EU-インドFTAの原産地規則は、品目ごとに異なるPSR(品目別原産地規則)が設定されており、以下の3つの主要パターンがあります。chemexcil+1
パターン1:CTC & VA(両方の基準を満たす必要)
このパターンでは、関税分類変更基準(CTC)と付加価値基準(VA)の両方を同時に満たす必要があります。chemexcil+1
対象商品カテゴリー
化学品(HS第28-38類)
- HS第28類:無機化学品[chemexcil]
- HS第29類:有機化学品[chemexcil]
- HS第30類:医薬品[chemexcil]
- HS第31類:肥料[chemexcil]
- HS第32類:染料・顔料[chemexcil]
- HS第33類:精油・化粧品[chemexcil]
- HS第34類:石鹸・洗剤[chemexcil]
- HS第35類:たんぱく質系物質[chemexcil]
- HS第38類:各種化学工業生産品[chemexcil]
典型的なPSR: CTSH + VA 40%moet+1
実務上の意味: 例えばHS第38類の化学製品をインドからEUに輸出する場合、
- 非原産材料のHS番号(6桁レベル)が最終製品と異なること
- かつ、インドで付加価値40%以上を創出すること
の両方を満たす必要があります。[afleo]
プラスチック・ゴム製品(HS第39-40類)
典型的なPSR: CTSH + VA 40%[moet.gov]
皮革・革製品(HS第41-43類)
- HS第41類:原皮及び革[global-scm]
- HS第42類:革製品・旅行用具[global-scm]
- HS第43類:毛皮及びその製品[global-scm]
PSR構造: CTH + VA 40%(項レベルでの変更と付加価値)
金属製品(HS第72-83類の一部)
- HS第73類:鉄鋼製品[jp.reuters]
- HS第74-76類:銅・アルミニウム製品
- HS第82-83類:卑金属製工具・雑製品
PSR構造: CTSH + VA 35-40%
パターン2:CTC または VA(いずれかを満たせばよい)
このパターンでは、関税分類変更基準または付加価値基準のいずれかを満たせば原産性が認められます。jetro+1
対象商品カテゴリー
機械類(HS第84類)
- HS第84類:原子炉、ボイラー及び機械類[jetro.go]
典型的なPSR: CTH または VA 40-50%[jetro.go]
実務上の利点: 機械は複雑な部品構成を持つため、全ての部品でCTH基準を満たすのは困難です。この場合、付加価値基準による証明に切り替えられます。[jetro.go]
電気機器(HS第85類)
- HS第85類:電気機器及びその部品[jetro.go]
典型的なPSR: CTH または VA 40-50%[jetro.go]
自動車(HS第87類)
- HS第87類:車両及びその部品reuters+1
PSR構造(推定):
- 完成車:CTH + VA 45-50%(より厳格)
- 部品:CTH または VA 40-45%(選択可能)[jp.reuters]
特記事項: インドは完成車とエンジンを例外品目として保護しており、年間25万台の割合枠内で関税が110%から10%へ段階的削減される特別な扱いとなっています。jetro+1
光学機器(HS第90類)
- HS第90類:光学機器・医療機器・測定機器[policy.trade.ec.europa]
典型的なPSR: CTH または VA 40%
精密機器(HS第91類)
- HS第91類:時計及びその部品
典型的なPSR: CTH または VA 40%
パターン3:SP(特定加工基準)の適用
特定の製造工程や技術的作業の実施を求める基準です。他の基準と組み合わせて適用される場合が多くあります。citiindia+2
対象商品カテゴリー
繊維製品(HS第50-63類)
繊維製品は最も複雑なPSR構造を持ち、糸→生地→縫製の各段階で異なる特定加工基準が適用されます。citiindia+2
HS第50-60類(糸・織物):
- HS第50類:絹及び絹織物
- HS第51類:羊毛及び繊毛の糸・織物
- HS第52類:綿の糸・織物
- HS第53類:その他の植物性紡織用繊維
- HS第54類:人造繊維の長繊維
- HS第55類:人造繊維の短繊維
典型的なPSR(糸): 以下のいずれかの特定加工:[citiindia]
- 天然繊維の紡績(Spinning of natural fibres)
- 化学繊維の押出しと紡績の組合せ(Extrusion of man-made fibres combined with spinning)
- 撚糸と他の機械的操作の組合せ(Twisting combined with any mechanical operation)
典型的なPSR(織物): CTH + 特定加工(織布または編成)jetro+1
HS第61-63類(衣類・製品):
- HS第61類:編物製の衣類及び同付属品
- HS第62類:織物製の衣類及び同付属品
- HS第63類:紡織用繊維のその他の製品
典型的なPSR: CTSH + 裁断・縫製工程(Cut and sew process)jetro+1
