FTA-BPOセミナー013 「FTA業務でのAI活用:可能性と限界」

FTA-BPOセミナー013 「FTA業務でのAI活用:可能性と限界」の日時が決まりました。


昨今、AI活用が叫ばれており、FTA業務もその例外ではありません。原産地証明、HSコードなど適用領域は多くありますが、その一方でAIを使う事による問題も生じています。

どういう点を考えるべきなのかを、ロジスティックが作ったAIモデルを使っていただき、皆さんと経験を交えてお話ししていきます。

■■ 講演者 ■■
株式会社ロジスティック 代表取締役 嶋 正和 氏

■■ 開催日時 ■■
2025年11月13日(木) 14:00~15:00

■■ 開催場所 ■■
Webのみでの開催(Teams利用予定)

■■ セミナー関連情報 ■■

AIを活用したHS Code Finder

セミナーへのご参加は、実際にHSコードを活用する企業に限定させていただきます。
お申し込みの後、セミナー当日午前中にご参加頂く方にリンクをお送りいたします。

■■ 申込み ■■
こちらからお申し込み下さい。

米国の対サブサハラ・アフリカ無税特恵制度「AGOA(African Growth and Opportunity Act、アフリカ成長機会法)

1. AGOAの現状と最新動向

AGOAとは
「9月末失効」は、米国の対サブサハラ・アフリカ無税特恵制度「AGOA(African Growth and Opportunity Act、アフリカ成長機会法)」を指します。現行法の失効期限は2025年9月30日で、米税関国境警備局(CBP)の公式ページにも「直近の再授権期限は2025年9月30日まで」と明記されています。

延長の見通し
2025年9月30日時点で、議会による延長法案は成立していません。ただし、米政権は1年間の延長を支持する方針を示しており、超党派の支持もあるものの、成立時期は不透明です。一方で、ホワイトハウスの対応が遅いとする報道も出ています。

追加関税措置の影響
2025年4月以降、米国は自動車および部品に追加25%の関税を課すなど、広範な関税措置を実施しています。このため、AGOAによる特恵が残っていても、追加関税によって実質的な優遇効果が相殺される状況が生じています(特に南アフリカの自動車輸出)。関連する大統領布告および省庁ガイダンスは既に公表されています。


2. AGOA適格国(2025年時点)

米通商代表部(USTR)の公式リスト(2025年版)に基づく適格国は以下の32か国です(※ルワンダは「衣料特恵が2018年7月31日より停止中」との注記あり)。

適格国一覧(アルファベット順)
アンゴラ、ベナン、ボツワナ、カーボベルデ、チャド、コモロ、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、コートジボワール、ジブチ、エスワティニ、ガンビア、ガーナ、ギニアビサウ、ケニア、レソト、リベリア、マダガスカル、マラウイ、モーリタニア、モーリシャス、モザンビーク、ナミビア、ナイジェリア、ルワンダ(衣料特恵停止中)、サントメ・プリンシペ、セネガル、シエラレオネ、南アフリカ、タンザニア、トーゴ、ザンビア

参考
ブルキナファソ、エチオピア、ウガンダ等は2025年時点で非適格となっています。適格国リストは毎年見直されます。


3. 打撃が想定される国と産業

AGOA制度下での**非石油製品輸入の主力は「自動車(完成車)」と「アパレル」**です。2023年の主な内訳は、自動車が19億ドル、アパレルが11億ドルでした。アパレルの主要供給国はケニア、マダガスカル、レソト非石油製品全体では南アフリカが最大です。その他、加工カカオ製品(ガーナ、コートジボワール)、柑橘類(南アフリカ)、フェロアロイ、銅関連製品(ザンビア等)も主要品目です。

以下、AGOA失効(無税特恵の消滅)と米国の追加関税措置が重なることで打撃が大きいと想定される国と産業を影響度の高い順に示します。

南アフリカ:自動車(完成車・部品)、柑橘類

  • 根拠:南アフリカは非石油製品で最大のAGOA輸出国であり、完成車が輸出の柱です。2024年の南アフリカ自動車輸出はAGOA貿易の64%を占めるとの業界統計があります。2025年7月以降、米国の追加25%関税が発動され、対米車両輸出が急減しています。AGOA失効により、乗用車はMFN(最恵国待遇)税率2.5%(小型トラックは25%)に戻り、さらに追加25%が上乗せされる複合的なショックを受けます。

ケニア:アパレル(輸出加工区の縫製中心)

  • 根拠:AGOA制度下のケニアはアパレルが輸出の約9割を占めます。2024年のアパレル対米輸出は**過去最高(約606億ケニアシリング)**を記録しました。失効により、**HS分類61/62(衣料)のMFN税率は概ね16〜32%となり、2025年夏の実効平均税率は26.4%**まで上昇するとの分析があります。また、第三国生地規定の停止も大きな痛手となります。

レソト:アパレル

  • 根拠:レソトはAGOAを梃子に米国向け縫製輸出を中核産業としており、2024年の輸出額は2億3,730万ドルでした。2025年春の米国追加関税で既に打撃を受けており、AGOA失効によりさらに悪化し、雇用(約3万人規模と報道)に直撃すると予想されます。

マダガスカル:アパレル

  • 根拠:AGOA制度下の**アパレル産業が最大の雇用源(直接・間接で40万人超)**となっています。失効により衣料関税が急上昇し、第三国生地規定の停止が大きなボトルネックとなります。

モーリシャス/エスワティニ:アパレル

  • 根拠:両国ともAGOA制度下で縫製産業を拡大してきました。米国国際貿易委員会(USITC)や各国プロファイルにおいて、対米衣料輸出が主力とされています。失効により関税が復活します。

ガーナ/コートジボワール:加工カカオ製品

  • 根拠カカオパウダー、カカオペースト等がAGOA制度下の主要非石油製品です。失効により、これら加工品のMFN税率(品目により数%)が復活し、付加価値化のインセンティブが弱まります

ザンビア/コンゴ民主共和国:銅および関連製品

  • 根拠銅および銅製品が主要輸出品目です。失効によりMFN税率に復帰し、利益率が縮小します。

ナミビア:牛肉ほか(影響は限定的)

