CBPが公表した「重複関税(Tariff Stacking)の解除」ガイドを深掘り:対象範囲・優先順位・還付実務まで(ビジネス向け)

CBPが公表した「重複関税(Tariff Stacking)の解除」ガイドを深掘り:対象範囲・優先順位・還付実務まで(ビジネス向け)

※本稿は、一次資料(Executive Order 14289/Federal Register告示/CBPのCSMS通達/ジェトロ解説)に基づき、内容の整合・用語統一・読みやすさの観点で複数回見直したうえで、全体を校正しています。regulations.justia+4


1. 「重複関税(スタッキング)」とは何か。何が“解除”されたのか

米国向け輸出・輸入、とくに北米サプライチェーンで問題になっていたのが、「同じ輸入貨物に複数の追加関税が重なって課される(tariff stacking)」という状況です。business.gmu+1

この問題に対し、大統領令「Executive Order 14289(Addressing Certain Tariffs on Imported Articles)」は、特定の追加関税について「どの順番でどれを適用し、どれを排除するか」という**優先順位(single‑duty rule)**を定め、重複(スタッキング)を原則として排除する仕組みを導入しました。federalregister+2

CBP(米国税関・国境警備局)は、この大統領令を実務に落とし込む形でCSMS通達(CSMS #65054270 ほか)を発出し、適用順序と、過去に「重複で支払われた」部分の還付手続きについて具体的なガイダンスを示しています。macmap+2

重要なのは、これは「米国のあらゆる関税を軽くする」ものではなく、「EO 14289が対象として定めた5つの追加関税の重複」を解消する制度だという点です。通常の基本関税やSection 301、AD/CVD、その他の税・手数料は、依然として別枠で課され得ます。internationaltradeinsights+2


2. 対象は「5つの追加関税」:まずここを押さえる

CBPのガイダンス(CSMS #65054270)は、EO 14289の対象となる**5つの大統領措置(presidential actions)**を明示しています。govdelivery+2

  • Section 232 自動車・自動車部品(232 Auto/Auto Parts)
  • IEEPA(国際緊急経済権限法)に基づく対カナダ措置(いわゆる「IEEPA Canada」:対カナダの違法薬物・国境治安関連関税)
  • 同じく対メキシコ措置(「IEEPA Mexico」)
  • Section 232 アルミニウム関税(232 Aluminum)
  • Section 232 鉄鋼関税(232 Steel)regulations.justia+2

実務的には、まず自社の米国向け輸入(米国内拠点の調達を含む)が、

  • 自動車・自動車部品に該当するのか
  • 鉄鋼・アルミニウム(およびその派生品)に該当するのか
  • 原産国がカナダ/メキシコで、IEEPA由来の追加関税の対象になり得るのか

を棚卸しするところからスタートします。ghy+2


3. 本題:優先順位(どれが適用され、どれが外れるか)

3‑1. 2025年5月版(CSMS #65054270):EO 14289の基本ルール

Federal Registerの告示とCSMS #65054270では、「同じ貨物が複数の対象関税に“subject to”となる場合、どの順番で判定し、どれを残すか」が示されています。internationaltradeinsights+2

要点を実務向けに整理すると、次のとおりです(2025年6月3日までの枠組み)。

  • まず 232 自動車・自動車部品に該当するかを判定し、該当する場合は他の4つ(IEEPAカナダ/メキシコ、232鉄鋼・アルミ)は上乗せしない
  • 自動車・部品でない場合、つぎに IEEPA(カナダ/メキシコ) に該当するかを判定し、該当する場合は 232 鉄鋼・アルミは上乗せしない
  • IEEPAにも該当しない場合に、最後に 232 アルミ/232 鉄鋼を判定する。
  • 232 鉄鋼と 232 アルミについては、同じ貨物に対し両方が適用され得る(鋼とアルミの両方の含有価値を持つ派生品など)という点が特に明記されています。macmap+2

ここでいう「subject to」は、当該措置の下で正味の追加関税額が0%を超える(免除や例外ではない)場合を指す、とCBPは補足しています。internationaltradeinsights+1

また、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の原産資格の有無が、IEEPA関税の「subject to」判定に影響し得ることも、CBPの解説や外部解説で繰り返し触れられています。USMCA原産となればIEEPAの対象外となり、その結果、232側が優先されるケースが出てきます。ghy+2

3‑2. 2025年6月4日以降(CSMS #65236574):優先順位が“改定”された点に注意

2025年6月3日に署名された鉄鋼・アルミ輸入調整の大統領布告(Section 232関係のProclamation)を受け、CBPはCSMS #65236574で優先順位(tariff stackingのルール)を改定しています。millerco+2

新しい優先順位(2025年6月4日 0:01(米東部夏時間)以降にエントリーされた貨物)では、次の順番で判定するよう指示されています。internationaltradeinsights+2

  1. 232 自動車・自動車部品(232 Auto/Auto Parts)
  2. 232 アルミニウム(232 Aluminum)
  3. 232 鉄鋼(232 Steel)
  4. IEEPA カナダ
  5. IEEPA メキシコ

この改定により、**232 アルミ/232 鉄鋼に該当する貨物については、IEEPA(カナダ・メキシコ)を上乗せしない(232側を優先する)**という整理が、CSMS内でより明確になりました。chrobinson+2

実務上の結論は、「同じHSコード・同じサプライチェーンの品目でも、輸入日(エントリー日)によって適用される追加関税の組み合わせが変わり得る」ということです。したがって、社内分析や還付検討は、少なくとも「2025年3月4日~6月3日」と「6月4日以降」で区切って行うのが安全です。geodis+1


4. いつから遡れるか:還付(Refund)の基本ルール

4‑1. 遡及適用の起点は「2025年3月4日」

Federal Registerの告示およびCSMSガイダンスは、EO 14289(およびその改定)の適用対象を「2025年3月4日以降に消費仕向けで輸入された貨物(または保税倉庫から引き出された貨物)」とし、その時点まで遡ってスタッキング解消のルールを適用する旨を明記しています。millerco+2

ジェトロの解説も同様に、「2025年3月4日以降の輸入分について、重複して課されていた関税の見直し・還付申請が可能」と整理しています。millerco+1

4‑2. 還付請求は「PSC」か「Protest」:清算(Liquidation)前後で分岐

CBPは、還付請求の手段を明確に2つに分けています。govdelivery+1

  • 未清算(unliquidated)のエントリー:
    Post Summary Correction(PSC)で修正・還付を申請。
  • 清算済み(liquidated)だが異議申立期間内のエントリー:
    19 U.S.C. 1514 に基づく Protest(異議申立て)で対応。一般にはCBP Form 19を使用し、清算日から180日以内が基本的な申立期限と整理されています。millerco+1

4‑3. 「何でも還付」ではない:対象外も明確

EO 14289の対象外となる関税については、同令に基づく還付は認められないことが、Federal RegisterおよびCSMSで繰り返し注意喚起されています。federalregister+2

具体的には、以下のような負担は、今回の「スタッキング解除」の枠外として扱われます。

  • 通常関税(HTSUS column 1/column 2の基本税率)
  • Section 301追加関税
  • 別の大統領令・法律に基づく追加関税(EO 14289で列挙されていないもの)
  • 反ダンピング(AD)・相殺関税(CVD)
  • その他、IEEPAに基づくがEO 14289のリスト外の措置 などfederalregister+2

加えて、CBPは「232 自動車・自動車部品」については優先順位の最上位であり、EO 14289によるスタッキング解消の結果として還付対象となるケースは想定されない、とする説明も行っています(最初から最上位で課されているため)。macmap+1


5. ビジネス現場で“損しない”ための実務チェックリスト(6ステップ)

ここからは、通関実務だけでなく経営・財務インパクトも踏まえ、還付と今後の最適設計の両方を意識した動き方を6ステップで整理します。

ステップ1:対象期間を確定(まずは3/4以降、次に6/4で区切る)

  • 2025年3月4日以降の輸入エントリー/保税引取りを抽出する。
  • 2025年6月4日以降は優先順位が変更されるため、「3/4~6/3」と「6/4以降」で分析を分ける。internationaltradeinsights+3

ステップ2:「重複して払った可能性があるエントリー」を洗い出す

  • 同一エントリーで、EO 14289対象の5措置に属する追加関税が複数計上されていないかをチェック(期間別に)。
  • 通関業者(Customs Broker)からACEデータやエントリーサマリーを入手し、対象関税コード・税額を一覧化すると効率的です。geodis+2

ステップ3:USMCA適用可否を再点検(“subject to”判定が変わる)

  • USMCA原産判定の見直しにより、IEEPA(カナダ/メキシコ)の「subject to」判定が変わり、232側に倒れるケースがあります。
  • CBPおよび外部解説は、USMCA適用がスタッキング判定に影響する点を明示しており、この再点検は還付・将来設計の両面で重要です。ghy+2

ステップ4:還付インパクトを財務目線で試算(キャッシュフローに直結)

  • 「理論上の率」ではなく、実際に支払った追加関税額(対象5措置分のみ)ベースで試算する。
  • 還付対象は、EO 14289の優先順位に反して二重に課されていた分のみであり、Section 301やAD/CVDなど対象外の負担を混ぜないことが重要です。govdelivery+2

ステップ5:清算ステータスで手段を決定(PSCかProtestか)

  • 未清算エントリー → Post Summary Correction(PSC)で修正・還付請求。
  • 清算済みエントリー → Protest(19 U.S.C. 1514、通常180日ルール)で対応。ジェトロ等もこの整理で解説しています。millerco+2

ステップ6:再発防止(次の輸入から“最初から正しい税額”にする)

  • CBPは、EO 14289のもとでも輸入者の reasonable care(合理的注意)義務は維持されるとし、誤りがある場合はCBP窓口やACEヘルプデスクへの相談を案内しています。fedex+2
  • 社内的には、
    • ブローカーへのインストラクション更新(優先順位・対象5措置の適用ロジックを共有)
    • 品目マスター(HTS分類)と原産地判定フロー(USMCA・232・IEEPA)の再設計
    • 追加関税の判定ロジックを「輸入日/エントリー日」も含めてシステム実装
    まで落とし込むことで、「将来分を最初から正しい税額で申告」という状態に近づけることができます。internationaltradeinsights+2

6. 実務でよくある誤解(ここを外すと還付どころかリスク)

誤解1:スタッキング解除=関税が全般的に下がる
→ 対象はEO 14289が列挙した5措置の重複整理だけで、通常関税・Section 301・AD/CVD等は別枠のままです。regulations.justia+2

誤解2:とりあえずまとめて還付申請すればよい
→ 還付の可否は、「対象5措置の二重課税かどうか」と「清算ステータス(PSC/Protest)」次第です。手続きの要件を外すと、却下や後日のペナルティリスクにつながります。macmap+2

誤解3:232鉄鋼と232アルミは必ずどちらか一方
→ EO 14289とCBPガイダンスは、「232 Steelと232 Aluminumは同一貨物に同時適用され得る」と明記しており、鋼とアルミの両方の含有価値を持つ派生品では両方が課税対象になり得ます。internationaltradeinsights+2


7. “ガイド”を使いこなす:CBPの「Unstacking Certain Tariffs Chart」という補助ツール

2025年後半、CBPは、どの大統領措置がどの組み合わせで適用され得るかを一覧で確認できる「Unstacking Certain Tariffs Chart」(ファクトシート/スプレッドシート形式)を公表しました(法的拘束力はなく、あくまで情報提供であり、最終判断は法令・官報・布告が優先)。fedex+1

GHYなどの外部解説が示す実務的な使い方はシンプルです。ghy

  • 自社品目に該当しそうな行(HTS・措置分類)を探す。
  • 行を横に読み、各関税措置が「YES/条件付きYES/NO」となっているかを確認する。
  • そこで「YES」だからといって自動的に課税確定とはせず、例外条項やUSMCA適用状況などを一次資料(EO 14289・Federal Register・CSMS)で必ず裏取りする。

この種のチャートを活用すると、

  • 「どの部門が何を確認すべきか」の社内合意を取りやすくなる。
  • ブローカーとの議論が「そもそも課税か否か」から「どの条件を満たせば/外せばよいか」に進み、コミュニケーションコストを下げられる。

といった形で、実務のスピードと精度の両方に効きます。fedex+1


まとめ:経営としての“最適解”は「還付+再設計」を同時に進めること

CBPの「重複関税(tariff stacking)の解除」ガイドは、制度紹介にとどまらず、過去分のキャッシュ(還付)と今後の原価(追加関税負担)に直結するテーマです。govdelivery+1

経営として押さえるべきポイントは、次の3点に集約できます。

  • 対象は5つの措置に限定されており、かつ2025年6月4日以降は優先順位が変わるため、「3/4~6/3」と「6/4以降」で別々に分析すること。internationaltradeinsights+1
  • 2025年3月4日以降に遡及適用され、未清算はPSC、清算済みはProtest(180日)で還付を狙うこと。millerco+1
  • Section 301やAD/CVDなど対象外の負担を混ぜず、対象5措置だけを切り出して精査すること。federalregister+2

