • 税関審査中でも緊急に出す必要があるときは、**担保提供での放行(担保放行)**が可能です。Government of China
  • 税則や注釈、申告要素(申报要素)は年初に改定されることがあるため、年度違いで見解が割れることもあります(例:2024→2025年の改定告知)。customs.gov.cn

すぐやること

  1. 技術資料を一本化
    品名・型番・用途・作用原理・材質/成分・構成/同梱品・完成/未組立か・セット品か・規格(GB/ISO等)・画像/図面・パンフ・安全データ、を中国語で揃えます。税関は実際状態で判断します。Government of China
  2. 公式データベースで“根拠合わせ”
    • 進出口税則・品目注釈」「本国子目注釈」を検索(用語の定義や除外規定を確認)。urumqi.customs.gov.cn+1
    • **申告要素(申报要素)**の最新版を確認(項目抜けが食い違いの典型原因)。customs.gov.cn
  3. 既存の“統一判断”がないかを調査
    GACCが公表する**「商品归类决定(分類決定)」や「行政裁定」に該当例があれば、それに全国で合わせる義務**が生じます。Government of China
  4. 相手税関に“根拠セット”で照会・調整
    2)と3)の根拠を添付し、「他港での見解」「年度の税則版」「申告要素の充足」を示して統一運用を依頼します(全国通関一体化の下、照会でそろうことが多い)。
  5. (貨物を急ぐ場合)担保放行+後追い確定
    輸出入を止めずに進めつつ、分類確定の手続きを継続します。Government of China

再発防止と“決定打”

A. 分類の「予裁定」(Advance Ruling)を取る

  • 効力3年間有効で、同一条件の貨物に全国で拘束力。税関は60日以内に決定書を交付(化験等の時間は除外)。申告時に**「预裁定+番号」**を備考に記載すれば税関が認めます。policy.mofcom.gov.cn+1
  • 申請窓口:「互联网+海关」→「税费业务」→「归类业务」→「归类预裁定」。shanghai.customs.gov.cn
  • 延長(展期)有効期限の30~90日前に延長申請可(2024年制度改正)。paper.people.com.cn
  • 海外企業でも申請できるケース上海自貿区では、海外の輸出者・生産者も契約条件等を満たせば代理経由で申請できるパイロットが運用中。該当すれば活用価値大。gdfs.customs.gov.cn+1

B. GACCの「分類決定」・「行政裁定」で全国統一

  • GACCが公表する分類決定(归类决定)は普遍的拘束力を持ち、同一貨物に全国一律適用。該当例を根拠にすれば各港で統一されます。Government of China

C. 紛争になったら「行政復議」

  • 具体的な行政行為(コードの否認・追徴等)に不服があれば、知った日から60日以内上級税関へ行政復議(不服申立て)が可能。審理は原則60日(必要に応じ最長+30日)。Government of China+1

なぜ食い違うのか

  • 申告要素の不足/表現の差(“用途/構成/機能/組成”の書きぶりで見解が割れる)。customs.gov.cn
  • 製品状態の違い(完成/未組立、セット詰合せ、同梱アクセサリーの有無)。Government of China
  • 年度改定や注釈改訳の差(年替わりで注釈修正)。customs.gov.cn
  • 既存の「分類決定」・判例情報の見落とし(既決例があるのに参照していない)。gdfs.customs.gov.cn

実務パッケージ

  • 申告書類の備考例(中国語) 依据《中华人民共和国海关预裁定决定书》(编号:XXXX),本批货物与预裁定列明情形一致,特按该决定申报。gongbei.customs.gov.cn
  • 予裁定 申請書類チェックリスト
    ① 申請書(中文版)② 製品仕様書/図面(CN)③ 成分/材質証明 ④ 用途・作用原理説明 ⑤ 型番対応表 ⑥ 写真/動画リンク ⑦ サンプル(要求があれば)⑧ 他港での指摘・税号案の比較票 ⑨ 国家/業界標準の引用(該当時)policy.mofcom.gov.cn+1

まとめ

  1. 技術資料と申告要素を整備 → 2. 公式注釈・既決例で根拠固め → 3. 港間調整(必要なら担保放行) → 4. 予裁定で将来案件を固定 → 5. なお争いが残るなら行政復議
    これで同一商品のHSコードを全国で一本化できます。Government of China+3Government of China+3policy.mofcom.gov.cn+3

参考:公式リソース(検索入口)


TPPへの中国、台湾、韓国の参加申請・参加検討に関する私見

中国、台湾、韓国がTPPへの参加を表明または参加検討をすることがニュースになっています。

ニュースやYouTubeで「TPPへの中国、韓国の参加は無理。台湾歓迎」という論調をよく見ますが、FTAを利用する企業側からの視点でこのことを見てみましょう。

(申請に関する是非)

TPPに参加申請をする国は、TPPが定める申請・承認プロセスを経ることになります。申請する段階でその申請を断ることはできません。断る以上は明確な理由が必要となります。

そこで、参加希望国が条件を満たせるかを見定めればよい。中国がWTOに参加するときに遵守するとした条件を今だ守れていないこと、韓国が国際的な決め事を後に保護することなどを加味して各国が見定め、満場一致をもって参加を認めればいいことで現時点で一方的に締約国が「守れない」と主張するのは無理があります。

(日本にとっての経済的メリット、リスク)

RCEPはその協定の内容を見れば分かることですが、日本にとってのメリットが余り感じられない、あったとしてもとても時間がかかる内容です。特に自動車部品の対中国輸出ではメリットがほぼないと言えます。中国や韓国が入ることでメリットが大きいと思われたRCEPですが、実際は日本に取ってそれほど手放しでは喜べないものになっています。

