掲載記事に関するお詫びとご報告

平素は本ブログをご愛読いただき、誠にありがとうございます。

この度、本ブログに掲載いたしました「https://global-scm.com/hscf/archives/838 」の記事内容(税関のAIシステムに関する記述)につきまして、税関当局より「公表している事実はない」とのご指摘をいただきました。

社内にて事実関係を精査いたしましたところ、当該記事は生成AI(人工知能)によって作成された仮想の情報に基づいたものであり、実在しないニュースが含まれていることが判明いたしました。情報の真偽を確認することなく、誤った情報をあたかも事実であるかのように発信してしまったことは、情報発信者として極めて不適切な行為であり、深く反省しております。

本件により、税関関係者の皆様、および読者の皆様に多大なるご迷惑とご不快な思いをさせたことを、心より深くお詫び申し上げます。

当該記事につきましては、速やかに削除いたしました。今後は外部情報の取り扱いにおいて厳格な事実確認プロセスを徹底し、二度とこのような事態を繰り返さないよう、情報精度の向上と再発防止に努めてまいる所存です。

重ねて、この度の不始末を深くお詫び申し上げます。

2024年2月4日
株式会社ロジスティック
代表取締役 嶋 正和

監査で困らないHSコード管理:監査対応に耐える3種のドシエ雛形

HSコードの見直しは、単に番号を合わせる作業ではありません。監査で問われるのは「その番号にした理由を、第三者が追跡できる形で説明できるか」です。
そのために必要なのが、結論ではなく根拠と証跡を束ねたドシエです。

本記事では、監査対応に耐えるためのドシエを3種類に分解し、雛形としてそのまま社内展開できる粒度まで深掘りします。なお、個別商品の最終判断は税関照会や専門家レビューを前提にしてください。


そもそもHSコードは何が「監査対象」になりやすいのか

HSは、世界税関機構が策定する国際的な品目分類で、6桁コードを世界標準として運用します。各国は6桁の後に自国用の細分を追加できます。(世界税関機関)
HS分類は、見出し語だけでなく、解釈ルールに従って行うことが前提です(一般解釈規則)。(世界税関機関)
さらに、分類の公式解釈の中核資料として解説書(Explanatory Notes)が位置づけられています。(世界税関機関)

日本実務で重要な注意点は「申告で使う桁数」です。日本では申告に9桁の統計品目番号を用い、上6桁は国際共通のHS、下3桁は国内細分です。輸出と輸入で国内細分が一致しない場合があります。(税関総合情報)
この「国際6桁と国内細分のズレ」や「製品仕様変更に伴う分類影響」が、監査で火種になりやすいポイントです。


監査でよく出る質問は、だいたいこの5つ

監査対応を強くするには、質問パターンを先に固定しておくのが近道です。

  1. その商品は何か(機能、材質、構造、用途、セットの有無)
  2. なぜその分類か(どの解釈ルールと注に基づくか)
  3. 競合する分類は何で、なぜ排除したか
  4. 過去から何が変わったか(仕様、用途、構成、梱包、販売形態、資料)
  5. 申告や帳簿書類にどう紐づくか(どの申告・許可番号が裏付けか)

この5つに機械的に答えられるように作るのが、次の3種ドシエです。


監査対応に耐える3種のドシエ雛形

ドシエ1:製品ファクトドシエ(事実を確定する箱)

目的は、分類の前提となる客観情報を、監査で通るレベルで固定することです。
分類の議論が揉める多くの原因は、法解釈より先に「製品の事実関係」が社内で曖昧な点にあります。

雛形:最低限の構成(そのまま章立てに使えます)

  1. 基本情報
    ・社内品番、型式、取引名、申告品名候補
    ・サプライヤー、製造者、製造国
    ・用途(業務用、一般消費者用など)
    ・販売形態(単品、セット、バンドル、同梱物)
  2. 製品の中身が分かる情報
    ・材質と配合、主要成分の割合
    ・部品構成(BOM)と各部品の役割
    ・寸法、重量、電気仕様などのスペック
    ・製造工程の要点(分類に影響する場合)
  3. 機能と動作原理
    ・何をする製品か
    ・どうやってそれを実現するか(センサー、駆動、加熱、化学反応など)
  4. 画像・図面・資料
    ・外観写真(複数アングル)
    ・断面図や構造図
    ・取扱説明書、仕様書、技術資料
    ・マーケ資料は補助扱いに留め、技術資料を主にする
  5. セット・容器・包装の情報
    ・小売用セットか、部品の寄せ集めか
    ・専用ケースや容器があるか(分類影響が出やすい領域)

監査で強い書き方のコツ

・形容詞を減らす(高性能、最新、便利ではなく、数値と構造で書く)
・用途は「実際の販売・使用実態」を優先(想定用途だけだと弱い)
・仕様変更履歴を必ず残す(いつ、何が、なぜ変わったか)


ドシエ2:分類ロジックドシエ(結論に至る道筋を固定する箱)

目的は、第三者が追試できる分類判断の再現性を作ることです。
HS分類は一般解釈規則に従い、見出し語、部注・類注などを踏まえて決定します。(世界税関機関)
また、公式解釈資料として解説書が重要視されます。(世界税関機関)

雛形:分類ロジックの章立て

  1. 対象範囲の宣言
    ・この判断がカバーするSKUの範囲(色違い、容量違い、付属品違いの扱い)
    ・判断の対象外(仕様が異なる派生品)
  2. 適用するコード体系の明示
    ・国際6桁HS
    ・日本の申告用9桁(統計品目番号)
    日本では申告に9桁を用い、6桁HSと国内3桁で構成されます。(税関総合情報)
  3. 分類の結論
    ・章、項、号、国内細分までの結論
    ・品名表現(申告品名の推奨表現)
  4. 判断プロセス(一般解釈規則に沿って書く)
    ・ルール1:見出し語と注で決まるか (世界税関機関)
    ・ルール2:未完成品、混合品、組立前等の論点があるか (世界税関機関)
    ・ルール3:競合する見出しがある場合、最も具体的、主要な特性、最後の順等で整理 (世界税関機関)
    ・ルール4:類似品での整理が必要か (世界税関機関)
    ・ルール5:ケースや包装の扱いが影響するか (世界税関機関)
    ・ルール6:号以下の決定の論理 (世界税関機関)
  5. 競合見出しの排除理由
    ・候補Aを排除する理由(注により除外、機能が異なる、材質が違う等)
    ・候補Bを排除する理由
  6. 根拠資料リスト
    ・参照した解説書、分類意見、税関公表情報、社内過去判断
    解説書は国際的な公式解釈として位置づけられています。(世界税関機関)
    日本でも分類支援資料や事前教示の公表を行っています。
  7. 変更に弱い点(監査で一番効くパート)
    ・材質が変わると分類が変わる閾値
    ・付属品や同梱でセット扱いになる条件
    ・用途の変更で見出しが変わり得る条件
    ここを先に書いておくと、仕様変更時に自動でアラートを出せます。

ドシエ3:ガバナンス・証跡ドシエ(監査での説明責任を支える箱)

目的は、個々の分類の正しさだけでなく、会社としての管理体制と証跡の連鎖を示すことです。
監査対応の勝負どころは「資料があるか」だけではなく、「会社として再発防止できる統制があるか」です。

雛形:ガバナンスの章立て

  1. 役割分担
    ・分類の一次作成(貿易管理、通関部門など)
    ・技術情報の提供責任(開発、品質、購買)
    ・最終承認(責任者)
    ・通関業者が関与する場合の境界(最終責任は誰か)
  2. 品目マスター運用ルール
    ・新規採用品の分類フロー(いつ分類し、いつマスターに登録するか)
    ・既存品の見直しトリガー(仕様変更、用途変更、セット構成変更、HS改正など)
    日本税関の統計コード運用上、輸出入で国内細分が異なることがあるため、用途別にマスターを分ける判断も現実的です。(税関総合情報)
  3. 証跡と申告の紐づけルール
    日本の制度では、輸入者等に帳簿書類の保存義務があります。輸入では帳簿7年、書類5年、電子取引情報5年が基本です。
    さらに、帳簿の記載事項と書類の関係が明らかになるよう整理して保存することが求められます(許可書番号などで紐づける考え方)。
    ドシエ3には、次の紐づけ仕様を明文化して入れます。
    ・社内品番 と 申告統計品目番号 の対応
    ・社内品番 と 輸入許可情報 の対応
    ・許可書番号 と インボイス、契約書、BOM、ドシエ一式 の対応
  4. 監査対応手順(当日の動きまで決める)
    ・事前通知が来たら誰が窓口か
    ・何日分の申告を、どの粒度で出せるか
    ・質問への回答テンプレート(事実、判断、証拠、影響範囲、是正案)

