注目

■新着記事はこの後■ 無料FTA-BPOセミナー011「FTA原産地規則:VAの実態」

第11回目の無料セミナーのテーマは、「FTA原産地規則:VAの実態」です。


人気のFTA原産地証明解説、今回はVAに焦点を当てます。

どういう点を考えるべきなのかをお話しします。


■■ 講師 ■■
TSストラテジー株式会社 代表取締役 藤森 陽子 氏

■■ 開催日時 ■■
2025年9月17日(水) 14:00~15:00

■■ セミナー形式 ■■
Webでの開催のみ(Teams利用予定)
セミナーへのご参加は、実際にFTAを活用する企業に限定させていただきます。
お申し込みの後、ご参加頂く方にリンクをお送りいたします。

■■ 申込み ■■
このフォームにご記入の上、送信ボタンを押してください。
Webのみでの開催となります。ふるってご参加下さい。

スイスへの「相互関税」:ビジネス実務への影響と対応策

2025年8月28日時点

要点

国名追加関税率根拠法規備考
スイス 🇨🇭39% (相互関税)HTSUS 9903.02.582025年8月7日 0:01 a.m. EDT 発効・通常関税 (Column 1) に上乗せで賦課・経過措置: 8/7前に最終船積みし、10/5前に輸入申告した貨物は +10% (HTSUS 9903.01.25) を適用


最初に押さえるべき3つのポイント

  1. 39%の追加関税: スイス原産品に対し、39%の従価税 (ad valorem) が「相互関税」として課されます。申告にはHTSUSコード 9903.02.58 を使用し、通常関税やその他手数料に上乗せとなります。
  2. 適用開始日: 2025年8月7日 (EDT) から適用されています。ただし、8月7日より前に最終仕向地へ船積みされ、10月5日より前に輸入申告された貨物には、+10% の税率 (9903.01.25) が適用される経過措置があります。
  3. 関連国の扱い: EUに適用される「合計15%ルール」はスイスには適用されません。また、中国 (+10%) とは異なる税率枠が設定されています。迂回輸出 (トランスシップメント) と認定された場合は、+40% のペナルティ関税 (9903.02.01) が課されるため注意が必要です。

1. 制度の概要

  • 法的根拠: 大統領令 EO 14257 (2025/4/2) で「相互関税」の枠組みが創設され、EO (2025/7/31) で国別税率が改定されました。この改定でスイスに 39% の税率 (Annex I) と、国別のHTSUSコード 9903.02.58 (Annex II) が新設され、8月7日に発効しました。
  • 適用範囲: 一部の例外を除き、原則として全てのスイス原産品が対象です。本関税は、通常のHTS税率や、AD/CVD、232条関税など他の全ての関税・手数料と併せて課されます

2. 申告実務と例外規定

申告コード

  • スイス原産品: 9903.02.58 (+39%)
  • 経過措置対象: 9903.01.25 (+10%) (8/7前船積み、かつ10/5前輸入)
  • 迂回輸出と認定された場合: 9903.02.01 (+40%)

主な例外規定

  • 人道物資・情報資料: Chap. 99 の 9903.01.30–.33 に規定される品目は対象外です。
  • 米国原産品: 米国原産部材の価値が全体の20%以上を占める場合、その米国原産価値分は非課税となります (コード 9903.01.34)。非米国価値分のみが課税対象となり、申告は2行に分割する必要があります。
  • Chapter 98 (特別分類): 原則として適用可能ですが、9802 (修理・加工後の再輸入) など一部の規定では、米国外での加工価額等に対して相互関税が課されます。
  • FTZ (保税地域): 2025年4月9日以降に対象貨物をFTZに入庫させる場合、Privileged Foreign Status (PFS)での申請が必須です。

HTSコードの記載順序 (ACE申告時)

CBPは以下の順序を指示しています。

  1. Chapter 98 (該当する場合)
  2. Chapter 99 (各種追加関税)
    • 301条関税 → IEEPA関連 (フェンタニル等) → IEEPA (相互関税) → 232条/201条関税…
  3. Chapter 1-97 (通常の関税分類)

3. コスト計算例

相互関税は、通常関税などと複利計算ではなく、それぞれ加算されます。

  • 申告価額: $10,000
  • 通常関税: 5% → $500
  • 相互関税 (スイス): 39% → $3,900
  • 合計関税額: $500 + $3,900 = $4,400 (その他、税・手数料・AD/CVD等は別途)

4. 企業が取るべきアクションリスト

48時間以内 (即時対応)

  • 対象品目の特定: スイス原産の全輸入品リストを作成し、9903.02.58 の適用要否を判定します。特に、経過措置 (+10%) の対象となる貨物がないか出荷日と到着予定日を確認します。
  • 価格・見積の緊急改定: +39% のコスト増を前提に、販売価格や利益率を再計算します。必要に応じて取引先への通知と、Incotermsの見直しを開始します。

2週間以内

  • 通関プロセスの更新: 通関業者と連携し、HTSコードの記載順序や、Chapter 98/9903.01.34 (米国原産分) の適用可否、TIB (一時輸入)、ドローバック等の運用を確定させます。
  • 契約の見直し: サプライヤーや顧客との契約に、関税サーチャージ条項など価格調整に関する条項の追加・修正を交渉します。

90日以内

  • サプライチェーンの監査: 迂回輸出と見なされるリスクを避けるため、輸送ルートや第三国での加工実態に関する証拠書類を整備します。迂回認定は+40%の重いペナルティとなるため、コンプライアンス監査が不可欠です。
  • 動向監視とシナリオプランニング: スイス政府の対米交渉の進捗を注視し、関税率が変動する可能性に備えます。社内の価格体系や供給網計画を、情勢に応じて更新できる体制を構築します。

5. よくある質問 (FAQ)

  • Q1. 「39%」は、今までの関税が39%に変わるのですか?
    • A. いいえ、「置き換え」ではなく**「上乗せ」**です。通常関税が5%の場合、支払う関税は「5% + 39%」となります。
  • Q2. どのHTSコードで申告すれば良いですか?
    • A. 原則として 9903.02.58 (+39%) です。経過措置の対象となる貨物のみ 9903.01.25 (+10%) を使用します。
  • Q3. 米国製の部品を20%以上使っていれば、関税はかかりませんか?
    • A. 全額免除にはなりません。米国原産価値に相当する部分のみが非課税となり、残りの非米国価値部分には39%が課税されます。申告も2行に分ける必要があります。
  • Q4. EU向けの「合計15%ルール」はスイスにも適用されますか?
    • A. されません。スイスには国別に設定された 39% の税率が直接適用されます。

主な根拠資料

  • White House (2025/7/31): 大統領令。Annex Iでスイスの税率を39%と規定し、Annex IIで 9903.02.58 等を新設。
  • CBP CSMS #65829726 (2025/8/4): 経過措置 (+10%)、EU特則、中国の扱いに関する運用通達。
  • CBP CSMS #64649265 (2025/4/4): Chapter 98の扱い、20%米国原産価値の例外、ACE申告順序に関する通達。
  • Reuters (2025/8/25): スイス政府による関税緩和交渉に関する報道。

免責事項: この文書は一般的な情報提供を目的としており、法務または通関に関する専門的な助言ではありません。実際の申告にあたっては、必ず最新の連邦官報、CBPからの通達、および貴社指定の通関業者の指示に従ってください。

インドへの「相互関税」:現段階でのまとめ

要約

  • インド原産品への米国の追加関税は合計50%。内訳は①相互関税25%(2025年8月7日発効)+②追加25%(対ロシア原油調達を理由とする措置、2025年8月27日 0:01 a.m. EDT発効)。いずれも**通常関税(Column 1)に“上乗せ”**されます。The White HouseReutersGovInfo
  • ②の25%はHTSUS 9903.01.84で申告。在来の25%(相互関税)と併科されます。GovDelivery
  • 一部例外・猶予あり(船積み済みの経過措置、人道物資・情報資料、特定の232対象品、適切なChap.98適用など)。FTZは特恵外国(PFS)での入庫要件ドローバック可GovDeliveryGovInfo

