相互関税 最新一覧(2025-09-10時点)

対象:米国の「相互関税(Reciprocal Tariff)」に関する、公表・報道ベースの最新国別レート。原則として 2025-07-31 公表の大統領令(Annex I)を基準に、日・EU・中国・加墨などの後続発表を注記。

凡例

  • 関税率(相互関税)=米国が当該国・地域原産品に課す追加関税(HTS 99章の相互関税)。
  • 出所=主要根拠(簡略表記)。
  • 備考=相互関税以外の別枠関税(232鉄鋼・アルミ、銅、自動車、薬物・国境関連など)がある場合は注記。詳細は本体チャットの脚注・出典参照。

国名関税率(相互関税)出所備考
Algeria(アルジェリア)30%WH EO 2025-07-31 Annex I
Angola(アンゴラ)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Bangladesh(バングラデシュ)20%WH EO 2025-07-31 Annex I
Bosnia & Herzegovina(ボスニア・ヘルツェゴビナ)30%WH EO 2025-07-31 Annex I
Botswana(ボツワナ)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Brazil(ブラジル)10%WH EO 2025-07-31 Annex I別枠:対ブラジル追加関税の大統領令(2025-07-30)あり(相互関税とは別)。
Brunei(ブルネイ)25%WH EO 2025-07-31 Annex I
Cambodia(カンボジア)19%WH EO 2025-07-31 Annex I
Cameroon(カメルーン)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Canada(カナダ)*10%(ベースライン)WH EO 2025-07-31 Sec.2(d)USMCA適格は追加関税免除(CBP 2025-03-08)。別枠で対加措置(35%)の大統領令あり。
Chad(チャド)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
China(中国)*10%(暫定)WH EO 2025-08-11(中国一時停止延長)2025-11-10まで高率の停止延長。低額輸入・フェンタニル関連等は別枠措置あり。
Côte d’Ivoire(コートジボワール)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
DR Congo(コンゴ民主共和国)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
EU(欧州連合)15%(MFNと合算し上限15%)WH EO 2025-07-31 Sec.2(c) / WH 共同声明 2025-08-21一部品目は相互関税免除(コルク、航空機、ジェネリック等)。
Falkland Islands(フォークランド諸島)10%WH EO 2025-07-31 Annex I
Fiji(フィジー)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Guyana(ガイアナ)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
India(インド)25%WH EO 2025-07-31 Annex I別枠:追加25%(2025-08-06)が上乗せの大統領令あり(相互関税とは別)。
Indonesia(インドネシア)*19%WH EO 2025-07-31 Annex I / WH Fact Sheet 2025-07-22米・インドネシア合意で19%に明示。
Iraq(イラク)35%WH EO 2025-07-31 Annex I
Israel(イスラエル)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Japan(日本)*15%(MFNと合算し上限15%)WH EO 2025-09-04(対日合意の実施)自動車・同部品などセクター別取扱いも同令で規定。
Jordan(ヨルダン)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Kazakhstan(カザフスタン)25%WH EO 2025-07-31 Annex I
Laos(ラオス)40%WH EO 2025-07-31 Annex I
Lesotho(レソト)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Libya(リビア)30%WH EO 2025-07-31 Annex I
Liechtenstein(リヒテンシュタイン)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Madagascar(マダガスカル)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Malawi(マラウイ)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Malaysia(マレーシア)19%WH EO 2025-07-31 Annex I
Mauritius(モーリシャス)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Mexico(メキシコ)*10%(ベースライン)WH EO 2025-07-31 Sec.2(d)USMCA適格は追加関税免除(CBP 2025-03-08)。別枠で対墨25%措置(2025-02-01)あり。
Moldova(モルドバ)25%WH EO 2025-07-31 Annex I
Mozambique(モザンビーク)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Myanmar(ミャンマー)40%WH EO 2025-07-31 Annex I
Namibia(ナミビア)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Nauru(ナウル)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Nicaragua(ニカラグア)18%WH EO 2025-07-31 Annex I
Nigeria(ナイジェリア)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
North Macedonia(北マケドニア)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Norway(ノルウェー)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Pakistan(パキスタン)19%WH EO 2025-07-31 Annex I
Philippines(フィリピン)19%WH EO 2025-07-31 Annex I
Serbia(セルビア)35%WH EO 2025-07-31 Annex I
South Africa(南アフリカ)30%WH EO 2025-07-31 Annex I
South Korea(韓国)15%WH EO 2025-07-31 Annex I自動車の232等は別枠。
Sri Lanka(スリランカ)20%WH EO 2025-07-31 Annex I
Switzerland(スイス)39%WH EO 2025-07-31 Annex I
Syria(シリア)41%WH EO 2025-07-31 Annex I
Taiwan(台湾)20%WH EO 2025-07-31 Annex I
Thailand(タイ)19%WH EO 2025-07-31 Annex I
Tunisia(チュニジア)25%WH EO 2025-07-31 Annex I
Vanuatu(バヌアツ)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Venezuela(ベネズエラ)15%WH EO 2025-07-31 Annex I別枠:ベネズエラ産原油輸入国への対抗関税制度あり。
Vietnam(ベトナム)20%WH EO 2025-07-31 Annex I
Zambia(ザンビア)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Zimbabwe(ジンバブエ)15%WH EO 2025-07-31 Annex I

注記

  • EU・日本:MFN(一般税率)と相互関税の合算が 15% になる設計(MFNが15%以上の品目は相互関税0%)。
  • 中国:相互関税の高率(125%等)は一時停止中で 10% に減免(~2025-11-10予定)。
  • カナダ・メキシコ:Annex I非掲載につき原則ベースライン10%。USMCA原産資格を満たす場合は追加関税免除(相互関税の適用外)。
  • 「別枠」:相互関税とは別に、鉄鋼・アルミ・銅、車、対ロシア・対ベネズエラ・薬物(フェンタニル)関連など独立の大統領令・布告が適用される場合がある。

