米国相互関税率表(2025年9月24日現在)

米国相互関税率表(2025年9月24日現在)

凡例:関税率=米国が当該国原産品に課す「相互関税」率。別建ての対カナダ/対メキシコ/対中国”オピオイド関連”などの関税は備考欄に明記。「前日差」は9月24日と9月23日の比較。

主要国・地域別関税率

国・地域名相互関税率出所備考前日差
日本15%FR告示(9/9, 9/16)/CBPガイダンス9/16から実装詳細明確化。自動車・航空機・医薬等の取扱い規定、最大15%の非スタック適用変更なし
中国10%(相互関税分)CBP CSMS(8/11)/FR告示(8/14)対中相互関税は11/10まで10%延長。別枠で”オピオイド供給網”20%等が並行適用(合算で30%水準)変更なし
EU15%上限方式大統領令 Annex I(7/31)列1一般税率15%未満:差額上乗せ/15%以上:追加0%。実効15%上限で運用変更なし
カナダ相互関税対象外別枠の対カナダ関税:35%(USMCA適用品免除、エネルギー・カリ肥料10%)。7/31発表・8/1発効変更なし
メキシコ相互関税対象外別枠の対メキシコ関税:25%(USMCA適用品免除)。2/1以降のEOと3/6実装告示変更なし

アジア太平洋地域

国名相互関税率備考前日差
インドネシア19%米・インドネシア合意(7/22発表)に基づく変更なし
インド25%9/18時点で引下げ観測報道(10-15%)も現行25%維持変更なし
韓国15%日本との差を問題視する報道あり、率は未変更変更なし
フィリピン19%交渉継続報道あり(率は現行19%維持)変更なし
ベトナム20%影響に関する直近報道あり(率は現行20%)変更なし
タイ19%変更なし
マレーシア19%変更なし
ブルネイ25%変更なし
カンボジア19%変更なし
ラオス40%変更なし
ミャンマー40%変更なし
バングラデシュ20%変更なし
パキスタン19%変更なし
スリランカ20%変更なし
台湾20%変更なし

中東・アフリカ地域

国名相互関税率前日差
イスラエル15%変更なし
ヨルダン15%変更なし
イラク35%変更なし
シリア41%変更なし
南アフリカ30%変更なし
ナイジェリア15%変更なし
アルジェリア30%変更なし
リビア30%変更なし
チュニジア25%変更なし

ヨーロッパ地域

国名相互関税率前日差
スイス39%変更なし
ノルウェー15%変更なし
リヒテンシュタイン15%変更なし
ボスニア・ヘルツェゴビナ30%変更なし
北マケドニア15%変更なし
セルビア35%変更なし
モルドバ25%変更なし

その他地域

国名相互関税率前日差
ブラジル10%変更なし
ベネズエラ15%変更なし
カザフスタン25%変更なし
フィジー15%変更なし
フォークランド諸島10%変更なし
その他アフリカ諸国15%アンゴラ、ボツワナ、カメルーン、チャド、コートジボワール、コンゴ民主共和国、ガイアナ、レソト、マダガスカル、マラウイ、モーリシャス、モザンビーク、ナミビア、ナウル、ザンビア、ジンバブエ

重要な注記事項

トランシップメント規制:相互関税回避の迂回輸出と認定された場合、追加40%(HTS 9903.02.01)のペナルティが適用される可能性があります 。

他制度との関係:相互関税は他の関税制度(対中”オピオイド”20%、232条鉄鋼・アルミ、セクター別上乗せ等)と別建てです。日本については”相互関税は最大15%でスタックしない”等の非累積規定が明確化されています 。

前日(9/23)からの変更:上記各国について公的更新による相互関税率の変更は確認されていません 。

主要出所

  • 国別レート基準:大統領令(2025年7月31日)”Further Modifying the Reciprocal Tariff Rates” Annex I
  • 日本:連邦官報(9/9・9/16公示、9/16適用)/CBPガイダンス(9/15)
  • 中国:CBP CSMS(8/11)・連邦官報(8/14)により10%を11/10まで延長確認
  • カナダ:ホワイトハウス大統領令(7/31)による別枠35%関税
  • メキシコ:国境関連別枠関税25%(2/1のEO、3/6実装告示)

インドネシアEU CEPA合意内容

エグゼクティブサマリー

EU-インドネシアCEPA(包括的経済連携協定)は2025年9月23日に交渉妥結し、併せて投資保護協定(IPA)も最終化されました 。今後は法的精査・翻訳→署名→双方の承認・批准手続きを経て発効します 。