1) 何が起きたのか

  • 2025年4月2日:大統領令EO 14257で「相互関税」枠組みを創設。The White House
  • 2025年7月31日EO 14326(Further Modifying the Reciprocal Tariff Rates)で各国率を最終化。インド=25%8月7日発効The White House
  • 2025年8月6日:大統領令EO 14329(対ロシア関連の国家緊急権に基づく)で**インド原産品に追加25%**を指示。The White House
  • 2025年8月25日CBP CSMS #66027027で運用通達(9903.01.84、適用開始8月27日、相互関税25%に追加で賦課)。GovDelivery
  • 2025年8月27日:**連邦官報告示(FR 2025-16419)**で実装。0:01 a.m. EDT以降の輸入に適用。GovInfo

2) 計算と申告

  • 関税計算イメージ:通常関税(例:5%)+相互関税25%追加25%合計50%が“上乗せ”。追加分は**“価額に対する”ad valoremで、他の賦課(AD/CVD, 税・手数料)と併存。
    例)申告価額$10,000、通常5%の場合 → $500(通常)+$2,500(相互)+$2,500(追加)=
    $5,500**(他費用別)。GovDeliveryGovInfo
  • 申告コード9903.01.84(追加25%)を相互関税の国別コード等と併記HTS記載順序の指示あり:Chap.98→各種99章(301→IEEPA→232→201…)→本表1–97)。GovDelivery

3) 例外・猶予

  • 経過措置8/27前に最終輸送に載荷9/17 0:01 a.m. EDT前に輸入申告した貨物は、追加25%の対象外(9903.01.85)。GovDelivery
  • 人道物資・情報資料9903.01.88/89)は除外。GovDeliveryGovInfo
  • 特定の232対象等(鉄鋼・アルミ・自動車等)は9903.01.87追加25%の適用外となる区分あり(相互関税や232自体の賦課は別途)。GovDelivery
  • Chap.98の扱い:適切なChap.98で追加25%非課税となる場合あり。ただし9802は**加工・組立価額部分に追加25%**が課税。GovDelivery
  • FTZ8/27以降に入庫する対象品は**Privileged Foreign Status(PFS)**での入庫が必要。消費仕向け時に課税GovDelivery
  • ドローバック:追加25%に適用可GovDelivery

4) 影響領域

  • **影響対象はインドの対米輸出の約55%(約870億ドル)**に及ぶとの推計。繊維・衣料、履物、宝飾、化学品などが特にリスク。Reuters
  • マクロでは米印関係の緊張が指摘され、関税50%の適用で短期的に受注・雇用・価格転嫁の圧力。ポリティコ

5) いますぐの対応

48時間以内

  • HTSライン洗い出し:対米輸出入のHS/HTS9903.01.84・相互関税コードの付番要否を紐付け。**例外該当(9903.01.85–89、232対象、Chap.98)**の棚卸。GovDelivery
  • 受発注・見積の即時改定:**着地コスト+50%**シナリオで粗利・価格を再試算。FOB/CIF条件・INCOTERMSの再設定。GovInfo

2週間以内

  • 通関手順の改修:ブローカーとHTS記載順序CSMS #66027027の運用確認、ACE申告テスト。FTZ利用企業はPFS運用へ切替。GovDelivery
  • Chap.98/9802の適用可能性評価(再加工・修理・組立スキーム)。ドローバックの回収設計。GovDelivery

90日以内

  • 供給網の見直し:第三国加工の原産地規則経由地リスクを監査。トランスシップ回避(違反認定時は**+40%の追加率**など厳罰化)。The White House
  • 価格・契約条項(関税サーチャージ、関税変動条項、フォースマジュール)を更新。為替・在庫・与信の同時管理。

6) よくある質問(FAQ)

Q1. “50%”は複利計算ですか?
A. いいえ。**いずれも価額(dutiable value)に対するad valoremの“上乗せ”**です(通常関税+25%+25%)。GovInfoGovDelivery

Q2. いつから課税?“船積み済み”は?
A. 2025年8月27日 0:01 a.m. EDT(日本時間8/27午後)以降の輸入(消費仕向け)8/27前に最終輸送へ載荷9/17前に輸入した貨物は追加25%の対象外GovInfoGovDelivery

Q3. すべての品目が対象ですか?
A. 原則対象ですが、人道物資・情報資料の除外特定の232対象など例外があります。詳細は該当9903番号・注記で確認してください。GovDeliveryGovInfo

Q4. 交渉で下がる可能性は?
A. 報道ベースでは対話継続の見通しもある一方、現時点(8/28 JST)では50%が有効。最新動向のモニタリングを推奨。ウォール・ストリート・ジャーナルポリティコ


7) 参考(制度の趣旨と定義)

  • 相互関税(Reciprocal Tariffs)とは、相手国の対米関税や障壁に対応して米国が同程度の追加関税を課す考え方。実務上は通常税率に上乗せされます。C.H. Robinson

主要ソース(抜粋)

  • White House:EO 14326(7/31)付属書でインド25%8/7発効The White House
  • White House:EO 14329(8/6)(対ロシア原油関連)で**インド追加25%**を指示。The White House
  • CBP CSMS #66027027(8/25)9903.01.84例外(9903.01.85–89)Chap.98/9802FTZ PFSドローバックHTS記載順序GovDelivery
  • Federal Register / govinfo(8/27)実装告示(FR 2025-16419)適用開始時刻232との関係GovInfo
  • 影響評価(報道)対象は輸出の約55%主要セクターReuters

欧米(米国―EU)「関税・通商フレームワーク合意」の本文とその日本語訳

公式本文(英語・原文)

  • The White House: “Joint Statement on a United States–European Union Framework on an Agreement on Reciprocal, Fair, and Balanced Trade”〔2025年8月21日〕。The White House
  • European Commission: “Joint Statement on a United States–European Union framework on an agreement on reciprocal, fair and balanced trade”〔2025年8月21日〕。Trade and Economic Security

どちらも同一の共同声明です。ホワイトハウス版と欧州委版で細部の表記が一部異なる箇所がありますが、内容は一致しています。The White HouseTrade and Economic Security


日本語仮訳(非公式・実務向け。原文構成に沿って整理)

*数値・日付・用語は原文準拠/条文番号は共同声明の番号に対応

前文
米国とEUは、互恵・公正・均衡な貿易に関する協定(以下「本協定」)の**枠組み(Framework)**に合意。二者間の巨大な経済関係を安定化・強化し、市場アクセスの改善と再産業化を後押しする第一歩と位置づける。The White HouseTrade and Economic Security

1. EUの関税措置
EUは米国の工業品関税を撤廃し、米国産水産・農産品(木の実、乳製品、青果・加工食品、種子、大豆油、豚肉・バイソン等)に優先的アクセスを付与。2020年8月21日発表のロブスター関税合意(2025年7月31日失効)を延長・拡充(加工ロブスターも対象)。Trade and Economic Security

2. 米国の基本関税線(対EU)
米国はEU原産品に対し、最恵国(MFN)税率15%のいずれか高い方(=MFN+相互関税の合計として15%)を適用。The White HouseTrade and Economic Security

(2の但し書き:MFNのみの例外/発効日)
2025年9月1日以降、以下はMFNのみ適用:希少天然資源(コルク等)/航空機・同部品/ジェネリック医薬品とその原料・化学前駆体。今後、重要分野の追加指定も検討。The White HouseTrade and Economic Security

3. 232関税の上限・自動車の扱い(発効トリガー)

  • 医薬・半導体・木材について、MFN+1962年通商拡張法232条関税の合計を15%上限に。
  • 自動車・部品(232関税対象)については、EUが第1項の関税撤廃に向けた立法提案を正式提出した同月の初日から適用変更:
    • MFNが15%以上の品目:232は不課(=MFNのみ)。
    • MFNが15%未満:**MFN+232=合計15%**に調整。
  • 232の変更は米国の国家安全保障と整合的に実施The White HouseTrade and Economic Security

4. 原産地規則(ROO)
本協定の利益が主として米国・EUに帰属するよう、ROOを協議・策定。The White HouseTrade and Economic Security

5. エネルギー・先端半導体
エネルギー供給の安全・多様化に協力。EUは2028年までに米国産LNG・原油・原子力関連を総額7,500億ドル規模で調達する意向。さらに米国製AIチップを少なくとも400億ドル購入。EUは米国流の技術セキュリティ要件を導入する方向で、整備後は米国が輸出円滑化に努める。The White HouseTrade and Economic Security

