日墨間におけるCPTPPと日メキシコEPAの使い分けガイド

日墨間で事業を行う上で、包括的及び先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)と日・メキシコ経済連携協定(日メキシコEPA)のどちらを利用すべきか、実務的な判断基準と早見表を解説します。

基本的な使い分け方針

まず品目ごとに、以下の4つの要素を総合的に比較し、より有利な協定を選択することが基本方針となります。

  • 関税率(どちらがより低いか、または早期に撤廃されるか)
  • 原産地規則(PSR)の達成しやすさ
  • 原産地証明手続きのコストと時間
  • サプライチェーン全体でのメリット(特に累積規定の活用)

CPTPPを優先すべきケース

  • ベトナムやカナダといった他のCPTPP加盟国を原産とする材料を多く使用しており、締約国の原産材料や生産工程を自国のものと見なせる完全累積のメリットを最大限に活用したい場合。
  • 手続きの負担を軽減するため、特定の様式が不要な自己申告制度を利用したい場合。この制度では、輸入者、輸出者、または生産者のいずれもが原産地証明書類を作成できます。

日メキシコEPAを優先すべきケース

  • メキシコの輸入者や税関の商慣行上、所定の様式による第三者機関発行の原産地証明書(CO)または認定輸出者による原産地申告が求められる場合。
  • 輸出産品が特恵品目(協定附属書5に掲載)に該当し、認定輸出者であっても第三者機関発行のCOが必須となる場合。
  • (注)2023年9月1日から、日本では電子原産地証明書(e-CO)システムが導入されており、紙媒体での申請に比べると実務的な負担は軽減されています。

5つの比較判断軸

1. 原産地証明の方式

CPTPP日メキシコEPA
証明制度自己申告制度第三者証明制度 または 認定輸出者制度
作成者輸入者、輸出者、生産者日本商工会議所など、または認定輸出者
様式定型様式なし(Annex 3-Bの最小記載事項を満たす必要あり)定型様式あり
特記事項柔軟性が高い特恵品目は第三者証明が必須

2. 累積規定(サプライチェーン設計)

CPTPP日メキシコEPA
規定完全累積二国間累積
内容全てのCPTPP締約国の原産材料や加工工程を自国のものと見なして合算可能。多国間サプライチェーンの構築に有利。日本とメキシコ間でのみ累積が可能。第三国の材料や工程は原則として累積の対象外。

3. デミニミス(僅少の非原産材料)

CPTPP日メキシコEPA
一般品目産品の価額の**10%**以内産品のFOB価額の**10%**以内
繊維製品HS第50類〜第63類は品目ごとに複雑な除外規定あり。適用の可否は慎重な確認が必要。HS第50類〜第63類は、産品の総重量の**10%**以内。

4. 輸送および第三国インボイス

CPTPP日メキシコEPA
輸送非締約国を経由しても、税関の管理下にあるなど輸送要件を満たせば特恵待遇を維持可能。積送基準(Transshipment)があり、同様に非締約国経由が可能。
第三国インボイス非締約国の事業者が発行したインボイス(第三者インボイス)も利用可能。原産地証明書の様式内に、第三者インボイスの情報を記載する欄がある。

5. 少額貨物の免除規定

CPTPP日メキシコEPA
証明書免除の閾値原則として、総額が1,000米ドル相当以下の場合。原則として、総額が1,000米ドル相当以下の場合。

クイック早見表:どちらの協定を選ぶか

典型的なシナリオ推奨協定理由の要点
ベトナム/カナダなどCPTPP域内からの材料を多用CPTPP完全累積により、域内他国の原産材料や加工工程を合算できるため。
メキシコ側がCO原本を要求/社内監査で必要日メキシコEPA第三者機関発行のCOは信頼性が高く、メキシコの商慣行に適しているため。特恵品目はCOが必須。
証明書発行のリードタイムを最小化したいCPTPP自己申告制度のため、証明書発行の待ち時間がなく迅速。
サンプルなど少額・多頻度の出荷両方検討どちらの協定も1,000米ドル相当以下は原則として証明書が免除されるため。
繊維・衣類(PSRの要件が厳しい)個別のPSRを要比較CPTPPは価額基準、日メキシコEPAは重量基準のデミニミス特則があり、どちらが有利か品目ごとに確認が必要。
物流で第三国を経由/第三者インボイスが常態化CPTPP(やや優位)日メキシコEPAはCO様式への記載が必要な一方、CPTPPはより柔軟な書類作成が可能なため。

実務上の確認フロー(5ステップ)

  1. HSコードの確定: 輸出入する産品のHSコード(6桁)を正確に特定します。
  2. 関税率の比較: 両協定における品目ごとの関税率と、その譲許スケジュール(段階的な関税撤廃の年次)を確認します。(※品目や年次によって有利な協定が逆転することがあります)
  3. 原産地規則(PSR)の比較: 部品表(BOM)などに基づき、CPTPP(Annex 3-D)と日メキシコEPA(Annex 4)の品目別規則(関税分類変更基準、付加価値基準、加工工程基準など)のいずれを達成できるか検討します。
  4. 累積・証明方式の決定: サプライチェーンを考慮し、CPTPPの「完全累積」と日メキシコEPAの「二国間累積」のどちらが有利か判断します。また、手続き負担や相手先の要求に応じて証明方式を選択します。
  5. 輸送・書類要件の確認: 第三国経由での輸送や第三者インボイスを利用する場合の根拠規定(CPTPP第3.18条、日メキシコEPA第35条など)を確認し、必要な書類を準備します。

自動車部品の特有の留意点

自動車産業はサプライチェーンが国際的に張り巡らされているため、累積規定の使い勝手が協定選択の重要な決め手となります。

原産地規則(PSR)の比較

自動車部品のPSRは、主に**付加価値基準(RVC)**が用いられます。CPTPPと日メキシコEPAでは、この計算方法や求められる付加価値の割合が異なります。

  • CPTPP: 自動車分野では、他のCPTPP加盟国(例:ベトナム、マレーシア、カナダ)で生産された原産材料や、そこで行われた加工を自国のものと見なせる完全累積が最大のメリットです。これにより、北米やASEANにまたがるサプライチェーンでも原産性を満たしやすくなります。また、協定の附属書には自動車関連品目に特化した詳細な規定があります。
  • 日メキシコEPA二国間累積に限定されるため、日本とメキシコ以外の国で生産された部品は、原則として非原産材料として扱われます。サプライチェーンが両国内で完結している場合は問題ありませんが、第三国が関わる場合はCPTPPより不利になることが多くあります。

実務上の推奨

多くの日系自動車メーカーおよび部品メーカーは、サプライチェーンの柔軟性を重視し、CPTPPを優先的に活用しています。特に、ASEANや北米(カナダ)にも製造拠点を持つ企業にとっては、完全累積のメリットが非常に大きいためです。

日メキシコEPAが選択肢となるのは、サプライチェーンが完全に日墨二国間で完結しており、かつ日メキシコEPAで定められたRVC基準の方がCPTPPよりも達成しやすい、という限定的なケースになります。

繊維製品の特有の留意点

繊維製品は、原産地規則が非常に厳格かつ複雑であり、「どの工程を協定国で行ったか」が問われる加工工程基準が中心となります。

原産地規則(PSR)の比較

一般的に「ヤーンフォワード(Yarn Forward)ルール」と呼ばれる厳しい基準が採用されています。これは、製品に使用される糸の生産(紡績)以降の全ての工程(製織・編立、染色、裁断、縫製)を協定域内で行うことを求めるものです。

  • CPTPP: ヤーンフォワードが基本ですが、大きな例外規定として「供給不足リスト(Short Supply List)」が存在します。このリストに掲載されている特定の繊維や生地は、協定域外(例:中国、台湾、韓国)から調達しても、原産材料として扱うことが認められます。これにより、域内で調達が難しい特殊な素材を使いながらでも特恵関税の適用を目指せます。
  • 日メキシコEPA: こちらも厳格な加工工程基準を採用していますが、CPTPPのような大規模な供給不足リストはありません。そのため、原料の調達先が限定され、PSRをクリアする難易度が高くなる傾向があります。

デ・ミニミス(僅少の非原産材料)の特則

  • CPTPP: 原則として価額ベースで10%のデ・ミニミスが適用されますが、品目ごとに多くの除外・例外規定があり、非常に複雑です。
  • 日メキシコEPA: 繊維製品(HS50〜63類)に対して、**重量基準で10%**という非常に分かりやすく実用的なデ・ミニミス規定があります。例えば、製品全体に占める価額は大きいものの重量は軽い非原産の付属品(レースや特殊なボタンなど)を使用する場合に、この規定が役立つことがあります。

実務上の推奨

繊維製品における協定の選択は、ケースバイケースの判断が強く求められます。

  • 使用したい糸や生地がCPTPPの供給不足リストに掲載されている場合は、CPTPPが圧倒的に有利です。
  • ヤーンフォワードを満たせないものの、非原産材料の使用が製品全体の**重量の10%**に収まる場合は、日メキシコEPAのデ・ミニミス規定を活用できる可能性があります。

最終的には、製品の設計、BOM(部品表)、製造工程を詳細に分析し、両協定の品目別規則を丹念に比較して、どちらが有利かを判断する必要があります。

明日(米国時間 11月5日)に米連邦最高裁が口頭弁論を予定

明日(米国時間 11月5日)に米連邦最高裁が口頭弁論を予定しており、案件は Learning Resources, Inc. v. TrumpTrump v. V.O.S. Selections の2件を併合して審理されます。主要争点は「IEEPA(国際緊急経済権限法)が関税賦課を認めるか」「仮に認めるなら違憲な白紙委任に当たらないか」の2点です。SCOTUSblog