  • 根拠:牛肉の対米輸出は解禁されましたが、実績は少量にとどまっています。失効の影響は相対的に小さいと見られます。

注記
エチオピア等は既に非適格となっているため、今回の失効による追加的な打撃は限定的です(ただし、既にAGOA停止により繊維縫製産業が縮小した経緯があります)。


4. 実務上の重要ポイント(チェックリスト)

関税率の上昇

  • 衣料品:MFN税率は16〜32%帯です。2025年は米国の追加措置も加わり、**実効平均税率が26.4%**まで上昇するとの分析があります。価格転嫁のリスクが大きくなります。
  • 自動車:MFN税率は**乗用車2.5%、小型トラック25%**が基本です。**2025年4月以降は追加25%**が上乗せされ(乗用車で合計27.5%、トラックで合計50%相当)、大きな負担増となります。

第三国生地規定(Third-Country Fabric)

32か国中少なくとも21か国が適用対象で、AGOA失効と同時にこの規定が無効化されます。アフリカ域外(中国、トルコ等)の生地を使用した縫製品が原産地要件を満たせなくなります

割当(アパレルSME)とビザ/通関手続き

2024年10月1日〜2025年9月30日のアパレル割当(約17億5,800万SME)は本日で終了します。HS分類9819でのAGOA主張やビザ番号の提示は失効後は不可となり、以降は通常(MFN)分類で申告する必要があります。

「輸送中」貨物の扱い

原則として、米国への輸入・申告時点で制度適用の可否が判定されます。延長法が遡及適用を明記しない限り、自動的に特恵が復活することはありません。AGOAでは遡及適用の前例がありますが(2004年の改正時)、都度、法律とCBP通達次第です。最新の**CBP CSMS(税関自動化システム)**や連邦官報、実務アラートを必ず確認してください。

代替オプション/今後の制度

  • 短期延長:政権は1年間の延長を支持との報道がありますが、成立時期や遡及適用の有無は不透明です。
  • 二国間交渉ケニアは年内に米国との包括的合意を目指すと発言しており、AGOA失効の橋渡しとなる可能性があります。
  • GSP(一般特恵制度):長期失効中であり、復活しても衣料品は原則として対象外のため、AGOAの代替にはなりません。
  • サプライチェーンの再設計:EU/英国向けのEPAやGSP、アフリカ域内のAfCFTA(アフリカ大陸自由貿易圏)への販路転換を検討する必要があります。

ASEANに加盟予定の東ティモールについて

A. 東ティモールの概要

実務メモ:現時点(2025年9月)で、対東ティモール向け日本産品の輸入時は上記5%+2.5%が原則。一方、東ティモール原産品の対日輸入は、日本のLDC特恵(特別特恵)対象で多くが無税になり得ます(Form A等の要件充足が前提)。 Ministry of Foreign Affairs of Japan+2Japan Customs+2


B. ASEANへの参加の経緯(時系列の要点)

  • 2022年11月:ASEAN首脳会議で**「原則承認」(11番目の加盟国として)。オブザーバーとして各会合に出席。 2023年に「完全加盟ロードマップ」**をまとめる方針。 ASEAN
  • 2023年5月ロードマップ採択(第42回首脳会議)。実装進捗報告を注視。 ASEAN+1
  • 2025年
    • 3月:ASEAN事務局とADBが**能力強化プログラム第2弾(CBP 2.0)**開始。ロードマップの「優先合意群」への対応を加速。 ASEAN+2ASEAN+2
    • 7月第58回外相会議(AMM)で、完全加盟に向けた支持再確認・ASEAN事務局内の東ティモール・ユニット稼働等を明記。 ASEAN
    • 直近の見通し2025年10月・クアラルンプール正式加盟の儀式・最終化と報道。 CNA

ポイント正式加盟の発効は、署名・批准・寄託等の国内手続の完了を経て効力発生(“式典=即時発効”とは限らない)。ただ、外相会議やASEAN公式リリースからは最終段階に入っていることが読み取れます。 ASEAN


C. ASEAN加入で起こるビジネス上の変化

1) 関税(ATIGA)を中心に

  • 域内関税の基本像:ASEANのATIGA域内関税の大幅撤廃を目的。先行加盟6か国は99.65%の品目で関税撤廃済み。新規加盟国も段階的スケジュール(センシティブ例外を含む)で最終的にゼロ%に近づくのが通例。東ティモールも自国の譲許表(削減工程)を策定・公表していく運び。 ASEAN+1
  • 東ティモールの現行MFNとの関係:今は**MFN5%(一律)**だが、**ATIGA発効後は「ASEAN原産品」に限り段階的に低下→原則0%**へ。非ASEAN原産(例:日本原産)はATIGAの対象外Timor-Leste Customs Authority+1
  • 日本から東ティモールへの輸出
    • 短期:ASEAN正式加盟直後は、日本原産にはATIGAの特恵なし。当面は**MFN5%+売上税2.5%**が目安。 Timor-Leste Customs Authority
    • 中期:東ティモールがAJCEP(日本-ASEAN包括的経済連携)に追加加入(別途手続)すれば、日・東ティモール間に協定特恵が広がる余地。現時点で日本政府も加盟支援の意向を表明。 Ministry of Foreign Affairs of Japan+1
    • 補足(WTO/ITA)情報通信機器などITA品目2027/2030年までにMFN無税へ(原産地を問わず)。電気電子系の対東ティモール輸出は個別HSでゼロ化時期を要確認。 World Trade Organization
  • 東ティモールから日本への輸出
    • **日本のLDC特恵(特別特恵)**により、多くの品目で無税(Form A等の原産性証明が前提)。当面の優遇として実務的に最も使いやすい。 Ministry of Foreign Affairs of Japan+1
  • ASEAN内サプライチェーン活用
    • 加入後は、ATIGAの原産地規則(一般にRVC40%やCTH等)を満たすASEAN原産として組み立てれば、東ティモール向け域内ゼロ関税が狙える(譲許表に依存)。e-Form Dや**自己申告(AWSC)**の活用が実務の肝。 ASEAN+1

