HSコードは番号から説明責任へ:ドシエの必要性が税関により強く推奨される

HSコードは、正しい番号を当てるだけの業務ではなくなりつつあります。製品が高度化し、機能や用途が複合化するほど、分類の論点は増え、判断の揺らぎも起きやすくなります。だからこそ近年は、結論としてのHSコードに加えて、その結論に至った根拠をどれだけ明確に示せるかが、通関スピードや事後対応の負担を左右する局面が増えています。

この流れの中で注目されているのが、HSコード分類根拠書、いわゆるドシエです。ドシエは追加の書類ではありません。経営の視点でいえば、通関停滞、追加照会、事後調査、再分類といった不確実性を下げ、サプライチェーンの時間とコストを安定させるための説明責任インフラです。

税関がドシエを推奨する理由

税関がドシエを重視する背景は、実務上の必要性に集約されます。
第一に、審査を速く正確に進めるためです。仕様や用途の情報が不足すると、税関は照会を増やして確認せざるを得ません。最初から仕様と根拠が整理されていれば、審査の起点が共有され、照会の往復が減り、結果として通関が速くなります。

第二に、判断の一貫性を高めるためです。人や部署、時期によって解釈のブレが出やすい領域ほど、事実と根拠を文書化しておくことで、同じ判断を再現しやすくなります。

第三に、事後調査や紛争のコストを抑えるためです。過去にどんな事実認定をし、どの根拠で結論に至ったかが整理されている企業ほど、説明が短期間で済み、修正が必要な場合でも影響範囲の特定が速くなります。

ドシエに入れるべき中身

ドシエの目的は、難しい文章を書くことではなく、事実と論理を一体で提示できる状態を作ることです。基本の骨格は次のとおりです。

  1. 製品の客観仕様
    材質、構造、機能、用途、製造工程、構成部品、型番体系、性能値など
  2. 証拠資料
    仕様書、図面、写真、カタログ、取扱説明書、SDS、分析成績、工程表など
  3. 候補コードと除外理由
    なぜそのコードで、なぜ他の候補ではないのか。境目となる条件は何か
  4. 法的根拠
    解釈に関する通則、部注・類注、関連する参考資料や先例など

この構造を揃えるだけで、社内承認の速度も、対外説明の再現性も大きく変わります。

ドシエで使うべき言語

ここは輸入と輸出で考え方を分けるのが現実的です。

日本に輸入する場合

日本の税関対応を前提にするなら、日本語で要点が整理されていることが最も有利です。理由は単純で、誤解が減り、照会が短くなりやすいからです。外国語の資料が添付されること自体は珍しくありませんが、少なくとも要点と論点は日本語で押さえておくほうが、結果として通関が安定します。

輸出する場合

輸出側のドシエは、英語が事実上必須になる場面が多いです。相手国の通関関係者、輸入者、通関業者、保税倉庫、監査担当など、関与者が国境を越えて増えるため、共通言語として英語が標準になりやすいからです。
加えて、輸出では自社だけで完結しません。相手先が輸入申告を行う国では、分類の説明責任は輸入者側に置かれるのが一般的です。輸入者が説明できなければ、結果として貨物は止まり、追加照会や保留が発生します。このとき、英語で整理されたドシエがあるかどうかが、輸入者の対応力と通関スピードを左右します。

なお、相手国によっては英語だけで十分とは限らず、現地語の補足が有効な場合もあります。現実解としては、次の二段構えが運用しやすいです。
・社内の正本として日本語版を整備し、意思決定と統制を固める
・対外共有用として英語版を整備し、輸入者や海外拠点と同じ論点で会話できる状態を作る

ここでHSCFが有益になるポイント

ドシエ運用のボトルネックは、知識不足よりも、情報収集と論点整理と文書化です。HSCFが効くのはまさにこの部分です。

  1. 証拠の回収を速くする
    写真、PDF、仕様書など、現場に散らばる材料を起点に検討を始められると、ドシエの土台作りが前に進みます。
  2. 不足情報を対話で特定し、抜けを減らす
    分類が割れる多くの原因は、必要な仕様が欠けていることです。追加確認すべきポイントを早い段階で洗い出せれば、照会されやすい穴を先回りして塞げます。
  3. 候補と分岐点を明示し、除外理由を作りやすくする
    ドシエで最も価値が出るのは、なぜ他のコードではないかの説明です。候補の並列提示と論点の切り分けができると、除外理由が短時間で固まります。
  4. 日英の併用運用に向く
    輸入は日本語、輸出は英語という二重運用は、理屈は正しくても現場負担が重くなりがちです。HSCFを活用して、日本語で統制を固めながら、英語の対外共有版も同じ骨格で整える運用にできると、スピードと再現性が両立します。用語や表現のブレを抑えられることも、海外とのコミュニケーションでは効いてきます。

まとめ

ドシエが重視されるのは、分類の正しさだけでなく、説明可能性が通関速度とコストを左右するからです。税関側にとっても、企業側にとっても、審査の起点となる情報と論理を共有できることが、最大の合理化になります。

そして言語は、輸入は日本語での明確化、輸出は英語での対外共有が鍵になります。輸出では英語のドシエがあるかどうかが、相手国側の通関を動かす実務上の決め手になり得ます。
この二重運用を現場で回すための加速装置として、証拠収集、論点整理、候補比較、文書化を一気通貫で支援できるHSCFは、有益な選択肢になります。

 

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