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メキシコ「最大50%関税案」とIMMEXの行方:実質負担への影響と対策


メキシコ「最大50%関税案」とIMMEXの行方:実質負担への影響と対策

メキシコの関税政策は、「非FTA諸国(特に中国)からの輸入阻止」と「国内製造業の保護」へ向けて大きく舵を切っています。

重要なのは、ニュースで報じられる「名目関税率」だけを見るのではなく、**「IMMEX(輸出製造業優遇)という『盾』がどこまで機能するか」**を見極めることです。

本レポートでは、以下の4ステップで実質的なビジネス影響と対策を整理します。

  1. 関税政策の現状: 何が変わろうとしているのか
  2. IMMEXの基本機能: なぜこれまで関税がかからなかったのか
  3. 実質負担の構造: 「関税×IMMEX」の組み合わせでコストはどう決まるか
  4. 日本企業の対策: 今すぐ確認すべき5つのチェックポイント

1. メキシコ関税案:何が変わろうとしているのか

メキシコ政府は「関税の引き上げ」と「優遇の縮小」をセットで進めています。

1-1. 2024年の既定路線:544品目への一時関税(継続中)

2024年4月、メキシコ政府は鉄鋼、アルミ、繊維、電機、家具など544品目に対し、5〜50%の一時輸入関税を導入しました(2026年4月まで有効)。

  • 対象: 中国・韓国・インドなどのFTA非締約国原産品。
  • 狙い: アジア製品の流入抑制と、MFN(最恵国待遇)税率の底上げ。

1-2. 繊維・アパレルの「優遇封じ」(2024年末〜)

2024年12月の政令により、繊維・アパレル分野でより踏み込んだ措置が取られています。

  • 高関税化: 糸・生地15%、衣類35%(非FTA原産)。
  • IMMEX制限: 多くの品目が「一時輸入禁止リスト(Annex I)」に追加。
    • 意味合い: 「IMMEXを使えば無税」という逃げ道を塞ぎ、強制的に関税を払わせる構造への転換です。

1-3. 2025年の新提案:最大50%関税案(シェインバウム政権)

2025年9月提出の2026年経済パッケージには、さらなる関税強化案が含まれています。

  • 対象拡大: 自動車、同部品、電機、プラスチックなど約1,400〜1,500品目。
  • 税率: 中国製自動車などの関税を、WTO協定上限(バウンドレート)に近い**最大50%**まで引き上げる構想。
  • 現状: 議会で審議・修正協議中ですが、「対アジア輸入抑制」という政策の方向性は不可逆的です。

2. IMMEXとは何か:基本メカニズムの確認

IMMEXは、**「輸出することを条件に、輸入時の税金を免除・繰り延べる制度」**です。

  • 関税(IGI): 原則0%(一時輸入扱いのため)。
  • 付加価値税(VAT 16%): 「VAT認証」を取得していれば、支払いは発生せずキャッシュアウトなし(即時税額控除)。

つまり、これまでは「中国から部品を入れても、IMMEXで加工して米国へ輸出するなら、メキシコでの関税コストはゼロ」というのが基本ルールでした。今回の関税案は、この前提を揺るがすものです。


3. 「関税案 × IMMEX」で決まる実質負担構造

「関税が50%になる」といっても、全ての企業が即座に50%支払うわけではありません。

「IMMEXという『盾』が使えるか」、そして**「製品がどこへ向かうか」**で負担は4つのパターンに分かれます。

パターン別・実質負担マトリクス

ケース状況関税(IGI)負担VAT(16%)実質影響
A. 一般輸入IMMEXなしで輸入し、メキシコ国内販売5〜50% (激増)支払い【直撃】 仕入コストが即座に跳ね上がる。価格転嫁できなければ赤字転落のリスク。
B. IMMEX
(100%輸出)
部品を輸入・加工し、全量を米国へ輸出原則 0%免除【軽微】 制度上は影響なし。ただし在庫管理・原産地証明などのコンプライアンスコストは増大。
C. IMMEX
(一部国内販売)
輸入・加工後、一部をメキシコ国内市場へ国内販売分に
5〜50%適用
支払い【要注意】 国内販売に転用(Change of Regime)する時点で、引き上げ後の高関税を支払う必要あり。国内比率が高いほど痛手。
D. IMMEX禁止品
(繊維等)
繊維・アパレルなど「Annex I」指定品目35%等 (支払い)支払い【構造崩壊】 IMMEX利用不可=一時輸入不可。輸出目的であっても輸入時に関税発生。「往復無税」モデルの終焉。

【重要ポイント】

最大の懸念は、繊維業界で起きた「IMMEX利用禁止(Annex Iへの追加)」や「Rule 8(優遇関税枠)の厳格化」が、将来的に鉄鋼、自動車部品、電機など他業界へ波及するかどうかです。


4. 日本企業の実務インプリケーションと打ち手

「うちはIMMEXだから関係ない」という油断は禁物です。以下の5つの視点で、サプライチェーンの再点検を行ってください。

① HSコードと「禁止リスト」の照合

  • 自社の取り扱い品目のHSコードが、2024年の544品目、および最新の関税引き上げ案に含まれているか。
  • さらに重要な点として、「IMMEX禁止リスト(Annex I)」や「センシティブ品目(Annex II)」に含まれていないかを確認してください。ここに入ると、IMMEXのメリットが剥奪されます。

② 「国内販売比率」のコスト試算

  • IMMEX工場であっても、メキシコ国内の自動車メーカーや小売店に納入(みなし輸出ではなく、国内転用)している場合、その分については**「引き上げ後の新関税率」**でコスト計算をし直す必要があります。

③ サプライチェーンの「非FTA依存度」の可視化

  • 中国、韓国、インド、ASEAN(CPTPP非加盟国)からの調達部材を洗い出してください。
  • これらをメキシコ現地、米国、または日本・ベトナムなどFTA締約国からの調達に切り替えるコストと、高関税を甘受するコストを天秤にかける必要があります。

④ USMCA原産地規則との整合性(対米輸出の場合)

  • メキシコ側で関税を回避できても、最終製品がUSMCAの原産地規則(RVC/CTC)を満たせなければ、**米国輸入時にMFN関税(対中制裁関税含む)**が課されます。
  • 「メキシコでの関税回避」と「米国での関税回避」をセットで設計する必要があります。

⑤ コンプライアンス体制の強化

  • IMMEXやVAT認証の維持条件が厳格化されています。在庫差異や輸出期限の徒過は、即座に認証取り消し(=関税・VATの即時課税)につながるリスクがあります。在庫管理システムの精度向上が急務です。

まとめ:メキシコは「関税高止まり+制度厳格化」フェーズへ

メキシコ政府のメッセージは明確です。

「輸出のための加工なら優遇する(IMMEX)。だが、単なる輸入販売や、優遇制度の抜け穴利用は徹底的に封じる」

日本企業としては、関税率の数字そのものに一喜一憂するのではなく、**「自社の商流がIMMEXという防波堤の内側にあるか、外側にあるか」**を冷静に見極め、調達ルートの再設計を行う段階に来ています。

※本回答は2025年11月23日時点の情報を基に構成しています。具体的な税率や適用開始日については、必ずメキシコ連邦官報(DOF)および現地の通関・税務専門家にご確認ください。

メキシコ「非FTA自動車関税 最大50%」の衝撃と対策


メキシコ「非FTA自動車関税 最大50%」の衝撃と対策

メキシコにおける「非FTA諸国製自動車に対する最大50%関税案」は、単なる“案”の段階を超え、2026年に向けた具体的な制度として始動しています。日本企業にとっては、**「中国・韓国など非FTA諸国を経由するサプライチェーンをどう見直すか」**が喫緊の課題となります。

1.概要:何が決まったのか(2025年11月時点)

メキシコ政府は、FTA(自由貿易協定)を締結していない国からの自動車・同部品などに対し、最大50%の輸入関税を課す方針を決定し、これを「2026年経済パッケージ(Paquete Económico 2026)」に組み込みました。

  • 対象範囲: 約1,463の関税品目(HSコード)。これは全輸入の約8.6%、輸入額にして約520億ドル相当に上り、自動車関連に加え、鉄鋼、繊維、家電、家具など19分野に及びます。
  • 法的根拠: 2025年11月10日付で、一般輸出入税法(LIGIE)の関税率表を改正する大統領令が連邦官報(DOF)に掲載されました。
  • スケジュール: 官報掲載の30日後(12月上旬)に発効し、2026年12月31日までの時限措置として運用される見込みです。

自動車関連の変更点

  • 乗用車: 従来15〜20%だった税率を、WTO協定等の許容範囲を最大限活用し、最大50%まで引き上げ(エブラルド経済相 言明)。
  • 自動車部品: 従来0〜35%だった品目を、10〜50%の範囲へ引き上げ。
  • 標的となる国: メキシコとFTAを持たない全行が対象ですが、実質的なターゲットは中国、韓国、インド、インドネシア、タイ、ロシア、トルコなどです。

一方で、日本、EU、米国・カナダ(USMCA)などFTAパートナーからの輸入は、今回の措置の対象外です。これら諸国からの輸入車は、各協定に基づき引き続き無税または低率関税が適用されます。


2.新関税の設計:対象・税率・期間

2-1 税率レンジと対象セクター

新関税は「10%・20%・30%・35%・50%」の5段階で設計されています。主な対象は以下の通りです。

税率主な対象品目
最大 50%乗用車(軽自動車を含む autos ligeros)
主要自動車部品
鉄鋼、繊維・衣料
紙・板紙、ガラス、石けん・化粧品 など
最大 35%プラスチック製品、家電、玩具、家具
革製品・かばん類、モーターサイクル
アルミ製品、トレーラー など

※すべて「非FTA原産」が条件であり、FTA相手国からの輸入は対象外です。

2-2 期間と発効スケジュール

  • 発効: 2025年12月上旬(官報掲載の30日後)
  • 有効期限: 2026年12月31日まで
    • ※シェインバウム政権下で、状況に応じ変更・延長が可能な仕組みとなっています。

3.背景:なぜ今「最大50%」なのか

3-1 中国製EV・低価格車の急増とダンピング懸念

中国ブランド(BYD、Chirey、Changan等)や中国生産の欧米ブランド車の流入が急増し、2024年にはメキシコ新車販売の2割超、EV・PHEV市場では3〜4割を中国製が占めるに至りました。

エブラルド経済相は、これらが**「参照価格(Reference Price)を下回る水準」**で流入しており、個別のアンチダンピング調査では対処しきれないため、関税水準そのものの見直しが必要であると説明しています。

