HS2028で影響が出そうな項目がいくつかあります。
それらを項目別に整理して、説明をしていきたいと思います。
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メキシコ向けサプライチェーンの実務を、制度変更で崩さないために
メキシコで繊維・アパレルの製造や輸出入を行う企業にとって、IMMEXとPROSECはコスト構造を決める中核制度です。ところが2024年末以降、繊維・アパレル分野を名指しする形で、関税(IGI)の一時引き上げと、IMMEXによる完成品の一部取扱い制限が制度として明文化され、運用設計を更新しないと、輸入可否や納期、原価、監査対応に連鎖的な影響が出やすい環境に変わりました。
本稿では、繊維分野の現場で起きやすい論点に絞り、何が変わり、何を更新すべきかを、ビジネス判断に落ちる形で整理します。

制度名はセットで語られがちですが、目的と効き方は別物です。誤解したまま設計すると、制度の「穴」ではなく「地雷」を踏みます。
IMMEXは、輸出を前提にメキシコ国内で製造やサービス提供を行う企業に対し、原材料や部材などの投入物を関税負担を抑えて受け入れやすくする枠組みとして説明されます。運用の肝は、輸入したものを適正用途に使い、所定の期限内に戻す(輸出やリターン等で整理する)ことです。
そして、制度は近年「使い方」を強く問う方向へ動いています。完成品を入れて国内に滞留させるような運用が問題視され、IMMEXの取消しや取締りが実際に公表されています。
PROSEC(セクター別振興プログラム)は、指定セクターの生産者が、特定の原材料・中間材・機械等を輸入する際のIGIを優遇する制度です。PROSECには「繊維・アパレル」セクターが明記されており、繊維関連の品目が対象に含まれます。
重要なのは、PROSECはIMMEXの代替ではないという点です。IMMEXが「輸出加工のための一時輸入」を軸に設計されるのに対し、PROSECは「対象品目の輸入関税率そのものを低くする」設計です。国内販売を含むビジネスでも使われる余地があり、逆に言えば、IMMEXで通らなくなった領域をPROSECで置き換える発想は、ケースによっては有効ですが、制度目的と輸入形態(暫定か確定か)を揃えないと成立しません。
ここからが本題です。現場の設計を変えるべき「制度の変化」を、繊維分野に絞って押さえます。
2024年12月19日付の政令で、繊維・アパレル分野に対して次の方針が示されています。
制度文面には、輸入と輸出(リターン)の数量ギャップが記載されており、運用実態を根拠に「戻っていない」ことが問題視されている点が読み取れます。
つまり、繊維分野のIMMEXは、単なる書類整合ではなく、実際のフローとして「投入して、加工して、戻す」を裏付けられる運用へ戻すことが求められていると理解すべきです。
ビジネス上の含意はシンプルです。
完成品寄りの輸入をIMMEXに寄せていた企業ほど、調達形態の見直しが必要になり、見直しが間に合わないと「輸入できない」「輸入できても原価が跳ねる」「監査で説明が破綻する」のいずれかが起きやすくなります。
PROSEC側も動いています。2024年8月の改正では、繊維・アパレル産業(セクターXX)に関連する品目として、高強力ポリエステル糸などに関する関税分類が追加されています。
これは「関税優遇の対象が、川上の素材や工業用テキスタイルへ拡張・調整されている」ことを示唆します。繊維分野の競争力や供給網の強化を狙う政策の流れとして、原材料や中間材に寄せた投資判断と相性が良い一方、完成品の輸入を薄利で回すモデルとは、制度設計の方向がズレていきます。
2025年8月の改正では、完成品の靴(章64の一部)がAnexo Iに追加され、IMMEXでの一時輸入ができない品目が拡大しました。
靴は繊維そのものではありませんが、「完成品の一時輸入を通じた国内滞留」に対して、制度側が対象品目を広げながら抑えにいく流れが読み取れます。繊維・アパレル企業としては、章61〜63に限らず、完成品扱いされる境界領域の品目でも、同様の視点で見られると考えて運用を固めるのが安全です。
制度の変更点を知っても、運用に落ちていなければ意味がありません。ここでは、繊維分野の企業が更新すべき論点を、失敗パターンから逆算してまとめます。
2024年12月の政令は、完成品として扱われる領域と、裁断生地として扱われる領域を明確に意識した書きぶりです。
このため、次のようなズレが致命傷になりやすくなります。
・実物はほぼ完成品なのに、社内マスター上は中間材扱い
・原産地表示、ラベル付け、梱包形態が完成品寄りで、説明が通りにくい
・輸出側の品目(完成品)と輸入側の品目(中間材)の紐付けが弱く、戻した証明ができない
対応は、単にHSコードを見直すだけでは不十分です。
品目定義、検品基準、ラベル工程、梱包仕様、輸出時の品目マスターを含めて「完成品扱いされる要素」を潰し込み、税関や監査に耐える説明線を作る必要があります。
完成品に近いものをIMMEXで回していた企業は、モデルを2つに分けて考えると整理が速いです。
・輸出向け加工モデル
原材料や中間材を輸入し、メキシコで工程価値を乗せ、輸出でクローズする。IMMEXと相性が良い。
・国内販売も見据えた製造モデル
国内向けの確定輸入が避けられない場合、PROSECでIGIを抑えられる余地がある。PROSECの繊維セクターには対象品目が明記されており、品目更新も進んでいる。
この切り分けが曖昧なまま、現場が同じ品目を同じ手順で処理し続けると、輸入形態の不整合が起き、結果として関税・IVA・監査対応の三重苦を招きます。
メキシコでは輸入者としての登録(Padrón)が前提になります。SATの案内では、RFCが有効であること、e.firmaが有効であること、税務義務の履行状況が良好であること、住所が確認可能であること等が要件として示されています。
さらに、特定品目ではセクター別登録が必要になり、繊維・アパレルはSector 11に該当します。
