米国232関税50%へ:施行と例外の現実


1. 232条関税とは何か ― トランプ2.0でどう変わった?

1-1. 232条の基本

  • 根拠:1962年通商拡大法232条
  • 目的:国家安全保障を理由とした特定品目への関税・輸入規制
  • 特徴:
    • 関税率・期間に上限なし
    • 商務省(BIS)の調査で「安全保障を脅かす」と判断された場合にのみ発動(Bloomberg.com)

第1次トランプ政権(2018年)で、鉄鋼に25%、アルミに10%の追加関税が始まりましたが、当時は各国との交渉で適用除外やTRQ(無税枠)、製品除外制度が広く存在しました。(Reuters Japan)

第2次トランプ政権(2025年)はここを**「原則フル適用」へ振り切った**のが最大の違いです。


1-2. 2025年のざっくりタイムライン

主に鉄鋼・アルミに関する流れを整理すると:

  1. 2月10日:一律25%&例外の原則撤廃を宣言
    • 鉄鋼・アルミに対し、全世界一律25%
    • カナダ・メキシコ・ブラジルなどへの適用除外・無税枠・個別製品除外を原則撤回(Reuters Japan)
  2. 3月12日:25%体制が正式発効(Reuters Japan)
  3. 4月5日:全輸入に「相互関税(Reciprocal Tariff)」10%導入
    • 根拠法は1977年国際緊急経済権限法(IEEPA)
    • 全輸入に一律10%のベースライン関税を課す枠組みがスタート(MIAC)
  4. 6月4日:鉄鋼・アルミ(+派生品)を原則50%へ引き上げ
    • 232鉄鋼・アルミの税率が**25% → 50%**へ倍増
    • 同時に、**派生品(機械・建機・家具など)**への適用ルールを整備
  5. 8月:派生品407品目を追加
    • 風力タービン、モバイルクレーン、ブルドーザー、鉄道車両、家具、ポンプなどが新たに対象化
  6. 11月:232条は4分野体制に
    JETROの整理では、2025年11月時点で232関税は以下の4分野:(JETRO)
    • 鉄鋼・アルミ・銅:50%
    • 乗用車・トラック・同部品:25%
    • 木材・木製品:10〜25%
    • 上記に、相互関税10%やフェンタニル関税などが“別レイヤー”で乗る構造

見出しの「50%」は、**鉄鋼・アルミ・銅(とその派生品の金属部分)**にかかる232条関税を指している、と理解すると整理しやすくなります。


2. 25%から50%へ:制度設計のポイント

2-1. 25%フェーズ:例外の「総ざらい」

3月12日に発効した25%フェーズでは、従来の232の“抜け道”が一気に塞がれました。

  • EU・日本・韓国・カナダ・メキシコ・英国などとの代替取決め/TRQ(無税枠)を一括終了
  • 製品除外プロセス(BISへの個別申請)、一般承認除外(GAE)も停止
  • 結果として、「鉄鋼・アルミは基本的に25%がフルにかかる」状態へ

ここでまず、「国別・製品別の柔らかい例外はほぼ消えた」という前提が固まりました。


2-2. 50%フェーズ:鉄鋼・アルミ・銅+派生品

6月4日の布告で、構図がさらに一段シフトします。

  1. 鉄鋼・アルミ本体:50%
    • 従来25%だった232関税を50%へ倍増
    • 232対象である限り、IEEPAの相互関税(10%)は同じ価額部分には重ねがけされない(優先順位上、232が優先)(JETRO)
  2. 銅:新たに50%
    • 232の対象分野として銅も追加(50%)(JETRO)
  3. 派生品(完成品・部材):“金属部分だけ50%”方式
    • BISの8月通知で、407のHTS品目が新たに対象に追加
    • 例えば、「鉄を含む建設機械」「アルミを含む家具」「ポンプ・コンプレッサー」などが該当
    • 課税ルールがポイントで、
      • 鉄鋼・アルミ・銅を含む部分の価額 × 50%(232)
      • 残りの非金属部分には相互関税10%など通常の関税
        → 232と相互関税を同じ価額に二重にかけない代わりに、価額を切り分けて別々に課税する設計です。

3. 「例外」はどこに残っているのか

見出しでは「例外」と書かれていますが、2025年の再設計を踏まえると、

「ザル抜けの特例」ではなく、「かなり条件の厳しい制度的例外」

に姿を変えた、と理解した方が現実に近いです。

3-1. 国別例外:ほぼ英国のみ

現時点で目立つ国別例外は**英国とのEPD(経済繁栄取引)**です。

  • 鉄鋼・アルミについて、英国は25%に据え置き
  • ただし、
    • 7月9日以降、商務長官がTRQ設定または50%への引き上げを決定できる条項つき
    • 定期的な見直しが明記されており、「恒久免除」ではない

一方、日本・EU・韓国・カナダ・メキシコ向けの従来TRQや代替取決めは停止済みで、国別に“きれいに免除される”ケースは極めて限定的です。


3-2. 品目別・制度別の例外

(1) 乗用車・同部品の「15%キャップ」

自動車分野の232関税(25%)は、一般税率との合計が15%を超えないように調整されるという特殊ルールがあります。(JETRO)

  • 一般税率が15%未満:
    一般税率+232自動車関税 = 15%になるように課税
  • 一般税率が15%以上:
    232自動車関税はゼロ(かからない)

例えば日本製乗用車バンパーの例(一般税率2.5%)では、
2.5%+12.5%(232)=15% という整理が示されています。(JETRO)

※中・大型トラック部品はこの15%キャップの対象外で、2.5%+25%=27.5%になる、という試算が紹介されています。

(2) 米国鋼材を使った場合の「0%」ルート

鉄鋼分野では、米国で溶解・注湯(Melt & Pour)された鋼材を海外で加工した派生品について、HTS 9903.81.92により**232関税0%**とする特例が設けられています。

  • 実務上は、
    • 米国内サプライヤーからの証明書
    • メルト&ポアのISO国コード
    • その鋼材が実際にどの製品に使われたかのトレーサビリティ
      が求められ、かなり“証拠書類に強い”企業でないと使いこなせない優遇です。

(3) ロシア原産/原産国不明アルミの200%

  • ロシア原産アルミニウムは200%の232追加関税が継続中
  • 2025年6月以降は、「スモルト&キャスト国が不明なアルミ派生品」にも200%を適用する運用が始まりました。

これは「例外」というより、「情報が足りないと極端なペナルティが飛んでくる」ルールです。


3-3. 重複関税の「優先順序」と IEEPA との関係

232条と他の追加関税(相互関税10%やフェンタニル関税など)が重なる場合、
米国は2025年4月から**「どれを優先して適用するか」という優先順位ルール**を導入しています。(JETRO)

優先順位のイメージ(抜粋):

  1. 232自動車・トラック・同部品(25%)
  2. 232アルミ・鉄鋼・銅50%、232木材10〜25%
  3. フェンタニル関税(カナダ35%、メキシコ25%)
  4. その下にIEEPA相互関税10% 等

そしてポイントは、

「232条関税の対象となる価額部分には、IEEPA相互関税はかからない」

と整理されていることです。(JETRO)

ただし、派生品のように価額を「金属部分」と「非金属部分」に割って二行申告するケースでは、

  • 金属部分 → 232の50%
  • 非金属部分 → 一般税率+IEEPA相互関税10% など

という形で、同じ貨物の中で“別の行”に別々の制度が乗っているイメージになります。


4. 実務で直面する3つの現実

制度をなぞるだけでは、なぜ企業が苦しんでいるのかが見えません。
現場の声から見える「3つの現実」を整理します。

4-1. 二行申告と「含有価額」の地獄

CBPは、232派生品について**「二行申告(Two-line entry)」**を義務化しました。

  • 第1行(非金属部分)
    • 通常のHTSコード
    • 「総価額 − 金属含有価額」
    • 数量
    • 一般税率+相互関税など
  • 第2行(金属部分)
    • 同じHTSコード
    • 「金属含有価額」
    • 数量は0(製品個数)
    • 232用の追加HTS(9903.81.91等)+重量(kg)

ここでボトルネックになるのが、

「鉄鋼・アルミ・銅の『含有価額』をどう算定するか」

です。
JETROのヒアリングでも、「鉄の定義が条文上十分に明確でなく、自社で合理的にルールを決めて申告しているが、正確な算定は極めて難しい」という在米日系メーカーの声が紹介されています。(JETRO)

結果として、

  • 社内BOMから金属重量・単価を引き出すシステム構築
  • サプライヤーからの含有価額証明テンプレート配布
  • 監査に備えた証跡管理

といった**「通関のためのデータ整備」自体が、大きなプロジェクト**になっています。


4-2. 通関コストとキャッシュフローへの直撃

JETROのレポートによれば、追加関税の多重化により、

  • 関税額が従来の10〜15倍に膨らみ、
  • 通関業者が一時立替するキャッシュが限界に近づいている

という声も出ています。(JETRO)

また、232はドローバック(再輸出時の関税払戻し)の対象外であり、FTZ(外国貿易地域)に搬入しても、消費引取のタイミングで232が課される運用です。

輸出前提なら「あとで戻るから」と割り切れていた関税が、完全なコスト化+キャッシュアウトとして効いてくる点は、財務的にも無視できません。


4-3. 契約・価格条項の更新が間に合わない

関税構造がここまで動的になると、販売価格や長期契約も作り直しが迫られます。グローバルSCMの専門家は、企業対応として以下を提案しています:

  • サーチャージ条項の高度化
    • 232(50%)、相互関税(10%)、対中関税、フェンタニル関税など
    • 「どの組み合わせのときに価格式をどう変えるか」を契約に明文化
  • イベントドリブン価格改定条項
    • 例:
      • 「BISが232対象品目を追加した場合」
      • 「232税率または国別枠組みに変更があった場合」
    • → 発生時に自動で再交渉・見直しが走る仕組み
  • 関税以外の“行政手続きコスト”の扱い
    • 通関業務の工数増・システム投資・監査対応コストは
      「原価に含めていいのか/別枠のフィーとするのか」
    • JETROの調査では、これらのコストを販売価格に転嫁するのは困難との声も多い。(JETRO)

5. 日本企業が今すぐ整理すべき5つのアクション

最後に、ビジネスマン向けに「明日から何をするか」を5点に絞ります。

5-1. SKU単位で「232マップ」を作る

  • 自社が扱う全SKUについて
    • どの232分野(鉄鋼・アルミ・銅/自動車/木材)に該当しうるか
    • 派生品リスト407品目への該当有無
    • 50%・25%・10〜25%のどのレイヤーが乗るか
      を一覧化する。
  • 特に、
    • 鉄鋼・アルミ・銅を含む建機・産業機械・家具
    • 自動車/トラック向け部品
      は、**複数の232が重なりやすい“ホットスポット”**です。(JETRO)

5-2. BOMとサプライヤー証明を「232対応版」にアップグレード

  • BOM上で最低限持つべき情報:
    • 金属ごとの重量(kg)
    • 金属部分の価額($/kg × kg)
    • メルト&ポア/スモルト&キャスト国(ISOコード)
    • ロシア由来有無
  • サプライヤーには、
    • 上記を記載するテンプレート証明書
    • 原産国が不明なままだと200%関税になりうるリスク
      をセットで説明し、「出さないと買わない」レベルのメッセージが必要です。