エグゼクティブサマリー

  • 背景:2025年初頭以降の大統領令に基づく一連の「IEEPA関税」(メキシコ・カナダ・中国向けの“Trafficking Tariffs”や全世界一律10%の“Reciprocal Tariffs”等)が争われています。下級審はいずれも違法と判断。控訴審(連邦巡回区控訴裁)も7対4で違法と結論づけましたが、最高裁審理の間は一時的に効力維持の扱いです。cit.uscourts.gov+2cafc.uscourts.gov+2
  • いま:最高裁は迅速審理を許可し、11月5日に口頭弁論。結論次第で、IEEPAの使途(制裁中心か、関税も可か)と大統領の通商裁量の射程が大きく変わります。SCOTUSblog
  • 実務影響
    • (A)違法確定なら、IEEPA関税は無効化へ。もっとも、鉄鋼・アルミの232関税や301関税等の別根拠の関税は対象外で残り得ます。The Washington Post
    • (B)IEEPAで関税OKとなると、大統領が「緊急事態」宣言で広範・即時の関税発動が可能に。価格・契約・在庫政策に高い不確実性。
    • **(C)IEEPA自体が違憲(非委任)**とされると、制裁法体系全体に波及するリスク(もっとも、最高裁は回避的解釈でIEEPAの範囲を狭く読む可能性が高いとの見方も)。Brennan Center for Justice+1

タイムライン(確定事実)

  • 2025/5/28:米国際貿易裁判所(CIT)、IEEPA関税を全面無効・差止(世界一律10%を含む)。cit.uscourts.gov
  • 2025/8/29:連邦巡回区控訴裁(7対4)がCITを支持。同日、**最高裁への上訴準備中は執行停止(mandate保留)**を命令。cafc.uscourts.gov+1
  • 2025/9/9:最高裁が迅速審理を許可・併合11/5に口頭弁論を指定。SCOTUSblog

何が争われているのか(法的論点の整理)

  1. IEEPAの文言解釈
    IEEPA §1702(a)(1)(B) は大統領に「輸入・輸出の規制」等を認めます。下級審は「関税(課税)まで含むとは読めない」と判断。控訴審多数意見も「IEEPAは今回の関税賦課を許容しない」と明確に結論づけました。cit.uscourts.gov+1
  2. IEEPAの発動要件(“異常かつ並外れた脅威”)
    CITは、麻薬・人身取引対策を名目とする“Trafficking Tariffs”の一部についてIEEPAの脅威認定要件を満たさないとも判示。cit.uscourts.gov
  3. 非委任(Nondelegation)/メジャー・クエスチョン論
    最高裁は、仮にIEEPAが関税賦課を許すと読む場合、議会からの白紙委任に当たらないかも審理対象。広範・重大な政策変更には明確な授権を要するという近時の流れ(いわゆるメジャー・クエスチョン)も背景論点です。Supreme Court+1

対象となった大統領令と関税の中身(2025年)

  • “Trafficking Tariffs”:メキシコ・カナダ 25%、中国 当初10%→20%(一部品目軽減・免税枠などの変動あり)。cit.uscourts.gov
  • “Reciprocal(相互主義)Tariffs”全世界に一律10%、加えて**国別上乗せ(最大50%)**を予定——のちに一部実施延期・対中報復調整等の改定。cit.uscourts.gov+1

※ これらの枠組みは**IEEPA(1977年法)**に基づくもので、232条(国家安全保障)や301条(不公正貿易是正)といった他法根拠の関税とは別枠です。The Washington Post


最高裁の結論別:日本企業への実務影響シナリオ

A)IEEPA関税が違法確定(下級審維持)

  • 関税撤廃・徴収停止の方向。CITは判決で差止と命令の無効化に踏み込みました(上訴中は保留措置)。最終的に無効確定なら納付済み関税の還付が論点に。輸入者側のプロテスト手続や時効管理は通関顧問・弁護士と即協議cit.uscourts.gov+1
  • ただし、232/301等の他法根拠の関税は残存し得るため、完全なコスト安には直結しない点に注意。The Washington Post

B)IEEPAで関税賦課が可能(非委任は否定)

  • 大統領が**「緊急事態」宣言→即時・広範囲の関税を発動可能に。価格転嫁・契約調整・在庫最適化など機動的なオペレーション**が必要。
  • 国・品目を横断した一律発動も理論上可能となり、為替・原材料価格と並ぶ政策リスクとして恒常的なモニタリングが不可欠。

C)IEEPAは関税も許すが違憲(非委任)

  • IEEPA自体の委任が広すぎると裁されれば、OFAC制裁等、IEEPA依拠の制裁レジームにも波及しかねない——との懸念が法学者・シンクタンクから指摘されています(もっとも、最高裁は違憲回避的解釈で関税のみを除外する可能性も)。Brennan Center for Justice+1

直ちに着手すべき実務チェックリスト

  1. 関税エクスポージャーの棚卸し:対象HS、仕向国、サプライヤー別にIEEPA関税負担(10%一律+上乗せ)と他法根拠(232/301等)を分けて可視化。cit.uscourts.gov+1
  2. 契約条項の見直し:価格調整・関税スナップバック・不可抗力条項の明確化(短期で上げ下げがあり得る前提)。
  3. 価格・在庫・納期の再設計:判決前後の変動を見越し、段階的プライシング在庫回転の再設計。
  4. 通関・還付オプション:無効確定時の還付請求の要件(証憑・期限)を確認。必要であればプロテスト申立など法的保存策。
  5. 物流ハブと制度活用:米国内FTZ(保税区)やボンデッド倉庫の活用で関税の繰延・回避余地を検討。
  6. 調達地・設計の多様化:国別上乗せの再発に備え、マルチソース設計代替をロードマップ化。
  7. 社内ガバナンス:法務・調達・営業・経理の横断タスクフォース週次レビュー
  8. ステークホルダー・コミュニケーション:重要顧客には価格条項の透明化切替基準を事前共有。
  9. 数値インパクトの即時試算:例)米国向け輸入CIFベース1,000万ドルの場合、10%関税撤廃=100万ドル粗利改善(ただし他関税は別途)。
  10. 政策ウォッチ11/5 口頭弁論の主張・判事の問いかけ(非委任/メジャー・クエスチョン)を中心にモニター。SCOTUSblog

裁判記録・下級審のポイント(実務に効く要旨)

  • CIT(2025/5/28):IEEPAは今回のような包括的・無期限の関税を権限付与していない。世界一律10%や対中・北米向け“Trafficking Tariffs”は無効・差止。一部は**IEEPAの発動要件(脅威の性質)**も満たさない。cit.uscourts.gov
  • 連邦巡回区控訴裁(2025/8/29)7対4でCIT支持。ただし少数意見は「IEEPAの『規制』には関税も含み得る」と反論。最高裁での文理解釈が主戦場。cafc.uscourts.gov
  • 実務注記:政府側の要請でmandate(正式送達)保留のため、最終判断までは現行オペに揺り戻しが生じ得る体制。cafc.uscourts.gov

よくある質問(FAQ)

Q1:判決が出てもすべての追加関税が消えるの?
A:IEEPAベースの関税が対象です。232/301等の他法による関税は本件と別で、残りますThe Washington Post

Q2:日本向けはどうなる?
A:今回の「世界一律10%」は国を問わず適用される設計でした。最高裁がIEEPA関税を容認する場合、日本発製品にも同様の政策リスクが継続します。cit.uscourts.gov

Q3:いつ結論が出る?
A:口頭弁論は11月5日。判決は今期中(OT 2025)に示される見通しです。SCOTUSblog


主要情報源(実務で押さえるべき公的文書・一次情報)

  • 最高裁事件ページ(口頭弁論指定・併合・争点)Trump v. V.O.S. SelectionsLearning Resources, Inc. v. TrumpSCOTUSblog+1
  • CIT判決(2025/5/28、差止・無効):関税はIEEPAの権限外、要件も未充足の部分。cit.uscourts.gov
  • 連邦巡回区控訴裁(2025/8/29)意見書(7対4でCIT支持)とmandate保留命令cafc.uscourts.gov+1
  • 政府側上告申立(Petition):IEEPAの「規制」に関税が含まれるとの主張、非委任論点の提示。Supreme Court
  • シンクタンクの論考(法経済影響・非委任/メジャー・クエスチョン)Brookings+1

補足:今回の審理は「IEEPAの用途」を決定づける可能性

IEEPAはこれまで資産凍結・取引禁止等の制裁で中核的に使われてきました。最高裁が「関税も可」と広く認めれば、通商政策の迅速展開が可能になる一方、企業側には恒常的な政策リスク管理が求められます。逆に狭く解釈すれば、関税は貿易法(232/301等)や議会立法に回帰し、政策の予見可能性は相対的に高まります。Brennan Center for Justice+1


免責:本レポートは一般的情報の提供を目的とし、法的助言ではありません。具体的案件は、米通関・通商法に通じた専門家へご相談ください。

HS2028改正 実践ガイド:計画・影響評価・実行ロードマップ

2028年1月1日に発効が予定されているHS条約の改正(HS2028)は、すべての輸出入者にとって避けては通れない重要課題です。このガイドでは、HS2028改正への準備を円滑に進めるため、「いつまでに、誰が、何をすべきか」を体系的に解説します。

