トランプ大統領による欧州追加関税の撤回が示す米欧貿易の新局面


2026年1月21日、米国のドナルド・トランプ大統領は、グリーンランド領有に反対する欧州8カ国に対して表明していた追加関税を撤回すると発表しました。この発表は世界経済フォーラム年次総会が開催されているスイス・ダボスで、NATO事務総長マーク・ルッテとの会談後になされたものです。わずか数日前まで激化していた米欧間の通商摩擦が、急転直下で緩和に向かった背景には、北極圏をめぐる戦略的な合意形成があります。iwate-np+3

関税発動予告から撤回までの経緯

トランプ大統領は1月17日、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フランス、ドイツ、英国、オランダ、フィンランドの8カ国に対し、2月1日から全製品に10パーセントの追加関税を課すとSNSで表明していました。さらに6月1日からは税率を25パーセントに引き上げ、米国によるグリーンランド完全取得に関する合意が成立するまで継続するとしていました。この発表は欧州各国に衝撃を与え、対象となった8カ国は共同声明を発表して米国の姿勢を「危険」と批判していました。[jetro.go]​[youtube]​

しかし1月21日、トランプ大統領はルッテNATO事務総長との協議を経て、「グリーンランド、そして北極圏全体に関する将来の取引の枠組み」を形成したとして、2月1日の関税発動を撤回すると発表しました。大統領はこの合意について「実現すれば米国と全てのNATO加盟国にとって大きな利益となる」と述べましたが、具体的な合意内容については明らかにしていません。CNBCのインタビューでは「少し複雑な構想」であり、協議が進展するにつれて詳細を提供すると説明しています。stlpr+3

EU側の対抗措置と貿易協定承認の延期

一方、EU側もトランプ政権の圧力に対して強硬姿勢を示していました。欧州議会は1月20日、2025年7月に米国と合意した貿易協定の承認を延期することで合意しています。この協定では、EUが全ての米国製工業製品に対する関税を撤廃し、米国は欧州製品への関税を15パーセントに設定する内容が含まれていました。47news+3

欧州議会の議員は「これは極めて強力な手段だ。米国の企業が欧州市場を諦めることに同意するとは思えない」と述べ、協定承認延期が米国への圧力手段であることを示唆しています。昨年7月の合意では、EUは7500億ドル相当の米国産エネルギー製品を購入し、さらに6000億ドルを米国に投資することに同意していました。この協定の猶予期間は2月6日に終了し、EUが延長措置を取るか新協定を承認しない限り、2月7日に対米関税が発動する状況にありました。diamond+2

グリーンランドの戦略的価値と北極圏をめぐる競争

今回の関税騒動の背後には、グリーンランドの戦略的・経済的価値の急上昇があります。地球温暖化に伴う北極の海氷融解が加速しており、北極圏は地球平均に比べて4倍の速さで温暖化が進んでいるとされています。これにより、欧州とアジアを結ぶ北極航路や北米北岸を通る北西航路といった新たな海上交通路の開発価値が急速に高まっています。nikkei+1

グリーンランドには、ウランやグラファイト、レアアースといった米国の安全保障にとって重要な鉱物資源が豊富に眠っており、携帯電話やコンピューター、電池などのハイテク機器に不可欠な資源の供給源として注目されています。米国や西側諸国は、重要鉱物市場における中国の支配的な立場を緩和しようと、グリーンランドへの関心を強めている状況です。米戦略国際問題研究所の専門家は「北極の海氷融解は、経済と安全保障の競争に向けた全く新しい舞台をつくっている」と指摘しています。biz.chosun+2

ビジネスへの影響と今後の展望

今回の関税撤回により、欧州企業は差し迫った追加負担を回避できましたが、米欧間の通商関係は依然として不安定な状況にあります。2025年8月から既に米国は欧州製品の大部分に15パーセントの関税を課しており、欧州の製造業者は出荷の遅延、価格の引き上げ、利益率の低下といった影響を受けています。国際商業会議所の副事務総長は「企業は前例のない高関税率という現実に直面している」と述べ、米国経済に深刻な影響が出ない限り状況が改善する可能性は低いと指摘しています。[reuters]​

日本企業にとっても、米欧間の通商摩擦は重要な関心事です。欧州市場への輸出や現地生産を行っている企業は、EU側の対抗措置や市場環境の変化を注視する必要があります。また、北極圏の開発競争が激化する中で、資源アクセスやサプライチェーンの再編が今後のビジネス戦略に影響を与える可能性があります。

グリーンランドと北極圏をめぐる「取引の枠組み」の具体的内容が今後明らかになるにつれて、国際貿易環境はさらなる変化を迎えるでしょう。2月6日の貿易協定猶予期限、2月7日の潜在的な関税発動日という重要な日程が迫る中、米欧の協議動向を継続的に監視していくことが、グローバルに事業展開する企業にとって不可欠となっています。

 

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