EU・メルコスール協定「暫定合意」の本質


関税削減は魅力でも、原産地設計と優遇停止リスクが勝敗を分ける

2026年1月9日、EU理事会はEU・メルコスール協定の署名を承認し、25年越しの交渉が大きな節目を迎えました。ただし重要なのは、協定が直ちに発効したという話ではなく、発効に向けた政治手続きが前進し、農業分野の優遇停止を可能にするセーフガード規則が具体化した点です。reuters+2​

ビジネス目線で押さえるべきは、工業品で大きな関税削減が見込まれる一方、その恩恵を受けるには原産地規則の設計と証明実務が不可欠であり、さらに農産品を中心に優遇停止のトリガーが明確に制度化されている点です。発効後の準備では遅く、発効前に原産設計と書類フローを固めた企業が、最初の2年で利益を取りに行けます。aljazeera+1​

今回の「暫定合意」の実態

2026年1月9日の時点で、二つの暫定が同時進行しています。reuters+1​

第一に、EU理事会の加盟国大使が署名承認を正式決定しました。フランス、ポーランド、オーストリア、アイルランド、ハンガリーが反対、ベルギーが棄権したものの、ドイツ、スペイン、イタリアなど21か国の賛成により特定多数が成立しました。これにより、フォン・デア・ライエン欧州委員長が早ければ1月12日にパラグアイで正式署名する段取りです。english.news+2​

第二に、EU理事会と欧州議会が2025年12月に「農業分野の二者間セーフガード規則」で暫定合意しました。これは、メルコスールからの農産品輸入が域内産業に損害を与える、またはその恐れがある場合に、関税優遇を迅速に停止できる仕組みです。europarl.europa+1​

今後は欧州議会が同意決議を行い、EU理事会が締結決定を行えば、暫定貿易協定(iTA)が適用開始となります。完全発効には加盟国すべての批准が必要ですが、貿易分野はEU排他的権限のため、加盟国批准を待たずに先行適用できる設計です。bilaterals+2​

協定の構造

法的文書は大きく二つに分かれています。reuters

EU・メルコスール・パートナーシップ協定(EMPA)
政治対話、協力、貿易・投資を包括する本協定で、完全発効には全加盟国の批准が必要です。EU側は政治・協力分野の大部分を暫定適用する方針も示しています。reuters

暫定貿易協定(iTA)
貿易・投資の自由化を先行させるための協定で、EUの排他的権限に属するため、欧州議会の同意と理事会の締結決定のみで動かせます。最終的にはEMPA発効により置き換えられます。bilaterals+1​

実務上の示唆は明確です。完全発効を待つのではなく、iTAを軸に先行する領域を前提に準備するのが合理的です。

関税削減の骨格

EUからメルコスール向け

メルコスールは、EUからの輸入の91%について、原則10年以内に関税を撤廃します。特に高関税品目は価格競争力が劇的に変わります。blomstein+1​

主な現行関税と撤廃スケジュールeuroparl.europa+1​

  • 乗用車(内燃機関) 35%→15年で完全撤廃(最初7年は5万台の移行枠で17.5%、その後加速)
  • 電動車 35%→即座に25%へ引下げ、18年で完全撤廃
  • 水素車 35%→6年据置後、25年で完全撤廃
  • 自動車部品 14-18%→大半は10年以内に撤廃
  • 機械 14-20%→93%が10年以内に撤廃
  • 化学品 最大18%
  • 医薬品 最大14%
  • 衣類・革靴 35%

自動車分野では、2024年の追加交渉で内燃機関車の15年スケジュールが維持された一方、電動化車両は18年、水素車は25年、新技術車は30年へと延長されました。これは「関税が下がる」だけでなく、「下がり切るまでの時間」が競争戦略そのものになることを意味します。gov+1​

農産加工品の現行関税例reuters

  • オリーブオイル 10%
  • ワイン 最大27%
  • ウイスキー・スピリッツ 20-35%
  • チョコレート 20%
  • 乳製品(数量枠内でゼロ関税)
    • チーズ 3万トン枠(現行28%)
    • 粉乳 1万トン枠(現行28%)
    • 乳児用調製粉乳 5千トン枠(現行18%)

メルコスールからEU向け

EUは、メルコスールからの輸入の92%について、原則10年以内に関税を撤廃しますが、センシティブな農産品は関税割当(TRQ)で数量管理する設計です。lateinamerikaverein+1​

主要農産品の割当枠reuters

  • 牛肉 年9万9千トン(チルド55%、冷凍45%)、7.5%関税、6段階導入
  • 豚肉 2万5千トン(83ユーロ/トン)、6段階導入、プラス パラグアイ向け1,500トン
  • 鶏肉 18万トン無税枠、5年で段階導入
  • 砂糖 ブラジル向け原料糖18万トン無税(既存WTO枠内)、パラグアイ向け1万トン無税
  • エタノール 化学用途45万トン無税、燃料用途20万トンは本税の3分の1、いずれも5年で段階導入
  • はちみつ 4万5千トン無税枠、5年で段階導入
  • コメ 6万トン無税枠、5年で段階導入

これらの数量はEU消費量の1-2%程度に抑えられており、EU側の輸出量でほぼ相殺される設計です。reuters

原産地規則

関税削減の本質は「原産地の設計」と「証明手続」にあります。優遇を受けられるのは「協定上の原産品」に限られ、これを外すとMFNで申告することになり協定メリットが消えます。sice.oas+1​

原産性の基本構造

原産地規則の骨格は次の通りです。sice.oas

完全生産品(Wholly obtained)
鉱物、植物、域内で出生し飼育された動物、域内で行われた漁獲など、完全生産を定義しています。sice.oas

製品別ルール(PSR)
非原産材料を使う場合、品目ごとに定められた条件(関税分類変更、特定工程、非原産材料の最大割合)を満たす必要があります。sice.oas

二者間累積(Bilateral cumulation)
EU原産材料をメルコスール側の原産材料として扱う、またはその逆を認めますが、単純作業のみでは不十分で一定の加工を要します。sice.oas

許容(Tolerances)
製品別ルールを満たさない非原産材料があっても、一定範囲(工場出荷価格の10%以内)であれば原産とみなす仕組みがあります。繊維類は別途規定があります。sice.oas

不十分な加工(Insufficient operations)
洗浄、単純な包装、ラベル貼付、単純混合、単純組立など、軽微な作業のみでは原産になりません。sice.oas

輸送条件
原産とされた貨物は、第三国で本質的な加工を受けず、保全行為等に限ることが求められます。sice.oas

製品別ルール(PSR)の読み方

PSRは別添で品目ごとに示され、「関税分類変更(CC/CTH/CTSH)」「特定工程」「非原産材料の最大割合(MaxNOM)」などの形式で規定されています。sice.oas

自動車のPSR例reuters

  • 乗用車(87.01-87.07) MaxNOM 45%(EXW)
  • 部品(87.08-87.09) MaxNOM 50%(EXW)

機械のPSR例sice.oas

  • CTH または MaxNOM 50%(EXW)など、品目ごとに複数の満たし方が提示されています

工業品のPSRは、実務上「CTH」か「MaxNOM」のどちらかを満たせばよい形が多く、同じ業界でもHSが変われば判定ロジックが変わるため、品目単位でPSRを引き、BOMと工程のどこで条件を満たすかを先に設計することが肝要です。

証明手続

この協定は、輸出者がインボイス等に「ステートメント・オン・オリジン」を作成する運用を軸にしています。pincvision+1​

実務で重要な期限と保存義務sice.oas

  • ステートメントの有効期限は12か月
  • 輸出後に作成する場合でも、輸入後2年以内に提出が必要
  • 輸出者と輸入者は原則3年間の記録保存

EU側では、輸出者はREXシステムへの登録が必要です。メルコスール側は移行期間(最大5年)が認められています。加えて、EUの関税割当で輸出する品目は、メルコスール側が発行する公式文書の添付を求める規定もあります。lateinamerikaverein+1​

農業セーフガード

今回の暫定合意の核心は、農業分野の優遇停止を「より早く、より簡単に」動かすトリガーが条文化された点です。europarl.europa+1​

調査開始の条件(センシティブ品目)europarl.europa+1​

  • 輸入数量が3年平均比で8%超増加
  • または輸入価格が3年平均比で8%超低下

これらは「深刻な損害」の証拠とみなされ、調査開始の十分条件となります。europarl.europa

調査と措置のスピードeuroparl.europa

  • センシティブ品目の調査は3か月以内に終了
  • 緊急時は通知後21日以内に暫定措置が可能
  • 非センシティブ品目は6か月以内

監視体制europarl.europa

  • 欧州委員会は少なくとも半年ごとに監視レポートを作成
  • 2026年3月1日までに監視の技術ガイドラインを策定予定

企業目線の含意は明確です。農産品を扱う場合、発効後も「関税は常に下がり続ける」とは限らず、数量と価格の動き次第で優遇停止があり得るという前提で、契約と収益計画を組む必要があります。

中小企業向けの情報提供

協定本文には、中小企業向けの情報提供を義務づける章があります。各当事者は、協定本文、別添、関税スケジュール、製品別原産地規則を掲載する公開サイトを整備し、関税コードで検索可能なデータベースの整備が想定されています。publications.iadb

これは「発効してから調べる」のではなく、「調べやすい状態で使わせる」ための実装思想で、実務のコストを確実に下げる仕組みです。

日本企業の実務アクション

発効前にやるべきことは3つです。

品目マッピング
自社の輸出入品目をHSで棚卸しし、関税削減が大きい品目から優先順位を付けます。自動車、機械、化学品、衣料は高関税の例が明示されています。reuters

原産地設計
二者間累積、許容、単純作業否認、輸送条件を前提に、PSRを満たす工程とBOMの設計を固めます。特に自動車はMaxNOM比率が明示されており、原価構造の管理がそのまま原産判定になります。reuters+1​

証明と監視の運用
ステートメント・オン・オリジンの発行手順、期限管理、保存義務、検認対応を社内フロー化します。農産品はセーフガードのトリガーも踏まえ、価格条項や見直し条項を契約に織り込みます。pincvision+2​


まとめ

EU・メルコスール協定は、工業品で大きな関税削減が見込まれる一方、農産品は数量枠とセーフガードで精密に管理される設計です。そして、企業にとっての勝敗は「原産地規則を満たせるか」「証明実務を回せるか」で決まります。発効が見えてから動くのではなく、発効前に原産設計と書類フローを固めた企業が、最初の2年で利益を取りに行けます。pincvision+3​