3-2 米国からの圧力とUSMCAレビュー

2025年に入り、米トランプ政権(※文脈により次期政権等の表現調整)は**「中国EVの北米流入阻止」**を強く要求しています。メキシコ・カナダへの追加関税の可能性を示唆し、2026年のUSMCA(北米自由貿易協定)見直し交渉を有利に進めるための「防衛策」としての側面も強くあります。

3-3 「Plan México」による内需保護

シェインバウム政権の掲げる産業政策「Plan México」の一環として、戦略産業(自動車、鉄鋼等)の保護、対アジア貿易赤字の是正、および税収確保を目的としています。


4.影響分析

4-1 メキシコ国内市場への影響

  • 価格上昇: 非FTA諸国からの完成車・家電は、小売価格で大幅な値上げが避けられません。
  • EV普及の鈍化: 手頃な価格帯を担っていた中国製EVのコスト増により、電動化ペースにブレーキがかかる可能性があります。

4-2 アジア勢(中国・韓国)へのインパクト

  • 中国OEM: 完成車(CBU)輸出への依存度が高いメーカーは利益が圧迫されます。一部は現地生産(ローカル組立)への切り替えや、CKD(完全ノックダウン)/SKD(準ノックダウン)方式への移行を加速させるでしょう。
  • 中国政府の反応: 既に「正当な権益の侵害」として強く抗議しており、報復措置やWTOへの提訴も含めた緊張状態が続くと予想されます。

4-3 メキシコ自動車産業・北米サプライチェーン

  • 「防波堤」効果: メキシコ国内で生産を行う日・米・欧メーカーにとっては、中国勢との価格競争圧力が緩和されます。
  • サプライチェーンへの副作用: メキシコでの組立用部材に中国・韓国製が多く含まれる場合、部材関税(10〜50%)がコストを押し上げ、最終製品の競争力やUSMCAの原産地規則(RVC)達成コストに悪影響を及ぼすリスクがあります。

5.日本企業への示唆(アクションチェックリスト)

日本企業への影響は、「どの国の工場から、どのHSコードの商品をメキシコに入れているか」で分かれます。

5-1 メキシコ生産拠点を持つ自動車OEM・Tier1/Tier2

  • メリット: 完成車市場での競合(中国・韓国勢)が減速するため、シェア拡大の好機。
  • リスクと対策:
    • 部材の原産国調査:HSコード単位で「非FTA原産品」の有無を棚卸しし、コスト増を試算する。
    • 調達先の切り替え:中国・韓国からの調達を、メキシコ国内、北米域内、または日本・ASEAN(CPTPP加盟国)へシフトする検討を開始する。

5-2 日本からメキシコへ完成車を輸出しているOEM

  • 日墨EPAおよびCPTPPを活用している限り、新関税の対象外です。
  • 競合他社の値上げに伴い、自社モデルの価格戦略やポジショニングを見直す余地が生まれます。

5-3 中国・韓国等の工場からメキシコへ輸出している日系企業

  • 最大の影響を受けます。中国工場からの完成車輸出は、ビジネスモデルの根本的な見直しが必要です。
  • 対策案:
    • CKD/SKD化: 完成車ではなく、部品として輸出しメキシコで組み立てることで、関税率や原産地判定を変える(※原産地規則の精査が必要)。
    • 第三国ハブの活用: 日本や東南アジアなど、FTA締結国の拠点からの供給に切り替える。

5-4 物流・商社

  • 通関実務において、非FTA原産の自動車関連HSコードへのフラグ付けと、新税率に基づいたランドコスト(陸揚げ原価)の再計算が急務です。
  • 発効前の「駆け込み需要」と、その後の反動減を見越した在庫・船腹管理が求められます。

6.まとめ

本措置は「反中」にとどまらず、「非FTA国全般」に対するメキシコの構造的な保護貿易シフトであり、少なくとも2026年末までは継続します。

日本企業にとっては、**「完成車ビジネスには追い風(競合の減速)」となる一方で、「部材調達コストには逆風(中国・韓国製部材の関税増)」となる諸刃の剣です。

法務・通関・調達・営業が連携した「関税タスクフォース」**を組成し、BOM(部品表)単位での原産国・HSコードの洗い出しを直ちに行うことを推奨します。


いま何が起きていて、FTA戦略をどう見直すべきか


0. エグゼクティブサマリー(日本企業への示唆)

  • 米国は 2025年4月の大統領令14257(いわゆる“Liberation Day tariffs”)でほぼ全世界輸入に一律10%の「相互関税(baseline)」+国別11〜50%の追加関税を課す新制度を導入し、これがFTA優遇の上に“上乗せ”される構造になりつつあります。(Federal Register)
  • これに加え、鉄鋼・アルミはSection 232で最大50%、トラック・バス・部品は25%、今後半導体にも232関税が乗る可能性があり、「相互関税+232+既存の対中関税など」が多層的に重なる“多階建て関税構造”になっています。(ホワイトハウス)
  • UNCTADの分析では、米国の14本・20カ国とのFTAで本来は0〜低関税のはずの品目にも、原則10%の相互関税がかかるとされ、FTAは「ゼロ関税の保証」から「例外(exemption)枠の交渉プラットフォーム」に性格が変わりつつあります(USMCAなど一部は例外)。(UN Trade and Development (UNCTAD))
  • 日本は米国との包括FTAを持たず、日米「物品協定」や重要鉱物協定(CMA)はあるものの、相互関税や232からの包括免除を自動的に保障する枠組みではない点に注意が必要です(CMAはEV税額控除上は“FTA扱い”だが、関税制度とは別レイヤー)。(Congress.gov)
  • 結論として、日本企業は「米国向けビジネスを“MFN+FTA優遇”で考える時代は終わり、相互関税・232・補助金・安全保障規制まで含めた“米国ローカル・ルール”を前提にサプライチェーンとFTA活用を再設計する段階」に入った、と見るのが現実的です。

1. 米国相互関税制度の現在地

(1) Liberation Day Tariffs と大統領令14257の骨格

  • 2025年4月2日、トランプ大統領が大統領令14257「Regulating Imports with a Reciprocal Tariff…」に署名し、対外赤字を「国家緊急事態」と宣言、IEEPA(国際緊急経済権限法)に基づく包括関税権限を発動。(Federal Register)
  • 制度の中核は以下の二階建て:
    • ① 10%のグローバルbaseline関税:2025年4月5日から、例外を除きほぼ全ての国・品目に適用。
    • ② 国別 “reciprocal” レート(11〜50%):57カ国を対象に、米国の対外赤字や相手国の関税水準を根拠とする追加関税を設定し、4月9日以降順次発動。(ホワイト・アンド・ケース)
  • 7月31日の追加大統領令で、**ブラジルなど一部国・品目についてレートの引き下げ・除外が行われるなど、リストは“交渉次第で動く”**ことが明確化。(ホワイトハウス)

(2) FTAパートナーの扱い

  • UNCTADのレポートによれば、米国の14本・20カ国とのFTA締約国も、4月5日以降は原則10%の相互関税の対象となり、FTAで約束した「0%」は“相互関税の上からの優遇”ではなく「例外リストへの掲載」という形で運用されていると整理。(UN Trade and Development (UNCTAD))
  • ただし、USMCA(カナダ・メキシコ)には特別扱いがあり、10%一律課税の原則から外れる扱いを受けている点が、他FTAとの重要な違い。(UN Trade and Development (UNCTAD))
  • CBPのIEEPA関連FAQでも、**「他法令やFTAに基づく優遇があっても、相互関税(10%)は原則として別建てで発動される」**というスタンスが示されており、企業側から見れば「FTAで0%なのに、なぜ10%が残るのか」という感覚的な違和感が実務上発生し得ます。(CBP)

2. Section 232ほかとの“多階建て”関税構造

(1) 鉄鋼・アルミ:最大50%+派生製品

  • トランプ政権は2025年2月、鉄鋼に25%、アルミに25%のSection 232関税を完全復活させた上で、その後6月には両方とも50%に引き上げ、さらに派生品を対象拡大。(ホワイトハウス)
  • 2025年4月には、派生製品や除外手続の新ルール(inclusion process)が示され、特定の下流品目については別枠で除外申請が可能だが、手続が煩雑で予見性が低いという実務上の課題があります。(産業安全保障局)

(2) 商用車・EV関連:トラック・バス・部品に25%

  • 2025年11月1日発効の新たなSection 232措置により、中・大型トラックおよびその部品に25%、バスに10%の追加関税が導入。これは「産業基盤の再構築」を掲げる一連の232の一部と位置づけられています。(S&P Global)
  • 部品にも広く適用されるため、ワイヤーハーネス、駆動系部品、車体部品などを北米で完成車メーカーに納入している日本企業にとっては、“Mex/Canada経由だから安全”とは言えない構造です(後述のUSMCAオフセットと絡む)。

(3) 半導体・電子機器:232調査が進行中

  • 2025年4月1日付で、半導体・半導体製造装置およびその派生製品に対するSection 232調査が正式に開始。対象には、ウエハ、レガシーチップ、先端ロジック、各種マイクロエレクトロニクス、さらにそれらを組み込んだ電子機器などが含まれます。(Federal Register Public Inspection)
  • マスコミ報道・議会資料では、「約100%の関税」を示唆する発言もあり、国内投資コミットのある企業を除外するという“インセンティブ関税”構想が議論されています。(ウィキペディア)
  • これは、半導体そのものだけでなく、自動車(特にEV)、サーバ、通信機器など広範なダウンストリーム製品に波及し得るため、「相互関税+潜在的な232」がビジネスモデルを根底から変える可能性があります。

3. FTA・WTOとの関係:何が「揺らいで」いるのか

(1) FTAの価値が“ゼロ関税”から“交渉プラットフォーム”へ

  • UNCTADやUSTR資料から整理すると、現状の構造はおおむね以下の通りです。(UN Trade and Development (UNCTAD))
    1. 従来:
      • MFN関税(WTO)をベースに、FTA/EPAでゼロまたは低率
    2. 現在:
      • 相互関税(10%+α)が“新たなベース”
      • FTAや個別交渉により「相互関税からの免除・軽減」を取り付ける形に転化
  • 学術的な整理では、国内法上はIEEPAやTrade Expansion Actが大統領に広い裁量を認めている一方、WTO協定やFTA義務との整合性は極めてグレーであり、今後も紛争リスクを抱えたまま運用される可能性が高いと評価されています。(Cambridge University Press & Assessment)

