日英EPAの乗用車関税撤廃(2026年2月)

2026年2月1日。ついに、日本とイギリスの間で大きな経済の節目が訪れます。日英EPA(包括的経済連携協定)に基づき、日本から英国へ輸出される乗用車の関税が完全に「ゼロ」になります。

2021年の協定発効から段階的に引き下げられてきた関税が、ついに撤廃されるこの瞬間。日本の自動車産業、そして現地の消費者にとってどのような意味を持つのか、深掘り解説します。


1. 2026年2月、何が起きるのか?

日英EPAでは、日本から輸出される乗用車にかけられていた10%の関税を、8年かけて段階的に削減するスケジュールが組まれていました。

  • 2019年〜: 日EU・EPAのスケジュールを継承(いわゆる「キャッチアップ」)。
  • 2021年1月: 日英EPA発効。この時点で関税はすでに削減の途上(約7.5%)。
  • 2026年2月1日: 関税率 0%(完全撤廃)が実現。

これにより、日本で製造された車両をイギリスへ輸出する際のコストが大幅に抑えられ、欧州メーカーや韓国・中国メーカーとの価格競争において、日本車が再び強力な武器を手にすることになります。


2. なぜ「今」この撤廃が重要なのか?

自動車業界が100年に一度の変革期(CASE)にある中、この関税撤廃は単なる「値下げ」以上の意味を持ちます。

① EVシフトへの強力な後押し

現在、英国市場では「ZEV(ゼロエミッション車)販売義務化」が進んでいます。関税がゼロになることで、日本メーカー(トヨタ、日産、ホンダ、マツダなど)は、高価になりがちなEV(電気自動車)やハイブリッド車の価格を抑えて市場に投入しやすくなります。

② 英国市場での「日本車ブランド」の再定義

イギリスは伝統的に日本車への信頼が厚い市場ですが、近年は他国メーカーの台頭も目立ちます。関税コストが消えることで、浮いた資金をマーケティングやインフラ整備、アフターサービスに投資できるようになり、ブランド力の再強化が可能になります。

③ サプライチェーンの最適化

日英EPAでは、自動車部品の多くが既に即時撤廃されています。完成車関税がゼロになることで、「日本でコア技術を製造し、英国で最終組み立てを行う」あるいは「日本から完成車を輸出する」といった戦略の選択肢が広がり、物流の最適化が進みます。


3. 注意点:「原産地規則」の壁

関税が0%になるとはいえ、無条件ではありません。ここで重要になるのが**「原産地規則(Rules of Origin)」**です。

ポイント:

車両の価値のうち、一定割合(付加価値基準)が「日本産」または「英国産」である必要があります。特にEVの心臓部であるバッテリーに関しては、原材料の調達先が厳しくチェックされます。

もし、バッテリーの主要部材を日本や英国、EU以外から調達しすぎると、「日本産」と認められず、0%の優遇税率を受けられないリスクがあります。メーカーはこのルールをクリアするための調達戦略を2026年に向けて緻密に練り上げてきました。


4. 消費者・ビジネスへの影響まとめ

視点期待される影響
日本の自動車メーカー輸出コスト削減による収益性向上、EV市場での価格競争力強化。
英国の消費者日本車の選択肢が増え、高性能なハイブリッド車やEVがより手頃な価格に。
物流・商社日本からの輸出台数増加に伴う、日英間の貿易活発化。

結び:2026年、日英経済の絆は次のステージへ

乗用車関税の撤廃は、日英関係が「ポスト・ブレグジット(英国のEU離脱)」の混乱を乗り越え、強固なパートナーシップを構築した象徴とも言えます。2026年2月以降、イギリスの街中で最新の日本車がより多く走る姿を目にすることになるでしょう。

これは単なる貿易の数字の変化ではなく、日本の技術が世界で選ばれ続けるための大きな追い風です。


「日英EPAによる乗用車関税の完全撤廃(2026年2月)」は、日本の自動車メーカーにとって、イギリス市場での競争環境を劇的に変えるゲームチェンジャーとなります。

具体的にどの車種が恩恵を受けるのか、そしてメーカーが直面する「原産地規則」という新たな壁について深掘りします。


1. 恩恵を直接受ける「注目の車種」

現在、イギリスで販売されている日本車の多くは「英国産」または「欧州産」ですが、日本から直接輸出されている高付加価値モデルが、今回の関税撤廃で最も大きな恩恵を受けます。

① レクサス(Lexus)全般

レクサスの多くは日本国内(田原工場など)で生産され、イギリスへ輸出されています。

  • 対象モデル: RX, NX, UX, RZ(EV), LC, LSなど
  • メリット: 高級車セグメントでは数%の価格差が大きな競争力になります。メルセデス・ベンツやBMWといった欧州メーカーに対し、より攻めた価格設定や装備の充実が可能になります。

② スポーツモデル・趣味性の高い車

「日本専売」に近い形で製造され、世界に輸出されるモデルも恩恵を受けます。

  • トヨタ: GRヤリス、スープラ、GR86
  • ホンダ: シビック Type R
  • マツダ: MX-5(ロードスター)これらはファンが多く、関税撤廃による価格維持(または値下げ)は、ブランドロイヤリティを高める要因となります。

③ 最新の輸入EV・ハイブリッド車

  • 日産:アリア(Ariya)
    • 日産の主力EVですが、英国サンダーランド工場ではなく日本の栃木工場で生産されています。これまでかかっていた関税がゼロになることで、テスラや中国メーカー(BYDなど)との価格競争が激化する英国EV市場で有利に立ちます。
  • マツダ・スバル:CX-60, アウトバック, フォレスター
    • 輸出比率が高いこれらのブランドにとって、英国市場は収益性の高いエリアに変わります。

2. 「原産地規則」の壁:2027年の崖

関税がゼロになっても、手放しでは喜べないのが**「原産地規則(Rules of Origin)」**の問題です。特にEVについては、2027年に大きなルール変更が控えています。

EVバッテリーの「現地調達率」ルール

日英EPA(および英EU間ルール)では、関税ゼロの適用を受けるために、車両価値の一定割合を「日本・英国・欧州」の部品で構成する必要があります。

期間車両の現地調達率(RVC)要求バッテリーへの要求
〜2026年末まで40%〜45%(緩和措置中)比較的緩やかな基準
2027年1月〜55%以上セル・材料の多くが現地産であること

この「2027年の崖」をクリアできないと、**せっかく2026年2月に関税が0%になっても、2027年から再び10%の関税が課される(=原産地ルール違反)**という事態になりかねません。


3. 各社の最新動向:生き残りをかけた戦略

メーカー各社は、この「2027年ルール」をクリアするために、サプライチェーンの再構築を急いでいます。

  • 日産自動車(EV36Zero戦略):英国サンダーランド工場の隣に、パートナー企業のAESC(旧エンビジョンAESC)と共同で**巨大なギガファクトリー(バッテリー工場)**を建設中。英国産のバッテリーを搭載することで、2027年以降も関税ゼロを確実に維持する構えです。
  • トヨタ自動車:英国バーナストン工場でのハイブリッド車生産に加え、欧州域内でのバッテリー調達を強化。また、日本から輸出するEV(レクサスなど)についても、日本産バッテリーの付加価値を高めることで「日本産」としての認定を維持する戦略をとっています。
  • マツダ・スバル:両社は日本国内での生産比率が高いため、パナソニックなどの国内バッテリーメーカーとの連携を強化しています。日本で「材料から一貫生産したバッテリー」を搭載することで、日英EPAのルール下で「日本産」として認められる付加価値比率を確保しようとしています。

4. ブログのまとめ:2026年は「攻め」、2027年は「守り」

2026年2月の関税撤廃は、日本車にとっての**「輸出の春」です。しかし、その直後に控える2027年の原産地規則厳格化は、「バッテリーの自給自足」**を迫る厳しい試練でもあります。

読者へのメッセージ:

「イギリスで日本車が安くなる!」というニュースの裏には、各メーカーによる壮絶なバッテリー調達競争と、国境を越えたサプライチェーンの書き換えがあるのです。


韓国のCPTPP加盟再検討が企業に与える影響を深掘りする


(2026年1月11日現在の公開情報に基づく)

はじめに

2025年後半から、韓国政府はCPTPP(包括的かつ先進的な環太平洋パートナーシップ協定)への参加を「再検討」する姿勢を、政策レベルで改めて打ち出し始めました。 背景には、対米・対中への依存度が高い輸出構造のリスクと、主要市場における競争条件の変化があります。 韓国の動きは、韓国企業だけでなく、日本企業の調達・販売・現地生産・投資判断にも連鎖的に影響し得ます。koreajoongangdaily.joins+1​

本稿では、韓国が「加盟した場合」の関税メリットにとどまらず、どの業務プロセスがどの順番で影響を受けやすいのかを、実務目線で整理します。結論を先に述べると、最大の論点は関税そのものよりも、メキシコを中心とした競争条件の再編と、原産地規則を前提としたサプライチェーン設計の見直しです。clarkhill+1​


要点(忙しい方向け)

  • 韓国政府は2025年9月頃からCPTPP参加の再検討を公表し、2025年12月には「CPTPPとの関係強化」を含む通商方針を示しています。 2026年1月上旬時点で公表されている表現は「再検討」「準備が整い次第追加措置」といったレベルにとどまり、寄託国への正式通報(加入申請)の提出時期や、すでに提出済みかどうかを明示した情報は確認できません。nippon+2​
  • CPTPPは2026年1月時点で12の締約国(オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナム、英国)で構成されており、英国の加入手続は2024年末に効力を生じています。 新規加盟は既存ルールの変更を前提とせず、加盟希望国はまず寄託国ニュージーランドに正式な加入要請を通報し、その後CPTPP委員会の合意、作業部会設置、市場アクセス交渉など複数段階を経ることになります。mfat+3​
  • 韓国にとって分かりやすい「痛み」は、メキシコで顕在化しています。メキシコは2026年1月1日から、FTA未締結国など一部の国からの輸入について、約1,400品目でMFN関税率を引き上げ、鉄鋼や自動車など一部品目では最大50%の関税が適用され得ると報じられています。 対象には韓国が含まれ、一方で日本は日墨EPAやCPTPPにより、多くの品目で協定税率の適用余地があるため、同じ市場で競争条件が分かれやすい状況です。craneww+3​
  • 韓国がCPTPP加盟に進むほど、日本企業にとっては「韓国企業の競争力が上がる」という側面と、「日本企業が韓国をサプライチェーンに組み込みやすくなる」という側面の両方が生じます。 どこに勝ち筋があるかは、取引先・製造拠点・品目ごとに異なります。mfat+1​

