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【解決】HSコード特定にまだ悩んでる?AIが即検索!「HS Code Finder」登場

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セミナー資料

対中ビジネスアップデート:レアアース輸出規制の現状と見通し(2025年11月20日版)

【エグゼクティブ・サマリー】

赤澤経産相は11月18日、中国のレアアース輸出管理措置について「現時点で特段の変更はない」と述べました。これは、高市首相の台湾関連発言により日中関係が緊張する中にあっても、11月上旬に合意された「対中規制の1年間暫定停止」という現状(ステータス・クオ)が維持されていることを確認するものです。企業にとっては「危機が去った」わけではなく、「1年間の対策猶予期間が確保された」と解釈し、サプライチェーン強靱化を急ぐ必要があります。


1. 経産相発言の事実と核心

  • 日時・発言者:2025年11月18日/赤澤亮正 経済産業相
  • 発言内容:「中国によるレアアース等の輸出管理措置について、現時点で『特段の変更はない』」
  • ビジネス上の含意
    • 直近(11月11日頃)、米中協議の結果として中国側が発表した**「レアアース輸出規制の1年間暫定停止」**の枠組みが、その後の政治的摩擦(後述)によって覆されていないことを確認しました。
    • 中国側が即座に「報復」へ転じていないことへの安堵を示すメッセージです。

2. 背景:2025年秋の「規制ショック」と「一時休戦」

これまでの経緯を時系列で整理します。

  1. 規制の厳格化(10月9日)
    • 中国商務省が「国家安全」を理由に、レアアースの採掘・精錬技術および磁石製造技術の輸出管理を強化。サプライチェーン全体への許可制導入を発表しました。
  2. 国際的な反発と米中合意(10月~11月上旬)
    • 米国:次期トランプ政権のベセント財務長官(指名候補)らが「重大な誤り」と猛反発。対中100%関税のカードを切り、激しい応酬となりました。
    • 一時停止の発表(11月11日):米中協議の進展を受け、中国側は上記規制の**「1年間の暫定停止」**を発表。市場には一時的な安堵が広がりました。

3. 政治リスクの再燃:「変更なし」発言が出た真の理由

なぜ今、改めて「変更なし」の確認が必要だったのか。それは、「一時停止」の合意が吹き飛びかねない新たな火種が発生したためです。

  • 高市首相の「台湾発言」
    • 高市早苗首相による台湾有事・安全保障に関する発言に対し、中国側が猛反発。「日本へのレアアース輸出を全面禁止すべき」との強硬論が中国国内で再燃しています。
  • 発言の意図
    • 赤澤経産相のコメントは、こうした政治的緊張にもかかわらず、**「現時点では中国当局が実務上の『ちゃぶ台返し(規制停止の撤回)』には動いていない」**という事実を市場に伝え、パニックを抑制する狙いがあります。

4. 企業への実務的示唆

「変更なし」=「安全」ではありません。現状は**「首の皮一枚で繋がっている休戦状態」**です。

(1) 短期(今後12カ月):不安定な調達環境

  • 猶予期間の活用:中国側の「1年間停止」措置が有効な間に、現行契約に基づく在庫積み増しを推奨します。
  • 突発的遅延への備え:制度上は「停止」でも、現場レベルの通関遅延(サイレントな嫌がらせ)が発生するリスクは常在します。

(2) 中長期:構造的なデカップリング準備

  • 代替調達の加速:IEAなども指摘する通り、中国への依存(採掘70%、精錬90%超)は構造的なボトルネックです。
  • 技術投資:重希土類フリー磁石やリサイクル技術への投資は、もはや「環境対応」ではなく「BCP(事業継続計画)」の要です。

5. アクションプラン(推奨事項)

  1. 在庫ポリシーの見直し:重要品目については、「ジャストインタイム」から「ジャストインケース(有事対応)」へ切り替え、数ヶ月分のバッファを持つ。
  2. 契約条項の確認:米中・日中の政治的対立による輸出停止を「不可抗力(Force Majeure)」として処理できるか、法務部門と再確認する。
  3. 情報収集の定例化:中国商務省の公式発表だけでなく、ジェトロや専門商社のレポートを通じ、実務運用(ライセンス発給状況)の定点観測を行う。

再製造品の通関を円滑にする保証書戦略

「再製造品の通関を円滑にする保証書戦略」を、すでに再製造ビジネスを行っている企業向けに、実務ベースで整理します。
(=今ある保証書や帳票を「通関に強い仕様」にアップグレードする、という前提です)


1. なぜ「保証書」が通関で効くのか

税関が再製造品をチェックする際の典型的な懸念は:

  • 単なる「中古品」や「廃棄物」の輸入ではないか
  • 安全性・品質が担保されているのか
  • 過度に過小申告された「ジャンク価格」ではないか

です。

保証書は、次の点を客観的に示す“証拠”になり得ます:

  • 「新品同等の性能・品質を持つ、再製造品である」こと
  • 製造者が一定期間の責任(保証)を引き受けている=製品としての価値があること
  • どの工場で・どのプロセスを経て再製造されたかがトレースできること

したがって、うまく設計された保証書は、
「中古・スクラップ」扱いを避け、再製造品としての正当な通関を支えるキー資料
になります。


2. 戦略の全体像(3つのレイヤー)

① 文言戦略(保証書の中身をどう書くか)

  • 「再製造品」であること
  • 「新品同等性能」「保証期間」「トレーサビリティ」などを、税関が読み取りやすい形で明文化

② ドキュメント・パッケージ戦略

  • 保証書だけではなく、
    「工程票・検査成績書・使用部品リスト・ラベル仕様」などとセットで通関資料に使えるようにしておく

③ オペレーション戦略

  • 誰が、いつ、どの様式で保証書を発行し、
    通関トラブル時に誰が修正・追加説明を行うかを社内プロセスとして固定する

3. 保証書の「通関向け」文言設計

3-1 必須要素(最低限ここは押さえたい)

  1. 再製造品である明示
    • 例: 本製品は、当社工場において分解・検査・部品交換・再組立・最終検査を行った**再製造品(remanufactured product)**です。
  2. 新品同等性能の明示
    • 例: 本再製造品は、当社の新品製品と同等の性能および機能を有することを確認しております。
    • 「新品以上」「新品を超える」等の表現は避け、**“新品と同等”**にとどめると法務的にも扱いやすいです。
  3. 保証期間と、新品との比較
    • 例: 保証期間:出荷日より12か月(当社新品製品と同一条件)
    • 税関は「保証期間」からも商業的価値・品質レベルを推定します。新品と同等、またはそれに準じる期間であることを明示。
  4. 保証の範囲
    • 例: 本保証は、通常の使用条件下での材料および製造上の欠陥に限定されます。交換部品および修理工賃を対象とし、二次的損害は対象外とします。
  5. トレーサビリティ情報
    • 保証書のどこかに、最低限次を入れる:
      • 再製造工場名/所在地(国名)
      • 再製造日または出荷日
      • 製品型式・ロット番号・シリアル番号
      • 再製造工程コードや作業指示番号(社内コードでも良い)
  6. 安全・規格・適合情報
    • EU・北米向けなら、必要に応じて:
      • 適用規格(例:IEC、UL等)
      • CEマーキング/UL認証等の有無
    • これを保証書内に簡潔に記載し、詳細は別紙「技術文書」「試験成績書」に飛ばす設計にすると整理しやすいです。

4. 通関で使える「保証書+技術資料パッケージ」の標準構成

実際にうまく回っている企業ほど、次のような**“ひとまとめパック”**を決めています。

  1. 保証書(Customer Warranty Certificate)
    • エンドユーザー/販売先向けだが、税関提出用としても使えるように日英併記にしておくと有利。
  2. 再製造工程フローとチェックシート(1~2枚)
    • 「分解 → 清掃 → 検査 → 交換 → 再組立 → 最終検査」の流れを1枚図に
    • 代表的な検査項目と合否基準を簡潔に記載
  3. 出荷検査成績書(代表値で可)
    • 主な性能項目と合格判定
    • “新品基準”と“再製造品の測定値”を並べるフォーマットにすると、
      「新品同等」の裏付けとして説得力が出ます。
  4. 使用した新品部品の一覧
    • 例:
      • 部品名/部品番号
      • 新品・再利用区分
      • 主要な新品部品(シール類、ベアリング、電子基板等)には、「メーカー純正/同等品」の別も明示
  5. ラベル・マーキング仕様
    • 製品に貼るラベルの見本(PDFで1枚)
    • 以下の項目が読めるように:
      • “Remanufactured by XXX in [Country]”
      • 製品型式・シリアル
      • 再製造日コード
    • 税関に「表示が明確=ユーザーも再製造品と理解して購入している」ことを伝えられます。
  6. 原産地・HSコード関連との紐付け
    • HS分類メモ、原産地判定メモ(RoO)、コスト構成等の記録と、
    • 上記パッケージを同じ案件フォルダで一括管理しておく
    • HS Code Finder/社内HS判定システムの「添付資料」欄に
      • 「保証書」「出荷検査成績書」「再製造工程図」を標準で含める
        というルールにすると、後からの説明資料の入手が非常に楽になります。

5. 実際に行われているオペレーションのイメージ

5-1 A社パターン(日本本社+ASEAN工場 → EU/US向け)

  • 本社(日本)
    • 保証書テンプレートを日英版で作成し、一元管理
    • 改定時は、法務・品質保証・貿易部が合同レビュー
  • ASEAN再製造工場
    • 本社テンプレに従って保証書を発行(製品ラベルと同じLOT/Serialを必ず記載)
    • 出荷検査成績書、工程票、部品リストをロットごとにPDF化
  • 通関・物流(日本/現地販売会社)
    • 税関から照会が来た場合すぐ出せるよう、
      「インボイス/パッキングリスト/HS分類メモ/保証書パック」を1セットにして保管
    • HSコードや「新品/中古/再製造」区分を確認されたときは、
      まず保証書+工程フロー+検査成績の3点セットを先に提示

5-2 B社パターン(自動車部品の再製造サービスパーツ)

  • 部品番号(P/N)単位で保証書を紐付け
    • 部品マスタに「新品」「再製造」「修理品」の区分フラグを持たせる
    • 再製造品には必ず保証条件コードを設定(新品と同等 or 短縮など)
  • 保証書には、次を明示
    • 対象部品番号
    • 適合車種/システム
    • 保証期間と走行距離条件
  • 通関実務
    • HSコード説明依頼の際に、
      「この部品は新品ではなく再製造品だが、メーカー保証付きで新品同等性能である」
      ことを保証書と部品マスタ情報で説明する運用

6. 国・地域別の「見せ方」のコツ(ハイレベル)

※法的アドバイスではなく、実務上よく取られる“説明トーン”のレベル感です。

ASEAN域内(改定ATIGAも意識)

  • 一部加盟国では「中古品・廃棄物」の輸入に慎重
  • 保証書上は:
    • 「新品同等性能」である点
    • 認定工場での再製造である点
    • 簡潔な環境面の意義(廃棄削減・資源活用)を追記すると、担当官に納得感が出る場合が多い

EU向け

  • 環境・安全・エコ設計の観点にも関心
  • 保証書では:
    • 適用規格・指令(例:低電圧指令、EMC指令等)への適合を簡単に触れる
    • 詳細は「技術ファイル」「試験レポート」にリンクさせる設計が無難

