経済産業省委託事業の一環で、広島にてEPA活用セミナーにて講演を行いました。
広島商工会議所の協力もあり、また、マツダさんの素晴らしいEPA活用事例のプレゼンテーションありと、素晴らしいセミナーとなりました。
昨今、TPP関連で日本のあちこちでセミナーがあります。その中でも秀逸だったと言って頂けたのはうれしいものです。
名刺交換も多くの方が来られ、また、個別相談にも都合5社が参加。盛況でした。
世界で有利に戦うためのコツ
先日、とある会社の方が相談に来られました。
本当に困っていらっしゃるようでした。本業は社長の秘書兼ドライバーだそうです。
誰もやる人がいないので、自分がしなければならないとのこと。
熱心な人なので、いろいろ説明しました。また、今度、原産地証明の取り方の寄り詳しいセミナーをするので案内をしたところ、来られるとのこと。
この企業は決して小さくありません。が、企業の管理職以上は、片手間仕事と思っていらっしゃるのでしょうね。誰でも簡単にできると。
決して簡単な仕事ではありません。また、間違うと企業のコンプライアンスに関わる問題です。確かに、専任者を置くだけのコンスタントな業務量が無いかもしれません。が、やる限りはちゃんとしなければ、大きなしっぺ返しが来ることも企業は理解すべきです。
社長の秘書であるなら、そのことをちゃんと社長に伝えてほしいと申し上げました。(伝えて理解してもらうことがそんな簡単なことでは無いことを知ってはいますが)
本日、お客様からちょっとショックなお話を伺いました。
その会社は大企業で、FTA業務の生き字引の方。その人以外にその会社のFTAを語れないのです。
その人をその会社は人事異動で他部署に。
そして、新任の方が赴任。必ずしもFTAに明るい方ではありません。
もと担当の方の異動は本社内なので少し安心。新任の方も比較的聞きやすい環境にはあります。
このことは、会社はFTAのノウハウの問題を考えていないことの傍証です。
個人に帰属してしまっているFTAのノウハウを如何に一元化し、企業のものとするのか。それをしなければならない矢先の出来事。
この異動がアメリカなんかだったら、この企業はどうするのでしょうか。
人の異動は、その人の成長のためにも大切ですので、否定はしませんが、コンプライアンスに関わるFTAでその準備もできていないときの出来事。
明らかに企業はFTAのコンプライアンスの側の問題を考えていないことを露呈してしまいました。
小生が主催しますGlobal Edge Forum(GEF)では、第9回目のセミナーを2月25日に開催します。
今年はFTAでもメガFTAが多く表に出てきます。TPP、日EU、RCEP(ASEAN10カ国と日中韓ほか3カ国)、日中韓。これらが締結、発効されますと日本からFTA対象国への輸出割合が20%だったものが、80%にまで跳ね上がり、海外ビジネス上でFTAは避けて通ることができないものになります。
また、メガFTAは「累積」という仕組みがあります。これが企業のサプライチェーン(調達~製造~販売)の仕組みを大きく変える可能性があり、日本企業はそれに対する準備が必要となります。
それに加え、TPPでは「自己証明」という商工会議所を経ない原産地証明をする必要があり、企業の管理体制によっては、証明が不十分だと、遡って課税+追徴課税+輸入者との関係悪化+輸出先の税関での通関への影響といったリスクとなりますし、企業のコンプライアンス上の問題となる可能性大です。
GEFでは、こういったFTAの課題へのソリューションをご紹介することになりました。
テーマ:「FTAプロフェッショナル・サービス」
ホームページはこちら
・FTA原産地証明アウトソーシングサービスとFTA原産地証明プロセスの妥当性監査
-株式会社ロジスティック
・FTA原産地証明の自動化システム
-トムソン・ロイター
・サプライチェーンの最適化によるコストマネジメントソリューション
-株式会社日立ソリューションズ