6. 相互投資
双方向投資を促進。EU企業が2028年までに米国戦略分野へ追加で6,000億ドル投資する見込み。The White HouseTrade and Economic Security

7. 防衛調達
EUは米国の軍需・防衛装備の調達を大幅増(米政府も支援)。NATO相互運用性を強化。The White HouseTrade and Economic Security

8. 非関税障壁・規格相互承認(自動車を含む)
非関税障壁の削減・撤廃で連携。自動車相互承認を目指し、規格機関同士の技術協力適合性評価の対象拡大を推進。The White HouseTrade and Economic Security

9. 食品・農産の手続簡素化
豚肉・乳製品の衛生証明の要求を簡素化する等、農食分野の非関税障壁に共同対処。The White HouseTrade and Economic Security

10. EUDR(森林破壊規則)
米国内の生産は森林破壊リスクが極小との前提に、EUDRが過度な影響を与えないようEUが対応Trade and Economic Security

11. CBAM(炭素国境調整)
デミニミス拡大に加え、運用上の更なる柔軟性をEUが提供する方向。Trade and Economic Security

12. CSDDD/CSRD(サステナ関連EU法)
過度な貿易制約にならないようEUが取り組む。中小企業の事務負担軽減民事責任・気候移行義務の見直しの提案、域外企業への過剰適用懸念にも配慮。Trade and Economic Security

13. 適合性評価・サイバー
米国の適合性評価機関を、1998年のEU・米国MRAに基づき無線機器指令(RED)の指定機関として認定可能。サイバーセキュリティのMRAも交渉。The White HouseTrade and Economic Security

14. 重要鉱物等の輸出規制への共同対応
第三国による輸出規制に対し、協調して備える。The White HouseTrade and Economic Security

15. 知的財産
高水準の知財保護・執行について協議。The White HouseTrade and Economic Security

16. 労働
国際的に認められた労働権強制労働の排除を含む)を強固に保護The White HouseTrade and Economic Security

17. デジタル貿易
不当なデジタル障壁を是正。EUはネットワーク使用料を導入しない電子的送信に関税を課さない方針を双方が確認し、WTOモラトリアムの継続・恒久化を目指す。The White HouseTrade and Economic Security

18. 税関・手続のデジタル化
EUは税関改革の実施・貿易手続のデジタル化について、米国および米国事業者と協議Trade and Economic Security

19. 経済安全保障の整合
サプライチェーン強靭化とイノベーションのため、投資審査・輸出管理・関税逃れ対策協力非市場的慣行や公共調達の相互性欠如への対応を含む。更なる実施措置に協働で取り組む。The White HouseTrade and Economic Security

結語
両者は各国内手続に従い、本枠組みを実施するための正式文書を速やかに整備する。The White House

米EUの「関税・通商フレームワーク合意」と日米の相互関税合意を要点比較

米EUの「関税・通商フレームワーク合意」と日米の相互関税合意要点比較したまとめです。(2025/8/22時点


要点

  • 関税の基本線
  • 自動車の発効トリガー
    • EU:EUが関税撤廃立法を“提案”した月の初日から米側が引下げ(遡及可)。Reuters
    • 日本大統領令で実施(準備中)。運用上の「二重課税」不備は修正・還付を米側が約束。Reuters+1
  • 非関税・調達/投資
    • EU電子的送信の関税不課/ネットワーク使用料を導入しないエネルギー$7,500億+AIチップ$400億購入対米投資$6,000億を明示。Trade and Economic Security
    • 日本政府系金融で最大$5,500億の投資ビークル(利益配分1:9で米側優先)、米車の追加試験免除米農産品・エネルギーの調達拡大Ministry of Economy, Trade and IndustryThe White House

主要な違い(ビジネスマン向け早見表)

論点米国―EU日本―米国
米国側の基本関税MFN or 15%(高い方)。15%はMFN+相互関税の合算Trade and Economic Security込み15%(MFNを含む)MFN≧15%は上乗せなしMFN<15%は15%にMinistry of Economy, Trade and Industry
自動車・部品現行27.5%→**15%**へ。EUが関税撤廃立法を“提案”した月の初日から遡及して適用。Reuters27.5%→15%に引下げる方向で大統領令を予告。文書整備は**“数週間以内”**と発言。Reuters+1
鋼鉄・アルミ(232)50%据え置き。将来のTRQ等協議の余地。Reuters公表文書に明記なし(別建ての232措置が継続する可能性、要フォロー)。Ministry of Economy, Trade and Industry
MFNのみの例外航空機・部品/ジェネリック医薬+原料/化学前駆体/コルク等MFNのみ9/1~)。Trade and Economic Security品目の明細提示なし(「日本を他国に劣後させない」方針のみ)。Ministry of Economy, Trade and Industry
デジタル電子的送信への関税不課継続、EUはネットワーク使用料を導入しないTrade and Economic Security特段の明記なし
エネルギー・サプライEUが米産エネルギー$7,500億分を2028年までに調達。AIチップ$400億購入対米投資$6,000億Trade and Economic Security日本が最大$5,500億の投資枠(政府系金融)。米農産品・エネルギー調達拡大。利益配分1:9を明示。Ministry of Economy, Trade and IndustryThe White House
非関税措置自動車の相互承認など規制協力を明記。Trade and Economic Security米国メーカー乗用車を追加試験なく受入れCEV補助金の運用見直しMinistry of Economy, Trade and Industry
文書の確度共同声明(3.5ページ)で条項を明文化ReutersTrade and Economic Security内閣官房の「概要」資料+ホワイトハウスのファクトシート中心正式文書は整備中で運用不備(二重課税)は修正・還付へ。Ministry of Economy, Trade and IndustryThe White HouseReuters

実務解釈のポイント

  • EU向けは“書面化済み”で適用条件が明確/品目例外も列挙
  • 日本向けは“原則15%”の骨格は固いが、運用・適用時期は大統領令の内容を都度確認(通関実務は特に)。Reuters

セクター別の使い分け(具体アクション)

  • 完成車・部品(EU→米)EUの立法“提案”時期に合わせて出荷・通関日を設計遡及を狙った在庫移送・価格見直しを検討。Reuters
  • 完成車・部品(日本→米)HS×MFN×15%の再計算を即実施。二重課税の還付可否大統領令の発効日をフォロー(受注条件は可変条項で)。Reuters
  • 医薬・半導体(EU→米)MFNのみ対象は9/1以降の通関に合わせる(契約インコタームズと価格条項の改定)。Trade and Economic Security
  • 酒類(EU→米)未決分野のため販促・価格は保守的に。Reuters
  • 対米販売のSaaS/配信電子的送信の関税不課を前提に価格モデル再検討(EU案件)。Trade and Economic Security
  • 対米投資計画(日本企業)$5,500億枠の適用条件・利益配分1:9を踏まえ、資金構造とJV条件を設計。Ministry of Economy, Trade and Industry

スケジュール感(公開情報ベース)

  • 7/27(米EU):首脳間で骨子合意。8/21に共同声明自動車は立法“提案”月の初日からReutersTrade and Economic Security
  • 7/22-23(日米):相互関税で**原則15%**に合意。概要資料(日本)、WHファクトシート(米)公表。Ministry of Economy, Trade and IndustryThe White House
  • 8/8(日米):米側が二重課税の不備を修正・還付と表明。自動車15%への引下げは大統領令で実施予定Reuters

相互関税の調査結果(要約)

※プロジェクト基準フォーマット

国名関税率出所備考
アメリカ(対EU:一般品)15%またはMFNの高い方欧州委 共同声明・Reuters Trade and Economic SecurityReuters鋼鉄・アルミは別建て50%。
アメリカ(対EU:自動車・部品)15%(EU立法“提案”月の初日から)Reuters Reuters現行27.5%から引下げ、遡及可。
アメリカ(対EU:鋼鉄・アルミ)50%Reuters Reuters当面維持、将来TRQ協議余地。
アメリカ(対EU:MFNのみ適用)MFN欧州委 共同声明 Trade and Economic Security航空機・部品/ジェネリック医薬+原料/化学前駆体/コルク等。9/1~
アメリカ(対日本:一般品)込み15%(MFN含む)内閣官房 概要(PDF) Ministry of Economy, Trade and IndustryMFN≧15%は上乗せなし/MFN<15%は15%。
アメリカ(対日本:自動車・部品)15%(MFN含む)内閣官房 概要+Reuters Ministry of Economy, Trade and IndustryReuters27.5%→15%。大統領令で実装予定。
アメリカ(対日本:運用)二重課税を修正・還付Reuters ReutersEUにあった“ノースタッキング”条項を日本にも適用へ。

