EU‑メルコスール協定:批准までの段階表


全体の見取り図:何がいつ動くか

EU-メルコスール協定は、「何が合意されたか」以上に、「いつ・どの範囲が・どの手続で動き出すか」を押さえることが実務の肝になります。nordiskpost+1​
2026年1月9日、EU理事会は、EU-メルコスール・パートナーシップ協定(EMPA)と暫定貿易協定(iTA)の署名を承認し、手続きは署名・欧州議会同意・締結のフェーズへと進みました。europediplomatic+1​

ビジネス側としては、正式発効まで数年単位の待ち時間が生じ得ることを前提に、「先に動く部分」と「EMP​A全面発効まで動かない部分」を切り分けて準備するのが合理的です。policy.trade.europa+1​
以下では、2026年1月14日を基準日として、制度構造と企業の実務アクションをセットで整理します。nordiskpost+1​


二本立ての構造:EMPAとiTA

EU-メルコスール協定パッケージは、法的に二つの文書に分かれて並走します。policy.trade.europa+1​

  • EU-メルコスール・パートナーシップ協定(EMPA)
    政治対話・協力・貿易を含む包括協定で、いわゆる「混合協定」に該当し、EUレベルに加えて全加盟国の批准が必要です。europediplomatic+1​
    EMPAが発効すると、iTAは廃止され、包括協定に一本化される設計になっています。europediplomatic
  • 暫定貿易協定(iTA)
    貿易分野のみを切り出した暫定協定で、EUの専属権限に属する部分を対象とします。secnewgate+1​
    欧州議会の同意とEU理事会の締結決定を経たうえで、メルコスール側も自国の手続を完了すると、貿易ルールが先行して適用されることが想定されています。edit.wti+1​

この結果、

  • 貿易部分(iTA)が先に走る
  • 包括協定(EMPA)の全面発効は、各国批准を待って後から追い付く
    という時間差が実務上生じ得ます。policy.trade.europa+1​

最新ステータス:2026年1月時点

EU理事会は2026年1月9日、EMPAとiTAの署名を認める二つの決定を採択し、EU側として署名に進む権限付与が完了しました。lapresse+1​
今後は、EUおよびメルコスール各国による署名、欧州議会の同意、EU理事会による正式な締結という順で進みます。policy.trade.europa+1​

一方で、農業分野を中心に反発は根強く、特にフランスなどで大規模な抗議行動が継続しています。internazionale+1​
こうした政治的摩擦は、欧州議会での同意や一部加盟国の批准プロセスに不確実性として跳ね返る可能性があります。reuters+1​


段階別の流れと企業の視点

以下は、政治合意から全面発効までの主なステップを、企業が見るべきポイントと合わせて整理し直したものです。europediplomatic+1​

1〜4:EU内部手続が動き出すまで

  1. 政治合意
    • 2024年12月6日に政治レベルで合意が成立し、協定の骨格が固まりました。nordiskpost+1​
    • 影響の大きい業界・品目の当たりをつけ、サプライチェーン単位で棚卸しを始める段階です。europediplomatic
  2. 文書整備
    • 法的レビューと最終文言の調整を経て、テキスト・附属書が公開されます。policy.trade.europa+1​
    • 公開テキスト・附属書への入手ルートを確保し、関税撤廃表と原産地規則(PSR)から読み込みを開始します。policy.trade.europa+1​
  3. 欧州委員会による提案
    • 2025年9月3日、欧州委員会は、EMPAとiTAの署名・締結について理事会決定案を正式に提示しました。europediplomatic
    • 「iTAが先行し、EMPAが後追いする可能性がある」というタイムラインを社内に共有し、発効シナリオを前提にした準備を組み立てる段階です。secnewgate+1​
  4. 理事会が署名を承認
    • 2026年1月9日、EU理事会が署名を認める決定を採択し、政治交渉から条約手続フェーズへ完全に移行しました。lapresse+1​
    • ここで最新の発効シナリオを更新し、反対国の姿勢や国内政治論点を「批准リスク」として織り込みます。reuters+1​

5〜8:署名からiTA適用開始まで

  1. 署名
    • EUとメルコスール諸国が協定に署名し、国際法上の意思表示を行います(署名時点では原則として関税はまだ動きません)。policy.trade.europa+1​
    • この段階から、契約条項に「関税変更時の価格見直し・納期調整・負担者の分界」などを明示的に入れ込み始めるのが現実的です。europediplomatic
  2. 欧州議会の同意
    • 欧州議会は条文を修正するのではなく、同意(賛成)または不同意(反対)で判断します。policy.trade.europa+1​
    • 同意が得られない場合、理事会は協定を締結できず、貿易部分(iTA)も動きません。採決時期や関連委員会での議論を継続的にフォローする必要があります。safefoodadvocacy+1​
  3. 理事会が締結(EU側の国内手続完了)
    • 欧州議会の同意を受けて、EU理事会がiTAおよびEMPAの締結を決定します。europediplomatic+1​
    • iTAについては、理事会締結後、メルコスール側の国内手続が整い次第、発効・適用開始となります。edit.wti+1​
  4. iTAの適用開始
    • 条件が整うとiTAが発効し、関税・原産地規則・通関運用など貿易ルールが先行して適用されます。policy.trade.europa+1​
    • 原産地証明の実務(申告主体、自己申告の可否、サプライヤー証明の回収、保存年限など)を、この段階までに稼働可能な状態にしておく必要があります。edit.wti+1​

9〜10:EMPA全面発効までの長い尾

  1. EMPAの批准完了待ち
    • EMPAは混合協定であるため、全EU加盟国およびメルコスール側の国内批准を待つ必要があり、数年単位の期間を要する可能性があります。secnewgate+1​
    • iTAで動く領域(モノの関税・原産地・貿易救済等)と、EMPA全面発効まで凍結される領域(政治対話・協力や一部投資ルール等)を分けて管理することが重要です。europediplomatic+1​
  2. EMPA全面発効
  • 必要な批准がすべて完了するとEMPAが発効し、iTAは廃止されて一体の包括協定に置き換わります。policy.trade.europa+1​
  • その時点で、運用規程、紛争処理メカニズム、制度文言の差分を確認し、社内規程・マニュアルを「最終版」に統一していきます。europediplomatic

用語整理:署名・同意・締結・発効・仮適用

条約プロセスの用語は混同されやすいため、実務での意味合いに絞って整理します。policy.trade.europa+1​

  • 署名(signature)
    合意文書に署名する段階で、政治的な意味合いは大きいものの、それだけで関税が直ちに下がるわけではありません。europediplomatic+1​
  • 同意(consent)
    欧州議会が、協定に同意するかどうかを採決する段階で、EU側実務では最大の山場となります。secnewgate+1​
    同意がなければ、理事会は協定を締結できません。policy.trade.europa+1​
  • 締結(conclusion)
    EUとして協定に法的に拘束されることを最終決定する行為で、理事会が決定します。europediplomatic+1​
    iTAの場合は、締結と相手側手続完了をもって、発効・適用開始につながります。edit.wti+1​
  • 発効(entry into force)・仮適用(provisional application)
    自他双方の国内手続が整った時点で発効し、実務上の効果(関税減免等)が生じます。policy.trade.europa+1​
    欧州委員会は、EMPAのうち政治・協力分野の一部について、加盟国批准完了前に仮適用する案も示しており、適用範囲の線引きが今後の論点になります。secnewgate+1​

批准リスクを左右する論点

欧州議会の政治力学

欧州議会は、協定テキストを細かく修正するのではなく、賛否の二択で同意を与えるかどうかを決めます。europediplomatic+1​
反対票が多数となれば、EMPAだけでなくiTAも進まず、貿易部分全体が止まる結果となります。safefoodadvocacy+1​

農業・環境分野の懸念

EU域内では、農業団体を中心に「安価な南米産品との不公正競争」「環境・衛生基準のギャップ」に対する懸念が強く、フランスなどで継続的な抗議行動が行われています。reuters+2​
これらの反発は、加盟国政府のスタンスや欧州議会内の投票行動に影響を及ぼし得るため、政治的リスクとしてモニタリングが必要です。reuters+1​

セーフガード(緊急輸入制限)設計

理事会や欧州委の説明では、敏感な農産品分野の市場攪乱に迅速対応できるよう、特別なセーフガード措置を含めることが政治的受容性を高める鍵とされています。safefoodadvocacy+1​
企業としては、自社の取扱品が「敏感品目」やセーフガードの対象となり得るかを確認し、発動時の価格・数量リスクを契約条件に織り込む必要があります。edit.wti+1​


企業が今から着手すべき準備

批准待ちの期間を「待機時間」ではなく「設計時間」として前倒しで使うことが、実務上の勝ち筋になります。europediplomatic
特に、貿易分野がiTAで先行適用される設計である以上、関税よりも前に原産地規則・通関運用の設計を固めておくことが重要です。policy.trade.europa+1​

  • 対象品目の優先順位付け
    関税メリットが大きい品目、原産地判定が難しい品目、多段階サプライチェーンを持つ品目を優先的に抽出します。europediplomatic
  • 原産地規則の読み方:条文より附属書から
    iTAには、一般原則に加え、品目別原産地規則(PSR)と関税撤廃スケジュールを定める附属書が組み込まれています。policy.trade.europa+1​
    実務上の「設計図」は附属書側に集約されているため、HS分類別にPSRと撤廃スケジュールを突き合わせて読むのが効率的です。edit.wti+1​
  • 通関実務フローの設計
    原産地証明方式(輸出者/輸入者/サプライヤーの自己申告可否)、検認対応フロー、証拠書類の保存期間などを、協定テキストと税関ガイダンスを前提に標準化します。edit.wti+1​
  • 契約条件の整備
    発効時期が読みづらい協定では、発効前後の価格条件、関税負担者、遡及適用の取り扱い、返品・キャンセル条件などを契約上で明確にしておくことが、紛争予防に有効です。europediplomatic

どの一次情報を追えばよいか

迷ったときは、以下の三つに立ち返ると構造が把握しやすくなります。policy.trade.europa+1​

  • EU理事会のプレスリリース
    署名承認の事実、次の手続き、EMPAとiTAの関係性、政治的メッセージを押さえることができます。lapresse+1​
  • 欧州委員会のEU-メルコスール協定ページ
    協定の位置づけ、交渉経緯、基本構造(EMPAとiTAの二本立て)を俯瞰できます。europediplomatic
  • 協定テキスト公開ページ
    iTAとEMPAの構成、発効・適用条件の説明、各附属書(関税スケジュール・原産地規則等)への導線が整理されています。policy.trade.europa+1​

実務的な要点の整理

  • 2026年1月9日、EU理事会はEMPAとiTAの署名を承認し、協定パッケージは署名・同意・締結フェーズへ進んでいる。lapresse+1​
  • 協定はEMPAとiTAの二本立てで、貿易部分(iTA)が先に適用され得る一方、包括協定(EMPA)の全面発効は加盟国批准が必要で長期化し得る。policy.trade.europa+1​
  • 最大の不確実性は欧州議会の同意と各国の政治状況であり、農業・環境をめぐる反対運動が採決環境に大きく影響する。internazionale+2​
  • 企業側は、関税率そのものよりも先に、原産地規則・証明スキーム・通関運用・契約条件を設計しておくことで、発効日に耐える体制を整えるべきである。europediplomatic+1​
  1. https://europediplomatic.com/2026/01/09/eu-endorses-mercosur-free-trade/
  2. https://policy.trade.ec.europa.eu/eu-trade-relationships-country-and-region/countries-and-regions/mercosur/eu-mercosur-agreement/text-agreement_en
  3. https://www.nordiskpost.com/2026/01/10/eu-members-backed-mercosur-trade-agreement/
  4. https://www.secnewgate.eu/eu-mercosur-partnership-launching-a-historic-ratification-after-25-years/
  5. https://edit.wti.org/document/show/4da58773-ed1b-4588-ac3b-5e64d37d82c6
  6. https://uk.lapresse.it/world-en/2026/01/09/mercosur-with-the-vote-of-the-27-eu-countries-concluded-the-agreement-has-been-given-the-green-light/
  7. https://www.internazionale.it/ultime-notizie-reuters/2026/01/13/french-farmers-stage-new-paris-protest-in-bid-to-halt-mercosur-deal
  8. https://jp.reuters.com/video/watch/idRW522008012026RP1/
  9. https://www.reuters.com/world/americas/eu-countries-expected-clear-signing-record-mercosur-trade-deal-2026-01-09/
  10. https://www.safefoodadvocacy.eu/the-council-greenlights-the-signature-of-the-eu-mercosur-partnership-and-trade-agreement/
  11. https://www.dailysabah.com/business/economy/about-350-tractors-steered-into-paris-to-protest-eu-mercosur-deal
  12. https://x.com/EUCouncilPress/status/2009668725952393586
  13. https://gayaone.com/en/world-events/breaking-news/eu-member-states-provisionally-approve-mercosur-trade-pact-after-two-decades
  14. https://www.youtube.com/watch?v=MvYoGv30X8g
  15. https://www.reuters.com/business/eu-member-states-confirm-approval-signing-eu-mercosur-trade-agreement-2026-01-09/