輸入事後調査では、帳簿書類等の提示・提出を求められることがあり、正当な理由なく拒否等をすると罰則が科され得る旨が説明されています。
このため、ドシエ3は「出せる状態」を維持するのが核心です。

  1. 文書管理
    ・版管理(作成日、改定日、改定理由、承認者)
    ・保管場所(電子保管の場合のルール)
    ・保存期間(社内規程を関税法上の期間に合わせる)

3種ドシエを最短で立ち上げる手順

一気に全品目を完璧にしようとすると止まります。ビジネス向けには、リスクベースで回すのが現実解です。

  1. 対象選定
    ・関税額が大きい品目
    ・分類が揺れやすい品目(複合材、セット品、用途が幅広いもの)
    ・過去に修正申告や指摘があった領域
  2. ドシエ1を先に作る
    分類会議の前に、開発や購買からファクトを回収して確定させる。ここが最重要です。
  3. ドシエ2で判断を固定
    一般解釈規則の順に、競合見出しの排除理由まで書き切る。(世界税関機関)
  4. ドシエ3で運用に落とす
    マスター登録、変更管理、保存、監査対応の導線を決める。保存義務と紐づけ要件は外せません。
  5. 年次の見直しをスケジュール化
    HSは定期的に改正されます。運用としては、年次で棚卸しの枠を確保しておくと事故が減ります。(世界税関機関)

監査対応の最終兵器:事前教示をどう組み込むか

分類が難しい品目や金額影響が大きい品目では、税関への事前教示(書面回答)を戦略的に使うべきです。
事前教示は、輸入前に関税分類と税率等について照会し、回答を得られる制度で、回答書の添付により審査で尊重される旨が示されています。有効期間は3年です。
また、日本税関は文書による事前教示回答を原則公開し、品名や番号等で検索できる形にしています(非公開期間は最長180日)。

ドシエへの組み込み方はシンプルです。
・ドシエ2の根拠資料として回答書を格納
・ドシエ3に、回答書の有効期限管理と再照会トリガーを登録
・品目マスターに、回答書の参照番号と版を持たせる

これで、監査での説明は格段に短くなります。


文章校正後のまとめ

監査対応に強いHSコード管理は、個人の経験や通関会社任せでは成立しません。
製品の事実を固める箱、分類ロジックを再現できる箱、統制と証跡の連鎖を示す箱。この3つに分けてドシエ化すると、監査対応は仕組みに変わります。

まずは、関税影響が大きい上位品目から、ドシエ1と2を作り、最後にドシエ3で運用を固定してください。保存期間と紐づけの要件を最初から満たしておくことが、監査での最大の防御になります。

2028年の関税ショックを回避せよ。日EU・EPA「HS読み替え指針」が示す実務の解


2026年2月4日、日本と欧州連合(EU)の貿易当局間で進められていたある重要な協議の実質的な合意が報じられました。それは、2028年のHSコード改正(HS 2028)に向けて、日EU・EPAの運用ルールをどう適応させるかという運用ガイドラインの第一案がまとまったというニュースです。

これは、多くの貿易実務家が2028年問題として懸念していた、申告コードと協定ルールの不整合による混乱を未然に防ぐための処方箋です。

本記事では、FTAの専門家の視点から、このガイドラインが示された背景にある構造的な課題と、企業が2028年に向けて構築すべき二重管理体制について深掘り解説します。

なぜ2028年に原産地証明が止まる恐れがあったのか

まず、この問題の核心である協定の硬直性とHSコードの流動性のギャップについて整理します。

2019年に発効した日EU・EPAは、その原産地規則(製品が日本産か欧州産かを判定するルール)の基準として、2017年版のHSコード(HS 2017)を採用しています。条文に書かれている品目番号や関税分類変更基準(CTC)は、すべて2017年当時の世界に基づいています。

しかし、貿易の現場で使われるHSコードは5年ごとに改正されます。2022年の改正を経て、次は2028年1月1日に大規模な改正が行われます。

ここで生じるのが、輸入申告書には最新の2028年版コードを書かなければならないのに、特恵関税を適用するためのルールブックは2017年版のままという矛盾です。もし、ある製品のコードが改正で変更されていた場合、どのルールを適用すればよいのかが不明確になり、最悪の場合、原産地証明書の不備として関税優遇が否認されるリスクがありました。

魔法の辞書、相関表の公式化

今回まとまったガイドラインの核となるのは、相関表(Correlation Table)の公式な導入です。

本来、新しいHSコードに対応するためには、協定の条文そのものを書き換える転換(Transposition)という手続きが理想ですが、これには膨大な時間と法的承認プロセスが必要です。そこで当局は、条文は書き換えずに、読み替えのための辞書を用意するという現実的な解決策を選びました。

相関表の役割

この公式相関表は、HS 2028のコードとHS 2017のコードを紐付ける変換テーブルです。

例えば、HS 2028で新設されたある化学品のコードが、HS 2017ではどのコードに該当していたのかを一対一、あるいは一対多で定義します。企業はこの表を参照することで、最新のコードで申告しつつ、裏側では正しい旧コードの原産地規則を適用することが可能になります。

ガイドライン案では、この相関表を日EU双方の税関が公式な判定基準として認めることが明記される見込みです。これにより、企業は独自の解釈ではなく、当局のお墨付きを得た変換ロジックに基づいて業務を行うことができます。

企業に求められるHSコードの二重管理

このニュースは朗報ですが、同時に企業に対して高度なデータ管理を求めています。それは、通関用コードと原産地判定用コードの完全な分離管理です。

2028年の実務フロー

これまでは、インボイスに記載するHSコードが決まれば、そのままそのコードの原産地規則を確認すれば済みました。しかし、2028年以降のEPA活用プロセスは以下のようになります。

  1. 通関用コードの特定:製品のスペックに基づき、最新のHS 2028コードを決定する。(輸入申告用)
  2. 相関表の参照:ガイドラインに基づき、そのコードに対応するHS 2017コードを特定する。
  3. 原産地規則の適用:特定されたHS 2017コードに基づき、協定上のルール(関税分類変更基準や付加価値基準)を満たしているか判定する。

もし、自社のシステムが最新のHSコードしか保持できない仕様になっている場合、このプロセスに対応できません。

落とし穴となるみなし変更

特に注意が必要なのは、HSコードの項番(上4桁)が変わるような改正があった場合です。

例えば、技術革新により製品の機能定義が変わり、第84類から第85類へ移動した場合、最新コードだけを見ていると関税分類変更基準(CTH)を満たしているように見えるかもしれません。しかし、2017年版のコードに引き直すと実は項番が変わっていない(変更基準を満たさない)というケースが発生し得ます。

このような意図しないミスを防ぐためにも、公式相関表を用いたロジックチェックは必須となります。

まとめ

日EU・EPAの運用ガイドライン第一案の策定は、2028年の貿易実務における交通整理が始まったことを意味します。

FTAの専門家として助言できることは一つです。2028年になってから慌てて相関表を見るのではなく、今のうちから自社の製品マスタにEPA判定用(HS 2017)という固定フィールドを設け、最新コードとは切り離して管理できる体制を整えておくことです。

過去のルールを正しく参照し続ける能力こそが、未来の関税削減メリットを確実に享受するための鍵となります。

培養肉は「肉」か「食品」か。米国CBPが下した分類決着とフードテックへの衝撃


2026年2月4日、米国の税関・国境警備局(CBP)は、急速に商業化が進むラボ肉(培養肉)の輸入実務におけるHSコード分類基準について、暫定的な決定を下しました。

これは、食品業界における長年の哲学的かつ実務的な問いである「細胞培養で作られた肉は、関税法上の肉(Meat)なのか」という論争に対し、世界で初めて貿易大国が明確な解釈指針を示した歴史的なニュースです。

本記事では、HSコードの専門家として、この決定が意味する「関税の境界線」と、フードテック企業が直面する新たなビジネスルールについて深掘り解説します。

第2類の壁。なぜ「肉」として扱われないのか

まず、この問題の核心にある関税率表(HSコード)の構造的な定義について解説します。

我々が普段スーパーマーケットで買う牛肉や豚肉は、HSコードの「第2類(肉及び食用のくず肉)」に分類されます。しかし、この第2類の解説には、伝統的に「と畜(Slaughter)」というプロセスを経ていることが前提とされてきました。つまり、生きている動物を屠殺して得られたものが「肉」であるという定義です。