翻って、TPPに中国や韓国が入るとどうなるか。TPPでは日本は米などよく守ったと思われる内容となっている一方で、日本以外ではほぼ100%の関税撤廃となっています。また、その撤廃速度もRCEPとは比べるまでもありません。新規参入の国は、締約国より参加条件がよくなるわけがありません。基本は譲許のスピードが速く、かつほぼ全面的に関税を撤廃することが前提になるでしょう。そうなれば、TPPの方がいろいろな制約のあるRCEPよりも日本企業に取って対中国、対韓国上、関税削減が広く、かつ鋼板に享受できるという活用のメリットが出ると言えます。このメリットはかなり大きなものです。この点だけを考えれば、中国、韓国のTPP参加は日本にとって歓迎すべき事です。

一方、原産地証明上、日本はリスクを背負う可能性があります。

TPPにおける関税低減・撤廃のメリットを得る為には、原産地証明書を輸出時のインボイスに添付する必要があります。その原産地証明ですが、TPPでは「自己証明」という形態をとっています。「自己証明」とは企業が原産性を証明した後に、自身で原産地証明を作成することが出来るということを指します。日EU EPAや日オーストラリアEPAを除き、日本の多くのEPAでは「第三者証明」制度がとられています。これは商品の原産性判定を日本商工会議所に申請し、許可が出た後で、日本商工会議所により原産地証明書を発給してもらうことが出来る制度です。間に日本商工会議所が入ることで時間と手間とコストが企業にはかかることになります。TPPではそれがないので迅速に原産地証明書を得る事ができます。メリットに思えますよね。

FTAでは、原産性が確かなものかを輸入国が輸入時・輸入後に確認できる「検認」が認められています。原産性に関する証拠書類の提出や質疑をして、原産性があることを企業が立証しなければいけません。

先の原産地証明書の発給プロセスで、日本商工会議所が間に入ったEPAでは、検認時には日本商工会議所が輸入国税関と企業の間に立ち、検認の対応を支援していただけます。「自己証明」である日EU EPAは、税関が仲立ちしてくれます。が、TPPはその仲立ちがなく、相手国税関から直接企業に「検認」の問い合わせがいく仕組みになっています。TPPに中国や韓国が入ることで、彼らから日本企業への検認は各国税関から直接企業にいくことなるのです。助太刀のない検認でかつ中国、韓国から。怖いと思うのは私だけでしょうか。「もう少し製造工程を明確にしてもらわないと、原産として認められない」といった製造上の機密情報を要求されかねないという人も居ます。これは考えるべき大きなリスクです。

(TPPのアキレス腱)

ルールを守らないと考えられている中国を経済的に資すると考えられるTPP参加、それを西側として阻止しなければいけないという外交上の日本のスタンスも分からなくもありません。が、TPPの初期交渉当時からかき乱して、そして離脱をしたアメリカの所業も決して褒められたものではなく、実際のTPPの協定文にはアメリカによって(ごり押しと言っていい)内容が数あります。現段階でのTPP締約国は苦々しく思っている内容です。アメリカが戻ってくることを期待して、そのままとしています。

アメリカが戻ってこないなら、締約国は修正したいところでしょう。自動車関連や特に繊維などはアメリカのごり押しの内容です。直したいというのも当然ですし、理想をいえば直すべきだと思います。が、協定内容を変えることを認めれば、ついでに様々なことが書き換えられる恐れがあります。それが中国の参加の際に書き換えられるとなればどうなるか。中国の参加を歓迎するアジアの締約国がマレーシアやシンガポールなど少なからずあるため、非現実的ではないのです。

(英国の参加申請が当面の試金石)

先に、英国がTPP加盟申請を行っているので、英国に対して、協定内容を変えずに協議するか、厳しい参加基準をどう遵守させるかが当面締約国による真偽の中で見守りたい点です。協定を変えることがなければ、中国や申請をした場合の韓国にも同様の措置がとられるでしょう。そうなればTPPの理念は守られます。

それと同時にかき乱してきたアメリカがTPPに参加するなら修正が必要といっており、かつ、TPP参加が現段階でのアメリカの優先順位ではないため、アメリカの動きも見ておく必要があります。

(中国の真意)

中国は本当にTPPに参加したいと思っているのでしょうか。RCEPという巨大メガFTAも完成目前で、「自由貿易」という意味では中国は成功しています。一方、TPPのルールを曲げない限り、中国は参加要件を満たさないのは明らかで、中国が参加要件を満たす施策を行うメリットはありません。また、TPPは「環太平洋」と謳っていますが、FTAは本来隣接する地域で有効なもので、実際には日本企業がTPPを使うのはEPAのないカナダやニュージーランドくらいで、それほどアクティブな利用はされていません。

そういうことを考えれば、台湾をTPPに参加できなくさせるのが中国の本意ではないかと思います。中国にとって台湾は自国の一部としての認識なので、台湾を独立した形で世界的にメジャーなFTAに参加させないことが肝心なのでしょう。

ほんとか嘘か分かりませんが、台湾がTPP参加申請を出すという情報を中国が知り、先に申請することで台湾の出鼻を挫いたと言われていますね。

今後の動きを見守っていきたいと思います。情報がありましたらまたこのブログに投稿します。

【China Briefingより】China to Sign Free Trade Agreement with Eurasian Economic Union on May 17

China to Sign Free Trade Agreement with Eurasian Economic Union on May 17

May 17, 2018

China Briefing

China to Sign Free Trade Agreement with Eurasian Economic Union on May 17

 

中国とロシアのFTA締結がまもなくなんですね。