(2) 日本の立場:FTA不在と“準FTA”の扱い

  • 日本は米国との間に包括的FTAを持たず、日米物品貿易協定(USJTA)やデジタル貿易協定など、“部分協定”ベースで関税・ルール整備がなされている状態です。
  • 一方で、IRAのEV税額控除を巡って締結された日米重要鉱物協定(CMA)が「通商上のFTAと同等」と解釈され、EV税額控除の対象として扱われているのは象徴的で、「関税」ではなく「補助金・税控除の適用条件」として日米協定が使われていることを示しています。(Congress.gov)
  • つまり、日本企業は「関税面での包括的な防波堤(FTA)」を持たない一方で、サプライチェーン補助・税控除の条件として米国ローカルルールに強く拘束される立場にあり、米国相互関税と合わせて二重三重のリスク管理が必要です。

4. 鉄鋼・EV・半導体で何が起こり得るか(シナリオベース)

(1) 鉄鋼・アルミ・素材

  • 想定される構造:
    • 相互関税10%+国別追加レート
    • Section 232で50%
    • 一部品目は232除外申請により軽減可能
  • 日本・EU向けの**“一時的な232緩和”と“相互関税対象外枠”をパッケージで交渉**するケースが増えれば、
    • 「対米直接輸出」よりも「USMCA域内生産+対米供給」が有利になる
    • 鉄鋼・アルミについては**“北米で溶解・鋳造(melted and poured)”要件**を満たす投資が事実上必須になる(ホワイトハウス)

(2) EV/自動車部品

  • トラック・バス・MHDV部品の25%関税は、EVトラックや商用EVバスにも実質的に波及する可能性が高く、
    • 完成車輸出モデルは事実上成り立たず、
    • 北米での車両組立、バッテリー・モーターの現地化、USMCA原産地ルールの厳格充足が大前提になります。(S&P Global)
  • これに、半導体232が重なれば、
    • EV制御用チップ、インバータ、BMSなどが部品段階で追加関税
    • サプライヤー側は、チップの調達先・組立国・最終EVの組立国を組み合わせた“関税マトリクス”で利益を管理する必要が出てきます。(Federal Register Public Inspection)

(3) 半導体・電子機器

  • 232調査の結果次第では、
    • ウエハ・チップ・SMEに100%前後の関税(ただし米国内投資コミットのある企業は除外)
    • スマホ・PC・サーバなど最終製品にも段階的に関税を拡大する案が検討されています。(ウィキペディア)
  • これに対して中国側も米国製半導体へのアンチダンピング調査など対抗措置を取り始めており、サプライチェーンの“地政学リスク”がさらに高まっています。(AP News)
  • 日本企業としては、
    • 米国内生産(あるいはUSMCA域内)に「どの工程まで」前倒しで投資するか
    • 一部工程を日本・東南アジアに残すとしても、関税コストを価格転嫁できるプレミアム品かどうか
      を事業ラインごとに切り分けて考える必要があります。

5. 日本企業のFTA・サプライチェーン戦略再考のポイント

(1) マクロ戦略:米国を「FTA前提」ではなく「相互関税前提」で見る

  1. 前提の置き換え
    • 旧来:
      • 「最終的には日米FTA or WTOルールに戻るだろう」という期待
    • 今後:
      • 相互関税+232+補助金・規制の“ローカル・ルール”が長期化する前提でビジネス計画・投資判断を行う
  2. FTAの役割の再定義
    • 米国とは:
      • 「包括FTAでゼロ関税を取り戻す」よりも、
      • 品目別・プロジェクト別の“例外枠”や補助適格性を拡大するための交渉プラットフォームとして捉える
    • その他地域(EU・UK・メキシコなど)とは:
      • “第二の柱”としてのマーケット多様化と、米国の相互関税リスクを相殺する収益源の確保

(2) 実務レベルのアクションプラン(HS・FTA視点)

御社が検討すべき実務ステップを、HSコード・FTA・原産地の三層で整理すると:

  1. プロダクト別「関税レイヤー・マップ」を作る
    • 各製品について
      • HSコード(米国HTS)
      • MFN関税率
      • 該当するFTA/EPA(USMCA経由か否か、日米物品協定の適用有無など)
      • 相互関税レート(10%+国別)
      • Section 232/301等の追加関税の有無
    • を一枚のマトリクスに落とし込み、「最終実効税率(税負担%)を見える化」する。
  2. 原産地・サプライチェーンのシミュレーション
    • 代表シナリオ例:
      • 日本製部品 → 直接米国
      • 日本製部品 → メキシコで組立 → 米国(USMCA原産)
      • 東南アジア(RCEP域)生産 → 米国
    • それぞれについて
      • 相互関税+232を加味した税負担シミュレーション
      • USMCA原産判定(ROO)充足コスト
      • IRA等補助金・税控除の取得可否
    • を比較し、「関税+補助金をネットした“実効マージン”」ベースで投資の優先順位を決める。
  3. “二重起点”マーケット戦略
    • 米国依存を減らす方向として:
      • EU(EU–日本EPA)、UK(日英EPA)、インド、メキシコ、ASEANなど
      • 相互関税の影響が相対的に小さく、安定したFTAメリットが見込める市場を「第二の収益起点」として育成する。
    • 具体的には、
      • 製品ラインごとに「米国起点モデル」と「非米国起点モデル」を設計し、政治・関税リスクに応じて生産比率を可変化する。
  4. 交渉ポジションの整理
    • 個社として:
      • 米国内投資・雇用計画、技術移転、サプライチェーンの“友好国シフト”を材料に、
      • 相互関税の個別除外・232除外のロビー活動を行う余地を検討。
    • 日本政府・業界団体との連携:
      • 鉄鋼・EV・半導体などセクター別に、どの関税レイヤーを優先して緩和対象にするかを整理し、日米協議のアジェンダに反映してもらう。

6. いまから着手できる「チェックリスト」

最後に、すぐ取り組める実務チェック項目を簡単にまとめます:

  1. 自社製品の「相互関税+232」影響度ランキングを作る
    • 売上高×(想定追加関税率)でシンプルにスコアリング。
  2. 米国向け売上のうち、「代替市場」「代替生産地」を持たないものを特定する
    • ここが中長期的に最もリスクが高いライン。
  3. USMCA経由モデルの原産地判定・コスト試算
    • 既存のメキシコ・カナダ拠点でどこまで吸収できるかを定量化。
  4. 半導体232が発動した場合の“最悪ケース試算”
    • 100%関税を想定し、価格転嫁余地・仕様変更・設計変更のオプションを検討。
  5. 政府・業界団体との情報共有ラインの整備
    • 新たな大統領令・232リスト改定に即応できるよう、
      • 社内の関税・通商担当と、
      • 外部の専門家・業界団体のネットワークを再点検。

「米国相互関税拡大」は、単に“関税率が上がる”という話ではなく、FTAのビジネス上の意味そのものを変えてしまう動きです。
次のステップとして、もしよければ、特定の業種(自動車/電機/素材など)を一つ決


対中ビジネスアップデート:レアアース輸出規制の現状と見通し(2025年11月20日版)

【エグゼクティブ・サマリー】

赤澤経産相は11月18日、中国のレアアース輸出管理措置について「現時点で特段の変更はない」と述べました。これは、高市首相の台湾関連発言により日中関係が緊張する中にあっても、11月上旬に合意された「対中規制の1年間暫定停止」という現状(ステータス・クオ)が維持されていることを確認するものです。企業にとっては「危機が去った」わけではなく、「1年間の対策猶予期間が確保された」と解釈し、サプライチェーン強靱化を急ぐ必要があります。


1. 経産相発言の事実と核心

  • 日時・発言者:2025年11月18日/赤澤亮正 経済産業相
  • 発言内容:「中国によるレアアース等の輸出管理措置について、現時点で『特段の変更はない』」
  • ビジネス上の含意
    • 直近(11月11日頃)、米中協議の結果として中国側が発表した**「レアアース輸出規制の1年間暫定停止」**の枠組みが、その後の政治的摩擦(後述)によって覆されていないことを確認しました。
    • 中国側が即座に「報復」へ転じていないことへの安堵を示すメッセージです。

2. 背景:2025年秋の「規制ショック」と「一時休戦」

これまでの経緯を時系列で整理します。

  1. 規制の厳格化(10月9日)
    • 中国商務省が「国家安全」を理由に、レアアースの採掘・精錬技術および磁石製造技術の輸出管理を強化。サプライチェーン全体への許可制導入を発表しました。
  2. 国際的な反発と米中合意(10月~11月上旬)
    • 米国:次期トランプ政権のベセント財務長官(指名候補)らが「重大な誤り」と猛反発。対中100%関税のカードを切り、激しい応酬となりました。
    • 一時停止の発表(11月11日):米中協議の進展を受け、中国側は上記規制の**「1年間の暫定停止」**を発表。市場には一時的な安堵が広がりました。

3. 政治リスクの再燃:「変更なし」発言が出た真の理由

なぜ今、改めて「変更なし」の確認が必要だったのか。それは、「一時停止」の合意が吹き飛びかねない新たな火種が発生したためです。

  • 高市首相の「台湾発言」
    • 高市早苗首相による台湾有事・安全保障に関する発言に対し、中国側が猛反発。「日本へのレアアース輸出を全面禁止すべき」との強硬論が中国国内で再燃しています。
  • 発言の意図
    • 赤澤経産相のコメントは、こうした政治的緊張にもかかわらず、**「現時点では中国当局が実務上の『ちゃぶ台返し(規制停止の撤回)』には動いていない」**という事実を市場に伝え、パニックを抑制する狙いがあります。

4. 企業への実務的示唆

「変更なし」=「安全」ではありません。現状は**「首の皮一枚で繋がっている休戦状態」**です。

(1) 短期(今後12カ月):不安定な調達環境

  • 猶予期間の活用:中国側の「1年間停止」措置が有効な間に、現行契約に基づく在庫積み増しを推奨します。
  • 突発的遅延への備え:制度上は「停止」でも、現場レベルの通関遅延(サイレントな嫌がらせ)が発生するリスクは常在します。

(2) 中長期:構造的なデカップリング準備

  • 代替調達の加速:IEAなども指摘する通り、中国への依存(採掘70%、精錬90%超)は構造的なボトルネックです。
  • 技術投資:重希土類フリー磁石やリサイクル技術への投資は、もはや「環境対応」ではなく「BCP(事業継続計画)」の要です。

