日EU EPAにおけるPSR: 自動車(HS8701-8705)の原産地規則

日EU EPAの原産地規則が一部明らかになっています。(正しい答えは、正式な協定文まで待っていただき、あくまで参考としてください)

本日は自動車です。

自動車(HS8701-8705)の原産地規則は、非原産材料の比率が45%まで。

但し、乗用車(HS8703)は、条件が最初の6年は少し緩和されています。

  • 最初の3年はその比率が55%
  • 次の3年はその比率が50%

また、乗用車には、面白い既定が存在しています。

日本とEUがそれぞれ同じ国とFTAを結んでいる場合(例えばベトナム)、その国の原産材料を累積として使う事が出来る(累積)という条項があります。(自動的に適用できるのではなく、原産証明がある場合)

今あるのは、ベトナム、シンガポール、スイスですね。

ベトナム製の材料を原産材料として見ることも可能になるわけです。

今後、日本やEUのFTAが増え、共通の国が出来れば原産性を証明しやすくなります。

今後どうなるか分かりませんが、日=イギリス、EU=イギリス(EU離脱後にFTA)となれば、日本の部材でイギリスで製造した車に日本製部材を原産とみることも可能になるということです。

 

アメリカ大統領選挙とTPP

アメリカの大統領選挙で、現在トランプ氏が有利です。

彼が大統領になればTPPはどうなるのか、皆さんは関心(憂慮?)があるかと思います。

TPPにアメリカへの無税での輸出の世界が広がる。ほんとその通りです。

それが、トランプ氏が大統領になることでどうなるか。いろいろなことが起こる可能性があると思います。

まず確実なことは、アメリカの要求で12カ国で署名されたTPPは再度協議にはならないということ。

ひょっとすると、レームダッグ状態ではありますが、トランプ氏の外交の危うさから彼の就任以前にアジアに対する布石となる議会承認を得られる可能性もあります。

ただ、どうなるかをいろいろ考えるのはよしましょう。

一番大事なのは、TPPであれ、ASEANとのEPAであれ、やらなければいけないこと、証明の証拠書類の準備することは変わらないということ。

トランプ氏の影響に一喜一憂するのではなく、TPP以外にも日EU、RCEPなどでも適用可能な原産地証明のプロセスをちゃんと確立することが何より大事です。

日EUは問題なく合意されるでしょう。TPPの結果を見てRCEPの協議のスピードは変わるかも知れませんが、たぶんやってくるでしょう。

それまでに、原産地証明の体制を確実にすることが、今現在も使えるアジアを中心としたFTAの活用においても大事なこととなります。

 

FTAにおける原産地証明:その使うべき原産地規則

FTAでは、原産地証明で適用する原産地規則がかなり大事であると思っています。

原産地規則には3つの種類があります。

  • 加工工程基準(SP)
  • 関税分類変更基準(CTC)
  • 付加価値基準(VA)

企業は適用基準を好きに選べるわけではありません。協定、及び輸出商品の該当するHSコードにより使える原産地規則が決まっています。多くの場合、CTCかVAの選択が出来るようになっています。

大型客船のような一品ものは、付加価値基準(VA)で問題はないとは思いますが、同じ商品が何度も輸出されるような場合は、関税分類変更基準(CTC)の方が断然使い勝手がいいです。

しかし、実際にはVAを使われる企業が多くあります。計算しやすいからとのことですが、私の経験からすると、むしろVAは証明するのが厄介です。

構成部材毎のコストを計算する必要がありますし、その計算根拠もちゃんと出せるようにする必要があります。また、VAの場合は本来は輸出毎に証明をする必要があるのです。現実はそれは無理なので、企業内でのルール作りをして、そのチェック頻度を企業として明確にして、原産性が維持されていることを確認続ける必要があります。

VAが使われるのに、「計算がしやすいから」という理由意外に別に理由があるととある人から聞きました。「監査法人は、VAの方が自分たちの専門性が生きるし、仕事も継続してもらいやすくなるから。」だそうです。

確かに。

原価計算、システム化では彼らに一日の長があります。一方、CTCで必要となるHSコードは素人に等しい。

どれだけ、本当なのかはわかりません。

ただ、多くの工業製品でCTCとVAの選択が出来る場合は、CTCにした方が企業にはメリットが多いし、相手国の検認にも強いですよ。

FTAに関するサプライヤー説明会: メーカーの要望の問題点

私の顧客のところでサプライヤー様向けのFTA説明会を開きました。

目的は、企業と同じレベルの原産地証明をしてもらうことにあります。企業が原産地証明の品質を向上させたところで、サプライヤーの証明(サプライヤー証明や同意通知)が駄目でしたら、検認の際に大きな問題になります。

できるだけわかりやすい説明会とその後のフォローが大切であることを過去の経験から痛感しており、今回もその経験を生かして行ったつもりです。そうしないとちゃんとした証明を行ってもらえないことが多いためです。