この枠組みを踏まえれば、「過去分の還付」と「今後の正しい関税設計」を同時並行で進めることが、北米ビジネスにとっての合理的な“最適解”になります。

  1. https://content.govdelivery.com/accounts/USDHSCBP/bulletins/3e0a63e
  2. https://regulations.justia.com/regulations/fedreg/2025/05/20/2025-09066.html
  3. https://www.federalregister.gov/documents/2025/05/20/2025-09066/notice-of-implementation-of-addressing-certain-tariffs-on-imported-articles-pursuant-to-the
  4. https://www.ghy.com/trade-compliance/guidance-on-executive-order-issued-to-prevent-tariff-stacking-on-us-imports/
  5. https://geodis.com/us-en/resources/customs-corner/cbp-guidance-feeder-vessels-transit-tariff-dates
  6. https://business.gmu.edu/news/2025-07/addressing-certain-tariffs-imported-articles-executive-order-14289
  7. https://macmap.org/OfflineDocument/USADMIN/Measure_Extraordinary_USA_35.pdf
  8. https://www.internationaltradeinsights.com/2025/05/cbp-issues-guidance-on-prioritization-of-articles-subject-to-more-than-one-tariff-under-eo-14289/
  9. https://millerco.com/sites/default/files/2025-06/Section-232-Steel-and-Aluminum-Tariff-Rate-Increase-to-50-and-Tariff-Stacking-Changes-June-3-2025.pdf
  10. https://www.internationaltradeinsights.com/2025/06/amendment-to-imports-of-aluminum-and-steel-increases-232-tariffs-to-50/
  11. https://www.chrobinson.com/de-de/resources/insights-and-advisories/client-advisories/2025q2/06-04-2025-client-advisory-adjusting-imports-of-steel-and-aluminum-into-the-united-states/
  12. https://content.govdelivery.com/accounts/USDHSCBP/bulletins/3e36e5e
  13. https://millerco.com/sites/default/files/2025-05/CBP-Clarification-of-Tariff-Stacking-Rules-and-Refund-Opportunity-May-16-2025.pdf
  14. https://www.fedex.com/content/dam/fedex/us-united-states/International/upload/Regulatory_News_-_Addressing_Certain_Tariffs_on_Imported_Articles.pdf
  15. https://blog.coleintl.com/tradenews/cbp-issues-guidance-on-tariff-stacking-under-executive-order-14289
  16. https://www.chrobinson.com/en-sg/resources/insights-and-advisories/client-advisories/2025q2/05-21-2025-client-advisory-cbp-issues-guidance-on-tariff-prioritization-under-executive-order-14289/
  17. https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/04/addressing-certain-tariffs-on-imported-articles/
  18. https://geodis.com/us-en/resources/customs-corner/us-tariffs-client-updates
  19. https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2025-05-20/html/2025-09066.htm
  20. https://asafishing.org/wp-content/uploads/2025/06/Tariff-Action-Cheat-Sheet-V31-5-26-2025.pdf

カナダ「鋼材派生品」に25%追加関税(2025年12月26日施行)— 何が変わり、実務で何をすべきか

結論から言うと、提示いただいたブログ草稿は、制度の「骨格」と実務イメージはかな​


1. まず結論:今回の「25%」は、下流の完成品・部材に刺さる

カナダ政府は2025年12月26日から、指定された「鋼材派生品(steel derivative products)」に対して、輸入品の通関価額(value for duty)の全額に25%の追加関税(surtax)を課します。しかも原則として、**全ての国・地域からの輸入が対象(from all countries)**です。orders-in-council.canada+1

これにより、これまで「鋼材(ミル製品)そのもの」中心だった関税リスクが、ボルト・ナット、ワイヤー、プレハブ建築、風力タワー、金属家具などの完成品寄りの品目にまで広がります。coleintl+1

重要なのは、「鋼材部分の価額」ではなく「製品全体の通関価額」に対して25%が乗ることです。通関価額には貨物価格に加え、輸送費・保険料等が含まれ得るため、評価の仕方次第で着地コストは想定以上に跳ね上がります。pcb+1


2. 「対象品目」は何か:建設・インフラ×部材×金属製品が中心

対象は、カナダ財務省が公表したリストに記載された関税番号(Tariff Item/HSコード)で指定されており、説明文はあくまで目安、法的な範囲はカラム1のTariff Itemで決まると明記されています。canada+1

実務的に「刺さりやすい」代表カテゴリを、ビジネス影響がイメージしやすい形に並べると、概ね次のようなイメージです(※例示。最終判断は必ず公式リストで照合)。

  • 構造物・建設系(HS 7308、9406 など)
    例:橋梁部材、塔、鉄骨構造、風力タワー、プレハブ建築coleintl+1
  • ワイヤー・ロープ・金網・チェーン類(HS 7312、7314、7315 など)
    例:ワイヤーロープ、金網、チェーンcanada+1
  • ファスナー(HS 7317、7318 など)
    例:釘、ねじ、ボルト、ナット、ワッシャーcoleintl+1
  • ばね・鋳物・その他金属製品(HS 7320、7325、7326 など)canada+1
  • 金属フレームの椅子・金属家具・照明部材(HS 9401、9403、9405 など)coleintl+1

さらに注意すべきは、「鋼材派生品」という名称からは連想しにくい完成品・半製品も含まれている点です。たとえばドア・窓、家具、照明器具用部材など、一般に「鉄鋼製品」としては認識されにくい品目も対象に含まれるため、「うちは鉄鋼メーカーではないから関係ない」という決めつけは危険です。canada+1


3. 例外(除外)を押さえる:7つの“逃げ道”と、見落としポイント

カナダ財務省のバックグラウンダーおよび Steel Derivative Goods Surtax Order では、25%のsurtaxが適用されないケースが明確に列挙されています。実務上はここが大きな分かれ目です。osler+2

主な「適用除外」は、次のとおり整理できます(要約)。

  • 既存のsurtaxの対象になっている貨物
    例:対中国のsurtax、対米国の鉄鋼・アルミ関連surtax、鉄鋼TRQ関連のsurtax等の対象貨物は、本25%の重複適用(スタック)の対象外。canada+1
  • カジュアル貨物(旅行者の携帯品等)canada
  • Chapter 98 に分類される特定用途・特例扱い貨物(他に対象Tariff ItemがあってもChapter 98分類であれば除外)canada
  • 2026年7月1日より前に輸入され、自動車(車体/シャシ/部品・付属品)製造用途に使用する貨物osler+1
  • 2026年7月1日より前に輸入され、航空機・地上飛行訓練機・宇宙機(およびそれらの部品)用途に使用する貨物osler+1
  • Tariff item 7308.20.00 の特定の風力タワーで、オンタリオ–マニトバ州境より西側のエネルギープロジェクト向けに設置するものosler+1
  • 施行日に「カナダへ輸送中(in transit)」の貨物tid+1

加えて、国内調達が困難など例外的事情がある場合のremission(減免)申請は、ケースバイケースで検討するとされています。制度の存在自体が重要であり、対象となり得る企業は早めに「国内調達困難性」「経済への影響」等を説明できる資料を準備しておく余地があります。chrobinson+1


4. なぜカナダはここまで踏み込むのか:米国市場の閉鎖と国内市場への振り向け

今回の25%は単発の関税ではなく、カナダ政府が進める鉄鋼政策パッケージの一部です。背景には、米国による高関税・輸入制限の強化を受けて、カナダ市場への貿易迂回を防ぎ、自国の鉄鋼産業向け需要を確保する狙いがあります。youtube​pm+1

大きく見ると、政策のポイントは次の2点に整理できます。

  • 鉄鋼(ミル製品)側では、関税割当(TRQ)を縮小し、割当超過分に最大50%のsurtaxを課す枠組みを強化wtocenter+2
  • それだけでは下流(派生品)で「輸入完成品への置き換え」が進むため、派生品にも25%のグローバルsurtaxを広げるpm+1

首相府の説明によれば、派生品関税は「カナダ国内で生産されている派生品」を起点に設計されており、対象リストは市場環境に応じて更新し得るうえ、初期リストだけでも数十億カナダドル規模の輸入に影響すると見込まれています。これは「一度決まって終わり」の制度ではなく、運用次第で対象が拡張され得る枠組みと理解した方が安全です。newswire+2

また、国境当局(CBSA)による順守(コンプライアンス)強化も同時に打ち出されており、誤ったHS分類や虚偽申告をより厳格に是正する姿勢が示されています。これは、実務的には事後調査リスクの上昇として意識する必要があります。canada+1


5. 企業へのインパクト:利益を削るのは「25%」そのものより“連鎖”

インパクト①:着地コストが一気に25%上がる(しかも全額ベース)
「通関価額の全額×25%」は、見積・契約の設計が甘いとダイレクトに粗利を削ります。特に、DDP(関税込み持込)や実務的に売り手側が関税負担を被りやすいスキームでは、利益を一気に圧迫しかねません。pcb+2

インパクト②:価格交渉が“今すぐ”起きる
施行日が明確なため、カナダ側バイヤーは、高い確率で次のようなアクションを検討します。

  • 価格改定(値上げ受け入れ/値下げ要請の再交渉)
  • 供給条件変更(関税負担者・価格調整条項の見直し)
  • 代替サプライヤー探索(カナダ国内化、FTA域内化、別素材・別仕様へのシフト)chrobinson+2

インパクト③:「適用除外・減免の証憑」が競争力になる
今回の制度は、自動車・航空宇宙用途、in transit、風力タワーの地域限定など、除外条件が比較的具体的に定義されています。条件を満たせる企業にとっては、用途証明や輸送証憑をきちんと揃えることで、25%負担を回避しコスト競争力を維持できる可能性があります。osler+1


6. 明日から使える:ビジネス向け“実務チェックリスト”10

実務対応として、輸出者・輸入者・商社がすぐに着手できる基本ステップを10項目に整理します。

  1. 自社品目をHS10桁レベルまで棚卸しする(カナダ輸入時の分類ベースで整理)。canada
  2. 財務省公表の公式リスト(Tariff Item)と突合し、対象・非対象を一次判定する。orders-in-council.canada+1
  3. 対象の場合、「既存の中国向け・米国向け・鉄鋼TRQ関連など他のsurtaxの対象になっていないか」を確認し、本25%との重複がないか整理する。canada+1
  4. 自動車・航空機・宇宙用途等の用途要件で除外を狙える場合、カナダ側での用途証明フロー(契約記載、エンドユーザー証明、製造工程の裏付け等)を設計する。osler+1
  5. in transit 除外を活用する貨物は、B/Lや船積書類で「施行日時点で輸送中」であることを示せるか事前に点検する。tid+1
  6. 見積りは「製品価格」ではなく通関価額ベースで再試算し、輸送費・保険料等も含めた負担増を洗い出す。pcb+1
  7. 契約書に**関税変動条項(tariff pass-through/price adjustment)**があるか確認し、なければ条項追加を検討する。
  8. Incotermsを再点検し、誰が関税を負担するのか(DDP/DAP/FCA等)を契約書面上も明確にしておく。
  9. 国内調達が困難な場合や特別な事情がある場合、remission申請の可能性を検討し、「代替調達の難しさ」「経済・雇用への影響」等の主張骨子を準備する。chrobinson+1
  10. 対象リストが更新され得ることを前提に、財務省・首相府・CBSAの公表情報を定期モニタリングする運用を社内ルールに組み込む。pm+2

7. 今後の注目点:この制度は“拡張”があり得る

  • 対象リストは「カナダ国内で生産されている派生品」を起点に設計され、今後の市場環境に応じて更新され得るとされています。pm+1
  • 鉄鋼(ミル製品)側ではTRQが動いており、輸入戦略を考える際は「ミル製品のTRQ+TRQ超過50%surtax」と「派生品25%surtax」を一体として見る必要があります。blakes+2
  • カナダは米国の関税政策に強く影響を受ける構造にあり、今後の米加通商交渉の展開次第で、remissionやその他周辺制度の運用が変わる可能性があります。pfcollins+2

まとめ:本質は「カナダ向け完成品の関税リスクが制度化された」こと

今回の本質は、25%という数字そのもの以上に、対象が「鋼材(ミル製品)」ではなく、ボルト・ワイヤ、構造物、プレハブ建築、金属家具といった**派生品(完成品・部材)**へ広がった点にあります。coleintl+2

経営としては「関税が上がった」という一事象ではなく、見積・契約・通関・証憑・調達の一連の業務設計そのものを、「カナダ向けは25%surtax前提の市場になった」と捉え直すイベントと位置付けるのが安全です。canada+1

免責:本稿は公開情報に基づく一般情報であり、個別案件の該当性(HS分類、用途要件、申告・証憑要件、減免可否など)は、必ずカナダ側の通関実務(CBSA運用)および専門家の助言により確認してください。chrobinson+1

