米国最高裁がIEEPA関税を否定した意味を、ビジネス実務に落とし込む

はじめに

2026年2月20日、米国連邦最高裁は、国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠に大統領が関税を課すことはできないと判断しました。関税コストを織り込んで価格を決め、在庫を積み、契約を結んできた企業にとって、単なる法解釈の話ではありません。調達、物流、販売、財務、法務の意思決定が一斉に影響を受けます。 (最高裁判所)

本記事は、最高裁判決(Learning Resources, Inc. v. Trump)を軸に、どこがポイントだったのか、そして企業が何を急いで確認すべきかを、実務目線で深掘りします。 (最高裁判所)

まず結論

  1. 最高裁は、IEEPAは大統領に関税賦課権限を与えていないと判示しました(6対3)。 (最高裁判所)
  2. 争点は「緊急時なら何でもできるか」ではなく、「課税権という中核を、曖昧な文言で行政に渡したと読めるか」です。最高裁は否定しました。 (最高裁判所)
  3. ただし、関税そのものが終わるわけではありません。判決直後から、別の根拠法(Trade Act 1974のSection 122など)への切り替えが報じられています。 (Reuters)
  4. 既に支払ったIEEPA関税の返金は、最高裁が直接の手順を示しておらず、実務面の不確実性が残ります。 (SCOTUSblog)

IEEPAとは何か

IEEPAは、国外に源泉を持つ「異常かつ重大な脅威」に対し、大統領が国家緊急事態を宣言した場合に、特定の経済取引を規制できる枠組みです(条文上、国家安全保障、外交、経済への脅威を対象とします)。 (法律情報研究所)

中核条文の一つが、50 U.S.C. §1702(a)(1)(B)で、調査、遮断、規制などの手段により、輸入や輸出に関わる取引をコントロールできるとしています。 (最高裁判所)

ここで重要なのは、IEEPAは伝統的に制裁や資産凍結などの「取引規制」の色彩が強く、関税(税として徴収する課徴金)を広範に課す道具としては使われてこなかった点です。最高裁はこの歴史的運用も判断材料にしました。 (最高裁判所)

最高裁判決の概要

事件名と日付

事件名はLearning Resources, Inc. v. Trump(併合事件としてTrump v. V.O.S. Selections, Inc.)で、2026年2月20日に判断が示されました。 (最高裁判所)

背景となった2種類の関税

判決の整理上、最高裁は大きく2系統の関税措置を前提事実として扱っています。 (最高裁判所)

  1. 薬物対策(不法薬物流入)を理由とする関税
    カナダとメキシコからの多くの輸入に25%、中国からの多くの輸入に10%の追加関税を課した、と判決文のサマリーに記載されています。 (最高裁判所)
  2. 貿易赤字を理由とする「相互」関税
    ほぼ全ての貿易相手国からの輸入に少なくとも10%を課し、多数の国がより高い税率の対象となった、とされています。 (最高裁判所)

訴訟の経路

企業側などは、IEEPAは関税を授権しないとして提訴しました。手続面で重要なのは、関税を巡る争いの法廷がどこか、という点です。 (最高裁判所)

最高裁は、関税関連の行政措置は米国国際貿易裁判所(CIT)に専属管轄がある(28 U.S.C. §1581(i))と整理し、ワシントンDCの連邦地裁で提起された事件は管轄欠如として差し戻しを命じました。一方、CITルートの事件については、IEEPAが関税を授権しないという結論を維持しています。 (最高裁判所)

ここは、後述する返金や争訟戦略に直結します。

最高裁はなぜIEEPA関税を否定したのか

判決は、ビジネスに関係する重要ポイントをいくつかの層で示しています。条文解釈の細部より、実務上の意味が大きい骨格に絞って整理します。

論点1 「regulate importation」は課税と同義ではない

最高裁は、IEEPAの条文(調査、遮断、規制などの列挙)に、関税やdutyという語が明示されていないことを重視しました。もし議会が関税という特別な権限を与えるつもりなら、他の関税法で行ってきたように明示するはずだ、という発想です。 (最高裁判所)

さらに、「規制する」という言葉は広いが、通常それが課税権を含むとは理解されない、と述べています。政府側が「regulate」に課税の意味が含まれる用例を示せない点も、判断に影響しています。 (最高裁判所)

企業にとっての翻訳はこうです。
規制の権限と、税を徴収する権限は、財務インパクトの質が違う。最高裁は、関税を「規制の一形態」として飲み込ませる読み方を認めませんでした。 (最高裁判所)

論点2 憲法上の課税権は議会の中核であり、曖昧な委任を嫌う

最高裁は、関税は課税権の一部であり、憲法上その中心は議会にあるという前提から出発しています。政府側も、平時の関税賦課に大統領固有の権限はないと認めた、と判決のサマリーで整理されています。 (最高裁判所)

この前提に立つと、IEEPAの「規制」という言葉だけで、対象国も品目も税率も期間も制限がない関税を可能にするのは、読み込みが重すぎる、という構図になります。 (最高裁判所)

論点3 重大問題(major questions)的な見方は、少数だが無視できない

判決の中で、ロバーツ長官にゴーサッチ、バレット両判事が加わる部分では、重大な経済的・政治的意義を持つ措置には「明確な授権」が必要だという考え方が援用されています。緊急事態法だから例外、外国関係だから例外、という議論は退けられています。 (最高裁判所)

一方で、ケーガン判事らは、重大問題の枠組みを持ち出さなくても通常の条文解釈で足りるという立場をとっています。つまり、多数意見の中でも理由付けが一本化されていません。 (最高裁判所)

ビジネス実務としては、次の2点が示唆です。

  1. 将来の政策でも、曖昧な一般条項から巨額の経済効果を生む措置を導く場合、訴訟リスクが上がる。 (最高裁判所)
  2. ただし、重大問題の枠組みが常に決定打になるかは、裁判所内の意見配置を見ても読み切れない。条文解釈の勝負で潰される局面も増える。 (最高裁判所)

論点4 IEEPAの運用史として、関税は前例が薄い

最高裁は、IEEPA制定以降、関税賦課にこの法律が使われてこなかったことを、重要な状況証拠として挙げています。つまり、半世紀近い運用史の中で、今回のような関税は異例だという評価です。 (最高裁判所)

企業にとっては、規制当局の権限を読む際に、条文だけでなく運用実績もリスク評価に入れるべき、という教訓になります。特に、制度をまたいだ新しい使い方が出てきたときは、短期的に実現しても、司法で巻き戻る可能性があります。 (最高裁判所)

先行するIEEPA関連の最高裁判断は何を教えるか

IEEPAそのもの、またはその前後の緊急経済権限を巡る最高裁判断は過去にもあります。ただし、今回のような関税の是非に直結するものは限られます。ここでは、ビジネス上の誤解が生じやすい2件だけ押さえます。

Dames & Moore v. Regan(1981年)

イラン人質事件を背景に、資産凍結や請求権処理など、行政の対外経済措置が争われた事件です。最高裁は、緊急経済権限と議会の関与関係を踏まえつつ、当該の大統領措置を一定範囲で支持しました。 (法律情報研究所)

今回の2026年判決は、この1981年判決が関税の話ではなく、また大統領の「regulate」の意味を関税まで拡張する根拠にはならない、といった位置づけで扱っています。 (最高裁判所)

企業目線では、IEEPAは万能というより、対象と手段が噛み合うときに強い、という理解が安全です。

Regan v. Wald(1984年)

キューバへの渡航関連取引などを巡る規制が争われた事件です。最高裁は、対外政策上の判断に一定の幅を認め、規制を支持しました。 (法律情報研究所)

ただし、これも関税賦課の直接の先例ではありません。2026年判決が問題にしたのは、取引規制一般ではなく、課税権限を曖昧な文言から導けるか、という別の次元です。 (最高裁判所)

企業実務への影響

ここからは、法理の説明をビジネスのチェック項目に翻訳します。

影響1 IEEPA関税の返金は、可能性はあるが手続は不透明

最高裁は、IEEPA関税が違法だとしても、返金をどう実施するかについて判断の枠組みを示していないと報じられています。 (SCOTUSblog)

判決文でも、返金が大きな実務問題になることが意識されており、口頭弁論で返金プロセスが混乱する可能性が示唆された、という趣旨の言及が確認できます。 (最高裁判所)

また報道では、返金問題の規模が1750億ドル程度に達し得るとの見方も出ています。数字は推計の置き方で上下し得るため、企業としては「金額の正確さ」より「返金論点が経営インパクト級」である点を重視すべきです。 (Reuters)

実務の第一歩は、当社やグループ会社が支払った関税のうち、根拠がIEEPAのものを切り分けることです。関税は同じ税率でも、根拠法が違えば影響範囲が変わります。 (Reuters)

影響2 契約は「誰が関税を負担し、返金を受け取るか」を再点検する局面

関税が変動すると、次の論点が一気に表に出ます。

  1. 価格調整条項(関税転嫁の扱いが明確か)
  2. インコタームズの責任分界(輸入者が誰か)
  3. 返金が発生した場合の受領者(輸入者、買主、どちらが権利を持つか)

特に米国子会社が輸入者(importer of record)になっているケースでは、返金の法的受領者と、社内の実質負担者がずれることがあります。ここを放置すると、社内取引で損益の整合が崩れます。 (最高裁判所)

影響3 供給網の安定化は「関税がなくなる」ではなく「根拠法が変わる」

判決の核心はIEEPAの射程であり、他の関税権限まで止めたわけではありません。実際、判決直後から別の権限への切り替えが報じられています。 (Reuters)

例として、Trade Act of 1974のSection 122(19 U.S.C. §2132)は、国際収支などの問題に対応するため、最大15%の一時的輸入課徴金を最長150日(議会による延長がない限り)課し得ると条文で定めています。 (法律情報研究所)

判決後、トランプ大統領がSection 122を使い、世界一律の関税率を10%から15%へ引き上げたと報じられています。 (Reuters)

企業としては、次のように整理するのが現実的です。

  • IEEPAという即時性の高いツールは、今回の判決で大きく制約された
  • しかし、関税の政策リスク自体は、別の法的土台に移るだけで残り得る
  • したがって、関税リスク管理は、税率の予想ではなく「根拠法別の発動条件と時間軸」を押さえるのが有効

実務チェックリスト

社内で最初に回すべき確認事項を、部門横断で使える形に落とします。

1 関税支払いの棚卸し

  1. 過去12か月から24か月の輸入申告データを抽出
  2. IEEPA根拠の追加関税と、Section 232やSection 301など他根拠の関税を区別
  3. 商品分類(HTSコード)と原産地、適用税率の履歴をセットで残す
    CITの専属管轄が明確化されたため、争訟や返金の議論はこの整理が出発点になります。 (最高裁判所)

2 契約と価格の点検

  1. 価格条項に、関税変更時の再交渉や自動調整の仕組みがあるか
  2. 当社が負担した関税が後日返金された場合の帰属を、取引先とどう扱うか
  3. 長期契約やOEM契約は、関税変動が利益を直撃するため優先度を上げる

3 経営シナリオの更新

シナリオは税率予想ではなく、法的ツール別に作ると運用しやすくなります。

  • シナリオA IEEPA関税が消え、代替関税が発動しない
  • シナリオB Section 122の一時関税が続き、一定期間後に失効または延長議論が起きる
  • シナリオC Section 232やSection 301の調査が進み、対象品目が組み替わる
    Section 122の上限と期間は条文上の制約として明確です。 (法律情報研究所)

4 情報の取り方を変える

今回の件は、裁判所判断が政策を動かし、その直後に別の権限で政策が組み直される、という連鎖を示しました。 (Reuters)

そのため、情報収集は次の組み合わせが堅いです。

  1. 一次情報 最高裁判決本文と合衆国法典の条文
  2. 実務情報 米国税関実務やCIT動向の継続観測
  3. 報道 大統領布告や新調査開始などの即時変化の把握

まとめ

Learning Resources判決は、IEEPAを使った関税賦課に明確なブレーキをかけました。ポイントは、緊急事態かどうかではなく、課税という中核権限を、曖昧な規定から行政が引き出せるのかという線引きです。 (最高裁判所)

一方で、企業実務としては「関税リスクが消えた」と結論づけるのは危険です。判決後すぐに別の法的根拠を用いた関税措置が報じられており、環境は引き続き動きます。 (Reuters)

最優先は、IEEPA起因の関税支払いを切り分け、返金や価格調整の論点が社内外のどこに滞留するかを見える化することです。そこから先は、法的根拠別にシナリオを作ると、現場で回るリスク管理に変わります。 (最高裁判所)

免責事項

本記事は公開情報に基づく一般的な解説であり、特定の取引、企業、事案に対する法律上、税務上または会計上の助言ではありません。具体的な対応(返金請求、訴訟、申告修正、契約改定等)は、最新の法令・通達・当局運用を確認のうえ、米国の通商法務や通関実務に詳しい専門家へご相談ください。

1974年通商法122条(Trade Act of 1974, Section 122)とは

米国の「国際収支(balance of payments)」に関する“緊急のマクロ経済的な状況”に対応するために、大統領が短期間だけ一時的な追加関税(輸入課徴金)や輸入割当(クオータ)を発動できるという条文です。
米国法典では 19 U.S.C. § 2132(Balance-of-payments authority) として整理されています。 (法律情報研究所)


何ができる条文なのか(権限の中身)

1) 発動のトリガー(使える状況)

122条は「fundamental international payments problems(根本的な国際支払問題)」があり、輸入を抑える特別措置が必要なときに発動できる、としています。具体的な目的は次の3つです。 (法律情報研究所)

  • (1) 米国の「大きく深刻な国際収支赤字」に対処する
  • (2) ドルの「差し迫った重大な下落」を防ぐ
  • (3) 国際的な国際収支不均衡の是正に協力する

2) 取り得る措置(関税かクオータ)

大統領が布告(proclaim)できる措置は主に3択です。 (法律情報研究所)

  • 一時的な輸入課徴金(temporary import surcharge)
    • 従価税で最大15%まで(既存関税に“上乗せ”)
  • 輸入割当(クオータ)
  • その両方

※なおクオータは、国際協定上認められる場合に限られる等、追加の条件があります。 (法律情報研究所)

3) 期間の上限(ここが超重要)

最大150日(ただし延長は議会の法律(Act of Congress)が必要)という強い時間制限があります。 (法律情報研究所)

JETROの整理でも「15%以内・150日を限度」と要点がまとめられています。 (ジェトロ)


“使い勝手”を縛る制約(122条の性格)

122条は強い権限に見えますが、実は条文内に「縛り」が多いのが特徴です。

1) 原則は「広く・一律」にかける(品目面)

輸入制限は**品目カバレッジが広く、原則として一律(broad and uniform)**であるべき、とされています。
例外(除外品目)は「国内供給が足りない」「原材料の必要性」「供給混乱の回避」など、米国経済上の必要性に限定され、そして何より **“特定産業を保護する目的でやってはならない”**と明記されています。 (法律情報研究所)