米国向け

  • 「Repair/Refurbished/Remanufactured」の違いに敏感な場合あり
  • 保証書では:
    • “Remanufactured”を明示(Refurbishedと混在させない)
    • 保証内容(期間・範囲)をクリアに書くことで、商業的価値と品質水準を説明

7. 社内で今すぐできるチェックリスト

  1. 対象製品の棚卸し
    • 再製造品のラインアップをリストアップ
    • 「保証書が存在するもの」「存在しないもの」「新品と同じ保証書をなんとなく使っているもの」に色分け
  2. 保証書フォーマットの見直し
    • 上記3-1の必須要素が入っているかをチェック
    • 「新品と同じ文言をコピペ」していないか(再製造品の特性が反映されているか)
  3. 技術資料とのリンク
    • 保証書に書いてある内容を裏付ける工程票・検査成績書が、
      ロット別にちゃんと残っているか
    • HS分類メモ・原産地判定メモと同じフォルダに保存されているか
  4. 通関トラブルのフィードバック
    • 過去に「中古扱い」「価格査定」「環境規制」などで指摘を受けた案件を振り返り、
    • そのときに「保証書に何が書いてあれば言いやすかったか」を洗い出し、
      保証書テンプレに反映(テンプレの改訂履歴を残す)

2025年11月19日時点で公表・報道されている「米国の相互関税(Reciprocal Tariff)」

以下は、2025年11月19日時点で公表・報道されている「米国の相互関税(Reciprocal Tariff)」について、指定された国だけを抜き出した最新リストです。


進め方(計画)

  1. 公式の国別相互関税率を確認
    • ホワイトハウス大統領令「Further Modifying the Reciprocal Tariff Rates」(2025年7月31日)の Annex I にある国別率を確認。
    • JETRO「米国トランプ政権の関税政策の要旨」(2025年11月18日版)の相互関税率表を照合。
  2. カナダ・メキシコ・中国など Annex I に載っていない/別枠扱いの国を確認
    • JETRO「米国関税措置への対応」特集の各国別解説(対中関税、対カナダ・メキシコ関税など)と Federal Register/ホワイトハウスの大統領令をチェック。
  3. 直近(前日)からの変更の有無を確認
    • 11月4日の対中相互関税修正 EO、11月14日の農産品の相互関税対象外 EO 以降、国別レートを変える新たな大統領令・告示が出ていないか確認。
    • JETRO 11月18日資料は「2025年11月18日時点」と明記されており、その後も国別相互関税率の変更報道はなし。
  4. 指定国だけを抽出し、表形式で整理
    • 「国名/相互関税率(国別上乗せ分)/前日差/主な出所/備考」を記載。

この計画に沿って調査した内容を、以下の表にまとめています。


最新 相互関税リスト(指定国のみ)

前提メモ

  • 「相互関税率」は、米国側が各国に対して設定している追加 ad valorem 関税率(Reciprocal Tariff の国別率)です。
  • EU・日本など一部は「MFN税率と合わせて15%になるよう調整」という形で運用されています。
  • カナダ・メキシコ・中国は、相互関税とは別枠の IEEPA 関税や301条関税等が重なっている特例です。

表:国名順(ご指定の順番)

国名相互関税率(国別上乗せ分)前日差主な出所備考
Algeria(アルジェリア)30%なしWH EO 2025/7/31 Annex I, JETRO 2025/11/18Annex I 掲載国(相互関税対象国)。
Angola(アンゴラ)15%なし同上同上。
Bangladesh(バングラデシュ)20%なし同上同上。
Bosnia & Herzegovina(ボスニア・ヘルツェゴビナ)30%なし同上高率(30%)グループ。
Botswana(ボツワナ)15%なし同上同上。
Brazil(ブラジル)10%(相互関税分)なしAnnex I, JETRO「主要国・地域の追加関税率」相互関税10%に加え、別の大統領令に基づく追加関税40%で**合計50%**のケースあり。
Brunei(ブルネイ)25%なしAnnex I, JETRO同上。
Cambodia(カンボジア)19%なしAnnex I, JETRO10月に米カンボジア通商枠組み合意。レート自体は19%で維持。
Cameroon(カメルーン)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Canada(カナダ)*―(相互関税対象外)なしJETRO 11/18, JETRO「対カナダ関税」相互関税EOの Annex I には非掲載。代わりに IEEPA に基づく追加関税35%(一部品目除外)。USMCA原産品は免除。
Chad(チャド)15%なしAnnex I, JETRO同上。
China(中国)*34%(名目)/実効10%なしJETRO「対中国関税の概要」(11/5)、対中相互関税修正 EO(11/4)EO 14257 Annex I 上は34%。うち24ポイントの賦課を2026年11月10日まで停止し、相互関税として実際に徴収されるのは10%。さらにフェンタニル対策IEEPA関税10%、301条追加関税25%などが別途上乗せされる。
Côte d’Ivoire(コートジボワール)15%なしAnnex I, JETRO同上。
DR Congo(コンゴ民主共和国)15%なしAnnex I, JETRO同上。
EU(欧州連合)最大15%(MFN含む)なしAnnex I, JETRO、EU・米国合意報道EU向けは特例:MFN税率が15%未満の品目は「MFN+相互関税=15%」、MFNが15%以上の品目には相互関税0%
Falkland Islands(フォークランド諸島)10%なしAnnex I, JETRO同上。
Fiji(フィジー)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Guyana(ガイアナ)15%なしAnnex I, JETRO同上。
India(インド)25%(相互関税分)なしAnnex I, JETRO「主要国・地域」相互関税25%に加え、別EOに基づく追加関税25%で**合計50%**と整理されている。
Indonesia(インドネシア)*19%なしAnnex I, JETRO7月22日の米インドネシア通商合意で 19%に確定。
Iraq(イラク)35%なしAnnex I, JETRO高率(35%)グループ。
Israel(イスラエル)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Japan(日本)*15%なしAnnex I, 日米関税合意および実施EO(9/4)、JETRO解説7/22の日米合意に基づき、相互関税率は24%→15%に引き下げ。MFN税率が15%未満の品目は「MFN+相互関税=15%」、15%以上の品目には相互関税なし。自動車・同部品の232条関税も同様に15%上限。
Jordan(ヨルダン)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Kazakhstan(カザフスタン)25%なしAnnex I, JETRO高率(25%)グループ。
Laos(ラオス)40%なしAnnex I, JETRO非常に高い相互関税率(40%)。
Lesotho(レソト)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Libya(リビア)30%なしAnnex I, JETRO高率(30%)グループ。
Liechtenstein(リヒテンシュタイン)15%なしAnnex I, JETROEFTAの一員。11/14の米・スイス・リヒテンシュタイン枠組み合意の対象国の一つだが、レート自体はもともと15%。
Madagascar(マダガスカル)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Malawi(マラウイ)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Malaysia(マレーシア)19%なしAnnex I, JETRO10月の通商協定枠組み合意後もレートは19%で据え置き。
Mauritius(モーリシャス)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Mexico(メキシコ)*―(相互関税対象外)なしJETRO 11/18, 対メキシコ IEEPA 関税解説Annex I 非掲載。**IEEPA に基づく追加関税25%**が非USMCA品に適用。USMCA要件を満たす品目は免除。
Moldova(モルドバ)25%なしAnnex I, JETRO高率(25%)グループ。
Mozambique(モザンビーク)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Myanmar(ミャンマー)40%なしAnnex I, JETRO最高水準の一つ(40%)。政情リスクも背景とされる。
Namibia(ナミビア)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Nauru(ナウル)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Nicaragua(ニカラグア)18%なしAnnex I, JETRO同上。
Nigeria(ナイジェリア)15%なしAnnex I, JETRO同上。
North Macedonia(北マケドニア)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Norway(ノルウェー)15%なしAnnex I, JETROEFTAの一員だが、相互関税率は15%で確定。
Pakistan(パキスタン)19%なしAnnex I, JETRO同上。
Philippines(フィリピン)19%なしAnnex I, JETRO「主要国・地域」7/22の米比合意で19%に設定。
Serbia(セルビア)35%なしAnnex I, JETRO高率(35%)グループ。
South Africa(南アフリカ)30%なしAnnex I, JETROアフリカではアルジェリア・リビアと並ぶ30%グループ。
South Korea(韓国)*15%なしAnnex I, JETRO(注3)7/31 Annex I で15%。11/13の米韓合意により、今後 EU・日本同様に「MFN(または韓米FTA税率)+232条を含めて15%上限」とする運用に修正される見込み。
Sri Lanka(スリランカ)20%なしAnnex I, JETRO同上。
Switzerland(スイス)39%(発動中)なしAnnex I, JETRO 11/18, JETRO/Reuters/Swissinfo報道7/31 EOの Annex I で31%→39%に引き上げられ、8/7以降発動。11/14に米・スイス・リヒテンシュタイン間で「最大15%に引き下げる」枠組み合意が発表されたが、15%への正式な引き下げを行う大統領令はまだ出ていないため、**11/19時点の法令上の相互関税率は39%**と整理。
Syria(シリア)41%なしAnnex I, JETRO一覧中で最も高い相互関税率(41%)。
Taiwan(台湾)20%なしAnnex I, JETRO同上。
Thailand(タイ)19%なしAnnex I, JETRO7月の通商枠組み合意後も19%を維持。
Tunisia(チュニジア)25%なしAnnex I, JETRO4月時点28%→7/31の再設計で25%に修正。
Vanuatu(バヌアツ)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Venezuela(ベネズエラ)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Vietnam(ベトナム)20%なしAnnex I, JETRO7月の合意で20%に設定。JETRO「各国の追加関税率」参照。
Zambia(ザンビア)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Zimbabwe(ジンバブエ)15%なしAnnex I, JETRO同上。

補足:共通の最近の動き(全ての国に関係するもの)

  • 農産品の一部が相互関税対象外に
    2025年11月14日の大統領令により、牛肉・コーヒー・茶・一部肥料などの農産品が、国を問わず相互関税の対象外となりました(237のHS分類が Annex で指定)。
    → 上記表の「相互関税率」自体は変わらないものの、実際にこのレートがかかる品目の範囲はやや狭まっています。
  • 中国に対する相互関税の「実効10%」の延長
    11月4日の大統領令により、対中相互関税34%のうち24ポイントを停止し、相互関税としては10%のみを2026年11月10日まで適用する措置が延長されました。同時に、フェンタニル対策の IEEPA 追加関税が20%→10%に引き下げ。

改訂ATIGAでの「再製造品」の扱い

改正ATIGAは、再製造品を「中古品扱い」から「正規商品」として流通させやすくする方向に大きく舵を切ろうとしています。ただし、(1)協定本文はまだ全面公開されておらず、(2)発効もこれからであるため、以下は公表されている公式資料・報道、他FTA(CPTPP等)やWCOの分析をベースにした「現時点で読める範囲の整理とビジネス的インプリケーション」です。fungry+3

1. 改正ATIGA(Upgraded ATIGA)の位置づけとタイムライン

ATIGA(ASEAN Trade in Goods Agreement)は2009年に署名、2010年に発効したASEAN域内の物品貿易自由化の中核協定です。2022年から「アップグレード(改正)」交渉が開始され、持続可能性・循環経済・再製造品・環境と貿易・サプライチェーン連結性など新テーマを取り込むことが目標とされてきました。kenbunsya+3

