フィリピンにおけるHSコード事前教示制度(ARTC)実務ガイド

本文書は、フィリピン共和国(Republic of the Philippines)のHSコード「事前教示(Advance Ruling on Tariff Classification:ARTC)」制度について、CMTA(関税近代化及び関税法=RA 10863)第1100条・第1103条、タリフ・コミッション(Tariff Commission:TC)の公式資料、および税関(Bureau of Customs:BOC)通達に基づきまとめたものです。

所管組織と公式窓口

管轄機関:Tariff Commission(TC)

HSコード分類の事前教示(ARTC)はTCが発給します。申請はTCIS-OAS(Tariff Classification Information System – Online Application System)からオンラインで行います。

別制度との区別:関税評価および原産地に関する事前教示はBOCが所管しており、CAO 03-2016により制度化されています。分類ARとは別窓口・別手続となります。

事前教示(ARTC)のプロセス

申請時期:輸入または輸出の少なくとも90日前に申請する必要があります(1申請=1品目)。

オンライン申請:TCIS-OASで申請情報を入力し、必要資料をアップロードします。状況によりサンプル提出の指示がある場合があります。

審査・追加照会:TCが資料の十分性を審査し、追加資料や実地確認を求める場合があります。

発給:適式な申請受理後、原則30日以内にAdvance Rulingを発給します(CMTA第1100条に基づく法定期限)。

公表と周知:発給されたARTCはTCサイトに掲載され、BOCにも回付・周知されます。

BOCでの取扱い:TCの分類裁定はBOCを拘束します(財務大臣が別段の決定をしない限り)。通関時はARTC番号に基づき同一貨物であることを示すことが実務上求められます。

申請に必要な情報・書類

申請様式:TC Form 1(Application for Advance Ruling on Tariff Classification)を使用します(TCIS-OAS入力または様式準拠)。

品目情報:品名、ブランド・型式、メーカー、原産国、相手国HS(把握している場合)、詳細な製品説明(機能・用途・構造・原理・材質・組成比率・製造工程・包装形態など)。

裏付資料:カタログ、取扱説明書、図面、写真、組成証明書、MSDS(該当する場合)、COA、サンプル等。

委任状:代理人による申請の場合は権限委任状が必要です(テンプレートあり)。

注意事項:ARTCは規制品目の許認可ではありません。所管官庁の規制の有無は別途確認が必要です。

処理期間

法定期限:適式・完備された申請の受理から30日以内に裁定を発給します(CMTA第1100条)。追加提出が必要な期間は別途加算されます。

実務目安:十分な技術資料が初回から揃っている案件では、30日以内の発給が一般的です。

有効期間

原則5年間

発給されたARTCには「発給日から5年間有効(法令・事実の変更までは継続適用)」と記載されています。

注意:HS改訂(例:AHTN 2012からAHTN 2017への移行)時には、旧版に基づくARTCは無効となります。

手数料

申請手数料:₱500/品目(Filing Fee)

Legal Research Fund(LRF):₱10/品目

※TC Form 1の「For TC Use Only」欄に明記されています。

その他の重要事項

申請主体:輸入者または輸出者が申請可能です(CMTA第1100条)。

申請条件:1申請=1品目、90日前提出の原則があります(CMTA第1103条)。

拘束力の範囲:TCの分類裁定はBOCを拘束します(財務大臣が別段の決定をしない限り)。

公開性:ARTCはTCサイトに掲載され、BOCへ定期的に通知されます(TCC/ARとして各税関へ周知)。先例調査に活用できます。

別制度との混同注意:評価・原産地の事前教示はBOC所管(CAO 03-2016等に基づく)であり、分類のARTCとは別手続・別様式です。

申請実務チェックリスト

  • TCIS-OASで申請者登録を行い、TC Form 1に準拠して入力する
  • 90日前申請・1申請=1品目の原則を順守する
  • 用途・機能・構造・原理・組成比率・工程を図面・写真・カタログで裏付ける
  • サンプル提出や追加照会に迅速に対応できる体制を整える(30日処理の前提)
  • 手数料:₱500+₱10/品目を準備する
  • 発給後の管理:有効期間5年、法令・事実変更で改廃あり、通関時はARTC番号で同一性を示す

主要法令・根拠

  • CMTA(RA 10863):第1100条(30日内の裁定;BOC拘束)、第1103条(90日前・1申請1品目)
  • TCIS-OAS:オンライン申請システム
  • TC Form 1:公式申請様式(₱500+₱10、提出資料・委任状テンプレート等)
  • BOC周知文書:TC発給のARTC(TCC/AR)の配布・拘束性の明示
  • 有効期間の明記:発給されたARTC文面に5年間有効と記載

 

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