  1. https://www.canada.ca/en/department-finance/news/2025/12/list-of-steel-derivative-products-subject-to-25-per-cent-tariffs-effective-december-26-2025.html
  2. https://www.canada.ca/en/department-finance/news/2025/12/government-implements-new-measures-to-protect-canadas-steel-industry.html
  3. https://orders-in-council.canada.ca/attachment.php?attach=47872&lang=en
  4. https://www.chrobinson.com/en-sg/resources/insights-and-advisories/client-advisories/2025q4/12-17-2025-client-advisory-government-canada-announces-tariffs-steel-derivative-product/
  5. https://www.tid.gov.hk/en/tradecircular/2025/ci10702025.html?categoryId=18
  6. https://blog.coleintl.com/tradenews/canada-publishes-list-of-steel-derivative-products-subject-to-25-percent-tariff
  7. https://www.osler.com/en/insights/updates/canada-further-shuts-its-market-to-steel-imports/
  8. https://www.blakes.com/insights/us-canada-tariffs-timeline-of-key-dates-and-documents/
  9. https://web.wtocenter.org.tw/downFiles/13151/419197/00ymjxNd5CXtX0J111118sEykfiCSaW6jraE0HqG0RuAlS11111JdeYIGQgvq1u6d1TKXirDdCilIUGC7cO8Z1jBnf2994hw==
  10. https://www.newswire.ca/news-releases/prime-minister-carney-announces-new-measures-to-protect-and-transform-canada-s-steel-and-lumber-industries-814911145.html
  11. https://www.pwc.com/ca/en/services/tax/publications/tax-insights/canada-tariff-rate-quotas-surtaxes-imports-2025.html
  12. https://www.pm.gc.ca/en/news/news-releases/2025/11/26/prime-minister-carney-announces-new-measures-protect-and-transform
  13. https://www.youtube.com/watch?v=TV6Strj0m88
  14. https://www.pcb.ca/news/ca-release-list-of-steel-derivative-products-subject-to-tariffs-on-dec-26th
  15. https://pfcollins.com/new-25-tariff-assessment-on-steel/
  16. https://www.chrobinson.com/en-us/resources/insights-and-advisories/client-advisories/2025q4/12-17-2025-client-advisory-government-canada-announces-tariffs-steel-derivative-product/
  17. https://info.expeditors.com/newsflash/canada-to-impose-25-tariff-on-steel-derivative-products
  18. https://www.youtube.com/watch?v=9lwd4bmQy5Q
  19. https://assets.kpmg.com/content/dam/kpmg/ca/pdf/tnf/2025/12/ca-importers-temporary-remissions-set-to-end-in-2026.pdf
  20. https://www.willsonintl.com/archives/news/prime-minister-carney-announces-new-measures-to-protect-and-strengthen-canadas-steel-industry

カナダ「鋼材派生品」へ一律25%追加関税が発効──“素材”から“完成品・部材”へ広がる新リスク(2025/12/26施行)


2025年12月26日、カナダは鋼材そのものではなく、鋼材を多用する「鋼材派生品(Steel Derivative Goods)」の一部について、輸入時に一律25%の追加関税(surtax)を課し始めました。 対象は米国や中国など特定国に限られず「全ての国」からの輸入であり、建設・エネルギー案件(風力タワー、橋梁、プレハブ建築ユニット等)のほか、工業用途で広く用いられるワイヤー/チェーン/ファスナー(ねじ・ボルト等)、さらには金属フレーム椅子・金属家具・建物用金物にまで及びます(一部の風力タワーは地域限定の除外あり)。


要点サマリー(実務でまず押さえる4点)

国名税率・内容出所備考
カナダ25%(追加関税 / surtax)Steel Derivative Goods Surtax Order政令スケジュールに列挙された「鋼材派生品」が対象
カナダ25%(課税ベースは通関価額全額)Steel Derivative Goods Surtax OrderCustoms Act 47〜55条に基づく value for duty に対し 25%を課税
カナダ2025年12月26日施行Steel Derivative Goods Surtax Order施行日当日に「輸送中(in transit)」の貨物は適用除外
カナダ例外・猶予あり(自動車・航空宇宙などは 2026/7/1 まで一部除外)Finance Canada 公表リスト既存サーチャージ対象品は原則「二重課税」しない設計

1) 何が変わったのか:今回の追加関税の「設計」

今回の措置は、閣議決定(Order in Council)に基づく Steel Derivative Goods Surtax Order であり、スケジュール(品目リスト)に該当する輸入品に対し、通関価額(value for duty)に対して一律 25% の surtax を課すものです。 ここでいう value for duty は、Customs Act 47〜55条に基づく価額決定ルールに従って算出される通関価額であり、追加関税はその全額を課税ベースとします。

ここで重要なのは次の2点です。

  • 「鋼材含有量」ではなく、製品の通関価額 全額 に 25%を乗せる設計
    → 価格インパクトを過小評価しやすく、DPU/DDP 等の契約条件や見積りを再点検する必要があります。
  • Chapter 99(カナダの特別措置用コード)に付け替えても回避できない構造
    → Chapter 99 のタリフ・アイテムで申告した場合でも、もとの分類がスケジュール掲載のタリフ・アイテムに該当すれば surtax 対象とされます。

2) 対象はどこまで広い?──“完成品・部材”に刺さる品目群

対象は、Finance Canada が公表した「タリフ・アイテム(HS)」指定により決まり、説明文はあくまで参考情報であり、最終的な範囲はタリフ・アイテム自体によって確定します。 代表的な品目を、ビジネスインパクトが出やすい順に整理すると次の通りです。

(A) 建設・インフラ・エネルギー(案件単位で金額が大きい)

  • 構造物・部材(橋梁、塔、ドア/窓枠等):7308.10/20/30/90
  • プレハブ建築(鋼製モジュール含む):9406.20 ほか

(B) “地味に効く”製造業の定番(コスト転嫁が難しい)

  • ストランドワイヤー/ロープ/ケーブル:7312
  • 有刺鉄線・フェンス類、金網・ネット:7313、7314
  • チェーン類:7315
  • くぎ・ねじ・ボルト・ナット・ワッシャー:7317、7318

(C) 家具・建材・部品(完成品側に波及)

  • 金属フレームの椅子:9401.71/79
  • オフィス用金属家具、家具部品:9403.10、9403.99
  • 建物用金物(取付金具等):8302.41.90

注意点として、リストには「プラスチック製建具(3925.20)」のように、一見すると鉄鋼製品に見えない分類も含まれているため、先入観で除外せず、HS ベースで網羅的に洗い出すことが重要です。


3) 例外・猶予(ここを外すと“余計に払う”)

公表されている主な適用除外・猶予は次の通りであり、実務上は用途・期間を裏づける証憑をどこまで整備できるかがカギになります。

  • 既に他のサーチャージ対象の品(例:China Surtax Order 2024、United States Surtax Order (Steel and Aluminum 2025) 等)
    → 原則として「二重課税しない」設計。
  • Chapter 98(特別分類)は対象外
    → Chapter 98 のタリフ・アイテムに分類される貨物は、他のタリフ・アイテムに該当していても surtax を課さない。
  • 自動車(車両・シャシ・部品/付属品)向け用途:2026年7月1日以前の輸入は除外
  • 航空機・宇宙(航空機・地上飛行訓練機・宇宙機等)向け用途:2026年7月1日以前の輸入は除外
  • 特定の風力タワー(7308.20.00):オンタリオ–マニトバ境界以西のエネルギー案件向けは除外
  • 施行日(2025/12/26)時点で「輸送中(in transit)」の貨物は除外

さらに、国内での調達が困難な場合など、例外的事情によりカナダ経済への深刻な悪影響が見込まれるケースでは、関税免除(remission)申請を個別に審査するとされています。 完全な「ゼロ回答」ではなく、救済の可能性を残す制度設計といえます。


4) なぜ今「派生品」なのか:背景は“迂回流入”と内需防衛

カナダ政府は、米国による鉄鋼・アルミ関税や中国などへのサーチャージの影響で、鋼材が第三国・派生品ルートを通じてカナダ市場に流入するリスクを強く意識しており、国内産業保護とグリーン投資推進を目的とした新パッケージの一環として鋼材派生品への 25% 関税を導入しました。 その中には、輸入管理の強化、TRQ 見直し、国境でのコンプライアンス強化など複数の措置が含まれています。

当局側の問題意識として、「鋼材そのもの」への規制だけでは、完成品・部材に形を変えた輸入を十分に抑えられない点が強調されています。 そのため、今回のリストは、構造物・ファスナー・ワイヤー・家具・プレハブ等のいわゆる「下流製品」をピンポイントで対象にした設計になっています。


5) 日本企業(輸出・現法)へのインパクト:どこが痛いか

影響①:見積りが“25%上振れ”しやすい(しかも全額課税)

カナダ向けにねじ・ボルト・金属フレーム椅子・プレハブユニット等を輸出している場合、輸入者側コストを通じて 25% の追加負担がストレートに効いてきます。 契約条件が DDP など輸入関税を輸出側が負担するスキームの場合、日本側が追加コストを吸収せざるを得ないケースも想定されます。

影響②:建設・再エネ案件で「コスト+納期」両面の変動

風力発電や大型インフラ案件のように、対象 HS の部材単価・数量が大きいプロジェクトでは、総コストへの影響が顕著になります。 一方で、特定地域向け風力タワー等の例外もあるため、案件所在地・用途・設置条件を証明できるかどうかが、プロジェクト単位での差別化要素になります。

影響③:取締り強化で「分類・原産地・用途」が監査点に

政府は、カナダ国境サービス庁(CBSA)に専任のコンプライアンス体制を設け、虚偽申告の検知・是正を強化する方針を打ち出しています。 これまでグレーな運用でしのいでいた企業ほど、事後の更正(B2 更正)や追徴課税リスクが高まることが想定されます。


6) すぐやる実務チェックリスト(現場が動きやすい順)

  • 品目の当たりを付ける(HS/タリフ・アイテム照合)
    → 7308/7312/7317/7318/9406 あたりが出てきたら「要注意」としてスケジュールと突き合わせる。
  • 例外該当性(用途・期限・輸送中)を棚卸し
    → 自動車・航空宇宙用途は「2026/7/1 以前の輸入」が条件であり、発注書・製造指図書・用途宣誓書・BOM 等で裏づけが必要。
  • 通関価額(value for duty)を再点検
    → 25%は「価額全体」に乗るため、移転価格ポリシーやロイヤルティなど加算要素の取り扱いの違いが関税負担に直結します。
  • 契約(インコタームズ)・価格条項を確認
    → Duty 負担者・価格改定条項・関税変動条項がない取引は、短期的にトラブルに発展しやすい。
  • 代替調達・仕様変更(ねじ/ワイヤー/家具/プレハブ)を検討
    → 「カナダ国内製」への置き換えを促すインセンティブ設計である点を踏まえ、競合が動き出す前にサプライチェーン再編を検討。
  • 顧客(カナダ輸入者)と「誰が申告・誰が立証」するか決める
    → 例外適用は、最終的に証憑を整理・提出できる当事者が有利になるため、責任分担をあらかじめ明確化。
  • リスト更新のモニタリング運用を作る
    → 政府はリスト更新の可能性を示唆しており、更新頻度が上がるほど属人的チェックでは限界があるため、定期的なモニタリング体制を仕組み化する必要があります。

7) まとめ:今回の本質は「カナダ向け完成品の関税リスクが一段上がった」こと

2025年12月26日以降、カナダは鋼材「派生品」に対し、一律 25% の追加関税を全世界からの輸入品に適用します。 課税ベースは通関価額の全額であるため、見積り・契約・価格転嫁設計が甘いと、利益が一気に圧迫される構造です。

一方で、自動車・航空宇宙向けの時限除外(〜2026/7/1)や in transit 除外、特定風力タワーの地域限定除外、さらには remission の個別申請など、一定の「逃げ道」も用意されています。 実務上の勝負どころは、これらの例外を的確に読み取り、用途・期間・物流条件を示す証憑をどこまで前倒しで整えるかにあります。

※本稿は公開情報に基づく一般的な情報であり、実際の該当性判断(分類・用途・申告方法等)は、カナダ側の通関実務(CBSA 運用)も踏まえ、現地通関業者・専門家と個別にすり合わせてください。

日UAE EPA(CEPA)交渉・第5回会合の「結果」と、ビジネス側が見るべき「次の節目」

(※本稿は公表情報をもとに、交渉論点をビジネス視点で“使える形”に落とし込んだ整理です。交渉テキストや市場アクセスの中身は原則非公開のため、確定情報と見立てを分けて記載します。)


1. 第5回交渉会合で何が起きたのか(確定情報)

外務省の発表によると、日UAE EPA(日本側呼称)交渉の第5回会合は2025年11月4日〜28日にオンライン形式で開催され、両国の首席交渉官(日本側:髙橋克彦大使/UAE側:ジュマ・アルカイト経済省次官補)らが参加しました。

この会合で議論が明示された分野は以下です。

  • 物品貿易
  • 原産地規則
  • サービス貿易
  • 競争政策
  • 政府調達
  • 知的財産
  • 今後の交渉の取り進め方(モダリティ)

そして、次回(第6回)会合の日程は外交ルートで調整することになっています。

ここがポイント:
第5回の公式記述で「政府調達」が入ってきたのは、ビジネス観点ではかなり大きい。関税だけでなく、“ルール・運用”の深部に踏み込む段階に入りつつあるサインと見てよいです。


2. 交渉はいま「どの地点」にいるのか:時系列で見る“進捗感”