第1章 いま何が起きているのか:再検討の位置付け

韓国政府は2022年前後にCPTPP参加を推進する方針を示しつつも、正式な加盟申請には踏み切れなかったと報じられています。 要因として、農業・水産業を中心とする国内の反発や、当時の日韓関係の緊張が挙げられます。koreatimes+1​

その後、2025年9月、米国および中国をめぐる通商環境の不確実性への対応策の一つとして、韓国政府はCPTPP参加の再検討に着手する方針を明らかにしました。 さらに2025年12月には、産業通商資源部などが2026年の政策目標の中で、対中サービス分野のFTA推進と並行してCPTPPとの関係強化に言及したとされています。investkorea+1​

CPTPPの締約国閣僚は2025年5月16日に韓国・済州で会合を開いており、韓国は加盟国ではないものの、地域の通商アジェンダを議論する場として位置付けられていることがうかがえます。 また2026年1月上旬には、日韓首脳会談でCPTPPが議題となる可能性が報じられ、韓国側は日本の支持獲得を模索しているとされています。 ただし、韓国政府の説明は「準備が整い次第、追加措置を取る」といった表現にとどまり、実務的には「国内調整と事前協議の段階が続いている」と見るのが安全です。gov+3​


第2章 CPTPP加盟プロセス:企業が見るべき節目

CPTPP加盟プロセスでは、ニュースの見出し以上に「手続き上の節目」が重要になります。理由は、各節目を越えるたびに、企業が前倒しで検討すべき論点が変わるためです。mfat

協定文書および関連説明によれば、加盟希望国は寄託国ニュージーランドに正式な加入要請を通報し、寄託国はこれを他の締約国に共有します。 その後、CPTPP委員会がコンセンサスにより交渉開始の可否を決定し、交渉開始が合意されれば、加入作業部会が設置される流れが一般的に想定されています。cas+1​

ニュージーランド政府は、新規加盟国は既存の協定を前提に参加する必要があり、協定文自体が新規加盟国のために書き換えられるわけではない点を説明しています。 つまり「新たな例外を設けて入りやすくする」タイプの交渉ではなく、既存の高水準ルールにどこまで適合できるかが問われます。mfat

またCPTPP側は拡大方針として「オークランド原則(Auckland Principles)」に沿って加盟を進めるとし、十分な準備が整った国・地域からの申請を歓迎するとしています。 ここで言う準備には、高い水準の義務を履行できることや、全会一致の合意を得られる見通しなどが含まれます。cas+1​

実務担当者が注視すべき節目は、次のとおりです。

  • 韓国が寄託国ニュージーランドに正式な加入要請(通報)を行ったかどうか
  • CPTPP委員会が韓国の加盟交渉開始および作業部会設置を決定したか
  • 関税・サービス・投資などの市場アクセスオファーが具体化したか
  • 韓国国内の関連法令改正や国会承認手続きがどこまで進んだか

ここまで進まない限り、企業として「影響が必ず来る」と言い切ることはできません。ただし、プロセスが動き出してから準備しても間に合わない領域があるため、そこに先回りすることが価値を持ちます。mfat


第3章 韓国が再加速する理由:メキシコ問題と競争条件

ビジネスの現場で分かりやすいのが、メキシコのMFN関税引き上げです。メキシコは2026年1月1日から、約1,400前後のタリフラインについてMFN関税率を引き上げ、鉄鋼、機械、自動車など一部品目では最大50%の関税水準に達し得る改正を実施しました。 この改正は主としてFTA未締結国を対象とし、韓国や中国、インド、インドネシアなどが対象国に含まれると報じられています。opportimes+5​

韓国メディアや専門家の報道では、メキシコの関税引き上げに対して韓国輸出企業の警戒感が高まり、韓国政府が適用除外や柔軟運用を求めたものの、交渉は容易ではないとされています。 韓国にとっては、メキシコ市場での価格競争力が関税面から直接圧迫される構図です。foley+1​

一方、日本企業にとって重要なのは、「同じメキシコ市場で、日本は日墨EPAやCPTPPを通じて協定税率を利用できる一方、韓国はMFN税率に直面する品目が出てくる」という非対称性です。 JETRO等の解説でも、今回のMFN関税率引き上げはFTA締結国の協定税率には直接影響せず、FTA非締結国との間で競争条件のギャップが拡大する点が指摘されています。mohawkglobal+2​

ここから先は仮説レベルの分析ですが、この状況は韓国企業にとって、「メキシコとの二国間交渉を再起動する」か、「CPTPP加盟を通じて協定ネットワークに組み込まれる」かの選択圧として働きやすいと考えられます。 韓国のCPTPP再検討は理念的な側面だけでなく、競争条件の是正という極めて実務的な動機が大きいとみるのが妥当です。clarkhill+2​


第4章 企業への影響を4つに分解する

ここからが本題です。企業が受ける影響は、大きく4つに分解すると見通しが良くなります。

1. 市場アクセス(関税と数量制限)

韓国がCPTPPに加盟すれば、現時点でFTAがない、または条件が相対的に不利な相手国・地域との取引で競争条件が変化します。 代表例がメキシコであり、現在、日本企業は日墨EPAやCPTPPを通じて協定税率を利用できる一方、韓国企業はMFN税率適用品目で不利な局面が生じています。 韓国が加盟することで、こうしたギャップが縮小する可能性があります。global-scm+3​

2. 原産地規則と累積の範囲(サプライチェーン設計)

CPTPPの実務では、原産地規則および加盟国間での「累積」の扱いがサプライチェーン設計に大きく影響します。 韓国が加わると、部材や工程を「CPTPP域内」としてカウントできる範囲が広がり、最適な調達先や生産地の組み合わせが変わり得ます。 CPTPPは包括的な原産地規則を持ち、既存の韓国FTAネットワークよりも累積の選択肢が広がる可能性があるため、原産地規則の運用を競争力の源泉とできる企業ほど優位性を高めやすくなります。mfat

3. ルール分野(デジタル、知財、国有企業、政府調達など)

CPTPPは関税削減にとどまらず、デジタル貿易、知的財産、国有企業、政府調達など幅広いルール分野を含む高水準協定です。 新規加盟国は既存の協定文に従う必要があり、国内法制や行政運用の調整が避けられません。 協定文書はニュージーランド外務貿易省等の公的リソースで公開されており、企業としても条文を直接参照しながらコンプライアンスや契約設計を検討することができます。cas+1​

韓国はデジタル経済分野の国際ルール形成にも積極的であり、2023年にDEPA(Digital Economy Partnership Agreement)への加盟交渉を実質妥結し、2024年に正式に加盟しています。 CPTPPのデジタル関連ルールへの適合という観点では、こうした取組が交渉基盤として参照される可能性があります。mfat+3​

4. 政治経済リスク(国内反発と交渉の不確実性)

企業が読み違えやすいのが、加盟に向けた政治・社会的ハードルです。韓国では過去にも農業・水産業を中心にCPTPPへの反発が強く、加盟申請を見送った経緯が報じられています。 加盟交渉が具体化するほど、農業生産への影響や食品・水産物をめぐる懸念、補償・セーフガード設計などの国内対策を巡る政治コストが増し、スケジュールが揺れやすくなります。everycrsreport+2​


第4章補足 3つの具体的シナリオ(仮説)

以下は、典型的な企業行動を想定した仮説的なシナリオです。自社の実態に合わせて読み替えてください。

シナリオ1 メキシコ向けに日本から完成品を輸出している企業

現状、日墨EPAやCPTPPの協定税率が使える設計であれば、韓国企業が同一製品をMFN税率で輸出する場合、関税差が価格競争力の差として表れやすくなります。 韓国がCPTPPに加盟して協定税率を利用できるようになれば、関税に起因する価格差は縮小し、競争の軸は品質、納期、現地サービスなど非価格要因にシフトしやすくなります。mohawkglobal+3​

シナリオ2 韓国で部材を調達し、CPTPP域内に輸出している企業

韓国がCPTPPに加盟すれば、累積の範囲が拡大し、一部の製品では原産性判定を満たしやすくなる可能性があります。 その結果として、「韓国調達を増やす」「韓国で一部工程を追加する」といったサプライチェーン最適化オプションが現実味を帯びます。原産地規則の設計をサプライヤー選定・工程設計に組み込める企業ほど有利になります。mfat

シナリオ3 日韓でデジタル・サービスを展開する企業

CPTPPは電子商取引やデジタル貿易に関する高水準のルールを含んでおり、新規加盟国はこれらの規律に適合する必要があります。 韓国はDEPA加盟を通じてデジタル分野の国際ルールへのコミットメントを示しており、CPTPPへの対応が進むほど、域内でのデジタル取引の予見可能性が高まり、契約条項やコンプライアンス設計の標準化が進めやすくなる余地があります。digitalpolicyalert+3​


第5章 日本企業はどう動くべきか:実務チェックリスト

韓国のCPTPP加盟は、「決まってから動く」と手遅れになりやすいテーマです。実務では、以下の順で準備するのが効率的です。

1. 自社の「韓国との関係」を棚卸しする

  • 韓国企業に部材・完成品を供給しているか
  • 韓国から部材・サービスを調達しているか
  • 韓国に生産拠点があり、そこからCPTPP域内へ輸出しているか
  • 韓国企業と第三国市場(特にメキシコ、カナダなど)で競合しているか

2. 競争条件が変わる国と品目を特定する

メキシコのように、FTAの有無で関税が大きく分かれる市場では影響が直撃します。 自社の貿易実績から、メキシコ向け、あるいはメキシコを含む北米供給網に関わる品目を優先的に洗い出すアプローチが現実的です。foley+3​

3. 原産地規則に基づくBOM再設計の余地を探る

韓国が加盟した場合、累積の範囲拡大によって原産性判定が通りやすくなるのか、逆に調達先変更で不利になるのかは製品ごとに異なります。 製品別の部材構成表(BOM)をベースに簡易シミュレーションを行い、インパクトが大きい品目から深掘りすることを推奨します。mfat

4. 「いつから効くか」を手続きの節目で追う

交渉開始前に、協定税率や原産地運用が変わることは通常ありません。 したがって、ニュースのトーンよりも、「正式通報」「作業部会設置」「市場アクセスオファー提示」など、前述の手続き上の節目をトリガーとして社内アクションを切り替える設計が有効です。cas+1​


