ファーストセールの適用に対するCBPによる審査の厳格化

CBPによるファーストセールルール適用に対する審査は、2024年から2025年にかけて顕著に厳格化しており、不承認事例が増加している実態が確認されています。

審査厳格化の具体的な背景

CBPは2025年以降、ファーストセールルールの適用について「商業的実質性とリスク負担が各取引段階で実証されているケースのみを承認する」という明確な方針を打ち出しています。これは単なる書類チェックの強化ではなく、中間業者が単なるパススルー・エンティティ(仲介者)として機能していないか、実質的な買主・売主としてリスクと所有権を負担しているかを厳密に審査する姿勢を示しています。

不承認となる主な理由

近年の裁定事例(Ruling H327067など)では、以下の要件不備により適用が却下されています。

中間業者が貨物の所有権を取得していないケースや、インコタームズおよび文書上の記録から損失リスクを負担していないことが判明した場合、製造者と中間業者間の真正な販売(bona fide sale)が成立していないとCBPは判断します。また、支払記録がインボイス金額と一致しない、取引参照番号が欠落している、出荷から2年近く経過した後の支払いなど、タイムリーで直接的な支払証明がない場合も不承認となります。

訴訟事例に見る厳格化の実態

Meyer Corporation事件は、この厳格化傾向を象徴する重要な判例です。CBPは関連当事者間取引において、親会社の財務文書の提出を要求し、これが提出されなかったことを理由にファーストセール価格の使用を拒否しました。連邦巡回控訴裁判所は2024年12月、国際貿易裁判所がMeyerに対して「推測的な不利な推論」を不適切に適用したとして判決を破棄し、差し戻しましたが、この事例は審査の厳格度を示しています。

必要書類の要件強化

CBPが承認に必要とする完全な証跡には、全当事者間の締結契約書、発注書と商業インボイス、取引に直接紐付けられた支払証明、明確な所有権移転と納入条件を示す船積書類が含まれます。これらの書類が不完全または遅延している場合、輸入者が支払った全額(手数料を含む)に基づいて関税が賦課されます。

実務への影響と対応策

業界専門家は、現在のCBPの姿勢を「合理的注意義務は任意ではなく、コンプライアンス上の必須事項」と評価しています。ファーストセールルールを現在使用している、または検討している輸入者は、サプライチェーン構造とインコタームズの再評価、所有権移転・発注書・リスク負担に関する文書の見直し、中間業者が単なるパススルーではなく真正な買主・売主として機能していることの確認を行うべきです。

関税率上昇の環境下でファーストセールルールの関心は高まっていますが、CBPの審査基準が厳格化している現実を踏まえ、文書管理と取引構造の継続的な見直しが不可欠となっています。

オーストラリアにおけるHSコードの事前教示制度

オーストラリア(Australian Border Force, ABF)におけるHSコードの事前教示(Advance Ruling/Tariff Advice)制度の実務まとめです(最終確認:2025年10月16日)

1. 対応組織とURL

主管当局:Australian Border Force(ABF)

主要リンク

  • Tariff Advice System(分類の事前教示):申請の考え方、運用、窓口・提出先
  • Origin Advice(FTA原産地に関する事前教示):対象者・処理標準など
  • Tariff Public Advice Products(公表ガイダンス:拘束力なし):Tariff Adviceとの違いを明示
  • 様式:B102 – Application for Advance Ruling (Tariff)、B659 – Application for Advance Ruling (Origin)
  • 現行タリフ(Customs Tariff Act 1995)の解説(Schedule 2:解釈規則/Schedule 3:分類表)

所管窓口(提出・照会):National Trade Advice Centre(NTAC)

2. 事前教示のプロセス

(A) Tariff Advice(分類)

申請主体:原則として輸入者。実務上は通関業者・フォワーダー・個人が委任を得て申請可能(ガイドに明記)

申請経路

  • 電子申請:ICS(Integrated Cargo System)のTAPINシステム経由で申請。電子申請後5日以内にIDM(図表類)等の裏付け資料をメール送付(未送付は自動却下)
  • 書面申請:様式B102をメールまたは郵送で提出(電子申請を使わない場合)

ABFの処理:標準30日(需要の多寡により延長あり)。無料。十分な情報がなければ審査不可。同一品の既存TA保有、係争中、TCO申請と重複等の場合は受理拒否あり

追加照会:追加情報要請への回答期限は原則14日(個別に延長可)。応じない場合は自動却下

結果:TA番号付きの書面。特定メーカーの特定貨物に対する私的・拘束的な行政判断(ABFを拘束)

(B) Origin Advice(FTA原産地)

