用語の対応を統一します(本資料内の呼び方):
- 類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)
0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)
- この類に入る代表例(3〜6個):
- ワクチン(人用・動物用)(3002.41/3002.42)
- 抗体製剤(例:単クローン抗体)などの免疫産品(3002.13〜3002.15 等)
- 医薬品(治療/予防目的):バルク(非小売/非投与量)=3003、投与量・小売包装=3004
- 医薬品を含浸したガーゼ/絆創膏等(3005)
- 救急箱・救急袋、滅菌縫合材、造影剤(患者投与)等の「注4限定品」(3006)
- 細胞培養(cell cultures)・細胞治療製品(3002.51 等)
- この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
- サプリ・強化食品・健康飲料など(静脈注射用栄養剤を除く):第4部(食品)側へ(例:21類等)
- ニコチン含有の禁煙補助(ガム・パッチ等):24.04へ
- 診断用試薬(特に検体検査用の試薬・キット):38.22へ(HS2022で明確化)
- 化粧品系の調製品(3303〜3307):効能をうたっていても原則そちら
- 医薬品添加のせっけん等(3401):第34類へ
- 治療/予防用に調製していない血液アルブミン:35.02へ
- 実務での最重要分岐(1〜3個):
- 「医薬(治療/予防)」か、食品/サプリ/化粧品/雑品か(類注1で強く除外)
- 診断“試薬・検査キット”の性格:患者に投与する造影剤/診断用試薬(3006.30)か、検体検査用の試薬(3822)か
- 3003(非投与量・非小売) vs 3004(投与量・小売包装)
- (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
- 臨床試験向けキット(プラセボ/盲検):HS2022で3006.93が新設され、食品/雑品/医薬品側からの移動が起きやすい
- 診断キット(例:感染症検査キット):HS2017の3002.11(マラリア診断キット等)から、HS2022で3822側へ整理されているため、旧運用のままだとズレやすい
1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)
1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)
- この類で特に効くGIR(例:GIR1/GIR6など)
- **GIR1(見出し+注)**が最重要です。第30類は、**類注1(除外)と類注4(3006は列挙品だけ、かつ他項に入らない)**で“行き先”が決まりやすい類です。
- **GIR6(号レベル)**では、3002(免疫産品)や3003/3004(有効成分別の細分、抗マラリア製剤の定義)で差が出ます。
- GIR3(混合品・セット)が関係する場面もありますが、第30類は部注・類注側で優先ルールが置かれていることが多いです(例:部注2「投与量/小売包装なら3004等に固定」)。
- 「品名だけで決めない」ための観点
- 用途:治療・予防(therapeutic/prophylactic)か、栄養・美容・衛生か
- 剤形・包装:投与量(measured doses)か/小売包装か(3003/3004の分岐)
- 成分:抗生物質、ホルモン、アルカロイド(エフェドリン等)、ビタミン、抗マラリア有効成分など
- 診断の形態:患者に投与する診断用(3006.30)か、検体検査用(3822)
- 規制区分(薬機法等):HSを直接決めるものではありませんが、用途・形態の裏付け資料になり得ます(添付文書、承認情報等)。
1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)
- Step1:除外(類注1)に当たらないか?
- サプリ/飲食物(静脈注射用栄養剤を除く)→第4部へ
- ニコチン禁煙補助(ガム/パッチ等)→24.04
- 診断用試薬(38.22)→3822
- 化粧品(3303〜3307)、医薬品添加せっけん(3401)等もここで弾く
- Step2:3006(注4の列挙品)に該当するか?
- 滅菌縫合材、造影剤(患者投与)、救急箱、避妊剤(条件あり)、医療用ゲル、薬剤廃棄物、瘻造設術用器具、臨床試験用プラセボ/盲検キット…など
→ 該当すれば原則3006で固定(他項ではなく)
- 滅菌縫合材、造影剤(患者投与)、救急箱、避妊剤(条件あり)、医療用ゲル、薬剤廃棄物、瘻造設術用器具、臨床試験用プラセボ/盲検キット…など
- Step3:3005(含浸ガーゼ等)に該当するか?
- 医薬品を含浸/塗布、または医療目的で小売包装されたガーゼ・包帯・絆創膏等 → 3005
- Step4:3002(血液・免疫産品・ワクチン・微生物培養・細胞培養)か?
