輸出側(日本企業)にとっては見積もりと契約条件、輸入側(米国側の輸入者)にとっては申告実務に直撃するのが、この「15%」です。ポイントは、15%が一律上乗せではなく、原則として米国の通常税率(Column 1=MFN)を含めた合算で15%になる設計だという点です。japan.kantei+1

1. 今回の「15%」は何を意味するのか
日米合意の実装として、米国は日本原産品について、原則「ベースライン15%」の関税枠組みを適用しました(ほぼ全品目が対象)。一方で、自動車・同部品、航空宇宙(民間航空機)などは別扱いのルールが設定されています。whitehouse+1
ここで誤解が多いのが、15%が「追加で15%」だと思われやすい点です。実務上のコアは次のロジックです。
2. 適用ロジック:MFN込みで合算15%
CBP(米国税関・国境警備局)のガイダンスでは、日本原産品の相互関税は、品目ごとのColumn 1税率(従価税、または従価税相当)に応じて決まります。whitehouse
基本ルール(一般品目)
Column 1税率が15%以上の場合
追加の相互関税は0%(実務上は専用のChapter 99番号9903.02.72を申告)whitehouse
Column 1税率が15%未満の場合
Column 1と相互関税の合算が15%になるように調整(いわば「15%までの上乗せ」、HTSUS番号9903.02.73を使用)whitehouse
特定税率(従量税など)の扱い
Column 1が従量税や複合税率の場合は、税額を課税価格で割って従価税相当に換算し、その換算率が15%未満かどうかで判定します。whitehouse
実務上の要点
ACE(米国の電子申告システム)は、所定のChapter 99番号を組み合わせて申告すると、結果として15%になるよう計算を置き換える運用が示されています。whitehouse
3. 適用範囲:対象と例外をどう切り分けるか
対象の基本
対象は「日本原産品」です。出荷地が日本かどうかではなく、米国の原産地判定(実質的変更など)で日本原産と扱われるかが起点になります。実務では、サプライチェーン上の加工地が絡む製品ほど、原産地の取り違えがコスト差に直結します。
例外1:民間航空機(Civil Aircraft Agreement)
民間航空機協定(WTOの民間航空機協定)に該当する日本原産の民間航空機(軍用機と無人機を除く)および関連部品等は、相互関税に加えて、アルミ・鉄鋼・銅など一部の232条追加関税から外れる扱いが明示されています(専用のChapter 99番号9903.96.02で申告)。whitehouse
例外2:232条対象品目は原則「相互関税の対象外」
日本原産品でも、232条措置(鉄鋼、アルミ、銅、自動車・同部品など)対象は、相互関税の上にさらに重ねるのではなく、232条側の枠組みで扱う整理が示されています。jetro+1
例外3:特定の医薬品や天然資源など(ゼロ化の可能性)
大統領令では、米国内で入手困難な天然資源やジェネリック医薬品などについて、相互関税率を0%に修正できる枠組みが置かれています。該当性の判断と運用は、今後の当局通知とHTS改正の具体化を前提に、個社での品目当て込みが必要です。whitehouse
4. 時期:いつから何が変わったのか(実務の時系列)
今回の論点は「発効日が1回ではない」ことです。大枠は次の理解が安全です。
重要日程
2025年8月7日(米国東部時間00:01以降)
日本原産品に対する相互関税の適用が開始されました。初期運用では専用のHTS番号9903.02.30で申告する扱いが示されました。japantimes+2
2025年9月4日
日米合意を実装する大統領令が公表され、15%ベースラインと、セクター別扱いの枠組みが明示されました。govinfo+1
2025年9月16日(米国東部時間00:01以降)
申告用のChapter 99番号が更新され、従来番号9903.02.30がACE上で使用不可となり、新番号9903.02.72と9903.02.73へ移行しました。加えて、自動車・同部品と民間航空機の取り扱いがこの日から明確に運用開始となっています。whitehouse
遡及と修正の実務
大統領令には、2025年8月7日以降の輸入に遡って適用する旨が置かれ、CBPが返金や修正の手順を案内する形になりました。特に2025年8月7日から9月15日の間に輸入実績がある企業は、当時の申告内容が新ルール下で適切か、輸入者と通関業者と一体で棚卸しする価値があります。federalregister+2
5. 自動車・同部品:別建てで「MFN込み15%」へ
自動車・同部品は232条の枠で再設計され、2025年9月16日以降に輸入される日本原産の自動車・同部品について、Column 1税率に応じて「合算15%」となるよう調整する運用が示されています。whitehouse
- 自動車でColumn 1税率が15%以上:HTSUS 9903.94.40(追加関税0%)
- 自動車でColumn 1税率が15%未満:HTSUS 9903.94.41(合算15%)
- 自動車部品でColumn 1税率が15%以上:HTSUS 9903.94.42(追加関税0%)