2) 当面の優遇・支援/ハーモナイズ(制度面)

  • 能力強化(IAI/JAIF・CBP 2.0):ASEANのIAI(格差是正)、日本のJAIFにより、東ティモール官庁の制度整備・人材育成を重点支援2025年3月に第2期プログラム始動。これにより移行期の“緩やかな適用”や運用安定化が期待できる。 ASEAN+1
  • 関税・通関の整合
    • AHTN(8桁):ASEAN共通の**品目表(AHTN 2022)**を採用へ。HSとの整合が取りやすくなり、品目分類のブレが減る。 ASEAN+1
    • ASW/e-Form DASEAN Single Window国家シングルウィンドウを接続し、ATIGAのe-Form Dを電子交換。紙のCO依存が低下し、通関の可視性・迅速化につながる。 ASEAN+2ASEAN+2
    • ACTS(域内トランジット):域内単一担保・単一申告で陸送トランジットを簡素化。将来的に東ティモールが参加すればロジコスト低減に寄与。 acts.asean.org+1
  • 投資・サービス
    • ACIA(投資保護・内外無差別の枠組み)とATISA(サービスのネガティブリストベース化)へ段階的に編入。参入透明性・保護が向上。 ASEAN+1
    • MNP協定(ビジネス人材の一時入国)で、ビジネス訪問者・企業内転勤等の扱いが整理され、人の流れがスムーズに。 Centre for International Law

まとめ(ハーモナイズの道筋)
AHTN採用 → ASW接続(e-Form D/AWSC) → ATIGA譲許表の履行 → ACIA/ATISA/MNPの国内整備 →(必要に応じて)ACTS参加という順で、**制度面の“ASEAN化”**が進む見込みです。 WTO Regional Trade Agreements+4ASEAN+4ASEAN+4


D. 日本企業の実務アクション(すぐできること)

1) HSコード単位の影響洗い出し

  • 対東ティモール輸出入で使うHS8桁(AHTN想定)を棚卸。現行MFN(5%)+売上税2.5%、WTO/ITAのゼロ化時期(2027/2030)、将来のATIGA譲許(域内ゼロ化)可能性をコード別にマッピング。 Timor-Leste Customs Authority+2Trade Information Portal+2

2) 原産地戦略の見直し

  • ATIGAのRVC40%/CTHを満たすASEAN内生産・加工の設計(発効後にe-Form Dで享受)。日本からの完成品直送は当面MFNのまま、AJCEP追加加入の時期をモニター。 ASEAN+2Enterprise Singapore+2

3) 通関電子化の準備

  • e-Form D/AWSCの運用実務、ASW接続国の受入状況(相手税関の受信・照合プロセス)を理解。社内/通関業者とデータ項目・運用手順を詰めておく。 Singapore Customs

4) 調達・販売の“当面の優遇”活用

  • 対日輸入(東ティモール原産)はLDC特恵で無税が広い。コーヒー等の一次産品だけでなく軽工業品の育成輸入の芽も検討。 Ministry of Foreign Affairs of Japan

5) 制度整備の進捗を定点観測

  • 正式加盟の最終化(2025年10月クアラルンプール)、ASEAN・東ティモール政府の**「優先合意群」実装**、投資・サービスのネガティブリスト公表等を四半期ベースで確認。 CNA+1

留意点(不確実性)

  • 正式加盟の効力発生日ATIGAの個別譲許表(削減カレンダー)は、署名・批准・官報告示を経て確定します。実務適用は法令公布・関税令改正の確認が必須です(ASEANも「優先合意群」整備を継続中)。 ASEAN

付録:ミニ早見表

テーマ“いま”加入後に起きること(概念)
関税(対TL輸入)MFN一律5%+売上税2.5%(物品税あり)ATIGAに基づきASEAN原産は段階的に**0%**へ(譲許表次第) Timor-Leste Customs Authority+1
日本→TL(日本原産)当面はMFN(5%+2.5%)AJCEPへの東ティモール加入が成立すれば協定特恵(時期未定) Ministry of Foreign Affairs of Japan
TL→日本(TL原産)LDC特別特恵広く無税(Form A等)継続(TLがLDCである限り) Ministry of Foreign Affairs of Japan
電機・ICT多くがMFN2.5%WTO/ITA2027/2030までにMFN0%(対象HS限定) World Trade Organization
通関・証明紙CO中心ASW/e-Form D/AWSCで電子化・迅速化 ASEAN+1
品目表(自国表)AHTN 2022へ整合(HS8桁統一) ASEAN
投資・サービス個別法制ACIA/ATISA/MNPの枠組み適用で透明性・保護向上 ASEAN+1

出典の要所(抜粋):

インドネシアEU CEPA合意内容

エグゼクティブサマリー

EU-インドネシアCEPA(包括的経済連携協定)は2025年9月23日に交渉妥結し、併せて投資保護協定(IPA)も最終化されました 。今後は法的精査・翻訳→署名→双方の承認・批准手続きを経て発効します 。

関税撤廃は品目数ベースで98%超、価値ベースでほぼ100%に達します 。発効時点で約80%が即時撤廃され、5年後には対EU・対インドネシア貿易の96%まで段階的に撤廃されます 。自動車・機械・化学等のEU製品は段階的撤廃の恩恵を受け、インドネシアのパーム油・繊維・履物なども市場アクセスが向上します 。

原産地規則は自己申告(self-certification)を採用し、中小企業でも使いやすい設計となっています 。通関円滑化はWTO貿易円滑化協定(TFA)を上回るTFA+の内容です 。

技術的貿易障壁(TBT)・自動車付属書では、UNECE 1958規則に基づくEU型式認証の受入れ等により再試験の重複を削減します(最遅2033年までの移行規定) 。

**貿易と持続可能な発展(TSD)**章は法的拘束力・紛争解決メカニズムにより執行され、パーム油プロトコルで持続可能なパーム関連の対話・協力・貿易円滑化の仕組みを新設します 。

発効時期は双方の国内手続完了後となり、インドネシアは2027年1月の実施を目標としています 。

主要変更点(章別要点)

関税(物品貿易)