ひとこと総括

  • EU合意は「条文化された枠組み」+具体リストで、運用の見通しが立てやすい。一方、
  • 日米合意は「原則15%」の骨格は明確だが、最終実装(大統領令)と細部運用のフォローが実務カギ。Reuters+1Ministry of Economy, Trade and Industry

アメリカ向け輸入でのファーストセールスで日本企業が陥りやすい落とし穴と関税低減のステップ

以下は、米国向け輸入での “First Sale(ファーストセール)” を前提に、日本企業が陥りやすい落とし穴と、関税低減を勝ち取るための実務ステップを、経営者目線で整理したものです。
※EUは2016年のUCC以降「ラストセール原則」に移行しており、ファーストセールは使えません。本回答は米国通関を対象にしています。Taxation and Customs UnionLegislation.gov.uk


まず押さえるべき基礎

  • 米国ではファーストセールが認められ得る:多段階取引(メーカー→商社→米国輸入者)で、一定条件を満たせば最初の売買価格を課税価格に採用可能。判例「Nissho Iwai(1992)」が基準を示しています。Justia Law
  • 条件は大きく3つ(通称:Nisshoテスト:判例 United States v. Nissho Iwai American Corp.(1992年)で確立された要件)
    1. メーカー↔仲介者間に**真正な売買(bona fide sale)**があること
    2. その売買時点で米国向けに明確に仕向けられていること(clearly destined for the U.S.)
    3. 独立当事者間価格であること(関連者の場合はcircumstances of saletest valuesで妥当性立証)
      これらはCBPの裁決・ガイダンスでも繰り返し確認されています。CROSS+1U.S. Customs and Border Protection
  • エントリー時の申告義務:ファーストセール適用時はFirst Sale Declaration通関時に申告する必要があります。U.S. Customs and Border Protection
  • 記録保存:関連資料は5年間の保管が義務(19 CFR Part 163)。不備は追徴や罰則のリスク。eCFR
  • EUは不可:「直前の売買」を基準とするUCC実施規則(Article 128)で、ファーストセールは実務上排除。米国とEUで方針が真逆です。Taxation and Customs Union

日本企業が陥りやすい “落とし穴” 12選

  1. 市場(米国/EU)の混同:EU貨物に米国の発想を適用して否認。まず仕向地別に方針を分けるTaxation and Customs Union
  2. 商社・サプライヤーからの資料未入手:メーカー発行の契約・PO・インボイス・支払証憑・出荷/梱包証跡が揃わずbona fide saleの立証に失敗。Customs Mobile
  3. “米国向けに明確” の証憑不足:製品仕様書やラベル、米国規格/UL表示、米国向け別注指示、パッケージ図面、船積み書類の紐付けが弱い。CROSS
  4. 関連者価格の立証不足:移転価格文書だけに依拠し、circumstances of sale/test valuesでの説明を欠く。CBPはTP文書のみでは十分と見なしません。U.S. Customs and Border ProtectionTuttle Law
  5. 非市場経済(NME)影響の見落とし:原材料・生産の一部がNME由来なのに、非市場的影響の排除を示せず否認された近時事例(Meyer)。Justia LawFindlaw
  6. アシスト/ロイヤルティの加算漏れ:金型・設計・無償支給、ライセンス料等の加算要素を見落とし過少申告に。eCFR
  7. インコタームズと内国費用の取り扱い誤り:EXW/FOB等による域内陸送費の扱いを混同。eCFR
  8. 申告漏れFirst Sale Declarationを入れ忘れ、後から説明が破綻。U.S. Customs and Border Protection
  9. 5年保存体制の不備:CBPの**(a)(1)(A)リスト**に沿った文書管理がない。Legal Information InstituteeCFR
  10. 年次トゥルーアップ/リベート処理の誤り輸入後の値引きは原則無視(後減額は不可)という規定理解不足。eCFR
  11. ブローカー指示の曖昧さ:明細行ごとの計算根拠・加算要素・貨物紐付けが伝わらず伝送値がズレる。U.S. Customs and Border Protection
  12. 監査・違反対応の軽視:過少申告は19 U.S.C. §1592の制裁対象(過失~故意で上限が大きく変動)。Legal Information Institute

関税低減を勝ち取るための「3条件」の見える化

  • 条件A|真正な売買(bona fide sale)
    契約・PO・インボイス・支払・引渡し・危険移転・所有権移転の一貫性。U.S. Customs and Border Protection
  • 条件B|米国仕向けの明確性(clearly destined)
    米国仕様/ラベル、米国規格、注文書に“U.S.”明記、米国向けLOT・梱包、BL/通関書類の紐付け。CROSS
  • 条件C|独立当事者価格(関連者はcircumstances of sale/test valuesで妥当性提示)Legal Information Institute

実務ステップ(着手~90日イメージ)

Phase 1|戦略設計(~30日)

  1. 対象市場の切り分け(米国のみFS可、EUは不可)と関与サプライヤーの棚卸し。Taxation and Customs Union
  2. サプライヤー合意形成:NDA/情報提供覚書(メーカー→商社→貴社)。
  3. クイック判定(SKU×供給網):A/B/Cの3条件に照らして実現性スコアを付与。

Phase 2|証憑の収集・設計(~60日)
4) “First Saleパッケージ”雛形を配布(下記チェックリスト)。
5) 加算要素の洗い出し(アシスト・ロイヤルティ・梱包等)と按分ロジックの確定。eCFR
6) 関連者テスト文書化(circumstances of saleの説明、必要に応じtest values参照)。U.S. Customs and Border Protection

Phase 3|パイロット&本番運用(~90日)
7) ブローカー実装:行別のFS価格・加算要素・証拠紐付け、First Sale Declarationの送達手順を合意。U.S. Customs and Border Protection
8) パイロット輸入(数件):CBPの質問(CF28/29)を想定した回答テンプレも準備。
9) 内部監査:記録の5年保存体制((a)(1)(A)リストに沿う)を点検。Legal Information InstituteeCFR
10) 展開:効果測定(1件あたりの関税節減額=従来価格×税率-FS価格×税率)。
 例)税率5%、従来$120→FS$80なら**$6→$4**、1個あたり**$2**削減。


取るべき証憑(“First Saleパッケージ”チェックリスト)

売買関係

  • メーカー↔商社、商社↔貴社の契約/PO/見積インボイス支払証憑(銀行送金明細)
  • 所有権移転/危険負担の条項、Incoterms
    米国仕向けの証拠
  • 米国仕様書、UL/ANSI等規格適合、米国向け梱包/ラベル図面、米国宛出荷指示
  • 生産LOTとBL・ISF・Entry書類のトレーサビリティ
    価格構成・加算要素
  • BOM/原価構成(アシストの有無)、金型/設計/梱包費、ロイヤルティの契約・支払根拠
  • インコタームズに応じた域内陸送費の扱い整理(EXW/FOB等)
    関連者取引の立証(該当時)
  • circumstances of sale説明書、test values参照資料、社内決裁や見積比較の実態

上記の考え方・要件は、CBPガイダンス/規則および裁決に基づきます。U.S. Customs and Border Protection+1eCFR


ブローカーへの指示(英文例)

“For the lines listed, appraise under the First Sale basis: use the manufacturer-to-middleman price as the transaction value, with the following additions (assists, royalties, packing) and references to supporting documents (contract/PO/invoices/proof of payment/specs/labels). File the CBP First Sale Declaration at entry. Maintain the full First Sale package for 5 years.”
(根拠:First Sale申告要件、5年保存義務)U.S. Customs and Border ProtectioneCFR