日ペルーEPA:PDF発給化で見落としやすい必須項目と実務の組み替え方


2026年8月3日から、日ペルーEPAに基づく第一種特定原産地証明書(CO)の発給は、専用紙からPDFファイルによる電子発給に切り替わります。meti+1​
紙の原本がなくなる「だけ」に見えますが、実務のボトルネックは「輸出書類の必須項目を、誰が・いつ・どの根拠で確定させるか」という工程設計に移ります。jcci

結論から言うと、必須項目そのものは協定に付属するCO様式と記載要領で定義されており、PDF化によってフィールド構成が大きく変わるわけではありません。customs+1​
一方で、PDF化により、これまで紙運用の中で吸収されていた誤記や手戻りが減り、入力品質がそのまま通関品質・原産地管理品質として露呈しやすくなります。

以下では、まず日付と対象範囲を整理したうえで、協定様式に沿って必須項目をフィールド単位で分解し、PDF化でミスが増えやすい箇所と、社内フロー再設計のポイントまで落とし込みます。meti+1​


1. いつから何が変わるか:境目は「承認日」

今回の切り替えで重要なのは、「出荷日」ではなく、発給審査システム上の「承認日」が紙とPDFの境目になる点です。jcci

  • 経産省は、日ペルーEPAに基づくペルー向けCOについて、2026年8月3日よりPDFファイルでの発給に切り替えると公表しています。meti
  • 日本商工会議所(JCCI)は、専用紙での交付は「2026年7月31日までに発給審査で承認を受けた分まで」とし、2026年8月3日以降の承認分はすべてPDF形式による電子発給とする旨を明示しています。jcci

1.1 切替日と専用紙の扱い

  • 2026年8月3日以降に承認される日ペルーEPAのCOは、すべてPDFファイル形式で電子発給されます。meti+1​
  • 専用紙での交付は、2026年7月31日までに承認された申請分までであり、「出荷日」ではなく「承認日」が紙・PDFの切替基準になります。jcci

1.2 すでに発給済みの紙COの有効性

  • 日本商工会議所は、2026年7月31日以前に承認を受けて専用紙で発給されたCOについて、2026年8月3日以降も、有効期間内であればペルー税関(SUNAT)で受理されると案内しています。jcci
  • 日ペルーEPAの運用手続では、Proof of Origin(原産地証明)の有効期間は原則「発給日から12か月間」とされており、その範囲内であれば単一の輸入申告に使用できると定められています(例外規定あり)。mofa

1.3 受け取り方と支払い方法の変更

  • PDFは、発給審査の承認完了と手数料入金の確認後に、システム上からダウンロードする形で受け取ります。窓口での受け渡しや郵送による原本受領は行われません。jcci+1​
  • 手数料の現金払いは廃止される方向が示されており、銀行振込や口座振替など、非現金ベースでの支払い方法に整理されます。詳細はJCCIの案内に従って社内経理フローと締日を調整する必要があります。jcci+1​

2. PDF化で「必須項目」が変わるのか:原則は変わらない

COの必須項目は、協定の運用手続に付属する様式(見本)および記載要領で定義されており、PDF化によって項目自体が増減するわけではありません。acuerdoscomerciales+1​
日ペルーEPAのCO様式も、Exporter、Producer、Importer、Shipment details、Description of goods/HS、Origin criterion、Quantity、Invoice、Remarks、署名欄等のフィールド構成は維持されます。mofa+1​

ただし、PDF化は次の意味で「必須項目の重み」を変えます。

  • PDFは発給後の追記・修正が基本的に認められない
    協定の運用手続では、原産地証明書に対する無権限の修正があった場合、証明が無効と見なされ得ることが規定されています。mofa
    紙の時代に現場で起こりがちだった手書きの追記、スキャン後の注記、トリミング等の編集は、PDF原本を前提とする運用ではリスクが高くなります。
  • 署名やスタンプは電子的に印字され得る
    発給機関側の案内では、輸出者署名欄や発給機関の署名・スタンプについて、直筆だけでなく電子的な印字による対応も認められています。jcci+1​
    PDF発給を制度面で支えるポイントであり、「電子発給されたPDFの見た目が紙と異なること」を理由に真正性が否定されるものではありません(真正性確認はEPA CO Reference System等で行われ得ます)。mofa+1​

3. 必須項目をフィールド別に整理:PDF化で事故りやすい箇所

以下は、日ペルーEPAのCO様式・記載要領に沿って、実務上チェックすべき主なフィールドを整理したものです。acuerdoscomerciales+1​
括弧内は、PDF化で特に増えやすいミスの傾向です。

Field 1:Exporter

  • 内容
    輸出者の正式名称、住所、国名。登録情報と整合した表記が求められます。acuerdoscomerciales
  • PDF化で増えやすいミス
    英文社名の揺れ(略称・旧社名の混在)、住所の一部省略、グループ会社名義との取り違えなど。

Field 2:Producer

  • 内容
    生産者の正式名称、住所、国名。複数生産者がいる場合はリスト添付も可であり、生産者秘匿の場合は所定の文言を用いることができます。輸出者と同一の場合は「SAME」等の規定文言で代替可とされています。mofa+1​
  • PDF化で増えやすいミス
    どの生産者がどの商品を製造しているかの突合が曖昧になる、秘匿文言の誤記、SAMEの使い間違い(輸出者と生産者が同一でないのにSAMEと記載する等)。

Field 3:Importer

  • 内容
    輸入者の正式名称、住所、国名。契約上の輸入者と一致させることが原則です。acuerdoscomerciales
  • PDF化で増えやすいミス
    仕向地の荷受人と輸入者の混同、通関名義と契約上のバイヤー名義の取り違え。

Field 4:Shipment details

  • 内容
    船積日(B/L日付またはAWB日付)、積出港、経由港、揚げ港、船名・便名など、可能な範囲で記載します。mofa+1​
    遡及発給であっても、実際の船積日は記載が必要です。
  • PDF化で増えやすいミス
    船積日をインボイス日で代用してしまう、経由港欄が空欄のまま、便名が古い予約情報のまま更新されない等。

Field 5:Description of goods / HS Code

  • 内容
    品目番号、荷印、個数・荷姿、HS6桁、品名記述など。品名はインボイス記載とHS分類に紐づく十分な内容が必要とされます。jcci+1​
    バルク輸送の場合は「IN BULK」等の記載が認められています。
  • PDF化で増えやすいミス
    HS6桁が社内マスタとズレる、品名が短すぎてインボイスとの突合が困難になる、インボイス表現と不整合な英訳になる等。

Field 6:Origin criterion

  • 内容
    各品目の原産性基準を、協定別表の品目別規則に従って記載します。customs
  • PDF化で増えやすいミス
    記載した原産基準が品目別規則と不整合、複数品目に同一のコードを機械的に転記し、実際の原産判定結果と齟齬が生じる。

Field 7:Quantity

  • 内容
    数量(重量は総重量でも正味重量でも可)。業界慣行がある場合はリットル等の容積単位も認められます。customs+1​
  • PDF化で増えやすいミス
    インボイス単位との不一致、複数ページにまたがる場合に数量の整合性が取れない。

Field 8:Invoice number and date

  • 内容
    輸入申告に用いるインボイス番号と日付。第三国のインボイスが利用される場合などは、備考欄(Field 9)で補足が必要になります。jetro+1​
  • PDF化で増えやすいミス
    輸出者発行インボイスと輸入側で使用されるインボイスの混同、番号未確定時の仮番号記載の扱いを誤る。

Field 9:Remarks

  • 内容
    遡及発給であれば「ISSUED RETROSPECTIVELY」、再発給であれば所定の定型文言を記載します。mofa
    第三国インボイスを利用する場合等の補足事項もここに記載します。
  • PDF化で増えやすいミス
    定型文言の一部欠落、第三国インボイスに関する補足の記載漏れ、備考欄が空欄のままで必要要件を落とす。

Field 10:Exporter’s signature

  • 内容
    輸出者またはその代理人の署名と日付。署名は直筆でも電子印字でも可とされています。jcci+1​
  • PDF化で増えやすいミス
    署名日付と発給日(Field 11)が不整合になる、社内承認者と実際のサイナーの権限関係が曖昧なまま運用される。

Field 11:Issuing authority’s certification

  • 内容
    発給機関側の署名、日付、スタンプ。署名やスタンプは電子印字でも可です。jcci
  • PDF化で増えやすいミス
    受領側が真正性に疑義を持ち追加照会が発生する、PDFの一部欠けや画質劣化により印影や署名が判別しづらくなる。

これらのフィールド定義、HS6桁要件、インボイスおよび第三国インボイスの取扱い、遡及発給・再発給時の定型文言、署名・スタンプの電子印字容認といった点は、協定の運用手続および関連ガイダンスに明記されています。customs+3​


4. PDF化で実務が変わるポイント:手続より「工程」が変わる

4.1 受け取り遅延より「入力確定遅延」が問題になる

  • PDF発給により、窓口受領や郵送待ち時間は削減される一方、審査完了・入金確認後に即時ダウンロードが可能になります。jcci
  • しかし、Field 4の船積日、Field 8の輸入用インボイス、Field 3の輸入者情報など、出荷直前まで確定しにくい情報が残ると、そもそもの申請が遅れ、承認日ベースの締切に間に合わなくなります。

特に、2026年7月末前後は「承認日」が紙・PDFの境目となるため、「7月末船積だから紙で間に合うはず」という感覚的な判断は危険です。jcci
承認までに必要な情報の確定時期を、営業・生産計画・通関担当間で明確にしておく必要があります。

4.2 ペルー側での提出形態は必ず事前に確認する

  • 日本商工会議所は、PDFファイルを印刷して提出する必要性も含め、ペルー税関側の現地手続を確認するよう注意喚起しています。jcci
  • 経産省も、現地での輸入申告時の具体的な取扱いについてはペルー税関に確認するよう案内しています。meti

社内だけで推測してルール化するのではなく、輸入者、現地通関業者、SUNATの運用に合わせて、

  • PDFファイルの電子提出か、印刷した紙の提出か
  • CO番号による照会運用があるか
    といった点を、契約条件・L/C条件とあわせて事前に握っておくことが安全です。jetro+1​

4.3 発給後の加工禁止を社内ルールとして明文化する

  • 発給後の無権限修正があると原産地証明が無効となり得る点は、紙・PDFを問わず同じですが、PDFではデジタル編集が容易なだけに、痕跡が残りやすいのが実務上のリスクです。mofa
  • 発給されたPDFは「原本」としてそのまま保管し、社内配布用・注釈付きの加工版を作成しない運用にしておくと、安全性が高まります。

5. 社内フローの組み替え:承認日を起点にしたチェックリスト

最後に、PDF化に向けて現場がそのまま使える形に落とし込んだ、社内フロー見直しの観点を整理します。jcci+1​

5.1 出荷前の締切を「船積日」から「承認日」基準に置き換える

  • 承認までに確定しておくべき情報
    • HS6桁コード
    • 品名記述(インボイスと突合可能な粒度)
    • 原産基準(品目別規則に基づく)
    • 数量・単位
    • 輸入者情報
    • インボイス情報(第三国インボイスの有無を含む)
    • 船積情報(船積日、港情報、船名・便名)
  • 2026年7月末前後は、「承認日」をKPIとして営業・生産計画側と共有し、「いつまでに申請入力を確定させるか」を明示しておくことが重要です。jcci

5.2 申請前に行う入力品質の自己点検

  • Field 5の品名は、インボイス記載と突合できる長さと内容にする。
  • HSコードは6桁で固定し、社内マスタとの整合を必ず確認する。
  • 第三国インボイスの可能性がある取引は、Field 8(インボイス)とField 9(備考)のセットでレビューし、注記漏れを防ぐ。

これらはいずれも、HS6桁要件や品名記述の水準、第三国インボイス時の注記ルールとして、原産地証明関連のガイダンスに位置付けられている事項です。jcci+2​

5.3 発給後の運用を先に決めておく

  • ダウンロード手順、保管場所(フォルダ階層)、版管理ルールを標準化する。
  • 取引先への送付は原本PDFをそのまま用い、編集や追記を行わない。
  • 現金払い廃止に合わせて、経理部門の支払フローと締日を見直し、申請~支払~発給までのリードタイムを見積もる。

これらは、日本商工会議所のPDF発給案内に示された「ダウンロード提供」「窓口受渡し・郵送なし」「現金払い廃止」といった運用方針に対応した社内整備事項です。jcci+1​


まとめ:PDF化は「デジタル化」ではなく、入力品質の勝負

日ペルーEPAの第一種特定原産地証明書は、2026年8月3日からPDF発給へ切り替わり、専用紙での発給は2026年7月31日までに承認された申請分に限定されます。meti+1​
紙の時代に現場で暗黙に吸収されていた誤記や手戻りは、PDF発給ではそのまま通関リスク・原産地否認リスクに直結するため、入力品質の管理がこれまで以上に重要になります。

必須項目は協定様式と記載要領で決まっていますので、Field 1~11を一つずつ根拠付きで再点検し、とくにField 4(船積情報)、Field 5(HS6桁+品名)、Field 8(インボイス)、Field 9(備考・注記)について、社内ルールとして突合・レビュー手順を明文化するのが最短ルートです。customs+2​


