韓国のHSコード「事前教示(Advance Ruling/品目分類の事前審査)」

実務まとめ

最終確認日:2025年10月11日

本資料は韓国関税庁(KCS)、関税評価分類院(CVNCI)の公式情報および関税法第86条等の法令に基づいて整理しています。

1) 対応組織と公式URL

韓国では**Korea Customs Service(KCS/韓国関税庁)が事前教示制度を所管し、実務窓口としてCustoms Valuation & Classification Institute(CVNCI/関税評価分類院)**が審査・通知業務を担当します。

■ KCS英語案内ページ(HS確認・事前教示)
https://www.customs.go.kr/engportal/cm/cntnts/cntntsView.do?cntntsId=2335&mi=7313
品目分類事前教示(Advance Ruling on Tariff Classification)の申請案内

■ CVNCI公式ページ(申請方法・韓国語)
https://customs.go.kr/cvnci/cm/cntnts/cntntsView.do?mi=3217&cntntsId=948
UNI-PASS経由の電子申請手順、試料送付先、分析手数料、再審査手続を掲載

■ UNI-PASS(電子通関システム)
https://unipass.customs.go.kr
電子申告→申告書作成→品目分類→品目分類事前審査申請のメニューから申請

■ 試料送付先
〒34027 大田広域市儒城区テクノ2路214 関税評価分類院3階 品目分類課

2) 事前教示(品目分類)のプロセス

申請資格

輸出入しようとする者、輸出貨物の製造者、通関士・通関法人等が申請可能です(関税法第86条)。

標準の流れ

申請(電子出願が原則): UNI-PASSで「電子申告→申告書作成→品目分類→品目分類事前審査申請」から申請書を作成し、必要に応じて試料・資料をCVNCIへ郵送します。

審査・追加照会: 内容確認後、必要に応じて追加資料や試験分析を指示されます。分析が必要な場合のみ、1品目あたり3万KRWの分析手数料を電子納付します(税外収入、消費税対象外)。

決定通知: 申請受理日から30日以内が処理標準期間です(法令・告示・FAQで明示)。UNI-PASSから決定通知(PDF)を申請者が自社で出力します。

再審査(不服): 結果に異議がある場合は通知受領後30日以内に1回のみ、CVNCI院長に再審査を申請できます(再審査の処理標準:60日)。

通関での取扱い: 申告貨物が通知内容と同一であれば、税関長は通知に従って品目分類を適用します(拘束力)。

オンライン実務: 決定通知の出力、分析手数料の納付、HS国際紛争の申告(輸出先税関と番号が異なる場合)まで、UNI-PASS上で処理できます。

3) 事前教示に必要な情報

申請書(UNI-PASS様式)+試料(必要時)

技術資料(貨物の特定に必要な内容):
名称・規格、用途・機能、構造、成分・組成(%)、製造工程、図面・写真、カタログ、取扱説明書等。品目別(機械・電機、化学品、プラスチック・ゴム、金属、医療・測定機器等)に求められる説明要素がCVNCIに整理されています。外国語資料には韓国語訳の添付が必要です。

例: 機械・電機は構造・作動原理・回路図・分解図、化学品は100%基準の組成表・工程図、食品・動植物系は学名・用途・成分表等を重視します。

4) 結果が出るまでの期間

標準処理期間: 30日(申請受理日からの行政標準。FAQおよび「品目分類事前審査制度運営に関する告示」で明記)。

再審査: 60日(告示)。

※追加資料・分析が必要な場合は、その期間が別途見込まれます(分析等の期間は処理日数から除外する運用)。

5) 事前教示の有効期間(効力・拘束力)

効力: 申告貨物が通知内容と同一である限り、税関は通知の品目分類を適用します(拘束力あり)。

有効期間: 原則として有効期限の定めなし(期限による失効なし)。ただし、後日の法令・分類基準の変更や品目分類委員会の決定(関税法第87条)により変更告示が出た場合は、新基準へ変更されることがあります(KCS公式FAQ)。