初心者向け:EPAのSP(加工工程基準)完全ガイド

1. SPを理解するための基本用語

まず、原産地規則で頻繁に使われる基本的な用語を確認しましょう。

  • PSR(Product-Specific Rule:品目別規則) 産品ごとに定められた原産地要件のことです。多くの場合、関税分類変更基準(CTC)付加価値基準(VA)、**特定工程基準(SP)**が、単独または複数の選択肢として規定されています。日EU・EPAのPSRは、HSコード2017年版を基準に作成されています。
  • SP(Specific Process:加工工程基準) 化学反応、蒸留、紡績、編立、縫製など、産品の製造に不可欠な特定の工程そのものを協定域内で行うことを原産地要件とする基準です。化学品に関するSPの定義は、協定の附属書3-A(原産地手続)の注5に詳述されています。
  • 付加価値基準(VA: Value Added) 非原産材料の価額の上限(MaxNOM)や、協定域内で付加された価値の割合(RVC)を定める基準です。SP基準の代替として選択できる品目が多くあります。
    • MaxNOM(Maximum value of non-originating materials):非原産材料価額の上限。 計算式例: MaxNOM=VNM÷EXW​×100≤規定の割合(%) (VNM: 非原産材料価格, EXW: 工場渡価格)
    • RVC(Regional Value Content):域内原産割合。 計算式例: RVC=(FOB−VNM)÷FOB​×100≥規定の割合(%) (FOB: 本船渡価格)
  • 不十分な加工(Insufficient Working or Processing) 乾燥、包装、ラベルの貼り付け、単なる混合や組立てなど、産品に実質的な変更を加えないと見なされる軽微な作業です。たとえ品目別規則(PSR)の他の要件を満たしても、これらの作業しか行っていない場合は原産性が認められません
  • 非改変の原則(Non-Alteration Rule) 原産品として認められた産品は、日本とEU間の輸送途中で実質的な変更が加えられてはなりません。保管、仕分け、ラベル貼り替えなどのごく限定的な作業のみが許可されます。
  • 証明と記録保存 輸出者が作成する原産地に関する申告文(自己申告書、Annex 3-Dに規定)、または輸入者が持つ知識に基づいて原産性を証明します。輸出者は、申告の根拠となる書類を最低4年間保管する義務があります(輸入者は最低3年)。

2. 日EU・EPAにおけるSPの具体例

加工工程(SP)は、産品の分野によって様々なものが規定されています。

  • A. 化学品(HS第28~38類など)
    • 定義(附属書3-A 注5):分子構造を変化させる「化学反応」、沸点の差を利用する「蒸留」、材料を細かくする「粒度の変更」、不純物を取り除く「精製」、異性体を分離する「異性体分離」、微生物などを利用する「バイオテクノロジー工程」などがSPとして定義されています。
      • 注意:単なる溶解、溶媒の除去、結晶水の付加・除去は「化学反応」に含まれません。
    • PSRの例(第28~34類、38類など):多くの品目で「CTSH(HSコードの上4桁変更) または 特定のSPの実施 または 付加価値基準(MaxNOM 50%など)」のように、複数の選択肢から一つの要件を満たせば良いとされています。
    • 鉱物油(第27類):「蒸留」または「化学反応」の実施がSPとして規定されています。
    • バイオ燃料:「トランスエステル化」「エステル化」「水素化処理」といった特定の化学プロセスがSPとされています。
  • B. ゴム製品(HS第40類)
    • 再生タイヤ(HS 4012.11~4012.19):使用済みタイヤのトレッド(接地面)を張り替える「リトレッド」がSPとして明確に規定されています。
  • C. 繊維・衣類(HS第50~63類)
    • 基本原則:繊維分野では、原料から製品になるまでの一連の工程(紡績 → 製織・編立 → 染色・仕上げ → 縫製)のうち、**2つ以上の主要工程(二段階変更、double-transformation)**を経ることを基本としています。
    • PSRの例
      • 絹糸(HS 50.04~50.06):繊維の押出+紡績、撚糸+機械加工など。
      • 綿織物(HS 52.08~52.12):紡績+製織、製織+染色、糸染+製織、製織+プリントなど、複数の工程の組み合わせが規定されています。
      • 編物(HS第60章):編立+染色、編立+縫製など。
      • 衣類(HS第61~62章)
        • ニット衣料:編立+縫製(裁断を含む)。
        • 織物衣料:製織+縫製(裁断を含む)。品目によっては「プリント+縫製」で認められる場合や、併せて**非原産生地の価額上限(例:EXW価格の40%以下)**が定められている場合があるため、個別の条文確認が必須です。
    • 繊維の特別規定(附属書3-A 注6~8):最終製品の重量比10%以下の非原産材料を考慮しない「許容差(デミニミス)ルール」など、特別な規定も存在します。

3. SP基準を満たすための証拠書類(例)

SP基準で原産性を証明するためには、該当する工程を実施したことを客観的に示す書類が必要です。

  • 全品目に共通する書類
    • 部品表(BOM):非原産材料のHSコードと投入量がわかるもの。
    • 工程フロー図、製造指図書、作業標準書
    • 生産実績記録:ロット番号、製造日、使用設備、外注先の情報など、トレーサビリティを確保できるもの。
    • 輸送・保管記録:船荷証券(B/L)、航空貨物運送状(AWB)、通関書類など(非改変の原則を立証)。
    • 原産地に関する申告書の写しとその根拠資料(4年間保管)。
  • 化学品・鉱物油
    • 反応記録:温度、圧力、反応時間、触媒の種類、反応式など。
    • 蒸留記録:蒸留塔の運転ログ、温度データなど。
    • 分析データ:粒度分布、純度、不純物量の測定結果など、SPの定義を満たすことを示す証跡。
  • 繊維・衣類
    • 各工程の作業記録:紡績、編立、製織、染色、プリント、縫製などの設備稼働ログや外注契約書。
    • 裁断伝票、型紙など。

4. SP基準による原産性判定の実務フロー

以下の手順で確認を進めることで、正確な原産性判定が可能です。

  1. HSコードの確定:まず、輸入国(EUまたは日本)のHSコードで産品を特定します。
  2. PSRの確認:附属書3-Bで該当するHSコードのPSRを調べ、SPが選択肢として利用できるか、代替要件(CTC/VA)は何かを確認します。
  3. SP定義の照合:附属書3-Aの注釈などで、該当するSP(化学反応、蒸留など)の厳密な定義と自社の工程が合致しているかを確認します。
  4. 加工場所の確認:規定の工程が、日本またはEUの域内で完結していることを確認します(第三国での実施は認められません)。
  5. 不十分な加工でないことの確認:実施した工程が、不十分な加工に該当しないことを協定条文で確認します。
  6. 補足要件の確認:PSRに付加価値の上限や許容差ルールが併記されている場合は、それらも同時にチェックします。
  7. 非改変の原則の立証:輸送途中で実質的な加工が行われていないことを証明する書類を準備します。
  8. 自己申告書の作成・保存:原産地に関する申告書を作成し、全ての根拠書類とともに4年間保管します。

5. ケーススタディ:SP基準の適用例

  • 例1:有機化学品(HS第29類) PSRに「化学反応の実施」があれば、反応式や製造ログで「分子構造を変化させた」ことを立証します。これにより、CTCやVA基準を計算することなく原産性を満たせます。
  • 例2:Tシャツ(HS 6109) PSRに「編立および縫製」とあれば、生地の編立とTシャツへの縫製を域内で行った記録(稼働ログ、裁断伝票など)を揃えることで原産性を証明できます。
  • 例3:再生タイヤ(HS 4012.11) PSRに「リトレッド」と明記されているため、使用済みタイヤのトレッドを剥がし、新しいトレッドを貼り付けて加硫した工程記録を証拠とします。