免責事項

本稿は、経済産業省・日本商工会議所などの公開情報および日ペルーEPA協定文書に基づく一般的な実務整理であり、個別案件における原産性の判断、証明書発給の可否、通関での取扱いを保証するものではありません。meti+2​
具体的な案件については、輸入者側の通関実務を踏まえつつ、発給機関、通関業者、専門家等に確認の上で判断してください。

  1. https://www.jcci.or.jp/gensanchi/20260107_Perucopdf.pdf
  2. https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/boekikanri/gensanchi/20260107.html
  3. https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/j_peru/pdfs/japan-peru_epa.pdf
  4. http://www.acuerdoscomerciales.gob.pe/en_vigencia/japon/Documentos/ingles/formato_co_tlc_peru_japon.pdf
  5. https://www.customs.go.jp/english/origin/rules_of_origin_epa.pdf
  6. https://www.jcci.or.jp/gensanchi/
  7. https://www.mofa.go.jp/policy/economy/fta/pdfs/japan-peru_epa.pdf
  8. https://www.jcci.or.jp/gensanchi/tebiki_preparation.pdf
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  11. https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/04/f5dc8ab2cae0f934.html?_previewDate_=null&revision=0&viewForce=1
  12. https://www.customs.go.jp/english/epa/epa/Peru.pdf
  13. https://global-scm.com/blog/?p=3799
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  15. https://cdnw8.eu-japan.eu/sites/default/files/imce/20210304_rulesoforigin_report_final_0.pdf

日ペルーEPA COのPDF発給切替の全体像

2026年8月3日から、日ペルーEPA(日本・ペルー経済連携協定)に基づく第一種特定原産地証明書(CO)は、専用紙での発給からPDFファイルでの発給に切り替わります。 経済産業省と日本商工会議所は、指定発給機関である日本商工会議所の発給審査システム上の「承認日」を基準に、紙・PDFの扱いを明確に整理しています。meti+1​


1. 変更点の結論:何がいつ変わるか

ポイントは次の3点です。jcci+1​

  • 2026年8月3日以降に「承認」される日ペルーEPAのCOは、すべてPDFファイル形式での電子発給になること。jcci
  • 専用紙での発給は、2026年7月31日までに発給審査で承認を受けた申請分までであり、「出荷日」ではなく「承認日」が境目になること。jcci
  • 2026年7月31日以前に承認され、専用紙で発給されたCOは、2026年8月3日以降も、有効期間内であればペルー税関(SUNAT)で受理されること。meti+1​

「7月末船積だから紙で間に合うはず」という感覚的な運用ではなく、「7月31日までに日商システム上で承認を取れるか」を基準に工程を組む必要があります。jcci


2. なぜ今PDF化なのか:政策上の位置づけ

経済産業省は、EPAの利用拡大・利便性向上のため、指定発給機関による原産地証明書の電子化を順次進めています。 日ペルーEPAのCO電子化は、その一環として実施される施策であり、2026年8月3日以降、ペルー向けCOについてはPDFでの発給が標準となります。jaftas+1​

他協定では、PDF発給だけでなく、日インドネシア・日タイEPAのように、税関間のデータ交換(いわゆるeCO)が導入されている案件もありますが、日ペルーEPAについては「eCOデータ連携」ではなく、CO様式をPDFファイルとして発給する方式である点を切り分けて理解すると整理しやすくなります。jaftas+1​


3. 輸出実務で変わるポイント

3-1. COの受け取りが「窓口・郵送」から「ダウンロード」へ

日本商工会議所の案内によれば、発給審査が終了し、手数料の入金確認後に発給システム上のステータスが「交付済」となった時点で、利用者はシステムからCOのPDFファイルをダウンロードできます。 従来行われていた、商工会議所窓口での紙原本の受け渡しや、原産地証明書の郵送は行われなくなります。jcci+2​

これまで「紙COを受領してから輸出書類一式を完成させる」フローだった企業ほど、社内手順書の更新と、ダウンロード・保管・対外送付の役割分担を明確にする必要があります。jcci+1​

3-2. 手数料支払いで「現金」が廃止

日商の案内では、原産地証明手数料の支払い方法として、窓口での現金支払いが廃止され、事前振込(クレジットカード決済、インターネットバンキング振込等)または後日払いに変更されるとされています。 発給システム上で「交付済」となる条件に入金の確認が含まれるため、支払いの遅れはそのままCOのダウンロード遅延につながる可能性があります。archive.jcci+2​

経理・貿易実務・現場担当の間で、「どの支払方法を標準とするか」「締め日と申請タイミングをどう合わせるか」を事前に決めておくことが、通関スケジュールの安定化につながります。jcci+1​

3-3. システム改修による停止リスク

PDF発給への切替に伴う発給システムのプログラム改修・停止時期等の詳細は、日商から別途案内されることとされています。 移行直前期には、申請の集中とシステム停止が重なるリスクも想定されるため、7月下旬〜8月上旬に紙CO・PDF COいずれも必要となる案件については、余裕ある申請計画を立てておくことが安全です。archive.jcci+1​


4. 重要な落とし穴:ペルー側の提出要件確認

経済産業省と日本商工会議所は、ペルー側(SUNAT)での輸入申告時の提出方法について、「現地手続についてペルー税関に確認する必要がある」と明示しています。 とくに、次の点は取引先・現地通関業者によって運用が分かれ得るため、事前確認を怠るとトラブルにつながります。global-scm+2​

  • PDFを印刷した紙を原本として提出する必要があるのか
  • 電子申告システムへのPDF添付だけで足りるのか
  • L/C条件や通関業者の社内規定上、紙の原本を前提とした運用になっていないか

この確認を後回しにすると、「L/C条件で紙の原本提出が要求されていた」「現地通関業者が紙提出前提の社内ルールを維持していた」といった理由で、船積後に書類要求が変わり、差し替えや追加送付が発生するリスクがあります。jetro+1​


5. 移行期の実務対応チェックリスト

5-1. 7月末までに紙COが必要な案件の洗い出し

次の条件に当てはまる取引は、優先的に洗い出しておくとリスク管理しやすくなります。global-scm+1​

  • 2026年7月後半に出荷予定で、貨物到着が8月上旬になる案件
  • L/C決済や、買主銀行による書類審査が厳格な案件
  • 買主や現地通関業者が、従来から紙の原本提出を慣行としている案件

判断基準は、「2026年7月31日までに発給審査で承認を得られるかどうか」であり、社内の申請締切日から逆算して、書類準備・支払手続を含む工程表を組むことが実務的です。jcci+1​

5-2. 社内フローを「ダウンロード前提」に再設計

PDF発給を前提に、少なくとも次の点を明文化しておくと、従来よりも早く・確実にCOを回せるようになります。jcci+1​

  • 発給システム上で「交付済」であることを確認する担当者とタイミング
  • CO PDFのダウンロード・改ざん防止を含む保管ルール(ファイル命名規則、保存場所、アクセス権限など)
  • 輸出書類セットへの組み込み方と、取引先への送付方法(メール添付、ポータルサイト、DMS等)の標準化

物理的な郵送が不要になる分、電子送付のログ管理(いつ・誰に・どのファイルを送付したか)を残すルールも合わせて設計しておくと、監査・トラブル時の説明が容易になります。global-scm+1​

5-3. 経理・支払ルールの更新

現金払いの廃止に伴い、以下のような論点を社内で整理しておくことが望まれます。archive.jcci+1​

  • 標準とする支払方法(クレジットカード決済・ネットバンキング振込・後日払い等)の選択
  • 発給申請から入金確認・「交付済」反映までのリードタイムを織り込んだスケジュール
  • 月次締め・支払サイクルとCO申請ピークの整合

これにより、「COは承認済だが入金が遅れてダウンロードできない」というボトルネックを避けやすくなります。jaftas+1​


6. 日ペルーEPAのCOの役割を再確認

日ペルーEPAの特恵税率を適用するには、輸出者は指定発給機関である日本商工会議所に対し、日本原産品であることを示す資料を提出し、原産品判定を受けたうえで第一種特定原産地証明書の発給申請を行う必要があります。 CO自体は法的に絶対義務ではありませんが、特恵税率を利用するための証拠書類として、輸入側での申告に不可欠な位置づけとなります。jetro+2​

初めて第一種特定原産地証明書の取得に取り組む企業では、事前登録や原産品判定に時間を要するケースもあるため、PDF切替とは別次元の準備リードタイムとして織り込んでおくことが重要です。epa-info+1​


7. まとめ:8月3日は「発給形式が変わる日」、実務はそれ以前に固める

2026年8月3日から、日ペルーEPAのCOはPDF発給に切り替わり、2026年7月31日までに承認された分のみ専用紙での発給が可能であることが、経済産業省と日本商工会議所から明示されています。 7月31日以前に専用紙で発給されたCOは、協定上の有効期間内であれば、8月3日以降もペルー税関で受理されると案内されています。meti+2​

一方で、PDFをペルー側でどのような形で提出するか(印刷要否・電子添付可否等)はSUNATや現地通関業者の実務に依存するため、取引先と事前に確認しておくことが、現場レベルでは最重要ポイントになります。 日本側社内では、PDFダウンロードを前提にした受領・保管・送付手順と、現金廃止後の支払フローを先に整備しておくことで、移行期のトラブルを抑えつつ、COのリードタイム短縮というメリットを享受しやすくなります。global-scm+2​

  1. https://www.jcci.or.jp/gensanchi/20260107_Perucopdf.pdf
  2. https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/boekikanri/gensanchi/20260107.html
  3. https://jaftas.jp/file/pdf/ftaport/epa-5minutes.pdf
  4. https://www.jcci.or.jp/gensanchi/tebiki_system.pdf
  5. https://archive.jcci.or.jp/gensanchi/news.php
  6. https://global-scm.com/blog/?p=3799
  7. https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/cs_america/pe/jpepa/pdf/jpepa-201712.pdf
  8. https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-000969.html?_previewDate_=null&revision=0&viewForce=1&_tmpCssPreview_=0%2F%2F%2F%2Fbiznews%2F%2F%2Fbiznews%2F%2F%2F%2F%2Fbiznews%2F
  9. https://www.customs.go.jp/roo/
  10. https://epa-info.go.jp/pdf/download/tebiki_preparation.pdf
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  12. https://global-scm.com/blog/
  13. https://www.customs.go.jp/kaisei/kanzeiteirituhou.pdf
  14. https://www.japanfruit.jp/Portals/0/resources/JFF/kaigai/jyoho/jyoho-pdf/KKNJ_174.pdf
  15. https://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2025/foodinfo202520c.pdf

マレーシアと中国がeCOデータ交換を開始へ 通関のスピードと原産地管理はどう変わるか


マレーシアと中国の間で、原産地証明書(Certificate of Origin)の電子データ交換が動き出します。マレーシア投資・貿易産業省(MITI)と中国税関総署(GACC)は、ACFTA(ASEAN中国FTA)とRCEPの枠組みで、原産地証明書データを当局間で電子的に交換する共同取決め(Joint Arrangement)に合意しました。初期段階は、マレーシアから中国向けに、Form E(ACFTA)とRCEPの原産地証明書データを一方向でリアルタイム連携し、2026年1月の運用開始を目標としています。miti+2​

この動きは、単なる「書類の電子化」ではありません。通関の現場では、原産地証明の真正性確認と、関税優遇の適用判断がより迅速になり、同時に不正や誤りが見つかりやすくなる方向に進みます。マレーシアで生産し中国へ輸出する企業、またはマレーシア拠点をサプライチェーンに組み込む企業にとって、実務の影響は小さくありません。miti

何が始まるのか ポイントは当局間のデータ連携

今回の枠組みの要点は、原産地証明書そのものを企業間で電子送付するというより、当局が保有する証明データを、国境を越えて安全に共有し、輸入時の真正性確認と原産地検証を効率化する点です。MITIの発表では、文書送付時間の短縮、証明書の真正性確認の迅速化、機密性と安全性の向上、不正利用リスクの低減が狙いとして示されています。digitalizetrade+1​

対象はACFTAのForm EとRCEP原産地証明書

初期フェーズで電子連携されるのは以下です。thesun+1​

  • ACFTAのForm E(マレーシア発、中国向け)
  • RCEPの原産地証明書(同)

いずれも、関税優遇の適用において重要な「原産性の証拠」なので、真正性確認が速くなるほど、輸入通関の確度とスピードが上がる反面、誤った証明や整合しないデータは早期に検知されやすくなります。miti

仕組み マレーシアNSWと中国EODESを接続

MITIの説明では、マレーシア側はNational Single Window(NSW)を介して、中国側のElectronic Origin Data Exchange System(EODES)と接続します。thesun+1​

NSWはマレーシアの貿易手続きを集約する電子ゲートウェイで、2009年から稼働しており、税関申告(eDeclare)、許認可(ePermit、ePermitSTA)、決済(ePayment)、マニフェスト(eManifest)、ePCO(電子特恵原産地証明)など6つの中核eサービスで構成されています。NSWは財務省主導のイニシアチブで、Dagang Net Technologies社が開発・運用・管理を担当し、25,000以上のユーザー、年間1億件以上の電子取引を処理しています。MITIはePCOなどの発給関連モジュールの所管当局でもあり、ASEAN単一窓口(ASW)のマレーシア側リード機関としても機能しています。miti+3​