監査・紛争への備え

  • CF28/29対応台帳:案件別に「質問→根拠資料→回答案」を即時提示できる形で常備。
  • 過少申告の法的リスク:過失/重過失/故意で19 U.S.C. §1592の上限が変動。内部統制・教育・是正策は必須。Legal Information Institute
  • 近時の司法動向Meyer事件にみるNME影響の立証ハードル等、最新動向をウォッチ。Justia LawFindlaw

すぐ始められる「実務To‑Do」まとめ

  1. 仕向地別方針:米国(FS実施)/EU(FS不可)で分ける。Taxation and Customs Union
  2. 供給網ごとの実現性診断(Nisshoの3条件)。Justia Law
  3. サプライヤー合意(情報提供と5年保存のコミット)。eCFR
  4. First Saleパッケージ雛形を配布・回収(上記チェックリスト)。U.S. Customs and Border Protection
  5. ブローカー実装&申告運用(First Sale Declaration)。U.S. Customs and Border Protection
  6. 内部監査KPI(節減額/採用率/不備率/照会件数)で継続改善。

ChatGPTのバージョンによるHSコード付番の結果違い:BOSSのカフェラテを例に

HSコードを調べる商品(写真)

1) 結論

  • 推定HS(6桁): 2202.99
  • 要約: 画像は「BOSS Café au Lait」(缶入りカフェオレ)=コーヒー+乳+砂糖等の非アルコール飲料。抽出物や飲料の素(粉末・濃縮)は21.01だが、本品は出来上がった飲料のため**22.02「その他の非アルコール飲料」**の「その他」細分(.99)が最適。
  • 確度(%): 85%

2) 根拠

  • 適用通則・注(GRI 1, 6):項の文言と類注に従い分類(まず項=22.02、次いで号=2202.99)。
  • 判定ポイント
    • 画像から「Café au Lait(コーヒー乳飲料)」で飲用完成品と判断(缶入り、常温流通想定)。
    • 21.01はコーヒーのエキス・エッセンス・濃縮物やそれらを**もととした調製品(飲料の素)**を対象(例:インスタントコーヒー等)。本品は該当せず。
    • 22.02は砂糖や香味で調整した非アルコール飲料を包含(例示:甘味・香味を加えた水等)。コーヒー・乳・糖を含むRTD飲料はこの範疇。
  • 排他・除外の理由
    • 21.01(コーヒーの抽出物・濃縮物/飲料の素)ではなく、出来上がった飲料のため除外。
    • **04類(ミルク・乳製品)**は「乳そのもの」や凝縮・発酵等の品であり、コーヒー飲料は対象外。
    • **22.01(水)**は甘味・香味を加えないもの。コーヒー飲料は該当しない。

3) 候補比較(日本語表)

候補HS(6)日本語品名主要根拠棄却理由確度%
2202.99その他の非アルコール飲料飲用完成品のRTDコーヒー飲料は22.02、その他細分へ。85
2101.12コーヒーのエキス・濃縮物をもととした調製品21.01は抽出物・濃縮物や「飲料の素」。本品は完成飲料であり不該当。10
0402/0403乳・クリーム(濃縮/発酵)乳由来である点を重視する場合の対抗。飲料(コーヒー加味)の完成品は22.02で扱うのが通例。3
2201.10水(砂糖・香味料なし)容器入り飲料の別候補。砂糖・コーヒー・乳を含み不該当。2

4) 争点・注意

  • **形態が濃縮液/シロップ(希釈用)**なら21.01側に振れる可能性。
  • 国内細分(9桁)は糖度・乳固形分・容器容量・炭酸の有無等で分かれることが多い。輸入先国の実行関税表で要確認。
  • アルコール含有(発酵/リキュール)は22.08側の検討が必要。

5) 追加で必要な情報

  • アルコール分(0%想定か)
  • 形態(そのまま飲むRTDか/濃縮・希釈用か)
  • 主要原材料の表示(コーヒー、乳、糖の有無)
  • 炭酸の有無、糖度(Brix)、内容量(国内細分用)

6) 参考資料・出所

  • 21.01(コーヒー抽出物・濃縮物・飲料の素の範囲)解説。
  • 22.02(砂糖・香味を加えた非アルコール飲料の扱い)インデックスの例示。

1) 結論

  • 推定HS(6桁): 2202.99
  • 国別例示(任意):
    • JP: 2202.99(「その他のアルコールを含有しない飲料—その他」)Japanese Customs
    • US: 2202.99.9100(その他のノンアルコール飲料—その他)〔Pokka “Milk Coffee”等を当該号に裁決〕;製品により**2202.99.2800(ミルクベース飲料)**となる例もあり。Customs Mobile+1
    • EU: 2202 99(その他のノンアルコール飲料)。EUは「**ミルクを含む飲料(ココア等で風味付けしたものを含む)**は2202」 と明記。EUR-Lex
  • 要約:
    画像の缶は 「BOSS Café au Lait(コーヒー飲料/乳・砂糖を含む)」 と読み取れます。即飲用の甘味・乳成分入りコーヒー飲料で、アルコールを含まないため、**HS 22.02「その他のノンアルコール飲料」**の範囲に入り、**小見出しは 2202.99(その他)**が妥当です。WCOの定義(22.02の「非アルコール飲料」≤0.5%vol)および、米国CBPの複数裁決(日本製ミルクコーヒー、コールドブリューのカプチーノ等を2202.99)と整合します。wcotradetools.orgCustoms MobileCROSS
  • 確度(%): 90%

2) 根拠

  • 適用通則・注(例:GRI 1, 3(b), 6、類注・部注)
    • GRI 1:品目文言(22.02「…その他の非アルコール飲料」)に合致。WCOは22.02の非アルコール飲料を0.5%vol以下と定義。wcotradetools.org
    • GRI 6:22.02内の非アルコールビール(2202.91)ではないため「その他」=2202.99Japanese Customs
  • 判定ポイント(主用途、主要材質、機能、構成、セット該当性 等)
    • 即飲用の清涼飲料(コーヒー+乳+砂糖/香料等)。画像ラベルの「コーヒー飲料」「カフェオレ」表示から確認。
    • 乳成分を含む飲料であっても、飲料としての形態(液体・即飲用)であるため22.02(飲料)で判断(EUも「ミルクを含む飲料は2202」と整理)。EUR-Lex
  • 排他・除外の理由(他の類・項ではない理由)
    • 2101(コーヒーのエキス・濃縮物やそれを基にした調製品):通常は飲料の(粉末・濃縮液等)を対象。出来上がった飲料は22.02に分類される運用・解釈。World Customs Organization
    • 04類(牛乳・クリーム):ミルクそのもの/ミルク製品を対象。コーヒー等で風味付けした飲料は22.02へ(EU明記)。EUR-Lex
    • **2201(水)2009(果実・野菜ジュース)**ではない。

3) 候補比較(日本語表)

候補HS(6)日本語品名主要根拠棄却理由確度%
2202.99その他のノンアルコール飲料即飲用のコーヒー飲料(乳・砂糖入り)。WCO定義および米国CBPの裁決(ミルクコーヒー、コールドブリュー等)と一致。90
2101.12コーヒーをもととした調製品コーヒー由来の調製品。通常は飲料の素(粉末・濃縮)。本品は完成飲料World Customs Organization7
0401/0402牛乳・クリーム(濃縮の有無)乳製品。乳にコーヒー等で風味付けした飲料は22.02へ(EU文書)。EUR-Lex2
2201水(砂糖・香味を加えたもの含む)飲料一般。主体はコーヒー飲料であり「水」ではない。1

4) 争点・注意

  • 国別細分の違い:米国では乳固形分の含有・乳製品割当(TRQ)等により2202.99.2800等のミルク系サブヘディングへ振り分けられる場合があります(関税割当・追加税番の適用に注意)。Customs Mobile
  • アルコール分:WCOの定義上、アルコール度数0.5%vol超であれば22.02の「非アルコール飲料」から外れるため要確認(通常の缶コーヒーは0%)。wcotradetools.org
  • 表示からの読み取り:画像では「コーヒー飲料」「カフェオレ」「乳・砂糖を含む」等が確認でき、22.02判断の実情と合致。
  • 実務:EU・米国の公開資料はいずれも出来上がった乳入り飲料を22.02とする立場で整合。EUR-LexCustoms MobileCROSS

