HS2028で影響が出そうなコード:予告です

HS2028で影響が出そうな項目がいくつかあります。

それらを項目別に整理して、説明をしていきたいと思います。
 ・今回ではなく次回以降
 ・HSコード専用のブログでご案内します。

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 HSコードの知識とAIによるHSコード・ファインダー (HSCF)

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繊維分野のIMMEX/PROSEC運用更新を深掘りする

メキシコ向けサプライチェーンの実務を、制度変更で崩さないために

メキシコで繊維・アパレルの製造や輸出入を行う企業にとって、IMMEXとPROSECはコスト構造を決める中核制度です。ところが2024年末以降、繊維・アパレル分野を名指しする形で、関税(IGI)の一時引き上げと、IMMEXによる完成品の一部取扱い制限が制度として明文化され、運用設計を更新しないと、輸入可否や納期、原価、監査対応に連鎖的な影響が出やすい環境に変わりました。

本稿では、繊維分野の現場で起きやすい論点に絞り、何が変わり、何を更新すべきかを、ビジネス判断に落ちる形で整理します。


1. まず整理したいIMMEXとPROSECの役割分担

制度名はセットで語られがちですが、目的と効き方は別物です。誤解したまま設計すると、制度の「穴」ではなく「地雷」を踏みます。

IMMEXとは何か

IMMEXは、輸出を前提にメキシコ国内で製造やサービス提供を行う企業に対し、原材料や部材などの投入物を関税負担を抑えて受け入れやすくする枠組みとして説明されます。運用の肝は、輸入したものを適正用途に使い、所定の期限内に戻す(輸出やリターン等で整理する)ことです。

そして、制度は近年「使い方」を強く問う方向へ動いています。完成品を入れて国内に滞留させるような運用が問題視され、IMMEXの取消しや取締りが実際に公表されています。

PROSECとは何か

PROSEC(セクター別振興プログラム)は、指定セクターの生産者が、特定の原材料・中間材・機械等を輸入する際のIGIを優遇する制度です。PROSECには「繊維・アパレル」セクターが明記されており、繊維関連の品目が対象に含まれます。

重要なのは、PROSECはIMMEXの代替ではないという点です。IMMEXが「輸出加工のための一時輸入」を軸に設計されるのに対し、PROSECは「対象品目の輸入関税率そのものを低くする」設計です。国内販売を含むビジネスでも使われる余地があり、逆に言えば、IMMEXで通らなくなった領域をPROSECで置き換える発想は、ケースによっては有効ですが、制度目的と輸入形態(暫定か確定か)を揃えないと成立しません。


2. 繊維分野で押さえるべき運用更新の核心

ここからが本題です。現場の設計を変えるべき「制度の変化」を、繊維分野に絞って押さえます。

更新点1 2024年12月19日、繊維・アパレルに対する関税引き上げとIMMEX制限が明文化

2024年12月19日付の政令で、繊維・アパレル分野に対して次の方針が示されています。

  1. 一時的な関税(IGI)引き上げ
    アパレル(縫製品)に関する138の関税分類に35%、繊維に関する17の関税分類に15%の一時関税を設定する旨が示され、適用は2026年4月23日までの「暫定措置」として規定されています。
  2. IMMEXで「完成品」の一時輸入を原則不可にする方向
    縫製された完成品に該当する関税分類(章61、62、63および特定の寝具類の一部)が、IMMEXによる一時輸入の対象から外れる方向が明確に示されました。一方で、裁断済み生地に該当する一部の関税分類は例外として扱う考え方も併記されています。

制度文面には、輸入と輸出(リターン)の数量ギャップが記載されており、運用実態を根拠に「戻っていない」ことが問題視されている点が読み取れます。
つまり、繊維分野のIMMEXは、単なる書類整合ではなく、実際のフローとして「投入して、加工して、戻す」を裏付けられる運用へ戻すことが求められていると理解すべきです。

ビジネス上の含意はシンプルです。
完成品寄りの輸入をIMMEXに寄せていた企業ほど、調達形態の見直しが必要になり、見直しが間に合わないと「輸入できない」「輸入できても原価が跳ねる」「監査で説明が破綻する」のいずれかが起きやすくなります。

更新点2 PROSECは繊維分野で品目追加が続いている

PROSEC側も動いています。2024年8月の改正では、繊維・アパレル産業(セクターXX)に関連する品目として、高強力ポリエステル糸などに関する関税分類が追加されています。

これは「関税優遇の対象が、川上の素材や工業用テキスタイルへ拡張・調整されている」ことを示唆します。繊維分野の競争力や供給網の強化を狙う政策の流れとして、原材料や中間材に寄せた投資判断と相性が良い一方、完成品の輸入を薄利で回すモデルとは、制度設計の方向がズレていきます。

更新点3 IMMEXの「禁止品目リスト(Anexo I)」は広がる傾向

2025年8月の改正では、完成品の靴(章64の一部)がAnexo Iに追加され、IMMEXでの一時輸入ができない品目が拡大しました。
靴は繊維そのものではありませんが、「完成品の一時輸入を通じた国内滞留」に対して、制度側が対象品目を広げながら抑えにいく流れが読み取れます。繊維・アパレル企業としては、章61〜63に限らず、完成品扱いされる境界領域の品目でも、同様の視点で見られると考えて運用を固めるのが安全です。


3. 現場が更新すべき運用ポイント

制度の変更点を知っても、運用に落ちていなければ意味がありません。ここでは、繊維分野の企業が更新すべき論点を、失敗パターンから逆算してまとめます。

1 品目分類と「完成品」「裁断生地」の境界管理をやり直す

2024年12月の政令は、完成品として扱われる領域と、裁断生地として扱われる領域を明確に意識した書きぶりです。
このため、次のようなズレが致命傷になりやすくなります。

・実物はほぼ完成品なのに、社内マスター上は中間材扱い
・原産地表示、ラベル付け、梱包形態が完成品寄りで、説明が通りにくい
・輸出側の品目(完成品)と輸入側の品目(中間材)の紐付けが弱く、戻した証明ができない

対応は、単にHSコードを見直すだけでは不十分です。
品目定義、検品基準、ラベル工程、梱包仕様、輸出時の品目マスターを含めて「完成品扱いされる要素」を潰し込み、税関や監査に耐える説明線を作る必要があります。

2 IMMEXとPROSECの併用設計を再構築する

完成品に近いものをIMMEXで回していた企業は、モデルを2つに分けて考えると整理が速いです。

・輸出向け加工モデル
原材料や中間材を輸入し、メキシコで工程価値を乗せ、輸出でクローズする。IMMEXと相性が良い。

・国内販売も見据えた製造モデル
国内向けの確定輸入が避けられない場合、PROSECでIGIを抑えられる余地がある。PROSECの繊維セクターには対象品目が明記されており、品目更新も進んでいる。

この切り分けが曖昧なまま、現場が同じ品目を同じ手順で処理し続けると、輸入形態の不整合が起き、結果として関税・IVA・監査対応の三重苦を招きます。

3 輸入者登録とSector 11の要件を「前倒し」で固める

メキシコでは輸入者としての登録(Padrón)が前提になります。SATの案内では、RFCが有効であること、e.firmaが有効であること、税務義務の履行状況が良好であること、住所が確認可能であること等が要件として示されています。
さらに、特定品目ではセクター別登録が必要になり、繊維・アパレルはSector 11に該当します。

ここで重要なのは、登録そのものよりも、登録維持の前提条件です。
税務のステータスや住所の状態は、制度側が自動チェックしやすい領域で、IMMEX側の要件とも連動しているため、輸入手続き以前に崩れていると、現場はどうにもなりません。

4 繊維・アパレルの自動輸入許可(Permiso Automático)は運用設計が必須

繊維・アパレルでは、自動輸入許可が絡む場面が出ます。公開されている手続情報では、次が重要ポイントです。

・許可の有効期間は60日で、内容変更はできない
・申請時に商業インボイスの写しとスペイン語訳の添付が必要
・海上港を通す場合、手続上追加書類(輸出書類)とスペイン語訳が求められる
・原則として、関税分類、品名、単価、原産国などの条件ごとに許可が必要
・申請自体はデジタル窓口で処理され、発行後、一定の営業日経過後に有効となる旨が示されている
・許可情報とインボイス等の記載が不一致だと無効になり得る

つまり、自動許可は「申請して終わり」ではなく、見積や発注の段階で、単価・原産国・品名・分類が固まっていないと、運用が詰みます。

実務設計としては、営業が値決めをした後に貿易が慌てるのではなく、
品目マスターと見積条件を連動させ、変更が起きたら許可も取り直す前提で、リードタイムを最初から織り込むのが現実的です。

なお、VUCEMの手続マニュアルでも、申請のステップや添付書類をPDFで提出する流れが示されています。申請の属人化を防ぐため、社内手順書の更新対象にする価値があります。

5 IMMEXの在庫管理と年次報告は「監査前提」で作り直す

IMMEXは、在庫管理と証跡が崩れた瞬間に、制度メリットが裏返ります。

・年次報告
IMMEX保有企業は、売上や輸出実績等の年次報告を電子的に提出する義務があり、提出遅延は制度上の停止につながり得ることが明記されています。

・要件維持
e.firma、RFC、住所、税務上のリスト該当有無、納税状況など、制度側が求める前提条件が列挙されており、これを落とすと止まる構造です。

・在庫管理システム(Anexo 24)
特定の認証企業では、輸入・輸出等の情報を48時間以内に更新し、当局がオンラインでアクセスできるようにし、ユーザー名とパスワードを当局へ提供する旨が明記されています。

そして、取締りの動きも現実に進んでいます。公式発表の中で、制度を悪用して完成品を国内販売している疑いを理由に、IMMEXの取消しを進めている旨が示されています。

繊維分野の運用更新とは、要するに次の問いに答えられる状態を作ることです。
何を入れ、どの工程で付加価値をつけ、いつ、どの形で戻したのか。
この一本線を、品目・数量・単価・原産国・許可情報まで含めて説明できるかどうかが勝負になります。


4. すぐに使える運用更新ロードマップ

最後に、実務に落とすための手順を、社内プロジェクトとして回しやすい形にまとめます。

フェーズ1 影響判定

・自社が扱う全品目を、章61〜63や関連する寝具類の領域に照らして棚卸しする
・完成品寄りの輸入がないか、輸入形態(暫定か確定か)と用途を再確認する
・輸出でクローズできない品目がある場合、制度設計(モデル分離)を検討する