つまり今回のeCOデータ交換は、既存のNSW基盤の上に「中国税関との直結ルート」を乗せるイメージです。

なぜ今なのか 単発の施策ではなく、単一窓口協力の延長線

この話は突然出てきたものではありません。マレーシア財務省は2024年6月18日、アンワー首相と中国の李強首相の会談を経て、両国がNSWを軸に単一窓口協力を検討する共同作業部会(Joint Working Group on Single Window Cooperation)を設置し、貿易手続きのデジタル化、重複書類の削減、より正確な情報交換を進める方向性を示しています。この時点で、財務省第二大臣とGACCの于建華関税総長が単一窓口協力に関する共同声明に署名しました。mof

今回の原産地証明の電子連携は、その具体的なユースケースの一つと捉えると理解しやすいです。thestar

ビジネスへのインパクト 速くなるのは通関だけではない

1. 通関スピードとリードタイムの短縮余地

原産地証明の真正性確認が当局間データで迅速化すれば、書類照合の待ち時間や確認照会が減ることが期待されます。MITIも「文書送付時間の削減」を効果として挙げています。customs+1​

ただし、現場オペレーションが「紙提出不要」まで一気に進むかは、輸入地税関の運用次第です。中国は2020年5月から電子PCO(ePCO)の電子送信を義務づけていますが、初期段階では従来手続きとの併走を想定しておくのが安全です。jetro+1​

2. 偽造・改ざんリスクの低下と、情報漏えい対策

MITIは、証明書の真正性確認の迅速化、セキュリティと機密性の向上、第三者による不正利用の抑制を明記しています。電子データ交換は、両国関係当局間での暗号化された安全な情報共有を通じて貿易活動を合理化します。thesun+1​

対外取引が増えるほど、CO番号の悪用や書類改ざんの温床は広がります。データ連携は、ここに直接メスを入れる施策です。

3. 原産地管理の厳格化 データ品質がそのままリスクになる

当局間でデータが照合されやすくなるほど、次のような「ありがちなズレ」が通関トラブルの起点になります。

  • インボイス記載とCO記載の不一致(品名、数量、HS、インボイス番号など)
  • 原産地判定根拠の弱さ(CTC、付加価値、工程証憑が不十分)
  • 訂正や再発給の社内フロー未整備(誰がいつ何を直すか曖昧)

電子化が進むと、監査証跡が残りやすくなる一方、誤りも残ります。便利になった分だけ、内部統制の完成度が問われます。miti

実務対応チェックリスト いま企業がやるべきこと

1. 自社の対中輸出で、ACFTAとRCEPのどちらを使うかを棚卸しする

関税率の有利不利だけでなく、原産地規則の満たしやすさ、証明の取りやすさ、顧客側の通関運用を含めて選びます。

2. 原産地証明の入力データの品質を上げる

申請担当者任せにせず、インボイスとCO、BOM、原産地判定シートの突合ルールを作り、ミスが起きる前提で二重チェックを仕組みにします。

3. 修正・取消・再発給の手順を決める

電子連携があるほど、訂正の影響は広がります。輸入者、通関業者、中国側の申告タイミングを踏まえ、社内の判断基準を文書化します。

4. 取引先と「通関で何が変わるか」を事前にすり合わせる

一方向連携なので、まず恩恵を受けやすいのはマレーシア発中国向けです。中国側の申告で必要になる情報(CO参照番号の伝達方法など)を確認しておきます。thesun+1​

今後の展望 eCOは世界的に増える

中国のEODESは、2019年11月1日にシンガポールとの間でACFTAおよび中国・シンガポールFTAに基づくPCOと非加工証明書(CNM)の電子提出システムとして運用を開始しました。その後、2024年11月にはシンガポールとRCEPベースのPCOもEODESに追加する覚書が締結されています。linkedin+2​

マレーシア側も、ASEAN域内ではASEAN単一窓口(ASW)を通じてe-Form D(ATIGA電子原産地証明)の交換運用経験を積んでいます。マレーシアは既に、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、ミャンマー、フィリピン、タイ、ベトナム向けにATIGA e-Form Dを電子送信しています。customs+1​

今回の連携は、二国間の利便性向上に留まらず、域内・多国間での「原産地データ連携の標準化」へつながる可能性があります。thestar+1​

まとめ

マレーシアと中国のeCOデータ交換は、通関の迅速化と不正抑止を同時に進める施策です。現場に近いほどメリットは出ますが、同時に、原産地管理の甘さが表面化しやすくなる点が最大の注意点です。miti

特に、マレーシア拠点から中国へ輸出する企業は、申請データの品質、訂正フロー、原産地判定の証拠書類の整備を「通関のため」ではなく「監査対応のため」に引き上げることが、結果的にリードタイム短縮とトラブル削減に直結します。miti

:制度運用の詳細は当局の通達や通関実務で変わり得ます。最新の運用はMITIおよび関係当局、通関業者の案内で必ず確認してください。


  1. https://www.miti.gov.my/miti/resources/Media%20Release/%5BFINAL%5D_Media_Statement_Signing_JA_MITI_GACC_2025-11-13.pdf
  2. https://www.reuters.com/world/asia-pacific/malaysia-china-exchange-trade-certificates-electronically-2026-2025-11-13/
  3. https://thesun.my/news/malaysia-news/people-issues/malaysia-and-china-to-launch-electronic-trade-data-exchange-in-2026/
  4. https://www.digitalizetrade.org/projects/electronic-origin-data-exchange-system-china-eodes
  5. https://www.miti.gov.my/index.php/pages/view/1149
  6. https://www.dagangnet.com/trade-facilitation/national-single-window/
  7. https://eec.eaeunion.org/upload/medialibrary/2b3/6rnswsy760n0klvpbqztvc430qbmxxtx/7.2-EN-Eva-Chan-add-on-MY-NSW_210140822.pdf
  8. https://www.miti.gov.my/index.php/pages/view/3911
  9. https://www.mof.gov.my/portal/en/news/press-release/malaysia-china-agree-on-single-window-cooperation
  10. https://www.thestar.com.my/business/business-news/2024/09/18/national-single-window-initiative-to-boost-msia-china-trade
  11. https://customs.gov.sg/businesses/rules-of-origin/eodes-with-china/
  12. https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/12/275c35e30a3044d8.html
  13. https://www.linkedin.com/posts/ministry-of-finance-singapore-customs_singaporecustoms-tradeagreement-eodes-activity-7265304259225690112-HClA
  14. https://customs.gov.sg/businesses/rules-of-origin/asw/
  15. https://theedgemalaysia.com/node/779584
  16. https://www.businesstimes.com.sg/international/asean/malaysia-china-exchange-trade-certificates-electronically-2026
  17. https://www.businesstoday.com.my/2025/11/13/malaysia-china-begin-electronic-exchange-of-trade-certificates-from-jan-2026/
  18. https://www.jastpro.org/files/libs/1682/202212081408258370.pdf
  19. https://www.dnex.com.my/2024/dnex-receives-contract-extension-for-national-single-window-for-trade-facilitation-2/
  20. https://unece.org/fileadmin/DAM/cefact/single_window/sw_cases/Download/MalaysiaUseOfEDocuments.pdf

EU理事会がEU・メルコスール協定の署名を承認 発効ではない。企業が今からやるべき準備

2026年1月9日、EU理事会(Council of the EU)は、EUとメルコスール(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ)との包括的なパートナーシップ協定(EMPA)および暫定貿易協定(iTA)の署名を認める決定を採択しました。25年以上続いた交渉が大きく前進した一方で、これは発効を意味しません。ビジネス側は、政治イベントとして眺めるよりも、発効前から実務準備の勝負が始まったと捉えるべき局面です。 (欧州理事会)

以下、何が決まったのか、どこがリスクでどこがチャンスか、そして企業として何を準備すべきかを、一次情報中心に整理します。

まず押さえる3点

  1. 署名承認は発効ではない
    今回の決定は「署名に進むための承認」です。協定が効力を持つには、欧州議会の同意など、次の手続きが残っています。 (欧州理事会)
  2. 先に動くのは貿易部分(iTA)になり得る
    iTAはEUの排他的権限(主に通商分野)に属するため、加盟国ごとの批准を要しない設計です。欧州議会の同意後、EU理事会が正式に締結すれば、貿易面の便益が先行して動く可能性があります。 (欧州理事会)
  3. セーフガードと監視が最初から組み込まれている
    「関税が下がる」だけで走ると危険です。農産品を中心に、優遇停止を迅速に打てる枠組みが同時に整備されています。 (欧州理事会)

EU・メルコスールとは何か 市場規模と現状

メルコスールは南米の関税同盟で、EU側が今回の枠組みで相手とするのは主に4か国(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ)です。なお、ボリビアは加盟議定書署名済みで批准待ち、ベネズエラは資格停止とされています。 (欧州理事会)

貿易規模も大きく、EUとメルコスールの財貿易は2024年に約1,110億ユーロ(EU輸出552億、輸入560億)、サービス貿易は2023年に約420億ユーロとされています。EUの対メルコスール直接投資残高は2023年で約3,900億ユーロという説明もあり、すでに深い関係にあります。 (欧州理事会)

今回の「署名承認」で手続きはどこまで進んだのか

EU側で重要なのは、協定が二本立てになっている点です。

・EU・メルコスール・パートナーシップ協定(EMPA)
政治対話、協力、そして貿易を含む包括協定。EU加盟国すべての批准が必要。EUは政治・協力章の大部分を暫定適用する方針が示されています。 (欧州理事会)

・暫定貿易協定(iTA)
貿易・投資の自由化部分を切り出した協定。欧州議会の同意後、EU理事会が特定多数決で締結し得る設計で、EMPA発効までの間、貿易の便益を先行させる狙いです。 (欧州理事会)

2026年1月9日の時点で、加盟国側の大勢は署名を支持していると報じられていますが、最終的な効力発生には欧州議会の同意が不可欠です。 (Reuters)

何が変わるのか 関税と市場アクセスの「効きどころ」

メルコスール側の関税は、工業品を中心に依然として高い水準が残る分野があります。欧州委の資料では、現行関税の例として自動車部品35%、機械20%、化学品18%、医薬品14%が挙げられ、協定によりEU輸出側は年間40億ユーロ超の関税負担が削減され得ると説明されています。 (Trade and Economic Security)

さらに、iTAには政府調達やサービス貿易の章も含まれ、EU企業がメルコスール各国の公共調達に参入しやすくなる点も、競争環境を変え得る要素です。 (欧州理事会)

日本企業にとっての示唆は明快です。
メルコスール向け輸出でEU企業が関税面のハンディを解消するなら、同市場で日本企業が正面から価格で勝つ難度は上がります。逆に、EU拠点を活用してメルコスールへ出す、あるいは現地生産と組み合わせる企業には、選択肢が増える構図です。

セーフガードと数量枠 優遇は「止まる前提」で設計する

農業分野は政治的な反発が強い領域であり、EU側は優遇拡大を数量枠とセーフガードでコントロールする設計を強調しています。

例として欧州委のファクトシートには次が示されています。 (Trade and Economic Security)

・牛肉
無税枠ではなく、年9万9,000トンを7.5%関税で輸入可能(内訳は生鮮・冷蔵55%、冷凍45%)。 (Trade and Economic Security)

・家きん肉
年18万トンの無税枠を5年かけて段階導入。 (Trade and Economic Security)

・砂糖
ブラジル向けに新規の砂糖枠を作るのではなく、既存のWTO枠の中で精製用原料糖18万トンを無税に、加えてパラグアイ向けに1万トンの新規無税枠。 (Trade and Economic Security)

重要なのは、セーフガードが「実装フェーズ」に入っている点です。EU理事会と欧州議会は、農産品向けの二国間セーフガードを実務的に動かす規則案で暫定合意し、価格下回り5%と、輸入量や輸入価格の一定変動を調査開始の目安として扱うこと、調査を原則4か月で終えること、緊急時は21日以内に暫定措置を導入できることなどを示しています。また、2026年3月1日までに市場監視を支える技術ガイドラインを出す方針も明記されています。 (欧州理事会)

企業実務としては、優遇関税があるからといって、その前提で長期契約の価格式や需給計画を固定すると危険です。優遇停止のトリガーが制度として明確化されるほど、影響は「突然」起きます。

原産地規則と証明実務 勝敗は書類と設計で決まる

関税が下がっても、原産地を満たさなければゼロです。iTAの原産地章では、EUの近年型協定に近い「商業書類上の原産地申告(Statement on origin)」を中核に据えています。

公開されているiTA本文では、次が読み取れます。 (データ協議会)

・輸出者が、インボイス、納品書、その他の商業書類に「原産地申告」を記載する方式
・原産地申告には、原則として輸出者の手書き署名が必要(ただし輸出国法令で別段があればそれに従う)
・申告は輸出時に作成でき、輸出後に作成することも可能だが、輸入後2年以内に提示する必要がある
・有効期間は作成日から12か月
・輸出者と輸入者に、それぞれ少なくとも3年間の記録保存義務 (データ協議会)