- 抗体・免疫グロブリン、ワクチン、毒素、微生物培養(酵母除く)、細胞培養/細胞治療等 → 3002
- Step5:残りは概ね3001(臓器療法用等)または3003/3004(医薬品)
- 投与量・小売包装なら3004、そうでなければ3003(ただし化学的に単一化合物等で章28/29側に落ちる余地もあるため、注と実態で確認)
- よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
- 第30類 vs 第38類(3822:診断用試薬・キット)
- 第30類 vs 第21類(サプリ/食品)
- 第30類 vs 第33類(化粧品)
- 第30類 vs 第24類(ニコチン禁煙補助=24.04)
2. 主な項(4桁)とその内容
2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)
第30類は4桁項が少ないため、全列挙します。
| 項番号(4桁) | 見出しの要旨(日本語) | 典型例(製品名) | 重要な分岐条件/除外/注意点 |
|---|---|---|---|
| 3001 | 臓器療法用の腺・器官(乾燥)、その抽出物、ヘパリン等 | 乾燥臓器粉末、臓器抽出物、ヘパリン/塩、治療用に調製した動物性物質 | 生鮮臓器等は別類になり得る。血液製剤・免疫血清等は3002へ。 |
| 3002 | 人血、治療/予防/診断用に調製した動物血、抗血清・血液分画物・免疫産品、ワクチン、毒素、微生物培養、細胞培養 | 免疫グロブリン、抗体製剤、ワクチン、毒素、培養微生物、細胞治療製品、細胞培養 | HS2022で**細胞培養(cell cultures)**が明示。診断“試薬”は3822除外に注意。 |
| 3003 | 混合した医薬品(治療/予防)で、投与量・小売包装ではない | 原薬混合粉末(製造用)、バルク医薬製剤 | 3004との境界=投与量/小売包装。類注3の「混合してない/混合した」の扱いが重要。 |
| 3004 | 医薬品(治療/予防)で、投与量・小売包装(貼付剤含む) | 錠剤・カプセル・注射剤、経皮吸収パッチ、処方薬/OTC | 部注2により、投与量/小売包装で3004に該当するなら他類(28/29等)より優先されやすい。 |
| 3005 | 医薬品含浸/塗布、または医療用小売包装のガーゼ等 | 絆創膏、消毒ガーゼ、貼付用ドレッシング | 単なる綿/ガーゼ(医薬品なし・医療用小売包装でない)だと30類外の可能性。 |
| 3006 | 類注4で列挙された「その他の医療用品」 | 滅菌縫合材、造影剤、救急箱、避妊用調製品、医療用ゲル、薬剤廃棄物、瘻造設術用器具、臨床試験用プラセボ/盲検キット | 列挙品のみ、かつ「他の項に属しない」と明記。特に3006.93(HS2022新設)に注意。 |
2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)
- 分岐条件の整理(この類で頻出)
- 投与量(measured doses)・**小売包装(retail sale)**か:3003↔3004
- 免疫産品の「混合してない/混合した」:3002.13↔3002.14(号注1)
- 抗マラリア有効成分の該当:3003.60/3004.60(号注2で成分範囲が規定)
- 診断用:患者投与か/検体検査か:3006.30↔3822
- 臨床試験用プラセボ/盲検キット:3006.93(HS2022で明確化)
- 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
- 3003(医薬品・非投与量/非小売) vs 3004(医薬品・投与量/小売)
- どこで分かれるか:投与量(錠剤、アンプル、貼付剤等)または小売包装で販売される形か
- 判断に必要な情報:
- 包装形態(1回量/単回投与か、瓶/ブリスター等)
- ラベル表示(用法用量、一般消費者向け表示の有無)
- 流通形態(製造用バルクか、最終製品か)
- 典型的な誤り:原薬混合品(製造用)を“医薬品だから”と3004にしてしまう
- 3002.13(免疫産品:混合してない、非小売/非投与量) vs 3002.14(混合した、非小売/非投与量) vs 3002.15(投与量/小売)
- どこで分かれるか:号注1により、溶媒に溶かす・安定剤添加等で「混合した」に寄るかどうかが分岐点になります
- 判断に必要な情報:
- 製剤形態(凍結乾燥、溶液、懸濁)
- 添加物(安定剤、防腐剤、緩衝剤など)
- 小売包装・投与量の有無
- 典型的な誤り:溶媒に溶かしただけの抗体溶液を「混合してない」と扱う/逆に微量添加を見落とす
- 3006.30(造影剤・患者投与の診断用試薬) vs 3822(診断用試薬・検査キット)
- どこで分かれるか:患者に投与することを前提としているか(3006.30)/検体検査(in vitro)側か(3822)