HS2028改正の概要とスケジュール

HS2028改正は、2028年1月1日の発効に向けて以下のスケジュールで進められています。企業の対応計画もこの公式スケジュールに準拠する必要があります。

  • 暫定採択: 2025年4月、世界税関機構(WCO)のHS委員会(HSC)第75回会合にて、改正勧告案が暫定的に採択されました。
  • 正式採択: 2025年12月末にWCO理事会で正式に採択される見込みです。
  • 内容公表: 2026年1月頃に改正内容の詳細が公開される予定です。
  • 発効: 2028年1月1日に全世界で一斉に発効します。

今回の改正には、299セットの改正案や、世界保健機関(WHO)の国際一般名(INN)リストに基づく医薬品441品目の分類見直しなどが含まれており、広範囲な品目が影響を受ける可能性があります。

また、WCOは2025年10月のHSC第76回会合で、現行コード(HS2022)と新コード(HS2028)の相関表(Correlation Tables)の整備を開始しました。この相関表は、コード移行作業における最も重要な参照資料となります。

企業への主な影響範囲

HSコードの変更は、関税率だけでなく、企業のサプライチェーン全体に多岐にわたる影響を及ぼします。

  • コスト・財務: 品目分類の変更により関税率やFTA特恵税率が変動し、関税・消費税などの税負担額が変わる可能性があります。これは見積もりや販売価格、原価計算に直接影響します。
  • 通関・規制: 輸出入申告で参照するHSコードが変わると、他法令(例:化学物質規制、食品衛生法)に基づく許認可や証明書の紐付けを再設計する必要があります。
  • 原産地管理: FTA/EPAの原産地規則(品目別規則:PSR)はHSコードの版に準拠しているため、コード変更に伴い原産資格の再判定や、サプライヤーからの原産性証明の再取得が必要になります。
  • ITシステム: ERP、商品マスター、貿易コンプライアンスシステム(GTM)などの改修が必須です。特に日本では、HS6桁に国内細分(3桁)を加えた9桁の統計品目番号やNACCS用の10桁コードが使用されるため、これらの桁数も考慮したシステム更新が求められます。

対応プロジェクトのロードマップ

フェーズ1:調査・計画(現在〜2026年上半期)

  • プロジェクト体制の構築: 貿易コンプライアンスやサプライチェーン部門を主幹とし、通関、調達、営業、財務、ITなど関連部署を横断する専門チームを設置します。
  • データ棚卸し: 過去24ヶ月分の輸出入実績(品目、現行HSコード、仕向国・原産国、FTA適用有無、関税額)を一覧化し、分析の土台を整えます。
  • 情報収集の開始: WCOや各国税関の公式発表、特にHS2022とHS2028の相関表の公開を継続的に監視します。

フェーズ2:影響評価・分析(2026年下半期〜2027年上半期)

  • 新旧コードの突合: 公表された相関表を基に、自社品目の新旧HSコードの対応関係(1対1、1対多、多対1など)を洗い出します。
  • 優先順位付け: 「取引金額 × 関税率の変動幅」や「FTA依存度」「規制への影響度」などを基に対応の優先順位を決定し、影響の大きい品目から重点的に分析します。
  • 財務影響の試算: 品目や取引先ごとに、関税負担額の増減シナリオをシミュレーションし、価格戦略や収益計画への影響を数値化します。

フェーズ3:導入準備・実行(2027年下半期〜2028年1月)

  • 分類の確定: 分類が難しい境界品目については、日本の事前教示制度や、主要国のBTI(Binding Tariff Information)などを活用して、税関の公式見解を取得します。
  • システム改修: 品目マスターに新旧HSコードを併記する期間を設け、2028年1月1日以降は新コードが自動で適用されるようシステムを改修します。
  • 対外コミュニケーション: 取引先へのHSコード変更通知、価格条件の見直し、サプライヤーへの原産性証明の再依頼などを計画的に進めます。
  • 本番切替とモニタリング: 2028年1月の発効後、申告実績を監査し、誤分類や追加納税などのリスクを早期に検知します。

よくある失敗例と対策

  • 国内細分コードの更新漏れ: HS6桁のみを更新し、日本の9桁/10桁コードの確認を怠ると、申告エラーの原因となります。
  • FTA原産地規則の版ズレ: HSコードの版が変わったことに気づかず、古いPSRに基づいて特恵税率を適用し続け、追徴課税を招くケースです。
  • 影響評価の非効率: 影響度を考慮せずに全品目を一律に対応しようとすると、リソースが分散し、重要な品目の対応が遅れます。
  • 事前教示の未取得: 分類に迷う品目を社内判断のみで処理し、後日、税関との見解の相違から修正申告や追徴に至るリスクです。

米国の相互関税に関するアップデート(2025年11月4日時点)

注記: 本資料で扱う「相互関税」は、米国が2025年に発動した “Reciprocal Tariff”(相互主義に基づく追加関税)を指します。記載されている各国の関税率は、米国への輸入時に既存の関税(MFN税率、232条/301条措置など)に加えて課される、あるいは調整される追加関税率です。


1. 策定の進め方(計画)

  • 範囲定義: 米国の相互関税(Reciprocal Tariff)と、カナダ、メキシコ、中国に適用される別枠のIEEPA関税および一時停止措置を対象とする。
  • 一次ソース: ホワイトハウス(WH)発表の大統領令(EO)・ファクトシート(FS)、連邦官報(Federal Register)の告示、米国税関・国境警備局(CBP)のCSMS通知、およびJETROの対外公表資料。
  • 国別情報の抽出: ユーザー指定順に整理。7月31日の大統領令(Annex I)で税率が明示された国はその値を採用。EU、日本、中国、カナダ、メキシコについては、個別の命令や合意に基づき情報を上書き。
  • 前日差の確認: 11月3日から4日にかけて、連邦官報、CSMS、ホワイトハウスの更新情報を調査。変更点があった場合は「前日差」の欄に明記。
  • 検証: 各数値の根拠となる条文、Annex、告示番号を可能な限り付記し、注記にて実務上の留意点(例:積替えと見なされた迂回輸入には**40%**の追加関税)を併記。

2. 前日(11月3日)からの主な差分

  • 全体: 連邦官報・CSMS共に新規発表はなく、主要な変更はありません。
  • 中国: 11月2日付のホワイトハウス発表によると、2つの主要な変更が予定されています。
    1. フェンタニル関連措置の緩和: 11月10日以降、別枠で課されている「対中フェンタニル関連追加関税」を10%ポイント削減(現行20% → 10%)する予定です。
    2. 相互関税の停止延長: 現在「相互関税の高率部分」に適用されている一時停止措置が、2026年11月10日まで延長されることが案内されました。
      これにより、本日時点での相互関税率(10%)に変更はありません。

3. 相互関税:最新一覧(米国への輸入に対する追加関税)

凡例:

  • EU/日本(15%上限方式): MFN税率(最恵国待遇税率)が15%未満の品目は、合計が15%になるよう差額が追加関税として課されます。MFN税率が15%以上の品目は追加関税0%となります。
  • 中国: 相互関税の高率部分が一時停止されており、2026年11月10日まで一律10%の追加関税が適用されます(8月11日の大統領令で延長)。
  • カナダ/メキシコ(IEEPA関税): 相互関税の適用対象外。代わりに国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく別枠の関税が課されます。カナダは35%(エネルギー関連品目は10%)、メキシコは25%です。
  • 積替え(迂回輸入): 第三国を経由した迂回輸入と認定された場合、原産国に関わらず**40%**の特別関税が適用されます(8月7日発効)。
  • 出所の原則: 下表で特に注記がない国の税率は、7月31日の大統領令 Annex Iに基づきます。
国名関税率(追加)前日差出所備考
Algeria30%なしWH EO Annex I
Angola15%なし同左
Bangladesh20%なし同左
Bosnia & Herzegovina30%なし同左
Botswana15%なし同左
Brazil10%なし同左
Brunei25%なし同左
Cambodia19%なし同左
Cameroon15%なし同左
Canada*35%(エネルギー10%)なしWH FS / FR通知IEEPA関税。USMCA原産品も対象。詳細はFR参照。
Chad15%なしWH EO Annex I
China*10%なしFR (EO 14298/14334)相互関税の高率分は2026/11/10まで停止中。11/10以降、別枠のフェンタニル関連関税は10%へ縮小予定だが、相互関税10%は継続。
Côte d’Ivoire15%なしWH EO Annex I
DR Congo15%なし同左
EU*15%上限方式なしWH EO / FR通知MFN<15%は差額加算、MFN≥15%は追加0%。航空機・医薬品等に免除あり。
Falkland Islands10%なしWH EO Annex I
Fiji15%なし同左
Guyana15%なし同左
India25%なし同左
Indonesia*19%なし同左
Iraq35%なし同左
Israel15%なし同左
Japan*15%上限方式なしFR通知日米合意に基づく。多くの品目は合計税率が15%に調整される。航空宇宙・自動車等は別途規定。
Jordan15%なしWH EO Annex I
Kazakhstan25%なし同左
Laos40%なし同左
Lesotho15%なし同左
Libya30%なし同左
Liechtenstein15%なし同左
Madagascar15%なし同左
Malawi15%なし同左
Malaysia19%なし同左
Mauritius15%なし同左
Mexico*25%なしFR通知IEEPA関税。USMCA原産品も対象。詳細はFR参照。
Moldova25%なしWH EO Annex I
Mozambique15%なし同左
Myanmar40%なし同左
Namibia15%なし同左
Nauru15%なし同左
Nicaragua18%なし同左
Nigeria15%なし同左
North Macedonia15%なし同左
Norway15%なし同左
Pakistan19%なし同左
Philippines19%なし同左
Serbia35%なし同左
South Africa30%なし同左
South Korea15%なし同左
Sri Lanka20%なし同左
Switzerland39%なし同左
Syria41%なし同左
Taiwan20%なし同左
Thailand19%なし同左
Tunisia25%なし同左
Vanuatu15%なし同左
Venezuela15%なし同左
Vietnam20%なし同左
Zambia15%なし同左
Zimbabwe15%なし同左