おわりに

韓国のCPTPP加盟検討は、単なる通商ニュースではなく、企業の競争条件と供給網設計に直結するテーマです。 とくにメキシコの関税政策のように、協定ネットワークの差がそのままコスト差となる局面では、韓国の動きが加速するほど市場前提が変わっていきます。koreajoongangdaily.joins+3​

一方で、加盟は自動的に決まるものではなく、段階的なプロセスと全会一致の合意、既存の高水準ルールへの適合が求められます。 企業としては、加盟の成否を「当てにいく」ことよりも、競争条件が変化したときに即応できるよう、品目とサプライチェーン単位で準備を進めておくことが、最もリスクの低い対応と言えます。koreajoongangdaily.joins+2​

  1. https://global-scm.com/blog/?p=3774
  2. https://www.clarkhill.com/news-events/news/mexico-approves-significant-tariff-increases-on-imports-from-non-fta-countries/
  3. https://koreajoongangdaily.joins.com/news/2025-09-03/business/economy/Korea-to-reconsider-joining-CPTPP-as-US-and-China-tighten-trade/2390550
  4. https://www.mfat.govt.nz/en/media-and-resources/joint-press-release-on-the-accession-of-the-republic-of-korea-to-the-digital-economy-partnership-agreement
  5. https://digitalpolicyalert.org/event/19613-implemented-accession-of-the-republic-of-korea-to-the-digital-economy-partnership-agreement
  6. https://www.nippon.com/en/news/yjj2026010901026/
  7. https://www.investkorea.org/ik-en/bbs/i-5073/detail.do?ntt_sn=493042
  8. https://www.mfat.govt.nz/assets/Trade-agreements/CPTPP/CPTPP-CBF-Supply-Chains-Analysis-2023.pdf
  9. https://www.gov.uk/government/publications/cptpp-joint-ministerial-statement-in-jeju-16-may-2025/comprehensive-and-progressive-agreement-for-trans-pacific-partnership-cptpp-joint-ministerial-statement-16-may-2025
  10. https://www.cas.go.jp/jp/tpp/tppinfo/2025/pdf/20250516_cptpp_seimei_en.pdf
  11. https://www.cas.go.jp/jp/tpp/en/pdf/20250516_cptpp_seimei_en.pdf
  12. https://www.craneww.com/knowledge-center/trade-advisory-notices/mexicos-2026-tariff-reform/
  13. https://www.opportimes.com/en/tariff-increases-in-mexico-on-countries-without-trade-agreements-come-into-effect-on-january-1/
  14. https://www.koreatimes.co.kr/business/tech-science/20220102/interview-korea-seeks-role-of-linchpin-in-solving-supply-chain-challenges
  15. https://www.everycrsreport.com/files/2022-02-17_R41481_cd1582d184ddf1e3ea2cdaea764e572b3b2fb772.pdf
  16. https://www.gov.uk/government/publications/cptpp-joint-ministerial-statement-in-jeju-16-may-2025
  17. https://mohawkglobal.com/trade-translation/mexico-approves-tariff-increases-on-imports-from-non-fta-countries/
  18. https://www.foley.com/ja/insights/publications/2025/12/mexican-january-2026-tariff-tsunami-maquilas-arent-immune/
  19. https://www.korea.net/NewsFocus/policies/view?articleId=233916
  20. https://www.bilaterals.org/?south-korea-joins-depa-as-first
  21. https://www.kas.de/documents/287213/26295266/IPEF+Discussion+Paper+Series_The+Republic+of+Korea+and+the+IPEF.pdf/4bece26c-b648-23cf-c90d-423c5b6bdfca?version=1.0&t=1696318218947
  22. https://openjicareport.jica.go.jp/pdf/12376869.pdf
  23. https://www.jiia.or.jp/eng/upload/eng/JapanReview_Vol4_No2_Winter_2021.pdf
  24. https://keia.org/wp-content/uploads/2024/01/KEI_KoreaPolicy_2023_V1-I3_final-draft.pdf
  25. https://blog.crossborderboost.com/policy-paper-cptpp-joint-ministerial-statement-in-jeju-16-may-2025/
  26. https://www.congress.gov/crs-product/R41481
  27. https://www.iti.or.jp/report_121.pdf
  28. https://www.ioe-emp.org/index.php?t=f&f=156744&token=2128a312a06ee23015dfe7e69801803fc94a51ff
  29. https://www.whitecase.com/insight-alert/mexico-formalizes-and-expands-import-tariffs-more-1400-products-key-impacts
  30. https://www.kedglobal.com/business-politics/newsView/ked202509030011

韓国のCPTPPへの参加検討正式表明に関して、参加することはできるか?

1. CPTPPでは「約束を守る実績」が明確に条件に入っている

CPTPPは拡大の原則として、いわゆるオークランド原則を繰り返し確認しています。要点は次の3つです。

  1. 協定の高水準を満たす準備ができていること
  2. 貿易上のコミットメントを遵守してきた実績があること
  3. 加盟国のコンセンサスを得られること

この「遵守実績」が、まさにご質問の「国際約束を守れるか」を、制度上の評価軸に落とし込んだものです。

2. 日本側も公式文書で「加盟後の履行意思と能力」を強調している

日本の外交青書(2025年版)でも、加盟申請国について「高い基準を満たす能力があるか」だけでなく、「加盟後も履行し続ける意思と能力」を見極める、という趣旨が明記されています。
つまり日本としても、形式的な加盟条件より「実装して守り続けるか」を重視する立場を公式に取っています。

3. 実務上は、こういう形で「信頼性」が論点化する

CPTPPの加入審査は、候補国が提出する資料や質疑応答を通じて「守れるか」を検証する仕組みです。作業部会の付託事項も、候補国がCPTPP義務を遵守できることを示す文書の確認を含みます。

その結果、「信頼性」は次のような論点に変換されがちです。

  1. 国内法と運用がCPTPP義務に整合しているか
  2. 整合していない場合、いつまでに法改正や制度変更を行うのか
  3. 例外や経過措置をどこまで認めるか
  4. 紛争解決や透明性の運用を実際に回せるか

要するに「守ると言うか」ではなく、「守る状態を作れるか、作った後も維持できるか」という確認になります。

4. 韓国のケースで日本の懸念が表に出るとしたら

日韓間には、政治・外交の文脈で「約束の履行」への不信感が語られることがあります。ただCPTPPの場でそれを前面に出すより、先ほどのオークランド原則と整合する形で、

  1. 貿易約束の遵守実績
  2. 加盟後の履行を担保する制度設計
  3. 国内世論の理解と継続性

という論点で、日本が「コンセンサスに慎重」になるシナリオが現実的です。

5. いま時点での現実:日本が賛否を決める「審査段階」にはまだ入っていない可能性が高い

直近の韓国高官発言は「準備が整い次第、追加的な措置を講じる」という表現で、正式な加入要請を既に寄託国へ通報した、という言い方ではありません。
CPTPPは、まず寄託国ニュージーランドへの正式通報が起点になります。
したがって、企業実務としては「日本が信頼性を理由に止めるかどうか」は、正式要請が出て作業部会が動き出してから具体論になりやすいです。

韓国がCPTPP加盟検討を正式表明 次に何が起き、企業はどう備えるか


韓国政府がCPTPP加盟を正式に検討する姿勢を明確化し、2026年1月13日の日韓首脳会談でもこの議題が取り上げられる見通しです。今回のポイントは、韓国政府内の「検討段階」から、首脳・閣僚レベルの発言が重なり、対外的な論点として前面に出てきた点にあります。ビジネス実務に波及するのは中期戦になりやすいものの、サプライチェーン設計と競争条件に影響する動きとして、早期の情報収集と準備が求められます。nippon+1​

何が起きたのか

2025年12月17日、韓国の産業通商資源部が大統領への業務報告で、CPTPP加入を「積極的に検討する」と明らかにし、担当相は「来年の加入申請や内容について議論を始めた段階」「推進戦略をつくる」と述べました。加えて、日本産水産物の輸入停止問題が交渉の焦点になり得ることも示唆されています。yna

さらに2026年1月9日、韓国大統領府の国家安保室長は、1月13日の日韓首脳会談でCPTPPが議題になり得ること、韓国側も準備が整い次第追加措置を取る考えを示しました。李在明(イ・ジェミョン)大統領の政権は、米中への依存を低減し、多国間貿易を通じた経済基盤の多角化を目指す姿勢を鮮明にしています。euronews+1​

CPTPPの基本構造

CPTPPは、加盟国間で関税撤廃・削減だけでなく、投資、サービス、電子商取引、国有企業、政府調達など幅広いルールを持つ高水準の経済連携協定です。現在の加盟国は12か国で、英国は2024年12月15日に6か国との関係で正式に発効しました。donga+2​

実務面で重要な2つのポイントsice.oas+1​

寄託国はニュージーランド
加入要請や各種通知の受け皿はニュージーランドが務めます。

新規加入は全加盟国のコンセンサスが前提
加入プロセスでは、作業部会の設置や最終承認など、要所で全加盟国の合意が必要です。つまり、政治・外交論点がそのまま通商条件に直結しやすい枠組みです。apfccptppportal

韓国が今CPTPPを急ぐ背景

背景は複合的ですが、ビジネスに効く要因は大きく2つです。

米中依存を下げる「貿易の多角化」

韓国政府は、米中への過度な依存を低減し、多国間貿易の枠組みを通じた経済安全保障の確保を重視しています。CPTPPは、日本、オーストラリア、カナダ、メキシコ、ベトナムなど多様な市場へのアクセスを一括して改善する手段として位置づけられています。nippon+1​

メキシコを中心とした「非FTA国への高関税」

2025年12月、メキシコは非FTA国からの輸入品に対して大幅な関税引上げを決定し、2026年1月1日から施行しました。対象は1,400品目以上で、完成車50%、自動車部品25-36%、家電25-30%など、韓国の主力輸出品が直撃を受けています。whitecase+3​

メキシコ政府は、この措置が中国、韓国、インド、ベトナム、タイ、ブラジル、インドネシア、台湾、UAE、南アフリカなど、FTA未締結国からの輸入を標的にしていることを明記しています。韓国側では「CPTPP加入も韓メキシコFTAも失敗すると、日本は無関税を維持できる一方、韓国は高関税で不利になる」といった懸念が報じられています。koreatimes+3​

