メキシコ関税法改正が施行、通関責任を拡大 日本企業が今すぐ見直すべき実務ポイント


2025年11月19日、メキシコの連邦官報(Diario Oficial de la Federación, DOF)に、Ley Aduanera(一般に「関税法」「通関法」と訳される税関手続の基本法)の大規模改正を定める政令が公布されました。改正は原則として2026年1月1日に施行され、一部の段階的施行事項については1~3か月の猶予期間が設けられています。今回の改正は、関税率そのものを変える話というより、通関手続と事後監査を前提にしたコンプライアンス運用を作り替える内容です。特に、通関業者(Agente Aduanal)・通関会社(Agencia Aduanal)と、輸入者・輸出者の責任分担が実務上大きく変わります。trade+5​

以下、ビジネスマン向けに「何が変わり」「何を変えるべきか」を実務目線で整理します。

1. 何が一番変わったのか 通関責任が広がり、免責が狭くなった

改正の核心は、通関業者側の注意義務と責任が強化され、従来第54条で認められていた責任の免除規定が廃止された点です。これまで通関業者は、輸入者・輸出者から提供された情報の不正確性や虚偽について一定の免責が認められていましたが、今回の改正でこれが撤廃され、関与する全ての外国貿易取引について完全な連帯責任を負うことが明確化されました。結果として、通関業者は分類(HS・メキシコのNICO)や価格(課税価格)により保守的になり、通関前の照会・追加書類要請・取扱い拒否が増える可能性があります。braumillerlaw+4​

2. 通関業者は「共同責任」を負う範囲が拡大

制度面では、通関業者(agente aduanal)とそのパートナーである通関会社(agencia aduanal)が、当該会社が扱った案件に関する関税等や相殺関税(反ダンピング等を含む概念)の支払いについて連帯責任を負う方向が明確化されています。加えて、ライセンスの有効期間や更新の枠組みが強化され、新たに関税評議会(Customs Council)が創設されました。この評議会は、財務省(SHCP)、税務管理局(SAT)、国家関税庁(ANAM)、汚職・良好ガバナンス省の代表で構成され、通関業者免許や通関会社の認可の付与、更新、停止、取消を管理します。alvarezandmarsal+4​

実務的には、通関会社が「顧客の審査(KYC相当)」と「案件ごとの証憑整備」を以前より強く要求する流れになります。通関業者は、輸出者および輸入者が完全に特定され、インフラを有し、連邦税法第69-B条に基づき列挙された納税者と関係がないことを証明するファイルを維持することが義務付けられました。hklaw

3. 企業側は「電子ファイル(通関ファイル)」整備が必須級になる

今回の改正では、各輸入申告に紐づく電子ファイル(Electronic File)に入れるべき情報・証憑の要求水準が引き上げられています。従来は通関申告書とその付属書類のコピーのみで足りましたが、改正後は以下を含む包括的な書類が求められます:wcoomd+1​

  • 商業送り状(commercial invoice)
  • 推定価格を下回る製品の保証
  • デジタル税務証憑(CFDI)および取引に関与する物品の支払証明
  • 輸送費、保険、関連サービス費用
  • 取引に関連する契約書
  • 関税評価額への加算を裏付ける書類
  • 外国貿易取引の実行を証明するその他の書類や記録

これは「通関時に出せばよい」ではなく、後日の税関・税務当局による検証に耐える形で、最初から揃える運用への転換を意味します。なお、関税法規則第81条で規定されるこれらの書類要件は2025年12月9日から義務化されています。kpmg+3​

4. 通関業者の「直接責任」になり得る典型例が追加・明確化

改正により、通関業者・通関会社が税関当局に対して直接責任を負い得る場面が拡大しています。専門家解説では、例えば次のような類型が指摘されています:ey+1​

  • 分類(HS・NICO)の正確な決定を怠った場合
  • 関税、税金、手数料の正確な決定を怠った場合
  • 正しい通関制度と関税分類の適用を怠った場合
  • 輸入者または輸出者が通関および外国貿易義務への適合を証明する全ての書類を保有していることの確認を怠った場合braumillerlaw

要するに「分類・申告設計の誤り」が通関業者側のリスクとして跳ね返りやすくなります。

5. 保証(推定価格など)とRFE関連は段階施行に注意

改正は原則2026年1月1日施行ですが、一部条項は段階的に発効します:garrigues+1​

  • 2026年2月1日発効: 推定価格(estimated price)を下回る申告価格で輸入する場合の関税保証口座の預託解除期間が6か月から12か月に延長mexicoreport+1​
  • 2026年4月1日発効: 戦略的保税制度(Recinto Fiscalizado Estratégico, RFE)への物品搬入時の関税保証口座を通じた保証義務wcoomd

資金繰りと通関リードタイムに直結するため、CFO視点でも早めの影響試算が必要です。dlapiper

6. IMMEXや一時輸入・移転取引は、連鎖責任リスクが増える

IMMEX(マキラドーラ・輸出製造サービス産業促進プログラム)などで使われる一時輸入品のバーチャル移転(virtual operations)について、重要な義務が追加されました。alvarezandmarsal+2​

改正第112条の最終段落により、輸出者およびバーチャル輸入者は、バーチャル取引に関する電子ファイルを相互に共有することが義務付けられます。さらに、バーチャル輸出者は、バーチャル移転される物品の一部である一時輸入品に適用された生産プロセスを証明する情報と書類を共有しなければなりません。wcoomd

加えて、第59条第X項の追加により、一時輸入品を移転する者は、移転回数にかかわらず、発生した税金について連帯責任を負うことが規定されました。これにより、無関係会社間のバーチャル運用では、電子ファイル共有や工程情報の提示が実務障壁になり、バーチャル通関申告ツールの使用が抑制される可能性があります。wcoomd

また、IMMMEXおよびRFE企業は、相互運用可能なトレーサビリティ、在庫、遠隔監視システムの導入が義務付けられ、実施した工業プロセスの十分な証拠を維持することが求められます。alvarezandmarsal

7. 罰金の大幅引き上げ

改正により、特定の違反に対する罰金が大幅に引き上げられました:global-scm+1​

  • IMMEXプログラム企業が、プログラムで認可されていない物品を一時輸入した場合
  • 非関税規制および制限への適合を証明しない場合
  • 外国供給者の名称、商号が虚偽または存在しない、または記載された住所で特定できない場合

これらの場合、物品の商業価値の250%から300%相当の罰金が科されます。ただし、関税法で規定される罰金の割引制度は有効であり、税額が確定する前に適用できます。ey+1​

8. 企業にとっての「機会」もある 事後の特恵申請ルート

改正の中には、FTA等の原産性があるのに輸入時点で特恵を使わなかった場合に、後から特恵適用を申請して関税を回収できる方向の手当ても含まれていると整理されています。実務上は、原産地証明とトレーサビリティがより厳格に問われる前提で、回収機会が広がる可能性があります。

9. 日本企業の実務チェックリスト まず90日でやること

(1) 通関会社との契約見直し

  • 提出書類の範囲、提出期限、虚偽情報が出た場合の責任分担
  • 追加調査・保留・取扱い拒否の基準と連絡フロー
  • 連帯責任体制下での費用負担とリスク配分

(2) 分類ガバナンスの整備

  • HSとNICOの根拠資料(スペック、用途、構成、類似品比較)を社内標準化
  • 迷う品目は事前教示(ruling)や見解取得の検討(時間がかかる前提で計画)wcoomd
  • 改正により、分類についての事前教示はSATに提出することが明確化されましたwcoomd

(3) 価格(課税価格)と移転価格の整合

  • ロイヤルティ、金型、運賃保険など加算要素の整理
  • 支払証憑(CFDI)と契約書を案件ファイルに紐付け
  • 信用状(Letter of Credit)を通じた保証の活用検討wcoomd

(4) 電子通関ファイルのテンプレ化

  • 「最低限これが揃わないと通関に出さない」基準を作る
  • CFDIやCarta Porte(運送状)などメキシコ特有証憑を物流会社にも要求
  • 2025年12月9日からの義務化に対応した運用確立kpmg+1​

(5) IMMEX・RFEは運用棚卸し

  • 一時輸入の移転(バーチャル取引)、在庫整合、工程証明の出し方を再点検
  • 電子ファイル共有と生産プロセス情報開示の影響評価
  • 保証や滞留期限変更による資金影響を試算(2026年4月1日発効)wcoomd

(6) 監査対応の訓練

  • 直近6か月分をサンプル監査し、穴(分類・価格・原産地・証憑欠落)を潰す
  • SATおよびANAMの共同事後監査権限に備えるbraumillerlaw

まとめ 通関は「書類提出業務」から「監査対応業務」へ

今回の改正は、メキシコ側の通関が「通して終わり」ではなく「後で検証される前提」で再設計されたと見るのが安全です。通関業者の免責規定が廃止され、完全な連帯責任体制に移行したことで、通関会社が慎重化するほど、企業側の準備不足がそのまま遅延・追加コスト・差押えリスクに直結します。まずは、分類・価格・原産地・証憑の4点を、案件単位で再現可能にすることが最優先です。qima+3​

また、連邦執行府は、改正公布後120日以内(2026年3月19日まで)に関税法規則を改正する必要があるため、今後の規則改正にも注視が必要です。global-scm



免責: 本稿は一般情報であり、個別案件の法的助言ではありません。最終判断はメキシコ現地の通関会社・専門家と確認してください。

  1. https://www.trade.gov/market-intelligence/mexico-customs-law-reform
  2. https://www.alvarezandmarsal.com/thought-leadership/mexico-s-2026-customs-law-key-changes-for-global-trade
  3. https://www.braumillerlaw.com/new-mexican-customs-law-nueva-ley-aduanera-de-mexico/
  4. https://blog.qima.com/esg/customs-law-mexico-2026
  5. https://www.garrigues.com/en_GB/new/mexico-decree-published-amending-adding-and-repealing-various-provisions-customs-law
  6. https://global-scm.com/hscf/archives/134
  7. https://www.hklaw.com/en/insights/publications/2025/09/reforma-a-ley-aduanera-y-ley-de-los-impuestos-generales
  8. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2025/april/hsc-provisionally-adopts-the-recommendation-for-hs-2028-amendments-at-75th-session.aspx
  9. https://kpmg.com/us/en/taxnewsflash/news/2026/01/mexico-general-foreign-trade-rules-2026-import-export-duties-law.html
  10. https://www.ey.com/es_mx/technical/tax/boletines-fiscales/amendments-customs-law-2026
  11. https://www.mexicoreport.com/2025/12/general-foreign-trade-rules-for-2026-are-published/
  12. https://www.dlapiper.com/en/insights/publications/2025/11/mexico-amends-customs-law-and-federal-tax-code
  13. https://www.livingstonintl.com/important-update-on-mexicos-customs-reforms-and-potential-border-delays/
  14. https://www.linkedin.com/posts/alejandrocardenagalvan_shipping-into-mexico-big-change-just-landed-activity-7396940392908275712-xjaI
  15. https://www.diputados.gob.mx/LeyesBiblio/pdf/LAdua.pdf
  16. https://ccianet.org/wp-content/uploads/2025/10/CCIA-Comments-for-the-2026-USTR-National-Trade-Estimate-Report.pdf
  17. https://www.ciat.org/Biblioteca/Revista/Revista_51/Ingles/Rev_51_En.pdf
  18. https://web.wtocenter.org.tw/downFiles/13577/405261/00uTKxYz1Cs0000000000BtV3n711111QVIwnuKvKJmS7KSJbX8gngQw6jLlybuRYQ6NnCg00000ssilQbJxATV4otQc8ttviP111110hlzg==
  19. http://www.sice.oas.org/ctyindex/col/WTO/ENGLISH/s472_e.pdf

マレーシアと中国がeCOデータ交換を開始へ 通関のスピードと原産地管理はどう変わるか


マレーシアと中国の間で、原産地証明書(Certificate of Origin)の電子データ交換が動き出します。マレーシア投資・貿易産業省(MITI)と中国税関総署(GACC)は、ACFTA(ASEAN中国FTA)とRCEPの枠組みで、原産地証明書データを当局間で電子的に交換する共同取決め(Joint Arrangement)に合意しました。初期段階は、マレーシアから中国向けに、Form E(ACFTA)とRCEPの原産地証明書データを一方向でリアルタイム連携し、2026年1月の運用開始を目標としています。miti+2​

この動きは、単なる「書類の電子化」ではありません。通関の現場では、原産地証明の真正性確認と、関税優遇の適用判断がより迅速になり、同時に不正や誤りが見つかりやすくなる方向に進みます。マレーシアで生産し中国へ輸出する企業、またはマレーシア拠点をサプライチェーンに組み込む企業にとって、実務の影響は小さくありません。miti

何が始まるのか ポイントは当局間のデータ連携

今回の枠組みの要点は、原産地証明書そのものを企業間で電子送付するというより、当局が保有する証明データを、国境を越えて安全に共有し、輸入時の真正性確認と原産地検証を効率化する点です。MITIの発表では、文書送付時間の短縮、証明書の真正性確認の迅速化、機密性と安全性の向上、不正利用リスクの低減が狙いとして示されています。digitalizetrade+1​

対象はACFTAのForm EとRCEP原産地証明書

初期フェーズで電子連携されるのは以下です。thesun+1​

  • ACFTAのForm E(マレーシア発、中国向け)
  • RCEPの原産地証明書(同)

いずれも、関税優遇の適用において重要な「原産性の証拠」なので、真正性確認が速くなるほど、輸入通関の確度とスピードが上がる反面、誤った証明や整合しないデータは早期に検知されやすくなります。miti

仕組み マレーシアNSWと中国EODESを接続

MITIの説明では、マレーシア側はNational Single Window(NSW)を介して、中国側のElectronic Origin Data Exchange System(EODES)と接続します。thesun+1​