(注)上表の「Canada/Mexico/China/EU/Japan」の扱いは、Annexの一般則を個別の大統領令や通知で上書きしているため、実務上の判断は必ず該当の告示本文で確認してください。


4. 実務上の追加メモ

  • 他制度との関係: 232条(鉄鋼・アルミ等)や301条(対中)措置は相互関税と併存します。ただし、EUや日本に適用される「15%上限方式」のように、相互関税側で上限設定や免除が規定される場合があります。
  • USMCA原産品: カナダ・メキシコ向けのIEEPA関税は、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)に基づく原産品であっても追加で課税されます。
  • 法的リスク: 一部の関税措置は司法審査が係争中です。ただし、その効力は連邦官報の告示とCBPの実務運用に従うため、常に最新のCSMS/FR情報を確認することが最も安全です。
  • 日本語参考資料: 全体像を把握するため、JETROが発行する「相互関税」に関するまとめ資料などを併読することを推奨します。

5. 主な根拠ソース

  • 7/31 大統領令: “Further Modifying the Reciprocal Tariff Rates”
    • Annex Iにて各国税率、EUの15%上限方式、迂回輸入への40%関税を規定。
  • 中国関連:
    • 5/12 EO 14298: 対中関税を10%へ一時移行。
    • 8/11 EO 14334: 上記措置を2025年11月10日まで延長。
    • 11/02 WH発表: 停止措置を2026年11月10日まで再延長。
  • 日本関連:
    • 9/16 FR通知: 「米日合意の関税関連要素の実装」にて15%上限方式の適用方法を規定。
  • EU関連:
    • 9/25 FR通知: 「米EUフレームワークの実装」にて航空機、医薬品等の品目免除を規定。
  • カナダ関連:
    • 3/6 FR通知: IEEPA関税の適用細目を規定。
    • 7/31 WH FS: 税率を35%(エネルギー10%)へ増額。
  • メキシコ関連:
    • 3/6 FR通知: 25%のIEEPA関税の適用細目を規定。

FTA原産地証明:USMCA・CPTPP 自己証明制度の実務ガイド

近年主流となっている自由貿易協定(FTA)では、輸入者、輸出者、または生産者が自らの責任で産品が協定上の原産品であることを証明する「自己証明制度」が採用されています。

本稿では、特に重要な二つのメガFTA、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)とCPTPP(環太平洋パートナーシップ協定)における自己証明制度の要件を比較し、日本企業の輸出実務担当者が押さえるべきポイントを解説します。

1. 自己証明制度の基本概念

まず、制度を理解するための3つの重要な概念を解説します。

  • 自己証明 (Self-Certification)
    輸入者、輸出者、または生産者のいずれかが、協定で定められた記載事項を満たした書類を作成し、産品が協定上の「原産品である」と宣言する仕組みです。特定の様式は定められておらず、商業インボイスやその他の商業書類、あるいは別紙への記載が認められます。
  • 品目別原産地規則 (PSR – Product-Specific Rules of Origin)
    産品が原産品と認められるための具体的な基準です。主に以下の3つの柱で構成されます。
    • 関税分類変更基準 (CTC – Change in Tariff Classification): 非原産材料のHSコード(関税分類番号)が、完成品のHSコードから指定されたレベル(例:2桁、4桁、6桁の変更)で変更されていることを求める基準。
    • 付加価値基準 (RVC – Regional Value Content): 協定域内での付加価値が、協定で定められた計算方法に基づき、一定の割合(例:40%以上)に達していることを求める基準。
    • 特定工程基準 (SP – Specific Process): 特定の製造工程(例:化学反応、紡織、溶融など)が協定域内で行われていることを求める基準。
  • 事後検認 (Verification)
    輸入国の税関が、輸入申告後、提出された原産地証明やその根拠資料に基づき、産品の原産資格を検証する手続きです。検証は、書面による照会や、生産者(輸出者)の施設への実地調査によって行われます。

2. 要件比較:USMCA vs. CPTPP(日本輸出者の実務視点)

両協定の自己証明における具体的な要件を、実務上のポイントと共に比較します。

項目USMCACPTPP実務メモ(日本輸出者)
対象協定米国・メキシコ・カナダ協定環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(日本、豪州、カナダ、メキシコ、英国など12カ国)英国は2024年12月15日に発効済み。対象国の確認が常に必要。
証明作成者輸入者・輸出者・生産者輸入者・輸出者・生産者どちらも同じ。輸入者主導で証明を求められるケースを想定し、自社(輸出者)版と輸入者版の様式を準備するとスムーズ。
様式自由書式(協定附属書5-Aの9要素を満たす)自由書式(協定附属書3-Bの9要素を満たす)必須9要素はほぼ共通。社内共通テンプレート化が効率的。
必須要素9要素(証明者、輸出者、生産者、輸入者、品名・HS6桁、原産基準、包括期間、署名+宣言文など)9要素(構成はUSMCAとほぼ同等)項目名の呼称差(例:Certifier)を吸収すれば、単一のフォームで両協定に対応可能。
包括証明最長12か月の複数出荷を単一の証明書でカバー可能(Blanket証明)。同様に最長12か月。年次更新が基本。更新漏れを防ぐ管理システムの構築が重要。
使用言語英語、フランス語、スペイン語(輸入国税関が翻訳を要求可能)英語での提出を各国が受理英語で作成したテンプレートで運用を統一するのが最も効率的。
記録保持義務5年間(輸入者・輸出者・生産者)5年間(同上)社内規程やサプライヤーからの根拠資料(宣誓書など)の保持期間も5年に統一することが望ましい。
第三国インボイス非加盟国発行のインボイス上には記載不可。別紙で提出が必要。第三国発行インボイスの場合、別紙提出が求められる(例:カナダ税関)。【重要】 インボイス発行国が協定加盟国かをチェックし、非加盟国なら自動で別紙扱いにするロジックが必須。
原産地基準の表記HSコード6桁+PSR(CTC/RVC/SPなど)を明記。同様に明記が必要。根拠の追跡可能性のため、「PSR条番号+基準コード(例: CTH, RVC40)+計算式」まで定型化して記載するのが望ましい。
僅少の原則(デミニミス)原則10%(非繊維中心/一部例外あり)原則10%(附属書3-Cの例外に注意)例外品目(例:HSコード第50~63類の繊維品)は要注意。テンプレートに**「例外チェック欄」**を設けると安全。
自動車等の特例RVC、労働付加価値基準(LVC)、鉄鋼・アルミ使用比率など、極めて厳格かつ特殊な要件あり。PSRの差はあるが、USMCAほど特殊な規定は少ない。USMCAの自動車・部品は、専用の計算根拠(ワークシート)を用いた厳格な管理が必須。
事後検認書類要求・現場検査(工場実査)が可能(第5.9条)。同様に検認手続きあり(第3.27条)。税関からの照会に対し、「48時間以内に受領返信→10営業日以内に本回答」など、社内での対応基準(SLA)を標準化しておくことが有効。
デジタル対応電子提出・電子署名を受理。電子形式での提出を協定条文で許容。原本スキャン(PDF)+検索可能なメタデータ管理で、監査(検認)時の即時対応性を確保する。
証明の有効期間税関は、証明書作成日から4年間は特恵関税の要求を受理可能(事後請求)。原則、証明書発行日から1年間有効。【注意】 CPTPPは「1年」で管理するのが安全。更新カレンダーと自動リマインドが必須。

3. 実務Tips:共通テンプレートによる一元管理

USMCAとCPTPPは類似点が多いため、日本本社が主導して証明プロセスを共通化するのに適しています。以下に具体的な運用方法を提案します。

  1. 共通原産地証明書(COO)テンプレートの設計
    • ヘッダーに**協定名(USMCA/CPTPP)**を選択するプルダウンメニューを設置します。
    • 両協定の9つの必須要素を網羅する共通フィールドを設計します。
    • 原産基準(PSR)の記載方法を「基準コード(例:CTH)+ 該当条番号 + (RVCの場合)計算式」の形式で統一します。
  2. 「裏付け資料パッケージ」の標準化
    全ての証明書に対し、その根拠となる資料一式を紐づけて管理し、監査対応力を高めます。
    • 資料例: サプライヤー宣誓書、部品表(BOM)、RVC計算ワークシート(Excel等)、品番・工程・原産地の変更履歴ログ。
  3. 更新・監査プロセスの確立
    • 12か月の包括期間が満了する前に、更新を促す自動リマインダーが担当者に通知される仕組みを構築します。
    • 高リスク品目(自動車関連、電子機器など)は、年2回程度の抜き取り内部監査を実施し、コンプライアンスを維持します。
  4. インボイス発行国に応じた自動分岐ロジック
    共通テンプレートに、「インボイス発行国が協定非加盟国か?」というチェック項目を組み込みます。Yesの場合、インボイス上への記載をロックし、自動的に**「別紙提出」**のフォーマットに切り替わるように設定します。これは、両協定の要件を満たす上で極めて重要な機能です。