ただし、韓国産業通商資源部は、メキシコの中間財関税減免プログラムを活用する韓国企業が多いため、実際の影響は限定的との見方も示しています。yna

申請から加入まで

CPTPPは「申請したらすぐ加入」ではありません。典型的な流れは次の通りです。sice.oas+1​

  1. 寄託国ニュージーランドへ加入要請を通報
  2. CPTPP委員会が作業部会(AWG)設置などを判断
  3. ルール適合と市場アクセス(関税・例外・サービス等)の交渉
  4. 委員会がコンセンサスで条件を承認
  5. 加入文書を寄託し、条件が整った後に発効

参考までに英国は、2021年2月に寄託国へ加入要請を通報し、2023年3月に交渉を実質妥結、2024年12月に議定書が発効しました。コスタリカは2025年3月に第1回作業部会が開催され、同年8月までに第3回が実施されましたが、まだ交渉継続中です。gov+1​

この時間軸を見ても、韓国が「来年申請」を語っても、企業実務に波及するのは中期戦になりやすい点が重要です。

交渉の焦点

日本産水産物の輸入停止問題

韓国政府自身が、これが交渉の焦点になり得ると認めています。韓国は2013年以降、福島第一原発事故を理由に日本の8県からの水産物輸入を禁止しており、2014年には日本政府がWTO提訴も検討しました。wtocenter+1​

また韓国メディアでも、日本が輸入規制の解除を加入承認と結び付ける可能性があるといった観測が報じられています。japannews.yomiuri

農畜産・水産分野の国内調整

CPTPPは高水準の市場アクセスが求められ、国内調整が最大のボトルネックになりがちです。2021年の文在寅(ムン・ジェイン)政権時にも加入意向が示されましたが、農業団体などの反発と日韓関係の悪化により議論が停止した経緯があります。japannews.yomiuri

今回も、韓国側では「国民的共感が先行すべき」との指摘が出ています。japannews.yomiuri

高水準ルールへの制度適合

加入希望国は、既存ルールへの全面適合と、高水準の市場アクセス提示が求められます。ここは企業にとって、国内法改正や規制運用変更のリスクが出やすい領域です。apfccptppportal

日本企業へのインパクト

論点は関税に見えますが、企業実務で効くのは次の3つです。

サプライチェーン再設計の余地

韓国が加盟すれば、CPTPP域内の調達・生産・輸出で「域内扱い」になり得ます。原産地規則の組み立てが変わり、BOMやサプライヤー戦略を見直す局面が出ます。

メキシコなどでの競争条件

現状、メキシコは非FTA国を不利に扱う動きがあり、これが韓国企業の痛点になっています。韓国がCPTPPへ進めば、この非対称が縮む可能性があります。english.news+2​

日韓協業のテーマが増える

日韓首脳会談でCPTPPが議題になり得るとされ、経済案件として動きやすい環境が整い始めています。donga+2​

企業の実務チェックリスト

CPTPPで優遇税率を使っている品目を棚卸し
自社がCPTPP利用中の輸出入品目、適用している原産地判定ロジックを一覧化します。

韓国由来部材の比率を見える化
現時点では「非原産」として扱っている韓国部材が、将来「域内」となる可能性を仮置きし、原産地判定がどう変わるか試算します。

取引契約の関税条項を点検
関税変動時の価格調整、原産地証明の責任分界、遡及対応などを再確認します。

交渉イベントの監視ポイントを固定
韓国が寄託国ニュージーランドへ正式な加入要請を出したか、作業部会が立ち上がったかが最初の実務シグナルになります。

今後の見通し

直近の山は、2026年1月13日の日韓首脳会談です。ここでCPTPPがどの程度踏み込んで語られるかが、次の動きの温度感を決めます。tradingview+2​

一方で、韓国側報道でも「加入申請書をまだ提出できていない」とされており、少なくとも現時点は準備・調整フェーズと見るのが安全です。英国やコスタリカの事例を踏まえると、申請から発効まで2-3年以上を要する可能性が高く、企業は中長期の視点で準備を進めるべき局面です。japannews.yomiuri


注: 本稿は2026年1月10日時点の公表情報に基づく一般情報です。実際の交渉進展や発効時期は、政治・外交情勢と国内調整の進捗に依存するため、最終判断は一次情報と専門家確認で行ってください。

  1. https://www.nippon.com/en/news/yjj2026010901026/lee-takaichi-may-discuss-s-korea’s-cptpp-entry-at-upcoming-summit.html
  2. https://www.donga.com/en/article/all/20260110/6051484/1
  3. https://en.yna.co.kr/view/AEN20251217003500320
  4. https://www.euronews.com/my-europe/2026/01/09/eu-member-states-back-mercosur-deal-french-meps-vow-fight-in-parliament
  5. https://www.gov.uk/government/news/uk-to-join-cptpp-by-15-december
  6. https://www.ctpa.org.uk/news/the-uk-to-join-cptpp-by-15-december-2024-7910
  7. http://www.sice.oas.org/tpd/tpp/tpp_e.asp
  8. https://apfccptppportal.ca/accessions/process
  9. https://www.whitecase.com/insight-alert/mexico-formalizes-and-expands-import-tariffs-more-1400-products-key-impacts
  10. https://www.koreatimes.co.kr/foreignaffairs/20251219/seoul-urges-mexico-to-mitigate-impact-of-planned-tariff-hikes-on-korean-firms
  11. https://mohawkglobal.com/trade-translation/mexico-approves-tariff-increases-on-imports-from-non-fta-countries/
  12. https://english.news.cn/20260110/680b56baf17e4b1983c0d2c9c5126a02/c.html
  13. https://en.yna.co.kr/view/AEN20251212003000320
  14. https://wtocenter.vn/chuyen-de/3943-japan-threatens-south-korea-with-wto-complaint-on-import-ban
  15. https://japannews.yomiuri.co.jp/editorial/yomiuri-editorial/20250916-281193/
  16. https://es.tradingview.com/news/reuters.com,2026:newsml_P8N3XW050:0-south-korea-s-president-lee-to-visit-japan-january-13-14-for-summit-newsis-reports/
  17. https://www.marketscreener.com/news/south-korea-to-explore-possibility-of-joining-cptpp-finance-ministry-ce7e59d2d98ff720
  18. https://www.eria.org/news-and-views/south-korea-president-moon-jae-in-shows-interest-in-joining-cptpp-mega-trade-deal
  19. https://behorizon.org/trilateral-momentum-u-s-japan-south-korea-forge-deeper-strategic-alignment/
  20. https://www.clarkhill.com/news-events/news/mexico-approves-significant-tariff-increases-on-imports-from-non-fta-countries/
  21. https://www.foley.com/zh/insights/publications/2025/12/mexican-january-2026-tariff-tsunami-maquilas-arent-immune/

カナダで審議中「CPTPP 英国加盟の実施法案」とは何か

2026年1月10日時点、カナダ議会では、英国のCPTPP加盟をカナダ国内法として実装するための法案(Bill C-13)が審議段階にあります。結論から言うと、カナダがこの法案を成立させて批准手続きを完了しない限り、CPTPPはカナダと英国の間では使えません。 (カナダ議会)

本稿では、いま何が起きていて、ビジネス実務に何が影響するのかを、忙しいビジネスパーソン向けに整理します。


1. まず押さえる要点

・カナダでは「Bill C-13」が、英国のCPTPP加盟プロトコルを国内法に反映するための実施法案として審議中
・2026年1月10日時点のステータスは、下院の委員会審査(国際貿易委員会)に付託された段階
・法案が成立し、カナダが批准を完了しない限り、カナダ企業は英国向けにCPTPPの優遇関税や原産地ルールを使えない
・一方で、英国のCPTPP加盟はすでに一部加盟国との間で発効しており、カナダだけが「未接続」の状態になっている
・発効のカギは批准完了後のタイムラグで、基本は当該国の批准完了から60日後に適用開始になる仕組み (カナダ議会)


2. 何が遅れているのか

英国は2023年7月16日にCPTPP加盟の「加入議定書(Accession Protocol)」に署名し、CPTPPは「全員批准」または「一定数批准」で発効する仕組みです。15か月(2024年10月16日)を過ぎると、英国と少なくとも6か国の批准で、批准済みの国との間から先に動き始める設計になっています。 (GOV.UK)

実際に、英国と複数の加盟国との間では2024年12月に発効が進みましたが、カナダでは「カナダ向けの発効」がまだ来ていません。カナダ政府のCPTPP公式情報でも、英国加入議定書は「カナダでは未発効」と明記されています。 (外交課題カナダ)


3. カナダ議会の現在地:Bill C-13

カナダ側の実施法案は Bill C-13(英国加入議定書の実施法)です。

・2025年10月21日:下院に提出(第一読会)
・2025年12月11日:第二読会を終え、下院の国際貿易委員会(CIIT)へ付託
・2026年1月10日時点:委員会段階で審査待ち(委員会の当該案件で会合実績はまだ表示されていない) (カナダ議会)

つまり「これから委員会で条文精査や参考人招致などが進む」フェーズです。


4. Bill C-13 は何を変える法案か

ポイントは2つです。

4-1. 「英国がCPTPPの対象だ」と国内法の参照関係を整える

法案サマリー上、加入議定書を実施するために、各種法律の中でCPTPPの定義や参照の仕方を更新し、議定書を含む形に整合させる狙いが示されています。 (カナダ議会)

4-2. 関税実務の核心:カナダ関税率表に英国向けの新しい優遇枠を作る

実務担当者にとって最重要なのがここです。法案本文では、カナダの関税制度に「Comprehensive and Progressive United Kingdom Tariff(略称 CPUKT)」という英国向けの優遇関税区分を新設し、段階的な引下げ(ステージング)や端数処理、遡及しないことなど、運用ルールまで条文で組み立てています。 (カナダ議会)

条文には例えば次のような設計が見えます。
・CPUKTの最終税率が無税(Free)になる品目は「A」で表現
・段階引下げ品目は「F」や「X78・X79・X80」などのコードで、発効日または毎年1月1日の節目で税率が落ちていく
・ただし、カナダと英国の間でCPTPPが発効する前の期間には効かない(遡及なし)ことを明記 (カナダ議会)

ここは、施行後に通関・原価管理・販売価格に直結します。関税優遇を使う企業ほど、法案成立後の制度切替に備える価値が大きい部分です。


5. いつから使えるのか:発効までの流れ

ビジネス視点では「法案成立日」よりも、「カナダが批准を完了し、発効日が確定する日」が重要です。

一般に、英国加入議定書は、当該国が批准を終えると、その国との関係で60日後に適用が始まる仕組みだと説明されています。 (GOV.UK)

