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【解決】HSコード特定にまだ悩んでる?AIが即検索!「HS Code Finder」登場

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セミナー資料

【メキシコ】最大50%関税案、2027年まで「棚上げ」の背景と日本企業への影響

【メキシコ】最大50%関税案、2027年まで「棚上げ」の背景と日本企業への影響

現在報じられている「メキシコ財界による最大50%関税案の延期要請」というニュースは、要約すると以下の通りです。

「中国などFTA非締約国からの約1,400品目に対し、最大50%の関税を課すという法改正案に対し、メキシコ経済界が『急激な実施は経済への打撃が大きい』として、少なくとも2027年までの延期・段階的適用を議会に働きかけ、審議が延長された」

これは単なる「対メキシコ輸出」の話ではなく、**「メキシコ生産拠点で、中国・アジア製の部材や設備を使用している日本企業」**のコスト構造に直結する重要な局面です。


1. 何が起きているのか(現状の整理)

シェインバウム新政権下の経済政策(および前政権からの流れ)の一環として、中国、インド、韓国、台湾など**「FTAを締結していない国」からの輸入品(約1,400〜1,500品目)に対し、最大50%の関税を課すLIGIE(一般輸出入税法)改正案**が下院で議論の遡上に載りました。

  • 対象分野: 自動車・EV部品、鉄鋼・アルミ、繊維・衣料、プラスチック、家具、玩具、電子機器など多岐にわたります。
  • 影響規模: 輸入額ベースで約500億ドル規模(メキシコ全輸入の約8〜9%)に及ぶと試算されています。
  • 目的:
    1. 対アジア貿易赤字の縮小と国内産業の保護(”Plan México”)。
    2. 2026年のUSMCA(米墨加協定)見直し協議を見据え、米国が求める「対中包囲網」に同調する姿勢を示すこと。

2. すでに進行している「関税強化」の流れ

今回の法案は突発的なものではなく、2024年から続く一連の保護主義的政策の延長戦上にあります。

  • 2024年4月(大統領令):鉄鋼、アルミ、繊維、電機など544品目に対し、5〜50%の臨時輸入関税を導入(2026年4月まで有効)。ターゲットは主に中国などのFTA非締約国。
  • 2024年末(繊維・アパレル規制):糸・生地(15%)、衣類(35%)への関税引き上げに加え、IMMEX(保税加工プログラム)の対象外リスト(Annex I)を拡大。「免税で輸入し、加工して再輸出」という抜け道を塞ぐ動きが強まっています。
  • 2025年以降の構想:今回のLIGIE改正案では、MFN(最恵国待遇)関税率そのものを底上げし、自動車(中国製完成車など)の関税を一律50%へ引き上げる案なども浮上していました。

3. 財界の懸念と「延期要請」の理由

メキシコ経営者連盟(Coparmex)などの産業界は、以下の理由から急激な関税引き上げに強く反対しています。

  1. コスト急増とインフレ懸念多くの製造業がアジア製部材や設備に依存しており、最大50%の関税は製造原価を直撃します。これが最終製品価格に転嫁されれば、インフレを加速させ、消費者の実質所得を圧迫します。
  2. 輸出競争力の低下(ニアショアリングへの逆風)コスト増は対米輸出の価格競争力を削ぎます。自動車業界などでは「採算悪化による雇用喪失」への懸念も示されています。
  3. サプライチェーンの断絶リスク金型や特定電子部品など、北米内で代替調達が困難な品目も多く、「代替先がないのに関税だけ上がれば操業停止を招く」との悲鳴が上がっています。
  4. 中国との関係悪化中国はメキシコにとって第2の貿易相手国です。中国側は既に対抗措置を示唆しており、EV投資や部材供給における地政学リスクが高まっています。

【財界の要求】

「2026年の一括実施ではなく、2027年までの段階的導入とし、品目ごとに国内供給能力を見極めた調整を行ってほしい」とロビー活動を展開しました。

また、与党モレナ(MORENA)所属のポレンスキー下院議員(元党首)も「中国からの投資誘致と雇用創出を優先すべき」と述べ、拙速な関税引き上げが招くインフレや企業倒産のリスクに警鐘を鳴らしています。

4. 政府・議会の対応:事実上の「棚上げ」へ

  • 行政府(大統領府):シェインバウム大統領は、関係国との協議や案の修正を検討するため、議会での即時承認を急がない姿勢を示唆しました。
  • 議会(下院経済委員会):10月末、下院の経済通商競争委員会は、LIGIE改正案の審査期限を**「2027年8月末まで」延長**することを決定しました。

これにより、「議会を通じた法改正による大幅な関税引き上げ」は、当面の間(2027年まで)凍結される公算が高まりました。

⚠️ 注意点:リスクは消えていない

議会審議は延期されましたが、メキシコでは大統領令(政令)によって関税率を変更することが可能です。法改正が停滞しても、行政判断で突発的に関税が引き上げられるリスクは依然として残っています。

5. 日本企業へのビジネスインパクトと対策

5-1. 影響を受けやすい企業
  • アジア部材依存型: メキシコ工場で中国・韓国・インド等の部材を多用している(自動車部品、電子機器、機械など)。
  • 迂回輸出型: 日本から中国・アジアを経由してメキシコへ供給している商流。
  • IMMEX活用企業: 一部品目がIMMEXの恩恵を受けられなくなっており、「免税のつもりがあとで課税される」リスクがあります。
5-2. 日本企業の優位性

日墨EPA(経済連携協定)があるため、「日本原産品」はMFN関税引き上げの影響を直接受けません。

中国製品のコスト増により、メキシコ市場において日本製品(または日本企業の北米生産品)への切り替え需要が発生するチャンスでもあります。

5-3. 推奨されるアクション

この「猶予期間(〜2027年)」をどう使うかが鍵となります。

  1. 「関税影響マップ」の作成主要部材について「HSコード(2022年版)×原産国」を洗い出し、MFN税率引き上げ時のインパクトを可視化する。
  2. 調達先の見直し(脱・非FTA国)日墨EPA、CPTPP、USMCAをフル活用し、原産地をアジアから「日本・北米・ベトナム(CPTPP)」などへシフトするコストシミュレーションを行う。
  3. PROSEC / Regla Octava の活用産業分野別生産促進プログラム(PROSEC)への登録や、特別無税輸入許可(Regla 8ª)の活用準備を進め、関税引き上げ時の「防波堤」を作っておく。
  4. 契約条件の再交渉関税コストの負担区分について、顧客やサプライヤーと条項を見直しておく。

まとめ:ビジネスマンが押さえるべき3点

  1. 50%関税案は「消滅」ではなく「延期」:議会ルートは2027年まで棚上げだが、大統領令による奇襲的な引き上げ余地は残っている。
  2. ターゲットは「非FTA原産 × 戦略物資」:日本企業のメキシコ拠点が得意とする自動車・電機・機械分野が狙い撃ちされている。
  3. 2027年までが「構造改革」のタイムリミット:2026年のUSMCA再交渉とセットで、北米の通商ルールは激変する。今のうちにサプライチェーンを「関税耐性」のある形へ組み替える必要がある。

英GCC FTA:交渉妥結目前の「実質負担と機会」


【2025年版】英GCC FTA:交渉妥結目前の「実質負担と機会」分析

英国とGCC(湾岸協力会議)のFTA交渉は、2022年の開始から3年を経て、いよいよ「政治決断待ち」の最終段階に入りました。

本協定は、世界を一変させる巨大協定ではないものの、**「じわっと効く中規模の実利型FTA」**として、日本企業の欧州・中東戦略にも無視できない影響を与えます。

現状のステータスと、日本企業が備えるべきポイントを整理します。

0. エグゼクティブ・サマリー

  • 現状: 2025年秋時点で「残る論点は少数」。英財務相らが「Very soon(間もなく)」と発言しており、年内〜年度内の妥結が視野に入っています。
  • 経済効果: 英国側試算で貿易量は約16%増。GDP押し上げ効果は年16億ポンド(約0.1%)程度ですが、特定の産業(自動車、食品、金融、再エネ)には大きな恩恵があります。
  • 本質:
    • 英国: 湾岸市場への関税・非関税障壁を一括低減する「輸出・サービス振興策」。
    • GCC: 脱石油・産業多角化のために、英国を「技術・金融パートナー兼投資先」として固定化する枠組み。
    • 日本企業: 英国拠点の活用価値(対GCC輸出ハブ)が上がる一方、GCC市場における英系競合(特にサービス・インフラ分野)の競争力が増す「二面性」への対応が必要。

1. 交渉の現在地:2025年秋の「決定的一歩」

2022年の交渉開始以来、多くのラウンドを重ねてきましたが、ここに来て急速に機運が高まっています。

1-1. 双方が認める「最終段階」

2025年9月〜10月にかけて、交渉妥結に向けたハイレベルの政治的動きが活発化しています。

  • GCC側: 「未解決の論点はごくわずかであり、経済関係を新次元に引き上げる好機」と明言(2025年10月 事務局長発言)。
  • 英国側: リーブス財務相が「交渉は高度な段階(Advanced stage)にあり、合意は極めて近い(Very soon)」と発言。財務省も改めて年16億ポンドの経済効果を強調しています。
  • 共同声明: 9月の外相会合にて「商業的に意味のあるFTAを優先的に締結する」との文書を発表し、政治的意思を確認済みです。

1-2. なぜ今まで時間がかかったのか

  • 英国内政の変動: 政権交代や通商戦略の再定義による優先順位の揺れ。
  • 政治的センシティビティ: 英国内のNGO・労組等から、GCCの人権・労働問題(カファラ制度等)や気候変動対策への懸念が強く、これらを協定文にどう落とし込むかの調整に難航しました。

2. 協定の全体像:何がどう変わるのか

英政府の方針や専門機関の分析に基づくと、合意内容は以下の「物品・サービス・投資」の3本柱となる見込みです。

2-1. 物品貿易(関税削減)

  • 英国からの輸出:
    • 自動車・機械: 現在の関税(5%等)の撤廃。
    • 食品・飲料: チョコレートや加工食品にかかる5〜25%の高関税の削減・撤廃。英国産品の価格競争力が向上します。
    • 再エネ部材: 風力発電部品などの関税削減。
  • GCCからの輸出:
    • 石油化学製品、アルミなどの対英関税削減により、英国市場でのシェア拡大を狙います。

