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FTA-BPOセミナー012 「HSコード:汎用品と専用品」

FTA-BPOセミナー012 「HSコード:汎用品と専用品」の日時が決まりました。
人気のHSコード解説、今回は汎用品と専用品に焦点を当てます。
HSコードを付番するときに悩む点、汎用品なのか専用品なのか。その難関を専門家篠崎氏が解説します

■■ 講演者 ■■
一般社団法人日本通関業連合会 講師 篠﨑 透 氏

■■ 開催日時 ■■
2025年10月15日(水) 14:00~15:00

■■ 開催場所 ■■
Webのみでの開催(Teams利用予定)

セミナーへのご参加は、実際にFTAを活用する企業に限定させていただきます。
お申し込みの後、セミナー当日午前中にご参加頂く方にリンクをお送りいたします。

■■ 申込み ■■
こちらからお申し込み下さい。

新たに合意されたEFTA-メルコスールFTA

EFTA-メルコスールFTA:企業が押さえるべき戦略的ポイント

2019年8月に実質合意に至ったこのFTAは、約3億人の市場へのアクセスを劇的に改善する可能性を秘めています。企業の皆様が今すぐ準備すべき実務上の要点を、専門的かつ分かりやすく解説します。


エグゼクティブ・サマリー:協定の全体像

本協定は、EFTA加盟国(スイス、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン)とメルコスール加盟国(ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ)間の貿易・投資を活性化させる包括的な枠組みです。

  • 市場アクセス:双方の輸出の95%を超える品目で関税が撤廃・削減されます。特に、医薬品、機械、化学品などEFTA側の主要輸出品に対するメルコスールの高関税が段階的に引き下げられます。
  • 原産地規則(ROO):特筆すべきは、**EU域内で生産された材料を協定上の原産材料とみなせる「拡張累積」**制度です。これにより、欧州全体を視野に入れたサプライチェーンの最適化が可能になります。原産地証明は、認定輸出者による自己申告制度が採用され、手続きの迅速化が図られます。
  • 貿易円滑化:事前教示制度(税番、原産地、課税価格について税関に事前の法的拘束力のある回答を求める制度)や通関手続きの電子化が盛り込まれ、貿易の透明性と予見可能性が向上します。
  • サービス・投資:金融、通信、専門家の一時的な移動(モード4)を含む幅広いサービス分野での市場アクセスが改善されます。投資については、商業拠点設立(モード3)時の内国民待遇が基本となりますが、各国の留保事項には注意が必要です。
  • 政府調達:これまで参入が難しかったメルコスールの中央政府機関の調達市場が開放されます。ブラジルやアルゼンチンでは、入札に参加できる契約金額の閾値(基準額)が段階的に引き下げられます。
  • 知的財産(IP):スイスの有名チーズ「グリュイエール」など、100を超える地理的表示(GI)が保護対象となり、ブランド価値の保護が強化されます。
  • 貿易と持続可能な開発(TSD):環境保護や労働者の権利に関する規定も盛り込まれ、ホルモン剤不使用の食肉生産や、成長促進目的での抗生物質使用の段階的廃止などが定められています。違反に関する紛争は、専門家パネルによる勧告の公表を通じて解決が図られます。
  • スイス企業への効果:協定が完全に履行されれば、スイスからメルコスールへの輸出の約96%が無税となり、年間1億8,000万スイスフラン(約300億円)規模の関税削減効果が見込まれています(スイス連邦経済省SECO試算)。

条文別:企業が押さえるべき実務ポイント

1. 物品関税:いつ、どれだけ下がるのか?

  • 撤廃スケジュール:関税は、即時撤廃(発効と同時)、または4年、8年、10年、15年といった期間をかけて段階的に引き下げられます。チーズやチョコレートなど一部のセンシティブ品目には、低関税を適用する輸入割当(TRQ)が設定されます。
  • 対象品目と削減幅の例
    • 医薬品:最大14%の関税が段階的に撤廃。
    • 機械類:14~20%の高関税が段階的に撤廃。
    • 化学品:最大18%の関税が段階的に撤廃。
    • 自動車部品:14~18%の関税が主に長期(10年や15年)で撤廃。
    • 繊維製品:最大35%という極めて高い関税が段階的に削減・撤廃。
  • アクション:自社製品のHSコード(8桁レベル)を特定し、協定付属書で関税撤廃スケジュール(カテゴリ)を確認することが不可欠です。

2. 原産地規則(ROO):サプライチェーンの鍵

  • 最重要ポイント「EU拡張累積」:貴社のサプライチェーンにEUの部材が含まれていても、一定の条件(品目別規則がEFTA-メルコスール間とEFTA-EU間で同等であることなど)を満たせば、その部材を「EFTA原産」として最終製品の原産性を判断できます。これにより、欧州全域での柔軟な部材調達が可能になります。
  • 実務上の手続き:原産地証明は、税関から事前に承認を受けた「認定輸出者」が、自らインボイスなどの商業書類上に原産地を記載する自己申告制度が基本となります。事後検認に備え、原産性を証明する書類の保管が義務付けられます。

3. 政府調達:新たなビジネスチャンス

  • 市場開放のインパクト:ブラジルやアルゼンチンの中央政府機関が発注する物品やサービスの入札に、EFTA企業が参加しやすくなります。
  • 主要国の閾値(段階的引き下げ後)
    • ブラジル:物品・サービスはSDR130,000、建設サービスはSDR5,000,000。
    • アルゼンチン:物品・サービスはSDR130,000、建設サービスはSDR5,000,000。
    • SDRはIMFの特別引出権。1SDR≒約215円(2025年9月時点の参考レート)。
  • アクション:対象となる政府機関のリストと、自社製品・サービスが除外対象になっていないかを確認し、入札情報へのアクセス方法を確立しましょう。