NSWはマレーシアの貿易手続きを集約する電子ゲートウェイで、2009年から稼働しており、税関申告(eDeclare)、許認可(ePermit、ePermitSTA)、決済(ePayment)、マニフェスト(eManifest)、ePCO(電子特恵原産地証明)など6つの中核eサービスで構成されています。NSWは財務省主導のイニシアチブで、Dagang Net Technologies社が開発・運用・管理を担当し、25,000以上のユーザー、年間1億件以上の電子取引を処理しています。MITIはePCOなどの発給関連モジュールの所管当局でもあり、ASEAN単一窓口(ASW)のマレーシア側リード機関としても機能しています。miti+3​

つまり今回のeCOデータ交換は、既存のNSW基盤の上に「中国税関との直結ルート」を乗せるイメージです。

なぜ今なのか 単発の施策ではなく、単一窓口協力の延長線

この話は突然出てきたものではありません。マレーシア財務省は2024年6月18日、アンワー首相と中国の李強首相の会談を経て、両国がNSWを軸に単一窓口協力を検討する共同作業部会(Joint Working Group on Single Window Cooperation)を設置し、貿易手続きのデジタル化、重複書類の削減、より正確な情報交換を進める方向性を示しています。この時点で、財務省第二大臣とGACCの于建華関税総長が単一窓口協力に関する共同声明に署名しました。mof

今回の原産地証明の電子連携は、その具体的なユースケースの一つと捉えると理解しやすいです。thestar

ビジネスへのインパクト 速くなるのは通関だけではない

1. 通関スピードとリードタイムの短縮余地

原産地証明の真正性確認が当局間データで迅速化すれば、書類照合の待ち時間や確認照会が減ることが期待されます。MITIも「文書送付時間の削減」を効果として挙げています。customs+1​

ただし、現場オペレーションが「紙提出不要」まで一気に進むかは、輸入地税関の運用次第です。中国は2020年5月から電子PCO(ePCO)の電子送信を義務づけていますが、初期段階では従来手続きとの併走を想定しておくのが安全です。jetro+1​

2. 偽造・改ざんリスクの低下と、情報漏えい対策

MITIは、証明書の真正性確認の迅速化、セキュリティと機密性の向上、第三者による不正利用の抑制を明記しています。電子データ交換は、両国関係当局間での暗号化された安全な情報共有を通じて貿易活動を合理化します。thesun+1​

対外取引が増えるほど、CO番号の悪用や書類改ざんの温床は広がります。データ連携は、ここに直接メスを入れる施策です。

3. 原産地管理の厳格化 データ品質がそのままリスクになる

当局間でデータが照合されやすくなるほど、次のような「ありがちなズレ」が通関トラブルの起点になります。

  • インボイス記載とCO記載の不一致(品名、数量、HS、インボイス番号など)
  • 原産地判定根拠の弱さ(CTC、付加価値、工程証憑が不十分)
  • 訂正や再発給の社内フロー未整備(誰がいつ何を直すか曖昧)

電子化が進むと、監査証跡が残りやすくなる一方、誤りも残ります。便利になった分だけ、内部統制の完成度が問われます。miti

実務対応チェックリスト いま企業がやるべきこと

1. 自社の対中輸出で、ACFTAとRCEPのどちらを使うかを棚卸しする

関税率の有利不利だけでなく、原産地規則の満たしやすさ、証明の取りやすさ、顧客側の通関運用を含めて選びます。

2. 原産地証明の入力データの品質を上げる

申請担当者任せにせず、インボイスとCO、BOM、原産地判定シートの突合ルールを作り、ミスが起きる前提で二重チェックを仕組みにします。

3. 修正・取消・再発給の手順を決める

電子連携があるほど、訂正の影響は広がります。輸入者、通関業者、中国側の申告タイミングを踏まえ、社内の判断基準を文書化します。

4. 取引先と「通関で何が変わるか」を事前にすり合わせる

一方向連携なので、まず恩恵を受けやすいのはマレーシア発中国向けです。中国側の申告で必要になる情報(CO参照番号の伝達方法など)を確認しておきます。thesun+1​

今後の展望 eCOは世界的に増える

中国のEODESは、2019年11月1日にシンガポールとの間でACFTAおよび中国・シンガポールFTAに基づくPCOと非加工証明書(CNM)の電子提出システムとして運用を開始しました。その後、2024年11月にはシンガポールとRCEPベースのPCOもEODESに追加する覚書が締結されています。linkedin+2​

マレーシア側も、ASEAN域内ではASEAN単一窓口(ASW)を通じてe-Form D(ATIGA電子原産地証明)の交換運用経験を積んでいます。マレーシアは既に、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、ミャンマー、フィリピン、タイ、ベトナム向けにATIGA e-Form Dを電子送信しています。customs+1​

今回の連携は、二国間の利便性向上に留まらず、域内・多国間での「原産地データ連携の標準化」へつながる可能性があります。thestar+1​

まとめ

マレーシアと中国のeCOデータ交換は、通関の迅速化と不正抑止を同時に進める施策です。現場に近いほどメリットは出ますが、同時に、原産地管理の甘さが表面化しやすくなる点が最大の注意点です。miti

特に、マレーシア拠点から中国へ輸出する企業は、申請データの品質、訂正フロー、原産地判定の証拠書類の整備を「通関のため」ではなく「監査対応のため」に引き上げることが、結果的にリードタイム短縮とトラブル削減に直結します。miti

:制度運用の詳細は当局の通達や通関実務で変わり得ます。最新の運用はMITIおよび関係当局、通関業者の案内で必ず確認してください。


  1. https://www.miti.gov.my/miti/resources/Media%20Release/%5BFINAL%5D_Media_Statement_Signing_JA_MITI_GACC_2025-11-13.pdf
  2. https://www.reuters.com/world/asia-pacific/malaysia-china-exchange-trade-certificates-electronically-2026-2025-11-13/
  3. https://thesun.my/news/malaysia-news/people-issues/malaysia-and-china-to-launch-electronic-trade-data-exchange-in-2026/
  4. https://www.digitalizetrade.org/projects/electronic-origin-data-exchange-system-china-eodes
  5. https://www.miti.gov.my/index.php/pages/view/1149
  6. https://www.dagangnet.com/trade-facilitation/national-single-window/
  7. https://eec.eaeunion.org/upload/medialibrary/2b3/6rnswsy760n0klvpbqztvc430qbmxxtx/7.2-EN-Eva-Chan-add-on-MY-NSW_210140822.pdf
  8. https://www.miti.gov.my/index.php/pages/view/3911
  9. https://www.mof.gov.my/portal/en/news/press-release/malaysia-china-agree-on-single-window-cooperation
  10. https://www.thestar.com.my/business/business-news/2024/09/18/national-single-window-initiative-to-boost-msia-china-trade
  11. https://customs.gov.sg/businesses/rules-of-origin/eodes-with-china/
  12. https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/12/275c35e30a3044d8.html
  13. https://www.linkedin.com/posts/ministry-of-finance-singapore-customs_singaporecustoms-tradeagreement-eodes-activity-7265304259225690112-HClA
  14. https://customs.gov.sg/businesses/rules-of-origin/asw/
  15. https://theedgemalaysia.com/node/779584
  16. https://www.businesstimes.com.sg/international/asean/malaysia-china-exchange-trade-certificates-electronically-2026
  17. https://www.businesstoday.com.my/2025/11/13/malaysia-china-begin-electronic-exchange-of-trade-certificates-from-jan-2026/
  18. https://www.jastpro.org/files/libs/1682/202212081408258370.pdf
  19. https://www.dnex.com.my/2024/dnex-receives-contract-extension-for-national-single-window-for-trade-facilitation-2/
  20. https://unece.org/fileadmin/DAM/cefact/single_window/sw_cases/Download/MalaysiaUseOfEDocuments.pdf

EU理事会がEU・メルコスール協定の署名を承認 発効ではない。企業が今からやるべき準備

2026年1月9日、EU理事会(Council of the EU)は、EUとメルコスール(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ)との包括的なパートナーシップ協定(EMPA)および暫定貿易協定(iTA)の署名を認める決定を採択しました。25年以上続いた交渉が大きく前進した一方で、これは発効を意味しません。ビジネス側は、政治イベントとして眺めるよりも、発効前から実務準備の勝負が始まったと捉えるべき局面です。 (欧州理事会)

以下、何が決まったのか、どこがリスクでどこがチャンスか、そして企業として何を準備すべきかを、一次情報中心に整理します。

まず押さえる3点

  1. 署名承認は発効ではない
    今回の決定は「署名に進むための承認」です。協定が効力を持つには、欧州議会の同意など、次の手続きが残っています。 (欧州理事会)
  2. 先に動くのは貿易部分(iTA)になり得る
    iTAはEUの排他的権限(主に通商分野)に属するため、加盟国ごとの批准を要しない設計です。欧州議会の同意後、EU理事会が正式に締結すれば、貿易面の便益が先行して動く可能性があります。 (欧州理事会)
  3. セーフガードと監視が最初から組み込まれている
    「関税が下がる」だけで走ると危険です。農産品を中心に、優遇停止を迅速に打てる枠組みが同時に整備されています。 (欧州理事会)

EU・メルコスールとは何か 市場規模と現状

メルコスールは南米の関税同盟で、EU側が今回の枠組みで相手とするのは主に4か国(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ)です。なお、ボリビアは加盟議定書署名済みで批准待ち、ベネズエラは資格停止とされています。 (欧州理事会)

貿易規模も大きく、EUとメルコスールの財貿易は2024年に約1,110億ユーロ(EU輸出552億、輸入560億)、サービス貿易は2023年に約420億ユーロとされています。EUの対メルコスール直接投資残高は2023年で約3,900億ユーロという説明もあり、すでに深い関係にあります。 (欧州理事会)

今回の「署名承認」で手続きはどこまで進んだのか

EU側で重要なのは、協定が二本立てになっている点です。

・EU・メルコスール・パートナーシップ協定(EMPA)
政治対話、協力、そして貿易を含む包括協定。EU加盟国すべての批准が必要。EUは政治・協力章の大部分を暫定適用する方針が示されています。 (欧州理事会)

・暫定貿易協定(iTA)
貿易・投資の自由化部分を切り出した協定。欧州議会の同意後、EU理事会が特定多数決で締結し得る設計で、EMPA発効までの間、貿易の便益を先行させる狙いです。 (欧州理事会)

2026年1月9日の時点で、加盟国側の大勢は署名を支持していると報じられていますが、最終的な効力発生には欧州議会の同意が不可欠です。 (Reuters)

何が変わるのか 関税と市場アクセスの「効きどころ」

メルコスール側の関税は、工業品を中心に依然として高い水準が残る分野があります。欧州委の資料では、現行関税の例として自動車部品35%、機械20%、化学品18%、医薬品14%が挙げられ、協定によりEU輸出側は年間40億ユーロ超の関税負担が削減され得ると説明されています。 (Trade and Economic Security)

さらに、iTAには政府調達やサービス貿易の章も含まれ、EU企業がメルコスール各国の公共調達に参入しやすくなる点も、競争環境を変え得る要素です。 (欧州理事会)

日本企業にとっての示唆は明快です。
メルコスール向け輸出でEU企業が関税面のハンディを解消するなら、同市場で日本企業が正面から価格で勝つ難度は上がります。逆に、EU拠点を活用してメルコスールへ出す、あるいは現地生産と組み合わせる企業には、選択肢が増える構図です。

セーフガードと数量枠 優遇は「止まる前提」で設計する

農業分野は政治的な反発が強い領域であり、EU側は優遇拡大を数量枠とセーフガードでコントロールする設計を強調しています。

例として欧州委のファクトシートには次が示されています。 (Trade and Economic Security)

・牛肉
無税枠ではなく、年9万9,000トンを7.5%関税で輸入可能(内訳は生鮮・冷蔵55%、冷凍45%)。 (Trade and Economic Security)

・家きん肉
年18万トンの無税枠を5年かけて段階導入。 (Trade and Economic Security)

・砂糖
ブラジル向けに新規の砂糖枠を作るのではなく、既存のWTO枠の中で精製用原料糖18万トンを無税に、加えてパラグアイ向けに1万トンの新規無税枠。 (Trade and Economic Security)

重要なのは、セーフガードが「実装フェーズ」に入っている点です。EU理事会と欧州議会は、農産品向けの二国間セーフガードを実務的に動かす規則案で暫定合意し、価格下回り5%と、輸入量や輸入価格の一定変動を調査開始の目安として扱うこと、調査を原則4か月で終えること、緊急時は21日以内に暫定措置を導入できることなどを示しています。また、2026年3月1日までに市場監視を支える技術ガイドラインを出す方針も明記されています。 (欧州理事会)

企業実務としては、優遇関税があるからといって、その前提で長期契約の価格式や需給計画を固定すると危険です。優遇停止のトリガーが制度として明確化されるほど、影響は「突然」起きます。

原産地規則と証明実務 勝敗は書類と設計で決まる

関税が下がっても、原産地を満たさなければゼロです。iTAの原産地章では、EUの近年型協定に近い「商業書類上の原産地申告(Statement on origin)」を中核に据えています。

公開されているiTA本文では、次が読み取れます。 (データ協議会)

・輸出者が、インボイス、納品書、その他の商業書類に「原産地申告」を記載する方式
・原産地申告には、原則として輸出者の手書き署名が必要(ただし輸出国法令で別段があればそれに従う)
・申告は輸出時に作成でき、輸出後に作成することも可能だが、輸入後2年以内に提示する必要がある
・有効期間は作成日から12か月
・輸出者と輸入者に、それぞれ少なくとも3年間の記録保存義務 (データ協議会)

さらに、優遇適用は「制度悪用があれば止まる」設計です。iTAには、優遇を得るための大規模・体系的な法令違反や不正があり、かつ相手側が協力義務を体系的に拒否するなどの状況がある場合に、当該品目の優遇を一時停止できる趣旨の規定が置かれています。 (データ協議会)