2) 原則は無差別(国別面)だが、例外もある

輸入制限は無差別原則(nondiscriminatory treatment)に沿って適用するのが基本です。 (法律情報研究所)
ただし条文は、目的達成のために「大きい/持続的な国際収支黒字の国」など一部の国だけを対象にし、他国を免除する
余地も置いています。 (法律情報研究所)
(=「完全に国別ができない」わけではないが、少なくとも“好き勝手に国別にいじれる”タイプでもない、という設計です。)

3) 大統領は途中で停止・修正・終了もできる

布告した措置は、大統領が停止・変更・終了できる、とされています。 (法律情報研究所)


トランプ関税における「122条」の意味(2026年2月時点の実例)

「トランプ関税」に関しては、2026年2月20日の米最高裁判断を受けて、122条が“前面に出てきた”のがポイントです。

1) 何が起きたか:IEEPA関税が最高裁で無効 → 122条へ

報道によれば、米最高裁がIEEPA(国際緊急経済権限法)に基づく関税の一部を違法と判断した後、トランプ大統領は1974年通商法122条を根拠に、150日間の一律10%(グローバル)関税に切り替える動きを取りました。 (Reuters)

2) 122条で実際に何をしたか:10%の一時的輸入課徴金(150日)

ホワイトハウスの布告(Proclamation)とファクトシートでは、次が明記されています。 (The White House)

  • 122条を根拠に「fundamental international payments problems(根本的な国際支払問題)」があると認定 (The White House)
  • 2026年2月24日から、150日間10%の従価税を輸入品に上乗せ (The White House)
  • 一部の品目や、USMCA(米・加・墨)条件を満たす物品などは除外される(エネルギー、重要鉱物、医薬品、一定の自動車・航空宇宙、など) (The White House)

3) なぜ122条が“意味を持つ”のか(トランプ関税の戦略上)

ここが実務的に重要です。

  • (A)「速い」:調査手続きなしで、すぐ関税を“乗せられる”
    Reutersは、122条の10%関税が、232条や301条のような調査・手続を待たずに短期で発動できる“つなぎ”になっている、と報じています。 (Reuters)
  • (B)「短い」:150日でいったん切れる(延長には議会が必要)
    つまり、122条は**恒久の関税制度というより“短期の非常手段”**として使われやすい。 (法律情報研究所)
  • (C)「論点が立ちやすい」:本当に“国際支払問題”なのかが争点になる
    一部の研究者・実務家は「変動相場制の下では“fundamental international payments problems”という概念自体が現代では当てはまりにくく、122条で広範関税は無理筋では」という趣旨の批判も出しています。 (国際経済法政策ブログ)
    他方で、ホワイトハウスは、貿易収支や所得収支などを根拠に「国際収支赤字が大きく深刻」と位置付けて正当化しています。 (The White House)
    さらにReutersは、122条の適用は**法的に十分にテストされていない(legally untested)**とも報じています。 (Reuters)
  • (D)「歴史的に“休眠条項”だった」:これまでほぼ使われてこなかった
    近年の解説では、122条は長く使われず(裁判所解釈も蓄積が薄い)という点が繰り返し指摘されています。 (Cato Institute)

補足:122条が言う「国際収支赤字」と、ニュースで言う「貿易赤字」は同じ?

同じではありません。
国際収支(balance of payments)は、モノの貿易だけでなく、サービス収支、投資所得(第一次所得)、移転(第二次所得)なども含むより広い概念です。

実際、ホワイトハウスのファクトシートも「経常収支(current account)=財・サービス、第一次所得、第二次所得の合計」という説明を置いています。 (The White House)


まとめ(トランプ関税での“読みどころ”)

  • 122条は「国際収支・国際支払問題」に限定された非常口で、
    最大15%・最大150日の一時的な輸入課徴金(追加関税)などを大統領が発動できる。 (法律情報研究所)
  • 2026年2月の局面では、最高裁判断で別根拠(IEEPA)に逆風が吹く中、短期の代替根拠として122条が使われた(10%・150日)。 (Reuters)
  • ただし、期間制限・目的要件(国際支払問題)・“広く一律”という設計のため、
    **恒久関税の主戦力というより「つなぎ」+「交渉・調査(301/232等)へ橋渡し」**になりやすい。 (法律情報研究所)

米国連邦最高裁におけるトランプ相互関税違憲判決の深層と想定される各国の戦略的対応

1. 序論:通商政策の歴史的転換点と司法による権力制限

2026年2月20日、米国連邦最高裁判所は、ドナルド・トランプ大統領が国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠として発動した広範な「相互関税(Reciprocal Tariffs)」および特定の国を対象とした懲罰的関税について、大統領の権限を著しく逸脱する違憲な措置であるとの歴史的判決を下した。6対3の多数意見において、ジョン・ロバーツ最高裁長官は「憲法の起草者は、課税権のいかなる部分も行政府に付与していない」と判示し、平時において関税を設定し変更する権限は、合衆国憲法第1条第8項に基づき米国議会にのみ専属するという憲法上の基本原則を再確認した

この判決は、トランプ政権が第2期において最も強力な外交的・経済的武器として行使してきた「関税による威嚇と取引」の法的基盤を根底から覆すものであった。特に、カナダ、メキシコ、中国からの麻薬(フェンタニル)流入を理由とした関税や、世界各国のほぼすべての貿易パートナーに課された「解放記念日(Liberation Day)」関税など、IEEPAを根拠とする一連の措置は即座に無効化された

しかし、トランプ大統領は直ちにこの判決を「国家の恥」であり「憲法への裏切り」であると激しく非難し、司法の決定に屈しない姿勢を鮮明にした。大統領は最高裁の判決からわずか数時間後に、代替的な法的根拠である1974年通商法第122条を援用し、世界各国に対して一律10%の「グローバル関税」を即時発動する大統領令に署名する構えを見せた

本レポートでは、この違憲判決が米国の国内経済および法秩序に与える衝撃を解き明かすとともに、世界の通商秩序、サプライチェーン、そして各国政府・企業の戦略にどのような波及効果をもたらすかを網羅的に分析する。特に、メキシコおよびカナダといった近隣諸国、日本、中国、韓国、欧州連合(EU)、およびその他の主要国が、この判決とそれに続くトランプ政権の「代替措置(プランB)」に対してどのような反応を示し、いかなる戦略的対応に動くかを深く考察する。

2. 米連邦最高裁判決の法理的構造と経済的波及効果

2.1 IEEPAの限界と三権分立の再確認

今回の訴訟(Learning Resources, Inc. v. Trump および Trump v. V.O.S. Selections)における最大の争点は、1977年に制定された国際緊急経済権限法(IEEPA)が大統領に関税を課す権限を与えているか否かであった。大統領府側は、IEEPAが大統領に国家緊急事態において国際取引を「規制(regulate)」する権限を与えており、この「規制」には関税の賦課も含まれると主張していた

しかし、連邦巡回区控訴裁判所の判決を支持した最高裁の多数意見は、この解釈を明確に退けた。裁判所は、IEEPAの条文には「関税(tariffs)」や「関税義務(duties)」への言及が一切存在せず、議会が行政府に関税権限を委譲する意図があったならば、他の通商法規と同様に明示的に記載したはずであると論じた。ロバーツ長官は、「合衆国は世界中のすべての国と戦争状態にあるわけではない」と指摘し、無制限の金額と期間にわたる関税政策の決定権を大統領に白紙委任するような法解釈は、議会の課税権を侵害するものであると断じた

2.2 巨額の関税還付を巡る経済的衝撃と国内の政治的対立

この判決がもたらす最大の経済的副産物は、過去に違法に徴収された関税の還付(Refund)問題である。ペン・ウォートン予算モデルの試算によれば、IEEPAに基づく関税は米国の総関税収入の約半分を占める規模にまで膨張しており、その総額は1,300億ドルから1,750億ドルに上ると推定されている

最高裁は関税の違憲性を認めたものの、具体的な還付手続きやその可否については直接の判断を下さず、国際貿易裁判所(CIT)に差し戻した。反対意見を執筆したブレット・カバノー判事も指摘する通り、米国政府は輸入業者に対して数十億ドルから数千億ドル規模の資金を返還する義務を負う可能性があり、そのプロセスは極めて複雑な訴訟合戦を引き起こす。コストコ(Costco)などの大手小売業者をはじめとする30万社以上の企業が既に還付を求める法的手続きを進めており、これらの企業は株主に対する受託者責任の観点からも、強硬に還付を請求することが予想される

この還付問題は、米国の国内政治においても新たな火種となっている。カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は、イェール大学の調査で関税により平均的な家庭が昨年1,751ドルを失ったというデータを引用し、トランプ大統領に対して「利子をつけて即座に返金せよ」と要求した。さらに、イリノイ州のJ.B.プリツカー知事に至っては、州内の511万世帯が負担した関税コストとして総額86億8000万ドルの「請求書(未払い・滞納と明記)」をトランプ大統領宛に送付するなどの抗議行動に出ている。民主党のチャック・シューマー上院院内総務やキャサリン・クラーク下院議員らも、この判決を「米国の消費者と勤労者家族の勝利」と位置づけ、大統領の権力乱用を牽制している

以下の表は、IEEPA関税の還付がもたらす経済的影響の推定構造を示している。

経済指標・項目推定規模・影響根拠・メカニズム
IEEPA関税の徴収総額約1,300億ドル 〜 1,750億ドル米国関税収入の約60%(2025年時点)を占める。関税の違法化により、理論上は全額が還付対象となる。
消費者負担の増加1世帯あたり平均1,751ドルイェール大学の調査に基づく。企業が関税コストを価格転嫁した結果、日用品や食料品の価格高騰を招いた。
企業の還付訴訟30万社以上が対象輸入業者は通常、清算から180日以内に不服を申し立てる権利を持つ。コストコや日系企業が提訴済み。
米国債への影響利回り上昇の圧力巨額の税収減と還付による財政負担の増加が懸念され、短期的には国債利回りの上昇圧力となる。

2.3 代替関税措置(プランB):通商法第122条への移行とその限界

IEEPAの無効化を受けて、トランプ政権は即座に「プランB」へと移行した。大統領は1974年通商法第122条(Section 122)に基づき、世界各国に対して一律10%の追加関税を課す大統領令に署名すると発表した。カバノー判事が反対意見で列挙したように、大統領には他にも1962年通商拡大法第232条(国家安全保障)、1974年通商法第301条(不公正貿易)、1930年関税法第338条など、議会から委譲された強力な通商権限が残されている

しかし、通商専門家のサイモン・レスターらが分析するように、第122条の行使には法的な制約が存在する。同条項は、米国の「根本的な国際収支問題(fundamental international payments problem)」や深刻な貿易赤字に対処するための時限的措置として設計されており、最大15%の関税を150日間のみ課すことが許されている。150日を超えて関税を維持するには議会の承認が必要となる。また、この措置は特定の国を狙い撃ちにするのではなく、全貿易パートナーに一律に適用されなければならないという制約がある

この「150日間の時限措置」は、グローバル経済に新たな不確実性をもたらす。2026年2月20日の発動から150日後となると、同年7月下旬に「関税の崖(Tariff Cliff)」が訪れる計算となる。同年11月に中間選挙を控える米国議会が、インフレ再燃の元凶となり得る関税の延長をすんなりと承認するかは不透明である。各国政府および企業は、この期限を睨みながら、米国との水面下の交渉を加速させることになる。

3. 各国の対応と戦略的ダイナミクス

違憲判決という司法の介入によって米国の通商政策の手法が強制的に変更された結果、各国の対応は地域ごとの既存の通商条約や抱えている産業構造によって大きく異なる。各国は、目前の「相互関税の撤廃」という安堵と、迫り来る「第122条等による代替関税」という新たな脅威の狭間で、極めて高度な戦略的綱引きを強いられている。

3.1 近隣諸国(メキシコ・カナダ)とUSMCAの存亡の危機

米国と経済的に最も密接に結びつき、北米サプライチェーンの中核を成すカナダとメキシコにとって、今回の判決は「一時的な救済」であると同時に「より破壊的な圧力の予兆」を意味している。

両国はこれまで、トランプ大統領から「麻薬(フェンタニル)や不法移民の流入を阻止していない」という理由で、IEEPAに基づく最大35%から50%の懲罰的関税の標的とされてきた。カナダのドミニク・ルブラン国際貿易相が「関税が不当であるというカナダの立場を裏付けるものだ」と歓迎したように、このフェンタニル関税の法的根拠が消滅したことは、両国の輸出産業にとって朗報であった。

しかし、両国は手放しで喜んでいるわけではない。カナダ商工会議所のキャンディス・ラング会頭は、「この判決は米国の貿易政策のリセットを意味するものではない。カナダは、米国が貿易圧力を再主張するために用いる、より広範で破壊的な影響をもたらす新しい、より鈍重なメカニズム(blunter mechanisms)に備えるべきだ」と警告している。実際に、カナダの自動車労働組合(Unifor)のラナ・ペイン委員長も指摘するように、鉄鋼、アルミニウム、および自動車産業に対する通商拡大法232条に基づく関税は最高裁判決の影響を受けず、依然として有効なままである

ここで最も注視すべきは、2026年7月1日に予定されている「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」の第1回合同見直し(Joint Review)である。USMCAの第34.7条(サンセット条項)に基づくこの見直しプロセスにおいて、3カ国が合意しなければ協定の存続期間は延長されない。 IEEPA関税が違憲とされたことで、米国はUSMCA再交渉のテーブルにおいて「フェンタニル関税の脅し」という強力なカードを失い、メキシコとカナダの交渉力が相対的に強化されたと分析されている。しかし、トランプ政権はこれを補うために、代替手段である第122条関税や第232条関税の適用除外をチラつかせながら、「痛みを伴う延長(Painful Extension)」戦略に出ることが確実視される。メキシコのマルセロ・エブラルド経済相が「どのように終わるか分からない。メキシコの場合、関税措置の一部しかIEEPAに関連しておらず、他の措置はそうではないからだ」と語る通り、両国は複雑に絡み合う法規定の網の目の中で、デジタル関税、酪農市場、中国製EVの迂回輸出防止など、多岐にわたる譲歩を迫られることになる

3.2 日本:サプライチェーン再編の加速と巨額還付への期待

日本の対応は、政府レベルでの冷静な状況分析と、民間企業による積極的な法的攻勢という「二段構え」の様相を呈している。 2026年2月21日時点において、日本政府(経済産業省や外務省など)から最高裁判決に直接言及した公式な声明は出されていないが、水面下では米国による「第122条に基づく10%のグローバル関税」が日本の自動車・機械・電子部品の対米輸出に与える影響の算定を急いでいると推測される

