革新的なツールであっても、実務にフィットしなければ意味がありません。
導入前のミスマッチを防ぐためにロジスティックでは、HSCFの操作性や機能を事前に検証できる「トライアル環境」を提供しています。
世界で有利に戦うための考え方
2025年11月25日、米通商代表部(USTR)は、中国に対する301条追加関税のうち178件の「除外(exclusions)」を約1年延長し、**2026年11月9日23:59(米東部夏時間)**まで有効とすることを発表しました 。ustr+1
対象は、太陽光パネル製造装置14カテゴリーと、産業・医療機器など164カテゴリー(電動モーター、血圧計、ポンプ部品、自動車用エアコンプレッサー、プリント基板など)で、いずれも主にB2B用途の中間財です 。ustr
背景には、**米中間の新たな経済・貿易合意(Kuala Lumpur Joint Arrangement)**があり、中国側のレアアース輸出規制の緩和や米農産品輸入拡大と「パッケージ」で決まった措置です 。cassidylevy+1
以下では、この決定がグローバル調達・生産戦略、価格交渉、リスク管理にどのような意味を持つのかを整理します。
米国通商法301条(Section 301 of the Trade Act of 1974)は、相手国の不公正な貿易慣行に対して、米国が一方的に是正措置(関税引き上げなど)を取る権限を大統領・USTRに与える条文です。
2017年に米国は、中国の技術移転強要・知的財産権侵害・イノベーション政策を巡って301条調査を開始し、2018年以降、いわゆるList1〜4と呼ばれる段階的な追加関税(25%や7.5%など)を導入しました。
301条関税には、プロダクトごとに追加関税を免除する「除外」制度があります:
この除外は期限付きで、ここ数年は3〜6カ月単位で延長されてきました。特に今回延長の対象となったのは:
今回公表された連邦官報(Federal Register)通知では、以下のように定義されています:
USTRのプレスリリースでは「2026年11月10日まで」と表現されていますが、実務的には11月9日深夜までの通関分が対象と理解するのが安全です 。kpmg+1
報道やUSTRの説明によれば、対象は主に以下の2グループです:ustr
太陽光パネル製造関連(14カテゴリー)
産業・医療用途を中心とする中間財(164カテゴリー)
いずれも、最終消費財というより、設備・部品・医療機器などの中間財です。B2Bの製造業・医療機器産業にとって重要な入力財である、というのが共通点と言えます。
連邦官報では、これらはHTSUS(米国輸入統計品目表)の特定の臨時番号(9903.88.69・9903.88.70)および関連する注記で定義されており、「記載条件を満たすすべての輸入者に適用される」と明記されています。
USTRは2025年9月16日付けで、178件の除外を2025年11月以降も延長すべきかどうか、パブリックコメントを募集しました。評価軸として、以下を挙げています:
その結果、178件中147件が延長支持のコメントを受け、反対意見があったのは10件のみでした。多くの企業が、「現時点で中国以外の供給源は量・品質ともに十分ではない」「急激な関税復活は、米国内の製造や医療提供に悪影響を与える」といった趣旨の懸念を表明したとされています。
さらに大きな要因が、**2025年10月30日に韓国で開催されたトランプ大統領と習近平国家主席の会談を受けて合意された「Kuala Lumpur Joint Arrangement」**です 。cassidylevy+1
ホワイトハウスの資料によると、この合意で中国は以下を約束しました:whitehouse
これに対して米国側は:
することを約束しました 。whitehouse
今回の除外延長は、こうした一連の「貿易休戦」の一部と位置付けられます 。cassidylevy
注意すべきは、対中政策が「軟化」したわけではないという点です。
2024年5月には別途、電気自動車(EV)、リチウムイオン電池、重要鉱物、医療用手袋などに対して、今後数年にわたって301条関税を引き上げる方針が示されています(EVは最大100%)。
今回延長されたのは、代替サプライヤーが限られ、米国内の製造業・医療・エネルギー政策にとって短期的な課税が「自傷行為」になりうる品目にほぼ限定されています。つまり、「戦略的に守る分野」と「一定の猶予を与える分野」を切り分けた結果と見るのが妥当です。