- 自動車部品でColumn 1税率が15%未満:HTSUS 9903.94.43(合算15%)whitehouse
6. ビジネスマン向け:現場が最初に確認すべき3点
自社品目のColumn 1税率が15%未満か
未満なら、原則として15%まで引き上げられるため、価格と利益への影響が大きくなります。whitehouse
232条対象に該当しないか(鉄鋼、アルミ、銅、自動車など)
相互関税で処理するのか、232条側で処理するのかで、申告番号も請求書の説明も変わります。jetro+1
申告の「番号」と「順番」
Chapter 99番号は付ければよいのではなく、複数の追加関税や救済関税が重なる場合に、CBPが示すシーケンスに沿って並べる必要があります。現場では、輸入者側の通関ルールとテンプレート改修が先行課題になります。whitehouse
まとめ
米日15%相互関税枠組みは、単純な一律上乗せではなく、MFN込みで合算15%に調整する設計です。発効は2025年8月7日、申告番号の更新と自動車・民間航空機の具体運用は2025年9月16日が節目となりました。まずは自社品目が「15%未満か」「232条か」「例外(民間航空機等)か」を切り分け、輸入者・通関業者と一緒に申告ルールと過去実績の点検まで進めるのが、最短で損失を止める動きになります。japan.kantei+2
免責事項
本稿は公開情報に基づく一般的な解説であり、個別案件の法的助言ではありません。実際の適用は、最新のHTS改正、CBPのCSMS、通関実務(ACE設定)に従って確認してください。
- https://japan.kantei.go.jp/103/statement/202508/07kaiken.html
- https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/08/4599e222a3e3b82d.html
- https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/07/further-modifying-the-reciprocal-tariff-rates/
- https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/09/implementing-the-united-states-japan-agreement/
- https://www.japantimes.co.jp/business/2025/08/07/economy/reciprocal-tariff-effective/
- https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2025-09-09/html/2025-17389.htm
- https://www.federalregister.gov/documents/2025/09/16/2025-17908/implementing-certain-tariff-related-elements-of-the-united-states-japan-agreement
- https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/09/df5c001da8c7a39e.html
- https://www.congress.gov/crs-product/IN12608
- https://www.youtube.com/watch?v=JRLUQvYLK1w
- https://www.thompsoncoburn.com/insights/u-s-japan-trade-agreement/
- https://www.nri.com/jp/media/column/kiuchi/20250708.html
- https://www.chrobinson.com/it-it/resources/insights-and-advisories/client-advisories/2025q3/09-17-2025-client-advisory-us-japan-agreement-implementation-trade-agreement-tariff-modifications/
- https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/08/df401b87949acc2a.html
- https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/us_tariff/pdf/00_20250822.pdf
- https://www.jetro.go.jp/ext_images/biz/seminar/2025/4692b7c6204944b6/gaiyo20250925.pdf
- https://www.pref.toyama.jp/documents/49618/2_jetro0827.pdf
- https://www.meti.go.jp/tariff_measures/pdf/2025_0901_02.pdf