注: 本稿は2026年1月時点の公表資料に基づく一般情報です。実際の適用はHS別・国別のスケジュールと当局運用に依存するため、最終判断は一次資料と専門家確認で行ってください。

  1. https://www.reuters.com/business/eu-member-states-confirm-approval-signing-eu-mercosur-trade-agreement-2026-01-09/
  2. https://www.aljazeera.com/news/2026/1/9/eu-states-nod-on-mercosur-trade-deal-ends-25-year-wait
  3. https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20251217IPR32258/mercosur-parliament-and-council-agree-on-agriculture-safeguards
  4. https://english.news.cn/20260110/680b56baf17e4b1983c0d2c9c5126a02/c.html
  5. https://www.rte.ie/news/analysis-and-comment/2026/0109/1552369-eu-mercosur-agreement/
  6. https://www.bilaterals.org/?council-rejects-bid-to-stop
  7. https://www.blomstein.com/en/news/eu-mercosur-agreement-on-trade-in-goods
  8. https://www.europarl.europa.eu/RegData/etudes/BRIE/2025/769537/EPRS_BRI(2025)769537_EN.pdf
  9. https://www.gov.br/mre/en/content-centers/statements-and-other-documents/factsheet-mercosur-european-union-partnership-agreement-december-6-2024
  10. https://www.lateinamerikaverein.de/fileadmin/user_upload/Trade_part_of_the_EU-_Mercosur_Association_Agreement.pdf
  11. http://www.sice.oas.org/tpd/mer_eu/Texts/Protocol_on_RoO_e.pdf
  12. https://www.pincvision.com/news/free-trade-agreement-eu-mercosur
  13. https://publications.iadb.org/en/rules-origin-ftas-europe-and-americas-issues-and-implications-eu-mercosur-inter-regional
  14. https://www.euronews.com/my-europe/2026/01/09/eu-member-states-back-mercosur-deal-french-meps-vow-fight-in-parliament
  15. https://www.atlanticcouncil.org/dispatches/eu-and-mercosur-are-creating-one-of-the-worlds-largest-free-trade-areas/
  16. https://www.europeanmovement.ie/just-the-facts-what-is-the-eu-mercosur-trade-agreement/
  17. https://agrinfo.eu/book-of-reports/eu-mercosur-partnership-agreement/pdf/
  18. https://unctad.org/system/files/official-document/itcdtsbmisc25rev3add1_en.pdf
  19. https://trade.ec.europa.eu/access-to-markets/en/content/rules-origin-3

2026年1月前後に節目を迎える主なFTA/EPA

2026年1月(実務上は多くが2026年1月1日)に、協定税率が更新・引下げ(または撤廃段階に到達)したことが一次情報で確認できるFTA/EPAは、少なくとも下表のとおりです。

なお、FTA/EPAの関税は「毎年1月1日に段階的に動く」タイプが多く、品目ベースで網羅すると対象が非常に広くなります。ここでは、協定として税率が動くこと自体が明示されているものを中心に整理します。

協定名当事国・地域2026年1月の関税率変更(概要)実施日一次情報(根拠)
CPTPPCPTPP当事国日本を除く当事国は、その後の関税削減(staging)が毎年1月1日に実施されるため、2026年1月1日に協定税率が次段階へ更新。日本は毎年4月1日更新。2026年1月1日(日本は4月1日)(international.gc.ca)
RCEPASEAN10+日中韓豪NZ(計15)ブルネイ、カンボジア、中国、韓国、ラオス、マレーシア、ミャンマー、NZ、シンガポール、タイ、ベトナムは毎年1月1日に段階引下げ。インドネシア、日本、フィリピンは毎年4月1日更新。2026年1月1日(国により4月1日)
豪印ECTAオーストラリア、インド豪州側の関税表で段階区分B5の品目は、年5(2026年1月1日)から無税化に到達(豪州の対印輸入が広く無税化)。2026年1月1日(オーストラリア外務貿易省)
ChAFTAオーストラリア、中国乳製品などで、中国側の対豪関税(最大20%)が2026年1月1日までに撤廃段階に到達(最終段階の節目)。2026年1月1日までに(オーストラリア外務貿易省)
KAFTAオーストラリア、韓国一部の高関税(例:乳児用調製粉乳など)で、2026年1月1日までに撤廃段階に到達する旨が明示。2026年1月1日までに(オーストラリア外務貿易省)
A-UKFTAオーストラリア、英国水産物で、残存関税が2026年1月1日までに段階的に撤廃される旨が明示。2026年1月1日までに(農業省)
AfCFTA(南ア実装)アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)南アフリカ歳入庁(SARS)が、AfCFTAの関税段階引下げ(phase down)実装のため、2026年1月1日効力で関税率表改正を告知。2026年1月1日(South African Revenue Service)

補足(日本企業の実務観点)

  • CPTPPとRCEPは、協定そのものとして「毎年の更新日」が明示されているため、2026年1月1日に多くの国で協定税率が動きます(品目数は膨大)。(international.gc.ca)
  • 一方で、日本側の更新日はCPTPPが4月1日、RCEPも(少なくとも日本・インドネシア・フィリピンは)4月1日運用と整理されています。したがって、2026年1月の影響は「日本から輸出する際の相手国側の税率更新」が中心になりがちです。(international.gc.ca)
  • 日本の関税率表自体は、税関サイトに「2026年1月1日現在」が公開されています(参照用)。協定税率の確認導線としては使えます。(日本の税関)

韓国のCPTPP参加の現状まとめ―2026年1月3日時点の公開情報にもとづく―


はじめに

CPTPP(包括的・先進的環太平洋パートナーシップ協定)は、関税撤廃だけでなく、デジタル取引、投資、国有企業、競争政策、補助金、政府調達など、企業活動を支える経済ルールを高水準で統一する枠組みです。
韓国がこの枠組みに加わるかどうかは、実質的な日韓FTA発効に相当し、サプライチェーン設計や販売戦略の前提条件を大きく変える可能性があります。

現在の進捗状況

結論から言うと、韓国政府は2025年後半からCPTPP参加の検討を再び加速させていますが、2026年1月時点でニュージーランド(CPTPP寄託国)に正式な加盟申請を提出したという政府発表やニュージーランド政府側の通知は確認されていません。
つまり現在は、国内調整および加盟国への事前協議段階とみられます。
(出典: Invest Korea

2025年12月17日、韓国産業通商資源部は大統領報告を通じて、対中サービス分野のFTA推進と並行してCPTPP参加の再検討方針を明確化しました。これは部門レベルの検討から政府方針への格上げと見られます。
(出典: Korea Times, 2025年12月17日

また2025年9月時点でも、韓国政府がCPTPP加入検討を正式に再開する見通しが報じられており、過去に農水産業界の反発や日韓関係の冷え込みを背景に正式申請に至らなかったことが再び指摘されています。
(出典: Invest Korea

外交面でも、2025年10月の外務長官寄稿では「CPTPP参加を積極的に検討すべき」と明言され、地政学・経済安全保障の観点でも参加意義が強調されています。
(出典: 韓国外務省寄稿文

CPTPP加入プロセスの概要

CPTPPへの加盟は明確な手続きを経る必要があります。公表情報による一般的な流れは以下の通りです。

  1. 希望国が寄託国ニュージーランドに正式な加盟要請を提出する。
  2. CPTPP委員会(全加盟国で構成)が**全会一致の合意(コンセンサス)**で加盟交渉の開始可否を決定する。
  3. 承認されると**作業部会(アクセスション・ワーキンググループ)**が設置され、協定遵守能力や市場アクセス譲許内容を審査する。
  4. 全加盟国が最終的にコンセンサスで承認すると加盟が認められ、議定書署名・批准を経て正式加盟となる。

日本の内閣官房も、CPTPP加盟判断の基準として「オークランド三原則」(高水準ルール受容、約束履行の実績、全会一致原則)を明記しています。
(出典: 内閣官房資料

韓国が直面する主なハードル

  1. 国内調整の難航
     農水産業界の反発が最大の障壁とされ、正式申請を見送った過去があります。補償策や競争力強化策を含む政治的パッケージが必要不可欠です。
     (出典: Invest Korea)
  2. 加盟国間の合意形成(特に日本との関係)
     CPTPPでは全加盟国の同意が前提。日韓間の懸案事項(例:日本産水産物輸入制限)は交渉上の焦点になると見られます。
     (出典: Korea Joongang Daily, 2025年9月10日
  3. 加盟審査の順番と混雑
     CPTPP委員会は2025年11月の共同声明で、ウルグアイ、UAE、フィリピン、インドネシアを「オークランド三原則に沿う新規候補」と評価し、ウルグアイのプロセス開始を承認しました。他3カ国については、2026年に交渉開始の可能性があるとしています。韓国はこの時点の候補リストには含まれていません。
     日本政府の整理資料でも、正式な要請国として中国、台湾、エクアドル、コスタリカ、ウルグアイ、ウクライナ、インドネシア、フィリピン、UAE、カンボジアを挙げており、韓国は未掲載です。
     (出典: 内閣官房資料同上)

日本企業への実務的示唆

韓国がCPTPP参加に近づくほど、企業は二方向の変化に備える必要があります。

  • 競争条件の変化
     韓国企業がCPTPPルール下で域内アクセスを得れば、関税撤廃だけでなく投資・デジタル・サービスルールの整合性により競争条件が変わります。特に第三国市場での「原産地累積」活用を通じた競争力強化が想定されます。
  • サプライチェーン設計の再編余地
     加盟後は累積原産地範囲が拡大し、日本企業も韓国部材を含むサプライチェーンをCPTPP特恵適用設計に組み込みやすくなります。
     このため、BOM構成の再検討、調達先多角化、原産地証明書管理の標準化などが有効な先行対応になります。

2026年に注視すべきチェックポイント

次の4点が事実上の注目イベントです。

  1. 韓国が寄託国ニュージーランドへ正式加盟要請を提出する発表があるか。
  2. CPTPP委員会が加盟審査開始を決議し、作業部会が設立されるか。
  3. 日韓間の懸案(特に水産物輸入問題など)が整理されるか。
  4. 農水産分野の国内対策パッケージの具体化が進むか。
    (出典: Invest Korea)

おわりに

韓国のCPTPP参加方針は2025年末を契機に再び政治アジェンダとして浮上しました。ただし、2026年1月時点で正式申請はまだ行われておらず、国内・外交の調整局面にあります。
企業としては、正式要請提出と作業部会設立を分岐点とし、原産地設計・市場戦略の2シナリオを並行検討しておくのが実務上もっとも合理的です。
(出典: Korea Times, 2025年12月17日)



