化学品でCASがあるとHSコードが決まるということが言われていますが、以下の事を考えてください。
1. そもそも CAS 番号と HS コードは別モノ
項目 | 目的・特徴 |
---|---|
CAS RN | ① 化学物質を一意に識別する “番号” ② 物質そのものの構造情報を示す |
HS コード | ① 貿易統計・関税計算のための “分類” ② 物質+形状・濃度・用途など通則・部注の条件で細分 |
2. 「CAS→HS」対応表は存在するが“公式ではない”
- WCO(世界税関機構)や各国税関は CAS と HS の紐付け表を公式には公表していません。
- 民間データベース・ツール(例:ChemIDplus, Chemspider, AACT’s HS-CAS Mapping, TariffTel など)が独自に作成した対照表はありますが、
- 最新の HS 改定に追随していない場合がある
- 物質の形態・混合物かどうかでヘディングが変わるケースを十分にカバーできない
3. CAS だけでは足りない代表例
具体例 | HS 分類で追加確認が必要な項目 |
---|---|
① 酸・塩基(硫酸など) | 濃度(重量%)により 2807 か 3824 かに分岐 |
② 有機溶剤(アセトン等) | 含有不純物割合、混合溶剤か単一か |
③ ポリマー(ポリエチレンなど) | 粒状かシートか、一次形態か仕上げ製品か(3901 vs. 3920 など) |
④ 医薬品原体 | 医薬品表の収載有無で 2933/2941 と 3003/3004 が変わる |
CAS RNの意義
- メリット
- 物質を一意に特定できる
- 同じ名前でも構造が違う異性体・塩・水和物を区別できます。
- SDS・化審法届出など周辺情報にアクセスしやすい
- SDS の Section 3 から含有比率・不純物・濃度を素早く把握でき、HS 分類に必要な追加データを揃えやすくなります。
- 税関・検査機関との対話がスムーズ
- 日本の「輸入事前教示」申請書や欧州 BTI 等でも CAS の記入欄があり、添付すると照会が減る傾向があります。
- 物質を一意に特定できる
- ただし CAS だけでは決まりません
HS コードは **「化学構造 × 形態・濃度 × 用途」**で細分されるため、以下も必須情報です。 追加で必要な主な項目具体例物理形態粉末・顆粒・溶液・ペースト・樹脂ペレットなど純度・濃度95 % アセトン vs. 50 % 水溶液 ⇒ 2807 か 3824 に分岐混合物の組成溶剤ブレンド、製剤中の有効成分含量用途・包装形態医薬用原体か一般化学品か、一次形態か最終製品か関連法規への収載医薬品表、農薬リストなどに載っているか
うまく活用する手順例
- CAS で PubChem / SciFinder から IUPAC 名・官能基を確認
- HS 第28・29類(無機・有機化学品)の類注・号注に当たりを付ける
- SDS で 濃度・形態を確認し、液体なら 3824 系、固体なら 292X–293X 系など候補を絞り込む
- 部注・実行関税率表解説で最終確定
- 不明点が残れば 事前教示で公式回答を取得
まとめ
- CAS RN は「スタート地点」としてとても有用。
- 最終的な HS 付番には 形態・純度・用途など追加情報が不可欠。
FTAでAIを活用する:株式会社ロジスティック