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関税ショックは先送り:USTRの中国301条除外延長があなたのビジネスに意味すること

USTR、中国の「301条関税除外」を2026年11月まで延長──ビジネスパーソンは何を押さえるべきか

1. まずは「3行」で今回のポイント

2025年11月25日、米通商代表部(USTR)は、中国に対する301条追加関税のうち178件の「除外(exclusions)」を約1年延長し、**2026年11月9日23:59(米東部夏時間)**まで有効とすることを発表しました 。ustr+1

対象は、太陽光パネル製造装置14カテゴリーと、産業・医療機器など164カテゴリー(電動モーター、血圧計、ポンプ部品、自動車用エアコンプレッサー、プリント基板など)で、いずれも主にB2B用途の中間財です 。ustr

背景には、**米中間の新たな経済・貿易合意(Kuala Lumpur Joint Arrangement)**があり、中国側のレアアース輸出規制の緩和や米農産品輸入拡大と「パッケージ」で決まった措置です 。cassidylevy+1

以下では、この決定がグローバル調達・生産戦略、価格交渉、リスク管理にどのような意味を持つのかを整理します。

2. そもそも「301条関税」とは何か、なぜ除外があるのか

2-1. 301条は「不公正貿易」に対する”何でも屋”条項

米国通商法301条(Section 301 of the Trade Act of 1974)は、相手国の不公正な貿易慣行に対して、米国が一方的に是正措置(関税引き上げなど)を取る権限を大統領・USTRに与える条文です。

2017年に米国は、中国の技術移転強要・知的財産権侵害・イノベーション政策を巡って301条調査を開始し、2018年以降、いわゆるList1〜4と呼ばれる段階的な追加関税(25%や7.5%など)を導入しました。

2-2. 「除外(exclusions)」とは何か

301条関税には、プロダクトごとに追加関税を免除する「除外」制度があります:

  • 10桁のHSコード+商品説明の組み合わせで「この条件に合致する製品は301条の追加関税を免除する」と定義
  • 該当製品は、WTO上の通常関税(MFN税率)のみ、301条分はゼロ
  • 企業がUSTRに申請し、代替供給源の有無・米国産業への影響などを踏まえて判断される仕組み

この除外は期限付きで、ここ数年は3〜6カ月単位で延長されてきました。特に今回延長の対象となったのは:

  • 2024年5月に164件の除外が2025年5月31日まで延長
  • 2024年9月に太陽光製造装置に関する14件の新たな除外を追加
  • その後、合計178件が2025年8月31日まで、さらに2025年11月29日まで延長されていた案件ですey+1

3. 今回の決定:延長された178件の中身

3-1. 有効期限は「2026年11月9日23:59(米東部夏時間)」まで

今回公表された連邦官報(Federal Register)通知では、以下のように定義されています:

  • 対象: 現在有効な178件の除外
  • 期間: 2025年11月30日0:01(米東部標準時)以降に輸入される貨物で、**2026年11月9日23:59(米東部夏時間)**までに米国に輸入されたもの

USTRのプレスリリースでは「2026年11月10日まで」と表現されていますが、実務的には11月9日深夜までの通関分が対象と理解するのが安全です 。kpmg+1

3-2. どんな品目が対象か

報道やUSTRの説明によれば、対象は主に以下の2グループです:ustr

太陽光パネル製造関連(14カテゴリー)

  • ウエハーやセルの生産ラインに用いる装置
  • コーティング、エッチング、検査装置など

産業・医療用途を中心とする中間財(164カテゴリー)

  • 電動モーター
  • 血圧測定装置
  • ポンプのコンポーネント
  • 自動車用エアコンプレッサー
  • プリント基板(PCB)など

いずれも、最終消費財というより、設備・部品・医療機器などの中間財です。B2Bの製造業・医療機器産業にとって重要な入力財である、というのが共通点と言えます。

連邦官報では、これらはHTSUS(米国輸入統計品目表)の特定の臨時番号(9903.88.69・9903.88.70)および関連する注記で定義されており、「記載条件を満たすすべての輸入者に適用される」と明記されています。

4. なぜ米国は「除外」をさらに延長したのか

4-1. 公募コメント:代替調達の難しさと”猶予期間”の要望

USTRは2025年9月16日付けで、178件の除外を2025年11月以降も延長すべきかどうか、パブリックコメントを募集しました。評価軸として、以下を挙げています:

  • 中国以外からの代替調達の可否とその量
  • 米国または第三国から調達するための取り組み状況
  • 追加の時間がなぜ必要か
  • 延長が、最終的に中国依存からの脱却に寄与するか
  • 米国の政策優先事項(サプライチェーン強靭化、安全保障など)との整合性

その結果、178件中147件が延長支持のコメントを受け、反対意見があったのは10件のみでした。多くの企業が、「現時点で中国以外の供給源は量・品質ともに十分ではない」「急激な関税復活は、米国内の製造や医療提供に悪影響を与える」といった趣旨の懸念を表明したとされています。

4-2. 米中「Kuala Lumpur Joint Arrangement」とのパッケージ

さらに大きな要因が、**2025年10月30日に韓国で開催されたトランプ大統領と習近平国家主席の会談を受けて合意された「Kuala Lumpur Joint Arrangement」**です 。cassidylevy+1

ホワイトハウスの資料によると、この合意で中国は以下を約束しました:whitehouse

  • レアアースやその他重要鉱物に対する世界的な輸出規制の延期・実質的な撤廃
  • 米半導体企業などへの報復措置の見直し
  • 大豆・ソルガム・木材など米農産品の輸入拡大
  • 米国製品に対する自国側の関税除外プロセスを2026年12月31日まで延長

これに対して米国側は:

  • 中国製品への「引き上げ済みの相互関税」を2026年11月10日まで凍結・低い水準に据え置く
  • その一環として、301条の178件の除外を2026年11月まで延長

することを約束しました 。whitehouse

今回の除外延長は、こうした一連の「貿易休戦」の一部と位置付けられます 。cassidylevy

4-3. 対中強硬姿勢は維持したままの”部分的な緩和”

注意すべきは、対中政策が「軟化」したわけではないという点です。

2024年5月には別途、電気自動車(EV)、リチウムイオン電池、重要鉱物、医療用手袋などに対して、今後数年にわたって301条関税を引き上げる方針が示されています(EVは最大100%)。

今回延長されたのは、代替サプライヤーが限られ、米国内の製造業・医療・エネルギー政策にとって短期的な課税が「自傷行為」になりうる品目にほぼ限定されています。つまり、「戦略的に守る分野」と「一定の猶予を与える分野」を切り分けた結果と見るのが妥当です。

5. 日本・アジア企業にとってのインパクト

5-1. 中国工場から米国向けに輸出している企業

中国拠点から米国へ設備・部品・医療機器コンポーネントなどを輸出している企業は、まず次の点を確認する必要があります:

  • 自社製品が301条のどのリストに該当するか
  • その中で、今回延長された178件の除外に該当するかどうか(HSコードと品目説明ベース)

該当する場合、2026年11月9日(米東部夏時間)まで追加関税なしで輸出できる見通しが立ちます。一方、除外に該当しなければ、従来通りの追加関税負担が継続します。

今回の延長により、「2025年末で採算が合わなくなる」と見込んでいた案件が、あと1年弱は現状条件を維持できるケースも出てくるはずです。

5-2. 「China+1」戦略への影響

ここ数年、多くの企業が301条関税や地政学リスクをきっかけに、中国からベトナム・メキシコ・インドなどへの生産移管を進めてきました。

今回の延長により:

  • 対象品目については、「急いで移管しないと関税で赤字」という状況が一旦後ろ倒し
  • ただし、2026年11月以降の扱いは未定であり、「さらに延長される」という保証はない

という意味で、完全なブレーキではなく、「時間を与えられた」という性格が強いと言えます。

経営的には、キャパ増設や新工場投資は計画通り進めるが、稼働タイミングや投資回収シナリオを1年シフトさせる、といった微調整があり得る局面です。

5-3. 米国顧客との価格交渉・契約条件

301条関税は、サプライ契約の中で「関税分は価格に転嫁する」「関税が変わった場合は再交渉する」といった条項(tax pass-through clause)として組み込まれていることが多くあります。

今回予定されていた2025年末の関税復活が回避されたことにより:

  • すでに2026年価格を「関税復活前提」で見積もっていた場合、値決めの見直し余地
  • 逆に、顧客側から「関税かからないなら値下げを」と逆提案される可能性

も出てきます。

調達側・販売側とも、**「想定していた前提条件が変わった」**という認識を共有し、契約条項の読み直しが必要です。

5-4. HSコードと実務リスク

除外はHSコード(10桁)と商品説明の組み合わせで機械的に判定されます。わずかな仕様差や組み立て工程の違いで、**「同じと思っていた品目が別のコード扱い」**になることも少なくありません。