対象者:オーストラリアの輸入者、または相手国の輸出者・生産者(もしくはその代理人)。必要資料の受領完了後30日以内の発給が目標。手数料なし

備考(TCOとの関係):Tariff Concession Order(TCO)申請時は、先に有効なTAを取得して番号を引用すると審査が円滑化。TAは5年有効。TCO申請との同時進行は不可(重複審査防止)

3. 事前教示に必要な情報(最小パック)

**ガイドライン(TA Guidelines)**の必須要素:

  • 貨物の特定:輸入時の形態/部品か/セットか等の詳細説明(用途・機能・作動原理・構造、寸法・重量・材質・組成%、製造工程、同梱部品)
  • IDM(写真・図面・カタログ等):英語・判読可能なもので添付
  • 申請者の主張:検討した見込み見出し(Headings considered)、却下理由、主張見出し・下位見出し(GIR・部注・類注・HSEN、判例や過去先例の引用)を理由付きで記述
  • 一申請=一モデル(シリーズ・レンジは対象外)
  • ICS/TAPIN登録後5日以内にIDMメール送付。追加照会の回答は14日以内

B102様式の主な欄:フル商品説明、主張分類の理由、(該当時)TCOの適用主張、申請者・関係者情報など

原産地AR(B659):該当FTAの原産地規則に必要な工程記述・投入材内訳・証憑等を様式に沿って提出

4. 結果が出るまでの期間

  • Tariff Advice:通常30日(ABFサービス標準/混雑時は延長あり)
  • Origin Advice:必要資料の受領完了後30日以内を目標
  • 追加資料対応:14日が原則(個別延長可)

5. 事前教示の有効期間・拘束力

有効期間:5年間。ガイドラインでは「申請日から」、実際の通知書では「発給日から」と表現が異なるが、実務上は5年有効で一致。早期無効化(法改正・事実変更・誤り等)あり

拘束性:ABFを拘束(特定メーカーの特定貨物に限定)。公表ガイダンスは非拘束

6. 事前教示に必要な費用

ABFの手数料:無料(TariffおよびOriginとも)。通関業者に委託する場合は民間手数料が別途発生

7. その他の重要事項(実務の注意点)

不受理・却下の典型例:情報不足、同一品で既存TA保有、係争中、同時のTCO審査対象など

TCOとの連動:有効なTAをTCO申請に添付・引用すると分類確認が省略可能(重複審査回避)

輸入申告での扱い:ICSの「追加情報(Item 110)」欄にTA番号を記載可能(任意)。引用しても貨物検査は妨げられない

提出書式・言語:英語。ウェブリンクのみは不可(IDMはPDF等で添付)

シリーズ品の扱い:1モデル=1申請が原則(シリーズ一括は不可)

上訴・見直し:ABFの内部見直し → AAT(行政審判所)→ 連邦裁判所(法問題)のルートが整備されている

現行タリフの基礎:Customs Tariff Act 1995(Schedule 2:解釈規則/Schedule 3:分類表)。分類ロジック(GIR/Notes)に沿って主張を構成

申請前チェックリスト(実務TIP)

  1. 技術情報を一次資料で固める:用途・機能/作動原理/構造/寸法・材質・組成%/製造工程/包装+写真・図面・カタログ(IDMは英語・判読可能なもの)
  2. 論証の型:検討見出し → 却下理由 → 主張見出し(GIR・部注・類注・HSEN引用)の順で理由付け
  3. 手続の時間管理:電子申請 → 5日以内にIDM送付/追加照会 → 14日/発給30日目標(OAも30日)
  4. TCO利用予定:先にTA取得 → TCO申請に引用
  5. 有効期限:5年。法改正・事実変更の可能性にも備えて更新(再申請)時期を逆算

主要根拠(公的情報)

  • ABF「Tariff Advice System」:制度概要、30日標準、無料、不受理事由、提出先(NTAC)
  • ABF「Guidelines for Lodgement of Tariff Advices」:5年有効、一申請=一モデル、5日以内にIDM送付、14日回答期限、記載要領
  • Home Affairs Notice 2019/20:TAは5年有効・拘束力あり、TCOと同時進行不可、TA引用でTCO分類確認省略
  • ABF「Origin Advice」:30日目標、対象者、趣旨
  • ABF様式:B102(Tariff)/B659(Origin)
  • 現行タリフ解説(Customs Tariff Act 1995:Schedule 2/3)

FTA-BPOセミナー第12回ではご迷惑をおかけしました

昨日(2025年10月15日)のセミナーではご参加の皆様に大変ご迷惑をおかけしました。

一部の方に配信ができない不手際がございました。

原因は特定できましたので、次回はこのようなご迷惑をおかけすることがなきよう、勤めます。

昨日の内容は、YouTubeにアップいたしました。そちらをご覧いただけますと大変助かります。

本当にもうしわけございませんでした。