エグゼクティブサマリー
EU-インドネシアCEPA(包括的経済連携協定)は2025年9月23日に交渉妥結し、併せて投資保護協定(IPA)も最終化されました 。今後は法的精査・翻訳→署名→双方の承認・批准手続きを経て発効します 。
関税撤廃は品目数ベースで98%超、価値ベースでほぼ100%に達します 。発効時点で約80%が即時撤廃され、5年後には対EU・対インドネシア貿易の96%まで段階的に撤廃されます 。自動車・機械・化学等のEU製品は段階的撤廃の恩恵を受け、インドネシアのパーム油・繊維・履物なども市場アクセスが向上します 。
原産地規則は自己申告(self-certification)を採用し、中小企業でも使いやすい設計となっています 。通関円滑化はWTO貿易円滑化協定(TFA)を上回るTFA+の内容です 。
技術的貿易障壁(TBT)・自動車付属書では、UNECE 1958規則に基づくEU型式認証の受入れ等により再試験の重複を削減します(最遅2033年までの移行規定) 。
**貿易と持続可能な発展(TSD)**章は法的拘束力・紛争解決メカニズムにより執行され、パーム油プロトコルで持続可能なパーム関連の対話・協力・貿易円滑化の仕組みを新設します 。
発効時期は双方の国内手続完了後となり、インドネシアは2027年1月の実施を目標としています 。
主要変更点(章別要点)
関税(物品貿易)
撤廃カバレッジ: 品目の98%超(価値ベースでほぼ100%)。即時80%→5年で96%の貿易が自由化 。
EU→インドネシアの主な撤廃例:
インドネシア→EU: 多くの関税を撤廃・大幅削減。パーム油、繊維・履物などの主要輸出品にメリット 。
原産地規則
**自己申告(self-certification)**を基本とし、ビジネスフレンドリーな文書化システム。税関当局間の行政協力による検認システムを整備 。
通関・貿易円滑化
TFAの実績を統合しつつTFA+へ発展。透明性向上、品目分類・評価の明確化、手続きの公表、税関当局間の情報連携(相互行政支援プロトコル)などにより迅速・確実な通関を促進 。
SPS(衛生植物検疫)
WTO-SPS協定の再確認に加え、緊急時対応、情報共有、公式管理・認証、国境検査の効率化等を強化 。
技術的貿易障壁(TBT)・自動車付属書
認証の相互受入れ: EUの認定機関による試験・証明の受入れ(電機・機械等)
規制透明性: 60日のパブリックコメント期間+発効まで6ヶ月の猶予期間を設定
自動車付属書: UNECE 1958規則への整合化により、EU型式認証を追加試験なしで受入れ。インドネシアのUNECE1958協定加入、又は2033年までの段階的受入れ措置 。
デジタル貿易
予見可能で公正なデジタル環境を整備。電子契約・電子インボイス・ペーパーレス化、中小企業支援、相互運用可能なサイバー標準等を促進 。
政府調達
透明・公正・無差別な手続原則を明記。入札アクセスの予見可能性が向上 。
知的財産権
著作権、商標、意匠、地理的表示、特許、営業秘密、品種等の包括的な保護・執行枠組みを整備。EU221品目、インドネシア72品目の地理的表示を直接保護 。
エネルギー・原材料
許認可の透明化、再生可能エネルギー分野の現地含有要件緩和、送配電網への非差別アクセス等により投資・サプライチェーンを安定化。ESG・責任ある企業行動(RBC)の協力も明記 。
貿易と持続可能な発展(TSD)・パーム油プロトコル
ILO中核条約・パリ協定等を基礎とする法的拘束力のある執行メカニズム。森林・生物多様性・IUU漁業対策を包含。
パーム油プロトコル: 規制動向の対話・持続可能な生産の協力・パーム関連貿易の円滑化を図る専用枠組み 。
投資保護協定(IPA)
不当取扱い・収用・司法救済の拒否等から投資を保護しつつ、規制権限を維持。最新型の投資紛争解決制度を3年以内の別途交渉で追加予定 。
実施タイムライン
交渉妥結: 2025年9月23日(CEPA・IPA)
今後の手続: 法的精査・多言語翻訳 → EU理事会での署名・締結提案 → 署名 → 欧州議会の同意 → インドネシア側批准 → 発効
発効見通し: インドネシアは2027年1月実施を目標としているが、正式には批准完了が前提 。
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