EU・中国間の輸出管理(レアアース・半導体)協議に関するビジネス影響分析

AIを用いてまとめた分析です。

1. エグゼクティブ・サマリー(最重要点)

  • レアアース規制(拡大分)の停止: EUと中国は輸出管理を巡る対話を継続。中国が10月に導入したレアアースの広範な新規制(対象元素・技術の拡大、第三国での使用管理等)について、発効から1年間の停止とすることで合意。この措置がEUにも適用されることを欧州委員会が確認しました(セフチョビチ欧州委員発表)。[Reuters, Reuters+1]
  • 既存規制の摩擦は継続: あくまで「10月拡大分」の停止であり、それ以前から存在する既存の輸出許可制度・審査は存続します。欧州委員会は「供給網の安定確保と一般許可(General Licences)などライセンス円滑化の議論を継続する」としており、当面はライセンス遅延などの摩擦が続く見込みです。[South China Morning Post]
  • 半導体の火種(Nexperia問題): 蘭政府によるNexperiaの管理下移行への対抗措置として、中国商務省が同社の中国拠点からの対外出荷を一時ブロックしていた問題も議題となりました。現在は、一部輸出の免除(Exemptions)を検討する段階に進展しており、供給危機回避の糸口が見え始めています(ただし実装は未確定)。[Reuters+1]
  • マクロ環境: 中国は希土類精製で世界シェア90%超を占めます。今回の「1年停止」は世界供給の冷却材となりますが、期限付きであり政策リスクは依然高い状態です。EU側はCRMA(重要原材料法)による自給率向上と規制協調を並行して進めています。[Reuters+1]

2. 現状整理:何が「決まった」のか/何が「変わらない」のか

決まったこと(短期的な安心材料)

  • 中国が10月に拡大したレアアース輸出管理措置が、1年間停止されます(EU向けにも適用)。[Reuters]
  • EUと中国は、輸出管理の実務運用(実装)の改善に向け、継続的に協議を行う枠組みが維持されます。

変わらないこと(継続する摩擦・リスク)

  • 拡大「前」から存在する既存の輸出許可制・審査は存続します。欧州企業は、ライセンス申請の遅延や手続き負荷の影響を引き続き受ける見込みです。一般許可の導入などはまだ「検討段階」です。[South China Morning Post]
  • 10月の新ルールが示した広範な管理構造(対象元素・装置・技術の拡大、域外使用への関与)自体は撤回されておらず、構造的な政策リスクは払拭されていません。[Reuters]
  • Nexperiaを巡る輸出ブロックは「部分的免除の検討」に入った段階であり、全面解消は未確定です。欧州の自動車向け汎用半導体の供給リスクは、引き続き注視が必要です。[Reuters]

3. 企業インパクト(業界別の要点)

自動車・EV/産業機械

  • 永久磁石(レアアース): Nd-Fe-B系磁石の確保とコスト見通しが引き続き主要課題です。「拡大規制の停止」はコストの急激な上振れを回避する材料ですが、既存許可制によるリードタイムの不安定さは残ります。[South China Morning Post]
  • 車載半導体: Nexperiaの動向が、車載ディスクリート半導体の短期的なボトルネックとなります。免除が実務レベルで浸透すれば逼迫は和らぎますが、契約・在庫の手当ては当面継続が必要です。[Reuters+1]

再エネ(風力)・家電・防衛

  • 高性能磁石(Tb、Dy等の重希土類)や、分離・焼結工程での中国依存が続きます。今回の「1年」という猶予期間を、代替材・再生材の検証、在庫戦略の見直しに振り向ける好機と捉えるべきです。

半導体サプライチェーン

  • 中国国内の後工程(組立・テスト)に依存する欧州ブランド品の、欧州向け再輸出許可が当面のボトルネックです。Nexperia問題で焦点となった「免除」の実務運用と、原産地・加工地の設計変更の検討が重要になります。[Reuters]

調達・法務・コンプライアンス

  • EU側もデュアルユース(軍民両用)管理表の2025年更新や、アウトバウンド投資(対外投資)レビューの導入を進めています。中国側だけでなくEU側の規制強化にも対応する社内コンプライアンス体制、品目特定の棚卸しが急務です。[Trade and Economic Security+1]

4. 直近90日のアクション(実務チェックリスト)

  1. クリティカル部材の「品目・工程マップ」更新
    • HSコード、中国側の輸出許可要件(既存分)、再輸出の可否、第三国加工時の適用有無を可視化します。
    • (例:レアアース原料 → 磁粉 → 磁石 → モーター のどの段階で許可が必要か)
  2. ライセンス戦術の二段構え
    • 既存許可: 申請の前倒しと、書類簡素化のための社内テンプレートを整備します。
    • 一般許可: EU・中国協議で議題化された「一般許可(General Licences)」の動向を監視し、対象となり得る品目の型番集約(グルーピング)を進めます。[South China Morning Post]
  3. 在庫と代替の「移行戦略」策定
    • 1年の停止期間を、安全在庫レベルの見直し(目標DIO、供給元別バッファ)に充てます。
    • 代替材・代替工程(重希土類削減磁石、代替磁材、欧州内分離・再生材)の検証を加速します。CRMA(重要原材料法)関連のサプライヤーやプロジェクトも把握します。[European Commission]
  4. 契約条項と価格式のアップデート
    • 政府規制変更条項(Change in Law)、不可抗力条項を明確化します。
    • 価格スライダー(変動条項)に希土類指数や合金サーチャージを組み込みます。
    • Nexperia等の個別企業リスクに備え、供給保証条項を見直します。[Reuters]
  5. 社内ガバナンス:輸出管理 × 事業継続(BCP)
    • 責任者、承認フロー、監査証跡を整備します。特にEUのデュアルユース更新やアウトバウンド投資レビューの要請に合わせて、海外設計拠点、合弁事業、研究投資の技術スコープを再点検します。[Trade and Economic Security+1]

5. シナリオと備え

  • ベースケース: 拡大規制は停止状態が継続。既存許可制は「一般許可」の導入などで運用が部分的に改善。Nexperiaは段階的免除が実務適用され、欧州自動車向けの急性リスクは後退。ただし、申請遅延や一過性の逼迫は継続する。[South China Morning Post+1]
  • アップサイドケース: EU・中国が包括的なライセンス簡素化で合意し、優先品目リストの迅速処理が実現。レアアース・半導体ともに納期が安定する。
  • ダウンサイドケース: 地政学的な緊張激化などにより、1年を待たずに「停止」が打ち切られ、拡大規制が再強化される。Nexperiaを含む域外再輸出に対し、新たな条件が付与される。JIT(ジャストインタイム)生産に打撃が及び、価格とリードタイムが再び急騰する。[Reuters]

6. 重要な背景(コンテクスト)

  • 10月の拡大規制の中身: 対象となる希土類、関連装置、技術を増やし、ライセンス要否の範囲を広げました(第三国での利用に関与する場合も含むと解釈される文言)。今回の合意は、この「拡大分」を1年間停止するものです。[Reuters]
  • EUの政策側面:
    • CRMA(重要原材料法): 2030年までに域内抽出10%・加工40%・リサイクル25%等の目標を設定。特定一国(=中国)からの依存度を各工程で65%未満に抑える目標です。[European Commission]
    • デュアルユース規制: 2025年の管理表改定が進行中。量子、半導体、先端材料の更新に対応が必要です。[Trade and Economic Security]
    • アウトバウンド投資レビュー: 2025年1月の欧州委勧告に基づき、半導体・AI・量子等への対外投資のリスク点検を加盟国に要請しています。[Reuters]
  • Nexperiaの特殊要因: 蘭政府が同社を管理下に移行させたことへの対抗として、中国側が輸出ブロックを発動。その後、欧州自動車業界の汎用品不足リスクが顕在化したため、免除検討へと舵を切った経緯があります。[Reuters+1]
  • 構造的依存: 希土類の精製および磁石製造において、中国が支配的な地位にあり、EUの短中期的な完全自立は困難です。[Reuters]

7. 直近のマイルストーン(ウォッチリスト)

  • 今後数週間: EU・中国「輸出管理対話」のフォローアップ。レアアースのライセンス円滑化(一般許可など)の具体策に注目。[South China Morning Post]
  • (随時): Nexperia問題。免除の適用範囲と実務プロセスの運用開始時期。自動車OEMやTier1サプライヤーの納期アラートを監視。[Reuters]
  • ~2025年末: EUデュアルユース管理表の改定施行。社内の該非判定リストや基幹システム(SAP等)のマスタ改修期限。[Trade and Economic Security]
  • ~2026年10月: 中国のレアアース拡大規制「1年停止」の期限。延長、再開、あるいは新制度への移行のシグナルを早期に検知する。[Reuters]

8. 現場向けミニFAQ

Q. 「1年停止」=リスク解消、と考えてよいか? A. いいえ。停止されたのは「10月拡大分」のみです。既存の許可・審査は継続しており、ライセンス遅延は依然としてボトルネックです。申請の前倒し、品番集約、安全在庫による緩衝策は継続してください。[South China Morning Post]

Q. 欧州向けの供給は改善するか? A. 短期的には改善が期待できます(拡大分停止+Nexperia免除検討)。ただし、合意内容が実務の運用(申請→審査→出荷)に反映されるまでには時間差が生じます。暫定的な代替調達・在庫戦略は維持してください。[Reuters]

