米下院によるカナダ関税終了決議案可決:北米サプライチェーンへの影響と実務的展望

2026年2月14日

2026年2月11日、ワシントンD.C.において北米の貿易環境を左右する重要な政治的決断が下されました。米国下院は、トランプ大統領がカナダに対して課している追加関税を終了させるための共同決議案を、賛成219、反対211の僅差で可決しました。

この決議案は、ニューヨーク州選出の民主党議員であるグレゴリー・ミークス氏によって提出されたものです。この採決結果は、単なる政党間の対立を超えて、米国の通商政策における深刻な不確実性と、今後の北米サプライチェーンにおけるリスク管理の難しさを浮き彫りにしています。本稿では、ビジネスの視点からこのニュースの深層を解説します。


議会が示した拒絶。219対211の僅差が物語る共和党内の亀裂

今回の下院決議で最も注目すべき点は、党議拘束に近い状況にありながら、6人の共和党議員が造反して民主党の決議案に賛成したことです。

通常、トランプ政権の政策は共和党内で強固な支持を得る傾向にありますが、カナダという最も緊密な貿易相手国に対する高関税は、米国国内の製造業や農業、消費財セクターに多大なコスト増を強いています。造反した議員の選挙区の多くは、カナダとの経済的結びつきが強く、関税による副作用が無視できないレベルに達していることを示唆しています。

この結果は、ホワイトハウス主導の強硬な保護主義に対して、立法府の一部が明確なブレーキをかけようとしている象徴的な出来事といえます。


ビジネス界への波紋。USMCA体制とサプライチェーンの不透明感

カナダからの輸入品に課される関税は、自動車部品、エネルギー、アルミニウム、鉄鋼など、米国製造業の根幹を支える資材を直撃しています。今回の下院決議が可決された背景には、産業界からの強い不満とロビー活動があったことは間違いありません。

コスト構造の激変と投資判断の停滞

企業にとって、関税は単なるコスト増ではありません。数ヶ月ごとに通商ルールが変わる可能性があるという不確実性こそが最大の懸念事項です。北米自由貿易協定の後継であるUSMCAの精神に反する形での関税発動は、メキシコやカナダを拠点とするサプライチェーンの信頼性を揺るがしています。今回の決議可決により、一時的な関税撤廃への期待が高まる一方で、政治的対立による混乱が長期化するリスクも再認識されました。


拒否権の壁と今後のシナリオ。実務担当者が注視すべきポイント

下院で可決されたこの決議案ですが、法として成立し、実際に関税が終了するまでの道のりは依然として険しいものがあります。

1. 上院での審議と大統領の拒否権

決議案は次に上院へと送られます。上院で可決されたとしても、トランプ大統領が拒否権を行使することはほぼ確実と見られています。大統領の拒否権を無効化するためには、上下両院で3分の2以上の圧倒的多数の賛成が必要ですが、現状の採決数を見る限り、そのハードルは極めて高いと言わざるを得ません。

2. 政治的なメッセージとしての意味合い

法的な強制力が直ちに発生しなくとも、今回の可決は「象徴的な意味」を強く持っています。2026年に行われるUSMCAの見直し(ジョイント・レビュー)に向けて、議会内にも関税反対の勢力が一定数存在することを示すことで、カナダ側は交渉における強力なカードを手にしました。


結論。ビジネスリーダーが取るべき対応

このニュースを受けて、貿易や物流の担当者は以下の点に留意する必要があります。

まず、カナダ関税が即座に撤廃されることを前提とした予算編成は控えるべきです。依然としてホワイトハウスの権限は強く、関税が継続される可能性が高いのが現実です。

一方で、米国議会内の動きは、将来的な政策修正の予兆でもあります。サプライヤーとの契約において、関税コストの負担割合を柔軟に変更できる条項を盛り込むことや、他地域からの代替調達の検討など、政治リスクを前提とした二段構えの戦略が求められます。ワシントンの政治動向が、企業の損益計算書にこれほど直結する時期はありません。


免責

本稿は一般的な情報提供を目的としたもので、個別案件の法的助言ではありません。実際の申告・契約・規制適合は、対象国の法令と最新の当局公表、必要に応じて専門家見解に基づき判断してください。

米議会が突きつけた「NO」。トランプ大統領のカナダ関税に対する下院決議可決の衝撃と行方

2026年2月13日 | 北米政治・通商政策

2026年2月11日水曜日、ワシントンD.C.でひとつの歴史的な採決が行われました。

米国下院は、トランプ大統領が国家非常事態権限を行使して発動したカナダに対する追加関税を「終了」させるための共同決議案を、賛成219、反対211の僅差で可決しました。

このニュースは、単なる議会手続きの一幕ではありません。ホワイトハウス主導の強硬な保護主義に対し、立法府が明確な拒絶の意思を示した分水嶺となる出来事です。本稿では、この決議が持つ政治的な意味と、北米ビジネスに及ぼす現実的な影響について解説します。

わずか「8票差」の攻防。共和党からの造反が意味するもの

今回の決議案(H.J. Res)は、下院外交委員会の重鎮である民主党のグレゴリー・ミークス議員(ニューヨーク州選出)によって提出されました。

注目すべきは、その採決結果です。

最終的な票数は賛成219票、反対211票

下院の過半数を握る共和党指導部は、トランプ大統領の政策を支持し、決議案への反対を呼びかけていました。しかし、6名の共和党議員が党議拘束を破り、民主党議員全員と共に「賛成」票を投じました。

この6名の造反は、トランプ政権の岩盤支持層と思われていた共和党内においてさえ、同盟国であるカナダへの無差別な関税攻撃に対する懸念や、地元経済への報復関税リスクに対する危機感が高まっていることを示唆しています。

今後のプロセス。上院の壁と「拒否権」の現実

下院を通過したこの決議案は、次に上院へと送られます。しかし、ここからが本当の戦いです。

1. 上院での審議

上院でも民主党は結束して賛成に回ると見られますが、過半数を確保するためには、下院以上に多くの共和党上院議員の協力が必要です。現在、一部の穏健派共和党議員は関税に批判的ですが、可決に必要な数を確保できるかは予断を許しません。

2. 大統領拒否権の発動

仮に上院でも可決された場合、決議案は大統領デスクへ送られます。CBS Newsなどの報道分析によれば、トランプ大統領はこの決議に対して拒否権(Veto)を行使することが確実視されています。

3. 拒否権を覆せるか

大統領の拒否権を覆し、決議を法として成立させるためには、上下両院でそれぞれ3分の2以上の賛成が必要です。今回の下院採決が「219対211」という僅差であったことを考慮すると、拒否権を覆すための「圧倒的多数」を確保することは極めて困難です。

ビジネスへの影響。関税は「継続」するが、政治リスクは変質した

この決議可決を受けて、企業の貿易担当者はどのように動くべきでしょうか。

関税は即時には止まらない 冷静に認識すべき事実は、この下院決議だけでは法的拘束力が発生しないということです。現時点でカナダ国境における関税徴収は続いており、明日の実務が変わるわけではありません。

USMCA見直しの交渉カード しかし、この決議はカナダ政府にとって強力な交渉カードとなります。「米国内にも関税反対の声が過半数ある」という事実は、現在進行中のUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の見直し協議において、カナダ側の立場を補強します。

不確実性の長期化 議会と大統領の対立が鮮明になったことで、通商政策の先行きはより不透明になりました。企業は、関税が「大統領令で突然決まり、議会との対立で長引く」という不安定な環境が、2026年中は続くと想定しておく必要があります。

まとめ

2月11日の下院決議は、関税撤廃に向けた決定打ではありませんが、ワシントンの空気が変わりつつあることを告げる警鐘です。

6人の共和党議員が投じた一票は、経済合理性を無視した関税政策には身内からもNOが突きつけられるという、政権への痛烈なメッセージとなりました。ビジネスリーダーは、この政治的な亀裂が今後の政策変更にどうつながるか、上院の動向を注視し続ける必要があります。

免責

本稿は一般的な情報提供を目的としたもので、個別案件の法的助言ではありません。実際の申告・契約・規制適合は、対象国の法令と最新の当局公表、必要に応じて専門家見解に基づき判断してください。