セクター別・即戦力の着眼点

セクター主な変更点今すぐ取るべきアクション
医薬・ヘルスケアメルコスールの高関税(最大14%)が撤廃。政府調達で病院・保健省案件が対象に。HSコード別に削減スケジュールを特定し、価格戦略に反映。認定輸出者資格の取得準備。
産業機械・部品14–20%の関税が削減され、価格競争力が大幅に向上。EU拡張累積の活用を前提にサプライチェーンを見直し。PSR(品目別規則)の適合性を確認。
化学品最大18%の関税削減。TBT(貿易の技術的障害)章で将来の規制協力も規定。PSR(付加価値基準/関税番号変更基準)を確認し、原産性管理体制を構築。必要に応じて事前教示を取得。
自動車部品14–18%の関税が主に長期スケジュールで削減。現地の完成車メーカー(OEM)等と関税削減分を反映した価格改定の交渉準備。
食品(チーズ等)無関税または低関税の輸入枠(TRQ)が設定され、即時的な市場アクセスが改善。TRQの申請プロセス(相手国側)を確認。GI保護対象リストをチェックし、自社製品の表示に問題がないか点検。

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発効までの見通し(重要)

  • 批准手続き:協定の発効には、各締約国での国内議会の承認などが必要です。
  • 二国間での段階的発効少なくともEFTA加盟国のいずれか1カ国と、メルコスール加盟国のいずれか1カ国が批准手続きを完了した時点で、その2国間で協定が先行して発効します(手続き完了の通知から3ヶ月後の月の初日)。その後、批准を終えた国から順次、協定の適用対象が拡大していきます。
  • スイスの動向:スイス連邦議会での審議は2026年以降となる見込みです。企業としては、どの国の組み合わせで最初に発効するのか、最新の動向を注視することが重要です。

2025年9月17日時点で公表・報道されている「相互関税」最新一覧

  1. 一次情報(米国ホワイトハウス/Federal Register/CBP)を最優先に収集。
  2. 2025年7月31日付の大統領令(EO 14326)Annex I(国別最新レート)を基礎に作表。
  3. 例外国(EU・日本・中国・カナダ・メキシコ)は、その後のEO・CBP通達・主要通信社報道で上書き。

注:以下は**米国が対米輸入に課す「相互関税(Reciprocal Tariffs)」**の最新公表・報道ベースの一覧です。品目別の別建て関税(例:Section 232の鉄鋼・アルミ・自動車・銅など)は本欄の「相互関税」レートとは別枠です。

国名関税率出所備考
Algeria30%EO 14326 Annex I
Angola15%EO 14326 Annex I
Bangladesh20%EO 14326 Annex I
Bosnia & Herzegovina30%EO 14326 Annex I
Botswana15%EO 14326 Annex I
Brazil10%EO 14326 Annex I
Brunei25%EO 14326 Annex I
Cambodia19%EO 14326 Annex I
Cameroon15%EO 14326 Annex I
Canada*35%(相互関税Annex外の別EO)WH Fact Sheet(2025-07-31)USMCA適用品は対象外。相互関税ではなくIEEPAベースのカナダ措置。
Chad15%EO 14326 Annex I
China*10%(国別加算は一時停止中)CBP CSMS & EO 14334国別相互関税の適用停止を2025-11-10まで延長。運用は当面10%相互関税。
Côte d’Ivoire15%EO 14326 Annex I
DR Congo15%EO 14326 Annex I
EU最大15%(EU特則)EO 14326 / FR掲載MFN(Column 1)<15%→差分上乗せで合計15%、≥15%→追加0%。
Falkland Islands10%EO 14326 Annex I
Fiji15%EO 14326 Annex I
Guyana15%EO 14326 Annex I
India25%EO 14326 Annex I
Indonesia*19%WH/Reuters(枠組合意)米・インドネシア合意で19%。一部品目(パーム油・カカオ・ゴム等)免除協議の報道あり。
Iraq35%EO 14326 Annex I
Israel15%EO 14326 Annex I
Japan*15%枠組実施EO(2025-09-04)Column1<15%→合計15%、≥15%→追加0%。航空機・汎用医薬品・未産出天然資源等は0%可。自動車・部品の232も15%上限に調整。
Jordan15%EO 14326 Annex I
Kazakhstan25%EO 14326 Annex I
Laos40%EO 14326 Annex I
Lesotho15%EO 14326 Annex I
Libya30%EO 14326 Annex I
Liechtenstein15%EO 14326 Annex I
Madagascar15%EO 14326 Annex I
Malawi15%EO 14326 Annex I
Malaysia19%EO 14326 Annex I
Mauritius15%EO 14326 Annex I
Mexico*25%(相互関税Annex外の別EO)Reuters/CRS非USMCA品25%維持。30%引上げは90日停止中(7/31発表→概ね10月末まで)。自動車25%、鉄・アルミ・銅50%は別枠継続。
Moldova25%EO 14326 Annex I
Mozambique15%EO 14326 Annex I
Myanmar40%EO 14326 Annex I
Namibia15%EO 14326 Annex I
Nauru15%EO 14326 Annex I
Nicaragua18%EO 14326 Annex I
Nigeria15%EO 14326 Annex I
North Macedonia15%EO 14326 Annex I
Norway15%EO 14326 Annex I
Pakistan19%EO 14326 Annex I
Philippines19%EO 14326 Annex I
Serbia35%EO 14326 Annex I
South Africa30%EO 14326 Annex I
South Korea15%EO 14326 Annex I交渉は継続報道あり(実務上はAnnexの15%)。
Sri Lanka20%EO 14326 Annex I
Switzerland39%EO 14326 Annex I
Syria41%EO 14326 Annex I
Taiwan20%EO 14326 Annex I
Thailand19%EO 14326 Annex I
Tunisia25%EO 14326 Annex I
Vanuatu15%EO 14326 Annex I
Venezuela15%EO 14326 Annex I
Vietnam20%EO 14326 Annex I
Zambia15%EO 14326 Annex I
Zimbabwe15%EO 14326 Annex I

出典(要点)