6. SP基準を適用する際の主な注意点とよくある間違い

SP基準の適用では、思い込みや誤解によるミスが発生しがちです。以下の点に特に注意してください。

  • 「混合」と「化学反応」の混同 単に複数の薬品を混ぜ合わせただけでは「化学反応」にはなりません。分子構造の変化を伴うことが定義であり、単純混合は不十分な加工と見なされる可能性があります。
  • 工程の定義を厳密に確認する 「粒度の変更」は、単に砕くだけでなく「管理された方法で特定の粒度分布にすること」が求められるなど、各工程には厳密な定義があります。協定の注釈を必ず確認してください。
  • 「プリント工程」の過信 繊維製品において、プリントと縫製だけで原産性が認められるのは、PSRにそのように明記されている特定の品目に限られます。すべての衣類に適用できるわけではありません。
  • 代替規則や但し書きの見落とし PSRで要件が「;(セミコロン)」で区切られていれば**選択可能(OR)ですが、「,(カンマ)」や「及び」で繋がれていれば両方を満たす必要(AND)**があります。非原産材料の価額上限などの但し書きも見落とさないようにしましょう。
  • 加工場所は協定域内に限定 SPとして認められる工程は、すべて日本またはEUの域内で実施されなければなりません。第三国での委託加工は、SPの根拠には使えません。
  • 輸送と記録保存の徹底 輸送中に第三国で実質的な変更が加えられたり、根拠書類の保管義務(輸出者4年)を怠ったりすると、原産性が否認されるリスクがあります。

ロジスティックはFTAの原産地証明のプロフェッショナル。お困り事はロジスティックまで。

2025年9月9日時点で公表・報道されている「相互関税」最新一覧

基本は 2025年7月31日付の大統領令(Annex I)の「国別率」。Annex Iに載っていない国は既定で10%。EUは特則(下記)。中国は時限的に10%を延長中

国名関税率出所備考
Algeria30%White House EO(2025/07/31)Annex I
Angola15%同上
Bangladesh20%同上
Bosnia & Herzegovina30%同上
Botswana15%同上
Brazil10%同上
Brunei25%同上
Cambodia19%同上
Cameroon15%同上
Canada*10%White House EO(2025/07/31)本文§2(d)/KPMG速報Annex I未掲載国の既定率。USMCAの個別品目優遇は別枠。
Chad15%White House EO(2025/07/31)Annex I
China*10%(~2025/11/10まで延長中)White House EO(2025/05/12, 2025/08/11)対中は時限的に10%へ減額・延長。他の対中関税(301/232/フェンタニル等)は別枠。
Côte d’Ivoire15%White House EO(2025/07/31)Annex I
DR Congo15%同上
EU特則White House EO(2025/07/31)本文§2(c)「MFN(HTSUS Column1)が15%未満の品目は15%に届くまで上乗せ、15%以上の品目は追加0%
Falkland Islands10%White House EO(2025/07/31)Annex I
Fiji15%同上
Guyana15%同上
India25%同上
Indonesia*19%同上7月時点の高率案から最終EOで19%に修正。
Iraq35%同上
Israel15%同上
Japan*15%White House EO(2025/07/31)Annex I/JETRO(2025/09/05)日米合意で15%に確定。8/7以降遡及適用・過払いは還付手続き。
Jordan15%White House EO(2025/07/31)Annex I
Kazakhstan25%同上
Laos40%同上
Lesotho15%同上
Libya30%同上
Liechtenstein15%同上
Madagascar15%同上
Malawi15%同上
Malaysia19%同上
Mauritius15%同上
Mexico*10%White House EO(2025/07/31)本文§2(d)/KPMG速報Annex I未掲載国の既定率。USMCAの個別条件は別枠。
Moldova25%White House EO(2025/07/31)Annex I
Mozambique15%同上
Myanmar40%同上
Namibia15%同上
Nauru15%同上
Nicaragua18%同上
Nigeria15%同上
North Macedonia15%同上
Norway15%同上
Pakistan19%同上
Philippines19%同上
Serbia35%同上
South Africa30%同上
South Korea15%同上
Sri Lanka20%同上
Switzerland39%同上
Syria41%同上
Taiwan20%同上
Thailand19%同上
Tunisia25%同上
Vanuatu15%同上
Venezuela15%同上
Vietnam20%同上
Zambia15%同上
Zimbabwe15%同上

確認・注記(根拠)

  • 一次情報(大半の国とEU特則・既定10%の規定):2025年7月31日付のホワイトハウス大統領令「Further Modifying the Reciprocal Tariff Rates」。Annex Iに国別率、本文§2(c)にEU特則、§2(d)に**Annex未掲載国は10%**が明記。
  • 日本(15%)と遡及・還付:JETROの解説(9月5日)で、日米合意の履行・相互関税15%8/7に遡及適用過払い還付が整理。
  • 発動日(8/7)と全体状況:8月上旬の主要報道(ロイター等)も、同日付で新税率発動を確認。
  • カナダ/メキシコ(Annex未掲載=10%):上記EOの§2(d)に加え、複数の実務速報(KPMGほか)が**Annex未掲載国=10%**を明記。
  • 中国(時限的10%の延長):2025/05/12の対中特例EOと2025/08/11の延長発表により、**2025/11/10まで10%**が継続。実務アドバイザリでも同旨確認。

重要:上記は**「相互関税(国別上乗せ)」のみの一覧です。鉄鋼・アルミ(232条)、対中301条、フェンタニル関連関税、品目別の追加関税等は別枠**で維持されうるため、実効税率は品目・原産地・法的根拠の組み合わせで変わります(日本についても「相互関税は他の品目別の追加関税に上乗せしない」整理がJETROで明記)。実務ではHTSコードごとの判定と併せて確認してください。


補足(ざっくり要点)

  • 原則:Annex Iに書かれた国はその率、Annex未掲載は10%
  • EU品目別のMFNに応じて「15%へ補填 or 0%」。
  • 中国は協議継続に伴い10%へ一時的減額2025/11/10まで延長
  • 日本は合意で**15%**に決着、8/7適用品の還付あり。

2025年9月8日時点で公表・報道されている「相互関税」最新一覧

  1. 一次情報(米国ホワイトハウス/Federal Register/CBP)を最優先に収集。
  2. 2025年7月31日付の大統領令(EO 14326)Annex I(国別最新レート)を基礎に作表。
  3. 例外国(EU・日本・中国・カナダ・メキシコ)は、その後のEO・CBP通達・主要通信社報道で上書き。