※過去には「3年」有効の規定がありましたが、現在の運用は「変更まで有効」へ改正されています。

6) 事前教示に必要な費用

申請手数料: 無料(一般申請自体の手数料は設定されていません)。

分析手数料: 分析が必要な場合のみ、1品目あたり3万KRWを国庫収納銀行に電子納付します(税外収入、消費税対象外)。

その他実費: 試料の送付費用、翻訳費等は申請者負担です(任意費用)。

7) その他の重要事項

申請経路と出力: 申請はUNI-PASSが原則です。決定通知書はUNI-PASSで自社出力します。

不受理・返戻の典型例: 申請要件不備、同一品の輸出入申告済み、係争中、指定期間内の補正未提出、分析手数料未納等。

再審査(不服): 通知受領後30日以内に1回のみ可能です(電子・郵送・持参)。

公表・非公表: 2025年6月1日以降、営業秘密等を理由とする「非公開の申出」が可能とする運用改正が実務情報で案内されています(提出時に書面添付)。

HS国際紛争への対応: 輸出先で通知番号と異なる分類を指摘された場合、「HS国際紛争申告センター」に申告できます(UNI-PASSメニューあり)。

関連する他の事前教示制度:

  • 原産地: 「原産地等の事前審査」(処理90日、申請物品ごとに3万KRW)。分類とは別制度です。
  • 関税評価: ACVA(Advance Customs Valuation Arrangement)として別枠で運用。

実務TIP(チェックリスト)

  • 「分類の決め手」を最初に要約(用途・機能、構造、組成%、工程)。図面・写真・カタログで類似品との差異を可視化します。
  • 外国語資料には韓国語訳を添付してください(KCS明記)。
  • **分析が必要になりそうな品目(化学品・素材等)**は、組成表(100%基準)と製造工程を事前準備し、分析手数料3万KRWと試料手配を計画に含めます。
  • スケジュール:30日の処理期間+補正・分析の時間を見込んで逆算してください。再審査ルート(30日内申請→60日処理)も予備計画に含めます。

主要根拠・公式案内(抜粋)

  • KCS英語ページ: HS確認・事前教示はCVNCIで申請との案内
  • CVNCI公式(申請方法): UNI-PASSでの申請、通知書の自社出力、分析手数料3万KRW、国際紛争申告、再審査(30日内)等
  • 処理期間(30日): KCS公式FAQ・運営告示(初回30日、再審査60日)
  • 有効期間(期限なし): KCS公式FAQ(有効期限の定めなし。ただし法改正・委員会決定で変更あり)
  • 関連制度: ACVA(評価の事前合意)、原産地の事前審査

韓米総合関税協議の現在地と日米合意との対比分析(2025年10月11日現在)

日本企業の競争戦略への示唆

エグゼクティブサマリー

韓米は7月31日に15%関税で枠組み合意したものの、実装は深刻に遅延しており、日本との競争格差が拡大しています。IEEPA一般関税の15%は8月7日に発効済みですが、自動車の15%引下げは未実装のまま25%が継続し、韓国自動車メーカーの対米輸出は8月単月で前年比15.2%減少しました。一方、日本は9月5日の大統領令署名により9月16日から自動車15%を適用開始し、競争優位を確立しています。半導体・医薬品では、日本がMFN(最恵国待遇)を正式確保したのに対し、韓国は「他国より不利にしない」との口頭表明に留まり、法的確約が未了です。10月31日-11月1日の慶州APEC首脳会議前に安全保障パッケージでの打開を模索していますが、3,500億ドル投資の資金形態(現金vs融資・保証)を巡る対立が解消されず、為替への波及懸念も残存しています。


時系列比較:韓米vs日米(2025年7月-10月)