2-2. サービス・デジタル貿易(英国の主戦場)

英国経済の強みであるサービス分野の開放が重要論点です。

  • 金融・プロフェッショナル: 弁護士、会計士などの資格相互承認や、金融サービスのライセンス取得プロセスの透明化。
  • デジタル: データローカライゼーション(サーバー現地化要求)の禁止や、ソースコード開示要求の禁止など、現代的なデジタル貿易ルールの策定。

2-3. 投資・エネルギー(GCCの主戦場)

  • 投資: GCCのソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)による英国インフラ・テック投資を円滑にする法的保護と予見可能性の向上。
  • グリーン転換: 水素、CCUS(二酸化炭素回収・貯留)などの分野での技術協力と投資促進。

3. 日本企業へのインプリケーション

このFTAは「対岸の火事」ではありません。日本企業のビジネスモデルに対し、以下の3つの側面で影響を与えます。

① 英国拠点を持つ企業(製造・商社)

「英国=対GCC輸出ハブ」としての価値向上

  • 英国で製造した製品(自動車、機械、加工食品等)をGCCへ輸出する場合、FTA税率(0%等)を活用できる可能性があります。
  • 課題: 「原産地規則」のクリアが必要です。日英CEPAや英EU TCA(対EU協定)とは別の基準になる可能性があるため、サプライチェーンが英GCC FTAの原産地要件を満たせるか(十分な付加価値が英国内で付いているか)の再検証が必要です。

② GCC拠点を持つ企業(インフラ・サービス)

英系競合との競争激化

  • プロジェクト受注: プラント建設や再エネ案件で、英系企業がFTAの投資章や政府調達規定をテコに、有利な条件で参入してくる可能性があります。
  • サービス分野: 金融、法務、コンサルティング領域で、英系ファームがGCC市場でのプレゼンスをさらに強めるでしょう。

③ 日GCC EPAとの「タイムラグ」問題

  • 日本とGCCもEPA交渉を再開していますが、妥結までは時間を要します。
  • 日GCC協定が結ばれるまでの間(数年単位の可能性)、**「英国企業は関税ゼロ、日本企業は関税5%」**という劣後状態が発生するリスクがあります。

4. 実務担当者が今チェックすべきアクション

「合意間近」の今、ビジネスパーソンが準備すべきは以下の4点です。

  1. 関税インパクトの試算 (HSコード別)
    • 現在、英国からGCCへ輸出している製品の関税率(通常5%〜25%)を確認し、これが撤廃された場合のコストメリットを試算する。
  2. 原産地規則(RoO)のシミュレーション
    • 英国拠点の製品が「英国原産」と認められるための付加価値基準(RVC)や関税分類変更基準(CTC)を想定し、現在の調達構造でクリアできるか確認する。
  3. サービス・投資規制の緩和チェック
    • 金融、教育、ヘルスケア分野などで、GCC側の外資規制(出資比率上限など)が英国企業向けに優先的に緩和される可能性を注視する。
  4. 「三角貿易」の設計
    • 将来的には「日英」「日GCC」「英GCC」の3つの協定が並立します。どこで付加価値を付け、どのルートで流すのが最適か、物流ロジスティクスを含めた長期戦略を検討する。

5. まとめ

英GCC FTAは、派手さはなくとも、「英国という技術・金融ハブ」と「GCCという資本・エネルギーハブ」の結びつきを制度化する重要なパイプです。

日本企業としては、単にニュースとして受け流すのではなく、「自社の英国拠点がGCC向けビジネスの武器になり得るか」、あるいは**「GCC市場で英国ライバルにどう対抗するか」**という視点で、具体的な戦略の見直しに着手すべきタイミングです。


「二重HSコード時代」の管理戦略:1製品=1コードの常識を捨てる時


はじめに:なぜ今「二重HSコード時代」なのか

かつて多くの企業は、「1つの商品には1つのHSコード」という前提で実務を組み立ててきました。しかし現在、その前提は崩れつつあります。

  • 日本の輸出用コードと、相手国の輸入用コードが違う
  • 関税率は最新の「HS2022」ベースだが、EPA(経済連携協定)の原産地規則は古い「HS2012」や「HS2017」ベースである
  • 同じ製品なのに、販売会社Aと工場Bで管理しているHSコードがズレている

このように、「二重どころか多重のHSコード」を管理することが日常になりつつあります。

HSコードは上6桁までは世界共通ですが、7桁以降は各国が国内制度に合わせて独自に細分化しています(例:EUのCN/TARIC、日本の統計品目番号やNACCSコードなど)。(出典:DHL)

さらに、共通であるはずの「最初の6桁」についても、各国税関が独自に分類判断を行うため、同じ品目でも国ごとに異なるHSコードになる可能性があることが公的機関からも明示されています。(出典:ジェトロ)

そこに、HS2017→2022→2028という版改正と、EPA/FTAごとの「HS版のズレ」が重なり、「二重HSコード時代」が本格化しているのが現状です。(出典:世界税関機関)

本稿では、経営・実務の両面から、この複雑な状況を前提とした管理戦略を解説します。


1. 「二重HSコード」の正体:どこが「二つ」なのか

1-1. 輸出国コード vs 輸入国コード

貿易には必ず「輸出」と「輸入」の2つの側面があり、それぞれ参照するコード体系が異なります。

  • 輸出時: 輸出国の関税・統計体系に基づくコード(例:日本の輸出統計品目番号 9桁)
  • 輸入時: 輸入国の関税率表・システムに基づくコード(例:米国HTS、EU CN/TARIC 等)

輸出時に使用したHSコードが、そのまま輸入国でも通用するとは限りません。「輸出国と輸入国でHSコードが異なるのは、むしろ普通である」という認識を持つ必要があります。(出典:eusmecentre.org.cn)

1-2. HSバージョン(2012/2017/2022/2028)とEPA原産地用コード

HSコードは技術進歩や貿易構造の変化に対応するため定期的に改正されます。最新版は2022年版ですが、次期改正となる**「HS2028」**に向けた準備もすでに進んでいます。(出典:ジェトロ)

  • HS2028(次期改正): 今回は例外的な6年サイクルとなり、2028年1月1日に世界一斉発効する予定です。299セットの改正を含み、2025年3月のHS委員会で改正勧告が暫定採択され、2025年末に正式採択、2026年に条文公表というスケジュールが示されています。(出典:世界税関機関)

一方、EPA/FTAの原産地規則は「協定締結時のHS版」で固定されることが多いため、以下のようなねじれが生じます。

  • 日本のEPA: HS2002、2007、2012、2017など、協定ごとに参照する版がバラバラ。
  • RCEP: 当初はHS2012ベースでしたが、2023年に品目別原産地規則がHS2022へ移行。

結果として、1つの製品について以下の「版の異なるコード」を同時に扱う必要があります。

  1. 関税計算・通関用: HS2022(または将来のHS2028)の輸入国コード
  2. FTA原産地判定用: HS2017等の6桁(協定で定められた版)

1-3. 6桁共通+各国細分+システムコードの多層構造

HSコードは「6桁まで共通」ですが、その後ろには各国の独自ルールが存在します。

日本では7〜9桁が統計細分、10桁目はNACCS用コードという構造です。(出典:ジェトロ)

さらに米国では、輸出用のSchedule B、輸入用のHTSといった「目的に応じたコード体系」が併存しています。(出典:ctp-inc.com)

ビジネスの現場視点で見れば、1つの品目に対して以下のコードを併走させるのが現実解となります。

  • 日本輸出用コード
  • 輸入相手国ごとのインポートコード
  • FTA原産地証明書用の6桁コード(輸入国・協定ベース)(出典:日本商工会議所)
  • 社内統計・価格管理用の品番紐づけコード

2. 二重HSコードがもたらす3つのビジネスリスク

(1) 関税コスト・追徴・遅延リスク

輸出側と輸入側で分類認識が食い違うと、輸入地での税関事後調査で更正・追徴課税が発生する恐れがあります。

特に高関税品目やセーフガード対象品では、分類次第で関税率が数十%変わることもあります。また、通関トラブルによる納期遅延は、顧客クレームや在庫増などサプライチェーン全体に悪影響を及ぼします。

公的なQ&Aでも「輸出者が通知してきたコードを安易に用いると更正リスクがある」と警告されており、輸入国側での「事前教示」制度の活用が推奨されています。(出典:ジェトロ)

(2) FTA/EPA原産地の誤判定リスク

FTAの原産地規則はHSコードに基づいてルールが定められています。そのため、参照する「HSの版(年次)」を取り違えると、原産資格の判定そのものを誤る可能性があります。

実務上は、「HS2022ではこの番号だが、協定はHS2012ベースなので別の番号に読み替えて判定する」といった作業が必須です。これを怠ると、適用できるはずの特恵関税を見逃したり、逆に不適切に適用して検認で否認されるリスクが高まります。(出典:ジェトロ)

(3) 内部統制・ITコストの増大

国別・版別のコードがバラバラに管理されていると、品目マスタが破綻し、海外拠点ごとに「独自のHS管理表」が乱立しがちです。

ERP、GTM(貿易管理システム)、原産地管理システムなどの複数システム間でHSコードが二重・三重に登録され、その整合性維持に膨大な工数が発生します。

次期「HS2028」対応では、HS2022との相関表に基づいた一斉更新が必要となるため、マスタ管理が甘い企業ほど対応コストが跳ね上がると指摘されています。(出典:ロジスティック専門家)


3. 経営として押さえるべき3つの管理原則

原則1:前提を変える ― 「1製品=複数HSコード」が正常

「どの国でもこの1コードで通るはず」という発想は、もはやリスクでしかありません。公的情報でも、国による分類差異はあり得ると明言されています。(出典:ジェトロ)

経営としては、以下の前提に切り替えることが出発点です。

「1製品には、国別・版別・用途別の『複数のHSコード』が存在する。重要なのは、何をどの目的で使うかを明確に区別して管理することである」

原則2:HSコードは「属性情報」として管理する

品目コードそのものではなく、品目に紐づく「属性情報」としてHSを管理するイメージが重要です。

  • グローバル共通品番: P12345
  • 属性としてのHS情報:
    • Global HS6(現行版):xxxx.xx(HS2022)
    • 日本輸入コード:xxxx.xx-xxx-x
    • 米国HTS:xxxx.xx.xxxx
    • EU CN/TARIC:xxxx xxxx xx
    • FTA A協定用HS6(HS2012)、FTA B協定用HS6(HS2017)… など

