要約
- インド原産品への米国の追加関税は合計50%。内訳は①相互関税25%(2025年8月7日発効)+②追加25%(対ロシア原油調達を理由とする措置、2025年8月27日 0:01 a.m. EDT発効)。いずれも**通常関税(Column 1)に“上乗せ”**されます。The White HouseReutersGovInfo
- ②の25%はHTSUS 9903.01.84で申告。在来の25%(相互関税)と併科されます。GovDelivery
- 一部例外・猶予あり(船積み済みの経過措置、人道物資・情報資料、特定の232対象品、適切なChap.98適用など)。FTZは特恵外国(PFS)での入庫要件、ドローバック可。GovDeliveryGovInfo
1) 何が起きたのか
- 2025年4月2日:大統領令EO 14257で「相互関税」枠組みを創設。The White House
- 2025年7月31日:EO 14326(Further Modifying the Reciprocal Tariff Rates)で各国率を最終化。インド=25%、8月7日発効。The White House
- 2025年8月6日:大統領令EO 14329(対ロシア関連の国家緊急権に基づく)で**インド原産品に追加25%**を指示。The White House
- 2025年8月25日:CBP CSMS #66027027で運用通達(9903.01.84、適用開始8月27日、相互関税25%に追加で賦課)。GovDelivery
- 2025年8月27日:**連邦官報告示(FR 2025-16419)**で実装。0:01 a.m. EDT以降の輸入に適用。GovInfo
2) 計算と申告
- 関税計算イメージ:通常関税(例:5%)+相互関税25%+追加25%=合計50%が“上乗せ”。追加分は**“価額に対する”ad valoremで、他の賦課(AD/CVD, 税・手数料)と併存。
例)申告価額$10,000、通常5%の場合 → $500(通常)+$2,500(相互)+$2,500(追加)=$5,500**(他費用別)。GovDeliveryGovInfo - 申告コード:9903.01.84(追加25%)を相互関税の国別コード等と併記(HTS記載順序の指示あり:Chap.98→各種99章(301→IEEPA→232→201…)→本表1–97)。GovDelivery
3) 例外・猶予
- 経過措置:8/27前に最終輸送に載荷し9/17 0:01 a.m. EDT前に輸入申告した貨物は、追加25%の対象外(9903.01.85)。GovDelivery
- 人道物資・情報資料(9903.01.88/89)は除外。GovDeliveryGovInfo
- 特定の232対象等(鉄鋼・アルミ・自動車等)は9903.01.87で追加25%の適用外となる区分あり(相互関税や232自体の賦課は別途)。GovDelivery
- Chap.98の扱い:適切なChap.98で追加25%非課税となる場合あり。ただし9802は**加工・組立価額部分に追加25%**が課税。GovDelivery
- FTZ:8/27以降に入庫する対象品は**Privileged Foreign Status(PFS)**での入庫が必要。消費仕向け時に課税。GovDelivery
- ドローバック:追加25%に適用可。GovDelivery
4) 影響領域
- **影響対象はインドの対米輸出の約55%(約870億ドル)**に及ぶとの推計。繊維・衣料、履物、宝飾、化学品などが特にリスク。Reuters
- マクロでは米印関係の緊張が指摘され、関税50%の適用で短期的に受注・雇用・価格転嫁の圧力。ポリティコ
5) いますぐの対応
48時間以内
- HTSライン洗い出し:対米輸出入のHS/HTSに9903.01.84・相互関税コードの付番要否を紐付け。**例外該当(9903.01.85–89、232対象、Chap.98)**の棚卸。GovDelivery
- 受発注・見積の即時改定:**着地コスト+50%**シナリオで粗利・価格を再試算。FOB/CIF条件・INCOTERMSの再設定。GovInfo
2週間以内
- 通関手順の改修:ブローカーとHTS記載順序・CSMS #66027027の運用確認、ACE申告テスト。FTZ利用企業はPFS運用へ切替。GovDelivery
- Chap.98/9802の適用可能性評価(再加工・修理・組立スキーム)。ドローバックの回収設計。GovDelivery
90日以内
- 供給網の見直し:第三国加工の原産地規則と経由地リスクを監査。トランスシップ回避(違反認定時は**+40%の追加率**など厳罰化)。The White House
- 価格・契約条項(関税サーチャージ、関税変動条項、フォースマジュール)を更新。為替・在庫・与信の同時管理。
6) よくある質問(FAQ)
Q1. “50%”は複利計算ですか?
A. いいえ。**いずれも価額(dutiable value)に対するad valoremの“上乗せ”**です(通常関税+25%+25%)。GovInfoGovDelivery
Q2. いつから課税?“船積み済み”は?
A. 2025年8月27日 0:01 a.m. EDT(日本時間8/27午後)以降の輸入(消費仕向け)。8/27前に最終輸送へ載荷し9/17前に輸入した貨物は追加25%の対象外。GovInfoGovDelivery
Q3. すべての品目が対象ですか?
A. 原則対象ですが、人道物資・情報資料の除外、特定の232対象など例外があります。詳細は該当9903番号・注記で確認してください。GovDeliveryGovInfo
Q4. 交渉で下がる可能性は?
A. 報道ベースでは対話継続の見通しもある一方、現時点(8/28 JST)では50%が有効。最新動向のモニタリングを推奨。ウォール・ストリート・ジャーナルポリティコ
7) 参考(制度の趣旨と定義)
- 相互関税(Reciprocal Tariffs)とは、相手国の対米関税や障壁に対応して米国が同程度の追加関税を課す考え方。実務上は通常税率に上乗せされます。C.H. Robinson
主要ソース(抜粋)
- White House:EO 14326(7/31)・付属書でインド25%、8/7発効。The White House
- White House:EO 14329(8/6)(対ロシア原油関連)で**インド追加25%**を指示。The White House
- CBP CSMS #66027027(8/25):9903.01.84、例外(9903.01.85–89)、Chap.98/9802、FTZ PFS、ドローバック、HTS記載順序。GovDelivery
- Federal Register / govinfo(8/27):実装告示(FR 2025-16419)、適用開始時刻、232との関係。GovInfo
- 影響評価(報道):対象は輸出の約55%、主要セクター。Reuters
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