2025年10月、クアラルンプールで開催された第47回ASEANサミットで「Upgraded ATIGA(第2次改正議定書)」に各国が署名しました。協定は「全加盟国が署名を完了してから18か月後」に発効する見込みとされています(ASEAN事務局の発表)。fungry+2

発効時期の見通し:2025年11月時点では、署名は完了していますが、まだ発効前です。実務的な適用開始は各国の批准スピード次第ですが、早くとも2027年前後と見込まれます。sambushi+3

2. 「再製造品(remanufactured goods)」の定義

WCOや米国・EUのFTAで使われる一般的な定義を整理すると、以下のようになります。c-edge+1

再製造品:中古品や使用済み製品(コア)を回収し、分解・洗浄・摩耗部品の交換・再組立・試験などの工程を経て、新品と同等の性能・寿命・保証を持つレベルまで再生した製品です。例としては、再製造エンジン、再製造トランスミッション、再製造プリンタカートリッジ等が挙げられます。kenbunsya+3

中古品(used goods):使用済みだが、特段の再製造工程を経ていないもの(簡単な清掃や調整のみ)を指します。sambushi+1

修理品(repaired goods):壊れた箇所だけを修理したもので、全体として新品相当の性能・寿命を保証しているとは限りません。fungry+1

多くの国では、再製造品が関税・輸入規制上「中古品」とみなされ、輸入禁止、特別なライセンス義務、高い検査負担などの障壁に直面しています。改正ATIGAは、この扱いを変えて「循環経済の重要な一部としての再製造品」を適切に位置づけ直すことを目的としています。kenbunsya+3

3. 改正ATIGAで再製造品が取り上げられる背景

3-1. 新しい「サステナビリティ・循環経済」軸

改正ATIGAは、従来の関税自由化や原産地規則に加え、「循環経済」「再製造品」「環境と貿易」「サプライチェーン連結性」といった新テーマを包含すると各種公式声明で説明されています。c-edge+1

シンガポールMTIの資料では、サステナビリティの柱として、環境財の貿易障壁削減と再製造品の流通円滑化が明示されています。kenbunsya+1

3-2. 再製造品に特化した新ルールの必要性

米国・CPTPP・EU等のFTAでは、再製造品について明確な定義、原産地規則(どのレベルの再製造をすれば「原産」と認めるのか)、「再製造品である」という理由だけで輸入禁止・差別的規制を課さないこと、ラベリング(再製造品であることの表示)のルールなどを定めるのが一般的になりつつあります。WCOやASEANの研究でも「同様の枠組みを導入すべき」と指摘されていました。sambushi+2

4. 改正ATIGAにおける再製造品ルールの骨格

2025年11月時点では、Upgraded ATIGAの条文全文は公式にはまだ一般公開されていません。専門家レポートでも「テキストは未公表だが、17の新章が含まれる」とされています。fungry+2

以下は、公表されている政府プレスリリース・インフォグラフィック、ASEAN・WCO・EU-ASEAN Business Council等の分析から読み取れる「方向性」です。c-edge+2

4-1. 「再製造品の流通円滑化」の明示

シンガポール貿易産業省(MTI)のプレスリリースでは、サステナビリティの項目として次のポイントが挙げられています。kenbunsya+1

  • 環境財の貿易障壁を下げるための協力
  • 「環境にやさしい製品やリサイクル製品を含む再製造品」の流通円滑化

これは「ASEANのFTAとして新しい特徴」であり、まずは「準備の整った加盟国(ブルネイ、マレーシア、シンガポール)」から導入されます。他の加盟国は、協定発効から以下のスケジュールで実施協議を開始します。sambushi+3

  • インドネシア・フィリピン・タイ:5年以内に実施協議を開始
  • カンボジア・ラオス・ミャンマー・ベトナム:7年以内に協議開始
  • いずれも協議開始から2年以内に結論を出す

同趣旨の説明は、シンガポール政府のインフォグラフィックでも「再製造品(環境配慮型・リサイクル品を含む)の貿易拡大が期待される」とされており、再製造品が改正ATIGAの重要な要素であることが強調されています。c-edge+1

4-2. 定義・分類・輸入手続き・原産地の整理

ASEAN Investment Report 2025の要約によると、アップグレードでは以下の点が整理されます。fungry+1

  • 再製造品の定義
  • 分類基準(HS・AHTNとの紐づけ方法)
  • 再製造品の輸入手続き・規制のあり方
  • 再製造品の原産地の扱い

US-ASEAN Business Councilのレビューでは、各加盟国が定義、分類基準・輸入手続・原産地の判断などに懸念を示しており、解決策として「循環経済向けのゼロ関税・優遇関税」「再製造品の重要性を前提としたルール化」が提案されています。sambushi+1

つまり、「再製造品をどう定義し、どう税番を付け、どう輸入させ、どの条件で原産品扱いにするか」が改正ATIGAの重要テーマになっていると理解できます。fungry+2

4-3. 関税面:新品との同等・優遇が方向性

EU-ASEAN Business Councilなどのビジネス側からの提言では、「中古・再利用・再製造・リサイクル品に対し、ゼロ関税や優遇関税を明示すべき」と求めており、循環経済推進の観点から、新品と同等またはより良い税率を与える方向性が示されています。c-edge+1

改正ATIGAの全体像としても、域内貿易の「99%超の貿易自由化」を目標としていますので、再製造品についても既存の関税譲許スケジュールに基づき、新品と同じ優遇関税(多くは0%)を適用する方向と見られます。kenbunsya+2

4-4. 原産地規則(RoO)との関係

WCOの研究では、他のFTA(CPTPPやEU協定など)での再製造品ルールとして、以下のパターンが一般的です。sambushi+1

  • 「再製造工程」自体を実質的変更(substantial transformation)として認める
  • 回収コア+新部品を組み合わせた再製造品が原産品となる条件を明記
  • 再製造過程で生じる廃材・回収材の扱い(原産性の付与)を整理

改正ATIGAも、再製造工程をどの程度行えば「原産」とみなすか、ASEAN域内で回収されたコアや部品をどう累積(cumulation)として扱うかなどを整理する方向で設計されているとみられますが、具体的なCTCやVAの数値条件はまだ公表されていません。fungry+1

5. ASEAN各国の導入タイムライン(フェーズ分け)

再製造品に関する新ルールは、加盟国一斉スタートではなく、フェーズ導入が明記されています。kenbunsya+1

グループ対象国導入タイミング(目安)
第1フェーズ:Ready AMSブルネイ、マレーシア、シンガポールUpgraded ATIGA発効とほぼ同時に再製造品規定を実施
第2フェーズインドネシア、フィリピン、タイ協定発効から5年以内に実施方法を協議開始→協議開始から2年以内に結論
第3フェーズカンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム協定発効から7年以内に協議開始→協議開始から2年以内に結論

※実際の適用開始日は、各国の国内法整備・批准状況に依存します。c-edge+1

当面(2027年〜2030年頃)は「ブルネイ・マレーシア・シンガポール間」で再製造品ルールが先行し、他のASEAN諸国は中長期的に追随するという時間差が予定されています。sambushi+1

6. 日本企業へのビジネス・インパクト

ここからは、日本企業(特にASEANに生産拠点・販社を持つ企業)の視点で、想定される影響を整理します。fungry+1

6-1. ビジネスチャンス:再製造ビジネスの「公認」ルートの確立

これまで、多くのASEAN諸国では再製造品が「中古品」として扱われ、輸入禁止、数量制限、輸入ライセンス・検査の負担、税関での分類トラブルが頻発していました。c-edge+1

改正ATIGAは、再製造品を循環経済の一部として位置づけた上で「流通円滑化」を明示しているため、再製造品が新品と同じ税番・関税率で扱われ、「再製造品であること」だけを理由にした輸入禁止・差別的扱いが制限される方向が期待されます。kenbunsya+2

これにより、自動車部品・建機部品・産業機械・プリンタ/複合機などでの再製造ビジネス、グリーン調達・循環型ビジネスモデル(リース+回収+再製造)が設計しやすくなります。sambushi+1

6-2. サプライチェーン設計:ASEAN内の「リマニュファクチャリング・ハブ」

実務的には、まずマレーシア・シンガポールを中心に「ASEAN内再製造ハブ」を設け、ASEAN域内の拠点同士をATIGAの優遇関税でつなぐというモデルが現実的です(同2か国は第1フェーズで即時導入)。kenbunsya+1

例えば、タイ・インドネシア等で販売された製品の使用済みコアをマレーシアのリマニュファクチャリング工場に集約し、再製造品として再びASEAN各国に供給する方法が考えられます。将来的に、各国の再製造ルール導入後は、ローカル拠点での再製造ビジネスも拡大する見込みです。fungry+2

6-3. 通関・コンプライアンスで注意すべきポイント

HS分類と「中古品扱い」のリスク

HS上、再製造品も基本的には新品と同じ品目・機能で分類されるのが原則ですが、実務ではしばしば「中古品」扱いされます。改正ATIGAの狙いは、ここを整理・標準化することです。c-edge+3

以下を明確に文書化しておくことが、税関との議論・将来の紛争予防に重要です。sambushi+1

  • HS分類根拠
  • 再製造工程の内容(分解・検査・交換・試験等)
  • 品質保証・保証期間

輸入規制との整合

再製造品ルールができても、各国の廃棄物輸入規制、中古機器規制、衛生・安全・環境関連の国内法は残ります。従って、関税面ではATIGAで優遇される一方、非関税規制は各国法を個別に確認するという二段階アプローチが必要です。fungry+2

原産地証明(Form Dなど)

再製造品の原産地規則がどう整理されるかは今後のポイントですが、回収コアがどこの国から来たのか、どの国でどの工程を行ったか、使用した新部品の原産性などを証明するためのトレーサビリティと記録管理は確実に重要になります。c-edge+1

6-4. 社内的な備え:品質・保証・ラベリング

改正ATIGAの条文を待たずに、現時点から実施可能な対策として以下が挙げられます。sambushi+2

  • 再製造品を新品と同等の性能・保証レベルで設計・運用すること(これが国際的な「remanufactured」の前提)
  • 「ReMAN」「Refurbished」などのラベルや取扱説明書に、再製造工程の概要、性能保証、環境メリット(CO₂削減、資源使用削減など)を分かりやすく盛り込むこと
  • 品質管理・認証(ISO、IATF等)とリンクさせ、規制当局にも説明しやすい形にしておくこと

7. 日本企業が今から取るべきアクション(チェックリスト)