中国拠点から米国へ設備・部品・医療機器コンポーネントなどを輸出している企業は、まず次の点を確認する必要があります:
該当する場合、2026年11月9日(米東部夏時間)まで追加関税なしで輸出できる見通しが立ちます。一方、除外に該当しなければ、従来通りの追加関税負担が継続します。
今回の延長により、「2025年末で採算が合わなくなる」と見込んでいた案件が、あと1年弱は現状条件を維持できるケースも出てくるはずです。
ここ数年、多くの企業が301条関税や地政学リスクをきっかけに、中国からベトナム・メキシコ・インドなどへの生産移管を進めてきました。
今回の延長により:
という意味で、完全なブレーキではなく、「時間を与えられた」という性格が強いと言えます。
経営的には、キャパ増設や新工場投資は計画通り進めるが、稼働タイミングや投資回収シナリオを1年シフトさせる、といった微調整があり得る局面です。
301条関税は、サプライ契約の中で「関税分は価格に転嫁する」「関税が変わった場合は再交渉する」といった条項(tax pass-through clause)として組み込まれていることが多くあります。
今回予定されていた2025年末の関税復活が回避されたことにより:
も出てきます。
調達側・販売側とも、**「想定していた前提条件が変わった」**という認識を共有し、契約条項の読み直しが必要です。
除外はHSコード(10桁)と商品説明の組み合わせで機械的に判定されます。わずかな仕様差や組み立て工程の違いで、**「同じと思っていた品目が別のコード扱い」**になることも少なくありません。
税関での判定が変われば、突然301条関税の対象になるリスクがあります。
したがって:
することが、今回の延長を活かす前提条件になります。
輸出入・調達データの抽出
HSコード/商品説明と除外リストの照合
2026年11月9日以降:
a. さらに延長される
b. 一部だけ延長され、多くは失効する
c. 全面失効し、フル関税復活
という複数シナリオを想定し、それぞれについて:
を「逆算スケジュール」で描いておくと、政策変更があっても慌てずに済みます。
301条関税は、単体で動いているわけではなく:
とセットで設計されています。
自社の事業が:
を整理することで、投資先・生産地の優先順位も見えやすくなります。
今回のように、関税が3カ月延長→さらに3カ月→一気に約1年延長と、政治判断により前提条件が揺れ動く状況が続くと:
をあらかじめ**「上乗せしておく」発想**が重要になります。
今回のUSTRによる301条除外の2026年11月までの延長は:
一方で:
を踏まえると、**「関税リスクが去った」のではなく、「タイムリミットが1年延びた」**と捉えるのが現実的です。
本稿は公開情報に基づく一般的な情報提供であり、法的・税務的アドバイスではありません。実際の取引・投資判断に際しては、必ず通関ブローカー、弁護士、税理士など専門家と相談のうえ、最新のUSTR通知・連邦官報の原文を確認することをお勧めします 。kpmg+1
欧州シンクタンクTransport & Environmentが、主要19社(欧州・米国・日本・韓国・中国OEM)によるEV・電池・充電インフラ投資(2021〜23年、総額2,650億ユーロ)を地域別に分析しています 。結果は明確です:transportenvironment
つまり、大手自動車メーカーの約4割近いEV関連投資が北米、特に米国に向かっており、欧州や中国よりも「投資先としての魅力」が高いことが数字で裏付けられています 。transportenvironment
米国内だけを切り取ると、インパクトはさらに大きく見えます。Biden政権発足(2021年)以降、EVとバッテリーの製造・サプライチェーン向け投資は累計3,120億ドル(約47兆円、1ドル=150円換算)に達しました 。transportenvironment
Rhodium Groupの「Clean Investment Monitor」によると、IRA施行からの3年間で:
「EV・電池という成長分野の投資重心は、明確に米国へ移っている」──これが、数字から見える現状です。
Transport & Environmentの分析は、北米の投資優位の主因を2022年に導入されたIRAと結論づけています 。IRAのポイント:transportenvironment
