(最終確認日:2025年10月12日)
本ガイドは、中国(中華人民共和国)の税関におけるHSコードの品目分類や原産地資格などに関する事前教示制度(中国語:預裁定)の実務をまとめたものです。根拠法令として、主に海関総署令第236号「中華人民共和国海関預裁定管理暫行弁法」および最新の海関総署公告2024年第32号を参照しています。
1. 制度の基本情報
- 主管当局: 中華人民共和国海関総署(GACC)および各直属税関
- 主な根拠法令:
- 海関総署令第236号(2018年2月1日施行):制度の基本原則を規定
- 海関総署公告2018年第14号:上記法令の運用細則
- 海関総署公告2024年第32号:有効期間の延長(展期)制度、および国外申請者の試行導入について規定
2. 申請手続きの概要
■ 対象分野 輸出入申告前に、以下の事項について税関の公式見解を求めることができます。
- 商品分類(HSコード)
- 原産地または原産資格
- 課税価格の関連要素および評価方法
- その他、税関総署が定める税関業務
■ 申請可能な者
- 原則: 実際の輸出入活動に従事し、中国の税関に登録されている貿易事業者
- 特例(試行制度): 2024年5月1日より、特定の条件を満たす中国国外の輸出者・生産者も、代理人経由での申請が可能となりました(詳細は後述)。
■ 申請時期
- 原則として、貨物の輸出入予定日の3ヶ月前までに申請が必要です。
- 例外:不可抗力、政策変更、または企業登録後3ヶ月未満などのやむを得ない事情がある場合は、3ヶ月を切ってからの申請も認められることがあります。
■ オンライン申請窓口 以下のいずれかのポータルサイトから24時間申請が可能です。
- 互联网+海关(一体化オンライン窓口):
http://online.customs.gov.cn
- 中国国际贸易单一窗口(シングルウィンドウ):
https://www.singlewindow.cn
- アクセス方法:いずれも「税費業務 →(商品)分類預裁定/原産地預裁定」モジュールを利用します。
3. 申請から決定までの流れと所要期間
- 申請資料の提出(オンライン)
- 申請書と添付資料(PDF形式)をアップロードします。
- 外国語の資料には、必ず中国語の翻訳を添付する必要があります。
- ファイルサイズ要件:1ファイル4MB以下、合計256MB以下
- 税関による受理審査
- 申請受領後、10日以内に受理の可否が判断されます。
- 書類不備の場合は補正通知が送られます。補正対応に要する期間は、この10日間には含まれません。
- 内容審査と決定書の発行
- 受理後、税関による審査が行われます。必要に応じて、追加資料やサンプルの提出が求められる場合があります。
- 受理日から60日以内に「預裁定決定書」が発行されます。
- 注意:サンプルの試験・鑑定などに要する期間は、この60日間の審査期間から除外されます。
4. 申請に必要な主な情報
- 預裁定申請書: オンラインシステム上で入力・作成します。
- 技術資料(HSコード分類向け): 品名、規格・型式、構造・原理、機能・用途、成分・配合比、製造工程、包装状態、製品の写真・図面・カタログなど。
- 証憑資料(原産地向け): 使用材料の内訳、生産工程の詳細、その他、関連する協定や規則に基づく証明書類。
5. 決定書の効力と活用
- 有効期間: 原則として3年間です(決定書送達日から起算)。
- 法令改正などにより、有効期間内でも決定が失効する場合があります。
- 決定書発行前の輸出入には適用されません(遡及効なし)。
- 有効期間の延長(展期): 2024年の公告により、有効期間の延長制度が導入されました。
- 申請期間: 有効期限が満了する90日前から30日前まで
- 条件: 申請内容や商品情報に変更がないことなど。
- 手続: オンラインで申請し、受理から30日以内に新たな決定書(有効期間3年)が発行されます。
- 拘束力と使用方法: 輸出入申告の際、申告書の所定欄に決定書番号を記載します。これにより、決定書と同一の貨物であることが確認されれば、税関はその決定内容(HSコード等)を認め、通関がスムーズになります。
6. 費用
- 申請手数料: 無料です。
- 実費負担: サンプルの試験・鑑定を外部機関に依頼した場合の費用や、サンプル輸送費などは申請者の負担となります。
7. その他の重要事項
- 情報の公開と秘密保持: 決定内容は、申請者の商業上の秘密に関する部分を除き、公開される可能性があります。秘密保持を希望する場合は、申請時に書面でその旨を申し出る必要があります。
- 不受理・審査終了となる主なケース:
- 申請要件の不備、同一内容の重複申請、法令で規定が明確な事案。
- 追加資料の提出が期限内に行われないなど、申請者側の都合で期間内に判断ができない場合。
- 不服申立て: 決定に不服がある場合は、海関総署に対する行政不服審査や、行政訴訟を提起することができます。
8. 【特例】国外の輸出者・生産者による申請(試行制度)
- 開始日: 2024年5月1日
- 対象者: **上海自由貿易試験区(臨港新片区を含む)**に所在する輸入者と契約を締結した、中国国外の輸出者または生産者。
- 対象分野: HSコード分類および原産地の双方。
- 申請方法: 中国国内の代理人を通じ、専用のオンラインモジュールから申請します。申請先の税関は上海税関に限定されます。
【参考】主要根拠法令の抜粋
- 海関総署令第236号の要点:
- 第3条: 対象分野(HSコード分類、原産地等)
- 第4条: 申請者の資格
- 第7条: 輸出入3ヶ月前の申請原則
- 第8条: 10日以内の受理判断
- 第9条: 不受理の事由
- 第11条: 60日以内の裁定(試験・鑑定時間を除く)
- 第13条: 有効期間3年
- 第14条: 遡及効の否定
- 第15条: 税関に対する拘束力
- 第17条: 情報公開の原則と秘密保持
- 第18条: 不服申立て
- 海関総署公告2024年第32号の要点:
- 有効期間延長(展期)の手続きと要件
- 中国国外の輸出者・生産者による申請の試行(条件付き)
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