日UAE EPA交渉は、2024年9月に交渉開始が決定(MOFA/経産省が同時発表)されました。
その後、会合は以下のペースで進んでいます(公表ベース)。

  • 第1回:2024年11月(東京)
  • 第2回:2025年2月(ドバイ)
  • 第3回:2025年6月(東京)
  • 第4回:2025年8月(オンライン)
  • 第5回:2025年11月(オンライン)

各回の概要を見ると、初期は「物品」「原産地」「サービス」「投資」「税関・貿易円滑化」「知財」など“定番の骨格”を並行で詰め、第3回でデジタル貿易第4回で貿易と持続可能な開発第5回で政府調達というように、章立てが広がっているのが読み取れます。

加えて、日本の外交青書でも、UAEを「エネルギー安全保障上重要な戦略的パートナー」と位置づけたうえで、日UAE EPA交渉開始と第1回開催に言及しています。


3. “論点の深掘り”①:物品貿易は「関税率」より“競争条件の差”が効く

日本企業にとっての現実的インパクト

ジェトロによれば、2023年の日本の対UAE輸出は約1兆4,661億円で主力は輸送用機器、UAEは日本の自動車輸出先として金額で世界7位/台数で世界3位という規模感です。
つまり、日UAE EPAは「資源国との協定」というより、完成車・部品・周辺産業に直接効きうる協定です。

ただしUAEは“そもそも関税が低い”

UAEはGCC共通関税の枠組みで、対外税率は原則5%(例外あり)と整理されています。
このため、関税だけを見て「インパクトは小さい」と判断しがちですが、ビジネスでは次が効きます。

  • 競合国がCEPAで先に関税・手続を改善している場合の“相対的な不利”
    UAEはCEPA締結を加速しており、将来的に103カ国まで拡大し貿易総額の最大95%をカバーする目標を掲げています。
    すでに複数国とCEPAを発効してきた流れもあり、競争条件の“穴”は放置しにくい。
  • 税関・認証・通関運用(非関税領域)のコスト
    UAE向けは「輸出→現地通関→再輸出」も多く、運用コストが積み上がりやすい。関税よりここが効くケースが多い。

4. “論点の深掘り”②:原産地規則は「UAEがハブである」ことが難しさの源泉

第5回でも原産地規則が議題に入っています。
原産地規則(ROO)は、ざっくり言えば「EPAの優遇税率を使える“出自”の判定ルール」です。

UAE案件で原産地が難しい理由

  • 再輸出・加工・保税・フリーゾーンが多い
    UAEは域内物流ハブとして、輸入→保管→再輸出が一般的。ROOを“形式上”満たすだけの加工(軽微な加工)を排除する規定が厳しくなりやすい。
  • グローバル部材の比率が高い(自動車・機械・電機ほど顕著)
    「どこまで第三国部材が許容されるか」「付加価値基準か関税分類変更か」「累積(カムレーション)をどう扱うか」が収益を左右する。

企業側の準備(いまからできる)

  • HSコードとBOM(部材表)を“EPA利用前提”で棚卸し
  • 製造工程のどこを「原産性を作る工程」にするか(日本/第三国/UAE)を設計
  • サプライヤーから原産地証明に必要な情報が取れるかを確認(ここが最大のボトルネックになりがち)

5. “論点の深掘り”③:サービス貿易は「進出のしやすさ」と「人の移動」が肝

第5回でサービス貿易が議題化されています。
UAEは現地拠点・地域統括(RHQ)・物流・金融・プロフェッショナルサービスのニーズが厚い一方、参入形態やライセンス、職種ごとの規制など“実務の壁”が残りやすい市場です。

ビジネスで効く観点は大きく2つ。

  • 市場アクセス(何ができるか/できないか)
    例:拠点形態、出資比率、提供できるサービス範囲、分野別の許認可など。
  • 「人の移動」実務(短期出張・駐在・プロジェクト要員)
    サービス章や関連規定が整備されると、プロジェクト型ビジネス(建設、プラント、IT導入、保守運用、コンサル)が回しやすくなる可能性があります。

6. “論点の深掘り”④:政府調達が入った意味——UAEの大型案件に“正面から”挑む章

第5回の公式概要で「政府調達」が明示されました。
政府調達章が入る協定は、企業側から見ると次の効能が期待されます(※一般論)。

  • 入札情報の透明性(公告、仕様、評価基準)
  • 内外無差別(または一定の待遇)
  • 不服申立て手続(レビュー)
  • 電子調達・標準化

UAEはエネルギー転換・インフラ・先端産業で大型案件が動きやすい国です。ここに調達ルールが入ると、商社・ゼネコン・プラント・IT・エンジニアリングなどの企業にとっては「営業の土台」が変わります。

逆に言うと、政府調達は国内制度・政策目的と直結するため、交渉が難航しやすい“ حساس(センシティブ)”領域でもあります。
ここがテーブルに乗った時点で、交渉は“締結後に効くルール作り”へ比重が移っている可能性が高い。


7. “論点の深掘り”⑤:競争政策・知的財産は「協業・投資」をやりやすくするインフラ

第5回で競争政策と知的財産が議題とされています。
この2つは、関税のように数字で効き目が見えにくい一方で、実務では効きます。

競争政策(独禁・公正競争)

  • 代理店・販売網・ジョイントベンチャーの設計
  • 特定の取引慣行が“後から問題化”するリスク低減
  • 透明性・協力枠組み(当局間協力)があると、紛争時の打ち手が増える

知的財産(IP)

  • ブランド・商標・意匠・特許の保護は、消費財・機械・ソフトウェア・コンテンツなど広範に影響
  • 共同開発・ライセンス・技術移転の交渉がしやすくなる(期待)

8. “横串論点”:デジタル貿易・税関手続・持続可能性は「運用コスト」を左右する

交渉は第3回でデジタル貿易、第4回で持続可能な開発にも触れています。
また、税関手続・貿易円滑化は初期から継続的に議題です。

  • デジタル貿易:データ移転、電子契約、越境EC、ソースコード等(協定次第で影響)
  • 税関・貿易円滑化:AEO、事前教示、迅速通関、書類電子化など
  • 持続可能性:環境・労働・透明性(ESG調達・輸出管理とも接続し得る)

この領域は、単なる輸出入だけでなく、現地運営(拠点・サプライチェーン)コストに直結します。


9. 「次の節目」は何か:第6回会合の先にある“山場”を先読みする

確定している次の節目は、外務省発表のとおり第6回会合の日程調整です。

一方で、交渉実務として多くのEPAで起きる“山場”は、だいたい次です(※一般的な見立て)。

  1. 市場アクセス(関税・サービス)の“オファー”が具体化
  2. 章ごとの文言が固まり、「章のクローズ(実質合意)」が増える
  3. 例外規定や移行期間などを詰めてパッケージ合意
  4. 法務レビュー(リーガルスクラブ)→署名→国内手続

UAE側は、対日CEPAが「advanced stages(進んだ段階)」にある旨を述べています(UAE国営WAM報道)。
ただし、これは政治的メッセージでもあるため、企業側としては「公式に何が確定したか(=日程、論点、章の範囲)」と切り分けて追うのが安全です。


10. 日本企業がいま打てる「具体アクション」チェックリスト

最後に、交渉の進捗を“待つ”のではなく、ビジネス側が先に整えておける項目を整理します。

輸出型(メーカー/商社)

  • 対UAEの重点品目をHSで棚卸し(関税・規制・認証とセットで)
  • 原産地規則を満たすためのBOM・工程情報の収集体制づくり
  • UAEがGCC共通関税(原則5%)であることを踏まえ、関税より通関・在庫・再輸出の運用設計で勝ち筋を作る

進出型(サービス/プロジェクト)

  • 「提供したいサービス」と「必要な許認可・ライセンス」を分解し、ボトルネックを可視化
  • 人員の移動(短期出張・長期駐在・施工要員)の制約を洗い出し、必要なら現地パートナー戦略を再設計

技術・ブランドを扱う企業(IP集約型)

  • UAEでの商標・意匠・特許の“現状”を棚卸し(登録漏れがあると後で高くつく)
  • 共同開発・ライセンス契約のひな形を見直し(準拠法、紛争解決、ノウハウ保護)

公共・準公共案件を狙う企業

  • UAEの調達制度・発注主体・入札ポータルを整理し、案件探索のKPIを持つ
  • 「政府調達章が入る可能性」を前提に、社内の入札コンプラ・証跡管理を整備

まとめ:第5回会合は「関税交渉」から「市場の取り方」を決める交渉へ

第5回会合で明示された「政府調達・競争政策・知財」は、企業の勝ち筋に直結する“深い章”です。
UAEはCEPAを加速度的に広げており、日本企業にとっては「UAE市場」だけでなく、「UAEをハブにした中東・アフリカ・南アジアへの展開」の競争条件にも波及し得ます。

次の公式節目は第6回会合の日程ですが、ビジネスの準備はもう始められます。特に、原産地(ROO)・通関運用・調達参入・IP整備は、協定ができてから動くと間に合わない領域です。


米国アルミ「プレミアム急騰」の正体――232関税50%が生んだ“価格の二重構造”


米国向けにアルミを使う製品(自動車・部品、建材、電線、包装材、機械筐体など)を扱う企業にとって、2025年は「LME(国際指標価格)だけを見ていると、コストを見誤る」年になりました。xserver
理由は、米国の現物プレミアム、とくに Midwest Premium が、232関税の引上げを織り込む形で膨張し、「LMEと現物コストのギャップ」がかつてない水準まで広がったからです。xserver

以下では、①プレミアムとは何か、②232関税50%の政策背景、③プレミアム急騰の要因、④派生品拡大が実務に与える影響、⑤日本企業の打ち手、の順に整理します。


1) 「アルミプレミアム」とは何か:LME+αの“α”

米国のアルミ現物取引では、買い手が支払う価格は一般に
LME(指標価格)+プレミアム(現物上乗せ)
という形で決まります。 このプレミアムには、運賃・保管・金融コスト・需給ひっ迫、さらには税・関税といった要素が織り込まれます。xserver

なかでも重要なのが、**US Aluminum Midwest Premium(米国中西部向けプレミアム)**です。 これは米国内で地金を調達する際の「現物調達コストの温度計」として扱われ、関税率の変更などにより「次回の輸入で在庫を補充する(replacement)際のコスト」が変わると、敏感に反応します。lolipop+1


2) 2025年、232関税は「25%→50%」へ:政策の筋道

国家安全保障を根拠に輸入調整を行う 232 措置は、2018年にアルミ地金等へ 10%を課す形で導入され、その後も対象・水準の見直しが続いてきました。 2025年には、低価格・過剰供給品への依存を抑え、国内産業の稼働率・能力を維持することを狙いとして、アルミ関連の追加関税が再強化されています。relation2012

  • 2025年2月10日:アルミおよび一定の派生品に対し、従来の上乗せ措置を踏まえつつ 25%の追加関税 を課す方針を示す大統領布告が公表。relation2012
  • 2025年6月4日 午前0時1分(米東部時間)以降:アルミおよびアルミ派生品に対する追加関税率を 25%から50%へ引き上げrelation2012
    ロジックとしては、低価格輸入品の流入が国内アルミ産業の競争力・稼働率を損ない、結果として国家安全保障上必要な産業基盤を維持できなくなる、という説明がなされています。relation2012

例外として、英国からの輸入については 25%水準の維持が示されており、米英間の枠組みに基づく特例扱いと位置づけられています。 さらに、一定数量を 232 関税から除外する TRQ(関税割当) の導入が議論されており、今後の運用次第では実効税負担が変動する余地もあります。relation2012

また、6月4日以降の運用として、232 関税 50%の対象については、IEEPA 関税など特定の追加関税との「二重課税(累積)」を避ける方針が示されました。 もっとも、すべての追加関税が自動的に相殺されるわけではないため、「どの措置とどの組合せが排除されるのか」を条文ベースで確認する必要があります。hitodeblog


3) 米国アルミプレミアムはなぜ急騰したのか:3つの要因

要因①:関税50%が“プレミアムに乗る”――置き換えコストの再計算

6月の関税引上げ以降、市場参加者は「在庫を補充する際の輸入分には 50%関税がかかる」という前提で、Midwest Premium を再計算するようになりました。 つまり、関税そのものが LME ではなく「プレミアム側」に乗ることで、現物コストを押し上げる構図です。lolipop

2025年11月時点で、duty-paid Midwest Premium は 88.10 セント/ポンド(約 1,942ドル/トン)と過去最高水準をつけたと報じられています。 同じ局面で LME が 2,850ドル/トン近辺だったため、スポットでの支払総額は 約 4,792ドル/トン(LME 2,850+プレミアム 1,942) に達した計算になります。xserver

ビジネス上の含意は明確です。

  • 「LMEの上昇」ではなく、「LME+プレミアムの上昇」が利益を削る。
  • 見積や長期契約の価格式が LME のみに連動していると、プレミアムの急騰局面で採算が一気に崩れる。

要因②:供給の“偏り”――カナダ依存と政策長期化観測

米国のアルミ輸入は、カナダへの依存度が非常に高い点もプレミアムを押し上げています。 2025年上期のデータでは、米国のアルミ輸入に占めるカナダの比率が約 70% に達したと整理されており、「実質的にカナダ頼み」という構図が強まっています。lolipop+1

