REX(登録輸出者)システムに関する企業向け実務ガイド

皆様からREXに関する関心が多いことから、今回まとめてみました。

はじめに:日本企業にとっての結論
日EU・EPAを利用して日本からEUへ輸出する場合、REX登録は不要です。6,000ユーロを超える貨物で原産地を自己申告する際の「輸出者参照番号」には、EUのREX番号ではなく、**日本の「法人番号」**を記載します(未付番なら空欄可。住所の記載で代替可)。Taxation and Customs Union


1. REX(登録輸出者)システムとは?

REX(Registered Exporter)は、原産地自己申告を可能にするための輸出者登録制度です。EU側の輸出者GSP受益国の輸出者が、REX番号をインボイス等の**Statement on origin(原産地に関する申告)**に記載して特恵を申請する仕組みです。Taxation and Customs Union


2. REXが必要となる主なケース(日本からの輸出以外)

輸出ルート適用される制度/協定6,000ユーロ超の場合の要件
EU → 日本 などEUが締結するFTA(例:EU–Japan、CETA、UK TCA等)EU側輸出者にREX登録が必要(自己申告で特恵申請)。EU Trade+1
GSP受益国 → EUGSP(一般特恵)受益国の輸出者にREX登録が必要(自己申告で特恵申請)。Taxation and Customs Union

したがって、REXは**「EU側が輸出者」または「GSP受益国が輸出者」のときに関係し、日本からEUへ輸出する場合には直接関係しません**。Taxation and Customs Union


3. 日EU・EPAにおける日本の輸出者の対応

3.1 輸出者参照番号には「法人番号」を記載

  • 自己申告文(Statement on origin)をインボイス等に記載する際、**日本側輸出者の輸出者参照番号は「法人番号(13桁)」**です。Taxation and Customs Union
  • 未付番の場合空欄可で、住所を「場所及び日付」欄に記載して輸出者を識別できます。Taxation and Customs Union
  • EU税関による照合のため、国税庁「法人番号公表サイト(英語版)」に社名・所在地が表示されるよう設定しておくことを推奨します。Taxation and Customs Union

3.2 6,000ユーロ閾値の考え方

  • EU側輸出者6,000ユーロ以上でREXが必要、未満は不要。EU Trade
  • 日本側輸出者はREX不要で、基本は法人番号を用います(未付番時は空欄可)。「日本側に6,000ユーロ超=番号必須」という定めは明文化されていませんTaxation and Customs Union

3.3 代替手段:輸入者の知識(Importer’s knowledge)
輸出者の自己申告に代えて、EU側輸入者の知識に基づき特恵申請することも可能です。輸入者は原産性を示す資料を保持・提示できる必要があります。Taxation and Customs Union


4. 実務上のチェックリストと注意点

4.1 原産地自己申告文(Statement on origin)の記載【重要】

  • **PSR(CTH、RVC等)の“具体語”を書き込む必要はありません。一方で、附属書3‑Dの注記(4)に従い、A/B/C/D/Eの「コード」(例:A=完全生産、B=品目別規則充足、E=寛容差 等)は該当すれば記載します。多くのケースでは「B」**になります。wko.at+1
  • 輸出者参照番号(日本側=法人番号)原産地(EUまたはJapan)、**有効期間(複数出荷の場合)**など、附属書3‑Dで定める要素を満たすこと。Taxation and Customs Union
  • 保存義務:自己申告文と原産性に係る記録は最低4年間保存。Taxation and Customs Union

4.2 取引先(EUの輸入者)からREX番号を求められた場合
REXはEU側輸出で使う番号であり、日本からEUへの輸出では法人番号を用いる旨を説明します。必要に応じて、**法人番号公表サイト(英語版)**の掲載で確認可能にします。Taxation and Customs Union

4.3 用語の混同に注意

  • REX番号EU側GSP受益国側登録輸出者番号(自己申告のため)。Taxation and Customs Union
  • 法人番号日本側輸出者が日EU・EPAで輸出者参照番号として用いる番号。Taxation and Customs Union
  • EORI番号EU域内で通関手続を行う事業者の登録番号(REXとは用途が異なる)。EU Trade

5. まとめ

  • REXの基本EU側輸出者GSP受益国の輸出者6,000ユーロ超の貨物で自己申告する際に用いる登録番号EU Trade+1
  • 日本企業の対応日本→EUではREX不要輸出者参照番号=法人番号を記載(未付番時は空欄可・住所で代替)。Taxation and Customs Union
  • 実務最重点PSRの具体語(CTH等)の記載は不要だが、A/B/C/D/Eのコード必要に応じ記載裏付け資料の4年間保存法人番号の英語表記公開を徹底。wko.at+1

確認(根拠)

