米議会が突きつけた「NO」。トランプ大統領のカナダ関税に対する下院決議可決の衝撃と行方

2026年2月13日 | 北米政治・通商政策

2026年2月11日水曜日、ワシントンD.C.でひとつの歴史的な採決が行われました。

米国下院は、トランプ大統領が国家非常事態権限を行使して発動したカナダに対する追加関税を「終了」させるための共同決議案を、賛成219、反対211の僅差で可決しました。

このニュースは、単なる議会手続きの一幕ではありません。ホワイトハウス主導の強硬な保護主義に対し、立法府が明確な拒絶の意思を示した分水嶺となる出来事です。本稿では、この決議が持つ政治的な意味と、北米ビジネスに及ぼす現実的な影響について解説します。

わずか「8票差」の攻防。共和党からの造反が意味するもの

今回の決議案(H.J. Res)は、下院外交委員会の重鎮である民主党のグレゴリー・ミークス議員(ニューヨーク州選出)によって提出されました。

注目すべきは、その採決結果です。

最終的な票数は賛成219票、反対211票

下院の過半数を握る共和党指導部は、トランプ大統領の政策を支持し、決議案への反対を呼びかけていました。しかし、6名の共和党議員が党議拘束を破り、民主党議員全員と共に「賛成」票を投じました。

この6名の造反は、トランプ政権の岩盤支持層と思われていた共和党内においてさえ、同盟国であるカナダへの無差別な関税攻撃に対する懸念や、地元経済への報復関税リスクに対する危機感が高まっていることを示唆しています。

今後のプロセス。上院の壁と「拒否権」の現実

下院を通過したこの決議案は、次に上院へと送られます。しかし、ここからが本当の戦いです。

1. 上院での審議

上院でも民主党は結束して賛成に回ると見られますが、過半数を確保するためには、下院以上に多くの共和党上院議員の協力が必要です。現在、一部の穏健派共和党議員は関税に批判的ですが、可決に必要な数を確保できるかは予断を許しません。

2. 大統領拒否権の発動

仮に上院でも可決された場合、決議案は大統領デスクへ送られます。CBS Newsなどの報道分析によれば、トランプ大統領はこの決議に対して拒否権(Veto)を行使することが確実視されています。

3. 拒否権を覆せるか

大統領の拒否権を覆し、決議を法として成立させるためには、上下両院でそれぞれ3分の2以上の賛成が必要です。今回の下院採決が「219対211」という僅差であったことを考慮すると、拒否権を覆すための「圧倒的多数」を確保することは極めて困難です。

ビジネスへの影響。関税は「継続」するが、政治リスクは変質した

この決議可決を受けて、企業の貿易担当者はどのように動くべきでしょうか。

関税は即時には止まらない 冷静に認識すべき事実は、この下院決議だけでは法的拘束力が発生しないということです。現時点でカナダ国境における関税徴収は続いており、明日の実務が変わるわけではありません。

USMCA見直しの交渉カード しかし、この決議はカナダ政府にとって強力な交渉カードとなります。「米国内にも関税反対の声が過半数ある」という事実は、現在進行中のUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の見直し協議において、カナダ側の立場を補強します。

不確実性の長期化 議会と大統領の対立が鮮明になったことで、通商政策の先行きはより不透明になりました。企業は、関税が「大統領令で突然決まり、議会との対立で長引く」という不安定な環境が、2026年中は続くと想定しておく必要があります。

まとめ

2月11日の下院決議は、関税撤廃に向けた決定打ではありませんが、ワシントンの空気が変わりつつあることを告げる警鐘です。

6人の共和党議員が投じた一票は、経済合理性を無視した関税政策には身内からもNOが突きつけられるという、政権への痛烈なメッセージとなりました。ビジネスリーダーは、この政治的な亀裂が今後の政策変更にどうつながるか、上院の動向を注視し続ける必要があります。

免責

本稿は一般的な情報提供を目的としたもので、個別案件の法的助言ではありません。実際の申告・契約・規制適合は、対象国の法令と最新の当局公表、必要に応じて専門家見解に基づき判断してください。

 

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