フェーズ2 手続と登録の整備

・Padrón登録の前提条件(RFC、e.firma、納税状況、住所)を点検する
・繊維・アパレルに該当する場合、Sector 11の要件を確認し、必要書類と責任部署を決める

フェーズ3 許可と品目マスターの統合

・自動輸入許可が必要な品目について、インボイス、スペイン語訳、原産国、単価、品名をマスター化する
・見積条件の変更が許可の再取得につながる前提で、営業と貿易のハンドオフを作り直す

フェーズ4 IMMEX証跡の耐監査化

・Anexo 24の更新時間、オンラインアクセス、当局対応の手順を、ITと貿易で共通理解にする
・年次報告の締切(社内締切を前倒し)と、要件維持(税務ステータス)の定期チェックをカレンダー化する


結び

繊維分野のIMMEX/PROSEC運用更新は、制度の要約を覚えることではありません。
完成品と中間材の境界、許可と見積条件の同期、輸入と輸出の紐付け、年次報告と在庫管理の証跡。これらを一本線でつなぐ「運用の設計図」を更新することです。

制度変更はコスト要因にもリスク要因にもなりますが、逆に言えば、先に運用を更新した企業ほど、納期の読みと原価の安定を取り戻しやすくなります。メキシコの繊維ビジネスを続けるなら、いまは制度対応を「一回限りの対応」ではなく、運用の常態に組み込むタイミングです。


関税削減は「コスト」から「攻めの戦略」へ。大企業が認めたFTAパートナーシップの真髄

「これほどの成果が出るとは」 クライアント様から頂いたその言葉が、これまでの努力を最高の喜びに変えてくれました。

昨年度のFTA-BPO年次評価(FTA-BPOとは、FTA業務の一括アウトソーシング事業)。そこで明かされた数値は、私たちがいただいた報酬を遥かに凌駕する「巨額の関税削減」という明確なリターンでした。 FTA活用における商品の選定はクライアント様のご判断によるものですが、その意思決定を支え、実務を完遂させた私たちのチームワークが、大きなインパクトを生んだことは間違いありません。

意識の高い担当者様と共に、「さらに上へ」を目指す体制づくりがすでに始まっています。日本を代表する大企業のなかで、私たちの取り組みが「理想的な成功事例」として波及していく——。 この高揚感を原動力に、私たちはFTAの可能性を信じ、更なる高みへと挑み続けます。

ロジスティックのFTAにおけるアウトソーシングビジネス、ご関心のある方はご連絡ください

EU‑メルコスール協定:批准までの段階表


全体の見取り図:何がいつ動くか

EU-メルコスール協定は、「何が合意されたか」以上に、「いつ・どの範囲が・どの手続で動き出すか」を押さえることが実務の肝になります。nordiskpost+1​
2026年1月9日、EU理事会は、EU-メルコスール・パートナーシップ協定(EMPA)と暫定貿易協定(iTA)の署名を承認し、手続きは署名・欧州議会同意・締結のフェーズへと進みました。europediplomatic+1​

ビジネス側としては、正式発効まで数年単位の待ち時間が生じ得ることを前提に、「先に動く部分」と「EMP​A全面発効まで動かない部分」を切り分けて準備するのが合理的です。policy.trade.europa+1​
以下では、2026年1月14日を基準日として、制度構造と企業の実務アクションをセットで整理します。nordiskpost+1​


二本立ての構造:EMPAとiTA

EU-メルコスール協定パッケージは、法的に二つの文書に分かれて並走します。policy.trade.europa+1​

  • EU-メルコスール・パートナーシップ協定(EMPA)
    政治対話・協力・貿易を含む包括協定で、いわゆる「混合協定」に該当し、EUレベルに加えて全加盟国の批准が必要です。europediplomatic+1​
    EMPAが発効すると、iTAは廃止され、包括協定に一本化される設計になっています。europediplomatic
  • 暫定貿易協定(iTA)
    貿易分野のみを切り出した暫定協定で、EUの専属権限に属する部分を対象とします。secnewgate+1​
    欧州議会の同意とEU理事会の締結決定を経たうえで、メルコスール側も自国の手続を完了すると、貿易ルールが先行して適用されることが想定されています。edit.wti+1​

この結果、

  • 貿易部分(iTA)が先に走る
  • 包括協定(EMPA)の全面発効は、各国批准を待って後から追い付く
    という時間差が実務上生じ得ます。policy.trade.europa+1​

最新ステータス:2026年1月時点

EU理事会は2026年1月9日、EMPAとiTAの署名を認める二つの決定を採択し、EU側として署名に進む権限付与が完了しました。lapresse+1​
今後は、EUおよびメルコスール各国による署名、欧州議会の同意、EU理事会による正式な締結という順で進みます。policy.trade.europa+1​

一方で、農業分野を中心に反発は根強く、特にフランスなどで大規模な抗議行動が継続しています。internazionale+1​
こうした政治的摩擦は、欧州議会での同意や一部加盟国の批准プロセスに不確実性として跳ね返る可能性があります。reuters+1​


段階別の流れと企業の視点

以下は、政治合意から全面発効までの主なステップを、企業が見るべきポイントと合わせて整理し直したものです。europediplomatic+1​

1〜4:EU内部手続が動き出すまで

  1. 政治合意
    • 2024年12月6日に政治レベルで合意が成立し、協定の骨格が固まりました。nordiskpost+1​
    • 影響の大きい業界・品目の当たりをつけ、サプライチェーン単位で棚卸しを始める段階です。europediplomatic
  2. 文書整備
    • 法的レビューと最終文言の調整を経て、テキスト・附属書が公開されます。policy.trade.europa+1​
    • 公開テキスト・附属書への入手ルートを確保し、関税撤廃表と原産地規則(PSR)から読み込みを開始します。policy.trade.europa+1​
  3. 欧州委員会による提案
    • 2025年9月3日、欧州委員会は、EMPAとiTAの署名・締結について理事会決定案を正式に提示しました。europediplomatic
    • 「iTAが先行し、EMPAが後追いする可能性がある」というタイムラインを社内に共有し、発効シナリオを前提にした準備を組み立てる段階です。secnewgate+1​
  4. 理事会が署名を承認
    • 2026年1月9日、EU理事会が署名を認める決定を採択し、政治交渉から条約手続フェーズへ完全に移行しました。lapresse+1​
    • ここで最新の発効シナリオを更新し、反対国の姿勢や国内政治論点を「批准リスク」として織り込みます。reuters+1​

5〜8:署名からiTA適用開始まで

  1. 署名
    • EUとメルコスール諸国が協定に署名し、国際法上の意思表示を行います(署名時点では原則として関税はまだ動きません)。policy.trade.europa+1​
    • この段階から、契約条項に「関税変更時の価格見直し・納期調整・負担者の分界」などを明示的に入れ込み始めるのが現実的です。europediplomatic
  2. 欧州議会の同意
    • 欧州議会は条文を修正するのではなく、同意(賛成)または不同意(反対)で判断します。policy.trade.europa+1​
    • 同意が得られない場合、理事会は協定を締結できず、貿易部分(iTA)も動きません。採決時期や関連委員会での議論を継続的にフォローする必要があります。safefoodadvocacy+1​
  3. 理事会が締結(EU側の国内手続完了)
    • 欧州議会の同意を受けて、EU理事会がiTAおよびEMPAの締結を決定します。europediplomatic+1​
    • iTAについては、理事会締結後、メルコスール側の国内手続が整い次第、発効・適用開始となります。edit.wti+1​
  4. iTAの適用開始
    • 条件が整うとiTAが発効し、関税・原産地規則・通関運用など貿易ルールが先行して適用されます。policy.trade.europa+1​
    • 原産地証明の実務(申告主体、自己申告の可否、サプライヤー証明の回収、保存年限など)を、この段階までに稼働可能な状態にしておく必要があります。edit.wti+1​

9〜10:EMPA全面発効までの長い尾

  1. EMPAの批准完了待ち
    • EMPAは混合協定であるため、全EU加盟国およびメルコスール側の国内批准を待つ必要があり、数年単位の期間を要する可能性があります。secnewgate+1​
    • iTAで動く領域(モノの関税・原産地・貿易救済等)と、EMPA全面発効まで凍結される領域(政治対話・協力や一部投資ルール等)を分けて管理することが重要です。europediplomatic+1​
  2. EMPA全面発効
  • 必要な批准がすべて完了するとEMPAが発効し、iTAは廃止されて一体の包括協定に置き換わります。policy.trade.europa+1​
  • その時点で、運用規程、紛争処理メカニズム、制度文言の差分を確認し、社内規程・マニュアルを「最終版」に統一していきます。europediplomatic

用語整理:署名・同意・締結・発効・仮適用

条約プロセスの用語は混同されやすいため、実務での意味合いに絞って整理します。policy.trade.europa+1​

  • 署名(signature)
    合意文書に署名する段階で、政治的な意味合いは大きいものの、それだけで関税が直ちに下がるわけではありません。europediplomatic+1​
  • 同意(consent)
    欧州議会が、協定に同意するかどうかを採決する段階で、EU側実務では最大の山場となります。secnewgate+1​
    同意がなければ、理事会は協定を締結できません。policy.trade.europa+1​
  • 締結(conclusion)
    EUとして協定に法的に拘束されることを最終決定する行為で、理事会が決定します。europediplomatic+1​
    iTAの場合は、締結と相手側手続完了をもって、発効・適用開始につながります。edit.wti+1​
  • 発効(entry into force)・仮適用(provisional application)
    自他双方の国内手続が整った時点で発効し、実務上の効果(関税減免等)が生じます。policy.trade.europa+1​
    欧州委員会は、EMPAのうち政治・協力分野の一部について、加盟国批准完了前に仮適用する案も示しており、適用範囲の線引きが今後の論点になります。secnewgate+1​

批准リスクを左右する論点

欧州議会の政治力学

欧州議会は、協定テキストを細かく修正するのではなく、賛否の二択で同意を与えるかどうかを決めます。europediplomatic+1​
反対票が多数となれば、EMPAだけでなくiTAも進まず、貿易部分全体が止まる結果となります。safefoodadvocacy+1​

農業・環境分野の懸念

EU域内では、農業団体を中心に「安価な南米産品との不公正競争」「環境・衛生基準のギャップ」に対する懸念が強く、フランスなどで継続的な抗議行動が行われています。reuters+2​
これらの反発は、加盟国政府のスタンスや欧州議会内の投票行動に影響を及ぼし得るため、政治的リスクとしてモニタリングが必要です。reuters+1​