税関での判定が変われば、突然301条関税の対象になるリスクがあります。

したがって:

  • 米国側輸入者・通関ブローカーと連携し、HTSコードの再確認
  • 過去の輸入実績と今回の除外リストを突き合わせ、該当の有無を「コードレベル」で確認

することが、今回の延長を活かす前提条件になります。

6. ビジネスパーソン向け「2026年11月まで」のアクション・チェックリスト

6-1. 自社影響の棚卸し

輸出入・調達データの抽出

  • 「中国→米国」向けの輸出品目(または米国法人の輸入品目)を洗い出す

HSコード/商品説明と除外リストの照合

  • 自社品目が今回延長された178件のどれかに当たるかを確認
  • 当たる場合は、コストシミュレーションを「延長後の前提」で更新する価値があります

6-2. 「2026年11月9日」をXデーとした逆算

2026年11月9日以降:

a. さらに延長される
b. 一部だけ延長され、多くは失効する
c. 全面失効し、フル関税復活

という複数シナリオを想定し、それぞれについて:

  • 価格・利益率
  • サプライチェーン構成
  • 代替調達・生産移管のロードマップ

を「逆算スケジュール」で描いておくと、政策変更があっても慌てずに済みます。

6-3. 米国の産業政策との整合性を見る

301条関税は、単体で動いているわけではなく:

  • EV・バッテリー・太陽光などへの関税引き上げ方針
  • CHIPS法、インフレ抑制法(IRA)などの国内投資インセンティブ

とセットで設計されています。

自社の事業が:

  • 「米国内生産を増やせば恩典が受けられる分野」なのか
  • 「中国発サプライチェーンに依存すると、今後も関税リスクが高い分野」なのか

を整理することで、投資先・生産地の優先順位も見えやすくなります。

6-4. 「政治リスクを価格に織り込む」文化づくり

今回のように、関税が3カ月延長→さらに3カ月→一気に約1年延長と、政治判断により前提条件が揺れ動く状況が続くと:

  • 「法改正や関税変更は突発的に起きるもの」として
  • 長期契約の価格設定
  • 投資回収期間の設定
  • リスクマージン(政治リスク・地政学リスク)

をあらかじめ**「上乗せしておく」発想**が重要になります。

7. まとめ:関税は「終わる」より「続く」と考える

今回のUSTRによる301条除外の2026年11月までの延長は:

  • 中国依存の高い中間財について、米国企業・産業に「もう少し時間を与える」ための措置であり
  • 同時に、米中間の新たな貿易合意(Kuala Lumpur Joint Arrangement)を履行するための外交パッケージの一部でもありますcassidylevy+2

一方で:

  • EV・バッテリーなど戦略分野では関税引き上げが続いていること
  • 延長はあくまで期限付きの暫定措置であり、恒久的な免除ではないこと

を踏まえると、**「関税リスクが去った」のではなく、「タイムリミットが1年延びた」**と捉えるのが現実的です。

最後に一言

本稿は公開情報に基づく一般的な情報提供であり、法的・税務的アドバイスではありません。実際の取引・投資判断に際しては、必ず通関ブローカー、弁護士、税理士など専門家と相談のうえ、最新のUSTR通知・連邦官報の原文を確認することをお勧めします 。kpmg+1

  1. https://ustr.gov/about/policy-offices/press-office/press-releases/2025/november/ustr-extends-exclusions-china-section-301-tariffs-related-forced-technology-transfer-investigation
  2. https://kpmg.com/us/en/taxnewsflash/news/2025/11/ustr-extends-product-exclusions-china-section-301-tariffs.html
  3. https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/11/modifying-reciprocal-tariff-rates-consistent-with-the-economic-and-trade-arrangement-between-the-united-states-and-the-peoples-republic-of-china/
  4. https://www.cassidylevy.com/news/us-and-china-reach-trade-arrangement-begin-implementation/
  5. https://www.ey.com/en_gl/technical/tax-alerts/ustr-extends-product-exclusions-subject-to-section-301-tariffs-through-29-november-2025
  6. https://www.strtrade.com/trade-news-resources/tariff-actions-resources/section-301-tariffs-on-china
  7. https://www.chrobinson.com/es-us/resources/insights-and-advisories/client-advisories/2025q3/09-02-2025-client-advisory-section-301-tariff-exclusions-extended-through-ovember-2025/
  8. https://x.com/DeItaone/status/1993724259642839126
  9. https://www.fibre2fashion.com/news/textile-news/ustr-extends-tariff-exclusions-on-some-chinese-industrial-goods-306765-newsdetails.htm
  10. https://www.chinadaily.com.cn/a/202511/27/WS6927b8f0a310d6866eb2bae9.html