実務で問われるのは、次の二つです。

・原産設計
サプライヤーからの情報収集、工程分解、品目別ルールへの当てはめを、発効後ではなく発効前に完了させる。

・証明フロー
輸出者の申告書式、署名要件、保存年限、照会対応(監査対応)を、法務と貿易実務で一体運用にする。

サステナビリティ条項は貿易条件そのものになった

EU側が政治的に強調するのは、持続可能性を「付け足し」ではなく「協定の中核」に置く点です。

欧州委の説明では、パリ協定が協定の「本質的要素」とされ、重大な違反がある、または一方がパリ協定から離脱する場合に、協定を停止し得る枠組みを明記しています。さらに、EU森林破壊防止規則などEU域内法は協定下の輸入にも引き続き適用され、違法伐採対策や森林減少への拘束力あるコミットメント、責任あるサプライチェーン(国際指針の活用)も盛り込まれると整理されています。 (Trade and Economic Security)

食品・動植物検疫(SPS)についても、EUは「基準は交渉対象外」と明言し、予防原則や国境検査、監査などの枠組みは維持されるとしています。 (Trade and Economic Security)

日本企業にとっては、EU向け取引ですでに求められているESG・デューデリジェンスが、メルコスール関連の調達や三国間取引にも広がり得る、という読みになります。関税メリットとコンプライアンスコストを同時に見積もる必要が出ます。

日本企業のチェックポイント どこに影響が出るか

関係し得る企業像は大きく3つです。

  1. メルコスール向けに輸出している日本企業
    EU企業の関税ハンディが縮むと、価格競争が強まります。特に自動車部品、機械、化学品など、現行関税が高い領域ほど影響が出やすい。 (Trade and Economic Security)
  2. EUに生産・販売拠点を持つ日本企業
    EU拠点からメルコスールへ出す場合、原産地要件を満たせれば、関税条件が改善する余地があります。逆に、原産地設計に失敗すると「EUにいるのに優遇が取れない」状態になります。 (データ協議会)
  3. 重要鉱物や一次産品を扱う企業
    EUは重要原材料の供給多角化を戦略目的として明確に掲げ、ブラジルのニオブやアルミ、アルゼンチンのリチウムなどを具体的に挙げています。需給や投資の流れが変わる可能性があるため、長期調達の前提条件(価格、原産地、輸出税等)を見直す材料になります。 (Trade and Economic Security)

今からやるべき実務リスト

発効日が確定してから動くのでは遅い、というのが結論です。着手順としては次が現実的です。

・自社品目の影響棚卸し
メルコスール向けの現行関税、競合(EU企業)比率、値引き余地を洗い出し、価格戦略を更新する。 (Trade and Economic Security)

・原産地設計の先行着手
EU拠点やEUサプライチェーンを使う場合、原産地申告の運用要件(保存、署名、期限、照会対応)まで含めて業務設計する。 (データ協議会)

・優遇停止を織り込んだ契約設計
セーフガードや監視が機動的に動く前提で、価格条項や供給義務、フォースマジュール、関税再交渉条項を整備する。 (欧州理事会)

・ESG・トレーサビリティの再点検
森林破壊規制などEU域内法の適用を前提に、原料調達やサプライヤー管理の証憑を揃える。 (Trade and Economic Security)

・議会プロセスの監視
欧州議会の同意が最後の大関門です。報道だけでなく、EU理事会や欧州委の一次情報で節目を追う体制にしておく。 (欧州理事会)

まとめ

EU理事会の署名承認は、巨大協定が「止まるか進むか」の政治局面を越え、企業実務が問われるフェーズへ移った合図です。
恩恵は、関税だけではなく、原産地設計と書類運用が取れて初めて発生します。さらに、セーフガードやESG規制は、優遇の前提を動かし得る変数として同時に管理すべき対象です。 (欧州理事会)

免責:本稿は公開情報に基づく一般的な整理です。個別取引への適用可否や実務設計は、最新の法令・通達とあわせて専門家確認を推奨します

韓国のCPTPP加盟再検討が企業に与える影響を深掘りする


(2026年1月11日現在の公開情報に基づく)

はじめに

2025年後半から、韓国政府はCPTPP(包括的かつ先進的な環太平洋パートナーシップ協定)への参加を「再検討」する姿勢を、政策レベルで改めて打ち出し始めました。 背景には、対米・対中への依存度が高い輸出構造のリスクと、主要市場における競争条件の変化があります。 韓国の動きは、韓国企業だけでなく、日本企業の調達・販売・現地生産・投資判断にも連鎖的に影響し得ます。koreajoongangdaily.joins+1​

本稿では、韓国が「加盟した場合」の関税メリットにとどまらず、どの業務プロセスがどの順番で影響を受けやすいのかを、実務目線で整理します。結論を先に述べると、最大の論点は関税そのものよりも、メキシコを中心とした競争条件の再編と、原産地規則を前提としたサプライチェーン設計の見直しです。clarkhill+1​


要点(忙しい方向け)

  • 韓国政府は2025年9月頃からCPTPP参加の再検討を公表し、2025年12月には「CPTPPとの関係強化」を含む通商方針を示しています。 2026年1月上旬時点で公表されている表現は「再検討」「準備が整い次第追加措置」といったレベルにとどまり、寄託国への正式通報(加入申請)の提出時期や、すでに提出済みかどうかを明示した情報は確認できません。nippon+2​
  • CPTPPは2026年1月時点で12の締約国(オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナム、英国)で構成されており、英国の加入手続は2024年末に効力を生じています。 新規加盟は既存ルールの変更を前提とせず、加盟希望国はまず寄託国ニュージーランドに正式な加入要請を通報し、その後CPTPP委員会の合意、作業部会設置、市場アクセス交渉など複数段階を経ることになります。mfat+3​
  • 韓国にとって分かりやすい「痛み」は、メキシコで顕在化しています。メキシコは2026年1月1日から、FTA未締結国など一部の国からの輸入について、約1,400品目でMFN関税率を引き上げ、鉄鋼や自動車など一部品目では最大50%の関税が適用され得ると報じられています。 対象には韓国が含まれ、一方で日本は日墨EPAやCPTPPにより、多くの品目で協定税率の適用余地があるため、同じ市場で競争条件が分かれやすい状況です。craneww+3​
  • 韓国がCPTPP加盟に進むほど、日本企業にとっては「韓国企業の競争力が上がる」という側面と、「日本企業が韓国をサプライチェーンに組み込みやすくなる」という側面の両方が生じます。 どこに勝ち筋があるかは、取引先・製造拠点・品目ごとに異なります。mfat+1​

第1章 いま何が起きているのか:再検討の位置付け

韓国政府は2022年前後にCPTPP参加を推進する方針を示しつつも、正式な加盟申請には踏み切れなかったと報じられています。 要因として、農業・水産業を中心とする国内の反発や、当時の日韓関係の緊張が挙げられます。koreatimes+1​

その後、2025年9月、米国および中国をめぐる通商環境の不確実性への対応策の一つとして、韓国政府はCPTPP参加の再検討に着手する方針を明らかにしました。 さらに2025年12月には、産業通商資源部などが2026年の政策目標の中で、対中サービス分野のFTA推進と並行してCPTPPとの関係強化に言及したとされています。investkorea+1​

CPTPPの締約国閣僚は2025年5月16日に韓国・済州で会合を開いており、韓国は加盟国ではないものの、地域の通商アジェンダを議論する場として位置付けられていることがうかがえます。 また2026年1月上旬には、日韓首脳会談でCPTPPが議題となる可能性が報じられ、韓国側は日本の支持獲得を模索しているとされています。 ただし、韓国政府の説明は「準備が整い次第、追加措置を取る」といった表現にとどまり、実務的には「国内調整と事前協議の段階が続いている」と見るのが安全です。gov+3​


第2章 CPTPP加盟プロセス:企業が見るべき節目

CPTPP加盟プロセスでは、ニュースの見出し以上に「手続き上の節目」が重要になります。理由は、各節目を越えるたびに、企業が前倒しで検討すべき論点が変わるためです。mfat

協定文書および関連説明によれば、加盟希望国は寄託国ニュージーランドに正式な加入要請を通報し、寄託国はこれを他の締約国に共有します。 その後、CPTPP委員会がコンセンサスにより交渉開始の可否を決定し、交渉開始が合意されれば、加入作業部会が設置される流れが一般的に想定されています。cas+1​

ニュージーランド政府は、新規加盟国は既存の協定を前提に参加する必要があり、協定文自体が新規加盟国のために書き換えられるわけではない点を説明しています。 つまり「新たな例外を設けて入りやすくする」タイプの交渉ではなく、既存の高水準ルールにどこまで適合できるかが問われます。mfat

またCPTPP側は拡大方針として「オークランド原則(Auckland Principles)」に沿って加盟を進めるとし、十分な準備が整った国・地域からの申請を歓迎するとしています。 ここで言う準備には、高い水準の義務を履行できることや、全会一致の合意を得られる見通しなどが含まれます。cas+1​

実務担当者が注視すべき節目は、次のとおりです。

  • 韓国が寄託国ニュージーランドに正式な加入要請(通報)を行ったかどうか
  • CPTPP委員会が韓国の加盟交渉開始および作業部会設置を決定したか
  • 関税・サービス・投資などの市場アクセスオファーが具体化したか
  • 韓国国内の関連法令改正や国会承認手続きがどこまで進んだか

ここまで進まない限り、企業として「影響が必ず来る」と言い切ることはできません。ただし、プロセスが動き出してから準備しても間に合わない領域があるため、そこに先回りすることが価値を持ちます。mfat


第3章 韓国が再加速する理由:メキシコ問題と競争条件

ビジネスの現場で分かりやすいのが、メキシコのMFN関税引き上げです。メキシコは2026年1月1日から、約1,400前後のタリフラインについてMFN関税率を引き上げ、鉄鋼、機械、自動車など一部品目では最大50%の関税水準に達し得る改正を実施しました。 この改正は主としてFTA未締結国を対象とし、韓国や中国、インド、インドネシアなどが対象国に含まれると報じられています。opportimes+5​

韓国メディアや専門家の報道では、メキシコの関税引き上げに対して韓国輸出企業の警戒感が高まり、韓国政府が適用除外や柔軟運用を求めたものの、交渉は容易ではないとされています。 韓国にとっては、メキシコ市場での価格競争力が関税面から直接圧迫される構図です。foley+1​

一方、日本企業にとって重要なのは、「同じメキシコ市場で、日本は日墨EPAやCPTPPを通じて協定税率を利用できる一方、韓国はMFN税率に直面する品目が出てくる」という非対称性です。 JETRO等の解説でも、今回のMFN関税率引き上げはFTA締結国の協定税率には直接影響せず、FTA非締結国との間で競争条件のギャップが拡大する点が指摘されています。mohawkglobal+2​

ここから先は仮説レベルの分析ですが、この状況は韓国企業にとって、「メキシコとの二国間交渉を再起動する」か、「CPTPP加盟を通じて協定ネットワークに組み込まれる」かの選択圧として働きやすいと考えられます。 韓国のCPTPP再検討は理念的な側面だけでなく、競争条件の是正という極めて実務的な動機が大きいとみるのが妥当です。clarkhill+2​


第4章 企業への影響を4つに分解する

ここからが本題です。企業が受ける影響は、大きく4つに分解すると見通しが良くなります。

1. 市場アクセス(関税と数量制限)

韓国がCPTPPに加盟すれば、現時点でFTAがない、または条件が相対的に不利な相手国・地域との取引で競争条件が変化します。 代表例がメキシコであり、現在、日本企業は日墨EPAやCPTPPを通じて協定税率を利用できる一方、韓国企業はMFN税率適用品目で不利な局面が生じています。 韓国が加盟することで、こうしたギャップが縮小する可能性があります。global-scm+3​

2. 原産地規則と累積の範囲(サプライチェーン設計)

CPTPPの実務では、原産地規則および加盟国間での「累積」の扱いがサプライチェーン設計に大きく影響します。 韓国が加わると、部材や工程を「CPTPP域内」としてカウントできる範囲が広がり、最適な調達先や生産地の組み合わせが変わり得ます。 CPTPPは包括的な原産地規則を持ち、既存の韓国FTAネットワークよりも累積の選択肢が広がる可能性があるため、原産地規則の運用を競争力の源泉とできる企業ほど優位性を高めやすくなります。mfat

3. ルール分野(デジタル、知財、国有企業、政府調達など)

CPTPPは関税削減にとどまらず、デジタル貿易、知的財産、国有企業、政府調達など幅広いルール分野を含む高水準協定です。 新規加盟国は既存の協定文に従う必要があり、国内法制や行政運用の調整が避けられません。 協定文書はニュージーランド外務貿易省等の公的リソースで公開されており、企業としても条文を直接参照しながらコンプライアンスや契約設計を検討することができます。cas+1​

韓国はデジタル経済分野の国際ルール形成にも積極的であり、2023年にDEPA(Digital Economy Partnership Agreement)への加盟交渉を実質妥結し、2024年に正式に加盟しています。 CPTPPのデジタル関連ルールへの適合という観点では、こうした取組が交渉基盤として参照される可能性があります。mfat+3​

4. 政治経済リスク(国内反発と交渉の不確実性)

企業が読み違えやすいのが、加盟に向けた政治・社会的ハードルです。韓国では過去にも農業・水産業を中心にCPTPPへの反発が強く、加盟申請を見送った経緯が報じられています。 加盟交渉が具体化するほど、農業生産への影響や食品・水産物をめぐる懸念、補償・セーフガード設計などの国内対策を巡る政治コストが増し、スケジュールが揺れやすくなります。everycrsreport+2​


第4章補足 3つの具体的シナリオ(仮説)