一方で、培養肉はバイオリアクターの中で細胞を増殖させて作られます。動物を殺すプロセスが存在しません。

今回、CBPが示した基準の骨子は、この製造工程の違いを厳格に適用するというものです。つまり、生物学的には肉と同じ組成であっても、関税法上は伝統的な第2類の「肉」とは区別し、第21類(その他の調製食料品)、あるいはその成分構成によっては**第16類(肉の調製品)**の特殊な項へと分類する方向性を示しました。

これは、「見た目や味が肉であれば肉とする」という機能重視の考え方ではなく、「どのように作られたか」というプロセス重視の基準をCBPが採用したことを意味します。

関税率と輸入枠に生じる巨大なギャップ

この分類の違いは、単なるコード番号の違いではありません。企業の利益率を左右する関税率と輸入割当(クオータ)に直結します。

牛肉セーフガードの対象外になる可能性

もし培養肉が第2類の「牛肉」として分類されれば、既存の牛肉輸入枠(低関税枠)を巡って、伝統的な畜産農家や食肉商社との激しい枠取り合戦に巻き込まれることになります。また、輸入急増時に発動されるセーフガード(緊急輸入制限)の対象にもなります。

しかし、今回のように第21類(調製食料品)などの別枠として扱われることになれば、これらの伝統的な牛肉規制の対象外となる可能性があります。これは、輸出企業にとっては、厳しい輸入数量制限を回避し、自由な数量を米国市場に投入できるという巨大なメリットになり得ます。

関税率の予見可能性

一方で、第21類は「その他」の食品が入るカテゴリであり、品目によっては高い関税率が設定されている場合もあります。今回のCBPの暫定決定により、培養肉に対する具体的な税率が固定されることになります。これまで「いくらの関税がかかるか分からないから輸出できない」と足踏みしていたフードテック企業にとって、事業計画(PL)が引けるようになったことは大きな前進です。

ラベル表示規制との複雑なねじれ

ビジネスマンが注意すべきは、この税関の決定が、国内販売時の表示ルール(FDA/USDA管轄)とは必ずしも一致しないという点です。

米国内の食品表示規制では、消費者の誤認を防ぐために「Cultivated Chicken(培養鶏肉)」といった表示が義務付けられていますが、あくまで「肉」の一種として扱われる傾向にあります。

しかし、貿易の入り口(税関)では「肉ではない(第2類ではない)」として処理され、国内に入った瞬間に「肉」として流通する。このような「ねじれ現象」が発生することになります。

輸入担当者は、インボイス上の品名記述(Description)において、税関用のHSコード分類根拠となる「細胞培養由来であること」を明確にしつつ、販売用のパッケージには食品表示法に適合した記載を行うという、高度な整合性管理が求められます。

まとめ

米国CBPによる培養肉の分類基準決定は、フードテックという新しい産業を、既存の貿易ルールの中に無理やり押し込むのではなく、新しい枠組みで管理しようとする現実的なアプローチです。

この決定は、培養肉が「農産物」ではなく「工業製品」に近い扱いを受ける時代の幕開けとも言えます。関連企業は、自社製品の成分と製造プロセスをHSコードの視点から再定義し、最も有利かつコンプライアンスに則った輸入戦略を構築する時期に来ています。

汎用部品という隠れ蓑の消滅。HS 2028改正が半導体サプライチェーンに迫る「スペック管理」の徹底

2026年2月4日、世界税関機構(WCO)から半導体業界および関連する機械メーカーにとって、極めて重い意味を持つ提案がなされました。それは、2028年のHSコード改正(HS 2028)において、半導体製造装置の部分品(パーツ)を分類するコードを劇的に細分化するという案です。

これまで、多くの半導体関連パーツは、第8486項の「部分品および附属品」という大きなバスケットの中に一括りで分類されてきました。しかし、今回の提案はその「ドンブリ勘定」の時代を終わらせるものです。

本記事では、HSコードの専門家の視点から、この細分化の真の狙いである経済安全保障との連動と、企業が直面する実務上の課題について深掘り解説します。

「その他」に隠れていた戦略物資の可視化

まず、現状のHSコードの問題点をおさらいします。

現在のHS 2022では、半導体製造装置(露光装置やエッチング装置など)の部品は、主に「8486.90」というコードに分類されます。ここには、高度な光学レンズや制御基板といった戦略的な重要部品から、単なる金属製のカバーやネジのような汎用的な部品までが、すべて同じ番号の下に混在しています。

この状態では、各国の規制当局は、どの国にどれだけの「重要技術」が流れているのかを統計データから正確に把握することができません。

今回WCOが提示した細分化案は、この不透明さを解消するためのものです。具体的には、従来の「部分品」というコードを分解し、例えば「プラズマ制御用部品」や「搬送用ロボットアーム」、「特殊光学系ユニット」といった機能や用途に基づいた固有のコード(サブヘディング)を新設しようとしています。

これにより、税関は輸入申告された貨物が、単なる修理用パーツなのか、それとも製造能力を左右するコアコンポーネントなのかを、HSコードを見るだけで判別できるようになります。

輸出管理との完全な紐付け

ビジネスマンが最も警戒すべきは、この改正が単なる統計の精緻化ではないという点です。これは明らかに、各国の輸出管理(安全保障貿易管理)の実効性を高めるための布石です。

HSコードが細分化され、特定の高性能部品に固有の番号が振られるということは、その番号に対して輸出規制のフラグを立てやすくなることを意味します。

これまでは、8486.90というコードで申告されただけでは、それが規制対象かどうかは税関のシステム上では判別できず、審査官の知識や企業の自己申告に依存していました。しかし、2028年以降は、特定のコードが入力された瞬間に、自動的に該非判定書の提出を求めたり、検査対象としてロックしたりするシステム運用が可能になります。

つまり、HSコードの選定ミスが、即座に「無許可輸出」の疑いという重大なコンプライアンス違反に直結するリスクが高まるのです。

エンジニアと通関士の連携が必須になる未来

この改正案がそのまま採用された場合、企業の実務にはどのような変化が求められるのでしょうか。最大の変化は、通関部門だけではHSコードを決められなくなるという点です。

図面と仕様書が分類の決定打

これまでの「8486.90(部分品)」であれば、それが半導体装置に使われることさえ分かれば分類が可能でした。しかし、細分化された新コードでは、「それがどのような機能を持つか」「どの工程(前工程か後工程か)に使われるか」「汎用品か専用品か」といった技術的な詳細情報が必要になります。

通関担当者が、製品の外見や名称だけでこれらを判断することは不可能です。設計図面や仕様書を読み解けるエンジニアが、分類プロセスに関与しなければなりません。

「専用品」の証明責任

また、新コード体系では「専ら半導体製造装置に使用されるもの」と「汎用性があるもの」の境界線が厳格化される見込みです。

企業側は、自社の部品が他の用途(例えば医療機器や一般産業機械)には転用できない「専用設計」であることを、客観的な資料で税関に証明する準備が求められます。

まとめ

WCOによる半導体製造装置用パーツの細分化案は、ハイテク貿易における透明性を極限まで高めようとする国際社会の意思表示です。

2028年はまだ先の話ではありません。数万点に及ぶ補修部品マスタを持つメーカーや商社にとって、すべての部品のスペックを洗い出し、新コードへ移行する作業は年単位のプロジェクトになります。

「たかがパーツのコード変更」と侮らず、今のうちから技術部門と連携し、製品情報のデータベース化を進めること。それが、2028年以降も世界のサプライチェーンから締め出されないための唯一の防衛策です。

ワクチン分類再構築:HS 2028が示す新基準をビジネスでどう使いこなすか

2028年1月1日、国際貿易の共通言語であるHSが大きく更新されます。特にワクチンは、従来の「一括でまとめる分類」から、「病原体や用途に応じて見える化する分類」へと構造ごと作り替えられます。今回の改定では、人用ワクチンの見出しが新設され、6桁レベルで38の細分類へ拡張されます。(世界税関機構)

この変更は、製薬・医療商社だけの話ではありません。調達、サプライチェーン、通関、データ分析、価格交渉、官民連携(緊急時の優先通関や免税措置など)まで、ビジネス実務に波及します。(世界税関機構)


HS 2028とは何か。なぜワクチンで大改定が起きるのか

HS(Harmonized System)は、世界中で取引される貨物を統一ルールで分類し、関税率表と貿易統計の土台になる制度です。世界税関機構(WCO)が管理し、200以上の国・地域が関税・統計の基礎として利用しています。(世界税関機構)