このような「マスタデータとしての構造化」は、サプライチェーン全体の基礎情報を定義するMDM(Master Data Management)と同じ発想で取り組むべき課題です。(出典:3rdwave.co)

原則3:法令根拠・判断プロセスを残す(説明責任の確保)

HSコードは数字だけ管理しても意味がありません。後から「なぜその番号にしたのか」を説明できるように、以下の情報をセットでマスタ登録しておくことが推奨されます。

  • 参照した品目表の条文、部注・類注
  • 関税率表解説、分類事例、公的事前教示の回答書
  • 過去の申告実績

実際に最新のHS管理ツールでは、「HSコードと法令根拠をセットで登録する」機能が標準化しています。(出典:guidance.jaftas.jp)

説明責任(アカウンタビリティ)の確保は、税関対応だけでなく、内部監査やグローバル本社への報告においても不可欠です。


4. 実務設計:マスタ・システム・組織の三位一体

4-1. 品目マスタの「多重HS」設計

ビジネス視点で整理すると、1品目に対して以下のような「HSスロット」を用意する設計が有効です。

スロット種別典型的な中身主な用途
Global HS6 (現行版)HS2022の6桁グローバル共通言語、基本統計、全体管理
国別輸入コード日本(9-10桁)、EU CN、米国HTS等関税計算、輸入申告、国内規制判定
国別輸出コード日本輸出統計品目番号、他国輸出コード輸出申告、貿易統計
協定別HS6日EU(HS2017)、RCEP(HS2022)等原産地規則判定、特恵税率適用
コントロール用DUIコード、該非判定用安全保障輸出管理 等

【実装のポイント】

  • キーは「品番(グローバルID)」とし、HSは属性テーブルとして保持する。
  • 各スロットに「有効期間」「HS版」「根拠(メモ・事前教示番号)」を持たせる。
  • これにより、「マスタ上は複数HSだが、申告時には適切な1つだけをシステムが自動選択する」設計が可能になります。

4-2. HS2028移行を見据えた版管理

次期HS2028では、エレクトロニクス・医薬品・グリーンテック・デュアルユース製品などで大きな改正が予定されています。(出典:ロジスティック専門家)

WCOはHS2022とHS2028の相関表(コンコーダンス)作成に着手しており、これが企業側の移行作業におけるメインツールとなります。(出典:世界税関機関)

企業が取るべき基本戦略は以下の通りです。

  1. 現行マスタの整備(2025〜2026年):同じ製品で拠点ごとにHSが異なっていないか棚卸しし、「現行版(HS2022)」での姿を整える。
  2. 相関表を使った影響分析(2026〜2027年):WCOや各国税関が公表する相関表を取り込み、どの品目がどこに移るかをマッピングし、関税率や原産地ルールへの影響を試算する。(出典:ロジスティック専門家)
  3. 「切り替え」ではなく「並行管理」:バージョンを単純に上書き更新するのではなく、一定期間はHS2022とHS2028の両方をマスタ内に持ち、移行前後の対応関係を保持する。

4-3. 分類ガバナンスとエビデンス管理

組織面では、以下のような役割分担(RACI)とナレッジ管理がカギとなります。

  • 役割分担:
    • グローバル/地域本社:分類ポリシーの策定、最終判断、監査。
    • 各国拠点:ローカル税関との調整、事前教示の取得。
  • エビデンスの一元管理:品目マスタ上で、HSコードに「根拠情報(条文、分類意見、事前教示番号など)」を紐づける。(出典:guidance.jaftas.jp)属人的なメモではなく、組織の資産としてナレッジ化することが、生産性を大きく左右します。

5. 90日アクションプラン(経営報告用)

3か月で体制を整えるためのイメージプランです。

  • 第1フェーズ(0〜30日):現状可視化
    • 主要カテゴリ(売上上位・利益貢献大)の製品について、国別輸出入コード、利用中のEPA、HS版(2012/2017/2022)を棚卸しする。
    • 「同一製品なのにHSコードが不整合」なケースを洗い出す。
    • HS2028で影響を受けそうな事業領域(エレクトロニクス、医薬、EV関連など)のあたりをつける。
  • 第2フェーズ(31〜60日):基本方針と設計
    • 経営層と「1製品=複数HSコード前提」の方針を合意する。
    • 品目マスタ上のHSスロット構造(国別・協定別・版別)の設計案を作成する。
    • HS2028対応を単発プロジェクトではなく「継続的マネジメント」として位置づける。
  • 第3フェーズ(61〜90日):パイロット運用
    • 代表的な数十品目を選び、実際に「多重HSマスタ」を構築して運用テストを行う(見積〜通関〜原産地証明)。
    • 問題点を洗い出し、全社展開ロードマップとHS2028対応タイムラインを策定し、経営会議へ報告する。

6. まとめ:HSコードを「経営数字」として扱う

「二重HSコード時代」への対応は、単なる事務処理の話ではありません。

  • 国別・版別でコードが分かれることによる管理コスト
  • HS版の違いによるFTA活用の有利・不利
  • HS改正(HS2028)への対応スピードが左右するサプライチェーン競争力

これらは、ビジネスモデルや収益構造に直結するテーマです。

「1製品=1HSコード」という古い前提を捨て、多重HSを構造的に管理し、継続的なHS改正を経営課題として扱うこと。

これこそが、グローバルビジネスにおける守りと攻めの要となります。

メキシコ通関リスク:MFN関税引き上げと「推定価格制度」の複合インパクト


エグゼクティブ・サマリー

「名目関税率だけを見ていると、キャッシュフローとコンプライアンスの“落とし穴”にはまる」

現在、メキシコでは非FTA諸国(中国など)からの輸入に対する規制強化が進行しています。特に注意すべきは、**「MFN(一般関税率)の大幅引き上げ」「推定価格制度(保証金制度)の対象拡大」**が同時に発生している点です。

この2つが組み合わさることで、単に関税コストが増えるだけでなく、輸入時に**巨額の保証金(デポジット)**を長期間預託せざるを得なくなり、企業のキャッシュフローを劇的に悪化させるリスクがあります。


1. 現状の核心:二つの規制強化

(1) MFN(一般関税率)の大幅引き上げ

メキシコ政府は国内産業保護を目的として、関税率の引き上げを断続的に実施しています。

  • 2024年4月 大統領令(現行の主力規制):鉄鋼、アルミ、繊維、電機、家具など544品目に対し、5%〜50%の臨時関税(MFN)を導入。有効期限は2026年4月までとされています。
  • 2026年に向けた法改正案:さらなる引き上げとして、自動車・同部品を含む約1,463品目を対象に、最大50%までの恒久的な引き上げや品目拡大が議論されています(2025年提出法案等)。

(2) 「推定価格制度(Precios Estimados)」の拡大

財務省(SHCP)が定める「推定価格(参照価格)」を下回る単価で輸入する場合、差額分の税相当額を保証金として預け入れる制度です。

  • 従来の対象: 中古車、繊維、履物など。
  • 近年の拡大(2025年〜): 家具、玩具、スポーツ・レジャー用品、紙製品など、一般消費財へ対象が広がりつつあります。

2. なぜ「MFN引き上げ」でリスクが倍増するのか?

推定価格制度の保証金計算には、MFN税率が使用されます。そのため、MFN税率が引き上げられると、納めるべき保証金の額も相乗的に膨れ上がります。

リスクのメカニズム

保証金は、以下の計算式で算出されます。

保証金額 = (推定価格ベースの税額総額) − (実際の申告価格ベースの税額総額)

※税額総額 = 関税 + DTA(税関手数料) + VAT(16%)

関税率はVATの計算基礎(課税標準)にも含まれるため、関税率の上昇は「関税額」と「VAT額」の両方を押し上げ、結果として保証金(差額)を激増させます。

【シミュレーション】家具の輸入事例(イメージ)

  • 推定価格: $10,000
  • 実勢価格(申告価格): $7,000
  • 条件: 関税率が20%から50%へ引き上げられた場合
項目ケースA:関税率 20%ケースB:関税率 50%
推定価格ベース税額
(関税+VAT等)
関税 $2,000 + VAT等
→ 合計 約 $3,920
関税 $5,000 + VAT等
→ 合計 約 $7,400
申告価格ベース税額
(関税+VAT等)
関税 $1,400 + VAT等
→ 合計 約 $2,744
関税 $3,500 + VAT等
→ 合計 約 $5,180
預託すべき保証金約 $1,176約 $2,220

結論: MFN税率が上がると、同じ「安値調達」であっても、資金拘束される保証金額は約2倍に跳ね上がります。これが毎回の輸入ごとに発生し、約6カ月間(通関後)キャッシュがロックされます。


3. ビジネスへの影響と対象となる商流

FTA(日墨EPAやCPTPP)やIMMEX(一時輸入)を適切に活用できている場合は影響を回避できますが、以下のケースでは「直撃」を受けます。

  1. 非FTA諸国(中国・韓国・インド等)からの輸入
    • これらの国を原産地とする部材や完成品を輸入し、メキシコ国内で販売する場合。
  2. FTA適用ミス(コンプライアンス不備)
    • 本来は日墨EPAで0%のはずが、原産地証明書の不備やHSコードの誤りでFTA否認となった場合、**「高率MFN + 推定価格保証金」**が遡及して適用されるリスクがあります。
  3. IMMEX企業の国内販売(Change of Regime)
    • 輸入時は一時輸入で無税でも、後にメキシコ国内市場へ転用(確定輸入への変更)する際、その時点での高関税と推定価格規制が適用されます。

4. コンプライアンス上の注意点:二重のハードル

推定価格対象品目の輸入は、単にお金を払えば良いだけではありません。実務手続きも複雑化します。

  1. 識別コードの入力義務
    • 推定価格以上の場合: 保証金は不要ですが、ペディメント(輸入申告書)に「推定価格以上である」ことを示す識別コード(例:EX+補完コード33)の入力が必須です。これを忘れると通関が止まります。
    • 推定価格以下の場合: 保証金の納付に加え、別のコード(例:EX+補完コード30)が必要です。
  2. 輸入自動許可(Permiso Automático)との連動
    • 繊維・履物などの特定品目では、推定価格を下回る価格で輸入する場合、経済省への事前申請(輸入自動許可)が義務付けられています。これがないと輸入自体ができません。