これらにより、**「EVを売るためには北米で作るのが一番得」**という構図が世界のメーカーに共有されました 。transportenvironment
バイデン政権は2024年に対中制裁関税を強化し:
欧州連合も2024年に中国EVに対し、最大45.3%の追加関税(既存の10%輸入関税に上乗せ)を導入しました 。transportenvironment
これにより、「中国から完成車を輸入して売る」モデルは成立しにくくなり、北米と欧州の大市場に入りたいなら、その地域で作るか、域内生産拠点(北米ならメキシコ・カナダ)を置く必要が出てきました 。transportenvironment
2025年11月、トヨタはノースカロライナ州リバティの電池工場で量産開始を発表しました:automotivelogistics
トヨタのEV関連投資の89%は北米向けで、欧州向けはわずか10%です 。transportenvironment
ホンダも米国リスクに直接対応:
これは「米国内で電池と車をセットで作り、『中国製部材+輸入完成車』という構図から距離を置く」明確なサプライチェーン再構築の動きです。
Transport & Environmentの分析では:
欧州はEV投資全体の26%しか引きつけられておらず、その大半が欧州メーカー自身による”身内投資”で、アジア勢からの大型投資は北米ほど集まっていません 。transportenvironment
トランプ政権の法案「One Big Beautiful Bill Act(OBBBA)」は2025年7月に成立し:univis-america+1
Rhodium Groupの2025年Q2レポートによると:
AP通信によると、2025年に入ってから140億ドル超のクリーンエネルギー投資がキャンセル・延期され、1万人規模の雇用が失われました。
トランプ政権下で:
結果、2030年のEVシェア見通しは40%→27%に下方修正されました。トヨタやVWなど複数メーカーが、EVシフト一辺倒から**ハイブリッド・ガソリン車を含む”マルチパスウェイ戦略”**に舵を切り直しています 。automotivelogistics
建設中のクリーンテック製造・エネルギー関連プロジェクトの未投資残高は5,170億ドル、うち製造分が1,120億ドルで、その約9割がEVサプライチェーン関連です。これらは埋没費用として数年かけて投資が継続される性格のものです。
結果として、中国メーカーにとって北米・欧州は「現地生産を真剣に検討せざるを得ない市場」となり、北米・欧州に工場を持つ既存OEMとそのサプライヤーにとっては構造的な参入障壁が生まれています。
**「米国の追い風は弱まったが、欧州がそれ以上に出遅れている」**というのが、2025年時点の冷静な見立てです。
キャッシュ創出拠点としての北米
高単価SUV・ピックアップ・ハイブリッドを中心に、利益創出の”母屋”として北米を位置づける発想は依然として合理的です 。一方で、OBBBAによる税制変更、規制の振れ幅の大きさ、州政府レベルの政策差を踏まえると、**「州ごとのインセンティブ頼みで過大投資しない」「設備を複数パワートレインに転用可能な設計にする」といった”オプション価値を残す投資設計”**が鍵になります。automotivelogistics
今後10年を見据えると、自動車サプライチェーンは以下の3ブロックで考えるのが現実的です:
北米ブロック(US+カナダ+メキシコ)
欧州ブロック(EU+UK+周辺国)
中国+新興国ブロック
日本企業視点では、実需と収益を取る「北米」、規制・ブランド構築の「欧州」、技術・コスト競争力を磨く「中国・新興国」という役割分担を明確にする必要があります。
完成車メーカーだけでなく、部品・素材・設備メーカーにもチャンスがあります:
これらは北米に建設中のEV・電池工場群に対して長期的な需要が見込める分野です。
したがって、日本企業にとって重要なのは、「米国シフトの波に乗るか/乗らないか」ではなく、**「どの程度のリスクを取り、どれだけオプション性を確保しながら米国を活用するか」**という設計です:
こうした視点を持てるかどうかが、「米国に傾く自動車投資の潮流」をチャンスに変えられるかどうかの分かれ目になっていきます。