したがって、社内で見るべき時系列は次の通りです。

  1. Bill C-13 が議会で成立
  2. カナダ政府が批准手続きを完了
  3. 発効日が確定(目安は批准完了から60日後)
  4. 通関では、原産地証明と申告を揃えた企業から順に恩恵が出る

6. 日本企業にとっての実務インパクト

日本のビジネスパーソンに関係が深い論点を、現場目線でまとめます。

6-1. カナダと英国間の「優遇関税の取り方」が変わる

カナダ側でCPUKTが導入されると、通関現場では「英国向けのCPTPP優遇」を前提にした品目判定、税率参照、ステージング管理が必要になります。 (カナダ議会)
日本企業でも、カナダ拠点から英国へ輸出する場合や、英国製品をカナダに輸入して販売する場合に、価格戦略へ影響します。

6-2. 原産地ルールとサプライチェーン設計

CPTPPはルールが比較的詳細で、特に「原産地の取り方」が社内統制の対象になります。
カナダと英国の間でCPTPPが使えるようになると、原産地判定・証憑(サプライヤー申告、製造工程、材料証明など)の整備をCPTPP仕様に寄せる必要が出ます。
この部分は、関税メリットが大きいほど監査対応も含めて重要になります。

6-3. 競争環境

英国とカナダの間でCPTPPが動き出すと、関税条件が変わるため、同一商品でも競合の価格条件が変わり得ます。特に「段階引下げ」の品目は、年明けなど節目で条件が動く可能性があります。 (カナダ議会)


7. 企業が今やるべきチェックリスト

制度が動く前に、社内で先回りしておくと楽になります。

  1. 対象取引の棚卸し
    ・カナダと英国の売買があるか
    ・英国経由やカナダ経由のサプライチェーンがあるか
  2. 関税と原産地の準備
    ・対象HSの関税優遇が段階引下げか、即時無税か
    ・原産地判定に必要な証憑を、CPTPP基準で揃えられるか(サプライヤーから取れるか)
  3. 通関オペレーションの整備
    ・申告時の優遇税率区分(CPUKT)の設定
    ・ERPや関税マスタの更新手順
    ・監査対応の保存年限と保管場所
  4. 進捗モニタリング
    ・法案の委員会審査の進み具合
    ・批准完了と発効日の確定

法案の公式ステータスはLEGI Sinfoで追えます(現状は委員会付託中)。 (カナダ議会)


まとめ

カナダの Bill C-13 は、英国のCPTPP加盟を「カナダでも使える状態」にするための最後の国内手続きに近い位置付けです。審議が進んで成立すれば、カナダと英国の間でCPTPPの優遇関税や原産地ルールが実務に乗ってきます。 (カナダ議会)

ビジネス側は、発効後に慌てないために、対象取引の洗い出しと、原産地証憑と関税マスタの準備を先に進めておくのが現実解です。

韓国のCPTPP参加の現状まとめ―2026年1月3日時点の公開情報にもとづく―


はじめに

CPTPP(包括的・先進的環太平洋パートナーシップ協定)は、関税撤廃だけでなく、デジタル取引、投資、国有企業、競争政策、補助金、政府調達など、企業活動を支える経済ルールを高水準で統一する枠組みです。
韓国がこの枠組みに加わるかどうかは、実質的な日韓FTA発効に相当し、サプライチェーン設計や販売戦略の前提条件を大きく変える可能性があります。

現在の進捗状況

結論から言うと、韓国政府は2025年後半からCPTPP参加の検討を再び加速させていますが、2026年1月時点でニュージーランド(CPTPP寄託国)に正式な加盟申請を提出したという政府発表やニュージーランド政府側の通知は確認されていません。
つまり現在は、国内調整および加盟国への事前協議段階とみられます。
(出典: Invest Korea

2025年12月17日、韓国産業通商資源部は大統領報告を通じて、対中サービス分野のFTA推進と並行してCPTPP参加の再検討方針を明確化しました。これは部門レベルの検討から政府方針への格上げと見られます。
(出典: Korea Times, 2025年12月17日

また2025年9月時点でも、韓国政府がCPTPP加入検討を正式に再開する見通しが報じられており、過去に農水産業界の反発や日韓関係の冷え込みを背景に正式申請に至らなかったことが再び指摘されています。
(出典: Invest Korea

外交面でも、2025年10月の外務長官寄稿では「CPTPP参加を積極的に検討すべき」と明言され、地政学・経済安全保障の観点でも参加意義が強調されています。
(出典: 韓国外務省寄稿文

CPTPP加入プロセスの概要

CPTPPへの加盟は明確な手続きを経る必要があります。公表情報による一般的な流れは以下の通りです。

  1. 希望国が寄託国ニュージーランドに正式な加盟要請を提出する。
  2. CPTPP委員会(全加盟国で構成)が**全会一致の合意(コンセンサス)**で加盟交渉の開始可否を決定する。
  3. 承認されると**作業部会(アクセスション・ワーキンググループ)**が設置され、協定遵守能力や市場アクセス譲許内容を審査する。
  4. 全加盟国が最終的にコンセンサスで承認すると加盟が認められ、議定書署名・批准を経て正式加盟となる。

日本の内閣官房も、CPTPP加盟判断の基準として「オークランド三原則」(高水準ルール受容、約束履行の実績、全会一致原則)を明記しています。
(出典: 内閣官房資料

韓国が直面する主なハードル

  1. 国内調整の難航
     農水産業界の反発が最大の障壁とされ、正式申請を見送った過去があります。補償策や競争力強化策を含む政治的パッケージが必要不可欠です。
     (出典: Invest Korea)
  2. 加盟国間の合意形成(特に日本との関係)
     CPTPPでは全加盟国の同意が前提。日韓間の懸案事項(例:日本産水産物輸入制限)は交渉上の焦点になると見られます。
     (出典: Korea Joongang Daily, 2025年9月10日
  3. 加盟審査の順番と混雑
     CPTPP委員会は2025年11月の共同声明で、ウルグアイ、UAE、フィリピン、インドネシアを「オークランド三原則に沿う新規候補」と評価し、ウルグアイのプロセス開始を承認しました。他3カ国については、2026年に交渉開始の可能性があるとしています。韓国はこの時点の候補リストには含まれていません。
     日本政府の整理資料でも、正式な要請国として中国、台湾、エクアドル、コスタリカ、ウルグアイ、ウクライナ、インドネシア、フィリピン、UAE、カンボジアを挙げており、韓国は未掲載です。
     (出典: 内閣官房資料同上)

日本企業への実務的示唆

韓国がCPTPP参加に近づくほど、企業は二方向の変化に備える必要があります。

  • 競争条件の変化
     韓国企業がCPTPPルール下で域内アクセスを得れば、関税撤廃だけでなく投資・デジタル・サービスルールの整合性により競争条件が変わります。特に第三国市場での「原産地累積」活用を通じた競争力強化が想定されます。
  • サプライチェーン設計の再編余地
     加盟後は累積原産地範囲が拡大し、日本企業も韓国部材を含むサプライチェーンをCPTPP特恵適用設計に組み込みやすくなります。
     このため、BOM構成の再検討、調達先多角化、原産地証明書管理の標準化などが有効な先行対応になります。

2026年に注視すべきチェックポイント

次の4点が事実上の注目イベントです。

  1. 韓国が寄託国ニュージーランドへ正式加盟要請を提出する発表があるか。
  2. CPTPP委員会が加盟審査開始を決議し、作業部会が設立されるか。
  3. 日韓間の懸案(特に水産物輸入問題など)が整理されるか。
  4. 農水産分野の国内対策パッケージの具体化が進むか。
    (出典: Invest Korea)

おわりに

韓国のCPTPP参加方針は2025年末を契機に再び政治アジェンダとして浮上しました。ただし、2026年1月時点で正式申請はまだ行われておらず、国内・外交の調整局面にあります。
企業としては、正式要請提出と作業部会設立を分岐点とし、原産地設計・市場戦略の2シナリオを並行検討しておくのが実務上もっとも合理的です。
(出典: Korea Times, 2025年12月17日)



台湾のCPTPP加入は今どこまで進んでいるか


2025年末時点の検討状況と、企業が押さえるべき論点

台湾は2021年9月22日、CPTPP(TPP11)への加入を寄託国ニュージーランドに正式要請しました。ds-b
しかし2025年末時点で、台湾向けの「加入作業部会(Accession Working Group:AWG)」を設置するとの公式決定は確認できておらず、加入プロセスは“申請受理後の静止状態”にとどまっています。liskul+1

2025年11月21日にオーストラリア・メルボルンで開催されたCPTPP委員会の共同声明でも、今後の優先対象として挙げられたのはウルグアイ、アラブ首長国連邦(UAE)、フィリピン、インドネシアの4か国であり、台湾(および中国)への直接言及はありませんでした。liskul
台湾外交部は、この点について「台湾の申請が公正に処理されていない」として遺憾の意を表明しています。liskul

以下では、台湾加入の「検討が進みにくい構造」を、CPTPPの手続と直近の公式文書・報道から整理します。ds-b+1


1. 前提:CPTPP加入は「申請=交渉開始」ではない

CPTPPは新規加入を受け入れる枠組みを持ちますが、申請が受理された時点で自動的に交渉が始まるわけではなく、加盟国が委員会で合意しない限り、AWGは設置されません。ds-b
加盟国が採択した「Accession Process(加入プロセス)」では、少なくとも次のようなポイントが明確化されています。ds-b

  • 申請(Accession Request)を受理した後、加盟国は合理的な期間内に交渉開始の可否を協議する。
  • 交渉開始で合意すれば、AWG(加入作業部会)を設置し、加入条件やスケジュールを交渉する。
  • 合意に至らない場合でも、申請国は加盟国との協議(consultations)を継続でき、委員会は後日あらためてAWG設置を判断し得る。

このため、申請後にAWGが設置されない状態は「正式な拒否」ではなく、「コンセンサス不足により入口で止まっている状態」と理解するのが実務的です。ds-b


2. 台湾加入の現在地:公式タイムラインと2025年共同声明

2021年9月:台湾が正式申請

カナダ政府が公表するCPTPP関連タイムラインによれば、台湾(正式名称:Separate Customs Territory of Taiwan, Penghu, Kinmen and Matsu)は2021年9月22日、ニュージーランドに対しCPTPPへの加入要請を提出しています。liskul+1

2024年11月:コスタリカは前進、台湾はAWG設置に至らず

2024年11月28日にカナダ・バンクーバーで開かれたCPTPP委員会の共同声明では、コスタリカについてAWGを設置し、加入交渉に入ることが合意されました。ds-b
この判断は、加盟国が新規加入の基本原則として共有する「オークランド三原則(Auckland Principles)」に基づくと説明されています。ds-b