5. 日本企業が今すぐ実施すべきアクション

「関税が上がった」というニュースだけで終わらせず、実務への落とし込みが必要です。

① 品目マッピングの再点検(HSコード × MFN税率 × 推定価格)

  • 自社の取扱品目(特に家具・玩具・繊維・鉄鋼関連)について、現在のMFN税率と、推定価格対象品目リスト(Anexo 2, 3, 4等)への該当有無を照合する。
  • JETROや現地通関士からの最新情報(官報)を常に確認する体制を作る。

② 商流と原産地の可視化

  • 「中国・ASEAN製」の部材が混入していないか、サプライチェーンを再確認する。
  • FTA(日墨EPA・CPTPP)を利用している場合、原産地証明書の根拠資料(原産地規則の適合性)を再監査し、否認リスク(=高関税リスク)を極小化する。

③ 価格戦略とキャッシュフローの見直し

  • 安価なFOB価格での輸入が、結果として「高額な保証金」を招き、トータルコストやキャッシュフローを悪化させていないか試算する。
  • 場合によっては、仕入価格(申告価格)の見直しや、FCA/DDPなどインコタームズの調整を含めた「着地コスト最適化」を検討する。

④ 通関士(Agente Aduanal)との連携強化

  • 推定価格対象品目については、ペディメントへの識別コード入力漏れが命取りになります。現地の通関士に対し、対象品目のリストを共有し、オペレーション手順を明確に指示してください。

まとめ

メキシコ政府は、安価な輸入品に対する監視を、**「関税率(コスト)」「推定価格(手続き・キャッシュ)」**の両面から強化しています。

日本企業としては、単に「MFN税率」だけを見るのではなく、**「MFN引き上げ × 推定価格制度」**という複合的なリスクシナリオを前提に、調達・販売戦略を再構築する必要があります。


メキシコ「最大50%関税案」とIMMEXの行方:実質負担への影響と対策


メキシコ「最大50%関税案」とIMMEXの行方:実質負担への影響と対策

メキシコの関税政策は、「非FTA諸国(特に中国)からの輸入阻止」と「国内製造業の保護」へ向けて大きく舵を切っています。

重要なのは、ニュースで報じられる「名目関税率」だけを見るのではなく、**「IMMEX(輸出製造業優遇)という『盾』がどこまで機能するか」**を見極めることです。

本レポートでは、以下の4ステップで実質的なビジネス影響と対策を整理します。

  1. 関税政策の現状: 何が変わろうとしているのか
  2. IMMEXの基本機能: なぜこれまで関税がかからなかったのか
  3. 実質負担の構造: 「関税×IMMEX」の組み合わせでコストはどう決まるか
  4. 日本企業の対策: 今すぐ確認すべき5つのチェックポイント

1. メキシコ関税案:何が変わろうとしているのか

メキシコ政府は「関税の引き上げ」と「優遇の縮小」をセットで進めています。

1-1. 2024年の既定路線:544品目への一時関税(継続中)

2024年4月、メキシコ政府は鉄鋼、アルミ、繊維、電機、家具など544品目に対し、5〜50%の一時輸入関税を導入しました(2026年4月まで有効)。

  • 対象: 中国・韓国・インドなどのFTA非締約国原産品。
  • 狙い: アジア製品の流入抑制と、MFN(最恵国待遇)税率の底上げ。

1-2. 繊維・アパレルの「優遇封じ」(2024年末〜)

2024年12月の政令により、繊維・アパレル分野でより踏み込んだ措置が取られています。

  • 高関税化: 糸・生地15%、衣類35%(非FTA原産)。
  • IMMEX制限: 多くの品目が「一時輸入禁止リスト(Annex I)」に追加。
    • 意味合い: 「IMMEXを使えば無税」という逃げ道を塞ぎ、強制的に関税を払わせる構造への転換です。

1-3. 2025年の新提案:最大50%関税案(シェインバウム政権)

2025年9月提出の2026年経済パッケージには、さらなる関税強化案が含まれています。

  • 対象拡大: 自動車、同部品、電機、プラスチックなど約1,400〜1,500品目。
  • 税率: 中国製自動車などの関税を、WTO協定上限(バウンドレート)に近い**最大50%**まで引き上げる構想。
  • 現状: 議会で審議・修正協議中ですが、「対アジア輸入抑制」という政策の方向性は不可逆的です。

2. IMMEXとは何か:基本メカニズムの確認

IMMEXは、**「輸出することを条件に、輸入時の税金を免除・繰り延べる制度」**です。

  • 関税(IGI): 原則0%(一時輸入扱いのため)。
  • 付加価値税(VAT 16%): 「VAT認証」を取得していれば、支払いは発生せずキャッシュアウトなし(即時税額控除)。

つまり、これまでは「中国から部品を入れても、IMMEXで加工して米国へ輸出するなら、メキシコでの関税コストはゼロ」というのが基本ルールでした。今回の関税案は、この前提を揺るがすものです。


3. 「関税案 × IMMEX」で決まる実質負担構造

「関税が50%になる」といっても、全ての企業が即座に50%支払うわけではありません。

「IMMEXという『盾』が使えるか」、そして**「製品がどこへ向かうか」**で負担は4つのパターンに分かれます。

パターン別・実質負担マトリクス

ケース状況関税(IGI)負担VAT(16%)実質影響
A. 一般輸入IMMEXなしで輸入し、メキシコ国内販売5〜50% (激増)支払い【直撃】 仕入コストが即座に跳ね上がる。価格転嫁できなければ赤字転落のリスク。
B. IMMEX
(100%輸出)
部品を輸入・加工し、全量を米国へ輸出原則 0%免除【軽微】 制度上は影響なし。ただし在庫管理・原産地証明などのコンプライアンスコストは増大。
C. IMMEX
(一部国内販売)
輸入・加工後、一部をメキシコ国内市場へ国内販売分に
5〜50%適用
支払い【要注意】 国内販売に転用(Change of Regime)する時点で、引き上げ後の高関税を支払う必要あり。国内比率が高いほど痛手。
D. IMMEX禁止品
(繊維等)
繊維・アパレルなど「Annex I」指定品目35%等 (支払い)支払い【構造崩壊】 IMMEX利用不可=一時輸入不可。輸出目的であっても輸入時に関税発生。「往復無税」モデルの終焉。

【重要ポイント】

最大の懸念は、繊維業界で起きた「IMMEX利用禁止(Annex Iへの追加)」や「Rule 8(優遇関税枠)の厳格化」が、将来的に鉄鋼、自動車部品、電機など他業界へ波及するかどうかです。


4. 日本企業の実務インプリケーションと打ち手

「うちはIMMEXだから関係ない」という油断は禁物です。以下の5つの視点で、サプライチェーンの再点検を行ってください。

① HSコードと「禁止リスト」の照合

  • 自社の取り扱い品目のHSコードが、2024年の544品目、および最新の関税引き上げ案に含まれているか。
  • さらに重要な点として、「IMMEX禁止リスト(Annex I)」や「センシティブ品目(Annex II)」に含まれていないかを確認してください。ここに入ると、IMMEXのメリットが剥奪されます。

② 「国内販売比率」のコスト試算

  • IMMEX工場であっても、メキシコ国内の自動車メーカーや小売店に納入(みなし輸出ではなく、国内転用)している場合、その分については**「引き上げ後の新関税率」**でコスト計算をし直す必要があります。

③ サプライチェーンの「非FTA依存度」の可視化

  • 中国、韓国、インド、ASEAN(CPTPP非加盟国)からの調達部材を洗い出してください。
  • これらをメキシコ現地、米国、または日本・ベトナムなどFTA締約国からの調達に切り替えるコストと、高関税を甘受するコストを天秤にかける必要があります。

④ USMCA原産地規則との整合性(対米輸出の場合)

  • メキシコ側で関税を回避できても、最終製品がUSMCAの原産地規則(RVC/CTC)を満たせなければ、**米国輸入時にMFN関税(対中制裁関税含む)**が課されます。
  • 「メキシコでの関税回避」と「米国での関税回避」をセットで設計する必要があります。

⑤ コンプライアンス体制の強化

  • IMMEXやVAT認証の維持条件が厳格化されています。在庫差異や輸出期限の徒過は、即座に認証取り消し(=関税・VATの即時課税)につながるリスクがあります。在庫管理システムの精度向上が急務です。

まとめ:メキシコは「関税高止まり+制度厳格化」フェーズへ

メキシコ政府のメッセージは明確です。

「輸出のための加工なら優遇する(IMMEX)。だが、単なる輸入販売や、優遇制度の抜け穴利用は徹底的に封じる」

日本企業としては、関税率の数字そのものに一喜一憂するのではなく、**「自社の商流がIMMEXという防波堤の内側にあるか、外側にあるか」**を冷静に見極め、調達ルートの再設計を行う段階に来ています。

※本回答は2025年11月23日時点の情報を基に構成しています。具体的な税率や適用開始日については、必ずメキシコ連邦官報(DOF)および現地の通関・税務専門家にご確認ください。

メキシコ「非FTA自動車関税 最大50%」の衝撃と対策


メキシコ「非FTA自動車関税 最大50%」の衝撃と対策

メキシコにおける「非FTA諸国製自動車に対する最大50%関税案」は、単なる“案”の段階を超え、2026年に向けた具体的な制度として始動しています。日本企業にとっては、**「中国・韓国など非FTA諸国を経由するサプライチェーンをどう見直すか」**が喫緊の課題となります。

1.概要:何が決まったのか(2025年11月時点)

メキシコ政府は、FTA(自由貿易協定)を締結していない国からの自動車・同部品などに対し、最大50%の輸入関税を課す方針を決定し、これを「2026年経済パッケージ(Paquete Económico 2026)」に組み込みました。

  • 対象範囲: 約1,463の関税品目(HSコード)。これは全輸入の約8.6%、輸入額にして約520億ドル相当に上り、自動車関連に加え、鉄鋼、繊維、家電、家具など19分野に及びます。
  • 法的根拠: 2025年11月10日付で、一般輸出入税法(LIGIE)の関税率表を改正する大統領令が連邦官報(DOF)に掲載されました。
  • スケジュール: 官報掲載の30日後(12月上旬)に発効し、2026年12月31日までの時限措置として運用される見込みです。