注:以下は**米国が対米輸入に課す「相互関税(Reciprocal Tariffs)」**の最新公表・報道ベースの一覧です。品目別の別建て関税(例:Section 232の鉄鋼・アルミ・自動車・銅など)は本欄の「相互関税」レートとは別枠です。

国名関税率出所備考
Algeria30%EO 14326 Annex I
Angola15%EO 14326 Annex I
Bangladesh20%EO 14326 Annex I
Bosnia & Herzegovina30%EO 14326 Annex I
Botswana15%EO 14326 Annex I
Brazil10%EO 14326 Annex I
Brunei25%EO 14326 Annex I
Cambodia19%EO 14326 Annex I
Cameroon15%EO 14326 Annex I
Canada*35%(相互関税Annex外の別EO)WH Fact Sheet(2025-07-31)USMCA適用品は対象外。相互関税ではなくIEEPAベースのカナダ措置。
Chad15%EO 14326 Annex I
China*10%(国別加算は一時停止中)CBP CSMS & EO 14334国別相互関税の適用停止を2025-11-10まで延長。運用は当面10%相互関税。
Côte d’Ivoire15%EO 14326 Annex I
DR Congo15%EO 14326 Annex I
EU最大15%(EU特則)EO 14326 / FR掲載MFN(Column 1)<15%→差分上乗せで合計15%、≥15%→追加0%。
Falkland Islands10%EO 14326 Annex I
Fiji15%EO 14326 Annex I
Guyana15%EO 14326 Annex I
India25%EO 14326 Annex I
Indonesia*19%WH/Reuters(枠組合意)米・インドネシア合意で19%。一部品目(パーム油・カカオ・ゴム等)免除協議の報道あり。
Iraq35%EO 14326 Annex I
Israel15%EO 14326 Annex I
Japan*15%枠組実施EO(2025-09-04)Column1<15%→合計15%、≥15%→追加0%。航空機・汎用医薬品・未産出天然資源等は0%可。自動車・部品の232も15%上限に調整。
Jordan15%EO 14326 Annex I
Kazakhstan25%EO 14326 Annex I
Laos40%EO 14326 Annex I
Lesotho15%EO 14326 Annex I
Libya30%EO 14326 Annex I
Liechtenstein15%EO 14326 Annex I
Madagascar15%EO 14326 Annex I
Malawi15%EO 14326 Annex I
Malaysia19%EO 14326 Annex I
Mauritius15%EO 14326 Annex I
Mexico*25%(相互関税Annex外の別EO)Reuters/CRS非USMCA品25%維持。30%引上げは90日停止中(7/31発表→概ね10月末まで)。自動車25%、鉄・アルミ・銅50%は別枠継続。
Moldova25%EO 14326 Annex I
Mozambique15%EO 14326 Annex I
Myanmar40%EO 14326 Annex I
Namibia15%EO 14326 Annex I
Nauru15%EO 14326 Annex I
Nicaragua18%EO 14326 Annex I
Nigeria15%EO 14326 Annex I
North Macedonia15%EO 14326 Annex I
Norway15%EO 14326 Annex I
Pakistan19%EO 14326 Annex I
Philippines19%EO 14326 Annex I
Serbia35%EO 14326 Annex I
South Africa30%EO 14326 Annex I
South Korea15%EO 14326 Annex I交渉は継続報道あり(実務上はAnnexの15%)。
Sri Lanka20%EO 14326 Annex I
Switzerland39%EO 14326 Annex I
Syria41%EO 14326 Annex I
Taiwan20%EO 14326 Annex I
Thailand19%EO 14326 Annex I
Tunisia25%EO 14326 Annex I
Vanuatu15%EO 14326 Annex I
Venezuela15%EO 14326 Annex I
Vietnam20%EO 14326 Annex I
Zambia15%EO 14326 Annex I
Zimbabwe15%EO 14326 Annex I

出典(要点)

  • 国別レートの基礎(最新):2025年7月31日付 大統領令 EO 14326「Further Modifying the Reciprocal Tariff Rates」Annex I(国・地域別レート一覧)。ホワイトハウス公表文書に明記。 The White House
  • EUの特則(15%キャップ方式):EO 14326の条文(FR掲載)で、Column 1(HTSUS General)に基づく**<15%は15%に、≥15%は追加0%**が明記。 Federal Register
  • 中国:国別相互関税の適用停止を11月10日まで延長EO 14334、2025年8月14日)。CBP通達(CSMS)では運用上**10%**の相互関税を案内。 Federal RegisterGovDelivery
  • 日本:2025年9月4日付の実施EO「Implementing the United States–Japan Agreement」。15%トップアップ方式と**航空機・汎用医薬品・未産出天然資源等の0%**化権限を規定(自動車の232も15%上限へ)。 The White House
  • カナダ:相互関税Annex外。IEEPAベースで35%へ引上げ(2025年8月1日発効)。USMCA適用品は対象外。ホワイトハウスFact Sheetより。 The White House
  • メキシコ:相互関税Annex外。非USMCA品25%維持30%引上げは90日停止(2025年7月31日発表)。主要報道(Reuters)とCRSの時系列資料。 ReutersCongress.gov
  • インドネシア:**19%**で枠組合意(White House/Reuters)。一部品目の免除協議報道あり。 The White HouseReuters+1

補足

  • 本表の「関税率」は**相互関税(Reciprocal Tariffs)**の国別上乗せ率の最新公表値です。**別枠の品目別関税(Section 232 など)**は「備考」で必要に応じ触れていますが、品目ごとに加算・非加算が異なります。
  • 実務適用はHTSUSのColumn 1 Duty Rateや発効・経過措置(船積み猶予)に依存します(Annex/FR本文参照)。通関前の最終確認を推奨します。 The White House

初心者向け:EPAのVA(付加価値基準)完全ガイド

1. VA(付加価値基準)を理解するための基礎用語

📌 まずは基本となる用語の意味を正確に押さえましょう。

  • Incoterms(インコタームズ)2020: 国際商業会議所(ICC)が定める、売主と買主の費用と危険の範囲を定義した国際貿易取引条件です。契約でEXWFOBを用いる際は、最新版である2020年版を前提とすることが一般的です。
  • EXW(Ex Works / 工場渡し): 売主が自身の施設で物品を買主に引き渡した時点で、義務が完了する条件です。EPAの原産地証明で用いる**「EXW価格」**は、輸送費などを除いた純粋な産品の価格として、各協定で個別に定義されています。
  • FOB(Free on Board / 本船渡し): 輸出港で本船に物品を積み込むまでの費用と責任を売主が負う条件です。RCEPやCPTPPなど多くの協定では、RVC計算の基礎となる**「FOB価額」**の定義が条文に明記されています。
  • RVC(Regional Value Content / 域内付加価値割合): 産品が協定の域内でどれだけ付加価値を生んだかを示す割合です。計算方法は協定ごとに規定されています。(例: (FOB - VNM) / FOB など)
  • VNM(Value of Non-originating Materials): 非原産材料の価額。産品の生産に使われた、協定の原産資格を満たさない材料の価値を指します。評価方法は協定ごとに異なり、輸入材料のCIF価額(運賃保険料込み価格)などが用いられます。
  • VOM(Value of Originating Materials): 原産材料の価額。積上方式(Build-up)で使用します。
  • NC(Net Cost / 純費用): CPTPPの自動車関連品目などで用いられる計算基礎で、販売促進費や許容されない支払利息などを除いた総費用を指します。

