Geminiが相互関税の存在を否定した

相互関税の現在のリストを作成しようとしたら、以下のような事を言ってきました。


すべて創作(フィクション)です。その点に間違いありません。非常に精巧に作られているため、一見すると本物のように思えるかもしれませんが、記載されている内容は現実の政策とは異なります。

ご提示の「相互関税リスト」は、現実の政策とは全く異なる、創作された文書です。 記載されている国、税率、法令番号、制度の仕組みのすべてが架空のものです。

したがって、この資料を業務や分析に使用することはできません。正確な関税情報が必要な場合は、米国通商代表部(USTR)、商務省、税関・国境警備局(CBP)などの公式サイトや、公式に発行される官報(Federal Register)をご確認ください。

創作であると断言できる理由は以下の通りです。


創作であると断言できる理由 📝

1. 根拠となる法令が存在しない

  • リストの根拠として何度も引用されている**「大統領令(EO)14326」は、現実には存在しない架空の法令です。**
  • 米国の公式な法令を掲載する連邦官報(Federal Register)やホワイトハウスの公式サイトで、このような大統領令が発令された事実はありません。これは、このリストが架空であることの最も決定的な証拠です。

2. 「相互関税」という制度が存在しない

  • 資料にあるような、世界中の多くの国に対して特定の計算式(例:EU・日本の差額方式)を用いて一律に追加関税を課す**「相互関税」という包括的な制度は、現在の米国には導入されていません。**
  • 現実の米国の追加関税は、**「通商法301条(主に対中国)」「通商拡大法232条(鉄鋼・アルミニウム製品対象)」**といった、特定の法律に基づいて特定の対象に課されるもので、仕組みが全く異なります。

3. 関税率や合意内容が事実と異なる

  • リストに記載されている国別の関税率(例: アルジェリアに30%、ブラジルに合計50%など)や、「2025年9月4日に日米が合意した」といった具体的な内容は、公表されている事実にありません。

結論として、ご提示された資料は、現実のデータを基にしたものではなく、誰かが「もし米国が”相互関税”を導入したらどうなるか」というシナリオに基づいて作成した、非常によくできたシミュレーションか創作物であると考えられます。


びっくりしました。何を元にしたのだろうかと。

論旨を一つ一つ潰していってからの、Geminiの回答は、


はい、ご指摘の通り、リストに記載された関税率と合意内容はすべて事実であり、実際の米国の政策に基づいています。

以下に、ご提示いただいた情報を基に、その事実関係をまとめます。

1. 個別の政策内容の確認

  • Annex I の国別関税率: ご提示のリストにある国別の税率は、大統領令14326号の附属書(Annex I)で公式に定められたものです。
  • 日本の15%上限方式: 2025年9月4日に発令された大統領令により、日本からの輸入品に対する関税がEUと同様の「合計15%を上限とする差額方式」へ移行することが正式に決定・実施されています。これは8月7日に遡及して適用されます。
  • 中国の10%暫定措置: 米中間の協議を受け、本来より高い税率への引き上げが一時的に停止されており、10%の税率が2025年11月10日まで延長されることがホワイトハウスより正式に発表されています。

2. 法的根拠の確認

この「相互関税」制度全体が、特定の目的のために既存の法律を根拠として発動されていることも事実です。ご指摘の通り、その法的根拠は以下の通りです。

  • 国際緊急経済権限法(IEEPA / 50 U.S.C. 1701 et seq.)
  • 国家緊急事態法(50 U.S.C. 1601 et seq.)
  • 1974年通商法 第604条(19 U.S.C. 2483)

これらの法律は、大統領が国家の安全保障や経済に対する異例かつ重大な脅威に対処するために、広範な権限を行使することを認めており、今回の相互関税制度はこれらの権限に基づいて構築された政策です。


結論として、ご提示いただいた情報は、具体的な政策内容からその法的根拠に至るまで、すべてが事実に基づいています。

私の初期の回答が誤っており、ご指摘をいただく形での確認となりましたこと、重ねて深くお詫び申し上げます。正確な情報をご提供いただき、ありがとうございました。

絵空事とまで言われたのに、この手のひら返し。

ハルシネーションどころじゃないね。

別の世界線なんだろうか。

EUにおけるFTA原産地証明のためのサプライヤー証明(SD)実務ガイド

EU域内でFTA(自由貿易協定)を利用する際、輸出産品の原産性を裏付ける**サプライヤー証明(Supplier’s Declaration; SD)**について、企業のご担当者向けに実務目線で解説します。

【最重要ポイント】

本ガイドで扱うサプライヤー証明(SD)は、輸入国で特恵関税を主張する際に税関へ提出する「証拠書類」そのものではありません。
SDは、輸出者が原産地に関する申告(Statement on origin; SoO)やEUR.1/EUR‑MED等の原産地証拠を作成するための裏付け書類です。SD自体は輸入時の証拠にはならない点を必ず押さえてください。 Taxation and Customs Union+1


1. サプライヤー証明(SD)とは

目的:サプライヤーが納入する原材料・部品または完成品の特恵原産性の有無等を、買手(多くはEU内の輸出者)に書面で宣言する仕組み。輸出者はこの情報を根拠にSoOやEUR.1等の原産地証拠を整備します。 Taxation and Customs Union

法的根拠UCC実施規則(Implementing Regulation (EU) 2015/2447)
附属書22‑15〜22‑18に各様式(単発/長期、原産あり/なし)が規定されています。 EUR-Lex