ビジネスマン視点での「当面のTo-Do」は以下のとおりです。c-edge+1

自社ポートフォリオの棚卸し

自動車部品、建機・産機、OA機器など「再製造ビジネスに回せる製品」「コアを回収しやすい製品」を洗い出します。fungry+1

ASEAN内フローのマッピング

どの国で販売し、どの国で再製造が現実的か(特にマレーシア・シンガポール)、将来的な他ASEAN諸国での展開余地を検討します。kenbunsya+1

税関・規制当局との対話チャネル準備

各国の通関業者・法務・業界団体と連携し、再製造品に対する当局のスタンス・ローカル規制を事前に把握しておきます。sambushi+1

原産地・トレーサビリティの仕組みづくり

コア回収・再製造工程・新部品の原産性を追跡できるシステムを構築し、将来のATIGA改正RoOへの対応を見越して、データ項目を設計します。fungry+1

社内の定義統一と教育

「中古品」「修理品」「再製造品」の社内定義を明確化し、営業・サプライチェーン・品質部門に対して、今後のATIGA改正の方向性を周知します。c-edge+1

情報モニタリング

協定本文の公開・各国の批准状況、再製造品に関するガイドライン・通達(特にマレーシア・シンガポール)を定期的にチェックします。kenbunsya+1

まとめ

改正ATIGAは、再製造品を含む循環経済を本格的に組み込んだ「次世代のASEAN物品貿易協定」に進化しつつあります。kenbunsya+2

具体的条文はまだ非公開ですが、再製造品の定義・分類・輸入手続・原産地、新品との同等・優遇関税、非関税障壁削減という方向性は各種公式資料からほぼ明らかです。sambushi+1

当面はマレーシア・シンガポール等での先行導入から、他ASEANへの段階展開となる見込みで、日本企業にとっては再製造ビジネスをASEAN内で立ち上げる好機である一方、原産地管理・品質・規制対応の高度化が求められる時期となります。fungry+3

特定業界(自動車・産機・OA機器など)ごとの影響整理や、「再製造品向けForm D/RoO管理のための社内テンプレート案」など、さらに実務寄りのアウトプットが必要な場合は、追加で作成可能です。c-edge+1

  1. https://c-edge.jp/column/kouseikouetsu/
  2. https://sambushi.jp/article/proofreading/
  3. https://kamisommelier.jp/717/
  4. https://kiji-sniper.com/blog/calibration-discrimination/
  5. https://fungry.co.jp/cnaps/blog/kousei-kouetsu/
  6. https://www.kenbunsya.jp/commusapu/design/4882/

HS2028改正の全体像

HS2028とは何か

WCO(世界税関機構)が運営する国際共通の商品分類体系「HS」の第8版に相当する改正です。通常は5年ごとに改正されますが、新型コロナ等の影響で今回のサイクルは6年に延長され、次の版は2028年1月1日発効とされています。現在はHS2022が稼働中で、その次の版がHS2028です。

どこまで決まっているのか

2025年3月(HSC第75会期)にWCOのHS委員会(HSC)が、約6年にわたる審議の最終回として以下を暫定採択しました。

  • 299セットのHS2028改正案
  • 105件の改正提案
  • 解説注の改正5件

これらを含む「HS2028向けArticle 16勧告案」により、HS2028の中身(6桁レベル)は技術交渉として決着した段階です。

どんな分野が大きく動きそうか

現時点で公表されている情報や専門ベンダーの分析から、特に影響が大きいと見られている分野は以下の通りです。

エレクトロニクス・IT関連

半導体・電子部品・スマート基板・マルチコンポーネントICなど、デジタル化・高度化した製品群の細分化と再編が進む見込みです。

医薬品・ワクチン関連

WHOのINNリスト(医薬品一般名)と連動した分類見直しが行われ、441品目の医薬物質の扱いが整理されるなど、医薬品セクターでの改正が大きくなります。

グリーン技術・環境関連品目

再生可能エネルギー関連設備、電動化・省エネ機器、環境配慮型製品など、「グリーン商品」の見える化を意識したコード整理が進む見込みです。

デュアルユース・先端技術製品

軍民両用となり得る先端技術製品について、輸出管理・安全保障貿易との連携を意識した分類の明確化が図られるとみられます。

HS2028は「過渡期」版

2025年のWCO会合では、HS全体の構造そのものを見直す「HS2033モダナイゼーション・プロジェクト」の立ち上げも決定しました。HS2028は、現行HS枠組みの中での「テーマ別アップデート」であり、その先のHS2033でのより抜本的な再設計に向けた橋渡しという位置づけです。

採択プロセスとスケジュール

WCOレベルでの流れ

技術交渉の終了(完了済み)

2025年3月(HSC第75会期)にHS委員会がHS2028向けArticle 16勧告案を暫定採択し、6桁レベルの技術交渉は終了しました。

WCO理事会での正式採択(2025年末予定)

上記の勧告案は、2025年中にWCO理事会に付議され、Article 16勧告として正式採択される予定です。WCO・AEOなどの説明では、2025年12月末に正式採択、2026年1月に勧告が公表されるというタイムラインが示されています。

締約国による異議申立期間(概ね6か月)

HS条約(Article 16)では、WCO理事会から各締約国に勧告が通知されてから6か月間、各国が異議を申し立てることができ、異議がなければ勧告は「全会一致で採択されたもの」とみなされる仕組みです。企業実務から見ると、2026年の前半に国際的な法的確定が進むという理解で十分です。

HS2028テキストの公表

WCO・AEOなどの情報によると、2026年1月にHS2028の最終テキスト(6桁レベル)が公表される見込みです。

発効日

HS2028(新しい版)は、2028年1月1日に全世界で発効することが明示されています。

各国関税表・FTAへの落とし込みスケジュール

HSはあくまで「6桁までの国際条約」です。実務に影響するのは、各国がこれを自国の関税・統計・FTAにどう落とし込むかというフェーズです。

2026年から2027年前半:各国の作業フェーズ

日本は関税率表、実行関税率表、輸出入統計品目表、原産地規則付属書などをHS2028ベースに改正します。EU・米国・ASEANなども、自ブロックや自国の関税表や実行関税(TARIC、HTSUS、AHTN等)をHS2028に合わせて整備します。同時に、FTAの品目表・リストルール(ROO)を新HSに合わせて改正する作業が進みます(例:RCEP、日EU EPA、CPTPP等)。

2027年から2028年:並行稼働期・移行期

多くの国が2028年1月1日からHS2028に移行する一方で、一部の途上国等は移行に時間がかかる可能性があります(過去のHS2017、2022と同様)。企業から見ると、国によって「まだHS2022」「もうHS2028」という期間が数年発生することになります。

相関表の活用

WCOは、HS2022とHS2028を結び付ける「相関表(Correlation Tables)」を作成・公表することになっており、これが各国・各企業の「コード変換作業」の基礎になります。

企業にとっての押さえるべきポイント

マスターデータ・ITシステムへのインパクト

HSコードの6桁が変わると、以下のすべてを更新する必要があります。

  • 自社の品目マスター
  • ERP・輸出入管理システム
  • FTA原産地判定エンジン
  • 税率マスタ・統計コード

専門ベンダー(例:欧州のAEB等)は、HS2028への移行が「通関プロセス・マスターデータ・ITシステムに広範な影響を与える」として、早期の影響分析を推奨しています。

関税コスト・原産地(FTA)への影響

HS改正は単なる番号変更ではなく、「どのHSに入るか」が変わることで、MFN関税率が変わる可能性や、原産地規則(CTCルール)の前提となるHSが変わることを意味します。

特に、電動化・グリーンテック・医薬品・先端半導体などは、関税政策・産業政策と連動した細分化が予想されるため、「関税コスト+FTAメリット」の再試算が必要になります。

グローバルで「複数HS年版」が同時に走るリスク

2028年前後数年間は、米国はHS2028を取り込んだHTS(2028版)、EUはCN/TARIC 2028、ASEANはAHTN 2028(採用タイミングは国により差)、他の国はHS2022のままや独自の移行スケジュールといった形で、「国によりHSの版が違う」状態が避けられません。

その結果、同じ商品でも国Aでは旧HS、国Bでは新HSということが起こり得ます。FTAの原産地証明(特にForm・電子原産地証明)で、相手国税関が想定するHS版と、輸出側が使うHS版が食い違うリスクなどが増えます。

HS2033を見据えた中期視点

HS2028の直後には、2028年から2033年の次サイクルで、HS全体をより抜本的に見直すHS2033改正が控えています。よって、HS2028対応の仕組み(コード変換ロジック・ツール・BPO活用など)は、2033年以降も繰り返し使える「仕組み」として設計しておくことが重要です。

企業が今から準備すべきこと

自社品目の棚卸し(HS2022ベース)

現在使用しているHS2022コード・統計品目番号を、品目マスターとして整理・整合させておく(輸出入・販売会社間でのズレを解消)ことが重要です。

HS2028情報のウォッチ体制の構築

WCO・国税庁・税関、ならびに専門ベンダー(TariffTel、AEB等)の情報更新を定期的にチェックする担当者や仕組みを決めましょう。

IT・システム部門との事前連携

2026年から2027年にシステム改修が集中することを想定し、以下について情報システム部門やベンダーと早期に議論を開始します。

  • HSコード桁数・版管理の仕様
  • 相関表をインポートする仕組み
  • FTA原産地判定ロジックのバージョン管理

FTA・原産地業務への影響の洗い出し

主要FTA(RCEP、日EU、CPTPP、日メキシコ、日タイ等)の原産地リストルールがHS2028に改正されるタイミングと内容をウォッチし、自社のサプライチェーン別に「有利・不利」の試算を行います。

社内教育とサプライヤーコミュニケーション

営業・物流・調達向けに「HS2028とは何か・いつから影響するか」の簡易資料を用意します。主要サプライヤー向けにも、将来的に「HS2028版の部品HSコード+原産地情報」を求めることを先に伝えておきましょう。

全体のまとめ

HS2028は、2028年1月1日発効予定の次期HS改正であり、2025年3月時点で技術的な中身(299セットの改正)はほぼ確定済みです。2025年末にWCO理事会がArticle 16勧告を正式採択し、2026年1月にHS2028テキストが公表され、各国が自国制度への落とし込みを開始します。

改正の焦点は、エレクトロニクス・医薬品・グリーンテック・デュアルユース製品など、近年の通商・安全保障政策のホットスポットに集中しています。

日本企業にとっては、関税コスト・FTA原産地ルール・社内マスターデータ・ITシステムの全面的な見直しが不可避であり、2026年から2027年を「移行準備の勝負どころ」と捉える必要があります。

さらに、すでにHS2033に向けた抜本的なモダナイゼーション・プロジェクトが動き始めており、HS2028対応は「一度きりの対応」ではなく、継続的なHS改正マネジメント体制を作る第一歩と位置付けるのが現実的です。

このあたりを押さえておくと、今後の「HS2028センサー改正」「特定品目のコード変更」のような個別論点も、全体戦略の中に位置づけて検討しやすくなります。


WCOデータモデル4.2.0が示す「原産地情報の世界標準化」


エグゼクティブサマリー

**WCOデータモデル4.2.0(2025年7月公表)**は、原産地証明書(CO)および自己申告に関するデータ項目・フォーマットを”世界標準”として明示した初の本格バージョンです。このアップデートにより、今後の「電子原産地証明・自己申告・税関間データ連携」の”型”がほぼ確定したといえます。aduananews+2

2025年7月に公表されたバージョン4.2.0では、「Customs Bonds(通関担保)」と「Certificates of Origin(原産地証明書)」という2つの新しい標準データセットが追加されました。特に原産地証明書データセットは、WCO原産地規則技術委員会(TCRO)が作成した原産地データ集をベースに標準化されており、各国が電子原産地証明(eCO)を発行・交換するための”共通フォーマット”を提供します。customstrade+2