自動車関連の変更点

  • 乗用車: 従来15〜20%だった税率を、WTO協定等の許容範囲を最大限活用し、最大50%まで引き上げ(エブラルド経済相 言明)。
  • 自動車部品: 従来0〜35%だった品目を、10〜50%の範囲へ引き上げ。
  • 標的となる国: メキシコとFTAを持たない全行が対象ですが、実質的なターゲットは中国、韓国、インド、インドネシア、タイ、ロシア、トルコなどです。

一方で、日本、EU、米国・カナダ(USMCA)などFTAパートナーからの輸入は、今回の措置の対象外です。これら諸国からの輸入車は、各協定に基づき引き続き無税または低率関税が適用されます。


2.新関税の設計:対象・税率・期間

2-1 税率レンジと対象セクター

新関税は「10%・20%・30%・35%・50%」の5段階で設計されています。主な対象は以下の通りです。

税率主な対象品目
最大 50%乗用車(軽自動車を含む autos ligeros)
主要自動車部品
鉄鋼、繊維・衣料
紙・板紙、ガラス、石けん・化粧品 など
最大 35%プラスチック製品、家電、玩具、家具
革製品・かばん類、モーターサイクル
アルミ製品、トレーラー など

※すべて「非FTA原産」が条件であり、FTA相手国からの輸入は対象外です。

2-2 期間と発効スケジュール

  • 発効: 2025年12月上旬(官報掲載の30日後)
  • 有効期限: 2026年12月31日まで
    • ※シェインバウム政権下で、状況に応じ変更・延長が可能な仕組みとなっています。

3.背景:なぜ今「最大50%」なのか

3-1 中国製EV・低価格車の急増とダンピング懸念

中国ブランド(BYD、Chirey、Changan等)や中国生産の欧米ブランド車の流入が急増し、2024年にはメキシコ新車販売の2割超、EV・PHEV市場では3〜4割を中国製が占めるに至りました。

エブラルド経済相は、これらが**「参照価格(Reference Price)を下回る水準」**で流入しており、個別のアンチダンピング調査では対処しきれないため、関税水準そのものの見直しが必要であると説明しています。

3-2 米国からの圧力とUSMCAレビュー

2025年に入り、米トランプ政権(※文脈により次期政権等の表現調整)は**「中国EVの北米流入阻止」**を強く要求しています。メキシコ・カナダへの追加関税の可能性を示唆し、2026年のUSMCA(北米自由貿易協定)見直し交渉を有利に進めるための「防衛策」としての側面も強くあります。

3-3 「Plan México」による内需保護

シェインバウム政権の掲げる産業政策「Plan México」の一環として、戦略産業(自動車、鉄鋼等)の保護、対アジア貿易赤字の是正、および税収確保を目的としています。


4.影響分析

4-1 メキシコ国内市場への影響

  • 価格上昇: 非FTA諸国からの完成車・家電は、小売価格で大幅な値上げが避けられません。
  • EV普及の鈍化: 手頃な価格帯を担っていた中国製EVのコスト増により、電動化ペースにブレーキがかかる可能性があります。

4-2 アジア勢(中国・韓国)へのインパクト

  • 中国OEM: 完成車(CBU)輸出への依存度が高いメーカーは利益が圧迫されます。一部は現地生産(ローカル組立)への切り替えや、CKD(完全ノックダウン)/SKD(準ノックダウン)方式への移行を加速させるでしょう。
  • 中国政府の反応: 既に「正当な権益の侵害」として強く抗議しており、報復措置やWTOへの提訴も含めた緊張状態が続くと予想されます。

4-3 メキシコ自動車産業・北米サプライチェーン

  • 「防波堤」効果: メキシコ国内で生産を行う日・米・欧メーカーにとっては、中国勢との価格競争圧力が緩和されます。
  • サプライチェーンへの副作用: メキシコでの組立用部材に中国・韓国製が多く含まれる場合、部材関税(10〜50%)がコストを押し上げ、最終製品の競争力やUSMCAの原産地規則(RVC)達成コストに悪影響を及ぼすリスクがあります。

5.日本企業への示唆(アクションチェックリスト)

日本企業への影響は、「どの国の工場から、どのHSコードの商品をメキシコに入れているか」で分かれます。

5-1 メキシコ生産拠点を持つ自動車OEM・Tier1/Tier2

  • メリット: 完成車市場での競合(中国・韓国勢)が減速するため、シェア拡大の好機。
  • リスクと対策:
    • 部材の原産国調査:HSコード単位で「非FTA原産品」の有無を棚卸しし、コスト増を試算する。
    • 調達先の切り替え:中国・韓国からの調達を、メキシコ国内、北米域内、または日本・ASEAN(CPTPP加盟国)へシフトする検討を開始する。

5-2 日本からメキシコへ完成車を輸出しているOEM

  • 日墨EPAおよびCPTPPを活用している限り、新関税の対象外です。
  • 競合他社の値上げに伴い、自社モデルの価格戦略やポジショニングを見直す余地が生まれます。

5-3 中国・韓国等の工場からメキシコへ輸出している日系企業

  • 最大の影響を受けます。中国工場からの完成車輸出は、ビジネスモデルの根本的な見直しが必要です。
  • 対策案:
    • CKD/SKD化: 完成車ではなく、部品として輸出しメキシコで組み立てることで、関税率や原産地判定を変える(※原産地規則の精査が必要)。
    • 第三国ハブの活用: 日本や東南アジアなど、FTA締結国の拠点からの供給に切り替える。

5-4 物流・商社

  • 通関実務において、非FTA原産の自動車関連HSコードへのフラグ付けと、新税率に基づいたランドコスト(陸揚げ原価)の再計算が急務です。
  • 発効前の「駆け込み需要」と、その後の反動減を見越した在庫・船腹管理が求められます。

6.まとめ

本措置は「反中」にとどまらず、「非FTA国全般」に対するメキシコの構造的な保護貿易シフトであり、少なくとも2026年末までは継続します。

日本企業にとっては、**「完成車ビジネスには追い風(競合の減速)」となる一方で、「部材調達コストには逆風(中国・韓国製部材の関税増)」となる諸刃の剣です。

法務・通関・調達・営業が連携した「関税タスクフォース」**を組成し、BOM(部品表)単位での原産国・HSコードの洗い出しを直ちに行うことを推奨します。


いま何が起きていて、FTA戦略をどう見直すべきか


0. エグゼクティブサマリー(日本企業への示唆)

  • 米国は 2025年4月の大統領令14257(いわゆる“Liberation Day tariffs”)でほぼ全世界輸入に一律10%の「相互関税(baseline)」+国別11〜50%の追加関税を課す新制度を導入し、これがFTA優遇の上に“上乗せ”される構造になりつつあります。(Federal Register)
  • これに加え、鉄鋼・アルミはSection 232で最大50%、トラック・バス・部品は25%、今後半導体にも232関税が乗る可能性があり、「相互関税+232+既存の対中関税など」が多層的に重なる“多階建て関税構造”になっています。(ホワイトハウス)
  • UNCTADの分析では、米国の14本・20カ国とのFTAで本来は0〜低関税のはずの品目にも、原則10%の相互関税がかかるとされ、FTAは「ゼロ関税の保証」から「例外(exemption)枠の交渉プラットフォーム」に性格が変わりつつあります(USMCAなど一部は例外)。(UN Trade and Development (UNCTAD))
  • 日本は米国との包括FTAを持たず、日米「物品協定」や重要鉱物協定(CMA)はあるものの、相互関税や232からの包括免除を自動的に保障する枠組みではない点に注意が必要です(CMAはEV税額控除上は“FTA扱い”だが、関税制度とは別レイヤー)。(Congress.gov)
  • 結論として、日本企業は「米国向けビジネスを“MFN+FTA優遇”で考える時代は終わり、相互関税・232・補助金・安全保障規制まで含めた“米国ローカル・ルール”を前提にサプライチェーンとFTA活用を再設計する段階」に入った、と見るのが現実的です。

1. 米国相互関税制度の現在地

(1) Liberation Day Tariffs と大統領令14257の骨格

  • 2025年4月2日、トランプ大統領が大統領令14257「Regulating Imports with a Reciprocal Tariff…」に署名し、対外赤字を「国家緊急事態」と宣言、IEEPA(国際緊急経済権限法)に基づく包括関税権限を発動。(Federal Register)
  • 制度の中核は以下の二階建て:
    • ① 10%のグローバルbaseline関税:2025年4月5日から、例外を除きほぼ全ての国・品目に適用。
    • ② 国別 “reciprocal” レート(11〜50%):57カ国を対象に、米国の対外赤字や相手国の関税水準を根拠とする追加関税を設定し、4月9日以降順次発動。(ホワイト・アンド・ケース)
  • 7月31日の追加大統領令で、**ブラジルなど一部国・品目についてレートの引き下げ・除外が行われるなど、リストは“交渉次第で動く”**ことが明確化。(ホワイトハウス)

(2) FTAパートナーの扱い

  • UNCTADのレポートによれば、米国の14本・20カ国とのFTA締約国も、4月5日以降は原則10%の相互関税の対象となり、FTAで約束した「0%」は“相互関税の上からの優遇”ではなく「例外リストへの掲載」という形で運用されていると整理。(UN Trade and Development (UNCTAD))
  • ただし、USMCA(カナダ・メキシコ)には特別扱いがあり、10%一律課税の原則から外れる扱いを受けている点が、他FTAとの重要な違い。(UN Trade and Development (UNCTAD))
  • CBPのIEEPA関連FAQでも、**「他法令やFTAに基づく優遇があっても、相互関税(10%)は原則として別建てで発動される」**というスタンスが示されており、企業側から見れば「FTAで0%なのに、なぜ10%が残るのか」という感覚的な違和感が実務上発生し得ます。(CBP)

2. Section 232ほかとの“多階建て”関税構造

(1) 鉄鋼・アルミ:最大50%+派生製品

  • トランプ政権は2025年2月、鉄鋼に25%、アルミに25%のSection 232関税を完全復活させた上で、その後6月には両方とも50%に引き上げ、さらに派生品を対象拡大。(ホワイトハウス)
  • 2025年4月には、派生製品や除外手続の新ルール(inclusion process)が示され、特定の下流品目については別枠で除外申請が可能だが、手続が煩雑で予見性が低いという実務上の課題があります。(産業安全保障局)