5) 追加で必要な情報

  • アルコール分(0.5%vol 以下であることの確認)
  • 乳固形分等の含有量(国別細分やTRQ該当性判断に必要:特に米国)Customs Mobile
  • 正確な成分表(砂糖・乳脂肪・乳固形分・コーヒー抽出物濃度)
  • **内容量・容器(缶/瓶)**とHSの適用に影響する他法令(食品・表示)有無

6) 参考資料・出所

  • WCO:HS2022 Chapter 22 / Heading 22.02(非アルコール飲料の定義 ≤0.5%vol)。wcotradetools.org
  • 日本:輸入統計品目表 22類(22.02/2202.99の範囲)。Japanese Customs
  • EU:実施規則(EU)2022/1322(乳を含む飲料は2202)。EUR-Lex
  • 米国CBP裁決:Pokka Milk Coffee等→2202.99.9100、コールドブリュー「カプチーノ/ラテ・マキアート」→2202.99系。Customs MobileCROSS
  • 米国CBP裁決:ミルクベース飲料→2202.99.2800の適用例。Customs Mobile

1) 結論

  • 推定HS(6桁): 2202.99
  • 国別例示(任意):
    • JP: 2202.99(その他のアルコールを含有しない飲料—その他)
    • US: 2202.99.9100(Other non-alcoholic beverages—Other)〔Pokka「Milk Coffee」等の裁定例〕
    • EU: 2202 99(Other non-alcoholic beverages)
  • 要約:
    写真の缶は「サントリー BOSS Café au Lait(コーヒー飲料・乳・砂糖入り)」で、即飲用のノンアルコール飲料に該当。コーヒー、砂糖、牛乳を含む完成品飲料は HS2202 に分類され、非アルコールビール等以外は 2202.99(その他) が妥当。
  • 確度(%): 90%

2) 根拠

  • 適用通則・注:
    • GRI 1:品名文言「その他の非アルコール飲料」に合致。
    • GRI 6:2202内の細分に従い、非アルコールビール(2202.91)ではないため「2202.99」。
    • WCO解説:アルコール分0.5%以下の飲料を「非アルコール飲料」と定義。
  • 判定ポイント:
    • 商品表示「コーヒー飲料」「カフェオレ」=乳・砂糖を含む即飲用コーヒー。
    • 飲料として販売、粉末や濃縮ではない。
    • 成分(コーヒー・牛乳・砂糖・クリーム等)は全て飲料用であり、第22類該当。
  • 排他・除外理由:
    • 2101(コーヒーのエキス・調製品):通常は粉末・濃縮液等で、完成飲料は含まれない。
    • 0401/0402(牛乳・クリーム):乳製品そのもの。飲料として調製されたものは22類へ。
    • 2201(水、砂糖や香味料入り):主体はコーヒー飲料であり水ではない。

3) 候補比較(日本語表)

候補HS(6)日本語品名主要根拠棄却理由確度%
2202.99その他の非アルコール飲料コーヒー+牛乳+砂糖の即飲用飲料。WCO定義および各国事例と一致。90
2101.12コーヒーを基とした調製品コーヒー由来の調製品濃縮や粉末の素。完成飲料は含まれない。7
0401/0402牛乳・クリーム乳製品風味付飲料は22類に移行。2
2201水(加糖・香味料入り)清涼飲料水主体はコーヒー飲料であり水ではない。1

4) 争点・注意

  • 米国:乳固形分の割合により「2202.99.2800(milk-based drinks)」に振替され、TRQ(関税割当)管理対象になる場合あり。
  • EU:乳を含む飲料は2202に属する旨が実施規則で整理済み。
  • 日本:輸入時は食品衛生法・表示規制にも留意。

5) 追加で必要な情報

  • アルコール分(通常0%、0.5%未満であることの確認)。
  • 乳固形分割合(特に米国ではTRQ判定に必要)。
  • 詳細な原材料配分(砂糖・乳成分・コーヒー抽出物濃度)。

6) 参考資料・出所

  • 日本 HS2022 第22類 定義・品目表
  • 日本関税協会「HS商品インデックス」
  • 米国CBP裁定(Pokka Milk Coffee, Cold Brew Latte など)
  • EU 実施規則(乳飲料の2202分類の明記)
  • WCO Explanatory Notes, Ch.22(非アルコール飲料の範囲)

1) 結論

  • 推定HS(6桁): 2202.99
  • 国別例示(任意)
  • 要約:
    画像は「サントリー BOSS Café au Lait」──乳と砂糖を加えた即飲用コーヒー飲料。アルコールを含まず、ジュースでも濃縮エキスでもないため HS 22.02「その他の非アルコール飲料」 に該当し、さらに非アルコールビール等ではないので 2202.99(その他) が妥当。
  • 確度(%): 90 %

2) 根拠

  • 適用通則・注
    • GRI 1 : 見出し22.02「…その他の非アルコール飲料」に文言適合。
    • GRI 6 : 22.02下位区分のうち非アルコールビール(2202.91)等に該当せず「その他」=2202.99。
    • WCO EN : 非アルコール飲料=アルコール度0.5 vol%以下。
  • 判定ポイント
    • 成分表示(コーヒー、牛乳、砂糖)から完成形の清涼飲料であると判断。
    • 粉末・濃縮タイプ(2101)ではなく即飲用缶飲料。
  • 排他理由
    • 2101 : コーヒー抽出物など“飲料の素”を規定、本品は完成飲料で除外。
    • 0401/0402 : 乳そのものを対象、本品は乳入り飲料で22類へ移動。
    • 2201 : 主成分はコーヒー飲料であり単なる“水・加糖水”ではない。

3) 候補比較(日本語表)

候補HS(6)日本語品名主要根拠棄却理由確度%
2202.99その他の非アルコール飲料即飲用コーヒー飲料。WCO定義・各国裁定と整合。90
2101.12コーヒー基調製品粉末・濃縮等完成飲料ではない。7
0401/0402牛乳・クリーム乳製品そのもの乳風味飲料は22類へ。2
2201水・加糖水清涼飲料水主体がコーヒー。1

4) 争点・注意

  • 米国: 乳固形分が高い場合、2202.99.2800(milk-based drinks)となり、関税割当(TRQ)対象。
  • EU: 乳含有飲料は2202と明確化済み(実施規則 EU 2022/1322)。
  • アルコール度: 0.5 vol%超なら22.02外となるため要確認。

5) 追加で必要な情報

  • 正確なアルコール度数(通常0 %だが要表示確認)。
  • 乳固形分/乳脂肪率(米国輸入時の細分・割当判定用)。
  • 詳細な成分配合(関税・食品法令対応資料用)。

6) 参考資料・出所

ファーストセールと中国生産

  • 中国製でも「ファーストセール(First Sale for Export)」は原則、適用可能です。国が中国だからという理由だけで不成立になるルールはありません。複数段階の売買の第1の売買が「米国向けの輸出販売」であり、独立当事者間(又は関係者間でも価格への影響なし)の真正な売買であることを、書証で立証できれば使えます。米国税関・国境警備局(CBP)の規則・裁判例がその枠組みを示しています。eCFRJustia Law
  • ただし中国が関与すると実務上のリスクは上がりやすい(証拠の取り寄せ、UFLPA対策、301関税・原産地判定、近時の判例運用など)。下記のとおり設計と証拠化が鍵です。U.S. Customs and Border Protection+1Court of International Trade


1) ファーストセールの成立要件(米国の基本ルール)

米国の関税評価は「取引価格(Transaction Value)」が原則で、米国向け輸出の売買での実際に支払った又は支払うべき価格を基礎とします。多段階の取引(製造者→海外中間業者→米国輸入者)の場合、裁判例(Nissho IwaiSynergy Sport)により、要件を満たせば第1売買の価格を評価基礎にできます。関係者間取引でも、「事情テスト」や「テストバリュー」で関係性が価格に影響していないと示せば受容されます。eCFRJustia LawFederal Register

要点(実務で見るチェック)