なぜ世界の自動車マネーは「アメリカ行き」なのか

1. データで見る「自動車投資の重心移動」

1-1. EV関連投資はどこに向かっているか

欧州シンクタンクTransport & Environmentが、主要19社(欧州・米国・日本・韓国・中国OEM)によるEV・電池・充電インフラ投資(2021〜23年、総額2,650億ユーロ)を地域別に分析しています 。結果は明確です:transportenvironment

  • 北米: 37%(970億ユーロ)
    • そのうち81%が米国向け投資(790億ユーロ)
  • 欧州: 26%(700億ユーロ)
  • 中国: 19%
  • その他地域: 残り

つまり、大手自動車メーカーの約4割近いEV関連投資が北米、特に米国に向かっており、欧州や中国よりも「投資先としての魅力」が高いことが数字で裏付けられています 。transportenvironment

1-2. 米国だけを見るとどうか

米国内だけを切り取ると、インパクトはさらに大きく見えます。Biden政権発足(2021年)以降、EVとバッテリーの製造・サプライチェーン向け投資は累計3,120億ドル(約47兆円、1ドル=150円換算)に達しました 。transportenvironment

Rhodium Groupの「Clean Investment Monitor」によると、IRA施行からの3年間で:

  • クリーンエネルギーとクリーンテック製造への実投資は3,510億ドル
  • 未使用の将来投資パイプラインは5,170億ドル
  • そのうち製造向けが1,120億ドルで、その88%がEVサプライチェーン(電池・EV組立・資源)向けtransportenvironment

「EV・電池という成長分野の投資重心は、明確に米国へ移っている」──これが、数字から見える現状です。

2. なぜ投資マネーは米国に集まったのか

2-1. インフレ抑制法(IRA)の”政策効果”

Transport & Environmentの分析は、北米の投資優位の主因を2022年に導入されたIRAと結論づけています 。IRAのポイント:transportenvironment

  • EV購入補助: 最大7,500ドルの税額控除(北米最終組立・一定割合の北米/FTA締結国由来の電池・資源を条件)evdances
  • 電池生産クレジット(45X): 電池セル1kWhあたり35ドル、モジュール10ドルの生産税額控除transportenvironment
  • 低炭素車工場向け融資: 30億ドル規模の融資プログラムtransportenvironment

これらにより、**「EVを売るためには北米で作るのが一番得」**という構図が世界のメーカーに共有されました 。transportenvironment

2-2. 中国EV封じの”100%関税”と欧州の追随

バイデン政権は2024年に対中制裁関税を強化し:

  • 中国製EVへの関税を25%→**100%**に引き上げ
  • EV用リチウムイオン電池や重要鉱物にも**25%**の関税を段階的に導入transportenvironment

欧州連合も2024年に中国EVに対し、最大45.3%の追加関税(既存の10%輸入関税に上乗せ)を導入しました 。transportenvironment

これにより、「中国から完成車を輸入して売る」モデルは成立しにくくなり、北米と欧州の大市場に入りたいなら、その地域で作るか、域内生産拠点(北米ならメキシコ・カナダ)を置く必要が出てきました 。transportenvironment

3. 日本・韓国メーカーはどう動いたか

3-1. トヨタ:ノースカロライナの電池メガプラント

2025年11月、トヨタはノースカロライナ州リバティの電池工場で量産開始を発表しました:automotivelogistics

  • 投資額: 約140億ドル(当初12.9億ドルから段階的に拡大)
  • 能力: 年間30GWh、14ライン(HEV・PHEV・BEV向け)
  • 雇用: 最終的に5,100人規模
  • 追加投資: 今後5年間で100億ドルを北米にコミット

トヨタのEV関連投資の89%は北米向けで、欧州向けはわずか10%です 。transportenvironment

3-2. ホンダ:電池調達と車両生産を”米国寄り”へ

ホンダも米国リスクに直接対応:

  • トヨタの米国工場からハイブリッド車用電池を年間約40万台分調達
  • シビック・ハイブリッド5ドア版の生産を日本からインディアナ州に移管(2025年6〜7月完了予定)reuters
  • 次世代シビックもメキシコからインディアナへ移管予定(2028年5月開始、年産約21万台)reuters