さらに2025年10月、WCOは**「原産地証明相互接続フレームワーク(Interconnectivity Framework for Certificates of Origin)」**を公表し、税関同士がeCOデータをやり取りする際の法的枠組み・ビジネスプロセス・技術仕様を整理しました。フレームワークでは、「交換されるデータ要素・構造・メッセージ形式の標準として最新のWCOデータモデルを使用する」ことが明記されています。ddcustomslaw+1

要するに、「原産地情報(CO/自己申告)の”中身のデータ”を、WCOデータモデルという共通ルールで統一する」という流れが、公式に動き出したということです。企業サイドには、今後、原産地証明書・原産地申告のデータ項目の”共通化”と、ERP/通関システム/FTA管理システムとの”シームレス連携”を前提とした見直しが求められます。wcoomd+1

WCOデータモデルとは

概要

WCOデータモデル(WCO Data Model, WCO DM)は、通関や関連手続きでやり取りされるデータ要素を標準化した「共通辞書+設計図」です。対象は、輸出入申告、トランジット、許認可、電子インボイス、原産地証明など、”国境をまたぐ手続きのデータ”ほぼ一式をカバーします。バージョン4系列では、JSONやOpen APIなど最新の電子メッセージ形式との親和性が高められており、シングルウィンドウや各種プラットフォームと連携しやすい構造になっています。etradeforall+1

原産地情報に焦点を当てた背景

WCOは2023年に**「原産地証明書のデジタル化に関する研究(Study on the Digitalization of the Certificate of Origin)」**を公表しました。この研究は、84税関を対象とした調査から、紙と電子が混在し、eCOやデータ交換の仕組みも国ごとにバラバラという現状を明らかにしました。そこで、原産地証明プロセス自体をデジタル化し、国ごとにバラバラなデータ構造を共通化することを、デジタル通商・貿易円滑化の重点テーマに据えています。wcoomd+1

4.2.0における原産地情報標準化の進展

原産地証明書情報パッケージの追加

WCO DM 4.2.0の最大トピックの一つが、**原産地証明書データセット(Certificate of Origin Information Package)**の組み込みです。このパッケージは、原産地規則技術委員会(TCRO)が整理したCO用データセットを基礎としています。各国当局が発行する電子原産地証明(eCO)について、証明書番号、発給機関、発給日、輸出者・輸入者情報、品目情報(HS、品名、数量、価格など)、原産地国、原産地基準(CTC/RVC/WO等)、FTA名・適用条項などを共通のデータ項目&コード体系で表現できるように設計されています。aduananews+2

これにより、「国Aが発行したeCOデータを、国Bの税関がそのままシステムに取り込める」という”機械可読な世界標準”を目指しています。ddcustomslaw+1

相互接続フレームワークとの連動

2025年10月の**「原産地証明相互接続フレームワーク(Interconnectivity Framework for Certificates of Origin)」**が、このデータモデルを”実戦投入”するための設計図になっています。mag.wcoomd+1

主な内容は以下の通りです:mag.wcoomd+1

法的枠組み:税関間でCOデータをやり取りするための合意・法的根拠を整備します。ddcustomslaw

ビジネスプロセスモデル:多くの国が既に採用している「Pushモデル」を標準と位置付けています。Pushモデルでは、輸出国でCO発給後、そのデータを輸出当局が輸入国税関に”先送り”し、輸入国は輸入申告時に即座に真偽確認・照合が可能になります。mag.wcoomd

データセットと技術仕様:COデータ交換のためのデータ要素セットとして、WCOデータモデルに基づく「Derived Information Package(DIP)」を策定しました。交換されるデータ要素・データ構造・電子メッセージ形式の標準として、最新バージョンのWCOデータモデルを用いることが明記されています。ddcustomslaw+1

自己申告への拡張:付属書では、半自動Pullモデルおよび原産地自己申告(Self-Declaration of Origin)にも適用できるビジネスモデルを提示しており、将来的には自己申告データも同じWCO DMベースで標準化される方向が示されています。wcoomd+1

企業への具体的インパクト

「様式」から「データ」へのシフト

これまでは、FTAごとに異なるCO様式(紙/PDF)や、各国・各商社が独自フォーマットの原産地申告書を使用するといった”フォーマットの多様性”が前提でした。今後は、**「どの様式か」よりも「どんなデータ要素を、どのコード体系で持っているか」**が問われます。mag.wcoomd+3

例えば、OriginCriterion=”WO” / “CTH” / “RVC40″などのコード化、FTAや協定番号をコードで表現、原産地国コード(ISOコード)とHS Version(2002/2007/2012/2017/2022…)の明示などが求められます。企業は、ERPの品目マスタ、FTA原産地管理システム、通関システムの間で、同じ”原産地データ要素”を一貫して管理する体制が必要になります。wcoomd+2

税関向けと取引先向けデータの統合

WCO DMはもともと通関・当局向けのデータ標準ですが、今回CO・自己申告データがそこに乗ることで、税関に送る原産地データと取引先(顧客・サプライヤー)とやり取りする原産地証明・自己申告データのギャップが小さくなります。結果として、サプライヤー原産地証明のフォーマットも、将来的にはWCO DMにかなり似通ったデータ項目構成になる可能性が高くなります。wcoomd+1

システム統合・API連携の容易化

WCO DM v4系列は、JSONやOpen APIを前提とした実装を意識して設計されており、複数国税関・複数プラットフォームとのAPI連携をしやすくする構造になっています。通関業者やプラットフォームが「WCO DM 4.2.0準拠のeCO API」を提供すれば、それを前提にシステムを組むことでマルチ国対応の”共通インターフェース”になり得ます。FTA管理ツール・社内HS/原産地判定ツールも、WCO DMのCO/原産地関連要素を内部データモデルに取り込んでおけば、将来の当局連携やプラットフォーム接続がスムーズになります。wiki-datamodel.wcoomd+2

コンプライアンス・監査の高度化

Pushモデル+標準データにより、輸出時点のCO情報がそのまま輸入国税関システムに記録されるため、紙ベースに比べ、事後検認・監査での照合・追跡が格段に容易になります。企業にとっては、「税関に提出した情報」と「社内原産地管理台帳」の不一致が、データレベルですぐ露呈する可能性が高まります。逆に言えば、最初から同じデータモデルで一貫管理しておけば、監査時に非常に有利です。mag.wcoomd+1

日本企業が今からできる準備

短期(〜1年):情報収集とギャップ把握

自社の原産地データ項目を棚卸しし、COフォーム、サプライヤー原産地証明、自己申告書、ERPマスタ項目を一覧化します。WCO DM 4.2.0のCO関連項目とのマッピングを行い、「どの項目が足りないか/表現の仕方が違うか」を把握しておくことが重要です。また、RCEP、日EU EPA、CPTPP、ATIGA e-Form Dなど、主要FTAの電子CO/自己申告の動向をチェックし、既に電子プラットフォームがある枠組みでは、今後WCO DMとの整合がテーマになり得ることを認識しておきます。wcoomd+2

中期(1〜3年):システムと業務プロセスの整備

ERP・原産地管理システムの”原産地データモデル”を再設計し、最低限、HSコード+バージョン(HS2022など)、原産地国コード(ISO)、原産地基準(CTH/RVC/WO等)のコード化、適用FTA・条文番号、関連CO番号・発給機関などを構造化データとして管理する方向へ移行します。通関業者/ソフトウェアベンダーに、「今後WCO DM 4.2.0(特にCOパッケージ)に対応する予定はあるか」をヒアリングし、サプライヤーへの要求仕様も見直します。サプライヤー原産地証明を、将来的にWCO DM準拠のデータ要素に近づけることを想定し、フォーマットや入力項目の”将来像”を共有しておくことが望ましいです。ddcustomslaw+2

長期(3年〜):税関・国際プラットフォームとの直接連携

各国税関・地域プラットフォームが、WCO Interconnectivity Frameworkに沿ってeCOデータ交換を進めると、民間企業にも、原産地情報をAPI経由で送受信し、当局側のCOデータを自社システムに自動取込みするといったビジネスモデルが現実味を帯びてきます。その際、社内データがWCO DMベースで整理されている企業ほど、連携コストが低く有利です。mag.wcoomd+1

留意点

採用は各国の判断であり、スピードは国ごとに異なります。WCO DM 4.2.0はあくまで「標準」の提供であり、実際にいつ・どこまで採用するかは各税関の判断です。既に運用中の国・地域のeCOシステム(例:ASEAN ASW、EUの各種システムなど)が、どのタイミングでWCO DM 4.2.0と整合を取るかは今後の議論となります。wcoomd+3

自己申告の標準化はこれから本格化します。フレームワークにはSelf-Declaration of Originも含まれていますが、各FTAの法制度側の変更(様式改訂や条文修正)が伴うため、時間を要する可能性があります。wcoomd+1

企業にとっては「早く動きすぎるリスク」と「出遅れリスク」のバランスが重要ですが、“データとしての原産地情報を構造化・一貫管理する”という方向性は確実なので、社内のマスタ整備・項目の標準化だけ先行して進めておくのは合理的です。wcoomd+1

まとめ

WCO DM 4.2.0は、「原産地情報の世界共通のデータ仕様書」を提示したアップデートです。これにより、原産地証明・自己申告・税関間情報交換の”デジタル土台”が統一方向に動き始めたといえます。日本企業としては、原産地情報を「紙フォーム」ではなく「標準データ項目」として設計し直し、ERP・原産地管理・通関システムを”同じ原産地データモデル”でつなぐという中長期のデータ戦略が重要になります。customstrade+4

  1. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2025/july/world-customs-organization-releases-data-mode.aspx?p=1
  2. https://aduananews.com/en/la-oma-lanza-la-version-4-2-0-de-su-modelo-de-datos-y-avanza-en-la-digitalizacion-de-los-procesos-aduaneros/
  3. http://www.ddcustomslaw.com/index.php?option=com_content&view=article&id=1050%3Awco-unveils-digital-framework-for-sharing-certificates-of-origin&catid=1%3Aultime&Itemid=50&lang=en
  4. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2023/december/embracing-digital-evolution-wco-unveils-a-study-on-the-digitalization-of-the-certificate-of-origin.aspx
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  10. https://www.wcoomd.org/-/media/wco/public/global/pdf/topics/facilitation/ressources/permanent-technical-committee/243-244/pc0749eae1.pdf
  11. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2025/july.aspx
  12. https://www.facebook.com/WCOOMD/posts/-advancing-the-digitalization-of-customs-processes-wco-releases-data-model-versi/1167321625436238/
  13. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2025/july/world-customs-organization-releases-data-mode.aspx?stf=1
  14. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2025/october.aspx
  15. https://www.wcoomd.org/en/wco-working-bodies/tarif_and_trade/technical_committee_on_rules_of_origin.aspx
  16. https://www.wcoomd.org/-/media/wco/public/global/pdf/topics/origin/instruments-and-tools/origin-certification/study-on-the-digitalization-of-the-certificate-of-origin-en.pdf
  17. https://www.wcoomd.org/-/media/wco/public/global/pdf/topics/facilitation/ressources/permanent-technical-committee/243-244/pc0750eae1.pdf
  18. https://www.vatupdate.com/2023/12/14/embracing-digital-evolution-wco-unveils-study-on-the-digitalization-of-the-certificate-of-origin/
  19. https://customsbridge.ai/the-digital-revolution-of-customs-certificate-of-origin/