英国・カナダ貿易交渉の暗礁。暫定協定の期限切れが招く関税復活のシナリオ


2026年2月、英国とカナダの間で続けられていた自由貿易協定(FTA)の交渉が、重大な局面を迎えています。

ブレグジット(英国のEU離脱)後に急遽結ばれた現在の「日英通商継続協定(TCA)」に含まれる特定条項の期限切れが迫る中、新たな包括的FTAに向けた交渉が難航し、事実上の決裂リスクが高まっているとの報道がなされました。

もし合意に至らず、現在の暫定的な優遇措置が失効すれば、自動車や農産品に高率の関税が復活する「貿易の崖」が出現します。本記事では、FTAの専門家の視点から、なぜ両国の溝が埋まらないのか、そして日本企業を含むグローバルサプライチェーンにどのような影響が及ぶのかを解説します。

チーズと牛肉の戦争。埋まらない大西洋の溝

今回の交渉難航の最大の原因は、伝統的な貿易摩擦の火種である農業分野です。具体的には、英国のチーズとカナダの牛肉という、互いの譲れない国益が正面衝突しています。

英国側は、カナダ市場に対してチーズの輸出拡大を求めています。しかし、カナダには供給管理制度という強力な国内酪農保護の仕組みがあり、外国産乳製品の輸入を厳しく制限しています。英国にとって、この市場開放はFTAの主要な成果として譲れないポイントです。

一方のカナダ側は、英国市場への牛肉および豚肉のアクセス拡大を求めています。ここで問題となるのが、肥育ホルモンの使用です。カナダでは一般的に使用されるホルモン剤を、英国は食品安全の観点から禁止しています。英国は「ホルモン牛肉は輸入させない」という姿勢を崩しておらず、カナダ側はこれを「科学的根拠のない非関税障壁」だと強く反発しています。

この「チーズ対牛肉」の対立構造が解消されない限り、包括的な合意は極めて困難な状況です。

自動車産業を直撃する原産地規則の期限切れ

農業以上に産業界が恐れているのが、自動車に関する原産地規則の特例措置の失効です。

現在の暫定協定では、英国製の自動車がカナダへ輸出される際、EU(欧州連合)産の部品を使用しても、それを「英国産(原産材料)」とみなしてよいという累積規定の特例が認められています。

しかし、この特例には期限があります。もし交渉が決裂し、この期限が延長されなければ、EU産部品を多く使う英国車は「英国産」としての原産資格を満たせなくなる可能性があります。その結果、カナダへの輸入時に関税ゼロの恩恵を受けられず、6.1パーセント等の通常関税(MFN税率)が課されることになります。

これは英国に生産拠点を持ち、北米へ輸出している自動車メーカーにとって、競争力を根底から覆すコスト増となります。

ビジネスマンが想定すべき最悪のシナリオ

交渉が合意に至らず、暫定協定の一部失効、あるいは協定そのものの停止という事態になった場合、ビジネスには以下のような直接的な影響が出ます。

WTO税率への逆戻り

特恵関税(FTA税率)が適用できなくなれば、両国間の貿易は世界貿易機関(WTO)のルールに基づく最恵国待遇(MFN)税率に戻ります。自動車だけでなく、機械類、化学品、加工食品など、これまで無税で取引されていた多くの品目で関税コストが発生します。

カナダ・英国経由ビジネスの採算悪化

日本企業の中には、英国法人を通じてカナダへ製品を再輸出している、あるいはその逆の商流を持っているケースがあるかもしれません。これらのルートは、日英FTAや日カナダFTA(CPTPP)とは別の、英カナダ間の協定に依存しています。このパイプラインが詰まることで、物流ルートの再構築が必要になる可能性があります。

企業が今すぐ確認すべきこと

「対岸の火事」と静観している時間はありません。以下の3点を至急確認してください。

商流とHSコードの洗い出し

自社のサプライチェーンの中に、英国からカナダ、あるいはカナダから英国へ移動している物品がないか確認してください。該当する場合、そのHSコードに対するMFN税率(協定がない場合の税率)が何パーセントになるかを試算し、コストインパクトを把握する必要があります。

契約書のインコタームズと免責条項

もし関税が復活した場合、その追加コストを売り手と買い手のどちらが負担するのか。DDP(関税込み持込渡し)条件で契約している場合、輸出者が突然発生した関税を被ることになります。契約条件の見直しや、関税変動時の価格改定条項が含まれているかを確認してください。

代替ルートの検討

最悪の場合、英国を経由せずに、日本から直接カナダへ送る(CPTPPを活用する)、あるいはEU拠点からカナダへ送る(CETAを活用する)といった代替ルートの方が、関税コストを抑えられる可能性があります。物流部門と連携し、シミュレーションを行ってください。

まとめ

英国とカナダのFTA交渉難航は、主要国同士であっても保護主義的な対立によって自由貿易が後退し得るという現実を突きつけています。

「期限ギリギリで政治決着するだろう」という楽観論は禁物です。ビジネスにおいては、関税優遇という梯子が外されるリスクを常に想定し、協定に依存しない、あるいは複数の協定を使い分けられる強靭なサプライチェーンを構築することが求められています。

カナダ・ASEAN FTAが2026年妥結目標北米と東南アジアをつなぐ新しい「幹線ルート」

カナダとASEANが交渉している自由貿易協定(ASEAN・カナダFTA=ACAFTA)は、当初の2025年から1年延長され、2026年の妥結を正式な目標としています。global-scm+1
ASEANにとっては「初の本格的な北米とのFTA」、カナダにとっては「対米依存からの脱却を進めるための戦略協定」という位置づけです。jetro+1

いまどこまで進んでいるのか

  • 交渉は2021年11月にスタートし、2025年9月の第15回会合時点で「19分野・多章立て」の枠組み交渉が進行中です。[jetro.go]​
  • 自然人の移動、中小企業、競争政策、通関・貿易円滑化など、ルール関連の複数章は「妥結済み」と報告されています。[jetro.go]​
  • 一方で「物品・サービス貿易」「投資」の市場アクセス部分は遅れており、これが2025年中の妥結を断念した直接の理由になりました。[jetro.go]​

ASEANとカナダは、2026年まで交渉期限を延長することで合意し、「2026年妥結」が両者の公式なターゲットになっています。[jetro.go]​

なぜカナダはASEANにこだわるのか

  • カナダの輸出は依然として米国向けが圧倒的で、対米依存がリスクと認識されています。[asiapacific]​
  • カナダ政府は「対米以外の輸出を今後10年で倍増させる」ことを掲げ、その柱の一つがASEANとのFTAです。[asiapacific]​
  • ASEANはカナダにとって既に「第4位の商品貿易相手」で、二国間貿易額は400億ドル超まで拡大しています。[asiapacific]​

カーニー首相はASEAN首脳会合の場で、FTA交渉の加速と実施支援のための資金供与(技術協力・キャパシティビルディング)を約束しており、政治的なコミットはかなり強いとみられます。pm+1

協定の焦点となる分野

カナダ・ASEAN双方が「伸ばしたい」と考えている主な分野は、次のように整理できます。

  • デジタル貿易
    ASEANは域内のデジタル経済枠組み整備を優先課題にしており、電子商取引ルール、電子通関、データ関連ルールなどとFTAを連動させる構想があります。[asiapacific]​
  • エネルギー・資源
    LNG、再エネ、重要鉱物などで、カナダ側は投資・輸出拡大の余地が大きい分野と見ています。canada+1
  • 航空宇宙・高度製造業
    カナダの航空宇宙やシミュレーション機器など、高付加価値製造業のASEAN向け輸出増加が期待されています。mbot+1
  • 中小企業・サプライチェーン
    中小企業やローカル企業をサプライチェーンに組み込むための章もすでに交渉妥結済みとされ、包摂的な成長を意識した設計が進んでいます。[jetro.go]​

どこが「難所」になっているのか

妥結が1年延びた背景には、次のような「政治的・経済的にセンシティブな論点」が残っていることがあります。canasean+1

  • 物品関税の削減ペースと最終税率
    農産品・加工食品、工業製品などで、ASEAN側の保護度合いが国によって大きく異なる。
  • サービス・投資の開放度
    金融、通信、物流など、規制産業の開放範囲をどこまで踏み込むか。
  • 規制や基準の調和
    デジタル、環境、労働など「価値・基準」を含む分野で、先進国であるカナダと多様なASEAN諸国との折り合いをどうつけるか。

ただし、ルール分野の章が先行して妥結していることから、「器」の設計はかなり固まりつつあり、残りは「どの程度まで市場を開けるか」という政治判断のフェーズに入りつつあると言えます。[jetro.go]​

