2026年2月19日
英国のCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)への加入プロセスが完了し、協定が新たな拡大フェーズに入った今、次なる有力候補として注目を集めているのが中米のコスタリカです。
中国や台湾、エクアドル、ウルグアイなど複数の国・地域が加盟申請を行う中で、なぜコスタリカが「最も実現可能性が高い候補の一つ」と目されているのか。そして、同国の加盟が日本企業にとってどのようなビジネスチャンスをもたらすのか。
本稿では、コスタリカの加盟交渉の現在地と、そこから広がる経済的な地平について、ビジネスパーソンの視点で深掘りします。

1. なぜ今、コスタリカなのか。加盟に向けた「優位性」の正体
コスタリカは2022年8月にCPTPPへの加盟を正式に申請しました。数ある申請国の中で、同国が一歩リードしていると見られる背景には、明確な理由があります。
OECD加盟国としての「信頼と実績」
コスタリカは2021年に経済協力開発機構(OECD)への加盟を果たしています。これは、同国の経済政策や法制度が、透明性、自由貿易、環境保護といった国際的な高水準(ハイスタンダード)を満たしていることの証明です。
CPTPPは「市場アクセス」だけでなく、「ルールの質」を重視する協定です。すでにOECD基準をクリアしているコスタリカは、CPTPPが求める高いハードルを越える能力があると加盟国から評価されやすく、交渉がスムーズに進む素地が整っています。
地政学的なハードルの低さ
中国や台湾の加盟申請は、高度な政治的・外交的判断を伴うため、既存加盟国の間でも意見調整が難航しています。一方でコスタリカは、中立的な立場を維持しており、特定の加盟国との深刻な対立構造がありません。
既存メンバーにとって、コスタリカの加盟手続きを進めることは、政治的な摩擦を避けつつ「CPTPPの拡大と開放性」を国際社会に示す絶好のモデルケースとなり得るのです。
2. 日本企業へのインパクト。サプライチェーンの要衝として
コスタリカの経済規模は決して巨大ではありませんが、その質と立地は日本企業にとって無視できない魅力を持っています。
「メディカル・シリコンバレー」との連携
コスタリカの主要輸出品目は、かつてのコーヒーやバナナから、現在は「医療機器」や「精密部品」へと劇的にシフトしています。多くの欧米ヘルスケア企業が進出し、高度な製造クラスターを形成しています。
CPTPP加盟により関税障壁や非関税障壁が撤廃されれば、日本の医療機器メーカーや部材サプライヤーにとって、北米市場向けの生産拠点として、あるいは共同開発のパートナーとして、コスタリカとの連携が容易になります。
フレンド・ショアリングの有力な候補地
米中対立や地政学リスクの高まりを受け、信頼できる友好国にサプライチェーンを移転する「フレンド・ショアリング」が加速しています。
北米市場に近く、政情が安定しており(中米の優等生と呼ばれます)、かつCPTPPという共通のルールの下にあるコスタリカは、北米向けのニアショアリング(消費地に近い場所での生産)拠点として極めて合理的な選択肢となります。
3. 今後の展望と課題。交渉の行方
現在、CPTPP委員会では「オークランド原則」に基づき、高い基準を満たす国から順次プロセスを進める方針が確認されています。
国内手続きとセンシティブ品目への対応
コスタリカ国内では、ロドリゴ・チャベス政権が自由貿易を強力に推進していますが、農業分野など一部のセンシティブな品目においては、国内の保護圧力との調整が必要です。日本にとっては、自動車や機械製品の関税撤廃を求めつつ、コスタリカ側の農産品アクセス要求にどう応えるかが交渉の焦点となるでしょう。
まとめ:中南米戦略の再構築を
コスタリカのCPTPP加盟は、単なる一カ国の追加にとどまりません。それは、日本企業が中南米市場、ひいては北米市場へアクセスするための「信頼できる新たなハブ」が誕生することを意味します。
まだ交渉の途中段階ではありますが、先を見据えるビジネスパーソンであれば、この国の動向をウォッチリストの上位に入れておくべきでしょう。2026年は、中南米ビジネスの地図が書き換わる重要な一年になるかもしれません。
免責
本稿は一般的な情報提供を目的としたもので、個別案件の法的助言ではありません。実際の投資・契約・規制適合は、対象国の法令と最新の当局公表、必要に応じて専門家見解に基づき判断してください。
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