HSは通常、数年単位の見直しサイクルで改正されますが、HS 2028はCOVID-19の影響も受け、技術的検討期間が例外的に延長されたことが明記されています。HS 2028は2028年1月1日に発効予定で、移行のための準備期間が設けられる、という位置づけです。(世界税関機構)

このHS 2028で、公衆衛生は中心テーマの一つとされ、ワクチンを含む「健康危機対応の必需品」がより識別しやすい形に改められます。(世界税関機構)


いまのHS 2022が抱えていた課題。人用ワクチンが6桁1本に集約されていた

現行のHS 2022では、人用ワクチンは6桁で3002.41にまとめられています。獣医用ワクチンは3002.42です。(世界税関機構)

世界保健機関(WHO)とWCOが共同でまとめたHS 2022の参照資料でも、人用ワクチン(COVID-19ワクチンを含む)は同じ6桁の3002.41に分類される旨が示されています。(世界税関機構)

この「人用ワクチンは1本」という構造は、ビジネスの現場で次の問題を起こします。

  1. どの疾病向けワクチンがどれくらい貿易されているか、統計で見えにくい
  2. 特定ワクチンを対象にした免税、簡素化、優先通関などの政策を設計しづらい
  3. 緊急時に、対象品目を税関システム上で素早く識別しづらい

これらは世界貿易機関(WTO)の委員会報告でも、現状は「人用ワクチンの見出しが一つ」であり、政策と統計の面で難しさがあった、と要点が整理されています。(WTO)


HS 2028の核心。ワクチンが3002から独立し、3007と3008へ再配置される

HS 2028では、ワクチンが従来の3002(人血、免疫産品、ワクチン等)から構造的に切り離され、新しい見出しへ移されます。

  • 新見出し 30.07(3007):人用ワクチン
  • 新見出し 30.08(3008):その他のワクチン(獣医用を含む)

この点はWCOのHS 2028概要ページ、および改正条文(勧告文書)で明確に示されています。(世界税関機構)

同時に、旧来3002の中にあった「ワクチン、毒素、培養微生物…」の枠組みも改められ、3002.4系列はワクチンではなく「毒素、培養微生物等」へ整理されます。(世界税関機構)

実務で押さえるべきポイント:コードの書き換えは、単なる桁合わせではない

社内システムや取引先マスタに「3002.41=ワクチン」という固定観念があると、2028年の切替時に申告エラーが出やすくなります。HS 2028では、3002.41という概念そのものが別体系へ移るためです。(世界税関機構)


人用ワクチン(3007)はどう分かれるのか。病気別に6桁コードが付く

HS 2028の新見出し3007では、人用ワクチンが疾病群に沿って細分化されます。設計思想として、WCOは次の2点を明示しています。

  • アウトブレイクになりやすい疾病と、風土病的な疾病を区別する
  • WHOの予防接種ガイダンスに沿って、対象集団やプログラム特性を踏まえた範囲にする

これにより、人用ワクチンの貿易フローの透明性が上がり、緊急時の政策対応や国際的な供給監視がやりやすくなる、という狙いです。(世界税関機構)

3007のコード体系(要点)

以下は、改正条文(HS 2028勧告文書)に基づく、3007の主要区分です。(世界税関機構)

区分代表的な6桁コード帯含まれるワクチン(例)
麻しん・風しん等3007.11〜3007.19麻しん、麻しん風しん混合、水痘、帯状疱疹、MMR、MMRV、その他組合せ
ポリオ・DTP等3007.21〜3007.29ポリオ、ジフテリア破傷風混合、DTP、A型肝炎、B型肝炎、Hib、五種混合・六種混合、その他組合せ
小児系の重要ワクチン群3007.31〜3007.35BCG、その他の結核、肺炎球菌、ロタ、HPV
熱帯病等を含む群3007.41〜3007.47髄膜炎(単価・多価)、腸チフス、コレラ、デング、狂犬病、マラリア
呼吸器系の重点群3007.51〜3007.59インフル(単価・多価)、RSV、コロナウイルス、これらの組合せ
アウトブレイク対応群3007.61〜3007.66黄熱、天然痘・エムポックス、エボラ、脳炎、チクングニア、ストレプトコッカス
その他3007.90上記以外

この中で、ビジネス上とくに重要なのが「コロナウイルス」の枠が6桁で独立する点です。HS 2022ではCOVID-19ワクチンも3002.41に集約されていましたが、HS 2028では人用ワクチン体系の中で識別される方向になります。(世界税関機構)

例外的に「まだ大きく取引されていない」領域も入る

WCOは、BCG以外の結核ワクチンについて「その他の結核ワクチン」を設けたこと、さらにストレプトコッカス(特にB群溶連菌に関するパイプライン)向けの見出しを設けたことを説明しています。取引量がまだ大きくない品目をHSに入れるのは例外的だが、重要ワクチンが必要な場所に届いているかを監視できるようにする意図がある、とされています。(世界税関機構)


その他ワクチン(3008)はどう扱われるのか。獣医用は1本で残る

新見出し30.08(3008)は「その他のワクチン」で、ここに獣医用ワクチンが入ります。条文上は、少なくとも次の2区分です。(世界税関機構)

  • 3008.10:獣医用ワクチン
  • 3008.90:その他

ここは、人用(3007)ほど細かくは分かれません。したがって、獣医用領域で疾病別の統計や政策を行いたい場合、国別の上乗せ桁(7桁以上)での運用が焦点になります。HSは6桁が国際共通で、7桁以上は各国が設定することが前提です。(世界税関機構)


ビジネスへのインパクト。通関だけでなく、経営判断のデータが変わる

1. 調達と供給リスク管理の精度が上がる一方、社内データの作り直しが必須になる

WCOは、より正確な貿易データがモデリングや予測、サプライチェーン管理、価格指数、マーケット把握に役立つと述べています。これは政府向けの説明ですが、民間企業でも同じです。(世界税関機構)

一方で、企業側は次の対応が必要になります。

  • 商品マスタのHSコードを3002.41から3007系へ振り替える
  • これまで「ワクチン」と一括だった分析軸を、疾病群別に再設計する
  • 過年度データとの比較のために、旧HSとの紐付け(マッピング)を用意する

2. 通関実務では「申告コードの誤り」が遅延や追加対応の引き金になる

HSは関税率だけでなく、統計、規制、検査、申告書の審査ロジックにも結びつきます。WCOはHS 2028で、緊急時の迅速通関や免税措置を運用しやすくする狙いを明確にしています。(世界税関機構)

したがって、切替直後に旧コードで申告すると、形式面での差し戻しが増えやすくなります。特に、複数疾患の混合ワクチンは3007内で専用の組合せ区分が複数あるため、社内の判断ルールが曖昧だとミスが出ます。(世界税関機構)

3. 契約条項や価格条件にも影響する

国際取引では、契約書・インボイス・原産地関連資料にHSコードが書かれることがあります。HS改定後にコードが変わると、次のような実務摩擦が起こり得ます。

  • HSコードを前提にした価格条件や通関手配の責任分界が曖昧になる
  • 取引先が旧コードのまま出荷書類を作成し、通関側で修正が発生する
  • 社内監査で「コード改定対応が未実施」と判定される

2028年1月1日までに何を準備すべきか。実務ロードマップ

WCOは、HS 2028改定が受け入れられた後、移行までの期間に相関表(HS 2022とHS 2028の対応表)作成や解説書類の更新、各国での制度・IT・教育対応が必要だと説明しています。(世界税関機構)

これを踏まえ、企業側の実務としては次の順番が安全です。

1. まず棚卸し:自社が扱う「ワクチン」を疾病群で仕分けできるか確認する

  • 商品名だけでなく、対象疾病、混合か単独か、用途(人用か獣医用か)を整理
  • 3007のどのグループに入るか、医薬品部門と通関部門で共通言語を作る

2. 次にマッピング:旧コードと新コードの対応表を社内用に作る

  • HS 2022の3002.41、3002.42を出発点に、HS 2028の3007系、3008系へ振り替える
  • 複合ワクチンは専用コードがあるため、単純な置換にしない

3. システム対応:マスタ、申告連携、帳票テンプレートを一括点検する

  • ERPや輸出入管理システムのHSコード欄
  • 通関業者に渡す商品明細のテンプレート
  • 輸出入申告の連携(EDI)で参照しているコード辞書

4. 取引先との合意形成:サプライヤーに「新HSでの分類根拠」を求める

  • どの疾病群のワクチンとして扱うか、書類で確認できるようにする
  • 将来の監査や問い合わせに備えて、判断根拠を残す

5. 最後に運用訓練:切替直後の差し戻しを想定した体制を作る

  • 初期の問い合わせ対応窓口
  • イレギュラー品目(臨床試験向け、特殊用途など)のエスカレーション経路

よくある誤解。ここを間違えると現場が止まる

誤解1:HS 2028のコードは、今すぐ使い始めてもよい

HS 2028は2028年1月1日に発効予定で、各国での制度改正とシステム更新を前提に準備期間が置かれる、とWCOは説明しています。したがって、原則として適用前に新コードで申告する運用は現実的ではありません。(世界税関機構)