民間レベルでは、日本企業はこれまでトランプ政権の相互関税によってサプライチェーンに甚大なコスト増を強いられてきた。これに対し、トヨタ通商、住友化学、横浜ゴム、ウシオ電機などの日系大手企業は、既に米国際貿易裁判所(CIT)に提訴を行っており、違憲判決が出た場合の関税還付を求めていた。今回の最高裁判決はこれらの企業にとって完全な追い風となり、過去に納付した関税が還付され、企業収益を直接的に押し上げる可能性が高い。このニュースを受け、東京市場やニューヨーク市場でも、対米輸出企業の利益率改善を見込む動きが広がり、ダウ工業株30種平均は230ドル高を記録、AmazonやAppleといった多国籍企業の株も買われた

しかし、中長期的な戦略的インプリケーションとして、日本は極めて繊細な舵取りを迫られる。大西洋評議会のアナリストが指摘するように、日本やEUのような主要な貿易パートナーは、これまでにトランプ政権との間で結んだ既存の貿易合意を「維持するインセンティブが働く」。合意を破棄すれば、トランプ政権が第232条(国家安全保障)というさらに厄介な手段を用いて、日本の基幹産業である自動車や同部品に対して高関税を課す報復に出るリスクがあるからだ。 例えば、ソフトバンクグループが主導し、日立、東芝、三菱電機が関心を示すオハイオ州の330億ドル規模の天然ガス発電所建設プロジェクトなど、日本企業は米国での大規模なインフラ投資を進めている。日本政府および経済界は、「相互関税の無効化」を歓迎しつつも、トランプ大統領を刺激しないよう公式な非難を避け、実質的なサプライチェーンの現地化(オンショアリング)と米国への直接投資をさらに加速させることで、いかなる関税が発動されても影響を最小化するヘッジ戦略を取り続けると分析される。

3.3 中国:通商法301条への回帰と米中デカップリングの行方

中国にとって今回の違憲判決は、経済的な実利という点では限定的な影響にとどまる。なぜなら、トランプ政権が対中関税の主たる武器として用いているのは、今回違憲とされたIEEPAに基づく関税ではなく、1974年通商法第301条(知的財産権侵害や不公正貿易を理由とする制裁)だからである

判決前の段階から、中国商務部(MOFCOM)の何亜東(He Yadong)報道官は、米国の「相互関税」構想に対し、「WTO規則に違反する典型的な一国主義・保護主義的行動であり、80年にわたる多角的貿易体制の利益の均衡を無視するものだ」と強く非難していた。今回の最高裁の判断は、結果として米国の国内法廷が中国の主張の正当性を一部裏付けた形となった。

しかし、米中関係における「関税の応酬」は構造的なものであり、最高裁の判決で解消される性質のものではない。直近の米中協議(クアラルンプール協議など)において、米国がフェンタニル対応を理由とした10%の追加関税の解除やIEEPA相互関税の凍結を約束する代わりに、中国も報復関税の解除や「関連企業規則(Affiliates Rule)」に基づく輸出制限の凍結を行うという、複雑な取引が形成されていた。IEEPA関税が違憲となったことで、米国は中国に対する交渉カードの1つを喪失したが、トランプ大統領は第122条に基づく一律10%関税を適用することで、即座にその穴を埋めようとしている

中国側の対応としては、表向きは「米国の司法制度がトランプ政権の不法な権力濫用を認めた」としてこれを利用しつつ、実務レベルでは通商法第301条による関税の継続や、半導体・AI分野における輸出規制・投資規制の強化に備える動きを崩さない。米国による「関税の法的根拠のすげ替え」が続く限り、中国の根本的な対米デカップリング戦略や、自国産業の保護政策に変更はないと推測される。

3.4 韓国:天文学的投資合意の前提崩壊と国内政治的ジレンマ

今回の判決によって、最も劇的かつ複雑な戦略的ジレンマに直面しているのが韓国である。この事象は、関税という経済ツールが同盟国の国内政治にいかに深く干渉するかを示す典型的な事例となっている。

韓国はこれまで、米国の通商圧力の矢面に立たされてきた。トランプ政権は、自動車、木材、医薬品などに対して25%の相互関税を課すという強力な脅しを用いて韓国に譲歩を迫った。これに対し韓国政府は、巨額の対米投資(総額3,500億ドル規模、うち2,000億ドルは現金分割、1,500億ドルは造船協力)を行うという歴史的な譲歩を示すことで、関税を25%から15%へと引き下げる覚書(MOU)に合意していた。最近でも、韓国国会での関連法案(戦略的投資管理に関する特別法)の承認遅れを理由に、トランプ大統領がSNSで「再び関税を25%に引き上げる」と脅迫し、韓国産業通商資源部(MOTIE)やサムスン、SK、現代自動車、セルトリオンなどの財界トップが緊急対応に追われたばかりであった

最高裁がIEEPA関税を違憲としたことで、トランプ政権が韓国に突きつけていた「25%の関税」という脅威の法的根拠が完全に消滅した。法理論上、韓国製品に対するこれらのIEEPA関税は0%に引き下げられなければならない。これは韓国の輸出企業にとって年間数百億ドルのコスト削減を意味する朗報である一方で、韓国政府にとっては頭痛の種となる。なぜなら、「違法な関税を回避する」という唯一最大の目的のために米国に約束した3,500億ドルという天文学的な投資の「見返り」が、判決によって自然消滅してしまったからだ。

韓国の戦略的対応は極めて難しい。国内の強硬派からは「米国の関税の脅しは違法だったのだから、不当に結ばされた投資合意も破棄・再交渉すべきだ」という強烈な政治的圧力が李在明政権に対してかかることが確実である。しかし、もし韓国が合意を破棄すれば、トランプ大統領は合法な権限である通商拡大法第232条(国家安全保障)を乱用して、韓国の生命線である自動車産業や半導体に対して壊滅的な関税を課す報復に出る危険性が高い。 したがって、韓国の今後の対応としては、国内世論の反発をなだめつつも、表向きは既存の対米投資計画(特に造船や原子力潜水艦関連など、韓国側にも安全保障上の利益がある分野)を維持し、米国政府に対しては「代替関税(第122条など)からの完全免除」を引き換え条件として要求する、再度のパッケージ交渉を水面下で模索することになると分析される。

3.5 欧州連合(EU):安堵と新たなる警戒、防衛策の構築

欧州連合(EU)の反応は、制度的安定性を重視する立場からの安堵と、予測不可能なトランプ政権に対する強い警戒感が入り交じったものである。

EUは、昨年夏の合意により米国向け輸出の大半に対して15%の相互関税を受け入れていた。この合意は、欧州のビジネス界(特にドイツの自動車・機械産業)に一定の確実性をもたらし、ユーロ圏21カ国が景気後退を回避する一助となっていた。しかし、この15%関税もIEEPAを根拠としていたため、今回の判決によって違法とされた。 欧州委員会の通商担当報道官オロフ・ギルは、「判決を留意し、慎重に分析している」と述べるとともに、「大西洋両岸のビジネスは安定性と予測可能性に依存している」と強調し、関税の引き下げに向けた協力を米国に呼びかけた。欧州議会国際貿易委員会のベルント・ランゲ委員長は、この判決が自身の「違憲である」という見解と完全に一致すると評価しつつも、米国が「プランB(異なる法的根拠による関税再導入)」を打ち出してくることを正しく予測・警戒していた。また、緑の党のアンナ・カヴァッツィーニ欧州議会議員は、判決の結果が明らかになるまで現在のEU・米国貿易協定の批准を「一時停止(pause)」すべきだと主張している

トランプ大統領が即座に第122条に基づく10%のグローバル関税を発表したことで、EUの懸念は現実となった。ドイツ商工会議所が「不確実性は依然として高い。米政権は貿易制限のための他の手段を持っており、ドイツ企業はそれに備えなければならない」と警告している通りである。EUは今後、最高裁判決によって宙に浮いた「15%キャップ合意」の再解釈を進め、トランプ政権の新たな10%関税がこれを上書きしないよう通商交渉を加速させるとともに、デジタルサービス税に対する米国の報復への防衛策を講じることとなる。

3.6 その他の主要国(英国、インド、ブラジル)のダイナミクス

米国による関税措置の法的根拠の変更は、その他の主要国に対しても国ごとに全く異なるインセンティブと戦略的反応を引き起こしている。

英国の特権維持戦略 英国政府の反応は特異である。英国はこれまで米国との間で相互関税の負担を10%という「世界で最も低いレベル」に抑え込む特権的な取り決めを結んでいた。最高裁判決を受け、英首相官邸(ダウニング街10番地)や政府報道官は「いかなる状況でも米国との特権的な貿易関係は続くと期待している」と述べ、トランプ政権との良好な政治的関係をテコにして、新たな122条関税の下でも特別扱いを獲得しようと動いている。しかし、英国商工会議所のウィリアム・ベイン通商政策責任者は「大統領の権限は明確になったが、ビジネスに対する濁った水(murky waters)はほとんど解消されていない」と冷ややかな見方を示している

インドの強気な再交渉 トランプ大統領は、ロシア産石油の輸入などを理由にインドに対して最大50%の懲罰的関税を課していたが、最近の二国間交渉により18%への引き下げで暫定合意していた。違憲判決により、インドの輸出業者はIEEPA関税の足枷から解放されることとなった。興味深いことに、トランプ大統領は違憲判決を受けた直後の記者会見で「インドの取引は有効だ(The India deal is on)」と公言し、合意の維持を強調した。インド政府は、今回の判決を奇貨として、米国との本格的な自由貿易協定や特恵貿易の再交渉において、より強気な姿勢で臨むことが可能となった

ブラジルの「競争力回復」という逆説 ブラジルは、他国とは異なる視点からこの状況を歓迎している。同国のジェラルド・アルキミン副大統領兼開発商工相は、最高裁判決とそれに続く米国の10%グローバル関税への移行によって、米国との通商交渉は「強化される」と述べた。その理由は、これまでブラジルは他国にない40%という著しく高い関税の標的にされていたため、トランプ政権が「すべての国に一律10%」という代替関税(第122条)に切り替えることは、相対的にブラジルの競争力を劇的に回復させ、プレイングフィールドを平坦にする(Leveling the playing field)効果があるからだ。これは、一律のグローバル関税が及ぼす影響が、既存の関税率の不均衡によって国ごとに全く逆の作用をもたらすという重要な事実を示している。

以下の表は、主要国・地域の戦略的立場と今後の対応方針をまとめたものである。

国・地域判決前の主な関税圧力(IEEPA等)判決と代替措置(122条等)に対する戦略的対応方針
メキシコ・カナダ最大35%〜50%(フェンタニル対策等)IEEPA無効化を歓迎しつつ、2026年7月のUSMCA見直しに向け、232条関税を回避するための強靭な交渉体制を構築。
日本多岐にわたる相互関税還付訴訟による企業収益の回復を期待。政府は静観しつつ、米国への直接投資とサプライチェーンの現地化を加速。
中国相互関税および301条関税301条関税が残存するため影響は限定的。不確実性の高まりを理由に、独自のサプライチェーン構築と対米デカップリングを推進。
韓国25%の関税脅迫と3,500億ドルの投資合意関税の法的根拠が消滅したことで投資合意の前提が崩壊。国内政治の反発を抑えつつ、代替関税の免除を求めて再交渉を模索。
EU15%上限の相互関税合意既存の合意を再解釈し、10%の新関税が上乗せされないよう交渉。同時にWTO規則に基づく報復措置の準備を進める。

4. 第2次・第3次波及効果(マクロ・システム的インプリケーション)

今回の違憲判決とそれに対する各国の反応、そしてトランプ大統領の代替措置の応酬を総合すると、グローバル経済には表層的なニュースを超えた深遠な「第2次・第3次波及効果」が生じることが明らかである。

4.1 「関税の崖(Tariff Cliff)」:150日後のコンバージェンス・ポイント

最大のシステム的影響は、カレンダー上の戦略的結節点が浮き彫りになったことである。トランプ大統領が新たに依拠する通商法第122条に基づく10%関税は、法律上「最長150日間」しか有効ではない。2026年2月20日から150日後となると、2026年7月中旬から下旬に期限を迎える。

特筆すべきは、このタイミングが前述の「USMCAの第1回合同見直し期限(2026年7月1日)」とピタリと重なることである。米国は、この2026年7月というタイミングを「メガ・ネゴシエーション(包括的再交渉)」の締め切りとして設定する可能性が高い。議会に対しては122条関税の延長(または法改正)を迫り、メキシコ・カナダに対してはUSMCAの再承認と引き換えに過酷な条件を飲ませ、欧州や日本に対しても新たな枠組み合意を強要する、という複合的な通商圧力をかける戦略に出ると予想される。各国政府の通商当局は、この「7月の崖」に向けて、あらゆる外交リソースを集中させる必要がある。

4.2 合意の法的安定性の崩壊と「交渉の逆転現象」

もう一つの重要な波及効果は、米国が結ぶ「通商合意」の価値低下と、それに伴う交渉態度の硬化である。 トランプ政権は「関税を課す」という脅しによって、韓国から3,500億ドルの投資を引き出し、EUや英国から自発的な輸出制限を引き出した。しかし、その関税の法的根拠が違憲とされたことで、「脅しの手段」が一時的にせよ消滅した。 カバノー判事が懸念したように、これは既存の貿易協定の前提を覆すものである。各国は「トランプ大統領の要求に従って合意を結んでも、米国の裁判所がそれを違法とするならば、最初から過度な要求を拒絶して法廷闘争や議会ロビー活動に持ち込んだ方が有利ではないか」という学習効果を得た。これにより、トランプ政権の「ディール(取引)」戦略の威信は大きく傷つき、米国との新たな通商交渉において、各国の態度はこれまで以上に強硬かつ慎重なものとなる「交渉の逆転現象」が起きることが予想される

5. 結論と中長期的な展望

2026年2月の連邦最高裁による「トランプ相互関税違憲判決」は、単なる国内の権力闘争や行政訴訟の枠を超え、世界の通商秩序とサプライチェーンの前提を劇的に書き換えるマクロ経済的転換点となった。

この判決により、大統領が「国家緊急事態」というマジックワードを用いて、議会の承認なしに恣意的かつ無制限な関税を世界中に課すという手法(IEEPAの乱用)は完全に封じられた。これは法治主義と三権分立にとっての歴史的承認であり、企業のコスト構造に透明性をもたらす一歩である。 しかし、トランプ大統領がこの判決に服従し、従来の自由貿易路線に回帰することは決してない。大統領は直ちに1974年通商法第122条(国際収支問題)という代替手段に移行し、さらに1962年通商拡大法第232条(国家安全保障)や1974年通商法第301条(不公正貿易)といった、より手続きが厄介で市場への影響が局所的かつ破壊的な法律へと関税政策の軸足を移した