以下は、典型的な企業行動を想定した仮説的なシナリオです。自社の実態に合わせて読み替えてください。

シナリオ1 メキシコ向けに日本から完成品を輸出している企業

現状、日墨EPAやCPTPPの協定税率が使える設計であれば、韓国企業が同一製品をMFN税率で輸出する場合、関税差が価格競争力の差として表れやすくなります。 韓国がCPTPPに加盟して協定税率を利用できるようになれば、関税に起因する価格差は縮小し、競争の軸は品質、納期、現地サービスなど非価格要因にシフトしやすくなります。mohawkglobal+3​

シナリオ2 韓国で部材を調達し、CPTPP域内に輸出している企業

韓国がCPTPPに加盟すれば、累積の範囲が拡大し、一部の製品では原産性判定を満たしやすくなる可能性があります。 その結果として、「韓国調達を増やす」「韓国で一部工程を追加する」といったサプライチェーン最適化オプションが現実味を帯びます。原産地規則の設計をサプライヤー選定・工程設計に組み込める企業ほど有利になります。mfat

シナリオ3 日韓でデジタル・サービスを展開する企業

CPTPPは電子商取引やデジタル貿易に関する高水準のルールを含んでおり、新規加盟国はこれらの規律に適合する必要があります。 韓国はDEPA加盟を通じてデジタル分野の国際ルールへのコミットメントを示しており、CPTPPへの対応が進むほど、域内でのデジタル取引の予見可能性が高まり、契約条項やコンプライアンス設計の標準化が進めやすくなる余地があります。digitalpolicyalert+3​


第5章 日本企業はどう動くべきか:実務チェックリスト

韓国のCPTPP加盟は、「決まってから動く」と手遅れになりやすいテーマです。実務では、以下の順で準備するのが効率的です。

1. 自社の「韓国との関係」を棚卸しする

  • 韓国企業に部材・完成品を供給しているか
  • 韓国から部材・サービスを調達しているか
  • 韓国に生産拠点があり、そこからCPTPP域内へ輸出しているか
  • 韓国企業と第三国市場(特にメキシコ、カナダなど)で競合しているか

2. 競争条件が変わる国と品目を特定する

メキシコのように、FTAの有無で関税が大きく分かれる市場では影響が直撃します。 自社の貿易実績から、メキシコ向け、あるいはメキシコを含む北米供給網に関わる品目を優先的に洗い出すアプローチが現実的です。foley+3​

3. 原産地規則に基づくBOM再設計の余地を探る

韓国が加盟した場合、累積の範囲拡大によって原産性判定が通りやすくなるのか、逆に調達先変更で不利になるのかは製品ごとに異なります。 製品別の部材構成表(BOM)をベースに簡易シミュレーションを行い、インパクトが大きい品目から深掘りすることを推奨します。mfat

4. 「いつから効くか」を手続きの節目で追う

交渉開始前に、協定税率や原産地運用が変わることは通常ありません。 したがって、ニュースのトーンよりも、「正式通報」「作業部会設置」「市場アクセスオファー提示」など、前述の手続き上の節目をトリガーとして社内アクションを切り替える設計が有効です。cas+1​


おわりに

韓国のCPTPP加盟検討は、単なる通商ニュースではなく、企業の競争条件と供給網設計に直結するテーマです。 とくにメキシコの関税政策のように、協定ネットワークの差がそのままコスト差となる局面では、韓国の動きが加速するほど市場前提が変わっていきます。koreajoongangdaily.joins+3​

一方で、加盟は自動的に決まるものではなく、段階的なプロセスと全会一致の合意、既存の高水準ルールへの適合が求められます。 企業としては、加盟の成否を「当てにいく」ことよりも、競争条件が変化したときに即応できるよう、品目とサプライチェーン単位で準備を進めておくことが、最もリスクの低い対応と言えます。koreajoongangdaily.joins+2​

  1. https://global-scm.com/blog/?p=3774
  2. https://www.clarkhill.com/news-events/news/mexico-approves-significant-tariff-increases-on-imports-from-non-fta-countries/
  3. https://koreajoongangdaily.joins.com/news/2025-09-03/business/economy/Korea-to-reconsider-joining-CPTPP-as-US-and-China-tighten-trade/2390550
  4. https://www.mfat.govt.nz/en/media-and-resources/joint-press-release-on-the-accession-of-the-republic-of-korea-to-the-digital-economy-partnership-agreement
  5. https://digitalpolicyalert.org/event/19613-implemented-accession-of-the-republic-of-korea-to-the-digital-economy-partnership-agreement
  6. https://www.nippon.com/en/news/yjj2026010901026/
  7. https://www.investkorea.org/ik-en/bbs/i-5073/detail.do?ntt_sn=493042
  8. https://www.mfat.govt.nz/assets/Trade-agreements/CPTPP/CPTPP-CBF-Supply-Chains-Analysis-2023.pdf
  9. https://www.gov.uk/government/publications/cptpp-joint-ministerial-statement-in-jeju-16-may-2025/comprehensive-and-progressive-agreement-for-trans-pacific-partnership-cptpp-joint-ministerial-statement-16-may-2025
  10. https://www.cas.go.jp/jp/tpp/tppinfo/2025/pdf/20250516_cptpp_seimei_en.pdf
  11. https://www.cas.go.jp/jp/tpp/en/pdf/20250516_cptpp_seimei_en.pdf
  12. https://www.craneww.com/knowledge-center/trade-advisory-notices/mexicos-2026-tariff-reform/
  13. https://www.opportimes.com/en/tariff-increases-in-mexico-on-countries-without-trade-agreements-come-into-effect-on-january-1/
  14. https://www.koreatimes.co.kr/business/tech-science/20220102/interview-korea-seeks-role-of-linchpin-in-solving-supply-chain-challenges
  15. https://www.everycrsreport.com/files/2022-02-17_R41481_cd1582d184ddf1e3ea2cdaea764e572b3b2fb772.pdf
  16. https://www.gov.uk/government/publications/cptpp-joint-ministerial-statement-in-jeju-16-may-2025
  17. https://mohawkglobal.com/trade-translation/mexico-approves-tariff-increases-on-imports-from-non-fta-countries/
  18. https://www.foley.com/ja/insights/publications/2025/12/mexican-january-2026-tariff-tsunami-maquilas-arent-immune/
  19. https://www.korea.net/NewsFocus/policies/view?articleId=233916
  20. https://www.bilaterals.org/?south-korea-joins-depa-as-first
  21. https://www.kas.de/documents/287213/26295266/IPEF+Discussion+Paper+Series_The+Republic+of+Korea+and+the+IPEF.pdf/4bece26c-b648-23cf-c90d-423c5b6bdfca?version=1.0&t=1696318218947
  22. https://openjicareport.jica.go.jp/pdf/12376869.pdf
  23. https://www.jiia.or.jp/eng/upload/eng/JapanReview_Vol4_No2_Winter_2021.pdf
  24. https://keia.org/wp-content/uploads/2024/01/KEI_KoreaPolicy_2023_V1-I3_final-draft.pdf
  25. https://blog.crossborderboost.com/policy-paper-cptpp-joint-ministerial-statement-in-jeju-16-may-2025/
  26. https://www.congress.gov/crs-product/R41481
  27. https://www.iti.or.jp/report_121.pdf
  28. https://www.ioe-emp.org/index.php?t=f&f=156744&token=2128a312a06ee23015dfe7e69801803fc94a51ff
  29. https://www.whitecase.com/insight-alert/mexico-formalizes-and-expands-import-tariffs-more-1400-products-key-impacts
  30. https://www.kedglobal.com/business-politics/newsView/ked202509030011

米最高裁の関税訴訟、次の節目は1月14日。相互関税リスクを「資金」「契約」「通関」で読み解く


米国の関税が、また一段と読みづらくなっています。

理由はシンプルで、関税が「政策」ではなく「司法判断」で大きく揺れる局面に入っているからです。

米連邦最高裁は、トランプ政権が国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠に発動した広範な関税について、2026年1月14日に次の判決公表日を予定しています。ただし、最高裁は事前に「どの事件の判決を出すか」を公表しないため、1月14日に関税事件が出るとは限りません。とはいえ、関税事件は2025年11月5日に口頭弁論が行われた重大案件であり、判決がいつ出てもおかしくない状況です。finance.yahoo+3​

以下では、ビジネスパーソンが押さえるべき実務論点を、相互関税(reciprocal tariffs)の視点で深掘りします。

先に要点

  • 1月14日は「次の判決公表日」。関税判決が出る可能性はあるが確定ではないfinance.yahoo+1​
  • 争点は、IEEPAが大統領に広範な関税(事実上の税)を課す権限を与えるかどうかey+1​
  • 返金が論点になった場合、累計で2025年12月14日時点で133.5億ドル、現時点では推計1500億ドル規模が俎上に載るreuters+1​
  • 判決の中身以上に、企業実務では「返金の手続き」と「権利保全(通関データと期限)」が勝負になるiscm+1​
  • 調達、物流、財務、法務が同じ台帳を見て、シナリオ別の打ち手を揃えるべき局面cnbc

なぜ「1月14日」が注目されるのか

米最高裁は1月9日にも判決を出しましたが、注目されていた関税事件は出ませんでした。次の判決公表日が1月14日で、関税事件も含め「いずれかの事件で判決が出る可能性がある」とされています。最高裁は、当日まで対象事件を明かしません。finance.yahoo+1​

ここで重要なのは、「1月14日に出るか」よりも「出た瞬間に自社の損益とキャッシュにどう跳ねるか」を先に設計しておくことです。

特に相互関税は、国別、品目別、原産地別に効き方が異なるため、社内での情報の分断が致命傷になります。

そもそも何が争われているのか

今回の最高裁事件は、学習玩具メーカー(Learning Resources, Inc.)などの企業と複数州が、トランプ政権の関税が違法だとして争っているものです。最高裁が判断する中心は、IEEPAが大統領に関税を課す権限を与えているのか、という一点に集約されます。hklaw+2​

関税の中身は大きく2系統です。

1つ目が、貿易赤字を「国家緊急事態」と位置づけ、ほぼ全ての貿易相手国を対象にした相互関税(ベース10%、国によって上乗せで最大50%など)です。これは2025年4月2日の「Liberation Day」に発表されました。finance.yahoo+3​

2つ目が、フェンタニル流入や不法移民を理由に、中国、カナダ、メキシコ等を対象にした関税です。reuters+1​

下級審では、政権側の権限逸脱を認定する判断が出ており、連邦控訴裁判所は2025年8月29日にIEEPA関税を違法と判断しました。ただし、最高裁での審理期間中は関税が維持される形で執行停止が認められています。ey+1​

金額インパクト:返金リスクは「少なくとも133.5億ドル、推計150億ドル」

関税が違法と判断された場合、次に問題になるのが「既に支払われた関税を返すのか」です。

米税関・国境警備局(CBP)のデータとして、2025年12月14日時点で、返金対象になり得るIEEPA関税が133.5億ドルと報じられています。さらにReutersは、日次の徴収ペースから合計が150億ドル近くに接近している可能性にも言及しています。仮に判決が2026年6月まで遅れた場合、財務長官ベッセント氏は返金額が7500億ドルから1兆ドルに達する可能性を示唆しています。ksgf+2​

企業側から見ると、これは単なる「ニュース」ではありません。

輸入量が大きい会社ほど、年次予算レベルの資金が「費用として確定するのか」「返金債権になるのか」が変わり得ます。

一方、最高裁が違法判断をしても、返金を最高裁が明確に命じるのか、下級審や行政実務に委ねるのかは不透明、とも報じられています。ただし、国際貿易裁判所(CIT)は既に、IEEPA関税が違法とされた場合には再清算(reliquidation)を通じて返金を命じる権限があることを確認しており、CBP法務担当者も異議を唱えない旨を記録に残しています。scotusblog+2​

口頭弁論で見えた最高裁の関心

2025年11月5日の口頭弁論では、保守派、リベラル派の双方から、関税の法的根拠に疑義が呈されたと報じられています。finance.yahoo+1​

実際の法廷のやり取りを見ると、ビジネスに直結する論点が浮かびます。

論点1: 規制か、課税か

IEEPAの条文には「関税(tariff)」という単語が出てこない中で、政権側は「輸入を規制する(regulate)」という文言に関税も含まれると主張しました。これに対し、裁判官側は「関税は税(tax)ではないのか」という切り口で詰めています。口頭弁論では、ソトマイヨール判事が「this is a tariff, this is a tax」と明言する場面もありました。hklaw

論点2: 権限解釈が広がり過ぎるリスク

権限を広く解釈すると、例えば気候変動のようなテーマでも、緊急事態を宣言して特定製品に高関税を課すことが理屈上可能になるのではないか、という懸念が示されています。実際に、ゴーサッチ判事は「海外由来の気候変動という脅威」を仮定し、自動車に50%関税を課せるのかという問いを投げ、政権側が「非常にあり得る(very plausibly)」と答える場面がありました。hklaw

この2点は、判決がどちらに転んでも、将来の政策不確実性を左右します。

相互関税は、課税権限の議論と切り離せません。だからこそ、企業は政策担当だけでなく、財務と通関実務を巻き込む必要があります。

企業が想定すべき3つのシナリオ

以下は、経営側が最低限持つべきシナリオ整理です。

シナリオ何が起きるか企業への一次影響すぐに必要な打ち手
A: 政権側勝利(関税維持)IEEPAでの関税を概ね容認コスト高が継続、価格転嫁と調達再設計が長期戦にコスト転嫁の契約整備、供給先分散、関税最適化(保税、FTZ等)
B: 企業側勝利(関税違法)関税停止や縮小の可能性返金期待が発生。ただし返金手続きは未確定返金権利の保全、通関データ整備、会計処理方針の整理
C: 限定判断、差し戻し関税の一部のみ違法、または返金は下級審へ影響が品目や期間で分断され、実務が最も混乱どの輸入が対象かを即日で切り分け、社内外で説明可能にする