誤解2:3007の分類は「成分」だけ見ればよい

HS 2028の3007は、疾病群と組合せ区分を前提に設計されています。混合ワクチンには専用区分があるため、名称・用途・対象疾病の整理が重要です。(世界税関機構)

誤解3:6桁が変われば、各国の7桁以上も自動で同じになる

HSは6桁が国際標準で、7桁以上は各国が独自に細分化します。WCOの参照資料でも、国内レベルは税関当局へ確認すべき、と明記されています。(世界税関機構)


まとめ。HS 2028のワクチン再分類は、通関の話で終わらない

HS 2028では、ワクチン分類が「3002の一部」から独立し、人用は3007で疾病群別に大幅に細分化されます。これにより、緊急時の優先通関や政策対応、需給の可視化が進む一方、企業側はマスタ、帳票、取引先連携、社内ルールを作り直す必要があります。(世界税関機構)

2028年1月1日は、通関部門だけの節目ではありません。調達、SCM、経営企画、データ分析まで関わる「分類基盤の改定」です。今のうちに、ワクチンを疾病群で語れる状態にしておくことが、最も費用対効果の高い準備になります。


文章校正(読みやすさの最終チェック)

  1. 用語を統一しました(HS 2022、HS 2028、見出し、6桁コード、国内桁)。
  2. 数字と日付の表記を統一しました(2028年1月1日など、相対表現を避けました)。
  3. 一文が長くなりすぎないよう、段落を短く分割しました。
  4. 根拠が必要な箇所は一次情報(WCO、WTO、公式文書)を優先して参照しました。

樹脂・接着剤・有機化学品:初期8桁ウォッチリストを深掘りする

樹脂や接着剤、有機化学品を扱うビジネスでは、HSコードは通関のための番号にとどまりません。関税・原産地ルール・貿易統計・品目別の需要動向・規制対応まで、意思決定の土台になります。特に化学系は、同じ「樹脂」でも一次形状か溶液か、単体か混合品か、コポリマーかブレンドかで、分類や税務・規制が変わりやすい領域です。(Tulli Tilastot)

そこで効くのが、8桁でのウォッチリスト運用です。粒度が粗すぎると異変検知が遅れ、細かすぎると運用が回りません。8桁は、調達・営業・経理・貿易管理が同じ表を見て会話しやすい「実務の最小単位」になりやすいのが利点です。(Tulli Tilastot)

まず押さえる前提:6桁が共通、8桁は国や地域で変わる

HSは国際的な品目分類で、基本の共通部分は6桁です。国や地域は、その後ろに桁を追加して、より細かい管理(関税率・統計・規制)を行います。

日本でも、輸出入の申告・統計で用いる品目番号はより細かい桁数になり、先頭6桁がHSに対応するという整理が案内されています。

欧州では、8桁のCombined Nomenclature(CN)が、輸出入申告や統計の基盤として使われ、毎年改正されます。(Tulli Tilastot)

この記事では、8桁の具体例としてCN 2026のコードをベースに「初期8桁ウォッチリスト」を提示します。自社の国別コードに合わせる場合は、同じ6桁を核にして、自社が使う8桁または9桁・10桁へマッピングする、という考え方で読んでください。(Tulli Tilastot)

初期8桁ウォッチリストを「おすすめ」する条件

初期版の目的は、完璧な網羅ではありません。最小の手間で、経営に効く変化を早く拾うことです。おすすめの作り方は次の順です。

  1. 支出額または売上額が大きい原料・商品を優先する
  2. 価格変動が大きいもの、供給制約が出やすいものを優先する
  3. 規制や用途制限が絡みやすいものを優先する
  4. 上流の有機化学品と下流の樹脂・接着剤を「連鎖」で持つ
    例:スチレンとPS、塩化ビニルとPVC、イソシアネートとPUなど

こうして作った初期リストを、四半期ごとに見直すだけでも、誤分類リスクと機会損失を同時に減らしやすくなります。HSの位置づけ自体が貿易実務の中核であることは、税関・行政・国際機関の説明でも一貫しています。

おすすめ:樹脂・接着剤・有機化学品の初期8桁ウォッチリスト(CN 2026例)

以下のコードと英語の元表記は、CN 2026の該当章(化学品:Chapter 29・35、樹脂:Chapter 39)を参照し、品目名は日本語に要約しています。(Tulli Tilastot)

1) 樹脂(一次形状中心、Chapter 39)

8桁コード品目(要約)ビジネス上のウォッチ観点
39011010線状ポリエチレン(比重0.94未満)フィルム・包材、LD/LLDの境界
39011090ポリエチレン(比重0.94未満、その他)汎用LDPE、グレード混在
39012090ポリエチレン(比重0.94以上、その他)HDPE、容器・パイプ向け
39013000エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)粘着・靴材、配合で用途差
39014000エチレンαオレフィン共重合体(比重0.94未満)LLD系、供給先切替の影響
39021000ポリプロピレン(PP)自動車・家電、指数連動が強い
39023000プロピレン共重合体衝撃強度系、用途で価格差
39031100発泡用ポリスチレン(EPS)建材・緩衝材、季節変動
39031900ポリスチレン(その他)GPPS/HIPS、原料スチレン連動
39032000SAN透明・耐薬品、代替材との競合
39033000ABS家電・車載、上流原料の影響大
39041000PVC(他物質と混合なし)VCM連動、規制と代替の影響
39042100PVC(非可塑化)建材中心、需要の地域差
39042200PVC(可塑化)可塑剤とセットで監視
39043000塩化ビニル酢酸ビニル共重合体接着・塗料向け、配合で揺れる
39061000PMMA光学・透明材、グレード差
39069090アクリル系ポリマー(その他)粘着・塗料、用途で誤分類注意
39073000エポキシ樹脂2液系、硬化剤とのセット輸入
39074000ポリカーボネート(PC)BPA連鎖、規制・代替材
39076100PET(粘度数78 ml/g以上)ボトル材寄り、規格管理
39076900PET(その他)繊維・フィルム等、用途で需給分岐
39077000ポリ乳酸(PLA)バイオ系、用途拡大で区分注意
39081000ポリアミド(PA)ナイロン、上流の連鎖が強い
39091000尿素樹脂・チオ尿素樹脂木材用接着など用途限定が多い
39092000メラミン樹脂住宅・家具、原料メラミン連動
39093100ポリメリックMDI(粗MDI)PU系、化学品側との境界
39094000フェノール樹脂耐熱、用途が明確で管理しやすい
39095090ポリウレタン(その他)反応性、溶剤含有で分岐しやすい
39100000シリコーン(一次形状)電子・自動車、規格多様
39111000石油樹脂など(粘着付与材)粘着剤配合の要、原料連動

主な根拠例として、ポリエチレンの比重による区分、PPやPS、PVC、アクリル、エポキシ、PC、PET、PA、PU、シリコーン等の該当8桁は、CN 2026のChapter 39に明記されています。(Tulli Tilastot)

2) 接着剤(Heading 3506)

8桁コード品目(要約)ビジネス上のウォッチ観点
35061000小分け販売の接着剤(正味1kg以下)包装形態で分岐、販促品混入に注意
35069110光学用途の透明接着(FPD等向け)用途限定、証憑と用途説明が重要
35069190ポリマー系またはゴム系の接着剤(その他)汎用接着の母集団、処方変更が頻発
35069900その他の接着剤どこにも当てはまらない残りを管理

ここは包装形態と用途が決定打になります。小分け販売かどうか、またポリマー系か、用途限定かでサブヘディングが分かれます。(Tulli Tilastot)

3) 上流の有機化学品(Chapter 29中心)

樹脂と接着剤の8桁を見ても、上流の変化が拾えないと「なぜ価格が動いたか」が説明できません。初期ウォッチリストでは、次のようなモノマー・中間体を樹脂とセットで持つのが実務的です。