5. アクションプラン(推奨事項)

  1. 在庫ポリシーの見直し:重要品目については、「ジャストインタイム」から「ジャストインケース(有事対応)」へ切り替え、数ヶ月分のバッファを持つ。
  2. 契約条項の確認:米中・日中の政治的対立による輸出停止を「不可抗力(Force Majeure)」として処理できるか、法務部門と再確認する。
  3. 情報収集の定例化:中国商務省の公式発表だけでなく、ジェトロや専門商社のレポートを通じ、実務運用(ライセンス発給状況)の定点観測を行う。

再製造品の通関を円滑にする保証書戦略

「再製造品の通関を円滑にする保証書戦略」を、すでに再製造ビジネスを行っている企業向けに、実務ベースで整理します。
(=今ある保証書や帳票を「通関に強い仕様」にアップグレードする、という前提です)


1. なぜ「保証書」が通関で効くのか

税関が再製造品をチェックする際の典型的な懸念は:

  • 単なる「中古品」や「廃棄物」の輸入ではないか
  • 安全性・品質が担保されているのか
  • 過度に過小申告された「ジャンク価格」ではないか

です。

保証書は、次の点を客観的に示す“証拠”になり得ます:

  • 「新品同等の性能・品質を持つ、再製造品である」こと
  • 製造者が一定期間の責任(保証)を引き受けている=製品としての価値があること
  • どの工場で・どのプロセスを経て再製造されたかがトレースできること

したがって、うまく設計された保証書は、
「中古・スクラップ」扱いを避け、再製造品としての正当な通関を支えるキー資料
になります。


2. 戦略の全体像(3つのレイヤー)

① 文言戦略(保証書の中身をどう書くか)

  • 「再製造品」であること
  • 「新品同等性能」「保証期間」「トレーサビリティ」などを、税関が読み取りやすい形で明文化

② ドキュメント・パッケージ戦略

  • 保証書だけではなく、
    「工程票・検査成績書・使用部品リスト・ラベル仕様」などとセットで通関資料に使えるようにしておく

③ オペレーション戦略

  • 誰が、いつ、どの様式で保証書を発行し、
    通関トラブル時に誰が修正・追加説明を行うかを社内プロセスとして固定する

3. 保証書の「通関向け」文言設計

3-1 必須要素(最低限ここは押さえたい)

  1. 再製造品である明示
    • 例: 本製品は、当社工場において分解・検査・部品交換・再組立・最終検査を行った**再製造品(remanufactured product)**です。
  2. 新品同等性能の明示
    • 例: 本再製造品は、当社の新品製品と同等の性能および機能を有することを確認しております。
    • 「新品以上」「新品を超える」等の表現は避け、**“新品と同等”**にとどめると法務的にも扱いやすいです。
  3. 保証期間と、新品との比較
    • 例: 保証期間:出荷日より12か月(当社新品製品と同一条件)
    • 税関は「保証期間」からも商業的価値・品質レベルを推定します。新品と同等、またはそれに準じる期間であることを明示。
  4. 保証の範囲
    • 例: 本保証は、通常の使用条件下での材料および製造上の欠陥に限定されます。交換部品および修理工賃を対象とし、二次的損害は対象外とします。
  5. トレーサビリティ情報
    • 保証書のどこかに、最低限次を入れる:
      • 再製造工場名/所在地(国名)
      • 再製造日または出荷日
      • 製品型式・ロット番号・シリアル番号
      • 再製造工程コードや作業指示番号(社内コードでも良い)
  6. 安全・規格・適合情報
    • EU・北米向けなら、必要に応じて:
      • 適用規格(例:IEC、UL等)
      • CEマーキング/UL認証等の有無
    • これを保証書内に簡潔に記載し、詳細は別紙「技術文書」「試験成績書」に飛ばす設計にすると整理しやすいです。

4. 通関で使える「保証書+技術資料パッケージ」の標準構成

実際にうまく回っている企業ほど、次のような**“ひとまとめパック”**を決めています。

  1. 保証書(Customer Warranty Certificate)
    • エンドユーザー/販売先向けだが、税関提出用としても使えるように日英併記にしておくと有利。
  2. 再製造工程フローとチェックシート(1~2枚)
    • 「分解 → 清掃 → 検査 → 交換 → 再組立 → 最終検査」の流れを1枚図に
    • 代表的な検査項目と合否基準を簡潔に記載
  3. 出荷検査成績書(代表値で可)
    • 主な性能項目と合格判定
    • “新品基準”と“再製造品の測定値”を並べるフォーマットにすると、
      「新品同等」の裏付けとして説得力が出ます。
  4. 使用した新品部品の一覧
    • 例:
      • 部品名/部品番号
      • 新品・再利用区分
      • 主要な新品部品(シール類、ベアリング、電子基板等)には、「メーカー純正/同等品」の別も明示
  5. ラベル・マーキング仕様
    • 製品に貼るラベルの見本(PDFで1枚)
    • 以下の項目が読めるように:
      • “Remanufactured by XXX in [Country]”
      • 製品型式・シリアル
      • 再製造日コード
    • 税関に「表示が明確=ユーザーも再製造品と理解して購入している」ことを伝えられます。
  6. 原産地・HSコード関連との紐付け
    • HS分類メモ、原産地判定メモ(RoO)、コスト構成等の記録と、
    • 上記パッケージを同じ案件フォルダで一括管理しておく
    • HS Code Finder/社内HS判定システムの「添付資料」欄に
      • 「保証書」「出荷検査成績書」「再製造工程図」を標準で含める
        というルールにすると、後からの説明資料の入手が非常に楽になります。

5. 実際に行われているオペレーションのイメージ

5-1 A社パターン(日本本社+ASEAN工場 → EU/US向け)

  • 本社(日本)
    • 保証書テンプレートを日英版で作成し、一元管理
    • 改定時は、法務・品質保証・貿易部が合同レビュー
  • ASEAN再製造工場
    • 本社テンプレに従って保証書を発行(製品ラベルと同じLOT/Serialを必ず記載)
    • 出荷検査成績書、工程票、部品リストをロットごとにPDF化
  • 通関・物流(日本/現地販売会社)
    • 税関から照会が来た場合すぐ出せるよう、
      「インボイス/パッキングリスト/HS分類メモ/保証書パック」を1セットにして保管
    • HSコードや「新品/中古/再製造」区分を確認されたときは、
      まず保証書+工程フロー+検査成績の3点セットを先に提示

5-2 B社パターン(自動車部品の再製造サービスパーツ)

  • 部品番号(P/N)単位で保証書を紐付け
    • 部品マスタに「新品」「再製造」「修理品」の区分フラグを持たせる
    • 再製造品には必ず保証条件コードを設定(新品と同等 or 短縮など)
  • 保証書には、次を明示
    • 対象部品番号
    • 適合車種/システム
    • 保証期間と走行距離条件
  • 通関実務
    • HSコード説明依頼の際に、
      「この部品は新品ではなく再製造品だが、メーカー保証付きで新品同等性能である」
      ことを保証書と部品マスタ情報で説明する運用

6. 国・地域別の「見せ方」のコツ(ハイレベル)

※法的アドバイスではなく、実務上よく取られる“説明トーン”のレベル感です。

ASEAN域内(改定ATIGAも意識)

  • 一部加盟国では「中古品・廃棄物」の輸入に慎重
  • 保証書上は:
    • 「新品同等性能」である点
    • 認定工場での再製造である点
    • 簡潔な環境面の意義(廃棄削減・資源活用)を追記すると、担当官に納得感が出る場合が多い

EU向け

  • 環境・安全・エコ設計の観点にも関心
  • 保証書では:
    • 適用規格・指令(例:低電圧指令、EMC指令等)への適合を簡単に触れる
    • 詳細は「技術ファイル」「試験レポート」にリンクさせる設計が無難

米国向け

  • 「Repair/Refurbished/Remanufactured」の違いに敏感な場合あり
  • 保証書では:
    • “Remanufactured”を明示(Refurbishedと混在させない)
    • 保証内容(期間・範囲)をクリアに書くことで、商業的価値と品質水準を説明

7. 社内で今すぐできるチェックリスト

  1. 対象製品の棚卸し
    • 再製造品のラインアップをリストアップ
    • 「保証書が存在するもの」「存在しないもの」「新品と同じ保証書をなんとなく使っているもの」に色分け
  2. 保証書フォーマットの見直し
    • 上記3-1の必須要素が入っているかをチェック
    • 「新品と同じ文言をコピペ」していないか(再製造品の特性が反映されているか)
  3. 技術資料とのリンク
    • 保証書に書いてある内容を裏付ける工程票・検査成績書が、
      ロット別にちゃんと残っているか
    • HS分類メモ・原産地判定メモと同じフォルダに保存されているか
  4. 通関トラブルのフィードバック
    • 過去に「中古扱い」「価格査定」「環境規制」などで指摘を受けた案件を振り返り、
    • そのときに「保証書に何が書いてあれば言いやすかったか」を洗い出し、
      保証書テンプレに反映(テンプレの改訂履歴を残す)

2025年11月19日時点で公表・報道されている「米国の相互関税(Reciprocal Tariff)」

以下は、2025年11月19日時点で公表・報道されている「米国の相互関税(Reciprocal Tariff)」について、指定された国だけを抜き出した最新リストです。


進め方(計画)

  1. 公式の国別相互関税率を確認
    • ホワイトハウス大統領令「Further Modifying the Reciprocal Tariff Rates」(2025年7月31日)の Annex I にある国別率を確認。
    • JETRO「米国トランプ政権の関税政策の要旨」(2025年11月18日版)の相互関税率表を照合。
  2. カナダ・メキシコ・中国など Annex I に載っていない/別枠扱いの国を確認
    • JETRO「米国関税措置への対応」特集の各国別解説(対中関税、対カナダ・メキシコ関税など)と Federal Register/ホワイトハウスの大統領令をチェック。
  3. 直近(前日)からの変更の有無を確認
    • 11月4日の対中相互関税修正 EO、11月14日の農産品の相互関税対象外 EO 以降、国別レートを変える新たな大統領令・告示が出ていないか確認。
    • JETRO 11月18日資料は「2025年11月18日時点」と明記されており、その後も国別相互関税率の変更報道はなし。
  4. 指定国だけを抽出し、表形式で整理
    • 「国名/相互関税率(国別上乗せ分)/前日差/主な出所/備考」を記載。

この計画に沿って調査した内容を、以下の表にまとめています。


最新 相互関税リスト(指定国のみ)

