弊社は自分自身の勉強もかねて、FTA原産地証明の証拠書類の作成と日本商工会議所への提出、やりとりの代行業を行っています。
顧客から依頼され、打ち合せの後に作成した証拠書類をもって京都の商工会議所に申請をしました。
その問い合わせが昨日ありました。
「規則に関しては、インドの場合、品目別規則ではなく、一般規則がこの場合適用されますので、修正をお願いします。」
気をつけているのですが、単純ミスをしてしまいました。
修正後、再申請。10分もかからずに判定の承認が下りました。
世界で有利に戦うためのコツ
昨今、FTAの検認がかなり増えました。
当社のお客さんの相談も検認が半分を超えるようになっています。
また、RCEPでの検認も始まったようで、検認増加傾向は今後も続きそうです。
検認のサポートを様々経験してきて、感じたことがあります。
自己証明の場合、税関が窓口となりますが、税関が原産性を確認する際に見る視点が日本商工会議所とはどうやら違います。
日本商工会議所は原産地証明書発給の前に証拠書類を見ているのですが、税関は検認時に証拠書類を見るため、見るタイミングが確かに違います。
ただ、組織の傾向から検認時に気をつけなければいけないことがあることが最近の経験から分かってきました。
問題の無い原産地証明と証拠書類を作れば、どんなFTAの検認でも問題ないのは事実です。
ただ、この傾向を知ると知らないでは検認時の対処方法も違ってきますね。
検認が来ると、日本商工会議所や税関から問い合わせが来ます。
その際の回答を手伝うことが多いのですが、皆さんどの様な回答書を用意していますか。
一番感じる疑問は、「相手が分かるように正しく情報を伝達しているか。」ですね。検認での最初の問い合わせは「原産かどうかを示してください」になります。
企業側は輸出した産品の原産性を立証する必要があるのですが、その説明がわかりにくいことが大変多いですし、また、趣旨からずれる回答を記載されているケースが多くあります。
事実のみを簡素に伝えましょう。初期は過剰な情報も必要ありません。QC工程図など企業内部の人は分かるかもしれないが、初見の人が見て分からないものは分かるように加工(改変ではない)して示すべきでしょう。
相手を納得させる技術は本来生きていく際に必要だと思います。家庭でも、友人関係でも。相手が分かるか、という観点で提出資料を眺めてください。
私は長い期間コンサルタントなので、徹底的に鍛えられてきました。いきなり素晴らしい説明は難しいのかもしれませんが、「相手はこの回答書をどの様に見るだろうか」を考えつつ、書類を作成しましょう。
このスキルは他の場面にも有効ですよ。
第三者証明では、日本商工会議所に原産地判定を申請して承認が得られないと特恵原産地証明書の発給を受けることが出来ません。
それ故に、原産地証明の証拠書類が出来ると、日本商工会議所(実際は8つの商工会議所事務所から1つを選択)に証拠書類を提出し判定依頼を依頼します。
困るのは、そこで商工会議所から指摘されることが的を得ていない場合があること。
当社は企業に代り、原産地証明を行い、商工会議所に判定依頼をし、やりとりをして判定を受けるまでを代行業として行うことをしています。
FTAのコンサルティングと称して、原産判定までを具体的にやったことのない企業は信用できませんからね。理屈だけの企業が残念ながら存在するのは業界として困ったものです。当社は原産の判定を行う全ての商工会議所とのやりとりを経験しています。彼らの指摘ももっともだと思うところは、当然反映し、今後の代行業での糧としています。
今回は日インドCEPAの活用だったのですが、一般規則の適用品でCTCとVAを用意しなければなりません。ご存じの通り、CTCとVAでは対象となる部材表が違います。それに従って証明せねばなりません。
当社が提出した商工会議所からの指摘事項には納得がいきませんでした。いくつかあります(多くはこの場では伏せます)が、一番びっくりしたのはCTCの対比対象外の部材にもHSコードを付番せよとのこと。今までにも多くのインド向けの証明をしてきましたが、このような指摘は初めてです。
当方が指摘に対して主張をして、先方が当方の主張に対し、日本商工会議所国際部と打ち合せをした上で再び戻ってこられた回答は、HSコードの付番は必要ないが、表記はこうしてほしいということ。そこで戦っても仕方ないので、追加の表記は了承し、原産判定が下りました。
商工会議所の指摘事項は、「こうしなさい」と来るので、「通常の企業の人はそれに従うんだろうな。」と思うことが割とあります。(彼らの名誉のために申せば、なるほどと思うことも多くあります)