各国の対応は、この「法的な看板の架け替え」の裏にある実質的なリスクを冷静に計算したものとなる。

  • 日本・欧州は、巨額の関税還付という経済的果実を民間企業が回収するのを支援しつつ、7月の「150日ルール切れ」を見据えた新たな合意形成に奔走する。
  • カナダ・メキシコは、USMCA見直し交渉において、IEEPA関税の脅しが消えた有利さを生かしつつも、第232条という別の武器をちらつかせる米国との神経戦に直面する。
  • 韓国は、脅しが消滅した中で、既に約束してしまった莫大な対米投資の国内的妥当性をどう説明し、再交渉をいかに進めるかという政治的難局を処理しなければならない。
  • 中国は、関税の根拠がすげ替えられただけで実態が変わらない米国に対し、長期的なデカップリングと独自経済圏の構築を継続する。

総じて、世界各国は「トランプの予測不可能な関税にただ怯える段階」から、「米国の国内法と司法制度の限界を熟知し、大統領の権限行使の期限(150日)や法的な隙を突いて戦略的交渉を行う段階」へと移行したと言える。グローバル企業および各国の通商担当者は、関税という表面的な数字の上下に一喜一憂するのではなく、米国の通商法規の適用条件、連邦裁判所の動向、そして米国議会の動静を緻密に分析し、多層的なリスクヘッジと供給網の再構築を迅速に進めることが不可欠となる。

米最高裁で違法とされたトランプIEEPA関税:企業への影響と日本企業が今すぐ取るべき対応

2026年2月20日、米連邦最高裁判所は、国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠に大統領が広範な関税を課した措置について、IEEPAは関税賦課を認めないとして無効とする判断を示しました(6対3)。(アメリカ合衆国最高裁判所)
ただし、これは「米国の関税が全てなくなる」話ではありません。違法とされたのは、あくまでIEEPAという根拠法の使い方であり、政権は別の法律に基づく代替関税へ直ちに切り替える動きを見せています。(Reuters)

この記事では、日本企業のビジネスマン向けに、何が変わったのか、企業にどう響くのか、そして実務で何を優先して動くべきかを整理します。


1. まず押さえるべき結論

今回の結論を、実務目線で短く言うと次の通りです。

  1. 違法とされたのは、IEEPAを根拠にした関税措置(いわゆる相互関税など)です。(アメリカ合衆国最高裁判所)
  2. しかし政権は、1974年通商法122条に基づく一律10%の「グローバル関税」を150日間課す方針を表明しました。既存関税に上乗せされる建て付けです。(Reuters)
  3. 既に支払ったIEEPA関税の還付は、自動で一斉に返るとは限らず、手続きと争点が残ります(規模は1750億ドル超が返還対象になり得るとの推計もあります)。(Reuters)
  4. 日本企業にとっての焦点は、関税コストの再計算、契約上の負担者と還付の帰属、そして通関データにもとづく返金権利の確保です。(Reuters)

2. 何が「違法」になったのか:判決の要点

2-1. 対象となった関税は何か

最高裁の事件概要(判決文の要旨部分)では、IEEPAを根拠に大統領が次のような関税を課した経緯が示されています。(アメリカ合衆国最高裁判所)

  • 違法薬物の流入への対応を理由に、カナダ・メキシコからの輸入の多くに25%、中国からの輸入の多くに10%の追加関税
  • 貿易赤字などを理由に、ほぼ全ての貿易相手国からの輸入に対し最低10%の関税(相互関税の枠組み)

つまり、特定国だけでなく、広範囲の輸入に影響する枠組みが争点でした。(アメリカ合衆国最高裁判所)

2-2. 最高裁の結論は何か

最高裁は、IEEPAの「輸入を規制する」といった文言が、関税を課す権限まで含むものではない、という整理で、IEEPAに基づく関税賦課を否定しました。(アメリカ合衆国最高裁判所)
また、判断理由の一部では、経済的・政治的に重大な措置を行政が行うには、議会による明確な授権が必要だという考え方にも触れています。(アメリカ合衆国最高裁判所)

ポイントは、関税そのものを否定したのではなく、根拠法の選択が違ったという点です。実務としては、関税リスクが消えるのではなく、根拠法が差し替わることで、ルールと期限と手続きが変わると理解するのが安全です。(Reuters)


3. これから何が起きるか:代替関税と不確実性

3-1. 政権はSection 122で一律10%を150日間

報道によれば、判決後、政権は1974年通商法122条に基づく一律10%の関税を150日間課す方針を表明し、発効は数日以内とされています。(Reuters)
122条(19 U.S.C. 2132)は、国際収支上の深刻な問題などに対応するため、最長150日(議会延長がない場合)・上限15%の追加関税を可能にする条文です。(法律情報研究所)

ここで重要なのは、122条の関税は「既存関税に上乗せ」される設計である点です。つまり、IEEPA関税が止まっても、別の上乗せが来るため、輸入コストが自動的に大きく下がるとは限りません。(Reuters)

3-2. 追加調査で次の関税が来る可能性

政権は、122条の期間中に、別の法的枠組みによる関税強化に向けた調査を進める意向も示しています(例:不公正貿易慣行を根拠とする調査)。(Reuters)
つまり、当面の10%は暫定で、その後に国別・品目別でより高い関税に移行するリスクが残ります。(Reuters)


4. 変化を一枚で整理:企業が見るべき制度別の違い

以下は、今回の判決を受けて「実務上どこが変わるか」を制度別にまとめた表です。(アメリカ合衆国最高裁判所)

区分根拠法何が起きたか企業へのポイント
IEEPA関税(相互関税など)IEEPA最高裁が権限を否定し、IEEPAを根拠にした関税は無効これまでの負担が減る可能性はあるが、既払分の還付は別問題
代替の一律関税1974年通商法122条(19 U.S.C. 2132)一律10%を150日間、既存関税に上乗せする方針短期のコスト増と、150日後の再変更リスクが高い
その他の関税手段例:国家安全保障、通商法上の不公正対応など判決の対象外。政権は別法による関税を示唆産業別・国別の追加関税が続く前提で監視が必要

5. 企業への影響:日本企業が直面する4つの現実

5-1. 利益と価格:関税コストが短期で動く

今回の局面は、関税の有無よりも「税率体系の入れ替わり」によって、見積もりと価格転嫁が難しくなる点が痛いところです。(Reuters)

日本企業が対米で影響を受けやすいのは、次のような場面です。

  • 米国向けの販売価格が年次契約で固定されており、関税増を販売価格に反映しにくい
  • 原価計算が四半期で固まっており、関税変更が期中に来ると採算が崩れる
  • 関税の負担者が契約上あいまいで、取引先との精算交渉が長引く

5-2. キャッシュフロー:関税は先に払って、還付は後ろにずれる

米国輸入では、輸入時に納付する関税は推定として扱われ、後に清算で確定し、差額が徴収または還付される仕組みです。(ジェトロ)
このため、企業から見ると「先にキャッシュアウト、戻るとしても後」が基本構造になります。

さらに今回は、既払分の還付が争点化しやすく、すぐに自動還付されるとは限りません。(Reuters)

5-3. 還付の帰属:Importer of Record問題が火種になる

還付をめぐって特に揉めやすいのが、「誰が還付請求できるのか」という点です。米国の輸入実務では、還付を請求できる主体が輸入者(Importer of Record)に紐づくことが多く、流通や小売など、関税コストを事実上負担していても、輸入者でないと還付を取りに行けないリスクが指摘されています。(Reuters)

日本企業の典型例としては、次の構図が起こり得ます。

  • 日本本社は輸出者
  • 米国の取引先または米国子会社がImporter of Recordとして輸入申告
  • 関税コストは販売条件や値引きで実質的に日本側も負担
  • しかし還付は米国側のImporter of Recordに入る可能性が高い
  • 結果として、契約に基づく再精算交渉が発生する

5-4. 紛争リスク:契約に「関税変更」「還付の扱い」がないと揉める

還付が見込まれる局面では、取引先から「過去に関税分を値引きしたのだから、還付が出たら戻してほしい」と言われることがあります。逆に、米国側から「今後は関税分の値上げが必要だ」と言われることもあります。(Reuters)

勝ち筋は、法解釈ではなく契約と証憑です。関税条項が曖昧なほど、交渉コストと関係悪化のリスクが増えます。


6. 日本企業が今すぐ取るべき対応:実務チェックリスト

ここからは、動ける順に並べます。できるだけ社内で着手しやすい形にしました。

6-1. まず48時間でやる:関税エクスポージャーの棚卸し

  1. 取引別に、米国側のImporter of Recordが誰かを確定する
    • 自社の米国子会社か、顧客か、商社か、物流会社か
  2. 製品ごとに、米国の税番(HTSUS)と原産国を再確認する
    • 追加関税は税番と原産国で適用が変わることが多いため、ここが土台になります
  3. 2025年以降の輸入申告データを集める
    • Entry番号、申告日、納付した追加関税の種類、通関業者、ACE上の記録など

6-2. 返金を取りこぼさない:還付権利の確保と期限管理

還付のルートは案件により異なりますが、一般論としては「清算」後に異議申立て(Protest)を行う期限管理が重要です。(ジェトロ)

  • 重要論点1:清算済みか、未清算かを区別する
    • 未清算なら、訂正や手当てが可能な場合があります
    • 清算済みなら、異議申立ての期限が走ります
  • 重要論点2:異議申立ては180日が基本
    • 米国法上、清算日から180日以内にProtestを提出する枠組みが示されています。(Congress.gov)
  • 重要論点3:CBPの再清算や審査にも時間軸がある
    • 自主的再清算が90日以内など、別のタイムリミットも論点になります。(Congress.gov)

実務としては、米国の通関業者、米国弁護士と連携し、「どのエントリーを、いつまでに、どの手続きで」動かすかを案件管理表に落とすのが最も効果的です。(Congress.gov)

6-3. 取引先と揉めない:契約と精算ルールを先に作る

次の論点は、還付より先に合意しておくと後が楽になります。

  • 関税負担者の定義
    • インコタームズがDDPかどうかだけでは足りません
    • 「追加関税」「将来の変更分」をどちらが負担するかを明文化
  • 還付が発生した場合の取り扱い
    • 還付は誰が請求し、誰が受け取り、誰に配分するのか
    • 値引きや補填をしていた場合の再精算ロジック
  • 監査に耐える証憑
    • 値引きの根拠、関税分の負担をどう見積もったか、合意書面

6-4. 経営判断として備える:シナリオを2本持つ

政権は122条の関税を150日間としていますが、その後に別の枠組みへ移行する可能性が高い局面です。(Reuters)

日本企業としては、少なくとも次の2本を用意しておくのが現実的です。

  • シナリオA:一律10%が時限で終わり、次の関税は限定的
  • シナリオB:調査後に、国別・品目別で追加関税が積み上がる

この2本で、価格改定のトリガー、在庫方針、米国内調達比率、設備投資計画まで影響が波及します。


7. よくある誤解を正す

7-1. 誤解1:最高裁が関税を違法にしたのだから、関税負担は消える

消えません。否定されたのはIEEPAを根拠にした関税であり、政権は別法に基づく関税をすでに表明しています。(アメリカ合衆国最高裁判所)

7-2. 誤解2:既に払った関税は自動的に戻る

自動で一律に戻ると決めつけるのは危険です。報道でも、還付は争点化し得るとされ、手続きの不確実性があります。(Reuters)

7-3. 誤解3:日本の輸出者が還付を直接受け取れる

米国の輸入申告上の当事者(Importer of Record)が誰かで、取り得る選択肢が大きく変わります。取引先や子会社がImporter of Recordである場合、日本本社は直接の請求主体ではないことが多く、契約による精算が重要になります。(Reuters)


8. 情報収集の優先順位

最後に、社内でのモニタリング体制を作る場合の優先順位です。

  1. 最高裁判決文(要旨)と、政権の新措置の公式発表
  2. 米国側の通関実務(CBP運用、通関業者のアラート、清算と申立ての期限)(Congress.gov)
  3. JETROなど、日本語で実務に落ちる整理
  4. 取引先との契約交渉の論点整理(関税負担と還付配分)

免責事項

本記事は、2026年2月20日までに公表されている判決文および報道等に基づき、一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件、還付手続き等は改正・運用変更・個別事情により変わる可能性がありますので、必ず最新の公的情報をご確認ください。重要な取引については、米国側のImporter of Record、通関業者、弁護士、税理士、監査法人等の専門家に相談し、必要な検証を行った上でご判断ください。本記事の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。

相互関税裁判 米連邦最高裁 判決全文(主要部分)

以下に、米連邦最高裁判所が2026年2月20日に言い渡した Learning Resources, Inc. v. Trump, 607 U.S. _ (2026) の判決文について、入手できた正式テキスト(最高裁公式PDF)の内容を英語原文と日本語訳で掲載します。 判決文全体は法廷意見・補足意見・反対意見を含め60ページを超えるため、ここでは法的に最も重要な「シラバス(判決要旨)」と「法廷意見(多数意見)」の本文を掲載し、各補足意見・反対意見は要旨をご案内します。 supremecourt


Learning Resources, Inc. v. Trump, 607 U.S. _ (2026)

米連邦最高裁 判決全文(主要部分)

2026年2月20日言い渡し / 2025年10月開廷期


SYLLABUS(判決要旨)

英語原文

SUPREME COURT OF THE UNITED STATES

LEARNING RESOURCES, INC., ET AL. v. TRUMP,
PRESIDENT OF THE UNITED STATES, ET AL.

CERTIORARI BEFORE JUDGMENT TO THE UNITED STATES
COURT OF APPEALS FOR THE DISTRICT OF COLUMBIA CIRCUIT

No. 24–1287. Argued November 5, 2025—Decided February 20, 2026

[Together with No. 25–250, Trump, President of the United States, et al.
v. V.O.S. Selections, Inc., et al., on certiorari to the United States
Court of Appeals for the Federal Circuit.]

The question presented is whether the International Emergency
Economic Powers Act (IEEPA) authorizes the President to impose
tariffs. See 91 Stat. 1626.

Shortly after taking office, President Trump sought to address two
foreign threats: the influx of illegal drugs from Canada, Mexico, and
China, and "large and persistent" trade deficits. The President
determined that the drug influx had "created a public health crisis,"
and that the trade deficits had "led to the hollowing out" of the
American manufacturing base and "undermined critical supply chains."
The President declared a national emergency as to both threats,
deeming them "unusual and extraordinary," and invoked his authority
under IEEPA to respond.

He imposed tariffs to deal with each threat. As to the drug
trafficking tariffs, the President imposed a 25% duty on most
Canadian and Mexican imports and a 10% duty on most Chinese imports.
As to the trade deficit ("reciprocal") tariffs, the President imposed
a duty "on all imports from all trading partners" of at least 10%,
with dozens of nations facing higher rates.

