2022年1月度のFTA戦略的活用研究会の日程が決まりました。
日時: 2022年1月20日(木) 14:00~17:00
会場: 東京国際フォーラムG402
です。ご予定ください。
本来、21日の金曜日を日程としたかったのですが、国際フォーラムが設備点検の日とかでオープンしていないとのことでした。
世界で有利に戦うための考え方
中国、台湾、韓国がTPPへの参加を表明または参加検討をすることがニュースになっています。
ニュースやYouTubeで「TPPへの中国、韓国の参加は無理。台湾歓迎」という論調をよく見ますが、FTAを利用する企業側からの視点でこのことを見てみましょう。
(申請に関する是非)
TPPに参加申請をする国は、TPPが定める申請・承認プロセスを経ることになります。申請する段階でその申請を断ることはできません。断る以上は明確な理由が必要となります。
そこで、参加希望国が条件を満たせるかを見定めればよい。中国がWTOに参加するときに遵守するとした条件を今だ守れていないこと、韓国が国際的な決め事を後に保護することなどを加味して各国が見定め、満場一致をもって参加を認めればいいことで現時点で一方的に締約国が「守れない」と主張するのは無理があります。
(日本にとっての経済的メリット、リスク)
RCEPはその協定の内容を見れば分かることですが、日本にとってのメリットが余り感じられない、あったとしてもとても時間がかかる内容です。特に自動車部品の対中国輸出ではメリットがほぼないと言えます。中国や韓国が入ることでメリットが大きいと思われたRCEPですが、実際は日本に取ってそれほど手放しでは喜べないものになっています。
翻って、TPPに中国や韓国が入るとどうなるか。TPPでは日本は米などよく守ったと思われる内容となっている一方で、日本以外ではほぼ100%の関税撤廃となっています。また、その撤廃速度もRCEPとは比べるまでもありません。新規参入の国は、締約国より参加条件がよくなるわけがありません。基本は譲許のスピードが速く、かつほぼ全面的に関税を撤廃することが前提になるでしょう。そうなれば、TPPの方がいろいろな制約のあるRCEPよりも日本企業に取って対中国、対韓国上、関税削減が広く、かつ鋼板に享受できるという活用のメリットが出ると言えます。このメリットはかなり大きなものです。この点だけを考えれば、中国、韓国のTPP参加は日本にとって歓迎すべき事です。
一方、原産地証明上、日本はリスクを背負う可能性があります。
TPPにおける関税低減・撤廃のメリットを得る為には、原産地証明書を輸出時のインボイスに添付する必要があります。その原産地証明ですが、TPPでは「自己証明」という形態をとっています。「自己証明」とは企業が原産性を証明した後に、自身で原産地証明を作成することが出来るということを指します。日EU EPAや日オーストラリアEPAを除き、日本の多くのEPAでは「第三者証明」制度がとられています。これは商品の原産性判定を日本商工会議所に申請し、許可が出た後で、日本商工会議所により原産地証明書を発給してもらうことが出来る制度です。間に日本商工会議所が入ることで時間と手間とコストが企業にはかかることになります。TPPではそれがないので迅速に原産地証明書を得る事ができます。メリットに思えますよね。
FTAでは、原産性が確かなものかを輸入国が輸入時・輸入後に確認できる「検認」が認められています。原産性に関する証拠書類の提出や質疑をして、原産性があることを企業が立証しなければいけません。
先の原産地証明書の発給プロセスで、日本商工会議所が間に入ったEPAでは、検認時には日本商工会議所が輸入国税関と企業の間に立ち、検認の対応を支援していただけます。「自己証明」である日EU EPAは、税関が仲立ちしてくれます。が、TPPはその仲立ちがなく、相手国税関から直接企業に「検認」の問い合わせがいく仕組みになっています。TPPに中国や韓国が入ることで、彼らから日本企業への検認は各国税関から直接企業にいくことなるのです。助太刀のない検認でかつ中国、韓国から。怖いと思うのは私だけでしょうか。「もう少し製造工程を明確にしてもらわないと、原産として認められない」といった製造上の機密情報を要求されかねないという人も居ます。これは考えるべき大きなリスクです。
(TPPのアキレス腱)
ルールを守らないと考えられている中国を経済的に資すると考えられるTPP参加、それを西側として阻止しなければいけないという外交上の日本のスタンスも分からなくもありません。が、TPPの初期交渉当時からかき乱して、そして離脱をしたアメリカの所業も決して褒められたものではなく、実際のTPPの協定文にはアメリカによって(ごり押しと言っていい)内容が数あります。現段階でのTPP締約国は苦々しく思っている内容です。アメリカが戻ってくることを期待して、そのままとしています。