  • 真正な売買(所有権移転、価格、支払い実態、危険負担等が明確)
  • 米国向けに明確に仕向け(発注書・仕様書・米国仕様の包装/表示・船積書類の整合)
  • 独立当事者間(又は関係者間でも妥当価格)(事情テスト:通常の価格慣行、原価+通常利潤の回収ができる水準 等)
  • 書証の一貫性(製造者→中間→米国輸入者のPO/契約/請求書/支払証憑/物流書類のつながり)
    *規則上の根拠:19 CFR §152.103(関連者間の事情テスト・テストバリュー等)。eCFR

補足(2008〜2010年の動き)
2008年にCBPは「売買の解釈」を見直してファーストセールを狭める提案を出しましたが、その後撤回。同年の「ファーストセール申告(7501の“F”印)」は1年間の時限措置で終了しています(現在、一般的な“F”印提出義務はありません)。Federal Register+1U.S. Customs and Border ProtectionBarnes Richardson


2) 「中国関与」で高まりやすい実務リスク

A. UFLPA(ウイグル強制労働防止法)による拘留リスク

  • 新疆またはUFLPAエンティティ・リスト関係の原材料/工程が「一部でも」含まれる疑いがあると、強制労働推定により輸入禁止扱い(反証は「明白かつ説得力ある証拠」が必要)。ファーストセール可否とは別枠で、サプライチェーンの上流(原料〜紡績〜生地〜縫製 等)までトレーサビリティの立証が求められます。U.S. Customs and Border ProtectionU.S. Department of Homeland Security

B. 判例動向(Meyer系列)による立証ハードル

  • 中国(およびタイ)製調理器具を巡るMeyer事件では、CIT(国際貿易裁判所)がファーストセール不適用と判断した局面がありましたが、2022年にCAFC(連邦巡回控訴裁)が差し戻し、2024年にも再差し戻しを行い、過度に広い“非市場影響の不存在”の立証を課すのは不当との趣旨を示しています。結論として、ファーストセールは引き続き有効な選択肢ですが、**書証の充実(特に関連者間)**が厳しく問われています。Court of International TradeJustia LawNeville Peterson LLP

C. 追加関税(Section 301)・原産地の問題

  • 301関税は「原産国」に基づくため、中国原産なら多くの品目で追加関税(例:25%など)が乗ります。ファーストセールで関税評価額が下がれば、MFN関税だけでなく301の計算基礎も下がるため、なお有効ですが、**原産地判定(実質的変更)**が伴う案件(第三国加工など)は注意が必要です。U.S. Customs and Border ProtectionTrade.govCROSS
  • 2025年5月31日にUSTRは一部301除外の延長(〜2025年8月31日)を発表。除外や税率は政策変更の影響を受けやすいため、最新告示の確認が不可欠です。United States Trade Representative

D. AD/CVD(反ダンピング・相殺関税)

  • 製品がAD/CVDの対象なら、関税評価とは別の制度で運用されます。ファーストセールはAD/CVDの適用そのものを回避しません(Commerceの指示に基づきCBPが保証金徴収・最終賦課)。評価額の扱いが異なる場合に使う特別値フィールド等、申告実務も別途管理が必要です。Trade.govU.S. Customs and Border Protection

E. 中国側の情報越境規制・対外調査リスク(書証収集の難化)

  • 中国のデータ安全法・個人情報保護法、および反スパイ法改正(2023)や国家機密法改正(2024)の運用により、財務・サプライヤー情報等の国外移転やデューデリジェンスが難しくなる場面が増えています。工場側の原価・利潤資料や上流トレーサビリティ資料を米国監査向けに取り寄せる際のハードルとして認識が必要です。China Law TranslateArnold & PorterReuters+1

3) 実務対応:不成立リスクを下げる「設計」と「証拠化」

① 取引スキームの設計

  • 多段売買の明確化:製造者→(必要なら)独立の海外商社→米国輸入者、の契約の鎖を明確に。米国向けであることを第1売買の時点で示す(POの送付先、米国規格の仕様・表示義務、米国顧客名の紐付け等)。Justia Law
  • 関係者間なら事情テスト:19 CFR §152.103に沿い、通常価格慣行や原価+通常利潤で価格妥当性を示す内部資料(見積内訳、コストシート、PL/BSの抜粋等)を準備。eCFR

② 証拠パッケージ(最低限)

  • 製造者→中間業者→米国輸入者の発注書・契約・請求書・支払証憑(送金明細)・出荷指図/船荷証券前後一致
  • 仕様書・パッキングリスト・写真(米国仕様の表示・ラベル)
  • (関係者間)価格妥当性の裏付け(原価表、粗利分析、比較対象)
  • (該当品)UFLPA対応:サプライチェーントレース一式(原材料→最終製品の系譜、工場・下請名、入出庫台帳、GPS/軌跡・BCトレーサ等)、リスク評価と是正策
  • 記録保存5年間の記帳・保存(Part 163)。Legal Information Institute

③ 申告・当局対応の工夫

  • 事前照会/裁決の活用:必要に応じPart 177に基づく評価(Valuation)に関する裁決請求や、現場税関を通じたInternal Adviceを検討(不確実性の低減)。eCFR+1
  • 301・原産地:第三国加工案がある場合は**「実質的変更」の成立可能性を事前評価(必要なら原産地裁決**)。301は原産国ベースで課される点を常時確認。Trade.govU.S. Customs and Border Protection
  • AD/CVD:Commerce/CBPの指示(キャッシュデポジット、特別値フィールドの使用可否など)を事前に確認。U.S. Customs and Border Protection

4) 将来的なリスク(モニタリング推奨)

  • 政策変更リスク:301関税の税率・除外運用延長/終了短期で変動し得ます(2025年5月に一部除外延長の例)。最新のUSTR告示・連邦官報を都度確認。United States Trade Representative
  • UFLPA強化:エンティティ・リストの拡充や重点業種のシフト等、執行強化が継続見込み。証拠の粒度を先取りして整備。U.S. Customs and Border Protection
  • 判例の揺れMeyerのように関連者間・中国製での立証の細部は今後も争点になり得ます。事情テスト資料の厚みを維持。Justia Law
  • 中国国内規制越境データ反スパイ/機密の運用次第で、上流資料の国外移転が不許可や遅延となるケース。現地で合法に取得・保管・翻訳する体制を前広に構築。Arnold & PorterReuters

5) まとめ(実務チェックリスト)

  • 多段売買の第1売買米国向けであることを契約・書類で明確化
  • 真正な売買(所有権・支払・危険負担)の成立証拠を整備
  • 関係者間:19 CFR §152.103の事情テストに耐える価格妥当性資料
  • UFLPA:原材料レベルまでのトレーサビリティ反証資料
  • 301/原産地:第三国加工の有無と実質的変更の成否を事前評価
  • AD/CVD:対象か否か、対象なら申告上の特別取扱いとリスク把握
  • 記録保存5年(Part 163)と英訳/対訳の用意
  • 必要に応じ事前裁決/IAで不確実性を低減

参考(主な根拠)

米国関税でファーストセールを使えるかどうかが争点となったMeyer事件(2024)

話題の「Meyer事件」は、米国関税で“ファーストセール(first sale)”を使えるかが争点になった一連の訴訟の最新(2024年)判断を指します。

要点

  • 2024/12/13、連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)は差し戻し:下級審(CIT)が“親会社の財務情報を提出していない=不利”という推定的不利益でfirst saleを否定したのは不適切、ある証拠記録をちゃんと評価し直せと命じました。first sale自体は引き続き有効な選択肢です。 (Justia Law, Fed Circuit Blog)
  • 中国が関わるから即NGではない:2022年のCAFCは、“非市場経済(NME)ゆえにダメ”という考え方を否定。見るべきは買手・売手の関係が価格に影響したかであり、NMEの一般論ではないと明確化しています。 (Justia Law, ホワイト&ケース LLP)
  • 現時点の実務感:first saleは使える余地が続くが、証拠の出し方・残し方(テストの立証)が勝負。親会社のフル財務が必須とまでは言えないが、“関係性が価格に影響していない”ことの立証は必要です。 (Justia Law)

何が争点だったか

複数段の関連会社取引(製造業者→関連ディストリビュータ→米国輸入者)がある場合、最初の売買(first sale)の価格を関税評価に使えるか。Meyer社は製造業者→関連ディストリビュータの価格での評価(first sale)を主張、税関はディストリビュータ→輸入者の“第二段階”価格(second sale)で課税しました。 (Justia Law)