5-3. サプライチェーン再構築の“試算”だけは走らせる

  • **米国鋼材+海外加工で0%(HTS 9903.81.92)**が使えるなら、
    • 米国内鋼材調達 → USMCA域内加工 → 米国最終組立
      のようなモデルで、232リスクを構造的に抑えられます。
  • 実際、日本製鉄によるU.S. Steel買収のように、
    「米国内生産体制を取りにいく」動きはすでに現実になっています。

すぐ投資はしないとしても、
「現行サプライチェーン vs US/USMCAローカル化案」のN年後NPV比較
だけは、財務と一緒に走らせておく価値があります。


5-4. 契約・価格式を「トランプ関税2.0」仕様にする

  • 新規契約:
    • 232・相互関税・301条関税・フェンタニル関税など
    • どの税が変わったら価格をどう変えるかを条文化
  • 既存長期契約:
    • 「force majeure」や「hardship」だけでは232のような税制変動には弱いケースが多いので、
    • 相手先と協議し、“関税条項だけ”をアップデートする交渉を検討

5-5. 社内に「関税タスクフォース」をつくる

  • メンバー:
    • SCM/調達
    • 通関・貿易実務
    • 経理・財務
    • 事業部(営業・プロダクト)
    • 法務・コーポレート
  • 役割:
    • SKUごとの232リスク台帳を維持
    • 新しい232発動や派生品追加が出るたびに、影響シミュレーション
    • 価格・契約・サプライチェーンに落とし込む「社内ハブ」になる

おわりに:50%という“数字”だけを見ない

232関税50%という数字は確かにインパクトがあります。
しかし、ビジネスにとって本当に重要なのは、

  1. 25%から50%に上がったことそのものより、
  2. 「例外」がほぼ制度化され、条件の厳しいルールに変わったこと
  3. 232・相互関税・その他追加関税が“レイヤー構造”で重なるようになったこと

です。

特に日本企業にとっては、

  • うちは完成品だから232は関係ない
  • これまで免除だったから今回も大丈夫

といった感覚は、ほぼ通用しなくなっていると考えた方が安全です。

USMCA再検証と中南米関税再編の動向

北米・中南米でいま、「USMCA再検証」と「関税再編」が同時進行しており、自動車・部品を含む製造業サプライチェーンにとっては、2030年代まで影響し得る大きな転換点になりつつあります。
ここでは、日本のビジネスマン向けに、なにが起きているのか/何がリスクか/いま何を準備すべきかを整理します。


1. USMCA再検証:2026年レビューと「サンセット条項」の正体

1-1. 2026年の「共同見直し」と2036年サンセット

USMCAは、16年の有効期間+6年ごとの見直しという仕組みを持つ協定です。

  • 発効:2020年7月1日
  • 初回の「共同見直し(joint review)」:2026年7月1日
  • 協定の有効期限:2036年7月1日(発効16年後) (CSIS)

USMCA第34.7条では:

  • 2026年レビューで、3か国が「延長したい」と書面で確認すれば、そこからさらに16年間延長(2036→2052年) (whitecase.com)
  • 逆に、2026年で延長意思がそろわない場合:
    • 協定自体は2036年までは継続
    • その間、毎年レビューを続ける義務があり、いずれかのタイミングで3か国が延長に合意すれば、その時点から再度16年延長 (Steptoe)

つまり、「2026年にUSMCAがいきなり終わる」わけではありません。ただし、2026年のレビュー結果次第で「2036年以降のルール」が見えなくなる可能性があり、これは長期投資・拠点戦略にとって大きな不確実性となります。


1-2. 2026年レビューで議論になりそうな論点

各種専門家レポートを見ると、以下の論点が焦点になると見られています。(CSIS)

  1. 自動車・部品の原産地規則(ROO)と域内含有率
    • エンジン、トランスミッション、バッテリーなど主要部品の「地域価額含有率(RVC)」要件は、既に高水準。
    • OEM・部品メーカーからは「コスト負担が大きい」「サプライヤーの選択肢が狭まる」との声も強い。
    • 一方で、米国側は「さらなる国内回帰」「対中国依存低減」を重視しており、より厳格化を求める可能性も。
  2. 労働・環境・強制労働条項の運用強化
    • 労働章の急速な適用(特にメキシコの工場)や、強制労働関連の輸入制限は、サプライチェーン全体にコンプライアンスコストを上乗せ。
    • 2026年レビューでは、通報制度の拡充や対象産業の拡大が議論される可能性。
  3. デジタル貿易・サービスルールのアップデート
    • データローカライゼーション、AI・クラウドサービスを巡る規律強化。
    • 物流・サプライチェーンのデジタル化が進む中で、関税だけでなく“非関税ルール”の変更リスクも増大。

1-3. 日系企業にとっての具体的リスク

自動車・部品メーカーを中心に、日系企業が直面し得る主なリスクは次の通りです。

  1. 長期投資の「回収期間」とUSMCAのタイムラインのズレ
    • EV工場やギガファクトリーなど、投資回収期間が10〜15年に及ぶ案件では、
      「2036年までのルールは見えているが、その先は見えない」という状態が続く可能性。
    • 2026年レビューで延長の方向感が見えない場合、**北米投資の意思決定に“割増しリスクプレミアム”**が必要になる。
  2. ルール変更に伴う“原産地証明のやり直し”リスク
    • 原産地規則が改定された場合、調達BOM・工程表・サプライヤー宣誓書の全面見直しが発生。
    • 「メキシコ組立→米国輸出」のモデルなどは、USMCAの適用可否が価格競争力を左右するため、ちょっとしたルール変更でもマージンに大きく響く。
  3. “政治リスク”としてのUSMCA
    • サンセット条項は、実務的には「定期的に再交渉が起こり得る」ことを意味し、
      米国大統領選・議会構成次第でトーンが変わる、政治変動に直結する貿易枠組みになっている。
    • 投資委員会向け説明や社内稟議では、「関税リスク」だけでなく、
      “USMCA再交渉リスク”を明示しておくことが求められるフェーズに入っています。

2. 中南米「関税再編」:メキシコ・ブラジルを中心に何が変わるか

2-1. メキシコ:非FTA国向け自動車関税最大50%案と1,400品目の増税

メキシコ政府は、2026年経済パッケージの一環として、
FTAを締結していない国(中国・インド・一部アジア諸国など)からの輸入品に対する大幅な関税引き上げ案を提示しました。(Reuters)

主なポイント:

  • 自動車(完成車)
    • 非FTA国からの乗用車輸入関税を、現行レベルから**最大50%**まで引き上げる案。
    • 対象には中国車が事実上含まれ、米国からの圧力に応えた“対中けん制”と解釈されている。
  • 約1,400〜1,463品目の輸入品
    • 鉄鋼、繊維、電子機器、自動車部品など広範な品目で、最大35%(一部50%)までの関税引き上げを可能にする法改正案。(The Journal Record)
  • 中国商務省はこれに反発し、「メキシコの対中輸入抑制策」として強く批判。(中国商務部)

実務的な読み方

  • メキシコは、USMCAの枠内で「対中輸入を絞る」ことで、対米交渉のカードを増やしているとも言えます。
  • 非FTA国からメキシコに直接輸出する完成車・部品ビジネスは、価格競争力を一気に失う可能性が高い。
  • 一方で、日墨EPA・日メキシコFTAを持つ日本企業にとっては、相対的な優位性が高まるシナリオもあり得る。

2-2. ブラジル:EV・自動車を中心とした関税見直し

ブラジルでは、EVやハイブリッド車の輸入関税に関する見直しが進んでいます。

  • 現行:
    • HEV:28%、BEV:25%(CKD/SKDも完成車と同率)(Argus Media)
  • 方針:
    • 2027年1月までに、HEV/BEVともに輸入関税を35%に統一・引き上げ
    • 一部のCKD/SKD向けに、上限額付きの免税枠を設定する動きも報じられている。(electrive.com)

加えて、ブラジル政府はインフレ抑制策として一部の基礎食品の輸入関税を撤廃しており、
**「消費者物価対策としての減税」と「産業保護としての増税」が並走している」のが特徴です。(フィナンシャル・タイムズ)


2-3. なぜ中南米の関税がここまで動いているのか

背景には、以下の3つの要因が絡み合っています。

  1. 中国からの輸出攻勢への警戒
    • 中国は国内EVシフトにより余剰となったガソリン車を、ラテンアメリカ・東欧・東南アジアなどへ大量輸出しているとの報道。(Reuters)
    • メキシコやブラジルは、この“安価な中国車の洪水”から国内産業を守るべく、関税引き上げで対応。
  2. 米国との関係と「対中包囲網」への参加圧力
    • 米国は自国の関税政策に加え、同盟国・近隣国にも対中依存低減を求める方向。
    • メキシコの関税引き上げ案は、**USMCAパートナーとしての“同調アピール”**という側面も持つ。
  3. 財政・産業政策としての関税
    • インフレ対応で一部食品関税を下げる一方、自動車・鉄鋼などで関税を引き上げ、
      財政収入と雇用維持を両立させたいという各国共通の思惑がある。

3. 北米×中南米をどう見るか:日本企業の視点

3-1. 3つの時間軸で整理する

  1. 短期(〜2026年)
    • メキシコの関税引き上げ法案がいつ・どの水準で成立するか。
    • USMCA 2026年レビューに向けた各国のポジション取り。
    • → 「現行案件の採算への影響」と「新規案件の条件見直し」が論点。
  2. 中期(2027〜2030年)
    • メキシコの新関税水準が定着し、非FTA国→メキシコ輸出モデルが縮小
    • ブラジルEV関税の引き上げが、域内生産・現地投資の誘因として働く可能性。
    • → 「どの国をハブに中南米をカバーするか」という拠点戦略の再設計が必要。
  3. 長期(2030〜2036年)
    • 2036年USMCAサンセットが、もう一度「延長か、条件付き延長か」という議論を呼ぶ。
    • → いま仕込む投資が、「2036年以降もUSMCA前提で続くのか」を常にチェックする必要。

3-2. 実務として今すぐやっておきたいチェックリスト

① HSコード+関税率マッピングの見直し

  • メキシコ向け主要製品について:
    • HSコード(少なくとも4桁〜6桁レベル)ごとに、
      • 現行MFN関税
      • FTA適用後の税率(日本・EU・USMCAなど)
      • 2026年以降に想定される新税率(案ベース)
        を一覧にしておく。
  • 中南米各国向けの**「関税影響シミュレーション用Excel」**を社内標準フォーマット化すると、社内説明が楽になります。

② サプライチェーンの“北米依存度”と“メキシコゲートウェイ依存度”の棚卸し

  • どの製品が「メキシコ経由で北米・中南米に出ているか」を可視化。
  • 特に、
    • 中国・ASEAN原産の部材を使い、メキシコで組立→北米/ラ米に輸出
      といったスキームは、USMCAレビュー+メキシコ関税引き上げの両方の影響を受けるゾーン。

