カナダにおけるHSコード事前教示制度

カナダにおけるHSコード事前教示制度の実務ガイド

本書は、カナダ国境サービス庁(CBSA: Canada Border Services Agency)が運用する品目分類に関する事前教示(Advance Ruling for Tariff Classification)制度をまとめたものです。根拠はCBSAのD-Memoranda D11-11-3「品目分類の事前裁定」、D11-4-16「FTA原産地の事前裁定」および公式ガイドです(最終確認:2025年10月15日)。

主管当局と公式情報源

当局:Canada Border Services Agency(CBSA)

主要URL

事前教示の申請プロセス

申請資格者(Tariff Classification Advance Rulings Regulationsに基づく):

  • カナダの輸入者
  • Customs Act 32(6)(a)/32(7)に基づき会計手続の権限を付与された者(通関業者等)
  • 海外の輸出者または生産者

申請方法:CARM Client Portal、電子メール、郵送のいずれか。CARM利用を推奨(代理申請は委任状またはCARM上の権限委譲が必要)。

申請タイミング:輸入予定日の120日以上前に申請することが規則で定められています(Regulations第3条)。120日未満でも申請自体は受理されますが、輸入前に裁定が間に合う保証はありません。

審査期間:必要情報の受領完了から120暦日以内(サービス標準)。不足資料の補足要請があった場合は、回答期限は30日以上付与され、必要情報到達後に120日が再起算されます。

申請単位:一申請=一品目が原則。ただし「same goods」(用途・機能が同一で10桁分類が一致する同質品)は束ねて申請可能。

発給形式:書面(ケース番号付)で発給。公表可否は申請時に選択(非同意でも審査に不利益なし)。

通関での使用:Commercial Accounting Declaration(CAD)のRuling Number欄に裁定番号を記載。インボイスやCI1への記載も推奨。

申請に必要な情報

D11-11-3付録Aに規定される必須項目(英語またはフランス語):

申請者情報:事業者番号(BN9/RM)、担当者氏名・連絡先

当事者関係:申請者の立場(輸入者/輸出者/生産者)、取引相手の氏名・住所

物流情報:主な輸入港(未定の場合はN/A可)

係属・既往案件:同一貨物についての検認・審査・審判・既申請の有無

技術情報(受理の鍵となる最重要項目):

  • 詳細な商品説明(商標、一般名、技術名称)
  • 組成・材質(パーセンテージ、寸法等)
  • 製造工程
  • 包装形態
  • 用途
  • 図面・写真・仕様書・カタログ等
  • 注意:部品番号のみの説明は不可

分類見解:申請者が考える10桁分類候補と根拠(GIR・部注・類注の引用)

公開同意:公表の可否を明示(同意・不同意いずれか必須)

代理申請:委任状(POA)またはCARM上の権限委譲

サンプル:CBSAから要請があった場合のみ送付(危険物はMSDS添付)

処理期間

標準期間:必要情報の受領完了から120暦日以内

補足資料の回答期限:30日以上。期限内に回答がない場合は裁定不発給となる可能性あり

有効期間と拘束力

効力発生:発給日(または裁定で指定する将来日)

有効条件(固定年限ではなく以下の条件を満たす限り有効):

  • 事実関係・事情・法令に変更がない
  • 裁定に遵守している
  • 取消・変更されていない

使用可能な範囲

  • 裁定の名宛人本人
  • 名宛人(輸出者・生産者)から直接輸入する者
  • 名宛人に直接販売する者による同一貨物の輸入

重要:他者の裁定番号を引用してもCBSAは拘束されないため、自社名義での取得を推奨。

申請費用

申請料:無料(手数料規定なし)。ただし、サンプルの返送費用や私設ラボ分析等の実費は申請者負担。

その他の重要事項

“Reason to believe”(誤申告認識)と修正義務:名宛人あての裁定は、誤りを認識する理由に該当します。同一または類似貨物の過去申告に誤りがあれば、最長4年遡及して自主修正が必要。

不受理・発給延期事由

  • 仮想貨物(現物が存在しない)
  • 複数品目を1申請(同質品の範囲外)
  • 事実関係が不明
  • 追加情報が期限内に提出されない
  • 係属事件や審判・裁判の係争が関連

変更・取消:誤認・法改正・事情変更等により変更または取消される場合があります。名宛人が善意で依拠していたことを証明すれば、最大90日まで不利益変更の発効日を繰り下げ可能(要申請・証拠提出)。

公開と秘匿:公開同意は任意。非同意でも審査に不利益なし。公開済み裁定は参考資料であり、名宛人以外は拘束されません。

不服申立

  • 裁定に不服の場合:90日以内にCustoms Act 60条に基づく審査請求(CBSA長官宛)
  • さらに不服の場合:CITT(カナダ国際貿易審判所)へ90日以内に上訴

関連制度の区別

  • 分類AR(D11-11-3):本ガイドの対象
  • 原産地AR(D11-4-16):FTAの原産地判定
  • NCR(National Customs Rulings; D11-11-1):評価・非FTA原産地・原産国表示等の行政的指示(拘束力や運用が異なるため要注意)

申請準備チェックリスト

  •  CARM登録(輸入者:BN9/RM取得、代理人は権限委譲)
  •  一申請=一品目の原則確認(同質品の束ね要件を確認)
  •  技術資料の充実(用途・機能、構造・原理、組成%、工程、包装+写真・図面・カタログ。部品番号のみは不可)
  •  輸入予定日の120日以上前に申請
  •  ラボ分析や追加照会(回答期限30日以上)への対応体制構築
  •  裁定番号の社内展開手順整備(CAD/インボイス/CI1への記載)
  •  公開同意の判断(非同意でも不利益なし)
  •  “Reason to believe”リスク管理(発給後の過去申告点検・修正)

主要根拠資料

  • D11-11-3:申請主体、申請手段、120日標準、30日補足期限、一申請=一品目、same goods定義、効力範囲、Reason to believe、90日内見直し請求、変更・取消と発効猶予、公開同意等
  • CBSA公式ガイド:制度概要、有効条件、処理標準120日、不発給・延期事由、使用可能範囲、申告書への裁定番号記載等
  • D11-4-16(参考):FTA原産地のAdvance Ruling

 

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