上の表で重要なのは、シナリオBでも「自動で返金される」と決め打ちしないことです。CITは返金を命じる権限を確認済みですが、実際の手続き、タイミング、配分ルールは最終的な判決内容とCBPガイダンスに依存します。scotusblog+3​

実務のチェックリスト:判決前にやること、判決後72時間でやること

ここが本稿の核心です。関税は、法律論よりも実務設計で勝敗が分かれます。

判決前: 今週中に整える

1. 関税エクスポージャー台帳を一本化

  • 輸入者(Importer of Record)が誰か
  • HSコード、原産国、課税根拠(IEEPAか他法か)、追加関税の税目コード
  • エントリー番号、申告日、納付額、通関業者
  • 売上契約側での転嫁状況(価格改定、サーチャージ条項)

これが揃わないと、シナリオBになった瞬間に「返金対象かどうか」が判別できません。

2. 期限管理の確認

Reutersは、輸入者が修正できる期間と、エントリーの確定(liquidation)に触れ、期限を過ぎると返金が難しくなる可能性を示しています。ただし、CITとCBPの記録では、IEEPA関税が違法とされた場合、再清算を通じて返金が命じられる見込みであり、清算期限の延長は不要との見解も示されています。iscm+1​

実務は品目や手続きで例外もあるため、通関士、通関業者、貿易弁護士と一緒に、自社の輸入がどの状態にあるかを必ず棚卸ししてください。

3. 返金の受け皿を決める

  • 返金が来た場合、誰が受領し、誰が社内配賦し、誰が会計処理するか
  • 顧客や取引先に転嫁していた場合、返金の扱いをどうするか

Reuters記事では、輸入者が返金を得た場合に、小売や顧客から配分を求められる懸念が語られています。これは日本企業でも起き得ます。ベッセント財務長官も、企業が消費者に返金を還元するかは不透明であり、「企業への利益供与(corporate boondoggle)」になる可能性を示唆しています。reuters+3​

判決後72時間: 出た瞬間に走る

1. 対象範囲を即時に切り分け

相互関税、フェンタニル関連関税など、どの系統がどう判断されたかで、対象輸入が変わります。reuters+1​

判決要旨を読んでから台帳で対象を抽出する流れを、事前に演習しておくと強いです。

2. 税関実務の動きを確認

CBPは、2026年2月6日から全ての関税返金を電子配信に移行する技術的変更を発表しました。これは完全自動返金ではありませんが、CBPが返金実務に向けた準備を進めているシグナルとされています。ksgf+1​

実際の運用はガイダンスが出るまで確定しないので、通関業者との定例確認を前倒ししてください。

3. 説明戦略を統一

  • 投資家、金融機関、監査、取引先への説明テンプレート
  • 価格改定やサプライヤー再交渉の根拠

判決直後は情報が錯綜します。経営が一枚岩で説明できるかどうかが、交渉力を左右します。

日本企業が見落としやすい論点

1. 米国子会社が輸入者になっているケース

日本本社が「売っているだけ」のつもりでも、米国側がImporter of Recordになっていれば、関税コストと返金権利は米国側に帰属します。グループ内取引価格と利益配分まで波及します。

2. 日本企業も既に動いている

Reutersによれば、コストコなどに加え、横浜タイヤ(Yokohama Tire)やカワサキモーターズ(Kawasaki Motors)も返金権利を守るための訴訟を提起したと報じられています。日本企業にとっても他人事ではありません。reuters+1​

3. 政治イベントではなく、キャッシュイベントとして扱う

ベッセント米財務長官は、仮に返金が命じられても国庫資金は十分で、支払いは数週間から最大1年程度に分散し得るという趣旨を述べています。財務省の2026年1-3月期借入見積では、3月末の現金残高は約8500億ドルと予測されています。一方で「企業への利益供与」だとの見方も示しています。timesofindia.indiatimes+2​

つまり、返金があるとしても、いつ、どの単位で、誰に、どの条件で戻るかは別問題です。企業側は「返金期待」をPLで先走らせず、台帳と期限で権利を守るのが先です。

結論

1月14日は「判決が出るかもしれない日」です。finance.yahoo+1​

しかし、ビジネスにとっての本質は「その日に出るか」ではなく、出た瞬間に、相互関税コストを誰が負担し、返金があるなら誰が受け取り、契約上どこまで返すのかを即答できるかです。

関税は最終的に、通関データと契約条項と会計処理が握っています。

意思決定の速度を上げるために、今日から、調達、物流、財務、法務が同じ台帳を見てください。


  1. https://finance.yahoo.com/news/live/trump-tariffs-live-updates-supreme-court-will-not-rule-on-trumps-most-sweeping-duties-friday-152657745.html
  2. https://finance.yahoo.com/news/live/trump-tariffs-live-updates-bessent-says-treasury-can-cover-any-tariff-refunds-supreme-court-yet-to-rule-on-trumps-most-sweeping-duties-152657605.html
  3. https://www.hklaw.com/en/insights/publications/2025/11/supreme-court-oral-arguments-signal-skepticism
  4. https://global-scm.com/hscf/archives/134
  5. https://www.ey.com/en_gl/technical/tax-alerts/us-supreme-court-will-hear-oral-arguments-in-tariff-case-in-early-november-2025-opening-briefs-due-soon
  6. https://www.reuters.com/legal/government/importers-brace-150-billion-tariff-refund-fight-if-trump-loses-supreme-court-2026-01-08/
  7. https://www.ksgf.com/2026/01/08/importers-brace-for-150-billion-tariff-refund-fight-if-trump-loses-at-supreme-court/
  8. https://iscm.co/january-2026-ftzine/
  9. https://www.cnbc.com/2026/01/08/supreme-court-trump-tariff-ruling-refunds.html
  10. https://finance.yahoo.com/news/supreme-court-tariff-ruling-trump-222408586.html
  11. https://www.binance.com/en/square/post/34789393425578
  12. https://www.scotusblog.com/2025/12/the-tariffs-rebate-debate/
  13. https://www.reuters.com/world/bessent-says-us-treasury-can-easily-cover-any-tariff-refunds-2026-01-10/
  14. https://timesofindia.indiatimes.com/business/international-business/us-supreme-court-ruling-treasury-has-enough-funds-if-trumps-tariffs-are-struck-down-when-refunds-could-begin/articleshow/126448985.cms
  15. https://www.reuters.com/business/autos-transportation/global-companies-that-have-sued-the-us-government-tariff-refunds-2026-01-09/
  16. https://finance.yahoo.com/news/factbox-countries-industries-most-exposed-233255144.html
  17. https://www.bloomberg.com/news/articles/2026-01-08/trump-tariffs-face-supreme-court-ruling-what-to-know
  18. https://www.thefinance360.com/supreme-court-delay-on-trump-tariffs-and-what-it-means-for-markets/
  19. https://www.cato.org/ieepa
  20. https://www.koreaherald.com/article/10652701
  21. https://thehill.com/homenews/administration/5683246-trump-tariffs-treasury-refunds/

HS2028で変わる半導体・センサー分類 ビジネスに効く論点と、今からできる準備


半導体やセンサーは、関税分類の世界で「技術進化が速いのに、分類体系の更新は緩やか」という典型例です。そこにHS2028の改正が迫っています。コードが変わるだけに見えますが、実務では関税率、原産地規則、統計、輸出管理、社内マスタの整合まで連鎖的に影響します。wcoomd

本記事は、技術者向けではなく、調達・営業・経営企画・貿易管理・物流のビジネス部門が、HS2028の半導体・センサー領域をどう捉え、どこにリスクと機会が生まれるかを整理するための実務ガイドです。なお、HS2028の改正はWCOの正式手続きを経て進行中で、発効日は2028年1月1日と確定しています。wcoomd

1. まずHS2028を正しく理解する

なぜ2028なのか、いつ何が起きるのか

HSは原則5年ごとに改正されますが、第7次見直しサイクルはパンデミック等の影響で1年延長され、次の版はHS2028として2028年1月1日に実施されます。次回は5年サイクルに戻り、HS2033が続くとWCOが明示しています。aeb+1​

2025年3月開催の第75回HS委員会(HSC)では、Article 16勧告として、299件の改正セットを含むHS2028勧告パッケージが暫定採択されました。この299件には、105件の品目改正案、5件の注解改正、66件の分類決定、14件の新分類意見が含まれます。正式採択は2025年12月末に予定され、2026年1月に最終版が公表、2028年1月1日に発効します。tarifftel+2​

HS改正は「合意が必要な国際標準」です。WCO理事会承認後、各締約国には6か月の異議申立期間があり、異議が出た部分は除外される可能性があります。つまり、企業は早期に影響を見積もりつつ、最終確定版で必ず再検証する姿勢が必須です。wcoomd

2. なぜ半導体・センサーがHS2028の注目テーマなのか

ビジネス側の論点は「税率」より広い

半導体業界団体は以前から、技術進化のスピードが5年サイクルのHS改正を上回るペースで進んでおり、より迅速な改正メカニズムが必要だと主張してきました。実際、多機能化したMCO(Multi-Chip Optoelectronics)やセンサー統合製品は、機能別分類か素子基準かで分類がぶれやすく、2017年および2022年のHS改正でも半導体定義の拡張が行われています。deepbeez+1​

HS2028でも、半導体ベースのトランスデューサー(変換素子)を含む分野が改正対象に挙がっています。これは単なる統計目的にとどまらず、次の実務要素に連動します。wcoomd+1​

  • 関税率と通商救済: MFN税率だけでなく、追加関税、セーフガード、アンチダンピング等がHSコードに紐づくため、コード変更は対象判定に影響します。
  • 原産地規則: 多くのFTAは品目別規則をHSの類・項・号で定義するため、HS変更は「同じ製品でも、どの規則を見るべきか」を変え得ます。
  • 輸出管理・規制: 規制リスト自体は性能・仕様基準が中心でも、運用現場ではHSコードをスクリーニングキーにすることが多く、分類変更は監視ロジックに影響します。
  • 企業の意思決定: 調達先分散、在庫配置、製造地設計、価格交渉など、サプライチェーンKPIにHS分類が組み込まれています。

3. 半導体・センサー分類で「揺れやすい境界」

HS改正が起きると影響が出やすい典型ポイント

半導体とセンサーは、商品形態が連続的に変化します。

  • ウエハ、ダイ
  • パッケージ化された素子
  • 信号処理ICと一体化したモジュール
  • 筐体、通信、電源、ソフトを含む完成品

HS分類は、こうした連続体を「どこで線を引くか」を国際標準として定める作業なので、改正が入ると境界付近の品目が動きます。ビジネスで影響が大きいのは、まさにこの境界品です。wcoomd

センサーで特に揺れやすい論点は次のとおりです。

  • センサー素子か、測定機器か: センサー素子は部品寄り(8541系)、測定機器は完成品寄り(他類)です。完成品側に寄るほど、半導体の章(第85類)から離れやすくなります。deepbeez
  • 変換素子か、信号処理まで含むか: 物理量を電気信号に変換するだけの段階と、補正・演算・デジタル出力まで含む段階は、税関分類の評価ポイントが変わります。deepbeez
  • 単機能か、多機能か: 環境センサーは温湿度、気圧、ガス、照度など複数要素を統合しがちで、多機能化は「主たる機能は何か」という論点を強めます。
  • どの産業用途に組み込まれるか: 同じセンサーでも、自動車、産業機械、医療、家電でパッケージや付加機能が変わり、分類は用途だけで決まらない一方、用途に由来する構成差は分類に影響します。youtube​

4. HS2028で半導体・センサー分類は何が「変わる」のか

確定情報と、実務上の読み方を分ける

情報の信頼性を最優先に、言い切れる範囲と言い切れない範囲を分けます。

4-1. 現時点で一次資料から言い切れること

  • HS2028は2028年1月1日に発効されるwcoomd
  • HS2028は299件の改正セットを含む勧告パッケージとして暫定採択されたstrtrade+1​
  • 改正には105件の品目改正案、5件の注解改正、66件の分類決定、14件の新分類意見が含まれるstrtrade+1​
  • 半導体ベースのトランスデューサー(変換素子)が改正議題に含まれているwcoomd+1​

つまり、半導体・センサー領域はHS2028の改正議題に含まれており、何らかの分類上の調整が入る可能性が高い、という点までは公的文書で裏づけられます。

4-2. 企業実務として「ここが動くと困る」を先に特定する

個別の6桁コードがどう変わるかは、2026年1月公表予定のWCO正式なHS2028法文と相関表(correlation table)で最終確認が必要です。ここを飛ばして断定すると、誤った社内判断につながります。tarifftel+1​

ビジネス側は、コード表の暗記ではなく「自社品が分類境界のど真ん中にいるか」を見抜くことが重要です。具体的には、次のような品目群はHS2028で影響を受けやすい位置にあります。

  • 半導体ベースの変換素子(各種トランスデューサー)deepbeez
  • センサー素子に信号処理ICが付随するモジュール
  • 複合センサー(複数の測定要素を統合)
  • 完成品に近いスマートセンサー(補正、演算、通信を内蔵)
  • センサーを搭載したユニットやサブアセンブリ(他機能と不可分)youtube​

これらは、分類が「素子」寄りか「機器」寄りかで分かれ、HS改正で線引きが再定義されると影響が出やすい領域です。

5. HS2028対応で失敗しやすい会社のパターン

通関担当だけに任せると、ほぼ確実に抜ける

半導体・センサー企業でよくある失敗は、HS改正を「通関部門のコード置換作業」にしてしまうことです。これだと次が抜けます。

  • 製品マスタの粒度が足りない: 分類に必要な属性(素子の役割、信号処理の有無、通信機能、主たる機能など)がマスタに入っていないと、相関表が出ても機械的に当てはめられません。
  • 原産地規則の影響評価が後回し: HS変更は、FTAの品目別規則(PSR)の参照単位を変え得ます。関税率がゼロでも、原産地判定でコストが跳ねることがあります。
  • 規制スクリーニングが壊れる: 社内の輸出審査フローでHSコードをキーにしている場合、誤分類や未更新は審査漏れの原因になります。