民間コンサルタントの私と、商工会議所の見解と企業はどちらをまず信じるかと言えば後者ですよね。それ故に、「おかしい」との文句が当社に来ます。当方は本当に困るのです。当方の間違いなら致し方ないのですが、多くを経験しているので、「この指摘、おかしい」と思うことがしばしあるのです。
今回の件の1つの事例、対象外の部材に対してHSコードを付番することは労力がとてもかかります。はっきり言って不必要です。指導される方は多くの案件をかかえてらっしゃるのでしょうが、もう少し勉強されたらと思います。また、商工会議所間での認識のギャップはいまだ解決されておらず、Aの商工会議所ではOKだったものが、Bではだめというものがあります。
商工会議所からの原産地証明の指摘事項、ありがたいことではありますが、当方もよく学んだ上で、指摘を咀嚼して、不必要なものは不必要と言えるようにならねばなりません。
今年に入り、相談事の多くがFTAにおける検認になりました。
それも、RCEPでの中国、韓国の検認発生がまだ確認できていない現段階です。中国、韓国からの検認が始まるとどうなってしまうのか、考えると恐ろしいです。
ご存じの通り、検認は数年前のFTA利用に対してやってきます。それに対してちゃんとした証拠書類をあらかじめ準備し、しかるべき社内での組織対応が確立されていれば何の問題もありません。
しかし、それが出来ていないために、企業内でのバタバタが発生してしまう。過去のものなので、検認を想定した証拠書類もないし、組織も出来ていないため、対応に苦慮している企業が多すぎます。
比較的多く感じるのは、日タイEPAと日EU EPA。
タイは積極的に検認を行っています。まぁ、彼らの積極性はとある理由から発生しているのですが。この国は、一度検認で原産性を否認することがあると検認をたたみかけてきます。ですので、最初の検認が肝心。関税を取れるところから撮ってやろうというきがありありです。
また、EUでの検認ではイタリアが目立ちます。イタリアが多いのは正直意外でした。が、仲間内で話していて、「税金が足らないのでは」という声に、妙に納得してしまいました。
検認はその対応体制としかるべき証拠書類が整っていれば、恐れるものではありません。手際よく行えば、すぐに終わるものです。大半の日本企業がそうでないのは、FTAを利用したいがために、日本商工会議所からの原産判定を取ることばかりに意識がいっているためです。
FTAで大事なのは、検認対応から考える原産地証明を行う事。日本商工会議所の原産判定が下りることが目的とすると検認で大変な目にあいますよ。
ここから当社の営業になりますが、自社が検認対応できているかを確認できる「無料FTA監査サービス」を行っています。(遠方の企業の方には申し訳ないのですが、交通費、場合により宿泊が必要な場合は、宿泊費は頂戴します)、備えあれば憂いなしと言います。一度ご検討ください。
詳細は、こちらをご覧下さい。
EPA相談デスクや弊社への問い合わせで多いのが、並行輸出でのFTA利用です。
日本で商品を仕入れ、海外で販売するケースで、メーカーからの承認を得ない並行輸出(?)で、輸入者からFTAの原産地証明書を要求され、どうしたら作成できるかという問い合わせが昔からよくあります。
昨日も同様の質問がありました。
電機製品をベトナムに輸出するのですが、そのメーカーからベトナムでの販売を認められていない中でのFTA適用。
パーツリストがあるので、証拠書類は作れるのでは?といわれましたが、その証拠書類をメーカーが正しいとは判断しないので、無理ですよとお答しました。
他の会社が同様の環境で商工会議所から原産地証明書を取得できているとのことで、自分たちも出来ると思ったようです。
過去と現在では、商工会議所の証拠書類提出義務やそのチェックの厳密性は違うため、その会社はその枠をすり抜けることができたのかもしれません。
テクニカルには証拠書類が準備出来るでしょうが、メーカーの承認の無いものだと、その証拠書類が正しいとは言えないため、企業には「やめた方がいいですよ。」とお伝えしています。
仮に、商工会議所により原産が承認されたとしても、検認時にその正当性が問われた場合、メーカーは「承認していない」となるはずなので、原産性が否認されます。そうなると、輸入者は関税相当額とその他諸々を支払う義務が出ます。
それらが全て輸出者に転嫁されるため、費用負担とビジネスを失うリスクを生じさせます。
余りいい未来が見えません。