日本企業への影響のポイント

日本企業、とくに「ASEAN生産拠点+北米市場」の組み合わせを活用している企業にとって、ASEAN・カナダFTAは中長期的に無視できないテーマになります。iti+2

ポイントを絞ると、次の三つです。

1 ASEAN工場からカナダへ「新しい出口」が開く可能性

  • 自動車・自動車部品、電機・電子、機械、化学品など、ASEANに生産拠点を持つ日系企業は多い。
  • FTA発効後、ASEAN域内で一定以上の付加価値を生み、原産地規則を満たせば、カナダ向けに関税面のメリットが出る可能性があります。[www2.jiia.or]​
  • すでにCPTPPやRCEP、日ASEAN連携協定などがあり、そこに「ASEAN・カナダFTA」という選択肢が加わることで、関税・原産地戦略の組み合わせがさらに複雑かつ柔軟になります。kokushikan.repo.nii+1

つまり「どの工場から、どの協定を使って、どの市場へ出すか」という設計の自由度が増える一方で、社内での管理難度も確実に上がります。

2 カナダ企業との競争と協業が同時に進む

  • カナダ企業は、FTAを利用してASEAN市場で関税面の優位を取りにくる可能性があります。
  • 資源・エネルギー、農産品加工、航空宇宙、防衛・セキュリティ、デジタルサービスなどは、カナダ側に強みがある分野です。pm+1
  • 一方で、日本企業にとっては、カナダ企業と組んで「ASEAN+北米」をカバーする共同プロジェクトやジョイントベンチャーを設計する余地も生まれます。

競争が激しくなる分だけ、「一緒に組むと強い相手」も増えるイメージです。

3 原産地規則とサプライチェーン設計がさらに重要になる

  • すでに多くの日系企業はASEAN域内で「複数のFTAをどう使い分けるか」という課題に直面しています。[kokushikan.repo.nii.ac]​
  • 研究調査では、「FTAの関税メリット自体よりも、原産地規則への対応や事務コストがボトルネックになっている」ケースも指摘されています。jiia+1
  • ASEAN・カナダFTAが加わると、CPTPP・RCEP・日ASEAN・二国間EPAなどと合わせて「どの協定が一番有利か」を品目別・工場別にシミュレーションする必要が出てきます。jetro+1

貿易実務・通関・システム・サプライチェーンの担当者が、連携して設計し直すテーマになる可能性が高いです。

いまから準備しておくと良いこと

具体的な条文や関税スケジュールはまだ確定していないものの、2026年妥結を前提に今からできる準備を挙げると、次のようになります。jetro+1

  • 自社の「ASEAN→カナダ向け潜在輸出品目」をリストアップし、HSコード単位で洗い出す。
  • 現状どの協定(CPTPP、RCEP、既存EPAなど)を使っているか、使えるが使っていないものは何かを棚卸しする。
  • ASEAN拠点の原産地規則対応力(部材調達比率、原産地証明書発行体制、システム対応)を確認し、ボトルネックを把握する。jiia+1
  • カナダ市場の規制やニーズ(特に脱炭素、EV、デジタル、ヘルスケアなど)を、業界別に簡単でもよいので整理しておく。asiatimes+1

条文が出てから慌ててゼロから考えるより、「どこを見ればよいか」「関係しそうな品目は何か」が頭に入っているだけで、対応スピードに差が出ます。


この協定は、カナダにとっては対米依存からの脱却、ASEANにとっては北米アクセスの拡大、日本企業にとっては「ASEAN拠点の出口が増える」可能性を持つ枠組みです。asiapacific+1
全体像を押さえつつ、自社の事業に関係しそうなポイントだけでも早めにメモを作っておくと、その後の判断がかなり楽になります。

カナダで審議中「CPTPP 英国加盟の実施法案」とは何か

2026年1月10日時点、カナダ議会では、英国のCPTPP加盟をカナダ国内法として実装するための法案(Bill C-13)が審議段階にあります。結論から言うと、カナダがこの法案を成立させて批准手続きを完了しない限り、CPTPPはカナダと英国の間では使えません。 (カナダ議会)

本稿では、いま何が起きていて、ビジネス実務に何が影響するのかを、忙しいビジネスパーソン向けに整理します。


1. まず押さえる要点

・カナダでは「Bill C-13」が、英国のCPTPP加盟プロトコルを国内法に反映するための実施法案として審議中
・2026年1月10日時点のステータスは、下院の委員会審査(国際貿易委員会)に付託された段階
・法案が成立し、カナダが批准を完了しない限り、カナダ企業は英国向けにCPTPPの優遇関税や原産地ルールを使えない
・一方で、英国のCPTPP加盟はすでに一部加盟国との間で発効しており、カナダだけが「未接続」の状態になっている
・発効のカギは批准完了後のタイムラグで、基本は当該国の批准完了から60日後に適用開始になる仕組み (カナダ議会)


2. 何が遅れているのか

英国は2023年7月16日にCPTPP加盟の「加入議定書(Accession Protocol)」に署名し、CPTPPは「全員批准」または「一定数批准」で発効する仕組みです。15か月(2024年10月16日)を過ぎると、英国と少なくとも6か国の批准で、批准済みの国との間から先に動き始める設計になっています。 (GOV.UK)

実際に、英国と複数の加盟国との間では2024年12月に発効が進みましたが、カナダでは「カナダ向けの発効」がまだ来ていません。カナダ政府のCPTPP公式情報でも、英国加入議定書は「カナダでは未発効」と明記されています。 (外交課題カナダ)


3. カナダ議会の現在地:Bill C-13

カナダ側の実施法案は Bill C-13(英国加入議定書の実施法)です。

・2025年10月21日:下院に提出(第一読会)
・2025年12月11日:第二読会を終え、下院の国際貿易委員会(CIIT)へ付託
・2026年1月10日時点:委員会段階で審査待ち(委員会の当該案件で会合実績はまだ表示されていない) (カナダ議会)

つまり「これから委員会で条文精査や参考人招致などが進む」フェーズです。


4. Bill C-13 は何を変える法案か

ポイントは2つです。

4-1. 「英国がCPTPPの対象だ」と国内法の参照関係を整える

法案サマリー上、加入議定書を実施するために、各種法律の中でCPTPPの定義や参照の仕方を更新し、議定書を含む形に整合させる狙いが示されています。 (カナダ議会)

4-2. 関税実務の核心:カナダ関税率表に英国向けの新しい優遇枠を作る

実務担当者にとって最重要なのがここです。法案本文では、カナダの関税制度に「Comprehensive and Progressive United Kingdom Tariff(略称 CPUKT)」という英国向けの優遇関税区分を新設し、段階的な引下げ(ステージング)や端数処理、遡及しないことなど、運用ルールまで条文で組み立てています。 (カナダ議会)

条文には例えば次のような設計が見えます。
・CPUKTの最終税率が無税(Free)になる品目は「A」で表現
・段階引下げ品目は「F」や「X78・X79・X80」などのコードで、発効日または毎年1月1日の節目で税率が落ちていく
・ただし、カナダと英国の間でCPTPPが発効する前の期間には効かない(遡及なし)ことを明記 (カナダ議会)

ここは、施行後に通関・原価管理・販売価格に直結します。関税優遇を使う企業ほど、法案成立後の制度切替に備える価値が大きい部分です。


5. いつから使えるのか:発効までの流れ

ビジネス視点では「法案成立日」よりも、「カナダが批准を完了し、発効日が確定する日」が重要です。

一般に、英国加入議定書は、当該国が批准を終えると、その国との関係で60日後に適用が始まる仕組みだと説明されています。 (GOV.UK)

したがって、社内で見るべき時系列は次の通りです。

  1. Bill C-13 が議会で成立
  2. カナダ政府が批准手続きを完了
  3. 発効日が確定(目安は批准完了から60日後)
  4. 通関では、原産地証明と申告を揃えた企業から順に恩恵が出る

6. 日本企業にとっての実務インパクト

日本のビジネスパーソンに関係が深い論点を、現場目線でまとめます。

6-1. カナダと英国間の「優遇関税の取り方」が変わる

カナダ側でCPUKTが導入されると、通関現場では「英国向けのCPTPP優遇」を前提にした品目判定、税率参照、ステージング管理が必要になります。 (カナダ議会)
日本企業でも、カナダ拠点から英国へ輸出する場合や、英国製品をカナダに輸入して販売する場合に、価格戦略へ影響します。