6. ビジネスマン向けの実務チェックリスト

2028年までに何を終わらせるか

以下は、半導体・センサー企業がHS2028で痛手を避けるための現実的な進め方です。

ステップ1: 影響範囲の棚卸し

  • 製品群を「素子」「モジュール」「完成品寄り」に3分類する
  • 売上上位、利益上位、規制リスク上位の品目を優先対象にする
  • 輸出入の主要国別に、関税率とFTA利用の有無を紐づける

ステップ2: 分類に必要な属性を社内で標準化する

センサーや半導体は、品名だけでは分類できません。仕様書を見なくても判断できる属性項目を、マスタに落とし込みます。

  • 測定対象(温度、圧力、加速度、光、ガスなど)
  • 変換方式と主要構成(半導体要素の有無、MEMSかどうかなど)
  • 信号処理の範囲(増幅、A/D、演算、補正)
  • 出力形態(アナログ、デジタル、通信プロトコル)
  • 単体販売か、ユニットの一部か

ステップ3: 相関表が出た瞬間に「自動変換」しない

WCO手続き上、最終的な確定内容や各国の国内拡張桁への転記を確認する必要があります。相関表は出発点で、個別品目の仕様と照合して初めて確定に近づきます。wcoomd

ステップ4: 社内の下流影響を先に洗い出す

  • 価格条件(関税負担者)
  • 原産地証明の運用(PSR参照箇所)
  • 輸出入ライセンスや社内審査フロー
  • 統計や経営レポート(品目別KPI)
  • 取引先との品目コード整合(発注、納品、請求)

7. まとめ

HS2028は「半導体・センサーの線引き」がビジネスコストになる改正

HS2028は2028年1月1日に発効され、299件の改正セットからなる勧告パッケージとして暫定採択されました。改正には105件の品目改正案、5件の注解改正、66件の分類決定、14件の新分類意見が含まれます。また、半導体ベースのトランスデューサーが改正対象として明示されています。wcoomd+3​

ただし、個別のコード改編の詳細は、2026年1月公表予定のWCO正式なHS2028法文と相関表、さらに各国の国内法への転記で最終確認が必要です。ここを飛ばして社内で断定しないことが、信頼性の高いHS2028対応の第一歩です。tarifftel+1​

半導体・センサー企業にとっての成功の鍵は、改正が出てから慌てて置換することではありません。分類境界にいる品目を先に特定し、仕様に基づく分類判断を回せるマスタ設計と運用体制を2028年までに構築することです。

  1. https://www.wcoomd.org/-/media/wco/public/global/pdf/events/2019/hs-conference/semiconductors-and-the-future-of-the-hs_sia-white-paper_april-2019.pdf?la=fr
  2. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2025/april/hsc-provisionally-adopts-the-recommendation-for-hs-2028-amendments-at-75th-session.aspx
  3. https://www.aeb.com/en/magazine/articles/hs-code-2028.php
  4. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2023/october/successful-conclusion-of-the-72nd-session-of-the-harmonized-system-committee.aspx
  5. https://www.tarifftel.com/blog/hs-2028-your-guide-to-the-next-harmonised-system-update/
  6. https://www.strtrade.com/trade-news-resources/str-trade-report/trade-report/april/amendments-to-2028-harmonized-schedule-advanced
  7. https://www.wcoomd.org/en/topics/nomenclature/activities-and-programmes/amending_hs.aspx
  8. https://deepbeez.com/d/hs/transducer
  9. https://www.youtube.com/watch?v=d__kmRP19WA
  10. https://global-scm.com/hscf/archives/134
  11. https://global-scm.com/hscf/
  12. https://global-scm.com/hscf/archives/34
  13. https://www.ul.com/resources/global-market-access-regulatory-news-update
  14. https://www.flexport.com/data/hs-code/85-electrical-machinery-and-equipment-and-parts-thereof-sound-recorders-and-reproducers-television-image-and-sound-recorders-and-reproducers-and-parts-an/
  15. https://hts.usitc.gov/search?query=8541.42.00.10

日ペルーEPA 原産地証明書がPDF発給に


2026年8月3日から何が変わるか

輸出実務で重要なのは、「いつから」「何が変わるか」「現場の手順をどう変えるか」です。meti
先にポイントを整理したうえで、その後に実務対応を具体的に見ていきます。jcci


1. まず押さえる要点

切替日

  • 日ペルーEPAに基づくペルー向けの原産地証明書(Certificate of Origin:CO)は、2026年8月3日受付分からPDFファイルでの発給に切り替わります。meti
  • 経産省は「2026年8月3日よりPDFファイルでの発給に切り替える」と公表しており、日付は明示されています。meti

専用紙(紙の原本)が使える期限

  • 日本商工会議所の案内によれば、専用紙での発給は「2026年7月31日までに承認された申請」に限られ、それ以降に承認される分はすべてPDFでの発給となります。jcci
  • ここでの基準日は「出荷日」ではなく、原産地証明発給システム上の「承認日」である点が実務上の注意点です。jcci

移行期の扱い(既に発給済みの紙CO)

  • 2026年7月31日以前に専用紙で発給されたCOは、有効期間内であれば8月3日以降もペルー税関で受理されると、日本商工会議所が案内しています。jcci
  • 日ペルーEPAの協定本文上、Proof of Origin(原産地証明)は原則として発給日から12か月間有効であり、単一の輸入申告に使用することが定められています(例外規定あり)。mofa

受け取り方法

  • PDF切替後は、審査が終了し、手数料の入金確認後に発給システム上のステータスが「交付済」となった時点で、利用者がシステムからPDFをダウンロードする方式になります。meti+1​
  • 従来のような窓口での紙原本の受け渡しや、原産地証明書の郵送は行われなくなります。jcci

支払い方法

  • 日本商工会議所の案内では、原産地証明手数料について「現金での支払いは廃止」とされ、事前振込(クレジットカード・インターネットバンキング等)または後日払いのいずれかに変更されます。jcci
  • 具体的な支払手段や締め日は、各商工会議所の運用に従う必要がありますが、「窓口で現金払い」という運用はできなくなります。jcci

ペルー側での提出形態(紙か電子か)

  • 経産省は、ペルー税関で輸入申告する際の具体的な提出形態(PDFを印刷した紙で提出するのか、電子データ添付で足りるのか)について、「現地手続をペルー側で確認することが必要」と案内しています。meti
  • したがって、日本側ではPDF発給を前提としつつ、実際にSUNAT(ペルー税関)へどう提出するかは、買主・現地通関業者を通じて確認することになります。sunat+1​

2. 何が変わるのか

実務目線でのインパクト

今回の変更は、「関税率」や「原産地規則」が変わるのではなく、原産地証明書の媒体と、それに伴う受領・送付オペレーションが変わる点にあります。meti
実務的に影響が出やすいのは、次の3点です。jcci

2-1. 発給から相手先提出までのリードタイム

  • 従来は、専用紙のCOを商工会議所で受領し、それを国際宅配などでペルーの買主・通関業者に送る必要があり、輸送時間や紛失リスクがボトルネックになりがちでした。
  • PDF発給に切り替わると、発給後すぐにメールやオンラインストレージ等で電子送付できるため、COの物理的な輸送時間はほぼゼロになります。meti+1​

2-2. 書類統制(改ざん防止・版管理・誤送付防止)

  • 紙原本がなくなりPDF中心になると、社内では次のような事故が起こりやすくなります。
    • 更新前の古いPDFを誤って送付する。
    • 宛先を間違えたメールで送る。
    • ファイル名がバラバラで、どの案件にどのファイルを出したか追跡できない。
  • PDF発給自体は利便性が高い一方で、社内のファイル名ルール・保存場所・送付履歴の管理ルールを決めておかないと、監査対応やクレーム対応が難しくなります。jcci

2-3. 貿易決済(L/Cなど)との整合性

  • 信用状や売買契約書に「原産地証明書の原本(paper original)」「指定様式の紙CO」「紙での提出」を求める条項が残っている場合、PDFへの切替後に条件不一致が発生する可能性があります。
  • 特に、2026年8月以降の出荷分をL/C決済で予定している案件では、事前に買主および銀行と「PDF発給で問題ないか」「紙原本の提示要求をどう扱うか」をすり合わせておくことが重要です。meti+1​

3. 切替スケジュール

現場が迷わないための整理

日本商工会議所の案内をもとに、実務上の線引きを表形式で整理すると、次のようになります。jcci

日付・条件発給形態実務上の注意点
2026年7月31日までに「承認」専用紙(紙)紙COが必要な案件は、承認日から逆算して申請する。
2026年8月3日以降に「承認」PDF発給後はシステムからダウンロードし、郵送は不要。
7月31日以前に専用紙で発給済のCO紙COのまま協定上の有効期間(原則12か月)内はSUNATで使用可。

ここで重要なのは、

  • 切替の境目が「出荷日」ではなく「発給システムの承認日」であること
  • 7月末から8月上旬にかけて出荷が集中する企業ほど、「紙COで行く案件」か「PDFで行く案件」かを早めに決め、申請リードタイムを逆算する必要があること
    です。meti+1​

4. ペルー側輸入申告で起きやすい論点

日本側の発給形式がPDFに変わると、ペルー側の通関では次の2点が論点になりやすくなります。sunat+1​

4-1. PDFの提出形態(紙提出か電子提出か)

  • 経産省は、「現地で輸入申告する際の詳細な手続(印刷した紙での提出の要否、電子データでの提出可否)は、現地税関(SUNAT)に確認すること」と案内しています。meti
  • SUNATの一般案内では、各協定ごとに「原産地証明書」「declaración de origen(原産地申告)」などのProof of Originが挙げられていますが、提出媒体については税関のシステム運用・ローカル通達に依存します。sunat

実務的には、

  • 買主または現地通関業者に対し、「日ペルーEPAのCO(PDF)をSUNATに提出する際、印刷した紙が必要か、電子添付で足りるか」を確認し、その回答をメールなどで証跡化する
    ことが、最短で確実な確認方法になります。sunat+1​

4-2. 申告上の協定選択ミス(TPIコード)

  • SUNATの「Acuerdos Comerciales」の案内では、各協定ごとにTrato Preferencial Internacional(TPI)コードが設定されており、申告書に当該コードを入力することが、関税優遇適用の前提とされています。sunat
  • 日ペルーEPAについては、TPIコードが複数行にわたり掲示されており、協定別に804、807、815等が割り当てられていることが分かりますが、具体的な日ペルーEPAのコードはSUNATの最新案内で再確認する必要があります。sunat

したがって、

  • 「TPIコードの入力漏れ・誤入力」が優遇適用漏れの典型的な原因になるため、買主側の通関手順書や社内マニュアルに、日ペルーEPA用のTPIコードと入力ルールを明記してもらう
    ことが、安全な運用と言えます。sunat

5. 日本側(輸出者)が今からやるべき実務対応

2026年8月まで時間があるように見えても、7月末〜8月出荷案件では、L/C条件・書類条件・システム切替が重なり、直前に混乱しやすくなります。meti+1​
今のうちに、次のような「型」を整えておくことが有効です。

5-1. 社内フローを1枚で更新

手順書やフローチャートに、最低限次の差分を追記します。jcci

  • 発給物の受領方法:窓口・郵送から「システム上でPDFダウンロード」へ。
  • 支払い方法:現金廃止、事前振込(クレジット・ネット銀行)または後日払いへ。
  • ファイル管理:
    • ファイル命名規則(例:CO_JP-PE_インボイスNo_発給日.pdf)
    • 保存場所(共有フォルダ/DMS)
    • 送付履歴(誰に・いつ・どのファイルを送ったか)の残し方。

5-2. 「7月末出荷+L/C等」案件だけ先に洗い出す

次の条件に当てはまる案件は、早期にリストアップしておきます。

  • 7月後半に日本出荷予定。
  • 8月上旬にペルー到着予定。
  • L/C決済または厳格な書類条件が付いている。

これらについて、

  • COを紙で出す必要があるか、PDFで問題ないかを買主・銀行と事前に確認し、
  • 紙が必要な場合は「7月31日までに承認」を前提に、逆算して申請締切日を社内で設定する
    ことが重要です。jcci

5-3. 取引先への通知文をテンプレート化

買主・現地通関業者向けに、次の内容を簡潔にまとめた通知文テンプレートを作成しておくと、社内・社外への展開がスムーズになります。meti+1​

  • 2026年8月3日から、日ペルーEPAのCOはPDF発給になること。
  • 2026年7月31日承認分までは紙COでの発給が可能であること。
  • ペルー側での提出形態(印刷要否、電子添付可否)について、SUNATまたは通関業者に確認してほしいこと。

5-4. システム停止リスクに備える

  • 日本商工会議所は、PDF発給切替に伴う発給システムの停止時期などを、別途案内するとしています。jcci
  • システム停止を前提に、月末・月初に申請が集中しないよう、社内の申請締切を前倒しする運用を組み込んでおくと安全です。jcci

6. よくある質問(想定Q&A)

Q1. 7月に紙で発給されたCOは、8月以降の輸入でも使えますか。

  • 日本商工会議所は、2026年7月31日以前に専用紙で発給されたCOについて、有効期間内であれば8月3日以降もペルー税関で受理されると案内しています。jcci
  • 日ペルーEPA協定上、Proof of Originの有効期間は「発給日から12か月」とされているため、その範囲内であれば使用可能です。mofa

Q2. 8月3日以降に紙COを発給してもらう例外はありますか。

  • 経産省・日本商工会議所の案内では、「2026年8月3日以降に承認される分はすべてPDF発給」とされており、紙COの発給を認める例外運用は示されていません。meti+1​
  • 特別な例外措置が取られる場合は、別途公表されると考えられるため、最新情報のフォローが必要です。meti