Petitioners in Learning Resources and respondents in V.O.S. Selections
filed suit, alleging that IEEPA does not authorize the reciprocal or
drug trafficking tariffs. The Learning Resources plaintiffs—two small
businesses—sued in the United States District Court for the District
of Columbia. That court denied the Government's motion to transfer
the case to the United States Court of International Trade (CIT) and
granted the plaintiffs' motion for a preliminary injunction, concluding
that IEEPA did not grant the President the power to impose tariffs.
The V.O.S. Selections plaintiffs—five small businesses and 12
States—sued in the CIT. That court granted summary judgment for
the plaintiffs. And the Federal Circuit, sitting en banc, affirmed in
relevant part, concluding that IEEPA's grant of authority to
"regulate . . . importation" did not authorize the challenged tariffs,
which "are unbounded in scope, amount, and duration." 149 F. 4th
1312, 1338. The Government filed a petition for certiorari in V.O.S.
Selections, and the Learning Resources plaintiffs filed a petition for
certiorari before judgment. The Court granted the petitions and
consolidated the cases.

Held: IEEPA does not authorize the President to impose tariffs.
The judgment in No. 24–1287 is vacated, and the case is remanded with
instructions to dismiss for lack of jurisdiction; the judgment in
No. 25–250 is affirmed.

No. 24–1287, 784 F. Supp. 3d 209, vacated and remanded;
No. 25–250, 149 F. 4th 1312, affirmed.

THE CHIEF JUSTICE delivered the opinion of the Court with respect
to Parts I and II–A–1:

Article I, Section 8, of the Constitution specifies that "The Congress
shall have Power To lay and collect Taxes, Duties, Imposts and
Excises." The Framers recognized the unique importance of this taxing
power and gave Congress "alone . . . access to the pockets of the
people." The Federalist No. 48, p. 310 (J. Madison). The Framers
did not vest any part of the taxing power in the Executive Branch.

The Government thus concedes that the President enjoys no inherent
authority to impose tariffs during peacetime. It instead relies
exclusively on IEEPA. It reads the words "regulate" and "importation"
to effect a sweeping delegation of Congress's power to set tariff
policy—authorizing the President to impose tariffs of unlimited amount
and duration, on any product from any country.
50 U.S.C. §1702(a)(1)(B).

THE CHIEF JUSTICE, joined by JUSTICE GORSUCH and JUSTICE
BARRETT, concluded in Part II–A–2:

The Court has long expressed "reluctan[ce] to read into ambiguous
statutory text" extraordinary delegations of Congress's powers. West
Virginia v. EPA, 597 U.S. 697, 723. In several cases described as
involving "major questions," the Court has reasoned that "both
separation of powers principles and a practical understanding of
legislative intent" suggest Congress would not have delegated "highly
consequential power" through ambiguous language.

These considerations apply with particular force where, as here, the
purported delegation involves the core congressional power of the
purse. Congressional practice confirms as much. When Congress has
delegated its tariff powers, it has done so in explicit terms and
subject to strict limits.

Against that backdrop of clear and limited delegations, the Government
reads IEEPA to give the President power to unilaterally impose
unbounded tariffs and change them at will. That view would represent
a transformative expansion of the President's authority over tariff
policy. It is also telling that in IEEPA's half century of existence,
no President has invoked the statute to impose any tariffs, let alone
tariffs of this magnitude and scope. The "'lack of historical
precedent,' coupled with the breadth of authority" that the President
now claims, suggests that the tariffs extend beyond the President's
"legitimate reach." There is no exception to the major questions
doctrine for emergency statutes. The President must "point to clear
congressional authorization" to justify his extraordinary assertion
of that power. He cannot.

THE CHIEF JUSTICE delivered the opinion of the Court with respect
to Part II–B, concluding:

(a) IEEPA authorizes the President to "investigate, block during
the pendency of an investigation, regulate, direct and compel,
nullify, void, prevent or prohibit . . . importation or exportation."
§1702(a)(1)(B). Absent from this lengthy list of specific powers is
any mention of tariffs or duties. Had Congress intended to convey the
distinct and extraordinary power to impose tariffs, it would have done
so expressly, as it consistently has in other tariff statutes.

The power to "regulate . . . importation" does not fill that void.
The term "regulate," as ordinarily used, means to "fix, establish,
or control; to adjust by rule, method, or established mode; to direct
by rule or restriction; to subject to governing principles or laws."
Black's Law Dictionary 1156. The facial breadth of this definition
places in stark relief what "regulate" is not usually thought to
include: taxation. Many statutes grant the Executive the power to
"regulate." Yet the Government cannot identify any statute in which
the power to regulate includes the power to tax. The Court is
therefore skeptical that in IEEPA—and IEEPA alone—Congress hid a
delegation of its birth-right power to tax within the quotidian power
to "regulate."

While taxes may accomplish regulatory ends, it does not follow that
the power to regulate includes the power to tax as a means of
regulation. Indeed, when Congress addresses both the power to regulate
and the power to tax, it does so separately and expressly. That it did
not do so here is strong evidence that "regulate" in IEEPA does not
include taxation.

A contrary reading would render IEEPA partly unconstitutional. IEEPA
authorizes the President to "regulate . . . importation or
exportation." §1702(a)(1)(B). But taxing exports is expressly
forbidden by the Constitution. Art. I, §9, cl. 5.

(b) Several arguments marshaled in response are unpersuasive.

First, the contention that IEEPA confers the power to impose tariffs
because early commentators and the Court's cases discuss tariffs in
the context of the Commerce Clause answers the wrong question. The
question is not whether tariffs can ever be a means of regulating
commerce. It is instead whether Congress, when conferring the power
to "regulate . . . importation," gave the President the power to
impose tariffs at his sole discretion. And Congress's pattern of
usage is plain: When Congress grants the power to impose tariffs,
it does so clearly and with careful constraints. It did neither in
IEEPA.

Second, the argument that "regulate" naturally includes tariffs because
the term lies between two poles in IEEPA—"compel" on the affirmative
end and "prohibit" on the negative end—is unavailing. Although tariffs
may be less extreme than an outright compulsion or prohibition, it does
not follow that tariffs lie on the spectrum between those poles; they
are different in kind, not degree, from the other authorities in IEEPA.
Tariffs operate directly on domestic importers to raise revenue for
the Treasury and are "very clear[ly] . . . a branch of the taxing
power." Gibbons, 9 Wheat., at 201. Thus, they fall outside the
spectrum entirely.

Third, the argument based on IEEPA's predecessor, the Trading with
the Enemy Act (TWEA), and the Court of Customs and Patent Appeals'
decision in United States v. Yoshida Int'l, Inc., 526 F.2d 560, cannot
bear the weight placed on it. A single, expressly limited opinion from
a specialized intermediate appellate court does not establish a
well-settled meaning that the Court can assume Congress incorporated
into IEEPA.

Fourth, the historical argument based on the Court's wartime precedents
fails. Those precedents are facially inapposite, as all agree the
President lacks inherent peacetime authority to impose tariffs. And
the attenuated chain of inferences from wartime precedents through
multiple iterations of TWEA to IEEPA cannot support—much less clearly
support—a reading of IEEPA that includes the distinct power to impose
tariffs.

Finally, arguments relying on this Court's precedents lack merit.
Federal Energy Administration v. Algonquin SNG, Inc., 426 U.S. 548,
bears little on the meaning of IEEPA. Section 232(b) of the Trade
Expansion Act of 1962 contains sweeping, discretion-conferring language
that IEEPA does not contain, and the explicit reference to duties in
Section 232(a) renders it natural for Section 232(b) itself to
authorize duties. Nor does Dames & Moore v. Regan, 453 U.S. 654, offer
support because that case was exceedingly narrow, did not address the
President's power to "regulate," and did not involve tariffs at all.

JUSTICE KAGAN, joined by JUSTICE SOTOMAYOR and JUSTICE JACKSON,
agreed that IEEPA does not authorize the President to impose tariffs,
but concluded that the Court need not invoke the major questions
doctrine because the ordinary tools of statutory interpretation amply
support that result.

JUSTICE JACKSON would also consult legislative history—in particular,
the House and Senate Reports that accompanied IEEPA and its predecessor
statute, TWEA—to determine that Congress did not intend for IEEPA to
authorize the Executive to impose tariffs.

ROBERTS, C.J., announced the judgment of the Court and delivered the
opinion of the Court with respect to Parts I, II–A–1, and II–B, in
which SOTOMAYOR, KAGAN, GORSUCH, BARRETT, and JACKSON, JJ., joined,
and an opinion with respect to Parts II–A–2 and III, in which GORSUCH
and BARRETT, JJ., joined. GORSUCH, J., and BARRETT, J., filed
concurring opinions. KAGAN, J., filed an opinion concurring in part
and concurring in the judgment, in which SOTOMAYOR and JACKSON, JJ.,
joined. JACKSON, J., filed an opinion concurring in part and
concurring in the judgment. THOMAS, J., filed a dissenting opinion.
KAVANAUGH, J., filed a dissenting opinion, in which THOMAS and
ALITO, JJ., joined.

日本語訳

アメリカ合衆国連邦最高裁判所

Learning Resources, Inc. 他 対 トランプ
アメリカ合衆国大統領 他

事件番号 24–1287
口頭弁論:2025年11月5日 / 判決言渡:2026年2月20日

(事件番号 25–250「トランプ大統領他 対 V.O.S. Selections, Inc. 他」
と併合審理。連邦巡回区控訴裁判所への上告受理)

争点:
国際緊急経済権限法(IEEPA)は大統領に関税を賦課する権限を
付与しているか。91 Stat. 1626 参照。

事実の概要:

就任直後、トランプ大統領は二つの対外的脅威への対処を図った。
一つ目はカナダ、メキシコおよび中国からの違法薬物の流入であり、
二つ目は「大規模かつ恒常的な」貿易赤字であった。
大統領は薬物流入が「公衆衛生上の危機を生み出した」と認定し、
貿易赤字がアメリカの製造業基盤の「空洞化をもたらし」、
「重要なサプライチェーンを損なった」と認定した。
大統領は両脅威について国家非常事態を宣言し、
これらを「異常かつ緊急の」脅威と位置づけ、
IEEPAに基づく権限を行使した。

大統領は各脅威に対処するために関税を賦課した。
薬物密輸関税については、カナダおよびメキシコからの
大半の輸入品に25%、中国からの大半の輸入品に10%の関税を課した。
貿易赤字(「相互」)関税については、「すべての貿易相手国からの
すべての輸入品」に対して最低10%の関税を課し、
数十カ国はより高い税率に直面した。

訴訟経緯:

Learning Resources 事件の申立人および V.O.S. Selections 事件の
被申立人は、IEEPAが相互関税および薬物密輸関税を授権していないと
主張して訴訟を提起した。
Learning Resources の原告(2社の中小企業)はコロンビア特別区
連邦地方裁判所に提訴した。同裁判所は政府の国際貿易裁判所(CIT)
への移送申立てを却下し、IEEPAは大統領に関税を課す権限を付与
していないと結論づけ、原告の仮差止命令申立てを認容した。
V.O.S. Selections の原告(5社の中小企業および12州)はCITに提訴した。
CITは原告の略式判決申立てを認容した。
連邦巡回区控訴裁判所は大法廷として関連部分を支持し、
IEEPAが「輸入を・・・規制する」権限を付与したとしても
その授権は「範囲、金額および期間において無制限」な関税を
認めるものではないと結論づけた(149 F.4th 1312, 1338)。
政府は V.O.S. Selections 事件について上告受理申立てを行い、
Learning Resources の原告は判決前上告申立てを行った。
最高裁は両申立てを受理し事件を併合した。

判示:

IEEPAは大統領に関税を賦課する権限を付与していない。

事件番号24–1287の判決は破棄・差戻し(管轄権不存在を理由とした
却下の指示付き)。事件番号25–250の判決は支持。

24–1287事件:784 F. Supp. 3d 209 ―― 破棄・差戻し
25–250事件:149 F. 4th 1312 ―― 支持

〔ロバーツ長官によるパートI・II–A–1についての法廷意見〕

合衆国憲法第1条第8節は「連邦議会は税・関税・輸入税・
物品税を賦課・徴収する権限を有する」と定めている。
建国者たちはこの課税権の重要性を認識し、議会「のみ」が
「国民の懐に手を入れる」権限を持つとした
(フェデラリスト第48号、310頁、マディスン)。
建国者たちは課税権のいかなる部分も行政府に付与しなかった。

したがって政府自身も、大統領は平時において関税を課す固有の
権限を持たないことを認めている。政府は専らIEEPAに依拠する。
政府は「規制する(regulate)」および「輸入(importation)」
という語を、議会の関税政策を決定する権限の広範な委任として
読み、すなわち大統領があらゆる国のあらゆる製品に対して
無制限の金額・期間で関税を課す権限を授権するものと解釈する
(50 U.S.C. §1702(a)(1)(B))。

〔ロバーツ長官(ゴーサッチ、バレット各判事が同調)による
パートII–A–2についての意見〕

当裁判所は長年にわたり、「曖昧な法文に」議会の権限の
「異例の委任を読み込む」ことに「慎重であることを示してきた」
(West Virginia v. EPA, 597 U.S. 697, 723)。
「重大問題(major questions)」を含むと説明されるいくつかの
事件において、当裁判所は「権力分立の原則と立法意図の
実際的理解の双方から」、議会は「著しく重大な権限」を
曖昧な文言を通じて委任しなかったであろうと理由づけてきた。

これらの考慮は、本件のように想定された委任が議会の
根本的な財政権限に関わる場合に、特に強く作用する。
議会の慣行がこれを裏付けている。
議会がその関税権限を委任する際には、明示的な文言で、
かつ厳格な制約のもとに行ってきた。

そのような明確かつ限定的な委任の背景に照らすと、
政府はIEEPAが大統領に一方的に無制限の関税を課し
自由に変更する権限を与えると読んでいる。
その解釈は大統領の関税政策に対する権限の「変革的拡大」
を意味する。
また、IEEPAが制定されて半世紀の間、いかなる大統領も
この法律を援用して関税を課したことがないという事実は
示唆的である。大統領がいまや主張する権限の広さとの
「歴史的先例の欠如」は、当該関税が大統領の「正当な権限」
の範囲を超えていることを示す「示唆的な指標」である。
緊急事態法について重大問題法理の例外はない。
大統領はその異例の権限主張を正当化するために
「明確な議会の授権を指し示さなければならない」。
これを大統領は果たせていない。

〔ロバーツ長官によるパートII–Bについての法廷意見〕

(a) IEEPAは大統領に「輸入もしくは輸出を、調査し、
調査係属中に封鎖し、規制し、指示・強制し、
無効化・取り消し・阻止・禁止する」権限を付与している
(§1702(a)(1)(B))。
この列挙された権限の中に、関税や課税についての言及は一切ない。
議会がもし関税を課す独自かつ異例の権限を付与するつもりで
あったならば、他の関税法律において一貫して行ってきたように、
明示的にそうしたはずである。