Q. どの分野が最も神経質になるべきか? A. 2系統あります。①磁石を多用するモーター関連(EV、風力発電)と、②車載向けの汎用ディスクリート半導体です。この2つは「安定供給が収益に直結」する分野であり、引き続き最重要監視対象です。[Reuters]


9. 総括(ひと言まとめ)

今回の合意は、中国側による「拡大規制の即時発動にブレーキ」をかけ、「対話の継続」を選んだ**「時間を買う」措置**です。

企業側はこの1年の猶予期間で、既存ライセンス運用の省力化、在庫設計の最適化、代替ルート(代替材・代替工程)の検証を一段引き上げ、「止まらない調達」の体質化を進めることが最善策となります。

「米国が日本製トラック・バスに新関税」のビジネス実務への影響分析

AIにまとめてもらった分析です。

(2025年11月1日 米国東部夏時間 0:01 発効)

1. 要点(エグゼクティブ・サマリー)

  • 概要: 米国政府は、通商拡大法232条(国家安全保障条項)に基づき、日本製を含む特定品目に追加関税を課す大統領布告を発出しました。この措置は既存の関税に上乗せされ、2025年11月1日(米東部夏時間 0:01)より発効しています。
  • 対象と税率:
    • 中・大型トラック(MHDV)および主要部品: 追加 25%
    • バス(HTS 8702): 追加 10%
  • 日本への影響:
    • トラック: 日本原産の完成トラックは、従来の関税(通称「チキン税」25%)に新たな25%が加算され、合計で約**50%**という極めて高い関税率が課されます。
    • バス: 従来の一般税率(約2%)に10%が上乗せされます。
  • USMCA(北米自由貿易協定)の特例:
    • 完成車(トラック): メキシコやカナダでUSMCA原産資格を満たす場合、追加25%関税は、車両価額のうち**「非米国コンテンツ価額」部分にのみ適用**されます。ベース関税は原則0%です。
    • 部品: USMCA原産の部品は、当面は追加関税の適用が停止されます。ただし、ノックダウン(KD)キットは課税対象です。
  • 通関実務: CBP(米税関・国境警備局)は、CSMS(通関業者向け通知)を通じて、HTS第99類(Chapter 99)コードの申告方法など具体的な通関指示を公表しています。

2. 政策の詳細と実務上のポイント

項目内容根拠
税率と発効日・トラック・主要部品: 追加 25%
・バス(HTS 8702): 追加 10%
・発効: 2025年11月1日 0:01 (EDT) 以降に「輸入(消費のための引取り)」される貨物から適用。
USMCA原産トラックの特例USMCA原産資格を満たす中・大型トラックは、追加25%関税が**「非米国コンテンツ価額」部分にのみ適用**される。米国産コンテンツ価額部分は課税対象外となる。
USMCA原産部品の扱いUSMCA原産のトラック部品は、商務省とCBPが非米国コンテンツ部分のみに課税するプロセスを整備するまで、当面は追加関税の対象外となる。
KDキットの例外KD/CKD(ノックダウンキット)は、USMCA原産資格を満たす場合でも課税対象と明記された。
米国内生産へのオフセット措置米国内のトラック組立メーカーは、完成車価額の**3.75%**相当額を上限に、輸入部品に課された232条関税を相殺(オフセット)できる制度を活用できる。
日本製部品への特例一部の日本製自動車部品について、既存の関税率が15%未満の場合、232条関税と合わせて**合計15%**となるよう税率が調整される。

3. コスト影響の簡易試算

ケースA:日本から完成トラックを直接輸入(CIF価格 $120,000)

  • 既存関税 (25%): $30,000
  • 新232条関税 (25%): $30,000
  • 合計関税: $60,000 (CIF価格の50%)

ケースB:メキシコで組立(USMCA原産)、非米国コンテンツ比率45%(CIF価格 $120,000)

  • ベース関税: 0% (USMCA特恵)
  • 新232条関税: $120,000 (CIF) × 0.45 (非米国比率) × 0.25 (新税率) = $13,500
  • 実効関税率: 11.25%相当

免責事項: 上記は概算です。実際の負担額は、HSコード、原産性、課税価格、その他費用(HMF/MPF等)により変動します。必ず専門家にご相談ください。

4. 企業別の影響と対応策(To-Doリスト)

1) 完成車の輸入事業者(ディーラー、商社)

  • 影響: 日本原産トラックの実効税率が約50%となり、価格競争力が著しく低下する。
  • 対応:
    • HS分類の再精査: 税率が異なる8702(バス: 10%)と8704(貨物車: 25%)の分類は、CBPの審査が厳格化する見込み。証拠資料を整備する。
    • 物流戦略の見直し: 関税は「消費のための引取り」時点で課されるため、保税倉庫やFTZ(外国貿易地域)の活用を再検討する。

2) 北米での組立事業者(OEM、Tier1サプライヤー)

  • 影響: USMCA原産資格がコストを左右する。コンテンツ比率の管理が重要となる。
  • 対応:
    • BOM(部品表)の精緻化: 「米国コンテンツ比率」の正確な算定と、サプライヤーからの証明書回収プロセスを構築する。
    • USMCA監査への備え: 原産地証明、地域価額割合(RVC)の計算根拠など、監査に耐えうる記録管理を徹底する。
    • KD生産の見直し: 課税対象となるKDキットに代わり、北米内での溶接・塗装など、より実質的な製造工程への移行を検討する。

3) 日本からの部品サプライヤー

  • 影響: USMCA原産部品は当面適用除外だが、制度変更後は課税リスクが顕在化する。
  • 対応:
    • CBPガイダンスの反映: IOR(輸入者)と連携し、Chapter 99コードの申告など実務手順を更新する。
    • 契約条件の見直し: 関税サーチャージ条項の導入や、インコタームズの変更(DDPへの切り替え等)を検討し、関税負担リスクを明確化する。

5. よくある誤解と注意点

  • 誤解: 「USMCA原産なら新関税はゼロになる」
    • 訂正: なりません。完成トラックの場合、「非米国コンテンツ」部分には25%が課税されます。
  • 誤解: 「USMCA原産の部品は(新関税に)関係ない」
    • 訂正: 当面は適用停止ですが、恒久的ではありません。また、KDキットは当初から課税対象です。
  • 注意点: 関税は「輸入申告(消費引取り)時点」で課税される
    • 船積日や契約日ではなく、米国内での法的な輸入手続きのタイミングが重要です。

6. 日本企業が取るべき戦略オプション

  1. 北米での製造工程の深化: 課税対象のKD/CKDを避け、北米(米国・メキシコ・カナダ)での溶接・塗装といった実質的な工程を増やすことで、米国コンテンツ比率を引き上げる戦略が有効です。
  2. サプライチェーンの再設計: 「日本 → メキシコ(組立) → 米国」という流れでも、日本製コア部品の比率が高いと関税メリットが薄れます。サプライヤーの北米現地化や代替調達の費用対効果を再評価する必要があります。
  3. 契約・価格戦略の見直し: 関税変動を織り込んだ価格調整条項を契約に盛り込むことが、今後の標準的なリスク管理手法となります。
  4. コンプライアンス体制の強化: HSコード分類、原産地証明、BOM(部品表)の整合性など、CBPの事後調査(監査)に耐えうる文書管理体制が、企業の財務リスクを直接的に左右します。

イタリア産パスタへの米追加関税「107%」報道の背景

以下は、「イタリア産パスタへの米追加関税、107%へ拡大見込み」という報道について、一次資料に基づき整理したものです。

結論: 米商務省のアンチダンピング(AD)年次見直しの暫定結果で91.74%という高率が示されたことに加え、別途進行している米・EU間の「相互(レシプロカル)関税」枠組みによる15%が合算されるため、実効税率が約107%(91.74% + 15% = 106.74%)に達する見込みです。AD税率の最終決定は2026年1月初旬の見込みです。

何が起きているか

米商務省がイタリア産パスタ(特定範囲)のAD年次見直し暫定結果(2025年9月4日公表)で、主要企業に91.74%(非協力=AFA扱い)を通知しました。

これとは別に、米・EUは2025年8月21日に「相互関税」枠組みに合意しており、多くのEU産品にはMFN税率または15%のいずれか高い方が適用されています。パスタのMFN税率は通常1.5%程度のため、相互関税枠組みでは実質的に15%となります。

この2つの制度の合算(AD 91.74% + 相互関税 15% = 約107%)が「107%の見込み」の内訳であり、まだ最終確定ではありません。

暫定結果の中身(AD年次見直し)

対象期間: 2023年7月1日~2024年6月30日の輸入分

暫定加重平均ダンピング率: 91.74%

  • La Molisana S.p.A.: 91.74% (AFA)
  • Pastificio Lucio Garofalo S.p.A.: 91.74% (AFA)
  • 非個別審査11社: 91.74%

非個別審査企業には、Barilla、Rummo、Gruppo Milo、Liguori などが含まれます。

AFA適用の理由: 商務省は、対象企業が要求情報の未提出等により協力的でなかったと判断し、Adverse Facts Available(申請者側に不利な情報)を適用しました。

今後のスケジュール:

  • 意見提出: 官報掲載から21日以内
  • 最終結果公表: 官報掲載から120日以内(2026年1月初旬めど)
  • 輸入時の預託(キャッシュデポジット)率の更新は、最終結果の公表後に有効化されます

「107%」の根拠(AD 91.74% + 相互関税 15%)