さらに、優遇適用は「制度悪用があれば止まる」設計です。iTAには、優遇を得るための大規模・体系的な法令違反や不正があり、かつ相手側が協力義務を体系的に拒否するなどの状況がある場合に、当該品目の優遇を一時停止できる趣旨の規定が置かれています。 (データ協議会)

実務で問われるのは、次の二つです。

・原産設計
サプライヤーからの情報収集、工程分解、品目別ルールへの当てはめを、発効後ではなく発効前に完了させる。

・証明フロー
輸出者の申告書式、署名要件、保存年限、照会対応(監査対応)を、法務と貿易実務で一体運用にする。

サステナビリティ条項は貿易条件そのものになった

EU側が政治的に強調するのは、持続可能性を「付け足し」ではなく「協定の中核」に置く点です。

欧州委の説明では、パリ協定が協定の「本質的要素」とされ、重大な違反がある、または一方がパリ協定から離脱する場合に、協定を停止し得る枠組みを明記しています。さらに、EU森林破壊防止規則などEU域内法は協定下の輸入にも引き続き適用され、違法伐採対策や森林減少への拘束力あるコミットメント、責任あるサプライチェーン(国際指針の活用)も盛り込まれると整理されています。 (Trade and Economic Security)

食品・動植物検疫(SPS)についても、EUは「基準は交渉対象外」と明言し、予防原則や国境検査、監査などの枠組みは維持されるとしています。 (Trade and Economic Security)

日本企業にとっては、EU向け取引ですでに求められているESG・デューデリジェンスが、メルコスール関連の調達や三国間取引にも広がり得る、という読みになります。関税メリットとコンプライアンスコストを同時に見積もる必要が出ます。

日本企業のチェックポイント どこに影響が出るか

関係し得る企業像は大きく3つです。

  1. メルコスール向けに輸出している日本企業
    EU企業の関税ハンディが縮むと、価格競争が強まります。特に自動車部品、機械、化学品など、現行関税が高い領域ほど影響が出やすい。 (Trade and Economic Security)
  2. EUに生産・販売拠点を持つ日本企業
    EU拠点からメルコスールへ出す場合、原産地要件を満たせれば、関税条件が改善する余地があります。逆に、原産地設計に失敗すると「EUにいるのに優遇が取れない」状態になります。 (データ協議会)
  3. 重要鉱物や一次産品を扱う企業
    EUは重要原材料の供給多角化を戦略目的として明確に掲げ、ブラジルのニオブやアルミ、アルゼンチンのリチウムなどを具体的に挙げています。需給や投資の流れが変わる可能性があるため、長期調達の前提条件(価格、原産地、輸出税等)を見直す材料になります。 (Trade and Economic Security)

今からやるべき実務リスト

発効日が確定してから動くのでは遅い、というのが結論です。着手順としては次が現実的です。

・自社品目の影響棚卸し
メルコスール向けの現行関税、競合(EU企業)比率、値引き余地を洗い出し、価格戦略を更新する。 (Trade and Economic Security)

・原産地設計の先行着手
EU拠点やEUサプライチェーンを使う場合、原産地申告の運用要件(保存、署名、期限、照会対応)まで含めて業務設計する。 (データ協議会)

・優遇停止を織り込んだ契約設計
セーフガードや監視が機動的に動く前提で、価格条項や供給義務、フォースマジュール、関税再交渉条項を整備する。 (欧州理事会)

・ESG・トレーサビリティの再点検
森林破壊規制などEU域内法の適用を前提に、原料調達やサプライヤー管理の証憑を揃える。 (Trade and Economic Security)

・議会プロセスの監視
欧州議会の同意が最後の大関門です。報道だけでなく、EU理事会や欧州委の一次情報で節目を追う体制にしておく。 (欧州理事会)

まとめ

EU理事会の署名承認は、巨大協定が「止まるか進むか」の政治局面を越え、企業実務が問われるフェーズへ移った合図です。
恩恵は、関税だけではなく、原産地設計と書類運用が取れて初めて発生します。さらに、セーフガードやESG規制は、優遇の前提を動かし得る変数として同時に管理すべき対象です。 (欧州理事会)

免責:本稿は公開情報に基づく一般的な整理です。個別取引への適用可否や実務設計は、最新の法令・通達とあわせて専門家確認を推奨します

韓国のCPTPP加盟再検討が企業に与える影響を深掘りする


(2026年1月11日現在の公開情報に基づく)

はじめに

2025年後半から、韓国政府はCPTPP(包括的かつ先進的な環太平洋パートナーシップ協定)への参加を「再検討」する姿勢を、政策レベルで改めて打ち出し始めました。 背景には、対米・対中への依存度が高い輸出構造のリスクと、主要市場における競争条件の変化があります。 韓国の動きは、韓国企業だけでなく、日本企業の調達・販売・現地生産・投資判断にも連鎖的に影響し得ます。koreajoongangdaily.joins+1​

本稿では、韓国が「加盟した場合」の関税メリットにとどまらず、どの業務プロセスがどの順番で影響を受けやすいのかを、実務目線で整理します。結論を先に述べると、最大の論点は関税そのものよりも、メキシコを中心とした競争条件の再編と、原産地規則を前提としたサプライチェーン設計の見直しです。clarkhill+1​


要点(忙しい方向け)

  • 韓国政府は2025年9月頃からCPTPP参加の再検討を公表し、2025年12月には「CPTPPとの関係強化」を含む通商方針を示しています。 2026年1月上旬時点で公表されている表現は「再検討」「準備が整い次第追加措置」といったレベルにとどまり、寄託国への正式通報(加入申請)の提出時期や、すでに提出済みかどうかを明示した情報は確認できません。nippon+2​
  • CPTPPは2026年1月時点で12の締約国(オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナム、英国)で構成されており、英国の加入手続は2024年末に効力を生じています。 新規加盟は既存ルールの変更を前提とせず、加盟希望国はまず寄託国ニュージーランドに正式な加入要請を通報し、その後CPTPP委員会の合意、作業部会設置、市場アクセス交渉など複数段階を経ることになります。mfat+3​
  • 韓国にとって分かりやすい「痛み」は、メキシコで顕在化しています。メキシコは2026年1月1日から、FTA未締結国など一部の国からの輸入について、約1,400品目でMFN関税率を引き上げ、鉄鋼や自動車など一部品目では最大50%の関税が適用され得ると報じられています。 対象には韓国が含まれ、一方で日本は日墨EPAやCPTPPにより、多くの品目で協定税率の適用余地があるため、同じ市場で競争条件が分かれやすい状況です。craneww+3​
  • 韓国がCPTPP加盟に進むほど、日本企業にとっては「韓国企業の競争力が上がる」という側面と、「日本企業が韓国をサプライチェーンに組み込みやすくなる」という側面の両方が生じます。 どこに勝ち筋があるかは、取引先・製造拠点・品目ごとに異なります。mfat+1​

第1章 いま何が起きているのか:再検討の位置付け

韓国政府は2022年前後にCPTPP参加を推進する方針を示しつつも、正式な加盟申請には踏み切れなかったと報じられています。 要因として、農業・水産業を中心とする国内の反発や、当時の日韓関係の緊張が挙げられます。koreatimes+1​

その後、2025年9月、米国および中国をめぐる通商環境の不確実性への対応策の一つとして、韓国政府はCPTPP参加の再検討に着手する方針を明らかにしました。 さらに2025年12月には、産業通商資源部などが2026年の政策目標の中で、対中サービス分野のFTA推進と並行してCPTPPとの関係強化に言及したとされています。investkorea+1​

CPTPPの締約国閣僚は2025年5月16日に韓国・済州で会合を開いており、韓国は加盟国ではないものの、地域の通商アジェンダを議論する場として位置付けられていることがうかがえます。 また2026年1月上旬には、日韓首脳会談でCPTPPが議題となる可能性が報じられ、韓国側は日本の支持獲得を模索しているとされています。 ただし、韓国政府の説明は「準備が整い次第、追加措置を取る」といった表現にとどまり、実務的には「国内調整と事前協議の段階が続いている」と見るのが安全です。gov+3​


第2章 CPTPP加盟プロセス:企業が見るべき節目

CPTPP加盟プロセスでは、ニュースの見出し以上に「手続き上の節目」が重要になります。理由は、各節目を越えるたびに、企業が前倒しで検討すべき論点が変わるためです。mfat

協定文書および関連説明によれば、加盟希望国は寄託国ニュージーランドに正式な加入要請を通報し、寄託国はこれを他の締約国に共有します。 その後、CPTPP委員会がコンセンサスにより交渉開始の可否を決定し、交渉開始が合意されれば、加入作業部会が設置される流れが一般的に想定されています。cas+1​

ニュージーランド政府は、新規加盟国は既存の協定を前提に参加する必要があり、協定文自体が新規加盟国のために書き換えられるわけではない点を説明しています。 つまり「新たな例外を設けて入りやすくする」タイプの交渉ではなく、既存の高水準ルールにどこまで適合できるかが問われます。mfat

またCPTPP側は拡大方針として「オークランド原則(Auckland Principles)」に沿って加盟を進めるとし、十分な準備が整った国・地域からの申請を歓迎するとしています。 ここで言う準備には、高い水準の義務を履行できることや、全会一致の合意を得られる見通しなどが含まれます。cas+1​

実務担当者が注視すべき節目は、次のとおりです。

  • 韓国が寄託国ニュージーランドに正式な加入要請(通報)を行ったかどうか
  • CPTPP委員会が韓国の加盟交渉開始および作業部会設置を決定したか
  • 関税・サービス・投資などの市場アクセスオファーが具体化したか
  • 韓国国内の関連法令改正や国会承認手続きがどこまで進んだか

ここまで進まない限り、企業として「影響が必ず来る」と言い切ることはできません。ただし、プロセスが動き出してから準備しても間に合わない領域があるため、そこに先回りすることが価値を持ちます。mfat


第3章 韓国が再加速する理由:メキシコ問題と競争条件

ビジネスの現場で分かりやすいのが、メキシコのMFN関税引き上げです。メキシコは2026年1月1日から、約1,400前後のタリフラインについてMFN関税率を引き上げ、鉄鋼、機械、自動車など一部品目では最大50%の関税水準に達し得る改正を実施しました。 この改正は主としてFTA未締結国を対象とし、韓国や中国、インド、インドネシアなどが対象国に含まれると報じられています。opportimes+5​

韓国メディアや専門家の報道では、メキシコの関税引き上げに対して韓国輸出企業の警戒感が高まり、韓国政府が適用除外や柔軟運用を求めたものの、交渉は容易ではないとされています。 韓国にとっては、メキシコ市場での価格競争力が関税面から直接圧迫される構図です。foley+1​

一方、日本企業にとって重要なのは、「同じメキシコ市場で、日本は日墨EPAやCPTPPを通じて協定税率を利用できる一方、韓国はMFN税率に直面する品目が出てくる」という非対称性です。 JETRO等の解説でも、今回のMFN関税率引き上げはFTA締結国の協定税率には直接影響せず、FTA非締結国との間で競争条件のギャップが拡大する点が指摘されています。mohawkglobal+2​

ここから先は仮説レベルの分析ですが、この状況は韓国企業にとって、「メキシコとの二国間交渉を再起動する」か、「CPTPP加盟を通じて協定ネットワークに組み込まれる」かの選択圧として働きやすいと考えられます。 韓国のCPTPP再検討は理念的な側面だけでなく、競争条件の是正という極めて実務的な動機が大きいとみるのが妥当です。clarkhill+2​


第4章 企業への影響を4つに分解する

ここからが本題です。企業が受ける影響は、大きく4つに分解すると見通しが良くなります。

1. 市場アクセス(関税と数量制限)

韓国がCPTPPに加盟すれば、現時点でFTAがない、または条件が相対的に不利な相手国・地域との取引で競争条件が変化します。 代表例がメキシコであり、現在、日本企業は日墨EPAやCPTPPを通じて協定税率を利用できる一方、韓国企業はMFN税率適用品目で不利な局面が生じています。 韓国が加盟することで、こうしたギャップが縮小する可能性があります。global-scm+3​

2. 原産地規則と累積の範囲(サプライチェーン設計)

CPTPPの実務では、原産地規則および加盟国間での「累積」の扱いがサプライチェーン設計に大きく影響します。 韓国が加わると、部材や工程を「CPTPP域内」としてカウントできる範囲が広がり、最適な調達先や生産地の組み合わせが変わり得ます。 CPTPPは包括的な原産地規則を持ち、既存の韓国FTAネットワークよりも累積の選択肢が広がる可能性があるため、原産地規則の運用を競争力の源泉とできる企業ほど優位性を高めやすくなります。mfat

3. ルール分野(デジタル、知財、国有企業、政府調達など)

CPTPPは関税削減にとどまらず、デジタル貿易、知的財産、国有企業、政府調達など幅広いルール分野を含む高水準協定です。 新規加盟国は既存の協定文に従う必要があり、国内法制や行政運用の調整が避けられません。 協定文書はニュージーランド外務貿易省等の公的リソースで公開されており、企業としても条文を直接参照しながらコンプライアンスや契約設計を検討することができます。cas+1​