ここで重要なのは、登録そのものよりも、登録維持の前提条件です。
税務のステータスや住所の状態は、制度側が自動チェックしやすい領域で、IMMEX側の要件とも連動しているため、輸入手続き以前に崩れていると、現場はどうにもなりません。
繊維・アパレルでは、自動輸入許可が絡む場面が出ます。公開されている手続情報では、次が重要ポイントです。
・許可の有効期間は60日で、内容変更はできない
・申請時に商業インボイスの写しとスペイン語訳の添付が必要
・海上港を通す場合、手続上追加書類(輸出書類)とスペイン語訳が求められる
・原則として、関税分類、品名、単価、原産国などの条件ごとに許可が必要
・申請自体はデジタル窓口で処理され、発行後、一定の営業日経過後に有効となる旨が示されている
・許可情報とインボイス等の記載が不一致だと無効になり得る
つまり、自動許可は「申請して終わり」ではなく、見積や発注の段階で、単価・原産国・品名・分類が固まっていないと、運用が詰みます。
実務設計としては、営業が値決めをした後に貿易が慌てるのではなく、
品目マスターと見積条件を連動させ、変更が起きたら許可も取り直す前提で、リードタイムを最初から織り込むのが現実的です。
なお、VUCEMの手続マニュアルでも、申請のステップや添付書類をPDFで提出する流れが示されています。申請の属人化を防ぐため、社内手順書の更新対象にする価値があります。
IMMEXは、在庫管理と証跡が崩れた瞬間に、制度メリットが裏返ります。
・年次報告
IMMEX保有企業は、売上や輸出実績等の年次報告を電子的に提出する義務があり、提出遅延は制度上の停止につながり得ることが明記されています。
・要件維持
e.firma、RFC、住所、税務上のリスト該当有無、納税状況など、制度側が求める前提条件が列挙されており、これを落とすと止まる構造です。
・在庫管理システム(Anexo 24)
特定の認証企業では、輸入・輸出等の情報を48時間以内に更新し、当局がオンラインでアクセスできるようにし、ユーザー名とパスワードを当局へ提供する旨が明記されています。
そして、取締りの動きも現実に進んでいます。公式発表の中で、制度を悪用して完成品を国内販売している疑いを理由に、IMMEXの取消しを進めている旨が示されています。
繊維分野の運用更新とは、要するに次の問いに答えられる状態を作ることです。
何を入れ、どの工程で付加価値をつけ、いつ、どの形で戻したのか。
この一本線を、品目・数量・単価・原産国・許可情報まで含めて説明できるかどうかが勝負になります。
最後に、実務に落とすための手順を、社内プロジェクトとして回しやすい形にまとめます。
・自社が扱う全品目を、章61〜63や関連する寝具類の領域に照らして棚卸しする
・完成品寄りの輸入がないか、輸入形態(暫定か確定か)と用途を再確認する
・輸出でクローズできない品目がある場合、制度設計(モデル分離)を検討する
・Padrón登録の前提条件(RFC、e.firma、納税状況、住所)を点検する
・繊維・アパレルに該当する場合、Sector 11の要件を確認し、必要書類と責任部署を決める
・自動輸入許可が必要な品目について、インボイス、スペイン語訳、原産国、単価、品名をマスター化する
・見積条件の変更が許可の再取得につながる前提で、営業と貿易のハンドオフを作り直す
・Anexo 24の更新時間、オンラインアクセス、当局対応の手順を、ITと貿易で共通理解にする
・年次報告の締切(社内締切を前倒し)と、要件維持(税務ステータス)の定期チェックをカレンダー化する
繊維分野のIMMEX/PROSEC運用更新は、制度の要約を覚えることではありません。
完成品と中間材の境界、許可と見積条件の同期、輸入と輸出の紐付け、年次報告と在庫管理の証跡。これらを一本線でつなぐ「運用の設計図」を更新することです。
制度変更はコスト要因にもリスク要因にもなりますが、逆に言えば、先に運用を更新した企業ほど、納期の読みと原価の安定を取り戻しやすくなります。メキシコの繊維ビジネスを続けるなら、いまは制度対応を「一回限りの対応」ではなく、運用の常態に組み込むタイミングです。
「これほどの成果が出るとは」 クライアント様から頂いたその言葉が、これまでの努力を最高の喜びに変えてくれました。
昨年度のFTA-BPO年次評価(FTA-BPOとは、FTA業務の一括アウトソーシング事業)。そこで明かされた数値は、私たちがいただいた報酬を遥かに凌駕する「巨額の関税削減」という明確なリターンでした。 FTA活用における商品の選定はクライアント様のご判断によるものですが、その意思決定を支え、実務を完遂させた私たちのチームワークが、大きなインパクトを生んだことは間違いありません。
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ロジスティックのFTAにおけるアウトソーシングビジネス、ご関心のある方はご連絡ください。
EU-メルコスール協定は、「何が合意されたか」以上に、「いつ・どの範囲が・どの手続で動き出すか」を押さえることが実務の肝になります。nordiskpost+1
2026年1月9日、EU理事会は、EU-メルコスール・パートナーシップ協定(EMPA)と暫定貿易協定(iTA)の署名を承認し、手続きは署名・欧州議会同意・締結のフェーズへと進みました。europediplomatic+1
ビジネス側としては、正式発効まで数年単位の待ち時間が生じ得ることを前提に、「先に動く部分」と「EMPA全面発効まで動かない部分」を切り分けて準備するのが合理的です。policy.trade.europa+1
以下では、2026年1月14日を基準日として、制度構造と企業の実務アクションをセットで整理します。nordiskpost+1

EU-メルコスール協定パッケージは、法的に二つの文書に分かれて並走します。policy.trade.europa+1
この結果、