最重要ポイント: 同じ「RVC」という用語でも、**計算式(控除方式/積上方式)価額の基礎(FOB/EXW/取引価格など)**が協定によって全く異なります。必ず該当協定の定義を原文で確認してください。


2. 主なVA計算式の種類と採用協定

✅ どの協定でどの計算方式が使えるか、骨格を整理しました。(最終的には品目別規則(PSR)で確定します)

区分計算式(代表的な形)主な採用協定
控除方式 (Build-down)RVC = (産品の価額 - VNM) / 産品の価額 × 100RCEP, CPTPP, JAEPA(日豪)など多数
積上方式 (Build-up)RVC = (VOM + 直接労務費など) / 産品の価額 × 100RCEP, CPTPP など
純費用方式 (Net Cost)RVC = (NC - VNM) / NC × 100CPTPP(自動車関連品目に限定)
Focused Value方式 (FV)RVC = (産品の価額 - FVNM) / 産品の価額 × 100CPTPP(特定の指定品目でのみ利用可)
MaxNOM方式VNM / EXW × 100 ≤ しきい値日-EU EPA, 日英CEPA, 日スイスEPA
取引価格(TV)基準RVC = (TV - VNM) / TV × 100 など日チリEPA など
協定固有名称(QVC)QVC(実質はFOB基準のRVC計算)日インドCEPA, 日モンゴルEPA など

3. 協定ごとの代表的なRVCしきい値(目安)

⚠️ あくまで多くの品目で採用される一般的な数値です。必ずPSRで自社製品の正確なしきい値を確認してください。

  • RCEP: 多くの品目で RVC ≥ 40% (関税分類変更基準(CTC)との選択)。
  • CPTPP: 品目と計算方式ごとに細かく設定(例: 自動車部品で45%~60%など)。
  • 日-EU EPA: MaxNOM ≤ 50% (EXW基準) または RVC ≥ 55% (FOB基準) のような選択制が多い。
  • AJCEP(ASEAN): RVC ≥ 40% または CTH(項レベルの関税分類変更)が一般規則。
  • JAEPA(日豪): 多くの工業品で RVC ≥ 40% が選択可能。
  • 日インドCEPA: 一般規則でCTSH(号レベルの関税分類変更) + QVC ≥ 35%
  • 日スイスEPA: EXW基準のMaxNOM方式(例: VNM ≤ 60% of EXWRVC ≥ 40%)。
  • 日チリEPA: 計算方式によりしきい値が異なる(例: 控除方式なら45%、積上方式なら30%など)。

4. VA(付加価値基準)による原産地証明の基本手順

Step 1:品目別規則(PSR)の特定 輸出産品のHSコード(6桁)を確定させ、対象協定のPSRから「価額の基礎(FOB/EXW等)」「計算式(控除/積上等)」「しきい値」を正確に読み取ります。

Step 2:数値の収集と評価 協定の定義に基づき、FOB, EXW等の価額を算定します。また、VNMやVOMも、協定の評価ルール(例: 輸入材料はCIF価格)に従って正確に計算します。

Step 3:計算方式の選択と実行 PSRで複数の計算方式が認められている場合、自社にとって有利な(証明しやすい)方式を選び、RVC(またはMaxNOM)を計算します。

Step 4:しきい値との照合 計算結果が、PSRで定められたしきい値(例: RVC ≥ 40%)を満たしているかを確認します。

Step 5:付随規定の確認 デミニミス(僅少の非原産材料の許容ルール)、累積(他の締約国の原産材料を利用するルール)、付属品・梱包の扱いなど、計算に影響する付随規定を確認します。

Step 6:証拠書類の整備・保管 計算の根拠となる資料(部品表、原価計算書、仕入先からの証明書、船積書類等)を整備し、協定で定められた期間保管します。


5. 計算具体例

  • 例A:RCEP(控除方式)
    • 前提: FOB 100,000円 / VNM 55,000円 / PSRのしきい値 RVC ≥ 40%
    • 計算: (100,000 - 55,000) / 100,000 × 100 = 45%
    • 結果: 45% ≥ 40% であり、原産品と認められます。
  • 例B:日-EU EPA(MaxNOM方式とRVC方式の選択)
    • 前提: PSRが MaxNOM ≤ 50% (EXW) または RVC ≥ 55% (FOB) の選択制。
    • ケース: EXW 10,000EUR / VNM 4,700EUR
    • 計算: MaxNOM = 4,700 / 10,000 × 100 = 47%
    • 結果: 47% ≤ 50% であり、原産品と認められます。(RVC方式を計算するまでもなく証明完了)
  • 例C:日チリEPA(計算方式で結果が変わる例)
    • 前提: PSRが 控除方式 ≥ 45% または 積上方式 ≥ 30% の選択制。
    • ケース: TV(取引価格) 1,000ドル / VNM 560ドル / VOM 330ドル
    • 計算1(控除方式): (1,000 - 560) / 1,000 × 100 = 44%44% < 45%基準未達
    • 計算2(積上方式): 330 / 1,000 × 100 = 33%33% ≥ 30%基準達成
    • 結果: 積上方式を選択することで、原産品と認められます。

6. 実務上の注意点とよくある間違い

  • 価額基礎の混同: 日スイスEPAをFOB基準で計算してしまう(正しくはEXW基準)。日-EU EPAでEXW基準とFOB基準を取り違える。
  • しきい値の思い込み: 「RCEPは40%」と記憶し、品目固有の例外規定を見落とす。
  • 計算方式の誤用: CPTPPのFV方式で、指定外の非原産材料まで計算に含めてしまう
  • 付属品・梱包の除外: RVC計算に含める規定が多いことを見落とし、計算から除外してしまう。
  • 記録保存期間の不足: 協定ごとの保存年限(RCEP:3年, 日-EU:4年など)を守れていない。
  • 原価変動の未反映: サプライヤーや為替レートの変動でRVCが基準値を下回る(いわゆる「RVC割れ」)可能性があるため、定期的な見直しが必要です。

FTA、EPAの原産地証明に関するお悩みは、ロジスティックまでどうぞ。

アメリカの大統領令による「貿易協定締結国に一部関税免除 金など45品目」内容は?