※本記事の内容は、公開データ・公的機関・主要メディア(Rhodium Group, Transport & Environment, Reuters, AP等)の情報をもとに確認し、日本語として読みやすい形に整理・校正しています 。reuters+5
長らく開発を続けてまいりました「HSコード・ファインダー(HSCF)」ですが、 いよいよ本日、正式に利用が可能となりました。
貿易実務や通関業務において、やはり「HSコード」の特定は悩ましい課題のひとつ。 その課題に真っ直ぐ向き合うツールとして、ようやく皆様にお届けできます。
▼ 新サイトはこちら [https://global-scm.com/hscf/]
今後、HSCFに関する操作方法のQ&Aや、HSコードにまつわる最新情報、FAQなどのコンテンツは、すべてこの新サイトに集約して発信していきます。
ぜひブックマークしていただき、日々の業務にお役立てください。 今後ともよろしくお願いいたします。
2025年9月の改正案提出と衝撃
2025年9月、メキシコのシェインバウム政権は2026年度予算関連法案の一環として、輸出入関税法(LIGIE)の改正案を議会に提出しました。その核心は、一般関税率(MFN税率)の大幅な引き上げにあります 。spglobal+1
重要事項: 日墨EPAやCPTPP、USMCA(米国・カナダ)の要件を満たす「FTA相手国原産品」は、今回の引き上げ対象外です。日本原産品は引き続き無税または低関税が維持されます。
最新動向:2027年までの審議凍結
しかし、2025年10月28日、メキシコ連邦下院・経済通商競争委員会は、同法案の最終案取りまとめ期限を**「2027年8月末まで延長」**することを決定しました。これにより、法案が本会議で採決されるのは数年先となり、事実上の「棚上げ」となりました 。mex.news.o-abroad
【注意】ここが最大のリスクです
法案審議は止まりましたが、メキシコ憲法第131条および貿易法第4条に基づき、大統領は**「政令(Decreto)」によって関税率表(TIGIE)を随時変更する権限**を持っています。「包括的な法改正」は延期されましたが、「政令による特定品目のピンポイント利上げ」はいつでも発動可能な状態にある点に警戒が必要です 。whitecase+1
今回の決定の背景には、内外からの強い圧力がありました。
(1) 国内産業界からの悲鳴
急激な関税引き上げは、非FTA国からの輸入に依存するメキシコ国内産業を直撃します。
(2) 中国による対抗措置の示唆
中国商務省は2025年9月、メキシコの関税方針に対し「貿易・投資障壁調査」の開始を発表し、強く牽制しました 。メキシコ新車市場における中国製車両(中国ブランドおよび欧米メーカーの中国生産車)のシェアは20.2%に達しており、経済的な結びつきは無視できないレベルにあります 。cfr+1
(3) 「2027年まで」の政治的意味
委員会による審査期限の延長は、以下のバランスを取るための高度な政治的判断といえます。
公表情報と報道 から読み解く、政府の本音は以下の通りです。unav+1
4-1. 「日本原産」は安全だが、「メキシコ生産」は別問題
日本からの輸出品(日本原産)はEPA/CPTPPで守られますが、**「メキシコ工場がアジアから調達している部材」**はMFN関税引き上げの対象となり得ます。
4-2. リスクが高い企業の特徴
4-3. 日本企業にとってのチャンス
中国製品のコスト競争力が低下すれば、日本製品や北米生産品への回帰が進む可能性があります。品質と信頼性を武器に、メキシコ市場でのシェアを拡大する好機ともなり得ます 。automotivelogistics
本記事は2025年11月27日時点の情報に基づいています。メキシコの通商政策は流動的であるため、最新の官報(DOF)および専門家のレポートを継続的に確認してください。
~トランプ関税・報復関税リスクへの「攻め」の契約戦略~
現代の国際取引環境において、契約書に「関税変動条項(Tariff Adjustment Clause)」が含まれているかどうかで、ビジネスリスクの所在は劇的に変わります。本稿では、日本企業の海外事業・法務担当者向けに、その重要性と導入のポイントを整理します。
※免責事項
本稿は一般的な情報提供を目的としており、法的助言を意図したものではありません。最終的な契約条項の策定にあたっては、必ず管轄法域の弁護士にご相談ください。