6-2. 原産地ルールとサプライチェーン設計

CPTPPはルールが比較的詳細で、特に「原産地の取り方」が社内統制の対象になります。
カナダと英国の間でCPTPPが使えるようになると、原産地判定・証憑(サプライヤー申告、製造工程、材料証明など)の整備をCPTPP仕様に寄せる必要が出ます。
この部分は、関税メリットが大きいほど監査対応も含めて重要になります。

6-3. 競争環境

英国とカナダの間でCPTPPが動き出すと、関税条件が変わるため、同一商品でも競合の価格条件が変わり得ます。特に「段階引下げ」の品目は、年明けなど節目で条件が動く可能性があります。 (カナダ議会)


7. 企業が今やるべきチェックリスト

制度が動く前に、社内で先回りしておくと楽になります。

  1. 対象取引の棚卸し
    ・カナダと英国の売買があるか
    ・英国経由やカナダ経由のサプライチェーンがあるか
  2. 関税と原産地の準備
    ・対象HSの関税優遇が段階引下げか、即時無税か
    ・原産地判定に必要な証憑を、CPTPP基準で揃えられるか(サプライヤーから取れるか)
  3. 通関オペレーションの整備
    ・申告時の優遇税率区分(CPUKT)の設定
    ・ERPや関税マスタの更新手順
    ・監査対応の保存年限と保管場所
  4. 進捗モニタリング
    ・法案の委員会審査の進み具合
    ・批准完了と発効日の確定

法案の公式ステータスはLEGI Sinfoで追えます(現状は委員会付託中)。 (カナダ議会)


まとめ

カナダの Bill C-13 は、英国のCPTPP加盟を「カナダでも使える状態」にするための最後の国内手続きに近い位置付けです。審議が進んで成立すれば、カナダと英国の間でCPTPPの優遇関税や原産地ルールが実務に乗ってきます。 (カナダ議会)

ビジネス側は、発効後に慌てないために、対象取引の洗い出しと、原産地証憑と関税マスタの準備を先に進めておくのが現実解です。

カナダ「鋼材派生品」に25%追加関税(2025年12月26日施行)— 何が変わり、実務で何をすべきか

結論から言うと、提示いただいたブログ草稿は、制度の「骨格」と実務イメージはかな​


1. まず結論:今回の「25%」は、下流の完成品・部材に刺さる

カナダ政府は2025年12月26日から、指定された「鋼材派生品(steel derivative products)」に対して、輸入品の通関価額(value for duty)の全額に25%の追加関税(surtax)を課します。しかも原則として、**全ての国・地域からの輸入が対象(from all countries)**です。orders-in-council.canada+1

これにより、これまで「鋼材(ミル製品)そのもの」中心だった関税リスクが、ボルト・ナット、ワイヤー、プレハブ建築、風力タワー、金属家具などの完成品寄りの品目にまで広がります。coleintl+1

重要なのは、「鋼材部分の価額」ではなく「製品全体の通関価額」に対して25%が乗ることです。通関価額には貨物価格に加え、輸送費・保険料等が含まれ得るため、評価の仕方次第で着地コストは想定以上に跳ね上がります。pcb+1


2. 「対象品目」は何か:建設・インフラ×部材×金属製品が中心

対象は、カナダ財務省が公表したリストに記載された関税番号(Tariff Item/HSコード)で指定されており、説明文はあくまで目安、法的な範囲はカラム1のTariff Itemで決まると明記されています。canada+1

実務的に「刺さりやすい」代表カテゴリを、ビジネス影響がイメージしやすい形に並べると、概ね次のようなイメージです(※例示。最終判断は必ず公式リストで照合)。

  • 構造物・建設系(HS 7308、9406 など)
    例:橋梁部材、塔、鉄骨構造、風力タワー、プレハブ建築coleintl+1
  • ワイヤー・ロープ・金網・チェーン類(HS 7312、7314、7315 など)
    例:ワイヤーロープ、金網、チェーンcanada+1
  • ファスナー(HS 7317、7318 など)
    例:釘、ねじ、ボルト、ナット、ワッシャーcoleintl+1
  • ばね・鋳物・その他金属製品(HS 7320、7325、7326 など)canada+1
  • 金属フレームの椅子・金属家具・照明部材(HS 9401、9403、9405 など)coleintl+1

さらに注意すべきは、「鋼材派生品」という名称からは連想しにくい完成品・半製品も含まれている点です。たとえばドア・窓、家具、照明器具用部材など、一般に「鉄鋼製品」としては認識されにくい品目も対象に含まれるため、「うちは鉄鋼メーカーではないから関係ない」という決めつけは危険です。canada+1


3. 例外(除外)を押さえる:7つの“逃げ道”と、見落としポイント

カナダ財務省のバックグラウンダーおよび Steel Derivative Goods Surtax Order では、25%のsurtaxが適用されないケースが明確に列挙されています。実務上はここが大きな分かれ目です。osler+2

主な「適用除外」は、次のとおり整理できます(要約)。

  • 既存のsurtaxの対象になっている貨物
    例:対中国のsurtax、対米国の鉄鋼・アルミ関連surtax、鉄鋼TRQ関連のsurtax等の対象貨物は、本25%の重複適用(スタック)の対象外。canada+1
  • カジュアル貨物(旅行者の携帯品等)canada
  • Chapter 98 に分類される特定用途・特例扱い貨物(他に対象Tariff ItemがあってもChapter 98分類であれば除外)canada
  • 2026年7月1日より前に輸入され、自動車(車体/シャシ/部品・付属品)製造用途に使用する貨物osler+1
  • 2026年7月1日より前に輸入され、航空機・地上飛行訓練機・宇宙機(およびそれらの部品)用途に使用する貨物osler+1
  • Tariff item 7308.20.00 の特定の風力タワーで、オンタリオ–マニトバ州境より西側のエネルギープロジェクト向けに設置するものosler+1
  • 施行日に「カナダへ輸送中(in transit)」の貨物tid+1

加えて、国内調達が困難など例外的事情がある場合のremission(減免)申請は、ケースバイケースで検討するとされています。制度の存在自体が重要であり、対象となり得る企業は早めに「国内調達困難性」「経済への影響」等を説明できる資料を準備しておく余地があります。chrobinson+1


4. なぜカナダはここまで踏み込むのか:米国市場の閉鎖と国内市場への振り向け

今回の25%は単発の関税ではなく、カナダ政府が進める鉄鋼政策パッケージの一部です。背景には、米国による高関税・輸入制限の強化を受けて、カナダ市場への貿易迂回を防ぎ、自国の鉄鋼産業向け需要を確保する狙いがあります。youtube​pm+1

大きく見ると、政策のポイントは次の2点に整理できます。

  • 鉄鋼(ミル製品)側では、関税割当(TRQ)を縮小し、割当超過分に最大50%のsurtaxを課す枠組みを強化wtocenter+2
  • それだけでは下流(派生品)で「輸入完成品への置き換え」が進むため、派生品にも25%のグローバルsurtaxを広げるpm+1

首相府の説明によれば、派生品関税は「カナダ国内で生産されている派生品」を起点に設計されており、対象リストは市場環境に応じて更新し得るうえ、初期リストだけでも数十億カナダドル規模の輸入に影響すると見込まれています。これは「一度決まって終わり」の制度ではなく、運用次第で対象が拡張され得る枠組みと理解した方が安全です。newswire+2

また、国境当局(CBSA)による順守(コンプライアンス)強化も同時に打ち出されており、誤ったHS分類や虚偽申告をより厳格に是正する姿勢が示されています。これは、実務的には事後調査リスクの上昇として意識する必要があります。canada+1


5. 企業へのインパクト:利益を削るのは「25%」そのものより“連鎖”

インパクト①:着地コストが一気に25%上がる(しかも全額ベース)
「通関価額の全額×25%」は、見積・契約の設計が甘いとダイレクトに粗利を削ります。特に、DDP(関税込み持込)や実務的に売り手側が関税負担を被りやすいスキームでは、利益を一気に圧迫しかねません。pcb+2

インパクト②:価格交渉が“今すぐ”起きる
施行日が明確なため、カナダ側バイヤーは、高い確率で次のようなアクションを検討します。

  • 価格改定(値上げ受け入れ/値下げ要請の再交渉)
  • 供給条件変更(関税負担者・価格調整条項の見直し)
  • 代替サプライヤー探索(カナダ国内化、FTA域内化、別素材・別仕様へのシフト)chrobinson+2

