しかし今回のような「カナダからの全輸入品を一律100%」という設計は、例外設定、国内産業への副作用、供給制約、相手国の対抗措置など、実装上の論点が一気に増えます。ワシントン・ポストも、USMCA適合品が除外されるのか、そもそも大統領が言う「ディール」が何を指すのかが不明確だと指摘しています。 (The Washington Post)
日本は作成者の特定と改ざん検知を定義に据え、適切な鍵管理を前提に推定効果を与えます。 (日本法令外国語訳データベース) EUはeIDASで証拠能力とレベル設計を整理し、組織発給の観点では電子シールの概念も押さえる必要があります。 (EUR-Lex) 国際的な説明にはUNCITRALの要件分解が有効です。 (国際貿易法連合 الأمم المتحدة )
RCEPもAANZFTAも、優遇関税の申告に使うProof of Origin(原産地の証拠書類)の有効期限は、**原則として発給または作成の日から12か月(1年)**です。
RCEP: 「Each Party shall provide that a Proof of Origin remains valid for one year from the date on which it is issued or completed.」(第3章 Article 3.3) すなわち、証明書は発給または作成日から1年間有効とされています。
AANZFTA: 「the Certificate of Origin shall be valid for a period of 12 months from the date of issue and must be submitted to the Customs Authority of the importing Party within that period」(Operational Certification Procedures, Rule 13(i)) つまり、証明書は発給日から12か月有効であり、輸入国税関への提出もこの期間内が前提です。
保存義務は、どちらも協定上の最低ラインは3年です。
RCEP:
輸出者・生産者・発給機関側:Proof of Originの発給日から少なくとも3年(国内法でより長くてもよい)。
AANZFTA: 「Where a Certificate of Origin has not been issued as provided for in Paragraph 1 due to involuntary errors or omissions or other valid causes, the Certificate of Origin may be issued retroactively, but no longer than 12 months from the date of exportation…」(Operational Certification Procedures, Rule 2) すなわち、遡及発給は輸出日から12か月以内に限られます。
RCEP: 「the period of validity of the back-to-back Proof of Origin does not exceed the period of validity of the original Proof of Origin」(第3章 Article 3.3(6)(b)) つまり、バックトゥバック証明の有効期間は、原本の有効期間を超えないことになります。
AANZFTA: 「the period of validity of the back-to-back Certificate of Origin does not exceed the period of validity of the original Certificate of Origin」(Operational Certification Procedures, Rule 10(2)(ii)) こちらも、原本の最短期限に合わせる実務が条文構造上必要です。
ATIGAでは、認定輸出者がバックトゥバックOrigin Declarationを作成できる枠組みもあります。条件はForm Dと同様の考え方で、元のProof of Originの保有、FOB価格の反映、数量超過防止、検証適用、同一品目について認定を受けた認定輸出者であることなどが求められます。
記録保持の最低ライン
ATIGAでは、輸出者や生産者、認定輸出者が、Proof of Originに関する記録を少なくとも3年間保持することが定められています。 (ASEAN Main Portal) バックトゥバックは特に紐付け資料が命なので、元証明の写し、倉庫出入庫記録、分割台帳、インボイス連番、B Lなどを同じ案件フォルダに固定して保管するのが安全です。
6. AJCEPのバックトゥバック発給の要件と実務ポイント
発給主体と基本条件
AJCEPでは、元のCOが発給されている原産品が、輸入国(中継国)から別の締約国へ輸出される場合、輸入国(中継国)の当局が新しいCOとしてバックトゥバックCOを発給できる、とされています。発給には、輸入国(中継国)の輸出者または代理人の申請と、有効な元のCOの提示が必要です。 (Ministry of Foreign Affairs of Japan)
AJCEPでは、貨物が一つ以上の締約国または非締約国を経由して輸入される場合、輸入国税関が、通し船荷証券などの輸送書類、または貨物が荷卸し、積替え、良好な状態を保つための作業以外を受けていないことを示す証明書や情報の提出を求め得る、とされています。 (Ministry of Foreign Affairs of Japan)
AJCEPのASEAN側様式では、所定欄にThird Country Invoicing、Back-to-Back CO、Issued Retroactivelyのチェック欄があり、バックトゥバックCOの場合はBack-to-Back CO欄、遡及発給の場合はIssued Retroactively欄をチェックするよう注記されています。 (Ministry of Foreign Affairs of Japan)
・元のProof of OriginやCOの原本管理が甘く、提示できない ・分割出荷の合計数量が元証明の数量を超えるリスク管理がない ・複数の元証明を束ねたときに、期限が最短の元証明に引きずられることを見落とす(ATIGA) ・経由輸送の追加資料要求(通し船荷証券、保全作業以外の非実施証明など)を想定していない(AJCEP) (Ministry of Foreign Affairs of Japan)
C. 書類保存と検証対応
・原産性の根拠資料は、税関照会や検証の対象になり得る ・少なくとも3年の記録保持が要請される枠組みがある(ATIGA、AJCEPとも) (ASEAN Main Portal) バックトゥバックは、倉庫と書類の整合が崩れた瞬間に説明が苦しくなるので、案件フォルダに紐付け資料一式を固定する運用が向きます。
8. まとめ
遡及発給とバックトゥバック発給は、どちらも「例外処理」ですが、例外処理こそ運用設計で差が出ます。
・ATIGAの遡及発給は、出荷日以後の発給を遡及扱いとし、出荷日から1年以内に発給、Issued Retroactively表示が必要 ・AJCEPの遡及発給は、出荷時点または出荷後3日以内が原則で、それを超えた例外は12か月以内の遡及発給とチェック欄表示 ・ATIGAのバックトゥバックは、分割出荷とコンソリの要件、元証明の参照番号記載、数量超過防止、期限は最短の元証明に合わせるなど、管理ポイントが多い ・AJCEPのバックトゥバックは、元CO提示を前提に新しいCOとして発給され、分割出荷の価額と数量表示、経由輸送の追加資料要求を想定する必要がある (Ministry of Foreign Affairs of Japan)