EU理事会は2026年1月9日、EMPAとiTAの署名を認める二つの決定を採択し、EU側として署名に進む権限付与が完了しました。lapresse+1
今後は、EUおよびメルコスール各国による署名、欧州議会の同意、EU理事会による正式な締結という順で進みます。policy.trade.europa+1
一方で、農業分野を中心に反発は根強く、特にフランスなどで大規模な抗議行動が継続しています。internazionale+1
こうした政治的摩擦は、欧州議会での同意や一部加盟国の批准プロセスに不確実性として跳ね返る可能性があります。reuters+1
以下は、政治合意から全面発効までの主なステップを、企業が見るべきポイントと合わせて整理し直したものです。europediplomatic+1
条約プロセスの用語は混同されやすいため、実務での意味合いに絞って整理します。policy.trade.europa+1
欧州議会は、協定テキストを細かく修正するのではなく、賛否の二択で同意を与えるかどうかを決めます。europediplomatic+1
反対票が多数となれば、EMPAだけでなくiTAも進まず、貿易部分全体が止まる結果となります。safefoodadvocacy+1
EU域内では、農業団体を中心に「安価な南米産品との不公正競争」「環境・衛生基準のギャップ」に対する懸念が強く、フランスなどで継続的な抗議行動が行われています。reuters+2
これらの反発は、加盟国政府のスタンスや欧州議会内の投票行動に影響を及ぼし得るため、政治的リスクとしてモニタリングが必要です。reuters+1
理事会や欧州委の説明では、敏感な農産品分野の市場攪乱に迅速対応できるよう、特別なセーフガード措置を含めることが政治的受容性を高める鍵とされています。safefoodadvocacy+1
企業としては、自社の取扱品が「敏感品目」やセーフガードの対象となり得るかを確認し、発動時の価格・数量リスクを契約条件に織り込む必要があります。edit.wti+1
批准待ちの期間を「待機時間」ではなく「設計時間」として前倒しで使うことが、実務上の勝ち筋になります。europediplomatic
特に、貿易分野がiTAで先行適用される設計である以上、関税よりも前に原産地規則・通関運用の設計を固めておくことが重要です。policy.trade.europa+1
迷ったときは、以下の三つに立ち返ると構造が把握しやすくなります。policy.trade.europa+1
本日、日本企業の方々へHSコード判定支援システム「HSCF」のデモンストレーションを実施しました。
複数部署から多くの方にご参加いただき、実際の案件を用いたトライアルの結果をご覧いただいたのですが、そこで改めて浮き彫りになったのは「HSコード判定の過酷さ」でした。
■ 現場の悩み:細かな「注釈」との格闘 お客様はこれまで、膨大な「類注・項注」を読み解きながら、パズルのような作業で答えを導き出されていました。「とにかくややこしくて大変……」という切実な声が印象的でした。
■ HSCFが提案する「新しい体験」 デモ中、提供いただいたデータだけでは情報が不足し、判定が難しい場面がありました。しかし、ここからがHSCFの真骨頂です。 不足していた情報を言葉でサッと補足するだけで、システムが即座に再判定。
HSCFは、単にデータを入力して結果を出すだけの「機械的なツール」ではありません。「足りない情報を補いながら、専門家に相談して正解に近づいていく」。そんな人間味のあるプロセスが、ユーザーの使いやすさに繋がっています。
■ 納得いくまで、何度でも伴走します HSCFはシステムの貸し出しを行っていない分、デモンストレーションは何度でも、納得いただけるまで実施します。
「自分たちの商材でも判定できるのか?」 少しでも気になったら、ぜひ一度HSCFのデモを体験してみてください。
HSCFのブログありますので、そちらもご覧下さい。
2026年8月3日から、日ペルーEPAに基づく第一種特定原産地証明書(CO)の発給は、専用紙からPDFファイルによる電子発給に切り替わります。meti+1
紙の原本がなくなる「だけ」に見えますが、実務のボトルネックは「輸出書類の必須項目を、誰が・いつ・どの根拠で確定させるか」という工程設計に移ります。jcci
結論から言うと、必須項目そのものは協定に付属するCO様式と記載要領で定義されており、PDF化によってフィールド構成が大きく変わるわけではありません。customs+1
一方で、PDF化により、これまで紙運用の中で吸収されていた誤記や手戻りが減り、入力品質がそのまま通関品質・原産地管理品質として露呈しやすくなります。
以下では、まず日付と対象範囲を整理したうえで、協定様式に沿って必須項目をフィールド単位で分解し、PDF化でミスが増えやすい箇所と、社内フロー再設計のポイントまで落とし込みます。meti+1
今回の切り替えで重要なのは、「出荷日」ではなく、発給審査システム上の「承認日」が紙とPDFの境目になる点です。jcci
COの必須項目は、協定の運用手続に付属する様式(見本)および記載要領で定義されており、PDF化によって項目自体が増減するわけではありません。acuerdoscomerciales+1
日ペルーEPAのCO様式も、Exporter、Producer、Importer、Shipment details、Description of goods/HS、Origin criterion、Quantity、Invoice、Remarks、署名欄等のフィールド構成は維持されます。mofa+1
ただし、PDF化は次の意味で「必須項目の重み」を変えます。
以下は、日ペルーEPAのCO様式・記載要領に沿って、実務上チェックすべき主なフィールドを整理したものです。acuerdoscomerciales+1
括弧内は、PDF化で特に増えやすいミスの傾向です。