前提メモ

  • 「相互関税率」は、米国側が各国に対して設定している追加 ad valorem 関税率(Reciprocal Tariff の国別率)です。
  • EU・日本など一部は「MFN税率と合わせて15%になるよう調整」という形で運用されています。
  • カナダ・メキシコ・中国は、相互関税とは別枠の IEEPA 関税や301条関税等が重なっている特例です。

表:国名順(ご指定の順番)

国名相互関税率(国別上乗せ分)前日差主な出所備考
Algeria(アルジェリア)30%なしWH EO 2025/7/31 Annex I, JETRO 2025/11/18Annex I 掲載国(相互関税対象国)。
Angola(アンゴラ)15%なし同上同上。
Bangladesh(バングラデシュ)20%なし同上同上。
Bosnia & Herzegovina(ボスニア・ヘルツェゴビナ)30%なし同上高率(30%)グループ。
Botswana(ボツワナ)15%なし同上同上。
Brazil(ブラジル)10%(相互関税分)なしAnnex I, JETRO「主要国・地域の追加関税率」相互関税10%に加え、別の大統領令に基づく追加関税40%で**合計50%**のケースあり。
Brunei(ブルネイ)25%なしAnnex I, JETRO同上。
Cambodia(カンボジア)19%なしAnnex I, JETRO10月に米カンボジア通商枠組み合意。レート自体は19%で維持。
Cameroon(カメルーン)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Canada(カナダ)*―(相互関税対象外)なしJETRO 11/18, JETRO「対カナダ関税」相互関税EOの Annex I には非掲載。代わりに IEEPA に基づく追加関税35%(一部品目除外)。USMCA原産品は免除。
Chad(チャド)15%なしAnnex I, JETRO同上。
China(中国)*34%(名目)/実効10%なしJETRO「対中国関税の概要」(11/5)、対中相互関税修正 EO(11/4)EO 14257 Annex I 上は34%。うち24ポイントの賦課を2026年11月10日まで停止し、相互関税として実際に徴収されるのは10%。さらにフェンタニル対策IEEPA関税10%、301条追加関税25%などが別途上乗せされる。
Côte d’Ivoire(コートジボワール)15%なしAnnex I, JETRO同上。
DR Congo(コンゴ民主共和国)15%なしAnnex I, JETRO同上。
EU(欧州連合)最大15%(MFN含む)なしAnnex I, JETRO、EU・米国合意報道EU向けは特例:MFN税率が15%未満の品目は「MFN+相互関税=15%」、MFNが15%以上の品目には相互関税0%
Falkland Islands(フォークランド諸島)10%なしAnnex I, JETRO同上。
Fiji(フィジー)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Guyana(ガイアナ)15%なしAnnex I, JETRO同上。
India(インド)25%(相互関税分)なしAnnex I, JETRO「主要国・地域」相互関税25%に加え、別EOに基づく追加関税25%で**合計50%**と整理されている。
Indonesia(インドネシア)*19%なしAnnex I, JETRO7月22日の米インドネシア通商合意で 19%に確定。
Iraq(イラク)35%なしAnnex I, JETRO高率(35%)グループ。
Israel(イスラエル)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Japan(日本)*15%なしAnnex I, 日米関税合意および実施EO(9/4)、JETRO解説7/22の日米合意に基づき、相互関税率は24%→15%に引き下げ。MFN税率が15%未満の品目は「MFN+相互関税=15%」、15%以上の品目には相互関税なし。自動車・同部品の232条関税も同様に15%上限。
Jordan(ヨルダン)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Kazakhstan(カザフスタン)25%なしAnnex I, JETRO高率(25%)グループ。
Laos(ラオス)40%なしAnnex I, JETRO非常に高い相互関税率(40%)。
Lesotho(レソト)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Libya(リビア)30%なしAnnex I, JETRO高率(30%)グループ。
Liechtenstein(リヒテンシュタイン)15%なしAnnex I, JETROEFTAの一員。11/14の米・スイス・リヒテンシュタイン枠組み合意の対象国の一つだが、レート自体はもともと15%。
Madagascar(マダガスカル)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Malawi(マラウイ)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Malaysia(マレーシア)19%なしAnnex I, JETRO10月の通商協定枠組み合意後もレートは19%で据え置き。
Mauritius(モーリシャス)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Mexico(メキシコ)*―(相互関税対象外)なしJETRO 11/18, 対メキシコ IEEPA 関税解説Annex I 非掲載。**IEEPA に基づく追加関税25%**が非USMCA品に適用。USMCA要件を満たす品目は免除。
Moldova(モルドバ)25%なしAnnex I, JETRO高率(25%)グループ。
Mozambique(モザンビーク)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Myanmar(ミャンマー)40%なしAnnex I, JETRO最高水準の一つ(40%)。政情リスクも背景とされる。
Namibia(ナミビア)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Nauru(ナウル)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Nicaragua(ニカラグア)18%なしAnnex I, JETRO同上。
Nigeria(ナイジェリア)15%なしAnnex I, JETRO同上。
North Macedonia(北マケドニア)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Norway(ノルウェー)15%なしAnnex I, JETROEFTAの一員だが、相互関税率は15%で確定。
Pakistan(パキスタン)19%なしAnnex I, JETRO同上。
Philippines(フィリピン)19%なしAnnex I, JETRO「主要国・地域」7/22の米比合意で19%に設定。
Serbia(セルビア)35%なしAnnex I, JETRO高率(35%)グループ。
South Africa(南アフリカ)30%なしAnnex I, JETROアフリカではアルジェリア・リビアと並ぶ30%グループ。
South Korea(韓国)*15%なしAnnex I, JETRO(注3)7/31 Annex I で15%。11/13の米韓合意により、今後 EU・日本同様に「MFN(または韓米FTA税率)+232条を含めて15%上限」とする運用に修正される見込み。
Sri Lanka(スリランカ)20%なしAnnex I, JETRO同上。
Switzerland(スイス)39%(発動中)なしAnnex I, JETRO 11/18, JETRO/Reuters/Swissinfo報道7/31 EOの Annex I で31%→39%に引き上げられ、8/7以降発動。11/14に米・スイス・リヒテンシュタイン間で「最大15%に引き下げる」枠組み合意が発表されたが、15%への正式な引き下げを行う大統領令はまだ出ていないため、**11/19時点の法令上の相互関税率は39%**と整理。
Syria(シリア)41%なしAnnex I, JETRO一覧中で最も高い相互関税率(41%)。
Taiwan(台湾)20%なしAnnex I, JETRO同上。
Thailand(タイ)19%なしAnnex I, JETRO7月の通商枠組み合意後も19%を維持。
Tunisia(チュニジア)25%なしAnnex I, JETRO4月時点28%→7/31の再設計で25%に修正。
Vanuatu(バヌアツ)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Venezuela(ベネズエラ)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Vietnam(ベトナム)20%なしAnnex I, JETRO7月の合意で20%に設定。JETRO「各国の追加関税率」参照。
Zambia(ザンビア)15%なしAnnex I, JETRO同上。
Zimbabwe(ジンバブエ)15%なしAnnex I, JETRO同上。

補足:共通の最近の動き(全ての国に関係するもの)

  • 農産品の一部が相互関税対象外に
    2025年11月14日の大統領令により、牛肉・コーヒー・茶・一部肥料などの農産品が、国を問わず相互関税の対象外となりました(237のHS分類が Annex で指定)。
    → 上記表の「相互関税率」自体は変わらないものの、実際にこのレートがかかる品目の範囲はやや狭まっています。
  • 中国に対する相互関税の「実効10%」の延長
    11月4日の大統領令により、対中相互関税34%のうち24ポイントを停止し、相互関税としては10%のみを2026年11月10日まで適用する措置が延長されました。同時に、フェンタニル対策の IEEPA 追加関税が20%→10%に引き下げ。

改訂ATIGAでの「再製造品」の扱い

改正ATIGAは、再製造品を「中古品扱い」から「正規商品」として流通させやすくする方向に大きく舵を切ろうとしています。ただし、(1)協定本文はまだ全面公開されておらず、(2)発効もこれからであるため、以下は公表されている公式資料・報道、他FTA(CPTPP等)やWCOの分析をベースにした「現時点で読める範囲の整理とビジネス的インプリケーション」です。fungry+3

1. 改正ATIGA(Upgraded ATIGA)の位置づけとタイムライン

ATIGA(ASEAN Trade in Goods Agreement)は2009年に署名、2010年に発効したASEAN域内の物品貿易自由化の中核協定です。2022年から「アップグレード(改正)」交渉が開始され、持続可能性・循環経済・再製造品・環境と貿易・サプライチェーン連結性など新テーマを取り込むことが目標とされてきました。kenbunsya+3

2025年10月、クアラルンプールで開催された第47回ASEANサミットで「Upgraded ATIGA(第2次改正議定書)」に各国が署名しました。協定は「全加盟国が署名を完了してから18か月後」に発効する見込みとされています(ASEAN事務局の発表)。fungry+2

発効時期の見通し:2025年11月時点では、署名は完了していますが、まだ発効前です。実務的な適用開始は各国の批准スピード次第ですが、早くとも2027年前後と見込まれます。sambushi+3

2. 「再製造品(remanufactured goods)」の定義

WCOや米国・EUのFTAで使われる一般的な定義を整理すると、以下のようになります。c-edge+1

再製造品:中古品や使用済み製品(コア)を回収し、分解・洗浄・摩耗部品の交換・再組立・試験などの工程を経て、新品と同等の性能・寿命・保証を持つレベルまで再生した製品です。例としては、再製造エンジン、再製造トランスミッション、再製造プリンタカートリッジ等が挙げられます。kenbunsya+3

中古品(used goods):使用済みだが、特段の再製造工程を経ていないもの(簡単な清掃や調整のみ)を指します。sambushi+1

修理品(repaired goods):壊れた箇所だけを修理したもので、全体として新品相当の性能・寿命を保証しているとは限りません。fungry+1

多くの国では、再製造品が関税・輸入規制上「中古品」とみなされ、輸入禁止、特別なライセンス義務、高い検査負担などの障壁に直面しています。改正ATIGAは、この扱いを変えて「循環経済の重要な一部としての再製造品」を適切に位置づけ直すことを目的としています。kenbunsya+3

3. 改正ATIGAで再製造品が取り上げられる背景

3-1. 新しい「サステナビリティ・循環経済」軸

改正ATIGAは、従来の関税自由化や原産地規則に加え、「循環経済」「再製造品」「環境と貿易」「サプライチェーン連結性」といった新テーマを包含すると各種公式声明で説明されています。c-edge+1

