日本に対する相互関税のアメリカの大統領令

公式本文(英語・全文)

  • Executive Order: “IMPLEMENTING THE UNITED STATES–JAPAN AGREEMENT”(署名日:2025年9月4日)— ホワイトハウス公式サイトに全文が公開されています。The White House
  • 本命令は、7月31日付の大統領令14326(「Further Modifying the Reciprocal Tariff Rates」)を参照しつつ、日本向けの取扱い(“15%ベースライン”や複合税の扱い等)を明確化しています。The White House
  • 併せてホワイトハウスのファクトシート(2025年9月5日)も、枠組み合意の実施として位置づけています。The White House

※ 原文全文は上記リンクからお読みいただけます(この場では全文貼付を避け、主要部分の正確な抄訳を以下に示します)。


要点

  • 日本からの輸入品に対し、HTSUS「欄1(Column 1)」の従価税率が
    15%未満:欄1税率+追加関税の合計が15%になるよう調整
    15%以上:追加関税は0%(上乗せなし)
    → 相互関税の“積み上げ(スタッキング)”を避ける明確ルール。複合税(specific/compound)の扱いはEUと同様
    (令14326参照)。The White House+1
  • 遡及適用2025年8月7日 午前0時1分(米東部夏時間)以降に輸入通関(または保税蔵置から引取り)された日本産品に適用。過払があれば返金The White House
  • 自動車・自動車部品:Section 232(自動車関連の宣言)による追加関税に代えて、上記15%基準で扱う。The White House
  • 航空宇宙(民間航空機協定対象、無人機除く):既存のアルミ・鉄鋼・銅・相互関税の対象外へ移行(官報告示によりHTSUSを改正)。The White House
  • 特定品目の0%化:米国内で供給困難な天然資源ジェネリック医薬品(原薬・化学前駆体含む)は、商務長官の裁量で**相互関税を0%**にできる。The White House
  • 履行監視と変更:日本が合意履行を怠った場合、命令の見直し・強化もあり得る。The White House

主要条文の参考訳

※ 法的効力は英語原文が優先です。条番号は原文に準拠。

Sec. 1(背景)
2025年7月22日の米日フレームワーク合意を受け、その実施として本命令を発出。対日15%ベースライン関税を導入し、米国の製造・安全保障上の必要を満たす。日本側からの米国内5,500億ドル投資等のコミットメントにも触れる。The White House

Sec. 2(一般関税)
(a) 日本産品に適用する追加従価税率は、HTSUS欄1の現行税率を基準に決定。欄1が15%未満なら「欄1+追加=15%」。15%以上なら追加は0%特定税・複合税の処理は令14326(EU扱い)と同様
(b) これ以外は、令14257(相互関税の基本令)の規定が継続。
(d) 適用は2025/8/7 0:01(EDT)に遡及、過払返金は関係法令・CBP手続に従う。The White House

Sec. 3(航空宇宙)
WTO民間航空機協定に該当する**日本産航空宇宙製品(無人機を除く)**には、令14257鉄鋼・アルミの大統領宣言(9704/9705)銅(10962)による関税を適用しない。官報告示でHTSUSを改正。The White House

Sec. 4(自動車・部品)
官報告示の効力発生日以降、自動車・部品については、**宣言10908(Section 232自動車)**の追加関税に代えて、欄1が15%未満なら合計15%、15%以上なら追加0%The White House

Sec. 5(相互関税の適用除外品目)
商務長官は、日本産の国内供給が不足する天然資源ジェネリック医薬品・原薬・化学前駆体について、**相互関税率を0%**に改める裁量を持つ(合意履行状況や米国の国益等を考慮)。The White House

Sec. 6(監視と修正)
日本のコミットメント履行を商務長官が継続監視。履行不十分の場合は、本命令の修正等で対応し得る。The White House

Sec. 7–9(権限委任・他令との関係・一般規定)
実施のための規則改正・官報告示等を商務長官・国土安全保障長官に委任。既存の宣言・大統領令と矛盾する部分は本命令が優先。本命令は権利発生を意図しない一般条項を含む。署名は2025年9月4日The White House


関連する前提令(参照条項)

  • Executive Order 14326(2025年7月31日):EU向けの**「15%ベースライン/15%以上は追加0%」のロジックや、複合税の取扱いを定めた命令。今回の対日取扱いでも同一ロジック**を適用すると明記。The White House

