第三者証明における商工会議所での所要時間は長くなっているのか

本日、とある商社から、「商工会議所でのEPA原産地判定の所要時間が長くなっていて困っている。他にも同様の事態は起こっているのか」との電話がありました。

全ての案件において、原産地判定の証拠書類の提出義務がなされてから、判定までにとても長い時間がかかり、2週間では終わらないことが多くなったそうです。

FTA戦略的活用研究会でも判定に時間がかかったかどうかを訪ねたところ、長くなったという声もある一方で、既に1週間以上かかっていたので、現実的にはさほど問題とはなっていないという声も上がっています。

「どういう対策を練るべきですか」との質問を受けましたが、こればっかりは商工会議所の処理のバックオーダーが尋常ではない数になっていることから、「輸出に対し、ゆとりを持って申請をするしかない」と言うことしか当方は言えません。

日本企業の証明の品質問題もさることながら、余りにも細すぎる指摘を商工会議所が行うことも課題だと思っています。

FTAが使いたくてもこの環境では使えなくなりつつある事実。「企業に責任がある」のなら、官庁・商工会議所は不介入とすべきです。

TPP11や日EU EPAでの自己証明による原産地証明書に目が行っている企業が多いですが

TPP11や日EU EPAでの自己証明による原産地証明書に目が行っている企業が多いですが、肝心かなめの原産証明の内容がとても不十分な企業が大変目立ちます。

日EUではインボイスに原産地の宣誓書を書き込む形式です。

分離式でもいいのではないかという日本企業が多く、関心ももっぱらそちらに。

とりあえず証明は後でも、という企業がすくなくありません。

由々しき問題です。

韓国とEUのFTAでは、発効年に60件もの検認が発生しています。

自己証明の便利さゆえに、証明をさぼると大変なことになります。

ロジズティックでは、証明支援や証明が妥当かの監査も行っていますので、さ―ビスをご活用下さい。

日EU・EPAの原産地証明書は・・・

日EU・EPAの原産地証明書は、TPPに引き続き、自己証明とのことです。

いよいよ自己証明が趨勢になりそうですね。

EUは、FTAで検認を行うので有名です。

韓国とEUのFTAでも際だった検認(FTA利用における原産地証明の確からしさを輸入国から確認を要求すること)の数が記録されています。

年間に2800件以上、つまりは営業日当り13件弱の検認が韓国EUでなされています。これが日本になると経済規模からもっと多くの検認がされる事になるでしょう。

検認で「証明が否認」されれば、FTA活用で関税の減免を受けたメリット金額は全て払うことになることは当然として、追加でペナルティを支払うことになります。

日EU・EPAが自己証明となれば、企業側の運営は大変なことになります。原産地証明が正しくても、検認への対応をせねばならないし、もし間違っていたら、とても面倒なことになります。

その準備は今から初めても遅くはありません。

当社では、会社のFTA原産地証明が妥当かどうかの検証をするサービスをしております。

詳しくはこちらにリーフレットがあります。

 

【続】国(経済産業省)からのFTA原産地証明の「検認」(証拠書類の確認)

以前にお話しした、国からのFTA原産地証明の「検認」ですが、続報(かな)です。

原産地証明で、輸出者が証拠書類の間違いを見いだした場合、その原産地証明に記されている他の商品にも確認が入るそうです。

その商品が同意通知されたものであれば、その同意通知発行元にも確認があるとのこと。

また、もう一点。

原産地証明が間違っていた場合、そのことを知った国は相手国への通知義務があります。それゆえに、国からの「検認」はイコール相手国からの検認と同等となります。

お気をつけ下さい。

商工会議所の原産証明の証拠書類確認姿勢の変化

とある商工会議所の原産判定に絡む証拠書類の確認の姿勢が変わってきました。

かなり厳格にされるようになったのはいいとして、おかしいと思われることが連発です。

例えば、

「うちでは付加価値基準では、積上げ式も控除式も認めていません。」

??? 付加価値基準を認めないって事?

今までかなり緩かったのが急な変化。証明の最終責任は企業なので、本来は緩かろうがきつかろうが関係ないので、企業は厳密な原産証明を行わねばならないのですが、責任を取らない商工会議所の姿勢の変化(と間違い)は企業の対応を困らせます。

対応とその知見に私が尊敬を抱く商工会議所もありますが、このような商工会議所があるのは困りものです。

別の商工会議所では、インド向けの証拠書類で、

「付加価値基準と関税分類変更基準の証拠はは同じページに記載しなさい。そうしないと通しません。」

???

そんなことどこにも書いていない。それも通さないって・・・

早く自己証明にシフトすべきではないでしょうかね。

国(経済産業省)からのFTA原産地証明の「検認」(証拠書類の確認)