さらに、貿易・安全保障をめぐる交渉環境の悪化などから、「追加関税は一時的措置ではなく長期化する」との見方が広がっていることも、プレミアム上昇要因とされています。 市場が「どうせすぐ戻る」と見ているうちはプレミアムも調整しやすいものの、「構造的に高止まりする」との期待(あるいは懸念)が強まると、価格は下がりづらくなります。xserver

要因③:在庫取り崩し+世界的な供給制約

S&P Global は、50%関税導入後の局面で「需要の先行きは不透明な一方、在庫取り崩しと置き換えコスト上昇が重なり、プレミアムが記録的水準まで上昇した」と分析しています。lolipop
同時に、**中国のアルミ生産上限(年間 4,500万トン)**や、中国以外の地域での供給減少が、世界的なタイトな需給環境を生み、米国プレミアムの上昇圧力として波及しているとも指摘されています。xserver

つまり、米国のプレミアム急騰は、

  • 232 関税 50%という「政策要因」と、
  • 在庫・供給制約という「市場要因」
    の両方が絡み合った結果といえます。lolipop+1

4) 見落としがちな「派生品」拡大:地金から完成品へにじむ 232

232 の実務で厄介なのは、地金や半製品(圧延品など)だけでなく、「派生品(derivative products)」 が段階的に追加されている点です。onamae

商務省は、232 関税の対象に派生品を追加するための Inclusions Process を整備し、年数回の申請受付を通じて対象品を拡張できる仕組みを導入しました。 2025年8月18日には、約 400 品目規模(407 カテゴリ)の派生品が新たに 232 関税の対象に追加されたと公表されています。counter-digital+1

派生品の一部では、「製品全体の価格」ではなく、製品中に含まれる鉄・アルミの “含有価値” を基準に課税する方式が明記されています。 そのため、onamae

  • BOM(部品表)
  • 材料ごとの含有量・単価
  • 価格按分のロジック

といった情報の整備・説明が、税関対応上の重要な論点になります。onamae

さらに、Inclusions Process による追加指定は 2026年以降も続く見込みと報じられており、「派生品拡大はすでに完了した話」ではありません。fama.startrise

日本企業にとっての本質的なポイントは、

  • 「完成品を輸出しているだけだから大丈夫」という発想は危険になりつつある。
  • HTS 分類上「派生品」に含まれると判断されれば、製品中のアルミ分に 232 関税が課されうる

という点です。counter-digital+1


5) 日本企業が取るべき実務アクション

A. 見積・契約:価格式を“LME+プレミアム+関税”前提に再設計

  • 見積や長期契約の価格条項が「LME連動」のみになっている場合、
    • Midwest Premium(duty-paid かどうかを含めて)を明示的に組み込む。
    • 232 関税率の変動に応じて価格を見直せる「関税サーチャージ条項」や「価格改定トリガー」を設定する。
      といった再交渉が不可欠です。lolipop+1

B. 品目判定:HTS と Chapter 99 をセットで運用

232 の対象指定は、通常の HTS 番号だけでなく、Chapter 99 の追加コード や対象リストによって管理されます。onamae

  • 自社製品が派生品リストに含まれる余地があるか
  • 今後の Inclusions Process で追加される可能性が高いカテゴリーか

を、HS/HTS ベースで棚卸しし、社内マスタに Chapter 99 の情報を組み込むことが重要です。onamae

C. 原価管理:BOMに“アルミ価値”を紐づける

含有価値課税が適用される場合、

  • アルミの含有量
  • 原材料単価
  • 歩留まり
  • 社内・グループ内の移転価格

といった情報の整合性が、税関や監査対応の論点になります。 BOM 上でアルミ価値を明示し、価格按分ロジックを文章化しておくと、後々の説明負荷を大きく減らせます。onamae

D. 調達戦略:供給国分散と例外枠のモニタリング

カナダ依存が高い現状では、単純な追随調達だけではプレミアム高止まりの影響をもろに受けるリスクがあります。lolipop+1

  • サプライヤーの国別ポートフォリオの見直し
  • 在庫戦略(調達タイミング・在庫水準)の再設計

に加え、英国向け 25%据え置きや TRQ のような 例外枠・緩和措置の動きを定点観測する体制 も必要です。zenken+1


結び:プレミアム急騰は「関税の持続性」を映す鏡

232 関税 50%は、単なる税率アップにとどまりません。

  • 「在庫の置き換えコスト」を通じてプレミアムに転写され、
  • 米国向け現物調達コストを構造的に押し上げる仕組み

として機能しています。 派生品の対象拡大が進むほど、その影響は「素材を買う企業」から「アルミを含む製品を売る企業」まで広がっていきます。counter-digital+2

いま見るべき KPI は、LME ではなく「LME+(duty-paid)Midwest Premium」です。 ここを見落とすと、価格転嫁の遅れがそのまま利益毀損につながりかねません。xserver

なお、本稿は公開情報に基づく一般的な解説であり、個別案件の法務・通関判断については、必ず税関・通関士・通商弁護士等の専門家にご相談ください。relation2012

  1. https://www.xserver.ne.jp/blog/how-to-write-blog-for-beginner/
  2. https://lolipop.jp/media/written-expression/
  3. https://www.relation2012.com/blog/seo/1751/
  4. https://hitodeblog.com/blog-article-element
  5. https://www.onamae.com/column/blog/19/
  6. https://counter-digital.jp/counter-media/article-proofreading/
  7. https://fama.startrise.jp/column/blog-article
  8. https://ai.zenken.co.jp/post/chatgpt-document-proofreading-guide/

IEEPA関税は「清算」されても取り戻せるか?――CIT新判断が示す“清算後救済”の現実味と、企業が今すぐ取るべき対策


2025年に導入されたIEEPA(国際緊急経済権限法)に基づく追加関税をめぐり、「将来、最高裁で違法と判断された場合、支払った関税は返金されるのか?」という点が輸入企業の最大の懸案事項となっています。特に、米国特有の関税清算(Liquidation)制度が、返金請求の大きな壁になると懸念されていました。

この問題に対し、2025年12月15日、米国際貿易裁判所(CIT)が極めて重要な判断を下しました。結論から言えば、「たとえ関税清算が完了した後でも、裁判所命令による再清算(Reliquidation)と返金は可能である」という救済の道筋を明確に示したのです。これは、権利保全のために提訴に踏み切った企業にとって朗報と言えます。

しかし、この判断は「何もしなくても自動で返金される」ことを保証するものではありません。本稿では、この最新判断の核心部分と、企業が返金機会を逃さないために今すぐ整備すべき実務体制を解説します。


1. なぜ「関税清算」が返金の壁とされてきたか

まず、問題の背景を整理します。

  • 関税清算(Liquidation)とは?
    米国では、輸入時に支払う関税は「暫定額」です。その後CBP(税関・国境警備局)が申告内容を審査し、最終的な税額を確定させる手続きを清算と呼びます。清算は通常、輸入日から314日以内に行われます。
  • 清算後の制約
    清算が完了すると、その申告内容に対する不服申立て(Protest)は原則180日以内という厳しい時間制限が課されます。そのため、「IEEPA関税そのものが違法だ」という根源的な争いの場合、最高裁の判断を待つ間に清算と期限が過ぎてしまい、返金の道が閉ざされるのではないか、という強い懸念がありました。

この「手遅れリスク」を回避するため、コストコを含む多くの企業が、事前にCITへ提訴することで“返金請求権の保全”を図ってきました。


2. CIT判断の核心:「清算後も救済の道は残されている」

今回、AGS Company Automotive Solutions社などが原告となった訴訟で、CITは「清算手続きの停止(仮差止め)」を求める原告の訴えを退けました。しかし、その理由は極めてポジティブなものでした。

裁判所は、以下の2点を根拠に「差止めは不要」と判断しました。

  1. 政府の言質: 米国政府自身が「将来、IEEPA関税が違法と確定した場合は、再清算と利息付きの返金に応じる」と法廷で明言していること。
  2. 禁反言の法理: 上記の立場を前提に裁判所が判断した以上、政府が後から「やはり返金できない」と主張することは、禁反言(Judicial Estoppel)の法理によって許されないこと。

要するにCITは、「清算が進んでも、裁判所が再清算を命じて返金させる法的な道筋は確保されている。したがって、原告に“回復不能な損害”は生じない」と結論付けたのです。


3. 企業が今すぐ整えるべき「返金管理体制」チェックリスト

今回の判断は希望の光ですが、実際の返金は自動的には行われません。返金機会を最大化するため、企業は以下の準備を急ぐべきです。

  • A. 返金請求の主体(IOR)を特定する
    返金を請求できるのは、原則として輸入者(Importer of Record = IOR)のみです。商社や物流子会社がIORとなっている場合、誰が主体となって請求を行うのか、早期に整理が必要です。
  • B. 「IEEPA関税トラッカー」を作成し、影響額を可視化する
    以下の情報をエントリー番号(Entry No.)単位で一覧化し、いつでも提出できる状態を維持します。これは、法務判断(提訴の要否)と経理判断(引当金の計上)の両方を迅速化します。
    • 申告番号(Entry No.)
    • IEEPA関税の対象区分と税率
    • 納付関税額
    • 清算予定日(または清算済日)
  • C. 清算期限が迫る案件の対応方針を決める
    清算前の案件であれば、CBPに清算の延長(Extension)を申請する選択肢があります。より確実性を求めるなら、進行中の訴訟へ相乗り(Join)するか、独自に提訴することで権利を保全する動きが現実的です。
  • D. 清算済み案件も諦めない
    今回のCIT判断により、清算後も救済の道があることが示されました。ただし、手続きはより複雑になるため、プロテスト期限(清算後180日)などの期限管理は、通関業者任せにせず自社でも厳格に行うべきです。

結論:「希望」は生まれたが、「準備」なくして果実は得られない

今回のCIT判断は、IEEPA関税を支払ってきた企業にとって、大きな前進です。

  1. 清算が完了しても、裁判所の命令による返金の道が閉ざされないことが示された。
  2. しかし、自動返金は約束されておらず、企業側の主体的な行動(IORの特定、証跡管理、期限管理)がなければ、返金機会を逃すリスクは残る。

経営陣や実務担当者は、「最高裁の判断待ち」という受け身の姿勢ではなく、いつでも返金を請求できる“証跡・期限・体制”を今すぐ構築することが、将来の損失を最小化する上で不可欠です。

※本稿は一般的な情報提供を目的としており、個別案件への法的助言ではありません。実際の対応は、米国通関および国際通商法務に精通した専門家と、具体的な事実関係に基づきご判断ください。

スイス追加関税要素の導入と遡及適用 — 企業実務で本当に効く“読み方”と打ち手


米国は、スイスおよびリヒテンシュタインを対象としていた相互関税(Reciprocal Tariff)を改定し、従来の39%の追加関税を「実質15%」を上限とする新たな枠組みへ移行させることを正式に発表しました[1][2]。最大のポイントは、この新ルールが2025年11月14日に遡及適用されることです[3][4]。結果として、11月14日以降に旧税率(39%など)で納税した貨物について、条件を満たせば払い過ぎた関税の返金(リファンド)が実現します。

1) 何が変わったのか:39%→15%への大幅な負担軽減

今回の通知(米・商務省/USTR連名)の核心は、これまで課されていた高率の相互関税を、MFN税率(一般税率)との合計で「15%」に収まるよう調整する点にあります[5]。

実務上の計算はシンプルです。

  • MFN税率が15%未満の場合: 追加関税(相互関税)= 15% − MFN税率
  • MFN税率が15%以上の場合: 追加関税(相互関税)= 0%(MFN税率のみ課税)

このロジックは実質的に「“MFN税率か15%の高い方”を適用する」という内容になります。これにより、多くの品目で従来の39%の相互関税が撤廃され、15%が新たな上限として機能します。

2) 「遡及適用」の範囲と返金対象

通知は2025年12月10日頃に発表されましたが、HTSUS(米関税率表)の改定は、2025年11月14日 午前0時1分(米東部時間)以降に“消費のために搬入(entered for consumption)”または保税蔵置から“消費のために払い出し(withdrawn for consumption)”された貨物に適用されます[1]。

この遡及措置により、11月14日から新ルール発表日までの間に、旧税率(MFN税率+39%など)で輸入申告・納税した貨物については、新ルール(上限15%)との差額が過大納付となり、返金の対象となります。

3) “15%上限”だけじゃない:品目によっては「相互関税ゼロ」に

さらに重要なのが、PTAAP(Potential Tariff Adjustments for Aligned Partners)に該当する品目は、相互関税の対象外(=MFN税率のみ適用)となる点です[6]。通知の関連AnnexではHTSUSコードのリストが示されており、主な対象カテゴリは以下の通りです。

  • 一部の農産品
  • 米国内で不足する天然資源(unavailable natural resources)
  • 航空機および関連部品
  • ジェネリック医薬品、その原料・成分、化学前駆体 など