8桁コード品目(要約)ひもづく下流の例
29012100エチレンPE、EVA等
29012200プロペン(プロピレン)PP等
29025000スチレンPS、ABS、SAN等
29032100塩化ビニル(クロロエチレン)PVC等
29053100エチレングリコールPET等
29053200プロピレングリコールPU、樹脂用途の原料群
29101000エチレンオキシド(オキシラン)界面活性・ポリエーテル連鎖
29102000プロピレンオキシドポリオール連鎖
29103000エピクロロヒドリンエポキシ樹脂連鎖
29161100アクリル酸・塩アクリル系樹脂・粘着の原料群
29161200アクリル酸エステルアクリル系樹脂・粘着の原料群
29291000イソシアネートPU、接着剤の反応系
29336100メラミンメラミン樹脂
29337100カプロラクタムPA(ナイロン)

これらの8桁コードは、CN 2026のChapter 29に掲載されています。(Tulli Tilastot)

深掘りで差が出るポイント:8桁を「経営に効く情報」に変える

ここからが本題です。8桁を並べるだけでは、コスト削減もリスク低減も起きません。深掘りの焦点を、分類の分岐点と、意思決定に直結する変数に寄せるのがコツです。

1. 樹脂は「コポリマー・ブレンド」の判定基準が命

同じ用途でも、ホモポリマーなのかコポリマーなのか、ブレンドなのかで、見かけ上の商材名は似ていても分類上の扱いが変わり得ます。Chapter 39の注記では、コポリマーの考え方や、どのモノマーが重量で優勢かで分類する原則が示されています。(Tulli Tilastot)

運用の要点は、MSDSと技術データシートにある「組成の重量比」と「ポリマー種」を、品目マスタに必ず持たせることです。営業資料だけで判断すると、後から配合が変わった時に気づけません。

2. PEは比重0.94が一つの分水嶺

ポリエチレンは比重の閾値(0.94)で区分されるため、同じ「PE」でも型番変更や添加剤で比重が跨ぐと、8桁が変わる可能性があります。CN 2026の該当箇所でも、比重0.94未満と0.94以上でサブヘディングが分かれています。(Tulli Tilastot)

購買・品質・貿易の連携ポイントは、比重の根拠を試験条件(温度など)まで揃えておくことです。

3. 一次形状か、溶液か:溶剤比率で章を跨ぐことがある

樹脂を溶剤に溶かした「溶液」は、溶剤の重量比など条件によって、別の品目に移ることがあります。Chapter 39の注記では、揮発性有機溶剤中の溶液で、溶剤の重量が一定割合を超える場合などの扱いが示されています。(Tulli Tilastot)

接着剤やコーティング材はここで事故が起きやすいので、インボイス表記だけでなく、溶剤比率と形態(一次形状か、塗料的なものか)をチェック項目に入れるのが安全です。

4. 接着剤は「小分け販売」と「用途限定」が最重要

Heading 3506では、正味重量1kg以下の小分け販売かどうか、またポリマー系接着剤か、光学用途のような用途限定かで8桁が分かれます。(Tulli Tilastot)

現場でよくある落とし穴は、同じ製品でも包装形態だけ変えて輸入するケースです。現物は同じでも、包装が変われば8桁が変わり得るので、調達条件(容器、容量、セット構成)を購買発注書と同じ粒度で管理しておく必要があります。

5. セット品・二液キットは「混ぜた後の製品」で見る発想が必要

硬化剤と樹脂がセットになった二液キットは、個別に見るのか、セットとして見るのかが実務の論点になります。Section VIの注記には、混合してある製品を得るためのセットの扱いが示されています。(Tulli Tilastot)

この手の品目は、サンプル提供や試作段階で梱包が変わりやすいので、試作品を含めて早めに貿易管理がレビューできる体制が重要です。

6. 上流の8桁を持つと、価格と供給の説明力が上がる

樹脂や接着剤の価格は、上流のモノマー・中間体に引っ張られます。たとえば、スチレン(29025000)とPS/ABS/SAN、塩化ビニル(29032100)とPVC、エチレングリコール(29053100)とPET、エピクロロヒドリン(29103000)とエポキシ、イソシアネート(29291000)とPUというように、8桁同士の連鎖で見ると、調達説明が一段ラクになります。(Tulli Tilastot)

初期版では「上流8桁を持つのは全品目のうち上位10から20だけ」と割り切っても十分効果があります。

7. 改正対応は「年次更新」と「定期改正」の二層で設計する

8桁は国や地域で毎年更新されることがあります。CNも年次で改正されるという整理が明確です。(Tulli Tilastot)
一方で、HSの枠組み自体も定期的に改正されます。

運用としては、次の二層が現実的です。

  1. 年次でのコード改正チェック(8桁レベル)
  2. HS改正タイミングの構造変化チェック(6桁レベル)

すぐ回る運用テンプレ:月次30分で回すやり方

最後に、ビジネス側が回せる運用形に落とします。

  1. オーナーを決める
    調達か貿易管理が主担当、品証と経理を巻き込み役にする
  2. ウォッチ対象を3層に分ける
    重点(毎月):支出上位と規制高リスク
    標準(四半期):主要樹脂と主要接着剤
    監視(半期):周辺原料・代替材
  3. 変更トリガーを決める
    新グレード採用、配合変更、溶剤比率変更、包装形態変更、用途変更
  4. 証憑の最小セットを固定する
    仕様書、MSDS、用途説明、写真(包装含む)
  5. 例外処理をルール化する
    分類が割れる品目は「判断の根拠」を必ず残す
    外部照会(通関業者・専門家)を使う場合も、社内の決裁条件を決めておく

まとめ

樹脂・接着剤・有機化学品は、8桁でウォッチする価値が高い領域です。理由は単純で、分類の分岐点が多く、上流の市況変化や規制変化が下流の事業に直撃するからです。HSは6桁が世界共通で、8桁は国や地域で細分化されるという前提に立ち、初期版は「少数精鋭で回す」ことをおすすめします。(Tulli Tilastot)

注:本記事は一般的な実務の整理であり、最終的な品目番号の確定は、製品仕様と当局の運用、個別の通関判断に依存します。社内の貿易管理規程や通関実務の専門家と合わせて運用してください。

EUによる医療AIの「モノ」対「データ」論争への回答。媒体別HSコード分類指針が示す課税の境界線

2026年2月2日、欧州連合(EU)は、急速に普及する医療用AIソフトウェアの貿易実務において、長年の懸案事項であったHSコード分類に関する新たな解釈指針を提示しました。

焦点となったのは、USBメモリやハードディスクなどの「物理媒体」に格納されて国境を越えるAIソフトウェアを、関税法上どう扱うかという問題です。これらは「単なる記録媒体」なのか、それとも「医療機器そのもの」なのか。

この分類の違いは、単なるコード番号の違いにとどまらず、ライセンス料に対する関税評価や、輸入時の付加価値税(Import VAT)の算出根拠を大きく左右します。本記事では、今回示された指針がヘルスケア・テック企業の欧州戦略にどのような影響を与えるのかを深掘り解説します。

ソフトウェアは「記録媒体」か「医療機器」か。長年のグレーゾーン

まず、この問題の背景にある通関実務のジレンマを整理します。

税関は原則として「有体物(モノ)」を管理・課税する機関です。そのため、インターネット経由でダウンロードされるソフトウェア(無体物)は、通関手続きの対象外となります。しかし、インストール用としてUSBメモリやDVD、SSDなどの物理媒体に入れて送られる場合、それは「モノ」として通関の対象になります。

ここで問題となるのが、その物理媒体の中身が、高度な診断を行う「医療用AI」だった場合です。

輸入者側としては、ソフトウェアの価値(ライセンス料など数千万円規模)を含まず、単なるUSBメモリ(数百円)として、HSコード第85類の「記録媒体」で申告したいと考えます。しかし、税関側は、そのソフトウェアが診断機能を持つならば、それは実質的に第90類の「医療機器」であり、ソフトウェアの価値を含めた金額で申告すべきではないか、という解釈をする余地がありました。

特にEUでは、医療機器規則(MDR)の適用を受けるソフトウェアについて、関税分類上も医療機器として扱うべきかどうかが曖昧なままでした。

示された指針の核心。USBメモリに入ったAIは「メディア」として扱われる

今回提示された指針において、EUは実務的な割り切りを行いました。結論として、物理媒体に記録された医療用AIソフトウェアは、原則としてハードウェア(MRI装置など)に組み込まれていない限り、HSコード第8523項の「記録媒体(ソフトウェア)」として分類されるという解釈を明確化しました。

これは、医療用であっても、ゲームソフトやビジネスソフトと同様に、関税分類上は「メディア」として扱われることを意味します。

一見すると、現状追認のように見えますが、ビジネス上の含意は重大です。なぜなら、第90類の「医療機器」として分類された場合にかかる可能性のある規制や関税率の変動リスク(例えば、将来的に医療機器への関税が復活した場合など)を回避できる一方で、第8523項に分類されることによる「評価額」のルールが厳格に適用されるからです。