経済産業省委託事業でEPAアドバイザーをしていますが、いつも悩まされるは、経済産業省や日本商工会議所が記載していることと、企業がそれを解釈することのギャップです。
「生産者」の定義に関して、以前アドバイスをした企業から質問がEPAデスクにあったのですが、「経済産業省のHPと嶋のいうことが違う」というものでした。
設計や品質保証をしているだけでは「生産者」としては認められません。
ただ、企業からすれば「そこまでやっているのだから生産者だろう」という気持ちになります。残念ながら、証明ルール上はそうはならないのです。
ただ、その内容を説明資料の文言から読み解けないことも理解できます。
EPAデスクから丁寧に説明して頂くようお願いしましたが、アドバイザーとして本当に悩ましい。
国はEPA(FTA、TPP)を使え、というのですが、明確な原産地規則を企業がわからない以上、その要望の実現は困難であると思います。これは国のFTA活用推進の大きな課題でしょう。
浜松にて、2016年1月18日に外務省・浜松商工会議所共済のセミナー「メガFTA時代の到来とTPPの活用」がありました。
そこで、小生が講演をしてきました。
13:30~ 開会・冒頭挨拶 衆議院議員 城内 実 氏
13:40~ 「TPPがもたらすメガFTA時代」 外務省経済連携課長 岩本 桂一 氏
14:35~ 「TPPが変える企業のグローバル戦略」 株式会社ロジスティック 嶋 正和 氏
15:30~ パネルディスカッション「メガFTA時代の国際ビジネスを考える」
・ モデレータ 大阪商工会議所 麻野 良二 氏
・ 三井物産株式会社 貿易・物流管理部
輸出入貿易管理室 マネージャー 武田 ゆかり 氏
・ ヤマハ株式会社 物流システム部 企画担当次長 河田 敏幸 氏
17:15~ 懇親会
150名の参加者がいらっしゃいました。浜松は本当にFTAでは活発なエリアです。
今年は、TPP、日EU、そしてRCEP、日中韓の大筋合意を迎える(だろう)年です。
このインパクトは日本企業にとって決して小さくありません。
今までの日本の輸出の中に占めるFTA(EPA)締結国向け比率は約20%。
これに、TPPが入ると+20%、日EUが入ると+10%、そしてRCEPが入ると約30%となります。
全部足し合わせると80%。貿易の80%がFTA関連国となります。
これは大きな変化です。輸出の殆どでFTAが使えるようになるということ。
使わない理由がありません。
そのこともあってか、弊社コンサルティングに対する問い合わせが多く来るようになりました。
昨日もとある大手機械メーカーにサービスの説明に行ってまいりました。
世界的なSCMを見直することを考えているとのことで、どういうアプローチがいいか思案されている様子。
想定される経営環境の大きな変化への対応に対するコンサルティングの提案書が欲しいとのこと。
日本企業も変わりつつありますね。
現在、自動車メーカーのアフターパーツのEPA適用のお手伝いをしています。
アフターパーツの大半は、自動車部品メーカに作ってもらった部品で、内政部品はごくわずかです。
EPAでの原産地証明書を取得するには、どうしても自動車パーツメーカーの協力が不可欠で、多くの企業にその協力依頼をしました。
多くの企業は(その温度差はあるのですが)好意的に対応していただきました。
その中に1社だけ、「当社は企業の方針としてEPAへの対応を行わない」と宣言された会社がありました。
自動車パーツで、EPAへの対応をしない宣言?
正直びっくりです。TPPでアメリカ、日EUでヨーロッパ、そしてRCEPもしくは日中韓FTAで中国が今後対象になってくるだろう中で、「企業の方針でEPAへの対応を行わない」とおっしゃるのです。
当然企業の戦略ですから、企業の自由になさればいいのですが、FTA、EPAへの対応を納品の条件とされる企業も増えている中で、そういう宣言をされる企業はとても大胆です。場合により仕事を失います。
よほど商品に自信がないとできないことですね。