③ 契約条件への「関税変動条項」の織り込み

  • 2026年USMCAレビューやメキシコ関税改正に備え、
    • 「関税率がX%以上変動した場合、価格調整協議を行う」
    • 「FTA/EPA適用不可となった場合の責任分担」
      などを、長期供給契約にあらかじめ盛り込んでおく。

④ 社内ガバナンス:通商・法務・事業の連携体制

  • USMCA再検証や中南米関税再編は、単なる通関現場の問題ではなく、事業戦略レベルのテーマ
  • 通商担当だけでなく、
    • 経営企画
    • 海外事業統括
    • 法務・リスク管理
      を巻き込んだクロスファンクショナルチームでモニタリングする体制を作る価値があります。

4. まとめ:北米と中南米は「別々」ではなく一体で見るフェーズへ

  • USMCA 2026年レビューは、2036年サンセットを見据えた「長期ルールの入り口」を決めるプロセス。
  • メキシコ・ブラジルを中心とする中南米関税再編は、対中輸出攻勢・米国との関係・国内雇用保護という複数の思惑が交錯しながら進行中。
  • 日本企業にとっては、
    • 「北米=USMCA」「中南米=個別FTA」という従来の見方から、
    • **「北米(USMCA)+中南米(メキシコ・ブラジル・周辺国)の一体サプライチェーン設計」**へと発想を切り替えるタイミングに来ています。

いまのうちに、HSコード・原産地規則・関税シナリオを整理し、「もしUSMCA条件がこう変わったら/メキシコ関税がこの水準まで上がったら」というシミュレーションを回しておくことで、2026年以降の不確実性に対しても、社内で納得感のある意思決定ができるようになるはずです。


HS2022の次の年をAIに尋ねる

AIの回答が今でも間違うことが多い。現行HSコードの年次は2022だが、次回はHS2028。しかし、AIの回答は間違う。

気を付けなければ、

Gemini 3 Pro

結論から申し上げますと、HS2028ではなく、「HS2027」が正解です。
HSコード(世界税関機構・WCOが定めるもの)は、原則「5年ごと」に改定されます。
改定のサイクル

  • 前回:HS2017
  • 現在:HS2022(2022年1月1日発効)
  • 次回:HS2027(2027年1月1日発効予定)
  • 次々回:HS2032(予定)
    展示会でのトーク・戦略への活かし方
    現在開発されている「HS Code Finder Gemini」にとって、この情報は「製品の将来性」をアピールする良い材料になります。
    アピール案:

「2027年にはまた大規模な『HS2027改正』が控えています。紙の表を買い直して覚え直すのは大変ですが、このAIなら2027年版へのアップデートも自動で対応します(※予定であれば)。」

このように伝えることで、「今だけのツールではなく、将来の法改正リスクもヘッジできるツール」としての価値が高まります。

ChatGPT GPT Thinking

はい、その認識で大丈夫です。
現行の HS2022 の次の年次版は「HS2028」です。

なぜ HS2028 なのか(ごく簡単に)

  • 本来は 5年ごと:
    HS2012 → HS2017 → HS2022 → HS2027(予定) というサイクルでした。
  • しかし、コロナ禍などで見直し作業が遅れ、
    今回のサイクルだけ 6年に延長され、発効年が 2028年1月1日にスライドしました。
  • WCO のハーモナイズド・システム委員会(HSC)の公式ニュースでも、
    HS 2028 Nomenclature の改正案を審議・採択した」と明記されています。

そのため、ビジネス文書やブログ、社内説明では:

現行:HS2022(第7版)
次期:HS2028(第8版、2028年1月1日発効予定)

と書くのが、2025年時点での最新かつ公式情報に沿った整理になります。

【2025年11月版】主要国の関税・制裁・輸出管理トレンドと「1年間の猶予」


2025年11月時点の「最新告示」に基づき、ビジネスパーソンが押さえるべき貿易管理のトレンドを整理します。

結論から言うと、現在の潮流は以下の3本柱です。ただし、米中間の規制合意により、一部の規制に「1年間の猶予(一時停止)」が生じたことが最大のニュースです。

  1. 「米中50%ルール」の一時停止:サプライチェーン分断の決定打となるはずだった規制が、2026年11月まで凍結。
  2. 「対ロシア・イラン包囲網」の完成:G7とEUはエネルギー・金融・海運(シャドーフリート)への制裁を最高レベルに引き上げ。
  3. EUの「環境・ハイテク要塞化」:CBAM(炭素国境調整)の義務化と、AI・量子技術などの独自管理が進行。

本記事は2025年11月29日時点の公表情報に基づく整理です。最終判断は必ず原文・専門家の確認を経て行ってください。


1. 米国:対中関税と輸出管理は「一時休戦」へ

1-1. 対中301関税:除外178品目の延長 & 新たな措置の一時停止

USTR(米通商代表部)は、対中301条関税のうち178品目の関税除外を2026年11月10日まで延長しました。これらは2025年11月29日で失効予定でしたが、11月1日発表の米中経済・貿易合意を受け、土壇場で延長が決まりました。()ustr+1
対象は産業用ポンプ・モーター、医療関連機器、一部のソーラー製造設備などで、企業のコスト増回避に繋がります。()ey+1

また、同じ合意に基づき、中国の海運・物流・造船セクターを標的とした新たな301措置(追加関税等)についても、2025年11月10日から1年間の発動停止が告示されています。()ustr+1

👉 実務ポイント
301関税対象品を扱う企業は、「自社のHSコードが延長リスト(178品目)に含まれるか」を再確認してください。また、今後1年間の米中協議の行方次第で関税率が変動する可能性があるため、契約上の価格調整条項を見直す良い機会です。

1-2. BIS輸出管理:米国版「50%ルール」も1年間停止

【重要修正】
2025年9月30日、米商務省BISは**「Affiliates Rule(50%ルール)」**と呼ばれる暫定最終規則を発表しました。これはEntity List等の規制対象を「50%以上所有する子会社」に自動拡張する厳しい内容です。()sidley+1
しかし、この規則も11月4日、米中合意の一環として「2026年11月まで施行を一時停止する」ことが発表されています。()thompsonhinesmartrade

当初は「リスト記載企業のグループ会社すべてが自動的に規制対象」となるリスクが高まりましたが、現在は1年間の猶予期間に入っています。

👉 実務ポイント
「直ちに対応が必要」という緊急度は下がりましたが、BISはこの1年を使ってルールを微調整する見込みです。中国等の取引先について「親会社がEntity Listに載っていないか」という資本関係の洗い出し(KYC)は、この猶予期間中に済ませておくべきでしょう。

1-3. 対ロシア・イラン:エネルギー制裁の「総仕上げ」

対中規制が休戦する一方、対ロシア・イラン制裁は強化の一途です。
米国・EU・英国は連携し、ロシアのLNGプロジェクト(Arctic LNG 2等)や、制裁逃れを行う「シャドーフリート(影の船団)」への指定を拡大しています。()finance.europa+1


2. EU:第19次対ロシア制裁 & CBAMの「50トン免除」

2-1. 対ロシア第19次制裁パッケージ(2025年10月23日採択)

欧州委員会は第19次対ロシア制裁を採択し、規制の網をさらに広げました。()skadden+1

  • LNG輸入禁止の拡大:ロシア産LNGのEU域内への輸入禁止措置を導入。
  • 金融制裁の強化:ロシアのSPFS(金融メッセージングシステム)に関連する銀行・インフラを追加指定。
  • 所有・支配基準の明文化:50%未満の出資でも「実質的支配」がある場合を制裁対象とする基準を明確化。

2-2. デュアルユース品目リストの改正(2025年11月)

2025年11月14日、EUはデュアルユース(軍民両用)輸出管理リストを改正しました。()gov+1
従来の国際レジーム(ワッセナー等)に加え、半導体製造装置、量子技術、先端計算機などを対象とする**「500番台」の独自品目コード**を導入しています。

👉 実務ポイント
EU向けにハイテク製品を輸出する日本企業は、製品が新設の「500番台」に該当しないか、パラメータシートや該非判定書の更新が必要です。

2-3. CBAM(炭素国境調整):小口輸入の「50トン免除」

2026年の本格稼働に向け、2025年10月には制度を簡素化する改正規則(EU規則 2025/2083)が発効しました。()eurometal+1

  • 50トン・デミニミス(免除):対象品目の年間輸入量が**「事業者あたり50トン以下」**の場合、CBAM義務が免除されます。(※電力・水素は除く)()sustainabilityinbusiness+1
  • これにより、中小規模のサンプル出荷や補修部品等の輸出における事務負担が大幅に軽減されます。

3. 中国:「報復措置」の一時停止と管理強化の裏側

3-1. 「中国版50%ルール」とレアアース規制も一時停止

中国商務部・税関総署は2025年11月7日、告示第70号を発表し、直前の10月〜11月に打ち出していた以下の厳しい輸出規制を2026年11月10日まで一括して停止しました。()resilinc+1

  • 停止された規制
    • レアアース、リチウム電池、人工黒鉛等の輸出管理強化(告示55-58号等)
    • 中国版「50%ルール」(外国企業への域外適用・再輸出規制を含む告示61・62号)

これは米国の「BIS 50%ルール停止」に対するバーター(交換条件)措置であり、米中双方が「相手企業のグループ会社網を寸断する規制」を同時に引っ込めた形です。()gvw

👉 実務ポイント
中国からのレアアースやバッテリー材料の調達リスクは、2026年11月まで一旦落ち着きます。しかし、あくまで「停止」であり「撤回」ではないため、調達先の多様化(チャイナ・プラス・ワン)を進める時間は、この1年しかありません。


4. 日本:対ロシア制裁とエネルギー安全保障

4-1. ロシア産原油の価格上限引き下げ

日本政府は2025年9月、G7・EUと足並みを揃え、ロシア産原油の価格上限(プライスキャップ)を従来の60ドルから47.60ドルへ引き下げました。()discoveryalert+1
実質的な輸入はほぼないため直接的な影響は限定的ですが、海上保険の付保要件に関わるため、海運・保険業界は厳格な運用が求められます。

4-2. サハリン・プロジェクトの維持

一方で、サハリン1・2については方針を変えていません。経産省は2025年11月にも「日本のエネルギー安全保障上、極めて重要」との立場を崩しておらず、米英の制裁強化の中でも、特例的な維持を図る姿勢を示しています。([の文脈参照])


5. 英国:制裁の独自色と「Sanctions Hub」

5-1. ロシア大手石油・シャドーフリートへの制裁

英国は2025年10月15日、**Lukoil(ルクオイル)とRosneft(ロスネフチ)**というロシア石油大手2社を資産凍結対象に追加し、さらにシャドーフリート関連船舶への制裁も拡大しました。()mayerbrown+1
これにより、英国系金融機関や保険会社を経由する取引のリスク許容範囲が極めて狭まっています。

5-2. 輸出管理の改正と「Sanctions Hub」

英国は2025年12月16日施行の輸出管理改正で、EU同様の「500番台」品目を導入します。()gov
また、複雑化する制裁情報を検索できる公式ツール「Sanctions Hub」の運用を強化しており、実務者は「Consolidated List」だけでなく、このHubでのクロスチェックが推奨されます。


