中国が約900品目の輸入関税を引き下げ

935品目の暫定税率が示す、調達コストと対中ビジネスの再設計

(2026年1月1日施行、実務チェックリスト付き)

2026年1月1日から、中国は935品目について、WTO最恵国税率(MFN)より低い輸入暫定税率を適用します。根拠は、国務院関税税則委員会が公表した「2026年関税調整方案」で、公告日は2025年12月26日付として示されています。(mofcom.gov.cn)
ニュースで「約900品目」と表現されるのは、この935品目を丸めた言い方です。(gss.mof.gov.cn)


この記事の要点

・今回の引き下げは一律減税ではなく、935品目に絞った暫定税率の適用
・効果の大小は、品目該当判定と中国側税則の号列まで落とせるかで決まる
・税率だけでなく、税目や国内細分の定義見直しが同時に動く点が実務上の本丸
・一部品目では暫定税率を取りやめ、MFN税率へ戻す動きもある
・見積、契約条件、品目マスタ、通関根拠の更新をセットで進めるのが安全


1. 何が決まったのか

今回の政策は、2026年に限って(もしくは一定期間)特定品目の輸入コストを下げるために、MFNより低い税率を暫定的に設定するものです。対象は935品目で、関税割当(タリフクォータ)対象品目は含まれない、と整理されています。(gss.mof.gov.cn)
公表のタイミングは、公告日付(12月26日付)と、対外発表として報じられた日(12月29日)にズレが見えるため、社内資料では両方を併記しておくと監査や説明が楽になります。(mofcom.gov.cn)


2. 暫定税率とは

暫定税率は、MFNそのものを改定するのではなく、政策目的に沿って特定の品目に限定して、一定期間だけ低い税率を適用する運用です。目的としては、内外市場の資源の活用、ハイグレード財の供給拡大、産業高度化、グリーン転換、民生改善などが掲げられています。(中国政府网)


3. どの分野が狙い撃ちか

公式説明では、方向性は大きく3つにまとまります。

3-1. 先端分野の部材・素材

産業高度化や技術自立の文脈で、重要部品や先端材料の輸入関税を引き下げる、とされています。例として、プレス機用のCNC油圧クッションや特殊な複合接点帯などが挙げられています。(hunan.gov.cn)

3-2. グリーン分野と資源循環

資源循環や低炭素化を後押しする目的で、リチウムイオン電池向けの再生黒粉など、資源性商品の引き下げが例示されています。(Reuters)

3-3. 医療・民生

民生改善の観点で、人工血管、感染症の診断試薬キットなど医療関連も例として挙げられています。(Reuters)


4. 実務の本丸は「税率」より「コードと定義」

今回の関税調整方案は、暫定税率の設定に加えて、税目や国内細分の注釈の調整も含みます。調整後の国内細分(本国子目)は8972、注釈は201とされており、品目マスタや通関システム側の更新が不可避です。(gss.mof.gov.cn)
また、新興分野に対応する国内細分の追加も言及されています(例としてインテリジェント・バイオニックロボット、バイオ航空灯油など)。税率の話だけでなく、定義の置き換えが起きる可能性を前提に、分類根拠の整備が必要です。(gss.mof.gov.cn)


5. ビジネスへの効き方

5-1. 中国向け輸出企業

・顧客の輸入着地コストが下がり、採用確率が上がる可能性
・一方で「関税が下がった分、値引きできるのでは」という交渉が来やすい
・DDPなど輸出側が関税を負担する契約では、利益構造に直撃するため、見積の更新が必須

5-2. 中国現地法人・工場(輸入調達側)

・部材、原料、設備のコストが下がれば、調達先の選択が変わる
・対象外と誤認していた品目が対象だった場合、年度コストを取り戻せる余地がある
・逆に、対象だと思い込んでいたが対象外だった場合、予算と原価が崩れる


6. すぐに回す実務チェックリスト

ステップ1 中国側税則の号列まで落として「対象判定」

・日本側のHS6桁一致だけで判断しない
・2026年の暫定税率表(附表)で、該当する税番があるかを照合する
・照合の証跡として、該当箇所のPDF保存や社内台帳化まで行う
関税調整方案は附表(暫定税率表など)を含む形で公開されています。(mofcom.gov.cn)

ステップ2 関税割当(タリフクォータ)対象かを確認

935品目は「関税割当品目を除く」と整理されています。対象外の取り違いを防ぐため、品目が割当管理に入るかを先に潰します。(gss.mof.gov.cn)

ステップ3 協定税率との比較を必ず行う

暫定税率より協定税率の方が低い品目は普通に起こり得ます。中国は2026年も、複数の自由貿易協定などに基づく協定税率の適用を継続すると整理されています。(gss.mof.gov.cn)
ここは税率比較だけで終わらず、原産地要件と証明運用(自己申告か、証明書か、保存義務は何か)まで同時に点検するのが定石です。

ステップ4 契約条件と価格を更新する

・インコタームズで関税負担者を確定
・関税メリットをどこまで販売価格に反映するか、社内方針を決める
・値下げ交渉に備え、税率低下分と自社コスト要因を分解できる見積にする

ステップ5 品目マスタと通関根拠を更新する

税目や注釈の調整がある以上、前年踏襲はリスクです。品目マスタ、分類理由書、製品仕様情報、用途説明をセットで更新し、通関時に説明できる形に整えます。(gss.mof.gov.cn)

ステップ6 引き下げだけでなく「暫定税率の取りやめ」も確認

報道・解説では、暫定税率を取りやめMFN税率へ戻す品目がある点も示されています。コスト試算は引き下げ対象だけを見るのではなく、上がる側の品目も同時に棚卸しします。(hunan.gov.cn)


7. まとめ

今回の「約900品目の関税引き下げ」は、935品目に限定した暫定税率の適用で、効く企業には効き、効かない企業には効きません。差を分けるのは、次の2点です。(gss.mof.gov.cn)

・中国側税則の号列まで落とし込んだ対象判定ができるか
・税率改定と同時に、分類定義や品目マスタ更新まで一体で回せるか

最後に、公開情報を基にした一般解説であり、実際の適用は品目分類、輸入形態、原産地要件、証明の有無などで変わります。意思決定に使う場合は、必ず附表の税率表と該当税番で照合してください。(mofcom.gov.cn)


参考情報(一次情報中心)

・国務院関税税則委員会「2026年関税调整方案」(公告、附表含む)(mofcom.gov.cn)
・中国税関総署による解説(執行上の留意点)(中国 Customs)
・新華社および政府系発信による概要(935品目、狙いの整理)(Xinhua News)
・ロイターによる国際報道(対象例の補足)(Reuters)

 

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