以前に、商工会議所がFTA(EPA)での企業登録をした企業に、証拠書類をだだしく作るように気をつけると事を趣旨としたメールを送られました。

その第二弾かどうかわかりませんが、経済産業省の世耕大臣名でランダムに検認に似た証拠書類の確認要求が出ています。

同じ業界であるとか、同じ地域でということではないようで、確かにランダムのようです。

提出書類は、原産地判定番号を明確にしてそれに関する証拠書類と関連するインボイスの提出。

証明が不十分であった場合のペナルティは記載されていません。しかし、たぶん駄目な場合は、「企業の良心に従って行動してください。」となるのではないかと思います。

私の顧客は十分な証拠書類を用意していると思いますので、問題ありませんが、知っている限り、証拠不十分な会社は世の中には多くあります。どうなりますでしょうか。

宣伝となりますが、このようなことで戸惑うことのないように当社の無料FTA監査をお受けになることをお勧めします。

アメリカ大統領選挙とTPP

アメリカの大統領選挙で、現在トランプ氏が有利です。

彼が大統領になればTPPはどうなるのか、皆さんは関心(憂慮?)があるかと思います。

TPPにアメリカへの無税での輸出の世界が広がる。ほんとその通りです。

それが、トランプ氏が大統領になることでどうなるか。いろいろなことが起こる可能性があると思います。

まず確実なことは、アメリカの要求で12カ国で署名されたTPPは再度協議にはならないということ。

ひょっとすると、レームダッグ状態ではありますが、トランプ氏の外交の危うさから彼の就任以前にアジアに対する布石となる議会承認を得られる可能性もあります。

ただ、どうなるかをいろいろ考えるのはよしましょう。

一番大事なのは、TPPであれ、ASEANとのEPAであれ、やらなければいけないこと、証明の証拠書類の準備することは変わらないということ。

トランプ氏の影響に一喜一憂するのではなく、TPP以外にも日EU、RCEPなどでも適用可能な原産地証明のプロセスをちゃんと確立することが何より大事です。

日EUは問題なく合意されるでしょう。TPPの結果を見てRCEPの協議のスピードは変わるかも知れませんが、たぶんやってくるでしょう。

それまでに、原産地証明の体制を確実にすることが、今現在も使えるアジアを中心としたFTAの活用においても大事なこととなります。

 

FTAにおける原産地証明:その使うべき原産地規則

FTAでは、原産地証明で適用する原産地規則がかなり大事であると思っています。

原産地規則には3つの種類があります。

  • 加工工程基準(SP)
  • 関税分類変更基準(CTC)
  • 付加価値基準(VA)

企業は適用基準を好きに選べるわけではありません。協定、及び輸出商品の該当するHSコードにより使える原産地規則が決まっています。多くの場合、CTCかVAの選択が出来るようになっています。

大型客船のような一品ものは、付加価値基準(VA)で問題はないとは思いますが、同じ商品が何度も輸出されるような場合は、関税分類変更基準(CTC)の方が断然使い勝手がいいです。

しかし、実際にはVAを使われる企業が多くあります。計算しやすいからとのことですが、私の経験からすると、むしろVAは証明するのが厄介です。

構成部材毎のコストを計算する必要がありますし、その計算根拠もちゃんと出せるようにする必要があります。また、VAの場合は本来は輸出毎に証明をする必要があるのです。現実はそれは無理なので、企業内でのルール作りをして、そのチェック頻度を企業として明確にして、原産性が維持されていることを確認続ける必要があります。

VAが使われるのに、「計算がしやすいから」という理由意外に別に理由があるととある人から聞きました。「監査法人は、VAの方が自分たちの専門性が生きるし、仕事も継続してもらいやすくなるから。」だそうです。

確かに。

原価計算、システム化では彼らに一日の長があります。一方、CTCで必要となるHSコードは素人に等しい。

どれだけ、本当なのかはわかりません。

ただ、多くの工業製品でCTCとVAの選択が出来る場合は、CTCにした方が企業にはメリットが多いし、相手国の検認にも強いですよ。

FTAに関するサプライヤー説明会: メーカーの要望の問題点

私の顧客のところでサプライヤー様向けのFTA説明会を開きました。

目的は、企業と同じレベルの原産地証明をしてもらうことにあります。企業が原産地証明の品質を向上させたところで、サプライヤーの証明(サプライヤー証明や同意通知)が駄目でしたら、検認の際に大きな問題になります。

できるだけわかりやすい説明会とその後のフォローが大切であることを過去の経験から痛感しており、今回もその経験を生かして行ったつもりです。そうしないとちゃんとした証明を行ってもらえないことが多いためです。

一方、このお客様には多くの納品先から、サプライヤー証明や同意通知をもらうべく、「データを下さい」的な要望が来ます。

彼らが要求している情報だけでは不十分なことが多いと感じます。これにより原産地証明が出来ていると考えている企業が多いことは正直怖いことです。

日頃、サプライヤーの原産地証明に関する認識を上げることが必要と感じていますが、その阻害要因になっているものの一つは、サプライヤーの顧客にもあるのです。

FTAで有名なこの会社が・・・

FTAの活用に関して学ばせて頂いた会社があります。

それをA社と呼びましょうか。

A社はメキシコとのEPAの時代から活用しており、その責任者は有名な方で、私も多くを学ばせて頂きました。

その会社の方からEPAの活用相談がありました。

???

という気持ちが本音のところでした。

「できるでしょうに。」

お会いしたところ、とても熱心な方で、メキシコ向けの商品で、VAで活用したくて、条件を満たさないのでどうしようかと悩んでいらっしゃいました。

そういうときは、影響の大きい材料の原産性に遡り、証明することになるのですが、ご存じなかったようです。

常日頃から、日本企業のFTA活用は個人に属しており、企業のノウハウ、体制で行われていないと感じていましたが、

「A社でもか」

という少し残念な気持ちとなりました。

日本の企業の方、FTA活用は是非組織戦でお願いしますよ