国名関税率出所備考
アメリカ15%(対日ベースライン:欄1が15%未満は合計15%、15%以上は追加0%。自動車・部品も同基準/民間航空機は除外The White House(Executive Order, 2025/9/4)適用起点:2025/8/7(EDT)に遡及。一部品目は0%化可(資源・ジェネリック)。

出所:実施令「Implementing the United States–Japan Agreement」(2025年9月4日)、および令14326(2025年7月31日)。The White House+1


参考報道

  • ホワイトハウスのファクトシート(合意の位置づけと概要)。The White House

日本への相互関税の現在地と今後の見通し


要約

  • 米国の相互関税導入と日本への影響
    • 米国は4月の大統領令に基づき、一律10%の追加関税を導入。その後の修正により、**日本向けには「15%」**の相互関税が設定されました。
    • 本措置は2025年8月7日通関分から適用されています(HTSコード: 9903.02.30)。
    • なお、既存の通商拡大法232条に基づく追加関税(鉄鋼・アルミニウムは50%、自動車は25%)とは、原則として重複適用されません
  • 施行初期の混乱と実務上の注意点
    • 施行初期に一部で重複課税が発生しましたが、日本政府の働きかけにより、米側は是正と超過分の返還手続きを進めることを確認済みです。
    • 実務においては、改定された大統領令および米国税関・国境警備局(CBP)の最終的なガイダンスを常に確認することが不可欠です。
  • 法的な不確実性
    • 根拠法である国際緊急経済権限法(IEEPA)の有効性について、控訴裁判所が違法との判断を示しました。
    • 10月中旬までの執行猶予期間中に、最高裁判所の判断を待つか、政府が代替の法的根拠(232条の適用拡大など)を模索する可能性があります。
  • 米国以外の動向:EUのCBAM
    • EUや英国は相互関税を導入していませんが、EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)が2026年1月1日から本格的に導入(課金開始)されます。鉄鋼、アルミニウム、水素などをEUへ輸出する際に新たなコストが発生します。

対日相互関税の現状サマリー

※社内基準の統一表記で掲載

国名関税率根拠・出所備考
アメリカ15%大統領令(7/31修正)2025年8月7日発効。HTSコード 9903.02.30(相互関税)。<br>232条関税(鉄鋼・アルミ・自動車等)とは原則として積算されない。
  • 出所詳細: 大統領令14257号(4/2)およびその修正(7/31)、ホワイトハウス発表、CBPガイダンス、JETRO解説(重複適用回避の取扱いについて)

実務上の主要確認項目(対米輸出)

  1. 適用関税の優先順位
    • 相互関税(15%): 日本を原産地とする一般品目に適用(HTS 9903.02.30)。
    • 232条関税(国家安全保障): 鉄鋼・アルミニウムに50%、完成車に25%(4/3発効)、自動車部品に25%(5/3発効)。原則として相互関税とは重複適用されない(”unstacking”)。
  2. 輸送中貨物に対する経過措置
    • 2025年8月7日より前に船積みされ、10月5日までに輸入申告された貨物については、従前の関税率(当初の10%など)の適用が可能です。船積日、到着日、申告日を証明する書類を確実に保管してください。
  3. HSコード分類と申告実務
    • 相互関税の対象品目には、専用の追加HSコード(日本向けは 9903.02.30)を付記して申告します。申告の誤りは、二重課税や返金手続きの遅延に直結するため注意が必要です。
  4. 価格設定と契約条項
    • 取引契約書に含まれる関税スライド条項やインコタームズ(FOB/DDP等)を再点検し、関税負担者と、返金が発生した場合の権利帰属を明確に規定してください。
  5. 原産地規則とサプライチェーンの最適化
    • 232条対象の自動車部品では、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の要件を満たす部材の価額を課税対象から除外する制度が存在します。部品表(BOM)における米国調達部材の比率を精査することが有効です。