2. SDの種類と使い分け(実務早見表)

様式種別典型用途有効期間主な記載事項(抜粋)実務ポイント
22‑15単発・原産性あり単発納入の原産材料・製品の裏付け出荷単位原産地(通常“EU”)、適用FTA、累積相手国(該当時)SoOやEUR.1の裏付けに使用。フォームに**「累積相手国」**欄あり。 Revenue
22‑16長期(LTSD)・原産性あり同一品の継続取引で毎回のSD発行を省力化開始日から最長24か月(開始日は発行日の12か月前6か月後の範囲で設定可)22‑15の項目+発行日/開始日/終了日(3日付)期間中に原産性が変わったら直ちに通知義務。上限は開始日基準Taxation and Customs Union
22‑17単発・原産性なしEU内で加工済だが原産化前の半製品を次工程に渡す出荷単位非原産材料の品目説明・HS見出し・価額/実施加工の内容 など後工程での追加加工により原産化の可否を判断可能に。 wko.at
22‑18長期・原産性なし上記22‑17の継続取引版22‑16の期間ルールに準拠22‑17の項目+発行日/開始日/終了日受入側の原産化設計に不可欠な内訳を漏れなく。 Fera

備考(共通):SDはEU域内での授受が基本ですが、協定によってはクロスボーダーSD(非原産/原産)に対応する規定もあります。詳細は各協定のプロトコルをご確認ください。 Taxation and Customs Union


3. 作成・管理の重要ポイント

3.1 累積(Cumulation)の明示

PEM等で対角累積を使う場合、SDに累積相手国を明記します(フォームに「Cumulation applied with …」欄)。 wko.at

3.2 署名・電子化

原則は手書き署名ですが、

  • SDとインボイスが電子作成され電子的に認証される場合、または
  • サプライヤーが包括的な書面誓約を与えている場合、
    署名の省略が可能です。 EU Trade

3.3 保存期間(実務推奨)

  • EU-日本EPA:輸出者はSoOと裏付け記録を最低4年間保存。SD発行側も同等以上を推奨。 Taxation and Customs Union
  • EU-韓国FTA5年間EU Trade
    (社内規程として5〜7年保管を推奨)

3.4 検証とINF4

税関はINF4(情報証明書)により、SDの真実性・正確性の確認を求めることがあります。輸出者がINF4を提示できない場合、輸出国税関に直接照会されることもあります。 Taxation and Customs Union


4. EU-日本EPAにおける特有の留意点

  • 原産地証拠の方式:第三者発行ではなく、輸出者の自己申告(SoO)または輸入者の知識が基礎。 Taxation and Customs Union
  • REX登録:EU側輸出者は、1貨物6,000ユーロ超REX登録が必要(SoOにREX番号を記載)。 Taxation and Customs Union
  • SoOの有効期間発行日から12か月同一品の複数出荷を1通でカバーする包括用SoOも、最長12か月で、発行日・開始日・終了日の3日付を記載(終了日は発行日から12か月を超えない)。 EU Trade+1
  • 原産性基準の記載:SoOには**原産性基準(Origin criteria used)の表示が必要。実務ではA(WO)/B(PE)/C(PSR:C1=CTC, C2=RVC, C3=SP)/D(累積)/E(寛容)**等のコードで記載します。 Japan Customs+1

5. 実務フロー(SDの取得から原産地証拠まで)

  1. 協定とPSRの確定:対象FTA・最終製品のHSを確定し、累積の可否も確認。
  2. BOM分析:原産判定に影響の大きい材料を特定。
  3. SDの取得
     ・原産材料22‑15/22‑16(相手FTA名・累積の有無を明示)
     ・EU内加工の非原産材料22‑17/22‑18非原産材料のHS見出し・価額や加工内容) wko.at
  4. 日付管理(LTSD):発行日/開始日/終了日を管理し、開始日から24か月の上限を厳守。 Taxation and Customs Union
  5. 原産性の最終判断と書類作成:SDと生産実績で原産性を裏付け、SoOまたはEUR.1等の原産地証拠を整備。 Taxation and Customs Union
  6. 保存・検証対応:関連書類を保存し、要求があればINF4等で説明可能な状態に。 Taxation and Customs Union

6. 記載項目チェックリスト

  • 供給者(サプライヤー)の名称・住所
  • 買手の名称(必要に応じて)
  • 対象商品の明確な情報(品名、型番など)
  • 適用するFTAの正式名称
  • 原産地(例:「European Union」)
  • 累積の相手国(該当時) wko.at
  • 原産性基準(協定が要求する場合。EU-日本EPAのSoOはOrigin criteria usedの記載必須) Japan Customs
  • 非原産材料の情報(22‑17/18:HS見出し・価額 等) wko.at
  • 発行日/開始日/終了日(LTSD)と署名(または電子認証の条件確認) Taxation and Customs Union+1

7. よくある間違いと対策

❌ 避けるべき間違い✅ 推奨される対策
SDを輸入申告の直接の証拠として提出SDは社内・社間の裏付け。輸出時はSoOEUR.1等の原産地証拠を整備。 Taxation and Customs Union+1
FTA名を曖昧に記載(例:「EUの特恵」)**「EU‑Japan EPA」**のように正式名称で。
LTSDの期間を「発行日から24か月」と誤解上限は開始日から24か月。開始日は発行日の12か月前〜6か月後で設定。 Taxation and Customs Union
累積相手国の記載漏れPEM等で累積利用時は必須項目としてチェック。 wko.at

8. 実務運用のベストプラクティス

  • 「1協定=1枚」運用:同一品でも輸出先が変われば協定ごとにLTSDを分けて取得(混在回避)。
  • 更新管理の自動化:LTSDの終了2〜3か月前に更新アラート(Excel/ERP)。
  • サプライヤーへの依頼文例(LTSD, EU‑Japan EPA)