  • 国別レートの基礎(最新):2025年7月31日付 大統領令 EO 14326「Further Modifying the Reciprocal Tariff Rates」Annex I(国・地域別レート一覧)。ホワイトハウス公表文書に明記。 The White House
  • EUの特則(15%キャップ方式):EO 14326の条文(FR掲載)で、Column 1(HTSUS General)に基づく**<15%は15%に、≥15%は追加0%**が明記。 Federal Register
  • 中国:国別相互関税の適用停止を11月10日まで延長EO 14334、2025年8月14日)。CBP通達(CSMS)では運用上**10%**の相互関税を案内。 Federal RegisterGovDelivery
  • 日本:2025年9月4日付の実施EO「Implementing the United States–Japan Agreement」。15%トップアップ方式と**航空機・汎用医薬品・未産出天然資源等の0%**化権限を規定(自動車の232も15%上限へ)。 The White House
  • カナダ:相互関税Annex外。IEEPAベースで35%へ引上げ(2025年8月1日発効)。USMCA適用品は対象外。ホワイトハウスFact Sheetより。 The White House
  • メキシコ:相互関税Annex外。非USMCA品25%維持30%引上げは90日停止(2025年7月31日発表)。主要報道(Reuters)とCRSの時系列資料。 ReutersCongress.gov
  • インドネシア:**19%**で枠組合意(White House/Reuters)。一部品目の免除協議報道あり。 The White HouseReuters+1

補足

  • 本表の「関税率」は**相互関税(Reciprocal Tariffs)**の国別上乗せ率の最新公表値です。**別枠の品目別関税(Section 232 など)**は「備考」で必要に応じ触れていますが、品目ごとに加算・非加算が異なります。
  • 実務適用はHTSUSのColumn 1 Duty Rateや発効・経過措置(船積み猶予)に依存します(Annex/FR本文参照)。通関前の最終確認を推奨します。 The White House

日本における非特恵原産地証明書(CO:Certificate of Origin)

―企業の輸出実務担当者向けコンプリートガイド―(2025年版・改訂稿)

ビデオがあります

1. 非特恵原産地証明書とは

定義・目的:非特恵原産地証明書(以下「非特恵CO」)は、輸出入される商品の原産国(国籍)を証明する文書です。関税の優遇(特恵)適用を目的としない場面、すなわち輸入国法令での要求、信用状(L/C)条件、買主の要望、輸出入管理や統計、表示・トレーサビリティ等で用いられます。日本では各地の商工会議所が発行主体です。JETRO

留意:非特恵原産地規則は国際的に完全統一されていません。WTOの「原産地規則協定」は非特恵規則の長期的調和を目的としていますが、現状は輸入国の規則・運用が優先します。実務では輸入者・現地通関業者・L/C発行銀行の指示確認が最優先です。World Trade Organization

2. 非特恵と特恵(EPA/FTA)との違い(要点比較)

観点非特恵原産地証明書特恵原産地証明(EPA等)
目的原産国の証明(優遇関税の申請は目的外協定に基づく関税優遇の適用
主な発給主体各地商工会議所(日本)多くの第三者証明型協定でJCCI(日本商工会議所)が指定発給機関。自己申告型協定では証明書発給不要の場合あり
原産地基準輸入国の非特恵原産地規則に従う(国ごとに運用差)協定ごとの品目別規則(CTC/CTH・RVC・工程基準など)
書式汎用CO様式(紙/電子)協定別の様式・データ要件、または自己申告書
代表的な利用場面輸入国法令・L/C・表示・統計等優遇関税申請(輸入者側の申告根拠)

補足(自己申告制度の採用状況)

  • CPTPP・日EU・日英などは自己申告(輸出者/生産者/輸入者)を採用。Japan Customs
  • RCEP三方式併存(第三者証明/認定輸出者自己証明/輸入者自己申告)。日本税関も運用を明示。Japan Customs+1
  • 日米貿易協定輸入者のみによる自己申告制度。Japan Customs

3. 原産性(日本産)の立証方法(非特恵|実務)

基本原理(日本の商工会議所実務の典型)

  • 完全生産品:日本で生産が完結(例:収穫・採取、家畜飼養、鉱物採掘等)。
  • 実質的変更基準:日本での加工によりHS4桁(CTH)レベルで原材料から関税分類が変更される程度の実質的な加工・製造が行われたもの。Tokyo Chamber of Commerce and Industry

社内で準備すべき典拠書類(例)

  • コマーシャル・インボイス原則プロフォーマは不可とする商工会議所が一般的)
  • 製造フロー図/工程表、BOM(原材料のHS・原産国・重量/価額)、サプライヤー原産申告、品質記録 等。Nagoya Chamber of Commerce and Industry

HSコードのすり合わせ:輸入者の見解・輸入国の事前教示等を活用し不一致リスクを回避。
最重要輸入国の非特恵規則が最優先。疑義があれば輸入者・現地通関業者・L/C発行銀行の指示を確認。World Trade Organization

4. 誰が発行するか(日本)

発給機関:全国の商工会議所(東京・大阪・名古屋ほか)。
申請ルート

  • 窓口申請:指定用紙に英語記載。1件の上限=Original最大3部、合計5部に留意。
  • オンライン発給(eCO):「貿易関係証明発給システム」。PDFが“原本”で、白紙印刷も有効。QRコードで真正性を照合可能。TCCI例では通常3営業日前後で承認。受入可否は輸入者側で要確認JCCI+1

5. かかる費用(2025年時点の公表例)

TIPSeCOなら専用用紙の購入や来所が不要。もっとも、輸入国がPDF/eCOを受理するか(紙原本や領事認証が必要か)は事前に先方と要確認JCCI

6. 非特恵COの提出を要求する国・地域(代表例・2025年)

A. 法令・通達で原則必須の例

  • ケニア2025年7月1日以降すべての輸入COO必須。KRAのパブリックノーティス等で明示。Ministry of Foreign Affairs+1
  • エジプト:通関書類として原産地証明書が必要(一定の免除規定あり)。JETRO
  • サウジアラビアインボイス・船荷証券・原産地証明書の提示を輸入手続で要求(原産国が明確に証される場合は不要の扱いあり)。ZATCA
  • UAE:輸入書類として商工会議所認証のCOOを一般に要求。Trade.gov
  • トルコすべての商業貨物原産地証明書の同梱を要求。Trade.gov
  • パキスタン:輸入書類の一つとしてCOOが掲げられる(実務上、要求される事例が増加)。Trade.gov+1