(2) 商用車・EV関連:トラック・バス・部品に25%

  • 2025年11月1日発効の新たなSection 232措置により、中・大型トラックおよびその部品に25%、バスに10%の追加関税が導入。これは「産業基盤の再構築」を掲げる一連の232の一部と位置づけられています。(S&P Global)
  • 部品にも広く適用されるため、ワイヤーハーネス、駆動系部品、車体部品などを北米で完成車メーカーに納入している日本企業にとっては、“Mex/Canada経由だから安全”とは言えない構造です(後述のUSMCAオフセットと絡む)。

(3) 半導体・電子機器:232調査が進行中

  • 2025年4月1日付で、半導体・半導体製造装置およびその派生製品に対するSection 232調査が正式に開始。対象には、ウエハ、レガシーチップ、先端ロジック、各種マイクロエレクトロニクス、さらにそれらを組み込んだ電子機器などが含まれます。(Federal Register Public Inspection)
  • マスコミ報道・議会資料では、「約100%の関税」を示唆する発言もあり、国内投資コミットのある企業を除外するという“インセンティブ関税”構想が議論されています。(ウィキペディア)
  • これは、半導体そのものだけでなく、自動車(特にEV)、サーバ、通信機器など広範なダウンストリーム製品に波及し得るため、「相互関税+潜在的な232」がビジネスモデルを根底から変える可能性があります。

3. FTA・WTOとの関係:何が「揺らいで」いるのか

(1) FTAの価値が“ゼロ関税”から“交渉プラットフォーム”へ

  • UNCTADやUSTR資料から整理すると、現状の構造はおおむね以下の通りです。(UN Trade and Development (UNCTAD))
    1. 従来:
      • MFN関税(WTO)をベースに、FTA/EPAでゼロまたは低率
    2. 現在:
      • 相互関税(10%+α)が“新たなベース”
      • FTAや個別交渉により「相互関税からの免除・軽減」を取り付ける形に転化
  • 学術的な整理では、国内法上はIEEPAやTrade Expansion Actが大統領に広い裁量を認めている一方、WTO協定やFTA義務との整合性は極めてグレーであり、今後も紛争リスクを抱えたまま運用される可能性が高いと評価されています。(Cambridge University Press & Assessment)

(2) 日本の立場:FTA不在と“準FTA”の扱い

  • 日本は米国との間に包括的FTAを持たず、日米物品貿易協定(USJTA)やデジタル貿易協定など、“部分協定”ベースで関税・ルール整備がなされている状態です。
  • 一方で、IRAのEV税額控除を巡って締結された日米重要鉱物協定(CMA)が「通商上のFTAと同等」と解釈され、EV税額控除の対象として扱われているのは象徴的で、「関税」ではなく「補助金・税控除の適用条件」として日米協定が使われていることを示しています。(Congress.gov)
  • つまり、日本企業は「関税面での包括的な防波堤(FTA)」を持たない一方で、サプライチェーン補助・税控除の条件として米国ローカルルールに強く拘束される立場にあり、米国相互関税と合わせて二重三重のリスク管理が必要です。

4. 鉄鋼・EV・半導体で何が起こり得るか(シナリオベース)

(1) 鉄鋼・アルミ・素材

  • 想定される構造:
    • 相互関税10%+国別追加レート
    • Section 232で50%
    • 一部品目は232除外申請により軽減可能
  • 日本・EU向けの**“一時的な232緩和”と“相互関税対象外枠”をパッケージで交渉**するケースが増えれば、
    • 「対米直接輸出」よりも「USMCA域内生産+対米供給」が有利になる
    • 鉄鋼・アルミについては**“北米で溶解・鋳造(melted and poured)”要件**を満たす投資が事実上必須になる(ホワイトハウス)

(2) EV/自動車部品

  • トラック・バス・MHDV部品の25%関税は、EVトラックや商用EVバスにも実質的に波及する可能性が高く、
    • 完成車輸出モデルは事実上成り立たず、
    • 北米での車両組立、バッテリー・モーターの現地化、USMCA原産地ルールの厳格充足が大前提になります。(S&P Global)
  • これに、半導体232が重なれば、
    • EV制御用チップ、インバータ、BMSなどが部品段階で追加関税
    • サプライヤー側は、チップの調達先・組立国・最終EVの組立国を組み合わせた“関税マトリクス”で利益を管理する必要が出てきます。(Federal Register Public Inspection)

(3) 半導体・電子機器

  • 232調査の結果次第では、
    • ウエハ・チップ・SMEに100%前後の関税(ただし米国内投資コミットのある企業は除外)
    • スマホ・PC・サーバなど最終製品にも段階的に関税を拡大する案が検討されています。(ウィキペディア)
  • これに対して中国側も米国製半導体へのアンチダンピング調査など対抗措置を取り始めており、サプライチェーンの“地政学リスク”がさらに高まっています。(AP News)
  • 日本企業としては、
    • 米国内生産(あるいはUSMCA域内)に「どの工程まで」前倒しで投資するか
    • 一部工程を日本・東南アジアに残すとしても、関税コストを価格転嫁できるプレミアム品かどうか
      を事業ラインごとに切り分けて考える必要があります。

5. 日本企業のFTA・サプライチェーン戦略再考のポイント

(1) マクロ戦略:米国を「FTA前提」ではなく「相互関税前提」で見る

  1. 前提の置き換え
    • 旧来:
      • 「最終的には日米FTA or WTOルールに戻るだろう」という期待
    • 今後:
      • 相互関税+232+補助金・規制の“ローカル・ルール”が長期化する前提でビジネス計画・投資判断を行う
  2. FTAの役割の再定義
    • 米国とは:
      • 「包括FTAでゼロ関税を取り戻す」よりも、
      • 品目別・プロジェクト別の“例外枠”や補助適格性を拡大するための交渉プラットフォームとして捉える
    • その他地域(EU・UK・メキシコなど)とは:
      • “第二の柱”としてのマーケット多様化と、米国の相互関税リスクを相殺する収益源の確保

(2) 実務レベルのアクションプラン(HS・FTA視点)

御社が検討すべき実務ステップを、HSコード・FTA・原産地の三層で整理すると:

  1. プロダクト別「関税レイヤー・マップ」を作る
    • 各製品について
      • HSコード(米国HTS)
      • MFN関税率
      • 該当するFTA/EPA(USMCA経由か否か、日米物品協定の適用有無など)
      • 相互関税レート(10%+国別)
      • Section 232/301等の追加関税の有無
    • を一枚のマトリクスに落とし込み、「最終実効税率(税負担%)を見える化」する。
  2. 原産地・サプライチェーンのシミュレーション
    • 代表シナリオ例:
      • 日本製部品 → 直接米国
      • 日本製部品 → メキシコで組立 → 米国(USMCA原産)
      • 東南アジア(RCEP域)生産 → 米国
    • それぞれについて
      • 相互関税+232を加味した税負担シミュレーション
      • USMCA原産判定(ROO)充足コスト
      • IRA等補助金・税控除の取得可否
    • を比較し、「関税+補助金をネットした“実効マージン”」ベースで投資の優先順位を決める。
  3. “二重起点”マーケット戦略
    • 米国依存を減らす方向として:
      • EU(EU–日本EPA)、UK(日英EPA)、インド、メキシコ、ASEANなど
      • 相互関税の影響が相対的に小さく、安定したFTAメリットが見込める市場を「第二の収益起点」として育成する。
    • 具体的には、
      • 製品ラインごとに「米国起点モデル」と「非米国起点モデル」を設計し、政治・関税リスクに応じて生産比率を可変化する。
  4. 交渉ポジションの整理
    • 個社として:
      • 米国内投資・雇用計画、技術移転、サプライチェーンの“友好国シフト”を材料に、
      • 相互関税の個別除外・232除外のロビー活動を行う余地を検討。
    • 日本政府・業界団体との連携:
      • 鉄鋼・EV・半導体などセクター別に、どの関税レイヤーを優先して緩和対象にするかを整理し、日米協議のアジェンダに反映してもらう。

6. いまから着手できる「チェックリスト」

最後に、すぐ取り組める実務チェック項目を簡単にまとめます:

  1. 自社製品の「相互関税+232」影響度ランキングを作る
    • 売上高×(想定追加関税率)でシンプルにスコアリング。
  2. 米国向け売上のうち、「代替市場」「代替生産地」を持たないものを特定する
    • ここが中長期的に最もリスクが高いライン。
  3. USMCA経由モデルの原産地判定・コスト試算
    • 既存のメキシコ・カナダ拠点でどこまで吸収できるかを定量化。
  4. 半導体232が発動した場合の“最悪ケース試算”
    • 100%関税を想定し、価格転嫁余地・仕様変更・設計変更のオプションを検討。
  5. 政府・業界団体との情報共有ラインの整備
    • 新たな大統領令・232リスト改定に即応できるよう、
      • 社内の関税・通商担当と、
      • 外部の専門家・業界団体のネットワークを再点検。

「米国相互関税拡大」は、単に“関税率が上がる”という話ではなく、FTAのビジネス上の意味そのものを変えてしまう動きです。
次のステップとして、もしよければ、特定の業種(自動車/電機/素材など)を一つ決


対中ビジネスアップデート:レアアース輸出規制の現状と見通し(2025年11月20日版)

【エグゼクティブ・サマリー】

赤澤経産相は11月18日、中国のレアアース輸出管理措置について「現時点で特段の変更はない」と述べました。これは、高市首相の台湾関連発言により日中関係が緊張する中にあっても、11月上旬に合意された「対中規制の1年間暫定停止」という現状(ステータス・クオ)が維持されていることを確認するものです。企業にとっては「危機が去った」わけではなく、「1年間の対策猶予期間が確保された」と解釈し、サプライチェーン強靱化を急ぐ必要があります。


1. 経産相発言の事実と核心

  • 日時・発言者:2025年11月18日/赤澤亮正 経済産業相
  • 発言内容:「中国によるレアアース等の輸出管理措置について、現時点で『特段の変更はない』」
  • ビジネス上の含意
    • 直近(11月11日頃)、米中協議の結果として中国側が発表した**「レアアース輸出規制の1年間暫定停止」**の枠組みが、その後の政治的摩擦(後述)によって覆されていないことを確認しました。
    • 中国側が即座に「報復」へ転じていないことへの安堵を示すメッセージです。