メキシコ政府による「中国およびその他FTA非締約国からの完成車に対する最大50%関税」方針

エグゼクティブ・サマリー

メキシコ政府は2025年9月9日、中国などメキシコとFTAのない国から輸入される完成車の関税を、現行約20%から最大50%に引き上げる方針を議会に提出しました。これは2026年経済パッケージに含まれる大規模な関税改定案の一部です。whitecase+1

対象国は中国だけでなく、韓国、インド、インドネシア、ロシア、タイ、トルコなど、メキシコとFTAを結んでいない主要自動車輸出国全般に及びます。reuters

対象品目は完成車(乗用車・貨物車)が最大50%、自動車部品や鉄鋼・繊維なども10〜50%の幅で関税引上げが提案されており、対象品目は1,463〜1,500超のHSコード、輸入額ベースで約520億ドル(全輸入の約8.6%)に及びます。mex.news.o-abroad+2

重要な点として、本措置はMFN(最恵国)関税のみが対象であり、USMCA(米国・カナダ)、日墨EPA、EU–メキシコ協定などFTA/EPA経由の輸入には適用されません。whitecase

現状(2025年11月時点)では、本提案は議会審議中であり、承認が遅れる可能性も指摘されています。ただし与党連合が上下両院で多数を握っているため、可決される可能性は高く、承認されれば2026年初に発効し、2026年12月31日までの「時限措置」として実施される見込みです。insightplus.bakermckenzie+2

日本企業への影響は、中国など非FTA国からメキシコ向けに輸出している完成車・部品ビジネスには強い逆風となる一方、日本・EU・米加産の車両・部品の相対的競争力向上、およびメキシコ現地生産・調達の追い風という、攻守両面のインパクトが想定されます。blogs.tradlinx+1


政策の概要

法的枠組みと位置づけ

2025年9月9日、メキシコ政府は「2026年経済パッケージ」を議会(下院)に提出し、その中で「一般輸入税・輸出税法(LIGIE)」改正のための立法措置を提案しました。insightplus.bakermckenzie+1

この提案は、メキシコのWTO約束税率(バウンドレート)の範囲内で、MFN輸入関税を最大50%まで大幅引上げする内容であり、主な対象産業に自動車・鉄鋼・繊維・プラスチック・玩具等が含まれます。whitecase

従来の措置との違いとして、2024年に実施された関税引上げは大統領令(政令)による時限的なものでしたが、今回は議会承認を経ることで法的安定性を高め、訴訟リスクを低減する意図があります。whitecase

完成車に対する最大50%関税

複数の報道と法務解説によれば、完成車に関するポイントは以下の通りです。

対象品目(例示)

  • HS第87類のうち、乗用車・レーシングカー(8703)、貨物用自動車(8704)などの完成車が、新たに「50%」のMFN税率に引き上げられるカテゴリーに含まれます。blogs.tradlinx+1

現行との比較

  • 中国など非FTA国からの完成車:現行 約20% → 最大50% に引上げ。reuters

対象国(代表例)

  • 中国、韓国、インド、インドネシア、ロシア、タイ、トルコなど、いずれもメキシコとFTA/EPAを締結していないため、MFN税率が適用される国です。reuters

適用期間とスケジュール

議会審議状況: 2025年11月時点では、承認が遅れる可能性も指摘されています。一部報道では、2025年12月15日の通常会期終了前に採決される可能性があるとされていますが、確定していません。mex.news.o-abroad+1

発効時期: 議会承認・官報(DOF)公布後、早ければ2026年1月1日に発効する見込みです。insightplus.bakermckenzie+1

適用期間: 提案では2026年12月31日までの時限措置とされていますが、延長の可能性も排除されていません。whitecase

政治的背景: 与党連合が議会で多数を占めていることから、基本方針は維持されたまま可決される可能性が高いと見られています。insightplus.bakermckenzie+1


背景:なぜメキシコは「50%」という高関税に踏み切るのか

中国製自動車の急増と価格懸念

中国は近年、メキシコ向け自動車輸出で最大の供給国となっており、2024年には約44.5万台を輸出したとされています。メキシコ市場における中国ブランドのシェアは、統計により9.5%~30%と幅がありますが、廉価EV・低価格車を中心に短期間で急伸していることは共通しています。reuters

メキシコ経済相マルセロ・エブラルド氏は、「中国車などが参照価格を下回る水準で流入しており、個別のアンチダンピング調査では追いつかないため、関税そのものを引き上げる」と説明し、国内産業を守るための「防御策」であると強調しています。wsws+1

また、メキシコの対中貿易赤字は2024年に1,200億ドルに達し、過去10年で倍増しており、2025年前半だけで570億ドルを超えています。wsws+1

米国の圧力とUSMCA 2026年見直し

米国は、中国製EVや完成車が「メキシコ経由で米国市場に流入すること」を強く警戒しています。reuters

米シンクタンクCSISのマリアナ・カンペロ氏は、「米国は、中国がメキシコを経由してUSMCAを”裏口”として使うことを認めないだろう」とコメントしており、メキシコの今回の措置は「USMCA 2026年レビューを前に、米国との関係を良好に保つための『対米配慮』」と分析されています。reuters

USMCA見直しの時期: メキシコ経済省によれば、USMCAの正式な見直しは2025年10月に開始され、2026年7月1日に完了予定とされています。wyche

同時に、トランプ前大統領は2025年7月にメキシコ産品に対して30%の関税を課す可能性を示唆しており、メキシコとしては「米側の追加関税を避けつつ、国内自動車産業と雇用を守る」という難しいバランスを取ろうとしていると言えます。wyche

Plan Méxicoと国内産業保護

メキシコ政府は2025年初から、「Plan México」の下で、既に約500品目(主に鉄鋼・アルミ・一部自動車部品)に5〜25%の追加関税を導入済みであり、2026年パッケージはその延長線上に位置付けられています。whitecase

政府説明では、過度な輸入依存により「国内の重要な生産部門が失われ、外部ショックへの脆弱性が高まった」こと、近年の「ニアショアリング」潮流を踏まえ、国内付加価値とローカルコンテンツを引き上げたいという意図が明記されています。whitecase

エブラルド経済相は、今回の措置により約32.5万人の産業・製造業雇用を保護できると試算しています。reuters


関税の具体像:どの国の、どの車に効いてくるのか

対象となる完成車・部品のイメージ(HSベース)

完成車(CBU)

  • HS 8703:乗用車・ステーションワゴン・レーシングカー
  • HS 8704:貨物用自動車
  • → MFN税率:50%blogs.tradlinx+1

自動車部品(例示)

  • HS 8708:車両の部分品・付属品
  • 一部のプラスチック部品(HS39類)、アルミ部品(HS76類)など
  • → 10〜50%のレンジで個別に設定whitecase

その他主要産業

  • 鉄鋼・アルミ:約35%
  • 繊維・衣類:10〜50%
  • 玩具・二輪車:約35%reuters+1

注意点: 最終的な税率は、政令の条文(HS6〜8桁レベル)で確定するため、各社は自社製品のHSコードベースで個別確認が必須です。whitecase

対象国:FTAあり/なしで明確に線引き

関税引上げの対象

  • 中国、韓国、インド、インドネシア、ロシア、タイ、トルコなど、メキシコとFTAを締結していない国。reuters

関税引上げの対象外(FTA/EPAにより優遇)

  • 米国・カナダ:USMCA
  • 日本:日墨EPA
  • EU諸国:EU–メキシコ・グローバル協定whitecase

重要な注意点: これらの国からの輸出であっても、原産地規則(RoO)を満たさない車両・部品は「非原産品」とみなされ、50%関税の対象になり得ます。whitecase


影響分析:誰が損をし、誰が得をするのか

メキシコ自動車市場・価格への影響

政府試算では、今回の関税引上げパッケージ全体で、対象輸入は520億ドル(全輸入の約8.6%)、平均MFN税率は16.1% → 33.8%に上昇する可能性が指摘されています。reuters

短期的には、中国車などの値上がり前の「駆け込み輸入・販売」が起こり、一時的にシェアがさらに伸びる可能性があります。blogs.tradlinx

中長期的には、低価格帯を中心に値上がりし、メキシコ国内生産車(メキシコ・米・日・欧ブランド)の価格競争力が相対的に高まると見込まれています。blogs.tradlinx

中国・その他非FTA国OEM/サプライヤーへの影響

中国側は本措置に強く反発し、「外部からの圧力や様々な口実による制限に断固反対する」と表明し、必要に応じて「対抗措置も検討」としています。reuters

自動車セクターでは、車両:20% → 50%、部品:現行 → 最大50%への関税引上げが想定されており、中国製完成車・部品をメキシコ向けに輸出するビジネスモデルは大きな見直しを迫られます。blogs.tradlinx+1

BYD・Cheryなど既にメキシコ工場計画を発表していた企業は、「メキシコで現地生産し、USMCAを通じて北米市場にアクセスする」戦略を加速するか、逆に計画を見直すかの分岐点に立たされています。blogs.tradlinx

日本・EU・米加の完成車メーカーへの影響

FTA/EPAを持つ日本・EU・米加の完成車メーカーは、関税面で直接のマイナス影響を受けない一方、中国など非FTA国の車両が50%関税を負うことで、相対的な価格競争力が大きく改善します。blogs.tradlinx+1

ただし、以下のようなケースは注意が必要です:

  • 日本メーカーが中国工場からメキシコへ完成車を輸出している場合 → その車両は中国原産扱いとなり、50%関税の対象になるリスクwhitecase
  • 日墨EPAを利用しているが、原産地基準をギリギリで満たしているモデル → 中国・韓国等非FTA国の部品比率が高い場合、将来の原産地検証でリスクが高まるwhitecase
  • EUメーカーが中国製EVを自社ブランドで輸入・販売している場合 → 影響を受ける可能性whitecase

北米サプライチェーン全体への波及

メキシコはUSMCAの下で米国向け自動車輸出の重要生産拠点であり、今回の措置は、「中国製車両・部品 → メキシコ → 米国」の回廊を抑制する方向に働きます。blogs.tradlinx+1

結果として、北米3カ国の間で「より閉じたブロック経済圏」が強まり、非FTA国からの参入ハードルが上がる一方、日本・EUなど既存FTAパートナーは、北米サプライチェーンへの組み込みを深める好機ともなり得ます。blogs.tradlinx+1


日本企業へのインプリケーションとチェックポイント

日本の完成車メーカー

日本→メキシコ向け輸出/メキシコ現地生産ともに、大枠では「プラス要素」が多いものの、以下の点を要チェックです。

輸出ルート別の影響整理

  • 日本工場 → メキシコ(原産地要件を満たし日墨EPA利用) → 関税引上げの直接影響なしwhitecase
  • 中国工場 → メキシコ(日本ブランドだが中国製) → 中国原産として50%関税の対象となる可能性whitecase
  • メキシコ工場 → 米国・カナダ(USMCA利用) → 中国製部品・バッテリー比率が高いと、将来の原産地検証や米国側の追加措置のリスクwhitecase