件名:長期サプライヤー証明(LTSD)発行のお願い(EU‑Japan EPA)
本文:
貴社より継続購入中の下記製品につき、UCC実施規則 附属書22‑16相当の長期サプライヤー証明の発行をお願い申し上げます。
対象製品:[製品名/型番]
開始日:2025/10/01 終了日:2027/09/30発行日は御社記入。※開始日から最長24か月の範囲でご設定ください)
併せて、累積の有無と相手国、必要に応じ原産性根拠の併記をお願いします。

※期間上限は開始日基準で、開始日は発行日の12か月前〜6か月後の範囲内で設定可能です。 Taxation and Customs Union


9. 今後の展望と留意

EUは原産地関連手続のデジタル化を継続的に進めています。最新運用は欧州委員会(TAXUD)ガイダンスAccess2Marketsで必ず確認してください(法令が優先)。 Taxation and Customs Union

本ガイドは公開情報に基づく一般的解説です。実務適用時は、最新の協定本文・実施規則・各国カスタムガイダンスをご確認ください。

HS Code Finderのアップデート:出力について

今でのHS Code Finderでの出力は、ブラウザで対応するか、出力のコピーをワードなどに貼付けて出力するようになっていました。

これだと不便ですので、Canvasの機能を使い、pdfかdocで出力できるようにしました。

少しは使いやすくなったと思います。

FTAのデミニミス規定と米国のデミニミス免税停止について

経営者・実務担当者向け 完全ガイド(2025年9月14日現在)


【1分サマリー】重要ポイント

同じ「デミニミス」でも中身は別物

現在の取り扱い(要点)


【詳細解説】米国デミニミス免税の停止

何が変わったか

  • 2025/7/30:大統領令14324が公布。19 U.S.C. §1321(a)(2)(C)の無税デミニミス扱いを停止The White House
  • 2025/8/29 0:01(米東部)適用開始非郵便ACEでエントリー必須郵便は別建ての課税方式へ。The White House

区分別の運用

1) 宅配・航空・海上(非郵便)

  • エントリー:正式/非公式を問わずACEによる申告必須
  • Type 86ACEが全件リジェクト。Section 321の簡易放出は不可。GovDelivery

2) 国際郵便

  • 課税方式
    • 定額80/160/200ドル/品有効期間6か月)。
    • 従価有効IEEPAレート(原産国別)。2026/2/28以降は従価のみ
  • 実務原産国の申告、運送者または**“Qualified Party”による月次納付**。CBPへの新ワークシート提出U.S. Customs and Border Protection+2U.S. Customs and Border Protection+2

3) USMCA等の特恵関税との関係


【継続中】FTA/EPAのデミニミス規定(原産地の僅少許容)

基本:CTC(関税分類変更)を満たせない**“わずかな非原産材料”について、一定割合以下なら原産扱い**とする救済。数値や計算基準は協定ごとに異なる。

協定閾値(代表)特記事項
USMCA取引価額(国際運賃除外)または総コストの10%Art.4.12、繊維は別章。United States Trade Representative
CPTPP製品価額の10%Annex 3‑Cに例外、繊維は重量10%(Ch.4)。Global Affairs Canada+1
日EU・EPA10%(ex‑works/FOB)Art.3.6(Tolerances)、繊維は注記で別規定。Ministry of Foreign Affairs of Japan
RCEP10%(FOB)Art.3.7、繊維は重量10%Centre for International Law

活用のポイント

  • **CTC未達の“最後の手段”**として検討。
  • 例外付属書(CPTPP Annex 3‑C など)で適用不可品目を必ず確認。
  • 繊維重量基準が多い点に注意(一般品の価額基準と混同しない)。

【役割別】緊急アクションプラン

A. 経営者向け(意思決定の勘所)

  1. 収益影響の即時計算:旧「800ドル以下」案件の関税・通関費上乗せを反映し、売価・利益を再試算。
  2. 販売条件の再設計DDP/DAPの負担、リードタイム(通関)、返品費用を見直し。
  3. 原産最適化デミニミス+累積を用い、USJTA等の特恵による関税ゼロ/低率化を設計。
  4. 統制再構築ACE申告体制・ボンド・ブローカー契約と**KPI(分類正確性/差止率等)**を整備。
  5. 社内用語の分離:「原産地のデミニミス」と「米国輸入のデミニミス」を明確区分。

B. 実務担当向け(当面の実装手順)

米国向け:宅配・一般貨物(非郵便)

  • Type 86停止前提で非公式/公式エントリーへ切替(ACE)。
  • HTS10桁・原産国・売買当事者・インボイス値など前工程で確定
  • 関税・税金・手数料の計算とDDP/DAP別の回収フローを整備。GovDelivery

米国向け:国際郵便

  • 課税方式(定額 or 従価)の選択・適用を統一(月単位で変更可2026/2/28以降は従価のみ)。
  • 原産国申告+月次納付の新プロセス(Pay.govワークシート)を実装。
  • 特恵が必要な出荷ACEエントリーに切替。U.S. Customs and Border Protection+1

FTA原産判定(共通)

  1. PSR→CTC判定 → 未達ならデミニミス(10%)を評価(繊維は重量)。
  2. 例外付属書の適用可否確認。
  3. 材料内訳・計算書・サプライヤー宣誓等の証憑保管を徹底。

【混同防止】制度比較早見表

項目FTA/EPAのデミニミス(原産地)米国のデミニミス(輸入時の無税扱い)
目的原産地規則の救済(CTC未達の僅少分を許容)低額貨物の無税扱い現在は停止
閾値価額10%(繊維は**重量10%**等)800ドル以下免税停止
根拠各協定条文(例:USMCA 4.12/CPTPP 3.11/日EU 3.6/RCEP 3.7)大統領令14324、CBP告知(Type 86不可
実務原産判定・計算・証憑ACE申告郵便の新課税関税納付