シンガポールMTIの資料では、サステナビリティの柱として、環境財の貿易障壁削減と再製造品の流通円滑化が明示されています。kenbunsya+1

3-2. 再製造品に特化した新ルールの必要性

米国・CPTPP・EU等のFTAでは、再製造品について明確な定義、原産地規則(どのレベルの再製造をすれば「原産」と認めるのか)、「再製造品である」という理由だけで輸入禁止・差別的規制を課さないこと、ラベリング(再製造品であることの表示)のルールなどを定めるのが一般的になりつつあります。WCOやASEANの研究でも「同様の枠組みを導入すべき」と指摘されていました。sambushi+2

4. 改正ATIGAにおける再製造品ルールの骨格

2025年11月時点では、Upgraded ATIGAの条文全文は公式にはまだ一般公開されていません。専門家レポートでも「テキストは未公表だが、17の新章が含まれる」とされています。fungry+2

以下は、公表されている政府プレスリリース・インフォグラフィック、ASEAN・WCO・EU-ASEAN Business Council等の分析から読み取れる「方向性」です。c-edge+2

4-1. 「再製造品の流通円滑化」の明示

シンガポール貿易産業省(MTI)のプレスリリースでは、サステナビリティの項目として次のポイントが挙げられています。kenbunsya+1

  • 環境財の貿易障壁を下げるための協力
  • 「環境にやさしい製品やリサイクル製品を含む再製造品」の流通円滑化

これは「ASEANのFTAとして新しい特徴」であり、まずは「準備の整った加盟国(ブルネイ、マレーシア、シンガポール)」から導入されます。他の加盟国は、協定発効から以下のスケジュールで実施協議を開始します。sambushi+3

  • インドネシア・フィリピン・タイ:5年以内に実施協議を開始
  • カンボジア・ラオス・ミャンマー・ベトナム:7年以内に協議開始
  • いずれも協議開始から2年以内に結論を出す

同趣旨の説明は、シンガポール政府のインフォグラフィックでも「再製造品(環境配慮型・リサイクル品を含む)の貿易拡大が期待される」とされており、再製造品が改正ATIGAの重要な要素であることが強調されています。c-edge+1

4-2. 定義・分類・輸入手続き・原産地の整理

ASEAN Investment Report 2025の要約によると、アップグレードでは以下の点が整理されます。fungry+1

  • 再製造品の定義
  • 分類基準(HS・AHTNとの紐づけ方法)
  • 再製造品の輸入手続き・規制のあり方
  • 再製造品の原産地の扱い

US-ASEAN Business Councilのレビューでは、各加盟国が定義、分類基準・輸入手続・原産地の判断などに懸念を示しており、解決策として「循環経済向けのゼロ関税・優遇関税」「再製造品の重要性を前提としたルール化」が提案されています。sambushi+1

つまり、「再製造品をどう定義し、どう税番を付け、どう輸入させ、どの条件で原産品扱いにするか」が改正ATIGAの重要テーマになっていると理解できます。fungry+2

4-3. 関税面:新品との同等・優遇が方向性

EU-ASEAN Business Councilなどのビジネス側からの提言では、「中古・再利用・再製造・リサイクル品に対し、ゼロ関税や優遇関税を明示すべき」と求めており、循環経済推進の観点から、新品と同等またはより良い税率を与える方向性が示されています。c-edge+1

改正ATIGAの全体像としても、域内貿易の「99%超の貿易自由化」を目標としていますので、再製造品についても既存の関税譲許スケジュールに基づき、新品と同じ優遇関税(多くは0%)を適用する方向と見られます。kenbunsya+2

4-4. 原産地規則(RoO)との関係

WCOの研究では、他のFTA(CPTPPやEU協定など)での再製造品ルールとして、以下のパターンが一般的です。sambushi+1

  • 「再製造工程」自体を実質的変更(substantial transformation)として認める
  • 回収コア+新部品を組み合わせた再製造品が原産品となる条件を明記
  • 再製造過程で生じる廃材・回収材の扱い(原産性の付与)を整理

改正ATIGAも、再製造工程をどの程度行えば「原産」とみなすか、ASEAN域内で回収されたコアや部品をどう累積(cumulation)として扱うかなどを整理する方向で設計されているとみられますが、具体的なCTCやVAの数値条件はまだ公表されていません。fungry+1

5. ASEAN各国の導入タイムライン(フェーズ分け)

再製造品に関する新ルールは、加盟国一斉スタートではなく、フェーズ導入が明記されています。kenbunsya+1

グループ対象国導入タイミング(目安)
第1フェーズ:Ready AMSブルネイ、マレーシア、シンガポールUpgraded ATIGA発効とほぼ同時に再製造品規定を実施
第2フェーズインドネシア、フィリピン、タイ協定発効から5年以内に実施方法を協議開始→協議開始から2年以内に結論
第3フェーズカンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム協定発効から7年以内に協議開始→協議開始から2年以内に結論

※実際の適用開始日は、各国の国内法整備・批准状況に依存します。c-edge+1

当面(2027年〜2030年頃)は「ブルネイ・マレーシア・シンガポール間」で再製造品ルールが先行し、他のASEAN諸国は中長期的に追随するという時間差が予定されています。sambushi+1

6. 日本企業へのビジネス・インパクト

ここからは、日本企業(特にASEANに生産拠点・販社を持つ企業)の視点で、想定される影響を整理します。fungry+1

6-1. ビジネスチャンス:再製造ビジネスの「公認」ルートの確立

これまで、多くのASEAN諸国では再製造品が「中古品」として扱われ、輸入禁止、数量制限、輸入ライセンス・検査の負担、税関での分類トラブルが頻発していました。c-edge+1

改正ATIGAは、再製造品を循環経済の一部として位置づけた上で「流通円滑化」を明示しているため、再製造品が新品と同じ税番・関税率で扱われ、「再製造品であること」だけを理由にした輸入禁止・差別的扱いが制限される方向が期待されます。kenbunsya+2

これにより、自動車部品・建機部品・産業機械・プリンタ/複合機などでの再製造ビジネス、グリーン調達・循環型ビジネスモデル(リース+回収+再製造)が設計しやすくなります。sambushi+1

6-2. サプライチェーン設計:ASEAN内の「リマニュファクチャリング・ハブ」

実務的には、まずマレーシア・シンガポールを中心に「ASEAN内再製造ハブ」を設け、ASEAN域内の拠点同士をATIGAの優遇関税でつなぐというモデルが現実的です(同2か国は第1フェーズで即時導入)。kenbunsya+1

例えば、タイ・インドネシア等で販売された製品の使用済みコアをマレーシアのリマニュファクチャリング工場に集約し、再製造品として再びASEAN各国に供給する方法が考えられます。将来的に、各国の再製造ルール導入後は、ローカル拠点での再製造ビジネスも拡大する見込みです。fungry+2

6-3. 通関・コンプライアンスで注意すべきポイント

HS分類と「中古品扱い」のリスク

HS上、再製造品も基本的には新品と同じ品目・機能で分類されるのが原則ですが、実務ではしばしば「中古品」扱いされます。改正ATIGAの狙いは、ここを整理・標準化することです。c-edge+3

以下を明確に文書化しておくことが、税関との議論・将来の紛争予防に重要です。sambushi+1

  • HS分類根拠
  • 再製造工程の内容(分解・検査・交換・試験等)
  • 品質保証・保証期間

輸入規制との整合

再製造品ルールができても、各国の廃棄物輸入規制、中古機器規制、衛生・安全・環境関連の国内法は残ります。従って、関税面ではATIGAで優遇される一方、非関税規制は各国法を個別に確認するという二段階アプローチが必要です。fungry+2

原産地証明(Form Dなど)

再製造品の原産地規則がどう整理されるかは今後のポイントですが、回収コアがどこの国から来たのか、どの国でどの工程を行ったか、使用した新部品の原産性などを証明するためのトレーサビリティと記録管理は確実に重要になります。c-edge+1

6-4. 社内的な備え:品質・保証・ラベリング

改正ATIGAの条文を待たずに、現時点から実施可能な対策として以下が挙げられます。sambushi+2

  • 再製造品を新品と同等の性能・保証レベルで設計・運用すること(これが国際的な「remanufactured」の前提)
  • 「ReMAN」「Refurbished」などのラベルや取扱説明書に、再製造工程の概要、性能保証、環境メリット(CO₂削減、資源使用削減など)を分かりやすく盛り込むこと
  • 品質管理・認証(ISO、IATF等)とリンクさせ、規制当局にも説明しやすい形にしておくこと

7. 日本企業が今から取るべきアクション(チェックリスト)

ビジネスマン視点での「当面のTo-Do」は以下のとおりです。c-edge+1

自社ポートフォリオの棚卸し

自動車部品、建機・産機、OA機器など「再製造ビジネスに回せる製品」「コアを回収しやすい製品」を洗い出します。fungry+1

ASEAN内フローのマッピング

どの国で販売し、どの国で再製造が現実的か(特にマレーシア・シンガポール)、将来的な他ASEAN諸国での展開余地を検討します。kenbunsya+1

税関・規制当局との対話チャネル準備

各国の通関業者・法務・業界団体と連携し、再製造品に対する当局のスタンス・ローカル規制を事前に把握しておきます。sambushi+1

原産地・トレーサビリティの仕組みづくり

コア回収・再製造工程・新部品の原産性を追跡できるシステムを構築し、将来のATIGA改正RoOへの対応を見越して、データ項目を設計します。fungry+1

社内の定義統一と教育

「中古品」「修理品」「再製造品」の社内定義を明確化し、営業・サプライチェーン・品質部門に対して、今後のATIGA改正の方向性を周知します。c-edge+1

情報モニタリング

協定本文の公開・各国の批准状況、再製造品に関するガイドライン・通達(特にマレーシア・シンガポール)を定期的にチェックします。kenbunsya+1

まとめ

改正ATIGAは、再製造品を含む循環経済を本格的に組み込んだ「次世代のASEAN物品貿易協定」に進化しつつあります。kenbunsya+2

具体的条文はまだ非公開ですが、再製造品の定義・分類・輸入手続・原産地、新品との同等・優遇関税、非関税障壁削減という方向性は各種公式資料からほぼ明らかです。sambushi+1