これらのフィールド定義、HS6桁要件、インボイスおよび第三国インボイスの取扱い、遡及発給・再発給時の定型文言、署名・スタンプの電子印字容認といった点は、協定の運用手続および関連ガイダンスに明記されています。customs+3
特に、2026年7月末前後は「承認日」が紙・PDFの境目となるため、「7月末船積だから紙で間に合うはず」という感覚的な判断は危険です。jcci
承認までに必要な情報の確定時期を、営業・生産計画・通関担当間で明確にしておく必要があります。
社内だけで推測してルール化するのではなく、輸入者、現地通関業者、SUNATの運用に合わせて、
最後に、PDF化に向けて現場がそのまま使える形に落とし込んだ、社内フロー見直しの観点を整理します。jcci+1
これらはいずれも、HS6桁要件や品名記述の水準、第三国インボイス時の注記ルールとして、原産地証明関連のガイダンスに位置付けられている事項です。jcci+2
これらは、日本商工会議所のPDF発給案内に示された「ダウンロード提供」「窓口受渡し・郵送なし」「現金払い廃止」といった運用方針に対応した社内整備事項です。jcci+1
日ペルーEPAの第一種特定原産地証明書は、2026年8月3日からPDF発給へ切り替わり、専用紙での発給は2026年7月31日までに承認された申請分に限定されます。meti+1
紙の時代に現場で暗黙に吸収されていた誤記や手戻りは、PDF発給ではそのまま通関リスク・原産地否認リスクに直結するため、入力品質の管理がこれまで以上に重要になります。
必須項目は協定様式と記載要領で決まっていますので、Field 1~11を一つずつ根拠付きで再点検し、とくにField 4(船積情報)、Field 5(HS6桁+品名)、Field 8(インボイス)、Field 9(備考・注記)について、社内ルールとして突合・レビュー手順を明文化するのが最短ルートです。customs+2
本稿は、経済産業省・日本商工会議所などの公開情報および日ペルーEPA協定文書に基づく一般的な実務整理であり、個別案件における原産性の判断、証明書発給の可否、通関での取扱いを保証するものではありません。meti+2
具体的な案件については、輸入者側の通関実務を踏まえつつ、発給機関、通関業者、専門家等に確認の上で判断してください。
2026年8月3日から、日ペルーEPA(日本・ペルー経済連携協定)に基づく第一種特定原産地証明書(CO)は、専用紙での発給からPDFファイルでの発給に切り替わります。 経済産業省と日本商工会議所は、指定発給機関である日本商工会議所の発給審査システム上の「承認日」を基準に、紙・PDFの扱いを明確に整理しています。meti+1

ポイントは次の3点です。jcci+1
「7月末船積だから紙で間に合うはず」という感覚的な運用ではなく、「7月31日までに日商システム上で承認を取れるか」を基準に工程を組む必要があります。jcci
経済産業省は、EPAの利用拡大・利便性向上のため、指定発給機関による原産地証明書の電子化を順次進めています。 日ペルーEPAのCO電子化は、その一環として実施される施策であり、2026年8月3日以降、ペルー向けCOについてはPDFでの発給が標準となります。jaftas+1
他協定では、PDF発給だけでなく、日インドネシア・日タイEPAのように、税関間のデータ交換(いわゆるeCO)が導入されている案件もありますが、日ペルーEPAについては「eCOデータ連携」ではなく、CO様式をPDFファイルとして発給する方式である点を切り分けて理解すると整理しやすくなります。jaftas+1
日本商工会議所の案内によれば、発給審査が終了し、手数料の入金確認後に発給システム上のステータスが「交付済」となった時点で、利用者はシステムからCOのPDFファイルをダウンロードできます。 従来行われていた、商工会議所窓口での紙原本の受け渡しや、原産地証明書の郵送は行われなくなります。jcci+2
これまで「紙COを受領してから輸出書類一式を完成させる」フローだった企業ほど、社内手順書の更新と、ダウンロード・保管・対外送付の役割分担を明確にする必要があります。jcci+1
日商の案内では、原産地証明手数料の支払い方法として、窓口での現金支払いが廃止され、事前振込(クレジットカード決済、インターネットバンキング振込等)または後日払いに変更されるとされています。 発給システム上で「交付済」となる条件に入金の確認が含まれるため、支払いの遅れはそのままCOのダウンロード遅延につながる可能性があります。archive.jcci+2
経理・貿易実務・現場担当の間で、「どの支払方法を標準とするか」「締め日と申請タイミングをどう合わせるか」を事前に決めておくことが、通関スケジュールの安定化につながります。jcci+1
PDF発給への切替に伴う発給システムのプログラム改修・停止時期等の詳細は、日商から別途案内されることとされています。 移行直前期には、申請の集中とシステム停止が重なるリスクも想定されるため、7月下旬〜8月上旬に紙CO・PDF COいずれも必要となる案件については、余裕ある申請計画を立てておくことが安全です。archive.jcci+1
経済産業省と日本商工会議所は、ペルー側(SUNAT)での輸入申告時の提出方法について、「現地手続についてペルー税関に確認する必要がある」と明示しています。 とくに、次の点は取引先・現地通関業者によって運用が分かれ得るため、事前確認を怠るとトラブルにつながります。global-scm+2
この確認を後回しにすると、「L/C条件で紙の原本提出が要求されていた」「現地通関業者が紙提出前提の社内ルールを維持していた」といった理由で、船積後に書類要求が変わり、差し替えや追加送付が発生するリスクがあります。jetro+1
次の条件に当てはまる取引は、優先的に洗い出しておくとリスク管理しやすくなります。global-scm+1
判断基準は、「2026年7月31日までに発給審査で承認を得られるかどうか」であり、社内の申請締切日から逆算して、書類準備・支払手続を含む工程表を組むことが実務的です。jcci+1