韓国はデジタル経済分野の国際ルール形成にも積極的であり、2023年にDEPA(Digital Economy Partnership Agreement)への加盟交渉を実質妥結し、2024年に正式に加盟しています。 CPTPPのデジタル関連ルールへの適合という観点では、こうした取組が交渉基盤として参照される可能性があります。mfat+3​

4. 政治経済リスク(国内反発と交渉の不確実性)

企業が読み違えやすいのが、加盟に向けた政治・社会的ハードルです。韓国では過去にも農業・水産業を中心にCPTPPへの反発が強く、加盟申請を見送った経緯が報じられています。 加盟交渉が具体化するほど、農業生産への影響や食品・水産物をめぐる懸念、補償・セーフガード設計などの国内対策を巡る政治コストが増し、スケジュールが揺れやすくなります。everycrsreport+2​


第4章補足 3つの具体的シナリオ(仮説)

以下は、典型的な企業行動を想定した仮説的なシナリオです。自社の実態に合わせて読み替えてください。

シナリオ1 メキシコ向けに日本から完成品を輸出している企業

現状、日墨EPAやCPTPPの協定税率が使える設計であれば、韓国企業が同一製品をMFN税率で輸出する場合、関税差が価格競争力の差として表れやすくなります。 韓国がCPTPPに加盟して協定税率を利用できるようになれば、関税に起因する価格差は縮小し、競争の軸は品質、納期、現地サービスなど非価格要因にシフトしやすくなります。mohawkglobal+3​

シナリオ2 韓国で部材を調達し、CPTPP域内に輸出している企業

韓国がCPTPPに加盟すれば、累積の範囲が拡大し、一部の製品では原産性判定を満たしやすくなる可能性があります。 その結果として、「韓国調達を増やす」「韓国で一部工程を追加する」といったサプライチェーン最適化オプションが現実味を帯びます。原産地規則の設計をサプライヤー選定・工程設計に組み込める企業ほど有利になります。mfat

シナリオ3 日韓でデジタル・サービスを展開する企業

CPTPPは電子商取引やデジタル貿易に関する高水準のルールを含んでおり、新規加盟国はこれらの規律に適合する必要があります。 韓国はDEPA加盟を通じてデジタル分野の国際ルールへのコミットメントを示しており、CPTPPへの対応が進むほど、域内でのデジタル取引の予見可能性が高まり、契約条項やコンプライアンス設計の標準化が進めやすくなる余地があります。digitalpolicyalert+3​


第5章 日本企業はどう動くべきか:実務チェックリスト

韓国のCPTPP加盟は、「決まってから動く」と手遅れになりやすいテーマです。実務では、以下の順で準備するのが効率的です。

1. 自社の「韓国との関係」を棚卸しする

  • 韓国企業に部材・完成品を供給しているか
  • 韓国から部材・サービスを調達しているか
  • 韓国に生産拠点があり、そこからCPTPP域内へ輸出しているか
  • 韓国企業と第三国市場(特にメキシコ、カナダなど)で競合しているか

2. 競争条件が変わる国と品目を特定する

メキシコのように、FTAの有無で関税が大きく分かれる市場では影響が直撃します。 自社の貿易実績から、メキシコ向け、あるいはメキシコを含む北米供給網に関わる品目を優先的に洗い出すアプローチが現実的です。foley+3​

3. 原産地規則に基づくBOM再設計の余地を探る

韓国が加盟した場合、累積の範囲拡大によって原産性判定が通りやすくなるのか、逆に調達先変更で不利になるのかは製品ごとに異なります。 製品別の部材構成表(BOM)をベースに簡易シミュレーションを行い、インパクトが大きい品目から深掘りすることを推奨します。mfat

4. 「いつから効くか」を手続きの節目で追う

交渉開始前に、協定税率や原産地運用が変わることは通常ありません。 したがって、ニュースのトーンよりも、「正式通報」「作業部会設置」「市場アクセスオファー提示」など、前述の手続き上の節目をトリガーとして社内アクションを切り替える設計が有効です。cas+1​


おわりに

韓国のCPTPP加盟検討は、単なる通商ニュースではなく、企業の競争条件と供給網設計に直結するテーマです。 とくにメキシコの関税政策のように、協定ネットワークの差がそのままコスト差となる局面では、韓国の動きが加速するほど市場前提が変わっていきます。koreajoongangdaily.joins+3​

一方で、加盟は自動的に決まるものではなく、段階的なプロセスと全会一致の合意、既存の高水準ルールへの適合が求められます。 企業としては、加盟の成否を「当てにいく」ことよりも、競争条件が変化したときに即応できるよう、品目とサプライチェーン単位で準備を進めておくことが、最もリスクの低い対応と言えます。koreajoongangdaily.joins+2​

  1. https://global-scm.com/blog/?p=3774
  2. https://www.clarkhill.com/news-events/news/mexico-approves-significant-tariff-increases-on-imports-from-non-fta-countries/
  3. https://koreajoongangdaily.joins.com/news/2025-09-03/business/economy/Korea-to-reconsider-joining-CPTPP-as-US-and-China-tighten-trade/2390550
  4. https://www.mfat.govt.nz/en/media-and-resources/joint-press-release-on-the-accession-of-the-republic-of-korea-to-the-digital-economy-partnership-agreement
  5. https://digitalpolicyalert.org/event/19613-implemented-accession-of-the-republic-of-korea-to-the-digital-economy-partnership-agreement
  6. https://www.nippon.com/en/news/yjj2026010901026/
  7. https://www.investkorea.org/ik-en/bbs/i-5073/detail.do?ntt_sn=493042
  8. https://www.mfat.govt.nz/assets/Trade-agreements/CPTPP/CPTPP-CBF-Supply-Chains-Analysis-2023.pdf
  9. https://www.gov.uk/government/publications/cptpp-joint-ministerial-statement-in-jeju-16-may-2025/comprehensive-and-progressive-agreement-for-trans-pacific-partnership-cptpp-joint-ministerial-statement-16-may-2025
  10. https://www.cas.go.jp/jp/tpp/tppinfo/2025/pdf/20250516_cptpp_seimei_en.pdf
  11. https://www.cas.go.jp/jp/tpp/en/pdf/20250516_cptpp_seimei_en.pdf
  12. https://www.craneww.com/knowledge-center/trade-advisory-notices/mexicos-2026-tariff-reform/
  13. https://www.opportimes.com/en/tariff-increases-in-mexico-on-countries-without-trade-agreements-come-into-effect-on-january-1/
  14. https://www.koreatimes.co.kr/business/tech-science/20220102/interview-korea-seeks-role-of-linchpin-in-solving-supply-chain-challenges
  15. https://www.everycrsreport.com/files/2022-02-17_R41481_cd1582d184ddf1e3ea2cdaea764e572b3b2fb772.pdf
  16. https://www.gov.uk/government/publications/cptpp-joint-ministerial-statement-in-jeju-16-may-2025
  17. https://mohawkglobal.com/trade-translation/mexico-approves-tariff-increases-on-imports-from-non-fta-countries/
  18. https://www.foley.com/ja/insights/publications/2025/12/mexican-january-2026-tariff-tsunami-maquilas-arent-immune/
  19. https://www.korea.net/NewsFocus/policies/view?articleId=233916
  20. https://www.bilaterals.org/?south-korea-joins-depa-as-first
  21. https://www.kas.de/documents/287213/26295266/IPEF+Discussion+Paper+Series_The+Republic+of+Korea+and+the+IPEF.pdf/4bece26c-b648-23cf-c90d-423c5b6bdfca?version=1.0&t=1696318218947
  22. https://openjicareport.jica.go.jp/pdf/12376869.pdf
  23. https://www.jiia.or.jp/eng/upload/eng/JapanReview_Vol4_No2_Winter_2021.pdf
  24. https://keia.org/wp-content/uploads/2024/01/KEI_KoreaPolicy_2023_V1-I3_final-draft.pdf
  25. https://blog.crossborderboost.com/policy-paper-cptpp-joint-ministerial-statement-in-jeju-16-may-2025/
  26. https://www.congress.gov/crs-product/R41481
  27. https://www.iti.or.jp/report_121.pdf
  28. https://www.ioe-emp.org/index.php?t=f&f=156744&token=2128a312a06ee23015dfe7e69801803fc94a51ff
  29. https://www.whitecase.com/insight-alert/mexico-formalizes-and-expands-import-tariffs-more-1400-products-key-impacts
  30. https://www.kedglobal.com/business-politics/newsView/ked202509030011

日ペルーEPA 原産地証明書がPDF発給に


2026年8月3日から何が変わるか

輸出実務で重要なのは、「いつから」「何が変わるか」「現場の手順をどう変えるか」です。meti
先にポイントを整理したうえで、その後に実務対応を具体的に見ていきます。jcci


1. まず押さえる要点

切替日

  • 日ペルーEPAに基づくペルー向けの原産地証明書(Certificate of Origin:CO)は、2026年8月3日受付分からPDFファイルでの発給に切り替わります。meti
  • 経産省は「2026年8月3日よりPDFファイルでの発給に切り替える」と公表しており、日付は明示されています。meti

専用紙(紙の原本)が使える期限

  • 日本商工会議所の案内によれば、専用紙での発給は「2026年7月31日までに承認された申請」に限られ、それ以降に承認される分はすべてPDFでの発給となります。jcci
  • ここでの基準日は「出荷日」ではなく、原産地証明発給システム上の「承認日」である点が実務上の注意点です。jcci

移行期の扱い(既に発給済みの紙CO)

  • 2026年7月31日以前に専用紙で発給されたCOは、有効期間内であれば8月3日以降もペルー税関で受理されると、日本商工会議所が案内しています。jcci
  • 日ペルーEPAの協定本文上、Proof of Origin(原産地証明)は原則として発給日から12か月間有効であり、単一の輸入申告に使用することが定められています(例外規定あり)。mofa

受け取り方法

  • PDF切替後は、審査が終了し、手数料の入金確認後に発給システム上のステータスが「交付済」となった時点で、利用者がシステムからPDFをダウンロードする方式になります。meti+1​
  • 従来のような窓口での紙原本の受け渡しや、原産地証明書の郵送は行われなくなります。jcci

支払い方法

  • 日本商工会議所の案内では、原産地証明手数料について「現金での支払いは廃止」とされ、事前振込(クレジットカード・インターネットバンキング等)または後日払いのいずれかに変更されます。jcci
  • 具体的な支払手段や締め日は、各商工会議所の運用に従う必要がありますが、「窓口で現金払い」という運用はできなくなります。jcci

ペルー側での提出形態(紙か電子か)

  • 経産省は、ペルー税関で輸入申告する際の具体的な提出形態(PDFを印刷した紙で提出するのか、電子データ添付で足りるのか)について、「現地手続をペルー側で確認することが必要」と案内しています。meti
  • したがって、日本側ではPDF発給を前提としつつ、実際にSUNAT(ペルー税関)へどう提出するかは、買主・現地通関業者を通じて確認することになります。sunat+1​

2. 何が変わるのか

実務目線でのインパクト

今回の変更は、「関税率」や「原産地規則」が変わるのではなく、原産地証明書の媒体と、それに伴う受領・送付オペレーションが変わる点にあります。meti
実務的に影響が出やすいのは、次の3点です。jcci

2-1. 発給から相手先提出までのリードタイム

  • 従来は、専用紙のCOを商工会議所で受領し、それを国際宅配などでペルーの買主・通関業者に送る必要があり、輸送時間や紛失リスクがボトルネックになりがちでした。
  • PDF発給に切り替わると、発給後すぐにメールやオンラインストレージ等で電子送付できるため、COの物理的な輸送時間はほぼゼロになります。meti+1​

2-2. 書類統制(改ざん防止・版管理・誤送付防止)

  • 紙原本がなくなりPDF中心になると、社内では次のような事故が起こりやすくなります。
    • 更新前の古いPDFを誤って送付する。
    • 宛先を間違えたメールで送る。
    • ファイル名がバラバラで、どの案件にどのファイルを出したか追跡できない。
  • PDF発給自体は利便性が高い一方で、社内のファイル名ルール・保存場所・送付履歴の管理ルールを決めておかないと、監査対応やクレーム対応が難しくなります。jcci

2-3. 貿易決済(L/Cなど)との整合性

  • 信用状や売買契約書に「原産地証明書の原本(paper original)」「指定様式の紙CO」「紙での提出」を求める条項が残っている場合、PDFへの切替後に条件不一致が発生する可能性があります。
  • 特に、2026年8月以降の出荷分をL/C決済で予定している案件では、事前に買主および銀行と「PDF発給で問題ないか」「紙原本の提示要求をどう扱うか」をすり合わせておくことが重要です。meti+1​

3. 切替スケジュール

現場が迷わないための整理

日本商工会議所の案内をもとに、実務上の線引きを表形式で整理すると、次のようになります。jcci

日付・条件発給形態実務上の注意点
2026年7月31日までに「承認」専用紙(紙)紙COが必要な案件は、承認日から逆算して申請する。
2026年8月3日以降に「承認」PDF発給後はシステムからダウンロードし、郵送は不要。
7月31日以前に専用紙で発給済のCO紙COのまま協定上の有効期間(原則12か月)内はSUNATで使用可。