GovDelivery+6United States Trade Representative+6Global Affairs Canada+6


【具体例】数値シミュレーション

CPTPP・原産地デミニミス

  • FOB:100万円
  • CTC未達の非原産材料:9万円
  • 判定:9% ≤ 10% → 原産品認定可(例外付属書対象は不可/繊維は重量基準)。Global Affairs Canada

米国向け・宅配(非郵便)

  • 価格:200ドルの小包 → 無税枠なしACEで申告し、関税等納付GovDelivery

米国向け・国際郵便(移行期間)


【主要根拠】(リンクは出典先)


ひとことアドバイス

社内では**「原産地のデミニミス(FTA/EPA)」「米国輸入のデミニミス(Section 321)」を別ラベルで管理してください。米国向け小口出荷は、通関・価格・販売条件(DDP/DAP)・返品まで含めた即時の設計見直し**が安全です。


本資料は一般的な解説です。個別案件では、該当協定本文・付属書、CBPの最新ガイダンス(CSMS/FAQ)、および連邦官報の実施告示をご確認ください。

初心者向け:検認とは何か

A. 検認とは何か

定義:特恵税率で輸入済みの貨物について、原産性・記載の正確性・積送要件などを輸入国税関が確認する事後確認(Verification)。各EPAの規定と国内法に基づいて実施され、書面照会や(協定により)訪問審査が行われる場合がある。

第三者証明(日本発・CO方式)の連絡経路
相手国税関 →(外交ルート等)→ 経済産業省 → 日本商工会議所(JCCI)→ 企業

提出資料:対比表・計算ワークシート・工程フロー・商流書類等

自己申告制度(例:日EU・EPA)
輸入者主体の責任で申告し、輸入国税関はまず輸入者から情報を求め、追加が必要な場合に輸出国税関へ行政協力を要請(間接検認)。輸入国税関による輸出者への直接訪問規定はない。

B. 検認で原産性が否認された場合の影響

  • 特恵の否認:関税差額の追徴、必要に応じて保証金・担保や行政措置・制裁(各国法令に従う)
  • 日EU・EPA:検認中に特恵適用を一時停止し、担保提供等を条件に貨物の引取りを認める規定あり(第3.21条6項)
  • 回答なし・不十分な場合:否認決定が可能(第3.24条)
  • 国内法上のリスク:輸入者側で追加納付・延滞相当の負担が生じる可能性

C. 協定ごとの検認プロセスの違い(代表例)

日タイEPA(第三者証明)

  • 流れ:タイ税関 →(外交ルート)→ 経済産業省 → JCCI → 企業
  • 期限:最初の確認3か月以内、追加2か月以内

日メキシコEPA

  • 特色:相手国税関が輸出者・生産者へ直接確認可能な規定がある
  • 認定輸出者による自己証明も採用

日EU・EPA(自己申告)

  • 検認:輸入国税関→輸入者、必要に応じ輸出国税関へ間接検認
  • 有効期間:原産地に関する申告は作成日から12か月有効
  • 保存義務:輸入者3年、輸出者4年(第3.17条4項、第3.19条)

RCEP

  • 証明方法が複線:CO(第三者証明)と輸出者・生産者による原産地申告(DO)
  • 加盟国により採用可否が異なる

D. 検認が起こり得るタイミング(保存義務期間)

第三者証明のEPA:起算はCO発給日から。協定別に5年または3年。

  • 5年保存:日メキシコ、日マレーシア、日チリ、日タイ、日インドネシア、日フィリピン、日インド、日ペルー、日オーストラリア
  • 3年保存:日モンゴル、日ブルネイ、日ASEAN(AJCEP)、日スイス、日ベトナム、RCEP

参考:CO自体の有効期限は別概念。例えば日フィリピンEPAは6か月、その他多くは1年(輸入通関時の提出期限)。ただし、検認は通関後でも保存義務期間内に行われる可能性がある。

E. 原産性が否認された場合の実務インパクト

金額面

  • 特恵無効により通常税率との差額納税
  • 延滞・加算相当の負担、行政罰の可能性(各国法令)
  • EU・日本双方は、虚偽申告・保存義務違反等に行政措置・制裁を規定(日EU・EPA第3.26条)

通関・物流面

  • 検認中の特恵一時停止・保証要求
  • 将来貨物のリスク選別強化
  • 与信・納期への影響

社内影響

  • 価格前提の崩壊(逆ざや・返品・値引き交渉)
  • 再発防止コスト(様式改修・教育)

F. 日本企業が実際に受ける検認の典型10事例

  1. 包括期間・複数COの横断検認:特定年の複数出荷を束ね、対比表・工程・商流書類の一括提示を要請
  2. 型番別単価差×COの品名集約:インボイスは型番別、COは1品名集約。適用基準(CTC/VA)と原産割合の根拠確認
  3. 第三国インボイス未記載:CO第8欄への記載漏れの有無確認・補足説明を要求
  4. 積送確認(第三国寄港・積替):非加工・非変更(Non-alteration)の説明としてB/L・通関書類等の提示
  5. HS誤り・未記載:HSコードの記載不備や齟齬に対する軽微性判断
  6. 累積の記載不足(AJCEP等):ASEAN第三国材の情報がCOに反映されず、累積根拠の再提示を要請
  7. 輸送欄の変更:運航変更で船卸港等がCO記載と相違。事情説明で有効扱いとなった実務例
  8. 住所表記差(輸出者・輸入者):私書箱/本社・工場住所差など、同一法人性の説明で有効扱い
  9. 日EU・EPAの間接検認:EU税関が輸入者→日本税関→輸出者の順に照会
  10. 期限徒過/資料不十分:期限内に十分な回答が出せず否認