撤廃カバレッジ: 品目の98%超(価値ベースでほぼ100%)。即時80%→5年で96%の貿易が自由化 。

EU→インドネシアの主な撤廃例:

  • 自動車(最大50%、多くは5年で撤廃)
  • 機械・電機(多くは即時、残り5年)
  • 医薬品(多くは即時、残り3年)
  • 化学(多くは即時、残り5年)

インドネシア→EU: 多くの関税を撤廃・大幅削減。パーム油、繊維・履物などの主要輸出品にメリット 。

原産地規則

**自己申告(self-certification)**を基本とし、ビジネスフレンドリーな文書化システム。税関当局間の行政協力による検認システムを整備 。

通関・貿易円滑化

TFAの実績を統合しつつTFA+へ発展。透明性向上、品目分類・評価の明確化、手続きの公表、税関当局間の情報連携(相互行政支援プロトコル)などにより迅速・確実な通関を促進 。

SPS(衛生植物検疫)

WTO-SPS協定の再確認に加え、緊急時対応、情報共有、公式管理・認証、国境検査の効率化等を強化 。

技術的貿易障壁(TBT)・自動車付属書

認証の相互受入れ: EUの認定機関による試験・証明の受入れ(電機・機械等)
規制透明性: 60日のパブリックコメント期間+発効まで6ヶ月の猶予期間を設定
自動車付属書: UNECE 1958規則への整合化により、EU型式認証を追加試験なしで受入れ。インドネシアのUNECE1958協定加入、又は2033年までの段階的受入れ措置 。

デジタル貿易

予見可能で公正なデジタル環境を整備。電子契約・電子インボイス・ペーパーレス化、中小企業支援、相互運用可能なサイバー標準等を促進 。

政府調達

透明・公正・無差別な手続原則を明記。入札アクセスの予見可能性が向上 。

知的財産権

著作権、商標、意匠、地理的表示、特許、営業秘密、品種等の包括的な保護・執行枠組みを整備。EU221品目、インドネシア72品目の地理的表示を直接保護 。

エネルギー・原材料

許認可の透明化、再生可能エネルギー分野の現地含有要件緩和、送配電網への非差別アクセス等により投資・サプライチェーンを安定化。ESG・責任ある企業行動(RBC)の協力も明記 。

貿易と持続可能な発展(TSD)・パーム油プロトコル

ILO中核条約・パリ協定等を基礎とする法的拘束力のある執行メカニズム。森林・生物多様性・IUU漁業対策を包含。
パーム油プロトコル: 規制動向の対話・持続可能な生産の協力・パーム関連貿易の円滑化を図る専用枠組み 。

投資保護協定(IPA)

不当取扱い・収用・司法救済の拒否等から投資を保護しつつ、規制権限を維持。最新型の投資紛争解決制度を3年以内の別途交渉で追加予定 。

実施タイムライン

交渉妥結: 2025年9月23日(CEPA・IPA)
今後の手続: 法的精査・多言語翻訳 → EU理事会での署名・締結提案 → 署名 → 欧州議会の同意 → インドネシア側批准 → 発効
発効見通し: インドネシアは2027年1月実施を目標としているが、正式には批准完了が前提 。

ATIGA改訂の内容

エグゼクティブサマリー

ATIGAアップグレードは、ASEAN域内の物品貿易をデジタル・持続可能社会に対応させる包括的な近代化改訂です 。2025年5月に交渉が実質妥結し、「ATIGA改正第二議定書」として2025年10月26-28日の第47回ASEANサミット(マレーシア・クアラルンプール)で署名予定です 。発効は各国の国内手続完了後となります 。

改訂の柱は、非関税措置の透明性向上原産地規則の簡素化通関のデジタル化・ペーパーレス化AEO・事前教示等のTFA+要素SPS/TBT強化(GRP導入含む)、および環境・循環経済やMSME支援等の新分野の包含です 。

交渉ステータスとタイムライン

交渉妥結: 2025年5月25日のAECC(ASEAN経済共同体理事会)会合でATIGAアップグレード交渉の妥結が正式確認されました 。

署名予定: 第二議定書は2025年10月26-28日の第47回ASEANサミットで署名予定です 。マレーシアが議長国として開催します 。

発効見通し: 署名後、各国で批准・国内実装手続きを経て発効します。具体的な発効条件・移行期間は議定書テキスト及び各国通達で確定されるため、企業は官報・税関通達の継続的モニタリングが必要です 。

改訂の主要内容

関税・市場アクセス/非関税措置

現在のATIGAは既に98.6%の品目で関税撤廃を達成しているため、今後の焦点は非関税障壁の解消にあります 。改訂では、定量規制の不実施確認、輸入ライセンス・輸出規制・輸出補助金の規律強化、通知・透明性要件、是正メカニズムの整備を図ります 。

原産地規則の近代化

**「シンプル・ビジネスフレンドリー」**を基本原則として、PSR(付加価値基準・関税分類変更基準・加工工程基準の組合せ)、累積活用、証明手続きの明確化を進めます 。特に、e-Form D/ASWの活用拡大、原産地申告制度、検認・免除閾値・記録保存義務の整備により、事務負担・リードタイム削減が期待されます 。

通関・貿易円滑化の強化

WTO貿易円滑化協定(TFA)を上回る水準(TFA+)を目指し、自動化・標準化・簡素化事前教示制度(品目分類・評価・原産地規則)、AEO制度ペーパーレス化、エクスプレス貨物、ASW/ACTS高度化を柱とする包括的拡充を行います 。

SPS・TBT・GRP強化

SPS(衛生植物検疫措置): WTO-SPS協定の再確認に加え、同等性認定の迅速化、国際基準活用、意思決定情報共有、国内手続公表、技術協議メカニズムを強化します 。

TBT・GRP(良好規制慣行): WTO-TBT協定のTBT+実装、国際規格使用・相互承認、GRP原則適用、ACCQ(ASEAN基準・品質協議会)連携を推進します 。

