30秒で要点
EUと中国が、レアアース関連の輸出管理手続きを円滑化する「特別チャネル」を新設しました。中国側の輸出許可審査において、EU企業からの申請を優先的に共同レビューし、迅速化を図る枠組みです。約2,000件の申請のうち半数以上が既に承認済みとEU側は説明しています。自動車用モーターや風力発電向けのレアアース磁石など、製造工程のボトルネック解消が狙いです。
背景: 2025年に中国がレアアース関連の輸出管理を導入・拡大し、許可待ちが深刻化。10月には対象元素や関連技術の管理範囲がさらに拡大されました。
直近動向: 追加の新規規制は最長12か月の延期と報じられている一方、既存の管理体制は継続中です。EUは「一般ライセンス」(包括許可)の導入も中国側と協議中。全面解除ではなく、手続きと運用を緩和する方向で進んでいます。
何がどう変わるのか(仕組み)
特別チャネルの中身
EU欧州委員会(通商・経済安全保障担当)と中国商務省などの関係当局間に、個別案件の優先審査・進捗管理・滞留解消のための専用窓口が設置されました。EU企業からの申請を優先処理し、共同で許可の迅速化を図る仕組みです。
限界と留意点
これは規制の撤廃ではありません。最終的には中国側の輸出管理制度の要件(用途・最終需要者・軍民転用リスクなど)を満たす必要があります。用途が明確な民生向けは比較的承認されやすいとの説明もありますが、審査そのものは継続されます。
どの業界に影響するか
自動車(駆動モーター)・風力発電
Nd、Pr、Dy、Tb等を含むNdFeB磁石の安定調達が鍵となります。
産業機械・ロボット・家電・IT機器
高性能磁石や合金、分離・精製材料に影響します。
化学・触媒・研磨材
La、Ce等の酸化物・塩類が対象となります。
(具体的な該非判定は品目・加工度・用途によって異なります)
現場が今すぐ取るべきアクション(90日プラン)
案件の可視化
取引先(中国側輸出者)に、申請の進捗状況(未申請・受理・追加資料待ち・許可番号・有効期限)を品目・用途別に一覧化してもらいます。EU企業案件である旨(EU域内工場向け・EU企業発注)を明記してもらいましょう。
用途・最終需要者の明確化
エンドユーザー宣誓書(End-Use/End-User Statement)を整備します。民生用途を具体的に記載すると審査が通りやすくなります。
優先ルートの活用
重要案件は、EU側窓口(欧州委員会)と中国側当局の特別チャネルでの優先照会対象となるよう、業界団体や在中欧州商工会議所も活用し、案件IDを付けてエスカレーションします。
代替策の同時推進
EUはエストニア等でレアアース・磁石の域内生産拡充を進めています。欧州内および第三国のサプライヤーを品質・供給量・コストの3軸で同時評価します。
契約の見直し
以下の条項を整備・更新します。
- 輸出管理条項(規制変更時の責任分担・協力義務)
- 価格調整条項(許可遅延・調達ルート変更に伴う費用転嫁)
- フォースマジュール・納期条項(許可遅延の定義)
在庫と資金の手当て
許可サイクルのばらつきに備え、安全在庫水準の再設定と運転資金計画を見直します。
一般ライセンス(包括許可)への準備
EUが協議中の一般ライセンス制度が導入された際、速やかに申請できるよう、案件を用途クラス別に整理しておきます。
価格・リードタイムの見通し
短期(数か月)
申請滞留の解消途上にあり、優先処理による改善は見込めますが、既存の管理体制は継続されるため、遅延や価格プレミアムのリスクは残ります。
中期(12か月)
新規強化分の一部が延期されれば混乱は緩和されます。ただし制度自体は存続し、政治・安全保障要因による再強化の可能性もあります。中国への過度な一極依存の解消は引き続き経営課題です。
当局の見解
EU側は短期的な抜本的解決は難しいとの慎重な見通しを示しており、手続き改善と供給多角化の両面作戦が現実的とされています。
よくある質問(FAQ)
対象は原料だけですか?
いいえ。元素・化合物だけでなく、精製・加工技術や設備も管理対象に含まれます。したがって磁石・合金・半製品も該当する可能性があります。
EU企業以外でもメリットはありますか?
合意の主眼はEU企業案件の優先審査です。EU域内の拠点・生産向け案件は恩恵を受けやすいですが、他地域向けは基本的に直接の対象外となります。
具体的な申請は誰が行いますか?
中国側の輸出者が所管当局へ申請します。買い手(EU側)は用途・最終需要者情報や契約書類を整備し、特別チャネルでの優先照会に必要な情報を提供するのが実務となります。
サプライヤーへの依頼テンプレート(簡易版)
We understand that the EU–China "special channel" prioritizes EU cases.
Please confirm the license status for the following items (by use-case and end-user).
If additional documents are required (contract, end-use statement), please advise us so we can escalate via the EU channel.
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