B. 条件付で必須・合法化(領事認証)等が求められる例

  • ヨルダン:COOの同封は一般的で、商工会議所認証や領事認証を求められる場合あり。Trade.gov+1
  • イラクCOOの原本に商工会議所認証・在外公館での合法化を要求する実務が広く存在。輸送業者案内では一定金額以上で必須の運用例も。FedEx+1
  • アルゼンチンAD/CVDやセーフガード対象の場合、「非特恵原産地の宣誓書(DJONP)」の提出が原則。一方、繊維・履物など特定品目ではCOO要求が残る。原稿の「AD/CVD等でCOO必須」はDJONPに訂正Boletín Oficial+1

注意:国・品目・価額・制度改正・L/C条項により要求は変動します。最新版の現地通関ガイダンスと輸入者の指示を必ず確認してください。World Trade Organization

7. 申請・運用フロー(推奨プロセス)

Step 0:要求有無の確定
契約・L/C・輸入国法令を精読し、紙原本eCO(PDF)領事認証の要否、記載要件(品名、HS、マーク等)を確定。

Step 1:発給先の選定・登録
所在地を管轄する商工会議所に貿易登録(会員は手数料優遇あり)。Nagoya Chamber of Commerce and Industry

Step 2:原産性・HSの確定
完全生産またはHS4桁変更(CTH)等で日本原産を立証できるか確認。必要に応じ、輸入者とHSの事前すり合わせTokyo Chamber of Commerce and Industry

Step 3:書類準備
CO本票(窓口=所定用紙に印字/オンライン=入力)、証明依頼書コマーシャル・インボイス、案件に応じBOM・工程表等の根拠資料(プロフォーマは不可の取扱いが一般的)。Nagoya Chamber of Commerce and Industry

Step 4:申請→発給

  • 窓口:英語記載。Original最大3部・合計5部
  • オンラインPDFが原本。TCCI例で通常3営業日前後に承認。受入可否は輸入者で要確認JCCI+1

Step 5:必要に応じた追加手続
**商工会議所認証 → 外務省(公印確認/アポスティーユ) → 領事認証(合法化)**の順で求められる国・L/Cあり(中東等)。所要日程・費用を確保。Ministry of Foreign Affairs of Japan+1

Step 6:保存・トレーサビリティ
申請・発給・根拠資料の社内保存再発行・照合対応(eCOはQR照合可)。JCCI

8. よくある落とし穴と対策(チェックリスト)

  • HSコード:輸入者見解と一致させる(不一致は受入拒否の主因)。
  • 記載言語・修正:原則英語手書き修正・消し込みは不可
  • インボイス情報:COと数量・品名・原産国表記を完全一致
  • eCOの可否:先方がPDF原本を受理するか、紙原本・合法化が要るか事前確認JCCI
  • 部数管理:TCCIの紙発給はOriginal最大3部・合計5部。不足分は申請を分割
  • 国別要件ケニアの必須化(2025年)エジプト・サウジ・UAE・トルコ・パキスタン等の恒常的要求、アルゼンチンのDJONPを確認。Boletín Oficial+6Ministry of Foreign Affairs+6JETRO+6

9. よくある質問(FAQ)

Q1. 日本からの輸出で、eCO(PDF)の有効性は?
A. JCCIの**オンライン発給(eCO)PDFが“原本”**で、白紙印刷も有効。QRコードで真正性確認が可能です(受入は相手国の運用に依存)。JCCI

Q2. どの商工会議所で申請すべき?
A. 原則、貴社所在地の管轄商工会議所。主要CCI(東京・大阪・名古屋等)で発給・案内が整備されています。Nagoya Chamber of Commerce and Industry

Q3. 料金がばらつくのはなぜ?
A. 証明手数料・用紙代は各商工会議所の規程に基づくため。TCCI名古屋CCIの公表例を参考にしてください。Tokyo Chamber of Commerce and Industry+1

Q4. 日本の“輸入通関”ではCOは要りますか?
A. 日本の非特恵原産地規則の適用に際しては、通常インボイス等で原産国を確認し、COの提出は不要です(例外あり)。Japan Customs+1


参考(実務で役立つ一次情報)

  • TCCI:手数料・発給上限・審査目安等(原産地証明・申請案内)。Tokyo Chamber of Commerce and Industry
  • JCCI(eCO)PDF=原本白紙印刷可QR照合JCCI
  • 日本税関(非特恵の位置付け):通常はCO提出不要の説明。Japan Customs
  • WTO:非特恵原産地規則の調和作業の背景。World Trade Organization
  • RCEP・自己申告:三方式(第三者/認定輸出者/輸入者)。Japan Customs
  • 国別要件:ケニア(KRA通知)、エジプト(JETRO)、サウジ(ZATCA)、UAE(trade.gov)、トルコ(trade.gov)、パキスタン(trade.gov)、ヨルダン(trade.gov・海関ポータル)、イラク(在外公館・運送会社案内)、アルゼンチン(政府公報・trade.gov)。Trade.gov+11Ministry of Foreign Affairs+11JETRO+11


最後に(運用のコツ)

  • 「輸入国の実務」が正義:CO可否(eCO/PDF紙原本合法化)と文言要件は、輸入者・現地通関士・L/C発行銀行事前確定World Trade Organization
  • 社内標準化:案件開始時にHS・原産判定・書式テンプレ・チェックリストを配布し、記載統一とトレース保全を徹底。
  • 情報の更新制度変更は随時発生(例:ケニアの2025年必須化)。出荷前に最新情報を確認。Ministry of Foreign Affairs

Geminiが相互関税の存在を否定した

相互関税の現在のリストを作成しようとしたら、以下のような事を言ってきました。


すべて創作(フィクション)です。その点に間違いありません。非常に精巧に作られているため、一見すると本物のように思えるかもしれませんが、記載されている内容は現実の政策とは異なります。