トランプ政権(第2次)による広範な関税政策や、それに対する各国の相互関税(レシプロカル関税)により、関税率は「一夜にして」変動する変数となりました。米国の対中追加関税や大統領令による緊急的な税率変更はその典型です。
一部の調査では、過去のトランプ関税を受けて契約見直しを検討した日本企業は約2割にのぼるとされていますが、現場レベルでは依然として「価格は数年間固定」「DDP(関税込持込渡し)条件だが、関税急騰時の免責がない」といった契約が多く見受けられます。
関税変動条項がない場合、突然の関税引き上げ分は、インコタームズ上の関税負担者(DDPなら売り手、FOB/CIFなら買い手)が全額被ることになります。薄利な取引であれば、一度の関税引き上げで利益が吹き飛び、赤字事業へ転落するリスクがあります。
こうした背景から、国際的な法律事務所やロジスティクス業界では、関税リスクを契約上の「変動要素」として定義することが強く推奨されています。
関税変動条項とは、**「契約期間中に、関税や関連する政府賦課金(サーチャージ等)が変動した場合に、そのコスト増減を価格にどう反映させるか、あるいは誰が負担するかをあらかじめ定めた条項」**です。
海外の実務では以下のような名称で呼ばれ、導入が進んでいます。
多くの企業が「関税が上がったら不可抗力条項で逃げられる」と考えがちですが、これは危険な誤解です。
したがって、現代の契約実務では**「不可抗力条項+関税変動条項」のセット運用**が世界的なトレンドとなっています。
関税変動条項は、リスクの分担方法によって大きく3つに分類できます。自社の立場(売り手か買い手か)と交渉力に応じて使い分ける必要があります。
まず、既存契約のインコタームズを確認し、自社が関税負担者となっている取引(DDP等)を特定します。次に、それらの製品のHSコードが「報復関税や輸入制限の対象になりやすい品目(自動車、鉄鋼、半導体、EV関連等)」かどうかを洗い出します。
「米国関税一律+10〜20%」「特定国向け報復関税+60%」など、現実的なシナリオを策定し、現在の粗利率でどこまで耐えられるか(損益分岐点)を試算します。これにより、「関税発動で即赤字になる契約」を優先的な対策対象として特定します。
今後締結する契約には、以下の要素を含む条項を標準的に盛り込むべきです。
長期契約については、契約更新時や中間レビューのタイミングで覚書(Amendment)を締結し、条項を追加します。「昨今の地政学リスクの高まりを受け、安定供給を維持するために相互のリスクヘッジが必要」という文脈で提案するのが有効です。
条項があっても運用できなければ意味がありません。
効果的な条項にするために、以下のポイントを押さえてください。
条文例(概要)
第○条(関税等の変動)
- 本契約締結日以降、対象製品の輸入に関連して適用される関税、輸入税、その他公租公課(以下「関税等」という)の新設、税率変更、または分類変更が生じ、これにより売主(または買主)が負担すべき関税等の額が契約締結日時点と比較して【○%】を超えて増加した場合、当事者は信義誠実の原則に基づき協議を行い、当該増加分を反映した価格改定を行うものとする。
- 前項の協議開始から【△日】以内に価格改定の合意に至らない場合、不利益を被る当事者は、相手方に対する書面による通知をもって、本契約の全部または一部を解除することができる。
- 関税等の負担額が契約締結日時点と比較して【○%】を超えて減少した場合も第1項と同様とし、買主からの請求に基づき、売主は価格の引下げについて協議するものとする。
関税リスクが常態化した現在、関税変動条項は単なる法務上のテクニックではなく、企業の利益を守るための必須の経営ツールです。「先に条項を入れておく」ことで、突発的な事態における交渉の主導権を確保し、予見可能性を高めることができます。
まずは自社の主要な海外取引について、「どの契約が無防備か」を棚卸しすることから始めてみてはいかがでしょうか。
【メキシコ】最大50%関税案、2027年まで「棚上げ」の背景と日本企業への影響
現在報じられている「メキシコ財界による最大50%関税案の延期要請」というニュースは、要約すると以下の通りです。
「中国などFTA非締約国からの約1,400品目に対し、最大50%の関税を課すという法改正案に対し、メキシコ経済界が『急激な実施は経済への打撃が大きい』として、少なくとも2027年までの延期・段階的適用を議会に働きかけ、審議が延長された」