関税撤廃は品目数ベースで98%超、価値ベースでほぼ100%に達します 。発効時点で約80%が即時撤廃され、5年後には対EU・対インドネシア貿易の96%まで段階的に撤廃されます 。自動車・機械・化学等のEU製品は段階的撤廃の恩恵を受け、インドネシアのパーム油・繊維・履物なども市場アクセスが向上します 。

原産地規則は自己申告(self-certification)を採用し、中小企業でも使いやすい設計となっています 。通関円滑化はWTO貿易円滑化協定(TFA)を上回るTFA+の内容です 。

技術的貿易障壁(TBT)・自動車付属書では、UNECE 1958規則に基づくEU型式認証の受入れ等により再試験の重複を削減します(最遅2033年までの移行規定) 。

**貿易と持続可能な発展(TSD)**章は法的拘束力・紛争解決メカニズムにより執行され、パーム油プロトコルで持続可能なパーム関連の対話・協力・貿易円滑化の仕組みを新設します 。

発効時期は双方の国内手続完了後となり、インドネシアは2027年1月の実施を目標としています 。

主要変更点(章別要点)

関税(物品貿易)

撤廃カバレッジ: 品目の98%超(価値ベースでほぼ100%)。即時80%→5年で96%の貿易が自由化 。

EU→インドネシアの主な撤廃例:

  • 自動車(最大50%、多くは5年で撤廃)
  • 機械・電機(多くは即時、残り5年)
  • 医薬品(多くは即時、残り3年)
  • 化学(多くは即時、残り5年)

インドネシア→EU: 多くの関税を撤廃・大幅削減。パーム油、繊維・履物などの主要輸出品にメリット 。

原産地規則

**自己申告(self-certification)**を基本とし、ビジネスフレンドリーな文書化システム。税関当局間の行政協力による検認システムを整備 。

通関・貿易円滑化

TFAの実績を統合しつつTFA+へ発展。透明性向上、品目分類・評価の明確化、手続きの公表、税関当局間の情報連携(相互行政支援プロトコル)などにより迅速・確実な通関を促進 。

SPS(衛生植物検疫)

WTO-SPS協定の再確認に加え、緊急時対応、情報共有、公式管理・認証、国境検査の効率化等を強化 。

技術的貿易障壁(TBT)・自動車付属書

認証の相互受入れ: EUの認定機関による試験・証明の受入れ(電機・機械等)
規制透明性: 60日のパブリックコメント期間+発効まで6ヶ月の猶予期間を設定
自動車付属書: UNECE 1958規則への整合化により、EU型式認証を追加試験なしで受入れ。インドネシアのUNECE1958協定加入、又は2033年までの段階的受入れ措置 。

デジタル貿易

予見可能で公正なデジタル環境を整備。電子契約・電子インボイス・ペーパーレス化、中小企業支援、相互運用可能なサイバー標準等を促進 。

政府調達

透明・公正・無差別な手続原則を明記。入札アクセスの予見可能性が向上 。

知的財産権

著作権、商標、意匠、地理的表示、特許、営業秘密、品種等の包括的な保護・執行枠組みを整備。EU221品目、インドネシア72品目の地理的表示を直接保護 。

エネルギー・原材料

許認可の透明化、再生可能エネルギー分野の現地含有要件緩和、送配電網への非差別アクセス等により投資・サプライチェーンを安定化。ESG・責任ある企業行動(RBC)の協力も明記 。

貿易と持続可能な発展(TSD)・パーム油プロトコル

ILO中核条約・パリ協定等を基礎とする法的拘束力のある執行メカニズム。森林・生物多様性・IUU漁業対策を包含。
パーム油プロトコル: 規制動向の対話・持続可能な生産の協力・パーム関連貿易の円滑化を図る専用枠組み 。

投資保護協定(IPA)

不当取扱い・収用・司法救済の拒否等から投資を保護しつつ、規制権限を維持。最新型の投資紛争解決制度を3年以内の別途交渉で追加予定 。

実施タイムライン

交渉妥結: 2025年9月23日(CEPA・IPA)
今後の手続: 法的精査・多言語翻訳 → EU理事会での署名・締結提案 → 署名 → 欧州議会の同意 → インドネシア側批准 → 発効
発効見通し: インドネシアは2027年1月実施を目標としているが、正式には批准完了が前提 。