Q3. ペルー税関にはPDFをどのように提出すればよいですか。

  • 日本側の公表は、「現地で輸入申告する際の詳細な手続はSUNATに確認すること」としており、提出形態を一律には示していません。meti
  • 実務的には、買主の通関業者に「PDFを印刷した紙の提出が必要か」「電子添付で足りるか」を確認し、その回答内容を契約書・インボイスの備考欄・出荷書類の指示書などに反映するのが確実です。sunat

まとめ

日ペルーEPAの原産地証明書がPDF発給に切り替わることは、輸出者にとって、スピード向上と紛失リスク低減の観点ではプラスです。meti+1​
一方で、2026年7月末から8月の境目は「承認日」基準で紙とPDFが分かれるため、出荷計画、L/C条件、現地通関手続の三つを事前にすり合わせることが肝になります。jcci+1​

今のうちに、

  • 社内フローの改訂(PDF前提の受領・管理・送付)
  • 7月末〜8月案件の洗い出しと書類条件の確認
  • 買主・通関業者への通知とSUNATでの提出形態の確認
    までを済ませておけば、2026年8月の切替を現場トラブルなく乗り切ることができます。sunat+1​

  1. https://www.jcci.or.jp/gensanchi/20260107_Perucopdf.pdf
  2. https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/boekikanri/gensanchi/20260107.html
  3. https://www.sunat.gob.pe/orientacionaduanera/acuerdoscomerciales/acuerdos.html
  4. https://www.mofa.go.jp/region/latin/peru/epa201105/pdfs/jpepa_ba_e.pdf
  5. https://www.meti.go.jp/english/policy/external_economy/trade/FTA_EPA/index.html
  6. https://www.globalbizgate.com/mailmagazine/2026/01/08/%E6%97%A5%E3%83%9A%E3%83%AB%E3%83%BCepa%E3%81%AB%E5%9F%BA%E3%81%A5%E3%81%8F%E3%83%9A%E3%83%AB%E3%83%BC%E5%90%91%E3%81%91%E3%81%AE%E5%8E%9F%E7%94%A3%E5%9C%B0%E8%A8%BC%E6%98%8E%E6%9B%B8%E3%82%92/
  7. https://www.customs.go.jp/english/origin/rules_of_origin_epa.pdf
  8. http://www.acuerdoscomerciales.gob.pe/en_vigencia/japon/Documentos/ingles/formato_co_tlc_peru_japon.pdf
  9. https://trade.ec.europa.eu/access-to-markets/en/content/eu-japan-economic-partnership-agreement
  10. https://www.customs.go.jp/roo/text/peru4.pdf
  11. http://www.sice.oas.org/trade/PER_JPN/EPA_Texts/ESP/PER_JPN_text_s.asp
  12. https://www.mofa.go.jp/policy/oda/sdgs/pdf/vnr2025_00_full_en.pdf
  13. https://sice.oas.org/Trade/PER_JPN/EPA_Texts/ESP/PER_JPN_text_s.asp
  14. https://www.jpo.go.jp/resources/report/statusreport/2025/document/index/all.pdf
  15. https://www.kanzei.or.jp/sites/default/files/pdfs/report/roocom_020400.pdf

中国、対日レアアース輸出管理を強化


いま企業が押さえるべき実務ポイント

2026年1月上旬、中国が日本向けのデュアルユース(軍民両用)品目に対する輸出管理を強化する方針を打ち出し、レアアースとレアアース磁石の供給不安が再燃しています。poder360+1​
ポイントは、今回の措置が「レアアースのみを名指しした禁輸」ではなく、デュアルユース品目を包括的に対象とする輸出禁止措置として導入され、その運用次第で民生用途向けのレアアース関連品にも影響が波及し得る点です。reuters+2​

この記事では、一次情報として確定している制度内容と、報道ベースで伝えられている運用状況を切り分けつつ、調達・生産・法務・通関実務が今すぐ取るべき対策を整理します。


1. 何が起きたのか

公式発表と報道を分けて理解する

まず、一次情報として確定しているのは、中国商務部による公告です。chemical.chemlinked+1​
2026年1月6日、中国商務部は「商務部公告2026年第1号」を公表し、日本向けのデュアルユース品目について輸出管理を強化する措置を即時発効としました。globaltimes+1​

公告の要点は、

  • 全てのデュアルユース品目について、日本の軍事ユーザー向け、軍事目的向け、ならびに日本の軍事力の向上に資するあらゆる最終用途向け輸出を禁止すること
  • 第三国の組織・個人が、中国原産の当該デュアルユース品目を日本の組織・個人に移転・提供した場合にも、違反として法的責任を追及し得ると明記したこと
    にあります。poder360+2​

一方、公告文そのものには「レアアース」という品目名は列挙されておらず、対象はあくまで「デュアルユース品目一般」として定義されています。globaltimes+1​
日本政府は、この措置について「対象や内容が必ずしも明確ではない」と懸念を示し、説明と撤回を求めつつ、影響の精査が必要だと述べています。kathmandupost+1​

そのうえで、報道ベースでは次のような動きが伝えられています。

  • 米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの報道として、中国当局が日本企業向けのレアアースおよびレアアース磁石の輸出について、輸出許可申請の審査を停止、または大幅に制限し始めたとされること。english.kyodonews+1​youtube​
  • 中国側は「民生用途の輸出には影響しない」と説明する一方、レアアースが実際に今回のデュアルユース措置の直接対象に含まれるのか、また許可審査の運用をどの程度厳格化しているのかについては明言を避けていること。facebook+1​

このため、現時点で確実に言えるのは「対日デュアルユース規制の強化」という枠組みが一次情報として確定しており、その運用の一環としてレアアースおよびレアアース磁石の輸出許可審査の厳格化・停滞が生じている可能性が高い、という整理になります。wsj+3​


2. なぜレアアースが巻き込まれやすいのか

レアアースは、EV駆動モーター、産業ロボット、HDD、各種センサーなど民生用途で広範に使用されると同時に、高性能永久磁石(ネオジム磁石など)を通じて、防衛装備や航空宇宙など典型的な軍事転用用途にも不可欠な部材です。csis+2​
中・重希土類(ジスプロシウム、テルビウム等)は特に高性能磁石の耐熱性向上に使われ、防衛関連のモーター・アクチュエーター用途における重要性が高いと指摘されています。spf+1​

今回の対日措置は、品目名ではなく「用途」や「エンドユーザー」に着目して輸出を禁止する構造です。chemical.chemlinked+2​
そのため、同じレアアース磁石であっても、最終用途や顧客情報に軍事転用の疑義がある場合には、許可審査が止まりやすく、民生用途を主張していても、用途説明が不十分なだけで審査遅延が生じるリスクがあります。csis+2​


3. 依存度の現実

供給国分散後も加工工程は中国集中

日本は2010年の対中レアアース摩擦以降、輸入先の分散や備蓄の強化を進めてきましたが、それでもレアアース供給における中国依存は依然として高水準です。cnbc+2​
各種統計・推計の前提は異なるものの、2024年前後のデータでは、日本のレアアース輸入に占める中国の割合は概ね6割前後から7割程度とされる例が多く、依存度がなお高いことがうかがえます。finance.yahoo+2​

一方で、日本は豪州・ベトナム・マレーシアなどからの調達を増やし、中国依存度を2010年当時の9割超から6割弱程度まで下げたとの分析もあり、数量ベースでは一定の分散が進んでいます。cnbc+1​
しかし、精錬・分離などの中間加工工程は依然として中国の比率が極めて高く、世界全体のレアアース精製能力の大半が中国に集中しているとの指摘が続いており、採掘地を分散しても加工段階でボトルネックが生じやすい構造が変わっていません。bgrdc+2​

このため、日本企業が調達先を表面的に分散していても、どこかの工程で中国の輸出管理・許可審査に依存している限り、今回のような審査運用の変化がサプライチェーン全体に波及するリスクが残存します。sfa-oxford+2​


4. 制度インフラはすでに整っていた

直近2年の流れ

今回の2026年1月の対日措置は、突然の思いつきではなく、ここ数年整備されてきた管理体系の延長線上に位置付けられます。whitecase+2​
2024年6月、中国国務院は「稀土管理条例」(国務院令第785号)を公布し、採掘から精錬・分離、流通、輸出入までレアアース産業チェーン全体を管理対象とする包括的な枠組みを整備しました(2024年10月1日施行)。csrcare+2​

さらに2025年前後には、サマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウムなど中・重希土類7元素や、それらを用いた磁石材料・合金を対象とする輸出管理措置が導入され、一部には輸出許可制と特定品目の追加指定(合金・酸化物など13品目)を行うルールも公布されています。squirepattonboggs+2​
これらの措置では、参考としてHSコードが示されるなど、レアアース原料だけでなく永久磁石材料や中間製品も管理対象として位置付けられています。whitecase+1​

したがって、今回の「対日」強化では、既存のレアアース管理品目に加え、デュアルユース枠組みの下で用途審査の厳格化や許可審査の停滞が生じるだけでも、日本企業の調達が実務的には止まり得る状況が生まれます。wsj+3​


5. 企業実務への影響

まず顕在化するのは価格より「納期と書類」

現場で先に表面化しやすいのは、次の3点です。

  • 許可審査の滞留
    民生用途の部材であっても、エンドユーザーや用途説明が不十分な場合、輸出許可申請の審査が保留され、出荷が遅延するリスクがあります。facebook+1​
    実際、レアアースおよびレアアース磁石について、日本企業向けの輸出許可申請の処理が停止・遅延しているとの報道が複数出ており、「全面禁輸」ではなく「許可が出ないことによる実質的な供給制約」が懸念されています。youtube​english.kyodonews+1​
  • 書類要求の増加
    中国側輸出者が、最終用途証明書、エンドユーザー情報、軍事用途でないことの誓約、第三国への再移転の有無など、より詳細な情報の提出を求める可能性があります。chemical.chemlinked+1​
    デュアルユース規制の典型的運用として、疑義がある案件は追加書類の要求や審査延長の対象となりやすく、結果としてリードタイムが読めなくなるリスクが高まります。csis+1​
  • 調達の連鎖停止
    企業自身がレアアース原料を直接輸入していなくても、サプライチェーン上流の部品・ユニット・完成品に高性能磁石やレアアース関連材料が含まれている場合、そのサプライヤー段階で出荷が止まるおそれがあります。spf+1​
    自動車、電子機器、半導体製造装置など、レアアース磁石の使用比率が高い業種ほど影響が顕在化しやすいと指摘されています。english.kyodonews+2​

6. いま取るべき対策

重要度順のチェックリスト

6-1. 影響範囲を特定する – 部材ベースで洗い出す

  • 製品BOMを起点に、永久磁石(NdFeB、SmCoなど)、研磨材、触媒、蛍光体、センサー材料など、レアアース関与部材を抽出する。
  • Tier2・Tier3のサプライヤーまで含め、どの工程で中国原産品または中国で加工されたレアアース関連部材が入り得るかをマッピングする。
  • 代替材への切り替えが可能な部材と、設計変更・認証の取り直しが必要な部材を分類しておく。

6-2. 中国サプライヤーが「出荷できる状態」を作る

  • 中国側が行う輸出許可申請に必要な情報を、自社から迅速に提供できる体制を整備する。
    例:最終用途の説明文、最終需要家の属性、軍事用途ではないことの説明、再輸出・第三国移転の有無など。facebook+1​
  • 自社だけでなく、顧客(エンドユーザー)まで含む用途情報が必要になるケースを想定し、質問票・証明書のテンプレートをあらかじめ用意しておく。

6-3. 契約条項を見直す – 変更法令と供給制約を織り込む

  • 変更法令条項(Change in Law)、輸出許可未取得時の取り扱い、代替調達時の費用負担、納期遅延時の責任分担を契約上明確化する。
  • 長納期化を前提とした安全在庫の水準と保有場所、緊急時の配分ルールを、主要顧客・サプライヤー間で合意しておく。

6-4. 代替調達は「原料」ではなく「工程」で考える

  • 採掘地の分散だけでは不十分であり、精錬・分離・磁石製造などの加工工程を中国以外にも分散させることが、本丸のリスク低減策となる。sfa-oxford+1​
  • 現実的には段階的移行が必要なため、短期は在庫と優先順位付けの整理、中期はサプライヤーの二重化・三重化、長期は設計変更や材料置換まで含めた計画を検討する。

6-5. 情報収集の「軸」を決める

  • 一次情報は、中国商務部の公告・解釈通知および中国当局の記者会見、ならびにジェトロ等による制度整理を定点でフォローするのが最も効率的です。lawinfochina+2​
  • 主要国はレアアース・重要鉱物で対中依存を低減する連携を強めており、G7や日米豪などの政策動向が、中長期の調達戦略・投資判断に直結しつつあります。bloomberg+2​

7. いまは「供給断」よりも

許可審査の停止・遅延が最大リスク

今回の対日措置は、現時点で「レアアースの全面禁輸」と公式に位置付けられているわけではありませんが、デュアルユース枠組みと既存のレアアース輸出管理が重なり合うことで、実務上はレアアース関連品の輸出許可が出にくくなる局面に入っています。poder360+2​
レアアースやレアアース磁石の輸出許可審査が停止または大幅に遅延するだけで、自動車・電子機器・半導体関連など広範なサプライチェーンで生産計画が狂うおそれがある点が、企業にとっての最大のリスクです。kathmandupost+2​

企業としての勝ち筋は、レアアース問題を単なる資源調達の話に矮小化せず、「輸出管理」と「サプライチェーン実務」を一体で設計し直すことです。
BOMの棚卸し、サプライヤーからの書類要求に即応できる情報整備、契約条項の見直し、代替工程・非中国加工ルートの確保を、時間軸(短期・中期・長期)を意識しながら今週から順番に着手することが求められます。cnbc+2​


免責事項

本稿は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別案件の輸出管理判断、契約判断、通関判断を行うものではありません。
具体的な案件については、社内の貿易管理責任者、顧問弁護士、通関士、ならびに専門機関の助言を踏まえて判断してください。