ここで重要なのは、

  • 切替の境目が「出荷日」ではなく「発給システムの承認日」であること
  • 7月末から8月上旬にかけて出荷が集中する企業ほど、「紙COで行く案件」か「PDFで行く案件」かを早めに決め、申請リードタイムを逆算する必要があること
    です。meti+1​

4. ペルー側輸入申告で起きやすい論点

日本側の発給形式がPDFに変わると、ペルー側の通関では次の2点が論点になりやすくなります。sunat+1​

4-1. PDFの提出形態(紙提出か電子提出か)

  • 経産省は、「現地で輸入申告する際の詳細な手続(印刷した紙での提出の要否、電子データでの提出可否)は、現地税関(SUNAT)に確認すること」と案内しています。meti
  • SUNATの一般案内では、各協定ごとに「原産地証明書」「declaración de origen(原産地申告)」などのProof of Originが挙げられていますが、提出媒体については税関のシステム運用・ローカル通達に依存します。sunat

実務的には、

  • 買主または現地通関業者に対し、「日ペルーEPAのCO(PDF)をSUNATに提出する際、印刷した紙が必要か、電子添付で足りるか」を確認し、その回答をメールなどで証跡化する
    ことが、最短で確実な確認方法になります。sunat+1​

4-2. 申告上の協定選択ミス(TPIコード)

  • SUNATの「Acuerdos Comerciales」の案内では、各協定ごとにTrato Preferencial Internacional(TPI)コードが設定されており、申告書に当該コードを入力することが、関税優遇適用の前提とされています。sunat
  • 日ペルーEPAについては、TPIコードが複数行にわたり掲示されており、協定別に804、807、815等が割り当てられていることが分かりますが、具体的な日ペルーEPAのコードはSUNATの最新案内で再確認する必要があります。sunat

したがって、

  • 「TPIコードの入力漏れ・誤入力」が優遇適用漏れの典型的な原因になるため、買主側の通関手順書や社内マニュアルに、日ペルーEPA用のTPIコードと入力ルールを明記してもらう
    ことが、安全な運用と言えます。sunat

5. 日本側(輸出者)が今からやるべき実務対応

2026年8月まで時間があるように見えても、7月末〜8月出荷案件では、L/C条件・書類条件・システム切替が重なり、直前に混乱しやすくなります。meti+1​
今のうちに、次のような「型」を整えておくことが有効です。

5-1. 社内フローを1枚で更新

手順書やフローチャートに、最低限次の差分を追記します。jcci

  • 発給物の受領方法:窓口・郵送から「システム上でPDFダウンロード」へ。
  • 支払い方法:現金廃止、事前振込(クレジット・ネット銀行)または後日払いへ。
  • ファイル管理:
    • ファイル命名規則(例:CO_JP-PE_インボイスNo_発給日.pdf)
    • 保存場所(共有フォルダ/DMS)
    • 送付履歴(誰に・いつ・どのファイルを送ったか)の残し方。

5-2. 「7月末出荷+L/C等」案件だけ先に洗い出す

次の条件に当てはまる案件は、早期にリストアップしておきます。

  • 7月後半に日本出荷予定。
  • 8月上旬にペルー到着予定。
  • L/C決済または厳格な書類条件が付いている。

これらについて、

  • COを紙で出す必要があるか、PDFで問題ないかを買主・銀行と事前に確認し、
  • 紙が必要な場合は「7月31日までに承認」を前提に、逆算して申請締切日を社内で設定する
    ことが重要です。jcci

5-3. 取引先への通知文をテンプレート化

買主・現地通関業者向けに、次の内容を簡潔にまとめた通知文テンプレートを作成しておくと、社内・社外への展開がスムーズになります。meti+1​

  • 2026年8月3日から、日ペルーEPAのCOはPDF発給になること。
  • 2026年7月31日承認分までは紙COでの発給が可能であること。
  • ペルー側での提出形態(印刷要否、電子添付可否)について、SUNATまたは通関業者に確認してほしいこと。

5-4. システム停止リスクに備える

  • 日本商工会議所は、PDF発給切替に伴う発給システムの停止時期などを、別途案内するとしています。jcci
  • システム停止を前提に、月末・月初に申請が集中しないよう、社内の申請締切を前倒しする運用を組み込んでおくと安全です。jcci

6. よくある質問(想定Q&A)

Q1. 7月に紙で発給されたCOは、8月以降の輸入でも使えますか。

  • 日本商工会議所は、2026年7月31日以前に専用紙で発給されたCOについて、有効期間内であれば8月3日以降もペルー税関で受理されると案内しています。jcci
  • 日ペルーEPA協定上、Proof of Originの有効期間は「発給日から12か月」とされているため、その範囲内であれば使用可能です。mofa

Q2. 8月3日以降に紙COを発給してもらう例外はありますか。

  • 経産省・日本商工会議所の案内では、「2026年8月3日以降に承認される分はすべてPDF発給」とされており、紙COの発給を認める例外運用は示されていません。meti+1​
  • 特別な例外措置が取られる場合は、別途公表されると考えられるため、最新情報のフォローが必要です。meti

Q3. ペルー税関にはPDFをどのように提出すればよいですか。

  • 日本側の公表は、「現地で輸入申告する際の詳細な手続はSUNATに確認すること」としており、提出形態を一律には示していません。meti
  • 実務的には、買主の通関業者に「PDFを印刷した紙の提出が必要か」「電子添付で足りるか」を確認し、その回答内容を契約書・インボイスの備考欄・出荷書類の指示書などに反映するのが確実です。sunat

まとめ

日ペルーEPAの原産地証明書がPDF発給に切り替わることは、輸出者にとって、スピード向上と紛失リスク低減の観点ではプラスです。meti+1​
一方で、2026年7月末から8月の境目は「承認日」基準で紙とPDFが分かれるため、出荷計画、L/C条件、現地通関手続の三つを事前にすり合わせることが肝になります。jcci+1​

今のうちに、

  • 社内フローの改訂(PDF前提の受領・管理・送付)
  • 7月末〜8月案件の洗い出しと書類条件の確認
  • 買主・通関業者への通知とSUNATでの提出形態の確認
    までを済ませておけば、2026年8月の切替を現場トラブルなく乗り切ることができます。sunat+1​

  1. https://www.jcci.or.jp/gensanchi/20260107_Perucopdf.pdf
  2. https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/boekikanri/gensanchi/20260107.html
  3. https://www.sunat.gob.pe/orientacionaduanera/acuerdoscomerciales/acuerdos.html
  4. https://www.mofa.go.jp/region/latin/peru/epa201105/pdfs/jpepa_ba_e.pdf
  5. https://www.meti.go.jp/english/policy/external_economy/trade/FTA_EPA/index.html
  6. https://www.globalbizgate.com/mailmagazine/2026/01/08/%E6%97%A5%E3%83%9A%E3%83%AB%E3%83%BCepa%E3%81%AB%E5%9F%BA%E3%81%A5%E3%81%8F%E3%83%9A%E3%83%AB%E3%83%BC%E5%90%91%E3%81%91%E3%81%AE%E5%8E%9F%E7%94%A3%E5%9C%B0%E8%A8%BC%E6%98%8E%E6%9B%B8%E3%82%92/
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  15. https://www.kanzei.or.jp/sites/default/files/pdfs/report/roocom_020400.pdf

韓国のCPTPPへの参加検討正式表明に関して、参加することはできるか?

1. CPTPPでは「約束を守る実績」が明確に条件に入っている

CPTPPは拡大の原則として、いわゆるオークランド原則を繰り返し確認しています。要点は次の3つです。

  1. 協定の高水準を満たす準備ができていること
  2. 貿易上のコミットメントを遵守してきた実績があること
  3. 加盟国のコンセンサスを得られること

この「遵守実績」が、まさにご質問の「国際約束を守れるか」を、制度上の評価軸に落とし込んだものです。

2. 日本側も公式文書で「加盟後の履行意思と能力」を強調している

日本の外交青書(2025年版)でも、加盟申請国について「高い基準を満たす能力があるか」だけでなく、「加盟後も履行し続ける意思と能力」を見極める、という趣旨が明記されています。
つまり日本としても、形式的な加盟条件より「実装して守り続けるか」を重視する立場を公式に取っています。

3. 実務上は、こういう形で「信頼性」が論点化する

CPTPPの加入審査は、候補国が提出する資料や質疑応答を通じて「守れるか」を検証する仕組みです。作業部会の付託事項も、候補国がCPTPP義務を遵守できることを示す文書の確認を含みます。

その結果、「信頼性」は次のような論点に変換されがちです。

  1. 国内法と運用がCPTPP義務に整合しているか
  2. 整合していない場合、いつまでに法改正や制度変更を行うのか
  3. 例外や経過措置をどこまで認めるか
  4. 紛争解決や透明性の運用を実際に回せるか

要するに「守ると言うか」ではなく、「守る状態を作れるか、作った後も維持できるか」という確認になります。

4. 韓国のケースで日本の懸念が表に出るとしたら

日韓間には、政治・外交の文脈で「約束の履行」への不信感が語られることがあります。ただCPTPPの場でそれを前面に出すより、先ほどのオークランド原則と整合する形で、

  1. 貿易約束の遵守実績
  2. 加盟後の履行を担保する制度設計
  3. 国内世論の理解と継続性

という論点で、日本が「コンセンサスに慎重」になるシナリオが現実的です。

5. いま時点での現実:日本が賛否を決める「審査段階」にはまだ入っていない可能性が高い

直近の韓国高官発言は「準備が整い次第、追加的な措置を講じる」という表現で、正式な加入要請を既に寄託国へ通報した、という言い方ではありません。
CPTPPは、まず寄託国ニュージーランドへの正式通報が起点になります。
したがって、企業実務としては「日本が信頼性を理由に止めるかどうか」は、正式要請が出て作業部会が動き出してから具体論になりやすいです。

メキシコ、非FTA対象で約1,400品目の関税引上げ


2026年1月1日から、メキシコは輸入関税率表(TIGIE)上の1,463タリフラインについて、一般税率(MFN)を引き上げる制度改正を施行しました。官報(DOF)に掲載された改正法令は、2025年12月29日に公布され、2026年1月1日に発効しています。whitecase+4​

ニュース見出しでは「非FTA品目」と表現されがちですが、実務上の理解はもう一段丁寧にする必要があります。改正はあくまでMFNを上げる仕組みであり、FTAの特恵(原産品としての優遇税率)は、原産地規則を満たし適切に申告できる限り、引き続き適用余地があります。craneww+2​

まず押さえる要点

今回の改正を、ビジネスの意思決定に必要な粒度で整理すると次のとおりです。

項目内容
改正の本質MFN関税率の引上げ(対象は特定の関税番号)
対象規模1,463タリフラインwhitecase+2​
施行日2026年1月1日mexiconewsdaily+2​
対象外の考え方FTA優遇を適用できる原産品は原則影響なし(原産地証明と適切な申告が前提)whitecase+1​
有効期限無期限(恒久化)whitecase

対象規模(1,463タリフライン)やFTA適用時の取り扱い、対象業界の全体像は、複数の専門機関・法律事務所・当局解説で一致しています。clarkhill+3​

どんな品目が影響を受けるのか

対象は20以上の章にまたがり、自動車・部品、繊維・アパレル、プラスチック、鉄鋼、家電、アルミ、履物、紙・板紙、皮革製品、家具、ガラス、玩具、二輪、トレーラーなど幅広い業界に及びます。trade+3​

税率水準は品目ごとに異なり、引上げ後の関税率は5%、7%、10%、14%、15%、18%、20%、22%、25%、30%、35%、36%、45%、50%のレンジに分布します。完成乗用車の特定の関税番号(8703.22.99、8703.23.99、8703.24.99、8703.32.99、8703.33.99、8703.40.99、8703.60.99、8703.80.01)では50%が適用されます。自動車部品は25%から36%の範囲が中心です。mexiconewsdaily+4​

また、今回の動きは従来の大統領令ベースの措置を、法律改正により恒久化・拡大する性格があると解説されています。具体的には、1,463タリフラインのうち約41%は2024年の大統領令で既に引上げ済みの内容を制度化し、残り59%が新規に追加された品目です。繊維・履物・アパレルは既存措置の「恒久化」、それ以外の分野は「新規にカバー拡大」という見方が示されています。jdsupra+1​

さらに、316タリフラインは以前は無税(duty-free)だったものが、今回初めて関税が課されることになりました。whitecase

「非FTA品目」とは実務で何を意味するか

ここが誤解ポイントです。影響を受けるかどうかは「仕向地に着いたときの原産性」と「申告の正しさ」で決まります。

FTA相手国からの出荷でも、原産地規則を満たさなければMFNが適用され得る

たとえば日本からメキシコに輸出しても、商品が日本原産として認められない場合(第三国原産のまま、工程不足、証憑不備など)は、FTA特恵が使えずMFN(引上げ後)のコストになります。trade