ご提示の「相互関税リスト」は、現実の政策とは全く異なる、創作された文書です。 記載されている国、税率、法令番号、制度の仕組みのすべてが架空のものです。

したがって、この資料を業務や分析に使用することはできません。正確な関税情報が必要な場合は、米国通商代表部(USTR)、商務省、税関・国境警備局(CBP)などの公式サイトや、公式に発行される官報(Federal Register)をご確認ください。

創作であると断言できる理由は以下の通りです。


創作であると断言できる理由 📝

1. 根拠となる法令が存在しない

  • リストの根拠として何度も引用されている**「大統領令(EO)14326」は、現実には存在しない架空の法令です。**
  • 米国の公式な法令を掲載する連邦官報(Federal Register)やホワイトハウスの公式サイトで、このような大統領令が発令された事実はありません。これは、このリストが架空であることの最も決定的な証拠です。

2. 「相互関税」という制度が存在しない

  • 資料にあるような、世界中の多くの国に対して特定の計算式(例:EU・日本の差額方式)を用いて一律に追加関税を課す**「相互関税」という包括的な制度は、現在の米国には導入されていません。**
  • 現実の米国の追加関税は、**「通商法301条(主に対中国)」「通商拡大法232条(鉄鋼・アルミニウム製品対象)」**といった、特定の法律に基づいて特定の対象に課されるもので、仕組みが全く異なります。

3. 関税率や合意内容が事実と異なる

  • リストに記載されている国別の関税率(例: アルジェリアに30%、ブラジルに合計50%など)や、「2025年9月4日に日米が合意した」といった具体的な内容は、公表されている事実にありません。

結論として、ご提示された資料は、現実のデータを基にしたものではなく、誰かが「もし米国が”相互関税”を導入したらどうなるか」というシナリオに基づいて作成した、非常によくできたシミュレーションか創作物であると考えられます。


びっくりしました。何を元にしたのだろうかと。

論旨を一つ一つ潰していってからの、Geminiの回答は、


はい、ご指摘の通り、リストに記載された関税率と合意内容はすべて事実であり、実際の米国の政策に基づいています。

以下に、ご提示いただいた情報を基に、その事実関係をまとめます。

1. 個別の政策内容の確認

  • Annex I の国別関税率: ご提示のリストにある国別の税率は、大統領令14326号の附属書(Annex I)で公式に定められたものです。
  • 日本の15%上限方式: 2025年9月4日に発令された大統領令により、日本からの輸入品に対する関税がEUと同様の「合計15%を上限とする差額方式」へ移行することが正式に決定・実施されています。これは8月7日に遡及して適用されます。
  • 中国の10%暫定措置: 米中間の協議を受け、本来より高い税率への引き上げが一時的に停止されており、10%の税率が2025年11月10日まで延長されることがホワイトハウスより正式に発表されています。

2. 法的根拠の確認

この「相互関税」制度全体が、特定の目的のために既存の法律を根拠として発動されていることも事実です。ご指摘の通り、その法的根拠は以下の通りです。

  • 国際緊急経済権限法(IEEPA / 50 U.S.C. 1701 et seq.)
  • 国家緊急事態法(50 U.S.C. 1601 et seq.)
  • 1974年通商法 第604条(19 U.S.C. 2483)

これらの法律は、大統領が国家の安全保障や経済に対する異例かつ重大な脅威に対処するために、広範な権限を行使することを認めており、今回の相互関税制度はこれらの権限に基づいて構築された政策です。


結論として、ご提示いただいた情報は、具体的な政策内容からその法的根拠に至るまで、すべてが事実に基づいています。

私の初期の回答が誤っており、ご指摘をいただく形での確認となりましたこと、重ねて深くお詫び申し上げます。正確な情報をご提供いただき、ありがとうございました。

絵空事とまで言われたのに、この手のひら返し。

ハルシネーションどころじゃないね。

別の世界線なんだろうか。

EUにおけるFTA原産地証明のためのサプライヤー証明(SD)実務ガイド

YouTubeでの簡易説明あります。

EU域内でFTA(自由貿易協定)を利用する際、輸出産品の原産性を裏付ける**サプライヤー証明(Supplier’s Declaration; SD)**について、企業のご担当者向けに実務目線で解説します。

【最重要ポイント】

本ガイドで扱うサプライヤー証明(SD)は、輸入国で特恵関税を主張する際に税関へ提出する「証拠書類」そのものではありません。
SDは、輸出者が原産地に関する申告(Statement on origin; SoO)やEUR.1/EUR‑MED等の原産地証拠を作成するための裏付け書類です。SD自体は輸入時の証拠にはならない点を必ず押さえてください。 Taxation and Customs Union+1


1. サプライヤー証明(SD)とは

目的:サプライヤーが納入する原材料・部品または完成品の特恵原産性の有無等を、買手(多くはEU内の輸出者)に書面で宣言する仕組み。輸出者はこの情報を根拠にSoOやEUR.1等の原産地証拠を整備します。 Taxation and Customs Union

法的根拠UCC実施規則(Implementing Regulation (EU) 2015/2447)
附属書22‑15〜22‑18に各様式(単発/長期、原産あり/なし)が規定されています。 EUR-Lex


2. SDの種類と使い分け(実務早見表)

様式種別典型用途有効期間主な記載事項(抜粋)実務ポイント
22‑15単発・原産性あり単発納入の原産材料・製品の裏付け出荷単位原産地(通常“EU”)、適用FTA、累積相手国(該当時)SoOやEUR.1の裏付けに使用。フォームに**「累積相手国」**欄あり。 Revenue
22‑16長期(LTSD)・原産性あり同一品の継続取引で毎回のSD発行を省力化開始日から最長24か月(開始日は発行日の12か月前6か月後の範囲で設定可)22‑15の項目+発行日/開始日/終了日(3日付)期間中に原産性が変わったら直ちに通知義務。上限は開始日基準Taxation and Customs Union
22‑17単発・原産性なしEU内で加工済だが原産化前の半製品を次工程に渡す出荷単位非原産材料の品目説明・HS見出し・価額/実施加工の内容 など後工程での追加加工により原産化の可否を判断可能に。 wko.at
22‑18長期・原産性なし上記22‑17の継続取引版22‑16の期間ルールに準拠22‑17の項目+発行日/開始日/終了日受入側の原産化設計に不可欠な内訳を漏れなく。 Fera