インパクト③:「適用除外・減免の証憑」が競争力になる
今回の制度は、自動車・航空宇宙用途、in transit、風力タワーの地域限定など、除外条件が比較的具体的に定義されています。条件を満たせる企業にとっては、用途証明や輸送証憑をきちんと揃えることで、25%負担を回避しコスト競争力を維持できる可能性があります。osler+1


6. 明日から使える:ビジネス向け“実務チェックリスト”10

実務対応として、輸出者・輸入者・商社がすぐに着手できる基本ステップを10項目に整理します。

  1. 自社品目をHS10桁レベルまで棚卸しする(カナダ輸入時の分類ベースで整理)。canada
  2. 財務省公表の公式リスト(Tariff Item)と突合し、対象・非対象を一次判定する。orders-in-council.canada+1
  3. 対象の場合、「既存の中国向け・米国向け・鉄鋼TRQ関連など他のsurtaxの対象になっていないか」を確認し、本25%との重複がないか整理する。canada+1
  4. 自動車・航空機・宇宙用途等の用途要件で除外を狙える場合、カナダ側での用途証明フロー(契約記載、エンドユーザー証明、製造工程の裏付け等)を設計する。osler+1
  5. in transit 除外を活用する貨物は、B/Lや船積書類で「施行日時点で輸送中」であることを示せるか事前に点検する。tid+1
  6. 見積りは「製品価格」ではなく通関価額ベースで再試算し、輸送費・保険料等も含めた負担増を洗い出す。pcb+1
  7. 契約書に**関税変動条項(tariff pass-through/price adjustment)**があるか確認し、なければ条項追加を検討する。
  8. Incotermsを再点検し、誰が関税を負担するのか(DDP/DAP/FCA等)を契約書面上も明確にしておく。
  9. 国内調達が困難な場合や特別な事情がある場合、remission申請の可能性を検討し、「代替調達の難しさ」「経済・雇用への影響」等の主張骨子を準備する。chrobinson+1
  10. 対象リストが更新され得ることを前提に、財務省・首相府・CBSAの公表情報を定期モニタリングする運用を社内ルールに組み込む。pm+2

7. 今後の注目点:この制度は“拡張”があり得る

  • 対象リストは「カナダ国内で生産されている派生品」を起点に設計され、今後の市場環境に応じて更新され得るとされています。pm+1
  • 鉄鋼(ミル製品)側ではTRQが動いており、輸入戦略を考える際は「ミル製品のTRQ+TRQ超過50%surtax」と「派生品25%surtax」を一体として見る必要があります。blakes+2
  • カナダは米国の関税政策に強く影響を受ける構造にあり、今後の米加通商交渉の展開次第で、remissionやその他周辺制度の運用が変わる可能性があります。pfcollins+2

まとめ:本質は「カナダ向け完成品の関税リスクが制度化された」こと

今回の本質は、25%という数字そのもの以上に、対象が「鋼材(ミル製品)」ではなく、ボルト・ワイヤ、構造物、プレハブ建築、金属家具といった**派生品(完成品・部材)**へ広がった点にあります。coleintl+2

経営としては「関税が上がった」という一事象ではなく、見積・契約・通関・証憑・調達の一連の業務設計そのものを、「カナダ向けは25%surtax前提の市場になった」と捉え直すイベントと位置付けるのが安全です。canada+1

免責:本稿は公開情報に基づく一般情報であり、個別案件の該当性(HS分類、用途要件、申告・証憑要件、減免可否など)は、必ずカナダ側の通関実務(CBSA運用)および専門家の助言により確認してください。chrobinson+1

  1. https://www.canada.ca/en/department-finance/news/2025/12/list-of-steel-derivative-products-subject-to-25-per-cent-tariffs-effective-december-26-2025.html
  2. https://www.canada.ca/en/department-finance/news/2025/12/government-implements-new-measures-to-protect-canadas-steel-industry.html
  3. https://orders-in-council.canada.ca/attachment.php?attach=47872&lang=en
  4. https://www.chrobinson.com/en-sg/resources/insights-and-advisories/client-advisories/2025q4/12-17-2025-client-advisory-government-canada-announces-tariffs-steel-derivative-product/
  5. https://www.tid.gov.hk/en/tradecircular/2025/ci10702025.html?categoryId=18
  6. https://blog.coleintl.com/tradenews/canada-publishes-list-of-steel-derivative-products-subject-to-25-percent-tariff
  7. https://www.osler.com/en/insights/updates/canada-further-shuts-its-market-to-steel-imports/
  8. https://www.blakes.com/insights/us-canada-tariffs-timeline-of-key-dates-and-documents/
  9. https://web.wtocenter.org.tw/downFiles/13151/419197/00ymjxNd5CXtX0J111118sEykfiCSaW6jraE0HqG0RuAlS11111JdeYIGQgvq1u6d1TKXirDdCilIUGC7cO8Z1jBnf2994hw==
  10. https://www.newswire.ca/news-releases/prime-minister-carney-announces-new-measures-to-protect-and-transform-canada-s-steel-and-lumber-industries-814911145.html
  11. https://www.pwc.com/ca/en/services/tax/publications/tax-insights/canada-tariff-rate-quotas-surtaxes-imports-2025.html
  12. https://www.pm.gc.ca/en/news/news-releases/2025/11/26/prime-minister-carney-announces-new-measures-protect-and-transform
  13. https://www.youtube.com/watch?v=TV6Strj0m88
  14. https://www.pcb.ca/news/ca-release-list-of-steel-derivative-products-subject-to-tariffs-on-dec-26th
  15. https://pfcollins.com/new-25-tariff-assessment-on-steel/
  16. https://www.chrobinson.com/en-us/resources/insights-and-advisories/client-advisories/2025q4/12-17-2025-client-advisory-government-canada-announces-tariffs-steel-derivative-product/
  17. https://info.expeditors.com/newsflash/canada-to-impose-25-tariff-on-steel-derivative-products
  18. https://www.youtube.com/watch?v=9lwd4bmQy5Q
  19. https://assets.kpmg.com/content/dam/kpmg/ca/pdf/tnf/2025/12/ca-importers-temporary-remissions-set-to-end-in-2026.pdf
  20. https://www.willsonintl.com/archives/news/prime-minister-carney-announces-new-measures-to-protect-and-strengthen-canadas-steel-industry

カナダ「鋼材派生品」へ一律25%追加関税が発効──“素材”から“完成品・部材”へ広がる新リスク(2025/12/26施行)


2025年12月26日、カナダは鋼材そのものではなく、鋼材を多用する「鋼材派生品(Steel Derivative Goods)」の一部について、輸入時に一律25%の追加関税(surtax)を課し始めました。 対象は米国や中国など特定国に限られず「全ての国」からの輸入であり、建設・エネルギー案件(風力タワー、橋梁、プレハブ建築ユニット等)のほか、工業用途で広く用いられるワイヤー/チェーン/ファスナー(ねじ・ボルト等)、さらには金属フレーム椅子・金属家具・建物用金物にまで及びます(一部の風力タワーは地域限定の除外あり)。


要点サマリー(実務でまず押さえる4点)

国名税率・内容出所備考
カナダ25%(追加関税 / surtax)Steel Derivative Goods Surtax Order政令スケジュールに列挙された「鋼材派生品」が対象
カナダ25%(課税ベースは通関価額全額)Steel Derivative Goods Surtax OrderCustoms Act 47〜55条に基づく value for duty に対し 25%を課税
カナダ2025年12月26日施行Steel Derivative Goods Surtax Order施行日当日に「輸送中(in transit)」の貨物は適用除外
カナダ例外・猶予あり(自動車・航空宇宙などは 2026/7/1 まで一部除外)Finance Canada 公表リスト既存サーチャージ対象品は原則「二重課税」しない設計

1) 何が変わったのか:今回の追加関税の「設計」

今回の措置は、閣議決定(Order in Council)に基づく Steel Derivative Goods Surtax Order であり、スケジュール(品目リスト)に該当する輸入品に対し、通関価額(value for duty)に対して一律 25% の surtax を課すものです。 ここでいう value for duty は、Customs Act 47〜55条に基づく価額決定ルールに従って算出される通関価額であり、追加関税はその全額を課税ベースとします。