6. まとめとアクションリスト

1年間の「猶予期間」をどう使うか

米中双方が「50%ルール」等の決定的な規制を2026年11月まで棚上げしたことで、ビジネスには1年間の猶予が生まれました。この期間にやるべきは以下の3点です。

  1. サプライチェーンの資本関係マッピング(KYC)
    • 今のうちに、中国・ロシア等の取引先について「誰が50%以上出資しているか」を調査しておく。2026年に規制が復活した際、即座に影響範囲を特定できるようにするためです。
  2. 「500番台」品目の該非判定
    • EU・英国向け輸出製品が、新設された量子・半導体関連の規制スペックに抵触しないかを確認する。
  3. CBAMデータの整備(50トン超の企業)
    • EU向け輸出が年間50トンを超える場合は、2026年の本格義務化に向け、CO2排出量データの算定フローを確立する。

2025年は「規制の激化」から「一時的な休戦と準備」のフェーズに入りました。この静けさが続く間に、体制を整えることが肝要です。


※本記事は2025年11月29日時点の情報を整理したものです。個別取引においては必ず各国の最新法令をご確認ください。

  1. https://ustr.gov/about/policy-offices/press-office/press-releases/2025/november/ustr-extends-exclusions-china-section-301-tariffs-related-forced-technology-transfer-investigation
  2. https://www.roic.ai/news/ustr-extends-178-china-301-tariff-exclusions-through-november-2026-11-26-2025
  3. https://www.ey.com/en_gl/technical/tax-alerts/ustr-extends-product-exclusions-subject-to-section-301-tariffs-through-29-november-2025
  4. https://kpmg.com/us/en/taxnewsflash/news/2025/11/ustr-extends-product-exclusions-china-section-301-tariffs.html
  5. https://ustr.gov/about/policy-offices/press-office/press-releases/2025/november/ustr-suspension-action-section-301-investigation-chinas-targeting-maritime-logistics-and
  6. https://www.thompsonhinesmartrade.com/2025/11/ustr-announces-one-year-suspension-of-section-301-countermeasures-targeting-chinas-maritime-logistics-and-shipbuilding-sectors/
  7. https://www.sidley.com/en/insights/newsupdates/2025/10/us-commerce-department-bureau-of-industry-and-security-adopts-50-percent-rule-for-export-controls
  8. https://www.hklaw.com/en/insights/publications/2025/10/bis-expands-impact-of-us-export-controls-with-50-percent-rule
  9. https://finance.ec.europa.eu/news/eu-adopts-19th-package-sanctions-against-russia-2025-10-23_en
  10. https://www.arnoldporter.com/en/perspectives/advisories/2025/10/uk-and-us-impose-major-new-sanctions-on-russian-oil-sector
  11. https://www.skadden.com/insights/publications/2025/11/eu-adopts-19th-sanctions-package
  12. https://www.gov.uk/government/publications/notice-to-exporters-202530-updates-to-export-control-regulations/nte-202530-updates-to-export-control-regulations
  13. https://www.hoganlovells.com/en/publications/eu-updates-dualuse-control-list-new-controls-on-emerging-technologies-and-shift-in-export-control
  14. https://eurometal.net/eu-adopts-cbam-amendment-introducing-50-mt-exemption-and-simplified-reporting/
  15. https://fn.legal/en/cbam-amendment-regulation-entered-into-force/
  16. https://www.sustainabilityinbusiness.blog/2025/10/new-cbam-simplified-rules-finalized-time-for-companies-to-prepare-for-compliance/
  17. https://resilinc.ai/blog/chinas-export-pause-reveals-trade-policy-supply-chain-risk/
  18. https://www.cirs-group.com/en/chemicals/china-temporarily-suspends-export-controls-on-key-raw-materials-including-rare-earths-lithium-batteries-and-diamond
  19. https://www.gvw.com/en/news/blog/detail/china-export-control-update
  20. https://discoveryalert.com.au/russian-oil-price-cap-2025-japan-g7-sanctions/
  21. https://www.reuters.com/business/energy/japan-cuts-price-cap-russian-oil-4760-additional-sanction-2025-09-12/
  22. https://www.mayerbrown.com/en/insights/publications/2025/10/uk-weekly-sanctions/uk-weekly-sanctions-update-week-of-october-13-2025
  23. https://www.lw.com/en/insights/sanctions-update-eu-uk-sanctions-target-russian-lng-major-russian-companies
  24. https://www.federalregister.gov/documents/2025/12/01/2025-21671/notice-of-product-exclusion-extensions-chinas-acts-policies-and-practices-related-to-technology
  25. https://www.ghy.com/trade-compliance/section-301-tariff-exclusions-further-extended-through-november-29-2025/
  26. https://www.chrobinson.com/es-us/resources/insights-and-advisories/client-advisories/2025q3/09-02-2025-client-advisory-section-301-tariff-exclusions-extended-through-ovember-2025/
  27. https://www.strtrade.com/trade-news-resources/tariff-actions-resources/301-investigation-china-shipbuilding-maritime-logistics
  28. https://www.mofo.com/resources/insights/251001-bis-adopts-50-percent-affiliates-rule-implications
  29. https://www.ashurst.com/en/insights/overview-of-the-eus-19th-sanction-package/
  30. https://policy.trade.ec.europa.eu/news/2025-update-eu-control-list-dual-use-items-2025-09-08_en
  31. https://www.businesstimes.com.sg/international/global/us-extends-one-year-tariff-exclusions-some-chinese-industrial-goods-part-trade-truce
  32. https://www.clarkhill.com/news-events/news/china-hits-pause-on-rare-earth-export-controls-and-what-it-means-for-supply-chains/
  33. https://www.china-briefing.com/news/chinas-rare-earth-export-controls-impacts-on-businesses/
  34. https://globaltradealert.org/state-act/95168-china-temporary-suspension-of-additional-export-controls-for-rare-earth-related-technologies
  35. https://finance.yahoo.com/news/japan-cuts-price-cap-russian-143000860.html
  36. https://research.hktdc.com/en/article/MjE2NTI4MjQ4NA
  37. https://english.mofcom.gov.cn/News/SpokesmansRemarks/art/2025/art_c202dcc0433d476db52b1e7f7fe53926.html
  38. https://sustainability.slaughterandmay.com/post/102lr0h/eu-cbam-amended-to-exclude-90-of-importers-but-include-99-of-emissions
  39. https://energynews.oedigital.com/crude-oil/2025/09/12/japan-increases-sanctions-on-russia-by-reducing-the-price-of-russian-oil-to-4750
  40. https://www.gov.uk/government/publications/list-of-russia-sanctions-targets-15-october-2025/list-of-russia-sanctions-targets-15-october-2025

メキシコ関税法改正:2026年1月施行へ――電子通関ファイルと罰則強化で「見える化」される貿易実務


1. 何が起きたのか:19年の大改正、2026年1月から本格スタート

2025年11月19日、メキシコ政府は官報(Diario Oficial de la Federación)で「関税法(Ley Aduanera)の改正・追加・削除」を定める大きな政令を公布しました。対象条文はなんと113条に及びます。(info.expeditors.com)

この改正は、

  • 2026年1月1日に原則施行
  • 一部の条文は施行後1か月または3か月後に段階的に適用

というスケジュールになっています。(dlapiper.com)

改正の狙いとして、各種解説では共通して次の点を挙げています。

  • 通関手続のデジタル化・トレーサビリティの徹底
  • 税関当局(SAT・ANAM)の統制強化と税収拡大
  • 密輸・過少申告・虚偽原産地証明など「huachicol fiscal(税の抜け穴)」への対策 (GPF ASESORIA DE NEGOCIOS)

日本企業にとっては、「関税率が上がる」話ではなく、通関実務の管理・証憑・ITシステムが一気に重くなる改正と理解するのが出発点です。

なお、日本語で「メキシコ関税法」と呼ばれることが多い法律は、ここでいう**「Ley Aduanera(税関法)」です。
別に
関税率表を定める「一般輸入・輸出税法(LIGIE)」の改正案(約1,400品目の関税引き上げ)は、今回とは別トラック**で進んでおり、後述のとおり審議が先送りされています。(dlapiper.com)


2. 改正の3つの柱

2-1. 電子通関ファイルの中身が激変:契約書・支払証憑まで必須に

今回の改正で、電子通関ファイル(expediente electrónico aduanero)に保管すべき資料の最低要件が、質・量ともに大きく引き上げられました。

KPMG や各種法律事務所の解説では、以下のような書類が**「最低限」**求められるとされています。(KPMG)

  • インボイス、B/Lなど従来の通関書類に加え
  • 電子税務証憑(CFDI)
  • 国内輸送用のCFDI+Carta Porte補完(車両・ルート・ドライバー情報を含む)(alvarezandmarsal.com)
  • 送金明細・銀行振込記録
  • 保険料・運賃・その他通関関連コストの支払証憑
  • 売買・委託加工・リースなど関連契約書一式
  • 価値申告・バリュエーション分析(Transfer Pricing との整合が問われる部分)

さらに、通関ファイルと在庫管理システム・監視カメラ・トラッキング情報を連動させた「統合電子システム」の義務化が、保税蔵置場やRFE(Recinto Fiscalizado Estratégico)などにも課されます。これらのシステムには、税関当局がリモートで常時アクセスできることが要求されています。(GPF ASESORIA DE NEGOCIOS)

👉 日本企業への含意

  • 「インボイス+パッキングリストさえあれば通関できる」という世界は終わりに近づいている
  • メキシコ子会社の会計・契約・物流情報を、通関ファイルに一元紐づける体制が必要
  • 日本本社側も、契約スキームや価格決定ロジックを説明できる形で文書化しておかないと、監査で突かれやすくなる

2-2. 通関業者(ブローカー)・倉庫・物流事業者への規制強化

(1) 「一生モノ」だった通関士ライセンスが20年更新制+3年ごとの認証に

これまで、メキシコの通関業者(agente aduanal)は、実務上「終身ライセンス」とも言える形で活動してきました。
しかし改正後は、以下のように制度が大きく変わります。(GPF ASESORIA DE NEGOCIOS)

  • 通関士ライセンスの有効期間:20年(同期間の更新可)
  • ライセンスは個人的かつ譲渡不可
  • 3年ごとの技術認定(試験・更新)が義務化
  • 公職にある者は、通関士ライセンスを取得・維持できない
  • 繰り返しの違反や重い犯罪での訴追・起訴で、停止・取消のリスクが大幅増

さらに、これまで存在した**「荷主が虚偽情報を出した場合はブローカーは免責」という条項が削除**され、
荷主の誤った申告に対しても、通関業者が連帯責任を負う方向に転じています。(alvarezandmarsal.com)

>その結果、通関業者は「自分を守るために、荷主へのデューデリジェンスと社内監査を強化せざるを得ない」と各所で指摘されています。(dlapiper.com)

(2) 倉庫・保税区画へのハイレベルなシステム要件

保税蔵置場やRFEなどの施設については、電子在庫管理・ビデオ監視・リアルタイム追跡などのシステム導入が、許可要件として明文化されます。(GPF ASESORIA DE NEGOCIOS)