- 判断に必要な情報:
- 使用方法(投与/注入 vs 検体に滴下)
- 添付文書(投与経路、禁忌、用量の記載)
- 梱包(投与量にしたものか)
- 典型的な誤り:検体検査キット(例:迅速検査)を「医療用途だから30類」としてしまう
※HS2022では診断用試薬・キットの3822側への整理が明確です
- 3006.93(プラセボ/盲検臨床試験キット) vs 3004.90(一般の医薬品)/ 2106・3824等
- どこで分かれるか:「認可(recognized)された臨床試験」用で、投与量にしたプラセボ/盲検(または二重盲検)キットに該当するか
- 判断に必要な情報:
- 臨床試験プロトコル(試験名、盲検設計、使用目的)
- キット構成(プラセボ/実薬の有無、表示)
- 投与量包装の有無
- 典型的な誤り:プラセボを「食品」や「雑品」として扱う/実薬が入るので3004に固定してしまう
- 3004.60(抗マラリア:サブヘディング注2該当) vs 3004.90(その他)
- どこで分かれるか:**注2に列挙された抗マラリア有効成分(例:アルテミシニン系、クロロキン等)**を含むかどうか
- 判断に必要な情報:
- 有効成分(INN名まで)と含有有無
- 配合剤か単剤か(配合でも該当し得る)
- 典型的な誤り:「抗マラリア用途」だけで判断し、成分要件を確認しない
3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)
3-1. 関連する部注(Section Notes)
- ポイント要約:
- 部注2(Section VI Note 2):投与量にしてある/小売包装であることにより、3004・3005・3006等に該当する場合、他の類(28/29等)よりも当該見出しで分類する趣旨の“固定”ルールです。
- 部注3(Section VI Note 3):複数成分をセットにして「混ぜて使う」形で提示される場合、一定条件を満たすと出来上がり製品の見出しで分類します(医療用調製品・キットで論点になり得ます)。
- 実務での意味(具体例つき):
- 例)同じ化学物質でも、医薬品として投与量包装された形だと3004に寄りやすい(ただし第30類注の除外や3006限定など“上位ルール”がある点に注意)。
- 例)「2液混合で使う」医療用調製品は、セットの提示方法次第で分類が変わる可能性があるため、**梱包形態(同梱・補完性・再梱包不要)**の確認が重要です。
- “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
- 投与量/小売包装の条件を満たすことで、もともと28/29側(化学品)で考えていたものが、30.04等へ“移動”する検討が必要になる。
3-2. この類の類注(Chapter Notes)
- ポイント要約(第30類注の骨格):
- 注1:除外(食品・禁煙ニコチン品・化粧品・3822診断試薬など)
- 注2:3002の「免疫産品」定義(単クローン抗体など免疫過程制御に直接関与するペプチド/タンパク質)
- 注3:3003/3004/注4(d)における“混合してない/混合した”の扱い(28/29の物品も「混合してない」に含める等)
- 注4:3006は列挙品のみで、他の見出しに入らない(exclusive list)
- 用語定義(定義がある場合):
- 「免疫産品」:抗体関連物質、インターロイキン、インターフェロン等(29.37を除外)という整理
- 除外規定(除外先の類・項も明記):
- 禁煙補助(ニコチン含有の錠剤/ガム/パッチ等)→24.04
- 診断用試薬→38.22
- 化粧品調製品→33.03〜33.07
4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)
- 影響ポイント1:「診断」なのに第30類に入らない(3822へ)
- 何を見れば判断できるか(必要情報):
- 患者投与(造影剤等)か、検体検査(in vitro)か
- 製品の使用手順書・添付文書の記載(投与経路の有無)
- 現場で集める証憑:
- 添付文書、IFU、製品仕様書、梱包写真(キット内容)
- 誤分類の典型:
- 「医療用途だから30類」として、検査キットを3002/3006にしてしまう
- HS2022で注1(ij)新設により、診断試薬・キット(マラリア診断キット含む)が3822へ移管された点が背景です
- 何を見れば判断できるか(必要情報):
- 影響ポイント2:3006(注4列挙品)は“リスト品だけ・他項に入らない”
- 何を見れば判断できるか(必要情報):
- 注4(a)〜(l)のどれに該当するか(例:救急箱、医療用ゲル、薬剤廃棄物、瘻造設術用器具、臨床試験キット等)
- 現場で集める証憑:
- 仕様書、用途説明、梱包/ラベル、滅菌証明、臨床試験関連文書(3006.93)
- 誤分類の典型:
- 「キット」だからGIR3で雑品扱い/「医薬品が入っている」から3004固定で考える
- 実際は注4(e)でプラセボ/盲検臨床試験キットが明確に3006対象になっています
- 何を見れば判断できるか(必要情報):
- 影響ポイント3:“混合してない/混合した”の扱い(注3・号注)
- 何を見れば判断できるか(必要情報):
- 28/29の化学品は「混合してない」に含める等、注3の“みなし”ルール
- 免疫産品は号注1で「溶媒に溶かした」「安定剤を加えた」等を混合として扱う
- 現場で集める証憑:
- 成分表、SDS、製剤処方、安定剤・賦形剤の有無、製造工程概要
- 誤分類の典型:
- 「溶液=単一成分」と誤解して“混合してない”にしてしまう
- 何を見れば判断できるか(必要情報):
5. 分類でよくある間違い(原因→対策)
- 間違い:サプリ(錠剤・カプセル)を3004(医薬品)にする
- なぜ起きる:剤形が医薬品と似ており、宣伝文言も紛らわしい
- 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):食品・飲料(食餌補助剤等)は第30類から除外(注1(a))
- 予防策:
- 確認資料:販売形態、表示(栄養補助/疾病治療の標榜)、成分・用量
- 社内質問例:「日本/輸出先で医薬品承認の対象か?」「添付文書(医薬品様式)があるか?」
- 間違い:ニコチンガム/ニコチンパッチ(禁煙補助)を3004にする
- なぜ起きる:「治療目的」「パッチ=3004に書いてある」などの早合点
- 正しい考え方:注1(b)で24.04へ除外
- 予防策:
- 確認資料:ニコチン含有有無、用途(禁煙補助)、製品説明
- 間違い:検体検査キット(迅速検査など)を3002/3006にする
- なぜ起きる:「診断=医療用品」だから30類と思い込む
- 正しい考え方:注1(ij)で3822診断試薬を除外、HS2022で移管が明確化
- 予防策:
- 確認資料:IFU(検体検査か患者投与か)、キット構成、用途
- 社内質問例:「患者に投与する試薬ですか?それとも検体に反応させますか?」
- 間違い:血液型判定用試薬を3006.20とみなす(HS2017の名残)
- なぜ起きる:旧HSのサブヘディングを参照している
- 正しい考え方:HS2022で血液型判定用試薬は3822.13側へ移管(3006.20は移管対象)
- 予防策:
- 確認資料:適用HS版(通関は最新HS)、移行表(相関表)確認
- 間違い:3003(バルク)と3004(投与量/小売)を取り違える
- なぜ起きる:インボイス品名が「medicament」等で粗い、包装情報が不足
- 正しい考え方:3004は投与量・小売包装(貼付剤含む)であることが核心
- 予防策:
- 確認資料:包装仕様(ブリスター、アンプル単位)、最終用途(患者向けか製造向けか)
- 間違い:造影剤を“診断用試薬=3822”に寄せてしまう
- なぜ起きる:「診断」という言葉に引っ張られる
- 正しい考え方:患者に投与する造影剤・診断用試薬は注4(d)により3006.30側の枠で考える
- 予防策:
- 確認資料:投与経路、投与量包装、薬事資料(添付文書)
- 間違い:臨床試験用のプラセボ/盲検キットを2106(食品)や3824(化学品)にする
- なぜ起きる:見た目が食品/錠剤・ゼラチンカプセル等で、医薬品として販売しないため
- 正しい考え方:HS2022で注4(e)が置かれ、3006.93として明確化
- 予防策:
- 確認資料:臨床試験での使用証跡(プロトコル、治験届関連、キット仕様)
- 間違い:細胞培養品を「研究用だから30類外」と決め打ちする
- なぜ起きる:医薬品のイメージに合わず、化学品/試薬扱いしがち
- 正しい考え方:3002見出しに“cell cultures”が含まれる(HS2022で明確)
- 予防策:
- 確認資料:製品説明(cell cultureであること)、用途(治療/研究)、輸送形態(凍結・培地等)
6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点
6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係
- HSの付番がPSR選択に直結します。
例)最終製品が3004(医薬品)か3822(診断試薬)かで、PSR(CTC条件やRVC条件)が変わり、原産性判断が崩れる可能性があります(特にHS2022での診断試薬の移管があるため注意)。 - よくある落とし穴:
- 最終製品HSと、BOM上の材料HSを混同する
- 3006(キット類)を“セットだから”と別分類にしてしまい、PSRがズレる
6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)