同時期の報道では、台湾についてはAWG設置が見送られ、台湾側が「政治的圧力に屈した」との不満を示したことが伝えられています。liskul

2025年11月:優先順位が明文化され、台湾は対象外のまま

2025年11月21日にメルボルンで開催されたCPTPP委員会の共同声明は、今後の加入拡大について次の点を明確にしました。liskul

  • コスタリカのAWGに対し、2025年12月の会合で進捗報告を行うよう指示し、早期決着を目指す。
  • オークランド三原則に沿う将来の加入候補として、ウルグアイ、UAE、フィリピン、インドネシアの4か国を特定。
  • まずウルグアイとの加入プロセスを開始し、残り3か国については2026年に「適切であれば」プロセスを開始すると明記。
  • これらの決定は「他の申請の検討を妨げるものではない」としつつ、2026年前半にも会合を開いて必要な追加決定を行う意向を示す。

ただし、共同声明本文は台湾と中国に一切触れておらず、台湾外交部は「台湾の申請が再び取り上げられなかった」ことに強い不満と遺憾を表明しています。liskul
結果として、台湾は申請国でありながら、「優先して交渉を進める4か国」には含まれていない、という位置付けが公式文書上も明確になりました。liskul


3. なぜ台湾は進まないのか:検討が止まる3つの構造要因

ここからは、CPTPPの公式文書に「理由」が明示されているわけではありませんが、公開情報と各国発言から見える構造要因を3点に整理します。ds-b+1

要因1 コンセンサス要件の重さ(政治的要素)

オークランド三原則の一つは、新規加入の判断が、加盟国全員のコンセンサスに依存する点です。ds-b
台湾の案件については、中国との関係も含めて各国の立場が分かれやすく、加盟国が足並みをそろえにくいことが、台湾側の発言や国際報道から繰り返し指摘されています。liskul

台湾外交部も「政治的圧力に左右されず、台湾の実績と高水準を評価すべきだ」と訴えており、政治要因がCPTPP委員会での合意形成のハードルを押し上げている構図がうかがえます。liskul

要因2 申請国の増加と“順番付け”の制度化

2024年以降、CPTPPは協定自体の「一般見直し(General Review)」と並行して、複数の加入申請をどのような順番と基準で扱うかを制度的に整理してきました。ds-b
2024年5月の共同声明では、将来の加入を公正かつ効率的に議論するため、加盟国間で情報共有や意見交換を行う常設的な非公式フォーラム(informal standing forum)の設置が記載されています。ds-b

その延長線上で、2025年11月の共同声明は「オークランド三原則に合致する4申請国」を特定し、ウルグアイからプロセスを開始、残り3か国は2026年に検討するという工程表を示しました。liskul
台湾はこの“優先レーン”に入っておらず、「申請済みだが、いつプロセスに乗るかが未定の国」として扱われているのが現状です。liskul

要因3 “高水準”確保に向けた実務・コンプライアンス面の厳格化

CPTPP加盟国は、新規加入国に対し「高水準の自由化」とともに、実務面での信頼性も重視しており、2025年11月声明でも、違法な迂回輸出(transhipment)や関税回避を防ぎ、継続的なコンプライアンス監視を行う重要性が強調されています。liskul
台湾政府は、関税や投資、デジタル貿易などでCPTPP水準に整合する法制整備を進めていると繰り返し発信していますが、加盟国が「いつ、どの場で、それをどう検証するか(AWGの場を含めて)」については、まだ政治的合意に至っていません。liskul

このため、技術的・法的な準備だけでは解決しきれない「政治・安全保障と通商ルールが交差する領域」で、合意形成が滞っていると整理できます。liskul


4. 日本企業への実務インパクト:現在と将来で切り分ける

今起きないこと:CPTPP特恵を前提にできない

2025年末時点で台湾はCPTPPに未加入であり、日本と台湾の取引にCPTPP特恵(関税削減、域内累積原産など)を前提とすることはできません。ds-b+1
当然ながら、原産地規則の累積も台湾は対象外であり、日本企業は日台二国間あるいは他協定(例:日台の投資協定等)を前提にサプライチェーンを設計する必要があります。ds-b

将来起こり得ること:加入後の設計余地

仮に台湾が将来CPTPPに加入すれば、日本企業にとっては次のような変化が生じます。ds-b+1

  • 台湾向け輸出でCPTPP特恵税率が利用可能になることによる価格競争力の変化。
  • 電機・精密機器・電子部品など、台湾を主要な調達拠点とする産業で、CPTPPの原産地規則に基づいた「域内累積」を再設計できる余地。
  • 台湾企業をサプライチェーンの中核に据えつつ、CPTPP域内の第三国向け輸出における原産地証明戦略を最適化できる可能性。

もっとも、現時点の公式工程表には台湾向けAWG設置のタイムラインは明記されておらず、企業としては「加入前提の投資や組替え」を先行させることはリスクが大きい状況です。liskul

したがって当面の実務としては、「台湾は未加入」を前提に制度設計を行いつつ、台湾の扱いが変化する兆候をウォッチし、シナリオ別の原産地戦略をあらかじめ検討しておく、というスタンスが合理的です。liskul


5. 2026年前半が最初の山場:企業が見るべきチェックポイント

2025年11月の共同声明は、2025年12月の会合に加え、2026年前半にもCPTPP委員会の会合を開き、必要に応じて追加決定を行う意向を示しています。liskul
台湾にとっては、このタイミングが「議題に取り上げられるかどうか」を確認する最初の明確な観測点となります。liskul

企業が注視すべきポイントは次の通りです。liskul

  • 2026年前半の会合後に公表される公式文書で、台湾に関する言及や位置づけに変化があるか(例:協議の進展、AWG設置の検討に言及があるか)。
  • 新たなAWGが立ち上がる場合、その対象国の組み合わせと説明ロジック(オークランド三原則との関係や、経済・安全保障面の言及など)。
  • 加入審査において、違法な迂回輸出や関税回避防止、継続的な履行監視といったコンプライアンス論点がどの分野で強調されるか(特に電機・機械・デジタル分野)。

これらを経営・調達・通商部門の共通KPIとしてモニタリングし、台湾がCPTPPプロセスに乗った場合に備えて、原産地戦略・工場配置・調達方針の複数シナリオをあらかじめ描いておくことが、2025年末時点で企業が取り得る現実的なアクションと言えます。

台湾のCPTPP加盟申請はどこまで進んでいるのか(2025年12月時点)


台湾は2021年9月22日にCPTPPへの加盟を正式に申請しました。公開情報ベースで整理すると、2025年12月末時点でも台湾向けの「加入作業部会(Accession Working Group)」は設置されておらず、加盟交渉の正式な入口に入れていない状態が続いています。mfat+1


前提整理:CPTPPは「申請=交渉開始」ではない

CPTPPは新規加盟を受け入れる枠組みを持ちますが、加盟申請があったからといって自動的に交渉が始まるわけではありません。apfccptppportal
加盟国は委員会(CPTPP Commission)で、各申請国ごとに加入プロセスを開始するかどうかを判断し、開始を決めた国ごとに加入作業部会(AWG)を設け、ルール順守や市場アクセス条件などを交渉していくのが典型的な流れです。apfccptppportal

この判断の際に繰り返し参照されているのが、いわゆるオークランド三原則です。要点は次の3つと整理されます。gov

  • CPTPPの高い水準・義務を全面的に受け入れる用意と能力があること
  • 既存の通商コミットメントをおおむね誠実に履行してきた実績があること
  • 加入に関する決定は、締約国によるコンセンサス(全会一致ベースの運用)によって行われること

このうち3点目、すなわち「コンセンサスが必要」という要件が、実務上もっとも大きなハードルになりやすい部分です。apfccptppportal


時系列で見る:台湾申請の現在地

2021年9月:台湾が正式申請

2021年9月22日、ニュージーランドはCPTPPの寄託国として、台湾からの加入申請を受領したことを公表しました。mfat
このタイミングで、中国(9月16日申請)に続き、台湾もCPTPP加盟を正式に目指すことが国際的に認識されるようになりました。congress

2024年11月:台湾向けAWGは設置されず、コスタリカは前進

2024年11月のCPTPP委員会では、コスタリカについては加入作業部会を設置し、アクセッション・プロセスを進めることが決定されました。gov
一方で台湾については作業部会設置が見送られたと報じられ、台湾政府関係者が失望と不満を表明したとする報道もあります。congress

2025年11月:優先順位が明確化し、台湾は依然として対象外

2025年11月21日にメルボルンで開かれた第9回CPTPP委員会の共同声明は、次にアクセッションを進める対象として、ウルグアイ、アラブ首長国連邦(UAE)、フィリピン、インドネシアの4か国を「オークランド三原則に沿う候補」として特定しました。gov
共同声明は、まずウルグアイとのアクセッション・プロセスを開始し、UAE・フィリピン・インドネシアについては2026年にプロセスを開始し得ると整理していますが、この文書のなかに台湾への直接の言及はなく、台湾向けAWGも設置されていません。gov

台湾側は、自国の加盟申請が他国に比べ公平に扱われていないとして遺憾を表明したと報じられています。peacediplomacy
もっとも、共同声明は「他の加盟申請の検討を妨げるものではない」とも明記しており、台湾の申請が撤回されたり、CPTPP側から正式に否定されたりしたわけではありません。gov


なぜ止まっているのか:実務上は「コンセンサスが作れない」

公式文書のレベルでは、「台湾がCPTPPの基準を満たさない」と明示的に断定している記述は示されていません。gov
むしろ、止まっている主因は、台湾案件をどのように扱うかについて、加盟国のあいだで政治的・外交的なコンセンサスが形成できていない、という構図と理解するのが自然です。congress

他方、2025年11月の共同声明は、ウルグアイ・UAE・フィリピン・インドネシアを次の具体的候補として位置づけつつ、「他の申請についての検討を妨げない」との一文を入れています。gov
したがって、実務的には台湾の申請は「否決された」のではなく、「棚上げに近い待機状態が続いている」と整理するのが妥当でしょう。congress


日本企業にとっての意味:いま起きること/起きないこと

いま起きないこと

台湾がCPTPPにまだ加盟していない以上、日本と台湾の取引にCPTPPの特恵関税や累積原産のメリットを適用することはできません。mfat
そのため、日本企業は対台湾の調達・生産・輸出の設計について、WTO税率や既存の二国間・地域協定、サプライチェーン全体のコスト構造を前提に最適化を図る必要があります。apfccptppportal