セーフガード(緊急輸入制限)設計

理事会や欧州委の説明では、敏感な農産品分野の市場攪乱に迅速対応できるよう、特別なセーフガード措置を含めることが政治的受容性を高める鍵とされています。safefoodadvocacy+1​
企業としては、自社の取扱品が「敏感品目」やセーフガードの対象となり得るかを確認し、発動時の価格・数量リスクを契約条件に織り込む必要があります。edit.wti+1​


企業が今から着手すべき準備

批准待ちの期間を「待機時間」ではなく「設計時間」として前倒しで使うことが、実務上の勝ち筋になります。europediplomatic
特に、貿易分野がiTAで先行適用される設計である以上、関税よりも前に原産地規則・通関運用の設計を固めておくことが重要です。policy.trade.europa+1​

  • 対象品目の優先順位付け
    関税メリットが大きい品目、原産地判定が難しい品目、多段階サプライチェーンを持つ品目を優先的に抽出します。europediplomatic
  • 原産地規則の読み方:条文より附属書から
    iTAには、一般原則に加え、品目別原産地規則(PSR)と関税撤廃スケジュールを定める附属書が組み込まれています。policy.trade.europa+1​
    実務上の「設計図」は附属書側に集約されているため、HS分類別にPSRと撤廃スケジュールを突き合わせて読むのが効率的です。edit.wti+1​
  • 通関実務フローの設計
    原産地証明方式(輸出者/輸入者/サプライヤーの自己申告可否)、検認対応フロー、証拠書類の保存期間などを、協定テキストと税関ガイダンスを前提に標準化します。edit.wti+1​
  • 契約条件の整備
    発効時期が読みづらい協定では、発効前後の価格条件、関税負担者、遡及適用の取り扱い、返品・キャンセル条件などを契約上で明確にしておくことが、紛争予防に有効です。europediplomatic

どの一次情報を追えばよいか

迷ったときは、以下の三つに立ち返ると構造が把握しやすくなります。policy.trade.europa+1​

  • EU理事会のプレスリリース
    署名承認の事実、次の手続き、EMPAとiTAの関係性、政治的メッセージを押さえることができます。lapresse+1​
  • 欧州委員会のEU-メルコスール協定ページ
    協定の位置づけ、交渉経緯、基本構造(EMPAとiTAの二本立て)を俯瞰できます。europediplomatic
  • 協定テキスト公開ページ
    iTAとEMPAの構成、発効・適用条件の説明、各附属書(関税スケジュール・原産地規則等)への導線が整理されています。policy.trade.europa+1​

実務的な要点の整理

  • 2026年1月9日、EU理事会はEMPAとiTAの署名を承認し、協定パッケージは署名・同意・締結フェーズへ進んでいる。lapresse+1​
  • 協定はEMPAとiTAの二本立てで、貿易部分(iTA)が先に適用され得る一方、包括協定(EMPA)の全面発効は加盟国批准が必要で長期化し得る。policy.trade.europa+1​
  • 最大の不確実性は欧州議会の同意と各国の政治状況であり、農業・環境をめぐる反対運動が採決環境に大きく影響する。internazionale+2​
  • 企業側は、関税率そのものよりも先に、原産地規則・証明スキーム・通関運用・契約条件を設計しておくことで、発効日に耐える体制を整えるべきである。europediplomatic+1​
  1. https://europediplomatic.com/2026/01/09/eu-endorses-mercosur-free-trade/
  2. https://policy.trade.ec.europa.eu/eu-trade-relationships-country-and-region/countries-and-regions/mercosur/eu-mercosur-agreement/text-agreement_en
  3. https://www.nordiskpost.com/2026/01/10/eu-members-backed-mercosur-trade-agreement/
  4. https://www.secnewgate.eu/eu-mercosur-partnership-launching-a-historic-ratification-after-25-years/
  5. https://edit.wti.org/document/show/4da58773-ed1b-4588-ac3b-5e64d37d82c6
  6. https://uk.lapresse.it/world-en/2026/01/09/mercosur-with-the-vote-of-the-27-eu-countries-concluded-the-agreement-has-been-given-the-green-light/
  7. https://www.internazionale.it/ultime-notizie-reuters/2026/01/13/french-farmers-stage-new-paris-protest-in-bid-to-halt-mercosur-deal
  8. https://jp.reuters.com/video/watch/idRW522008012026RP1/
  9. https://www.reuters.com/world/americas/eu-countries-expected-clear-signing-record-mercosur-trade-deal-2026-01-09/
  10. https://www.safefoodadvocacy.eu/the-council-greenlights-the-signature-of-the-eu-mercosur-partnership-and-trade-agreement/
  11. https://www.dailysabah.com/business/economy/about-350-tractors-steered-into-paris-to-protest-eu-mercosur-deal
  12. https://x.com/EUCouncilPress/status/2009668725952393586
  13. https://gayaone.com/en/world-events/breaking-news/eu-member-states-provisionally-approve-mercosur-trade-pact-after-two-decades
  14. https://www.youtube.com/watch?v=MvYoGv30X8g
  15. https://www.reuters.com/business/eu-member-states-confirm-approval-signing-eu-mercosur-trade-agreement-2026-01-09/

もう「注釈」の迷宮で悩まない。HSコード判定を「専門家への相談」に変える方法

本日、日本企業の方々へHSコード判定支援システム「HSCF」のデモンストレーションを実施しました。

複数部署から多くの方にご参加いただき、実際の案件を用いたトライアルの結果をご覧いただいたのですが、そこで改めて浮き彫りになったのは「HSコード判定の過酷さ」でした。

■ 現場の悩み:細かな「注釈」との格闘 お客様はこれまで、膨大な「類注・項注」を読み解きながら、パズルのような作業で答えを導き出されていました。「とにかくややこしくて大変……」という切実な声が印象的でした。

■ HSCFが提案する「新しい体験」 デモ中、提供いただいたデータだけでは情報が不足し、判定が難しい場面がありました。しかし、ここからがHSCFの真骨頂です。 不足していた情報を言葉でサッと補足するだけで、システムが即座に再判定。

HSCFは、単にデータを入力して結果を出すだけの「機械的なツール」ではありません。「足りない情報を補いながら、専門家に相談して正解に近づいていく」。そんな人間味のあるプロセスが、ユーザーの使いやすさに繋がっています。

■ 納得いくまで、何度でも伴走します HSCFはシステムの貸し出しを行っていない分、デモンストレーションは何度でも、納得いただけるまで実施します。

「自分たちの商材でも判定できるのか?」 少しでも気になったら、ぜひ一度HSCFのデモを体験してみてください。

HSCFのブログありますので、そちらもご覧下さい。

日ペルーEPA:PDF発給化で見落としやすい必須項目と実務の組み替え方


2026年8月3日から、日ペルーEPAに基づく第一種特定原産地証明書(CO)の発給は、専用紙からPDFファイルによる電子発給に切り替わります。meti+1​
紙の原本がなくなる「だけ」に見えますが、実務のボトルネックは「輸出書類の必須項目を、誰が・いつ・どの根拠で確定させるか」という工程設計に移ります。jcci

結論から言うと、必須項目そのものは協定に付属するCO様式と記載要領で定義されており、PDF化によってフィールド構成が大きく変わるわけではありません。customs+1​
一方で、PDF化により、これまで紙運用の中で吸収されていた誤記や手戻りが減り、入力品質がそのまま通関品質・原産地管理品質として露呈しやすくなります。

以下では、まず日付と対象範囲を整理したうえで、協定様式に沿って必須項目をフィールド単位で分解し、PDF化でミスが増えやすい箇所と、社内フロー再設計のポイントまで落とし込みます。meti+1​


1. いつから何が変わるか:境目は「承認日」

今回の切り替えで重要なのは、「出荷日」ではなく、発給審査システム上の「承認日」が紙とPDFの境目になる点です。jcci

  • 経産省は、日ペルーEPAに基づくペルー向けCOについて、2026年8月3日よりPDFファイルでの発給に切り替えると公表しています。meti
  • 日本商工会議所(JCCI)は、専用紙での交付は「2026年7月31日までに発給審査で承認を受けた分まで」とし、2026年8月3日以降の承認分はすべてPDF形式による電子発給とする旨を明示しています。jcci

1.1 切替日と専用紙の扱い

  • 2026年8月3日以降に承認される日ペルーEPAのCOは、すべてPDFファイル形式で電子発給されます。meti+1​
  • 専用紙での交付は、2026年7月31日までに承認された申請分までであり、「出荷日」ではなく「承認日」が紙・PDFの切替基準になります。jcci

1.2 すでに発給済みの紙COの有効性

  • 日本商工会議所は、2026年7月31日以前に承認を受けて専用紙で発給されたCOについて、2026年8月3日以降も、有効期間内であればペルー税関(SUNAT)で受理されると案内しています。jcci
  • 日ペルーEPAの運用手続では、Proof of Origin(原産地証明)の有効期間は原則「発給日から12か月間」とされており、その範囲内であれば単一の輸入申告に使用できると定められています(例外規定あり)。mofa

1.3 受け取り方と支払い方法の変更

  • PDFは、発給審査の承認完了と手数料入金の確認後に、システム上からダウンロードする形で受け取ります。窓口での受け渡しや郵送による原本受領は行われません。jcci+1​
  • 手数料の現金払いは廃止される方向が示されており、銀行振込や口座振替など、非現金ベースでの支払い方法に整理されます。詳細はJCCIの案内に従って社内経理フローと締日を調整する必要があります。jcci+1​

2. PDF化で「必須項目」が変わるのか:原則は変わらない

COの必須項目は、協定の運用手続に付属する様式(見本)および記載要領で定義されており、PDF化によって項目自体が増減するわけではありません。acuerdoscomerciales+1​
日ペルーEPAのCO様式も、Exporter、Producer、Importer、Shipment details、Description of goods/HS、Origin criterion、Quantity、Invoice、Remarks、署名欄等のフィールド構成は維持されます。mofa+1​

ただし、PDF化は次の意味で「必須項目の重み」を変えます。

  • PDFは発給後の追記・修正が基本的に認められない
    協定の運用手続では、原産地証明書に対する無権限の修正があった場合、証明が無効と見なされ得ることが規定されています。mofa
    紙の時代に現場で起こりがちだった手書きの追記、スキャン後の注記、トリミング等の編集は、PDF原本を前提とする運用ではリスクが高くなります。
  • 署名やスタンプは電子的に印字され得る
    発給機関側の案内では、輸出者署名欄や発給機関の署名・スタンプについて、直筆だけでなく電子的な印字による対応も認められています。jcci+1​
    PDF発給を制度面で支えるポイントであり、「電子発給されたPDFの見た目が紙と異なること」を理由に真正性が否定されるものではありません(真正性確認はEPA CO Reference System等で行われ得ます)。mofa+1​