2. 背景:2025年秋の「規制ショック」と「一時休戦」

これまでの経緯を時系列で整理します。

  1. 規制の厳格化(10月9日)
    • 中国商務省が「国家安全」を理由に、レアアースの採掘・精錬技術および磁石製造技術の輸出管理を強化。サプライチェーン全体への許可制導入を発表しました。
  2. 国際的な反発と米中合意(10月~11月上旬)
    • 米国:次期トランプ政権のベセント財務長官(指名候補)らが「重大な誤り」と猛反発。対中100%関税のカードを切り、激しい応酬となりました。
    • 一時停止の発表(11月11日):米中協議の進展を受け、中国側は上記規制の**「1年間の暫定停止」**を発表。市場には一時的な安堵が広がりました。

3. 政治リスクの再燃:「変更なし」発言が出た真の理由

なぜ今、改めて「変更なし」の確認が必要だったのか。それは、「一時停止」の合意が吹き飛びかねない新たな火種が発生したためです。

  • 高市首相の「台湾発言」
    • 高市早苗首相による台湾有事・安全保障に関する発言に対し、中国側が猛反発。「日本へのレアアース輸出を全面禁止すべき」との強硬論が中国国内で再燃しています。
  • 発言の意図
    • 赤澤経産相のコメントは、こうした政治的緊張にもかかわらず、**「現時点では中国当局が実務上の『ちゃぶ台返し(規制停止の撤回)』には動いていない」**という事実を市場に伝え、パニックを抑制する狙いがあります。

4. 企業への実務的示唆

「変更なし」=「安全」ではありません。現状は**「首の皮一枚で繋がっている休戦状態」**です。

(1) 短期(今後12カ月):不安定な調達環境

  • 猶予期間の活用:中国側の「1年間停止」措置が有効な間に、現行契約に基づく在庫積み増しを推奨します。
  • 突発的遅延への備え:制度上は「停止」でも、現場レベルの通関遅延(サイレントな嫌がらせ)が発生するリスクは常在します。

(2) 中長期:構造的なデカップリング準備

  • 代替調達の加速:IEAなども指摘する通り、中国への依存(採掘70%、精錬90%超)は構造的なボトルネックです。
  • 技術投資:重希土類フリー磁石やリサイクル技術への投資は、もはや「環境対応」ではなく「BCP(事業継続計画)」の要です。

5. アクションプラン(推奨事項)

  1. 在庫ポリシーの見直し:重要品目については、「ジャストインタイム」から「ジャストインケース(有事対応)」へ切り替え、数ヶ月分のバッファを持つ。
  2. 契約条項の確認:米中・日中の政治的対立による輸出停止を「不可抗力(Force Majeure)」として処理できるか、法務部門と再確認する。
  3. 情報収集の定例化:中国商務省の公式発表だけでなく、ジェトロや専門商社のレポートを通じ、実務運用(ライセンス発給状況)の定点観測を行う。

再製造品の通関を円滑にする保証書戦略

「再製造品の通関を円滑にする保証書戦略」を、すでに再製造ビジネスを行っている企業向けに、実務ベースで整理します。
(=今ある保証書や帳票を「通関に強い仕様」にアップグレードする、という前提です)


1. なぜ「保証書」が通関で効くのか

税関が再製造品をチェックする際の典型的な懸念は:

  • 単なる「中古品」や「廃棄物」の輸入ではないか
  • 安全性・品質が担保されているのか
  • 過度に過小申告された「ジャンク価格」ではないか

です。

保証書は、次の点を客観的に示す“証拠”になり得ます:

  • 「新品同等の性能・品質を持つ、再製造品である」こと
  • 製造者が一定期間の責任(保証)を引き受けている=製品としての価値があること
  • どの工場で・どのプロセスを経て再製造されたかがトレースできること

したがって、うまく設計された保証書は、
「中古・スクラップ」扱いを避け、再製造品としての正当な通関を支えるキー資料
になります。


2. 戦略の全体像(3つのレイヤー)

① 文言戦略(保証書の中身をどう書くか)

  • 「再製造品」であること
  • 「新品同等性能」「保証期間」「トレーサビリティ」などを、税関が読み取りやすい形で明文化

② ドキュメント・パッケージ戦略

  • 保証書だけではなく、
    「工程票・検査成績書・使用部品リスト・ラベル仕様」などとセットで通関資料に使えるようにしておく

③ オペレーション戦略

  • 誰が、いつ、どの様式で保証書を発行し、
    通関トラブル時に誰が修正・追加説明を行うかを社内プロセスとして固定する

3. 保証書の「通関向け」文言設計

3-1 必須要素(最低限ここは押さえたい)

  1. 再製造品である明示
    • 例: 本製品は、当社工場において分解・検査・部品交換・再組立・最終検査を行った**再製造品(remanufactured product)**です。
  2. 新品同等性能の明示
    • 例: 本再製造品は、当社の新品製品と同等の性能および機能を有することを確認しております。
    • 「新品以上」「新品を超える」等の表現は避け、**“新品と同等”**にとどめると法務的にも扱いやすいです。
  3. 保証期間と、新品との比較
    • 例: 保証期間:出荷日より12か月(当社新品製品と同一条件)
    • 税関は「保証期間」からも商業的価値・品質レベルを推定します。新品と同等、またはそれに準じる期間であることを明示。
  4. 保証の範囲
    • 例: 本保証は、通常の使用条件下での材料および製造上の欠陥に限定されます。交換部品および修理工賃を対象とし、二次的損害は対象外とします。
  5. トレーサビリティ情報
    • 保証書のどこかに、最低限次を入れる:
      • 再製造工場名/所在地(国名)
      • 再製造日または出荷日
      • 製品型式・ロット番号・シリアル番号
      • 再製造工程コードや作業指示番号(社内コードでも良い)
  6. 安全・規格・適合情報
    • EU・北米向けなら、必要に応じて:
      • 適用規格(例:IEC、UL等)
      • CEマーキング/UL認証等の有無
    • これを保証書内に簡潔に記載し、詳細は別紙「技術文書」「試験成績書」に飛ばす設計にすると整理しやすいです。

4. 通関で使える「保証書+技術資料パッケージ」の標準構成

実際にうまく回っている企業ほど、次のような**“ひとまとめパック”**を決めています。

  1. 保証書(Customer Warranty Certificate)
    • エンドユーザー/販売先向けだが、税関提出用としても使えるように日英併記にしておくと有利。
  2. 再製造工程フローとチェックシート(1~2枚)
    • 「分解 → 清掃 → 検査 → 交換 → 再組立 → 最終検査」の流れを1枚図に
    • 代表的な検査項目と合否基準を簡潔に記載
  3. 出荷検査成績書(代表値で可)
    • 主な性能項目と合格判定
    • “新品基準”と“再製造品の測定値”を並べるフォーマットにすると、
      「新品同等」の裏付けとして説得力が出ます。
  4. 使用した新品部品の一覧
    • 例:
      • 部品名/部品番号
      • 新品・再利用区分
      • 主要な新品部品(シール類、ベアリング、電子基板等)には、「メーカー純正/同等品」の別も明示
  5. ラベル・マーキング仕様
    • 製品に貼るラベルの見本(PDFで1枚)
    • 以下の項目が読めるように:
      • “Remanufactured by XXX in [Country]”
      • 製品型式・シリアル
      • 再製造日コード
    • 税関に「表示が明確=ユーザーも再製造品と理解して購入している」ことを伝えられます。
  6. 原産地・HSコード関連との紐付け
    • HS分類メモ、原産地判定メモ(RoO)、コスト構成等の記録と、
    • 上記パッケージを同じ案件フォルダで一括管理しておく
    • HS Code Finder/社内HS判定システムの「添付資料」欄に
      • 「保証書」「出荷検査成績書」「再製造工程図」を標準で含める
        というルールにすると、後からの説明資料の入手が非常に楽になります。

5. 実際に行われているオペレーションのイメージ

5-1 A社パターン(日本本社+ASEAN工場 → EU/US向け)

  • 本社(日本)
    • 保証書テンプレートを日英版で作成し、一元管理
    • 改定時は、法務・品質保証・貿易部が合同レビュー
  • ASEAN再製造工場
    • 本社テンプレに従って保証書を発行(製品ラベルと同じLOT/Serialを必ず記載)
    • 出荷検査成績書、工程票、部品リストをロットごとにPDF化
  • 通関・物流(日本/現地販売会社)
    • 税関から照会が来た場合すぐ出せるよう、
      「インボイス/パッキングリスト/HS分類メモ/保証書パック」を1セットにして保管
    • HSコードや「新品/中古/再製造」区分を確認されたときは、
      まず保証書+工程フロー+検査成績の3点セットを先に提示

5-2 B社パターン(自動車部品の再製造サービスパーツ)

  • 部品番号(P/N)単位で保証書を紐付け
    • 部品マスタに「新品」「再製造」「修理品」の区分フラグを持たせる
    • 再製造品には必ず保証条件コードを設定(新品と同等 or 短縮など)
  • 保証書には、次を明示
    • 対象部品番号
    • 適合車種/システム
    • 保証期間と走行距離条件
  • 通関実務
    • HSコード説明依頼の際に、
      「この部品は新品ではなく再製造品だが、メーカー保証付きで新品同等性能である」
      ことを保証書と部品マスタ情報で説明する運用

6. 国・地域別の「見せ方」のコツ(ハイレベル)

※法的アドバイスではなく、実務上よく取られる“説明トーン”のレベル感です。

ASEAN域内(改定ATIGAも意識)

  • 一部加盟国では「中古品・廃棄物」の輸入に慎重
  • 保証書上は:
    • 「新品同等性能」である点
    • 認定工場での再製造である点
    • 簡潔な環境面の意義(廃棄削減・資源活用)を追記すると、担当官に納得感が出る場合が多い

EU向け

  • 環境・安全・エコ設計の観点にも関心
  • 保証書では:
    • 適用規格・指令(例:低電圧指令、EMC指令等)への適合を簡単に触れる
    • 詳細は「技術ファイル」「試験レポート」にリンクさせる設計が無難

米国向け

  • 「Repair/Refurbished/Remanufactured」の違いに敏感な場合あり
  • 保証書では:
    • “Remanufactured”を明示(Refurbishedと混在させない)
    • 保証内容(期間・範囲)をクリアに書くことで、商業的価値と品質水準を説明