G. 検認に備える重要ポイント

  • 保存設計:協定別3年/5年をCO発給日起算で台帳管理
  • 記載精度:COのHSコード・品名・数量・第三国インボイス・積送欄を二重チェック
  • 累積・僅少の根拠:累積利用時は相手国原産の根拠書類、僅少規定の閾値と除外規定を協定別に把握
  • 自己申告の基本(EU等):原産地に関する申告の12か月有効、輸入者3年・輸出者4年保存
  • 期限管理:協定上の公式期限から逆算し、社内SLAを設定
  • 事前教示の活用:HSコードや原産地取扱いに不安があれば税関の事前教示(3年間尊重)で安定運用
  • 言語・機密:提出資料は必要箇所に英語を付記。機微情報は要同意・機密扱い

③ 実務用チェックリスト

□ 協定特定(第三者証明/自己申告/認定輸出者)
□ 保存年限(CO発給日起算で3年または5年/EU自己申告は輸入者3年・輸出者4年)
□ 資料収集(対比表・計算ワークシート・工程・投入・商流・積送)
□ CO記載(HSコード・品名・数量・第三国インボイス・積送の整合性)
□ 期限逆算(例:日タイ3か月/2か月)
□ 英語化(必要箇所のみ、機密管理)
□ 事前教示(不安点は照会=回答は3年間尊重)


注記:制度・運用は協定条文と相手国国内法により最終判断されます。自社案件では、該当協定条文と最新ガイダンスを都度確認してください。

初心者向け:日本の主要 FTA/EPA における RVC 計算方式(Build-Up/Build-Down)の選択可否

日本の主要 FTA/EPA における RVC 計算方式(Build-Up/Build-Down)の選択可否

結論

  • 両方式を選択可:CPTPP、RCEP、日印 CEPA、日チリ EPA、日モンゴル EPA
  • ビルドダウンのみ(または EU 型 MaxNOM=実質ビルドダウン):日 EU・日 英 EPA、AJCEP、多くの ASEAN 二国間 EPA(タイ・マレーシア・インドネシア・フィリピン・ベトナム)、日豪 JAEPA、日ペルー、日スイス、日メキシコ
     PSR(品目別規則)が CTC のみ等で RVC 自体を許容しない品目がある。最終判断は必ず PSR を確認すること。

1) 両方式(Build-Up/Build-Down)を選択可

協定該当条文・注記閾値・母数補足
CPTPP第 3.5 条Build-Down:(FOB − VNM)/FOB Build-Up:VOM/FOB 自動車に Net Cost
RCEP第 3.5 条同上(FOB ベース、FOB 不明時の代替規定あり)
日印 CEPA第 28 条(a) Build-Down: (FOB − VNM)/FOB (b) Build-Up: (VOM + 直接労務費等)/FOB
日チリ EPA第 30 条双方式の QVC 式を採用(閾値 40% 等、品目で差異)
日モンゴル EPA第 3 章 付属書運用手続例で両式明示(FOB 基準)

2) ビルドダウンのみ(EU 型 MaxNOM を含む)

協定該当条文・注記使用可方式備考
日 EU EPA附属書 3-AMaxNOM:VNM/EXW RVC:(FOB − VNM)/FOBBuild-Up なし
日 英 CEPA附属書 3-A日 EU と同型
AJCEP第 28 条・公式プライマーRVC:(FOB − VNM)/FOB のみBuild-Up なし
日豪 JAEPA豪州側ガイドRVC:(Customs Value − VNM)/Customs Value母数は通関価額
日タイ JTEPA第 29 条 4(b)QVC:(FOB − VNM)/FOB
日マレーシア MJEPA運用解説QVC:(FOB − VNM)/FOB
日インドネシア JIEPA第 28 条 4(b)QVC:(FOB − VNM)/FOB
日フィリピン JPEPA運用手続QVC:(FOB − VNM)/FOB
日ベトナム VJEPA第 27 条LVC:(FOB − VNM)/FOB
日ペルー EPA第 41 条QVC:(FOB − VNM)/FOB
日スイス EPA附属書 2MaxNOM:VNM/EXWBuild-Up なし
日メキシコ EPA附属書 4RVC:(TV − VNM)/TV ※自動車に特則

実務上の留意点

  • 価格基準
    • EU 型は MaxNOM が EXW、RVC が FOB を母数とし、いずれも VNM を控除するビルドダウン発想。
    • JAEPA は Customs Value を採用するため、日本側輸出価格との乖離に注意。
  • PSR 優先
    一般則で両式が許されても、PSR が「CTC のみ」「CTC または RVC40%」と指示する場合はそのとおりに従う。
  • 業種別特則
    自動車など一部分野は Net Cost(CPTPP)や独自計算式を設定。該当附属書を必ず確認。

方式選択の概略指針

  • Build-Up を選べる協定(CPTPP/RCEP/日印/日チリ/日モンゴル 等)
    • 原産材料の VOM をサプライヤー証明で一括把握できる場合に有利。
    • 複数原産国部材を組み合わせる調達構成で柔軟性が高い。
  • Build-Down のみの協定(日 EU・日 英/AJCEP/ASEAN 二国間/日豪 等)
    • 非原産材料 VNM の管理が中心。母数(EXW/FOB/通関価額)の違いを誤らないこと。

米国『相互関税』下でのファーストセール活用の現状と実務

以下は、日本の経営層向けにまとめた**「米国『相互関税』下でのファーストセール活用の現状と実務」です。(本稿の数値・制度は2025年9月10日**時点)