2024年判決のポイント(企業目線)

  1. 推定的不利益はダメ
    CITは“親会社(Meyer Holdings)の財務資料を出していない”ことを重く見てfirst saleを退けましたが、証拠命令違反もないのに不利推定を置くのは不適切とCAFC。記録上の他の証拠(社員宣誓証言、専門家意見、会社資料)を評価しろと差し戻し。 (Justia Law)
  2. 立証の道筋(2テスト)を明示
    関連者間価格の妥当性は、**19 C.F.R. §152.103(l)(1)**の
  • 「全コスト+利益」テスト
  • 「通常の価格設定慣行」テスト
    いずれかで示し得る、と再確認。CITはこの観点から**“記録にある証拠で”**判断し直すべきとされました。 (Justia Law, U.S. Customs and Border Protection)
  1. NME(中国)一般論は関係ない(ただし2022年判断)
    評価にNMEの影響一般を持ち込むのは法令上の根拠なし。見るべきは**「関係性が価格に影響したか」**という条文要件だけ、という線引きをCAFCは既に示しています。 (Justia Law)

結果:first saleは“生きている”。ただし証拠の作り方次第。2024年時点では最終確定ではなく差戻し中という状況です。 (Justia Law)


企業への実務インパクト(チェックリスト)

  • 取引書類の突合:発注書・インボイス・支払エビデンスを製造段階(first sale)単位でひも付け可能に。 (ホワイト&ケース LLP)
  • “関係が価格に影響していない”証拠:移転価格方針、独立第三者との比較、マージンの一貫性などで通常の価格設定慣行を示す。 (Justia Law)
  • 原価裏付け:品目別のコスト内訳+利益(BOM、製造間接費、販管費の扱い)を監査トレース可能に。 (U.S. Customs and Border Protection)
  • サプライチェーン図解:多段取引(香港/マカオの関連販社など)を物量・代金フローで可視化。 (Justia Law)
  • 親会社情報の扱い常に必須ではないが、求められた時に代替できる記録証拠を準備(子会社レベルの帳票・宣誓供述・専門家意見等)。 (Justia Law)
  • 監査/紛争対応プロトコル:CBP照会に対する短期提出体制と、first sale適用判断の社内基準を明文化。 (BDO)

いま何をするべきか(実行順)

  1. 対象SKUの棚卸し:first saleで申告中/検討中の品目を洗い出し。
  2. 証拠セットのギャップ分析:上記2テストに照らして足りない資料(コスト、比較対象、価格設定の説明)を特定。 (Justia Law, U.S. Customs and Border Protection)
  3. 運用ルール化:PO発行から支払・出荷・通関までの書類ひも付け標準を定義。
  4. リスク説明の社内共有差戻し中であること、first saleが制度として排斥されたわけではないことを経営・現場に周知。 (Justia Law)

事件の流れ(年表)

  • 2021/3:CITがfirst sale否定(NME影響などを重視)。 (International Trade Law)
  • 2022/8/11:CAFCがNME一般論の持込みを否定し差戻し(Meyer “III”)。 (Justia Law)
  • 2023/2/9:CIT、再びfirst sale否定(主に親会社財務不提出を重視)。 (BDO)
  • 2024/12/13:CAFC、推定的不利益は不適切として再度差戻し。 (Justia Law, Fed Circuit Blog)

よくある誤解

  • Q:非市場経済(中国)が関わるとfirst saleは使えない?
    A:いいえ。CAFCはNME一般論は評価に持ち込まないと明確化。焦点は関係性が価格に影響したかです。 (Justia Law)
  • Q:親会社の連結財務がないと必ず負ける?
    **A:必ずしも必要ではない。2024年CAFCは“未提出=不利推定”**という短絡を戒め、既存記録の実質審理を命じています。 (Justia Law)

注:本件は最終確定前(差戻し審理中)です。実案件では顧問弁護士・通関士と協議のうえ、対象品目ごとに二つのテスト(全コスト+利益/通常の価格設定慣行)で証拠を整えるのが実務的です。 (Justia Law, U.S. Customs and Border Protection)

参考(判決・概要)

  • 2024年12月13日 CAFC判決(差戻し)— Meyer Corp., U.S. v. United States(判旨・PDFあり)。 (Justia Law)
  • 同日の要約(FedCircuitBlog)。 (Fed Circuit Blog)
  • 2022年のCAFC判断(NME一般論の排除)。 (Justia Law)
  • 2023年CITの再度否定(背景把握用)。 (BDO)
  • CBP Customs Bulletin(規則テスト等の整理)。 (U.S. Customs and Border Protection)

2025年8月18日時点で公表・報道されている「相互関税」最新一覧

以下のフォーマットで、最新(2025-07-31改定、8/7発効/中国は8/11に90日延長)の相互関税をまとめました。
注記:EUは品目別の“式”で決まります(下記参照)。Annexに載っていない国は原則 +10%(別途の例外がある場合を除く)。中国は当面+10%に据え置き(90日延長)。(The White House) (Federal Register)

国名関税率出所備考
アフガニスタン15%EO Annex I(2025-07-31)
アルジェリア30%同上
アンゴラ15%同上
バングラデシュ20%同上
ボリビア15%同上
ボスニア・ヘルツェゴビナ30%同上
ボツワナ15%同上
ブラジル10%同上
ブルネイ25%同上
カンボジア19%同上
カメルーン15%同上
チャド15%同上
コスタリカ15%同上
コートジボワール15%同上
コンゴ民主共和国15%同上
エクアドル15%同上
赤道ギニア15%同上
欧州連合(EU)品目別:一般税率 <15% → (15% − 一般税率) / 一般税率 ≥15% → 0%同上一律率ではなく品目ごとに計算。(The White House)
フォークランド諸島10%同上
フィジー15%同上
ガーナ15%同上
ガイアナ15%同上
アイスランド15%同上
インド25%同上
インドネシア19%同上
イラク35%同上
イスラエル15%同上
日本15%同上
ヨルダン15%同上
カザフスタン25%同上
ラオス40%同上
レソト15%同上
リビア30%同上
リヒテンシュタイン15%同上
マダガスカル15%同上
マラウイ15%同上
マレーシア19%同上
モーリシャス15%同上
モルドバ25%同上
モザンビーク15%同上
ミャンマー(ビルマ)40%同上
ナミビア15%同上
ナウル15%同上
ニュージーランド15%同上
ニカラグア18%同上
ナイジェリア15%同上
北マケドニア15%同上
ノルウェー15%同上
パキスタン19%同上
パプアニューギニア15%同上
フィリピン19%同上
セルビア35%同上
南アフリカ30%同上
韓国15%同上
スリランカ20%同上
スイス39%同上
シリア41%同上
台湾20%同上
タイ19%同上
トリニダード・トバゴ15%同上
チュニジア25%同上
トルコ15%同上
ウガンダ15%同上
英国10%同上
バヌアツ15%同上
ベネズエラ15%同上
ベトナム20%同上
ザンビア15%同上
ジンバブエ15%同上
中国(香港・マカオ含む)10%EO 14298(2025-05-12)90日停止措置を2025-11-10まで延長。(Federal Register)
(参考)Annex未記載国10%(原則)EO(2025-07-31)「Annex Iに載っていない国」は原則+10%。例外あり。(The White House)

出所(主要一次情報)

  • 2025-07-31大統領令「Further Modifying the Reciprocal Tariff Rates」(Annex Iに全リスト掲載/EUの算定式、Annex未記載国=10%の規定を明記)。(The White House)
  • 2025-05-12 大統領令14298「中国との協議を反映した相互関税の変更」(中国を一時的に**10%**へ)。
  • 2025-08-14 連邦官報:中国の10%据え置き措置をさらに90日**延長の告示。(Federal Register)

補足

  • 表の国別率は上記Annex Iの“最新改定(7/31)”に基づきます(8/7発効)。(The White House)
  • Annexにない国(例:一部FTA相手国など)は原則+10%ですが、別の大統領令・覚書・HTSUS注記で例外が設定されうるため、実務ではCBPガイダンスとHTSUS該当条項の確認を推奨します。(The White House)