一方、このお客様には多くの納品先から、サプライヤー証明や同意通知をもらうべく、「データを下さい」的な要望が来ます。

彼らが要求している情報だけでは不十分なことが多いと感じます。これにより原産地証明が出来ていると考えている企業が多いことは正直怖いことです。

日頃、サプライヤーの原産地証明に関する認識を上げることが必要と感じていますが、その阻害要因になっているものの一つは、サプライヤーの顧客にもあるのです。

昨日は、TKAOのEPA活用セミナーの講師で福山に行きました

台風が来ていましたが、TKAOのEPA活用セミナーの講師で福山に行きました。

主催がジェトロとのジョイントで、通常の14:00スタートではなく、13:00スタート。

天候の問題もあり、到着が13:00少し手前となってしまいました。

私が最初に講演することになっており、問題がありましたので順番を変えて頂きました。

出席者は70名。商工会議所、ジェトロ他の皆様のご尽力のおかけです。

17:00までの長丁場でしたが、皆さん真剣に聞いておられました。

本日は長野でTPPに関する講演を行いました

本日は長野でTPPに関する講演を行いました。

主催:

  • 北信エリア広域連携支援事業
  • 中小企業大学校三条校

講演タイトル

「TPPの効果的な活用法と注意点」

久しぶりに3時間の講演。

疲れました。

TPPセミナー@長野
TPPセミナー@長野

FTAで有名なこの会社が・・・

FTAの活用に関して学ばせて頂いた会社があります。

それをA社と呼びましょうか。

A社はメキシコとのEPAの時代から活用しており、その責任者は有名な方で、私も多くを学ばせて頂きました。

その会社の方からEPAの活用相談がありました。

???

という気持ちが本音のところでした。

「できるでしょうに。」

お会いしたところ、とても熱心な方で、メキシコ向けの商品で、VAで活用したくて、条件を満たさないのでどうしようかと悩んでいらっしゃいました。

そういうときは、影響の大きい材料の原産性に遡り、証明することになるのですが、ご存じなかったようです。

常日頃から、日本企業のFTA活用は個人に属しており、企業のノウハウ、体制で行われていないと感じていましたが、

「A社でもか」

という少し残念な気持ちとなりました。

日本の企業の方、FTA活用は是非組織戦でお願いしますよ

EPA原産地証明アウトソーシングで、原産品判定番号をもらうのに2時間

最近は、商工会議所にEPAの原産地証明で必要となる原産品判定で、申請、資料の確認、そして判定番号取得まで2時間でもらえました。

当社がアウトソーシング事業で、サイナーとなって申請をしますので、必ず証拠書類の確認があります。それを含めてです。

手慣れた仕事とはいえ、ちょっとびっくりでした。通常は3日かかると日本商工会議所は言っていますからね。

商工会議所に袖の下を渡すわけでもなく(受け取るはずがありません!)、ちゃんとしたプロセスを踏んで、このようなご対応をして頂けたことを光栄に思います。

過去も大体半日から1日でした。

正確な証明、迅速な判定をして頂けるように今後も頑張ります。

 

 

猫すずプロジェクト進行中

FTA活用に関しての社内認知を高める活動を、最近「猫すずプロジェクト」と呼び、セミナーの度に呼びかけをしています。

FTAにおける原産地証明の企業内の問題、メガFTAが近い将来来ることによる問題の拡大とそれに伴うコンプライアンスリスク。

すべて、企業トップの認識がないと改善されません。

企業トップの意識づけをすることを推奨しているのですが、最近その活動が具体化している企業が多いのがとてもうれしいです。

この前も、私がFTAのコンプライアンス問題についてセミナーを企業に行いに行きました。

参加者は、専務、常務、取締役、事業部の上部管理職などそうそうためるメンバー。

ここで、FTAの監査を受けようということになりました。

経営陣も、その問題を報告されていないということで、聞いたらすぐに対応したのにとおっしゃっていたのが印象に残っています。

「猫すずプロジェクト」は声を上げることが、第一歩です。

FTA、「うちは輸出していないから」という理由が通じない時代に

最近の相談で多いのが、商品のサプライヤーの規模が小さく、輸出も全くしていない場合のFTA原産地証明取得のケース。

輸出なんて全くしていないサプライヤーなのだが、それを購入した商社など企業が海外に販売することで、結果として商品が輸出されている場合が増えてきた。

その際にFTAを活用したい商社など企業が原産地証明をとることに四苦八苦している。サプライヤーが、対応できないからだ。

小さい企業には、確かにFTAだの、原産地証明だの、同意通知だの、ちんぷんかんぷんだろう。

そういった場合にどうやって説得させて、彼らサプライヤーに証明をさせるか。

本当に一苦労である。

たいていの場合は、「EPA相談デスクにお誘いされたらどうですか。」と言うようにしている。ちゃんと説明を聞けば、わかるものである。

サプライヤーの皆さん、そうされては?