3. 必須項目をフィールド別に整理:PDF化で事故りやすい箇所

以下は、日ペルーEPAのCO様式・記載要領に沿って、実務上チェックすべき主なフィールドを整理したものです。acuerdoscomerciales+1​
括弧内は、PDF化で特に増えやすいミスの傾向です。

Field 1:Exporter

  • 内容
    輸出者の正式名称、住所、国名。登録情報と整合した表記が求められます。acuerdoscomerciales
  • PDF化で増えやすいミス
    英文社名の揺れ(略称・旧社名の混在)、住所の一部省略、グループ会社名義との取り違えなど。

Field 2:Producer

  • 内容
    生産者の正式名称、住所、国名。複数生産者がいる場合はリスト添付も可であり、生産者秘匿の場合は所定の文言を用いることができます。輸出者と同一の場合は「SAME」等の規定文言で代替可とされています。mofa+1​
  • PDF化で増えやすいミス
    どの生産者がどの商品を製造しているかの突合が曖昧になる、秘匿文言の誤記、SAMEの使い間違い(輸出者と生産者が同一でないのにSAMEと記載する等)。

Field 3:Importer

  • 内容
    輸入者の正式名称、住所、国名。契約上の輸入者と一致させることが原則です。acuerdoscomerciales
  • PDF化で増えやすいミス
    仕向地の荷受人と輸入者の混同、通関名義と契約上のバイヤー名義の取り違え。

Field 4:Shipment details

  • 内容
    船積日(B/L日付またはAWB日付)、積出港、経由港、揚げ港、船名・便名など、可能な範囲で記載します。mofa+1​
    遡及発給であっても、実際の船積日は記載が必要です。
  • PDF化で増えやすいミス
    船積日をインボイス日で代用してしまう、経由港欄が空欄のまま、便名が古い予約情報のまま更新されない等。

Field 5:Description of goods / HS Code

  • 内容
    品目番号、荷印、個数・荷姿、HS6桁、品名記述など。品名はインボイス記載とHS分類に紐づく十分な内容が必要とされます。jcci+1​
    バルク輸送の場合は「IN BULK」等の記載が認められています。
  • PDF化で増えやすいミス
    HS6桁が社内マスタとズレる、品名が短すぎてインボイスとの突合が困難になる、インボイス表現と不整合な英訳になる等。

Field 6:Origin criterion

  • 内容
    各品目の原産性基準を、協定別表の品目別規則に従って記載します。customs
  • PDF化で増えやすいミス
    記載した原産基準が品目別規則と不整合、複数品目に同一のコードを機械的に転記し、実際の原産判定結果と齟齬が生じる。

Field 7:Quantity

  • 内容
    数量(重量は総重量でも正味重量でも可)。業界慣行がある場合はリットル等の容積単位も認められます。customs+1​
  • PDF化で増えやすいミス
    インボイス単位との不一致、複数ページにまたがる場合に数量の整合性が取れない。

Field 8:Invoice number and date

  • 内容
    輸入申告に用いるインボイス番号と日付。第三国のインボイスが利用される場合などは、備考欄(Field 9)で補足が必要になります。jetro+1​
  • PDF化で増えやすいミス
    輸出者発行インボイスと輸入側で使用されるインボイスの混同、番号未確定時の仮番号記載の扱いを誤る。

Field 9:Remarks

  • 内容
    遡及発給であれば「ISSUED RETROSPECTIVELY」、再発給であれば所定の定型文言を記載します。mofa
    第三国インボイスを利用する場合等の補足事項もここに記載します。
  • PDF化で増えやすいミス
    定型文言の一部欠落、第三国インボイスに関する補足の記載漏れ、備考欄が空欄のままで必要要件を落とす。

Field 10:Exporter’s signature

  • 内容
    輸出者またはその代理人の署名と日付。署名は直筆でも電子印字でも可とされています。jcci+1​
  • PDF化で増えやすいミス
    署名日付と発給日(Field 11)が不整合になる、社内承認者と実際のサイナーの権限関係が曖昧なまま運用される。

Field 11:Issuing authority’s certification

  • 内容
    発給機関側の署名、日付、スタンプ。署名やスタンプは電子印字でも可です。jcci
  • PDF化で増えやすいミス
    受領側が真正性に疑義を持ち追加照会が発生する、PDFの一部欠けや画質劣化により印影や署名が判別しづらくなる。

これらのフィールド定義、HS6桁要件、インボイスおよび第三国インボイスの取扱い、遡及発給・再発給時の定型文言、署名・スタンプの電子印字容認といった点は、協定の運用手続および関連ガイダンスに明記されています。customs+3​


4. PDF化で実務が変わるポイント:手続より「工程」が変わる

4.1 受け取り遅延より「入力確定遅延」が問題になる

  • PDF発給により、窓口受領や郵送待ち時間は削減される一方、審査完了・入金確認後に即時ダウンロードが可能になります。jcci
  • しかし、Field 4の船積日、Field 8の輸入用インボイス、Field 3の輸入者情報など、出荷直前まで確定しにくい情報が残ると、そもそもの申請が遅れ、承認日ベースの締切に間に合わなくなります。

特に、2026年7月末前後は「承認日」が紙・PDFの境目となるため、「7月末船積だから紙で間に合うはず」という感覚的な判断は危険です。jcci
承認までに必要な情報の確定時期を、営業・生産計画・通関担当間で明確にしておく必要があります。

4.2 ペルー側での提出形態は必ず事前に確認する

  • 日本商工会議所は、PDFファイルを印刷して提出する必要性も含め、ペルー税関側の現地手続を確認するよう注意喚起しています。jcci
  • 経産省も、現地での輸入申告時の具体的な取扱いについてはペルー税関に確認するよう案内しています。meti

社内だけで推測してルール化するのではなく、輸入者、現地通関業者、SUNATの運用に合わせて、

  • PDFファイルの電子提出か、印刷した紙の提出か
  • CO番号による照会運用があるか
    といった点を、契約条件・L/C条件とあわせて事前に握っておくことが安全です。jetro+1​

4.3 発給後の加工禁止を社内ルールとして明文化する

  • 発給後の無権限修正があると原産地証明が無効となり得る点は、紙・PDFを問わず同じですが、PDFではデジタル編集が容易なだけに、痕跡が残りやすいのが実務上のリスクです。mofa
  • 発給されたPDFは「原本」としてそのまま保管し、社内配布用・注釈付きの加工版を作成しない運用にしておくと、安全性が高まります。

5. 社内フローの組み替え:承認日を起点にしたチェックリスト

最後に、PDF化に向けて現場がそのまま使える形に落とし込んだ、社内フロー見直しの観点を整理します。jcci+1​

5.1 出荷前の締切を「船積日」から「承認日」基準に置き換える

  • 承認までに確定しておくべき情報
    • HS6桁コード
    • 品名記述(インボイスと突合可能な粒度)
    • 原産基準(品目別規則に基づく)
    • 数量・単位
    • 輸入者情報
    • インボイス情報(第三国インボイスの有無を含む)
    • 船積情報(船積日、港情報、船名・便名)
  • 2026年7月末前後は、「承認日」をKPIとして営業・生産計画側と共有し、「いつまでに申請入力を確定させるか」を明示しておくことが重要です。jcci

5.2 申請前に行う入力品質の自己点検

  • Field 5の品名は、インボイス記載と突合できる長さと内容にする。
  • HSコードは6桁で固定し、社内マスタとの整合を必ず確認する。
  • 第三国インボイスの可能性がある取引は、Field 8(インボイス)とField 9(備考)のセットでレビューし、注記漏れを防ぐ。

これらはいずれも、HS6桁要件や品名記述の水準、第三国インボイス時の注記ルールとして、原産地証明関連のガイダンスに位置付けられている事項です。jcci+2​

5.3 発給後の運用を先に決めておく

  • ダウンロード手順、保管場所(フォルダ階層)、版管理ルールを標準化する。
  • 取引先への送付は原本PDFをそのまま用い、編集や追記を行わない。
  • 現金払い廃止に合わせて、経理部門の支払フローと締日を見直し、申請~支払~発給までのリードタイムを見積もる。

これらは、日本商工会議所のPDF発給案内に示された「ダウンロード提供」「窓口受渡し・郵送なし」「現金払い廃止」といった運用方針に対応した社内整備事項です。jcci+1​


まとめ:PDF化は「デジタル化」ではなく、入力品質の勝負

日ペルーEPAの第一種特定原産地証明書は、2026年8月3日からPDF発給へ切り替わり、専用紙での発給は2026年7月31日までに承認された申請分に限定されます。meti+1​
紙の時代に現場で暗黙に吸収されていた誤記や手戻りは、PDF発給ではそのまま通関リスク・原産地否認リスクに直結するため、入力品質の管理がこれまで以上に重要になります。

必須項目は協定様式と記載要領で決まっていますので、Field 1~11を一つずつ根拠付きで再点検し、とくにField 4(船積情報)、Field 5(HS6桁+品名)、Field 8(インボイス)、Field 9(備考・注記)について、社内ルールとして突合・レビュー手順を明文化するのが最短ルートです。customs+2​


免責事項

本稿は、経済産業省・日本商工会議所などの公開情報および日ペルーEPA協定文書に基づく一般的な実務整理であり、個別案件における原産性の判断、証明書発給の可否、通関での取扱いを保証するものではありません。meti+2​
具体的な案件については、輸入者側の通関実務を踏まえつつ、発給機関、通関業者、専門家等に確認の上で判断してください。