当面はマレーシア・シンガポール等での先行導入から、他ASEANへの段階展開となる見込みで、日本企業にとっては再製造ビジネスをASEAN内で立ち上げる好機である一方、原産地管理・品質・規制対応の高度化が求められる時期となります。fungry+3

特定業界(自動車・産機・OA機器など)ごとの影響整理や、「再製造品向けForm D/RoO管理のための社内テンプレート案」など、さらに実務寄りのアウトプットが必要な場合は、追加で作成可能です。c-edge+1

  1. https://c-edge.jp/column/kouseikouetsu/
  2. https://sambushi.jp/article/proofreading/
  3. https://kamisommelier.jp/717/
  4. https://kiji-sniper.com/blog/calibration-discrimination/
  5. https://fungry.co.jp/cnaps/blog/kousei-kouetsu/
  6. https://www.kenbunsya.jp/commusapu/design/4882/

HS2028改正の全体像

HS2028とは何か

WCO(世界税関機構)が運営する国際共通の商品分類体系「HS」の第8版に相当する改正です。通常は5年ごとに改正されますが、新型コロナ等の影響で今回のサイクルは6年に延長され、次の版は2028年1月1日発効とされています。現在はHS2022が稼働中で、その次の版がHS2028です。

どこまで決まっているのか

2025年3月(HSC第75会期)にWCOのHS委員会(HSC)が、約6年にわたる審議の最終回として以下を暫定採択しました。

  • 299セットのHS2028改正案
  • 105件の改正提案
  • 解説注の改正5件

これらを含む「HS2028向けArticle 16勧告案」により、HS2028の中身(6桁レベル)は技術交渉として決着した段階です。

どんな分野が大きく動きそうか

現時点で公表されている情報や専門ベンダーの分析から、特に影響が大きいと見られている分野は以下の通りです。

エレクトロニクス・IT関連

半導体・電子部品・スマート基板・マルチコンポーネントICなど、デジタル化・高度化した製品群の細分化と再編が進む見込みです。

医薬品・ワクチン関連

WHOのINNリスト(医薬品一般名)と連動した分類見直しが行われ、441品目の医薬物質の扱いが整理されるなど、医薬品セクターでの改正が大きくなります。

グリーン技術・環境関連品目

再生可能エネルギー関連設備、電動化・省エネ機器、環境配慮型製品など、「グリーン商品」の見える化を意識したコード整理が進む見込みです。

デュアルユース・先端技術製品

軍民両用となり得る先端技術製品について、輸出管理・安全保障貿易との連携を意識した分類の明確化が図られるとみられます。

HS2028は「過渡期」版

2025年のWCO会合では、HS全体の構造そのものを見直す「HS2033モダナイゼーション・プロジェクト」の立ち上げも決定しました。HS2028は、現行HS枠組みの中での「テーマ別アップデート」であり、その先のHS2033でのより抜本的な再設計に向けた橋渡しという位置づけです。

採択プロセスとスケジュール

WCOレベルでの流れ

技術交渉の終了(完了済み)

2025年3月(HSC第75会期)にHS委員会がHS2028向けArticle 16勧告案を暫定採択し、6桁レベルの技術交渉は終了しました。

WCO理事会での正式採択(2025年末予定)

上記の勧告案は、2025年中にWCO理事会に付議され、Article 16勧告として正式採択される予定です。WCO・AEOなどの説明では、2025年12月末に正式採択、2026年1月に勧告が公表されるというタイムラインが示されています。

締約国による異議申立期間(概ね6か月)

HS条約(Article 16)では、WCO理事会から各締約国に勧告が通知されてから6か月間、各国が異議を申し立てることができ、異議がなければ勧告は「全会一致で採択されたもの」とみなされる仕組みです。企業実務から見ると、2026年の前半に国際的な法的確定が進むという理解で十分です。

HS2028テキストの公表

WCO・AEOなどの情報によると、2026年1月にHS2028の最終テキスト(6桁レベル)が公表される見込みです。

発効日

HS2028(新しい版)は、2028年1月1日に全世界で発効することが明示されています。

各国関税表・FTAへの落とし込みスケジュール

HSはあくまで「6桁までの国際条約」です。実務に影響するのは、各国がこれを自国の関税・統計・FTAにどう落とし込むかというフェーズです。

2026年から2027年前半:各国の作業フェーズ

日本は関税率表、実行関税率表、輸出入統計品目表、原産地規則付属書などをHS2028ベースに改正します。EU・米国・ASEANなども、自ブロックや自国の関税表や実行関税(TARIC、HTSUS、AHTN等)をHS2028に合わせて整備します。同時に、FTAの品目表・リストルール(ROO)を新HSに合わせて改正する作業が進みます(例:RCEP、日EU EPA、CPTPP等)。

2027年から2028年:並行稼働期・移行期

多くの国が2028年1月1日からHS2028に移行する一方で、一部の途上国等は移行に時間がかかる可能性があります(過去のHS2017、2022と同様)。企業から見ると、国によって「まだHS2022」「もうHS2028」という期間が数年発生することになります。

相関表の活用

WCOは、HS2022とHS2028を結び付ける「相関表(Correlation Tables)」を作成・公表することになっており、これが各国・各企業の「コード変換作業」の基礎になります。

企業にとっての押さえるべきポイント

マスターデータ・ITシステムへのインパクト

HSコードの6桁が変わると、以下のすべてを更新する必要があります。

  • 自社の品目マスター
  • ERP・輸出入管理システム
  • FTA原産地判定エンジン
  • 税率マスタ・統計コード

専門ベンダー(例:欧州のAEB等)は、HS2028への移行が「通関プロセス・マスターデータ・ITシステムに広範な影響を与える」として、早期の影響分析を推奨しています。

関税コスト・原産地(FTA)への影響

HS改正は単なる番号変更ではなく、「どのHSに入るか」が変わることで、MFN関税率が変わる可能性や、原産地規則(CTCルール)の前提となるHSが変わることを意味します。

特に、電動化・グリーンテック・医薬品・先端半導体などは、関税政策・産業政策と連動した細分化が予想されるため、「関税コスト+FTAメリット」の再試算が必要になります。

グローバルで「複数HS年版」が同時に走るリスク

2028年前後数年間は、米国はHS2028を取り込んだHTS(2028版)、EUはCN/TARIC 2028、ASEANはAHTN 2028(採用タイミングは国により差)、他の国はHS2022のままや独自の移行スケジュールといった形で、「国によりHSの版が違う」状態が避けられません。

その結果、同じ商品でも国Aでは旧HS、国Bでは新HSということが起こり得ます。FTAの原産地証明(特にForm・電子原産地証明)で、相手国税関が想定するHS版と、輸出側が使うHS版が食い違うリスクなどが増えます。

HS2033を見据えた中期視点

HS2028の直後には、2028年から2033年の次サイクルで、HS全体をより抜本的に見直すHS2033改正が控えています。よって、HS2028対応の仕組み(コード変換ロジック・ツール・BPO活用など)は、2033年以降も繰り返し使える「仕組み」として設計しておくことが重要です。

企業が今から準備すべきこと

自社品目の棚卸し(HS2022ベース)

現在使用しているHS2022コード・統計品目番号を、品目マスターとして整理・整合させておく(輸出入・販売会社間でのズレを解消)ことが重要です。

HS2028情報のウォッチ体制の構築

WCO・国税庁・税関、ならびに専門ベンダー(TariffTel、AEB等)の情報更新を定期的にチェックする担当者や仕組みを決めましょう。

IT・システム部門との事前連携

2026年から2027年にシステム改修が集中することを想定し、以下について情報システム部門やベンダーと早期に議論を開始します。

  • HSコード桁数・版管理の仕様
  • 相関表をインポートする仕組み
  • FTA原産地判定ロジックのバージョン管理

FTA・原産地業務への影響の洗い出し

主要FTA(RCEP、日EU、CPTPP、日メキシコ、日タイ等)の原産地リストルールがHS2028に改正されるタイミングと内容をウォッチし、自社のサプライチェーン別に「有利・不利」の試算を行います。

社内教育とサプライヤーコミュニケーション

営業・物流・調達向けに「HS2028とは何か・いつから影響するか」の簡易資料を用意します。主要サプライヤー向けにも、将来的に「HS2028版の部品HSコード+原産地情報」を求めることを先に伝えておきましょう。

全体のまとめ

HS2028は、2028年1月1日発効予定の次期HS改正であり、2025年3月時点で技術的な中身(299セットの改正)はほぼ確定済みです。2025年末にWCO理事会がArticle 16勧告を正式採択し、2026年1月にHS2028テキストが公表され、各国が自国制度への落とし込みを開始します。

改正の焦点は、エレクトロニクス・医薬品・グリーンテック・デュアルユース製品など、近年の通商・安全保障政策のホットスポットに集中しています。

日本企業にとっては、関税コスト・FTA原産地ルール・社内マスターデータ・ITシステムの全面的な見直しが不可避であり、2026年から2027年を「移行準備の勝負どころ」と捉える必要があります。

さらに、すでにHS2033に向けた抜本的なモダナイゼーション・プロジェクトが動き始めており、HS2028対応は「一度きりの対応」ではなく、継続的なHS改正マネジメント体制を作る第一歩と位置付けるのが現実的です。

このあたりを押さえておくと、今後の「HS2028センサー改正」「特定品目のコード変更」のような個別論点も、全体戦略の中に位置づけて検討しやすくなります。


WCOデータモデル4.2.0が示す「原産地情報の世界標準化」


エグゼクティブサマリー

**WCOデータモデル4.2.0(2025年7月公表)**は、原産地証明書(CO)および自己申告に関するデータ項目・フォーマットを”世界標準”として明示した初の本格バージョンです。このアップデートにより、今後の「電子原産地証明・自己申告・税関間データ連携」の”型”がほぼ確定したといえます。aduananews+2

2025年7月に公表されたバージョン4.2.0では、「Customs Bonds(通関担保)」と「Certificates of Origin(原産地証明書)」という2つの新しい標準データセットが追加されました。特に原産地証明書データセットは、WCO原産地規則技術委員会(TCRO)が作成した原産地データ集をベースに標準化されており、各国が電子原産地証明(eCO)を発行・交換するための”共通フォーマット”を提供します。customstrade+2

さらに2025年10月、WCOは**「原産地証明相互接続フレームワーク(Interconnectivity Framework for Certificates of Origin)」**を公表し、税関同士がeCOデータをやり取りする際の法的枠組み・ビジネスプロセス・技術仕様を整理しました。フレームワークでは、「交換されるデータ要素・構造・メッセージ形式の標準として最新のWCOデータモデルを使用する」ことが明記されています。ddcustomslaw+1