日付韓米日米
7月23日枠組み合意発表:15%関税、自動車15%、5,500億ドル投資
7月31日枠組み合意発表:15%関税、自動車15%、3,500億ドル投資+1,000億ドルエネルギー
8月1日韓国政府「書面合意は未完了」と説明
8月7日IEEPA 15%発効(自動車は25%継続)
8月28日李大統領・トランプ大統領会談、共同声明なし(懸案未解決)
9月5日トランプ大統領が大統領令(EO 14345)に署名
9月16日韓国大統領府「協議停滞」発表自動車15%関税の適用開始
9月27-28日米側が「前払い」要求、韓国側は「一括支払い不可能」と反論
10月1日為替非ターゲティング共同声明(スワップ含まず)
10月11日現在自動車25%継続、投資条件交渉中実装完了、MFN確定

主要論点の日韓対比スコアカード

論点韓国の現状日本の現状日本企業への示唆
ベース関税(IEEPA)15%発効済(8/7)15%確定・実装済(9/16)同水準だが、日本は法的安定性で優位
自動車・部品(Section 232)25%継続(15%未実装)15%実装済(9/16~)日本車に10%の競争優位:韓国車は月間4,000-7,000億ウォンの追加コスト負担
半導体・医薬品「他国より不利にしない」(口頭表明)MFN正式確保(将来の第三国優遇も自動追随)日本メーカーは将来の関税引下げリスクをヘッジ済み、韓国サプライヤーは価格競争で不利
鉄鋼・アルミ・銅50%継続(対象外)50%継続(対象外)同条件
投資パッケージ3,500億ドル(造船1,500億、半導体等2,000億)+エネルギー1,000億ドル、資金形態で対立5,500億ドル(融資・保証・出資上限枠)、実装工程明確日本モデルは米政府が投資委員会で監督、利益配分も規定済み
為替非ターゲティング共同声明(スワップなし)市場決定原則再確認、過度のボラティリティ時のみ介入日本は既存の介入枠組みを維持
法的文書書面未完了(8/1時点)**大統領令(EO 14345)**発効日本は執行可能な法的枠組みを確保

セクター別実務インパクト(日韓競争の観点)

自動車・部品

韓国の苦境:Hyundai・Kiaは25%関税により、Hyundaiは月間4,000億ウォン(約2.9億ドル)、Kiaは3,000億ウォンの追加コストを負担し、8月の対米輸出は前年比15.2%減少しました。韓国政府は年末までの15%実装を目指していますが、9月時点の専門家見解では「年内適用は困難」との見方が優勢です。

日本の優位確立:トヨタ・ホンダ・日産は9月16日から15%関税が適用され、韓国車との価格競争で実質10%の構造的優位を獲得しました。日本の大統領令(EO 14345)では、従来のMFN税率(乗用車2.5%)に補足関税を加えた形で一律15%とする「包括的(inclusive)」運用が明確化されています。

実務アクション

  • 韓国向けサプライヤーは、顧客が25%前提で価格設定している間に、15%実装後の価格再調整条項を契約に盛り込む必要があります。
  • 日本メーカーとの競合製品は、10%の関税差を織り込んだ競争力分析の再実施が必須です。

半導体・医薬品

日本のMFN確保の実質的意味:日本は「将来のSection 232関税において、日本製半導体・医薬品は他のいかなる国に適用される税率をも超えない」との条項を9月の共同声明で確保しました。これは、例えば台湾が5%で合意した場合、日本も自動的に5%へ引下げられる仕組みです。

韓国の不透明性:韓国は商務長官Lutnickが7月31日に「他国より不利にしない(not be treated any worse than any other country)」と発言しましたが、書面合意が未了のため、法的強制力がありません。

実務アクション

  • 日本の半導体・医薬品メーカーは、将来の第三国優遇があっても自動追随するため、長期契約での価格フォーミュラに「MFN連動条項」を組み込めます。
  • 韓国サプライヤーと取引する日本企業は、韓国側が将来の関税引下げを享受できない可能性を織り込み、代替調達先の確保が推奨されます。

素材(鉄鋼・アルミ・銅)