  1. https://www.jcci.or.jp/gensanchi/20260107_Perucopdf.pdf
  2. https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/boekikanri/gensanchi/20260107.html
  3. https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/j_peru/pdfs/japan-peru_epa.pdf
  4. http://www.acuerdoscomerciales.gob.pe/en_vigencia/japon/Documentos/ingles/formato_co_tlc_peru_japon.pdf
  5. https://www.customs.go.jp/english/origin/rules_of_origin_epa.pdf
  6. https://www.jcci.or.jp/gensanchi/
  7. https://www.mofa.go.jp/policy/economy/fta/pdfs/japan-peru_epa.pdf
  8. https://www.jcci.or.jp/gensanchi/tebiki_preparation.pdf
  9. https://www.customs.go.jp/roo/text/peru1.pdf
  10. https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-000969.html?_previewDate_=null&revision=0&viewForce=1&_tmpCssPreview_=0%2F%2F%2F%2Fbiznews%2F%2F%2Fbiznews%2F%2F%2F%2F%2Fbiznews%2F
  11. https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/04/f5dc8ab2cae0f934.html?_previewDate_=null&revision=0&viewForce=1
  12. https://www.customs.go.jp/english/epa/epa/Peru.pdf
  13. https://global-scm.com/blog/?p=3799
  14. https://global-scm.com/blog/?p=3850
  15. https://cdnw8.eu-japan.eu/sites/default/files/imce/20210304_rulesoforigin_report_final_0.pdf

日ペルーEPA COのPDF発給切替の全体像

2026年8月3日から、日ペルーEPA(日本・ペルー経済連携協定)に基づく第一種特定原産地証明書(CO)は、専用紙での発給からPDFファイルでの発給に切り替わります。 経済産業省と日本商工会議所は、指定発給機関である日本商工会議所の発給審査システム上の「承認日」を基準に、紙・PDFの扱いを明確に整理しています。meti+1​


1. 変更点の結論:何がいつ変わるか

ポイントは次の3点です。jcci+1​

  • 2026年8月3日以降に「承認」される日ペルーEPAのCOは、すべてPDFファイル形式での電子発給になること。jcci
  • 専用紙での発給は、2026年7月31日までに発給審査で承認を受けた申請分までであり、「出荷日」ではなく「承認日」が境目になること。jcci
  • 2026年7月31日以前に承認され、専用紙で発給されたCOは、2026年8月3日以降も、有効期間内であればペルー税関(SUNAT)で受理されること。meti+1​

「7月末船積だから紙で間に合うはず」という感覚的な運用ではなく、「7月31日までに日商システム上で承認を取れるか」を基準に工程を組む必要があります。jcci


2. なぜ今PDF化なのか:政策上の位置づけ

経済産業省は、EPAの利用拡大・利便性向上のため、指定発給機関による原産地証明書の電子化を順次進めています。 日ペルーEPAのCO電子化は、その一環として実施される施策であり、2026年8月3日以降、ペルー向けCOについてはPDFでの発給が標準となります。jaftas+1​

他協定では、PDF発給だけでなく、日インドネシア・日タイEPAのように、税関間のデータ交換(いわゆるeCO)が導入されている案件もありますが、日ペルーEPAについては「eCOデータ連携」ではなく、CO様式をPDFファイルとして発給する方式である点を切り分けて理解すると整理しやすくなります。jaftas+1​


3. 輸出実務で変わるポイント

3-1. COの受け取りが「窓口・郵送」から「ダウンロード」へ

日本商工会議所の案内によれば、発給審査が終了し、手数料の入金確認後に発給システム上のステータスが「交付済」となった時点で、利用者はシステムからCOのPDFファイルをダウンロードできます。 従来行われていた、商工会議所窓口での紙原本の受け渡しや、原産地証明書の郵送は行われなくなります。jcci+2​

これまで「紙COを受領してから輸出書類一式を完成させる」フローだった企業ほど、社内手順書の更新と、ダウンロード・保管・対外送付の役割分担を明確にする必要があります。jcci+1​

3-2. 手数料支払いで「現金」が廃止

日商の案内では、原産地証明手数料の支払い方法として、窓口での現金支払いが廃止され、事前振込(クレジットカード決済、インターネットバンキング振込等)または後日払いに変更されるとされています。 発給システム上で「交付済」となる条件に入金の確認が含まれるため、支払いの遅れはそのままCOのダウンロード遅延につながる可能性があります。archive.jcci+2​

経理・貿易実務・現場担当の間で、「どの支払方法を標準とするか」「締め日と申請タイミングをどう合わせるか」を事前に決めておくことが、通関スケジュールの安定化につながります。jcci+1​

3-3. システム改修による停止リスク

PDF発給への切替に伴う発給システムのプログラム改修・停止時期等の詳細は、日商から別途案内されることとされています。 移行直前期には、申請の集中とシステム停止が重なるリスクも想定されるため、7月下旬〜8月上旬に紙CO・PDF COいずれも必要となる案件については、余裕ある申請計画を立てておくことが安全です。archive.jcci+1​


4. 重要な落とし穴:ペルー側の提出要件確認

経済産業省と日本商工会議所は、ペルー側(SUNAT)での輸入申告時の提出方法について、「現地手続についてペルー税関に確認する必要がある」と明示しています。 とくに、次の点は取引先・現地通関業者によって運用が分かれ得るため、事前確認を怠るとトラブルにつながります。global-scm+2​

  • PDFを印刷した紙を原本として提出する必要があるのか
  • 電子申告システムへのPDF添付だけで足りるのか
  • L/C条件や通関業者の社内規定上、紙の原本を前提とした運用になっていないか

この確認を後回しにすると、「L/C条件で紙の原本提出が要求されていた」「現地通関業者が紙提出前提の社内ルールを維持していた」といった理由で、船積後に書類要求が変わり、差し替えや追加送付が発生するリスクがあります。jetro+1​


5. 移行期の実務対応チェックリスト

5-1. 7月末までに紙COが必要な案件の洗い出し

次の条件に当てはまる取引は、優先的に洗い出しておくとリスク管理しやすくなります。global-scm+1​

  • 2026年7月後半に出荷予定で、貨物到着が8月上旬になる案件
  • L/C決済や、買主銀行による書類審査が厳格な案件
  • 買主や現地通関業者が、従来から紙の原本提出を慣行としている案件

判断基準は、「2026年7月31日までに発給審査で承認を得られるかどうか」であり、社内の申請締切日から逆算して、書類準備・支払手続を含む工程表を組むことが実務的です。jcci+1​

5-2. 社内フローを「ダウンロード前提」に再設計

PDF発給を前提に、少なくとも次の点を明文化しておくと、従来よりも早く・確実にCOを回せるようになります。jcci+1​

  • 発給システム上で「交付済」であることを確認する担当者とタイミング
  • CO PDFのダウンロード・改ざん防止を含む保管ルール(ファイル命名規則、保存場所、アクセス権限など)
  • 輸出書類セットへの組み込み方と、取引先への送付方法(メール添付、ポータルサイト、DMS等)の標準化

物理的な郵送が不要になる分、電子送付のログ管理(いつ・誰に・どのファイルを送付したか)を残すルールも合わせて設計しておくと、監査・トラブル時の説明が容易になります。global-scm+1​

5-3. 経理・支払ルールの更新

現金払いの廃止に伴い、以下のような論点を社内で整理しておくことが望まれます。archive.jcci+1​

  • 標準とする支払方法(クレジットカード決済・ネットバンキング振込・後日払い等)の選択
  • 発給申請から入金確認・「交付済」反映までのリードタイムを織り込んだスケジュール
  • 月次締め・支払サイクルとCO申請ピークの整合

これにより、「COは承認済だが入金が遅れてダウンロードできない」というボトルネックを避けやすくなります。jaftas+1​


6. 日ペルーEPAのCOの役割を再確認

日ペルーEPAの特恵税率を適用するには、輸出者は指定発給機関である日本商工会議所に対し、日本原産品であることを示す資料を提出し、原産品判定を受けたうえで第一種特定原産地証明書の発給申請を行う必要があります。 CO自体は法的に絶対義務ではありませんが、特恵税率を利用するための証拠書類として、輸入側での申告に不可欠な位置づけとなります。jetro+2​

初めて第一種特定原産地証明書の取得に取り組む企業では、事前登録や原産品判定に時間を要するケースもあるため、PDF切替とは別次元の準備リードタイムとして織り込んでおくことが重要です。epa-info+1​


7. まとめ:8月3日は「発給形式が変わる日」、実務はそれ以前に固める

2026年8月3日から、日ペルーEPAのCOはPDF発給に切り替わり、2026年7月31日までに承認された分のみ専用紙での発給が可能であることが、経済産業省と日本商工会議所から明示されています。 7月31日以前に専用紙で発給されたCOは、協定上の有効期間内であれば、8月3日以降もペルー税関で受理されると案内されています。meti+2​

一方で、PDFをペルー側でどのような形で提出するか(印刷要否・電子添付可否等)はSUNATや現地通関業者の実務に依存するため、取引先と事前に確認しておくことが、現場レベルでは最重要ポイントになります。 日本側社内では、PDFダウンロードを前提にした受領・保管・送付手順と、現金廃止後の支払フローを先に整備しておくことで、移行期のトラブルを抑えつつ、COのリードタイム短縮というメリットを享受しやすくなります。global-scm+2​

  1. https://www.jcci.or.jp/gensanchi/20260107_Perucopdf.pdf
  2. https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/boekikanri/gensanchi/20260107.html
  3. https://jaftas.jp/file/pdf/ftaport/epa-5minutes.pdf
  4. https://www.jcci.or.jp/gensanchi/tebiki_system.pdf
  5. https://archive.jcci.or.jp/gensanchi/news.php
  6. https://global-scm.com/blog/?p=3799
  7. https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/cs_america/pe/jpepa/pdf/jpepa-201712.pdf
  8. https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-000969.html?_previewDate_=null&revision=0&viewForce=1&_tmpCssPreview_=0%2F%2F%2F%2Fbiznews%2F%2F%2Fbiznews%2F%2F%2F%2F%2Fbiznews%2F
  9. https://www.customs.go.jp/roo/
  10. https://epa-info.go.jp/pdf/download/tebiki_preparation.pdf
  11. https://www.jcci.or.jp/gensanchi/
  12. https://global-scm.com/blog/
  13. https://www.customs.go.jp/kaisei/kanzeiteirituhou.pdf
  14. https://www.japanfruit.jp/Portals/0/resources/JFF/kaigai/jyoho/jyoho-pdf/KKNJ_174.pdf
  15. https://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2025/foodinfo202520c.pdf

メキシコ関税法改正が施行、通関責任を拡大 日本企業が今すぐ見直すべき実務ポイント


2025年11月19日、メキシコの連邦官報(Diario Oficial de la Federación, DOF)に、Ley Aduanera(一般に「関税法」「通関法」と訳される税関手続の基本法)の大規模改正を定める政令が公布されました。改正は原則として2026年1月1日に施行され、一部の段階的施行事項については1~3か月の猶予期間が設けられています。今回の改正は、関税率そのものを変える話というより、通関手続と事後監査を前提にしたコンプライアンス運用を作り替える内容です。特に、通関業者(Agente Aduanal)・通関会社(Agencia Aduanal)と、輸入者・輸出者の責任分担が実務上大きく変わります。trade+5​