価格・商品ポートフォリオ戦略

  • 中国・韓国ブランドが撤退・値上げした価格帯を、メキシコ現地生産の小型車・コンパクトSUV・エントリーEVで取りに行く余地blogs.tradlinx
  • 逆に、自社が中国生産に依存しているエントリーモデルは、生産拠点の移管(日本/メキシコ/他FTA国)を検討する必要whitecase

日本の自動車部品・素材メーカー

中国や非FTA国からメキシコへ輸出している案件

  • 日系企業であっても、輸出国が中国・インド・ASEAN(非FTA)であれば50%関税の対象になり得ますwhitecase
  • まずは「HSコード × 原産国 × メキシコ向け売上」一覧を作成し、影響額を試算することが重要ですwhitecase

メキシコ現地生産・調達の機会

  • 中国など非FTA国製の部品が高関税となることで、メキシコ現地生産、あるいは日本・米・EUからのFTAベース調達へのシフトが起こる可能性が高いblogs.tradlinx+1
  • 日本のTier1・Tier2にとって、メキシコ増産・新規拠点設立の投資案件が増える可能性がありますblogs.tradlinx

商社・物流・金融機関

商社・物流

  • 2025年末〜2026年初にかけて、中国・韓国・インドなどからの「駆け込み輸出」対応(在庫・港湾・通関キャパ)が必要blogs.tradlinx
  • その後は、物流量の減少と貨物構成の変化(CBU→CKD/SKD・部品)に備えたネットワーク再設計が課題blogs.tradlinx

金融機関

  • 中国企業・メキシコ企業向けの既存融資のリスク評価(事業計画の前提価格・数量の見直し)whitecase
  • 日本企業によるメキシコでのM&A・JV案件(部品・物流・販売網)の増加に備えたサポート体制構築blogs.tradlinx

今後のシナリオと実務上のアクション

シナリオ(2025〜2027年)

ベースラインシナリオ

  • 2025年末までに議会承認 → 2026年初に発効 → 2026年末まで50%関税を含む高関税が継続insightplus.bakermckenzie+1

延長・強化シナリオ

  • 2026年末の段階で、メキシコ政府が関税の延長(2027年以降)あるいはより選択的な制度(特定国・特定品目に継続)を導入する可能性whitecase

遅延・緩和シナリオ

  • 議会承認が遅れ、2026年の発効が遅れる可能性mex.news.o-abroad
  • 中国との関係悪化やWTOでの問題化を避けるため、政治的なディールにより税率引下げや適用除外が検討される可能性もゼロではありませんreuters

日本企業が今取るべき具体的アクション(チェックリスト)

自社影響の定量把握

  • 「製品別HSコード × 原産国 × メキシコ向け売上」を一覧化
  • 現行20% vs 50%での粗利・販売価格へのインパクト試算whitecase

原産地戦略の見直し

  • 日墨EPA・USMCA・EU–メキシコ協定などを活用した原産地基準(RoO)の再確認・構成変更
  • 中国・非FTA国からの調達比率が高い場合、サプライチェーンの再設計を検討whitecase

価格・契約条件の見直し

  • メキシコ向け長期契約について、関税変動条項(tax/tariff adjustment clause)の有無と、価格改定の交渉余地を確認whitecase

現地情報の継続的モニタリング

  • メキシコ官報(DOF)、経済省・財務省の発表、業界団体(AMIA、AMDA など)のコメントを継続フォローmex.news.o-abroad+1

メキシコ現地パートナーとの連携強化

  • 通関業者・現地法律事務所と連携し、実際のHSコード・適用税率・通関実務への影響を早期にキャッチアップwhitecase

まとめ

今回のメキシコの50%関税方針は、単なる「中国たたき」にとどまらず、以下を意味します:wsws+2

  • 非FTA国に対するMFN関税の大幅引上げ
  • USMCAを軸にした北米ブロック化の加速
  • ニアショアリング/ローカルコンテンツ重視への明確なシフト
  • メキシコの対中貿易赤字削減と国内雇用保護

日本企業にとっては、中国・非FTA国拠点からのメキシコ向け輸出ビジネスには大きな再設計が必要である一方、日本・メキシコ・米国・EUとのFTAネットワークを活かした「良いポジション」を取るチャンスでもあります。blogs.tradlinx+1

まずは、自社のメキシコ向けビジネスをHSコード・原産国単位で棚卸しし、「どこで50%関税リスクを負っているのか」「どこで相対的優位を取れるのか」を可視化することが、実務的な第一歩と言えます。whitecase

  1. https://www.whitecase.com/insight-alert/mexico-proposes-significant-customs-and-tariff-reforms-part-2026-economic-package
  2. https://www.reuters.com/business/autos-transportation/mexico-raise-tariffs-cars-china-50-major-overhaul-2025-09-10/
  3. https://mex.news.o-abroad.com/~/economy/178543-en-mexico-doubts-over-tariff-reform-approval-70-billion-peso-revenue-expected.html
  4. https://insightplus.bakermckenzie.com/bm/international-commercial-trade/mexico-initiative-to-reform-the-customs-law-and-the-tariff-of-the-general-import-and-export-tariffs-law
  5. https://blogs.tradlinx.com/mexico-eyes-50-auto-tariffs-on-china-what-it-means-for-lsps-shippers/
  6. https://www.wsws.org/en/articles/2025/09/22/oyqn-s22.html
  7. https://wyche.com/the-evolving-tariff-landscape/
  8. https://www.congress.gov/bill/119th-congress/house-bill/5926/text/ih?overview=closed&format=xml
  9. https://www.csis.org/analysis/usmca-review-2026
  10. https://mexicobusiness.news/trade-and-investment/news/mexico-prepares-2026-tariff-reform-amid-global-uncertainty

関税政策の中心に「相互関税(reciprocal tariffs)」を据え直し、制度として一気に拡大させつつあります

2025年の米国は、関税政策の中心に「相互関税(reciprocal tariffs)」を据え直し、制度として一気に拡大させつつあります。以下では、日本のビジネスパーソン向けに「何が起きているのか」「どこまで広がりそうか」「日本企業は何を準備すべきか」を整理します。

「相互関税」の基本概念

相互関税(reciprocal tariffs)とは、簡単に言えば「相手国が米国製品にかけている関税・非関税障壁の重さに応じて、米国もその国に対して同程度の負担をかける」という発想です。

2025年1月に下院で提出された「United States Reciprocal Trade Act(米国相互貿易法案)」では、次のような考え方が明文化されています。

  • ある国が米国からの特定品目に高い関税や非関税障壁を課している場合、大統領はその国からの同じ品目に対し交渉を行う
  • 交渉で関税・非関税障壁を下げられなければ、同程度の関税を上乗せする

つまりWTOの「最恵国待遇(MFN)」に基づく一律の関税ではなく、二国間の損得勘定に基づいてレートを変える発想です。

2025年に起きた3つの転換点

「解放の日」:10%一律+国別上乗せ

2025年2月13日、トランプ大統領は「Fair and Reciprocal Plan」というメモランダムに署名し、「非互恵的な通商関係を是正する包括的計画」を作るよう政府に指示しました。

そして4月2日(本人いわく”解放の日”)に、次のような枠組みを発表します。

10%の一律「相互」関税(ベースライン)として、ほぼすべての輸入品に追加で10%の関税を課します。既に別制度で課税されている鉄鋼・アルミ・自動車などは除外されます。

国別の「相互」上乗せ関税(11〜50%)では、貿易赤字が大きく米国製品に高関税を課している国ほど高いレートが設定されました。例えばEUには20%(全輸入品に追加)、ベトナムには46%、バングラデシュには37%など、高リスク国も多数含まれます。

当初は4月9日から国別レートを本格発動する予定でしたが、株価急落などを受けて一部を90日間停止し、交渉の材料として使う形に変更しています。

中国向け:フェンタニル・レアアースと結びついた超高関税

中国については、2025年初頭から別枠のIEEPA(国際緊急経済権限法)制裁関税が重なっています。

2月1日にカナダ・メキシコに25%、中国に10%の「フェンタニル関税」が発動され、3月4日には中国向けフェンタニル関税を20%に引き上げました。4月2日以降は、これに加えて「相互関税」の枠組みで中国向けに最大125%のレートを設定し、一時的には合計145%という水準に達したと報じられています。

その後、中国側も農産品・エネルギー・レアアース輸出規制で報復し、5月以降は交渉の結果、中国向け追加関税は概ね20〜30%程度に抑えられました。レアアース輸出規制の凍結と引き換えに、高率「相互関税」の適用停止が2026年11月まで延長されています。

少額免税(de minimis)の撤廃

もう一つの大きな拡大が、少額輸入の免税枠(de minimis:800ドル以下免税)を潰しに行っている点です。

2025年4月2日に中国・香港向けのde minimis免税を撤廃する大統領令が発出され、7月30日にはすべての国を対象にde minimis免税を停止する大統領令が署名されました。8月29日以降、800ドル以下のほぼ全ての輸入が関税対象になっています。

これにより、これまで「小口直送なら関税がかからない」とされてきた越境EC・サンプル出荷・少量スペアパーツなども、相互関税の網に引っかかる構造になっています。

日本への影響:15%で折り合った意味

日米の「15%合意」

日本は当初、他の先進国と同様に「10%ベース+20%前後の相互上乗せ(合計30%近辺)」の候補とされていましたが、集中的な交渉の結果、「15%で固定する日米協定」が2025年7月23日に発表されました。

日本から米国への大半の輸出品に対し15%の相互関税が課される代わりに、日本は米国への5,500億ドル規模の投資コミットメントと一部輸入関税の削減・規制緩和等を約束しました。

その後、9月4日の大統領令と連邦官報告示を通じて、「15%はほかの相互関税と二重に乗らない(スタックしない)」「自動車・自動車部品を含む多くの品目で最終レートは最大15%に制限」と明確化されました。

日本企業への実務インパクト

ポイントを整理すると以下の通りです。

「最悪のシナリオ」は回避したものの、15%は常設に近い形です。EUなど一部の国は20%水準で日本より重い国も多い中、日本は15%で中程度の位置付けとなりました。ただし恒久的な「対米輸出税」として組み込まれた可能性が高いと言えます。

品目別では、従来のMFN+その他の関税と合算される形になります。HSごとに、通常のMFN税率、既存のセクション232(鉄鋼50%、自動車25%など)、そこに相互関税(日本は最大15%)がどう重なるか、HTSUSの特別番号を使って評価する必要があります。

値決め・コスト転嫁の前提を見直す必要があります。15%を「長期的な追加コスト」と見て、価格設定、サプライチェーンの組み換え(メキシコ・カナダ・東南アジア経由など)、ローカル生産化を再検討する企業が増えています。

恒久制度化と司法リスク

議会側:本則化への動き

H.R.735「United States Reciprocal Trade Act」は、大統領に以下の権限を正式に与える法案です。

  • 相手国の関税レートと非関税障壁(認可制度・補助金・規制など)を「関税に換算した負担」として評価し、米国向け輸入品に同等の関税を課す
  • 交渉により、相手国の関税・非関税障壁を下げさせる