- 各EPA等は採用しているHS版が異なるため、協定で採用するHS版でPSRを引く必要があります。
- HS2022の番号で検索すると誤ることがあるため、税関のPSR検索画面でも注意喚起されています。
- トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
- 「通関は最新HS」「PSR確認は協定採用HS」になり得るため、相関表で旧新コードの対応を必ず作る(特に3006.93新設や3002→3822移管のような構造変更時)。
6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)
- 必要データ(一般論):
- 材料表(BOM)、原価、工程フロー、原産国
- 非原産材料のHS(協定採用HS版で)
- RVC計算の前提(対象費目、計算方式)
- 証明書類・保存要件(一般論):
- 製造記録、購買記録、原材料の原産証明、工程外注情報 等
7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)
7-1. 変更点サマリー(必須:表)
| 比較(例:HS2017→HS2022) | 変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更) | 該当コード | 変更の要旨 | 実務への影響 |
|---|---|---|---|---|
| HS2017→HS2022 | 移管(30類→38類)+注新設 | 3002.11 等 → 3822.11/3822.12/3822.19 等 | 診断用試薬・キット(マラリア診断キット含む)を3822へ整理。第30類注1(ij)で3822を除外。 | 検査キットの“30類固定”が崩れる。過去コード運用の見直しが必要。 |
| HS2017→HS2022 | 移管(30類→38類)+注置換 | 3006.20 → 3822.13 | 血液型判定用試薬が3822.13へ。注4(e)の置換に伴う移管。 | 血液型判定試薬の分類が変わる。旧3006.20参照は要注意。 |
| HS2017→HS2022 | 削除・置換(サブヘディング再編) | 3002.20/3002.30 → 3002.41/3002.42/3002.49 | ワクチン等の細分を再構成(人用/動物用等の整理)。 | 品目番号が変わり、社内マスタ・PSR対応が必要。 |
| HS2017→HS2022 | 新設(明確化) | 3002.51/3002.59 | cell cultures(細胞培養)を明確化し、細胞治療製品等を分類しやすく。 | 細胞系製品の分類根拠が明確に。輸出管理・規制確認も強化しやすい。 |
| HS2017→HS2022 | 新設 | 3006.93 | 認可臨床試験用のプラセボ/盲検(または二重盲検)キットを新設。 | 治験関連の輸出入で、食品/雑品/医薬品扱いの揺れを減らす。 |
| HS2017→HS2022 | 文言修正・参照変更 | 注1(b) | ニコチン禁煙補助の除外先が24.04に明確化。 | 禁煙補助製品の分類先が明確。 |
| HS2017→HS2022 | 削除 | 3002.19 | 空のサブヘディングとして削除。 | 実務影響は限定的(マスタ整合は必要)。 |
7-2. 「違うことになった根拠」(必須)
- 根拠資料と読み取り(本稿の判断根拠):
- **WCO HS2022 第30類本文(注1・注4・3002の見出しにcell cultures追加、3006.93等)**に基づき、HS2022の範囲・定義・列挙品を確認しました。
- **WCO 相関表(HS2017→HS2022, Table I)**の「Remarks」により、
- 診断用試薬・キット(マラリア診断キットを含む)が3002側から3822へ移管
- 血液型判定用試薬が3006.20から3822.13へ移管
- ワクチン(3002.20/3002.30)の再編(3002.41等)
- cell cultures(3002.51等)の新設
- 3006.93の新設
という“何が変わったか”を裏取りしました。
- 日本実務では、**税関の関税率表解説(第30類)**が日本語で注・用語を整理しているため、実務的な読み替え・証憑収集の観点は同資料に従って整理しました。
8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード
主要な追加・削除・再編(“実務で効くもの”中心)を、HS2007→2012→2017→2022の流れで整理します(相関表ベース)。
| 版の変化 | 主な追加/削除/再編 | 旧コード → 新コード(例) | 変更の要旨 | 実務メモ |
|---|---|---|---|---|