以下、ビジネスマン向けに「何が変わり」「何を変えるべきか」を実務目線で整理します。

1. 何が一番変わったのか 通関責任が広がり、免責が狭くなった

改正の核心は、通関業者側の注意義務と責任が強化され、従来第54条で認められていた責任の免除規定が廃止された点です。これまで通関業者は、輸入者・輸出者から提供された情報の不正確性や虚偽について一定の免責が認められていましたが、今回の改正でこれが撤廃され、関与する全ての外国貿易取引について完全な連帯責任を負うことが明確化されました。結果として、通関業者は分類(HS・メキシコのNICO)や価格(課税価格)により保守的になり、通関前の照会・追加書類要請・取扱い拒否が増える可能性があります。braumillerlaw+4​

2. 通関業者は「共同責任」を負う範囲が拡大

制度面では、通関業者(agente aduanal)とそのパートナーである通関会社(agencia aduanal)が、当該会社が扱った案件に関する関税等や相殺関税(反ダンピング等を含む概念)の支払いについて連帯責任を負う方向が明確化されています。加えて、ライセンスの有効期間や更新の枠組みが強化され、新たに関税評議会(Customs Council)が創設されました。この評議会は、財務省(SHCP)、税務管理局(SAT)、国家関税庁(ANAM)、汚職・良好ガバナンス省の代表で構成され、通関業者免許や通関会社の認可の付与、更新、停止、取消を管理します。alvarezandmarsal+4​

実務的には、通関会社が「顧客の審査(KYC相当)」と「案件ごとの証憑整備」を以前より強く要求する流れになります。通関業者は、輸出者および輸入者が完全に特定され、インフラを有し、連邦税法第69-B条に基づき列挙された納税者と関係がないことを証明するファイルを維持することが義務付けられました。hklaw

3. 企業側は「電子ファイル(通関ファイル)」整備が必須級になる

今回の改正では、各輸入申告に紐づく電子ファイル(Electronic File)に入れるべき情報・証憑の要求水準が引き上げられています。従来は通関申告書とその付属書類のコピーのみで足りましたが、改正後は以下を含む包括的な書類が求められます:wcoomd+1​

  • 商業送り状(commercial invoice)
  • 推定価格を下回る製品の保証
  • デジタル税務証憑(CFDI)および取引に関与する物品の支払証明
  • 輸送費、保険、関連サービス費用
  • 取引に関連する契約書
  • 関税評価額への加算を裏付ける書類
  • 外国貿易取引の実行を証明するその他の書類や記録

これは「通関時に出せばよい」ではなく、後日の税関・税務当局による検証に耐える形で、最初から揃える運用への転換を意味します。なお、関税法規則第81条で規定されるこれらの書類要件は2025年12月9日から義務化されています。kpmg+3​

4. 通関業者の「直接責任」になり得る典型例が追加・明確化

改正により、通関業者・通関会社が税関当局に対して直接責任を負い得る場面が拡大しています。専門家解説では、例えば次のような類型が指摘されています:ey+1​

  • 分類(HS・NICO)の正確な決定を怠った場合
  • 関税、税金、手数料の正確な決定を怠った場合
  • 正しい通関制度と関税分類の適用を怠った場合
  • 輸入者または輸出者が通関および外国貿易義務への適合を証明する全ての書類を保有していることの確認を怠った場合braumillerlaw

要するに「分類・申告設計の誤り」が通関業者側のリスクとして跳ね返りやすくなります。

5. 保証(推定価格など)とRFE関連は段階施行に注意

改正は原則2026年1月1日施行ですが、一部条項は段階的に発効します:garrigues+1​

  • 2026年2月1日発効: 推定価格(estimated price)を下回る申告価格で輸入する場合の関税保証口座の預託解除期間が6か月から12か月に延長mexicoreport+1​
  • 2026年4月1日発効: 戦略的保税制度(Recinto Fiscalizado Estratégico, RFE)への物品搬入時の関税保証口座を通じた保証義務wcoomd

資金繰りと通関リードタイムに直結するため、CFO視点でも早めの影響試算が必要です。dlapiper

6. IMMEXや一時輸入・移転取引は、連鎖責任リスクが増える

IMMEX(マキラドーラ・輸出製造サービス産業促進プログラム)などで使われる一時輸入品のバーチャル移転(virtual operations)について、重要な義務が追加されました。alvarezandmarsal+2​

改正第112条の最終段落により、輸出者およびバーチャル輸入者は、バーチャル取引に関する電子ファイルを相互に共有することが義務付けられます。さらに、バーチャル輸出者は、バーチャル移転される物品の一部である一時輸入品に適用された生産プロセスを証明する情報と書類を共有しなければなりません。wcoomd

加えて、第59条第X項の追加により、一時輸入品を移転する者は、移転回数にかかわらず、発生した税金について連帯責任を負うことが規定されました。これにより、無関係会社間のバーチャル運用では、電子ファイル共有や工程情報の提示が実務障壁になり、バーチャル通関申告ツールの使用が抑制される可能性があります。wcoomd

また、IMMMEXおよびRFE企業は、相互運用可能なトレーサビリティ、在庫、遠隔監視システムの導入が義務付けられ、実施した工業プロセスの十分な証拠を維持することが求められます。alvarezandmarsal

7. 罰金の大幅引き上げ

改正により、特定の違反に対する罰金が大幅に引き上げられました:global-scm+1​

  • IMMEXプログラム企業が、プログラムで認可されていない物品を一時輸入した場合
  • 非関税規制および制限への適合を証明しない場合
  • 外国供給者の名称、商号が虚偽または存在しない、または記載された住所で特定できない場合

これらの場合、物品の商業価値の250%から300%相当の罰金が科されます。ただし、関税法で規定される罰金の割引制度は有効であり、税額が確定する前に適用できます。ey+1​

8. 企業にとっての「機会」もある 事後の特恵申請ルート

改正の中には、FTA等の原産性があるのに輸入時点で特恵を使わなかった場合に、後から特恵適用を申請して関税を回収できる方向の手当ても含まれていると整理されています。実務上は、原産地証明とトレーサビリティがより厳格に問われる前提で、回収機会が広がる可能性があります。

9. 日本企業の実務チェックリスト まず90日でやること

(1) 通関会社との契約見直し

  • 提出書類の範囲、提出期限、虚偽情報が出た場合の責任分担
  • 追加調査・保留・取扱い拒否の基準と連絡フロー
  • 連帯責任体制下での費用負担とリスク配分

(2) 分類ガバナンスの整備

  • HSとNICOの根拠資料(スペック、用途、構成、類似品比較)を社内標準化
  • 迷う品目は事前教示(ruling)や見解取得の検討(時間がかかる前提で計画)wcoomd
  • 改正により、分類についての事前教示はSATに提出することが明確化されましたwcoomd

(3) 価格(課税価格)と移転価格の整合

  • ロイヤルティ、金型、運賃保険など加算要素の整理
  • 支払証憑(CFDI)と契約書を案件ファイルに紐付け
  • 信用状(Letter of Credit)を通じた保証の活用検討wcoomd

(4) 電子通関ファイルのテンプレ化

  • 「最低限これが揃わないと通関に出さない」基準を作る
  • CFDIやCarta Porte(運送状)などメキシコ特有証憑を物流会社にも要求
  • 2025年12月9日からの義務化に対応した運用確立kpmg+1​

(5) IMMEX・RFEは運用棚卸し

  • 一時輸入の移転(バーチャル取引)、在庫整合、工程証明の出し方を再点検
  • 電子ファイル共有と生産プロセス情報開示の影響評価
  • 保証や滞留期限変更による資金影響を試算(2026年4月1日発効)wcoomd

(6) 監査対応の訓練

  • 直近6か月分をサンプル監査し、穴(分類・価格・原産地・証憑欠落)を潰す
  • SATおよびANAMの共同事後監査権限に備えるbraumillerlaw

まとめ 通関は「書類提出業務」から「監査対応業務」へ

今回の改正は、メキシコ側の通関が「通して終わり」ではなく「後で検証される前提」で再設計されたと見るのが安全です。通関業者の免責規定が廃止され、完全な連帯責任体制に移行したことで、通関会社が慎重化するほど、企業側の準備不足がそのまま遅延・追加コスト・差押えリスクに直結します。まずは、分類・価格・原産地・証憑の4点を、案件単位で再現可能にすることが最優先です。qima+3​

また、連邦執行府は、改正公布後120日以内(2026年3月19日まで)に関税法規則を改正する必要があるため、今後の規則改正にも注視が必要です。global-scm



免責: 本稿は一般情報であり、個別案件の法的助言ではありません。最終判断はメキシコ現地の通関会社・専門家と確認してください。

  1. https://www.trade.gov/market-intelligence/mexico-customs-law-reform
  2. https://www.alvarezandmarsal.com/thought-leadership/mexico-s-2026-customs-law-key-changes-for-global-trade
  3. https://www.braumillerlaw.com/new-mexican-customs-law-nueva-ley-aduanera-de-mexico/
  4. https://blog.qima.com/esg/customs-law-mexico-2026
  5. https://www.garrigues.com/en_GB/new/mexico-decree-published-amending-adding-and-repealing-various-provisions-customs-law
  6. https://global-scm.com/hscf/archives/134
  7. https://www.hklaw.com/en/insights/publications/2025/09/reforma-a-ley-aduanera-y-ley-de-los-impuestos-generales
  8. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2025/april/hsc-provisionally-adopts-the-recommendation-for-hs-2028-amendments-at-75th-session.aspx
  9. https://kpmg.com/us/en/taxnewsflash/news/2026/01/mexico-general-foreign-trade-rules-2026-import-export-duties-law.html
  10. https://www.ey.com/es_mx/technical/tax/boletines-fiscales/amendments-customs-law-2026
  11. https://www.mexicoreport.com/2025/12/general-foreign-trade-rules-for-2026-are-published/
  12. https://www.dlapiper.com/en/insights/publications/2025/11/mexico-amends-customs-law-and-federal-tax-code
  13. https://www.livingstonintl.com/important-update-on-mexicos-customs-reforms-and-potential-border-delays/
  14. https://www.linkedin.com/posts/alejandrocardenagalvan_shipping-into-mexico-big-change-just-landed-activity-7396940392908275712-xjaI
  15. https://www.diputados.gob.mx/LeyesBiblio/pdf/LAdua.pdf
  16. https://ccianet.org/wp-content/uploads/2025/10/CCIA-Comments-for-the-2026-USTR-National-Trade-Estimate-Report.pdf
  17. https://www.ciat.org/Biblioteca/Revista/Revista_51/Ingles/Rev_51_En.pdf
  18. https://web.wtocenter.org.tw/downFiles/13577/405261/00uTKxYz1Cs0000000000BtV3n711111QVIwnuKvKJmS7KSJbX8gngQw6jLlybuRYQ6NnCg00000ssilQbJxATV4otQc8ttviP111110hlzg==
  19. http://www.sice.oas.org/ctyindex/col/WTO/ENGLISH/s472_e.pdf