報道されている「107%」は、2つの異なる制度の税率を合算したものです。

  1. AD関税(暫定): 91.74%
    上記で説明した年次見直しの暫定税率
  2. 相互(レシプロカル)関税: 15%
    2025年8月21日、米・EUは相互関税の枠組みで合意しました。これにより、多くのEU産品は「MFN税率または15%のいずれか高い方」が適用されます。パスタのMFN税率は通常1.5%程度のため、相互関税枠組みでは実質的に15%となります。

したがって、**AD(暫定)91.74% + 相互関税 15% = 実効税率 約107%**となるのが、報道の根拠です。

注意点: AD制度には既存の一般率(all-others rate)がありますが、これは今回の91.74%にさらに足すものではありません。報道の「+15%」は、別制度である「相互関税」を指しています。

影響を受ける企業(暫定リスト概要)

個別審査(91.74%): La Molisana、Garofalo

非個別審査(91.74%): Barilla、Gruppo Milo、Rummo、Agritalia、Liguori、Antiche Tradizioni di Gragnano、Cocco、Chiavenna、Aldino、Sgambaro、Tamma(計11社)

審査取下げ/対象外: Andriani、DeLallo、Di Martino(Pastificio dei Campi含む)、Mediterranea、Rigo ほか(これらの企業は今回の見直しから外れ、各社の現行率が維持されます)

対象製品(スコープ)と主な除外品

このAD措置は、全てのイタリア産パスタが対象ではありません。自社製品が該当するかどうかの確認が必須です。

主な対象:

  • 乾燥・非卵パスタ
  • 小売向け2.27kg (5ポンド4オンス) 以下のパッケージ
  • 強化・ビタミン・色付け等を含んでも可、卵白は2%まで許容
  • 主にHTSUS (関税番号) 1902.19.20に該当

主な除外例:

  • 冷蔵、冷凍、缶詰のパスタ
  • 卵パスタ(定義上の例外あり)
  • オーガニック(EU認可機関によるUSDA National Organic Program準拠の認証付)
  • グルテンフリー
  • 5ポンド超の大袋(業務用など)
  • 装飾瓶入りの多色パスタ、一部のラビオリ/トルテッリーニ等

いつからどのように効くか

AD(91.74%): 現時点では「暫定」です。最終結果(2026年1月初旬頃)が公表されてから、将来の輸入に対する預託率(キャッシュデポジット)が更新されます。対象期間(2023年7月1日~2024年6月30日)の過去の輸入分は、最終率に基づき清算(アセスメント)されます。

相互関税(15%): 2025年8月21日に枠組み合意が発表され、9月1日から段階的に適用が開始されており、既に有効な枠組みとして以降の輸入に適用されています。

EU・イタリア側の動き

イタリア外務省は10月6日頃に対応を表明し、91.74%という暫定率は不均衡であるとしてEU委員会と連携し、対米働きかけと企業支援を表明しました。

EUのセフチョビチ委員も「パスタへの合計107%の関税は受け入れがたい」と述べ、米側と協議中であると発言しています。

実務影響と対応のヒント

該当企業の特定: 仕入先の生産者名義(輸出者)が暫定リストにあるか確認が必要です。別ブランドで販売されていても、生産者名義で税率が左右されます。

スコープ(対象範囲)の精査: パッケージ重量(5ポンド超か以下か)、原材料(卵、グルテンフリー)、認証(オーガニック)の有無で、対象外になり得る商品がないか、法令の文言に沿って再確認してください。

原価試算(例): CIF価格 $1,000 の対象商品の場合、AD 91.74%で $917.40、さらに相互関税で最大 $150(MFN<15%の場合)が加算され、合計 $1,067.40(実効約107%)の追加負担となり得ます。

サプライヤーへの働きかけ: 最終決定(120日以内)に向け、サプライヤー(生産者)に対し、AFA回避のために米側調査票やデータ提出に協力するよう要請することが考えられます。

サプライ戦略の検討:

  • 米国内生産品: Barillaは米アイオワ州Ames(1999年開設)・ニューヨーク州Avon(2007年開設)にも工場を持っています。「Made in USA」品はADの対象外です。
  • 対象外カテゴリー: オーガニック、グルテンフリー、業務用大袋など、スコープ外の製品への切り替えを検討します。
  • 他原産地: トルコ産パスタにも別途AD命令が継続しているため、原産地変更時は慎重な調査が必要です。

よくある誤解の整理

Q: すでに107%が発動している?
A: いいえ、まだ「暫定」です。ADの最終結果(2026年1月初旬頃)が出てから、その税率での預託が始まります。相互関税15%は既に有効ですが、**合計107%はあくまで「最終率が暫定通り確定した場合の見込み」**です。

Q: すべてのイタリア産パスタが対象?
A: いいえ。スコープ(対象範囲)は乾燥・非卵・小売用小袋が中心です。冷蔵・冷凍・缶詰、オーガニック(適正な認証付)、グルテンフリー、5ポンド超の大袋などは除外されます。

Q: Barillaは対象?
A: 米国内生産のBarillaパスタ(原産国:米国)は対象外です。イタリア製のBarilla(原産国:Italy)は、非個別審査企業として91.74%(暫定)の対象リストに含まれています。SKUごとの原産国確認が必要です。

時系列(主要な日付)

  • 2024年7月1日: AD年次見直しの申請機会を告知
  • 2024年8月14日: 年次見直し開始(対象18社)
  • 2025年8月21日: 米・EUの相互関税枠組み合意を発表
  • 2025年9月1日: 相互関税(15%枠)の段階的実装開始
  • 2025年9月4日: AD暫定結果を公表(91.74%)
  • 2026年1月初旬: AD最終結果の公表見込み(延長がない場合)

主要ソース(一次資料・公式)

  • 米官報 (Federal Register): 「Certain Pasta from Italy」暫定結果(91.74%)、企業リスト、手続・スケジュールの明記
  • 米官報 (Federal Register): 相互関税の実装告示(米・EU枠組み、EU品の15%適用等)
  • イタリア外務省・報道各社: 対米タスクフォースの開催と91.74%への異議表明
  • Barilla: 米国内のAmes (IA) / Avon (NY) の生産拠点について

米上院、「グローバル相互関税」阻止の決議を可決

(報道各社・公式資料の突き合わせ。日時は米東部時間。現在: 2025年11月1日)

1. 何が起きたか(結論)

10月30日(木)、米上院はS.J.Res.88(大統領が関税根拠に用いた国家非常事態の終了を求める共同決議)を51対47で可決しました。これは、トランプ政権による世界一律の「相互関税(リシプロカル)」の土台を外す内容です。

共和党からミッチ・マコネル氏、ランド・ポール氏、スーザン・コリンズ氏、リサ・マーカウスキー氏の4名が民主党側に同調し、賛成に回りました。

ただし、決議が直ちに効力を持つわけではありません。下院は少なくとも2026年3月31日まで、この種の関税無効化案件を本会議で採決しない運営ルールを採用しています。仮に下院を通過しても大統領の拒否権行使が見込まれるため、今回の可決は政策的な牽制や象徴的な意味合いが強いとみられています。


2. 「グローバル相互関税」とは

2025年4月2日、大統領が「貿易赤字は国際的緊急事態である」と宣言し、IEEPA(国際緊急経済権限法)を根拠に発表した関税パッケージ(通称**『リベレーション・デー関税』**)を指します。

主な内容は以下の2点です。

  • 全ての国からの輸入品に対し、**一律で10%の「基準関税」**を課す。
  • 上記に加え、対象国に応じて追加関税を上乗せする。

その後、7月9日にブラジル(50%)、7月10日にカナダ(最大35%)への個別の上乗せ措置が発表され、国内外で反発が拡大していました。


3. 直近3つの関連採決(上院)

日付案件(共同決議)票決概要
10/28S.J.Res.81(ブラジル関税の無効化)52–48可決
10/29S.J.Res.77(カナダ関税の無効化)50–46可決
10/30S.J.Res.88(グローバル相互関税の無効化)51–47可決

※注: いずれも下院での手続きと大統領署名(または拒否権の無効化)が必要なため、現時点では実際の関税率に変更はありません


4. 投票の内訳とねらい

10月30日のS.J.Res.88では、共和党のミッチ・マコネル(KY)、ランド・ポール(KY)、スーザン・コリンズ(ME)、リサ・マーカウスキー(AK)の4氏が賛成しました。

過去の同趣旨の決議(4月30日、S.J.Res.49)は49–49の同数となり、副大統領(JD・ヴァンス氏)のキャスティングボートで否決されていました。今回は、共和党からの造反が拡大した形です。

民主党側の推進役は、ロン・ワイデン上院財政委員会ランキングメンバー(筆頭委員)です。IEEPAの(乱用とも指摘される)適用による包括的な関税に対し、議会(特に上院)が持つ貿易権限を回復させることが狙いです。


5. 経済的影響の評価(公表値・推計)

  • 税収: 2025年の関税導入以降、8月時点までに新規関税分として約880億ドルの関税収入を計上(イェール大学Budget Labの集計)。
  • 家計負担: イェール大学Budget Labの推計では、1世帯あたり年間1,600ドルの短期的な実質所得損失(代替効果考慮後)。
  • GDP: Tax Foundationの推計では、今後10年のGDPを0.5%程度押し下げるとされています。

これらの数字は、関税が「海外へのコスト転嫁」ではなく、国内価格に転嫁されやすい傾向を改めて示しています。


6. 今後のシナリオと法廷闘争

  • 司法の動き: IEEPAを使用した包括関税に対し、企業側が違憲性を問い提起した訴訟が連邦控訴裁判所で審理中です。司法判断が政策の持続可能性を大きく左右します。
  • 下院の動き: 現行の運営ルールにより、下院は少なくとも2026年3月31日まで上院可決分を棚上げにできる状態です。よって当面は実体経済・貿易実務に即時の変更は生じない見込みです。