| HS2007→HS2012 | 範囲拡大(免疫産品) | (概念的に)3002.10の範囲拡大 | 免疫学的過程に直接関与する免疫産品を3002側でカバーする方向で範囲が拡大。 | 免疫産品の取り扱いが段階的に整備されてきた流れ。 |
| HS2012→HS2017 | 新設/細分(診断・免疫・抗マラリア等) | 3002.10 → 3002.11(マラリア診断キット)+3002.12〜3002.15(免疫産品) 等 | 免疫産品の細分、マラリア診断キットの切り出し等。 | HS2022でこの“診断キット”は3822側へ移るので、旧知識の固定化に注意。 |
| HS2012→HS2017 | 新設(抗マラリア医薬) | (一部)3003.90等 → 3003.60、3004.60 | 抗マラリア医薬を独立サブヘディング化し、注で成分範囲を明確化。 | 成分(INN)確認が必須。 |
| HS2017→HS2022 | 30類→38類へ移管(診断用) | 3002.11等 → 3822.11/12/19等 | 3822側に診断試薬・キットを整理。30類注1(ij)新設。 | 検査キットの分類ミスが多発しやすい改正。 |
| HS2017→HS2022 | 30類→38類へ移管(血液型判定試薬) | 3006.20 → 3822.13 | 注4(e)の置換+3822.13新設で移管。 | 3006.20を使い続けない。 |
| HS2017→HS2022 | 新設(治験キット) | 該当なし → 3006.93 | 認可臨床試験用プラセボ/盲検キットを明確化。 | 治験関連の輸出入で“分類の根拠資料”が重要に。 |
| HS2017→HS2022 | 新設(細胞培養の明確化) | (従来3002.90等で解釈)→ 3002.51/59 | cell culturesの分類を明確化。 | 再生医療系・研究用細胞の分類検討がしやすい。 |
9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)
- 事例名(短く):検体検査キットを30類で申告
- 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):第30類注1(ij)(3822診断試薬の除外)
- 起きやすい状況:インボイス品名が「diagnostic kit」だけ、用途説明不足
- 典型的な影響:修正申告、追加納税、検査強化、通関遅延
- 予防策:IFU・用途説明(患者投与か検体検査か)を添付
- 事例名:禁煙ニコチンパッチを医薬品(3004)扱い
- 誤りの内容:第30類注1(b)(24.04へ)
- 起きやすい状況:「経皮投与=3004」と短絡
- 影響:税番修正、許認可/規制確認のやり直し
- 予防策:成分(ニコチン)と用途(禁煙補助)を明記し、24.04検討
- 事例名:治験用プラセボキットを食品扱い
- 誤りの内容:第30類注4(e)の見落とし(3006.93)
- 起きやすい状況:外観が“錠剤/カプセル”で食品に似る、治験資料が社内にない
- 影響:税番修正、出荷遅延(治験スケジュール影響)
- 予防策:臨床試験プロトコル、キット仕様(盲検設計)、投与量包装の証憑整備
- 事例名:血液型判定試薬を旧3006.20で申告
- 誤りの内容:HS2022で3822.13へ移管(改正追随漏れ)
- 起きやすい状況:社内マスタがHS2017のまま
- 影響:税番修正、原産地判定や許認可確認の再作業
- 予防策:HS版管理(改正時の相関表で一括棚卸)
10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)
ここでは日本前提で「第30類に多い論点」を一般論で整理します(個別品目で要確認)。
- 検疫・衛生(SPS等)
- 人血・動物血、ワクチン、微生物培養、細胞培養などは、製品の性質により別途の衛生・バイオ関連規制が関係し得ます(輸入前に所管官庁・税関へ確認)。
- 少なくとも、医薬品等として業で輸入する場合は、製造販売業/製造業の許可や品目ごとの承認等が必要となる旨が行政側で案内されています。
- その他の許認可・届出(薬機法系)
- 業として医薬品等を輸入する場合:輸入通関の都度、業許可証や製造販売承認書等の提示が必要とされる旨のQ&A・案内があります。
- 個人輸入:輸入確認証(旧「薬監証明」)等の枠組みがあり、一定範囲を超える場合等は手続が必要とされています。
- 麻薬・向精神薬等(該当する場合)
- 成分によっては、麻薬及び向精神薬取締法等の規制対象となり、輸入・輸出手続が大きく変わります。
- 実務上は「有効成分(INN/一般名)」「含有量」「用途」「製剤形態」を起点に該当性を確認します。
- 安全保障貿易管理(該当する場合)
- 第30類(特に3002の毒素・微生物培養等)は、**輸出管理(外為法の枠組み)**の確認が必要になるケースがあります(該非判定、用途・需要者確認など)。
