ATIGA(ASEAN Trade in Goods Agreement)は2009年に署名、2010年に発効したASEAN域内の物品貿易自由化の中核協定です。2022年から「アップグレード(改正)」交渉が開始され、持続可能性・循環経済・再製造品・環境と貿易・サプライチェーン連結性など新テーマを取り込むことが目標とされてきました。kenbunsya+3
2025年7月に公表されたバージョン4.2.0では、「Customs Bonds(通関担保)」と「Certificates of Origin(原産地証明書)」という2つの新しい標準データセットが追加されました。特に原産地証明書データセットは、WCO原産地規則技術委員会(TCRO)が作成した原産地データ集をベースに標準化されており、各国が電子原産地証明(eCO)を発行・交換するための”共通フォーマット”を提供します。customstrade+2
さらに2025年10月、WCOは**「原産地証明相互接続フレームワーク(Interconnectivity Framework for Certificates of Origin)」**を公表し、税関同士がeCOデータをやり取りする際の法的枠組み・ビジネスプロセス・技術仕様を整理しました。フレームワークでは、「交換されるデータ要素・構造・メッセージ形式の標準として最新のWCOデータモデルを使用する」ことが明記されています。ddcustomslaw+1
WCOデータモデル(WCO Data Model, WCO DM)は、通関や関連手続きでやり取りされるデータ要素を標準化した「共通辞書+設計図」です。対象は、輸出入申告、トランジット、許認可、電子インボイス、原産地証明など、”国境をまたぐ手続きのデータ”ほぼ一式をカバーします。バージョン4系列では、JSONやOpen APIなど最新の電子メッセージ形式との親和性が高められており、シングルウィンドウや各種プラットフォームと連携しやすい構造になっています。etradeforall+1
原産地情報に焦点を当てた背景
WCOは2023年に**「原産地証明書のデジタル化に関する研究(Study on the Digitalization of the Certificate of Origin)」**を公表しました。この研究は、84税関を対象とした調査から、紙と電子が混在し、eCOやデータ交換の仕組みも国ごとにバラバラという現状を明らかにしました。そこで、原産地証明プロセス自体をデジタル化し、国ごとにバラバラなデータ構造を共通化することを、デジタル通商・貿易円滑化の重点テーマに据えています。wcoomd+1
4.2.0における原産地情報標準化の進展
原産地証明書情報パッケージの追加
WCO DM 4.2.0の最大トピックの一つが、**原産地証明書データセット(Certificate of Origin Information Package)**の組み込みです。このパッケージは、原産地規則技術委員会(TCRO)が整理したCO用データセットを基礎としています。各国当局が発行する電子原産地証明(eCO)について、証明書番号、発給機関、発給日、輸出者・輸入者情報、品目情報(HS、品名、数量、価格など)、原産地国、原産地基準(CTC/RVC/WO等)、FTA名・適用条項などを共通のデータ項目&コード体系で表現できるように設計されています。aduananews+2
データセットと技術仕様:COデータ交換のためのデータ要素セットとして、WCOデータモデルに基づく「Derived Information Package(DIP)」を策定しました。交換されるデータ要素・データ構造・電子メッセージ形式の標準として、最新バージョンのWCOデータモデルを用いることが明記されています。ddcustomslaw+1
自己申告への拡張:付属書では、半自動Pullモデルおよび原産地自己申告(Self-Declaration of Origin)にも適用できるビジネスモデルを提示しており、将来的には自己申告データも同じWCO DMベースで標準化される方向が示されています。wcoomd+1