  • 日本側=法人番号/EU側=REX、輸出者参照番号の空欄許容と住所記載の代替、保存期間4年、自己申告文の構成要素:EU–Japan EPA 共同ガイダンスTaxation and Customs Union
  • EU側輸出者のREX要否(6,000ユーロ閾値)Access2Markets「Statement on origin」。EU Trade
  • EU–Japan(双方)での自己申告フレーム、EU側輸出はREX登録が前提/日本側は法人番号:Access2Markets EU–Japanページ。EU Trade
  • GSPはREX必須:欧州委「GSP」ページ(受益国輸出者はREXで自己申告)。Taxation and Customs Union
  • 附属書3‑D注記(4)のコード(A/B/C/D/E)官報版 附属書3‑DおよびAccess2Marketsの記載。wko.at+1
  • **輸入者の知識(Importer’s knowledge)**の要件:EU–Japan EPAガイダンス(Importer’s knowledge)Taxation and Customs Union

第22回Global Edge Forum無料セミナー開催のお知らせ 「EUとTPP: 完全自己証明への備え」(2018年10月19日:大阪開催)

第22回Global Edge Forum無料セミナー開催(大阪開催)のお知らせ
「EUとTPP: 完全自己証明への備え」

ロジスティックはこの7月に「戦略的FTA活用ハンドブック 2018年度版」を発刊しました。省庁でも読まれていた弊社ハンドブックの大幅改訂版です。その本では、原産地証明のアプローチをより深く踏み込み、HSコードの考え方、証明方法、証拠書類フォーマットに至るまで踏み込みました。また、完全自己証明への対応、近年増えている検認におけるコンプライアンス・リスクにも言及しています。

EUとTPPでは原産地証明書が完全自己証明となります。その為の備えをする必要があります。協定の内容は従来のFTAとは違ったものとなり、また、TPPとEUの間でも差があります。そのことを理解するために、原産証明で必要である、原産地規則と品目別原産地規則を読みやすい形の冊子として刊行しました。これらFTAにたいして準備するためには必読の項目です。

EUとTPP、そして完全自己証明、2つのメガFTAの原産地規則を理解し、そして、完全自己証明に対する備えをどうすべきか、その内容に踏み込んだ無料セミナーを大阪で開催します。8月末、9月上旬に東京で行った2つのセミナーを1つにまとめ、かつ、TPPを盛り込み、より深掘りした野心的な内容となっております。是非お越しください。セミナーの後半では、これらの課題に対するソリューションにお役に立つトムソン・ロイターと日立ソリューションズのサービスも合せてご紹介いたします。

本を既にお持ちの方はぜひ、会場にお持ち下さい。書籍の内容がよりよく分かるのではないかと思います。遠隔地の方、お時間が取れない方向けのYouTubeによるライブ配信も予定しております。

皆様のビジネスに必ずやお役に立つ内容と存じますので、ぜひお越し下さいませ。 また、会社の方にもぜひご案内くださいませ。

テーマ:              「EUとTPP: 完全自己証明への備え」                                                             株式会社ロジスティック 代表取締役 嶋 正和
–  第三者証明から完全自己証明へのシフト
–  完全自己証明において企業が対処すべき事
–  日EU EPAとTPPの原産地規則の違い
–  検認のリスク
–  2つのメガFTAに対処する。RCEPをにらんで

FTAソリューション提案
–  トムソン・ロイター
–  株式会社日立ソリューションズ

日時:                2018年10月19日(金)13:30~17:00

場所:                大阪(梅田)グランフロント内ナレッジキャピタル C-02(Tower C)
大阪府大阪市北区大深町3−1 グランフロント大阪内
・ 大阪駅からのアクセスが入り組んでいます

対象:                FTAで原産地証明を行う輸出者及び生産者の企業の方
・ 該当されない場合は、お断りする場合があります

参加料:             無料

お申し込み:        ネットでから申込可能です。

または、参加申込書をFAXもしくは、pdfをメールにて
頂戴できますれば幸いです。

定員になり次第、申込を締め切らせて頂きます。
お申し込みの方には後日ご案内をメールにてお送りいたします。

本に関して:     サイトから購入も出来ます。
当日サンプル本をご用意しております。

 

トムソン・ロイターと行ったGEFセミナーに関する東洋経済の記事:まちがいだらけ

11月上旬に日本EU EPAのセミナーをトムソン・ロイターと行いました。

GEFとしてのジョイントセミナーで多くの方にお越し頂きました。

トムソン・ロイターはさすがに世界規模の会社だけあってマーケティングにもお金をかけますね。

会場がリッツカールトン東京。そして、東洋経済での広告記事を出されています。

セミナーの概略をライターさんが書かれ、そのセミナーのビデオと資料は登録してくれたらダウンロード出来るという仕組みです。

まねしようかな。

ただ、少々難があったのはライターさんが書かれる記事。言っていないこと、間違ったことばかりでした。

FTAはその専門用語含めあまり容易な内容ではありません。それ故に正しい記事を書くのは難しいでしょう。

メディアの取材記事はヒアリングはするが、記事の校正はインタビューされる側にはさせてくれない。

確かに、いちいち文章にインタビューされる側から難癖をつけられても困るのはよく分かりますが、間違った文章がでることは当方の信用にも関わります。

幸い、この記事は広告記事なので修正をお願いすることができました。(オンライン掲載で、紙面ではなかったことが幸いです。)

メディアはいい宣伝にはなりますが、間違うと専門性が疑われるので今はあまりメディアに依存しないようにしています。