これは単なる「対メキシコ輸出」の話ではなく、**「メキシコ生産拠点で、中国・アジア製の部材や設備を使用している日本企業」**のコスト構造に直結する重要な局面です。
シェインバウム新政権下の経済政策(および前政権からの流れ)の一環として、中国、インド、韓国、台湾など**「FTAを締結していない国」からの輸入品(約1,400〜1,500品目)に対し、最大50%の関税を課すLIGIE(一般輸出入税法)改正案**が下院で議論の遡上に載りました。
今回の法案は突発的なものではなく、2024年から続く一連の保護主義的政策の延長戦上にあります。
メキシコ経営者連盟(Coparmex)などの産業界は、以下の理由から急激な関税引き上げに強く反対しています。
【財界の要求】
「2026年の一括実施ではなく、2027年までの段階的導入とし、品目ごとに国内供給能力を見極めた調整を行ってほしい」とロビー活動を展開しました。
また、与党モレナ(MORENA)所属のポレンスキー下院議員(元党首)も「中国からの投資誘致と雇用創出を優先すべき」と述べ、拙速な関税引き上げが招くインフレや企業倒産のリスクに警鐘を鳴らしています。
これにより、「議会を通じた法改正による大幅な関税引き上げ」は、当面の間(2027年まで)凍結される公算が高まりました。
⚠️ 注意点:リスクは消えていない
議会審議は延期されましたが、メキシコでは大統領令(政令)によって関税率を変更することが可能です。法改正が停滞しても、行政判断で突発的に関税が引き上げられるリスクは依然として残っています。
日墨EPA(経済連携協定)があるため、「日本原産品」はMFN関税引き上げの影響を直接受けません。
中国製品のコスト増により、メキシコ市場において日本製品(または日本企業の北米生産品)への切り替え需要が発生するチャンスでもあります。
この「猶予期間(〜2027年)」をどう使うかが鍵となります。
英国とGCC(湾岸協力会議)のFTA交渉は、2022年の開始から3年を経て、いよいよ「政治決断待ち」の最終段階に入りました。
本協定は、世界を一変させる巨大協定ではないものの、**「じわっと効く中規模の実利型FTA」**として、日本企業の欧州・中東戦略にも無視できない影響を与えます。
現状のステータスと、日本企業が備えるべきポイントを整理します。
2022年の交渉開始以来、多くのラウンドを重ねてきましたが、ここに来て急速に機運が高まっています。
2025年9月〜10月にかけて、交渉妥結に向けたハイレベルの政治的動きが活発化しています。
英政府の方針や専門機関の分析に基づくと、合意内容は以下の「物品・サービス・投資」の3本柱となる見込みです。
英国経済の強みであるサービス分野の開放が重要論点です。
このFTAは「対岸の火事」ではありません。日本企業のビジネスモデルに対し、以下の3つの側面で影響を与えます。
「英国=対GCC輸出ハブ」としての価値向上
英系競合との競争激化
「合意間近」の今、ビジネスパーソンが準備すべきは以下の4点です。
英GCC FTAは、派手さはなくとも、「英国という技術・金融ハブ」と「GCCという資本・エネルギーハブ」の結びつきを制度化する重要なパイプです。
日本企業としては、単にニュースとして受け流すのではなく、「自社の英国拠点がGCC向けビジネスの武器になり得るか」、あるいは**「GCC市場で英国ライバルにどう対抗するか」**という視点で、具体的な戦略の見直しに着手すべきタイミングです。
かつて多くの企業は、「1つの商品には1つのHSコード」という前提で実務を組み立ててきました。しかし現在、その前提は崩れつつあります。
このように、「二重どころか多重のHSコード」を管理することが日常になりつつあります。
HSコードは上6桁までは世界共通ですが、7桁以降は各国が国内制度に合わせて独自に細分化しています(例:EUのCN/TARIC、日本の統計品目番号やNACCSコードなど)。(出典:DHL)
さらに、共通であるはずの「最初の6桁」についても、各国税関が独自に分類判断を行うため、同じ品目でも国ごとに異なるHSコードになる可能性があることが公的機関からも明示されています。(出典:ジェトロ)
そこに、HS2017→2022→2028という版改正と、EPA/FTAごとの「HS版のズレ」が重なり、「二重HSコード時代」が本格化しているのが現状です。(出典:世界税関機関)