新分野の導入

環境・持続可能性: 多国間環境協定履行確認、各国規制主権保持、循環経済促進を明記します 。

MSME支援: 中小零細企業の市場アクセス・情報・デジタル化支援を制度化します 。

企業への影響と対応準備

重要な変化点

非関税措置への対応: 通関・検査・規格・検疫手続きのコスト・時間短縮が期待される一方、透明性・通知要件の遵守強化が求められます 。

原産地規則の高度化: ASW/e-Form D・原産地申告・記録保存要件整備によりリードタイム短縮が期待されますが、サプライチェーン情報のトレーサビリティがより重要になります 。

準備チェックリスト

制度対応:

  • 2025年10月署名後の官報・通達監視体制構築
  • 社内原産地判定SOP及び記録保存規程のATIGA改訂対応更新

サプライチェーン管理:

  • PSRデータ整備(部材別原産・非原産区分、RVC計算、累積活用方法)
  • e-Form D/ASW利用拡大及び自己申告要件確認

貿易円滑化:

  • 事前教示活用計画作成及びAEO取得・維持の費用対効果評価
  • ペーパーレス化対応(権限管理・監査ログ整備)

品質・環境管理:

  • SPS/TBT手続変更点の製品カテゴリー別棚卸
  • 循環経済・環境データ(再生材比率等)管理システム構築

今後の展望

第47回ASEANサミットでの署名により、ASEAN域内貿易の新たな段階が始まります 。企業は署名後に公表される議定書正文及び各国実施通達を注視し、段階的実装に備える必要があります 。特に、デジタル化・持続可能性・サプライチェーン強靭化といった今後のトレンドに対応した貿易実務への移行が重要となります 。

ベラ・バラッサの経済統合5段階:FTA/EPA実務担当者向けガイド

ベラ・バラッサの経済統合5段階:FTA/EPA実務担当者向けガイド

趣旨
段階が上がるほど、域内の自由化が深まり、共通ルール・共通機関・政策協調が増えるのが本質。関税メリットだけでなく、通関の簡素化、規格・認証、人材・資本移動、競争法・補助金規律まで影響が広がります。


1. 自由貿易協定(FTA/広義EPAを含む) / Free Trade Area

要点
加盟国間で原則として関税(と多くの数量制限)を撤廃。ただし対外関税は各国別のため、原産地規則(ROO)で迂回輸入を防止。サービス・投資・知財・調達等まで含む包括協定を日本ではEPAと呼ぶことが多い(バラッサの段階とは別軸)。

代表例

  • USMCA(旧NAFTA)
  • CPTPP
  • RCEP
  • 日EU・EPA
  • ATIGA(通称AFTA:ASEAN域内物品)

実務ポイント(チェックリスト)

  • 対象HS・特恵税率・発効日・移行スケジュール
  • **原産地判定(CTC/VA/特定工程)累積(cumulation)**の可否
  • 原産地証明方式(第三者発給/自己申告/登録輸出者)と保存義務
  • サプライヤー宣誓・BOMトレース体制
  • 複数協定の併用最適化(実効税率×通しやすさ)

2. 関税同盟 / Customs Union

要点
FTAに加え共通対外関税(CET)を採用。域内は自由流通(free circulation)の概念で扱われ、域内相互の売買にROOは通常不要。ただし自由流通であることの証明(Union goodsのステータス)が求められる場合あり。対第三国とのFTA活用では引き続きROO管理が必要。

代表例

  • EU関税同盟
  • SACU(南部アフリカ関税同盟)
  • メルコスール(MERCOSUR)(関税同盟志向だが例外多め)
  • EU–トルコ関税同盟工業品中心多くの農産品は対象外

実務ポイント

  • 域内販売:自由流通化ステータスの確認(通関簡素化・ROO不要)
  • 輸入段階:CET適用でMFN差の追跡負担を低減
  • 第三国向け特恵利用:別途ROO管理が存続
  • 税関手続・分類・評価の共通化対応

3. 共同市場 / Common Market

要点
関税同盟に財(物)・サービス・資本・労働の自由移動を追加。規格・認証・ライセンス等の非関税障壁の撤廃や相互承認が進む。

代表例

  • EU単一市場(Single Market)
  • EEA(EU加盟国+ノルウェー/アイスランド/リヒテンシュタイン)
  • CARICOM CSME
  • EAC共同市場

実務ポイント

  • 人材配置・越境サービス提供・資本移動の許認可簡素化を活用
  • 規格・適合性評価の相互承認で重複試験・認証を削減
  • データ移転・金融パスポート等の横断規制の有無を確認

4. 経済同盟(経済連合) / Economic Union

要点
共同市場に加え、競争政策・通商政策・規制政策の共通化・協調。場合により通貨統合(単一通貨・中央銀行)超国家的機関が立法・執行を担う。

代表例

  • 欧州連合(EU)(単一市場+共通政策、ユーロ圏は通貨統合)
  • EAEU(ユーラシア経済同盟)

実務ポイント

  • 競争法・補助金規律・公共調達などの域内共通ルールに適合
  • 通貨統合域では為替リスク・決済手続が単純化
  • 環境・デジタル・サステナ規制の同時適用に備え、SCM全体を再設計

5. 完全なる経済統合 / Complete Economic Integration

要点
経済同盟を越え、通貨・財政・租税・社会保障まで実質統一し、主権移譲が高度。域内は単一の経済体として機能。バラッサの理論上の到達点で、現実の実例は国家連邦レベルに近い。

代表例(イメージ)

  • 一国内市場(例:米国・カナダの国内市場)に見られる統合度合いが参照像。
  • EUも銀行同盟・財政統合が進めば一層近づく可能性。

実務ポイント

  • 税制・補助金・労働・社会保険がほぼ単一制度となり、拠点・人事・税務の意思決定は国内移転に近い設計へ。

つまずきやすい論点

  • 関税同盟=どこから入れても同じ?
    おおむね正しいが、原産地問題が“消える”のは域内相互取引に限る。対第三国の特恵活用やAD/CVDでは原産地・出荷地・HS適用の論点が残る。
  • 共同市場=完全統合ではない
    人・サービス・資本の自由移動があっても、税制・財政は各国別であることが多い。
  • 名称と実態はズレ得る
    メルコスールのように関税同盟志向でも例外・非関税障壁が残存する場合がある。協定文+運用通達で要確認。
  • EPAの広がりは“段階”と直交
    関税がゼロでも、デジタル・環境・労働等の規制対応コストが無視できないケースが増加。