これは「米国内で電池と車をセットで作り、『中国製部材+輸入完成車』という構図から距離を置く」明確なサプライチェーン再構築の動きです。

3-3. 韓国・欧州勢も北米寄り

Transport & Environmentの分析では:

  • ホンダのEV投資の58%、現代自グループの43%が北米向け
  • ステランティスはEV投資の74%を北米に、欧州はわずか10%transportenvironment

欧州はEV投資全体の26%しか引きつけられておらず、その大半が欧州メーカー自身による”身内投資”で、アジア勢からの大型投資は北米ほど集まっていません 。transportenvironment

4. 2025年、「米国一強」に陰り?トランプ政権の逆風

4-1. OBBBA(One Big Beautiful Bill Act)によるクレジット縮小

トランプ政権の法案「One Big Beautiful Bill Act(OBBBA)」は2025年7月に成立し:univis-america+1

  • IRAの気候関連税額控除を大幅削減
  • EV購入クレジット(30D)や商用EVクレジット(45W)は2025年9月30日終了reuters+1
  • 電池製造クレジットは2028年終了(4年前倒し)reuters

4-2. クリーン投資の減速とプロジェクトのキャンセル

Rhodium Groupの2025年Q2レポートによると:

  • 2025年Q2のクリーンエネルギー・輸送投資は前年比+1%の微増ながら、3四半期連続で前期比減少
  • 製造セグメント(電池・EV等)は前年同期比**▲19%**
  • 製造プロジェクトのキャンセル額(50億ドル)が新規アナウンス額(40億ドル)を上回る

AP通信によると、2025年に入ってから140億ドル超のクリーンエネルギー投資がキャンセル・延期され、1万人規模の雇用が失われました。

4-3. EV市場の減速と「ハイブリッド回帰」

トランプ政権下で:

  • 2030年までのEV販売50%目標が撤回federatedhermes
  • 厳格な排ガス規制が緩和
  • 7,500ドルのEV税控除が段階的に終了

結果、2030年のEVシェア見通しは40%→27%に下方修正されました。トヨタやVWなど複数メーカーが、EVシフト一辺倒から**ハイブリッド・ガソリン車を含む”マルチパスウェイ戦略”**に舵を切り直しています 。automotivelogistics

5. それでも「米国シフト」は終わらない:構造的な3つの理由

(1) すでに積み上がった投資パイプラインの大きさ

建設中のクリーンテック製造・エネルギー関連プロジェクトの未投資残高は5,170億ドル、うち製造分が1,120億ドルで、その約9割がEVサプライチェーン関連です。これらは埋没費用として数年かけて投資が継続される性格のものです。

(2) 中国EVへの”関税の壁”と代替生産拠点としての価値

  • 米国:中国製EVに100%関税、EV電池と重要鉱物に25%関税
  • カナダ:ほぼ同水準の関税
  • 欧州:中国EVに最大45.3%の追加課税transportenvironment

結果として、中国メーカーにとって北米・欧州は「現地生産を真剣に検討せざるを得ない市場」となり、北米・欧州に工場を持つ既存OEMとそのサプライヤーにとっては構造的な参入障壁が生まれています。

(3) 欧州の魅力度が”政策面で”出遅れている

  • 欧州は2021〜23年のEV投資のうち26%しか取り込めず
  • その80%は欧州メーカー自身による投資
  • Transport & Environmentは「EUがIRAに対抗する産業政策を欠き、半分近い欧州向けバッテリー投資が対米流出リスクに晒されている」と指摘transportenvironment

**「米国の追い風は弱まったが、欧州がそれ以上に出遅れている」**というのが、2025年時点の冷静な見立てです。

6. 日本企業がとるべき戦略的スタンス

6-1. 「米国一本足打法」は危険だが、「米国軽視」はもっと危険

キャッシュ創出拠点としての北米

高単価SUV・ピックアップ・ハイブリッドを中心に、利益創出の”母屋”として北米を位置づける発想は依然として合理的です 。一方で、OBBBAによる税制変更、規制の振れ幅の大きさ、州政府レベルの政策差を踏まえると、**「州ごとのインセンティブ頼みで過大投資しない」「設備を複数パワートレインに転用可能な設計にする」といった”オプション価値を残す投資設計”**が鍵になります。automotivelogistics

6-2. サプライチェーン設計:3ブロック対応

今後10年を見据えると、自動車サプライチェーンは以下の3ブロックで考えるのが現実的です:

北米ブロック(US+カナダ+メキシコ)

  • 45Xなどの生産クレジットは一定期間残存
  • 100%関税に守られた中国EV不在の市場

欧州ブロック(EU+UK+周辺国)