本稿では、経営・実務の両面から、この複雑な状況を前提とした管理戦略を解説します。
貿易には必ず「輸出」と「輸入」の2つの側面があり、それぞれ参照するコード体系が異なります。
輸出時に使用したHSコードが、そのまま輸入国でも通用するとは限りません。「輸出国と輸入国でHSコードが異なるのは、むしろ普通である」という認識を持つ必要があります。(出典:eusmecentre.org.cn)
HSコードは技術進歩や貿易構造の変化に対応するため定期的に改正されます。最新版は2022年版ですが、次期改正となる**「HS2028」**に向けた準備もすでに進んでいます。(出典:ジェトロ)
一方、EPA/FTAの原産地規則は「協定締結時のHS版」で固定されることが多いため、以下のようなねじれが生じます。
結果として、1つの製品について以下の「版の異なるコード」を同時に扱う必要があります。
HSコードは「6桁まで共通」ですが、その後ろには各国の独自ルールが存在します。
日本では7〜9桁が統計細分、10桁目はNACCS用コードという構造です。(出典:ジェトロ)
さらに米国では、輸出用のSchedule B、輸入用のHTSといった「目的に応じたコード体系」が併存しています。(出典:ctp-inc.com)
ビジネスの現場視点で見れば、1つの品目に対して以下のコードを併走させるのが現実解となります。
輸出側と輸入側で分類認識が食い違うと、輸入地での税関事後調査で更正・追徴課税が発生する恐れがあります。
特に高関税品目やセーフガード対象品では、分類次第で関税率が数十%変わることもあります。また、通関トラブルによる納期遅延は、顧客クレームや在庫増などサプライチェーン全体に悪影響を及ぼします。
公的なQ&Aでも「輸出者が通知してきたコードを安易に用いると更正リスクがある」と警告されており、輸入国側での「事前教示」制度の活用が推奨されています。(出典:ジェトロ)
FTAの原産地規則はHSコードに基づいてルールが定められています。そのため、参照する「HSの版(年次)」を取り違えると、原産資格の判定そのものを誤る可能性があります。
実務上は、「HS2022ではこの番号だが、協定はHS2012ベースなので別の番号に読み替えて判定する」といった作業が必須です。これを怠ると、適用できるはずの特恵関税を見逃したり、逆に不適切に適用して検認で否認されるリスクが高まります。(出典:ジェトロ)
国別・版別のコードがバラバラに管理されていると、品目マスタが破綻し、海外拠点ごとに「独自のHS管理表」が乱立しがちです。
ERP、GTM(貿易管理システム)、原産地管理システムなどの複数システム間でHSコードが二重・三重に登録され、その整合性維持に膨大な工数が発生します。
次期「HS2028」対応では、HS2022との相関表に基づいた一斉更新が必要となるため、マスタ管理が甘い企業ほど対応コストが跳ね上がると指摘されています。(出典:ロジスティック専門家)
「どの国でもこの1コードで通るはず」という発想は、もはやリスクでしかありません。公的情報でも、国による分類差異はあり得ると明言されています。(出典:ジェトロ)
経営としては、以下の前提に切り替えることが出発点です。
「1製品には、国別・版別・用途別の『複数のHSコード』が存在する。重要なのは、何をどの目的で使うかを明確に区別して管理することである」
品目コードそのものではなく、品目に紐づく「属性情報」としてHSを管理するイメージが重要です。
このような「マスタデータとしての構造化」は、サプライチェーン全体の基礎情報を定義するMDM(Master Data Management)と同じ発想で取り組むべき課題です。(出典:3rdwave.co)
HSコードは数字だけ管理しても意味がありません。後から「なぜその番号にしたのか」を説明できるように、以下の情報をセットでマスタ登録しておくことが推奨されます。
実際に最新のHS管理ツールでは、「HSコードと法令根拠をセットで登録する」機能が標準化しています。(出典:guidance.jaftas.jp)
説明責任(アカウンタビリティ)の確保は、税関対応だけでなく、内部監査やグローバル本社への報告においても不可欠です。
ビジネス視点で整理すると、1品目に対して以下のような「HSスロット」を用意する設計が有効です。
| スロット種別 | 典型的な中身 | 主な用途 |
| Global HS6 (現行版) | HS2022の6桁 | グローバル共通言語、基本統計、全体管理 |