セクター別の影響と対応策

  • 自動車・自動車部品
    • 影響: 232条関税により25%が適用。相互関税15%は原則として重複しない。
    • 対応策:
      1. USMCA原産資格を活用し、米国調達価額分を非課税扱いとする。
      2. 完成車は米国内生産やCKD/IKD(ノックダウン生産)方式を検討する。
      3. 部品のHSコードを精査し、232条の対象外となる分類の余地を探る。
  • 鉄鋼・アルミニウム
    • 影響: 232条関税により50%が適用(6/3以降)。相互関税は重複しない。
    • 対応策:
      1. 北米市場向けの最終加工地を再設計する。
      2. 代替材料の利用可能性を検討し、ミルシート(鋼材検査証明書)を整備する。
      3. 価格条項に金属市況指数との連動を導入する。
  • 機械・電機・化学品(232条対象外)
    • 影響: 相互関税15%が適用される。
    • 対応策:
      1. 関税還付(Duty Drawback)制度や保税制度を最大限に活用する。
      2. 製品のHSコード分類を最適化し、より低い税率が適用されないか検討する。
      3. 米国内での組立工程を導入し、原産地を米国に変更する(ただし、「実質的変更」要件を満たす必要あり)。
  • 対EU輸出(鉄鋼・アルミニウム・水素など)
    • 影響: CBAMにより2026年1月1日から実際のコストが発生(報告義務は既に開始済み)。
    • 対応策:
      1. サプライヤーから製品の炭素排出原単位データを収集する。
      2. CBAMによるコストを試算し、価格への転嫁を計画する。
      3. 再生可能エネルギーの調達や、CO₂排出量の少ない製法への転換を検討する。

2025年秋〜2026年の見通し(シナリオ別)

  • S1: 相互関税が継続
    • (根拠: IEEPAの有効性維持、または新たな法制化・行政措置による代替)
    • 想定: 日本向け15%が維持され、232条関税も現行水準か、さらに拡大される。
    • 対策: 価格条項、部品表(BOM)、米国内投資戦略を恒久的なものとして再構築する。
  • S2: 司法的判断により相互関税が失効
    • (根拠: 10月以降にIEEPAに基づく措置が停止)
    • 想定: 相互関税は停止されるが、232条関税は別制度として存続する。
    • 対策: 納付済み関税の返還請求権を保全し、232条関税を前提とした販売条件へ移行する。
  • S3: 日米間の個別合意による微修正
    • 想定: 重複課税問題の完全な解消や、自動車・部品の扱い(例: 15%への一本化など)が明確化される。
    • 対策: 政府間の最終合意を待つことなく、社内業務フロー(SOP)や帳票の改訂を先行して準備する。

実務チェックリスト

  • [ ] 船積日と申告日の記録を徹底し、経過措置(8/7–10/5)への該当可否を確認する。
  • [ ] 仕入・販売契約書に関税スライド条項と返金条項を整備する。
  • [ ] HTSコードを再点検し、追加コード(9903.02.30)を正確に申告する体制を構築する。
  • [ ] 部品表(BOM)における米国調達価額のトレーサビリティを確保する(自動車・部品の232条対応)。
  • [ ] 各種FTA(USMCA, CPTPP, 日EU・EPA, 日英EPA)の原産地証明と域内原産割合(RVC)を適切に管理する。
  • [ ] CBAM対象品目の炭素排出量データを収集・試算し、2026年の課金開始に備える。
  • [ ] 関税の過払い等が発生した場合に備え、異議申立て(プロテスト)や事後修正(PSC)の申請フローを整備する。

主要用語と規則

  • 相互関税(Reciprocal Tariff): 米国が国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠に導入した、相手国別の追加関税。日本向けは15%に設定されている。
  • 232条関税: 米国通商拡大法232条に基づき、国家安全保障を理由に課される追加関税。鉄鋼・アルミニウムは50%、自動車・部品は25%。相互関税とは原則として重複適用されない。
  • 重複課税の是正: 当初の運用で生じた混乱に対し、日米両政府は是正措置を進めており、修正大統領令に基づき超過納付分の返還が見込まれる。最終的な公式文書の確認が必要。

欧米(米国―EU)「関税・通商フレームワーク合意」の本文とその日本語訳

公式本文(英語・原文)

  • The White House: “Joint Statement on a United States–European Union Framework on an Agreement on Reciprocal, Fair, and Balanced Trade”〔2025年8月21日〕。The White House
  • European Commission: “Joint Statement on a United States–European Union framework on an agreement on reciprocal, fair and balanced trade”〔2025年8月21日〕。Trade and Economic Security

どちらも同一の共同声明です。ホワイトハウス版と欧州委版で細部の表記が一部異なる箇所がありますが、内容は一致しています。The White HouseTrade and Economic Security


日本語仮訳(非公式・実務向け。原文構成に沿って整理)

