日ペルーEPA:PDF発給化で見落としやすい必須項目と実務の組み替え方


2026年8月3日から、日ペルーEPAに基づく第一種特定原産地証明書(CO)の発給は、専用紙からPDFファイルによる電子発給に切り替わります。meti+1​
紙の原本がなくなる「だけ」に見えますが、実務のボトルネックは「輸出書類の必須項目を、誰が・いつ・どの根拠で確定させるか」という工程設計に移ります。jcci

結論から言うと、必須項目そのものは協定に付属するCO様式と記載要領で定義されており、PDF化によってフィールド構成が大きく変わるわけではありません。customs+1​
一方で、PDF化により、これまで紙運用の中で吸収されていた誤記や手戻りが減り、入力品質がそのまま通関品質・原産地管理品質として露呈しやすくなります。

以下では、まず日付と対象範囲を整理したうえで、協定様式に沿って必須項目をフィールド単位で分解し、PDF化でミスが増えやすい箇所と、社内フロー再設計のポイントまで落とし込みます。meti+1​


1. いつから何が変わるか:境目は「承認日」

今回の切り替えで重要なのは、「出荷日」ではなく、発給審査システム上の「承認日」が紙とPDFの境目になる点です。jcci

  • 経産省は、日ペルーEPAに基づくペルー向けCOについて、2026年8月3日よりPDFファイルでの発給に切り替えると公表しています。meti
  • 日本商工会議所(JCCI)は、専用紙での交付は「2026年7月31日までに発給審査で承認を受けた分まで」とし、2026年8月3日以降の承認分はすべてPDF形式による電子発給とする旨を明示しています。jcci

1.1 切替日と専用紙の扱い

  • 2026年8月3日以降に承認される日ペルーEPAのCOは、すべてPDFファイル形式で電子発給されます。meti+1​
  • 専用紙での交付は、2026年7月31日までに承認された申請分までであり、「出荷日」ではなく「承認日」が紙・PDFの切替基準になります。jcci

1.2 すでに発給済みの紙COの有効性

  • 日本商工会議所は、2026年7月31日以前に承認を受けて専用紙で発給されたCOについて、2026年8月3日以降も、有効期間内であればペルー税関(SUNAT)で受理されると案内しています。jcci
  • 日ペルーEPAの運用手続では、Proof of Origin(原産地証明)の有効期間は原則「発給日から12か月間」とされており、その範囲内であれば単一の輸入申告に使用できると定められています(例外規定あり)。mofa

1.3 受け取り方と支払い方法の変更

  • PDFは、発給審査の承認完了と手数料入金の確認後に、システム上からダウンロードする形で受け取ります。窓口での受け渡しや郵送による原本受領は行われません。jcci+1​
  • 手数料の現金払いは廃止される方向が示されており、銀行振込や口座振替など、非現金ベースでの支払い方法に整理されます。詳細はJCCIの案内に従って社内経理フローと締日を調整する必要があります。jcci+1​

2. PDF化で「必須項目」が変わるのか:原則は変わらない

COの必須項目は、協定の運用手続に付属する様式(見本)および記載要領で定義されており、PDF化によって項目自体が増減するわけではありません。acuerdoscomerciales+1​
日ペルーEPAのCO様式も、Exporter、Producer、Importer、Shipment details、Description of goods/HS、Origin criterion、Quantity、Invoice、Remarks、署名欄等のフィールド構成は維持されます。mofa+1​

ただし、PDF化は次の意味で「必須項目の重み」を変えます。

  • PDFは発給後の追記・修正が基本的に認められない
    協定の運用手続では、原産地証明書に対する無権限の修正があった場合、証明が無効と見なされ得ることが規定されています。mofa
    紙の時代に現場で起こりがちだった手書きの追記、スキャン後の注記、トリミング等の編集は、PDF原本を前提とする運用ではリスクが高くなります。
  • 署名やスタンプは電子的に印字され得る
    発給機関側の案内では、輸出者署名欄や発給機関の署名・スタンプについて、直筆だけでなく電子的な印字による対応も認められています。jcci+1​
    PDF発給を制度面で支えるポイントであり、「電子発給されたPDFの見た目が紙と異なること」を理由に真正性が否定されるものではありません(真正性確認はEPA CO Reference System等で行われ得ます)。mofa+1​

3. 必須項目をフィールド別に整理:PDF化で事故りやすい箇所

以下は、日ペルーEPAのCO様式・記載要領に沿って、実務上チェックすべき主なフィールドを整理したものです。acuerdoscomerciales+1​
括弧内は、PDF化で特に増えやすいミスの傾向です。

Field 1:Exporter

  • 内容
    輸出者の正式名称、住所、国名。登録情報と整合した表記が求められます。acuerdoscomerciales
  • PDF化で増えやすいミス
    英文社名の揺れ(略称・旧社名の混在)、住所の一部省略、グループ会社名義との取り違えなど。

