結論:
サプライチェーンに「メーカー → 商社(中間業者) → 米国の買い手」という三者売買があるときでも、条件を満たせばメーカー→商社の“最初の売買価格”で関税評価してよい、と連邦巡回控訴裁(CAFC)がはっきり示した有名判決です。以後の“ファーストセール”の土台になりました。Justia Law
何が起きた?
- 当事者と品目:
メーカー=川崎重工(日本)、中間業者=日商岩井、米国の買い手=NY州の公共交通当局(MTA)。品目は地下鉄の車両。Justia Law - 争点:
米国税関(当時)は**「商社→MTAの価格(高い方)」で関税計算。日商岩井側は「メーカー→商社の価格(低い方)」**を使うべきと主張。Justia Law - 判決(1992年):
連邦巡回控訴裁は商社→MTA価格ではなく、メーカー→商社価格で評価すべきと判断し、下級審(CIT)の判断を覆しました。Justia Law
何を基準にしたの?(“Nisshoテスト”)
判決は、最初の売買価格を使える条件を整理しました。要はこの3点です:
- 米国向けに明確に仕向けられている(clearly destined for the U.S.)
- **真正な売買(bona fide sale)**がある
- アームズレングス(関連者間でも価格が歪んでいない)
これらを満たすとき、メーカー→中間業者の価格を取引価格(transaction value)として採用できる、と明記しています。Justia Law
その後、実務ではどう運用されている?
- 財務省決定 T.D. 96-87とCBP裁決が、Nisshoの考え方を具体化。
「インポーター申告価格が原則」だけど、上の3条件を書面で立証できれば**“ファーストセール”が使える**、という運用が確立。必要書類は契約/PO/各段のインボイス・支払証跡/B/Lなど完全なペーパートレイル。Customs Mobile - CBPの**インフォームド・コンプライアンス(ICP)でも、“真正な売買”と“米国向け売買”**の確認ポイントが案内されています。U.S. Customs and Border Protection
ビジネス目線での要点
- イメージ:
メーカー(日本) → 商社(海外) → 米国輸入者
↑この左側の最初の価格で評価できれば課税ベースが下がる=関税コストが下がる。ただし3条件+証憑がカギ。Justia LawCustoms Mobile - 実務Tip:三者でNDA→書類共有→数SKUで試行→照会対応の型を作って横展開。CBPはケースバイケースで見るので、書類の厚みが成否を分けます。Customs Mobile