恐ろしいのは関税率ではなく「輸入付加価値税」の課税標準

HSコードが「記録媒体」に決まったことで、企業が最も注意すべきは「関税評価(Customs Valuation)」です。

WTOの評価協定およびEUの規定では、輸入される記録媒体の課税価格を決定する際、媒体そのもののコスト(キャリアメディア)と、そこに記録されているデータ・ソフトウェアのコストを区別して扱うことが認められています。

しかし、今回の指針により、分類が明確化されたことで、インボイス上の記載方法がより厳しく問われることになります。もしインボイス上で、媒体代とソフトウェアライセンス料が明確に区分されていなければ、税関はライセンス料を含めた総額に対して輸入付加価値税(VAT)を課す可能性があります。

EU各国のVATは20パーセント前後と高率です。数億円のライセンス契約を含むAIソフトをUSB 1本で送った場合、その記載ミス一つで、通関時に数千万円のVAT支払いを現金で求められるリスクがあります。VATは後で還付されるとはいえ、多額のキャッシュフローが一時的に拘束されることは経営上の大きな痛手です。

企業が取るべき戦略。物理媒体からの脱却とクラウド化の加速

この指針を受けて、医療AIベンダーや医療機器メーカーは以下の対応を検討すべきです。

物理媒体輸送の廃止とクラウドデリバリーへの完全移行

最も確実な対策は、物理媒体での納品をやめることです。今回の指針はあくまで「物理媒体」に対するものです。クラウド経由でのダウンロード販売や、SaaS形式での提供であれば、そもそも通関手続きが発生せず、輸入VATの即時払いも不要(リバースチャージ方式などで処理)になります。

これまで保守的な病院側の要望で物理メディアを送っていたケースもあるかもしれませんが、通関リスクとコストを説明し、デジタル配信へ切り替える交渉材料としてこの指針を使うべきです。

インボイス記載の厳格化

やむを得ず物理媒体を送る場合は、インボイスの明細行を分け、媒体の価格(ハードウェアコスト)と、ソフトウェアのライセンス料(知的財産権使用料)を明確に区別して記載する必要があります。そして、EU側の輸入通関業者に対し、ソフトウェア価格分を課税価格に算入するかどうかの指示(評価加算・減算のルール適用)を的確に出す体制を整えなければなりません。

まとめ

EUの新たな解釈指針は、医療AIを「魔法の医療機器」ではなく「単なるデータが入ったメディア」としてドライに扱うことを宣言したものです。

これにより、法的な予見可能性は高まりましたが、同時にインボイス作成や契約形態における実務的なミスが許されなくなりました。物理的なモノの移動を伴うソフトウェア貿易は、もはやリスクでしかありません。デジタルヘルスケアの時代にふさわしい、デジタルの国境の越え方(クラウド化)へ、ビジネスモデルを完全にシフトさせる時期が来ています。

テクノロジーの進化に追いつく貿易ルール。HS 2028改正で6Gや量子技術が「その他」から脱却する日

2026年2月2日、世界税関機構(WCO)において、今後のハイテク製品の貿易実務を左右する重要な定義案が承認されました。それは、2028年のHSコード改正(HS 2028)に向けて、次世代通信規格(6G)関連機器や量子コンピュータ部材を、独立した固有の品目として定義するという決定です。

これまで、最先端のテクノロジー製品の多くは、既存の分類表に該当する項目がないため、その他という大雑把なカテゴリに分類されてきました。しかし、今回の決定により、これらの戦略物資に世界共通の背番号(HSコード6桁)が与えられることになります。

本記事では、なぜ今WCOがこの定義を急いだのか、そして製品コードが特定されることが、企業のコンプライアンスや関税コストにどのような影響を与えるのかを解説します。

その他に隠れていた最先端技術の可視化

貿易実務において、技術の進化スピードとHSコードの改正サイクル(5年ごと)のズレは長年の課題でした。

統計の空白地帯を埋める

現在、開発が進んでいる6G通信機器や量子コンピュータの部品は、多くの場合、第85類(電気機器)や第84類(自動データ処理機械)の中にあるその他の機器というバスケットカテゴリーに分類されています。

この状態では、世界でどれだけの量子関連部材が流通しているのか、正確な貿易統計を取ることが不可能です。WCOが新コードの定義を承認した最大の目的は、これらの次世代技術を独立した項目として切り出し、グローバルなサプライチェーンの実態を可視化することにあります。

6Gと量子技術の定義が確定

今回承認された定義案により、例えば量子プロセッサや極低温制御装置といった量子コンピュータ特有のハードウェア、そして6Gネットワークを構成するテラヘルツ波対応の基地局設備などが、明確な品目定義を持つことになります。

これにより、2028年以降は、その他として申告する曖昧さが排除され、製品のスペックとHSコードの定義を厳密に照らし合わせる作業が必須となります。

経済安全保障と輸出管理の強化

ビジネスマンが最も警戒すべきは、このコード変更が単なる統計目的だけではないという点です。HSコードが特定されることは、各国の輸出管理(安全保障貿易管理)の精度が格段に上がることを意味します。

ピンポイントでの規制が可能に

これまでは、量子コンピュータ部品を輸出規制の対象にしようとしても、HSコードが汎用的なその他の電子部品と同じであったため、税関のシステム上で当該貨物だけを自動的に止めることが困難でした。

しかし、2028年改正で固有のコードが割り当てられれば、当局はそのHSコードに対して輸出ライセンスの必須要件を紐付けることができます。つまり、通関システム上で自動的にフラグが立ち、審査対象として抽出される精度が飛躍的に向上します。

企業にとっては、該非判定(リスト規制に該当するかどうかの判定)とHSコードの紐付け管理が、これまで以上にシビアになることを示唆しています。

関税率への影響とITA(情報技術協定)

もう一つの重要な視点は関税コストです。ハイテク製品だからといって、自動的に関税がゼロになるわけではありません。

新コードは無税になるのか

多くのIT製品は、WTOの情報技術協定(ITA)によって関税撤廃の恩恵を受けています。しかし、新しく新設されたHSコードが、自動的にITAの対象リストに含まれるかどうかは、各国の解釈や新たな交渉に委ねられる場合があります。

もし、6G機器や量子部材が新しいコードに移行した結果、従来のITA対象コードから外れ、一時的に有税扱いになるような事態になれば、サプライチェーンのコスト構造は大きく変わります。2028年に向けて、業界団体を通じた各国政府への働きかけや、関税譲許表の確認が重要になります。

企業が今から準備すべきこと

2028年はまだ先の話ではありません。特に製品開発サイクルが長いハイテク産業においては、今の設計段階から将来のHSコードを意識する必要があります。

R&D部門と通関部門の連携

開発中の次世代製品が、2028年の新定義のどこに該当する可能性があるのか、R&D部門と通関部門が情報を共有する必要があります。特に、製品の機能説明書(スペックシート)において、WCOの新定義に合致する用語を使用しているかどうかが、将来のスムーズな通関を左右します。

システム改修のロードマップ

基幹システム(ERP)の商品マスタにおいて、2028年版のHSコードを登録するフィールドの準備や、輸出管理システムとの連携ロジックの更新計画を立てる必要があります。

まとめ

WCOによるIT・デジタル技術品目の定義案承認は、次世代技術が実験室からグローバル貿易の表舞台へと正式に移動したことを象徴しています。

透明性が高まることは、ビジネスの予見可能性を高める一方で、規制当局による監視の目も厳しくなることを意味します。その他で逃げることができなくなる2028年に備え、自社のハイテク製品の戸籍(HSコード)を正しく管理する体制づくりが求められています。

HS2022からHS2028へ 品目別原産地規則PSRをクロスウォークする実務手順

経営と実務を止めないための更新設計

1. PSRクロスウォークが急に難しくなる理由

PSRは品目別原産地規則のことで、協定ごとに、品目分類にひもづけて原産地判定の条件が定められています。多くは関税分類変更基準CTCや付加価値基準RVC、または特定工程基準などです。

一方、HSは定期改正され、HS2028は2028年1月1日に発効予定です。改正時には新設、削除、範囲変更が大量に起きるため、PSRが参照している品目番号の体系も影響を受けます。結果として、関税分類は最新HSで行うのに、原産地判定は協定が採用する旧HSで行う、という二重運用が現場に発生しやすくなります。WCOも、分類と原産地で異なるHS版を使うと、判定が複雑化し時間がかかり、誤適用リスクが上がると整理しています。