  • 税関電子システムとの相互接続(インターオペラビリティ)
  • 当局への24時間リモートアクセス
  • 物流・在庫データと通関ファイルの一致性

を求められるため、IT投資なしに倉庫ビジネスを続けることは難しくなります。

(3) 物流・ECオペレーターにも直接規制

Expeditors のまとめによれば、改正は以下のようなプレイヤーにも直接影響を与えます。(info.expeditors.com)

  • 輸入貨物を保管する一般倉庫
  • 航空・宅配便などのクーリエ事業者(簡易通関スキームの明文化)
  • 越境ECプラットフォーム(登録義務や上限の見直し)

👉 日本企業への含意

  • ブローカー側がリスクを嫌い、書類の要求水準や質問のレベルが一段と厳しくなる
  • 「今まで付き合いでやってくれていた」ブローカーが、リスクの高い貨物の取扱いを断る可能性も
  • メキシコ側の倉庫・3PLに対し、システム要件・コンプライアンス状況を確認するデューデリジェンスが必要

2-3. 罰則・税務リスクの大幅強化

関税法そのものに加え、連邦税法典(Código Fiscal de la Federación)の改正もセットで行われ、
密輸・脱税・虚偽申告に対する行政・刑事リスクがかなり強化されています。(dlapiper.com)

代表的なポイントは以下の通りです。

  • 制限品・禁止品の輸入や、非関税措置(NOM・衛生規制・許可等)の不履行に対して
    貨物価値の250〜300%に相当する罰金が科され得る(dlapiper.com)
  • 価値申告(Manifestación de Valor)や電子価格証明(COVE)での誤り
    ⇒ 1件あたり約29,000〜53,500ペソの罰金(約25〜45万円規模)(alvarezandmarsal.com)
  • ラベリング違反、申告住所に貨物が存在しない場合など、新たな差押え(embargo)事由が追加(alvarezandmarsal.com)
  • FTA上の特恵関税を不正に得るための虚偽原産地証明について、
    税法典上の**「脱税」「虚偽申告」等の刑事リスク**が明確化(dlapiper.com)

👉 日本企業への含意

  • RCEP・日メキシコEPA・USMCA原産地証明などをメキシコ側が利用する場合、
    日本本社が出すサプライヤー証明や原産地情報に虚偽・過失があると、メキシコ側で刑事リスクに直結する可能性
  • 移転価格税制のみならず、関税バリュエーションの整合性が、これまで以上に重要な経営課題になる

3. IMMEX・RFEなど製造優遇スキームへの直撃

今回の改正は、単なる「通関ルール改正」にとどまらず、IMMEX・RFEといった製造優遇スキームに特に厳しいメッセージを発しています。(dlapiper.com)

3-1. RFE(Recinto Fiscalizado Estratégico)

  • RFEへの貨物導入にあたり、関税保証口座や信用状による保証義務を明文化(dlapiper.com)
  • 貨物の加工・保管・分配等を行う場合、実際に工程が行われたことを示す技術・会計資料を保持しなければならない
  • RFEが港・税関と隣接していない場合、認定された「認定商業パートナー(socio comercial certificado)」のみが輸送・通関を実施可(dlapiper.com)

3-2. IMMEX(マキラ)企業

  • IMMEX間の移転取引について、**拡張版の通関ファイル(Article 59 V)**を作成・保管する義務
    • 通常の通関書類に加え、工程資料・原材料使用実績・会計記録などを含めて一体管理 (dlapiper.com)
  • 在庫管理・工程トレーサビリティ・リモート監査に対応できるシステム導入が必須

DLA Piper は、これらの改正を踏まえ、2026年にメキシコの貿易税収が約1517億ペソから2547億ペソに増加するとの政府見通しを紹介しており、その相当部分が監査・検査強化による追加徴収と見られています。(dlapiper.com)

👉 日本企業への含意

  • メキシコでの組立・加工拠点(マキラ・IMMEX工場)を持つ企業は、最優先で影響分析が必要
  • 工場内の在庫管理・実績データと、通関データ・会計データの**「三位一体」管理**が求められる
  • RFEを活用した在庫バッファ・再輸出スキームは、保証や証憑負担の増加を前提に再設計すべき段階

4. 「関税率引き上げ法案(LIGIE改正)」との関係

今回の関税法(Ley Aduanera)改正とは別に、メキシコ政府は一般輸入・輸出税法(LIGIE)の大改正案も提出しています。

  • 1,463の関税分類を改正し、主にFTAのない国(中国など)からの輸入品に35%前後の高関税を課す構想(Eje Central)
  • しかし、このLIGIE改正案は、議会での審議が先送りされ、現行会期末の2027年8月31日まで棚上げされる可能性があるとDLA Piperは指摘しています。(dlapiper.com)
  • とはいえ、大統領は緊急権限に基づき個別に関税を引き上げる権限を維持しており、完全にリスクが消えたわけではありません。(dlapiper.com)

したがって、

  • 「2026年1月に変わるのは主に手続と罰則」
  • 「関税率そのものの大幅引き上げ(LIGIE改正)は、別の政治日程で動き続けている」

という二重の時間軸でメキシコリスクを見ておく必要があります。


5. 日本企業が今からやるべき5つのチェックポイント

最後に、日本のビジネスマンの視点で、2026年1月までに最低限チェックしたいポイントを整理します。

5-1. メキシコ側の「電子通関ファイル」体制の棚卸し

  • メキシコ法人がどの程度、
    • CFDI+Carta Porte
    • 契約書・見積り・支払証憑
    • バリュエーション資料
      一元的に保管・紐づけできているかを確認
  • ERP・WMS・TMS と通関システムが「バラバラ」になっている場合、
    2025年のうちに統合作業をどこまで進められるかが勝負

5-2. 通関ブローカーとの関係性の再構築

  • 改正後は、ブローカーも自らのライセンスを守るために保守的になります
  • 現在取引しているブローカーに対し:
    • 改正関税法への対応方針
    • 必要書類の増加や、質問項目の変化
    • 社内監査(due diligence)の頻度
      事前にすり合わせておくことが重要です

5-3. IMMEX・RFE利用スキームの総点検

  • 工場の在庫・工程データと通関データが、
    「いつでも監査対応できるレベル」でリンクしているかを確認
  • RFE利用を検討・利用中の企業は、
    • 保証口座・信用状のコスト
    • 限定された輸送業者・通関業者の利用制約
      を考慮してビジネスケースの再計算が必要です

5-4. 原産地証明・バリュエーションのガバナンス強化

  • 日本本社が発行する
    • サプライヤー証明
    • 原産地証明用の情報
    • 移転価格ポリシー
      が、メキシコでの通関・税務監査に耐えうる文書になっているか再点検
  • 特に、虚偽原産地証明に対する刑事リスクが明確化されたため、
    FTA/EPA対応部門と税務・コンプライアンス部門の連携が必須です。(dlapiper.com)

5-5. メキシコを「低コスト拠点」とだけ見ない

  • 改正は明らかに、「税関・税務コンプライアンスが重い国」としてのメキシコを前提にした制度設計です
  • 中国+1、USMCA向け生産拠点としての魅力は依然高いものの、
    「安い・緩いからメキシコ」という発想は通用しなくなるタイミングと言えます

6. まとめ:2026年のメキシコは「通関DX+監査強化」元年

  • 2025年11月19日に公布された関税法改正は、113条を一気にいじる大規模な制度変更であり、
    2026年1月1日から本格施行されます。(info.expeditors.com)
  • 中心テーマは
    • 電子通関ファイルとITシステムの義務化・高度化
    • 通関業者・倉庫・IMMEX/RFEへの規制強化
    • 罰則・刑事リスクの大幅引き上げ
      であり、実務の透明性と当局の監視能力を一気に高める内容です。
  • 関税率そのものをいじるLIGIE改正案(約1,400品目の高関税化)は、
    議会で先送りされたとはいえ、政治状況次第で再浮上し得るリスクとして残っています。(dlapiper.com)

日本企業としては、

「関税率はまだ上がっていないから安心」ではなく、
「通関・税務コンプライアンスの管理レベルを2026年仕様に引き上げる」

という発想で準備を進めることが重要です。


※本記事は、KPMG、DLA Piper、Alvarez & Marsal、Mijares、Expeditors など複数の専門家レポートを比較・確認したうえで、ビジネス向けに要約したものです。個別案件への適用には、必ず現地の専門家・顧問弁護士等の助言を受けてください。(KPMG)

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関税ショックは先送り:USTRの中国301条除外延長があなたのビジネスに意味すること

USTR、中国の「301条関税除外」を2026年11月まで延長──ビジネスパーソンは何を押さえるべきか

1. まずは「3行」で今回のポイント

2025年11月25日、米通商代表部(USTR)は、中国に対する301条追加関税のうち178件の「除外(exclusions)」を約1年延長し、**2026年11月9日23:59(米東部夏時間)**まで有効とすることを発表しました 。ustr+1

対象は、太陽光パネル製造装置14カテゴリーと、産業・医療機器など164カテゴリー(電動モーター、血圧計、ポンプ部品、自動車用エアコンプレッサー、プリント基板など)で、いずれも主にB2B用途の中間財です 。ustr

背景には、**米中間の新たな経済・貿易合意(Kuala Lumpur Joint Arrangement)**があり、中国側のレアアース輸出規制の緩和や米農産品輸入拡大と「パッケージ」で決まった措置です 。cassidylevy+1

以下では、この決定がグローバル調達・生産戦略、価格交渉、リスク管理にどのような意味を持つのかを整理します。

2. そもそも「301条関税」とは何か、なぜ除外があるのか

2-1. 301条は「不公正貿易」に対する”何でも屋”条項

米国通商法301条(Section 301 of the Trade Act of 1974)は、相手国の不公正な貿易慣行に対して、米国が一方的に是正措置(関税引き上げなど)を取る権限を大統領・USTRに与える条文です。

2017年に米国は、中国の技術移転強要・知的財産権侵害・イノベーション政策を巡って301条調査を開始し、2018年以降、いわゆるList1〜4と呼ばれる段階的な追加関税(25%や7.5%など)を導入しました。

2-2. 「除外(exclusions)」とは何か

301条関税には、プロダクトごとに追加関税を免除する「除外」制度があります:

  • 10桁のHSコード+商品説明の組み合わせで「この条件に合致する製品は301条の追加関税を免除する」と定義
  • 該当製品は、WTO上の通常関税(MFN税率)のみ、301条分はゼロ
  • 企業がUSTRに申請し、代替供給源の有無・米国産業への影響などを踏まえて判断される仕組み

この除外は期限付きで、ここ数年は3〜6カ月単位で延長されてきました。特に今回延長の対象となったのは:

  • 2024年5月に164件の除外が2025年5月31日まで延長
  • 2024年9月に太陽光製造装置に関する14件の新たな除外を追加
  • その後、合計178件が2025年8月31日まで、さらに2025年11月29日まで延長されていた案件ですey+1

3. 今回の決定:延長された178件の中身

3-1. 有効期限は「2026年11月9日23:59(米東部夏時間)」まで

今回公表された連邦官報(Federal Register)通知では、以下のように定義されています:

  • 対象: 現在有効な178件の除外
  • 期間: 2025年11月30日0:01(米東部標準時)以降に輸入される貨物で、**2026年11月9日23:59(米東部夏時間)**までに米国に輸入されたもの