企業実務では、「自社品目が ①“合算15%”なのか、②“相互関税ゼロ(MFNのみ)”なのか」をHTSUSレベルで見極めることが、コスト削減効果の大小を分けます。

4) 変わらないものも多い:誤解しやすい注意点

スイス当局(連邦政府ニュース)や専門家のレポートでは、次の点が強調されています[1]。

  • 232条関税は別枠: 鉄鋼・アルミなどに対する232条追加関税は、今回の枠組みとは別に継続されます。
  • 高関税品目への誤解: 元々15%を超える高関税(例:トラック25%)が付いていた品目は、その税率が維持されます(「全てが一律15%になる」わけではありません)。
  • 調査中品目への配慮: 医薬品・半導体など、232条調査が進行中の分野については、追加関税が15%を超えないよう配慮する「意図」が示されています。

5) 企業アクション:遡及返金を“取りこぼさない”ための段取り

遡及適用がある局面で最も重要なのは、迅速な証憑の整理と手続きの設計です。

(1) 対象期間(11/14以降)の輸入データを特定する
Entry Summary(通関申告)単位で、課税額・HSコード・原産国・輸入者(IOR)をリスト化します。

(2) “MFN vs 15%”計算で過大納付額を試算する
MFN税率が低い品目(特に0%品目)に39%が課されていたケースが、最も返金余地が大きくなります。PTAAP Annex該当品はさらにインパクトが大きいです。

(3) 返金手続きの手法を具体的に指示する
返金請求は原則、米国側の輸入者(IOR)が行います。エントリーが未確定(Unliquidated)であれば「Post Summary Correction (PSC)」での訂正・還付が最速です[7]。確定済(Liquidated)の場合はProtest(異議申立て)となるため、米国側通関業者にステータス確認と最適な手続きを至急指示してください。

(4) “暫定措置リスク”を契約に織り込む
この枠組みは2026年3月31日までに最終合意に至らない場合、見直される可能性があるとされています[8]。長納期の取引では、関税変動リスクを織り込んだ価格調整条項を契約に盛り込むことを検討しましょう。

6) 日本企業への示唆:スイス経由サプライチェーンの“原産地”がコストを決める

スイスは医薬・精密機器・時計などの高付加価値品の集積地です。日本企業にとっても、スイスでの最終加工、スイス企業からの部材調達、スイス拠点を介した米国販売など、サプライチェーン上で今回の関税改定が着地コスト(landed cost)を左右します。枠組みには迂回輸出への対策も含まれており、原産地管理の重要性が一層高まっています。

まとめ

今回のニュースは単なる「関税引き下げ」ではなく、企業実務では次の3点に集約されます。

  1. 従来の39%相互関税が「実質15%上限」の差分課税に置き換わった。
  2. 11/14への遡及適用により、PSC等を通じた具体的な返金実務が発生する。
  3. PTAAP該当品は相互関税がゼロになる可能性があり、HSコードの特定精度が損益に直結する。

(注)本稿は公開情報に基づく一般解説です。返金の可否やPSC・Protest等の最適手続は、個別の申告状況・品目・HSコード等で変わるため、必ず米国側通関業者/専門家と個別に確認してください。

引用:
[1] Reduction in US additional tariffs to enter into force retroactively https://www.news.admin.ch/en/newnsb/L6leIAwrwS1PWKnVDYNOY
[2] Reciprocal US tariffs – overview and implications https://www.s-ge.com/en/article/news/2025-e-usa-ct10-reciprocal-tariffs
[3] Switzerland says lower US tariffs to be applied retroactively … https://www.reuters.com/world/europe/switzerland-says-lower-us-tariffs-be-applied-retroactively-november-14-2025-12-10/
[4] Switzerland says US tariff reduction statement published in … https://www.reuters.com/world/europe/lower-us-tariffs-switzerland-take-retroactive-effect-november-14-2025-12-09/
[5] Tariff Adjustments on Imports from Switzerland Retroactive … https://www.strtrade.com/trade-news-resources/str-trade-report/trade-report/december/tariff-adjustments-on-imports-from-switzerland-retroactive-to-nov-15
[6] U.S. Tariffs – Client Updates – GEODIS https://geodis.com/us-en/resources/customs-corner/us-tariffs-client-updates
[7] CSMS # 66336270 – Guidance – Implementation of Tariff- … https://macmap.org/OfflineDocument/USADMIN/Measure_Extraordinary_USA_16.pdf
[8] United States revises tariffs on products from Liechtenstein and … https://kpmg.com/us/en/taxnewsflash/news/2025/12/united-states-revises-tariffs-liechtenstein-switzerland.html

マレーシア原産地証明制度:対米輸出における「MITI一元化」と審査厳格化への転換

マレーシアの貿易実務において、原産地証明(CO)の潮目が大きく変わりました。一言で言えば、

「性善説に基づく“自己申告・商工会議所発給”の時代から、
対米リスク管理を前提とした“MITI直接審査”の時代への回帰」

です。

特に2025年5月から開始された「対米輸出向け非特恵原産地証明(NPCO)のMITI発給一元化」は、米国トランプ政権下の「相互関税(Reciprocal Tariff)」や迂回輸出対策を強く意識した措置です。

本稿では、この制度変更の背景と、日本企業が直面する実務への影響を整理します。


1. これまでのマレーシア:自証化と民間委任の10年

1-1 本来の「二層構造」

マレーシアでは長らく、COの種類によって発給機関が分かれていました。

  • 特恵原産地証明書(PCO):FTA税率適用用。MITI(投資貿易産業省)が主管・認証。
  • 非特恵原産地証明書(NPCO):一般用。MITIから権限を委任された商工会議所・業界団体(MICCI, MCCM等)が発給。

1-2 「緩和」に見えたこれまでの流れ

過去10年は、ASEAN全体で「貿易円滑化」がキーワードでした。

  • ATIGA自己証明制度(AWSC):認定輸出者が自ら原産性を証明。
  • 電子化(ASW):Form Dなどのデータ交換によるペーパーレス化。

この流れの中で、「原産地証明は“紙の審査”から“デジタル・事後確認”へ移行する」という空気が醸成されていたのは事実です。

1-3 水面下での「監査強化」

しかし、2019年の法改正でマレーシア税関はポストクリアランス監査(PCA)の追徴期間を3年から6年に延長するなど、水面下では「原産地=徴税・コンプライアンスの対象」とする準備を着々と進めていました [1][2]。


2. 2025年の転換点:MITIによる対米NPCOの「権限取り戻し」

2-1 対米輸出COは「MITIのみ」へ

2025年5月5日、MITIは以下の重要方針を発表し、翌5月6日より即時適用しました [3][4]。

  1. 対米輸出(US-bound)のNPCOは、MITIが唯一の発給機関となる。
  2. これまでNPCOを発給していた商工会議所・業界団体の対米向け発給権限は停止される(※他国向けの発給権限は維持)。

2-2 背景:トランプ政権下の「24%相互関税」と迂回輸出

この決定の引き金は、米国による対中関税の回避地としてマレーシアが利用される「原産地ロンダリング(Origin Washing)」への懸念です。
現地報道(The Edge等)によれば、米国が提案する「最大24%の相互関税(Reciprocal Tariff)」の交渉において、マレーシア側が「自国の原産地管理は適正である(中国製品の迂回ではない)」ことを証明し、関税適用を除外・軽減させるための信用担保措置としての意味合いが強いとされています [1]。

2-3 実務へのインパクト:「形式」から「実態」へ

これまで商工会議所経由で、比較的簡易な書類審査で取得できていた対米COは、今後MITIによる厳格な審査対象となります。

  • 書類審査の深化: 単なるインボイス確認だけでなく、コスト構造や製造工程の確認が行われる。
  • 監査の連動: MITIとマレーシア税関(RMCD)が連携し、不正なトランシップメント(積み替え)の摘発を強化する [3][5]。

3. 具体的な変更点と厳格化ポイント(実務イメージ)

3-1 「コスト分析(Cost Analysis)」の提出義務化

商工会議所(MICCI)のコメントや現地報道によれば、今後はNPCOであっても、PCO並みの「コスト分析」「製造原価計算書」の提出・保管が求められる可能性が高まっています [1]。
「何を・どこから・いくらで調達し、どう加工したか」を数字で証明できなければ、COは発給されません。

3-2 「単純工程」のリスク増大

以下のようなビジネスモデルは、MITIの審査で「原産性なし」と判断されるリスクが極めて高くなります。

  • 単純な組み立て(Simple Assembly)
  • 輸入・再梱包・ラベリングのみ(Repacking/Labeling)
  • 最小限の加工(Minimal Operation)

これらは「マレーシア原産」とは認められず、対米輸出時に中国製(または他国製)として申告する必要が出てくる可能性があります。

3-3 リードタイムの不確実性

MITIへの申請集中により、初期段階では審査遅延やシステムトラブルが懸念されます。商工会議所も「MITIの業務量増加による遅れ」を懸念材料として挙げています [6]。出荷スケジュールには十分な余裕を持つ必要があります。


4. 日本企業・日系サプライヤーがとるべき対応

4-1 マレーシア拠点の「商流」棚卸し

自社のマレーシア拠点が以下のどのパターンに当てはまるか再確認してください。

パターンリスク度対応策
A. 現地製造(一貫生産)製造工程図、BOM、原価計算書をMITI提出用に整備する。
B. ノックダウン生産・組立付加価値基準(25%~など)を満たすか、詳細な原価計算を行う。
C. 三国間・倉庫在庫販売「マレーシア原産」の主張を取り下げ、真の原産国での申告を検討する。

4-2 「特恵(PCO)」と「非特恵(NPCO)」のダブルスタンダード管理

  • 対ASEAN/日本輸出: 従来通り、FTA(ATIGA/AJCEP等)の自己証明やPCOを活用し、関税削減を狙う(円滑化トレンド)。
  • 対米輸出: MITIの厳格な審査に耐えうるNPCO申請書類(BOM、コスト内訳)を準備する(厳格化トレンド)。

この「二極化」に対応できる社内体制が必要です。

4-3 現地パートナー(通関業者・商社)への丸投げ禁止

「通関業者がうまくやってくれるはず」という認識は危険です。MITIと税関は連携して事後調査(Post Clearance Audit)を行います。

  • CO申請の根拠資料(製造フロー、コスト計算)は自社で保持する。
  • 現地パートナーが「どのようなロジック」で原産地を申告しているか確認する。

5. 結論:サプライチェーンの「原産地説明力」が問われる

マレーシアにおける今回の変更は、単なる手続きの変更ではなく、「米中対立・保護主義下における生き残り戦略」です。マレーシア政府は、自国が「中国製品の抜け穴」と見なされ、米国から包括的な制裁関税を受けることを避けるため、なりふり構わず原産地管理を強化しています。

日本企業としては、「COが取れるか」というテクニカルな視点だけでなく、「自社のサプライチェーンは、米国税関やMITIに対して胸を張って『マレーシア製』と説明できる実態があるか」という本質的な問い直しが求められています。

引用:
[1] The State of the Nation: Spotlight on Certificate of Origins as Malaysia moves to weed out ‘pass-through’ exports https://theedgemalaysia.com/node/754896
[2] MITI to be sole issuer of non-preferential certificates of origin to US … https://international.astroawani.com/malaysia-news/miti-be-sole-issuer-nonpreferential-certificates-origin-us-may-6-2025-519458
[3] [PDF] miti will be the sole issuer of non-preferential certificates of origin for https://www.miti.gov.my/miti/resources/Media%20Release/%5BFINAL2%5D_MITI_Press_Statement_MITI_to_Tighten_Controls_on_Issuance_of_Certificate_of_Origin_for_US_Exports_2025-05-05.pdf
[4] Malaysia centralises export certification to US in new Anti-Transshipment measure https://www.thevibes.com/articles/news/107815/malaysia-centralises-export-certification-to-us-in-new-anti-transshipment-measure
[5] MITI WILL BE THE SOLE ISSUER OF NON … https://ambercourier.com/miti-will-be-the-sole-issuer-of-non-preferential-certificates-of-origin-for-exports-to-the-united-states-from-6-may-2025/
[6] MICCI backs Miti’s appointment as sole issuer of NPCO for US … https://www.thestar.com.my/business/business-news/2025/05/06/micci-backs-miti039s-appointment-as-sole-issuer-of-npco-for-us-bound-exports
[7] Non-Preferential Certificate of Origin (NPCO) https://www.miti.gov.my/index.php/pages/view/npco
[8] Malaysia Tightens Certificate of Origin Requirement Amid … https://chinascope.org/archives/37539
[9] MP urges govt to take over certificate of origin issuance from … https://theedgemalaysia.com/node/753964
[10] MITI’S ANNOUNCEMENT ON NPCO FOR EXPORTS TO THE US 63 … https://www.mpma.org.my/circulars-and-announcements/2024-circulars/miti-s-announcement-on-npco-for-exports-to-the-us-63-2025
[11] Preferential Certificate of Origin (PCO) https://www.miti.gov.my/index.php/pages/view/3911
[12] MICCI BACKS MITI’S APPOINTMENT AS SOLE ISSUER OF NPCO FOR US-BOUND EXPORTS https://web11.bernama.com/en/news.php?id=2420349
[13] Malaysia Tightens Certificate Of Origin Rules For US-Bound Exports … https://www.businesstoday.com.my/2025/05/05/malaysia-tightens-certificate-of-origin-rules-for-us-bound-exports-to-curb-transshipment-abuse/
[14] How to Apply for a Certificate of Country of Origin (COO) in Malaysia? https://www.richardweechambers.com/how-to-apply-for-a-certificate-of-country-of-origin-coo-in-malaysia/
[15] Miti to be sole issuer of certificates of origin for US-bound shipmentswww.thestar.com.my › news › nation › 2025/05/05 › miti-to-be-sole-issuer… https://www.thestar.com.my/news/nation/2025/05/05/miti-to-be-sole-issuer-of-non-preferential-certificates-of-origin-for-us-bound-shipments
[16] Ministry of Investment, Trade and Industry https://www.miti.gov.my/index.php/announcements/view/875
[17] MICCI Backs MITI’s Appointment As Sole Issuer Of NPCO For US-bound Exports https://www.bernama.com/en/news.php?id=2420349
[18] Ministry taking over certificates of origin issuance to … – NST Online https://www.nst.com.my/business/economy/2025/05/1211768/ministry-taking-over-certificates-origin-issuance-curb-origin
[19] Breaking News! Important Update for Malaysian Exporters to the … https://www.instagram.com/p/DJYflqDtzZk/
[20] Malaysia halts trade groups from issuing certificates for US exports … https://www.malaymail.com/news/malaysia/2025/05/05/malaysia-halts-trade-groups-from-issuing-certificates-for-us-exports-amid-tariff-concerns/175662