ここで重要なのは次の2点です。

  • 「鋼材含有量」ではなく、製品の通関価額 全額 に 25%を乗せる設計
    → 価格インパクトを過小評価しやすく、DPU/DDP 等の契約条件や見積りを再点検する必要があります。
  • Chapter 99(カナダの特別措置用コード)に付け替えても回避できない構造
    → Chapter 99 のタリフ・アイテムで申告した場合でも、もとの分類がスケジュール掲載のタリフ・アイテムに該当すれば surtax 対象とされます。

2) 対象はどこまで広い?──“完成品・部材”に刺さる品目群

対象は、Finance Canada が公表した「タリフ・アイテム(HS)」指定により決まり、説明文はあくまで参考情報であり、最終的な範囲はタリフ・アイテム自体によって確定します。 代表的な品目を、ビジネスインパクトが出やすい順に整理すると次の通りです。

(A) 建設・インフラ・エネルギー(案件単位で金額が大きい)

  • 構造物・部材(橋梁、塔、ドア/窓枠等):7308.10/20/30/90
  • プレハブ建築(鋼製モジュール含む):9406.20 ほか

(B) “地味に効く”製造業の定番(コスト転嫁が難しい)

  • ストランドワイヤー/ロープ/ケーブル:7312
  • 有刺鉄線・フェンス類、金網・ネット:7313、7314
  • チェーン類:7315
  • くぎ・ねじ・ボルト・ナット・ワッシャー:7317、7318

(C) 家具・建材・部品(完成品側に波及)

  • 金属フレームの椅子:9401.71/79
  • オフィス用金属家具、家具部品:9403.10、9403.99
  • 建物用金物(取付金具等):8302.41.90

注意点として、リストには「プラスチック製建具(3925.20)」のように、一見すると鉄鋼製品に見えない分類も含まれているため、先入観で除外せず、HS ベースで網羅的に洗い出すことが重要です。


3) 例外・猶予(ここを外すと“余計に払う”)

公表されている主な適用除外・猶予は次の通りであり、実務上は用途・期間を裏づける証憑をどこまで整備できるかがカギになります。

  • 既に他のサーチャージ対象の品(例:China Surtax Order 2024、United States Surtax Order (Steel and Aluminum 2025) 等)
    → 原則として「二重課税しない」設計。
  • Chapter 98(特別分類)は対象外
    → Chapter 98 のタリフ・アイテムに分類される貨物は、他のタリフ・アイテムに該当していても surtax を課さない。
  • 自動車(車両・シャシ・部品/付属品)向け用途:2026年7月1日以前の輸入は除外
  • 航空機・宇宙(航空機・地上飛行訓練機・宇宙機等)向け用途:2026年7月1日以前の輸入は除外
  • 特定の風力タワー(7308.20.00):オンタリオ–マニトバ境界以西のエネルギー案件向けは除外
  • 施行日(2025/12/26)時点で「輸送中(in transit)」の貨物は除外

さらに、国内での調達が困難な場合など、例外的事情によりカナダ経済への深刻な悪影響が見込まれるケースでは、関税免除(remission)申請を個別に審査するとされています。 完全な「ゼロ回答」ではなく、救済の可能性を残す制度設計といえます。


4) なぜ今「派生品」なのか:背景は“迂回流入”と内需防衛

カナダ政府は、米国による鉄鋼・アルミ関税や中国などへのサーチャージの影響で、鋼材が第三国・派生品ルートを通じてカナダ市場に流入するリスクを強く意識しており、国内産業保護とグリーン投資推進を目的とした新パッケージの一環として鋼材派生品への 25% 関税を導入しました。 その中には、輸入管理の強化、TRQ 見直し、国境でのコンプライアンス強化など複数の措置が含まれています。

当局側の問題意識として、「鋼材そのもの」への規制だけでは、完成品・部材に形を変えた輸入を十分に抑えられない点が強調されています。 そのため、今回のリストは、構造物・ファスナー・ワイヤー・家具・プレハブ等のいわゆる「下流製品」をピンポイントで対象にした設計になっています。


5) 日本企業(輸出・現法)へのインパクト:どこが痛いか

影響①:見積りが“25%上振れ”しやすい(しかも全額課税)

カナダ向けにねじ・ボルト・金属フレーム椅子・プレハブユニット等を輸出している場合、輸入者側コストを通じて 25% の追加負担がストレートに効いてきます。 契約条件が DDP など輸入関税を輸出側が負担するスキームの場合、日本側が追加コストを吸収せざるを得ないケースも想定されます。

影響②:建設・再エネ案件で「コスト+納期」両面の変動

風力発電や大型インフラ案件のように、対象 HS の部材単価・数量が大きいプロジェクトでは、総コストへの影響が顕著になります。 一方で、特定地域向け風力タワー等の例外もあるため、案件所在地・用途・設置条件を証明できるかどうかが、プロジェクト単位での差別化要素になります。

影響③:取締り強化で「分類・原産地・用途」が監査点に

政府は、カナダ国境サービス庁(CBSA)に専任のコンプライアンス体制を設け、虚偽申告の検知・是正を強化する方針を打ち出しています。 これまでグレーな運用でしのいでいた企業ほど、事後の更正(B2 更正)や追徴課税リスクが高まることが想定されます。


6) すぐやる実務チェックリスト(現場が動きやすい順)

  • 品目の当たりを付ける(HS/タリフ・アイテム照合)
    → 7308/7312/7317/7318/9406 あたりが出てきたら「要注意」としてスケジュールと突き合わせる。
  • 例外該当性(用途・期限・輸送中)を棚卸し
    → 自動車・航空宇宙用途は「2026/7/1 以前の輸入」が条件であり、発注書・製造指図書・用途宣誓書・BOM 等で裏づけが必要。
  • 通関価額(value for duty)を再点検
    → 25%は「価額全体」に乗るため、移転価格ポリシーやロイヤルティなど加算要素の取り扱いの違いが関税負担に直結します。
  • 契約(インコタームズ)・価格条項を確認
    → Duty 負担者・価格改定条項・関税変動条項がない取引は、短期的にトラブルに発展しやすい。
  • 代替調達・仕様変更(ねじ/ワイヤー/家具/プレハブ)を検討
    → 「カナダ国内製」への置き換えを促すインセンティブ設計である点を踏まえ、競合が動き出す前にサプライチェーン再編を検討。
  • 顧客(カナダ輸入者)と「誰が申告・誰が立証」するか決める
    → 例外適用は、最終的に証憑を整理・提出できる当事者が有利になるため、責任分担をあらかじめ明確化。
  • リスト更新のモニタリング運用を作る
    → 政府はリスト更新の可能性を示唆しており、更新頻度が上がるほど属人的チェックでは限界があるため、定期的なモニタリング体制を仕組み化する必要があります。

7) まとめ:今回の本質は「カナダ向け完成品の関税リスクが一段上がった」こと

2025年12月26日以降、カナダは鋼材「派生品」に対し、一律 25% の追加関税を全世界からの輸入品に適用します。 課税ベースは通関価額の全額であるため、見積り・契約・価格転嫁設計が甘いと、利益が一気に圧迫される構造です。

一方で、自動車・航空宇宙向けの時限除外(〜2026/7/1)や in transit 除外、特定風力タワーの地域限定除外、さらには remission の個別申請など、一定の「逃げ道」も用意されています。 実務上の勝負どころは、これらの例外を的確に読み取り、用途・期間・物流条件を示す証憑をどこまで前倒しで整えるかにあります。

※本稿は公開情報に基づく一般的な情報であり、実際の該当性判断(分類・用途・申告方法等)は、カナダ側の通関実務(CBSA 運用)も踏まえ、現地通関業者・専門家と個別にすり合わせてください。

カナダ「鋼材派生品」に一律25%の追加関税:2025年12月26日施行の実務対応

要旨:
カナダ政府は、従来の鉄鋼素材(ミルプロダクト)への保護措置を下流製品(派生品)へと拡張しました。2025年12月26日より、建設用部材や金属製家具などを含む特定品目に対し、輸入相手国を問わず一律25%の追加関税(Surtax)が課されます。

項目内容
対象国全世界(※他措置との重複適用なし)
税率25%(輸入申告価額 VFDに対し課税)
施行日2025年12月26日
根拠Steel Derivative Goods Surtax Order