USTRのプレスリリースでは「2026年11月10日まで」と表現されていますが、実務的には11月9日深夜までの通関分が対象と理解するのが安全です 。kpmg+1

3-2. どんな品目が対象か

報道やUSTRの説明によれば、対象は主に以下の2グループです:ustr

太陽光パネル製造関連(14カテゴリー)

  • ウエハーやセルの生産ラインに用いる装置
  • コーティング、エッチング、検査装置など

産業・医療用途を中心とする中間財(164カテゴリー)

  • 電動モーター
  • 血圧測定装置
  • ポンプのコンポーネント
  • 自動車用エアコンプレッサー
  • プリント基板(PCB)など

いずれも、最終消費財というより、設備・部品・医療機器などの中間財です。B2Bの製造業・医療機器産業にとって重要な入力財である、というのが共通点と言えます。

連邦官報では、これらはHTSUS(米国輸入統計品目表)の特定の臨時番号(9903.88.69・9903.88.70)および関連する注記で定義されており、「記載条件を満たすすべての輸入者に適用される」と明記されています。

4. なぜ米国は「除外」をさらに延長したのか

4-1. 公募コメント:代替調達の難しさと”猶予期間”の要望

USTRは2025年9月16日付けで、178件の除外を2025年11月以降も延長すべきかどうか、パブリックコメントを募集しました。評価軸として、以下を挙げています:

  • 中国以外からの代替調達の可否とその量
  • 米国または第三国から調達するための取り組み状況
  • 追加の時間がなぜ必要か
  • 延長が、最終的に中国依存からの脱却に寄与するか
  • 米国の政策優先事項(サプライチェーン強靭化、安全保障など)との整合性

その結果、178件中147件が延長支持のコメントを受け、反対意見があったのは10件のみでした。多くの企業が、「現時点で中国以外の供給源は量・品質ともに十分ではない」「急激な関税復活は、米国内の製造や医療提供に悪影響を与える」といった趣旨の懸念を表明したとされています。

4-2. 米中「Kuala Lumpur Joint Arrangement」とのパッケージ

さらに大きな要因が、**2025年10月30日に韓国で開催されたトランプ大統領と習近平国家主席の会談を受けて合意された「Kuala Lumpur Joint Arrangement」**です 。cassidylevy+1

ホワイトハウスの資料によると、この合意で中国は以下を約束しました:whitehouse

  • レアアースやその他重要鉱物に対する世界的な輸出規制の延期・実質的な撤廃
  • 米半導体企業などへの報復措置の見直し
  • 大豆・ソルガム・木材など米農産品の輸入拡大
  • 米国製品に対する自国側の関税除外プロセスを2026年12月31日まで延長

これに対して米国側は:

  • 中国製品への「引き上げ済みの相互関税」を2026年11月10日まで凍結・低い水準に据え置く
  • その一環として、301条の178件の除外を2026年11月まで延長

することを約束しました 。whitehouse

今回の除外延長は、こうした一連の「貿易休戦」の一部と位置付けられます 。cassidylevy

4-3. 対中強硬姿勢は維持したままの”部分的な緩和”

注意すべきは、対中政策が「軟化」したわけではないという点です。

2024年5月には別途、電気自動車(EV)、リチウムイオン電池、重要鉱物、医療用手袋などに対して、今後数年にわたって301条関税を引き上げる方針が示されています(EVは最大100%)。

今回延長されたのは、代替サプライヤーが限られ、米国内の製造業・医療・エネルギー政策にとって短期的な課税が「自傷行為」になりうる品目にほぼ限定されています。つまり、「戦略的に守る分野」と「一定の猶予を与える分野」を切り分けた結果と見るのが妥当です。

5. 日本・アジア企業にとってのインパクト

5-1. 中国工場から米国向けに輸出している企業

中国拠点から米国へ設備・部品・医療機器コンポーネントなどを輸出している企業は、まず次の点を確認する必要があります:

  • 自社製品が301条のどのリストに該当するか
  • その中で、今回延長された178件の除外に該当するかどうか(HSコードと品目説明ベース)

該当する場合、2026年11月9日(米東部夏時間)まで追加関税なしで輸出できる見通しが立ちます。一方、除外に該当しなければ、従来通りの追加関税負担が継続します。

今回の延長により、「2025年末で採算が合わなくなる」と見込んでいた案件が、あと1年弱は現状条件を維持できるケースも出てくるはずです。

5-2. 「China+1」戦略への影響

ここ数年、多くの企業が301条関税や地政学リスクをきっかけに、中国からベトナム・メキシコ・インドなどへの生産移管を進めてきました。

今回の延長により:

  • 対象品目については、「急いで移管しないと関税で赤字」という状況が一旦後ろ倒し
  • ただし、2026年11月以降の扱いは未定であり、「さらに延長される」という保証はない

という意味で、完全なブレーキではなく、「時間を与えられた」という性格が強いと言えます。

経営的には、キャパ増設や新工場投資は計画通り進めるが、稼働タイミングや投資回収シナリオを1年シフトさせる、といった微調整があり得る局面です。

5-3. 米国顧客との価格交渉・契約条件

301条関税は、サプライ契約の中で「関税分は価格に転嫁する」「関税が変わった場合は再交渉する」といった条項(tax pass-through clause)として組み込まれていることが多くあります。

今回予定されていた2025年末の関税復活が回避されたことにより:

  • すでに2026年価格を「関税復活前提」で見積もっていた場合、値決めの見直し余地
  • 逆に、顧客側から「関税かからないなら値下げを」と逆提案される可能性

も出てきます。

調達側・販売側とも、**「想定していた前提条件が変わった」**という認識を共有し、契約条項の読み直しが必要です。

5-4. HSコードと実務リスク

除外はHSコード(10桁)と商品説明の組み合わせで機械的に判定されます。わずかな仕様差や組み立て工程の違いで、**「同じと思っていた品目が別のコード扱い」**になることも少なくありません。

税関での判定が変われば、突然301条関税の対象になるリスクがあります。

したがって:

  • 米国側輸入者・通関ブローカーと連携し、HTSコードの再確認
  • 過去の輸入実績と今回の除外リストを突き合わせ、該当の有無を「コードレベル」で確認

することが、今回の延長を活かす前提条件になります。

6. ビジネスパーソン向け「2026年11月まで」のアクション・チェックリスト

6-1. 自社影響の棚卸し

輸出入・調達データの抽出

  • 「中国→米国」向けの輸出品目(または米国法人の輸入品目)を洗い出す

HSコード/商品説明と除外リストの照合

  • 自社品目が今回延長された178件のどれかに当たるかを確認
  • 当たる場合は、コストシミュレーションを「延長後の前提」で更新する価値があります

6-2. 「2026年11月9日」をXデーとした逆算

2026年11月9日以降:

a. さらに延長される
b. 一部だけ延長され、多くは失効する
c. 全面失効し、フル関税復活

という複数シナリオを想定し、それぞれについて:

  • 価格・利益率
  • サプライチェーン構成
  • 代替調達・生産移管のロードマップ

を「逆算スケジュール」で描いておくと、政策変更があっても慌てずに済みます。

6-3. 米国の産業政策との整合性を見る

301条関税は、単体で動いているわけではなく:

  • EV・バッテリー・太陽光などへの関税引き上げ方針
  • CHIPS法、インフレ抑制法(IRA)などの国内投資インセンティブ

とセットで設計されています。

自社の事業が:

  • 「米国内生産を増やせば恩典が受けられる分野」なのか
  • 「中国発サプライチェーンに依存すると、今後も関税リスクが高い分野」なのか

を整理することで、投資先・生産地の優先順位も見えやすくなります。

6-4. 「政治リスクを価格に織り込む」文化づくり

今回のように、関税が3カ月延長→さらに3カ月→一気に約1年延長と、政治判断により前提条件が揺れ動く状況が続くと:

  • 「法改正や関税変更は突発的に起きるもの」として
  • 長期契約の価格設定
  • 投資回収期間の設定
  • リスクマージン(政治リスク・地政学リスク)

をあらかじめ**「上乗せしておく」発想**が重要になります。

7. まとめ:関税は「終わる」より「続く」と考える

今回のUSTRによる301条除外の2026年11月までの延長は:

  • 中国依存の高い中間財について、米国企業・産業に「もう少し時間を与える」ための措置であり
  • 同時に、米中間の新たな貿易合意(Kuala Lumpur Joint Arrangement)を履行するための外交パッケージの一部でもありますcassidylevy+2

一方で:

  • EV・バッテリーなど戦略分野では関税引き上げが続いていること
  • 延長はあくまで期限付きの暫定措置であり、恒久的な免除ではないこと

を踏まえると、**「関税リスクが去った」のではなく、「タイムリミットが1年延びた」**と捉えるのが現実的です。

最後に一言

本稿は公開情報に基づく一般的な情報提供であり、法的・税務的アドバイスではありません。実際の取引・投資判断に際しては、必ず通関ブローカー、弁護士、税理士など専門家と相談のうえ、最新のUSTR通知・連邦官報の原文を確認することをお勧めします 。kpmg+1

  1. https://ustr.gov/about/policy-offices/press-office/press-releases/2025/november/ustr-extends-exclusions-china-section-301-tariffs-related-forced-technology-transfer-investigation
  2. https://kpmg.com/us/en/taxnewsflash/news/2025/11/ustr-extends-product-exclusions-china-section-301-tariffs.html
  3. https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/11/modifying-reciprocal-tariff-rates-consistent-with-the-economic-and-trade-arrangement-between-the-united-states-and-the-peoples-republic-of-china/
  4. https://www.cassidylevy.com/news/us-and-china-reach-trade-arrangement-begin-implementation/
  5. https://www.ey.com/en_gl/technical/tax-alerts/ustr-extends-product-exclusions-subject-to-section-301-tariffs-through-29-november-2025
  6. https://www.strtrade.com/trade-news-resources/tariff-actions-resources/section-301-tariffs-on-china
  7. https://www.chrobinson.com/es-us/resources/insights-and-advisories/client-advisories/2025q3/09-02-2025-client-advisory-section-301-tariff-exclusions-extended-through-ovember-2025/
  8. https://x.com/DeItaone/status/1993724259642839126
  9. https://www.fibre2fashion.com/news/textile-news/ustr-extends-tariff-exclusions-on-some-chinese-industrial-goods-306765-newsdetails.htm
  10. https://www.chinadaily.com.cn/a/202511/27/WS6927b8f0a310d6866eb2bae9.html

なぜ世界の自動車マネーは「アメリカ行き」なのか

1. データで見る「自動車投資の重心移動」

1-1. EV関連投資はどこに向かっているか

欧州シンクタンクTransport & Environmentが、主要19社(欧州・米国・日本・韓国・中国OEM)によるEV・電池・充電インフラ投資(2021〜23年、総額2,650億ユーロ)を地域別に分析しています 。結果は明確です:transportenvironment

  • 北米: 37%(970億ユーロ)
    • そのうち81%が米国向け投資(790億ユーロ)
  • 欧州: 26%(700億ユーロ)
  • 中国: 19%
  • その他地域: 残り

