米国アルミ「プレミアム急騰」の正体――232関税50%が生んだ“価格の二重構造”


米国向けにアルミを使う製品(自動車・部品、建材、電線、包装材、機械筐体など)を扱う企業にとって、2025年は「LME(国際指標価格)だけを見ていると、コストを見誤る」年になりました。xserver
理由は、米国の現物プレミアム、とくに Midwest Premium が、232関税の引上げを織り込む形で膨張し、「LMEと現物コストのギャップ」がかつてない水準まで広がったからです。xserver

以下では、①プレミアムとは何か、②232関税50%の政策背景、③プレミアム急騰の要因、④派生品拡大が実務に与える影響、⑤日本企業の打ち手、の順に整理します。


1) 「アルミプレミアム」とは何か:LME+αの“α”

米国のアルミ現物取引では、買い手が支払う価格は一般に
LME(指標価格)+プレミアム(現物上乗せ)
という形で決まります。 このプレミアムには、運賃・保管・金融コスト・需給ひっ迫、さらには税・関税といった要素が織り込まれます。xserver

なかでも重要なのが、**US Aluminum Midwest Premium(米国中西部向けプレミアム)**です。 これは米国内で地金を調達する際の「現物調達コストの温度計」として扱われ、関税率の変更などにより「次回の輸入で在庫を補充する(replacement)際のコスト」が変わると、敏感に反応します。lolipop+1


2) 2025年、232関税は「25%→50%」へ:政策の筋道

国家安全保障を根拠に輸入調整を行う 232 措置は、2018年にアルミ地金等へ 10%を課す形で導入され、その後も対象・水準の見直しが続いてきました。 2025年には、低価格・過剰供給品への依存を抑え、国内産業の稼働率・能力を維持することを狙いとして、アルミ関連の追加関税が再強化されています。relation2012

  • 2025年2月10日:アルミおよび一定の派生品に対し、従来の上乗せ措置を踏まえつつ 25%の追加関税 を課す方針を示す大統領布告が公表。relation2012
  • 2025年6月4日 午前0時1分(米東部時間)以降:アルミおよびアルミ派生品に対する追加関税率を 25%から50%へ引き上げrelation2012
    ロジックとしては、低価格輸入品の流入が国内アルミ産業の競争力・稼働率を損ない、結果として国家安全保障上必要な産業基盤を維持できなくなる、という説明がなされています。relation2012

例外として、英国からの輸入については 25%水準の維持が示されており、米英間の枠組みに基づく特例扱いと位置づけられています。 さらに、一定数量を 232 関税から除外する TRQ(関税割当) の導入が議論されており、今後の運用次第では実効税負担が変動する余地もあります。relation2012

また、6月4日以降の運用として、232 関税 50%の対象については、IEEPA 関税など特定の追加関税との「二重課税(累積)」を避ける方針が示されました。 もっとも、すべての追加関税が自動的に相殺されるわけではないため、「どの措置とどの組合せが排除されるのか」を条文ベースで確認する必要があります。hitodeblog


3) 米国アルミプレミアムはなぜ急騰したのか:3つの要因

要因①:関税50%が“プレミアムに乗る”――置き換えコストの再計算

6月の関税引上げ以降、市場参加者は「在庫を補充する際の輸入分には 50%関税がかかる」という前提で、Midwest Premium を再計算するようになりました。 つまり、関税そのものが LME ではなく「プレミアム側」に乗ることで、現物コストを押し上げる構図です。lolipop

2025年11月時点で、duty-paid Midwest Premium は 88.10 セント/ポンド(約 1,942ドル/トン)と過去最高水準をつけたと報じられています。 同じ局面で LME が 2,850ドル/トン近辺だったため、スポットでの支払総額は 約 4,792ドル/トン(LME 2,850+プレミアム 1,942) に達した計算になります。xserver

ビジネス上の含意は明確です。

  • 「LMEの上昇」ではなく、「LME+プレミアムの上昇」が利益を削る。
  • 見積や長期契約の価格式が LME のみに連動していると、プレミアムの急騰局面で採算が一気に崩れる。

要因②:供給の“偏り”――カナダ依存と政策長期化観測

米国のアルミ輸入は、カナダへの依存度が非常に高い点もプレミアムを押し上げています。 2025年上期のデータでは、米国のアルミ輸入に占めるカナダの比率が約 70% に達したと整理されており、「実質的にカナダ頼み」という構図が強まっています。lolipop+1

さらに、貿易・安全保障をめぐる交渉環境の悪化などから、「追加関税は一時的措置ではなく長期化する」との見方が広がっていることも、プレミアム上昇要因とされています。 市場が「どうせすぐ戻る」と見ているうちはプレミアムも調整しやすいものの、「構造的に高止まりする」との期待(あるいは懸念)が強まると、価格は下がりづらくなります。xserver