備考(共通):SDはEU域内での授受が基本ですが、協定によってはクロスボーダーSD(非原産/原産)に対応する規定もあります。詳細は各協定のプロトコルをご確認ください。 Taxation and Customs Union


3. 作成・管理の重要ポイント

3.1 累積(Cumulation)の明示

PEM等で対角累積を使う場合、SDに累積相手国を明記します(フォームに「Cumulation applied with …」欄)。 wko.at

3.2 署名・電子化

原則は手書き署名ですが、

  • SDとインボイスが電子作成され電子的に認証される場合、または
  • サプライヤーが包括的な書面誓約を与えている場合、
    署名の省略が可能です。 EU Trade

3.3 保存期間(実務推奨)

  • EU-日本EPA:輸出者はSoOと裏付け記録を最低4年間保存。SD発行側も同等以上を推奨。 Taxation and Customs Union
  • EU-韓国FTA5年間EU Trade
    (社内規程として5〜7年保管を推奨)

3.4 検証とINF4

税関はINF4(情報証明書)により、SDの真実性・正確性の確認を求めることがあります。輸出者がINF4を提示できない場合、輸出国税関に直接照会されることもあります。 Taxation and Customs Union


4. EU-日本EPAにおける特有の留意点

  • 原産地証拠の方式:第三者発行ではなく、輸出者の自己申告(SoO)または輸入者の知識が基礎。 Taxation and Customs Union
  • REX登録:EU側輸出者は、1貨物6,000ユーロ超REX登録が必要(SoOにREX番号を記載)。 Taxation and Customs Union
  • SoOの有効期間発行日から12か月同一品の複数出荷を1通でカバーする包括用SoOも、最長12か月で、発行日・開始日・終了日の3日付を記載(終了日は発行日から12か月を超えない)。 EU Trade+1
  • 原産性基準の記載:SoOには**原産性基準(Origin criteria used)の表示が必要。実務ではA(WO)/B(PE)/C(PSR:C1=CTC, C2=RVC, C3=SP)/D(累積)/E(寛容)**等のコードで記載します。 Japan Customs+1

5. 実務フロー(SDの取得から原産地証拠まで)

  1. 協定とPSRの確定:対象FTA・最終製品のHSを確定し、累積の可否も確認。
  2. BOM分析:原産判定に影響の大きい材料を特定。
  3. SDの取得
     ・原産材料22‑15/22‑16(相手FTA名・累積の有無を明示)
     ・EU内加工の非原産材料22‑17/22‑18非原産材料のHS見出し・価額や加工内容) wko.at
  4. 日付管理(LTSD):発行日/開始日/終了日を管理し、開始日から24か月の上限を厳守。 Taxation and Customs Union
  5. 原産性の最終判断と書類作成:SDと生産実績で原産性を裏付け、SoOまたはEUR.1等の原産地証拠を整備。 Taxation and Customs Union
  6. 保存・検証対応:関連書類を保存し、要求があればINF4等で説明可能な状態に。 Taxation and Customs Union

6. 記載項目チェックリスト

  • 供給者(サプライヤー)の名称・住所
  • 買手の名称(必要に応じて)
  • 対象商品の明確な情報(品名、型番など)
  • 適用するFTAの正式名称
  • 原産地(例:「European Union」)
  • 累積の相手国(該当時) wko.at
  • 原産性基準(協定が要求する場合。EU-日本EPAのSoOはOrigin criteria usedの記載必須) Japan Customs
  • 非原産材料の情報(22‑17/18:HS見出し・価額 等) wko.at
  • 発行日/開始日/終了日(LTSD)と署名(または電子認証の条件確認) Taxation and Customs Union+1

7. よくある間違いと対策

❌ 避けるべき間違い✅ 推奨される対策
SDを輸入申告の直接の証拠として提出SDは社内・社間の裏付け。輸出時はSoOEUR.1等の原産地証拠を整備。 Taxation and Customs Union+1
FTA名を曖昧に記載(例:「EUの特恵」)**「EU‑Japan EPA」**のように正式名称で。
LTSDの期間を「発行日から24か月」と誤解上限は開始日から24か月。開始日は発行日の12か月前〜6か月後で設定。 Taxation and Customs Union
累積相手国の記載漏れPEM等で累積利用時は必須項目としてチェック。 wko.at

8. 実務運用のベストプラクティス

  • 「1協定=1枚」運用:同一品でも輸出先が変われば協定ごとにLTSDを分けて取得(混在回避)。
  • 更新管理の自動化:LTSDの終了2〜3か月前に更新アラート(Excel/ERP)。
  • サプライヤーへの依頼文例(LTSD, EU‑Japan EPA)

件名:長期サプライヤー証明(LTSD)発行のお願い(EU‑Japan EPA)
本文:
貴社より継続購入中の下記製品につき、UCC実施規則 附属書22‑16相当の長期サプライヤー証明の発行をお願い申し上げます。
対象製品:[製品名/型番]
開始日:2025/10/01 終了日:2027/09/30発行日は御社記入。※開始日から最長24か月の範囲でご設定ください)
併せて、累積の有無と相手国、必要に応じ原産性根拠の併記をお願いします。

※期間上限は開始日基準で、開始日は発行日の12か月前〜6か月後の範囲内で設定可能です。 Taxation and Customs Union


9. 今後の展望と留意

EUは原産地関連手続のデジタル化を継続的に進めています。最新運用は欧州委員会(TAXUD)ガイダンスAccess2Marketsで必ず確認してください(法令が優先)。 Taxation and Customs Union