日韓ともに50%の232関税が継続適用され、同条件です。電池・半導体用素材のコスト上振れは構造化しており、米国内調達への再設計が共通課題です。

エネルギー

韓国は米国産LNG/LPG等の1,000億ドル購入を約束しましたが、為替・物流コストの複合リスク管理が前提です。日本は年間70億ドルのエネルギー購入を約束しており、韓国の規模は日本の約14倍となります。


韓国交渉の停滞要因と日本との決定的相違

1. 投資パッケージの資金形態

韓国の対立点:米側は「前払い(up-front payment)」を要求し、トランプ大統領は9月27日に「3,500億ドルを支払えないのか」と発言しました。韓国大統領府は「一括現金支払いは不可能で、融資・保証中心になる」と反論し、膠着しています。

日本の成功モデル:5,500億ドルは「投資・融資・融資保証の上限枠」として設定され、9月4日のMOU(覚書)で利益配分(米政府に有利)、投資委員会(商務長官が議長)、2029年1月までの実施期限を明記しました。現金vs融資の配分問題は構造化により回避しています。

2. 実装スケジュールの明確性

韓国:7月31日の発表後、書面合意が未了のまま8月1日に韓国政府が「書面なし」と公表し、自動車関税の実装時期も未定です。

日本:7月23日の発表後、9月5日に大統領令署名、9月16日に自動車関税適用開始と、45日間で法的実装を完了しました。

3. 安全保障とのリンケージ

韓国は10月31日-11月1日の慶州APEC首脳会議前に、防衛費分担増額(GDP比3.5%への引上げ)、使用済み核燃料の再処理・ウラン濃縮制限緩和(123協定の改定)を含む安全保障パッケージで打開を図っています。韓国外相は「安全保障では大筋合意済み、関税交渉が遅れても個別発表する可能性」と述べており、交渉の分離を示唆しています。


直近90日のウォッチリスト(優先順位順)

  1. 韓国自動車15%の実装時期:大統領令・官報公示のタイミングが韓国車の価格競争力を直接規定します。年内実装は不透明であり、2026年への越年リスクも存在します。
  2. APEC首脳会議(10月31日-11月1日)での成果:李大統領・トランプ大統領の二国間会談で、安全保障パッケージの先行発表または全体合意のブレークスルーが焦点です。
  3. 3,500億ドル投資の条件確定:現金比率、融資・保証比率、利益配分(米側は「利益の90%は米国民へ」と発言)、投資監督メカニズムの詳細が、為替への波及や財政負担に直結します。
  4. IEEPA関税の司法判断:最高裁審理の帰趨により、15%の法的根拠や適用継続性が変動するシナリオがあります。
  5. 半導体・医薬品への新規関税:トランプ大統領は9月26日にブランド医薬品への100%関税を示唆しましたが、日本のMFN条項により15%上限が適用される見込みです。韓国の扱いは不透明です。

日本企業の戦術的アクションプラン

対韓国競合製品

  1. 自動車・部品:韓国車との競合モデルは、10%の関税差を活用した価格戦略または追加装備での差別化を検討します。韓国サプライヤーからの調達は、15%実装後の価格変動条項を必須とします。
  2. 半導体・医薬品:日本はMFN確保により将来の関税引下げリスクをヘッジ済みです。韓国製との競合では、関税の不確実性を強調し、長期契約での価格安定性を訴求できます。

米国市場戦略

  1. 価格設定:対米見積は「IEEPA 15%前提」を基本とし、自動車は「韓国15%実装前後の二本立て単価」を用意します。
  2. 契約条項:関税エスカレーター条項、MFN連動価格調整条項、Section 232追加品目への対応条項を標準化します。
  3. サプライチェーン再設計:232の50%素材(鉄鋼・アルミ・銅)は米国内加工または第三国原料置換で関税負担を分離します。