小さな意思決定フロー

  1. 関税メリットの入口特定:対象HS×仕向/調達で使える協定→特恵税率・発効・移行表
  2. 原産地到達の試算:PSR型(CTC/VA/特定工程)・累積・主要原料の域内化
  3. 証明方式と内部統制:証明様式/自己申告・保存年限・誤記対応・宣誓の年次更新
  4. コスト対効果:関税差額×数量 −(証明・BOM維持・監査対応コスト)
  5. 上位段階の制度活用:関税同盟・共同市場なら規格相互承認/人材・資金の自由を前提に上市スピード最適化

まとめ

  • 5段階は、関税→対外関税共通化→要素移動の自由→共通政策→完全統合の順で深化。
  • FTA/EPA担当は、(1)関税×原産地、(2)税関手続、(3)規格・認証、(4)人材・資本移動、(5)競争法・補助金規律の“層”で評価すると、恩恵とリスクを取りこぼしません。

初心者向け:日本の主要 FTA/EPA における RVC 計算方式(Build-Up/Build-Down)の選択可否

日本の主要 FTA/EPA における RVC 計算方式(Build-Up/Build-Down)の選択可否

結論

  • 両方式を選択可:CPTPP、RCEP、日印 CEPA、日チリ EPA、日モンゴル EPA
  • ビルドダウンのみ(または EU 型 MaxNOM=実質ビルドダウン):日 EU・日 英 EPA、AJCEP、多くの ASEAN 二国間 EPA(タイ・マレーシア・インドネシア・フィリピン・ベトナム)、日豪 JAEPA、日ペルー、日スイス、日メキシコ
     PSR(品目別規則)が CTC のみ等で RVC 自体を許容しない品目がある。最終判断は必ず PSR を確認すること。

1) 両方式(Build-Up/Build-Down)を選択可

協定該当条文・注記閾値・母数補足
CPTPP第 3.5 条Build-Down:(FOB − VNM)/FOB Build-Up:VOM/FOB 自動車に Net Cost
RCEP第 3.5 条同上(FOB ベース、FOB 不明時の代替規定あり)
日印 CEPA第 28 条(a) Build-Down: (FOB − VNM)/FOB (b) Build-Up: (VOM + 直接労務費等)/FOB
日チリ EPA第 30 条双方式の QVC 式を採用(閾値 40% 等、品目で差異)
日モンゴル EPA第 3 章 付属書運用手続例で両式明示(FOB 基準)

2) ビルドダウンのみ(EU 型 MaxNOM を含む)

協定該当条文・注記使用可方式備考
日 EU EPA附属書 3-AMaxNOM:VNM/EXW RVC:(FOB − VNM)/FOBBuild-Up なし
日 英 CEPA附属書 3-A日 EU と同型
AJCEP第 28 条・公式プライマーRVC:(FOB − VNM)/FOB のみBuild-Up なし
日豪 JAEPA豪州側ガイドRVC:(Customs Value − VNM)/Customs Value母数は通関価額
日タイ JTEPA第 29 条 4(b)QVC:(FOB − VNM)/FOB
日マレーシア MJEPA運用解説QVC:(FOB − VNM)/FOB
日インドネシア JIEPA第 28 条 4(b)QVC:(FOB − VNM)/FOB
日フィリピン JPEPA運用手続QVC:(FOB − VNM)/FOB
日ベトナム VJEPA第 27 条LVC:(FOB − VNM)/FOB
日ペルー EPA第 41 条QVC:(FOB − VNM)/FOB
日スイス EPA附属書 2MaxNOM:VNM/EXWBuild-Up なし
日メキシコ EPA附属書 4RVC:(TV − VNM)/TV ※自動車に特則

実務上の留意点

  • 価格基準
    • EU 型は MaxNOM が EXW、RVC が FOB を母数とし、いずれも VNM を控除するビルドダウン発想。
    • JAEPA は Customs Value を採用するため、日本側輸出価格との乖離に注意。
  • PSR 優先
    一般則で両式が許されても、PSR が「CTC のみ」「CTC または RVC40%」と指示する場合はそのとおりに従う。
  • 業種別特則
    自動車など一部分野は Net Cost(CPTPP)や独自計算式を設定。該当附属書を必ず確認。

方式選択の概略指針

  • Build-Up を選べる協定(CPTPP/RCEP/日印/日チリ/日モンゴル 等)
    • 原産材料の VOM をサプライヤー証明で一括把握できる場合に有利。
    • 複数原産国部材を組み合わせる調達構成で柔軟性が高い。
  • Build-Down のみの協定(日 EU・日 英/AJCEP/ASEAN 二国間/日豪 等)
    • 非原産材料 VNM の管理が中心。母数(EXW/FOB/通関価額)の違いを誤らないこと。

アメリカで進行する訴訟:相互関税・緊急関税と対中301条の現状

比較表:私の認識のために整理しました。

項目① 相互関税・緊急関税(IEEPA)② 対中301条(リスト3・4A)
根拠法IEEPA(50 U.S.C. §1701–)等(大統領の緊急権限)1974年通商法 §301/§307+APA
措置の中身ほぼ全輸入に基礎10%+国別11–50%の「相互関税」/加・墨25%、中10→20%の「Trafficking Tariffs」等(EOで変動) 国際貿易裁判所中国向け追加関税(リスト3・4A)
第一審(CIT)違法。IEEPAは関税賦課の一般授権にならないとして恒久差止(2025/5/28, Slip Op. 25-66) 国際貿易裁判所合法。USTRの再説明を維持(2023/3/17, Slip Op. 23-35) 国際貿易裁判所
控訴審(CAFC)2025/8/29 判決:IEEPAに基づく関税権限否定は維持。ただし差止の射程は一部破棄・差戻し(当面の徴収は継続) 連邦控訴裁判所2025/1/8 口頭弁論済。本日(2025/8/30)時点で判決未了(継続徴収) 連邦控訴裁判所
現在の効力徴収継続中(CAFCが控訴中の差止停止→判決でも差止再検討を指示) 連邦控訴裁判所徴収継続中(CITで原告敗訴、差止なし) 国際貿易裁判所
直近の行政府動向相互関税を一時停止・修正するEOが複数発出(例:2025/7/31の修正命令) The White House(省略:本表の争点は“適法性”)