PDF発給を前提に、少なくとも次の点を明文化しておくと、従来よりも早く・確実にCOを回せるようになります。jcci+1
物理的な郵送が不要になる分、電子送付のログ管理(いつ・誰に・どのファイルを送付したか)を残すルールも合わせて設計しておくと、監査・トラブル時の説明が容易になります。global-scm+1
現金払いの廃止に伴い、以下のような論点を社内で整理しておくことが望まれます。archive.jcci+1
これにより、「COは承認済だが入金が遅れてダウンロードできない」というボトルネックを避けやすくなります。jaftas+1
日ペルーEPAの特恵税率を適用するには、輸出者は指定発給機関である日本商工会議所に対し、日本原産品であることを示す資料を提出し、原産品判定を受けたうえで第一種特定原産地証明書の発給申請を行う必要があります。 CO自体は法的に絶対義務ではありませんが、特恵税率を利用するための証拠書類として、輸入側での申告に不可欠な位置づけとなります。jetro+2
初めて第一種特定原産地証明書の取得に取り組む企業では、事前登録や原産品判定に時間を要するケースもあるため、PDF切替とは別次元の準備リードタイムとして織り込んでおくことが重要です。epa-info+1
2026年8月3日から、日ペルーEPAのCOはPDF発給に切り替わり、2026年7月31日までに承認された分のみ専用紙での発給が可能であることが、経済産業省と日本商工会議所から明示されています。 7月31日以前に専用紙で発給されたCOは、協定上の有効期間内であれば、8月3日以降もペルー税関で受理されると案内されています。meti+2
一方で、PDFをペルー側でどのような形で提出するか(印刷要否・電子添付可否等)はSUNATや現地通関業者の実務に依存するため、取引先と事前に確認しておくことが、現場レベルでは最重要ポイントになります。 日本側社内では、PDFダウンロードを前提にした受領・保管・送付手順と、現金廃止後の支払フローを先に整備しておくことで、移行期のトラブルを抑えつつ、COのリードタイム短縮というメリットを享受しやすくなります。global-scm+2
2025年11月19日、メキシコの連邦官報(Diario Oficial de la Federación, DOF)に、Ley Aduanera(一般に「関税法」「通関法」と訳される税関手続の基本法)の大規模改正を定める政令が公布されました。改正は原則として2026年1月1日に施行され、一部の段階的施行事項については1~3か月の猶予期間が設けられています。今回の改正は、関税率そのものを変える話というより、通関手続と事後監査を前提にしたコンプライアンス運用を作り替える内容です。特に、通関業者(Agente Aduanal)・通関会社(Agencia Aduanal)と、輸入者・輸出者の責任分担が実務上大きく変わります。trade+5
以下、ビジネスマン向けに「何が変わり」「何を変えるべきか」を実務目線で整理します。

改正の核心は、通関業者側の注意義務と責任が強化され、従来第54条で認められていた責任の免除規定が廃止された点です。これまで通関業者は、輸入者・輸出者から提供された情報の不正確性や虚偽について一定の免責が認められていましたが、今回の改正でこれが撤廃され、関与する全ての外国貿易取引について完全な連帯責任を負うことが明確化されました。結果として、通関業者は分類(HS・メキシコのNICO)や価格(課税価格)により保守的になり、通関前の照会・追加書類要請・取扱い拒否が増える可能性があります。braumillerlaw+4
制度面では、通関業者(agente aduanal)とそのパートナーである通関会社(agencia aduanal)が、当該会社が扱った案件に関する関税等や相殺関税(反ダンピング等を含む概念)の支払いについて連帯責任を負う方向が明確化されています。加えて、ライセンスの有効期間や更新の枠組みが強化され、新たに関税評議会(Customs Council)が創設されました。この評議会は、財務省(SHCP)、税務管理局(SAT)、国家関税庁(ANAM)、汚職・良好ガバナンス省の代表で構成され、通関業者免許や通関会社の認可の付与、更新、停止、取消を管理します。alvarezandmarsal+4
実務的には、通関会社が「顧客の審査(KYC相当)」と「案件ごとの証憑整備」を以前より強く要求する流れになります。通関業者は、輸出者および輸入者が完全に特定され、インフラを有し、連邦税法第69-B条に基づき列挙された納税者と関係がないことを証明するファイルを維持することが義務付けられました。hklaw
今回の改正では、各輸入申告に紐づく電子ファイル(Electronic File)に入れるべき情報・証憑の要求水準が引き上げられています。従来は通関申告書とその付属書類のコピーのみで足りましたが、改正後は以下を含む包括的な書類が求められます:wcoomd+1
これは「通関時に出せばよい」ではなく、後日の税関・税務当局による検証に耐える形で、最初から揃える運用への転換を意味します。なお、関税法規則第81条で規定されるこれらの書類要件は2025年12月9日から義務化されています。kpmg+3
改正により、通関業者・通関会社が税関当局に対して直接責任を負い得る場面が拡大しています。専門家解説では、例えば次のような類型が指摘されています:ey+1
要するに「分類・申告設計の誤り」が通関業者側のリスクとして跳ね返りやすくなります。
改正は原則2026年1月1日施行ですが、一部条項は段階的に発効します:garrigues+1
資金繰りと通関リードタイムに直結するため、CFO視点でも早めの影響試算が必要です。dlapiper
IMMEX(マキラドーラ・輸出製造サービス産業促進プログラム)などで使われる一時輸入品のバーチャル移転(virtual operations)について、重要な義務が追加されました。alvarezandmarsal+2