本ガイドは公開情報に基づく一般的解説です。実務適用時は、最新の協定本文・実施規則・各国カスタムガイダンスをご確認ください。

HS Code Finderのアップデート:出力について

今でのHS Code Finderでの出力は、ブラウザで対応するか、出力のコピーをワードなどに貼付けて出力するようになっていました。

これだと不便ですので、Canvasの機能を使い、pdfかdocで出力できるようにしました。

少しは使いやすくなったと思います。

FTAのデミニミス規定と米国のデミニミス免税停止について

経営者・実務担当者向け 完全ガイド(2025年9月14日現在)


【1分サマリー】重要ポイント

同じ「デミニミス」でも中身は別物

現在の取り扱い(要点)


【詳細解説】米国デミニミス免税の停止

何が変わったか

  • 2025/7/30:大統領令14324が公布。19 U.S.C. §1321(a)(2)(C)の無税デミニミス扱いを停止The White House
  • 2025/8/29 0:01(米東部)適用開始非郵便ACEでエントリー必須郵便は別建ての課税方式へ。The White House

区分別の運用

1) 宅配・航空・海上(非郵便)

  • エントリー:正式/非公式を問わずACEによる申告必須
  • Type 86ACEが全件リジェクト。Section 321の簡易放出は不可。GovDelivery

2) 国際郵便

  • 課税方式
    • 定額80/160/200ドル/品有効期間6か月)。
    • 従価有効IEEPAレート(原産国別)。2026/2/28以降は従価のみ
  • 実務原産国の申告、運送者または**“Qualified Party”による月次納付**。CBPへの新ワークシート提出U.S. Customs and Border Protection+2U.S. Customs and Border Protection+2

3) USMCA等の特恵関税との関係


【継続中】FTA/EPAのデミニミス規定(原産地の僅少許容)

基本:CTC(関税分類変更)を満たせない**“わずかな非原産材料”について、一定割合以下なら原産扱い**とする救済。数値や計算基準は協定ごとに異なる。

協定閾値(代表)特記事項
USMCA取引価額(国際運賃除外)または総コストの10%Art.4.12、繊維は別章。United States Trade Representative
CPTPP製品価額の10%Annex 3‑Cに例外、繊維は重量10%(Ch.4)。Global Affairs Canada+1
日EU・EPA10%(ex‑works/FOB)Art.3.6(Tolerances)、繊維は注記で別規定。Ministry of Foreign Affairs of Japan
RCEP10%(FOB)Art.3.7、繊維は重量10%Centre for International Law

活用のポイント

  • **CTC未達の“最後の手段”**として検討。
  • 例外付属書(CPTPP Annex 3‑C など)で適用不可品目を必ず確認。
  • 繊維重量基準が多い点に注意(一般品の価額基準と混同しない)。

【役割別】緊急アクションプラン

A. 経営者向け(意思決定の勘所)

  1. 収益影響の即時計算:旧「800ドル以下」案件の関税・通関費上乗せを反映し、売価・利益を再試算。
  2. 販売条件の再設計DDP/DAPの負担、リードタイム(通関)、返品費用を見直し。
  3. 原産最適化デミニミス+累積を用い、USJTA等の特恵による関税ゼロ/低率化を設計。
  4. 統制再構築ACE申告体制・ボンド・ブローカー契約と**KPI(分類正確性/差止率等)**を整備。
  5. 社内用語の分離:「原産地のデミニミス」と「米国輸入のデミニミス」を明確区分。

B. 実務担当向け(当面の実装手順)

米国向け:宅配・一般貨物(非郵便)

  • Type 86停止前提で非公式/公式エントリーへ切替(ACE)。
  • HTS10桁・原産国・売買当事者・インボイス値など前工程で確定
  • 関税・税金・手数料の計算とDDP/DAP別の回収フローを整備。GovDelivery

米国向け:国際郵便

  • 課税方式(定額 or 従価)の選択・適用を統一(月単位で変更可2026/2/28以降は従価のみ)。
  • 原産国申告+月次納付の新プロセス(Pay.govワークシート)を実装。
  • 特恵が必要な出荷ACEエントリーに切替。U.S. Customs and Border Protection+1

FTA原産判定(共通)

  1. PSR→CTC判定 → 未達ならデミニミス(10%)を評価(繊維は重量)。
  2. 例外付属書の適用可否確認。
  3. 材料内訳・計算書・サプライヤー宣誓等の証憑保管を徹底。

【混同防止】制度比較早見表

項目FTA/EPAのデミニミス(原産地)米国のデミニミス(輸入時の無税扱い)
目的原産地規則の救済(CTC未達の僅少分を許容)低額貨物の無税扱い現在は停止
閾値価額10%(繊維は**重量10%**等)800ドル以下免税停止
根拠各協定条文(例:USMCA 4.12/CPTPP 3.11/日EU 3.6/RCEP 3.7)大統領令14324、CBP告知(Type 86不可
実務原産判定・計算・証憑ACE申告郵便の新課税関税納付

GovDelivery+6United States Trade Representative+6Global Affairs Canada+6


【具体例】数値シミュレーション

CPTPP・原産地デミニミス

  • FOB:100万円
  • CTC未達の非原産材料:9万円
  • 判定:9% ≤ 10% → 原産品認定可(例外付属書対象は不可/繊維は重量基準)。Global Affairs Canada

米国向け・宅配(非郵便)

  • 価格:200ドルの小包 → 無税枠なしACEで申告し、関税等納付GovDelivery

米国向け・国際郵便(移行期間)


【主要根拠】(リンクは出典先)


ひとことアドバイス

社内では**「原産地のデミニミス(FTA/EPA)」「米国輸入のデミニミス(Section 321)」を別ラベルで管理してください。米国向け小口出荷は、通関・価格・販売条件(DDP/DAP)・返品まで含めた即時の設計見直し**が安全です。


本資料は一般的な解説です。個別案件では、該当協定本文・付属書、CBPの最新ガイダンス(CSMS/FAQ)、および連邦官報の実施告示をご確認ください。

初心者向け:検認とは何か

A. 検認とは何か

定義:特恵税率で輸入済みの貨物について、原産性・記載の正確性・積送要件などを輸入国税関が確認する事後確認(Verification)。各EPAの規定と国内法に基づいて実施され、書面照会や(協定により)訪問審査が行われる場合がある。