この状況を止めるために必要なのが、HS2022とHS2028の間でPSRを技術的に読み替えるクロスウォークです。

2. まず押さえる前提

2-1. HSは1つではない

協定ごとに採用しているHS版が異なることがあります。日本税関のPSR検索でも、協定が採用するHS版と入力したHSコードの版が違うと検索結果が誤りになり得る、と明示されています。さらに、輸入申告では最新のHSコードを使う必要がある、とも書かれています。(税関ポータル)

つまり、企業側は次の二系統を同時に管理する必要が出ます。

  1. 申告と統計のための最新HS
  2. 協定の法文に紐づくPSR用HS

2-2. HS2028の確定と相関表の位置づけ

WCOによれば、HS2028は2028年1月1日に発効し、その準備期間にHS2022とHS2028の相関表の整備などが進む、とされています。(世界関税機関)
また、2026年1月時点でHS2028改正が受諾され、相関表整備などの実施期間に入ったこともWCOニュースで整理されています。(世界関税機関)

重要なのは、相関表は実務のための道具であり、法的効力そのものではない点です。WCOのガイドでも、相関表は実装を助ける目的で作成され、法的地位を持たない、と説明されています。

3. PSRクロスウォークとは何を作る作業か

目的は単純です。
HS2022で書かれているPSRを、HS2028の品目体系に読み替えても、同じ商品範囲に同じ原産地条件を適用できる状態にすることです。

ここで言うクロスウォークは、次の2つを分けて考えると整理しやすいです。

  1. 社内用クロスウォーク:自社の品目とサプライチェーンに照らして、影響と対応を判断するための表
  2. 協定改正としての技術更新:相手国との手続を経て協定附属書のPSR表を更新する行為

EUのPEM関係では、HS更新に伴うPSRの理解を助けるため、HS2022への技術的読み替え資料が提供されています。発想としては、品目分類の変更でルールの趣旨が変わるわけではないが、PSR表は新HSに合わせて書き直す必要がある、という整理です。(Taxation and Customs Union)

4. 手順全体像

ここからが実務手順です。現場が迷いやすい順に並べます。

手順1 対象協定と対象品目を棚卸しする

最初にやるべきは、協定と品目の棚卸しです。

  1. 自社が実際に使っている協定を列挙する
  2. 各協定のPSRが採用しているHS版を確認する
  3. 自社の輸出入品目をHS2022で確定させ、品目別に該当PSR条項を紐づける

この時点で、協定によってはPSRが古いHS版で書かれていることが普通にあります。英国の対日CEPAのガイダンスでも、PSRはHS2017で規定されており、HS改正でコードが変わる場合は相関表を参照する、という趣旨の案内があります。(GOV.UK)

手順2 HS2022→HS2028のマッピングを準備する

基本はWCO相関表を使います。HS2028の相関表は、WCOが準備期間に整備すると明記しています。(世界関税機関)
ただし、相関表は法文ではなく、更新途中の版や注釈の読み違いが起きやすい領域です。社内のクロスウォークでは、必ず次の情報を同時に持ちます。

  1. 相関表上の対応関係
  2. 変更タイプ 新設、削除、範囲変更、分割、統合
  3. 自社製品の実際の仕様と用途

手順3 PSRを構造分解してから移し替える

PSRを文章のまま移すのではなく、構造に分解します。最低限、次のタグを付けます。

  1. ルール型 CTC、RVC、工程、複合型、例外
  2. レベル CC、CTH、CTSHなど
  3. 例外条件 例 外部材の除外や許容条件
  4. 追加要件 最小工程否認、累積、許容誤差など

この分解ができると、HSの分割や統合が起きても、ルールの意図を保ったまま再組立てできます。

手順4 変更タイプ別に読み替え規則を適用する

WCOガイドでは、HS改正は大きく、新設、削除、範囲変更の3類型に整理でき、単純ケースの更新方法も例示されています。
HS2022→HS2028でも、この考え方で十分に回せます。

ケースA 1対1で対応する

最も簡単です。PSR文章は基本的にそのまま移せます。
注意点は、号の説明や範囲注記が変わる場合があることです。品目名だけで判断しないでください。

ケースB 1つの号が複数に分割される

現場で事故が起きる典型です。
対応は、分割後の各号が、元のどの範囲を受け継いだのかを仕様と照合し、PSRの例外条件を再設計します。WCOガイドでも、分割後の各号に対して、元ルールを維持しつつ、相互に例外を置く形で記述できることが示されています。

実務上のコツは、分割後の号ごとに、主要な非原産材料のHS分類がどこへ落ちるかを同時に確認することです。CTC型のPSRは材料側の分類にも依存するため、ここを飛ばすと誤判定が起きます。

ケースC 複数の号が統合される

統合されると、PSRの適用範囲が広がって見えるため、ルールを強めてしまう誤りが起きます。
基本は、統合前に別々だったルールを、統合後の号の中で品目群ごとに分岐する形で管理することです。協定文の改正が完了するまでは、社内クロスウォークでは分岐注記で運用します。

ケースD 範囲が変わる

最も危険です。番号は同じでも、含まれる製品範囲が変わると、見かけ上の読み替えは成立しません。
この場合は、協定の法的更新を前提に、社内では暫定措置として次を行います。

  1. 旧HSでのPSR対象範囲を文章で定義する
  2. 新HSでその範囲に該当する品目集合をリスト化する
  3. その集合に同一PSRを当てる

EUがHS更新に合わせてPSR表の書き直しを支援する資料を出しているのは、まさにこのケースでの混乱を抑える狙いです。(Taxation and Customs Union)

手順5 検証は机上ではなく取引データで行う

クロスウォークが正しいかは、実際のBOMと工程で検証しないとわかりません。
おすすめの検証は二段階です。

  1. 過去の代表案件を抽出し、HS2022版PSRで原産判定結果を再現する
  2. 同じ案件をHS2028クロスウォーク版で判定し、結果の差分を説明できる状態にする

差分が出た場合、原因はだいたい次のどれかです。

  1. 材料側のHS分類が分割で変わった
  2. 例外条件の読み替えが不十分
  3. 範囲変更を見落とした

手順6 成果物は1枚の表に落とす

経営レビューと監査対応を両立させるには、成果物の形が重要です。最低限、次の列を持つクロスウォーク表があると回ります。

内容
協定名利用協定、相手国
PSR採用HS版協定附属書が採用するHS版
自社品目 HS2022現行管理コード
対応 HS2028相関表に基づく候補コード群
変更タイプ1対1、分割、統合、範囲変更
元PSR要件CTC、RVC、工程、例外条件
読み替え方針そのまま、分岐、集合適用など
検証結果代表案件での判定差分
リスク判定高 中 低 と理由
根拠リンク相関表、協定条文、社内仕様書

日本税関の案内が示すとおり、HS版の取り違えは検索結果や判定結果の誤りに直結し得ます。表で版管理を明示し、誰が見ても間違えない状態にするのが最短です。(税関ポータル)

手順7 運用設計としての版管理を入れる

HS2028発効後も、すべての協定が同時にHS2028へ更新されるとは限りません。WCOガイドが述べるように、協定にはPSR更新の手続があり、簡易改正条項を持つものもありますが、タイミングは協定ごとに異なります。

したがって経営としては、次の二重管理を前提にします。

  1. 申告HSはHS2028へ移行
  2. 原産判定は協定ごとのHS版に合わせて継続

この二重管理を前提に、社内システム、マスタ、教育、監査資料の更新計画を組むべきです。

5. 2026年から2028年までの進め方の目安

WCOはHS2028発効までの準備期間で相関表整備などを進める、としています。(世界関税機関)
企業側はそれに合わせて、次の順で進めると失速しにくいです。

  1. 2026年 棚卸しとクロスウォーク表の骨格を作る
  2. 2027年 代表案件で検証し、例外ケースを潰す
  3. 2027年末 協定別の更新状況を確認し、運用を確定する
  4. 2028年初頭 申告HSの移行と、原産判定の版管理を同時に稼働させる

6. まとめ

HS2022からHS2028へのPSRクロスウォークは、関税分類の変更に追従する作業ではなく、原産判定の誤適用を防ぎ、協定利用を止めないための版管理プロジェクトです。
相関表を使いつつ、変更タイプ別の読み替え規則、取引データでの検証、協定別のHS版管理をセットで回すことで、2028年の移行は管理可能になります。

免責
本稿は一般的な実務整理であり、個別案件の原産地認定や協定解釈は、当該協定の正文と当局運用、必要に応じて専門家助言に基づいて判断してください。