改正第112条の最終段落により、輸出者およびバーチャル輸入者は、バーチャル取引に関する電子ファイルを相互に共有することが義務付けられます。さらに、バーチャル輸出者は、バーチャル移転される物品の一部である一時輸入品に適用された生産プロセスを証明する情報と書類を共有しなければなりません。wcoomd
加えて、第59条第X項の追加により、一時輸入品を移転する者は、移転回数にかかわらず、発生した税金について連帯責任を負うことが規定されました。これにより、無関係会社間のバーチャル運用では、電子ファイル共有や工程情報の提示が実務障壁になり、バーチャル通関申告ツールの使用が抑制される可能性があります。wcoomd
また、IMMMEXおよびRFE企業は、相互運用可能なトレーサビリティ、在庫、遠隔監視システムの導入が義務付けられ、実施した工業プロセスの十分な証拠を維持することが求められます。alvarezandmarsal
改正により、特定の違反に対する罰金が大幅に引き上げられました:global-scm+1
これらの場合、物品の商業価値の250%から300%相当の罰金が科されます。ただし、関税法で規定される罰金の割引制度は有効であり、税額が確定する前に適用できます。ey+1
改正の中には、FTA等の原産性があるのに輸入時点で特恵を使わなかった場合に、後から特恵適用を申請して関税を回収できる方向の手当ても含まれていると整理されています。実務上は、原産地証明とトレーサビリティがより厳格に問われる前提で、回収機会が広がる可能性があります。
今回の改正は、メキシコ側の通関が「通して終わり」ではなく「後で検証される前提」で再設計されたと見るのが安全です。通関業者の免責規定が廃止され、完全な連帯責任体制に移行したことで、通関会社が慎重化するほど、企業側の準備不足がそのまま遅延・追加コスト・差押えリスクに直結します。まずは、分類・価格・原産地・証憑の4点を、案件単位で再現可能にすることが最優先です。qima+3
また、連邦執行府は、改正公布後120日以内(2026年3月19日まで)に関税法規則を改正する必要があるため、今後の規則改正にも注視が必要です。global-scm
免責: 本稿は一般情報であり、個別案件の法的助言ではありません。最終判断はメキシコ現地の通関会社・専門家と確認してください。
マレーシアと中国の間で、原産地証明書(Certificate of Origin)の電子データ交換が動き出します。マレーシア投資・貿易産業省(MITI)と中国税関総署(GACC)は、ACFTA(ASEAN中国FTA)とRCEPの枠組みで、原産地証明書データを当局間で電子的に交換する共同取決め(Joint Arrangement)に合意しました。初期段階は、マレーシアから中国向けに、Form E(ACFTA)とRCEPの原産地証明書データを一方向でリアルタイム連携し、2026年1月の運用開始を目標としています。miti+2
この動きは、単なる「書類の電子化」ではありません。通関の現場では、原産地証明の真正性確認と、関税優遇の適用判断がより迅速になり、同時に不正や誤りが見つかりやすくなる方向に進みます。マレーシアで生産し中国へ輸出する企業、またはマレーシア拠点をサプライチェーンに組み込む企業にとって、実務の影響は小さくありません。miti

今回の枠組みの要点は、原産地証明書そのものを企業間で電子送付するというより、当局が保有する証明データを、国境を越えて安全に共有し、輸入時の真正性確認と原産地検証を効率化する点です。MITIの発表では、文書送付時間の短縮、証明書の真正性確認の迅速化、機密性と安全性の向上、不正利用リスクの低減が狙いとして示されています。digitalizetrade+1
初期フェーズで電子連携されるのは以下です。thesun+1
いずれも、関税優遇の適用において重要な「原産性の証拠」なので、真正性確認が速くなるほど、輸入通関の確度とスピードが上がる反面、誤った証明や整合しないデータは早期に検知されやすくなります。miti
MITIの説明では、マレーシア側はNational Single Window(NSW)を介して、中国側のElectronic Origin Data Exchange System(EODES)と接続します。thesun+1
NSWはマレーシアの貿易手続きを集約する電子ゲートウェイで、2009年から稼働しており、税関申告(eDeclare)、許認可(ePermit、ePermitSTA)、決済(ePayment)、マニフェスト(eManifest)、ePCO(電子特恵原産地証明)など6つの中核eサービスで構成されています。NSWは財務省主導のイニシアチブで、Dagang Net Technologies社が開発・運用・管理を担当し、25,000以上のユーザー、年間1億件以上の電子取引を処理しています。MITIはePCOなどの発給関連モジュールの所管当局でもあり、ASEAN単一窓口(ASW)のマレーシア側リード機関としても機能しています。miti+3
つまり今回のeCOデータ交換は、既存のNSW基盤の上に「中国税関との直結ルート」を乗せるイメージです。
この話は突然出てきたものではありません。マレーシア財務省は2024年6月18日、アンワー首相と中国の李強首相の会談を経て、両国がNSWを軸に単一窓口協力を検討する共同作業部会(Joint Working Group on Single Window Cooperation)を設置し、貿易手続きのデジタル化、重複書類の削減、より正確な情報交換を進める方向性を示しています。この時点で、財務省第二大臣とGACCの于建華関税総長が単一窓口協力に関する共同声明に署名しました。mof
今回の原産地証明の電子連携は、その具体的なユースケースの一つと捉えると理解しやすいです。thestar