*数値・日付・用語は原文準拠/条文番号は共同声明の番号に対応

前文
米国とEUは、互恵・公正・均衡な貿易に関する協定(以下「本協定」)の**枠組み(Framework)**に合意。二者間の巨大な経済関係を安定化・強化し、市場アクセスの改善と再産業化を後押しする第一歩と位置づける。The White HouseTrade and Economic Security

1. EUの関税措置
EUは米国の工業品関税を撤廃し、米国産水産・農産品(木の実、乳製品、青果・加工食品、種子、大豆油、豚肉・バイソン等)に優先的アクセスを付与。2020年8月21日発表のロブスター関税合意(2025年7月31日失効)を延長・拡充(加工ロブスターも対象)。Trade and Economic Security

2. 米国の基本関税線(対EU)
米国はEU原産品に対し、最恵国(MFN)税率15%のいずれか高い方(=MFN+相互関税の合計として15%)を適用。The White HouseTrade and Economic Security

(2の但し書き:MFNのみの例外/発効日)
2025年9月1日以降、以下はMFNのみ適用:希少天然資源(コルク等)/航空機・同部品/ジェネリック医薬品とその原料・化学前駆体。今後、重要分野の追加指定も検討。The White HouseTrade and Economic Security

3. 232関税の上限・自動車の扱い(発効トリガー)

  • 医薬・半導体・木材について、MFN+1962年通商拡張法232条関税の合計を15%上限に。
  • 自動車・部品(232関税対象)については、EUが第1項の関税撤廃に向けた立法提案を正式提出した同月の初日から適用変更:
    • MFNが15%以上の品目:232は不課(=MFNのみ)。
    • MFNが15%未満:**MFN+232=合計15%**に調整。
  • 232の変更は米国の国家安全保障と整合的に実施The White HouseTrade and Economic Security

4. 原産地規則(ROO)
本協定の利益が主として米国・EUに帰属するよう、ROOを協議・策定。The White HouseTrade and Economic Security

5. エネルギー・先端半導体
エネルギー供給の安全・多様化に協力。EUは2028年までに米国産LNG・原油・原子力関連を総額7,500億ドル規模で調達する意向。さらに米国製AIチップを少なくとも400億ドル購入。EUは米国流の技術セキュリティ要件を導入する方向で、整備後は米国が輸出円滑化に努める。The White HouseTrade and Economic Security

6. 相互投資
双方向投資を促進。EU企業が2028年までに米国戦略分野へ追加で6,000億ドル投資する見込み。The White HouseTrade and Economic Security

7. 防衛調達
EUは米国の軍需・防衛装備の調達を大幅増(米政府も支援)。NATO相互運用性を強化。The White HouseTrade and Economic Security

8. 非関税障壁・規格相互承認(自動車を含む)
非関税障壁の削減・撤廃で連携。自動車相互承認を目指し、規格機関同士の技術協力適合性評価の対象拡大を推進。The White HouseTrade and Economic Security

9. 食品・農産の手続簡素化
豚肉・乳製品の衛生証明の要求を簡素化する等、農食分野の非関税障壁に共同対処。The White HouseTrade and Economic Security

10. EUDR(森林破壊規則)
米国内の生産は森林破壊リスクが極小との前提に、EUDRが過度な影響を与えないようEUが対応Trade and Economic Security

11. CBAM(炭素国境調整)
デミニミス拡大に加え、運用上の更なる柔軟性をEUが提供する方向。Trade and Economic Security

12. CSDDD/CSRD(サステナ関連EU法)
過度な貿易制約にならないようEUが取り組む。中小企業の事務負担軽減民事責任・気候移行義務の見直しの提案、域外企業への過剰適用懸念にも配慮。Trade and Economic Security

13. 適合性評価・サイバー
米国の適合性評価機関を、1998年のEU・米国MRAに基づき無線機器指令(RED)の指定機関として認定可能。サイバーセキュリティのMRAも交渉。The White HouseTrade and Economic Security

14. 重要鉱物等の輸出規制への共同対応
第三国による輸出規制に対し、協調して備える。The White HouseTrade and Economic Security

15. 知的財産
高水準の知財保護・執行について協議。The White HouseTrade and Economic Security

16. 労働
国際的に認められた労働権強制労働の排除を含む)を強固に保護The White HouseTrade and Economic Security

17. デジタル貿易
不当なデジタル障壁を是正。EUはネットワーク使用料を導入しない電子的送信に関税を課さない方針を双方が確認し、WTOモラトリアムの継続・恒久化を目指す。The White HouseTrade and Economic Security