同法案はまだ成立していませんが、成立すれば「相互関税」がトランプ政権固有の政策ではなく、超党派の法制度として残る可能性があります。

司法側:IEEPAの合憲性をめぐる攻防

一方で、現在の相互関税の多くはIEEPA(国際緊急経済権限法)に基づく緊急権限として発動されています。

これに対し、輸入企業などが訴えた「Learning Resources v. Trump」事件では、連邦巡回控訴裁判所がIEEPAはここまで広い関税設定権限は与えていないとし、大統領の「ほぼ全世界への一律関税」は違法と判断しました。ただし判決の効力は停止され、関税自体は継続中です。

2025年11月5日に米連邦最高裁が口頭弁論を実施し、IEEPAに基づく関税権限の合憲性・委任立法の限界が審理されています。

最高裁が違憲・権限外と判断すれば、Liberation Day関税や一部の相互関税が無効となり、既に納付した関税の返還請求が大規模に発生する可能性があります。合憲と判断されれば、IEEPAを使った相互関税は「大統領がいつでも使えるツール」として今後の政権にも引き継がれ、H.R.735と組み合わさることで相互関税の恒久制度化の可能性が高まります。

日本企業が取るべき5つの実務アクション

対米輸出品の「関税総額マップ」作成

自社の主要対米輸出品について、HTSUSベースの基本関税(MFN)、セクション232・その他の特別関税、日米合意に基づく最大15%の相互関税を品目別に一覧化し、「関税込みFOB/CIF価格」を再計算します。

中国・メキシコ・EU経由の間接輸出がある場合は、原産地ルール・ルーティングも整理しましょう。

価格戦略・契約条件の見直し

既存の長期契約が想定していない関税増加分(例:+15%)について、価格改定条項(tariff pass-through clause)の有無と再交渉・見直しタイミングを法務・営業と連携してチェックします。

特にBtoC向けオンライン販売(越境EC)は、de minimis廃止で小額注文ほど関税負担の比重が高くなるため、送料・最低注文額・現地在庫化の是非を検討すべきです。

サプライチェーンの再構成シナリオ

「対米15%」を前提に、米国内生産・現地調達へのシフト、カナダ・メキシコ・CPTPP加盟国経由の組立・加工など、総関税負担とロジスティクスコストを合わせた「トータル最適」を検証します。

同時に、対中・対EUの相互関税エスカレーションも念頭に、原材料・部品調達の多元化を進めておきましょう。

HSコード・原産地の精緻化

相互関税レートは品目・国別にきめ細かく設計されているため、HSコードの誤分類や原産地表示・原産地規則の誤適用があると、想定外の高率相互関税を適用されるリスクが高まります。

自社主要品目について、最新HS(2022/次期2028案)と米国HTSUSの整合、FTA/EPAの利用可否、税関事前教示・過去通関実績をまとめた「関税リスク・ドシエ」を作成しておくと、米国税関とのトラブルや将来の係争への備えにもなります。

新常態としての相互関税

EU・インド・ブラジルなども、米国の相互関税に対抗して自国版の相互的な報復関税を検討・実施しています。

WTOの紛争処理機能が弱体化している中、「二国間・多国間の相互関税合戦」が今後10年の新常態になる可能性は高いと言えます。したがって日本企業としては、「関税がゼロに戻る」ことを前提にせず、関税・輸出管理・サプライチェーン再構成をセットで考えるという発想への転換が求められます。

総括:政治イベントから制度リスクへ

2025年の米国は、10%一律+国別相互関税、de minimis廃止による小口輸出への課税拡大、日米15%合意による「相互関税の2国間組み込み」、そしてIEEPA・Reciprocal Trade Actをめぐる司法・立法の攻防を通じて、相互関税を単発の政治パフォーマンスから「半恒久的な制度リスク」に変えつつあると言えます。

日本のビジネスとしては、関税総額の見える化、価格・契約の見直し、サプライチェーンの再設計、HSコード・原産地の精緻管理を、通常のコスト削減プロジェクトと同じレベルで「経営アジェンダ」に載せていくことが、今後ますます重要になります。

HS 2028改正:自動車部品サプライチェーンへのインパクト分析

エグゼクティブサマリー

HS 2028(商品の名称及び分類についての統一システム 2028年版)は、2028年1月1日に発効予定です。改正パッケージは2025年3月のHSC(HS委員会)第75会期で暫定採択済みであり、2025年12月末の正式採択後、2026年1月に条文および新旧対照表(相関表)が公表される見込みです。

今回の改正(299パッケージ)では、**半導体やセンサー(トランスデューサ)**が重点テーマに含まれています。これにより、電装部品や測定機器の領域(第85類・第90類)で分類境界の整理(品目細分の追加、注記の整備)が行われる可能性が非常に高いです。

特に自動車のADAS(先進運転支援システム)や電動化関連コンポーネントにおいてHSコードの再編が予想され、サプライチェーン実務(原産地証明、関税分類、コンプライアンス)への影響は広範囲に及ぶと考えられます。ただし、具体的な品目移動に関する条文レベルの詳細は、2025年11月時点で未公表です。

HSコード(6桁)の変更は、FTA(自由貿易協定)の品目別規則(PSR)の再マッピングを必須とします。これにより、CPTPP、日EU・EPA、USMCAなどで使用する自己申告様式やサプライヤー宣誓書の更新が必要となります。相関表が公表される2026年から発効までの約2年間で、計画的に移行準備を進めることが現実的なアプローチです。


自動車部品サプライチェーンへの主なインパクト

1. 車載センサー・ECU・電装ユニット

センサー類(温度、圧力、加速度センサー、LiDAR/Radar関連)やMEMSデバイスの分類において、第85類(電気機器)と第90類(測定機器)の境界が再整理されると想定されます。

細分の新設や注記の変更が行われた場合、HSコードの変更がPSR(品目別規則)のCTC(関税分類変更基準)やVA(付加価値基準)の条件変更に直結するため、FTA原産判定のロジックに大きな影響を及ぼします。

現時点で「第85類から第90類へ一斉に移籍する」と断定できる一次資料は未公開ですが、ADAS市場の急成長と技術革新を背景に、センサー分類の精緻化が進む見通しです(例:位置センサー、画像センサー、慣性センサーなど)。

2. EV系コンポーネント

HS 2028はグリーン分野(環境関連)や電子分野にも重点を置いており、電池、充電器、電力制御部材の細分化が進む見込みです。

将来的な海外規制(例:EU電池規則など)との整合性強化や、統計把握の精緻化が進むと、これまで参照していた関税率、統計コード、規制適合のための参照コードが変わる可能性があります。

リチウムイオン電池、駆動用電動機、パワーエレクトロニクスといった電動化コンポーネントは、各国の関税政策や補助金制度の対象としても注目されており、正確な分類が一層重要になります。

3. 第87類「部分品」との関係

現行のHS第17部注の規定により、第84類、第85類、第90類、第91類に分類される品目(特掲品)は、原則として第87.08項(自動車の部分品)には分類されません。

したがって、これらの電装部品やセンサーが広範囲に**第87類へ編入(移籍)**されるには、条文または注記の大幅な修正が前提となります。最終的な判断には、2026年に公表される相関表と最終条文の確認が不可欠です。

4. 価格・税率・取引条件への影響

日本のMFN税率(最恵国待遇税率)では無税の品目も多いですが、仕向国によってはHSコードの変更が関税率の変動に直結します。

また、各国の国内法制化(8~10桁レベル)のタイムラグや、特恵関税の適否が変わる可能性を考慮すると、「品番—HSコード—PSR—税率—原産証明」というデータ連鎖全体の再整合が必要になります。


タイムラインと対応の考え方

移行スケジュール(想定)

  • 2025年12月末: WCO(世界税関機構)理事会による正式採択(予定)
  • 2026年 1月: 条文・相関表の公表 → 移行設計の正式スタート
  • 2026年~2027年: 以下の対応を実施
    • 各国の国内細分(8~10桁)改定、FTAのPSR改訂の動向を注視
    • 社内マスタ更新、PSR再判定、各種様式(自己申告書等)の改版
    • サプライヤー(ベンダ)への説明・教育
  • 2028年 1月 1日: HS 2028 発効(※国により適用開始日に若干の差異が生じる可能性あり)

部門別チェックリスト(推奨)

領域やること(要点)成果物/到達点
品番・マスタHS 2022→HS 2028の影響度スクリーニング(特にセンサー、ECU、EV系を優先)6桁影響リスト、再審査対象キュー
原産地/FTAPSRの再マッピング(CTC/VAへの影響確認)、自己申告様式・宣誓書の改版案作成改版テンプレート、取引先配布用ガイダンス
調達・価格税率/特恵の差分試算(主要仕向地×主要品番)コスト影響試算表、見積条件の更新指針
倉庫・通関国内8–10桁への波及を国別に確認し、優先国から運用手順を更新通関SOP(標準作業手順書)改訂、ベンダ教育資料
IT/ERP相関表をコードブックとして取り込み、移行期間中の処理(新旧コード併記)を設計データ移行計画、システム改修要件定義
法務/契約インコタームズや価格条項など、HSコードに依存する契約文言の見直し取引基本契約の付属書改定案

リスクと機会

想定されるリスク

  • 原産不適合リスク: PSR変更(特にCTC)により、従来は満たしていた特恵適格の基準から外れる。
  • 税番相違による遅延・監査: 輸出入申告時のコード不一致による通関遅延や、事後調査での指摘。
  • 多拠点でのコード不一致: 国別の切替時期の差異による、グローバルでのマスタ不整合。
  • 取引条件の再交渉: 顧客図番に紐づく契約や見積(関税条件等)の再提示が必要になる。

移行に伴う機会

  • 特恵最適化: 新設される細分を活用し、より有利なPSRや関税率を適用できる可能性。
  • 正確な統計把握: EV・ADAS関連部品の分類が精緻化され、市場分析や政策対話の根拠データが強化される。
  • 業務プロセスの標準化: マスタ、宣誓書、自己申告書の見直しを機に、業務の標準化や自動化を進め、監査耐性を向上させる。

推奨される初期対応(アクションプラン例)

相関表の公表(2026年1月予定)を待つ間にも、以下の準備に着手することを推奨します。

  1. 影響懸念在庫の特定:センサー、ECU、EV電装部品を中心に、現行のHSコード(6桁)ごとに在庫や取引量をリストアップし、変更の可能性がある「優先監視リスト」を作成する。
  2. PSR影響マップ(草案)の作成:主要FTA(CPTPP, 日EU EPA等)の対象品番について、現行6桁から「想定される新6桁」へ移った場合のPSRへの影響(CTC等)を仮試算する。(※相関表の公開後に確定版を作成)
  3. 書式雛形の改版準備:自己申告書やサプライヤー宣誓書、BOM(部品表)聴取票について、**HS欄を新旧併記(2022年版 / 2028年版)**で管理できるよう、様式のドラフト(案)を用意する。
  4. IT要件定義:ERP等の基幹システムにおいて、HSコードのテーブルを「有効開始日」付きで管理できるよう改修要件を整理する。ラベル、送り状、原産証明書への出力ロジック変更の要否も確認する。

不確定情報の取り扱い(2025年11月時点)

本分析は、2025年11月時点で入手可能な情報に基づいています。「第85類から第90類、あるいは第87類への具体的な品目移動」を示す最終的な条文・相関表は未公表です。

WCOによる2026年1月(予定)の公式発表を正式なトリガーとし、それまではリスク分析と準備作業を進め、公表後に本格的な移行作業へ移行することが推奨されます。