特記事項: インドの繊維製品は現在12-16%のEU関税に直面しており、FTA発効後は即時撤廃される予定です。バングラデシュやベトナムなどの競合国との不利を解消する重要分野です。policy.trade.europa+1
食品・農産物(HS第1-24類の一部)
HS第3-8類(農産物):
HS第16-21類(加工食品):
- CTH + 特定加工(調理、加熱、発酵など)[tpci]
化学品における特定加工
化学品(HS第28-38類)では、CTSH + VA基準に加えて、以下の特定加工が要求される場合があります:[global-scm]
- 化学反応(Chemical reaction)
- 精製(Purification)
- 異性化(Isomerization)
- 生物工学的プロセス(Biotechnological process)
金属製品における特定加工
鉄鋼製品(HS第72-73類)では、以下の特定加工が要求される場合があります:
- 溶解・精錬(Smelting and refining)
- 熱間圧延(Hot rolling)
- 冷間圧延(Cold rolling)
- 表面処理(Surface treatment)
協定別PSR比較:インドの主要FTA
| 品目 | インド-UAE CEPA | インド-日本CEPA | EU-インドFTA(推定) |
|---|---|---|---|
| 化学品(HS28-31) | CTSH + VA 40%[afleo] | CTSH + VA 35% | CTSH + VA 40%[chemexcil] |
| プラスチック(HS39) | CTSH + VA 40%[moet.gov] | CTSH + VA 35% | CTSH + VA 40%[moet.gov] |
| 機械類(HS84) | CTH or VA 40% | CTH or VA 40% | CTH or VA 40-50%[jetro.go] |
| 電気機器(HS85) | CTH or VA 40% | CTH or VA 40% | CTH or VA 40-50%[jetro.go] |
| 自動車(HS87) | CTH + VA 40% | CTH + VA 40% | CTH + VA 45-50%(推定)[jp.reuters] |
| 繊維糸(HS52-55) | SP(紡績)[citiindia] | SP(紡績) | SP(紡績)+ CTH[citiindia] |
| 衣類(HS61-62) | CTSH + SP(裁縫)[citiindia] | CTSH + SP(裁縫) | CTSH + SP(裁縫)[citiindia] |
実務対応のポイント
CTC & VA方式の証拠管理
両方の基準を満たす必要があるため、以下の証拠が必須です:linkedin+1
- CTC証明のため:
- 全ての非原産材料のHS番号(6桁)
- 最終製品のHS番号(6桁)
- 分類変更の証明
- VA証明のため:
- FOB/EXW価額の根拠
- 非原産材料価額の内訳
- 付加価値計算書
CTC または VA方式の戦略的選択
選択可能な場合、以下の判断基準で有利な方式を選択します:[shikiho.toyokeizai]
- CTC基準が有利なケース: 多数の小額部品を使用し、大部分が原産材料の場合
- VA基準が有利なケース: 高額な非原産材料を使用するが、人件費・加工費が大きい場合[shikiho.toyokeizai]
SP(特定加工)の証明
特定加工基準では、工程記録が最も重要な証拠となります:[citiindia]
- 製造フローチャート
- 各工程の作業指示書
- 品質管理記録
- 設備仕様書(紡績機、織機、縫製機など)
技術ファイルの保管義務
EU-インドFTAでは、自己証明方式を採用しており、輸入者は原産性を証明する「技術ファイル」を5年間保管する義務があります。事後検証(Post Clearance Audit)で証拠を提示できない場合、特恵税率が否認されます。[linkedin]
業種別の影響評価
高影響業種:CTC & VA型
化学品、プラスチック、医薬品など、CTSH + VA 40%を要求される業種は、両方の証明負担が大きく、実務体制の整備が急務です。[chemexcil]
中影響業種:CTC or VA型
機械類、電気機器は選択制のため、既存のサプライチェーンに応じて有利な基準を選択できます。柔軟性が高い反面、どちらが有利かの判断には専門知識が必要です。shikiho.toyokeizai+1
特殊対応業種:SP型
繊維製品は、紡績・織布・縫製という各工程での特定加工証明が必須です。工程記録の電子化と、税関検証に耐える品質管理体制の構築が競争力の鍵となります。citiindia+1
EU-インドFTAのPSRは、品目ごとに異なる厳格な基準を設定しており、企業は自社製品のHS番号とPSRパターンを正確に把握し、証拠管理体制を構築する必要があります。特に化学品と繊維製品は複雑な要件があり、早期の実務準備が求められます。global-scm+3
FTAでAIを活用する:株式会社ロジスティック