いま起きていること

CPTPPは拡大プロセスそのものを止めているわけではなく、2024年にコスタリカ、2025年にウルグアイが具体的に前へ進み、UAE・フィリピン・インドネシアも2026年にアクセッション・プロセスを開始し得る候補として整理されています。gov+1
企業の視点では、「台湾の加盟がいつ実現するか」を見込むよりも、これら他の候補国が先に加盟した場合の累積原産の組み替え余地や調達先の多様化効果を試算しておく方が、短期~中期の実益に直結しやすい局面と言えます。jef+1


2026年に向けたチェックポイント

  • 2026年前半の追加判断
    2025年の共同声明は、2026年前半にもCPTPP委員会を開催し、拡大に関する追加判断を行う意向を示しています。gov
    この場で台湾案件がどの程度議題として扱われるかが、今後数年の見通しを占ううえで最初の注目点になります。congress
  • 加盟国側の対外メッセージの変化
    台湾を名指ししない場合でも、オークランド三原則の具体的運用や、候補国の優先順位に関する説明のトーンが変わるかどうかは重要なシグナルです。gov
    特に「既存コミットメントの履行」や「経済的威圧への懸念」といった表現の扱いが変化するかどうかは、台湾のみならず他の候補国や既存加盟国を含めた政治・経済環境の変化を映す指標となり得ます。cas

免責:本稿は、各国政府・国際機関・報道機関が公表する一般的な情報を前提とした整理であり、個別の取引・関税・原産地判断を代替するものではありません。具体的案件については、協定正文、各国税関当局の運用、専門家の助言等に基づき確認してください。

  1. https://www.mfat.govt.nz/jp/trade/free-trade-agreements/free-trade-agreements-in-force/cptpp/common-questions
  2. https://apfccptppportal.ca/accessions/process
  3. https://www.gov.uk/government/publications/cptpp-joint-ministerial-statement-in-vancouver-canada-28-november-2024/comprehensive-and-progressive-agreement-for-trans-pacific-partnership-cptpp-joint-ministerial-statement-28-november-2024
  4. https://www.congress.gov/crs_external_products/IN/PDF/IN11760/IN11760.1.pdf
  5. https://www.gov.uk/government/publications/cptpp-joint-ministerial-statement-in-melbourne-21-november-2025/comprehensive-and-progressive-agreement-for-trans-pacific-partnership-cptpp-joint-ministerial-statement-21-november-2025
  6. https://peacediplomacy.org/2024/04/02/its-time-for-canada-to-break-the-cptpp-accession-logjam/
  7. https://www.jef.or.jp/journal/pdf/259th_Cover_Story_04.pdf
  8. https://www.meti.go.jp/english/policy/economy/industrial_council/pdf/250603008_03.pdf
  9. https://www.cas.go.jp/jp/tpp/tppinfo/2025/pdf/20251121_cptpp_seimei_en.pdf

CPTPPの中国加入が「見送り」状態にある理由と、実務への影響

中国のCPTPP加入申請(2021年9月16日提出)は、申請から時間が経っているにもかかわらず、いまだ「加入交渉を始める」ための加盟国コンセンサスが形成されておらず、アクセッション・プロセスの正式な開始に至っていない状態です。apfccptppportal+1
これは、加盟国側が中国の加入を明確に拒否する決定を行ったというよりも、アクセッション開始を決めるコンセンサスが成立していないため、手続が事実上停滞しているという構図と整理できます。cas+1

1. 直近の公式判断:ウルグアイを優先し、中国は対象外のまま

2025年11月21日に豪州メルボルンで開催された第9回CPTPP委員会(CPTPP Commission)に関する共同声明では、アクセッション手続の進捗について次のように整理されています。gov

  • コスタリカ:アクセッション作業部会(AWG)が既に設置されており、2025年12月までに交渉の進捗を報告するよう指示
  • オークランド三原則を満たすとみなされる候補として、ウルグアイ、アラブ首長国連邦(UAE)、フィリピン、インドネシアの4か国を特定
  • まずウルグアイとのアクセッション・プロセスを開始し、残る3か国については2026年に、適切と判断されればプロセスを開始
  • これに加え、他のアクセッション要請についても検討・議論を継続する意向を表明

この「4つの候補」の中に中国は含まれておらず、共同声明の文脈上も中国は「現時点で優先的にアクセッション交渉を進める対象にはなっていない」と整理するのが自然です。gov
他方で、CPTPPは中国、台湾、エクアドル、コスタリカ、ウルグアイ、ウクライナ、インドネシア等から正式な加入要請を受けていることが、各種レポートでも整理されています(ジェトロ等)。jef+1

2. 「見送り」とは何か:拒否ではなく、交渉開始の合意が作れない状態

CPTPPへの加入は、要請国が申請書を提出しただけでは進まず、CPTPP委員会がアクセッション・プロセスを開始することを決定し、加入作業部会(Accession Working Group: AWG)を設置して初めて本格的な交渉段階に入ります。apfccptppportal
中国の申請日は2021年9月16日と明確ですが、現時点までに中国向けAWGを設置する決定が行われたという公表情報はなく、アクセッション・プロセスが公式に立ち上がったとは言えない状況です。mfat+1

ここで鍵となるのが、アクセッション判断が「オークランド三原則」に基づくこと、および加入に関する決定はすべて締約国のコンセンサスに依存するという点です。cas+1
実際、申請当初からカナダを含む一部加盟国が中国(および台湾)の加入申請への明確な支持表明を控えているとの報道もあり、初期段階から慎重姿勢や政治的配慮が指摘されてきました。peacediplomacy

3. なぜ合意が作れないのか:実務的に効いてくる3つの論点

論点は多岐にわたりますが、企業実務の観点から押さえるべきポイントを3点に整理します。

論点A 「高い水準」を満たし続ける確度

日本政府(外務省)は、CPTPPの高い水準を満たす意図と能力を持ち、かつ既存の通商約束を履行しているかどうかを加入要請国ごとに慎重に見極める、という基本姿勢を示しています。mofa+1
企業実務としては、国有企業・補助金、デジタル貿易、知的財産、労働・環境、透明性・ガバナンスなどの分野で、「制度設計の形式的整合性」だけでなく、その運用実績や履行確度まで含めて評価される、という理解が重要になります。rieti+1

論点B 経済的威圧への警戒(加盟国側の問題意識)

第9回委員会に関する共同声明は、経済的威圧(economic coercion)に対する懸念と反対を明記し、こうした行為はCPTPPの高い水準や加盟国に期待される行動と整合しないと踏み込んでいます。cas+1
この種の文言は特定国名を挙げてはいないものの、加盟候補国を含む各国の行動様式全体が審査対象になりうる、というメッセージとして読み得るため、企業としても中長期リスクの一環として認識しておく価値があります。congress

論点C 地政学とコンセンサスの壁

豪州の有力紙Australian Financial Reviewは、中国のCPTPP申請について「加盟国間でコンセンサスがなく、申請の検討が遅れている」との認識を示しており、在豪中国大使へのインタビューでも同趣旨の質問が投げかけられています。china-embassy
一方で、中国はCPTPP水準との整合性をアピールする目的も含めて、海南自由貿易港のような制度実験を進めていますが、外交官や専門家からは「パイロット・プロジェクトだけでは不十分であり、全国的な制度改革と履行実績が求められる」との懐疑的な見方も示されています。reuters+2

4. 日本企業への実務インパクト:いま起きること/起きないこと

実務的には、当面は「中国がCPTPPに加入していない前提」で制度設計を行うのが合理的です。mfat+1

  • 対中輸出
    • CPTPPの特恵関税は対中取引には適用されないため、日本から中国向け輸出に関する関税・原産地の設計は、RCEPや日中二国間の制度枠組み等を中心に最適化することになります。congress
  • サプライチェーン・原産地設計
    • CPTPPの累積原産は原則としてCPTPP締約国間が対象であり、中国原材料の比率が高い製品は、CPTPP特恵の原産地基準を満たしにくくなる可能性があります。meti+1
  • むしろ注目すべき「増える可能性が高い国」
    • 2025年11月の共同声明では、ウルグアイとのアクセッション・プロセス開始に加え、UAE・フィリピン・インドネシアについて2026年にプロセスを開始し得ることが示されています。trademinister+1
    • これらが加入すれば累積原産の組み替えや調達先の多様化が可能となるため、企業にとっては中長期的なサプライチェーン再設計のオプション拡大という、より直接的な実益につながり得ます。jef+1

5. 2026年に向けたチェックポイント

  • ウルグアイの加入交渉の進捗
    • ウルグアイ向けAWGでの議論内容(センシティブ品目、移行期間、国有企業・サービス市場開放の扱いなど)が、今後の他候補国に対するベンチマークになる可能性があります。gov
  • UAE・フィリピン・インドネシアの加入プロセス開始の有無
    • 2026年中にアクセッション・プロセスを実際に開始するかどうかは、サプライチェーン戦略や投資戦略の前提条件として注視が必要です。trademinister+1
  • 議長国の交代
    • 2025年の議長国である豪州から、2026年にはベトナムが議長としてCPTPPの議論を主導する見通しであり、議長国の優先課題や対中スタンスがアクセッション議論のペースに影響し得ます。trademinister
  • 中国申請の「棚上げ」継続リスク
    • 中国の加入申請そのものが取り下げられたわけではなく、政治・経済環境の変化次第では再び議題として浮上する余地は残りますが、現時点では他の候補に比べ優先順位が低いポジションにとどまっていると評価するのが妥当です。english.scio+1

免責:本稿は各国政府・国際機関・報道等の公開情報に基づく一般的な解説であり、個別案件の法務・通関判断を代替するものではありません。具体的案件については、協定正文、国内実施法・通達、各国税関当局への照会等により確認してください。