Field 2:Producer

  • 内容
    生産者の正式名称、住所、国名。複数生産者がいる場合はリスト添付も可であり、生産者秘匿の場合は所定の文言を用いることができます。輸出者と同一の場合は「SAME」等の規定文言で代替可とされています。mofa+1​
  • PDF化で増えやすいミス
    どの生産者がどの商品を製造しているかの突合が曖昧になる、秘匿文言の誤記、SAMEの使い間違い(輸出者と生産者が同一でないのにSAMEと記載する等)。

Field 3:Importer

  • 内容
    輸入者の正式名称、住所、国名。契約上の輸入者と一致させることが原則です。acuerdoscomerciales
  • PDF化で増えやすいミス
    仕向地の荷受人と輸入者の混同、通関名義と契約上のバイヤー名義の取り違え。

Field 4:Shipment details

  • 内容
    船積日(B/L日付またはAWB日付)、積出港、経由港、揚げ港、船名・便名など、可能な範囲で記載します。mofa+1​
    遡及発給であっても、実際の船積日は記載が必要です。
  • PDF化で増えやすいミス
    船積日をインボイス日で代用してしまう、経由港欄が空欄のまま、便名が古い予約情報のまま更新されない等。

Field 5:Description of goods / HS Code

  • 内容
    品目番号、荷印、個数・荷姿、HS6桁、品名記述など。品名はインボイス記載とHS分類に紐づく十分な内容が必要とされます。jcci+1​
    バルク輸送の場合は「IN BULK」等の記載が認められています。
  • PDF化で増えやすいミス
    HS6桁が社内マスタとズレる、品名が短すぎてインボイスとの突合が困難になる、インボイス表現と不整合な英訳になる等。

Field 6:Origin criterion

  • 内容
    各品目の原産性基準を、協定別表の品目別規則に従って記載します。customs
  • PDF化で増えやすいミス
    記載した原産基準が品目別規則と不整合、複数品目に同一のコードを機械的に転記し、実際の原産判定結果と齟齬が生じる。

Field 7:Quantity

  • 内容
    数量(重量は総重量でも正味重量でも可)。業界慣行がある場合はリットル等の容積単位も認められます。customs+1​
  • PDF化で増えやすいミス
    インボイス単位との不一致、複数ページにまたがる場合に数量の整合性が取れない。

Field 8:Invoice number and date

  • 内容
    輸入申告に用いるインボイス番号と日付。第三国のインボイスが利用される場合などは、備考欄(Field 9)で補足が必要になります。jetro+1​
  • PDF化で増えやすいミス
    輸出者発行インボイスと輸入側で使用されるインボイスの混同、番号未確定時の仮番号記載の扱いを誤る。

Field 9:Remarks

  • 内容
    遡及発給であれば「ISSUED RETROSPECTIVELY」、再発給であれば所定の定型文言を記載します。mofa
    第三国インボイスを利用する場合等の補足事項もここに記載します。
  • PDF化で増えやすいミス
    定型文言の一部欠落、第三国インボイスに関する補足の記載漏れ、備考欄が空欄のままで必要要件を落とす。

Field 10:Exporter’s signature

  • 内容
    輸出者またはその代理人の署名と日付。署名は直筆でも電子印字でも可とされています。jcci+1​
  • PDF化で増えやすいミス
    署名日付と発給日(Field 11)が不整合になる、社内承認者と実際のサイナーの権限関係が曖昧なまま運用される。

Field 11:Issuing authority’s certification

  • 内容
    発給機関側の署名、日付、スタンプ。署名やスタンプは電子印字でも可です。jcci
  • PDF化で増えやすいミス
    受領側が真正性に疑義を持ち追加照会が発生する、PDFの一部欠けや画質劣化により印影や署名が判別しづらくなる。

これらのフィールド定義、HS6桁要件、インボイスおよび第三国インボイスの取扱い、遡及発給・再発給時の定型文言、署名・スタンプの電子印字容認といった点は、協定の運用手続および関連ガイダンスに明記されています。customs+3​


4. PDF化で実務が変わるポイント:手続より「工程」が変わる

4.1 受け取り遅延より「入力確定遅延」が問題になる

  • PDF発給により、窓口受領や郵送待ち時間は削減される一方、審査完了・入金確認後に即時ダウンロードが可能になります。jcci
  • しかし、Field 4の船積日、Field 8の輸入用インボイス、Field 3の輸入者情報など、出荷直前まで確定しにくい情報が残ると、そもそもの申請が遅れ、承認日ベースの締切に間に合わなくなります。

特に、2026年7月末前後は「承認日」が紙・PDFの境目となるため、「7月末船積だから紙で間に合うはず」という感覚的な判断は危険です。jcci
承認までに必要な情報の確定時期を、営業・生産計画・通関担当間で明確にしておく必要があります。

4.2 ペルー側での提出形態は必ず事前に確認する

  • 日本商工会議所は、PDFファイルを印刷して提出する必要性も含め、ペルー税関側の現地手続を確認するよう注意喚起しています。jcci
  • 経産省も、現地での輸入申告時の具体的な取扱いについてはペルー税関に確認するよう案内しています。meti

社内だけで推測してルール化するのではなく、輸入者、現地通関業者、SUNATの運用に合わせて、

  • PDFファイルの電子提出か、印刷した紙の提出か
  • CO番号による照会運用があるか
    といった点を、契約条件・L/C条件とあわせて事前に握っておくことが安全です。jetro+1​