① IEEPA(相互関税・緊急関税)訴訟の要点

  • CIT(2025/5/28):IEEPAの「輸入の規制」権限は関税の恒常的付加を包括授権しないとして、相互関税・Trafficking Tariffsの恒久差止を命令。 国際貿易裁判所
  • CAFC(2025/8/29, 全員合議)IEEPAに関税権限なしの法理は維持。ただし全国差止の範囲等は審理不十分として破棄・差戻し。控訴中に付されていた差止の停止(stay)も示され、現時点では徴収が継続連邦控訴裁判所
  • 実務への当面影響:納税は継続。差戻し後のCITでeBay要件に基づき差止範囲・救済の再検討へ(政府の上告可能性は報道ベース)。大統領令による相互関税の微修正・一時停止も発出済。 連邦控訴裁判所The White House

② 対中301条(リスト3・4A)訴訟の要点

  • CIT(2023/3/17):USTRの手続・再説明を適法と判断し、原告側の主張を退ける。 国際貿易裁判所
  • CAFC2025/1/8 口頭弁論済。本日(2025/8/30)時点で判決未了。従って徴収は継続連邦控訴裁判所

2025年8月18日時点で公表・報道されている「相互関税」最新一覧

以下のフォーマットで、最新(2025-07-31改定、8/7発効/中国は8/11に90日延長)の相互関税をまとめました。
注記:EUは品目別の“式”で決まります(下記参照)。Annexに載っていない国は原則 +10%(別途の例外がある場合を除く)。中国は当面+10%に据え置き(90日延長)。(The White House) (Federal Register)

国名関税率出所備考
アフガニスタン15%EO Annex I(2025-07-31)
アルジェリア30%同上
アンゴラ15%同上
バングラデシュ20%同上
ボリビア15%同上
ボスニア・ヘルツェゴビナ30%同上
ボツワナ15%同上
ブラジル10%同上
ブルネイ25%同上
カンボジア19%同上
カメルーン15%同上
チャド15%同上
コスタリカ15%同上
コートジボワール15%同上
コンゴ民主共和国15%同上
エクアドル15%同上
赤道ギニア15%同上
欧州連合(EU)品目別:一般税率 <15% → (15% − 一般税率) / 一般税率 ≥15% → 0%同上一律率ではなく品目ごとに計算。(The White House)
フォークランド諸島10%同上
フィジー15%同上
ガーナ15%同上
ガイアナ15%同上
アイスランド15%同上
インド25%同上
インドネシア19%同上
イラク35%同上
イスラエル15%同上
日本15%同上
ヨルダン15%同上
カザフスタン25%同上
ラオス40%同上
レソト15%同上
リビア30%同上
リヒテンシュタイン15%同上
マダガスカル15%同上
マラウイ15%同上
マレーシア19%同上
モーリシャス15%同上
モルドバ25%同上
モザンビーク15%同上
ミャンマー(ビルマ)40%同上
ナミビア15%同上
ナウル15%同上
ニュージーランド15%同上
ニカラグア18%同上
ナイジェリア15%同上
北マケドニア15%同上
ノルウェー15%同上
パキスタン19%同上
パプアニューギニア15%同上
フィリピン19%同上
セルビア35%同上
南アフリカ30%同上
韓国15%同上
スリランカ20%同上
スイス39%同上
シリア41%同上
台湾20%同上
タイ19%同上
トリニダード・トバゴ15%同上
チュニジア25%同上
トルコ15%同上
ウガンダ15%同上
英国10%同上
バヌアツ15%同上
ベネズエラ15%同上
ベトナム20%同上
ザンビア15%同上
ジンバブエ15%同上
中国(香港・マカオ含む)10%EO 14298(2025-05-12)90日停止措置を2025-11-10まで延長。(Federal Register)
(参考)Annex未記載国10%(原則)EO(2025-07-31)「Annex Iに載っていない国」は原則+10%。例外あり。(The White House)

出所(主要一次情報)

  • 2025-07-31大統領令「Further Modifying the Reciprocal Tariff Rates」(Annex Iに全リスト掲載/EUの算定式、Annex未記載国=10%の規定を明記)。(The White House)
  • 2025-05-12 大統領令14298「中国との協議を反映した相互関税の変更」(中国を一時的に**10%**へ)。
  • 2025-08-14 連邦官報:中国の10%据え置き措置をさらに90日**延長の告示。(Federal Register)

補足

  • 表の国別率は上記Annex Iの“最新改定(7/31)”に基づきます(8/7発効)。(The White House)
  • Annexにない国(例:一部FTA相手国など)は原則+10%ですが、別の大統領令・覚書・HTSUS注記で例外が設定されうるため、実務ではCBPガイダンスとHTSUS該当条項の確認を推奨します。(The White House)

カスタムGPTによるHSコード特定力の違い:ChatGPTとGemini

ファンがついている空調服のHSコードを、私が作ったカスタムGPT:ChatGPTベースとGeminiで試してみました。

ChatGPTによるカスタムGPTの結果

推定HSコード(HS2022・6桁)

6201.40(男子用・織物製のアノラック/ウインドジャケット等・人造繊維製)
※女子用なら 6202.40。該当見出しは62.01/62.02(アノラック、ウインドジャケット等)で、号は表地の繊維で決まります
(HS商品インデックス上も「ウインドジャケット/ウインドチーター」は62.01/62.02に位置付け。)

根拠(かんたんに)

  • どの類・項に入る? 62類は(編物を除く)衣類で、62.01/62.02の範囲に「アノラック、ウインドジャケット等」を明記。
  • 6桁の決め方:HS解説は、表生地の繊維で号を決めると説明(例:綿60/ポリ40の男子アノラック→6201.30)。従って化繊主体なら6201.40(女子は6202.40)。
  • セット扱い(服+ファン+電源):通則3(b)の「小売用のセット」は、特定の用途のために一緒に包装された複数品目を、重要な特性を与える構成要素で分類。衣類+付属品の典型例でも、衣類側が全体に重要な特性を与えるとして衣類で分類された事例が示されています。
  • 基本ルール:分類は「項の規定と部・類注」に従って決定(通則1)。