18. 税関・手続のデジタル化
EUは税関改革の実施・貿易手続のデジタル化について、米国および米国事業者と協議Trade and Economic Security

19. 経済安全保障の整合
サプライチェーン強靭化とイノベーションのため、投資審査・輸出管理・関税逃れ対策協力非市場的慣行や公共調達の相互性欠如への対応を含む。更なる実施措置に協働で取り組む。The White HouseTrade and Economic Security

結語
両者は各国内手続に従い、本枠組みを実施するための正式文書を速やかに整備する。The White House

米EUの「関税・通商フレームワーク合意」と日米の相互関税合意を要点比較

米EUの「関税・通商フレームワーク合意」と日米の相互関税合意要点比較したまとめです。(2025/8/22時点


要点

  • 関税の基本線
  • 自動車の発効トリガー
    • EU:EUが関税撤廃立法を“提案”した月の初日から米側が引下げ(遡及可)。Reuters
    • 日本大統領令で実施(準備中)。運用上の「二重課税」不備は修正・還付を米側が約束。Reuters+1
  • 非関税・調達/投資
    • EU電子的送信の関税不課/ネットワーク使用料を導入しないエネルギー$7,500億+AIチップ$400億購入対米投資$6,000億を明示。Trade and Economic Security
    • 日本政府系金融で最大$5,500億の投資ビークル(利益配分1:9で米側優先)、米車の追加試験免除米農産品・エネルギーの調達拡大Ministry of Economy, Trade and IndustryThe White House

主要な違い(ビジネスマン向け早見表)

論点米国―EU日本―米国
米国側の基本関税MFN or 15%(高い方)。15%はMFN+相互関税の合算Trade and Economic Security込み15%(MFNを含む)MFN≧15%は上乗せなしMFN<15%は15%にMinistry of Economy, Trade and Industry
自動車・部品現行27.5%→**15%**へ。EUが関税撤廃立法を“提案”した月の初日から遡及して適用。Reuters27.5%→15%に引下げる方向で大統領令を予告。文書整備は**“数週間以内”**と発言。Reuters+1
鋼鉄・アルミ(232)50%据え置き。将来のTRQ等協議の余地。Reuters公表文書に明記なし(別建ての232措置が継続する可能性、要フォロー)。Ministry of Economy, Trade and Industry
MFNのみの例外航空機・部品/ジェネリック医薬+原料/化学前駆体/コルク等MFNのみ9/1~)。Trade and Economic Security品目の明細提示なし(「日本を他国に劣後させない」方針のみ)。Ministry of Economy, Trade and Industry
デジタル電子的送信への関税不課継続、EUはネットワーク使用料を導入しないTrade and Economic Security特段の明記なし
エネルギー・サプライEUが米産エネルギー$7,500億分を2028年までに調達。AIチップ$400億購入対米投資$6,000億Trade and Economic Security日本が最大$5,500億の投資枠(政府系金融)。米農産品・エネルギー調達拡大。利益配分1:9を明示。Ministry of Economy, Trade and IndustryThe White House
非関税措置自動車の相互承認など規制協力を明記。Trade and Economic Security米国メーカー乗用車を追加試験なく受入れCEV補助金の運用見直しMinistry of Economy, Trade and Industry
文書の確度共同声明(3.5ページ)で条項を明文化ReutersTrade and Economic Security内閣官房の「概要」資料+ホワイトハウスのファクトシート中心正式文書は整備中で運用不備(二重課税)は修正・還付へ。Ministry of Economy, Trade and IndustryThe White HouseReuters

実務解釈のポイント

  • EU向けは“書面化済み”で適用条件が明確/品目例外も列挙
  • 日本向けは“原則15%”の骨格は固いが、運用・適用時期は大統領令の内容を都度確認(通関実務は特に)。Reuters

セクター別の使い分け(具体アクション)