アフリカ:AfCFTA 2026年段階引下げを施行 企業実務で何が変わるか


何が起きたのか

AfCFTA(アフリカ大陸自由貿易圏)は、2021年1月に優遇関税の適用が始まっており、その後、各国・各関税同盟が自国の関税率表に段階的な引下げスケジュールを落とし込む作業を続けています。thedtic+1
2026年1月1日は、その中でも一部の国・関税同盟で「次の段階」の引下げが発動する節目として位置づけられており、とくに南アフリカでは、SARS(南ア歳入庁)がAfCFTAに基づく2026年以降の段階引下げを、関税率表の改正として実装するための告示を2025年に公表しています。amcham+2

南アフリカについては、2026年1月1日発効予定の改正案により、Part 1 of Schedule No.1の各サブヘディングの差替え等を通じて、AfCFTAの関税引下げスケジュールに沿った税率変更が行われる予定です。sars+1
同時に、AfCFTA全体の制度設計としては、関税自由化を「Category A(非敏感品)」「Category B(敏感品)」「Category C(除外品)」の3つに区分し、各カテゴリごとに年次で関税を引き下げることが合意されています。macmap+2

AfCFTAの「段階引下げ」をビジネス目線で整理

AfCFTAは、域内関税を一気にゼロにするのではなく、関税ラインの少なくとも90%を原則自由化対象とし、敏感品や除外品を別枠として扱う設計です。au+2
制度説明として、よく使われる整理は次の通りです。macmap+2

区分典型的な位置づけ2026年との関係のイメージ
Category A原則の自由化対象(少なくとも90%の関税ライン)macmap+1多くの国で既に段階引下げの途中(2021年基準で5〜10年)thedtic+1
Category B敏感品目(全体の7%まで。長めのスケジュール)macmap+2多くの国で、中盤以降(6年目以降)に本格的な引下げが始まる設計。2026年頃に「相当部分が動き始める」国が出てくる。[*注1]
Category C除外品目(最大3%。原則、関税引下げ対象外)macmap+22026年時点でも、原則として自由化対象外のまま

[*注1] AfCFTAの交渉モダリティでは、敏感品(Category B)は、非LDCで10年、LDCで13年のスパンをかけて引き下げること、かつ「6年目以降」に段階引下げを開始し得ることが示されています。oefse+2
そのため、実務上は「2026年から一律にCategory Bが始まる」というより、「各国のオファーと基準年(2021年)を踏まえ、2026年前後から敏感品の本格的な削減ステップに入る国・品目が増える」イメージで捉えるのが正確です。macmap+2

AU(アフリカ連合)や各種ガイドでも、関税自由化は「90%を基本、7%を敏感品、3%を除外」とする枠組みが説明されています。africatradefoundation+3
ポイントは、同じAfCFTAでも「どの国が、どの品目を、どのスケジュールで引下げているか」が実務の結論を左右することであり、2026年前後は、各国の関税率表改正や税関システム対応が企業実務に具体的な形で現れやすいタイミングだという点です。freelegaladvice+2


2026年前後に企業が注目すべき3つの変化

1. 敏感品目の段階引下げが本格化する

敏感品目(Category B)は、政治的に影響が大きく、自由化スケジュールも長期かつ後ろ倒しに設定されるため、実際の関税削減が動き出すタイミングが企業コストを大きく左右します。thedtic+3
AfCFTAのモダリティ上は、「少なくとも90%の関税ラインを5〜10年で削減し、敏感品7%は10〜13年のスパンで削減、除外3%は削減なし」という設計であり、2021年を起点としたスケジュールの中で、2026年前後から敏感品の削減ステップに入る国・品目が増えることが想定されています。oefse+3

そのため、特にCategory Bに入る品目を扱う業種では、「2026年前後に関税率がどの幅で、何年に一度、どれだけ下がるのか」を自国・相手国ごとの関税表で具体的に確認することが、価格・調達戦略に直結します。amcham+3

2. 関税率表だけでなく「統計コード」「税関運用」も動く

南アフリカの例では、AfCFTAの段階引下げを実装する一環として、2026年1月1日発効を念頭に、Part 1 of Schedule No.1のサブヘディングの差替えなど「技術的改正(technical amendments)」が行われる旨が案内されています。engineeringnews+3
これには、新しい8桁サブヘディング等の導入や、関税分類の細分化・整理が含まれ、企業側の品目マスタ(HS、統計番号、品目コード)にも直接影響します。sctsolutions+2

またSARSは、AfCFTAの税関手続についても、Customs & Exciseクライアント向けにRLAシステム等を通じた自動化・オンライン化を進めており、2025年11月17日の発表では、AfCFTAに係る輸出者・承認輸出者・生産者の登録申請を電子的に受け付ける仕組みが導入されています。sars+2
制度が「紙の条文」から「システムに実装された運用」へと移るほど、優遇適用可否の判定や証憑の求め方が具体化し、企業間・国間で実務の差が出やすくなります。sars+2

3. 原産地規則の未決着分が、業界によっては最大のボトルネック

AfCFTAでは、原産地規則(Rules of Origin)が確定していない品目については、関税を引き下げても優遇は実務上使えません。uneca+2
2024〜2025年時点で、RoOは全体の約92〜92.4%の関税ラインについて合意済みである一方、繊維・衣類や自動車関連などの分野については交渉が長く続いており、「残る7〜8%」の交渉対象として位置づけられてきました。kohantextilejournal+3

南アフリカ政府資料でも、衣類・繊維および自動車関連の原産地規則が未決着の交渉事項として列挙されており、「残る10%(Category Bの7%とCategory Cの3%)の関税ラインと、当該分野のRoOを2026年2月頃までに詰める」という方向性が示されています。thedtic+1
部材比率が複雑な業界ほど「関税削減よりも先に、原産地規則と証憑のハードル」がボトルネックになりやすく、サプライチェーン全体を見た設計が必要になります。tradeunionsinafcfta+3


日本企業にとっての実務インパクト

AfCFTAは、日本からアフリカへの輸出関税を直接下げる枠組みではなく、アフリカ諸国間の域内貿易を自由化するFTAです。swp-berlin+2
一方で、日本企業にとっては、アフリカ市場での収益構造・投資戦略に次のような形で影響します。

  • アフリカ域内での調達と販売がしやすくなる
    各国のカテゴリ別スケジュールに沿って関税が下がることで、一定の原産地要件を満たした「域内産品」については、複数国での販売を前提にした生産・調達設計が取りやすくなります(ただし、優遇の使い勝手は国ごとのスケジュールとRoOの整備状況に依存)。africatradefoundation+3
  • 「アフリカで作る企業」との競争条件が変わる
    域内で関税が下がるほど、現地・域内生産品のコスト競争力が高まり、域外からの完成品輸出との比較で、現地生産の有利性が増す局面が出てきます。documents1.worldbank+3
  • 投資判断が関税より「原産地設計」と「サプライヤー管理」に寄る
    優遇関税を活用するには、AfCFTAのRoOに基づく原産地証明や、サプライヤーからの原産地証明資料の取得が要件となるため、調達先の国だけでなく「部材の原産性をどこまで立証できるか」が投資回収の前提になります。wcoomd+3

いま社内でやるべきチェックリスト

AfCFTAの2026年前後の段階引下げをビジネスに取り込むには、「自社の対象国・対象品目」に引き直した確認が必要です。macmap+2

  • 対象国ごとに、関税引下げスケジュールが反映された最新の関税率表を入手する
    各国・各関税同盟のオファーおよび改正タイミング(例:SACU/南アフリカの2026年1月1日発効改正)を確認する。freelegaladvice+2
  • 自社の主要品目について、Category A/B/Cの扱いを確認する
    同じHSコードでも、国ごとにCategory A・B・Cの扱いが異なり得るため、相手国別に「どの割合・どの年限で関税がゼロになるか、あるいは除外されるか」を確認する。macmap+2
  • 原産地規則の要件と、サプライヤー証憑の取得可否を先に確認する
    既にRoOが合意済みの品目か、繊維・衣類・自動車など未決着または直近まで交渉されている品目かを整理し、現状の部材構成で原産資格が取れるか、証憑をどこまで集められるかを評価する。tradeunionsinafcfta+3
  • HSや統計コードの細分変更がないかを確認し、品目マスタと通関指示書を更新する
    南アフリカなどで2026年1月発効の技術的改正により、サブヘディングの差替えや新設が予定されているため、自社マスタ(品目コード、関税分類)と社内システム(通関指示書、請求書コード等)を同期させる。sars+3
  • 現地拠点やフォワーダーに、税関システム側の運用変更(電子化、適用判定の自動化など)を確認する
    SARSのように、AfCFTA関連登録・手続をRLAなどのオンラインシステムに集約する動きが出ているため、現地側での登録要件・運用ルール(承認輸出者制度など)を把握し、実務に落とし込む。freightnews+2

まとめ

AfCFTAの2026年前後の段階引下げは、「関税が少し下がる」という表面的な話にとどまらず、実務では次の三点が本質です。thedtic+3

  • 敏感品目(Category B)の本格的な引下げ入りで、品目によってコスト構造が大きく変わる可能性がある。
  • 各国の関税率表改正に伴い、コード体系や税関システム運用が変わり、品目マスタや通関プロセスの更新が必要になる。
  • 優遇活用の成否は、原産地規則と証憑整備(特に繊維・衣類、自動車など複雑なサプライチェーンを持つ分野)に左右される。

アフリカ市場を単国で見るのではなく、複数国を束ねた供給と販売の設計に切り替える企業ほど、2026年以降の変化を「追い風」に変えやすくなると言えます。africarenewal.un+2

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台湾のCPTPP加入は今どこまで進んでいるか


2025年末時点の検討状況と、企業が押さえるべき論点

台湾は2021年9月22日、CPTPP(TPP11)への加入を寄託国ニュージーランドに正式要請しました。ds-b
しかし2025年末時点で、台湾向けの「加入作業部会(Accession Working Group:AWG)」を設置するとの公式決定は確認できておらず、加入プロセスは“申請受理後の静止状態”にとどまっています。liskul+1

2025年11月21日にオーストラリア・メルボルンで開催されたCPTPP委員会の共同声明でも、今後の優先対象として挙げられたのはウルグアイ、アラブ首長国連邦(UAE)、フィリピン、インドネシアの4か国であり、台湾(および中国)への直接言及はありませんでした。liskul
台湾外交部は、この点について「台湾の申請が公正に処理されていない」として遺憾の意を表明しています。liskul