ATIGA改訂の内容

エグゼクティブサマリー

ATIGAアップグレードは、ASEAN域内の物品貿易をデジタル・持続可能社会に対応させる包括的な近代化改訂です 。2025年5月に交渉が実質妥結し、「ATIGA改正第二議定書」として2025年10月26-28日の第47回ASEANサミット(マレーシア・クアラルンプール)で署名予定です 。発効は各国の国内手続完了後となります 。

改訂の柱は、非関税措置の透明性向上原産地規則の簡素化通関のデジタル化・ペーパーレス化AEO・事前教示等のTFA+要素SPS/TBT強化(GRP導入含む)、および環境・循環経済やMSME支援等の新分野の包含です 。

交渉ステータスとタイムライン

交渉妥結: 2025年5月25日のAECC(ASEAN経済共同体理事会)会合でATIGAアップグレード交渉の妥結が正式確認されました 。

署名予定: 第二議定書は2025年10月26-28日の第47回ASEANサミットで署名予定です 。マレーシアが議長国として開催します 。

発効見通し: 署名後、各国で批准・国内実装手続きを経て発効します。具体的な発効条件・移行期間は議定書テキスト及び各国通達で確定されるため、企業は官報・税関通達の継続的モニタリングが必要です 。

改訂の主要内容

関税・市場アクセス/非関税措置

現在のATIGAは既に98.6%の品目で関税撤廃を達成しているため、今後の焦点は非関税障壁の解消にあります 。改訂では、定量規制の不実施確認、輸入ライセンス・輸出規制・輸出補助金の規律強化、通知・透明性要件、是正メカニズムの整備を図ります 。

原産地規則の近代化

**「シンプル・ビジネスフレンドリー」**を基本原則として、PSR(付加価値基準・関税分類変更基準・加工工程基準の組合せ)、累積活用、証明手続きの明確化を進めます 。特に、e-Form D/ASWの活用拡大、原産地申告制度、検認・免除閾値・記録保存義務の整備により、事務負担・リードタイム削減が期待されます 。

通関・貿易円滑化の強化

WTO貿易円滑化協定(TFA)を上回る水準(TFA+)を目指し、自動化・標準化・簡素化事前教示制度(品目分類・評価・原産地規則)、AEO制度ペーパーレス化、エクスプレス貨物、ASW/ACTS高度化を柱とする包括的拡充を行います 。

SPS・TBT・GRP強化

SPS(衛生植物検疫措置): WTO-SPS協定の再確認に加え、同等性認定の迅速化、国際基準活用、意思決定情報共有、国内手続公表、技術協議メカニズムを強化します 。

TBT・GRP(良好規制慣行): WTO-TBT協定のTBT+実装、国際規格使用・相互承認、GRP原則適用、ACCQ(ASEAN基準・品質協議会)連携を推進します 。

新分野の導入

環境・持続可能性: 多国間環境協定履行確認、各国規制主権保持、循環経済促進を明記します 。

MSME支援: 中小零細企業の市場アクセス・情報・デジタル化支援を制度化します 。

企業への影響と対応準備

重要な変化点

非関税措置への対応: 通関・検査・規格・検疫手続きのコスト・時間短縮が期待される一方、透明性・通知要件の遵守強化が求められます 。

原産地規則の高度化: ASW/e-Form D・原産地申告・記録保存要件整備によりリードタイム短縮が期待されますが、サプライチェーン情報のトレーサビリティがより重要になります 。

準備チェックリスト

制度対応:

  • 2025年10月署名後の官報・通達監視体制構築
  • 社内原産地判定SOP及び記録保存規程のATIGA改訂対応更新

サプライチェーン管理:

  • PSRデータ整備(部材別原産・非原産区分、RVC計算、累積活用方法)
  • e-Form D/ASW利用拡大及び自己申告要件確認

貿易円滑化:

  • 事前教示活用計画作成及びAEO取得・維持の費用対効果評価
  • ペーパーレス化対応(権限管理・監査ログ整備)

品質・環境管理:

  • SPS/TBT手続変更点の製品カテゴリー別棚卸
  • 循環経済・環境データ(再生材比率等)管理システム構築

今後の展望

第47回ASEANサミットでの署名により、ASEAN域内貿易の新たな段階が始まります 。企業は署名後に公表される議定書正文及び各国実施通達を注視し、段階的実装に備える必要があります 。特に、デジタル化・持続可能性・サプライチェーン強靭化といった今後のトレンドに対応した貿易実務への移行が重要となります 。