1. 規制の全体像:ターゲットは「素材」から「完成品・部材」へ

今回の措置の最大の特徴は、課税対象が鋼材そのものではなく、それを使用した「鋼材派生品(Steel Derivative Goods)」である点です。

カナダ政府は、建設用構造物、線材、ボルト・ナット、金属家具などを対象とする「特定リスト(HSコード指定)」を公表しました。これにより、サプライチェーンの下流工程にある完成品や部材が広く課税対象となります。

実務上の重要スケジュール

  • 2025/12/12:財務省が対象品目リスト(HSコード)および詳細を公表
  • 2025/12/26:追加関税(Surtax)の施行開始
  • ~2026/07/01:自動車・航空宇宙用途等に対する期限付き適用除外期間

2. 対象品目:日本企業が注意すべき「見落としがちなHSコード」

財務省が公表したリストは、建設・物流・設備保全で使用される鉄系完成品を広範囲にカバーしています。特に72類・73類(鉄鋼および鉄鋼製品)以外の品目が含まれている点に細心の注意が必要です。

主な対象カテゴリとHSコード例

  • 構造物・建材系
    • 橋梁、塔、ドア・窓枠、構造材(HS 7308)
    • プレハブ建築物(HS 9406)
  • ワイヤー・フェンス・金網
    • ロープ、ケーブル、有刺鉄線、金網(HS 7312~7314)
    • 鋼心アルミより線(HS 7614.10.00)※要注意(76類)
  • 締結部品・チェーン
    • ローラーチェーン等(HS 7315)
    • 釘、ボルト、ナット、ワッシャー(HS 7317~7318)
  • 家具・什器・その他
    • 金属フレームの椅子、オフィス家具、家具部品(HS 9401, 9403)※要注意(94類)
    • 照明器具の部品(HS 9405.99.00)
    • 建物用取付具・金具(HS 8302.41.90)
    • ばね(HS 7320)、その他の鉄鋼製品(HS 7326)

実務的示唆:
「鉄鋼製品(73類)だけを確認すればよい」という認識は危険です。83類(卑金属製品)や94類(家具・建屋)まで影響が波及するため、BOM(部品表)全体への網羅的なスクリーニングが不可欠です。


3. 課税ルール:計算式と優先順位

課税標準と計算式
追加関税は、対象品目の輸入申告価額(Value for Duty: VFD)の全額に対して25%が課されます。付加価値分のみへの課税ではないため、コストインパクトは甚大です。

計算式: Value for Duty × 25%

非積み上げ(Non-stackable)原則
本措置は他の貿易救済措置と重複して適用されません(二重課税の回避)。
例えば、既に「中国製鉄鋼へのSurtax」や「米国製アルミ・鉄鋼への報復関税」、「鉄鋼セーフガード(TRQ)超過分」の対象となっている貨物については、そちらの措置が優先され、今回の「派生品25%」は上乗せされません。


4. 適用除外(Exclusions)と救済措置

コスト増を回避するためには、以下の「除外要件」に該当するかどうかの判定と証憑確保が勝負となります。

自動的な適用除外(OIC明記)

  1. 他措置の対象品:前述の通り、他のSurtax等が適用される原産国の物品。
  2. 特例輸入(Chapter 98):カナダ関税率表第98類(旅行者携帯品や特定の戻り荷など)で輸入されるもの。
  3. 個人のカジュアル輸入:商業目的ではない個人輸入。

期限付き・用途限定の除外(~2026/7/1輸入分まで)
以下の特定産業用途に供される場合、一時的に除外されます。

  • 自動車産業:自動車、シャシー、部品・付属品の製造用。
  • 航空宇宙産業:航空機、宇宙船の機体および部品製造用。
  • 特定エネルギー案件:オンタリオ州/マニトバ州境以西向けの特定の風力タワー(7308.20.00)。

輸送中(In Transit)の特例
施行日(2025年12月26日)時点で、既にカナダに向けて輸送中であることが立証できる貨物は対象外となります。

減免(Remission)申請
国内調達が不可能であり、かつ関税賦課がカナダ経済に重大な悪影響を及ぼす場合、個別に減免申請を行う道(Remission process)が用意されています。


5. 日本企業への実務インパクトと対策

(1) コスト・価格転嫁への波及
鉄鋼メーカーだけでなく、機械メーカーや建設事業者への影響が避けられません。調達・営業・法務が連携し、Incoterms(DDP条件などの確認)や契約上の価格改定条項(サーチャージ条項)を見直す必要があります。

(2) HSコード分類精度の重要性
類似製品であっても、HSコードが少し異なるだけで「25%か0%か」が変わります(例:7308の構造物と判断されるか、機械の部分品と判断されるか)。分類の論拠を明確にした資料(Classification Rationale)の準備が推奨されます。

(3) コンプライアンスリスク
カナダ国境サービス庁(CBSA)は、関税回避を目的とした不適切なHSコード申告(品目ずらし)や、原産地・用途の虚偽申告に対する取締りを強化する方針です。


6. 施行直前チェックリスト(Action Items)

  1. [棚卸し] 対象HSコードの網羅的確認
    • 自社製品のSKUを、公表リスト(7308, 7318, 9403等)と照合する。
  2. [物流] 「輸送中(In Transit)」の証拠保全
    • 12/26をまたぐ船積みについて、B/L日付や積載証明など、CBSAが認める「輸送中」の定義に合致する書類を確保する。
  3. [証明] 用途除外のスキーム構築
    • 自動車・航空機用途(2026/7/1まで)の場合、輸入通関時にその用途を証明できるエンドユース・サーティフィケートや発注書の紐づけフローを確立する。
  4. [契約] コスト負担の明確化
    • 既存契約において、新規導入されるSurtaxを誰が負担するか(売主か買主か)を法的に確認し、必要に応じて顧客と交渉する。
  5. [例外] 減免(Remission)の検討
    • 代替調達不可のロジック構築や、業界団体を通じたロビーイングの必要性を検討する。

まとめ

今回の措置は、カナダ向けの輸出において「鉄鋼素材」だけでなく「鉄鋼を使った最終製品」へとリスクの軸足が移ったことを意味します。施行までの残り時間はわずかですが、「HS分類の適正化」「用途例外の活用」「契約条件の再確認」の3点を迅速に進めることが、貴社の利益とコンプライアンスを守る鍵となります。


2025年10月25日発表「対カナダ関税追加10%ポイント引き上げ」

以下は、2025年10月25日(米国時間)にトランプ大統領が発表した「対カナダ関税を追加で10%ポイント引き上げ」の現時点で判明している要点と、既存の関税制度との関係をAIの力を借りてまとめたものです。

発表内容(速報ベース)

10月25日、トランプ大統領がカナダへの関税を「現在の税率にさらに10%ポイント上乗せする」とSNSで表明しました。発表の直接のきっかけは、オンタリオ州政府が米国内で放映した反関税TV広告(レーガン元大統領の発言を引用)への反発とされています。これに先立ち、米国は広告問題を理由にカナダとの通商協議を打ち切っていました。

対象品目や発効時期などの実務詳細は、公式告示が未公表のため未確定です。主要紙も「どの品目にどう適用されるかは現時点で不明」と報じています。

重要:現場での運用は大統領布告・商務省/税関(CBP)通知が出て初めて確定します。現時点では「追加10%ポイント」の方針表明段階です。

既存の対カナダ関税の枠組み(2025年時点)

USMCA適合品:原産地規則等を満たす大半の対米輸出は依然として無関税。2025年夏時点で対米加輸出の多くが関税非課税と報じられています。

USMCA非適合品(一般品):2025年8月1日から25%→35%に引上げ済み。

エネルギー関連:10%(国別追加関税の区分として明示)。

鉄鋼・アルミ:通商拡張法232条に基づき2025年6月4日から50%(英国のみ25%枠)。

自動車・同部品:25%(製品別の追加関税として明示)。

なお、米国は2025年4月5日から「ほぼ全輸入に最低10%関税(ベースライン)」を徴収開始していますが、対カナダではUSMCA適合品の無税枠が大きく残っています。

「追加10%ポイント」で想定される影響(シナリオ)

正式な告示が出るまで断定はできませんが、大統領の言い回しは「今払っている税率に10%ポイント上乗せ」と解釈されるため、カナダ原産で既に課税されている品目に広く加算される可能性があります。想定シナリオを整理すると:

区分現行(参考)追加10%適用と仮定した場合の見込み
USMCA適合品0%0%のまま(無税枠が維持されれば変化なし)
USMCA非適合の一般品35%45%
エネルギー10%20%
鉄鋼・アルミ(232条)50%60%
自動車・同部品25%35%