以下では、台湾加入の「検討が進みにくい構造」を、CPTPPの手続と直近の公式文書・報道から整理します。ds-b+1


1. 前提:CPTPP加入は「申請=交渉開始」ではない

CPTPPは新規加入を受け入れる枠組みを持ちますが、申請が受理された時点で自動的に交渉が始まるわけではなく、加盟国が委員会で合意しない限り、AWGは設置されません。ds-b
加盟国が採択した「Accession Process(加入プロセス)」では、少なくとも次のようなポイントが明確化されています。ds-b

  • 申請(Accession Request)を受理した後、加盟国は合理的な期間内に交渉開始の可否を協議する。
  • 交渉開始で合意すれば、AWG(加入作業部会)を設置し、加入条件やスケジュールを交渉する。
  • 合意に至らない場合でも、申請国は加盟国との協議(consultations)を継続でき、委員会は後日あらためてAWG設置を判断し得る。

このため、申請後にAWGが設置されない状態は「正式な拒否」ではなく、「コンセンサス不足により入口で止まっている状態」と理解するのが実務的です。ds-b


2. 台湾加入の現在地:公式タイムラインと2025年共同声明

2021年9月:台湾が正式申請

カナダ政府が公表するCPTPP関連タイムラインによれば、台湾(正式名称:Separate Customs Territory of Taiwan, Penghu, Kinmen and Matsu)は2021年9月22日、ニュージーランドに対しCPTPPへの加入要請を提出しています。liskul+1

2024年11月:コスタリカは前進、台湾はAWG設置に至らず

2024年11月28日にカナダ・バンクーバーで開かれたCPTPP委員会の共同声明では、コスタリカについてAWGを設置し、加入交渉に入ることが合意されました。ds-b
この判断は、加盟国が新規加入の基本原則として共有する「オークランド三原則(Auckland Principles)」に基づくと説明されています。ds-b

同時期の報道では、台湾についてはAWG設置が見送られ、台湾側が「政治的圧力に屈した」との不満を示したことが伝えられています。liskul

2025年11月:優先順位が明文化され、台湾は対象外のまま

2025年11月21日にメルボルンで開催されたCPTPP委員会の共同声明は、今後の加入拡大について次の点を明確にしました。liskul

  • コスタリカのAWGに対し、2025年12月の会合で進捗報告を行うよう指示し、早期決着を目指す。
  • オークランド三原則に沿う将来の加入候補として、ウルグアイ、UAE、フィリピン、インドネシアの4か国を特定。
  • まずウルグアイとの加入プロセスを開始し、残り3か国については2026年に「適切であれば」プロセスを開始すると明記。
  • これらの決定は「他の申請の検討を妨げるものではない」としつつ、2026年前半にも会合を開いて必要な追加決定を行う意向を示す。

ただし、共同声明本文は台湾と中国に一切触れておらず、台湾外交部は「台湾の申請が再び取り上げられなかった」ことに強い不満と遺憾を表明しています。liskul
結果として、台湾は申請国でありながら、「優先して交渉を進める4か国」には含まれていない、という位置付けが公式文書上も明確になりました。liskul


3. なぜ台湾は進まないのか:検討が止まる3つの構造要因

ここからは、CPTPPの公式文書に「理由」が明示されているわけではありませんが、公開情報と各国発言から見える構造要因を3点に整理します。ds-b+1

要因1 コンセンサス要件の重さ(政治的要素)

オークランド三原則の一つは、新規加入の判断が、加盟国全員のコンセンサスに依存する点です。ds-b
台湾の案件については、中国との関係も含めて各国の立場が分かれやすく、加盟国が足並みをそろえにくいことが、台湾側の発言や国際報道から繰り返し指摘されています。liskul

台湾外交部も「政治的圧力に左右されず、台湾の実績と高水準を評価すべきだ」と訴えており、政治要因がCPTPP委員会での合意形成のハードルを押し上げている構図がうかがえます。liskul

要因2 申請国の増加と“順番付け”の制度化

2024年以降、CPTPPは協定自体の「一般見直し(General Review)」と並行して、複数の加入申請をどのような順番と基準で扱うかを制度的に整理してきました。ds-b
2024年5月の共同声明では、将来の加入を公正かつ効率的に議論するため、加盟国間で情報共有や意見交換を行う常設的な非公式フォーラム(informal standing forum)の設置が記載されています。ds-b

その延長線上で、2025年11月の共同声明は「オークランド三原則に合致する4申請国」を特定し、ウルグアイからプロセスを開始、残り3か国は2026年に検討するという工程表を示しました。liskul
台湾はこの“優先レーン”に入っておらず、「申請済みだが、いつプロセスに乗るかが未定の国」として扱われているのが現状です。liskul

要因3 “高水準”確保に向けた実務・コンプライアンス面の厳格化

CPTPP加盟国は、新規加入国に対し「高水準の自由化」とともに、実務面での信頼性も重視しており、2025年11月声明でも、違法な迂回輸出(transhipment)や関税回避を防ぎ、継続的なコンプライアンス監視を行う重要性が強調されています。liskul
台湾政府は、関税や投資、デジタル貿易などでCPTPP水準に整合する法制整備を進めていると繰り返し発信していますが、加盟国が「いつ、どの場で、それをどう検証するか(AWGの場を含めて)」については、まだ政治的合意に至っていません。liskul

このため、技術的・法的な準備だけでは解決しきれない「政治・安全保障と通商ルールが交差する領域」で、合意形成が滞っていると整理できます。liskul


4. 日本企業への実務インパクト:現在と将来で切り分ける

今起きないこと:CPTPP特恵を前提にできない

2025年末時点で台湾はCPTPPに未加入であり、日本と台湾の取引にCPTPP特恵(関税削減、域内累積原産など)を前提とすることはできません。ds-b+1
当然ながら、原産地規則の累積も台湾は対象外であり、日本企業は日台二国間あるいは他協定(例:日台の投資協定等)を前提にサプライチェーンを設計する必要があります。ds-b

将来起こり得ること:加入後の設計余地

仮に台湾が将来CPTPPに加入すれば、日本企業にとっては次のような変化が生じます。ds-b+1

  • 台湾向け輸出でCPTPP特恵税率が利用可能になることによる価格競争力の変化。
  • 電機・精密機器・電子部品など、台湾を主要な調達拠点とする産業で、CPTPPの原産地規則に基づいた「域内累積」を再設計できる余地。
  • 台湾企業をサプライチェーンの中核に据えつつ、CPTPP域内の第三国向け輸出における原産地証明戦略を最適化できる可能性。

もっとも、現時点の公式工程表には台湾向けAWG設置のタイムラインは明記されておらず、企業としては「加入前提の投資や組替え」を先行させることはリスクが大きい状況です。liskul

したがって当面の実務としては、「台湾は未加入」を前提に制度設計を行いつつ、台湾の扱いが変化する兆候をウォッチし、シナリオ別の原産地戦略をあらかじめ検討しておく、というスタンスが合理的です。liskul


5. 2026年前半が最初の山場:企業が見るべきチェックポイント

2025年11月の共同声明は、2025年12月の会合に加え、2026年前半にもCPTPP委員会の会合を開き、必要に応じて追加決定を行う意向を示しています。liskul
台湾にとっては、このタイミングが「議題に取り上げられるかどうか」を確認する最初の明確な観測点となります。liskul

企業が注視すべきポイントは次の通りです。liskul

  • 2026年前半の会合後に公表される公式文書で、台湾に関する言及や位置づけに変化があるか(例:協議の進展、AWG設置の検討に言及があるか)。
  • 新たなAWGが立ち上がる場合、その対象国の組み合わせと説明ロジック(オークランド三原則との関係や、経済・安全保障面の言及など)。
  • 加入審査において、違法な迂回輸出や関税回避防止、継続的な履行監視といったコンプライアンス論点がどの分野で強調されるか(特に電機・機械・デジタル分野)。

これらを経営・調達・通商部門の共通KPIとしてモニタリングし、台湾がCPTPPプロセスに乗った場合に備えて、原産地戦略・工場配置・調達方針の複数シナリオをあらかじめ描いておくことが、2025年末時点で企業が取り得る現実的なアクションと言えます。

地域別に見るFTAの累積ルール進化

サプライチェーン設計と関税最適化の新しい常識

サプライチェーンが多国間にまたがるほど、FTAの原産地規則は「使えるのに使えない」状態に陥りがちです 。そこで重要になるのが累積(cumulation, accumulation)です。累積は、複数国に分散した調達や加工を「ひとつの経済圏のもの」として扱えるようにし、原産性を満たしやすくします 。近年は、この累積が各地域でアップデートされています。mag.wcoomd

ポイントは、単に累積があるかどうかではなく、どの範囲まで足せるのか、どの国同士で使えるのか、いつから適用か、証明実務はどう変わるか、です。

累積とは何か

累積は一言で言えば「原産性の合算ルール」です。ただし、中身は複数の型があります。ビジネスでは、次の違いがコストに直結します。

双方累積(Bilateral Cumulation)
協定当事国同士で、相手国産の原産材料を自国産として扱える基本的な累積です 。mag.wcoomd

対角累積(Diagonal Cumulation)
同一の原産地ルールが連結する複数のFTAネットワーク内で、第三国の原産材料も合算できます。代表例が欧州周辺のPEM(Pan-Euro-Mediterranean)です 。taxation-customs.europa

全累積(Full Cumulation)
最も踏み込んだ形態で、最終的に原産材料になり切っていない中間材でも、域内で行った加工や付加価値の一部を積み上げて原産性に寄与させます 。WCOも、累積が貿易やバリューチェーンに影響する重要要素であると整理しています。aanzfta.asean

この「どこまで足せるか」が、地域別の実務差になります。

アジア太平洋

RCEP:域内原産材料の横断利用と将来の拡張検討

RCEPは双方累積規定を持ち、ある締約国で原産と認められる材料を別の締約国の生産に使った場合、最終加工国の原産として扱える設計です 。mag.wcoomd

加えて、重要なのは将来の拡張レビュー条項です。RCEPは、全署名国に発効した日から累積の適用範囲を「域内で行われた生産や付加価値全体」まで広げること(全累積)を検討するレビューを開始し、開始から5年以内に結論を出すと定めています 。RCEPは2022年1月に発効しているため、このレビューは既に進行中です 。aric.adb+1

実務上の示唆は明確です。部材調達をRCEP域内に寄せ、加工工程を分散しても、将来的には原産判定を一本の枠組みで整理できる余地が広がります 。mag.wcoomd

ASEAN域内(ATIGA):部分累積を明文化

ATIGAは「域内原産材料の合算」に加え、材料のRVCが40%に満たない場合でも、20%以上の実質域内価値があれば比例配分で累積できる仕組み(部分累積、Partial Cumulation)を置いています 。wtocenter