「輸入を・・・規制する」権限はその空白を埋めるものではない。
「規制する(regulate)」という語の通常の意味は、
「定め、確立し、または制御すること;規則・方法・確立された
様式によって調整すること;規則または制限によって指示すること;
支配的な原則または法律に服させること」である
(ブラック法律辞典1156頁)。
この定義の表面上の広さが明確に示すのは、「規制する」が
通常含まれないとされるもの——すなわち課税——である。
多くの法律が行政府に「規制する」権限を与えている。
しかし政府は、規制する権限が課税する権限を含む法律を
一つも挙げることができない。
したがって当裁判所は、IEEPAにおいてのみ、議会が
議会本来の課税権限の委任を「規制する」という日常的な
言葉の中に隠したとは考え難い。

税が規制上の目的を達成しうるとしても、
それは規制する権限が規制手段として課税する権限を含む
ことを意味しない。
実際、議会が規制する権限と課税する権限の双方を扱う際には、
それぞれ別個・明示的にそうしている。
IEEPAではそれをしていないことは、IEEPAの「規制する」が
課税を含まないことの有力な証拠である。

反対の解釈はIEEPAの一部を違憲とするものとなる。
IEEPAは大統領に「輸入もしくは輸出を・・・規制する」
権限を付与している(§1702(a)(1)(B))。
しかし輸出に対する課税は憲法によって明示的に禁じられている
(合衆国憲法第1条第9節第5項)。

(b) これに対してなされる数々の論拠は説得力を欠く。

第一に、初期の論者や当裁判所の先例が通商条項との関係で
関税を論じているため IEEPAも関税を授権するとの主張は、
問いへの答えを誤っている。問いは、関税が通商を規制する
手段になりうるかどうかではない。問いは、「輸入を・・・
規制する」権限を付与した際に議会が大統領に一手裁量で
関税を課す権限を与えたかどうかである。
議会の用語使用のパターンは明白である。議会が関税を課す
権限を付与するときは明確に、かつ慎重な制約を付して行う。
IEEPAではそのいずれもしていない。

第二に、IEEPAにおける「規制する」は「強制する」という
積極端と「禁止する」という消極端の中間にあるから
当然に関税を含むという主張は採用できない。
関税は全面的な強制や禁止より程度が低いとしても、
それはIEEPAの他の権限の極の間のスペクトラム上に
位置することを意味しない。
関税はIEEPAの他の権限とは程度ではなく種類において異なる。
関税は国内輸入業者に直接作用して財務省に歳入をもたらすものであり、
「きわめて明らかに・・・課税権の一分野」である
(Gibbons, 9 Wheat., at 201)。
したがって関税はそのスペクトラムの外に位置する。

第三に、IEEPAの前身である敵国通商法(TWEA)および
関税・特許控訴裁判所の United States v. Yoshida Int'l, Inc.
(526 F.2d 560)判決に基づく論拠は、それに課された重みに
耐えられない。専門的中間控訴裁判所の一件の限定的判決は、
議会がIEEPAに組み込んだと当裁判所が推定しうる
定着した意義を確立するものではない。

第四に、当裁判所の戦時先例に基づく歴史的論拠は失当である。
それらの先例は表面上適用に馴染まない。
大統領は平時において固有の関税賦課権限を持たないことに
すべてが同意しているからである。
戦時先例からTWEAの複数の改正を経てIEEPAに至る
遠回りな推論の連鎖は、IEEPAを関税を課す独自の権限を
含むと読む解釈を支持しない。

最後に、当裁判所の先例に基づく論拠も根拠がない。
Federal Energy Administration v. Algonquin SNG, Inc.
(426 U.S. 548)はIEEPAの意味とはほとんど関係しない。
1962年通商拡大法の第232条(b)にはIEEPAにはない
広範な裁量付与の文言が含まれており、第232条(a)に
関税への明示的な言及があることにより第232条(b)自体が
課税を授権することは自然なことである。
Dames & Moore v. Regan(453 U.S. 654)も支持を与えない。
同判決はきわめて狭い射程を持ち、大統領の「規制する」
権限を論じておらず、関税とも無関係であった。

〔ケーガン判事(ソトマイヨール、ジャクソン各判事が同調)
の一部同意意見・判断同意意見〕

IEEPAは大統領に関税を課す権限を付与していないとの結論に
同意する。ただし、通常の法令解釈の手法がその結果を
十分に支持しているため、重大問題法理を援用する必要はない
と結論づける。

〔ジャクソン判事の一部同意意見・判断同意意見〕

また立法経緯——特にIEEPAおよびその前身であるTWEAに
添付された上下両院の委員会報告書——をも参照し、
議会がIEEPAにより行政府が関税を課すことを意図しなかった
と判断する。

〔法廷構成〕

ロバーツ長官が判決主文を宣言し、パートI・II–A–1・II–Bに
ついてはソトマイヨール、ケーガン、ゴーサッチ、バレット、
ジャクソンの各判事が同調した法廷意見を執筆した。
パートII–A–2および第IIIについてはゴーサッチおよびバレット
各判事が同調する意見を執筆した。
ゴーサッチ判事およびバレット判事がそれぞれ同意意見を提出した。
ケーガン判事はソトマイヨール・ジャクソン両判事を同伴する
一部同意意見・判断同意意見を提出した。
ジャクソン判事は一部同意意見・判断同意意見を提出した。
トーマス判事は反対意見を提出した。
カバノー判事はトーマスおよびアリトー両判事を同伴する
反対意見を提出した。

法廷意見(主要部分)本文

英語原文(ロバーツ長官執筆)

SUPREME COURT OF THE UNITED STATES
Nos. 24–1287 and 25–250

LEARNING RESOURCES, INC., ET AL., PETITIONERS
v.
DONALD J. TRUMP, PRESIDENT OF THE UNITED STATES, ET AL.

[February 20, 2026]

CHIEF JUSTICE ROBERTS announced the judgment of the Court
and delivered the opinion of the Court, except as to
Parts II–A–2 and III.

We decide whether the International Emergency Economic
Powers Act (IEEPA) authorizes the President to impose tariffs.

I

A

Shortly after taking office, President Trump sought to address
two foreign threats. The first was the influx of illegal drugs
from Canada, Mexico, and China. The second was "large and
persistent" trade deficits. The President determined that the
first threat had "created a public health crisis," and that
the second had "led to the hollowing out" of the American
manufacturing base and "undermined critical supply chains."
He invoked his authority under IEEPA to respond.

Enacted in 1977, IEEPA gives the President economic tools to
address significant foreign threats. When acting under IEEPA,
the President must identify an "unusual and extraordinary
threat" to American national security, foreign policy, or the
economy, originating primarily "outside the United States."
50 U.S.C. §1701(a). And he must "declare[] a national
emergency" under the National Emergencies Act. He may then,
"by means of instructions, licenses, or otherwise," take the
following actions to "deal with" the threat: "investigate,
block during the pendency of an investigation, regulate,
direct and compel, nullify, void, prevent or prohibit, any
acquisition, holding, withholding, use, transfer, withdrawal,
transportation, importation or exportation of, or dealing in,
or exercising any right, power, or privilege with respect to,
or transactions involving, any property in which any foreign
country or a national thereof has any interest."
§§1701(a), 1702(a)(1)(B).

President Trump declared a national emergency as to both the
drug trafficking and the trade deficits, which he deemed
"unusual and extraordinary" threats. He then imposed tariffs
to deal with each threat. As to the drug trafficking tariffs,
the President imposed a 25% duty on most Canadian and Mexican
imports and a 10% duty on most Chinese imports. As to the
trade deficit (or "reciprocal") tariffs, the President imposed
a duty "on all imports from all trading partners" of at least
10%. Dozens of nations faced higher rates. And these tariffs
applied notwithstanding any extant trade agreements.

Since imposing each set of tariffs, the President has issued
several increases, reductions, and other modifications.
One month after imposing the 10% drug trafficking tariffs on
Chinese goods, he increased the rate to 20%. One month later,
he removed a statutory exemption for Chinese goods under $800.
Less than a week after imposing the reciprocal tariffs, the
President increased the rate on Chinese goods from 34% to 84%.
The very next day, he increased the rate further still, to
125%. This brought the total effective tariff rate on most
Chinese goods to 145%.

B

[Procedural Background]

Petitioners in Learning Resources and respondents in V.O.S.
Selections filed suit, alleging that IEEPA does not authorize
the reciprocal or drug trafficking tariffs. The Learning
Resources plaintiffs—two small businesses—sued in the United
States District Court for the District of Columbia. The V.O.S.
Selections plaintiffs—five small businesses and 12 States—
sued in the CIT. That court granted summary judgment for the
plaintiffs. And the Federal Circuit, sitting en banc, affirmed
in relevant part, concluding that IEEPA's grant of authority
to "regulate . . . importation" did not authorize the
challenged tariffs, which "are unbounded in scope, amount,
and duration." 149 F. 4th 1312, 1338.

II

Based on two words separated by 16 others in Section
1702(a)(1)(B) of IEEPA—"regulate" and "importation"—the
President asserts the independent power to impose tariffs on
imports from any country, of any product, at any rate, for
any amount of time. Those words cannot bear such weight.

A

1

Article I, Section 8, of the Constitution sets forth the
powers of the Legislative Branch. The first Clause of that
provision specifies that "The Congress shall have Power To
lay and collect Taxes, Duties, Imposts and Excises." It is
no accident that this power appears first. The power to tax
was, Alexander Hamilton explained, "the most important of
the authorities proposed to be conferred upon the Union."
The Federalist No. 33, pp. 202–203.

It is both a "power to destroy," McCulloch v. Maryland,
4 Wheat. 316, 431 (1819), and a power "necessary to the
existence and prosperity of a nation"—"the one great power
upon which the whole national fabric is based." Nicol v.
Ames, 173 U.S. 509, 515 (1899).

The power to impose tariffs is "very clear[ly] . . . a branch
of the taxing power." Gibbons v. Ogden, 9 Wheat. 1, 201
(1824). "A tariff," after all, "is a tax levied on imported
goods and services." And tariffs "raise[] revenue"—the
defining feature of a tax.

Indeed, the Framers expected that the Government would for
"a long time depend . . . chiefly on" tariffs for revenue.
The Federalist No. 12 (A. Hamilton). Little wonder, then,
that the First Congress's first exercise of its taxing power
(and its second enacted law) was a tariff law. See Act of
July 4, 1789, ch. 2, 1 Stat. 24.

Recognizing the taxing power's unique importance, and having
just fought a revolution motivated in large part by "taxation
without representation," the Framers gave Congress "alone
. . . access to the pockets of the people." The Federalist
No. 48 (J. Madison). They required "All Bills for raising
Revenue [to] originate in the House of Representatives."
U.S. Const., Art. I, §7, cl. 1. They did not vest any part
of the taxing power in the Executive Branch.

The Government thus concedes, as it must, that the President
enjoys no inherent authority to impose tariffs during
peacetime. And it does not defend the challenged tariffs as
an exercise of the President's warmaking powers. The United
States, after all, is not at war with every nation in the
world. The Government instead relies exclusively on IEEPA.
It reads the words "regulate" and "importation" to effect a
sweeping delegation of Congress's power to set tariff policy—
authorizing the President to impose tariffs of unlimited
amount and duration, on any product from any country.
50 U.S.C. §1702(a)(1)(B).

[Part II–A–2: Major Questions Doctrine – by Roberts, Gorsuch,
Barrett]

We have long expressed "reluctan[ce] to read into ambiguous
statutory text" extraordinary delegations of Congress's
powers. West Virginia v. EPA, 597 U.S. 697, 723 (2022).
In Biden v. Nebraska, 600 U.S. 477 (2023), for example, we
declined to read authorization to "waive or modify" statutory
or regulatory provisions as a delegation of power to cancel
$430 billion in student loan debt. In West Virginia v. EPA,
we declined to read authorization to determine the "best
system of emission reduction" as a delegation of power to
force a nationwide transition away from coal. And in National
Federation of Independent Business v. OSHA, 595 U.S. 109
(2022), we declined to read authorization to ensure "safe and
healthful working conditions" as a delegation of power to
impose a vaccine mandate on 84 million Americans.

These considerations apply with particular force where, as
here, the purported delegation involves the core congressional
power of the purse.

What common sense suggests, congressional practice confirms.
When Congress has delegated its tariff powers, it has done
so in explicit terms, and subject to strict limits. Congress
has consistently used words like "duty" in statutes delegating
authority to impose tariffs. It has capped the amount and
duration of tariffs. And it has conditioned exercise of the
tariff power on demanding procedural prerequisites.

Against this backdrop of clear and limited delegations, the
Government reads IEEPA to give the President power to
unilaterally impose unbounded tariffs. On this reading, the
President is unconstrained by the significant procedural
limitations in other tariff statutes and free to issue a
dizzying array of modifications at will.

That view would represent "a 'transformative expansion'" of
the President's authority over tariff policy. It is also
telling that in IEEPA's "half century of existence," no
President has invoked the statute to impose any tariffs.
The "'lack of historical precedent,' coupled with the breadth
of authority" that the President now claims, suggests that
the tariffs extend beyond the President's "legitimate reach."

The "'economic and political significance'" of the authority
the President has asserted likewise "provide[s] a 'reason to
hesitate before concluding that Congress' meant to confer
such authority." The President's assertion here of broad
"statutory power over the national economy" is "extravagant"
by any measure. The Government itself points to projections
that the tariffs will reduce the national deficit by $4
trillion, and that international agreements reached in
reliance on the tariffs could be worth $15 trillion. These
stakes dwarf those of other major questions cases.

There is no exception to the major questions doctrine for
emergency statutes. "Emergency powers," after all, "tend to
kindle emergencies." Youngstown Sheet & Tube Co. v. Sawyer,
343 U.S. 579, 650 (1952) (Jackson, J., concurring).

The President must "point to clear congressional authorization"
to justify his extraordinary assertion of that power. He
cannot.

[Part II–B: Statutory Text]

IEEPA authorizes the President to "investigate, block during
the pendency of an investigation, regulate, direct and
compel, nullify, void, prevent or prohibit . . . importation
or exportation." §1702(a)(1)(B).

Absent from this lengthy list of specific powers is any
mention of tariffs or duties. Had Congress intended to convey
the distinct and extraordinary power to impose tariffs, it
would have done so expressly, as it consistently has in other
tariff statutes.

The power to "regulate . . . importation" does not fill that
void. The term "regulate," as ordinarily used, means to "fix,
establish, or control; to adjust by rule, method, or
established mode; to direct by rule or restriction; to
subject to governing principles or laws." Black's Law
Dictionary 1156. The facial breadth of this definition places
in stark relief what "regulate" is not usually thought to
include: taxation. Many statutes grant the Executive the
power to "regulate." Yet the Government cannot identify any
statute in which the power to regulate includes the power
to tax.

While taxes may accomplish regulatory ends, it does not follow
that the power to regulate includes the power to tax as a
means of regulation. Indeed, when Congress addresses both the
power to regulate and the power to tax, it does so separately
and expressly.

A contrary reading would render IEEPA partly unconstitutional.
IEEPA authorizes the President to "regulate . . . importation
or exportation." §1702(a)(1)(B). But taxing exports is
expressly forbidden by the Constitution. Art. I, §9, cl. 5.