EU「少額小包への一律関税」導入が示す転換点──2026年7月、越境ECの“勝ち筋”が変わる

EUは2026年7月1日から、150ユーロ未満の少額小包(主に越境EC経由)に対して、品目カテゴリごとに固定で3ユーロの関税を課すことで政治合意に達した。 これは、恒久制度が整うまでの暫定的な措置と位置づけられているが、越境ECモデルにとっての意味合いは小さくない。euagenda+2
一言でいえば、「少額×分散×直送」で成立していた国際通販モデルが、制度設計レベルから見直される転換点になっている。maintax+1


忙しい方向け:まず押さえる3行

  • 何が起きる?:EU域外からEU消費者に届く150ユーロ未満の小口貨物に、品目カテゴリ(tariff heading)ごと固定3ユーロの関税(暫定)がかかる。reuters+1
  • なぜ今?:少額小包が爆発的に増え、EU側が「公正競争・安全・詐欺・環境」の観点から現行枠組みの限界を明示した。taxation-customs.europa+2
  • 企業は何をする?:価格競争だけでなく、物流設計・商品構成・税務/通関データ品質で勝負が決まる局面に入り、準備スピードがそのまま競争力差になる。eunews+1

1. 何が決まったのか:制度の「読み違い」を潰す

2026年7月1日:固定3ユーロの暫定関税

EU理事会は、2026年7月1日以降、150ユーロ未満の小口貨物に対し、固定3ユーロの関税を適用することで合意したと発表している。politis+2
ここで重要なのは、単に「3ユーロが一律で上乗せされる」ではなく、「どの単位で3ユーロがかかるのか」という設計である。reuters

理事会の説明や報道によれば、この固定3ユーロは、小包(consignment)に含まれる品目カテゴリ、すなわち関税分類(tariff heading/6桁HS水準)ごとに課される想定とされる。euagenda+1

  • 同じカテゴリの商品だけで構成された小包なら、固定3ユーロで収まるケースが多い。
  • 異なる関税分類の商品を詰め合わせると、分類数に応じて3ユーロが積み上がる可能性がある。

したがって、この設計は商品構成(SKU設計)と物流設計(同梱ルール)に直接ひもづく論点になる。europeannewsroom+1

対象は「IOSS登録の域外販売者」が関与するフローが中心

固定関税の主な適用対象は、EUのIOSS(Import One-Stop Shop)に登録している非EU販売者・プラットフォームを通じてEUに直送される小包であると説明されている。eunews+1
各種解説では、こうした直送越境ECの小包が、EU域外からEUに届く少額小包のおよそ9割超を占めるとされており、結果として「越境EC由来の少額小包の大半(約93%規模)が今回の措置の主対象」というイメージになる。europarl.europa+1

「取扱手数料(handling fee)」とは別モノ

近い文脈で議論されている2ユーロ水準の「取扱手数料(handling fee)」案と、今回の固定3ユーロ関税は別枠の制度であることを、理事会・委員会の双方が明確に区別している。europarl.europa+2
取扱手数料については、通関現場の処理コスト回収などを狙いとする案が提示され、欧州議会も「WTO整合性」「負担主体(プラットフォーム負担)」などの観点から検討を求めているが、導入時期や最終仕様は現時点では確定しておらず“議論継続中”の段階にある。france24+1


2. なぜ今なのか:EUが「制度疲労」を認めた瞬間

低額小包は「物流」ではなく「社会インフラ負荷」になった

欧州委員会のコミュニケーションを引用した欧州議会の資料では、150ユーロ未満の低額貨物は2024年に約46億個(1日あたり約1,200万個)に達し、2023年は23億個、2022年は14億個と、ほぼ指数的に増加していると整理されている。longbridge+1
同資料では、2024年時点で150ユーロ未満の越境EC貨物の約91%が中国発とされ、特定の国・プラットフォームへの依存が急速に進んだ点も指摘されている。reuters+1

これだけのボリュームになると、税関・規制当局は「すべてを物理的に検査する」のではなく、「リスク判定のためのデータをどう集約・分析するか」が中心課題になり、EUがデータハブ構想やプラットフォーム責任強化に舵を切る理由がここにある。maintax+1

“過少申告”がビジネスモデルとして組み込まれた

EU理事会は、現行ルールのもとで、少額小包の最大約65%が輸入関税やVATを回避する目的で過少評価されているとの推計に言及している。europarl.europa+1
まじめに価値申告をしている事業者ほど不利になる構造であり、EUが今回の措置を「公正競争」と「消費者保護」の観点から正当化しているのは、このゆがみを是正する意図が強いからだと理解できる。euagenda+1


3. 「転換点」の本質:3つのゲームチェンジ

転換点①:少額免税(de minimis)依存の価格戦略が崩れる

EUはこれまで、150ユーロ未満の貨物には関税免除(いわゆるde minimis)を認める一方、VATは別途課税・申告対象とする仕組みを採ってきた。taxation-customs.europa
今回の3ユーロ固定関税は暫定措置だが、欧州委員会と加盟国は、2026年に150ユーロの関税免除閾値自体を撤廃し、中長期的には通常の関税体系に移行させる方針を明示している。maintax+2

転換点②:勝負所が「調達原価」から「通関データ×物流設計」へ

EU税関改革は、EU Customs Data Hub を中核に、越境ECを含む通関プロセスを“データ駆動”で管理する構想となっている。taxation-customs.europa
この環境では、HS/関税分類の精度、商品属性データの整備レベル、IOSSを含む税務・通関プロセス、SKU構成と同梱ルールといった要素が、そのまま粗利と在庫回転率を左右する経営変数になる。eunews+1

転換点③:プラットフォームが“販売チャネル”から“準税関主体”に近づく

欧州委員会の税関改革資料では、オンラインプラットフォームを「関税・VAT義務の履行を確実にする主要アクター」と位置づけており、消費者や運送会社に寄っていた責任を、プラットフォームにシフトする方向性が示されている。europarl.europa+1
マーケットプレイス依存度が高い企業ほど、プラットフォーム側のコンプライアンス要件、データ提出仕様、追加コストの転嫁ルールが業績に直結しやすくなり、「どのプラットフォームとどう組むか」が戦略論点になる。europarl.europa+1


4. 日本企業への実務インパクト:論点は「EU向けD2C/越境ECをやっているか」

影響が大きい企業

  • EU向けに単価の低い商品をD2Cで大量出荷している。
  • 「送料無料」「低額での“ちょい足し”」をフロントに出したビジネスモデル。
  • アソート比率が高く、1注文内に複数カテゴリ商品を混在させがち(=関税分類が増えやすい)。

固定3ユーロは、商品単価が低いほど実質税率が跳ね上がりやすく、とりわけ「関税分類ごと」の設計は詰め合わせ販売へのインパクトが大きい。reuters+1

影響が相対的に小さい企業

  • そもそもEU向けビジネスがB2B中心(まとまったロットで輸出し、従来から関税と通関を織り込んでいる)。
  • 高単価帯で、関税が粗利構造に与える影響が限定的。
  • EU域内の在庫(倉庫・代理店)から出荷しており、B2Cは域内販売が中心(ただし輸入時の関税設計は引き続き最適化が必要)。

こうした企業でも、今後の閾値廃止とデータ要件強化を前提に、輸入時の関税評価・分類やプラットフォームとのデータ連携の見直しは必要になる。eunews+1


5. いま経営としてやるべきこと:チェックリスト(実務寄り)

2026年7月1日までには時間があるように見えて、SKU再設計・システム改修・価格改定を同時に進めるにはタイトなスケジュールである。reuters+1

  1. 注文データを「関税分類の数」で棚卸しする
  • EU向け注文のうち、150ユーロ未満の比率はどの程度か。
  • 1注文あたり、何種類の関税分類(tariff heading)が混在しているか。
  • 低単価SKUほど、3ユーロ×分類数の追加コストで採算割れしないか。

ここは経理・ロジス・EC運営の連携が不可欠であり、分類データは現場、採算判断は経理、制度解釈は貿易・税務がそれぞれ担うことになる。reuters+1

  1. 「同梱ルール」を売り方(バンドル)まで含めて再設計
  • “ついで買い”セットが、結果として関税分類数を増やしていないか。
  • カート設計(レコメンド)が、複数分類の混在を誘発していないか。
  • セット商品を可能な範囲で「同一分類中心」に寄せられないか。

関税分類の判断・申告は専門性が高いため、通関業者・税務専門家と連携し、誤分類や過少申告を避けつつSKU設計を見直すことが前提となる。euperspectives+1

  1. IOSS/VAT運用と「データ品質」をKPI化する
    IOSSは、150ユーロ以下の輸入B2C取引に関するVAT申告・納付を簡素化する仕組みとして既に運用されている。vatai+1
    今後はここに関税計算・リスク分析用データが重なり、EU Customs Data Hubを通じて当局側のデータ活用が進むため、商品属性(材質・用途・原産地など)を通関に使える粒度で持てているか、マーケットプレイス/3PL/配送会社に渡すデータ仕様を誰が管理しているか、といった点を社内KPIとして可視化する必要がある。eunews+1
  2. “取扱手数料”を織り込んだ複線シミュレーション
    欧州委員会と欧州議会では、3ユーロ関税とは別に、少額小包に対する取扱手数料(例:2ユーロ案)が検討されているが、導入時期・設計は未確定である。europarl.europa+2
    そのため、
  • 固定関税のみの場合、
  • 固定関税+取扱手数料が追加される場合、
  • 2028年前後に恒久制度へ移行した後の関税水準・計算方法の変化、

といった複数シナリオで粗利・価格政策を事前試算しておくと、制度確定時の意思決定スピードを高められる。reuters+2


6. まとめ:これは“関税3ユーロ”の話ではない

固定3ユーロは、個々の取引レベルでは「数百円程度」のニュースに見えるかもしれない。euperspectives+1
しかし本質は、EUが越境ECを「放任」から「統治」へ移行させる過程の第一歩であり、2026年の暫定関税と2028年前後のデータハブ本格稼働の間に、プラットフォーム責任・データ品質・同梱設計が競争力の中核へと組み込まれていくという構図にある。longbridge+1

EU向けビジネスを持つ企業にとっては、「税率が少し上がる」という見方ではなく、「勝ち方の前提が変わる」局面として、設計と実装を前倒しで進めることが重要になる。europeannewsroom+1

  1. https://www.reuters.com/world/china/eu-impose-3-euro-duty-small-e-commerce-parcels-july-2026-2025-12-12/
  2. https://euagenda.eu/news/906861
  3. https://taxation-customs.ec.europa.eu/news/e-commerce-150-eur-customs-duty-exemption-threshold-be-removed-2026-2025-11-13_en
  4. https://www.europarl.europa.eu/topics/en/article/20250708STO29516/eu-targets-low-value-imports-via-e-commerce-platforms
  5. https://www.eunews.it/en/2025/12/12/from-1-july-e3-duties-on-parcels-under-e150-arriving-from-non-eu-countries/
  6. https://en.politis.com.cy/globe/globe-europe/974185/eu-imposes-eur3-duty-on-small-parcels-under-eur150-ending-duty-free-imports
  7. https://europeannewsroom.com/from-1-july-next-year-the-eu-will-introduce-a-customs-duty-of-three-euros-on-orders-via-e-commerce-websites/
  8. https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20250704IPR29453/managing-the-influx-of-substandard-goods-from-non-eu-web-shops
  9. https://longbridge.com/en/news/266579872
  10. https://maintax.org/news/e150-customs-duty-exemption-threshold-to-be-removed-as-of-2026/
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  12. https://www.france24.com/en/live-news/20251212-eu-agrees-three-euro-small-parcel-tax-to-tackle-china-flood
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  15. https://www.x7trade.com/blog/eu-to-remove-150-duty-free-threshold-by-2026
  16. https://europeannewsroom.com/small-chinese-parcels-entering-the-eu-will-be-taxed-3-euros-from-july-2026/
  17. https://www.avalara.com/blog/en/europe/2025/11/eu-end-150-customs-duty-exemption-2026.html
  18. https://euperspectives.eu/2025/12/eu-to-introduce-e3-duty-on-small-online-orders-from-july-2026/
  19. https://www.floship.com/blog/heads-up-the-eu-is-abolishing-the-e150-duty-free-threshold-in-2026/
  20. https://www.forbes.com/sites/aleksandrabal/2025/11/17/eu-moves-to-end-150-customs-duty-exemption-for-low-value-imports/