マレーシアと中国がeCOデータ交換を開始へ 通関のスピードと原産地管理はどう変わるか


マレーシアと中国の間で、原産地証明書(Certificate of Origin)の電子データ交換が動き出します。マレーシア投資・貿易産業省(MITI)と中国税関総署(GACC)は、ACFTA(ASEAN中国FTA)とRCEPの枠組みで、原産地証明書データを当局間で電子的に交換する共同取決め(Joint Arrangement)に合意しました。初期段階は、マレーシアから中国向けに、Form E(ACFTA)とRCEPの原産地証明書データを一方向でリアルタイム連携し、2026年1月の運用開始を目標としています。miti+2​

この動きは、単なる「書類の電子化」ではありません。通関の現場では、原産地証明の真正性確認と、関税優遇の適用判断がより迅速になり、同時に不正や誤りが見つかりやすくなる方向に進みます。マレーシアで生産し中国へ輸出する企業、またはマレーシア拠点をサプライチェーンに組み込む企業にとって、実務の影響は小さくありません。miti

何が始まるのか ポイントは当局間のデータ連携

今回の枠組みの要点は、原産地証明書そのものを企業間で電子送付するというより、当局が保有する証明データを、国境を越えて安全に共有し、輸入時の真正性確認と原産地検証を効率化する点です。MITIの発表では、文書送付時間の短縮、証明書の真正性確認の迅速化、機密性と安全性の向上、不正利用リスクの低減が狙いとして示されています。digitalizetrade+1​

対象はACFTAのForm EとRCEP原産地証明書

初期フェーズで電子連携されるのは以下です。thesun+1​

  • ACFTAのForm E(マレーシア発、中国向け)
  • RCEPの原産地証明書(同)

いずれも、関税優遇の適用において重要な「原産性の証拠」なので、真正性確認が速くなるほど、輸入通関の確度とスピードが上がる反面、誤った証明や整合しないデータは早期に検知されやすくなります。miti

仕組み マレーシアNSWと中国EODESを接続

MITIの説明では、マレーシア側はNational Single Window(NSW)を介して、中国側のElectronic Origin Data Exchange System(EODES)と接続します。thesun+1​

NSWはマレーシアの貿易手続きを集約する電子ゲートウェイで、2009年から稼働しており、税関申告(eDeclare)、許認可(ePermit、ePermitSTA)、決済(ePayment)、マニフェスト(eManifest)、ePCO(電子特恵原産地証明)など6つの中核eサービスで構成されています。NSWは財務省主導のイニシアチブで、Dagang Net Technologies社が開発・運用・管理を担当し、25,000以上のユーザー、年間1億件以上の電子取引を処理しています。MITIはePCOなどの発給関連モジュールの所管当局でもあり、ASEAN単一窓口(ASW)のマレーシア側リード機関としても機能しています。miti+3​

つまり今回のeCOデータ交換は、既存のNSW基盤の上に「中国税関との直結ルート」を乗せるイメージです。

なぜ今なのか 単発の施策ではなく、単一窓口協力の延長線

この話は突然出てきたものではありません。マレーシア財務省は2024年6月18日、アンワー首相と中国の李強首相の会談を経て、両国がNSWを軸に単一窓口協力を検討する共同作業部会(Joint Working Group on Single Window Cooperation)を設置し、貿易手続きのデジタル化、重複書類の削減、より正確な情報交換を進める方向性を示しています。この時点で、財務省第二大臣とGACCの于建華関税総長が単一窓口協力に関する共同声明に署名しました。mof

今回の原産地証明の電子連携は、その具体的なユースケースの一つと捉えると理解しやすいです。thestar

ビジネスへのインパクト 速くなるのは通関だけではない

1. 通関スピードとリードタイムの短縮余地

原産地証明の真正性確認が当局間データで迅速化すれば、書類照合の待ち時間や確認照会が減ることが期待されます。MITIも「文書送付時間の削減」を効果として挙げています。customs+1​

ただし、現場オペレーションが「紙提出不要」まで一気に進むかは、輸入地税関の運用次第です。中国は2020年5月から電子PCO(ePCO)の電子送信を義務づけていますが、初期段階では従来手続きとの併走を想定しておくのが安全です。jetro+1​

2. 偽造・改ざんリスクの低下と、情報漏えい対策

MITIは、証明書の真正性確認の迅速化、セキュリティと機密性の向上、第三者による不正利用の抑制を明記しています。電子データ交換は、両国関係当局間での暗号化された安全な情報共有を通じて貿易活動を合理化します。thesun+1​

対外取引が増えるほど、CO番号の悪用や書類改ざんの温床は広がります。データ連携は、ここに直接メスを入れる施策です。

3. 原産地管理の厳格化 データ品質がそのままリスクになる

当局間でデータが照合されやすくなるほど、次のような「ありがちなズレ」が通関トラブルの起点になります。

  • インボイス記載とCO記載の不一致(品名、数量、HS、インボイス番号など)
  • 原産地判定根拠の弱さ(CTC、付加価値、工程証憑が不十分)
  • 訂正や再発給の社内フロー未整備(誰がいつ何を直すか曖昧)

電子化が進むと、監査証跡が残りやすくなる一方、誤りも残ります。便利になった分だけ、内部統制の完成度が問われます。miti

実務対応チェックリスト いま企業がやるべきこと

1. 自社の対中輸出で、ACFTAとRCEPのどちらを使うかを棚卸しする

関税率の有利不利だけでなく、原産地規則の満たしやすさ、証明の取りやすさ、顧客側の通関運用を含めて選びます。

2. 原産地証明の入力データの品質を上げる

申請担当者任せにせず、インボイスとCO、BOM、原産地判定シートの突合ルールを作り、ミスが起きる前提で二重チェックを仕組みにします。

3. 修正・取消・再発給の手順を決める

電子連携があるほど、訂正の影響は広がります。輸入者、通関業者、中国側の申告タイミングを踏まえ、社内の判断基準を文書化します。

4. 取引先と「通関で何が変わるか」を事前にすり合わせる

一方向連携なので、まず恩恵を受けやすいのはマレーシア発中国向けです。中国側の申告で必要になる情報(CO参照番号の伝達方法など)を確認しておきます。thesun+1​

今後の展望 eCOは世界的に増える

中国のEODESは、2019年11月1日にシンガポールとの間でACFTAおよび中国・シンガポールFTAに基づくPCOと非加工証明書(CNM)の電子提出システムとして運用を開始しました。その後、2024年11月にはシンガポールとRCEPベースのPCOもEODESに追加する覚書が締結されています。linkedin+2​

マレーシア側も、ASEAN域内ではASEAN単一窓口(ASW)を通じてe-Form D(ATIGA電子原産地証明)の交換運用経験を積んでいます。マレーシアは既に、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、ミャンマー、フィリピン、タイ、ベトナム向けにATIGA e-Form Dを電子送信しています。customs+1​

今回の連携は、二国間の利便性向上に留まらず、域内・多国間での「原産地データ連携の標準化」へつながる可能性があります。thestar+1​

まとめ

マレーシアと中国のeCOデータ交換は、通関の迅速化と不正抑止を同時に進める施策です。現場に近いほどメリットは出ますが、同時に、原産地管理の甘さが表面化しやすくなる点が最大の注意点です。miti

特に、マレーシア拠点から中国へ輸出する企業は、申請データの品質、訂正フロー、原産地判定の証拠書類の整備を「通関のため」ではなく「監査対応のため」に引き上げることが、結果的にリードタイム短縮とトラブル削減に直結します。miti

:制度運用の詳細は当局の通達や通関実務で変わり得ます。最新の運用はMITIおよび関係当局、通関業者の案内で必ず確認してください。


  1. https://www.miti.gov.my/miti/resources/Media%20Release/%5BFINAL%5D_Media_Statement_Signing_JA_MITI_GACC_2025-11-13.pdf
  2. https://www.reuters.com/world/asia-pacific/malaysia-china-exchange-trade-certificates-electronically-2026-2025-11-13/
  3. https://thesun.my/news/malaysia-news/people-issues/malaysia-and-china-to-launch-electronic-trade-data-exchange-in-2026/
  4. https://www.digitalizetrade.org/projects/electronic-origin-data-exchange-system-china-eodes
  5. https://www.miti.gov.my/index.php/pages/view/1149
  6. https://www.dagangnet.com/trade-facilitation/national-single-window/
  7. https://eec.eaeunion.org/upload/medialibrary/2b3/6rnswsy760n0klvpbqztvc430qbmxxtx/7.2-EN-Eva-Chan-add-on-MY-NSW_210140822.pdf
  8. https://www.miti.gov.my/index.php/pages/view/3911
  9. https://www.mof.gov.my/portal/en/news/press-release/malaysia-china-agree-on-single-window-cooperation
  10. https://www.thestar.com.my/business/business-news/2024/09/18/national-single-window-initiative-to-boost-msia-china-trade
  11. https://customs.gov.sg/businesses/rules-of-origin/eodes-with-china/
  12. https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/12/275c35e30a3044d8.html
  13. https://www.linkedin.com/posts/ministry-of-finance-singapore-customs_singaporecustoms-tradeagreement-eodes-activity-7265304259225690112-HClA
  14. https://customs.gov.sg/businesses/rules-of-origin/asw/
  15. https://theedgemalaysia.com/node/779584
  16. https://www.businesstimes.com.sg/international/asean/malaysia-china-exchange-trade-certificates-electronically-2026
  17. https://www.businesstoday.com.my/2025/11/13/malaysia-china-begin-electronic-exchange-of-trade-certificates-from-jan-2026/
  18. https://www.jastpro.org/files/libs/1682/202212081408258370.pdf
  19. https://www.dnex.com.my/2024/dnex-receives-contract-extension-for-national-single-window-for-trade-facilitation-2/
  20. https://unece.org/fileadmin/DAM/cefact/single_window/sw_cases/Download/MalaysiaUseOfEDocuments.pdf