  1. https://www.lawinfochina.com/display.aspx?id=43158&lib=law
  2. https://finance.yahoo.com/news/china-bans-certain-rare-earths-122351883.html
  3. https://static.poder360.com.br/2026/01/commerce-dual-item.pdf
  4. https://www.reuters.com/world/asia-pacific/china-bans-exports-dual-use-items-military-purposes-japan-2026-01-06/
  5. https://www.csis.org/analysis/consequences-chinas-new-rare-earths-export-restrictions
  6. https://www.globaltimes.cn/page/202601/1352441.shtml
  7. https://www.spf.org/spf-china-observer/en/document-detail062.html
  8. https://www.sfa-oxford.com/market-news-and-insights/japan-us-rare-earths-deal-critical-minerals-supply-chain/
  9. https://chemical.chemlinked.com/news/chemical-news/china-bans-export-of-dual-use-items-to-japan
  10. https://kathmandupost.com/world/2026/01/07/japan-condemns-china-s-dual-use-export-ban-as-rare-earth-curbs-loom
  11. https://english.kyodonews.net/articles/-/68263
  12. https://www.youtube.com/watch?v=CB0sLiXqVZ8
  13. https://www.wsj.com/world/asia/china-deprives-japan-of-rare-earths-supply-escalating-dispute-41e7750c
  14. https://www.facebook.com/mofcom.china/posts/mofcom-spokespersons-remarks-on-tightening-controls-on-dual-use-items-exports-to/890794080134870/
  15. https://www.cnbc.com/2025/06/20/rare-earths-japan-more-prepared-than-most-for-chinas-mineral-squeeze.html
  16. https://bgrdc.com/wp-content/uploads/2024/10/China-Rare-Earth.pdf
  17. https://www.whitecase.com/insight-alert/china-imposes-extraterritorial-jurisdiction-and-50-rule-export-controls-rare-earth
  18. http://www.csrcare.com/Law/LawShowEn?id=232737
  19. https://www.squirepattonboggs.com/media/i4idimy5/china-expands-export-control.pdf
  20. https://www.bloomberg.com/news/articles/2026-01-09/japan-calls-for-smooth-trade-with-china-for-rare-earths-food
  21. https://asia.nikkei.com/spotlight/supply-chain/japan-s-rare-earth-imports-from-china-plunge-to-5-year-low
  22. https://www.customs.go.jp/toukei/shinbun/trade-st_e/2024/2024_117e.pdf
  23. https://www.mining.com/china-japan-rare-earth-spat-curbs-exports/
  24. https://gtaic.ai/market-reports/japan-rare-earth-metals-market
  25. https://www.facebook.com/TheStarOnline/posts/more-than-70-percent-of-japans-imports-of-rare-earths-come-from-china-according-/1330141122481743/
  26. https://www.japantimes.co.jp/news/2026/01/10/japan/japan-support-china-rare-earth/
  27. https://note.com/tagtag/n/n617d57bab698
  28. https://global-scm.com/blog/?p=3700
  29. https://www.linkedin.com/posts/wei-jin-6213791_china-strengthens-export-controls-on-dual-use-activity-7414228580408299520-xFVX

韓国のCPTPPへの参加検討正式表明に関して、参加することはできるか?

1. CPTPPでは「約束を守る実績」が明確に条件に入っている

CPTPPは拡大の原則として、いわゆるオークランド原則を繰り返し確認しています。要点は次の3つです。

  1. 協定の高水準を満たす準備ができていること
  2. 貿易上のコミットメントを遵守してきた実績があること
  3. 加盟国のコンセンサスを得られること

この「遵守実績」が、まさにご質問の「国際約束を守れるか」を、制度上の評価軸に落とし込んだものです。

2. 日本側も公式文書で「加盟後の履行意思と能力」を強調している

日本の外交青書(2025年版)でも、加盟申請国について「高い基準を満たす能力があるか」だけでなく、「加盟後も履行し続ける意思と能力」を見極める、という趣旨が明記されています。
つまり日本としても、形式的な加盟条件より「実装して守り続けるか」を重視する立場を公式に取っています。

3. 実務上は、こういう形で「信頼性」が論点化する

CPTPPの加入審査は、候補国が提出する資料や質疑応答を通じて「守れるか」を検証する仕組みです。作業部会の付託事項も、候補国がCPTPP義務を遵守できることを示す文書の確認を含みます。

その結果、「信頼性」は次のような論点に変換されがちです。

  1. 国内法と運用がCPTPP義務に整合しているか
  2. 整合していない場合、いつまでに法改正や制度変更を行うのか
  3. 例外や経過措置をどこまで認めるか
  4. 紛争解決や透明性の運用を実際に回せるか

要するに「守ると言うか」ではなく、「守る状態を作れるか、作った後も維持できるか」という確認になります。

4. 韓国のケースで日本の懸念が表に出るとしたら

日韓間には、政治・外交の文脈で「約束の履行」への不信感が語られることがあります。ただCPTPPの場でそれを前面に出すより、先ほどのオークランド原則と整合する形で、

  1. 貿易約束の遵守実績
  2. 加盟後の履行を担保する制度設計
  3. 国内世論の理解と継続性

という論点で、日本が「コンセンサスに慎重」になるシナリオが現実的です。

5. いま時点での現実:日本が賛否を決める「審査段階」にはまだ入っていない可能性が高い

直近の韓国高官発言は「準備が整い次第、追加的な措置を講じる」という表現で、正式な加入要請を既に寄託国へ通報した、という言い方ではありません。
CPTPPは、まず寄託国ニュージーランドへの正式通報が起点になります。
したがって、企業実務としては「日本が信頼性を理由に止めるかどうか」は、正式要請が出て作業部会が動き出してから具体論になりやすいです。

メキシコ、非FTA対象で約1,400品目の関税引上げ


2026年1月1日から、メキシコは輸入関税率表(TIGIE)上の1,463タリフラインについて、一般税率(MFN)を引き上げる制度改正を施行しました。官報(DOF)に掲載された改正法令は、2025年12月29日に公布され、2026年1月1日に発効しています。whitecase+4​

ニュース見出しでは「非FTA品目」と表現されがちですが、実務上の理解はもう一段丁寧にする必要があります。改正はあくまでMFNを上げる仕組みであり、FTAの特恵(原産品としての優遇税率)は、原産地規則を満たし適切に申告できる限り、引き続き適用余地があります。craneww+2​

まず押さえる要点

今回の改正を、ビジネスの意思決定に必要な粒度で整理すると次のとおりです。

項目内容
改正の本質MFN関税率の引上げ(対象は特定の関税番号)
対象規模1,463タリフラインwhitecase+2​
施行日2026年1月1日mexiconewsdaily+2​
対象外の考え方FTA優遇を適用できる原産品は原則影響なし(原産地証明と適切な申告が前提)whitecase+1​
有効期限無期限(恒久化)whitecase

対象規模(1,463タリフライン)やFTA適用時の取り扱い、対象業界の全体像は、複数の専門機関・法律事務所・当局解説で一致しています。clarkhill+3​

どんな品目が影響を受けるのか

対象は20以上の章にまたがり、自動車・部品、繊維・アパレル、プラスチック、鉄鋼、家電、アルミ、履物、紙・板紙、皮革製品、家具、ガラス、玩具、二輪、トレーラーなど幅広い業界に及びます。trade+3​

税率水準は品目ごとに異なり、引上げ後の関税率は5%、7%、10%、14%、15%、18%、20%、22%、25%、30%、35%、36%、45%、50%のレンジに分布します。完成乗用車の特定の関税番号(8703.22.99、8703.23.99、8703.24.99、8703.32.99、8703.33.99、8703.40.99、8703.60.99、8703.80.01)では50%が適用されます。自動車部品は25%から36%の範囲が中心です。mexiconewsdaily+4​

また、今回の動きは従来の大統領令ベースの措置を、法律改正により恒久化・拡大する性格があると解説されています。具体的には、1,463タリフラインのうち約41%は2024年の大統領令で既に引上げ済みの内容を制度化し、残り59%が新規に追加された品目です。繊維・履物・アパレルは既存措置の「恒久化」、それ以外の分野は「新規にカバー拡大」という見方が示されています。jdsupra+1​

さらに、316タリフラインは以前は無税(duty-free)だったものが、今回初めて関税が課されることになりました。whitecase

「非FTA品目」とは実務で何を意味するか

ここが誤解ポイントです。影響を受けるかどうかは「仕向地に着いたときの原産性」と「申告の正しさ」で決まります。

FTA相手国からの出荷でも、原産地規則を満たさなければMFNが適用され得る

たとえば日本からメキシコに輸出しても、商品が日本原産として認められない場合(第三国原産のまま、工程不足、証憑不備など)は、FTA特恵が使えずMFN(引上げ後)のコストになります。trade

「出荷国」と「原産国」は別物

中国原産の部品や完成品を日本経由でメキシコへ流しても、原産地が中国のままなら、非FTA原産として引上げ後の税率が問題になります。報道や解説でも、非FTA国(中国、インド、韓国、インドネシア、タイ、ロシア、トルコ、台湾、ブラジルなど)を念頭に置いた制度設計と整理されています。mohawkglobal+2​

書類不備は、税率の取りこぼしに直結する

当局解説では、通関での分類・価格・書類整合性に対する目線が強まり、輸出者側もインボイス、仕様書、原産地証明などの精度が重要になると示されています。2026年の一般対外貿易規則(GFTR)では、通関業者向けの新たな書類要件、通関手続きの裏付け書類、バーチャル輸入申告の記録保管など、より多くの書類を作成・保管する義務が追加されています。kpmg+1​

日本企業にとっての影響シナリオ

影響は「メキシコ向けの輸出」だけでなく、「メキシコの顧客が非FTA原産品を調達しているか」によっても変わります。

シナリオA:メキシコ向け部材の中に非FTA原産が多い

自社が日本から輸出していても、実態は第三国原産のままというケースでは、顧客側の輸入コストが上がります。結果として、価格交渉、発注数量、調達先見直しの圧力が出やすくなります。mohawkglobal+1​

シナリオB:完成車・主要部材など、税率の上振れが大きい領域に該当

完成車の特定関税番号では50%水準が適用され、部材でも複数レンジ(7%、10%、25%、36%など)が混在します。どこに該当するかで採算は別物になるため、HS分類の確定が最優先です。forvismazars+1​

シナリオC:FTA適用の社内運用が弱く、取りこぼしが発生しやすい

今回のようにMFNが上がる局面では、これまで「面倒なのでMFNで払っていた」取引が急に高コストになります。原産性の棚卸しと証憑整備は、守りではなく利益改善の打ち手になります。forvismazars

すぐにやるべき実務チェックリスト

以下の順番で手当てすると、短期間で影響可視化まで到達できます。

影響品目の棚卸し

  • メキシコの関税番号(フラクシオン)まで落として、該当有無を判定
  • 該当の場合、引上げ後の税率レンジ(5~50%)で着地コストを試算strtrade+1​

原産地の再判定

  • 日墨EPA、CPTPPなどで原産性を確保できるか
  • 部材原産地の収集、サプライヤー証明の更新、証憑の監査耐性を強化whitecase+1​

通関実務の点検

  • インボイス品名、技術仕様、分類根拠、価格根拠が一貫しているか
  • メキシコ側ブローカーと、申告データの突合ルールを先に決めておくkpmg+1​
  • 2026年のGFTRで追加された書類要件(通関業者向け文書、裏付け書類、記録保管)への対応を確認kpmg

IMMEX制度利用者向けの追加確認

2026年のGFTRでは、IMMEX(マキラドーラ)プログラム下での繊維・アパレル製品の輸入に新たな制限が設けられています。該当する企業は、プログラム適用要件の変更を確認する必要があります。kpmg

制度の背景と政策意図

メキシコ政府は、この改正を単なる歳入確保措置ではなく、「戦略的な政策ツール」として位置づけています。背景には次の狙いがあります。tbaglobal+1​

  • 国内製造業の保護と雇用確保trade+1​
  • アジア諸国、特に中国からの輸入への依存低減mexiconewsdaily+1​
  • グローバルバリューチェーンへの統合が期待された技術移転や国内付加価値向上につながっていない現状への対応whitecase
  • 国家開発計画との整合whitecase

メキシコ経済大臣のマルセロ・エブラード氏は、この措置がメキシコの総輸入の約8.6%に影響を与えると述べています。中国からの輸入はメキシコ総輸入の約19.96%を占め、中国製車両はメキシコ市場の18.1%のシェアを持っており、特に自動車セクターへの影響が大きいとみられています。tbaglobal

まとめ

メキシコの関税引上げは、1,463タリフライン規模でMFNが上がる政策転換です。最大の論点は、非FTA原産品と、FTA原産でも運用不備で特恵を取りこぼす取引がコスト増になり得ること。逆に言えば、HS分類と原産地証憑を固め、FTA適用の確度を上げられる企業ほど、影響を吸収しやすい局面です。clarkhill+3​

改正は2026年1月1日に発効し、有効期限は無期限です。早期の対応準備が、コスト管理と競争優位の確保に直結します。mexiconewsdaily+2​


免責事項: 本稿は2026年1月時点の公表情報に基づく一般情報であり、個別案件の法令判断や通関助言を目的とするものではありません。実際の適用は、品目の分類、原産地事実、申告実務、当局運用により左右されます。個別案件は現地通関業者・専門家と一次情報で確認してください。

  1. https://www.whitecase.com/insight-alert/mexico-formalizes-and-expands-import-tariffs-more-1400-products-key-impacts
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  4. https://www.tid.gov.hk/en/tradecircular/2025/ci11102025.html?categoryId=18
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  6. https://www.craneww.com/knowledge-center/trade-advisory-notices/mexicos-2026-tariff-reform/
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  13. https://tbaglobal.com/mexico-set-to-introduce-tariffs-of-up-to-50/
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