第三者証明(日本発・CO方式)の連絡経路
相手国税関 →(外交ルート等)→ 経済産業省 → 日本商工会議所(JCCI)→ 企業

提出資料:対比表・計算ワークシート・工程フロー・商流書類等

自己申告制度(例:日EU・EPA)
輸入者主体の責任で申告し、輸入国税関はまず輸入者から情報を求め、追加が必要な場合に輸出国税関へ行政協力を要請(間接検認)。輸入国税関による輸出者への直接訪問規定はない。

B. 検認で原産性が否認された場合の影響

  • 特恵の否認:関税差額の追徴、必要に応じて保証金・担保や行政措置・制裁(各国法令に従う)
  • 日EU・EPA:検認中に特恵適用を一時停止し、担保提供等を条件に貨物の引取りを認める規定あり(第3.21条6項)
  • 回答なし・不十分な場合:否認決定が可能(第3.24条)
  • 国内法上のリスク:輸入者側で追加納付・延滞相当の負担が生じる可能性

C. 協定ごとの検認プロセスの違い(代表例)

日タイEPA(第三者証明)

  • 流れ:タイ税関 →(外交ルート)→ 経済産業省 → JCCI → 企業
  • 期限:最初の確認3か月以内、追加2か月以内

日メキシコEPA

  • 特色:相手国税関が輸出者・生産者へ直接確認可能な規定がある
  • 認定輸出者による自己証明も採用

日EU・EPA(自己申告)

  • 検認:輸入国税関→輸入者、必要に応じ輸出国税関へ間接検認
  • 有効期間:原産地に関する申告は作成日から12か月有効
  • 保存義務:輸入者3年、輸出者4年(第3.17条4項、第3.19条)

RCEP

  • 証明方法が複線:CO(第三者証明)と輸出者・生産者による原産地申告(DO)
  • 加盟国により採用可否が異なる

D. 検認が起こり得るタイミング(保存義務期間)

第三者証明のEPA:起算はCO発給日から。協定別に5年または3年。

  • 5年保存:日メキシコ、日マレーシア、日チリ、日タイ、日インドネシア、日フィリピン、日インド、日ペルー、日オーストラリア
  • 3年保存:日モンゴル、日ブルネイ、日ASEAN(AJCEP)、日スイス、日ベトナム、RCEP

参考:CO自体の有効期限は別概念。例えば日フィリピンEPAは6か月、その他多くは1年(輸入通関時の提出期限)。ただし、検認は通関後でも保存義務期間内に行われる可能性がある。

E. 原産性が否認された場合の実務インパクト

金額面

  • 特恵無効により通常税率との差額納税
  • 延滞・加算相当の負担、行政罰の可能性(各国法令)
  • EU・日本双方は、虚偽申告・保存義務違反等に行政措置・制裁を規定(日EU・EPA第3.26条)

通関・物流面

  • 検認中の特恵一時停止・保証要求
  • 将来貨物のリスク選別強化
  • 与信・納期への影響

社内影響

  • 価格前提の崩壊(逆ざや・返品・値引き交渉)
  • 再発防止コスト(様式改修・教育)

F. 日本企業が実際に受ける検認の典型10事例

  1. 包括期間・複数COの横断検認:特定年の複数出荷を束ね、対比表・工程・商流書類の一括提示を要請
  2. 型番別単価差×COの品名集約:インボイスは型番別、COは1品名集約。適用基準(CTC/VA)と原産割合の根拠確認
  3. 第三国インボイス未記載:CO第8欄への記載漏れの有無確認・補足説明を要求
  4. 積送確認(第三国寄港・積替):非加工・非変更(Non-alteration)の説明としてB/L・通関書類等の提示
  5. HS誤り・未記載:HSコードの記載不備や齟齬に対する軽微性判断
  6. 累積の記載不足(AJCEP等):ASEAN第三国材の情報がCOに反映されず、累積根拠の再提示を要請
  7. 輸送欄の変更:運航変更で船卸港等がCO記載と相違。事情説明で有効扱いとなった実務例
  8. 住所表記差(輸出者・輸入者):私書箱/本社・工場住所差など、同一法人性の説明で有効扱い
  9. 日EU・EPAの間接検認:EU税関が輸入者→日本税関→輸出者の順に照会
  10. 期限徒過/資料不十分:期限内に十分な回答が出せず否認

G. 検認に備える重要ポイント

  • 保存設計:協定別3年/5年をCO発給日起算で台帳管理
  • 記載精度:COのHSコード・品名・数量・第三国インボイス・積送欄を二重チェック
  • 累積・僅少の根拠:累積利用時は相手国原産の根拠書類、僅少規定の閾値と除外規定を協定別に把握
  • 自己申告の基本(EU等):原産地に関する申告の12か月有効、輸入者3年・輸出者4年保存
  • 期限管理:協定上の公式期限から逆算し、社内SLAを設定
  • 事前教示の活用:HSコードや原産地取扱いに不安があれば税関の事前教示(3年間尊重)で安定運用
  • 言語・機密:提出資料は必要箇所に英語を付記。機微情報は要同意・機密扱い

③ 実務用チェックリスト

□ 協定特定(第三者証明/自己申告/認定輸出者)
□ 保存年限(CO発給日起算で3年または5年/EU自己申告は輸入者3年・輸出者4年)
□ 資料収集(対比表・計算ワークシート・工程・投入・商流・積送)
□ CO記載(HSコード・品名・数量・第三国インボイス・積送の整合性)
□ 期限逆算(例:日タイ3か月/2か月)
□ 英語化(必要箇所のみ、機密管理)
□ 事前教示(不安点は照会=回答は3年間尊重)


注記:制度・運用は協定条文と相手国国内法により最終判断されます。自社案件では、該当協定条文と最新ガイダンスを都度確認してください。