要するに、「原産地情報(CO/自己申告)の”中身のデータ”を、WCOデータモデルという共通ルールで統一する」という流れが、公式に動き出したということです。企業サイドには、今後、原産地証明書・原産地申告のデータ項目の”共通化”と、ERP/通関システム/FTA管理システムとの”シームレス連携”を前提とした見直しが求められます。wcoomd+1

WCOデータモデルとは

概要

WCOデータモデル(WCO Data Model, WCO DM)は、通関や関連手続きでやり取りされるデータ要素を標準化した「共通辞書+設計図」です。対象は、輸出入申告、トランジット、許認可、電子インボイス、原産地証明など、”国境をまたぐ手続きのデータ”ほぼ一式をカバーします。バージョン4系列では、JSONやOpen APIなど最新の電子メッセージ形式との親和性が高められており、シングルウィンドウや各種プラットフォームと連携しやすい構造になっています。etradeforall+1

原産地情報に焦点を当てた背景

WCOは2023年に**「原産地証明書のデジタル化に関する研究(Study on the Digitalization of the Certificate of Origin)」**を公表しました。この研究は、84税関を対象とした調査から、紙と電子が混在し、eCOやデータ交換の仕組みも国ごとにバラバラという現状を明らかにしました。そこで、原産地証明プロセス自体をデジタル化し、国ごとにバラバラなデータ構造を共通化することを、デジタル通商・貿易円滑化の重点テーマに据えています。wcoomd+1

4.2.0における原産地情報標準化の進展

原産地証明書情報パッケージの追加

WCO DM 4.2.0の最大トピックの一つが、**原産地証明書データセット(Certificate of Origin Information Package)**の組み込みです。このパッケージは、原産地規則技術委員会(TCRO)が整理したCO用データセットを基礎としています。各国当局が発行する電子原産地証明(eCO)について、証明書番号、発給機関、発給日、輸出者・輸入者情報、品目情報(HS、品名、数量、価格など)、原産地国、原産地基準(CTC/RVC/WO等)、FTA名・適用条項などを共通のデータ項目&コード体系で表現できるように設計されています。aduananews+2

これにより、「国Aが発行したeCOデータを、国Bの税関がそのままシステムに取り込める」という”機械可読な世界標準”を目指しています。ddcustomslaw+1

相互接続フレームワークとの連動

2025年10月の**「原産地証明相互接続フレームワーク(Interconnectivity Framework for Certificates of Origin)」**が、このデータモデルを”実戦投入”するための設計図になっています。mag.wcoomd+1

主な内容は以下の通りです:mag.wcoomd+1

法的枠組み:税関間でCOデータをやり取りするための合意・法的根拠を整備します。ddcustomslaw

ビジネスプロセスモデル:多くの国が既に採用している「Pushモデル」を標準と位置付けています。Pushモデルでは、輸出国でCO発給後、そのデータを輸出当局が輸入国税関に”先送り”し、輸入国は輸入申告時に即座に真偽確認・照合が可能になります。mag.wcoomd

データセットと技術仕様:COデータ交換のためのデータ要素セットとして、WCOデータモデルに基づく「Derived Information Package(DIP)」を策定しました。交換されるデータ要素・データ構造・電子メッセージ形式の標準として、最新バージョンのWCOデータモデルを用いることが明記されています。ddcustomslaw+1

自己申告への拡張:付属書では、半自動Pullモデルおよび原産地自己申告(Self-Declaration of Origin)にも適用できるビジネスモデルを提示しており、将来的には自己申告データも同じWCO DMベースで標準化される方向が示されています。wcoomd+1

企業への具体的インパクト

「様式」から「データ」へのシフト

これまでは、FTAごとに異なるCO様式(紙/PDF)や、各国・各商社が独自フォーマットの原産地申告書を使用するといった”フォーマットの多様性”が前提でした。今後は、**「どの様式か」よりも「どんなデータ要素を、どのコード体系で持っているか」**が問われます。mag.wcoomd+3

例えば、OriginCriterion=”WO” / “CTH” / “RVC40″などのコード化、FTAや協定番号をコードで表現、原産地国コード(ISOコード)とHS Version(2002/2007/2012/2017/2022…)の明示などが求められます。企業は、ERPの品目マスタ、FTA原産地管理システム、通関システムの間で、同じ”原産地データ要素”を一貫して管理する体制が必要になります。wcoomd+2

税関向けと取引先向けデータの統合

WCO DMはもともと通関・当局向けのデータ標準ですが、今回CO・自己申告データがそこに乗ることで、税関に送る原産地データと取引先(顧客・サプライヤー)とやり取りする原産地証明・自己申告データのギャップが小さくなります。結果として、サプライヤー原産地証明のフォーマットも、将来的にはWCO DMにかなり似通ったデータ項目構成になる可能性が高くなります。wcoomd+1

システム統合・API連携の容易化

WCO DM v4系列は、JSONやOpen APIを前提とした実装を意識して設計されており、複数国税関・複数プラットフォームとのAPI連携をしやすくする構造になっています。通関業者やプラットフォームが「WCO DM 4.2.0準拠のeCO API」を提供すれば、それを前提にシステムを組むことでマルチ国対応の”共通インターフェース”になり得ます。FTA管理ツール・社内HS/原産地判定ツールも、WCO DMのCO/原産地関連要素を内部データモデルに取り込んでおけば、将来の当局連携やプラットフォーム接続がスムーズになります。wiki-datamodel.wcoomd+2

コンプライアンス・監査の高度化

Pushモデル+標準データにより、輸出時点のCO情報がそのまま輸入国税関システムに記録されるため、紙ベースに比べ、事後検認・監査での照合・追跡が格段に容易になります。企業にとっては、「税関に提出した情報」と「社内原産地管理台帳」の不一致が、データレベルですぐ露呈する可能性が高まります。逆に言えば、最初から同じデータモデルで一貫管理しておけば、監査時に非常に有利です。mag.wcoomd+1

日本企業が今からできる準備

短期(〜1年):情報収集とギャップ把握

自社の原産地データ項目を棚卸しし、COフォーム、サプライヤー原産地証明、自己申告書、ERPマスタ項目を一覧化します。WCO DM 4.2.0のCO関連項目とのマッピングを行い、「どの項目が足りないか/表現の仕方が違うか」を把握しておくことが重要です。また、RCEP、日EU EPA、CPTPP、ATIGA e-Form Dなど、主要FTAの電子CO/自己申告の動向をチェックし、既に電子プラットフォームがある枠組みでは、今後WCO DMとの整合がテーマになり得ることを認識しておきます。wcoomd+2

中期(1〜3年):システムと業務プロセスの整備

ERP・原産地管理システムの”原産地データモデル”を再設計し、最低限、HSコード+バージョン(HS2022など)、原産地国コード(ISO)、原産地基準(CTH/RVC/WO等)のコード化、適用FTA・条文番号、関連CO番号・発給機関などを構造化データとして管理する方向へ移行します。通関業者/ソフトウェアベンダーに、「今後WCO DM 4.2.0(特にCOパッケージ)に対応する予定はあるか」をヒアリングし、サプライヤーへの要求仕様も見直します。サプライヤー原産地証明を、将来的にWCO DM準拠のデータ要素に近づけることを想定し、フォーマットや入力項目の”将来像”を共有しておくことが望ましいです。ddcustomslaw+2

長期(3年〜):税関・国際プラットフォームとの直接連携

各国税関・地域プラットフォームが、WCO Interconnectivity Frameworkに沿ってeCOデータ交換を進めると、民間企業にも、原産地情報をAPI経由で送受信し、当局側のCOデータを自社システムに自動取込みするといったビジネスモデルが現実味を帯びてきます。その際、社内データがWCO DMベースで整理されている企業ほど、連携コストが低く有利です。mag.wcoomd+1

留意点

採用は各国の判断であり、スピードは国ごとに異なります。WCO DM 4.2.0はあくまで「標準」の提供であり、実際にいつ・どこまで採用するかは各税関の判断です。既に運用中の国・地域のeCOシステム(例:ASEAN ASW、EUの各種システムなど)が、どのタイミングでWCO DM 4.2.0と整合を取るかは今後の議論となります。wcoomd+3

自己申告の標準化はこれから本格化します。フレームワークにはSelf-Declaration of Originも含まれていますが、各FTAの法制度側の変更(様式改訂や条文修正)が伴うため、時間を要する可能性があります。wcoomd+1

企業にとっては「早く動きすぎるリスク」と「出遅れリスク」のバランスが重要ですが、“データとしての原産地情報を構造化・一貫管理する”という方向性は確実なので、社内のマスタ整備・項目の標準化だけ先行して進めておくのは合理的です。wcoomd+1

まとめ

WCO DM 4.2.0は、「原産地情報の世界共通のデータ仕様書」を提示したアップデートです。これにより、原産地証明・自己申告・税関間情報交換の”デジタル土台”が統一方向に動き始めたといえます。日本企業としては、原産地情報を「紙フォーム」ではなく「標準データ項目」として設計し直し、ERP・原産地管理・通関システムを”同じ原産地データモデル”でつなぐという中長期のデータ戦略が重要になります。customstrade+4

  1. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2025/july/world-customs-organization-releases-data-mode.aspx?p=1
  2. https://aduananews.com/en/la-oma-lanza-la-version-4-2-0-de-su-modelo-de-datos-y-avanza-en-la-digitalizacion-de-los-procesos-aduaneros/
  3. http://www.ddcustomslaw.com/index.php?option=com_content&view=article&id=1050%3Awco-unveils-digital-framework-for-sharing-certificates-of-origin&catid=1%3Aultime&Itemid=50&lang=en
  4. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2023/december/embracing-digital-evolution-wco-unveils-a-study-on-the-digitalization-of-the-certificate-of-origin.aspx
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  9. https://mag.wcoomd.org/magazine/wco-news-103/lomd-publie-une-etude-sur-la-numerisation-du-certificat-dorigine/
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  11. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2025/july.aspx
  12. https://www.facebook.com/WCOOMD/posts/-advancing-the-digitalization-of-customs-processes-wco-releases-data-model-versi/1167321625436238/
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  18. https://www.vatupdate.com/2023/12/14/embracing-digital-evolution-wco-unveils-study-on-the-digitalization-of-the-certificate-of-origin/
  19. https://customsbridge.ai/the-digital-revolution-of-customs-certificate-of-origin/