これは、サプライヤーが完全な原産材料を作れない場合でも、一定の域内加工があるなら原産判定に寄与させられる、という実務救済策です 。wtocenter

AANZFTA:全累積を制度として拡張、参加国の扱いに注意

AANZFTAの第2改正議定書は2025年4月21日に発効し、全累積(Full Cumulation)の運用ガイドラインが整備されました 。全累積では、参加国(Participating Party)間で、非原産材料に対する域内の加工や付加価値までRVC計算に取り込む考え方が明確化されています 。aanzfta.asean

重要なのは運用の複雑性です。全累積規定は発効から180日後(2025年10月頃)に適用開始となりますが、当事国は参加国(PP)と非参加国(NPP)に分かれます 。デフォルトでは全当事国が参加国ですが、発効後120日以内にオプトアウト(不参加通知)が可能で、後日オプトイン(参加通知後180日で適用)もできる設計です 。aanzfta.asean

さらに、第2議定書自体は批准した当事国間でのみ適用され、未批准国とは旧枠組みが残る、という並走期間が生じます 。ここを取り違えると、同じAANZFTAでも取引相手国によって累積の効き方が変わり、原産判定が崩れます。mfat

CPTPP:加入拡大で累積の地理が広がるが、発効相手の見極めが必須

英国は2024年12月15日にCPTPPに加入しました 。英国の加入は、累積できる供給網の地理を拡大させる材料です。ただし、英国と各締約国の間で協定が発効して初めて、累積を含む協定効果が使えます 。gov

2025年12月末時点で、英国はカナダとメキシコがまだ批准していないため、この2国との間ではCPTPPを使えません 。各国との発効は批准通知の寄託から60日後に適用、という枠組みです 。business+1

欧州・地中海

PEM:対角累積の本丸が、2025年にルール刷新と移行措置

PEMは、EUやEFTA、トルコ、地中海沿岸諸国などが、同一ルールのFTAネットワークを通じて対角累積を適用できる仕組みです 。taxation-customs.europa

2025年において最も重要なのは、ルール改正に伴う移行措置です。2025年1月から改正ルール(2023年版)が動く一方、2025年12月末まで旧ルール(2012年版)と新ルール(2023年版)が並行適用され、事業者が供給網に応じて選択できる移行措置が用意されています 。carina.gov+1

つまり、同じPEM圏でも、相手国やプロトコル改正状況によって「使える累積の組み合わせ」が変動し得ます 。PEMは従来から「変動幾何(Variable Geometry)」(全当事者間にFTAと同一ルールが揃うことが条件)という前提があるため、適用可否は必ずマトリクスで確認する運用が現実的です 。carina.gov+1

北米

USMCA:累積を「材料」だけでなく「工程」にも広げる発想

USMCAの累積規定は、締約国域内の生産であれば、複数国にまたがる生産でも原産になり得ることを前提にしています 。ghy

さらに重要なのは、非原産材料に対して締約国内で行った生産が、その材料自体を原産化するほど十分でなくても、最終製品の原産性に寄与し得る、という規定です 。米国CBPは、複数階層のサプライヤーにおける域内付加価値を累積的に取り込むことを明確に認めています 。customsmobile+1

自動車などの厳しいPSRがある分野では、累積は「設計と調達の自由度」を作る一方、証憑とトレーサビリティの要求も強くなります 。ghy

アフリカ

AfCFTA:大陸単一市場を前提に、累積を制度の中核へ

AfCFTAの原産地実務では、締約国を単一領域として扱うことが累積の基本要件とされ、累積が地域バリューチェーン形成の核として位置づけられています。

一方で、タリフライン全体のうち原産地規則交渉がどこまで合意済みかは実務に影響します。2025年5月時点で原産地規則は約92%のタリフラインで合意済みとされ、残り8%は自動車と繊維分野です 。最終的な完了は2026年2月が見込まれています 。thedtic+1

運用面では、WCOがAfCFTA事務局やCOMESAと連携し、累積適用の能力構築を目的とするワークショップを実施しています。制度だけでなく、税関と企業の運用力を揃えにいくフェーズに入っている、という見方ができます。

企業が今すぐやるべき実務チェックリスト

累積は使えば得ですが、間違えると否認リスクを増幅させます。着地は次の5点です。

1. 対象ルートの累積タイプを特定する
双方累積か、部分累積か、対角累積か、全累積か。協定本文と運用ガイダンスで言葉を合わせる 。wtocenter+1

2. 適用バージョンと適用相手を確定する
PEMは移行期間で旧新が並走します 。AANZFTAは第1議定書と第2議定書が並走し得ます 。CPTPPは英国との発効相手が限定されます 。gov+2

3. 原産判定ロジックをサプライチェーン図に落とす
RVCで行くかCTCで行くか。累積で足せる要素は何か。PSRとコスト情報の粒度を先に決める 。aanzfta.asean

4. サプライヤー情報の取り方を累積仕様に変える
部分累積や全累積では、単なる原産宣言だけでなく、域内価値や工程情報が必要になる局面が増えます 。wtocenter+1

5. 税関検認に耐える証憑設計にする
証明書、自己申告、サプライヤー申告、計算根拠、工程記録を、協定の記録保存要件に合わせて束ねる 。ghy

まとめ

累積の進展は、「どの国で最終組立するか」だけの話ではありません。どこで何を加工し、どの情報をサプライチェーン全体から集めるか、という経営テーマに直結します 。mag.wcoomd

地域別に見ると、RCEPは域内調達を後押しし将来の全累積レビューが進行中 、ATIGAは部分累積で域内加工を促進 、AANZFTAは全累積で域内付加価値の取り込みを広げ 、PEMはルール刷新と移行措置で運用が複雑化し 、USMCAは工程寄与まで視野に入れ 、AfCFTAは制度と運用力の両輪で整備が進んでいます 。kohantextilejournal+7


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台湾のCPTPP加盟申請はどこまで進んでいるのか(2025年12月時点)


台湾は2021年9月22日にCPTPPへの加盟を正式に申請しました。公開情報ベースで整理すると、2025年12月末時点でも台湾向けの「加入作業部会(Accession Working Group)」は設置されておらず、加盟交渉の正式な入口に入れていない状態が続いています。mfat+1


前提整理:CPTPPは「申請=交渉開始」ではない

CPTPPは新規加盟を受け入れる枠組みを持ちますが、加盟申請があったからといって自動的に交渉が始まるわけではありません。apfccptppportal
加盟国は委員会(CPTPP Commission)で、各申請国ごとに加入プロセスを開始するかどうかを判断し、開始を決めた国ごとに加入作業部会(AWG)を設け、ルール順守や市場アクセス条件などを交渉していくのが典型的な流れです。apfccptppportal

この判断の際に繰り返し参照されているのが、いわゆるオークランド三原則です。要点は次の3つと整理されます。gov

  • CPTPPの高い水準・義務を全面的に受け入れる用意と能力があること
  • 既存の通商コミットメントをおおむね誠実に履行してきた実績があること
  • 加入に関する決定は、締約国によるコンセンサス(全会一致ベースの運用)によって行われること

このうち3点目、すなわち「コンセンサスが必要」という要件が、実務上もっとも大きなハードルになりやすい部分です。apfccptppportal


時系列で見る:台湾申請の現在地

2021年9月:台湾が正式申請

2021年9月22日、ニュージーランドはCPTPPの寄託国として、台湾からの加入申請を受領したことを公表しました。mfat
このタイミングで、中国(9月16日申請)に続き、台湾もCPTPP加盟を正式に目指すことが国際的に認識されるようになりました。congress

2024年11月:台湾向けAWGは設置されず、コスタリカは前進

2024年11月のCPTPP委員会では、コスタリカについては加入作業部会を設置し、アクセッション・プロセスを進めることが決定されました。gov
一方で台湾については作業部会設置が見送られたと報じられ、台湾政府関係者が失望と不満を表明したとする報道もあります。congress

2025年11月:優先順位が明確化し、台湾は依然として対象外

2025年11月21日にメルボルンで開かれた第9回CPTPP委員会の共同声明は、次にアクセッションを進める対象として、ウルグアイ、アラブ首長国連邦(UAE)、フィリピン、インドネシアの4か国を「オークランド三原則に沿う候補」として特定しました。gov
共同声明は、まずウルグアイとのアクセッション・プロセスを開始し、UAE・フィリピン・インドネシアについては2026年にプロセスを開始し得ると整理していますが、この文書のなかに台湾への直接の言及はなく、台湾向けAWGも設置されていません。gov

台湾側は、自国の加盟申請が他国に比べ公平に扱われていないとして遺憾を表明したと報じられています。peacediplomacy
もっとも、共同声明は「他の加盟申請の検討を妨げるものではない」とも明記しており、台湾の申請が撤回されたり、CPTPP側から正式に否定されたりしたわけではありません。gov


なぜ止まっているのか:実務上は「コンセンサスが作れない」

公式文書のレベルでは、「台湾がCPTPPの基準を満たさない」と明示的に断定している記述は示されていません。gov
むしろ、止まっている主因は、台湾案件をどのように扱うかについて、加盟国のあいだで政治的・外交的なコンセンサスが形成できていない、という構図と理解するのが自然です。congress

他方、2025年11月の共同声明は、ウルグアイ・UAE・フィリピン・インドネシアを次の具体的候補として位置づけつつ、「他の申請についての検討を妨げない」との一文を入れています。gov
したがって、実務的には台湾の申請は「否決された」のではなく、「棚上げに近い待機状態が続いている」と整理するのが妥当でしょう。congress


日本企業にとっての意味:いま起きること/起きないこと

いま起きないこと

台湾がCPTPPにまだ加盟していない以上、日本と台湾の取引にCPTPPの特恵関税や累積原産のメリットを適用することはできません。mfat
そのため、日本企業は対台湾の調達・生産・輸出の設計について、WTO税率や既存の二国間・地域協定、サプライチェーン全体のコスト構造を前提に最適化を図る必要があります。apfccptppportal

いま起きていること

CPTPPは拡大プロセスそのものを止めているわけではなく、2024年にコスタリカ、2025年にウルグアイが具体的に前へ進み、UAE・フィリピン・インドネシアも2026年にアクセッション・プロセスを開始し得る候補として整理されています。gov+1
企業の視点では、「台湾の加盟がいつ実現するか」を見込むよりも、これら他の候補国が先に加盟した場合の累積原産の組み替え余地や調達先の多様化効果を試算しておく方が、短期~中期の実益に直結しやすい局面と言えます。jef+1