7. 日本・企業サイドの実務ポイント

  • 上院可決は、直ちに関税撤廃を意味しない実務上の輸入税率は現状維持です。請負価格・見積り・在庫の前提を即座に変更しないことが重要です。
  • 政策リスクは縮小傾向上院で3件連続(ブラジル・カナダ・グローバル)の無効化決議が可決されたことで、包括関税への政治的抵抗は明確になりました。これは価格交渉や契約条項(関税トリガー条項など)での交渉材料になり得ます。
  • 用語の整理「グローバル相互関税」とは、『リベレーション・デー関税』パッケージ(全品目10%基準+国別上乗せ)を指します。日本向け輸出も原則対象という設計思想です。ただし、今回の上院決議が実効力を持つ(=関税が無効化される)には、下院可決と大統領署名が前提です。

8. 参考タイムライン

  • 2025/4/2: 国家非常事態宣言(『リベレーション・デー関税』発表、基準10%)
  • 2025/4/30: 上院の初回無効化決議(S.J.Res.49)、49–49の同数となり副大統領の投票で否決
  • 2025/7/9: ブラジル関税50%を発表(8月1日発効予定)
  • 2025/7/10-11: カナダ関税35%を発表(8月1日発効予定)
  • 2025/10/28–30: 上院がブラジル→カナダ→グローバルの順に3決議を連続可決

2025年10月30日時点 米韓相互関税交渉の整理

1. 概要と交渉の前提(2025年の米関税政策転換)

米韓の「相互関税」交渉は、2025年に行われた米国の大幅な関税政策転換を前提に進んでいます。

  • 米国の新政策(概要):
    • IEEPA(国際緊急経済権限法): 4月の大統領令(7月改定)に基づき、「国別相互関税」を導入。
    • 通商拡大法232条: 適用を拡張。
      • 鉄鋼・アルミ: 一律50%に引き上げ(6月4日~、英国除く)。
      • 自動車: 当初25%を通告(その後、日韓とは交渉により15%で合意)。
      • 半導体・医薬品・銅: 新規調査を開始。
  • KORUS(米韓FTA)の位置づけ:
    • KORUS自体は存続していますが、上記の新設されたIEEPAおよび232条の関税枠組みが、FTAの外側から実質的に上書き(優先適用)される形で運用されています。

2. 米韓交渉の最新状況(10月30日時点)

  • 7月30日 骨子合意:
    • 米国は韓国に対し「15%の国別相互関税(IEEPA)」を適用。
    • 韓国向け「自動車・部品関税(232条)」を15%へ引き下げることで合意。
    • 韓国側は「3500億ドルの対米投資」および「1000億ドルのエネルギー購入」を約束。
  • 10月29~30日 会合:
    • 自動車関税15%への引き下げなど、7月の政治合意内容を再確認しました。
  • 現状と論点:
    • 米議会調査局(CRS)は「7月の合意は骨子こそ発表済みだが、詳細の最終化と法的実装(大統領令や官報告示)が一部未了である」と指摘しています。KORUSとの法的な整合性や、議会の関与のあり方が引き続き論点となっています。

3. 合意事項の詳細(確定・政治合意)

A. 確定・運用中(米側実装済み)

  • 国別相互関税(IEEPA): 15%
    • 適用開始: 8月7日から韓国に適用済み(CBP案内、CRS記載)。
    • 運用: 包括的な「15%キャップ」として機能します。
      • MFN(最恵国待遇)税率が15%未満の場合: 差額を上乗せ。
      • MFN税率が15%以上の場合: 追加関税なし。
  • 232条(鉄鋼・アルミ): 50%
    • 適用開始: 6月4日から発効済み。
    • 運用: KORUS(FTA)の有無にかかわらず一律で課税されています(FTAによる免除不可)。

B. 政治合意済み(米側の最終実装待ち・確認中)

  • 自動車・部品: 15%へ引き下げ
    • 現行の25%(232条)から15%への引き下げで合意(日本と同水準)。
    • 注記: 運用開始のための最終的な米側告示(大統領令や官報)は未掲示との報道があり、実務開始時期の確認が必要です。
  • 個別品目の緩和・優遇
    • 航空機部品、ジェネリック医薬品: 関税ゼロ(韓国向け)。
    • 木製品、医薬品など: 最も低い関税区分を適用。
    • 半導体: 「台湾より不利に扱わない」ことを保証(今後の232条「半導体」調査の結果に連動)。
  • 韓国側 対米コミットメント
    • 投資: 3500億ドル
      • (内訳: 現金2000億ドル(年200億ドル上限の分割)、造船1500億ドル(融資・出資の組み合わせ))
    • 調達: エネルギー1000億ドル購入。
    • 注記: 投資の設計・配分は、米商務長官が主宰する委員会が所管する予定です。

4. 米日交渉との比較と相違点

  • 米日合意の状況:
    • 7月の骨子合意を受け、9月4日に大統領令(EO 14345)で実装済みです。
    • 「国別相互関税15%(MFN込み上限扱い)」および「自動車・部品15%」が9月16日から発効・運用開始されています。
    • 民間航空機・部品はIEEPAと232条の双方を免除するなど、制度文書が完備しています。
  • ビジネス視点の早見表(米韓 vs 米日)
論点米韓(韓国)米日(日本)実務ポイント
枠組みKORUS存続。ただしIEEPA/232条が上書き従来協定に加え、EO 14345で制度化FTAベースではなく大統領令ベースの可変制。撤回リスク管理を。
国別相互関税15%(8月7日適用)15%(9月16日発効、MFN込み上限扱い)仕入・販売価格式の見直し(「15%キャップ」の読み替え)が必要。
自動車・部品(232)15%に引き下げで政治合意(実装文書は要確認)15%で運用開始済(9月16日~)対韓は発効告示の確認まで通関・契約の暫定条項を。
航空機(民間)部品はゼロ(報道ベース)相互関税+232とも免除(民間航空機・部品)日本は航空機分で完全免除の明文化あり。韓国は部品ゼロの扱いを監視。
半導体台湾と同等以上の扱い保証(232調査の結果に依存)他国より不利にしない趣旨(232措置次第)232調査が東アジア各国へ波及。サプライチェーンの原産・加工証憑強化。
鉄鋼・アルミ(232)50%の高関税維持50%(日本向け一般免除なし。航空機関連は別)素材コストは日韓とも高止まり。米内製・在庫戦略の再設計が必須。
投資・調達義務投資3500億ドル+エネルギー1000億ドル投資5500億ドル、農産品・航空機等の購入コミット未達で関税再引き上げ条項あり(日本側EO)。実施KPIを随時確認。
実装の確度一部は未告示(自動車15%など)文書完備(EO・官報・CBP通達)日本は安定運用フェーズ、韓国は最終告示の追跡が要件。
  • 押さえるべき主な違い(日韓比較)
    1. 制度の成熟度: 日本は実装完了(EO 14345等で文書完備)。韓国は一部が政治合意段階(自動車15%など最終告示待ち)です。
    2. 自動車: 最終着地点は両国とも15%ですが、日本は9月16日発効済、韓国は告示待ちという時間差があります。
    3. 航空機関連: 日本は「民間航空機・部品」がIEEPA/232条双方から包括的に免除(明文化済み)。韓国は「部品」のゼロ関税が報道ベースです。
    4. 金属素材(232条 50%): 両国とも高関税が継続していますが、日本の航空機関連部材だけは別枠で免除されています。

5. 日本企業への実務インパクトと対応(チェックリスト)

  1. 原価・見積りの標準パラメータ更新
    • 対米輸出(日本製): 「15%上限」を前提にHTSコード別に再計算してください(MFNが15%以上なら追加関税なし)。
    • 調達(韓国由来部材): 鉄鋼・アルミ(232条 50%)は引き続きコストに加味が必要です。原産地・HTSの棚卸しを推奨します。
  2. 韓国サプライチェーンの「移行期」管理
    • 自動車・部品(15%): 韓国からの調達品に関わる自動車15%関税の発効タイミングは、米側告示(官報)およびCBPの実務通達(CSMS番号等)で必ず確認してください。
    • 契約: 関税改定(スナップバック条項含む)や価格転嫁に関する条項を見直してください。
  3. 半導体・電池サプライチェーンの証憑強化
    • 232条「半導体」調査: 装置、基板、レガシー品も対象です。第三国経由の転送も監査対象となるため、部材・工程の可視化(BoM起点の原産トレーサビリティ)と証憑整備を前倒しで実施してください。
    • FEOC/PFE規制: クリーンエネルギー税額控除(30D等)の懸念外国団体(FEOC)要件が2025年に拡大。韓国製電池・素材も中国等の関与度合いでクレジット適否が変動するため、税務・通関の二重チェックが必須です。

6. (参考)基礎データと法令ソース

  • CRS(米議会調査局)レポート: 7月合意の未確定点、自動車15%計画、韓国向けIEEPA15%適用状況。
  • 米国官報/大統領令: 鉄鋼・アルミ232条(50%、6月4日発効)、米日合意(EO 14345、9月16日発効)、232条「半導体」調査告示。
  • 主要報道・シンクタンク(KEIA等): 米韓10月合意詳細(自動車15%、航空機部品ゼロ)、韓国側投資枠内訳、半導体「台湾以下不利なし」条項。