オーストラリアにおけるHSコードの事前教示制度

オーストラリア(Australian Border Force, ABF)におけるHSコードの事前教示(Advance Ruling/Tariff Advice)制度の実務まとめです(最終確認:2025年10月16日)

1. 対応組織とURL

主管当局:Australian Border Force(ABF)

主要リンク

  • Tariff Advice System(分類の事前教示):申請の考え方、運用、窓口・提出先
  • Origin Advice(FTA原産地に関する事前教示):対象者・処理標準など
  • Tariff Public Advice Products(公表ガイダンス:拘束力なし):Tariff Adviceとの違いを明示
  • 様式:B102 – Application for Advance Ruling (Tariff)、B659 – Application for Advance Ruling (Origin)
  • 現行タリフ(Customs Tariff Act 1995)の解説(Schedule 2:解釈規則/Schedule 3:分類表)

所管窓口(提出・照会):National Trade Advice Centre(NTAC)

2. 事前教示のプロセス

(A) Tariff Advice(分類)

申請主体:原則として輸入者。実務上は通関業者・フォワーダー・個人が委任を得て申請可能(ガイドに明記)

申請経路

  • 電子申請:ICS(Integrated Cargo System)のTAPINシステム経由で申請。電子申請後5日以内にIDM(図表類)等の裏付け資料をメール送付(未送付は自動却下)
  • 書面申請:様式B102をメールまたは郵送で提出(電子申請を使わない場合)

ABFの処理:標準30日(需要の多寡により延長あり)。無料。十分な情報がなければ審査不可。同一品の既存TA保有、係争中、TCO申請と重複等の場合は受理拒否あり

追加照会:追加情報要請への回答期限は原則14日(個別に延長可)。応じない場合は自動却下

結果:TA番号付きの書面。特定メーカーの特定貨物に対する私的・拘束的な行政判断(ABFを拘束)

(B) Origin Advice(FTA原産地)

対象者:オーストラリアの輸入者、または相手国の輸出者・生産者(もしくはその代理人)。必要資料の受領完了後30日以内の発給が目標。手数料なし

備考(TCOとの関係):Tariff Concession Order(TCO)申請時は、先に有効なTAを取得して番号を引用すると審査が円滑化。TAは5年有効。TCO申請との同時進行は不可(重複審査防止)

3. 事前教示に必要な情報(最小パック)

**ガイドライン(TA Guidelines)**の必須要素:

  • 貨物の特定:輸入時の形態/部品か/セットか等の詳細説明(用途・機能・作動原理・構造、寸法・重量・材質・組成%、製造工程、同梱部品)
  • IDM(写真・図面・カタログ等):英語・判読可能なもので添付
  • 申請者の主張:検討した見込み見出し(Headings considered)、却下理由、主張見出し・下位見出し(GIR・部注・類注・HSEN、判例や過去先例の引用)を理由付きで記述
  • 一申請=一モデル(シリーズ・レンジは対象外)
  • ICS/TAPIN登録後5日以内にIDMメール送付。追加照会の回答は14日以内

B102様式の主な欄:フル商品説明、主張分類の理由、(該当時)TCOの適用主張、申請者・関係者情報など

原産地AR(B659):該当FTAの原産地規則に必要な工程記述・投入材内訳・証憑等を様式に沿って提出

4. 結果が出るまでの期間

  • Tariff Advice:通常30日(ABFサービス標準/混雑時は延長あり)
  • Origin Advice:必要資料の受領完了後30日以内を目標
  • 追加資料対応:14日が原則(個別延長可)

5. 事前教示の有効期間・拘束力

有効期間:5年間。ガイドラインでは「申請日から」、実際の通知書では「発給日から」と表現が異なるが、実務上は5年有効で一致。早期無効化(法改正・事実変更・誤り等)あり

拘束性:ABFを拘束(特定メーカーの特定貨物に限定)。公表ガイダンスは非拘束

6. 事前教示に必要な費用

ABFの手数料:無料(TariffおよびOriginとも)。通関業者に委託する場合は民間手数料が別途発生

7. その他の重要事項(実務の注意点)

不受理・却下の典型例:情報不足、同一品で既存TA保有、係争中、同時のTCO審査対象など

TCOとの連動:有効なTAをTCO申請に添付・引用すると分類確認が省略可能(重複審査回避)

輸入申告での扱い:ICSの「追加情報(Item 110)」欄にTA番号を記載可能(任意)。引用しても貨物検査は妨げられない

提出書式・言語:英語。ウェブリンクのみは不可(IDMはPDF等で添付)

シリーズ品の扱い:1モデル=1申請が原則(シリーズ一括は不可)

上訴・見直し:ABFの内部見直し → AAT(行政審判所)→ 連邦裁判所(法問題)のルートが整備されている

現行タリフの基礎:Customs Tariff Act 1995(Schedule 2:解釈規則/Schedule 3:分類表)。分類ロジック(GIR/Notes)に沿って主張を構成

申請前チェックリスト(実務TIP)

  1. 技術情報を一次資料で固める:用途・機能/作動原理/構造/寸法・材質・組成%/製造工程/包装+写真・図面・カタログ(IDMは英語・判読可能なもの)
  2. 論証の型:検討見出し → 却下理由 → 主張見出し(GIR・部注・類注・HSEN引用)の順で理由付け
  3. 手続の時間管理:電子申請 → 5日以内にIDM送付/追加照会 → 14日/発給30日目標(OAも30日)
  4. TCO利用予定:先にTA取得 → TCO申請に引用
  5. 有効期限:5年。法改正・事実変更の可能性にも備えて更新(再申請)時期を逆算

主要根拠(公的情報)

  • ABF「Tariff Advice System」:制度概要、30日標準、無料、不受理事由、提出先(NTAC)
  • ABF「Guidelines for Lodgement of Tariff Advices」:5年有効、一申請=一モデル、5日以内にIDM送付、14日回答期限、記載要領
  • Home Affairs Notice 2019/20:TAは5年有効・拘束力あり、TCOと同時進行不可、TA引用でTCO分類確認省略
  • ABF「Origin Advice」:30日目標、対象者、趣旨
  • ABF様式:B102(Tariff)/B659(Origin)
  • 現行タリフ解説(Customs Tariff Act 1995:Schedule 2/3)

 

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