アメリカが戻ってこないなら、締約国は修正したいところでしょう。自動車関連や特に繊維などはアメリカのごり押しの内容です。直したいというのも当然ですし、理想をいえば直すべきだと思います。が、協定内容を変えることを認めれば、ついでに様々なことが書き換えられる恐れがあります。それが中国の参加の際に書き換えられるとなればどうなるか。中国の参加を歓迎するアジアの締約国がマレーシアやシンガポールなど少なからずあるため、非現実的ではないのです。
(英国の参加申請が当面の試金石)
先に、英国がTPP加盟申請を行っているので、英国に対して、協定内容を変えずに協議するか、厳しい参加基準をどう遵守させるかが当面締約国による真偽の中で見守りたい点です。協定を変えることがなければ、中国や申請をした場合の韓国にも同様の措置がとられるでしょう。そうなればTPPの理念は守られます。
それと同時にかき乱してきたアメリカがTPPに参加するなら修正が必要といっており、かつ、TPP参加が現段階でのアメリカの優先順位ではないため、アメリカの動きも見ておく必要があります。
(中国の真意)
中国は本当にTPPに参加したいと思っているのでしょうか。RCEPという巨大メガFTAも完成目前で、「自由貿易」という意味では中国は成功しています。一方、TPPのルールを曲げない限り、中国は参加要件を満たさないのは明らかで、中国が参加要件を満たす施策を行うメリットはありません。また、TPPは「環太平洋」と謳っていますが、FTAは本来隣接する地域で有効なもので、実際には日本企業がTPPを使うのはEPAのないカナダやニュージーランドくらいで、それほどアクティブな利用はされていません。
そういうことを考えれば、台湾をTPPに参加できなくさせるのが中国の本意ではないかと思います。中国にとって台湾は自国の一部としての認識なので、台湾を独立した形で世界的にメジャーなFTAに参加させないことが肝心なのでしょう。
ほんとか嘘か分かりませんが、台湾がTPP参加申請を出すという情報を中国が知り、先に申請することで台湾の出鼻を挫いたと言われていますね。
今後の動きを見守っていきたいと思います。情報がありましたらまたこのブログに投稿します。
日本商工会議所の特定原産地証明書発給システムが続いているようです。
新規にシステムをリリースする際にトラブルはつきものですが、日々の輸出で活用している企業に取っては、原産判定や原産地証明書発給が滞ることは死活問題です。
テストで安定が見込めるまで、旧システムでの対応をすべきではないかと思います。慎重を期していたとは存じますが、もう少しテストをしておくべきでしたでしょうね。
とある企業で、新システムに移行してトラブル続きで売上を25%失ってしまったことがありました。その際も新システム移行と同時に旧システムを廃棄してしまっており、どうしようもありませんでした。
このシステムが安定するまでには時間がかかるのではないかと思います。原産判定の未処理分も原産地証明書の未発給分も積み上がるでしょうから、日本商工会議所の方の負荷も大変なものになるでしょうし、輸出する企業もEPAを活用するなら、時間を見ておいた方がいいですね。
この問題が長引き、2021年を越えることがあれば、日タイEPAのHS2017、RCEPというビックイベントが待っていますから、困ったことになります。そうならないことを願います。
第58回FTA戦略的活用研究会は、オープンセッションとして一般にも開放します。
今回は、トムソン・ロイターの東京やアジアオフィスと協同で、RCEPに関するセミナーを行います。
テーマ:
Preparing for RCEP
ー Strategic Approach & Best Practices
・ Perspective from the experts –risks, opportunities
・ Technology as a key solution to increase RCEP adoption & reducing complexity
スピーカー:
Deborah Elms
- Founder and Executive Director, Asian Trade Centre
Masakazu Shima
- Representative Director, Logistique
Zoe Martinez
- Global Trade Proposition Lead, Asia & Emerging Markets, Thomson Reuters
Kaoru Morishita
- Global Proposition Lead, Japan, Thomson Reuters
Hoon Sung
- Product Manager, Asia, Thomson Reuters
日時:
2021年8月20日(金) 14:00~16:00
場所:
TKP東京駅セントラルカンファレンスセンター 12C
住所:
東京都中央区八重洲1-8-16 新槇町ビル
備考:
・英語のみで行われます
申込みはこちらから。
2021年6月18日(金)に行われましたFTA戦略的活用研究会 大阪会場のセミナー・ビデオを皆様にもご覧頂けることとなりました。インドネシア領事館からのご了解を得られただけではなく、インドネシア側でもビデオをインドネシアで解放するとのことです。
今回のセミナーはインドネシア・貿易省のFTA交渉官の方の「インドネシアのFTA」というテーマでのお話しです。
Indonesia and Free Trade Agreement
– Ms. Ni Made Ayu Marthini, Director of Bilateral Trade Negotiations, Ministry of Trade
このセミナーでは、インドネシアのFTAの取り組みをMs. Ni Made Ayu Marthiniにオンラインで語っていただき、あらかじめ視聴者から頂いていた質問によるQ&Aセッションを行いました。このQ&Aでは以下の点をカバーしています。
・ RCEPのインドネシアでの批准状況
・ 日本で検認の多いインドネシアの検認に対する考え方
・ 問題となっていたFTA活用上の積送基準に対する考え方
このセミナーがよかったのは、貿易省の方にお話しを頂いただけではなく、日本側の質問を見て、インドネシアの税関の方もご出席いただき、質問に対してのご回答を頂戴できたことでもあります。
このセミナーは英語のみで行いました。
以下より閲覧できます。
セミナーの資料は、上記サイトの概要欄にダウンロードリンクがあります。
今後はこのような企画でセミナーを考えていきたいとも思います。
先日、FTA戦略的活用研究会で機械や電機での部分品や附属品のHSコードの考え方に関して、専門家による講演を行いました。
電機機械の部分品や附属品のHSコード付番は、とても複雑でなかなか分かりにくいもので、FTAでの付番で困ることもあろうかと存じます。それに対して、少しでも整理の役に立てばと企画したセミナーです。
【セミナー概要】
第56回FTA戦略的活用研究会
「16 部の機械類・電機器等の部分品・附属品の分類」
政策研究大学院大学客員教授 長瀬 透
日時 2021年6月25日(金) 14:00~16:00
会場 東京国際フォーラム 会議棟G402
ご厚意により、このセミナーを研究会以外の方にも開放することに致しました。
下記の、講座閲覧申込みリンクからお入り頂き、必要事項をお書き、ご送付頂けますと、返信のメールで、講座ビデオのリンク先が送られてきますので、そちらをたどってご覧下さい。
講座のテキストは、ビデオのYouTube概要欄にそのダウンロードリンクがございます。
申込みは下記から。
https://smoothcontact.jp/front/output/7f00000147b0287f4cde472d28cda72
ロジスティックはFTA戦略的活用研究会という研究会を主催しています。ここではFTAに関するちょっと突っ込んだテーマでセミナーや、メンバー間での情報・意見交換会を開いています。
先日、この研究会の大阪会場で、小池産業さんのご助力も頂き、インドネシアの貿易相の協定交渉のディレクターの方にリモートでセミナーに参加頂き、「インドネシアとFTA」というタイトルで講演を頂きました。その後、Q&Aセッションを設けました。
現在のインドネシアのFTAへの取組みをお話し頂いた後で、RCEPの国内批准の状況、企業を悩ました積送基準の厳格化などに関するQ&Aセッションをさせて頂きました。
積送基準の厳格化に関しては、本来税関の管轄なので、税関の方もご参加頂き、お話しを伺いました。
インドネシアは現在、日本に対する検認で一番多い国と聞きます。その辺りもお話しをうかがうことが出来ました。
このビデオは、インドネシア側のご許可も頂戴し、一般に公開する予定としています。(本来、FTA戦略的活用研究会のセミナーは会員限定での公開となっています)
公開は今しばらくお待ちください。
6月度のFTA戦略的活用研究会は6月25日14:00から行います。場所は東京国際フォーラムG402です。
テーマは「HSコード:部分品と附属品の扱い」です。
FTAにおいて部分品や附属品のHSコードで悩むことが多くあります。その観点に焦点を当て、HSコードの大家であられる政策研究大学院大学の長瀬先生にご講演を頂きます。
私は以前長瀬先生のHSコードの講義を拝見したことがあります。その際にいくつかの類に焦点を当ててご講義をされているのを聴講致しました。その際に「この類では部分品、附属品はこのような形でHSコードに分類されている」というお話しを伺ったので、今回はその「部分品、附属品」という横串で語っていただこうとお願いしたところ、ご快諾して頂けました。
研究会メンバーの方には改めてご案内メールをお送りしますので、お待ちください。