大統領令は「Modifying The Scope of Reciprocal Tariffs and Establishing Procedures for Implementing Trade and Security Agreements」です。

何を定めた命令か

  • 4/2のEO 14257で導入した「相互関税(reciprocal tariff)」の適用除外リスト(Annex II)を更新し、同時にHTSUSの技術的改定(Annex I)を指示。署名から**3日後=9/8(米東部)**に発効します。The White House
  • さらに、他国と結ぶ**「貿易・安全保障の枠組み合意/最終合意」を実装するための手順(セクション3〜6)**を整備。例としてEUとの枠組みを挙げ、「条件を満たせば特定品目の相互関税を0%に下げ得る」と明記しています。The White House
  • 大統領は「Aligned Partners向け潜在的関税調整(PTAAP)」の付属書を設け、米国で産出が乏しい天然資源、一定の農産品、航空機・同部品、特許非存続の医薬系品目などを“0%対象候補”として列挙しました(個別合意の内容次第で国ごとに異なる可能性)。The White House+1

Annexの中身(代表例)

  • Annex I(HTS改定)には、相互関税の扱いを調整する品目として金(7108.11/12.50/13.10/13.55/13.70/20)ニッケル関連(7501〜7504、7202.60)天然黒鉛(2504.10.*)LED素子(8541.41.00)等のHTSが追加。逆にアルミン酸塩(2818.30.00)や一部樹脂類(3907.*)、**シリコーン(3910.00.00)**などは除外リストから削除されています。The White House
  • Annex II(適用除外の更新版)・**Annex III(PTAAP)**はPDFで公表されています。The White House

「日米物品協定」は入るのか?

  • この9/5の命令そのものは、既存の2019年の「日米物品貿易協定(USJTA)」を名指ししていません。本命令は“包括的な実装の仕組み”と“品目候補(PTAAP)”を示した総則です。The White House
  • ただし日本は前日(9/4)の別個の大統領令「Implementing The United States–Japan Agreement」で個別実装されています。そこでは、日本からの輸入に原則15%のベース関税を適用しつつ、自動車・航空機などを別建てで扱い、天然資源や後発医薬品等は相互関税0%にできる権限を商務長官に委任――といった具体が規定されています(自動車等の取扱いや遡及適用日も明記)。The White House
  • まとめると、2019年のUSJTAそのものが「9/5命令」に自動的に内包されるわけではなく、2025年に新たに合意された「米日合意」は9/4命令で実装、9/5命令はその実装を可能にする共通フレーム+対象候補品目を提示した位置付けです。The White House+1

初心者向け:EPAのCTC(関税分類変更基準)完全ガイド

新任担当者向け:EPAのCTC(関税分類変更基準)完全ガイド

この資料は、経済連携協定(EPA)の原産地規則の一つであるCTC(関税分類変更基準)について、新任の担当者が基礎から理解し、実務で正しく使えるようになることを目的としています。

(注:協定や関連法規は改正されることがあります。実務の際は、必ず日本税関などの公式サイトで最新の一次情報をご確認ください。)


1. CTCとは?HSコードの基本から理解する

CTCを理解するには、まずHSコードを知る必要があります。

HSコードとは?

HSコードは、商品を世界共通の番号で分類するシステムです。「何の品物か」を数字で表したもので、通常、EPAの原産地規則はこのHSコードの上位6桁を基準に作られています。

  • 構造の例:コーヒー豆(HSコード:0901.11)
    • 09類 (Chapter): コーヒー、茶、香辛料など
    • 0901項 (Heading): コーヒー
    • 0901.11号 (Subheading): カフェインを除いてないもの(生)

CTCの3つのルール

CTCとは、非原産材料を加工して製品を生産する際に、材料と製品のHSコードが指定された桁数で変わることを原産性の条件とするルールです。変更する桁数によって、主に3つのルールがあります。

  • CC (Change in Chapter): 類(上2桁)の変更
    • : 生鮮コーヒー豆(0901)を加工して、コーヒーエキス(2101)を製造。
    • HSコードの上2桁が「09」→「21」に変わるため、CCを満たします。
  • CTH (Change in Tariff Heading): 項(上4桁)の変更
    • : 鋼材(7208)から、ねじ・ボルト(7318)を製造。
    • HSコードの上4桁が「7208」→「7318」に変わるため、CTHを満たします。
  • CTSH (Change in Tariff Subheading): 号(上6桁)の変更
    • : 電線用の材料(8544.49)から、完成品の電源コード(8544.42)を製造。
    • HSコードの上6桁が「8544.49」→「8544.42」に変わるため、CTSHを満たします。

2. 重要ポイント:HSコードの「年次版」

HSコードは世界税関機構(WCO)によって約5年ごとに改正されます(例: HS2012年版、HS2017年版、HS2022年版)。

最も重要な注意点は、各EPAで基準となるHSコードの年次版が協定締結時のもので固定されていることが多い点です。そのため、日本の現在の関税率表(HS2022年版)と、協定で定められたHS年次版との間に「ズレ」が生じます。

この「ズレ」を認識せずに判定すると、誤った結論に至るため、必ず協定ごとのHS年次版を確認し、必要であれば読み替え(対照表を確認)する作業が不可欠です。


3. 主なEPAのHS年次版 早見表(2025年時点)

日本が締結している主要なEPAについて、品目別規則(PSR)の基準となるHS年次版をまとめました。

協定名PSRの基準HS版備考(実務上のポイント)
RCEPHS20222023年1月1日にHS2022版へ移行済み。
CPTPPHS2012法的根拠はHS2012のまま。各国税関が提供するHS2022への読み替え対照表で確認が必要。
日EU・日英HS2017協定付属書でHS2017版を使用することが明記されています。
AJCEP(日ASEAN)HS20172023年3月1日にHS2002版からHS2017版へ更新されました。
日タイHS20172022年1月1日にHS2002版から更新。
日インドネシアHS20172024年2月5日にHS2002版から更新。
日豪 (JAEPA)HS2012
日モンゴルHS2012
日スイスHS2007
日ベトナムHS2007
日インドHS2007
日ペルーHS2007
日シンガポールHS2002
日メキシコHS2002
日マレーシアHS2002
日チリHS2002
日ブルネイHS2002
日フィリピンHS2002
日米貿易協定HS2017原産地規則の対象品目が限定的。