7. 社内で今すぐできるチェックリスト

  1. 対象製品の棚卸し
    • 再製造品のラインアップをリストアップ
    • 「保証書が存在するもの」「存在しないもの」「新品と同じ保証書をなんとなく使っているもの」に色分け
  2. 保証書フォーマットの見直し
    • 上記3-1の必須要素が入っているかをチェック
    • 「新品と同じ文言をコピペ」していないか(再製造品の特性が反映されているか)
  3. 技術資料とのリンク
    • 保証書に書いてある内容を裏付ける工程票・検査成績書が、
      ロット別にちゃんと残っているか
    • HS分類メモ・原産地判定メモと同じフォルダに保存されているか
  4. 通関トラブルのフィードバック
    • 過去に「中古扱い」「価格査定」「環境規制」などで指摘を受けた案件を振り返り、
    • そのときに「保証書に何が書いてあれば言いやすかったか」を洗い出し、
      保証書テンプレに反映(テンプレの改訂履歴を残す)

2025年11月19日時点で公表・報道されている「米国の相互関税(Reciprocal Tariff)」

以下は、2025年11月19日時点で公表・報道されている「米国の相互関税(Reciprocal Tariff)」について、指定された国だけを抜き出した最新リストです。


進め方(計画)

  1. 公式の国別相互関税率を確認
    • ホワイトハウス大統領令「Further Modifying the Reciprocal Tariff Rates」(2025年7月31日)の Annex I にある国別率を確認。
    • JETRO「米国トランプ政権の関税政策の要旨」(2025年11月18日版)の相互関税率表を照合。
  2. カナダ・メキシコ・中国など Annex I に載っていない/別枠扱いの国を確認
    • JETRO「米国関税措置への対応」特集の各国別解説(対中関税、対カナダ・メキシコ関税など)と Federal Register/ホワイトハウスの大統領令をチェック。
  3. 直近(前日)からの変更の有無を確認
    • 11月4日の対中相互関税修正 EO、11月14日の農産品の相互関税対象外 EO 以降、国別レートを変える新たな大統領令・告示が出ていないか確認。
    • JETRO 11月18日資料は「2025年11月18日時点」と明記されており、その後も国別相互関税率の変更報道はなし。
  4. 指定国だけを抽出し、表形式で整理
    • 「国名/相互関税率(国別上乗せ分)/前日差/主な出所/備考」を記載。

この計画に沿って調査した内容を、以下の表にまとめています。


最新 相互関税リスト(指定国のみ)

前提メモ

  • 「相互関税率」は、米国側が各国に対して設定している追加 ad valorem 関税率(Reciprocal Tariff の国別率)です。
  • EU・日本など一部は「MFN税率と合わせて15%になるよう調整」という形で運用されています。
  • カナダ・メキシコ・中国は、相互関税とは別枠の IEEPA 関税や301条関税等が重なっている特例です。

表:国名順(ご指定の順番)

国名相互関税率(国別上乗せ分)前日差主な出所備考
Algeria(アルジェリア)30%なしWH EO 2025/7/31 Annex I, JETRO 2025/11/18Annex I 掲載国(相互関税対象国)。
Angola(アンゴラ)15%なし同上同上。
Bangladesh(バングラデシュ)20%なし同上同上。
Bosnia & Herzegovina(ボスニア・ヘルツェゴビナ)30%なし同上高率(30%)グループ。
Botswana(ボツワナ)15%なし同上同上。
Brazil(ブラジル)10%(相互関税分)なしAnnex I, JETRO「主要国・地域の追加関税率」相互関税10%に加え、別の大統領令に基づく追加関税40%で**合計50%**のケースあり。
Brunei(ブルネイ)25%なしAnnex I, JETRO同上。
Cambodia(カンボジア)19%なしAnnex I, JETRO10月に米カンボジア通商枠組み合意。レート自体は19%で維持。
Cameroon(カメルーン)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Canada(カナダ)*―(相互関税対象外)なしJETRO 11/18, JETRO「対カナダ関税」相互関税EOの Annex I には非掲載。代わりに IEEPA に基づく追加関税35%(一部品目除外)。USMCA原産品は免除。
Chad(チャド)15%なしAnnex I, JETRO同上。
China(中国)*34%(名目)/実効10%なしJETRO「対中国関税の概要」(11/5)、対中相互関税修正 EO(11/4)EO 14257 Annex I 上は34%。うち24ポイントの賦課を2026年11月10日まで停止し、相互関税として実際に徴収されるのは10%。さらにフェンタニル対策IEEPA関税10%、301条追加関税25%などが別途上乗せされる。
Côte d’Ivoire(コートジボワール)15%なしAnnex I, JETRO同上。
DR Congo(コンゴ民主共和国)15%なしAnnex I, JETRO同上。
EU(欧州連合)最大15%(MFN含む)なしAnnex I, JETRO、EU・米国合意報道EU向けは特例:MFN税率が15%未満の品目は「MFN+相互関税=15%」、MFNが15%以上の品目には相互関税0%
Falkland Islands(フォークランド諸島)10%なしAnnex I, JETRO同上。
Fiji(フィジー)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Guyana(ガイアナ)15%なしAnnex I, JETRO同上。
India(インド)25%(相互関税分)なしAnnex I, JETRO「主要国・地域」相互関税25%に加え、別EOに基づく追加関税25%で**合計50%**と整理されている。
Indonesia(インドネシア)*19%なしAnnex I, JETRO7月22日の米インドネシア通商合意で 19%に確定。
Iraq(イラク)35%なしAnnex I, JETRO高率(35%)グループ。
Israel(イスラエル)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Japan(日本)*15%なしAnnex I, 日米関税合意および実施EO(9/4)、JETRO解説7/22の日米合意に基づき、相互関税率は24%→15%に引き下げ。MFN税率が15%未満の品目は「MFN+相互関税=15%」、15%以上の品目には相互関税なし。自動車・同部品の232条関税も同様に15%上限。
Jordan(ヨルダン)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Kazakhstan(カザフスタン)25%なしAnnex I, JETRO高率(25%)グループ。
Laos(ラオス)40%なしAnnex I, JETRO非常に高い相互関税率(40%)。
Lesotho(レソト)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Libya(リビア)30%なしAnnex I, JETRO高率(30%)グループ。
Liechtenstein(リヒテンシュタイン)15%なしAnnex I, JETROEFTAの一員。11/14の米・スイス・リヒテンシュタイン枠組み合意の対象国の一つだが、レート自体はもともと15%。
Madagascar(マダガスカル)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Malawi(マラウイ)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Malaysia(マレーシア)19%なしAnnex I, JETRO10月の通商協定枠組み合意後もレートは19%で据え置き。
Mauritius(モーリシャス)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Mexico(メキシコ)*―(相互関税対象外)なしJETRO 11/18, 対メキシコ IEEPA 関税解説Annex I 非掲載。**IEEPA に基づく追加関税25%**が非USMCA品に適用。USMCA要件を満たす品目は免除。
Moldova(モルドバ)25%なしAnnex I, JETRO高率(25%)グループ。
Mozambique(モザンビーク)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Myanmar(ミャンマー)40%なしAnnex I, JETRO最高水準の一つ(40%)。政情リスクも背景とされる。
Namibia(ナミビア)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Nauru(ナウル)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Nicaragua(ニカラグア)18%なしAnnex I, JETRO同上。
Nigeria(ナイジェリア)15%なしAnnex I, JETRO同上。
North Macedonia(北マケドニア)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Norway(ノルウェー)15%なしAnnex I, JETROEFTAの一員だが、相互関税率は15%で確定。
Pakistan(パキスタン)19%なしAnnex I, JETRO同上。
Philippines(フィリピン)19%なしAnnex I, JETRO「主要国・地域」7/22の米比合意で19%に設定。
Serbia(セルビア)35%なしAnnex I, JETRO高率(35%)グループ。
South Africa(南アフリカ)30%なしAnnex I, JETROアフリカではアルジェリア・リビアと並ぶ30%グループ。
South Korea(韓国)*15%なしAnnex I, JETRO(注3)7/31 Annex I で15%。11/13の米韓合意により、今後 EU・日本同様に「MFN(または韓米FTA税率)+232条を含めて15%上限」とする運用に修正される見込み。
Sri Lanka(スリランカ)20%なしAnnex I, JETRO同上。
Switzerland(スイス)39%(発動中)なしAnnex I, JETRO 11/18, JETRO/Reuters/Swissinfo報道7/31 EOの Annex I で31%→39%に引き上げられ、8/7以降発動。11/14に米・スイス・リヒテンシュタイン間で「最大15%に引き下げる」枠組み合意が発表されたが、15%への正式な引き下げを行う大統領令はまだ出ていないため、**11/19時点の法令上の相互関税率は39%**と整理。
Syria(シリア)41%なしAnnex I, JETRO一覧中で最も高い相互関税率(41%)。
Taiwan(台湾)20%なしAnnex I, JETRO同上。
Thailand(タイ)19%なしAnnex I, JETRO7月の通商枠組み合意後も19%を維持。
Tunisia(チュニジア)25%なしAnnex I, JETRO4月時点28%→7/31の再設計で25%に修正。
Vanuatu(バヌアツ)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Venezuela(ベネズエラ)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Vietnam(ベトナム)20%なしAnnex I, JETRO7月の合意で20%に設定。JETRO「各国の追加関税率」参照。
Zambia(ザンビア)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Zimbabwe(ジンバブエ)15%なしAnnex I, JETRO同上。

補足:共通の最近の動き(全ての国に関係するもの)

  • 農産品の一部が相互関税対象外に
    2025年11月14日の大統領令により、牛肉・コーヒー・茶・一部肥料などの農産品が、国を問わず相互関税の対象外となりました(237のHS分類が Annex で指定)。
    → 上記表の「相互関税率」自体は変わらないものの、実際にこのレートがかかる品目の範囲はやや狭まっています。
  • 中国に対する相互関税の「実効10%」の延長
    11月4日の大統領令により、対中相互関税34%のうち24ポイントを停止し、相互関税としては10%のみを2026年11月10日まで適用する措置が延長されました。同時に、フェンタニル対策の IEEPA 追加関税が20%→10%に引き下げ。