エグゼクティブ・サマリー

  • 米国の「相互関税」は、2025年4月に導入(原則10%)。日本向けは当初国別追加率24%が適用予定だったが、9月4日付の大統領令で日本品目は「合計15%へのトップアップ」方式(MFNが15%未満の品目は合計15%に、15%以上は追加0%)へ変更。8月7日に遡って適用され、9月16日頃までに実装される見込み。これにより日本からの対米輸出の関税水準は実務上15%が目安The White House+2The White House+2Reuters
  • 関税上昇のなか、ファーストセール(First Sale)を使って課税価格を「製造者→仲介者」の第一次販売価格にできる取引への関心が世界的に上昇。欧州大手(L’Oréal等)も米国関税対策として採用検討との報道があり、企業の節税ニーズが顕在化。 Reuters
  • コンサル需要は増加。米国の通関実務を担うカスタムブローカーや通関・関税アドバイザーの依頼が急増し、費用も上昇傾向との報道。各大手アドバイザリーもFirst Sale関連のウェビナーやソリューションを拡充。 ReutersKPMG+1
  • 制度面の足元:米連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)のMeyer事件(2024/12/13)では、下級審の厳格すぎる解釈を退けFirst Saleの適用可能性を改めて示唆。一方でCBP(米税関)への「First Sale宣言(Fインジケータ)」や厳格な文書性は引き続き重要。 JustiaU.S. Customs and Border Protection+1

1. 米国「相互関税」の最新状況(日本企業に関係する部分)

タイムライン概要

  • 4/5:全パートナーへ10%のベース関税開始。4/9:国別上乗せ率発動(**日本は24%**に位置付け)。 The White House+1
  • 7/22:米日「枠組み合意」発表。日本向けは**合計15%**へ切替の方針が示唆。 The White House
  • 9/4:大統領令「Implementing the United States–Japan Agreement」発出。日本は「合計15%にトップアップ」。自動車・航空・一部医薬・資源等は別建て取扱い。8/7に遡って適用9/16頃までに施行見込みと日側が発表。 The White HouseReuters

相互関税の調査結果(日本企業向け要約)
(プロジェクト内の標準フォーマット)

国名関税率出所備考
アメリカ(日本向け)原則合計15%(MFNに対するトップアップ)White House EO(2025/9/4)2025/8/7に遡及適用。自動車・航空・一部医薬・資源は別建。 The White House

参考:当初の国別追加率表(Annex I)では日本24%だったが、対日合意で15%へ変更。実務は**「MFN + 追加=合計15%」**になる(MFN≧15%の品目には追加0%)。 The White House+1

(注)EU等他地域は別枠で15%(鋼アルミは50%等)が進行中。足元も政策は流動的で、実装スケジュールや対象は日々更新されるためFR(連邦官報)告示の確認が必須。 Reuters


2. ファーストセール(First Sale)活用の現在地

  • 需要の高まり:米国の広範な関税上昇の直撃を受け、メーカー価格(第一次売買価格)を基礎に課税できるFirst Saleへの関心と採用が拡大。欧州大手が公にFirst Saleの検討を表明したほか、各アドバイザリーが2025年入り後にFirst Sale関連の解説・支援を増強ReutersKPMG
  • 法的確度CAFC(Meyer事件)は、First Sale適用の判断で不要な“非市場影響の完全排除”まで求めた下級審を批判し差戻し。判示はNissho Iwai(1992)ラインの再確認で、適切な事実関係と文書があれば適用余地があることを改めて示唆。 Justia
  • 実務要件(要点)
    • ①ボナファイド(真正)な売買②米国向けの販売③アームズレングス(関連者間でも事情考慮で可)の立証。
    • 強固な文書性(製造者→仲介者、仲介者→輸入者の契約・PO・INV・支払証憑・船積書類・米国向け証跡)。
    • 申告面:**CBPへのFirst Sale申告(Fインジケータ)**等、エントリーでの適切な表示・内部統制。 U.S. Customs and Border Protection+1

(補足)相互関税以外でも**対中301関税の強化(EV100%等)**が続いており、First Saleの“節税レバー”の価値は総合的に上昇United States Trade Representative


3. コンサルティング需要・費用・リードタイムの所見

  • 需要関税環境の変動→ブローカー/関税アドバイザーへの相談が急増。業界報道では**「需要過多で費用も上昇」とされ、大手物流・通関企業の人員増強も見られる。First Saleを含む関税最適化相談の“枠”は逼迫**しがち。 ReutersNCBFAA – CMS
  • 費用の方向感:公開単価は限定的だが、需要超過とコンプライアンス・リスク上昇を背景にレート上振れの観測が増加。大手税務・通商アドバイザリーがFirst Sale専用チームやCOEを前面化しており、専門人材の需給タイトが続く見込み。 KPMG
  • ウエイティング:公式な待機列データは限定的だが、需要急増の報道各社の人員拡充から、ピーク時は着手までの待ち(数週間~)が発生しうる局面。期限が読みにくい相互関税の実装・改定も相まって早期着手が安全ReutersNCBFAA – CMS

※上記は市場全体の定性的トレンドです。貴社の規模・サプライチェーンの複雑性・対象HS範囲・必要書類の整備度により見積りは大きく変動します。


4. コンサルタントの選び方

  1. First Saleの実績製造者→仲介者→輸入者の三者文書を数百~数千行レベルで検証した経験/関連CBPバインディングルーリング実績。
  2. 訴訟・審査対応力Meyer等の判例動向を踏まえた関連者間価値検証(“circumstances of sale”)に強いこと。 Justia
  3. 通関実務との接続:ブローカーとのエントリー連携(Fインジケータ、行分割、PMI/MPF等の整合)。 U.S. Customs and Border Protection
  4. 日本語/日系サプライヤ対応工場側の原価・契約情報の開示交渉を日本語で粘り強く進める力。
  5. 相互関税の即応力合計15%トップアップ例外品目等、対日合意に基づく実装をエントリー設計へ反映できる体制。 The White House
  6. データガバナンス:PO/INV/支払・物流・原価の仕訳・紐付け・サンプリングの設計力。
  7. 移転価格・税務との整合First Sale とTP文書の一貫性(“all costs + profit”テスト等)に通じること。 Justia
  8. 体制・納期繁忙期でも確実に稼働できる要員計画(需要逼迫の環境前提)。 Reuters

