本文書は、2025年10月26日時点で公表・報道されている米国「相互関税(Reciprocal Tariffs)」の国別最新レートをまとめたものです。ここでいう「相互関税」は、2025年の大統領令(EO 14257ほか)に基づき米国が輸入品に課す追加の従価関税を指します。多くの国は2025年7月31日付EO 14326(8月6日官報掲載)のAnnex Iで改定されました。カナダ・メキシコ・ブラジル・中国については別の大統領令により相互関税とは別枠または一時停止等の措置が併存しています。
作成方針
根拠の整理:官報(Federal Register)掲載の大統領令と付属書(Annex)を一次情報として特定し、必要に応じてホワイトハウス/USTR発表や実務向けファクトシートで補強しました。
最新化:2025年7月31日のEO 14326(8月6日掲載)Annex Iを基準に、中国・カナダ・メキシコ・ブラジルの後続措置(8月以降)と、東南アジア数か国の10月発表を反映しています。
出力形式:国名/関税率/出所/備考の形式で一覧化し、前日(10月25日)からの差異の有無を備考に明記しました。
検証:表下にEUの算式、別枠IEEPA関税、対中一時停止などの適用ルールを注記しています。
国別関税率一覧
出所は特記なき限りEO 14326(2025年7月31日)Annex Iです。レートは「追加」関税(ad valorem)です。
適用ルールの確認
EUの算式(2025年7月31日以降)
EU域内品目のHTS一般税率(Column 1)が15%以上の場合は追加0%、15%未満の場合は(15%−一般税率)を加算し、合計15%に誘導する方式です。
中国(*)
対中の国別相互関税(高率)は一時停止中です。EO 14334(8月11日)で11月10日まで延長と明記されています。停止中は相互関税10%のみで、他の制裁・特別関税やデミニミス撤廃など別措置は別途適用されます。
カナダ(*)
相互関税のリスト外です。IEEPAに基づく北側国境対処で35%(8月1日発効)となっています。USMCA原産等は別途の扱いです。
メキシコ(*)
相互関税のリスト外です。IEEPAに基づく南側国境対処で25%となっています。7月31日に90日延長が発表されましたが、レートは25%を維持しています。
ブラジル
相互関税10%に加えて、2025年7月30日のEO 14323で**+40%**(対象多数、例外あり)が課され、最大50%となります。主要な例外品目には、オレンジジュース、民間航空機・部品、特定機械、特定金属、エネルギー製品などが含まれます。
インド
2025年8月27日から、ロシア産石油輸入を理由とした追加25%関税(EO 14329)が発効し、合計50%(相互関税25%+追加25%)となりました。ただし、2025年10月下旬の報道では、インドがロシア産石油輸入削減に合意することと引き換えに、米国が関税率を15–16%へ引き下げる交渉が進行中と報じられています。
7月31日改定の背景
多くの国が**15%または19–25%**に再設定され、4月時点のレートから変更されました(例:日本24%→15%、インドネシア32%→19%等)。
前日(10月25日)からの差異まとめ
レート変更の公的発表:本日までの官報・USTR発表に新たなレート変更は確認されていません。
東南アジアの合意発表:マレーシア、タイ、カンボジア、ベトナムについて、相互関税レートは維持(19%または20%)され、一部品目を0%にする”Aligned Partners”向けの選定を進める枠組みが10月に公表されました。
主要ソース
- EO 14257(2025年4月2日):相互関税の基本枠組み(10%ベース + Annex I国別率)
- EO 14326(2025年7月31日;8月6日官報):Annex Iの最新国別率(本表の大半)
- EO 14334(2025年8月11日;8月14日官報):対中の国別相互関税一時停止を11月10日まで延長
- EO 14325(7月31日):カナダ向け35%(8月1日発効)
- EO 14194(2月1日)ほか:メキシコ向け25%、その後も維持
- EO 14323(7月30日):ブラジル向け**+40%**(最大50%)
- EO 14329(8月6日):インド向け追加25%(8月27日発効)
- USTR/ホワイトハウスの10月発表(マレーシア/タイ/カンボジア/ベトナム):レート維持と一部0%対象選定方針
補足(読み方)
表の「関税率」は相互関税として上乗せされる追加率です(原則、通常税率や他の特別関税に積み上がります)。
EUは**「15%に到達するよう加算」という算式方式**に変更されており、個々の品目のHTS一般税率を確認する必要があります。
IEEPA別枠(カナダ・メキシコ等)やブラジル+40%は相互関税とは別の大統領令で課される措置であり、実務上は併存し得ます。