4.3 発給後の加工禁止を社内ルールとして明文化する

  • 発給後の無権限修正があると原産地証明が無効となり得る点は、紙・PDFを問わず同じですが、PDFではデジタル編集が容易なだけに、痕跡が残りやすいのが実務上のリスクです。mofa
  • 発給されたPDFは「原本」としてそのまま保管し、社内配布用・注釈付きの加工版を作成しない運用にしておくと、安全性が高まります。

5. 社内フローの組み替え:承認日を起点にしたチェックリスト

最後に、PDF化に向けて現場がそのまま使える形に落とし込んだ、社内フロー見直しの観点を整理します。jcci+1​

5.1 出荷前の締切を「船積日」から「承認日」基準に置き換える

  • 承認までに確定しておくべき情報
    • HS6桁コード
    • 品名記述(インボイスと突合可能な粒度)
    • 原産基準(品目別規則に基づく)
    • 数量・単位
    • 輸入者情報
    • インボイス情報(第三国インボイスの有無を含む)
    • 船積情報(船積日、港情報、船名・便名)
  • 2026年7月末前後は、「承認日」をKPIとして営業・生産計画側と共有し、「いつまでに申請入力を確定させるか」を明示しておくことが重要です。jcci

5.2 申請前に行う入力品質の自己点検

  • Field 5の品名は、インボイス記載と突合できる長さと内容にする。
  • HSコードは6桁で固定し、社内マスタとの整合を必ず確認する。
  • 第三国インボイスの可能性がある取引は、Field 8(インボイス)とField 9(備考)のセットでレビューし、注記漏れを防ぐ。

これらはいずれも、HS6桁要件や品名記述の水準、第三国インボイス時の注記ルールとして、原産地証明関連のガイダンスに位置付けられている事項です。jcci+2​

5.3 発給後の運用を先に決めておく

  • ダウンロード手順、保管場所(フォルダ階層)、版管理ルールを標準化する。
  • 取引先への送付は原本PDFをそのまま用い、編集や追記を行わない。
  • 現金払い廃止に合わせて、経理部門の支払フローと締日を見直し、申請~支払~発給までのリードタイムを見積もる。

これらは、日本商工会議所のPDF発給案内に示された「ダウンロード提供」「窓口受渡し・郵送なし」「現金払い廃止」といった運用方針に対応した社内整備事項です。jcci+1​


まとめ:PDF化は「デジタル化」ではなく、入力品質の勝負

日ペルーEPAの第一種特定原産地証明書は、2026年8月3日からPDF発給へ切り替わり、専用紙での発給は2026年7月31日までに承認された申請分に限定されます。meti+1​
紙の時代に現場で暗黙に吸収されていた誤記や手戻りは、PDF発給ではそのまま通関リスク・原産地否認リスクに直結するため、入力品質の管理がこれまで以上に重要になります。

必須項目は協定様式と記載要領で決まっていますので、Field 1~11を一つずつ根拠付きで再点検し、とくにField 4(船積情報)、Field 5(HS6桁+品名)、Field 8(インボイス)、Field 9(備考・注記)について、社内ルールとして突合・レビュー手順を明文化するのが最短ルートです。customs+2​


免責事項

本稿は、経済産業省・日本商工会議所などの公開情報および日ペルーEPA協定文書に基づく一般的な実務整理であり、個別案件における原産性の判断、証明書発給の可否、通関での取扱いを保証するものではありません。meti+2​
具体的な案件については、輸入者側の通関実務を踏まえつつ、発給機関、通関業者、専門家等に確認の上で判断してください。

  1. https://www.jcci.or.jp/gensanchi/20260107_Perucopdf.pdf
  2. https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/boekikanri/gensanchi/20260107.html
  3. https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/j_peru/pdfs/japan-peru_epa.pdf
  4. http://www.acuerdoscomerciales.gob.pe/en_vigencia/japon/Documentos/ingles/formato_co_tlc_peru_japon.pdf
  5. https://www.customs.go.jp/english/origin/rules_of_origin_epa.pdf
  6. https://www.jcci.or.jp/gensanchi/
  7. https://www.mofa.go.jp/policy/economy/fta/pdfs/japan-peru_epa.pdf
  8. https://www.jcci.or.jp/gensanchi/tebiki_preparation.pdf
  9. https://www.customs.go.jp/roo/text/peru1.pdf
  10. https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-000969.html?_previewDate_=null&revision=0&viewForce=1&_tmpCssPreview_=0%2F%2F%2F%2Fbiznews%2F%2F%2Fbiznews%2F%2F%2F%2F%2Fbiznews%2F
  11. https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/04/f5dc8ab2cae0f934.html?_previewDate_=null&revision=0&viewForce=1
  12. https://www.customs.go.jp/english/epa/epa/Peru.pdf
  13. https://global-scm.com/blog/?p=3799
  14. https://global-scm.com/blog/?p=3850
  15. https://cdnw8.eu-japan.eu/sites/default/files/imce/20210304_rulesoforigin_report_final_0.pdf

 

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