EU理事会がEU・メルコスール協定の署名を承認 発効ではない。企業が今からやるべき準備

2026年1月9日、EU理事会(Council of the EU)は、EUとメルコスール(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ)との包括的なパートナーシップ協定(EMPA)および暫定貿易協定(iTA)の署名を認める決定を採択しました。25年以上続いた交渉が大きく前進した一方で、これは発効を意味しません。ビジネス側は、政治イベントとして眺めるよりも、発効前から実務準備の勝負が始まったと捉えるべき局面です。 (欧州理事会)

以下、何が決まったのか、どこがリスクでどこがチャンスか、そして企業として何を準備すべきかを、一次情報中心に整理します。

まず押さえる3点

  1. 署名承認は発効ではない
    今回の決定は「署名に進むための承認」です。協定が効力を持つには、欧州議会の同意など、次の手続きが残っています。 (欧州理事会)
  2. 先に動くのは貿易部分(iTA)になり得る
    iTAはEUの排他的権限(主に通商分野)に属するため、加盟国ごとの批准を要しない設計です。欧州議会の同意後、EU理事会が正式に締結すれば、貿易面の便益が先行して動く可能性があります。 (欧州理事会)
  3. セーフガードと監視が最初から組み込まれている
    「関税が下がる」だけで走ると危険です。農産品を中心に、優遇停止を迅速に打てる枠組みが同時に整備されています。 (欧州理事会)

EU・メルコスールとは何か 市場規模と現状

メルコスールは南米の関税同盟で、EU側が今回の枠組みで相手とするのは主に4か国(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ)です。なお、ボリビアは加盟議定書署名済みで批准待ち、ベネズエラは資格停止とされています。 (欧州理事会)

貿易規模も大きく、EUとメルコスールの財貿易は2024年に約1,110億ユーロ(EU輸出552億、輸入560億)、サービス貿易は2023年に約420億ユーロとされています。EUの対メルコスール直接投資残高は2023年で約3,900億ユーロという説明もあり、すでに深い関係にあります。 (欧州理事会)

今回の「署名承認」で手続きはどこまで進んだのか

EU側で重要なのは、協定が二本立てになっている点です。

・EU・メルコスール・パートナーシップ協定(EMPA)
政治対話、協力、そして貿易を含む包括協定。EU加盟国すべての批准が必要。EUは政治・協力章の大部分を暫定適用する方針が示されています。 (欧州理事会)

・暫定貿易協定(iTA)
貿易・投資の自由化部分を切り出した協定。欧州議会の同意後、EU理事会が特定多数決で締結し得る設計で、EMPA発効までの間、貿易の便益を先行させる狙いです。 (欧州理事会)

2026年1月9日の時点で、加盟国側の大勢は署名を支持していると報じられていますが、最終的な効力発生には欧州議会の同意が不可欠です。 (Reuters)

何が変わるのか 関税と市場アクセスの「効きどころ」

メルコスール側の関税は、工業品を中心に依然として高い水準が残る分野があります。欧州委の資料では、現行関税の例として自動車部品35%、機械20%、化学品18%、医薬品14%が挙げられ、協定によりEU輸出側は年間40億ユーロ超の関税負担が削減され得ると説明されています。 (Trade and Economic Security)

さらに、iTAには政府調達やサービス貿易の章も含まれ、EU企業がメルコスール各国の公共調達に参入しやすくなる点も、競争環境を変え得る要素です。 (欧州理事会)

日本企業にとっての示唆は明快です。
メルコスール向け輸出でEU企業が関税面のハンディを解消するなら、同市場で日本企業が正面から価格で勝つ難度は上がります。逆に、EU拠点を活用してメルコスールへ出す、あるいは現地生産と組み合わせる企業には、選択肢が増える構図です。

セーフガードと数量枠 優遇は「止まる前提」で設計する

農業分野は政治的な反発が強い領域であり、EU側は優遇拡大を数量枠とセーフガードでコントロールする設計を強調しています。

例として欧州委のファクトシートには次が示されています。 (Trade and Economic Security)

・牛肉
無税枠ではなく、年9万9,000トンを7.5%関税で輸入可能(内訳は生鮮・冷蔵55%、冷凍45%)。 (Trade and Economic Security)

・家きん肉
年18万トンの無税枠を5年かけて段階導入。 (Trade and Economic Security)

・砂糖
ブラジル向けに新規の砂糖枠を作るのではなく、既存のWTO枠の中で精製用原料糖18万トンを無税に、加えてパラグアイ向けに1万トンの新規無税枠。 (Trade and Economic Security)

重要なのは、セーフガードが「実装フェーズ」に入っている点です。EU理事会と欧州議会は、農産品向けの二国間セーフガードを実務的に動かす規則案で暫定合意し、価格下回り5%と、輸入量や輸入価格の一定変動を調査開始の目安として扱うこと、調査を原則4か月で終えること、緊急時は21日以内に暫定措置を導入できることなどを示しています。また、2026年3月1日までに市場監視を支える技術ガイドラインを出す方針も明記されています。 (欧州理事会)

企業実務としては、優遇関税があるからといって、その前提で長期契約の価格式や需給計画を固定すると危険です。優遇停止のトリガーが制度として明確化されるほど、影響は「突然」起きます。

原産地規則と証明実務 勝敗は書類と設計で決まる

関税が下がっても、原産地を満たさなければゼロです。iTAの原産地章では、EUの近年型協定に近い「商業書類上の原産地申告(Statement on origin)」を中核に据えています。

公開されているiTA本文では、次が読み取れます。 (データ協議会)

・輸出者が、インボイス、納品書、その他の商業書類に「原産地申告」を記載する方式
・原産地申告には、原則として輸出者の手書き署名が必要(ただし輸出国法令で別段があればそれに従う)
・申告は輸出時に作成でき、輸出後に作成することも可能だが、輸入後2年以内に提示する必要がある
・有効期間は作成日から12か月
・輸出者と輸入者に、それぞれ少なくとも3年間の記録保存義務 (データ協議会)

さらに、優遇適用は「制度悪用があれば止まる」設計です。iTAには、優遇を得るための大規模・体系的な法令違反や不正があり、かつ相手側が協力義務を体系的に拒否するなどの状況がある場合に、当該品目の優遇を一時停止できる趣旨の規定が置かれています。 (データ協議会)

実務で問われるのは、次の二つです。

・原産設計
サプライヤーからの情報収集、工程分解、品目別ルールへの当てはめを、発効後ではなく発効前に完了させる。

・証明フロー
輸出者の申告書式、署名要件、保存年限、照会対応(監査対応)を、法務と貿易実務で一体運用にする。

サステナビリティ条項は貿易条件そのものになった

EU側が政治的に強調するのは、持続可能性を「付け足し」ではなく「協定の中核」に置く点です。

欧州委の説明では、パリ協定が協定の「本質的要素」とされ、重大な違反がある、または一方がパリ協定から離脱する場合に、協定を停止し得る枠組みを明記しています。さらに、EU森林破壊防止規則などEU域内法は協定下の輸入にも引き続き適用され、違法伐採対策や森林減少への拘束力あるコミットメント、責任あるサプライチェーン(国際指針の活用)も盛り込まれると整理されています。 (Trade and Economic Security)

食品・動植物検疫(SPS)についても、EUは「基準は交渉対象外」と明言し、予防原則や国境検査、監査などの枠組みは維持されるとしています。 (Trade and Economic Security)

日本企業にとっては、EU向け取引ですでに求められているESG・デューデリジェンスが、メルコスール関連の調達や三国間取引にも広がり得る、という読みになります。関税メリットとコンプライアンスコストを同時に見積もる必要が出ます。

日本企業のチェックポイント どこに影響が出るか

関係し得る企業像は大きく3つです。

  1. メルコスール向けに輸出している日本企業
    EU企業の関税ハンディが縮むと、価格競争が強まります。特に自動車部品、機械、化学品など、現行関税が高い領域ほど影響が出やすい。 (Trade and Economic Security)
  2. EUに生産・販売拠点を持つ日本企業
    EU拠点からメルコスールへ出す場合、原産地要件を満たせれば、関税条件が改善する余地があります。逆に、原産地設計に失敗すると「EUにいるのに優遇が取れない」状態になります。 (データ協議会)
  3. 重要鉱物や一次産品を扱う企業
    EUは重要原材料の供給多角化を戦略目的として明確に掲げ、ブラジルのニオブやアルミ、アルゼンチンのリチウムなどを具体的に挙げています。需給や投資の流れが変わる可能性があるため、長期調達の前提条件(価格、原産地、輸出税等)を見直す材料になります。 (Trade and Economic Security)

今からやるべき実務リスト

発効日が確定してから動くのでは遅い、というのが結論です。着手順としては次が現実的です。

・自社品目の影響棚卸し
メルコスール向けの現行関税、競合(EU企業)比率、値引き余地を洗い出し、価格戦略を更新する。 (Trade and Economic Security)

・原産地設計の先行着手
EU拠点やEUサプライチェーンを使う場合、原産地申告の運用要件(保存、署名、期限、照会対応)まで含めて業務設計する。 (データ協議会)

・優遇停止を織り込んだ契約設計
セーフガードや監視が機動的に動く前提で、価格条項や供給義務、フォースマジュール、関税再交渉条項を整備する。 (欧州理事会)

・ESG・トレーサビリティの再点検
森林破壊規制などEU域内法の適用を前提に、原料調達やサプライヤー管理の証憑を揃える。 (Trade and Economic Security)

・議会プロセスの監視
欧州議会の同意が最後の大関門です。報道だけでなく、EU理事会や欧州委の一次情報で節目を追う体制にしておく。 (欧州理事会)

まとめ

EU理事会の署名承認は、巨大協定が「止まるか進むか」の政治局面を越え、企業実務が問われるフェーズへ移った合図です。
恩恵は、関税だけではなく、原産地設計と書類運用が取れて初めて発生します。さらに、セーフガードやESG規制は、優遇の前提を動かし得る変数として同時に管理すべき対象です。 (欧州理事会)

免責:本稿は公開情報に基づく一般的な整理です。個別取引への適用可否や実務設計は、最新の法令・通達とあわせて専門家確認を推奨します