情報収集体制

  1. 官報監視:自動車・半導体・医薬品関連の大統領令、商務省規則、CBP実施ガイダンスの常時モニタリングを制度化します。
  2. 韓国動向の追跡:韓国の15%実装日、APEC首脳会議の成果、投資パッケージの確定内容が、日本企業の競争優位の持続性を左右します。

参考:制度的背景

KORUS FTAとの関係:韓米は本来KORUS FTA(2012年発効)で大半の関税を撤廃済みですが、2025年のIEEPA/Section 232による上乗せ関税が上書きしています。KORUS FTAとの整合性や議会承認要否は未解決の論点です。

日本の実装モデルの優位性:7月23日の枠組み合意→9月5日の大統領令署名→9月16日の実装完了と、政治決着から制度実装までの導線が明確であり、MFN条項確保も競争上の決定的差異です。


主要情報源

  • 韓米7月31日発表(15%・投資・エネルギー):Reuters, White House
  • 韓国「書面未了」(8/1):Reuters
  • 米国議会調査局(CRS)報告書(韓米・日米):Congress.gov
  • 韓国自動車輸出減少(8月):Chosun Ilbo, Donga Ilbo
  • 日本MFN確保(9月):Japan Times, Reuters
  • 韓国APEC安全保障戦略(10月):Anadolu Agency, Yonhap
  • 日本大統領令(EO 14345):White House, AFS Law

TPPへの中国、台湾、韓国の参加申請・参加検討に関する私見

中国、台湾、韓国がTPPへの参加を表明または参加検討をすることがニュースになっています。

ニュースやYouTubeで「TPPへの中国、韓国の参加は無理。台湾歓迎」という論調をよく見ますが、FTAを利用する企業側からの視点でこのことを見てみましょう。

(申請に関する是非)

TPPに参加申請をする国は、TPPが定める申請・承認プロセスを経ることになります。申請する段階でその申請を断ることはできません。断る以上は明確な理由が必要となります。

そこで、参加希望国が条件を満たせるかを見定めればよい。中国がWTOに参加するときに遵守するとした条件を今だ守れていないこと、韓国が国際的な決め事を後に保護することなどを加味して各国が見定め、満場一致をもって参加を認めればいいことで現時点で一方的に締約国が「守れない」と主張するのは無理があります。

(日本にとっての経済的メリット、リスク)

RCEPはその協定の内容を見れば分かることですが、日本にとってのメリットが余り感じられない、あったとしてもとても時間がかかる内容です。特に自動車部品の対中国輸出ではメリットがほぼないと言えます。中国や韓国が入ることでメリットが大きいと思われたRCEPですが、実際は日本に取ってそれほど手放しでは喜べないものになっています。

翻って、TPPに中国や韓国が入るとどうなるか。TPPでは日本は米などよく守ったと思われる内容となっている一方で、日本以外ではほぼ100%の関税撤廃となっています。また、その撤廃速度もRCEPとは比べるまでもありません。新規参入の国は、締約国より参加条件がよくなるわけがありません。基本は譲許のスピードが速く、かつほぼ全面的に関税を撤廃することが前提になるでしょう。そうなれば、TPPの方がいろいろな制約のあるRCEPよりも日本企業に取って対中国、対韓国上、関税削減が広く、かつ鋼板に享受できるという活用のメリットが出ると言えます。このメリットはかなり大きなものです。この点だけを考えれば、中国、韓国のTPP参加は日本にとって歓迎すべき事です。

一方、原産地証明上、日本はリスクを背負う可能性があります。

TPPにおける関税低減・撤廃のメリットを得る為には、原産地証明書を輸出時のインボイスに添付する必要があります。その原産地証明ですが、TPPでは「自己証明」という形態をとっています。「自己証明」とは企業が原産性を証明した後に、自身で原産地証明を作成することが出来るということを指します。日EU EPAや日オーストラリアEPAを除き、日本の多くのEPAでは「第三者証明」制度がとられています。これは商品の原産性判定を日本商工会議所に申請し、許可が出た後で、日本商工会議所により原産地証明書を発給してもらうことが出来る制度です。間に日本商工会議所が入ることで時間と手間とコストが企業にはかかることになります。TPPではそれがないので迅速に原産地証明書を得る事ができます。メリットに思えますよね。