原産地証明の真正性確認が当局間データで迅速化すれば、書類照合の待ち時間や確認照会が減ることが期待されます。MITIも「文書送付時間の削減」を効果として挙げています。customs+1
ただし、現場オペレーションが「紙提出不要」まで一気に進むかは、輸入地税関の運用次第です。中国は2020年5月から電子PCO(ePCO)の電子送信を義務づけていますが、初期段階では従来手続きとの併走を想定しておくのが安全です。jetro+1
MITIは、証明書の真正性確認の迅速化、セキュリティと機密性の向上、第三者による不正利用の抑制を明記しています。電子データ交換は、両国関係当局間での暗号化された安全な情報共有を通じて貿易活動を合理化します。thesun+1
対外取引が増えるほど、CO番号の悪用や書類改ざんの温床は広がります。データ連携は、ここに直接メスを入れる施策です。
当局間でデータが照合されやすくなるほど、次のような「ありがちなズレ」が通関トラブルの起点になります。
電子化が進むと、監査証跡が残りやすくなる一方、誤りも残ります。便利になった分だけ、内部統制の完成度が問われます。miti
関税率の有利不利だけでなく、原産地規則の満たしやすさ、証明の取りやすさ、顧客側の通関運用を含めて選びます。
申請担当者任せにせず、インボイスとCO、BOM、原産地判定シートの突合ルールを作り、ミスが起きる前提で二重チェックを仕組みにします。
電子連携があるほど、訂正の影響は広がります。輸入者、通関業者、中国側の申告タイミングを踏まえ、社内の判断基準を文書化します。
一方向連携なので、まず恩恵を受けやすいのはマレーシア発中国向けです。中国側の申告で必要になる情報(CO参照番号の伝達方法など)を確認しておきます。thesun+1
中国のEODESは、2019年11月1日にシンガポールとの間でACFTAおよび中国・シンガポールFTAに基づくPCOと非加工証明書(CNM)の電子提出システムとして運用を開始しました。その後、2024年11月にはシンガポールとRCEPベースのPCOもEODESに追加する覚書が締結されています。linkedin+2
マレーシア側も、ASEAN域内ではASEAN単一窓口(ASW)を通じてe-Form D(ATIGA電子原産地証明)の交換運用経験を積んでいます。マレーシアは既に、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、ミャンマー、フィリピン、タイ、ベトナム向けにATIGA e-Form Dを電子送信しています。customs+1
今回の連携は、二国間の利便性向上に留まらず、域内・多国間での「原産地データ連携の標準化」へつながる可能性があります。thestar+1
マレーシアと中国のeCOデータ交換は、通関の迅速化と不正抑止を同時に進める施策です。現場に近いほどメリットは出ますが、同時に、原産地管理の甘さが表面化しやすくなる点が最大の注意点です。miti
特に、マレーシア拠点から中国へ輸出する企業は、申請データの品質、訂正フロー、原産地判定の証拠書類の整備を「通関のため」ではなく「監査対応のため」に引き上げることが、結果的にリードタイム短縮とトラブル削減に直結します。miti
注:制度運用の詳細は当局の通達や通関実務で変わり得ます。最新の運用はMITIおよび関係当局、通関業者の案内で必ず確認してください。
2026年1月9日、EU理事会(Council of the EU)は、EUとメルコスール(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ)との包括的なパートナーシップ協定(EMPA)および暫定貿易協定(iTA)の署名を認める決定を採択しました。25年以上続いた交渉が大きく前進した一方で、これは発効を意味しません。ビジネス側は、政治イベントとして眺めるよりも、発効前から実務準備の勝負が始まったと捉えるべき局面です。 (欧州理事会)
以下、何が決まったのか、どこがリスクでどこがチャンスか、そして企業として何を準備すべきかを、一次情報中心に整理します。

メルコスールは南米の関税同盟で、EU側が今回の枠組みで相手とするのは主に4か国(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ)です。なお、ボリビアは加盟議定書署名済みで批准待ち、ベネズエラは資格停止とされています。 (欧州理事会)
貿易規模も大きく、EUとメルコスールの財貿易は2024年に約1,110億ユーロ(EU輸出552億、輸入560億)、サービス貿易は2023年に約420億ユーロとされています。EUの対メルコスール直接投資残高は2023年で約3,900億ユーロという説明もあり、すでに深い関係にあります。 (欧州理事会)
EU側で重要なのは、協定が二本立てになっている点です。
・EU・メルコスール・パートナーシップ協定(EMPA)
政治対話、協力、そして貿易を含む包括協定。EU加盟国すべての批准が必要。EUは政治・協力章の大部分を暫定適用する方針が示されています。 (欧州理事会)
・暫定貿易協定(iTA)
貿易・投資の自由化部分を切り出した協定。欧州議会の同意後、EU理事会が特定多数決で締結し得る設計で、EMPA発効までの間、貿易の便益を先行させる狙いです。 (欧州理事会)
2026年1月9日の時点で、加盟国側の大勢は署名を支持していると報じられていますが、最終的な効力発生には欧州議会の同意が不可欠です。 (Reuters)
メルコスール側の関税は、工業品を中心に依然として高い水準が残る分野があります。欧州委の資料では、現行関税の例として自動車部品35%、機械20%、化学品18%、医薬品14%が挙げられ、協定によりEU輸出側は年間40億ユーロ超の関税負担が削減され得ると説明されています。 (Trade and Economic Security)
さらに、iTAには政府調達やサービス貿易の章も含まれ、EU企業がメルコスール各国の公共調達に参入しやすくなる点も、競争環境を変え得る要素です。 (欧州理事会)