中南米と南アジアで進む通商再編の要点(深掘り):企業の勝ち筋は「近さ×ルール×脱炭素」


※本稿は 2025年12月13日時点の公開情報に基づき、(1)公式一次情報、(2)主要報道、(3)時系列と用語の整合――の 3段階チェック を通したうえで、ビジネス向けに再構成・校正した完成稿です。reuters+1


いま起きていることを一言で

世界の貿易は「自由化が進む一直線の時代」から、「地政学・産業政策・環境規制で条件が変わる“分岐の時代”」に移ったと整理できる。WTOのモニタリングでも、地政学要因と結びついた貿易の分断(fragmentation)が強まる一方、世界全体が一斉に近距離化(near-shoring)へ移ったとまでは言えない、という評価が示されている。policy.trade.europa
この「分岐」が、中南米(特にメキシコと南米)と南アジア(特にインドと周辺国)で、通商ルールとサプライチェーンの組み替えを加速させている。gov+1


今日の結論(忙しい人向け)

  • 中南米は「北米統合のメキシコ」と「EU接近が進む南米」に二極化しつつある。USMCA(米・墨・加)を軸に、“北米向けの最適地”としてメキシコの重要性が上がる一方、対中・対アジアの扱いが政策論点になっている。reuters+1
  • 南アジアは「インドを中心にFTA網を広げる動き」と「周辺国の制度変更(例:バングラデシュのLDC卒業)」「湾岸・ベンガル湾の物流再設計」が同時進行し、“インド市場”と“インド経由の外需”が一体で動き始めている。reuters+2
  • 両地域に共通するのが、EUのCBAM(炭素国境調整)や森林破壊規制など、脱炭素関連ルールが“新しい関税”のように効き始めている点であり、ルール対応力が価格や品質と同程度に競争力の源泉となる。reuters+1

第1部:中南米——「メキシコ中心の北米統合」と「南米のEU接近」

  1. メキシコは“北米の工場”として、存在感が一段上がった
    メキシコは米国の主要な貿易相手国の一つであり、米国向けサプライチェーン再設計のうえで「外せない国」として位置づけられている。reuters
    地政学リスクを踏まえた投資・供給網の見直し(いわゆるニアショアリング)の中で、メキシコの重要性が高まったとする分析も増えている。reuters
  2. 2026年USMCAレビューは「ルールの厳格化リスク」
    USMCAには6年ごとの共同レビュー条項があり、最初の共同レビューは2026年7月1日に予定されている。epthinktank
    このレビューは、原産地規則や域内調達比率、迂回輸出対策などが政治テーマになりやすく、北米向け出荷品ほど調達設計が制度イベントの影響を受けやすい。epthinktank
  3. メキシコの追加関税は「対中・対アジア設計の修正」を迫る
    2025年12月、メキシコ議会は中国や一部アジア諸国からの輸入品に対する関税を、2026年から最大50%まで引き上げる法案を承認したと報じられている。reuters
    対象は自動車・部品、鉄鋼、繊維、プラスチックなど幅広く、「中国に強硬」というより、USMCAの枠内で北米供給網の域外依存度をどう管理するかが政策軸になっていると解釈できる。reuters
  4. ロジスティクス投資が「勝者」を分ける:港湾拡張は前兆
    通商再編は、協定や関税だけでなく港・鉄道・国境インフラにも表れる。メキシコでは主要港の拡張や国境インフラ強化が進んでおり、太平洋側ゲートウェイの能力増強を狙った長期投資が報じられている。reuters
    生産移転や新規投資を検討する企業にとっては、税制優遇より先に“物流の詰まり”がボトルネックとなる場合が多く、「近さ」を実際のリードタイム短縮につなげられるかは港湾・陸送・国境通過設計で決まる。reuters
  5. 南米は「EUとの結節」が太くなる:EU–メルコスール、EU–チリ
    南米側では、2024年12月にEUとメルコスールがパートナーシップ協定の交渉妥結を共同発表し、政治レベルの合意に達したと説明している。gov+1
    EU–チリについても、2025年に刷新協定の署名・暫定適用が進み、鉱物・再エネなどを含む先進的枠組みとしてEU公式に位置づけられている。policy.trade.europa
  6. 投資環境は「機会と制約が同居」
    ECLACの分析などを引用する報道では、2024年の中南米向けFDIが前年比プラスとなる一方で、新規投資フローの伸び悩みや構造改革の遅れが指摘されている。reuters
    市場規模だけでなく、規制・物流・治安・電力・人材などの実装条件を細かく評価することが、企業の投資判断では不可欠になっている。reuters

第2部:南アジア——「インドのFTA拡張」と「周辺国の制度転換」

  1. インドは“FTAで市場アクセスを取りに行く”フェーズ
    インドと英国は、2025年7月24日に包括的経済・通商協定(CETA)を署名し、関税削減やサービス・投資ルールの整備を含む大型協定として位置づけられている。jcp.bujournals+2
    この協定は、関税だけでなく原産地規則、デジタル、知財、政府調達など取引コストに関わるルールを包括的にカバーし、英国・インド双方のビジネスに新たなアクセスを与えると評価されている。jcp.bujournals+1
  2. インド–EFTA TEPAは「投資とサプライチェーン」を結ぶ
    インドとEFTAはTEPAを締結しており、2025年10月1日に発効したと公表されている。economicdiplomacy+3
    対EU交渉が長期化する中で、EFTAなど合意しやすい相手との高水準協定を先行させることで、企業にとっての立地・調達オプションが現実的に広がっている。india-briefing
  3. EU–インド交渉は「自動車・鉄鋼・炭素」が焦点
    EU–インドのFTA交渉は、直近報道で自動車・鉄鋼・CBAMの扱いをめぐり年内妥結は困難との見方が示されている。ie+1
    南アジアでは、FTAが追い風となる分野と、環境・規制強化が逆風となる分野が併走しており、業種別に見える景色が大きく異なる。ie+1
  4. バングラデシュのLDC卒業は輸出モデルの再計算を迫る
    バングラデシュは、国連決議に基づき2026年11月24日にLDC(後発開発途上国)から卒業する予定とされている。un+2
    LDC卒業はポジティブな節目である一方、関税優遇・原産地証明・輸出コストなどの条件が変わるため、特にアパレルなどで「バングラデシュ製=関税面で有利」という前提を再計算する必要が出てくる。nypm.mofa+1
  5. ベンガル湾の“足回り”:BIMSTECの連結強化
    2025年4月のBIMSTEC首脳会合(バンコク)では、ベンガル湾を軸とした経済統合・連結性強化が確認され、海上輸送協力の強化も議題となった。policy.trade.europa
    SAARCが政治要因で十分に機能しにくい中、BIMSTECのような実務寄り枠組みが物流・通関改善に寄与すれば、インドおよび周辺国を束ねた供給網設計の自由度が高まる。policy.trade.europa

第3部:両地域に共通する「新・通商コスト」——脱炭素とデューデリジェンス

  1. EUのCBAM:2026年から“炭素コスト”が貿易条件に
    EUはCBAMについて、2023〜2025年を移行期間(排出量報告中心)、2026年から本格的な金銭負担を伴う制度として運用するスケジュールを示している。policy.trade.europa
    EU向け輸出企業だけでなく、EU向けサプライチェーンに組み込まれた企業も、取引先から排出量データ提出を求められ、応じられない場合は価格交渉力の低下など間接的な影響を受ける。policy.trade.europa
  2. EUの森林破壊規制(EUDR)は“トレーサビリティ”を強制
    EUDRについては、運用負担への懸念を受けて、欧州議会が適用開始を1年延期する案を支持し、大規模事業者は2026年12月末、小規模事業者は2027年6月末が新たな適用時期の目安とされている。europarl.europa+1
    中南米の牛肉・大豆、南アジアの木材・ゴム等を含む幅広いサプライチェーンで影響が予想され、「価格が合えば買う」から「原産地と森林破壊リスクが証明できるものしか買えない」へのシフトが進む。reuters

第4部:日本企業の実務アクション——「二つのハブ+ルール対応」を設計する

アクション1:市場別に「最終組立地」と「域内調達」を分けて設計する

  • 北米向け:USMCAレビューやメキシコの対中・対アジア関税引き上げを前提に、原産地規則・域内比率と部材調達先を再点検する。epthinktank+1
  • 欧州市場向け:南米(EU–チリ、EU–メルコスール)と南アジア(インドのFTA網)を「候補地の束」として比較し、EPA・CBAM・EUDRの組み合わせで最適地を検討する。gov+2

アクション2:「環境データ」と「原産地」を、コストではなく競争力として先に作る

CBAMやEUDRは、「報告や証明ができる企業だけが参加できる市場」を広げる方向に動いている。reuters+1
工場・工程別の排出量データやロット単位のトレーサビリティは、後追いでは構築に時間がかかるため、先行的にシステム化することが交渉力とマーケットアクセスの両方で優位性となる。reuters+1

アクション3:2026年の制度イベントを前提に“契約と在庫”を組む

  • 2026年USMCA共同レビュー(北米向け)。epthinktank
  • 2026年CBAM本格化(EU向け)。policy.trade.europa
  • 2026年11月24日のバングラデシュLDC卒業(南アジア調達)。un+1

これらはサプライチェーン設計だけでなく、価格改定条項、データ提供義務、監査権限など契約条件の見直しとも直結する。nypm.mofa+1


すぐ使えるチェックリスト(社内打ち合わせ用)

  • 北米向け製品のBOMを、原産地・HS分類・USMCA域内調達比率の3軸で棚卸ししたか。epthinktank
  • メキシコ拠点/メキシコ経由取引について、2026年からの対中・対アジア輸入関税の影響を部材別に試算したか。reuters
  • EU向け(またはEU向けサプライヤー向け)の取引で、CBAM対応として排出量データ提出体制を構築しているか。policy.trade.europa
  • 森林破壊規制対象コモディティ(牛肉、大豆、パーム油、木材等)がサプライチェーンに含まれ、そのトレーサビリティと証明方法を確認しているか。reuters
  • 南アジア調達について、バングラデシュLDC卒業後の関税優遇縮小を織り込んだ中期コスト比較を行ったか。un+1

おわりに:通商再編は「国の話」ではなく「企業の設計課題」

中南米と南アジアは、どちらも成長ポテンシャルが高い一方で、通商ルールと環境規制の変化が速い市場である。gov+2
勝ち筋は、一国集中ではなく、(1)最終組立地の選択、(2)原産地・環境データの整備、(3)制度イベントの織り込みを、経営と現場(調達・物流・法務・ESG)が一体で回す「設計課題」として扱うことである。gov+3

※本稿は一般的な情報提供であり、個別案件の法務・税務・通関判断は、必ず専門家と協議のうえ決定してください。

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ソースを確認

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  2. https://www.india-briefing.com/news/india-efta-tepa-2025-trade-benefits-tariffs-investment-40110.html/
  3. https://www.reuters.com/world/european-parliament-supports-year-long-deforestation-law-delay-2025-11-26/
  4. https://www.reuters.com/business/retail-consumer/mexicos-senate-approves-tariff-hikes-chinese-other-asian-imports-2025-12-11/
  5. https://www.gov.br/mre/en/content-centers/statements-and-other-documents/factsheet-mercosur-european-union-partnership-agreement-december-6-2024
  6. https://epthinktank.eu/2024/12/20/ratification-scenarios-for-the-eu%E2%80%91mercosur-agreement/
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  8. https://policy.trade.ec.europa.eu/eu-trade-relationships-country-and-region/countries-and-regions/mercosur/eu-mercosur-agreement_en
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  33. https://en.prothomalo.com/bangladesh/n7jd2lb058
  34. https://www.globaltimes.cn/page/202512/1350203.shtml
  35. https://bbf.digital/bangladeshs-ldc-graduation-2026-or-delay-to-2032
  36. https://www.facebook.com/Reuters/posts/mexicos-senate-approves-tariff-hikes-on-chinese-other-asian-importsclick-the-lin/1411625314161530/
  37. https://economictimes.com/news/economy/foreign-trade/mexico-approves-tariff-hikes-on-imports-from-china-india-and-other-asian-countries/articleshow/125900687.cms
  38. https://www.aist.org/report-mexico%E2%80%99s-senate-approves-tariff-hikes-on-china,-other-asian-countries
  39. https://policy.trade.ec.europa.eu/eu-trade-relationships-country-and-region/countries-and-regions/mercosur/eu-mercosur-agreement/text-agreement_en
  40. https://mexiconewsdaily.com/news/china-mexico-50-tariffs/