- 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
- 税関(品目分類・事前教示、輸入手続)
- 厚生労働省(医薬品等の輸入手続、個人輸入、各種法令)
- 必要に応じて経済産業省(安全保障貿易管理)
- 実務での準備物(一般論):
- 製品仕様書、成分表(API/添加剤)、SDS、添付文書/IFU、包装仕様(投与量・小売)、用途説明
- 治験品なら:プロトコル、盲検設計、キット構成表(3006.93判断用)
11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)
- 分類前チェック(製品情報の収集)
- 成分(INN名まで)・含有量、剤形、用途(治療/予防/診断/栄養)
- 包装:投与量か、小売包装か
- 診断品:患者投与か、検体検査か
- キット:セット構成、同梱状況、混合して使うか
- 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
- 第30類注1の除外(食品、ニコチン禁煙補助、3822診断試薬、化粧品等)を再確認
- 3006は注4列挙品だけか確認
- 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
- インボイス品名に「dosage form」「for clinical trial」「for administration to patient」など誤解が出ない語を入れる
- 補足資料:ラベル写真、添付文書、仕様書、MSDS/SDS
- FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
- 協定採用HS版でPSRを確認(HS版ズレ注意)
- 相関表で旧新コードの対応表を社内保管(改正時に更新)
- 規制チェック(許可/届出/検査)
- 業として輸入:許可・承認書類の要否を確認
- 個人輸入が関係する販売形態なら輸入確認証等の案内も確認
- 規制成分(麻薬・向精神薬等)の該当性確認
12. 参考資料(出典)
- WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
- HS2022 Nomenclature, Chapter 30(PDF) (参照日:2026-02-19)
- HS2022 Nomenclature, Section VI Notes(PDF) (参照日:2026-02-19)
- HS Correlation Table HS2017→HS2022 (Table I)(PDF) (参照日:2026-02-19)
- HS Correlation Table HS2012→HS2007 (Table I)(PDF) (参照日:2026-02-19)
- HS Correlation Table HS2017→HS2012 (Table I)(PDF/日本税関掲載) (参照日:2026-02-19)
- 日本税関・公的機関のガイド
- 税関「関税率表解説 第30類(医療用品)」PDF (参照日:2026-02-19)
- 税関 PSR検索画面(HS版違いの注意) (参照日:2026-02-19)
- 税関「協定・法令等(HS版がEPAで異なる旨)」 (参照日:2026-02-19)
- 税関「医薬品・化粧品等の個人輸入」Q&A (参照日:2026-02-19)
- 省庁(規制・手続)
- 地方厚生局「医薬品等の輸入手続(業として輸入)」 (参照日:2026-02-19)
- 地方厚生局「医薬品等輸入手続Q&A」(PDF) (参照日:2026-02-19)
- 厚労省「医薬品等の個人輸入について(輸入確認証等)」 (参照日:2026-02-19)
- e-Gov法令「麻薬及び向精神薬取締法」 (参照日:2026-02-19)
- 経産省(安全保障貿易管理の制度)資料 (参照日:2026-02-19)
付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方(任意)
- どの情報を揃えると相談が早いか(一般論)
- 製品の仕様書(用途・剤形・成分・含有量)
- 写真(外観、ラベル、包装、キット構成)
- SDS/成分表、添付文書/IFU、臨床試験プロトコル(治験品の場合)
- 「なぜそのHS候補だと思うか」のメモ(注の該当箇所)
- 税関の公式導線(日本)
- 事前教示制度(品目分類):Eメールでも照会可能
- 事前教示回答(品目分類)の検索:公開可能な回答を検索できる
- 参考になる「輸入貨物の品目分類事例」も別途公開
免責事項
本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。