  • CO2規制が2025年以降強化
  • 中国EVへの関税導入で現地生産の魅力が上昇

中国+新興国ブロック

  • 中国はEV販売の約2/3を占める”EVの本丸”
  • 価格競争と技術進化のスピードが最速

日本企業視点では、実需と収益を取る「北米」、規制・ブランド構築の「欧州」、技術・コスト競争力を磨く「中国・新興国」という役割分担を明確にする必要があります。

6-3. 非OEMプレーヤーにとってのチャンス

完成車メーカーだけでなく、部品・素材・設備メーカーにもチャンスがあります:

  • 電池材料・分離膜・電解液・リサイクル
  • モーター、インバータ、パワーモジュール
  • 熱マネジメントシステム
  • 工場自動化・検査装置

これらは北米に建設中のEV・電池工場群に対して長期的な需要が見込める分野です。

まとめ:米国に傾く潮流を「前提条件」として、どう勝ち筋を描くか

  • EV・電池関連投資の重心はこの数年で米国・北米に大きく傾いたtransportenvironment
  • その原動力はIRAを中心とした積極的な産業政策と対中関税であり、欧州は政策・投資両面で出遅れているtransportenvironment
  • 一方で、2025年のトランプ政権によるOBBBAと環境規制の巻き戻しで、「補助金頼みのEV投資」は明確に逆風に入ったkiplinger+1
  • それでも、すでに積み上がった巨額の投資パイプラインと巨大な国内市場、中国EVを阻む関税の壁がある限り、北米は当面、自動車投資の最大級の受け皿であり続ける

したがって、日本企業にとって重要なのは、「米国シフトの波に乗るか/乗らないか」ではなく、**「どの程度のリスクを取り、どれだけオプション性を確保しながら米国を活用するか」**という設計です:

  • 設備とサプライチェーンは複数パワートレイン対応・複数地域調達可能にしておく
  • 政権交代や関税、規制変化を前提としたシナリオプランニングを経営計画に織り込む
  • 北米・欧州・中国+新興国それぞれの役割を決めたうえで、自社が「どのブロックで何を取りに行くのか」を明文化する

こうした視点を持てるかどうかが、「米国に傾く自動車投資の潮流」をチャンスに変えられるかどうかの分かれ目になっていきます。


※本記事の内容は、公開データ・公的機関・主要メディア(Rhodium Group, Transport & Environment, Reuters, AP等)の情報をもとに確認し、日本語として読みやすい形に整理・校正しています 。reuters+5

  1. https://www.automotivelogistics.media/nearshoring/toyota-to-invest-10bn-in-us-operations-over-five-years-as-battery-manufacturing-plant-opens-in-north-carolina/2127389
  2. https://www.telemetryagency.com/post/november-13-2025-toyota-launches-1st-north-american-battery-plant
  3. https://www.kiplinger.com/taxes/ev-tax-credit
  4. https://www.edmunds.com/fuel-economy/the-ins-and-outs-of-electric-vehicle-tax-credits.html
  5. https://www.univis-america.com/individual-tax/obbba/
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  10. https://www.transportenvironment.org/uploads/files/2024_06_OEM_EV_investment_briefing_compressed.pdf
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  13. https://www.irs.gov/credits-deductions/credits-for-new-clean-vehicles-purchased-in-2023-or-after
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  17. https://www.bruegel.org/policy-brief/smart-european-strategy-electric-vehicle-investment-china
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  19. https://climate.ec.europa.eu/news-your-voice/news/innovation-fund-2024-investing-future-net-zero-technologies-and-electric-vehicle-battery-cell-2025-05-14_en
  20. https://www.virta.global/global-electric-vehicle-market

【お知らせ】ついに公開。「HSコード・ファインダー(HSCF)」公式サイトを立ち上げました。

長らく開発を続けてまいりました「HSコード・ファインダー(HSCF)」ですが、 いよいよ本日、正式に利用が可能となりました。

貿易実務や通関業務において、やはり「HSコード」の特定は悩ましい課題のひとつ。 その課題に真っ直ぐ向き合うツールとして、ようやく皆様にお届けできます。

▼ 新サイトはこちら [https://global-scm.com/hscf/]

今後、HSCFに関する操作方法のQ&Aや、HSコードにまつわる最新情報、FAQなどのコンテンツは、すべてこの新サイトに集約して発信していきます。

ぜひブックマークしていただき、日々の業務にお役立てください。 今後ともよろしくお願いいたします。