代替候補(情報次第で変動)

  • 編物(ニット)製なら 61類:男子 6101.30/女子 6102.30(人造繊維製)。
  • 表地が綿主体なら 6201.30/6202.30。
  • 男女別で号が変わる:男子=62.01、女子=62.02(編物なら61.01/61.02)。
  • ファン・電源を単独輸入:衣類から独立した場合は衣類ではなく、ファンは84.14類系、バッテリーは85.07類系の検討になります(セットでないなら通則1で各品ごとに)。

推定精度

75%
(服の素材/編み・織り/男女別/セットの構成の確定が未提示のため。これらが確定すれば90%以上に上げられます。)

追加で教えてほしいこと

  1. 表地の素材・混率(綿/ポリエステルなど)
  2. 編物(ニット)か織物(布帛)か
  3. 男性用・女性用の別(またはユニセックス表示)
  4. 服・ファン・電源を一括で輸入するか、別送か(別送ならセット扱い不可の可能性あり)

GeminiによるカスタムGPTの結果

推定HSコード: 8414.59

品目: ファン(卓上用、床用、壁用、窓用、天井用又は屋根用のものを除く。)

詳細な説明: ご提示いただいた「空調服」は、衣類と小型の電動ファンが一体となった複合製品です。このような複数の構成要素からなる物品のHSコードを決定する際には、「関税率表の解釈に関する通則」というルールに従います。

この通則に基づくと、物品に「重要な特性」を与えている要素が分類の決め手となります。「空調服」の場合、その最も重要な機能はファンによる送風・冷却機能であると解釈するのが一般的です。したがって、衣類としてではなく、ファン(機械類)として分類します。

ファンはHSコード第84.14項に分類され、その中でも空調服に使用されるような小型のファンは、この「8414.59」に該当すると考えられます。


根拠と精度

  • 情報源:
    • 関税率表の解釈に関する通則3(b)(複合産品の分類ルール)
    • HSコード第84類(機械類)の規定
    • 過去の類似品目に関する分類事例
  • 推定精度: 85%

分類上の注意点と追加情報

  • 分類上の争点: この種の製品は、衣類(第61類または第62類)とファン(第84類)のどちらに重要な特性があるかで見解が分かれる可能性があります。しかし、製品の主目的が「涼をとること」であるため、ファンに重要な特性があると判断するのが最も一般的です。
  • ご確認いただきたい情報: より正確な判断のため、以下の情報を確認させていただくと、精度を高めることができます。
    • ファンの仕様: ファンの出力(ワット数)は分かりますか?
    • 衣類の素材: 主な素材(例:ポリエステル100%、綿65%・ポリエステル35%など)と、それが織物か編物(ニット)か分かりますか?
    • ファンの取り付け状態: ファンは衣類に恒久的に固定されていますか?それとも簡単に取り外せますか?

GeminiにChatGPTでの結論をぶつけてみた

セット(服+ファン+バッテリー)で輸入なら 8414.59 にはしません。通則3(b)の“重要な特性”で分類するため、全体の性質を決めるのは衣類=62類(上衣)だからです。通則3(b)は複合品/小売用セットを重要な特性で決める規則で、衣類+付属品の組合せを衣類側で分類した実例とも整合します。

このコメントにはどう返事しますか。

Geminiの回答

HS Code Finder Gemini

カスタム Gem

思考プロセスを表示

ご指摘いただき、誠にありがとうございます。 大変鋭いご指摘であり、HSコード分類における非常に重要な論点です。いただいたご意見を踏まえ、改めて検討いたしました。

おっしゃる通り、セット全体で輸入する場合、衣類として分類する方がより適切であると考えられます。私の前回の回答は、製品の「機能」に重きを置きすぎたものでした。訂正し、深くお詫び申し上げます。


HSコードの再提案

ご指摘の通り、「関税率表の解釈に関する通則3(b)」を適用すると、この商品は「小売のためにセットにした物品」と見なすことができます。その場合、セット全体に**「重要な特性」を与えているのは、ファンやバッテリーという付属品ではなく、「衣類」そのものである**と判断するのが妥当です。

なぜなら、この製品はあくまで「衣類」として着用されるものであり、ファンやバッテリーはその衣類の快適性を高めるための「付属品」と解釈できるからです。これは、ベルト付きのドレスをドレスとして分類したり、スカーフ付きのコートをコートとして分類したりするのと同じ考え方です。

この解釈に基づき、HSコードを再提案します。

推定HSコード: 6201.93

品目: 人造繊維製のもの(男性用のオーバーコート、カーコート、ケープ、クローク、アノラック(スキージャケットを含む。)、ウインドチーター、ウインドジャケットその他これらに類する衣類)

詳細な説明: このHSコードは、衣類が織物であり、主な素材がポリエステルなどの人造繊維であると仮定した場合のものです。空調服は「ウインドジャケットその他これらに類する衣類」に該当すると考えられます。セットで提示されるファンとバッテリーは、この衣類の付属品として一体で分類されます。


根拠と精度

  • 情報源:
    • 関税率表の解釈に関する通則3(b)(ご指摘いただいた通り)
    • HSコード第62類(衣類及び衣類付属品)の規定
    • 日本の関税中央分析所や税関相談室の見解、及び類似のセット産品に関する分類事例
  • 推定精度: 95%

結論

いただいたご意見は、実際の税関実務における判断と一致するものです。複合産品やセット産品の分類、特に「重要な特性」の解釈は非常に難しい問題ですが、今回のような着用する製品の場合は、ベースとなる衣類が分類を決定づける主要な要素となります。

大変勉強になるご指摘をいただき、誠にありがとうございました。今後も何かお気づきの点がございましたら、ご教示いただけますと幸いです。

ChatGPTのカスタムGPTの方が精度が高いことを確認しました。今後もそれぞれを調整します。