日本企業にとっての示唆は明快です。
メルコスール向け輸出でEU企業が関税面のハンディを解消するなら、同市場で日本企業が正面から価格で勝つ難度は上がります。逆に、EU拠点を活用してメルコスールへ出す、あるいは現地生産と組み合わせる企業には、選択肢が増える構図です。
農業分野は政治的な反発が強い領域であり、EU側は優遇拡大を数量枠とセーフガードでコントロールする設計を強調しています。
例として欧州委のファクトシートには次が示されています。 (Trade and Economic Security)
・牛肉
無税枠ではなく、年9万9,000トンを7.5%関税で輸入可能(内訳は生鮮・冷蔵55%、冷凍45%)。 (Trade and Economic Security)
・家きん肉
年18万トンの無税枠を5年かけて段階導入。 (Trade and Economic Security)
・砂糖
ブラジル向けに新規の砂糖枠を作るのではなく、既存のWTO枠の中で精製用原料糖18万トンを無税に、加えてパラグアイ向けに1万トンの新規無税枠。 (Trade and Economic Security)
重要なのは、セーフガードが「実装フェーズ」に入っている点です。EU理事会と欧州議会は、農産品向けの二国間セーフガードを実務的に動かす規則案で暫定合意し、価格下回り5%と、輸入量や輸入価格の一定変動を調査開始の目安として扱うこと、調査を原則4か月で終えること、緊急時は21日以内に暫定措置を導入できることなどを示しています。また、2026年3月1日までに市場監視を支える技術ガイドラインを出す方針も明記されています。 (欧州理事会)
企業実務としては、優遇関税があるからといって、その前提で長期契約の価格式や需給計画を固定すると危険です。優遇停止のトリガーが制度として明確化されるほど、影響は「突然」起きます。
関税が下がっても、原産地を満たさなければゼロです。iTAの原産地章では、EUの近年型協定に近い「商業書類上の原産地申告(Statement on origin)」を中核に据えています。
公開されているiTA本文では、次が読み取れます。 (データ協議会)
・輸出者が、インボイス、納品書、その他の商業書類に「原産地申告」を記載する方式
・原産地申告には、原則として輸出者の手書き署名が必要(ただし輸出国法令で別段があればそれに従う)
・申告は輸出時に作成でき、輸出後に作成することも可能だが、輸入後2年以内に提示する必要がある
・有効期間は作成日から12か月
・輸出者と輸入者に、それぞれ少なくとも3年間の記録保存義務 (データ協議会)
さらに、優遇適用は「制度悪用があれば止まる」設計です。iTAには、優遇を得るための大規模・体系的な法令違反や不正があり、かつ相手側が協力義務を体系的に拒否するなどの状況がある場合に、当該品目の優遇を一時停止できる趣旨の規定が置かれています。 (データ協議会)
実務で問われるのは、次の二つです。
・原産設計
サプライヤーからの情報収集、工程分解、品目別ルールへの当てはめを、発効後ではなく発効前に完了させる。
・証明フロー
輸出者の申告書式、署名要件、保存年限、照会対応(監査対応)を、法務と貿易実務で一体運用にする。
EU側が政治的に強調するのは、持続可能性を「付け足し」ではなく「協定の中核」に置く点です。
欧州委の説明では、パリ協定が協定の「本質的要素」とされ、重大な違反がある、または一方がパリ協定から離脱する場合に、協定を停止し得る枠組みを明記しています。さらに、EU森林破壊防止規則などEU域内法は協定下の輸入にも引き続き適用され、違法伐採対策や森林減少への拘束力あるコミットメント、責任あるサプライチェーン(国際指針の活用)も盛り込まれると整理されています。 (Trade and Economic Security)
食品・動植物検疫(SPS)についても、EUは「基準は交渉対象外」と明言し、予防原則や国境検査、監査などの枠組みは維持されるとしています。 (Trade and Economic Security)
日本企業にとっては、EU向け取引ですでに求められているESG・デューデリジェンスが、メルコスール関連の調達や三国間取引にも広がり得る、という読みになります。関税メリットとコンプライアンスコストを同時に見積もる必要が出ます。
関係し得る企業像は大きく3つです。
発効日が確定してから動くのでは遅い、というのが結論です。着手順としては次が現実的です。
・自社品目の影響棚卸し
メルコスール向けの現行関税、競合(EU企業)比率、値引き余地を洗い出し、価格戦略を更新する。 (Trade and Economic Security)
・原産地設計の先行着手
EU拠点やEUサプライチェーンを使う場合、原産地申告の運用要件(保存、署名、期限、照会対応)まで含めて業務設計する。 (データ協議会)
・優遇停止を織り込んだ契約設計
セーフガードや監視が機動的に動く前提で、価格条項や供給義務、フォースマジュール、関税再交渉条項を整備する。 (欧州理事会)
・ESG・トレーサビリティの再点検
森林破壊規制などEU域内法の適用を前提に、原料調達やサプライヤー管理の証憑を揃える。 (Trade and Economic Security)
・議会プロセスの監視
欧州議会の同意が最後の大関門です。報道だけでなく、EU理事会や欧州委の一次情報で節目を追う体制にしておく。 (欧州理事会)
EU理事会の署名承認は、巨大協定が「止まるか進むか」の政治局面を越え、企業実務が問われるフェーズへ移った合図です。
恩恵は、関税だけではなく、原産地設計と書類運用が取れて初めて発生します。さらに、セーフガードやESG規制は、優遇の前提を動かし得る変数として同時に管理すべき対象です。 (欧州理事会)
免責:本稿は公開情報に基づく一般的な整理です。個別取引への適用可否や実務設計は、最新の法令・通達とあわせて専門家確認を推奨します