「出荷国」と「原産国」は別物

中国原産の部品や完成品を日本経由でメキシコへ流しても、原産地が中国のままなら、非FTA原産として引上げ後の税率が問題になります。報道や解説でも、非FTA国(中国、インド、韓国、インドネシア、タイ、ロシア、トルコ、台湾、ブラジルなど)を念頭に置いた制度設計と整理されています。mohawkglobal+2​

書類不備は、税率の取りこぼしに直結する

当局解説では、通関での分類・価格・書類整合性に対する目線が強まり、輸出者側もインボイス、仕様書、原産地証明などの精度が重要になると示されています。2026年の一般対外貿易規則(GFTR)では、通関業者向けの新たな書類要件、通関手続きの裏付け書類、バーチャル輸入申告の記録保管など、より多くの書類を作成・保管する義務が追加されています。kpmg+1​

日本企業にとっての影響シナリオ

影響は「メキシコ向けの輸出」だけでなく、「メキシコの顧客が非FTA原産品を調達しているか」によっても変わります。

シナリオA:メキシコ向け部材の中に非FTA原産が多い

自社が日本から輸出していても、実態は第三国原産のままというケースでは、顧客側の輸入コストが上がります。結果として、価格交渉、発注数量、調達先見直しの圧力が出やすくなります。mohawkglobal+1​

シナリオB:完成車・主要部材など、税率の上振れが大きい領域に該当

完成車の特定関税番号では50%水準が適用され、部材でも複数レンジ(7%、10%、25%、36%など)が混在します。どこに該当するかで採算は別物になるため、HS分類の確定が最優先です。forvismazars+1​

シナリオC:FTA適用の社内運用が弱く、取りこぼしが発生しやすい

今回のようにMFNが上がる局面では、これまで「面倒なのでMFNで払っていた」取引が急に高コストになります。原産性の棚卸しと証憑整備は、守りではなく利益改善の打ち手になります。forvismazars

すぐにやるべき実務チェックリスト

以下の順番で手当てすると、短期間で影響可視化まで到達できます。

影響品目の棚卸し

  • メキシコの関税番号(フラクシオン)まで落として、該当有無を判定
  • 該当の場合、引上げ後の税率レンジ(5~50%)で着地コストを試算strtrade+1​

原産地の再判定

  • 日墨EPA、CPTPPなどで原産性を確保できるか
  • 部材原産地の収集、サプライヤー証明の更新、証憑の監査耐性を強化whitecase+1​

通関実務の点検

  • インボイス品名、技術仕様、分類根拠、価格根拠が一貫しているか
  • メキシコ側ブローカーと、申告データの突合ルールを先に決めておくkpmg+1​
  • 2026年のGFTRで追加された書類要件(通関業者向け文書、裏付け書類、記録保管)への対応を確認kpmg

IMMEX制度利用者向けの追加確認

2026年のGFTRでは、IMMEX(マキラドーラ)プログラム下での繊維・アパレル製品の輸入に新たな制限が設けられています。該当する企業は、プログラム適用要件の変更を確認する必要があります。kpmg

制度の背景と政策意図

メキシコ政府は、この改正を単なる歳入確保措置ではなく、「戦略的な政策ツール」として位置づけています。背景には次の狙いがあります。tbaglobal+1​

  • 国内製造業の保護と雇用確保trade+1​
  • アジア諸国、特に中国からの輸入への依存低減mexiconewsdaily+1​
  • グローバルバリューチェーンへの統合が期待された技術移転や国内付加価値向上につながっていない現状への対応whitecase
  • 国家開発計画との整合whitecase

メキシコ経済大臣のマルセロ・エブラード氏は、この措置がメキシコの総輸入の約8.6%に影響を与えると述べています。中国からの輸入はメキシコ総輸入の約19.96%を占め、中国製車両はメキシコ市場の18.1%のシェアを持っており、特に自動車セクターへの影響が大きいとみられています。tbaglobal

まとめ

メキシコの関税引上げは、1,463タリフライン規模でMFNが上がる政策転換です。最大の論点は、非FTA原産品と、FTA原産でも運用不備で特恵を取りこぼす取引がコスト増になり得ること。逆に言えば、HS分類と原産地証憑を固め、FTA適用の確度を上げられる企業ほど、影響を吸収しやすい局面です。clarkhill+3​

改正は2026年1月1日に発効し、有効期限は無期限です。早期の対応準備が、コスト管理と競争優位の確保に直結します。mexiconewsdaily+2​


免責事項: 本稿は2026年1月時点の公表情報に基づく一般情報であり、個別案件の法令判断や通関助言を目的とするものではありません。実際の適用は、品目の分類、原産地事実、申告実務、当局運用により左右されます。個別案件は現地通関業者・専門家と一次情報で確認してください。

  1. https://www.whitecase.com/insight-alert/mexico-formalizes-and-expands-import-tariffs-more-1400-products-key-impacts
  2. https://mexiconewsdaily.com/news/mexico-tariffs-go-into-effect-china/
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韓国がCPTPP加盟検討を正式表明 次に何が起き、企業はどう備えるか


韓国政府がCPTPP加盟を正式に検討する姿勢を明確化し、2026年1月13日の日韓首脳会談でもこの議題が取り上げられる見通しです。今回のポイントは、韓国政府内の「検討段階」から、首脳・閣僚レベルの発言が重なり、対外的な論点として前面に出てきた点にあります。ビジネス実務に波及するのは中期戦になりやすいものの、サプライチェーン設計と競争条件に影響する動きとして、早期の情報収集と準備が求められます。nippon+1​

何が起きたのか

2025年12月17日、韓国の産業通商資源部が大統領への業務報告で、CPTPP加入を「積極的に検討する」と明らかにし、担当相は「来年の加入申請や内容について議論を始めた段階」「推進戦略をつくる」と述べました。加えて、日本産水産物の輸入停止問題が交渉の焦点になり得ることも示唆されています。yna

さらに2026年1月9日、韓国大統領府の国家安保室長は、1月13日の日韓首脳会談でCPTPPが議題になり得ること、韓国側も準備が整い次第追加措置を取る考えを示しました。李在明(イ・ジェミョン)大統領の政権は、米中への依存を低減し、多国間貿易を通じた経済基盤の多角化を目指す姿勢を鮮明にしています。euronews+1​

CPTPPの基本構造

CPTPPは、加盟国間で関税撤廃・削減だけでなく、投資、サービス、電子商取引、国有企業、政府調達など幅広いルールを持つ高水準の経済連携協定です。現在の加盟国は12か国で、英国は2024年12月15日に6か国との関係で正式に発効しました。donga+2​

実務面で重要な2つのポイントsice.oas+1​

寄託国はニュージーランド
加入要請や各種通知の受け皿はニュージーランドが務めます。

新規加入は全加盟国のコンセンサスが前提
加入プロセスでは、作業部会の設置や最終承認など、要所で全加盟国の合意が必要です。つまり、政治・外交論点がそのまま通商条件に直結しやすい枠組みです。apfccptppportal

韓国が今CPTPPを急ぐ背景

背景は複合的ですが、ビジネスに効く要因は大きく2つです。

米中依存を下げる「貿易の多角化」

韓国政府は、米中への過度な依存を低減し、多国間貿易の枠組みを通じた経済安全保障の確保を重視しています。CPTPPは、日本、オーストラリア、カナダ、メキシコ、ベトナムなど多様な市場へのアクセスを一括して改善する手段として位置づけられています。nippon+1​

メキシコを中心とした「非FTA国への高関税」

2025年12月、メキシコは非FTA国からの輸入品に対して大幅な関税引上げを決定し、2026年1月1日から施行しました。対象は1,400品目以上で、完成車50%、自動車部品25-36%、家電25-30%など、韓国の主力輸出品が直撃を受けています。whitecase+3​

メキシコ政府は、この措置が中国、韓国、インド、ベトナム、タイ、ブラジル、インドネシア、台湾、UAE、南アフリカなど、FTA未締結国からの輸入を標的にしていることを明記しています。韓国側では「CPTPP加入も韓メキシコFTAも失敗すると、日本は無関税を維持できる一方、韓国は高関税で不利になる」といった懸念が報じられています。koreatimes+3​

ただし、韓国産業通商資源部は、メキシコの中間財関税減免プログラムを活用する韓国企業が多いため、実際の影響は限定的との見方も示しています。yna

申請から加入まで

CPTPPは「申請したらすぐ加入」ではありません。典型的な流れは次の通りです。sice.oas+1​

  1. 寄託国ニュージーランドへ加入要請を通報
  2. CPTPP委員会が作業部会(AWG)設置などを判断
  3. ルール適合と市場アクセス(関税・例外・サービス等)の交渉
  4. 委員会がコンセンサスで条件を承認
  5. 加入文書を寄託し、条件が整った後に発効

参考までに英国は、2021年2月に寄託国へ加入要請を通報し、2023年3月に交渉を実質妥結、2024年12月に議定書が発効しました。コスタリカは2025年3月に第1回作業部会が開催され、同年8月までに第3回が実施されましたが、まだ交渉継続中です。gov+1​

この時間軸を見ても、韓国が「来年申請」を語っても、企業実務に波及するのは中期戦になりやすい点が重要です。

交渉の焦点

日本産水産物の輸入停止問題

韓国政府自身が、これが交渉の焦点になり得ると認めています。韓国は2013年以降、福島第一原発事故を理由に日本の8県からの水産物輸入を禁止しており、2014年には日本政府がWTO提訴も検討しました。wtocenter+1​

また韓国メディアでも、日本が輸入規制の解除を加入承認と結び付ける可能性があるといった観測が報じられています。japannews.yomiuri

農畜産・水産分野の国内調整

CPTPPは高水準の市場アクセスが求められ、国内調整が最大のボトルネックになりがちです。2021年の文在寅(ムン・ジェイン)政権時にも加入意向が示されましたが、農業団体などの反発と日韓関係の悪化により議論が停止した経緯があります。japannews.yomiuri

今回も、韓国側では「国民的共感が先行すべき」との指摘が出ています。japannews.yomiuri

高水準ルールへの制度適合

加入希望国は、既存ルールへの全面適合と、高水準の市場アクセス提示が求められます。ここは企業にとって、国内法改正や規制運用変更のリスクが出やすい領域です。apfccptppportal

日本企業へのインパクト

論点は関税に見えますが、企業実務で効くのは次の3つです。

サプライチェーン再設計の余地

韓国が加盟すれば、CPTPP域内の調達・生産・輸出で「域内扱い」になり得ます。原産地規則の組み立てが変わり、BOMやサプライヤー戦略を見直す局面が出ます。

メキシコなどでの競争条件

現状、メキシコは非FTA国を不利に扱う動きがあり、これが韓国企業の痛点になっています。韓国がCPTPPへ進めば、この非対称が縮む可能性があります。english.news+2​

日韓協業のテーマが増える

日韓首脳会談でCPTPPが議題になり得るとされ、経済案件として動きやすい環境が整い始めています。donga+2​

企業の実務チェックリスト

CPTPPで優遇税率を使っている品目を棚卸し
自社がCPTPP利用中の輸出入品目、適用している原産地判定ロジックを一覧化します。

韓国由来部材の比率を見える化
現時点では「非原産」として扱っている韓国部材が、将来「域内」となる可能性を仮置きし、原産地判定がどう変わるか試算します。

取引契約の関税条項を点検
関税変動時の価格調整、原産地証明の責任分界、遡及対応などを再確認します。

交渉イベントの監視ポイントを固定
韓国が寄託国ニュージーランドへ正式な加入要請を出したか、作業部会が立ち上がったかが最初の実務シグナルになります。

今後の見通し

直近の山は、2026年1月13日の日韓首脳会談です。ここでCPTPPがどの程度踏み込んで語られるかが、次の動きの温度感を決めます。tradingview+2​

一方で、韓国側報道でも「加入申請書をまだ提出できていない」とされており、少なくとも現時点は準備・調整フェーズと見るのが安全です。英国やコスタリカの事例を踏まえると、申請から発効まで2-3年以上を要する可能性が高く、企業は中長期の視点で準備を進めるべき局面です。japannews.yomiuri


注: 本稿は2026年1月10日時点の公表情報に基づく一般情報です。実際の交渉進展や発効時期は、政治・外交情勢と国内調整の進捗に依存するため、最終判断は一次情報と専門家確認で行ってください。

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  16. https://es.tradingview.com/news/reuters.com,2026:newsml_P8N3XW050:0-south-korea-s-president-lee-to-visit-japan-january-13-14-for-summit-newsis-reports/
  17. https://www.marketscreener.com/news/south-korea-to-explore-possibility-of-joining-cptpp-finance-ministry-ce7e59d2d98ff720
  18. https://www.eria.org/news-and-views/south-korea-president-moon-jae-in-shows-interest-in-joining-cptpp-mega-trade-deal
  19. https://behorizon.org/trilateral-momentum-u-s-japan-south-korea-forge-deeper-strategic-alignment/
  20. https://www.clarkhill.com/news-events/news/mexico-approves-significant-tariff-increases-on-imports-from-non-fta-countries/
  21. https://www.foley.com/zh/insights/publications/2025/12/mexican-january-2026-tariff-tsunami-maquilas-arent-immune/