要因③:在庫取り崩し+世界的な供給制約

S&P Global は、50%関税導入後の局面で「需要の先行きは不透明な一方、在庫取り崩しと置き換えコスト上昇が重なり、プレミアムが記録的水準まで上昇した」と分析しています。lolipop
同時に、**中国のアルミ生産上限(年間 4,500万トン)**や、中国以外の地域での供給減少が、世界的なタイトな需給環境を生み、米国プレミアムの上昇圧力として波及しているとも指摘されています。xserver

つまり、米国のプレミアム急騰は、

  • 232 関税 50%という「政策要因」と、
  • 在庫・供給制約という「市場要因」
    の両方が絡み合った結果といえます。lolipop+1

4) 見落としがちな「派生品」拡大:地金から完成品へにじむ 232

232 の実務で厄介なのは、地金や半製品(圧延品など)だけでなく、「派生品(derivative products)」 が段階的に追加されている点です。onamae

商務省は、232 関税の対象に派生品を追加するための Inclusions Process を整備し、年数回の申請受付を通じて対象品を拡張できる仕組みを導入しました。 2025年8月18日には、約 400 品目規模(407 カテゴリ)の派生品が新たに 232 関税の対象に追加されたと公表されています。counter-digital+1

派生品の一部では、「製品全体の価格」ではなく、製品中に含まれる鉄・アルミの “含有価値” を基準に課税する方式が明記されています。 そのため、onamae

  • BOM(部品表)
  • 材料ごとの含有量・単価
  • 価格按分のロジック

といった情報の整備・説明が、税関対応上の重要な論点になります。onamae

さらに、Inclusions Process による追加指定は 2026年以降も続く見込みと報じられており、「派生品拡大はすでに完了した話」ではありません。fama.startrise

日本企業にとっての本質的なポイントは、

  • 「完成品を輸出しているだけだから大丈夫」という発想は危険になりつつある。
  • HTS 分類上「派生品」に含まれると判断されれば、製品中のアルミ分に 232 関税が課されうる

という点です。counter-digital+1


5) 日本企業が取るべき実務アクション

A. 見積・契約:価格式を“LME+プレミアム+関税”前提に再設計

  • 見積や長期契約の価格条項が「LME連動」のみになっている場合、
    • Midwest Premium(duty-paid かどうかを含めて)を明示的に組み込む。
    • 232 関税率の変動に応じて価格を見直せる「関税サーチャージ条項」や「価格改定トリガー」を設定する。
      といった再交渉が不可欠です。lolipop+1

B. 品目判定:HTS と Chapter 99 をセットで運用

232 の対象指定は、通常の HTS 番号だけでなく、Chapter 99 の追加コード や対象リストによって管理されます。onamae

  • 自社製品が派生品リストに含まれる余地があるか
  • 今後の Inclusions Process で追加される可能性が高いカテゴリーか

を、HS/HTS ベースで棚卸しし、社内マスタに Chapter 99 の情報を組み込むことが重要です。onamae

C. 原価管理:BOMに“アルミ価値”を紐づける

含有価値課税が適用される場合、

  • アルミの含有量
  • 原材料単価
  • 歩留まり
  • 社内・グループ内の移転価格

といった情報の整合性が、税関や監査対応の論点になります。 BOM 上でアルミ価値を明示し、価格按分ロジックを文章化しておくと、後々の説明負荷を大きく減らせます。onamae

D. 調達戦略:供給国分散と例外枠のモニタリング

カナダ依存が高い現状では、単純な追随調達だけではプレミアム高止まりの影響をもろに受けるリスクがあります。lolipop+1

  • サプライヤーの国別ポートフォリオの見直し
  • 在庫戦略(調達タイミング・在庫水準)の再設計

に加え、英国向け 25%据え置きや TRQ のような 例外枠・緩和措置の動きを定点観測する体制 も必要です。zenken+1


結び:プレミアム急騰は「関税の持続性」を映す鏡

232 関税 50%は、単なる税率アップにとどまりません。

  • 「在庫の置き換えコスト」を通じてプレミアムに転写され、
  • 米国向け現物調達コストを構造的に押し上げる仕組み

として機能しています。 派生品の対象拡大が進むほど、その影響は「素材を買う企業」から「アルミを含む製品を売る企業」まで広がっていきます。counter-digital+2

いま見るべき KPI は、LME ではなく「LME+(duty-paid)Midwest Premium」です。 ここを見落とすと、価格転嫁の遅れがそのまま利益毀損につながりかねません。xserver

なお、本稿は公開情報に基づく一般的な解説であり、個別案件の法務・通関判断については、必ず税関・通関士・通商弁護士等の専門家にご相談ください。relation2012

  1. https://www.xserver.ne.jp/blog/how-to-write-blog-for-beginner/
  2. https://lolipop.jp/media/written-expression/
  3. https://www.relation2012.com/blog/seo/1751/
  4. https://hitodeblog.com/blog-article-element
  5. https://www.onamae.com/column/blog/19/
  6. https://counter-digital.jp/counter-media/article-proofreading/
  7. https://fama.startrise.jp/column/blog-article
  8. https://ai.zenken.co.jp/post/chatgpt-document-proofreading-guide/