Fulfilling that role, we hold that IEEPA does not authorize
the President to impose tariffs.

日本語訳(法廷意見本文)

“`
アメリカ合衆国連邦最高裁判所
事件番号 24–1287 および 25–250

[2026年2月20日]

ロバーツ長官が判決主文を宣言し、
パートII–A–2および第III部を除く法廷意見を執筆した。

われわれが判断するのは、国際緊急経済権限法(IEEPA)が
大統領に関税を賦課する権限を付与しているかどうかである。

第I部

就任直後、トランプ大統領は二つの対外的脅威への対処を図った。
第一はカナダ、メキシコおよび中国からの違法薬物の流入であった。
第二は「大規模かつ恒常的な」貿易赤字であった。
大統領は第一の脅威が「公衆衛生上の危機を生み出した」と認定し、
第二の脅威がアメリカの製造業基盤の「空洞化をもたらし」、
「重要なサプライチェーンを損なった」と認定した。
大統領はIEEPAに基づく権限を行使して対処した。

1977年に制定されたIEEPAは、重大な対外的脅威に対処するための
経済的手段を大統領に与えるものである。
IEEPAのもとで行動する際、大統領は主として「合衆国外」から
発する、アメリカの国家安全保障・外交政策・経済に対する
「異常かつ緊急の脅威」を特定しなければならない
(50 U.S.C. §1701(a))。
また、国家緊急事態法に基づき「国家非常事態を宣言」しなければ
ならない。
その上で、脅威に「対処する」ために、
「指示・ライセンスその他の方法により」、次の行動をとることができる。
すなわち、「いかなる外国またはその国民が何らかの利益を有する
財産の取得・保有・差し控え・使用・移転・引き出し・輸送・
輸入もしくは輸出または取引を、あるいはかかる財産に関する
権利・権限・特権の行使またはこれに係る取引を、
調査し、調査係属中に封鎖し、規制し、指示・強制し、
無効化・取り消し・阻止・禁止すること」である
(§§1701(a), 1702(a)(1)(B))。

トランプ大統領は薬物密輸および貿易赤字の双方について
これらを「異常かつ緊急の」脅威と位置づけて
国家非常事態を宣言した。
そして各脅威に対処するための関税を課した。
薬物密輸関税については、カナダおよびメキシコからの
大半の輸入品に25%、中国からの大半の輸入品に10%の関税を課した。
貿易赤字(「相互」)関税については、「すべての貿易相手国からの
すべての輸入品」に対して最低10%の関税を課した。
数十カ国はより高い税率に直面した。
また、これらの関税は既存のいかなる貿易協定にも関わらず適用された。

関税を賦課して以来、大統領はたびたび引き上げ・引き下げ・
その他の変更を行った。
中国製品への薬物密輸関税10%を課した1カ月後に税率を20%に引き上げた。
さらに1カ月後、800ドル未満の中国製品に係る法的免除を撤廃した。
相互関税を課してから1週間足らずで、中国製品への税率を34%から84%に
引き上げた。翌日さらに125%まで引き上げた。
これにより大半の中国製品への実効関税率は計145%に達した。

第II部

IEEPAの第1702条(a)(1)(B)において16語を隔てて存在する
「規制する(regulate)」と「輸入(importation)」の二語のみに
基づき、大統領はあらゆる国のあらゆる製品に対し、
あらゆる税率で、いかなる期間にわたっても関税を課す
独立した権限を主張する。
それらの語はそれほどの重みに耐えることができない。

A-1

合衆国憲法第1条第8節は立法府の権限を定めている。
同節第1項は「連邦議会は税・関税・輸入税・物品税を
賦課・徴収する権限を有する」と規定している。
この権限が最初に掲げられているのは偶然ではない。
課税権は、アレクサンダー・ハミルトンが説いたように、
「連邦に付与することが提案されている権限の中で最も重要なもの」
であった(フェデラリスト第33号、202–203頁)。

それは「破壊する力」(McCulloch v. Maryland, 4 Wheat. 316, 431
(1819年))であると同時に、「一国の存立と繁栄に必要な」、
「国家の全構造が依って立つ唯一最大の権限」でもある
(Nicol v. Ames, 173 U.S. 509, 515(1899年))。

関税を課す権限は「きわめて明らかに・・・課税権の一分野」である
(Gibbons v. Ogden, 9 Wheat. 1, 201(1824年))。
「関税」は結局のところ「輸入品およびサービスに課される税」である。
そして関税は「歳入を生む」——これが税の本質的特徴である。

実際、建国者たちは政府が「長い間・・・主として」関税に
歳入を依存するであろうと見込んでいた(フェデラリスト第12号、
ハミルトン)。
初代議会が課税権を最初に行使したのが(そして二番目に制定した
法律が)関税法であったのも不思議ではない
(1789年7月4日法律、ch. 2, 1 Stat. 24参照)。

課税権の固有の重要性を認識し、
「代表なければ課税なし」を大きな動機の一つとして革命を戦った
建国者たちは、議会「のみ」が「国民の懐に手を入れる」権限を
持つとした(フェデラリスト第48号、マディスン)。
彼らは「歳入を得るためのすべての法案を下院から発議させる」とした
(合衆国憲法第1条第7節第1項)。
彼らは課税権のいかなる部分も行政府に付与しなかった。

したがって政府は、当然のこととして、大統領は平時において
関税を課す固有の権限を持たないことを認めている(口頭弁論記録70–71頁)。
政府は当該関税を大統領の交戦権限の行使として擁護もしていない。
アメリカは世界のすべての国と戦争状態にはないのだから。
政府は専らIEEPAに依拠する。
政府は「規制する」および「輸入」という語を、
議会の関税政策を決定する権限の広範な委任として読み、
すなわち大統領があらゆる国のあらゆる製品に対して
無制限の金額・期間で関税を課す権限を授権するものと解釈する
(50 U.S.C. §1702(a)(1)(B))。

A-2(重大問題法理:ロバーツ、ゴーサッチ、バレット)

当裁判所は長年にわたり、「曖昧な法文に」議会の権限の
「異例の委任を読み込む」ことに「慎重であることを示してきた」
(West Virginia v. EPA, 597 U.S. 697, 723(2022年))。

Biden v. Nebraska(600 U.S. 477(2023年))では、
法的または規制上の規定を「免除もしくは修正する」授権を
4300億ドルの学生ローン債務を帳消しにする権限の委任として
読むことを拒否した。
West Virginia v. EPA では、排出削減の「最善のシステム」を
決定する授権を、石炭からの全国的な転換を強制する権限の
委任として読むことを拒否した。
National Federation of Independent Business v. OSHA
(595 U.S. 109(2022年))では、「安全かつ健康な作業環境」を
確保する授権を、8400万人のアメリカ人へのワクチン接種命令を
課す権限の委任として読むことを拒否した。

これらの考慮は、本件のように想定された委任が議会の
根本的な財政権限に関わる場合に、特に強く作用する。

常識が示唆することを議会の慣行が裏付けている。
議会がその関税権限を委任する際には、明示的な文言で、
かつ厳格な制約のもとに行ってきた。
議会は関税賦課の権限を委任する法律において「課税(duty)」
などの文言を一貫して用いてきた。
税率と期間に上限を設けてきた。
そして厳格な手続き上の前提条件のもとで関税権限の行使を
条件付けてきた。

このような明確かつ限定的な委任の背景に照らすと、
政府はIEEPAが大統領に一方的に無制限の関税を課し
自由に変更する権限を与えると読んでいる。
この解釈では、大統領は他の関税法律にある重要な手続き上の
制約によって拘束されず、目まぐるしく変更を行うことが
自由にできる。

この見解は、もし採用されれば、大統領の関税政策に対する
権限の「変革的拡大」を意味する。
また、IEEPAが制定されて「半世紀の間」、いかなる大統領も
この法律を援用して関税を課したことがないという事実は
示唆的である。
大統領がいまや主張する権限の広さとの「歴史的先例の欠如」は、
当該関税が大統領の「正当な権限」の範囲を超えていることを示す
「示唆的な指標」である。

大統領が主張する広範な「国民経済に対する法定権力」は、
いかなる基準においても「過大」である。
政府自身が認め、誇示しているように、IEEPA関税の経済的・
政治的影響は驚くべきものである。
政府は、関税が財政赤字を4兆ドル削減し、
関税を基礎として締結された国際合意が15兆ドルの価値を持ちうる
という試算を指摘している。
これらの規模は他の重大問題事件の規模をはるかに超える。

緊急事態法について重大問題法理の例外はない。
「緊急権限」は「緊急事態を引き起こす傾向がある」からである
(Youngstown Sheet & Tube Co. v. Sawyer, 343 U.S. 579, 650
(1952年)、ジャクソン判事同意意見)。

大統領はその異例の権限主張を正当化するために
「明確な議会の授権を指し示さなければならない」。
これを大統領は果たせていない。

B(法文解釈)

IEEPAは大統領に「輸入もしくは輸出を、調査し、
調査係属中に封鎖し、規制し、指示・強制し、
無効化・取り消し・阻止・禁止する」権限を付与している
(§1702(a)(1)(B))。

この詳細な権限列挙の中に、関税や課税への言及は一切ない。
議会がもし関税を課す独自かつ異例の権限を付与するつもりで
あったならば、他の関税法律において一貫して行ってきたように、
明示的にそうしたはずである。

「輸入を・・・規制する」権限はその空白を埋めるものではない。
「規制する(regulate)」の通

Learning Resources, Inc.(ラーニング・リソーシズ)とは(相互関税裁判原告)

2026年2月20日の米国連邦最高裁判決において、トランプ政権の関税政策を打ち破るきっかけを作った歴史的訴訟(事件名:Learning Resources, Inc. v. Trump)の筆頭原告として、現在世界中から注目を集めています。

同社について、押さえておくべきポイントを3つにまとめました。

1. どのような企業か?

1984年に設立され、学校の教室で使われる算数セットや理科の実験キット、プログラミング的思考を養う知育玩具などを広く展開しています。姉妹企業であるhand2mind社とともに、米国の教育現場や家庭で非常に高いシェアを持っています。

商品の企画や一部の組み立ては米国内で行っていますが、製造の大部分は中国などの海外提携工場に委託しています。

2. なぜ国(大統領)を訴えたのか?

トランプ政権が2025年に国際緊急経済権限法(IEEPA)を発動し、中国製品などに最大145%にも上る「相互関税」や「麻薬密輸対策関税」を課したことが直接の引き金です。

Learning Resources社の試算では、この関税に従った場合、同社の輸入関連コストは2024年の230万ドル(約3.5億円)から、2025年には1億ドル(約150億円)以上にまで跳ね上がることが判明しました。これは企業にとって「存続の危機(Existential risk)」であったため、リック・ウォルデンバーグCEOは会社を守るべく、2025年4月に「大統領の権限逸脱」を理由に連邦政府を提訴しました。

3. 裁判の結果はどうなったか?

同社が起こした訴訟は、ワイン輸入業者が起こした別の訴訟(V.O.S. Selections)と併合され、最高裁まで争われました。

結果として、2026年2月20日に最高裁は6対3で「IEEPAによる関税発動は違法(大統領の権限逸脱)」とする判決を下しました。

厳密に言えば、Learning Resources社の訴え自体は「管轄外の裁判所(地方裁判所)に提訴した」という手続き上の理由で却下・差し戻しとなりましたが、併合されたもう一つの訴訟で関税の違法性が確定したため、「自社を脅かす理不尽な関税を消滅させる」という彼らの本来の目的は見事に達成されたことになります。


一介の知育玩具メーカーが、自社の存続をかけて米国大統領の巨大な権限に立ち向かい、結果として世界経済を揺るがす歴史的な最高裁判決を引き出したという点で、この事例はビジネスの観点からも非常にドラマチックな背景を持っています。

米連邦最高裁が「IEEPA関税は違法」と判断

― “相互関税”は転換点に。代替として「通商法122条(Section 122)」が浮上

2026年2月20日(米国時間)、米連邦最高裁判所は、トランプ大統領が**国際緊急経済権限法(IEEPA)**を根拠に発動した広範な関税措置について、IEEPAは関税賦課の権限を大統領に与えていないとして違法と判断しました(6対3)。

この判決は、2025年以降に展開されてきた「相互関税(reciprocal tariffs)」を含む関税政策の法的基盤を揺るがし、**対米ビジネスの前提(価格・契約・在庫・調達)**を短期的にも見直さざるを得ない局面を生みます。


1. 事件の背景:IEEPAとは何か(ビジネス向けに要点だけ)

IEEPA(International Emergency Economic Powers Act)は1977年制定の連邦法で、大統領が「国外に起因する異常かつ重大な脅威」を理由に**国家非常事態(national emergency)**を宣言した場合に、対外取引を広く規制できる枠組みです。実務では、制裁・資産凍結・送金規制などで耳にすることが多い法律です。

ただしIEEPAの条文は、取引の「規制(regulate)」や「禁止(prohibit)」等を列挙する一方で、“関税(tariff)を課す”という権限を明示していません。ここが今回の判断の核心です。


2. トランプ政権は何をしたのか(今回、違法とされた対象)

最高裁判決(および主要報道)が対象としているのは、主に以下のIEEPA関税です。

  • 貿易赤字を理由にした「相互関税」
    ほぼ全ての貿易相手国からの輸入に対し、少なくとも10%の追加関税を課し、一部の国にはさらに高い税率を課す枠組み。
  • 麻薬(薬物)流入等を理由にした対カナダ/メキシコ/中国向けの追加関税
    薬物(報道ではフェンタニル等)を理由とした措置として言及されています。

重要なのは、今回の最高裁判断は「IEEPAを根拠にした関税」に限定される点です。すでに存在する**通商拡大法232条(Section 232)通商法301条(Section 301)**など、別の法体系に基づく関税は、判決の射程外です(=自動的には消えません)。


3. 最高裁の結論:なぜ「違法」なのか

3-1. 多数意見(結論部分)は「IEEPAに関税権限はない」

ロバーツ長官の意見は、端的にいえば「IEEPAが与える“輸入の規制”権限に、関税賦課は含まれない」という整理です。ロバーツ長官は、条文上の根拠が不足していることを理由に、関税権限の読み込みを否定しました。

この結論部分には、保守・リベラル双方の判事が加わり、6名が同じ結論に到達しています(賛成:Roberts, Sotomayor, Kagan, Gorsuch, Barrett, Jackson/反対:Thomas, Alito, Kavanaugh)。

3-2. 「メジャー・クエスチョンズ原則」は“全員一致の理由”ではない(ここは要注意)

本件では、いわゆるメジャー・クエスチョンズ(重大問題)原則にも言及があります。
ただしこれは、ロバーツ長官の意見の一部にGorsuch判事・Barrett判事が加わったパートであり、Kagan判事(Sotomayor/Jackson両判事が加わる)は「この原則に頼る必要はない」として、その部分には参加していません。