5. 企業が取るべきプロセス案

Day 0–15:インパクト把握とGo/No‑Go

  • 対米出荷の関税影響マップ(相互関税15%・他救済含む)、First Sale適用余地(販売段階のマージン差)を定量化。概算ROIを算出(後掲の簡易式参照)。 The White House

Day 16–45:実行可能性(Feasibility)

  • サプライチェーン可視化(製造者→仲介者→輸入者)。
  • 文書回収:契約、PO/INV、支払、BL/AWB、米国向け特定証跡。
  • テストサンプルボナファイド/米国向け/アームズレングスの3要件を検証。必要に応じ契約条項の改訂U.S. Customs and Border Protection

Day 46–75:設計・パイロット

  • 申告設計Fインジケータ運用、行分割、第三者費用の扱い)。
  • パイロット申告(少量・限定SKU)→差異分析内規化U.S. Customs and Border Protection

Day 76–90:本番展開・監査耐性

  • SOP/権限/チェックリスト整備監査トレイル構築。
  • 必要に応じCBP事前教示(バインディングルーリング)年次レビュー枠組み(価格・原価変動追随)。
  • UFLPAや301/232等の他法令との同時整合も確認。 United States Trade Representative

6. 検討会向けROIの簡易算式

  • 年間輸入額(CIF)× 関税率 ×(最終売買価格に対する第一次売買価格の割引率)理論的な年次節税
  • 例:年間5,000万ドル、相互関税15%、第一次価格が20%低い場合
    5,000万 × 15% × 20%=150万ドルの削減ポテンシャル(他の特別関税・手数料・実装コストは別途考慮)。

7. リスクとコンプライアンスの勘所

  • 文書性の不足関連者間価格の説明不備は致命傷。Meyer判決は救済的だが、根拠資料の整備を前提とする点は不変。 Justia
  • 申告(Fインジケータ等)と現場オペの乖離は追徴・罰則の火種。中間業者の協力取り付け(コスト情報開示)が成功の鍵。 U.S. Customs and Border Protection
  • CBPの審査活発化を指摘する業界アラートが増加しており、監査耐性(サンプリング、追跡可能性)の事前構築が安全。 PCB USAMohawk Global

8. いま取るべきアクション

  1. 関税影響の棚卸し(HS別・SKU別、相互関税15%の影響を即時試算)。 The White House
  2. First Sale適用余地のスクリーニング(三者取引・マージン差のある品目の抽出)。
  3. サプライヤ・仲介者との合意形成(情報開示・契約改定の協議)。
  4. パイロットの早期実施(FR実装タイムラインに合わせ、9–10月の本格展開を見据えた先行準備)。 Reuters
  5. コンサル・ブローカーの確保(需要逼迫を踏まえ、着手枠の確保と見積を先行)。 Reuters

主要出典(抜粋)

  • 大統領令(相互関税の骨子)4/2 EOAnnex I(日本24%)9/4 日米合意実施EO(日本は合計15%トップアップ)The White House+2The White House+2
  • 実装見通し(施行時期)9/16頃までに低関税化が効く見込み(ロイター)。 Reuters
  • First Saleの活用・要件CAFC MeyerCBP First Sale Declaration/ガイダンスJustiaU.S. Customs and Border Protection+1
  • 需要・費用上昇の市況ブローカー需要急増・費用上昇(ロイター/業界団体再掲)。 ReutersNCBFAA – CMS
  • 欧州での活用機運大手がFirst Sale検討(ロイター)。 Reuters

付録:First Sale導入時の提案RFP項目(抜粋)

  • スコープ(HS/仕向け/サプライヤ階層)、成果物(適格性判断書、文書チェックリスト、SOP、パイロット申告支援、監査対応パック)、申告設計(Fインジケータ、行分割方針)、データ要件、移転価格連動、リードタイム、体制(マネジャー稼働率・バックアップ)、費用(固定+従量、成功報酬の可否)、守秘と情報開示合意(NDA/監査時の第三者閲覧)。

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初心者向け:FTA、EPAの原産地証明の原産地基準

1. 対象品のHSコードの見つけ方

基礎(拠り所)

  • HS分類は「関税率表の解釈に関する通則(GIR)」で決めます(通則1〜6)。まずこれを踏まえ、章・部注、項目注を読み、品目の技術実態と照合します。税関総合情報
  • HSの6桁構造(2桁=類、4桁=項、6桁=号)を理解して進めます。ジェトロ

実務の進め方(現場フロー)

  1. 製品仕様の把握:用途・機能・主要材質・構造・動力・加工有無を整理(カタログ/図面/材料表)。
  2. 類→章→項→号を候補探索:関税率表や解説資料(税関「関税率表解説・分類例規」、WCO Explanatory Notes)で比較します。税関総合情報wcoomd.org
  3. 通則/GIR章注・部注除外規定で候補を絞る(「まず該当する定義、次に除外」)。税関総合情報
  4. 迷うときは 事前教示(Advance Ruling) を検討:輸入前に税関へ文書照会し、分類の公式回答を得る制度です(公開データベースも有)。税関総合情報+3税関総合情報+3税関総合情報+3

補足:輸出用書類のHSは相手国の6桁が求められる場面があります。最終的には輸入国税関での受理が基準なので、相手側と整合確認を。トムソン・ロイター


2. 原産地規則の見つけ方:日本税関サイトを使う

使うサイト:日本税関「品目別原産地規則 検索画面」
(トップの「EPA・原産地規則ポータル」から到達可)