※上表は「一律に+10%ポイント」が適用される場合の試算イメージです。実際の対象範囲が限定される(例:USMCA非適合品のみ等)可能性もあり、最終は官報・布告待ちです。

:USMCA非適合の一般品を10万ドル輸入する場合、現行35%=3.5万ドルの関税 → 追加10%ポイントで45%なら4.5万ドル。差額1万ドル増。

背景事情

2025年春以降、米国は「ベースライン10%」や国別・品目別の高関税を段階的に導入しています。対カナダでは8月の35%(非USMCA品)に続くさらなる圧力となります。

今回の「10%上乗せ」は、オンタリオ州の反関税広告(レーガン発言引用)への報復色が濃い、政治的経緯を伴う措置です。

企業の実務対応チェックリスト

HS分類・原産地判定の再確認:USMCA適合化(原産地規則・RVC・関税分類変更)で関税ゼロに戻せないか直ちに検討。

関税負担のシナリオ試算:上記の+10%ポイントを前提に、製品別の実効税率・原価・価格転嫁を再計算。

在庫・通関タイミング:発効日確定後は通関日/引取り時点で税率が決まるのが通例。入港スケジュールを調整。

鉄鋼・アルミ・自動車等の品目別規制:232条50%や自動車25%など、既存の高率関税に重畳適用され得るかを注視。

公式告示のフォロー:大統領布告・商務省/CBPの実装通知(HTS追加注記・適用除外・移行措置等)を一次情報で確認。

今後の見通し

対象や発効日の詳細は未公表です。ホワイトハウスや商務省からの正式文書が出るまでは、社内ルールを「暫定→正式」に切り替える準備段階です。

米連邦最高裁は11月5日に広範な関税(IEEPAベース)の適法性を審理予定との報道もあり、法的リスクも交錯しています。

カーニー首相は協議再開に前向きと発言していますが、両首脳は直近のASEAN/APECに出席予定である一方、首脳会談の具体的計画は報じられていません。

まとめ

今回の「10%引き上げ」は「追加の10%ポイント」という宣言で、どの品目にどう重なるかは告示待ちです。実務上はUSMCA適合化(無税化)と非適合品の関税再試算が当面の肝になります。

カナダにおけるHSコード事前教示制度

カナダにおけるHSコード事前教示制度の実務ガイド

本書は、カナダ国境サービス庁(CBSA: Canada Border Services Agency)が運用する品目分類に関する事前教示(Advance Ruling for Tariff Classification)制度をまとめたものです。根拠はCBSAのD-Memoranda D11-11-3「品目分類の事前裁定」、D11-4-16「FTA原産地の事前裁定」および公式ガイドです(最終確認:2025年10月15日)。

主管当局と公式情報源

当局:Canada Border Services Agency(CBSA)

主要URL

事前教示の申請プロセス

申請資格者(Tariff Classification Advance Rulings Regulationsに基づく):

  • カナダの輸入者
  • Customs Act 32(6)(a)/32(7)に基づき会計手続の権限を付与された者(通関業者等)
  • 海外の輸出者または生産者

申請方法:CARM Client Portal、電子メール、郵送のいずれか。CARM利用を推奨(代理申請は委任状またはCARM上の権限委譲が必要)。

申請タイミング:輸入予定日の120日以上前に申請することが規則で定められています(Regulations第3条)。120日未満でも申請自体は受理されますが、輸入前に裁定が間に合う保証はありません。

審査期間:必要情報の受領完了から120暦日以内(サービス標準)。不足資料の補足要請があった場合は、回答期限は30日以上付与され、必要情報到達後に120日が再起算されます。

申請単位:一申請=一品目が原則。ただし「same goods」(用途・機能が同一で10桁分類が一致する同質品)は束ねて申請可能。

発給形式:書面(ケース番号付)で発給。公表可否は申請時に選択(非同意でも審査に不利益なし)。

通関での使用:Commercial Accounting Declaration(CAD)のRuling Number欄に裁定番号を記載。インボイスやCI1への記載も推奨。

申請に必要な情報

D11-11-3付録Aに規定される必須項目(英語またはフランス語):

申請者情報:事業者番号(BN9/RM)、担当者氏名・連絡先

当事者関係:申請者の立場(輸入者/輸出者/生産者)、取引相手の氏名・住所

物流情報:主な輸入港(未定の場合はN/A可)

係属・既往案件:同一貨物についての検認・審査・審判・既申請の有無

技術情報(受理の鍵となる最重要項目):

  • 詳細な商品説明(商標、一般名、技術名称)
  • 組成・材質(パーセンテージ、寸法等)
  • 製造工程
  • 包装形態
  • 用途
  • 図面・写真・仕様書・カタログ等
  • 注意:部品番号のみの説明は不可

分類見解:申請者が考える10桁分類候補と根拠(GIR・部注・類注の引用)

公開同意:公表の可否を明示(同意・不同意いずれか必須)

代理申請:委任状(POA)またはCARM上の権限委譲

サンプル:CBSAから要請があった場合のみ送付(危険物はMSDS添付)

処理期間

標準期間:必要情報の受領完了から120暦日以内

補足資料の回答期限:30日以上。期限内に回答がない場合は裁定不発給となる可能性あり

有効期間と拘束力

効力発生:発給日(または裁定で指定する将来日)

有効条件(固定年限ではなく以下の条件を満たす限り有効):

  • 事実関係・事情・法令に変更がない
  • 裁定に遵守している
  • 取消・変更されていない

使用可能な範囲

  • 裁定の名宛人本人
  • 名宛人(輸出者・生産者)から直接輸入する者
  • 名宛人に直接販売する者による同一貨物の輸入

重要:他者の裁定番号を引用してもCBSAは拘束されないため、自社名義での取得を推奨。

申請費用

申請料:無料(手数料規定なし)。ただし、サンプルの返送費用や私設ラボ分析等の実費は申請者負担。

その他の重要事項

“Reason to believe”(誤申告認識)と修正義務:名宛人あての裁定は、誤りを認識する理由に該当します。同一または類似貨物の過去申告に誤りがあれば、最長4年遡及して自主修正が必要。

不受理・発給延期事由

  • 仮想貨物(現物が存在しない)
  • 複数品目を1申請(同質品の範囲外)
  • 事実関係が不明
  • 追加情報が期限内に提出されない
  • 係属事件や審判・裁判の係争が関連

変更・取消:誤認・法改正・事情変更等により変更または取消される場合があります。名宛人が善意で依拠していたことを証明すれば、最大90日まで不利益変更の発効日を繰り下げ可能(要申請・証拠提出)。

公開と秘匿:公開同意は任意。非同意でも審査に不利益なし。公開済み裁定は参考資料であり、名宛人以外は拘束されません。

不服申立

  • 裁定に不服の場合:90日以内にCustoms Act 60条に基づく審査請求(CBSA長官宛)
  • さらに不服の場合:CITT(カナダ国際貿易審判所)へ90日以内に上訴

関連制度の区別

  • 分類AR(D11-11-3):本ガイドの対象
  • 原産地AR(D11-4-16):FTAの原産地判定
  • NCR(National Customs Rulings; D11-11-1):評価・非FTA原産地・原産国表示等の行政的指示(拘束力や運用が異なるため要注意)

申請準備チェックリスト

  •  CARM登録(輸入者:BN9/RM取得、代理人は権限委譲)
  •  一申請=一品目の原則確認(同質品の束ね要件を確認)
  •  技術資料の充実(用途・機能、構造・原理、組成%、工程、包装+写真・図面・カタログ。部品番号のみは不可)
  •  輸入予定日の120日以上前に申請
  •  ラボ分析や追加照会(回答期限30日以上)への対応体制構築
  •  裁定番号の社内展開手順整備(CAD/インボイス/CI1への記載)
  •  公開同意の判断(非同意でも不利益なし)
  •  “Reason to believe”リスク管理(発給後の過去申告点検・修正)

主要根拠資料

  • D11-11-3:申請主体、申請手段、120日標準、30日補足期限、一申請=一品目、same goods定義、効力範囲、Reason to believe、90日内見直し請求、変更・取消と発効猶予、公開同意等
  • CBSA公式ガイド:制度概要、有効条件、処理標準120日、不発給・延期事由、使用可能範囲、申告書への裁定番号記載等
  • D11-4-16(参考):FTA原産地のAdvance Ruling