2026年に向けたチェックポイント

  • 2026年前半の追加判断
    2025年の共同声明は、2026年前半にもCPTPP委員会を開催し、拡大に関する追加判断を行う意向を示しています。gov
    この場で台湾案件がどの程度議題として扱われるかが、今後数年の見通しを占ううえで最初の注目点になります。congress
  • 加盟国側の対外メッセージの変化
    台湾を名指ししない場合でも、オークランド三原則の具体的運用や、候補国の優先順位に関する説明のトーンが変わるかどうかは重要なシグナルです。gov
    特に「既存コミットメントの履行」や「経済的威圧への懸念」といった表現の扱いが変化するかどうかは、台湾のみならず他の候補国や既存加盟国を含めた政治・経済環境の変化を映す指標となり得ます。cas

免責:本稿は、各国政府・国際機関・報道機関が公表する一般的な情報を前提とした整理であり、個別の取引・関税・原産地判断を代替するものではありません。具体的案件については、協定正文、各国税関当局の運用、専門家の助言等に基づき確認してください。

  1. https://www.mfat.govt.nz/jp/trade/free-trade-agreements/free-trade-agreements-in-force/cptpp/common-questions
  2. https://apfccptppportal.ca/accessions/process
  3. https://www.gov.uk/government/publications/cptpp-joint-ministerial-statement-in-vancouver-canada-28-november-2024/comprehensive-and-progressive-agreement-for-trans-pacific-partnership-cptpp-joint-ministerial-statement-28-november-2024
  4. https://www.congress.gov/crs_external_products/IN/PDF/IN11760/IN11760.1.pdf
  5. https://www.gov.uk/government/publications/cptpp-joint-ministerial-statement-in-melbourne-21-november-2025/comprehensive-and-progressive-agreement-for-trans-pacific-partnership-cptpp-joint-ministerial-statement-21-november-2025
  6. https://peacediplomacy.org/2024/04/02/its-time-for-canada-to-break-the-cptpp-accession-logjam/
  7. https://www.jef.or.jp/journal/pdf/259th_Cover_Story_04.pdf
  8. https://www.meti.go.jp/english/policy/economy/industrial_council/pdf/250603008_03.pdf
  9. https://www.cas.go.jp/jp/tpp/tppinfo/2025/pdf/20251121_cptpp_seimei_en.pdf

CPTPPの中国加入が「見送り」状態にある理由と、実務への影響

中国のCPTPP加入申請(2021年9月16日提出)は、申請から時間が経っているにもかかわらず、いまだ「加入交渉を始める」ための加盟国コンセンサスが形成されておらず、アクセッション・プロセスの正式な開始に至っていない状態です。apfccptppportal+1
これは、加盟国側が中国の加入を明確に拒否する決定を行ったというよりも、アクセッション開始を決めるコンセンサスが成立していないため、手続が事実上停滞しているという構図と整理できます。cas+1

1. 直近の公式判断:ウルグアイを優先し、中国は対象外のまま

2025年11月21日に豪州メルボルンで開催された第9回CPTPP委員会(CPTPP Commission)に関する共同声明では、アクセッション手続の進捗について次のように整理されています。gov

  • コスタリカ:アクセッション作業部会(AWG)が既に設置されており、2025年12月までに交渉の進捗を報告するよう指示
  • オークランド三原則を満たすとみなされる候補として、ウルグアイ、アラブ首長国連邦(UAE)、フィリピン、インドネシアの4か国を特定
  • まずウルグアイとのアクセッション・プロセスを開始し、残る3か国については2026年に、適切と判断されればプロセスを開始
  • これに加え、他のアクセッション要請についても検討・議論を継続する意向を表明

この「4つの候補」の中に中国は含まれておらず、共同声明の文脈上も中国は「現時点で優先的にアクセッション交渉を進める対象にはなっていない」と整理するのが自然です。gov
他方で、CPTPPは中国、台湾、エクアドル、コスタリカ、ウルグアイ、ウクライナ、インドネシア等から正式な加入要請を受けていることが、各種レポートでも整理されています(ジェトロ等)。jef+1

2. 「見送り」とは何か:拒否ではなく、交渉開始の合意が作れない状態

CPTPPへの加入は、要請国が申請書を提出しただけでは進まず、CPTPP委員会がアクセッション・プロセスを開始することを決定し、加入作業部会(Accession Working Group: AWG)を設置して初めて本格的な交渉段階に入ります。apfccptppportal
中国の申請日は2021年9月16日と明確ですが、現時点までに中国向けAWGを設置する決定が行われたという公表情報はなく、アクセッション・プロセスが公式に立ち上がったとは言えない状況です。mfat+1

ここで鍵となるのが、アクセッション判断が「オークランド三原則」に基づくこと、および加入に関する決定はすべて締約国のコンセンサスに依存するという点です。cas+1
実際、申請当初からカナダを含む一部加盟国が中国(および台湾)の加入申請への明確な支持表明を控えているとの報道もあり、初期段階から慎重姿勢や政治的配慮が指摘されてきました。peacediplomacy

3. なぜ合意が作れないのか:実務的に効いてくる3つの論点

論点は多岐にわたりますが、企業実務の観点から押さえるべきポイントを3点に整理します。

論点A 「高い水準」を満たし続ける確度

日本政府(外務省)は、CPTPPの高い水準を満たす意図と能力を持ち、かつ既存の通商約束を履行しているかどうかを加入要請国ごとに慎重に見極める、という基本姿勢を示しています。mofa+1
企業実務としては、国有企業・補助金、デジタル貿易、知的財産、労働・環境、透明性・ガバナンスなどの分野で、「制度設計の形式的整合性」だけでなく、その運用実績や履行確度まで含めて評価される、という理解が重要になります。rieti+1

論点B 経済的威圧への警戒(加盟国側の問題意識)

第9回委員会に関する共同声明は、経済的威圧(economic coercion)に対する懸念と反対を明記し、こうした行為はCPTPPの高い水準や加盟国に期待される行動と整合しないと踏み込んでいます。cas+1
この種の文言は特定国名を挙げてはいないものの、加盟候補国を含む各国の行動様式全体が審査対象になりうる、というメッセージとして読み得るため、企業としても中長期リスクの一環として認識しておく価値があります。congress

論点C 地政学とコンセンサスの壁

豪州の有力紙Australian Financial Reviewは、中国のCPTPP申請について「加盟国間でコンセンサスがなく、申請の検討が遅れている」との認識を示しており、在豪中国大使へのインタビューでも同趣旨の質問が投げかけられています。china-embassy
一方で、中国はCPTPP水準との整合性をアピールする目的も含めて、海南自由貿易港のような制度実験を進めていますが、外交官や専門家からは「パイロット・プロジェクトだけでは不十分であり、全国的な制度改革と履行実績が求められる」との懐疑的な見方も示されています。reuters+2

4. 日本企業への実務インパクト:いま起きること/起きないこと

実務的には、当面は「中国がCPTPPに加入していない前提」で制度設計を行うのが合理的です。mfat+1

  • 対中輸出
    • CPTPPの特恵関税は対中取引には適用されないため、日本から中国向け輸出に関する関税・原産地の設計は、RCEPや日中二国間の制度枠組み等を中心に最適化することになります。congress
  • サプライチェーン・原産地設計
    • CPTPPの累積原産は原則としてCPTPP締約国間が対象であり、中国原材料の比率が高い製品は、CPTPP特恵の原産地基準を満たしにくくなる可能性があります。meti+1
  • むしろ注目すべき「増える可能性が高い国」
    • 2025年11月の共同声明では、ウルグアイとのアクセッション・プロセス開始に加え、UAE・フィリピン・インドネシアについて2026年にプロセスを開始し得ることが示されています。trademinister+1
    • これらが加入すれば累積原産の組み替えや調達先の多様化が可能となるため、企業にとっては中長期的なサプライチェーン再設計のオプション拡大という、より直接的な実益につながり得ます。jef+1

5. 2026年に向けたチェックポイント

  • ウルグアイの加入交渉の進捗
    • ウルグアイ向けAWGでの議論内容(センシティブ品目、移行期間、国有企業・サービス市場開放の扱いなど)が、今後の他候補国に対するベンチマークになる可能性があります。gov
  • UAE・フィリピン・インドネシアの加入プロセス開始の有無
    • 2026年中にアクセッション・プロセスを実際に開始するかどうかは、サプライチェーン戦略や投資戦略の前提条件として注視が必要です。trademinister+1
  • 議長国の交代
    • 2025年の議長国である豪州から、2026年にはベトナムが議長としてCPTPPの議論を主導する見通しであり、議長国の優先課題や対中スタンスがアクセッション議論のペースに影響し得ます。trademinister
  • 中国申請の「棚上げ」継続リスク
    • 中国の加入申請そのものが取り下げられたわけではなく、政治・経済環境の変化次第では再び議題として浮上する余地は残りますが、現時点では他の候補に比べ優先順位が低いポジションにとどまっていると評価するのが妥当です。english.scio+1

免責:本稿は各国政府・国際機関・報道等の公開情報に基づく一般的な解説であり、個別案件の法務・通関判断を代替するものではありません。具体的案件については、協定正文、国内実施法・通達、各国税関当局への照会等により確認してください。