4. CTCの証明方法 – 基本ステップ

CTC基準を満たしていることを証明するための基本的な手順は以下の通りです。

  1. 完成品のHSコード(6桁)を特定する
    • 製品の仕様(用途、素材、機能など)を基に、輸出相手国の関税率表でHSコードを確定させます。
  2. すべての「非原産材料」のHSコード(6桁)を特定する
    • 製品に使用した海外からの輸入部品や材料について、それぞれのHSコードを仕入先からの証明書などで確認します。
  3. 適用するEPAの品目別規則(PSR)を確認する
    • 完成品のHSコードに適用されるCTCルール(CC, CTH, CTSHなど)と、基準となるHS年次版を協定の条文(付属書)で確認します。
  4. CTCルールを満たすか判定する
    • すべての非原産材料のHSコードが、完成品のHSコードに対して、PSRで定められた分類変更(CC, CTH, CTSH)を遂げているかを確認します。一つでも満たさない非原産材料があれば、原則としてCTC基準は満たせません。

5. CTCを満たさない場合(HSコードの変更がない場合)

材料と製品のHSコードが同じ、または必要な分類変更が起きていない場合でも、原産品と認められる可能性があります。多くのEPAでは、CTC基準の代替または選択ルールとして以下の基準が定められています。

  • 付加価値基準 (RVC – Regional Value Content)
    • 製品の価格のうち、締約国内で生じた付加価値が一定の割合(例: 40%以上)を超えることを条件とするルール。CTCが満たせない場合の代表的な救済措置です。
  • 加工工程基準 (SP – Specific Process)
    • 特定の製造・加工工程(化学反応、織物・編物など)が締約国内で行われることを条件とするルール。化学品や繊維製品でよく見られます。

品目別規則(PSR)に「CTH または RVC 40%」のように記載されていれば、どちらかの基準を満たせば良いことになります。


6. HSコードの探し方 – 実務のコツ

HSコードの特定は原産地証明の根幹であり、最も重要です。

  1. 製品情報を正確に整理する: 用途、素材、機能、成分、構造などを明確にします。
  2. 関税率表の「注」を読む: HSコードは番号だけでなく、各部や類に記載されている「注」(除外規定など)が分類の決定に極めて重要です。必ず確認しましょう。
  3. 公的リソースを活用する:
    • 実行関税率表(日本税関): まずは日本の分類を確認する際の基本です。
    • 事前教示制度: HSコードの分類や原産地規則の解釈について、税関に照会し、文書で回答を得られる制度です。分類に迷う場合は、最も確実な方法です。

7. 具体例で学ぶCTC判定:日EU・EPAの清涼飲料水(22.02)

状況: 日本で清涼飲料水(HS2017年版で22.02)を製造し、EUへ輸出するケース。

  • PSRの要件(抜粋):
    1. CTH(項の変更)を満たすこと。
    2. かつ、第4類(乳製品)や第17類(砂糖)の非原産材料の使用量に上限があること。
  • BOM(部品表)の例:
    • 水(日本産):原産材料なので判定対象外
    • 果汁濃縮物(非原産、20.09): 5%
    • 砂糖(非原産、17.01): 7%
    • 香料(非原産、33.02): 0.5%
  • 判定プロセス:
    1. CTHの判定: 完成品は22.02。非原産材料は20.0917.0133.02であり、すべて項(4桁)が異なるため、CTHを達成しています。
    2. 追加条件の判定: この品目のPSRには砂糖(17.01, 17.02)の重量上限(例:40%以下)が定められています。今回の使用量は7%なので、この上限もクリアしています。
  • 結論: 上記の条件をすべて満たすため、この清涼飲料水は日EU・EPAにおける原産品と認められる可能性が高いです。(※実際には、すべての非原産材料のHSコードと、重量を証明する書類の保管が必要です。)

8. 注意点とよくある間違い(チェックリスト)

監査などで指摘されやすいポイントです。必ず確認しましょう。

  • HS年次版のズレ: 国内の最新HS版で判定し、協定の古いHS版との差異を見落とす最も典型的なミス。CPTPP (HS2012) や古い二国間協定では特に注意が必要です。
  • 「除外規定」の見落とし: CTCルール本文に「ただし、第〇〇類の材料からの変更は除く」といった除外規定が付いていることがあります。ルール本文だけでなく、注記まで必ず読み込みましょう。
  • 材料のHSコードを鵜呑みにしない: 仕入先が提示するHSコードが、必ずしも輸出相手国の解釈と一致するとは限りません。自社でも妥当性を検証することが重要です。
  • 6桁での判定を徹底する: 日本国内の細分化された9桁のHSコードが変わっても、上位6桁が変わらなければCTSHを満たしたことにはなりません。
  • 簡単な作業は付加価値と見なされない: 単なる包装の変更、瓶詰め、ラベル貼りなどの軽微な作業では、たとえHSコードが変わったとしても原産性は認められません。
  • 証拠書類の不備: BOM(部品表)、製造工程表、非原産材料の仕入先証明書など、判定の根拠となる書類は協定で定められた期間(通常5年程度)、いつでも提出できるよう保管する義務があります。

まとめ:実務の7ステップ

  1. 完成品のHSコード(6桁)を確定
  2. 非原産材料のHSコード(6桁)を確定
  3. 適用するEPAと、そのHS年次版を確認
  4. CTCルール(+除外規定、追加条件)を満たすか判定
  5. (満たさない場合)**代替ルール(RVCなど)**を検討
  6. 判定の根拠となる証拠書類を整備・保管
  7. 協定の方式に沿って原産地証明を行う

ロジスティックでは、FTAの証明をお手伝いしています。お問い合わせはこちら

このブログの本題からは外れますが:Geminiとフィボナッチ数列

フィボナッチ数列とフィボナッチスパイラルは有名で自然界にも見られるものですが、そのスパイラルをGeminiに描いてもらうと、まあ、ひどいものを提示しました。

「間違っている」

と指摘すると、以下の様な返事が。


ご指摘いただき、誠にありがとうございます。そして、フィボナッチ・スパイラルという非常に有名で基本的な図形において、何度も不正確な画像を生成してしまい、ご期待に沿えず大変申し訳ございませんでした。