ビジネス実務では「最高裁が重大問題原則で関税を止めた」と単純化されがちですが、より正確には、条文解釈(IEEPAの文言・構造・歴史)だけで足りる、とする見解も同じ“多数側”にある、という理解が安全です。

3-3. 反対意見:Kavanaugh判事(+Thomas/Alito)が実務混乱と代替手段を指摘

Kavanaugh判事は反対意見で、今回の結論は「大統領が誤った法的根拠(チェックボックス)を選んだだけで、別の法律なら関税は可能になり得る」趣旨の指摘をしています。
同時に、すでに徴収済みの関税をどう返すかは「“mess(混乱)”」になり得るとして、実務上の混乱にも触れています。


4. トランプ政権の即時対応:Section 122で「10%グローバル関税」へ

判決直後、トランプ大統領は**1974年通商法122条(Section 122)を根拠に、全世界からの輸入に対して一律10%の“グローバル関税”**を課す方針を表明しました。

Section 122(通商法122条)のポイント(条文ベース)

Section 122は、米国が国際収支(balance of payments)の深刻な問題に直面する場合に、以下の「一時的な輸入制限措置」を可能にする規定です。

  • 追加関税(import surcharge)は最大15%(ad valorem)
  • 期間は最長150日(延長には議会による法律が必要)
  • 原則として**非差別(nondiscriminatory)**での適用が前提

要するに、IEEPAより“打てる範囲”は狭いものの、手続きが比較的速く、全品目一律に近い課税を作りやすいのが特徴です(ただし時限で、延長には政治プロセスが絡みます)。


5. 「違法になった関税」は、企業にどう影響するか

5-1. すでに払った関税は戻るのか?――結論:可能性はあるが、手続きは簡単ではない

最高裁は、IEEPA関税を違法とした一方で、返金方法を具体的に指示していません。そのため、還付は主に**米国国際貿易裁判所(Court of International Trade)**での訴訟・整理を通じて進む可能性が高いと報じられています。

Reutersの解説では、違法関税の還付規模は推計約1750億ドルとされ、今後さらに訴訟が増える見通しです。

5-2. 実務のキモ:「Importer of Record(輸入者)」でないと取りこぼす

関税は原則として輸入者(Importer of Record)がCBPに申告・納付します。
そのため、実際に関税コストを負担していたのが販売会社・卸・小売であっても、契約関係によっては「還付を受ける権利」を直接持てない(=取りこぼす)リスクが指摘されています。

5-3. 還付までの流れは“通関の時間軸”に引きずられる

Reutersによれば、関税は輸入時に概算で納付し、後日「liquidation(確定)」で過不足を調整する運用が一般的で、確定は通常輸入後およそ314日とされています。今回のような大規模還付では、訴訟・確定・利息の扱いなどで年単位の時間がかかり得る、というのが現実的な見立てです。


6. 日本企業への示唆:自動車だけでなく“全品目”の再計算が必要

6-1. 自動車:27.5%→15%の経緯と、今回判決の位置づけ

日本の自動車・部品については、2025年に25%追加関税が課され、乗用車の米国MFN税率(例:2.5%)と合算して27.5%相当になる局面がありました。

その後、日米合意の実施を命じる大統領令(2025年9月)では、日本品の自動車・部品について、列(Column 1)税率+追加税率の合計が15%になる枠組みが明記されています。

一方で今回の最高裁判決は、IEEPAを根拠にした関税は不可としたものです。日本向けの枠組みはIEEPAを含む複数法令を根拠に掲げているため、行政側がどの権限で何を維持・修正するか(IEEPA部分を外しても同じ税率を維持できるのか等)は、今後の公式整理待ちになります。※ここは法務・通関・顧問弁護士とセットでの確認領域です。

6-2. 収益影響:各社が“関税前提”で業績見通しを組み替えてきた

関税はすでに実体経済にも影響しています。たとえばトヨタは、米国関税などを理由に営業利益見通しを下方修正し、関税影響を大きく見積もったと報じられています。
また、日産は米国関税の影響を受けた四半期損失を計上したこと、マツダは関税による営業利益への影響見込み(約1452億円)を示したことが報じられています。

今回の最高裁判断で「IEEPA関税が無効」になっても、同時にSection 122の10%時限関税が出てくるため、企業側としては“関税がゼロに戻る”と早合点せず、法令根拠別にコストを積み上げ直す必要があります。


7. ビジネスマンが今すぐ確認すべき4つ(実務チェック)

1) どの関税が「IEEPA由来」かを棚卸しする

  • インボイス品名やHSコードだけでなく、**追加関税の根拠(IEEPA/232/301/122など)**を通関資料(米国側ならエントリー情報)で確認してください。

2) 「輸入者(Importer of Record)」と契約条項を確認する

  • 還付の受領者になれるのは原則として輸入者です。
    販売契約・価格条項・関税負担条項(関税込み/別、価格改定条項、還付時の帰属)を見直し、**“還付が出たときに誰のものか”**を明確にするのが先です。

3) Section 122(最大15%・最長150日)を前提に短期シナリオを作る

  • 10%で出るとしても、150日という期限があるため、延長(=議会対応)の有無で状況が変わります。価格・在庫・納期・為替ヘッジを、少なくとも「150日で終わる/延長される」の2シナリオで準備してください。

4) 「232・301は残る」を前提に、過度な安心をしない

  • 今回無効になったのはIEEPA関税です。
    製品によっては232/301の影響のほうが大きいケースがあります。自社品目がどの枠組みに当たるかを、通関士・弁護士・フォワーダーと一緒に再点検するのが確実です。

8. 今後の見通し(結論)

今回の判決は、米国の関税政策に「大統領の非常権限でどこまでできるか」という線引きを突き付けました。一方で、政権側はSection 122を含む代替ルートを示しており、貿易摩擦が“終わる”というより、根拠法と手続きが切り替わりながら続く可能性が高い状況です。

日本企業としては、関税を「一過性の政策リスク」ではなく、

  • 契約(価格・再交渉)
  • 通関(根拠法別の税率管理)
  • 原産地・調達(どこからどこへ作るか)
    をセットで回す恒常的なリスク管理テーマとして組み込むことが現実的です。

参考資料

  • 米連邦最高裁判決(Learning Resources, Inc. v. Trump/Trump v. V.O.S. Selections, Inc.、2026-02-20、スリップオピニオン)
  • Reuters:最高裁判断の速報・解説(IEEPA関税違法/政権の代替策/Section 122)
  • IEEPA(50 U.S.C. §1701/§1702:条文)
  • 1974年通商法122条(19 U.S.C. §2132:条文)
  • ホワイトハウス:日米合意実施の大統領令(2025-09-04)
  • Reuters:トヨタ・日産・マツダ等、関税影響に関する報道

免責事項

本記事は、2026年2月20日時点で入手可能な公開情報(判決文、法令、報道等)に基づく一般的な情報提供を目的としています。記載内容は法務・税務・通関等の助言を構成するものではありません。関税対応・通関手続・還付請求・契約上の帰属等の具体的判断は、必ず弁護士・通関士等の専門家にご相談ください。制度・運用は変更される可能性があるため、最新の行政発表(CBP、ホワイトハウス、USTR等)および裁判所資料をご確認ください。

Learning Resources, Inc. v. Trump(2026年2月20日)判決(相互関税裁判)の要旨


判決要旨

米連邦最高裁 Learning Resources, Inc. v. Trump

ビジネスマン向け要旨


日本語版

一言で言うと

「トランプ大統領が議会承認なしに発動した相互関税は、法的根拠のない違法な行為である」と米連邦最高裁が2026年2月20日、6対3の多数決で判断した。 npr


事件の発端

トランプ大統領は2025年4月、貿易赤字の解消と違法薬物の流入阻止を名目に、国際緊急経済権限法(IEEPA)という緊急権限法を根拠として、ほぼ全ての国からの輸入品に相互関税を課した。 一部の国には最大145%にも上る関税が適用された。 IEEPAは1977年制定の法律であり、本来は国家安全保障上の緊急事態に際して大統領が経済制裁などを行うために設けられたものであり、過去のいかなる大統領もIEEPAを関税賦課に用いた前例がなかった。 theguardian


最高裁の結論

1. 関税を課す権限は議会にある

合衆国憲法は「税・関税・輸入税・物品税を賦課・徴収する権限」を議会のみに付与している。建国者たちは意図的に、課税権のいかなる部分も大統領(行政府)に与えなかった。 supremecourt

2. IEEPAは関税賦課権限を付与していない

IEEPAが規定する「輸入を規制する(regulate importation)」という文言は、通関手続きや経済制裁のルールを定める権限を意味するものであり、税を課す権限とは本質的に異なる。議会が関税賦課を授権する際は、過去の法律において常に「課税(duty)」という明確な文言と厳格な制限を伴って行ってきた。IEEPAにはそれがない。 supremecourt

3. 歴史的先例がない

IEEPAが制定されてから約50年間、どの大統領も同法に基づいて関税を課したことがなかった。これほど広範で前例のない権限行使は「重大問題(Major Questions)法理」に該当し、議会による明確な授権がなければ認められない。 jdsupra


トランプ政権の対抗措置

最高裁判決の数時間後、トランプ大統領は判決を「深く失望させるものだ」と批判した上で、IEEPAとは別の根拠である1974年通商法第122条(Section 122)に基づき、全世界からの輸入品に一律10%のグローバル関税を即時発動すると表明した。 ただしSection 122には発動期間150日間という上限があり、延長には議会承認が必要となる。 cnbc


ビジネスへの3つの重要ポイント

  1. IEEPA関税は違法と確定。支払い済みの関税の還付請求が可能になる道が開かれた。ただし手続きは複雑で、実現には時間を要する見込み。 swlaw
  2. 自動車・鉄鋼・アルミニウムに対するSection 232関税、中国向けSection 301関税は今回の判決の対象外であり、引き続き有効。 politico
  3. Section 122の10%関税は150日間の時限措置であり、議会が延長を承認するかどうかが次の焦点となる。企業はシナリオ別の対応策を今から準備すべき段階にある。 axios

English Version

The Bottom Line

On February 20, 2026, the U.S. Supreme Court ruled 6-3 that President Trump’s sweeping tariffs imposed under the International Emergency Economic Powers Act (IEEPA) are unconstitutional and unlawful. The Court held that IEEPA does not grant the President the power to impose tariffs without explicit Congressional authorization. reuters


Background

In April 2025, President Trump invoked IEEPA — a 1977 emergency powers law — to impose broad “reciprocal tariffs” on imports from virtually all countries, citing trade deficits and illegal drug trafficking as justifications. Tariff rates reached as high as 145% on Chinese goods. Crucially, no previous president in IEEPA’s 50-year history had ever used the law to impose tariffs. nbcnews


The Court’s Reasoning

1. The power to tax belongs to Congress alone

The U.S. Constitution vests the power to “lay and collect Taxes, Duties, Imposts and Excises” exclusively in Congress. The Framers deliberately kept this power out of the Executive Branch. A tariff is fundamentally a tax, and thus falls within Congress’s exclusive domain. supremecourt

2. The word “regulate” does not mean “tax”

IEEPA authorizes the President to “regulate importation,” but the ordinary meaning of “regulate” is to govern by rules or restrictions — not to impose taxes. When Congress has historically delegated tariff authority to the President, it has done so using explicit terms like “duty” with strict limits on rate and duration. IEEPA contains no such language. supremecourt

3. The Major Questions Doctrine applies

Because the President’s claimed authority involves one of the most significant powers in the Constitution — the power of the purse — the Court applied the “Major Questions Doctrine,” requiring clear Congressional authorization before such sweeping executive action can stand. No such authorization exists in IEEPA. forvismazars


The Administration’s Response

Within hours of the ruling, President Trump announced a new 10% flat tariff on all global imports, this time invoking Section 122 of the Trade Act of 1974. However, Section 122 carries significant constraints: the tariff rate is capped at 15%, the measure is valid for a maximum of 150 days, and Congressional approval is required for any extension. cnbc


3 Key Takeaways for Business Leaders

  1. IEEPA tariffs are now void. Companies that paid these tariffs may have grounds to seek refunds. However, the refund process through U.S. Customs and Border Protection (CBP) is expected to be complex and time-consuming. swlaw
  2. Section 232 tariffs on steel and aluminum, and Section 301 tariffs on Chinese goods, are unaffected by this ruling and remain fully in force. politico
  3. The new 10% Section 122 global tariff has a 150-day clock. Whether Congress extends this measure is the next critical milestone to monitor. Businesses should prepare contingency plans now. axios

免責事項

本要旨は2026年2月21日時点において公開されている情報に基づき、一般的な情報提供を目的として作成されたものです。法律上・税務上・財務上のアドバイスを構成するものではありません。関税対応・還付請求・貿易コンプライアンスに関する具体的な判断については、必ず専門の弁護士・税理士・通関士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによって生じたいかなる損害についても、筆者および掲載媒体は一切の責任を負いません。

IEEPA関税訴訟:現状確認

現在の最新ステータス

  • 待機状態: 現地時間では19日の夜であるため、まだ20日のセッションは始まっていません。
  • 専門サイトの動向: SCOTUSblogなどの主要な法曹メディアは、アメリカ時間の20日朝(日本時間の今夜)からライブブログを開始し、相互関税(Learning Resources, Inc. v. Trump)の判決が出るかどうかをリアルタイムで追跡する準備を整えています。
  • 予測の再確認: 裁判所は事前に「2月20日に意見を出す可能性がある」と示唆しており、ここが冬期休廷明けの最初の公表日となるため、非常に高い確率で何らかの進展があると見られています。

判決が期待される「アメリカ時間の20日」の予定

最高裁判所が判決(意見)を公表するセッションは、通常現地の午前10時に始まります。

  • 判決公表の開始(予測): アメリカ時間 2月20日(金)午前10:00
  • 日本時間での対応: 2月21日(土)午前0:00(今夜24時)

やはり、私はAIのGEMINIとは相性が悪い

世の中の人はGoogleのGeminiは素晴らしいというが、私にとってGeminiとの相性が悪い。

質問をしても間違った、とんちんかんな回答をくれるのだ。

2日前のセミナーで、HS2028について語ることになり、資料を準備していた。その際にHS2028というキーワードで検索したのだが「HS2027」と回答してくる。半年前なら学習が足らず、そういう回答をしてくることもあった。その後はHS2028と指摘を繰り返し、ようやく学んだかと思ったら、また、HS2027との回答。

そして、2月20日(アメリカ時間)の相互関税の判決がでるかもしれない日で、まだその日になっていないのに、Geminiは、20日になったが判決が出ておらず、結果は順延になりました、と返事してきた。

20日は日本時間、アメリカはまだだろうと私が言うと、「失礼しました。その通りです。」大丈夫なのだろうか。私のGeminiはボケ仕様なのだろうか。

その他のAIも使っているので、Geminiの結果は内容確認をしているが、回答はストレートには使えないと思っている。