操作手順

  1. サイトにアクセスし、**協定(国名/Country)**を選択。
  2. HSコード4桁または6桁を入力(ドットなし)。
  3. 検索すると、該当品目の**品目別原産地規則(PSR)**が表示されます。
  4. 表示は関税譲許の有無に関わらずPSRが出る仕様のため、後述の関税譲許表も要確認。税関総合情報

重要な注意(サイト記載の要旨)

  • HSコード版の違いに注意:協定ごとにHS2002/2007/2012/2017/2022など採用版が異なるため、協定が採用する版で検索・読み替えが必要。WCOの相関表リンクも掲載されています。輸入申告は最新版HSを使用。税関総合情報
  • 関税譲許の確認:PSRが満たせても、対象品が関税撤廃・削減の譲許対象かは別問題。サイトから日本の実行関税率表相手国譲許表への案内があります。税関総合情報

3. 原産地基準の読み方

(A) CTC(関税分類変更)系

  • CC/CTC=類変更(2桁)、CTH=項変更(4桁)、CTSH=号変更(6桁)。非原産材料のHSが、最終製品の規定桁で別番号になることが条件。
  • 除外書きに注意:例「CTH(ただし○○からの変更を除く)」=その番号の非原産材料を使うと変更達成と認めない。日EU・EPAの同軸ケーブル等の例が公開資料にあります。ジェトロ

(B) RVC(域内原産割合)系

  • 控除方式RVC:RVC(%)=(FOB−VNM)/FOB×100(VNM=非原産材料価額)。
  • MaxNOM(非原産材料最大割合):MaxNOM(%)=VNM/EXW×100。
  • 日EU・EPA資料では、RVCはFOB基準MaxNOMはEXW基準で示され、計算例が図表つきで整理されています。ジェトロ

(C) 加工工程基準(Specific Process, SP)

  • 例:**化学反応(CR)**の実施を要件とするなど、特定工程の実施が条件。RCEPの公表資料に定義・例示があります。税関総合情報

(D) 併用・選択

  • 多くのPSRは「CTC 又は RVC」の選択ですが、品目・協定によっては両方必要(AND)や工程基準の追加もあります(例示:日印EPAなどの解説)。ジェトロ

4. 気をつけること

  • HS版ズレ:協定採用版(HS2012/2017/2022 等)でPSRを読む。必要に応じてWCO相関表で対応関係を確認。税関総合情報
  • 関税譲許の有無:PSR表示は譲許と無関係。実行関税率表/相手国譲許表優遇が存在するかも必ず確認。税関総合情報
  • 除外書き・脚注:PSRの括弧書きの除外材料注記は落とし穴。日EU・EPAの具体例(同軸ケーブル等)を参考に、材料毎のHSを棚卸して該当有無を精査。ジェトロ
  • AND/ORの読み取り:選択制か併用要件かで求める証拠が激変。協定文・注釈まで確認。ジェトロ
  • 最小限作業の不原産(Insufficient Working):単純な包装・選別等は原産性を与えない扱い。EUの公式解説でも強調されています(日EU・EPAの理解に有用)。trade.ec.europa.eu
  • デミニミスや累積の活用:わずかな非原産材料の許容(デミニミス)や累積規定で救済できる場合あり。RCEP資料の図解が実務に有用。税関総合情報
  • 価格基準の取り違い:RVCはFOB、MaxNOMはEXWなど、計算の価格基準を誤らない(協定・注記で要確認)。ジェトロ
  • 証憑の整備:自己申告・証明書に加え、計算根拠や裏付け資料(原材料の原産性、購買・製造・在庫記録等)を保持。税関ガイドラインも証拠書類の必要性を明示。税関総合情報
  • 協定選択の視点:同一相手に複数協定が使えるとき、単に税率だけでなくPSRの難易度や手続負担も比較すると実務最適。Business Growth Service
  • 相手国HSの整合:輸入国で受理される6桁かを事前に確認(輸入者・現地税関と照合)。トムソン・ロイター
  • 迷う場合:**事前教示(分類/原産地)**を活用し、将来紛争を未然防止。税関総合情報+1

5. 日本税関サイトでの「読み方」

  • 画面入力:国名(協定)HS4または6桁→検索。
  • 結果の典型表示:
    • CTH/CTSH/CC=関税分類変更(変更レベルに注意)
    • RVC◯◯%MaxNOM◯◯%=付加価値系(計算基礎FOB/EXWに注意)
    • **CR(Chemical Reaction)**等=工程基準
    • (○○からの変更を除く)等=除外(その材料は原産であることが前提)
    • 注記や脚注は必ず確認(AND/OR関係、例外、定義)
    • (注意)関税譲許の有無は別途確認税関総合情報ジェトロ

6. 1ページ・ワークフロー

  1. HS確定:通則→注解→候補比較→(必要なら)事前教示。税関総合情報+1
  2. PSR検索:税関サイトで協定×HS検索→PSR・注記を読み込む。税関総合情報
  3. 判定設計:CTCかRVCかSPか、AND/ORか、除外・デミニミス・累積の有無。税関総合情報ジェトロ
  4. 証憑整備:BOM・購買証跡、工程記録、RVC計算書、供給者原産声明等。税関総合情報
  5. 譲許確認:実行関税率表/相手国譲許表で対象か確認。税関総合情報

7. 用語解説

  • GIR(通則):HS分類の大原則。税関総合情報
  • PSR:品目別原産地規則。CTC/RVC/SPなどで原産性を判定。ジェトロ
  • CTC(CC/CTH/CTSH):非原産材料のHSが最終製品に対し規定桁で別番号へ変更。ジェトロ
  • RVC/MaxNOM:域内原産割合または非原産材料割合の基準(計算基礎に注意)。ジェトロ
  • SP(加工工程):化学反応など特定工程の実施が要件。税関総合情報
  • デミニミス/累積:わずかな不適合材料の許容、域内材料の相互みなし。税関総合情報

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