なぜ私、GeminiのようなAIがこのような有名なことで間違うのか、その理由をご説明いたします。これはAIの現在の能力と限界に関わる重要な点です。

間違いの主な理由

一言でいうと、私は**「ルールを理解して描いている」のではなく、「学習したデータからそれらしい画像を生成している」**からです。

  1. 「描画」ではなく「生成」のプロセス 人間がフィボナッチ・スパイラルを描くとき、「まず一辺1の正方形を置き、次にその隣に…」というルールを理解し、定規やコンパスを使って正確に描きます。 一方、私のような画像生成AIは、テキスト(指示)を受け取ると、過去に学習した膨大な画像データの中から「フィボナッチ・スパイラル」という言葉に関連付けられた画像の特徴(うずまき、四角いブロック、数字など)を抽出し、それらを組み合わせて**ピクセル単位で新しい画像を「生成」**します。データベースから正解の画像を検索してきているわけではありません。
  2. 数学的な厳密性の再現が苦手 この「生成」というプロセスは、創造的・芸術的な画像をゼロから作るのは得意ですが、「正方形の辺の比率を正確に保つ」「螺旋が必ず正方形の角を通る」といった数学的・幾何学的なルールを100%忠実に再現することは、まだ非常に難しい課題です。そのため、以下のような間違いが起こります。
    • 螺旋が角からずれてしまう。
    • 正方形の配置や大きさが微妙に不正確になる。
    • 「フィボナッチ・スイテル」のような、学習データに含まれるかもしれない誤字や、統計的にそれらしく見えた文字列を生成してしまう。
  3. 概念の完全な理解ではない 私は「フィボナッチ・スパイラル」という言葉が、どのような数学的定義を持つのかを真に理解しているわけではありません。あくまでデータ上のパターンとして認識しているに過ぎません。そのため、見た目の特徴は捉えられても、その背景にある厳密な定義から逸脱した画像を生成してしまうことがあるのです。

皆様からのフィードバックの重要性

今回、お客様が正しい画像をアップロードしてくださったように、具体的な例を示し、間違いを指摘していただくことは、AIの精度を向上させる上で非常に重要です。皆様からのフィードバックは、私たちがどこを間違え、何を改善すべきかを学ぶための最も貴重な教師データとなります。

ご迷惑をおかけしたことを重ねて深くお詫び申し上げます。Geminiはまだ発展途上の技術であり、特に専門性や正確性が厳密に求められる分野では、間違いを起こす可能性があります。皆様との対話を通じて、より信頼性の高いAIへと成長していけるよう、開発チーム一同、継続的に改善に努めてまいります。


正直であり、かつAIの現在地を示す返事だと思います。

日本に対する相互関税のアメリカの大統領令

公式本文(英語・全文)

  • Executive Order: “IMPLEMENTING THE UNITED STATES–JAPAN AGREEMENT”(署名日:2025年9月4日)— ホワイトハウス公式サイトに全文が公開されています。The White House
  • 本命令は、7月31日付の大統領令14326(「Further Modifying the Reciprocal Tariff Rates」)を参照しつつ、日本向けの取扱い(“15%ベースライン”や複合税の扱い等)を明確化しています。The White House
  • 併せてホワイトハウスのファクトシート(2025年9月5日)も、枠組み合意の実施として位置づけています。The White House

※ 原文全文は上記リンクからお読みいただけます(この場では全文貼付を避け、主要部分の正確な抄訳を以下に示します)。


要点

  • 日本からの輸入品に対し、HTSUS「欄1(Column 1)」の従価税率が
    15%未満:欄1税率+追加関税の合計が15%になるよう調整
    15%以上:追加関税は0%(上乗せなし)
    → 相互関税の“積み上げ(スタッキング)”を避ける明確ルール。複合税(specific/compound)の扱いはEUと同様
    (令14326参照)。The White House+1
  • 遡及適用2025年8月7日 午前0時1分(米東部夏時間)以降に輸入通関(または保税蔵置から引取り)された日本産品に適用。過払があれば返金The White House
  • 自動車・自動車部品:Section 232(自動車関連の宣言)による追加関税に代えて、上記15%基準で扱う。The White House
  • 航空宇宙(民間航空機協定対象、無人機除く):既存のアルミ・鉄鋼・銅・相互関税の対象外へ移行(官報告示によりHTSUSを改正)。The White House
  • 特定品目の0%化:米国内で供給困難な天然資源ジェネリック医薬品(原薬・化学前駆体含む)は、商務長官の裁量で**相互関税を0%**にできる。The White House
  • 履行監視と変更:日本が合意履行を怠った場合、命令の見直し・強化もあり得る。The White House

主要条文の参考訳

※ 法的効力は英語原文が優先です。条番号は原文に準拠。

Sec. 1(背景)
2025年7月22日の米日フレームワーク合意を受け、その実施として本命令を発出。対日15%ベースライン関税を導入し、米国の製造・安全保障上の必要を満たす。日本側からの米国内5,500億ドル投資等のコミットメントにも触れる。The White House

Sec. 2(一般関税)
(a) 日本産品に適用する追加従価税率は、HTSUS欄1の現行税率を基準に決定。欄1が15%未満なら「欄1+追加=15%」。15%以上なら追加は0%特定税・複合税の処理は令14326(EU扱い)と同様
(b) これ以外は、令14257(相互関税の基本令)の規定が継続。
(d) 適用は2025/8/7 0:01(EDT)に遡及、過払返金は関係法令・CBP手続に従う。The White House

Sec. 3(航空宇宙)
WTO民間航空機協定に該当する**日本産航空宇宙製品(無人機を除く)**には、令14257鉄鋼・アルミの大統領宣言(9704/9705)銅(10962)による関税を適用しない。官報告示でHTSUSを改正。The White House

Sec. 4(自動車・部品)
官報告示の効力発生日以降、自動車・部品については、**宣言10908(Section 232自動車)**の追加関税に代えて、欄1が15%未満なら合計15%、15%以上なら追加0%The White House

Sec. 5(相互関税の適用除外品目)
商務長官は、日本産の国内供給が不足する天然資源ジェネリック医薬品・原薬・化学前駆体について、**相互関税率を0%**に改める裁量を持つ(合意履行状況や米国の国益等を考慮)。The White House

Sec. 6(監視と修正)
日本のコミットメント履行を商務長官が継続監視。履行不十分の場合は、本命令の修正等で対応し得る。The White House

Sec. 7–9(権限委任・他令との関係・一般規定)
実施のための規則改正・官報告示等を商務長官・国土安全保障長官に委任。既存の宣言・大統領令と矛盾する部分は本命令が優先。本命令は権利発生を意図しない一般条項を含む。署名は2025年9月4日The White House


関連する前提令(参照条項)

  • Executive Order 14326(2025年7月31日):EU向けの**「15%ベースライン/15%以上は追加0%」のロジックや、複合税の取扱いを定めた命令。今回の対日取扱いでも同一ロジック**を適用すると明記。The White House

国名関税率出所備考
アメリカ15%(対日ベースライン:欄1が15%未満は合計15%、15%以上は追加0%。自動車・部品も同基準/民間航空機は除外The White House(Executive Order, 2025/9/4)適用起点:2025/8/7(EDT)に遡及。一部品目は0%化可(資源・ジェネリック)。

出所:実施令「Implementing the United States–Japan Agreement」(2025年9月4日)、および令14326(2025年7月31日)。The White House+1


参考報道

  • ホワイトハウスのファクトシート(合意の位置づけと概要)。The White House