| 国別輸入コード | 日本(9-10桁)、EU CN、米国HTS等 | 関税計算、輸入申告、国内規制判定 |
| 国別輸出コード | 日本輸出統計品目番号、他国輸出コード | 輸出申告、貿易統計 |
| 協定別HS6 | 日EU(HS2017)、RCEP(HS2022)等 | 原産地規則判定、特恵税率適用 |
| コントロール用 | DUIコード、該非判定用 | 安全保障輸出管理 等 |
【実装のポイント】
次期HS2028では、エレクトロニクス・医薬品・グリーンテック・デュアルユース製品などで大きな改正が予定されています。(出典:ロジスティック専門家)
WCOはHS2022とHS2028の相関表(コンコーダンス)作成に着手しており、これが企業側の移行作業におけるメインツールとなります。(出典:世界税関機関)
企業が取るべき基本戦略は以下の通りです。
組織面では、以下のような役割分担(RACI)とナレッジ管理がカギとなります。
3か月で体制を整えるためのイメージプランです。
「二重HSコード時代」への対応は、単なる事務処理の話ではありません。
これらは、ビジネスモデルや収益構造に直結するテーマです。
「1製品=1HSコード」という古い前提を捨て、多重HSを構造的に管理し、継続的なHS改正を経営課題として扱うこと。
これこそが、グローバルビジネスにおける守りと攻めの要となります。
「名目関税率だけを見ていると、キャッシュフローとコンプライアンスの“落とし穴”にはまる」
現在、メキシコでは非FTA諸国(中国など)からの輸入に対する規制強化が進行しています。特に注意すべきは、**「MFN(一般関税率)の大幅引き上げ」と「推定価格制度(保証金制度)の対象拡大」**が同時に発生している点です。
この2つが組み合わさることで、単に関税コストが増えるだけでなく、輸入時に**巨額の保証金(デポジット)**を長期間預託せざるを得なくなり、企業のキャッシュフローを劇的に悪化させるリスクがあります。
メキシコ政府は国内産業保護を目的として、関税率の引き上げを断続的に実施しています。
財務省(SHCP)が定める「推定価格(参照価格)」を下回る単価で輸入する場合、差額分の税相当額を保証金として預け入れる制度です。
推定価格制度の保証金計算には、MFN税率が使用されます。そのため、MFN税率が引き上げられると、納めるべき保証金の額も相乗的に膨れ上がります。
保証金は、以下の計算式で算出されます。
保証金額 = (推定価格ベースの税額総額) − (実際の申告価格ベースの税額総額)
※税額総額 = 関税 + DTA(税関手数料) + VAT(16%)
関税率はVATの計算基礎(課税標準)にも含まれるため、関税率の上昇は「関税額」と「VAT額」の両方を押し上げ、結果として保証金(差額)を激増させます。
| 項目 | ケースA:関税率 20% | ケースB:関税率 50% |
| 推定価格ベース税額 (関税+VAT等) | 関税 $2,000 + VAT等 → 合計 約 $3,920 | 関税 $5,000 + VAT等 → 合計 約 $7,400 |
| 申告価格ベース税額 (関税+VAT等) | 関税 $1,400 + VAT等 → 合計 約 $2,744 | 関税 $3,500 + VAT等 → 合計 約 $5,180 |
| 預託すべき保証金 | 約 $1,176 | 約 $2,220 |
結論: MFN税率が上がると、同じ「安値調達」であっても、資金拘束される保証金額は約2倍に跳ね上がります。これが毎回の輸入ごとに発生し、約6カ月間(通関後)キャッシュがロックされます。
FTA(日墨EPAやCPTPP)やIMMEX(一時輸入)を適切に活用できている場合は影響を回避できますが、以下のケースでは「直撃」を受けます。
推定価格対象品目の輸入は、単にお金を払えば良いだけではありません。実務手続きも複雑化します。
「関税が上がった」というニュースだけで終わらせず、実務への落とし込みが必要です。
メキシコ政府は、安価な輸入品に対する監視を、**「関税率(コスト)」と「推定価格(手続き・キャッシュ)」**の両面から強化しています。
日本企業としては、単に「MFN税率」だけを見るのではなく、**「MFN引き上げ × 推定価格制度」**という複合的なリスクシナリオを前提に、調達・販売戦略を再構築する必要があります。