つまり、大手自動車メーカーの約4割近いEV関連投資が北米、特に米国に向かっており、欧州や中国よりも「投資先としての魅力」が高いことが数字で裏付けられています 。transportenvironment

1-2. 米国だけを見るとどうか

米国内だけを切り取ると、インパクトはさらに大きく見えます。Biden政権発足(2021年)以降、EVとバッテリーの製造・サプライチェーン向け投資は累計3,120億ドル(約47兆円、1ドル=150円換算)に達しました 。transportenvironment

Rhodium Groupの「Clean Investment Monitor」によると、IRA施行からの3年間で:

  • クリーンエネルギーとクリーンテック製造への実投資は3,510億ドル
  • 未使用の将来投資パイプラインは5,170億ドル
  • そのうち製造向けが1,120億ドルで、その88%がEVサプライチェーン(電池・EV組立・資源)向けtransportenvironment

「EV・電池という成長分野の投資重心は、明確に米国へ移っている」──これが、数字から見える現状です。

2. なぜ投資マネーは米国に集まったのか

2-1. インフレ抑制法(IRA)の”政策効果”

Transport & Environmentの分析は、北米の投資優位の主因を2022年に導入されたIRAと結論づけています 。IRAのポイント:transportenvironment

  • EV購入補助: 最大7,500ドルの税額控除(北米最終組立・一定割合の北米/FTA締結国由来の電池・資源を条件)evdances
  • 電池生産クレジット(45X): 電池セル1kWhあたり35ドル、モジュール10ドルの生産税額控除transportenvironment
  • 低炭素車工場向け融資: 30億ドル規模の融資プログラムtransportenvironment

これらにより、**「EVを売るためには北米で作るのが一番得」**という構図が世界のメーカーに共有されました 。transportenvironment

2-2. 中国EV封じの”100%関税”と欧州の追随

バイデン政権は2024年に対中制裁関税を強化し:

  • 中国製EVへの関税を25%→**100%**に引き上げ
  • EV用リチウムイオン電池や重要鉱物にも**25%**の関税を段階的に導入transportenvironment

欧州連合も2024年に中国EVに対し、最大45.3%の追加関税(既存の10%輸入関税に上乗せ)を導入しました 。transportenvironment

これにより、「中国から完成車を輸入して売る」モデルは成立しにくくなり、北米と欧州の大市場に入りたいなら、その地域で作るか、域内生産拠点(北米ならメキシコ・カナダ)を置く必要が出てきました 。transportenvironment

3. 日本・韓国メーカーはどう動いたか

3-1. トヨタ:ノースカロライナの電池メガプラント

2025年11月、トヨタはノースカロライナ州リバティの電池工場で量産開始を発表しました:automotivelogistics

  • 投資額: 約140億ドル(当初12.9億ドルから段階的に拡大)
  • 能力: 年間30GWh、14ライン(HEV・PHEV・BEV向け)
  • 雇用: 最終的に5,100人規模
  • 追加投資: 今後5年間で100億ドルを北米にコミット

トヨタのEV関連投資の89%は北米向けで、欧州向けはわずか10%です 。transportenvironment

3-2. ホンダ:電池調達と車両生産を”米国寄り”へ

ホンダも米国リスクに直接対応:

  • トヨタの米国工場からハイブリッド車用電池を年間約40万台分調達
  • シビック・ハイブリッド5ドア版の生産を日本からインディアナ州に移管(2025年6〜7月完了予定)reuters
  • 次世代シビックもメキシコからインディアナへ移管予定(2028年5月開始、年産約21万台)reuters

これは「米国内で電池と車をセットで作り、『中国製部材+輸入完成車』という構図から距離を置く」明確なサプライチェーン再構築の動きです。

3-3. 韓国・欧州勢も北米寄り

Transport & Environmentの分析では:

  • ホンダのEV投資の58%、現代自グループの43%が北米向け
  • ステランティスはEV投資の74%を北米に、欧州はわずか10%transportenvironment

欧州はEV投資全体の26%しか引きつけられておらず、その大半が欧州メーカー自身による”身内投資”で、アジア勢からの大型投資は北米ほど集まっていません 。transportenvironment

4. 2025年、「米国一強」に陰り?トランプ政権の逆風

4-1. OBBBA(One Big Beautiful Bill Act)によるクレジット縮小

トランプ政権の法案「One Big Beautiful Bill Act(OBBBA)」は2025年7月に成立し:univis-america+1

  • IRAの気候関連税額控除を大幅削減
  • EV購入クレジット(30D)や商用EVクレジット(45W)は2025年9月30日終了reuters+1
  • 電池製造クレジットは2028年終了(4年前倒し)reuters

4-2. クリーン投資の減速とプロジェクトのキャンセル

Rhodium Groupの2025年Q2レポートによると:

  • 2025年Q2のクリーンエネルギー・輸送投資は前年比+1%の微増ながら、3四半期連続で前期比減少
  • 製造セグメント(電池・EV等)は前年同期比**▲19%**
  • 製造プロジェクトのキャンセル額(50億ドル)が新規アナウンス額(40億ドル)を上回る

AP通信によると、2025年に入ってから140億ドル超のクリーンエネルギー投資がキャンセル・延期され、1万人規模の雇用が失われました。

4-3. EV市場の減速と「ハイブリッド回帰」

トランプ政権下で:

  • 2030年までのEV販売50%目標が撤回federatedhermes
  • 厳格な排ガス規制が緩和
  • 7,500ドルのEV税控除が段階的に終了

結果、2030年のEVシェア見通しは40%→27%に下方修正されました。トヨタやVWなど複数メーカーが、EVシフト一辺倒から**ハイブリッド・ガソリン車を含む”マルチパスウェイ戦略”**に舵を切り直しています 。automotivelogistics

5. それでも「米国シフト」は終わらない:構造的な3つの理由

(1) すでに積み上がった投資パイプラインの大きさ

建設中のクリーンテック製造・エネルギー関連プロジェクトの未投資残高は5,170億ドル、うち製造分が1,120億ドルで、その約9割がEVサプライチェーン関連です。これらは埋没費用として数年かけて投資が継続される性格のものです。

(2) 中国EVへの”関税の壁”と代替生産拠点としての価値

  • 米国:中国製EVに100%関税、EV電池と重要鉱物に25%関税
  • カナダ:ほぼ同水準の関税
  • 欧州:中国EVに最大45.3%の追加課税transportenvironment

結果として、中国メーカーにとって北米・欧州は「現地生産を真剣に検討せざるを得ない市場」となり、北米・欧州に工場を持つ既存OEMとそのサプライヤーにとっては構造的な参入障壁が生まれています。

(3) 欧州の魅力度が”政策面で”出遅れている

  • 欧州は2021〜23年のEV投資のうち26%しか取り込めず
  • その80%は欧州メーカー自身による投資
  • Transport & Environmentは「EUがIRAに対抗する産業政策を欠き、半分近い欧州向けバッテリー投資が対米流出リスクに晒されている」と指摘transportenvironment

**「米国の追い風は弱まったが、欧州がそれ以上に出遅れている」**というのが、2025年時点の冷静な見立てです。

6. 日本企業がとるべき戦略的スタンス

6-1. 「米国一本足打法」は危険だが、「米国軽視」はもっと危険

キャッシュ創出拠点としての北米

高単価SUV・ピックアップ・ハイブリッドを中心に、利益創出の”母屋”として北米を位置づける発想は依然として合理的です 。一方で、OBBBAによる税制変更、規制の振れ幅の大きさ、州政府レベルの政策差を踏まえると、**「州ごとのインセンティブ頼みで過大投資しない」「設備を複数パワートレインに転用可能な設計にする」といった”オプション価値を残す投資設計”**が鍵になります。automotivelogistics

6-2. サプライチェーン設計:3ブロック対応

今後10年を見据えると、自動車サプライチェーンは以下の3ブロックで考えるのが現実的です:

北米ブロック(US+カナダ+メキシコ)

  • 45Xなどの生産クレジットは一定期間残存
  • 100%関税に守られた中国EV不在の市場

欧州ブロック(EU+UK+周辺国)

  • CO2規制が2025年以降強化
  • 中国EVへの関税導入で現地生産の魅力が上昇

中国+新興国ブロック

  • 中国はEV販売の約2/3を占める”EVの本丸”
  • 価格競争と技術進化のスピードが最速

日本企業視点では、実需と収益を取る「北米」、規制・ブランド構築の「欧州」、技術・コスト競争力を磨く「中国・新興国」という役割分担を明確にする必要があります。

6-3. 非OEMプレーヤーにとってのチャンス

完成車メーカーだけでなく、部品・素材・設備メーカーにもチャンスがあります:

  • 電池材料・分離膜・電解液・リサイクル
  • モーター、インバータ、パワーモジュール
  • 熱マネジメントシステム
  • 工場自動化・検査装置

これらは北米に建設中のEV・電池工場群に対して長期的な需要が見込める分野です。

まとめ:米国に傾く潮流を「前提条件」として、どう勝ち筋を描くか

  • EV・電池関連投資の重心はこの数年で米国・北米に大きく傾いたtransportenvironment
  • その原動力はIRAを中心とした積極的な産業政策と対中関税であり、欧州は政策・投資両面で出遅れているtransportenvironment
  • 一方で、2025年のトランプ政権によるOBBBAと環境規制の巻き戻しで、「補助金頼みのEV投資」は明確に逆風に入ったkiplinger+1
  • それでも、すでに積み上がった巨額の投資パイプラインと巨大な国内市場、中国EVを阻む関税の壁がある限り、北米は当面、自動車投資の最大級の受け皿であり続ける

したがって、日本企業にとって重要なのは、「米国シフトの波に乗るか/乗らないか」ではなく、**「どの程度のリスクを取り、どれだけオプション性を確保しながら米国を活用するか」**という設計です:

  • 設備とサプライチェーンは複数パワートレイン対応・複数地域調達可能にしておく
  • 政権交代や関税、規制変化を前提としたシナリオプランニングを経営計画に織り込む
  • 北米・欧州・中国+新興国それぞれの役割を決めたうえで、自社が「どのブロックで何を取りに行くのか」を明文化する

こうした視点を持てるかどうかが、「米国に傾く自動車投資の潮流」をチャンスに変えられるかどうかの分かれ目になっていきます。


※本記事の内容は、公開データ・公的機関・主要メディア(Rhodium Group, Transport & Environment, Reuters, AP等)の情報をもとに確認し、日本語として読みやすい形に整理・校正しています 。reuters+5

  1. https://www.automotivelogistics.media/nearshoring/toyota-to-invest-10bn-in-us-operations-over-five-years-as-battery-manufacturing-plant-opens-in-north-carolina/2127389
  2. https://www.telemetryagency.com/post/november-13-2025-toyota-launches-1st-north-american-battery-plant
  3. https://www.kiplinger.com/taxes/ev-tax-credit
  4. https://www.edmunds.com/fuel-economy/the-ins-and-outs-of-electric-vehicle-tax-credits.html
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  16. https://www.transportenvironment.org/articles/europes-automotive-industry-at-a-crossroads
  17. https://www.bruegel.org/policy-brief/smart-european-strategy-electric-vehicle-investment-china
  18. https://about.bnef.com/insights/clean-transport/global-electric-vehicle-sales-set-for-record-breaking-year-even-as-us-market-slows-sharply-bloombergnef-finds/
  19. https://climate.ec.europa.eu/news-your-voice/news/innovation-fund-2024-investing-future-net-zero-technologies-and-electric-vehicle-battery-cell-2025-05-14_en
  20. https://www.virta.global/global-electric-vehicle-market