FTAでは、原産性が確かなものかを輸入国が輸入時・輸入後に確認できる「検認」が認められています。原産性に関する証拠書類の提出や質疑をして、原産性があることを企業が立証しなければいけません。

先の原産地証明書の発給プロセスで、日本商工会議所が間に入ったEPAでは、検認時には日本商工会議所が輸入国税関と企業の間に立ち、検認の対応を支援していただけます。「自己証明」である日EU EPAは、税関が仲立ちしてくれます。が、TPPはその仲立ちがなく、相手国税関から直接企業に「検認」の問い合わせがいく仕組みになっています。TPPに中国や韓国が入ることで、彼らから日本企業への検認は各国税関から直接企業にいくことなるのです。助太刀のない検認でかつ中国、韓国から。怖いと思うのは私だけでしょうか。「もう少し製造工程を明確にしてもらわないと、原産として認められない」といった製造上の機密情報を要求されかねないという人も居ます。これは考えるべき大きなリスクです。

(TPPのアキレス腱)

ルールを守らないと考えられている中国を経済的に資すると考えられるTPP参加、それを西側として阻止しなければいけないという外交上の日本のスタンスも分からなくもありません。が、TPPの初期交渉当時からかき乱して、そして離脱をしたアメリカの所業も決して褒められたものではなく、実際のTPPの協定文にはアメリカによって(ごり押しと言っていい)内容が数あります。現段階でのTPP締約国は苦々しく思っている内容です。アメリカが戻ってくることを期待して、そのままとしています。

アメリカが戻ってこないなら、締約国は修正したいところでしょう。自動車関連や特に繊維などはアメリカのごり押しの内容です。直したいというのも当然ですし、理想をいえば直すべきだと思います。が、協定内容を変えることを認めれば、ついでに様々なことが書き換えられる恐れがあります。それが中国の参加の際に書き換えられるとなればどうなるか。中国の参加を歓迎するアジアの締約国がマレーシアやシンガポールなど少なからずあるため、非現実的ではないのです。

(英国の参加申請が当面の試金石)

先に、英国がTPP加盟申請を行っているので、英国に対して、協定内容を変えずに協議するか、厳しい参加基準をどう遵守させるかが当面締約国による真偽の中で見守りたい点です。協定を変えることがなければ、中国や申請をした場合の韓国にも同様の措置がとられるでしょう。そうなればTPPの理念は守られます。

それと同時にかき乱してきたアメリカがTPPに参加するなら修正が必要といっており、かつ、TPP参加が現段階でのアメリカの優先順位ではないため、アメリカの動きも見ておく必要があります。

(中国の真意)

中国は本当にTPPに参加したいと思っているのでしょうか。RCEPという巨大メガFTAも完成目前で、「自由貿易」という意味では中国は成功しています。一方、TPPのルールを曲げない限り、中国は参加要件を満たさないのは明らかで、中国が参加要件を満たす施策を行うメリットはありません。また、TPPは「環太平洋」と謳っていますが、FTAは本来隣接する地域で有効なもので、実際には日本企業がTPPを使うのはEPAのないカナダやニュージーランドくらいで、それほどアクティブな利用はされていません。

そういうことを考えれば、台湾をTPPに参加できなくさせるのが中国の本意ではないかと思います。中国にとって台湾は自国の一部としての認識なので、台湾を独立した形で世界的にメジャーなFTAに参加させないことが肝心なのでしょう。

ほんとか嘘か分かりませんが、台湾がTPP参加申請を出すという情報を中国が知り、先に申請することで台湾の出鼻を挫いたと言われていますね。

今後の動きを見守っていきたいと思います。情報がありましたらまたこのブログに投稿します。