  1. https://www.mfat.govt.nz/jp/trade/free-trade-agreements/free-trade-agreements-in-force/cptpp/common-questions
  2. https://www.cas.go.jp/jp/tpp/tppinfo/2024/pdf/20240518_cptpp_seimei_en.pdf
  3. https://www.gov.uk/government/publications/cptpp-joint-ministerial-statement-in-melbourne-21-november-2025/comprehensive-and-progressive-agreement-for-trans-pacific-partnership-cptpp-joint-ministerial-statement-21-november-2025
  4. https://apfccptppportal.ca/accessions/process
  5. https://www.cas.go.jp/jp/tpp/tppinfo/2025/pdf/20251121_cptpp_seimei_en.pdf
  6. https://www.jef.or.jp/journal/pdf/259th_Cover_Story_04.pdf
  7. https://www.jetro.go.jp/ext_images/hungary/pdf/globaltradeandinvestmentreport2025.pdf
  8. https://peacediplomacy.org/2024/04/02/its-time-for-canada-to-break-the-cptpp-accession-logjam/
  9. https://www.mofa.go.jp/policy/other/bluebook/2025/pdf/pdfs/3-3.pdf
  10. https://www.rieti.go.jp/en/papers/contribution/kawase/09.html
  11. https://www.congress.gov/crs_external_products/IN/PDF/IN11760/IN11760.1.pdf
  12. https://au.china-embassy.gov.cn/eng/dshd/202504/t20250402_11587111.htm
  13. https://www.reuters.com/world/china/china-launches-113-billion-free-trade-experiment-hainan-island-2025-12-18/
  14. https://www.newsweek.com/china-spends-113-billion-on-hong-kong-rival-roughly-the-size-of-maryland-11253923
  15. https://www.indexbox.io/blog/china-launches-hainan-island-as-separate-customs-territory-to-boost-trade-and-join-cptpp/
  16. https://www.meti.go.jp/english/policy/economy/industrial_council/pdf/250603008_03.pdf
  17. https://www.trademinister.gov.au/minister/don-farrell/media-release/australia-hosts-cptpp-trade-talks-melbourne
  18. http://english.scio.gov.cn/pressroom/2025-05/09/content_117866500.html
  19. https://www.trtworld.com/article/574bf26b97a2
  20. https://www.tbsnews.net/worldbiz/china/china-launches-113-billion-free-trade-experiment-hainan-island-1312926
  21. https://www.visahq.com/news/2025-12-18/cn/china-activates-island-wide-customs-closure-in-hainan-launching-us113-billion-free-trade-port/
  22. https://www.theasiacable.com/p/asia-daily-december-19-2025
  23. https://www.scmp.com/news/china/diplomacy/article/3081894/coronavirus-australia-calls-chinas-envoy-over-disappointing
  24. https://www.jef.or.jp/en/1-2.1_Han-koo_Yeo.pdf
  25. https://asiantradecentre.org/media-coverage-2
  26. https://www.azernews.az/region/251820.html
  27. https://www.uts.edu.au/news/2021/11/australia-prc-trade-and-investment-developments-timeline
  28. https://www.thediplomaticaffairs.com/2025/12/21/the-hainan-free-trade-port-as-a-strategic-economic-experiment/
  29. https://www.mfa.gov.cn/eng/xw/zwbd/202408/t20240809_11468867.html
  30. https://m.fastbull.com/news-detail/china-launches-113-billion-hainan-free-trade-port-4360787_0
  31. https://www.uktpo.org/briefing-papers/joining-the-cptpp-economic-opportunities-and-political-dilemmas-of-future-expansions-for-the-uk/
  32. https://english.mofcom.gov.cn/News/SignificantNews/art/2021/art_aaf18f91e7e14ce1831f926f16d9b2ee.html
  33. https://www.gov.uk/government/publications/cptpp-joint-ministerial-statement-in-vancouver-canada-28-november-2024/comprehensive-and-progressive-agreement-for-trans-pacific-partnership-cptpp-joint-ministerial-statement-28-november-2024
  34. https://www.csis.org/analysis/look-skeptically-chinas-cptpp-application
  35. https://www.dfat.gov.au/trade/agreements/in-force/cptpp/joint-ministerial-statement-occasion-ninth-commission-meeting-cptpp
  36. https://www.mfat.govt.nz/jp/trade/free-trade-agreements/free-trade-agreements-in-force/cptpp/have-your-say
  37. https://www.dfat.gov.au/trade/agreements/in-force/cptpp/commission-meetings
  38. https://publicprocurementinternational.com/wp-content/uploads/2025/08/2025_34_PPLR_Issue_4_Print_Press-Proof_Offprint.pdf
  39. https://www.dfat.gov.au/trade/agreements/in-force/cptpp/news
  40. https://globaldataalliance.org/wp-content/uploads/2024/08/08012024gdacptpp.pdf

TPPへの中国、台湾、韓国の参加申請・参加検討に関する私見

中国、台湾、韓国がTPPへの参加を表明または参加検討をすることがニュースになっています。

ニュースやYouTubeで「TPPへの中国、韓国の参加は無理。台湾歓迎」という論調をよく見ますが、FTAを利用する企業側からの視点でこのことを見てみましょう。

(申請に関する是非)

TPPに参加申請をする国は、TPPが定める申請・承認プロセスを経ることになります。申請する段階でその申請を断ることはできません。断る以上は明確な理由が必要となります。

そこで、参加希望国が条件を満たせるかを見定めればよい。中国がWTOに参加するときに遵守するとした条件を今だ守れていないこと、韓国が国際的な決め事を後に保護することなどを加味して各国が見定め、満場一致をもって参加を認めればいいことで現時点で一方的に締約国が「守れない」と主張するのは無理があります。

(日本にとっての経済的メリット、リスク)

RCEPはその協定の内容を見れば分かることですが、日本にとってのメリットが余り感じられない、あったとしてもとても時間がかかる内容です。特に自動車部品の対中国輸出ではメリットがほぼないと言えます。中国や韓国が入ることでメリットが大きいと思われたRCEPですが、実際は日本に取ってそれほど手放しでは喜べないものになっています。

翻って、TPPに中国や韓国が入るとどうなるか。TPPでは日本は米などよく守ったと思われる内容となっている一方で、日本以外ではほぼ100%の関税撤廃となっています。また、その撤廃速度もRCEPとは比べるまでもありません。新規参入の国は、締約国より参加条件がよくなるわけがありません。基本は譲許のスピードが速く、かつほぼ全面的に関税を撤廃することが前提になるでしょう。そうなれば、TPPの方がいろいろな制約のあるRCEPよりも日本企業に取って対中国、対韓国上、関税削減が広く、かつ鋼板に享受できるという活用のメリットが出ると言えます。このメリットはかなり大きなものです。この点だけを考えれば、中国、韓国のTPP参加は日本にとって歓迎すべき事です。

一方、原産地証明上、日本はリスクを背負う可能性があります。

TPPにおける関税低減・撤廃のメリットを得る為には、原産地証明書を輸出時のインボイスに添付する必要があります。その原産地証明ですが、TPPでは「自己証明」という形態をとっています。「自己証明」とは企業が原産性を証明した後に、自身で原産地証明を作成することが出来るということを指します。日EU EPAや日オーストラリアEPAを除き、日本の多くのEPAでは「第三者証明」制度がとられています。これは商品の原産性判定を日本商工会議所に申請し、許可が出た後で、日本商工会議所により原産地証明書を発給してもらうことが出来る制度です。間に日本商工会議所が入ることで時間と手間とコストが企業にはかかることになります。TPPではそれがないので迅速に原産地証明書を得る事ができます。メリットに思えますよね。

FTAでは、原産性が確かなものかを輸入国が輸入時・輸入後に確認できる「検認」が認められています。原産性に関する証拠書類の提出や質疑をして、原産性があることを企業が立証しなければいけません。

先の原産地証明書の発給プロセスで、日本商工会議所が間に入ったEPAでは、検認時には日本商工会議所が輸入国税関と企業の間に立ち、検認の対応を支援していただけます。「自己証明」である日EU EPAは、税関が仲立ちしてくれます。が、TPPはその仲立ちがなく、相手国税関から直接企業に「検認」の問い合わせがいく仕組みになっています。TPPに中国や韓国が入ることで、彼らから日本企業への検認は各国税関から直接企業にいくことなるのです。助太刀のない検認でかつ中国、韓国から。怖いと思うのは私だけでしょうか。「もう少し製造工程を明確にしてもらわないと、原産として認められない」といった製造上の機密情報を要求されかねないという人も居ます。これは考えるべき大きなリスクです。

(TPPのアキレス腱)

ルールを守らないと考えられている中国を経済的に資すると考えられるTPP参加、それを西側として阻止しなければいけないという外交上の日本のスタンスも分からなくもありません。が、TPPの初期交渉当時からかき乱して、そして離脱をしたアメリカの所業も決して褒められたものではなく、実際のTPPの協定文にはアメリカによって(ごり押しと言っていい)内容が数あります。現段階でのTPP締約国は苦々しく思っている内容です。アメリカが戻ってくることを期待して、そのままとしています。

アメリカが戻ってこないなら、締約国は修正したいところでしょう。自動車関連や特に繊維などはアメリカのごり押しの内容です。直したいというのも当然ですし、理想をいえば直すべきだと思います。が、協定内容を変えることを認めれば、ついでに様々なことが書き換えられる恐れがあります。それが中国の参加の際に書き換えられるとなればどうなるか。中国の参加を歓迎するアジアの締約国がマレーシアやシンガポールなど少なからずあるため、非現実的ではないのです。

(英国の参加申請が当面の試金石)

先に、英国がTPP加盟申請を行っているので、英国に対して、協定内容を変えずに協議するか、厳しい参加基準をどう遵守させるかが当面締約国による真偽の中で見守りたい点です。協定を変えることがなければ、中国や申請をした場合の韓国にも同様の措置がとられるでしょう。そうなればTPPの理念は守られます。

それと同時にかき乱してきたアメリカがTPPに参加するなら修正が必要といっており、かつ、TPP参加が現段階でのアメリカの優先順位ではないため、アメリカの動きも見ておく必要があります。

(中国の真意)

中国は本当にTPPに参加したいと思っているのでしょうか。RCEPという巨大メガFTAも完成目前で、「自由貿易」という意味では中国は成功しています。一方、TPPのルールを曲げない限り、中国は参加要件を満たさないのは明らかで、中国が参加要件を満たす施策を行うメリットはありません。また、TPPは「環太平洋」と謳っていますが、FTAは本来隣接する地域で有効なもので、実際には日本企業がTPPを使うのはEPAのないカナダやニュージーランドくらいで、それほどアクティブな利用はされていません。

そういうことを考えれば、台湾をTPPに参加できなくさせるのが中国の本意ではないかと思います。中国にとって台湾は自国の一部としての認識なので、台湾を独立した形で世界的にメジャーなFTAに参加させないことが肝心なのでしょう。

ほんとか嘘か分かりませんが、台湾がTPP参加申請を出すという情報を中国が知り、先に申請することで台湾の出鼻を挫いたと言われていますね。

今後の動きを見守っていきたいと思います。情報がありましたらまたこのブログに投稿します。