  1. https://www.mfat.govt.nz/jp/trade/free-trade-agreements/free-trade-agreements-in-force/cptpp/common-questions
  2. https://www.cas.go.jp/jp/tpp/tppinfo/2024/pdf/20240518_cptpp_seimei_en.pdf
  3. https://www.gov.uk/government/publications/cptpp-joint-ministerial-statement-in-melbourne-21-november-2025/comprehensive-and-progressive-agreement-for-trans-pacific-partnership-cptpp-joint-ministerial-statement-21-november-2025
  4. https://apfccptppportal.ca/accessions/process
  5. https://www.cas.go.jp/jp/tpp/tppinfo/2025/pdf/20251121_cptpp_seimei_en.pdf
  6. https://www.jef.or.jp/journal/pdf/259th_Cover_Story_04.pdf
  7. https://www.jetro.go.jp/ext_images/hungary/pdf/globaltradeandinvestmentreport2025.pdf
  8. https://peacediplomacy.org/2024/04/02/its-time-for-canada-to-break-the-cptpp-accession-logjam/
  9. https://www.mofa.go.jp/policy/other/bluebook/2025/pdf/pdfs/3-3.pdf
  10. https://www.rieti.go.jp/en/papers/contribution/kawase/09.html
  11. https://www.congress.gov/crs_external_products/IN/PDF/IN11760/IN11760.1.pdf
  12. https://au.china-embassy.gov.cn/eng/dshd/202504/t20250402_11587111.htm
  13. https://www.reuters.com/world/china/china-launches-113-billion-free-trade-experiment-hainan-island-2025-12-18/
  14. https://www.newsweek.com/china-spends-113-billion-on-hong-kong-rival-roughly-the-size-of-maryland-11253923
  15. https://www.indexbox.io/blog/china-launches-hainan-island-as-separate-customs-territory-to-boost-trade-and-join-cptpp/
  16. https://www.meti.go.jp/english/policy/economy/industrial_council/pdf/250603008_03.pdf
  17. https://www.trademinister.gov.au/minister/don-farrell/media-release/australia-hosts-cptpp-trade-talks-melbourne
  18. http://english.scio.gov.cn/pressroom/2025-05/09/content_117866500.html
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  31. https://www.uktpo.org/briefing-papers/joining-the-cptpp-economic-opportunities-and-political-dilemmas-of-future-expansions-for-the-uk/
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  34. https://www.csis.org/analysis/look-skeptically-chinas-cptpp-application
  35. https://www.dfat.gov.au/trade/agreements/in-force/cptpp/joint-ministerial-statement-occasion-ninth-commission-meeting-cptpp
  36. https://www.mfat.govt.nz/jp/trade/free-trade-agreements/free-trade-agreements-in-force/cptpp/have-your-say
  37. https://www.dfat.gov.au/trade/agreements/in-force/cptpp/commission-meetings
  38. https://publicprocurementinternational.com/wp-content/uploads/2025/08/2025_34_PPLR_Issue_4_Print_Press-Proof_Offprint.pdf
  39. https://www.dfat.gov.au/trade/agreements/in-force/cptpp/news
  40. https://globaldataalliance.org/wp-content/uploads/2024/08/08012024gdacptpp.pdf

インドネシアとEAEUがFTA署名、関税90%超で優遇 何が変わるのか

2025年12月21日、インドネシアとユーラシア経済連合(EAEU)が自由貿易協定(FTA)に署名しました。EAEU側は、関税分類ベースで全体の90.5%の関税ラインにインドネシア産品への優遇税率を適用し、その対象はインドネシアからの輸入額の95.1%をカバーすると説明しています。

EAEUはロシア、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスからなる経済統合圏で、人口は約1.8億人規模です。一見すると政治ニュースで終わりがちですが、実務目線では、関税削減だけでなく原産地・通関・規格認証などの運用が変わる可能性があり、日本企業の輸出入採算とサプライチェーン設計にも影響し得ます。


まず押さえるべき前提:EAEUの範囲と協定の段階

EAEU(ユーラシア経済連合)は、ロシア、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスの5カ国から成る関税同盟・共通市場です。今回のFTAは、サンクトペテルブルクで開催された最高ユーラシア経済評議会の会合の場で署名されました。

署名後は、各締約国での批准など国内手続を経て発効する流れです。「署名=即日ゼロ関税」ではありません。インドネシア側の説明では、批准・実施準備を踏まえた発効時期として2026年末から2027年頃の実施を想定する旨が報じられており、経営判断上の重要なタイムラインとなります。


「90.5%の関税ライン優遇」の読み方

報道で強調されている「90.5%」は、EAEU側がインドネシア産品に対して優遇を与える関税ライン比率を指します。関税ラインとは、各国のHSコード(品目分類)をさらに細分化した課税単位です。「90.5%」は優遇対象ラインの広さを示すもので、すべての対象ラインが即時ゼロ関税になることを意味するわけではありません。段階的撤廃、例外品目、数量割当、原産地要件などが通常セットで設計されます。

EAEU側の発表では、インドネシア側もおおむね90%程度の関税ラインで優遇アクセスを開放します。EAEU産品に対してインドネシアが適用する平均関税率は、自由化の進展に伴い10.2%から約2%へ大きく低下する見通しです。また、EAEUがインドネシアに与える優遇は、関税ラインベースで90.5%、金額ベースではインドネシアからの輸入額の95.1%をカバーします。実需に近い指標としては「金額カバー率」のほうがインパクトを把握しやすい場合があります。


何が売れやすくなり、何が入りやすくなるか

インドネシアからEAEUへ:輸出機会が広がる品目

報道・政府コメントでは、インドネシアからEAEU向けの主な輸出拡大候補として、パーム油とその派生品、履物、繊維・繊維製品、水産品、天然ゴム、家具、電子機器などが挙げられています。インドネシア側の説明では、これに加えてコーヒー、カカオ、アルミナ関連なども主要な輸出品として言及されています。

EAEUからインドネシアへ:調達コストが変わり得る品目

EAEU側の公表では、インドネシア向けの有望品目として、小麦等の穀物、粉類・パンなどの農産加工品、魚・牛肉、乳製品(粉ミルク、チーズ等)、ミネラルウォーターなどの食品分野が示されています。

工業品では、鉄鋼・非鉄金属などの冶金品、石油製品、石炭、肥料、基礎ポリマー、合板・家具などの林産品、建設機械や各種設備が例示されています。一次素材や燃料・肥料系の調達コスト構造が変わり得るとされています。

重要なのは単純な関税率の上下ではなく、国内製造原価や調達先多元化の選択肢が広がる点です。特に肥料や原燃料、ポリマー等は価格変動が損益計算書に直撃しやすい領域であり、関税条件の改善は購買戦略・契約条件の見直しに直結します。


貿易額と「伸びしろ」の現状整理

インドネシア政府の統計によれば、2024年のインドネシアとEAEUの相互貿易額は約45億ドル(輸出約18.9億ドル、輸入約26.3億ドル)です。また、2025年1月から10月の貿易額は約44億ドル(輸出17.6億ドル、輸入26.4億ドル)と報じられており、現状でも一定のボリュームがある関係です。

EAEU側は、協定発効後3年から5年で貿易が倍増し得るとする見通しを示しており、インドネシア側からも「貿易を約2倍に増やす」期待が表明されています。数字の実現可能性は別として、両サイドが「伸ばす前提」で制度設計をしている点そのものが、企業にとって重要なシグナルといえます。


実務で効くのは関税だけではない:非関税分野の変化

ユーラシア経済委員会(EEC)は、今回の協定が関税削減だけでなく、技術規格、衛生・植物検疫(SPS)、通関手続、原産地規則、貿易円滑化など、貿易の予見可能性を高める規律を含むと説明しています。協定は全15章構成で、市場アクセス、貿易円滑化、経済協力といった分野をカバーしており、実際の通関難易度や規制対応コストが変わる余地があります。

インドネシア側も、法的確実性の向上、貿易・投資の予見可能性、サプライチェーン統合の促進といった観点から、このFTAを戦略的な枠組みとして位置づけています。


日本企業の視点:どのような会社に影響が出やすいか

1. インドネシア生産拠点を持ち、第三国市場を狙う企業

インドネシアで生産し、EAEU向けに輸出する場合、協定税率の適用によって価格競争力が変わります。自動車部品、家電などの消費財に加え、パーム油派生品、ゴム製品、家具、電子機器なども主要な輸出候補です。ASEAN内輸出だけでなく「非伝統市場」としてのEAEUをターゲットに含める余地が生まれます。

2. 一次素材・肥料・燃料関連を輸入する企業

インドネシアがEAEU産品に適用する平均関税率を約10.2%から2%へ引き下げる見込みであることから、EAEUからの一次素材・肥料・エネルギー関連の輸入コストは再試算対象になります。複数年契約や指数連動価格、関税転嫁条項がある取引では、協定発効タイミングに合わせた契約更改や価格調整の論点が増加します。

3. 規制対応コストが重い業種

水産品や食品、化学品、電気機器などの業種では、技術基準や認証、衛生・植物検疫(SPS)要件が実質的なボトルネックになりやすく、関税メリットを取りに行くほど品質保証・認証対応の体制整備が重要になります。

加えて、EAEUにはロシアやベラルーシが含まれるため、制裁・輸出管理・金融制約(決済・保険・輸送)の観点から、取引可否やスキーム設計を社内ガバナンスの論点として早期に切り分けておく必要があります。


企業が今からやっておくべきチェックリスト

対象品目の棚卸し
EAEU向けに輸出し得る製品、およびEAEUから調達している原材料・部材を洗い出し、HSコードを確定する。

税率シミュレーション
現行税率と、協定発効後の想定税率(即時撤廃か段階撤廃か)を分けて採算表を作成し、「90.5%」という全体数字ではなく、自社の該当ラインで影響を確認する。

原産地設計
協定税率を利用するには、協定の原産地規則を満たし、必要書類を整備する必要がある。サプライヤー証明、工程記録、BOMの整備は前倒しで進めるほど有利になる。

非関税要件の確認
食品・化学品・電気機器などは、規格・表示・許認可・SPS/TBT要件が取引コストを左右するため、関税メリットが大きい品目ほど、ここがボトルネックになりやすい。

発効時期のモニタリング
署名後は各国の批准と実施制度の整備が進む。インドネシア側は2026年末から2027年頃の実施を念頭に置いており、年度計画・投資計画・契約条件の見直しに織り込む必要がある。


まとめ:90%超の優遇は大きいが、勝負は発効後の運用

インドネシアとEAEUのFTAは、対象関税ラインの広さ(90.5%、金額ベース95.1%)という意味でも、双方が貿易倍増を見込むという意味でも、大きなポテンシャルを持つ枠組みです。

ただし、企業の利益に変わるのは、発効後に関税スケジュールを読み切り、原産地と通関運用を設計し、規格・認証・制裁といった非関税要件の壁を乗り越えた企業からです。

発効までの時間を準備期間として活かし、HSコードの確定、原産地設計、契約条件の見直し、書類・データ体制の整備までを前倒しできるかどうかが、「制度が動いた瞬間に先行できるか」を左右します。


出典一覧

本文書は以下のソースに基づいています:

  1. Reuters – Indonesia signs free trade deal with Russian-led Eurasian Economic Union
  2. Xinhua News – EAEU-Indonesia FTA agreement details
  3. Antara News – Indonesia seals FTA with EAEU
  4. Eurasian Economic Commission – Official FTA announcement
  5. Xinhua News – EAEU preferential tariff coverage data
  6. Global Banking and Finance – Indonesia-Russia trade overview
  7. Russia’s Pivot to Asia – EAEU-Indonesia FTA analysis
  8. PolGeoNow – What is Eurasian Union
  9. Russia’s Pivot to Asia – Supreme Eurasian Economic Council meeting analysis
  10. Interfax – EAEU trade priorities
  11. Instagram – Indonesian government announcement
  12. VOI – Indonesia tariff reduction details
  13. IDN Financials – RI-EAEU FTA signed
  14. WAM – Indonesia eyes 100% trade rise with EAEU
  15. The Star – Indonesia inks trade deal with EAEU
  16. Polyester Time – Indonesia-Eurasian Economic Union FTA
  17. The Jakarta Post – RI inks trade deal with EAEU
  18. Business Times Singapore – Indonesia signs FTA with EAEU
  19. Kontan English – Indonesia signs free trade deal
  20. Reuters – Indonesia expects to sign FTA (June 2025)
  21. Migrant Times – Indonesia signs FTA with EAEU

日・バングラデシュEPA大筋合意が示す「次の一手」関税だけではない、投資・デジタル・政府調達まで含む新ルールをどう使うか

2025年12月22日、日本政府はバングラデシュとの経済連携協定(EPA)が大筋合意に至ったことを公表しました。外務大臣とバングラデシュ暫定政権の商業顧問との電話会談で合意を確認し、今後は署名に向けて協力していくとしています。(Ministry of Foreign Affairs Japan)
経済産業省も、2024年3月に交渉開始を決定し、2025年12月22日に大筋合意に至ったことを整理しています。条文などの詳細は後日公表予定です。(Ministry of Economy, Trade and Industry)

ビジネスの現場で重要なのは、これが「関税が下がるニュース」にとどまらない点です。公式の概要資料を見ると、物品の関税だけでなく、投資、電子商取引、政府調達、知的財産、国有企業、補助金、競争、労働、透明性など、企業活動の前提となるルールが一体で整備される設計です。
以下では、特に企業の売上とコストに直結する論点に絞って深掘りします。

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1 まず押さえるべき結論
今回のEPAは、日本企業にとって「バングラデシュ市場で勝つための価格条件」と「現地で動くための制度条件」を同時に取りにいった合意

EPAは一般に、関税撤廃だけでなく、投資や人の移動、知財、競争政策などを含む幅広い枠組みです。外務省もEPAとFTAの違いとして、EPAがより広い分野のルールと協力要素を含むことを明示しています。(Ministry of Foreign Affairs Japan)
今回の合意もまさにその設計で、現地で商売を作る人ほど効いてきます。

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2 物品市場アクセスのインパクト
鉄鋼、機械、自動車部品、食品の「価格競争力」が中長期で変わる

公式概要資料には、バングラデシュ側の高関税品で関税撤廃が進むと明記されています。特に象徴的なのが鉄鋼です。

・鉄鋼は最大56.6%の関税があり、約9割の品目で18年以内に撤廃
・自動車部品はタイヤやエンジンなど、多くの品目で15年以内に撤廃
・乗用車(完成車)は、将来にわたり他国に劣後しない特恵待遇を確保

ここでのポイントは「即時ゼロ」ではなく「段階的」であることです。とはいえ、最大56.6%という水準が示す通り、関税は価格に直撃します。例えば、同じ製品・同じ物流コストでも、関税の扱いが変われば、見積りの勝率が変わる。特に、インフラ、建設、製造業向けの素材・部材・設備は、導入のたびに比較されるため、数%の差が意思決定を左右します。

もう一つ見逃せないのが、日本側の輸出重点品目です。日本側は、国内の重要品目は守りつつ、輸出攻勢をかける品目で関税撤廃を取りにいっています。

・コメなど重要5品目を含む多くの品目を関税削減・撤廃から除外
・一方で、和牛肉、ぶり、たい、ほたて、りんご、ぶどう、緑茶、醤油などを中心に、即時から18年以内の関税撤廃を獲得

食品メーカーや商社にとっては、単なる嗜好品ではなく、外食・ホテル・小売の上位セグメントを押さえる入口になります。現地の中間層拡大と、日系企業が関与するインフラ投資の増加が重なると、食の需要は連動して伸びやすいからです。

さらに全体像として、物品市場アクセスのカバレッジも大きい。

・バングラデシュは、日本からの輸入額の約83%を無税に
・日本は、バングラデシュからの輸入額の約91%を無税に

ここは、営業部門だけでなく、調達・経理・SCM部門にも重要です。無税化の対象かどうかで、製品別の損益が変わり、ひいては供給網の組み替え判断が変わるためです。

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3 対日調達の論点
アパレルの「関税ゼロの継続」が、調達戦略の安定材になる

日本の輸入側から見たとき、バングラデシュは繊維衣料の比重が極めて大きい取引相手です。公式資料では、バングラデシュから日本への輸入の84%が繊維衣料、9%が皮革・履物という構造が示されています。

この文脈で重要なのが、バングラデシュのLDC卒業です。LDC卒業後は、これまでの特恵関税(原則無税)を前提にしたビジネスモデルが揺らぐ可能性があります。ジェトロは、国連総会決議に基づきバングラデシュが2026年11月にLDC卒業予定であること、卒業により特別特恵関税の適用がなくなる点を整理しています。(JETRO)
外務省のLDC解説ページでも、バングラデシュは2026年に卒業予定と明記されています。(Ministry of Foreign Affairs Japan)
国連機関(UNCTAD)も、国連総会が2026年の卒業を推奨したことを示しています。(UN Trade and Development (UNCTAD))

今回のEPA概要資料では、日本市場へのアクセスとして「繊維製品への関税は即時撤廃(現行はLDC特恵で無税)」と書かれています。要するに、現状のゼロ関税を制度的に固定する狙いが読み取れます。

調達担当者の観点では、ここが最大の安心材料です。チャイナプラスワンや供給網分散を進める企業にとって、関税条件が読めることは、工場選定や長期契約の前提になります。関税が読めなければ、最終的に価格転嫁できず、サプライヤー再編の手間が増えるからです。

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4 関税以上に効く「ルール整備」
投資、電子商取引、政府調達、透明性が、現地のやりにくさを減らす方向

今回の概要資料が示すもう一つの柱がルールです。物品の関税だけでは、実務は動きません。通関、契約執行、政府案件、デジタル取引、ガバナンスなど、日々の摩擦がコストになるからです。

資料では、投資、電子商取引、政府調達、知的財産、国有企業、補助金、競争、労働を含む幅広い分野でルールを整備するとしたうえで、例として次のような項目が挙げられています。

・政府調達の市場アクセスを相互に約束
・電子商取引で、ソースコードの移転およびアクセス要求の禁止を規律
・透明性、税関手続・貿易円滑化などで汚職・腐敗防止に関する規律
・労働、透明性、国有企業などは独立の章で規律

これらは、設備産業、IT、プラント、物流、商社など、現地の制度と付き合う企業ほど効果が大きい領域です。特に政府調達は、インフラ関連や公共サービス関連のビジネスに直結します。デジタル領域では、ソースコードの扱いが明文化されるだけでも、システム提供やSaaS展開の心理的ハードルが下がります。

加えて、サービス分野の自由化も明確です。

・バングラデシュは、WTO分類に基づく約150のサービス分野のうち約100分野で自由化を約束
・従来は16分野のみ約束だった

対象として、コンピュータ関連サービス、建設・エンジニアリング、運送サービスなどが例示されています。
この部分は、製造業だけでなく、ITベンダー、建設、物流、専門サービスの企業にとってもチャンスです。

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5 企業が今からやるべきこと
発効前から勝負は始まっている。準備の差が、最初の案件の差になる

大筋合意はゴールではなく、実務のスタート地点です。条文や附属書(関税率表、原産地規則、サービスの約束表など)の公表はこれからで、署名と国内手続きを経て発効に至ります。経産省も条文等は後日公表予定としています。(Ministry of Economy, Trade and Industry)
したがって、現時点でおすすめできる動きは、交渉結果の確定を待つのではなく、確定した時に最短距離で動ける状態を作ることです。

実務向けチェックリスト(最小構成)

1 自社の対象品目を特定する
輸出入ともに、HSコードで棚卸しをして、関税撤廃の対象か、段階が何年なのかを確認できる形にしておく。

2 価格式を関税前提から組み替える
関税が下がるほど、競合は値下げしてきます。自社だけが据え置くと利益は出るが案件が取れない、という状態になりがちです。いつ、どの市場で、どの製品を攻めるかの優先順位を先に決める。

3 原産地規則と証明の運用を前倒しで設計する
特恵を使うには、原産性の証明と書類運用が必須です。調達先が複数国にまたがる企業ほど、調達設計の段階で詰めないと、現場が回りません。

4 現地パートナーと政府案件の目線合わせをしておく
政府調達やインフラ関連を狙う場合、現地企業とのコンソーシアム、施工体制、アフターサービスまで含めて、EPA発効後の提案型営業を想定しておく。

5 調達側は長期契約の前提条件を見直す
バングラデシュからの調達を増やすなら、関税だけでなく、納期、監査、労務・人権、トレーサビリティなどの要件も同時に強化される前提で設計する。EPAには労働分野の章が独立して設けられる方向性が示されています。

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6 まとめ
このEPAは、バングラデシュを「コスト調達先」から「成長市場」へ引き上げる土台になり得る

今回の大筋合意は、鉄鋼や自動車部品など、バングラデシュの高関税領域での関税撤廃を中長期で取りにいく一方、日本からの重点輸出品目(和牛、水産物、果物、緑茶、醤油など)を押し込む内容が見えます。
同時に、投資、電子商取引、政府調達、透明性などのルール整備によって、現地での事業運営コストを下げる方向性が示されています。

そしてLDC卒業が見えているバングラデシュにとって、対日輸出の制度条件を確保する意味も大きい。日本側にとっては、調達の安定化と、グローバルサウスでの市場開拓を同時に進める材料になります。(JETRO)

条文と附属書が公表される瞬間から、実務の競争が始まります。関税率表を見てから動くのではなく、見た瞬間に動ける体制を作っておく。これが、今回のニュースを事業成長に変える最短ルートです。

参考情報
1 外務省:日・バングラデシュ経済連携協定の大筋合意(報道発表)(Ministry of Foreign Affairs Japan)
2 外務省:日・バングラデシュEPA概要資料(大筋合意の概要)
3 経済産業省:日・バングラデシュ経済連携協定(EPA)(Ministry of Economy, Trade and Industry)
4 ジェトロ:バングラデシュのLDC卒業予定とEPA交渉状況(JETRO)
5 UNCTAD:国連総会が2026年の卒業を推奨した旨の整理(UN Trade and Development (UNCTAD))