【お知らせ】ついに公開。「HSコード・ファインダー(HSCF)」公式サイトを立ち上げました。

長らく開発を続けてまいりました「HSコード・ファインダー(HSCF)」ですが、 いよいよ本日、正式に利用が可能となりました。

貿易実務や通関業務において、やはり「HSコード」の特定は悩ましい課題のひとつ。 その課題に真っ直ぐ向き合うツールとして、ようやく皆様にお届けできます。

▼ 新サイトはこちら [https://global-scm.com/hscf/]

今後、HSCFに関する操作方法のQ&Aや、HSコードにまつわる最新情報、FAQなどのコンテンツは、すべてこの新サイトに集約して発信していきます。

ぜひブックマークしていただき、日々の業務にお役立てください。 今後ともよろしくお願いいたします。

メキシコ自動車関税案:「棚上げ」の深層と日本企業の対応策

1. 背景:50%関税案は「廃案」ではなく「延期」へ

2025年9月の改正案提出と衝撃
2025年9月、メキシコのシェインバウム政権は2026年度予算関連法案の一環として、輸出入関税法(LIGIE)の改正案を議会に提出しました。その核心は、一般関税率(MFN税率)の大幅な引き上げにあります 。spglobal+1

  • 対象品目: 自動車、同部品、鉄鋼、繊維など1,463品目
  • 関税率:
    • 自動車(EV含む):現行15〜25% → 最大50%argusmedia
    • 自動車部品:多くの品目で35%前後へ引き上げargusmedia
  • 影響範囲: メキシコとFTAを締結していない国(中国、韓国、インド、タイ、トルコ、ロシアなど)からの輸入約500億ドル相当photonpay+1

重要事項: 日墨EPAやCPTPP、USMCA(米国・カナダ)の要件を満たす「FTA相手国原産品」は、今回の引き上げ対象外です。日本原産品は引き続き無税または低関税が維持されます。

最新動向:2027年までの審議凍結
しかし、2025年10月28日、メキシコ連邦下院・経済通商競争委員会は、同法案の最終案取りまとめ期限を**「2027年8月末まで延長」**することを決定しました。これにより、法案が本会議で採決されるのは数年先となり、事実上の「棚上げ」となりました 。mex.news.o-abroad

【注意】ここが最大のリスクです
法案審議は止まりましたが、メキシコ憲法第131条および貿易法第4条に基づき、大統領は**「政令(Decreto)」によって関税率表(TIGIE)を随時変更する権限**を持っています。「包括的な法改正」は延期されましたが、「政令による特定品目のピンポイント利上げ」はいつでも発動可能な状態にある点に警戒が必要です 。whitecase+1

2. 延期の要因:国内産業の混乱と中国の反発

今回の決定の背景には、内外からの強い圧力がありました。

(1) 国内産業界からの悲鳴
急激な関税引き上げは、非FTA国からの輸入に依存するメキシコ国内産業を直撃します。

  • 自動車ディーラー協会(AMDA): 「中国ブランド車等を扱う約800店舗・3.2万人の雇用が危機に瀕する」と警告。
  • 自動車部品工業会(INA): 北米で調達不可能な部材をアジアに依存しており、製造コスト増による競争力低下を懸念。
  • 経営者団体(COPARMEX): 「中国対策の必要性は理解するが、一律50%への急激な引き上げはインフレを招く」として、段階的導入を要請しました 。bloomberg

(2) 中国による対抗措置の示唆
中国商務省は2025年9月、メキシコの関税方針に対し「貿易・投資障壁調査」の開始を発表し、強く牽制しました 。メキシコ新車市場における中国製車両(中国ブランドおよび欧米メーカーの中国生産車)のシェアは20.2%に達しており、経済的な結びつきは無視できないレベルにあります 。cfr+1

(3) 「2027年まで」の政治的意味
委員会による審査期限の延長は、以下のバランスを取るための高度な政治的判断といえます。

  • 財界へ: 「当面の間、急激な変更は行わない」という安心感を与える。
  • 中国へ: 「法案は確定していない」と逃げ道を残す。
  • 米国へ: 「法案自体は撤回していない」と対中姿勢をアピールする。

3. 延期の裏にある「3つの政治的意図」

公表情報と報道 から読み解く、政府の本音は以下の通りです。unav+1

  1. サプライチェーン再編のための時間稼ぎ
    名目は「国内生産の促進」ですが、現状のメキシコ産業はアジア製の部材・設備に依存しており、即時の50%関税に耐えられません。2027年までの猶予期間中に、調達網の北米シフト(ニアショアリング)を進めさせる狙いがあります。
  2. 米中対立の緩衝材(クッション)
    メキシコは「最大の顧客である米国」と「重要な供給元である中国」の板挟み状態にあります。期限延長は、米国の圧力(中国締め出し)に応える姿勢を見せつつ、中国からの即時の報復を回避するための「時間軸による調整弁」として機能しています。
  3. 2026年USMCA見直しへの「交渉カード」
    2026年に予定されるUSMCA(T-MEC)の再検討に向け、メキシコは「対中関税強化」というカードを温存しました。これを交渉材料として、米国から投資優遇や関税緩和などの有利な条件を引き出そうとする意図が透けて見えます 。reuters

4. 日本企業への影響:リスクと好機

4-1. 「日本原産」は安全だが、「メキシコ生産」は別問題
日本からの輸出品(日本原産)はEPA/CPTPPで守られますが、**「メキシコ工場がアジアから調達している部材」**はMFN関税引き上げの対象となり得ます。

4-2. リスクが高い企業の特徴

  • アジア部材依存型: 中国・韓国・タイ等の部材をメキシコで組み立てている(原産地規則上、非FTA原産となるケース)。
  • 経由輸出(迂回)型: 日本製品を中国・アジア経由でメキシコへ入れているケース。
  • IMMEX活用企業: 将来的に特定品目が免税対象から外れ、事後的に高関税が課されるリスク。

4-3. 日本企業にとってのチャンス
中国製品のコスト競争力が低下すれば、日本製品や北米生産品への回帰が進む可能性があります。品質と信頼性を武器に、メキシコ市場でのシェアを拡大する好機ともなり得ます 。automotivelogistics

5. 実務担当者が今すぐ取るべき5つのアクション

  1. 関税影響マップの作成(HSコード × 原産国)
    現在の輸入部材について、「現行税率」と「50%適用時の税率」を比較し、コストインパクトを可視化してください。これがサプライチェーンの健康診断となります。
  2. 「脱・非FTA国」調達のシミュレーション
    調達先を中国・非FTA国から、日本・北米・ベトナム(CPTPP加盟国)等へ切り替えた場合のコスト・リードタイムを試算してください。単価が多少上がっても、50%関税より安価なケースは多々あります。
  3. PROSEC / レグラ・オクターバの活用準備
    産業分野別生産促進プログラム(PROSEC)や、部材の無税輸入許可(レグラ・オクターバ)の適用可能性を確認してください。政令による突発的な関税変更に備え、事前登録だけでも済ませておくことを推奨します 。monarch-global
  4. 契約への「関税変動条項」の明記
    将来の関税上昇分を誰が負担するか、価格改定のトリガー条件などを、サプライヤーおよび顧客との契約書に明文化してください。
  5. 2026-2027年を見据えたシナリオプランニング
    「2026年 USMCA再交渉」と「2027年 法案審議期限」を節目として、関税が発動された場合の在庫戦略や資金繰りへの影響を今のうちにシミュレーションしておくことが重要です。

6. まとめ:猶予期間を活かせるか

  • 「廃案」ではなく「延期」: 2027年まで法案審議は止まるが、政令によるリスクは残る 。mex.news.o-abroad
  • ターゲットは明確: 自動車・電機・機械分野における「非FTA原産品」が狙い撃ちされている 。argusmedia
  • タイムリミットは2〜3年: この期間に関税耐性のあるサプライチェーンへ組み替えられた企業だけが、北米市場での勝者となります。

本記事は2025年11月27日時点の情報に基づいています。メキシコの通商政策は流動的であるため、最新の官報(DOF)および専門家のレポートを継続的に確認してください。

  1. https://www.spglobal.com/ratings/en/regulatory/article/mexican-tariffs-a-speedbump-to-chinese-auto-firms-overseas-expansion-s101645512
  2. https://www.whitecase.com/insight-alert/mexico-proposes-significant-customs-and-tariff-reforms-part-2026-economic-package
  3. https://www.argusmedia.com/en/news-and-insights/latest-market-news/2730867-mexico-to-raise-auto-import-tariffs-to-50pc
  4. https://www.reuters.com/business/autos-transportation/mexico-auto-industry-warns-complex-outlook-ahead-usmca-review-2025-10-02/
  5. https://mex.news.o-abroad.com/~/economy/178543-en-mexico-doubts-over-tariff-reform-approval-70-billion-peso-revenue-expected.html
  6. https://monarch-global.com/2025/08/16/friendshoring-brings-industrial-sized-investment-opportunity-2-2-5-3/
  7. https://www.photonpay.com/hk/blog/article/mexico-tariff-policy-2025?lang=en
  8. https://www.bloomberg.com/news/articles/2025-11-10/sheinbaum-s-china-tariffs-plan-meets-business-party-backlash
  9. https://www.cfr.org/article/china-latin-america-september-2025
  10. https://www.unav.edu/web/global-affairs/sheinbaums-trade-calculus
  11. https://www.reuters.com/business/autos-transportation/mexico-discuss-tariff-hikes-with-china-others-before-making-law-2025-10-09/
  12. https://www.automotivelogistics.media/supply-chain/port-congestion-competition-pressures-loom-as-mexico-set-to-increase-tariffs-on-chinese-vehicle-imports/1608705
  13. https://www.jetro.go.jp
  14. https://mexicobusiness.news/automotive/news/mexicos-auto-industry-prepares-tariff-supply-chain-shocks
  15. https://www.prodensa.com/insights/blog/how-tariffs-are-shaping-automotive-manufacturers-in-mexico
  16. https://radiocomply.com/mexico-ift-delays-enforcement-of-ift-seal-requirements-amid-institutional-changes/
  17. https://www.argusmedia.com/es/news-and-insights/latest-market-news/2745164-mexico-s-reforms-constrain-gdp-growth-imef
  18. https://economic-research.bnpparibas.com/Media-Library/en-US/impact-will-Mexico-tariffs-have-imports-example-automotive-sector-10/21/2025,c44343
  19. https://www.alvarezandmarsal.com/thought-leadership/mexico-s-2026-customs-law-key-changes-for-global-trade
  20. https://www.dallasfed.org/research/pubs/25trade/a3
  21. https://www.lemonde.fr/en/economy/article/2025/09/14/china-outraged-by-mexico-s-automotive-tariffs_6745399_19.html