  • 完成車・部品(EU→米)EUの立法“提案”時期に合わせて出荷・通関日を設計遡及を狙った在庫移送・価格見直しを検討。Reuters
  • 完成車・部品(日本→米)HS×MFN×15%の再計算を即実施。二重課税の還付可否大統領令の発効日をフォロー(受注条件は可変条項で)。Reuters
  • 医薬・半導体(EU→米)MFNのみ対象は9/1以降の通関に合わせる(契約インコタームズと価格条項の改定)。Trade and Economic Security
  • 酒類(EU→米)未決分野のため販促・価格は保守的に。Reuters
  • 対米販売のSaaS/配信電子的送信の関税不課を前提に価格モデル再検討(EU案件)。Trade and Economic Security
  • 対米投資計画(日本企業)$5,500億枠の適用条件・利益配分1:9を踏まえ、資金構造とJV条件を設計。Ministry of Economy, Trade and Industry

スケジュール感(公開情報ベース)

  • 7/27(米EU):首脳間で骨子合意。8/21に共同声明自動車は立法“提案”月の初日からReutersTrade and Economic Security
  • 7/22-23(日米):相互関税で**原則15%**に合意。概要資料(日本)、WHファクトシート(米)公表。Ministry of Economy, Trade and IndustryThe White House
  • 8/8(日米):米側が二重課税の不備を修正・還付と表明。自動車15%への引下げは大統領令で実施予定Reuters

相互関税の調査結果(要約)

※プロジェクト基準フォーマット

国名関税率出所備考
アメリカ(対EU:一般品)15%またはMFNの高い方欧州委 共同声明・Reuters Trade and Economic SecurityReuters鋼鉄・アルミは別建て50%。
アメリカ(対EU:自動車・部品)15%(EU立法“提案”月の初日から)Reuters Reuters現行27.5%から引下げ、遡及可。
アメリカ(対EU:鋼鉄・アルミ)50%Reuters Reuters当面維持、将来TRQ協議余地。
アメリカ(対EU:MFNのみ適用)MFN欧州委 共同声明 Trade and Economic Security航空機・部品/ジェネリック医薬+原料/化学前駆体/コルク等。9/1~
アメリカ(対日本:一般品)込み15%(MFN含む)内閣官房 概要(PDF) Ministry of Economy, Trade and IndustryMFN≧15%は上乗せなし/MFN<15%は15%。
アメリカ(対日本:自動車・部品)15%(MFN含む)内閣官房 概要+Reuters Ministry of Economy, Trade and IndustryReuters27.5%→15%。大統領令で実装予定。
アメリカ(対日本:運用)二重課税を修正・還付Reuters ReutersEUにあった“ノースタッキング”条項を日本にも適用へ。

ひとこと総括

  • EU合意は「条文化された枠組み」+具体リストで、運用の見通しが立てやすい。一方、
  • 日米合意は「原則15%」の骨格は明確だが、最終実装(大統領令)と細部運用のフォローが実務カギ。Reuters+1Ministry of Economy, Trade and Industry

日本企業のEPA利用輸出における原産性否認事例10選:その10

仕向国(税関)
オーストラリア


適用協定:
JAEPA 日オーストラリア EPA

対象商品(HS):
使い捨て手袋 (4015)

否認理由
マレーシア産ラテックス
→CTH不可

ロジスティックでは無料でのFTA業務チェックサービスを行っています。ご関心のある方はこちらからどうぞ

日本企業のEPA利用輸出における原産性否認事例10選:その9

仕向国(税関)
オーストラリア


適用協定:
JAEPA 日オーストラリア EPA

対象商品(HS):
両面接着テープ (3919)

否認理由
貿易書類に輸出日とCO日付が不整合

ロジスティックでは無料でのFTA業務チェックサービスを行っています。ご関心のある方はこちらからどうぞ

日本企業のEPA利用輸出における原産性否認事例10選:その8

仕向国(税関)
ポーランド


適用協定:
日EU EPA

対象商品(HS):
繊維製カーテン (6303)

否認理由
主要生地がASEAN原産で累積不可

ロジスティックでは無料でのFTA業務チェックサービスを行っています。ご関心のある方はこちらからどうぞ

日本企業のEPA利用輸出における原産性否認事例10選:その7

仕向国(税関)
オランダ


適用協定:
日EU EPA

対象商品(HS):
自転車フレーム (8714)

否認理由
RVC55 %基準に達せず

ロジスティックでは無料でのFTA業務チェックサービスを行っています。ご関心のある方はこちらからどうぞ

FTAの企業活用の流れ:日インドCEPA

昨今の企業のお仕事要望のほとんどが日インドCEPAの活用です。

トランプ関税の影響からか、他市場への販売の拡大を目指す企業が多いこと。インド企業からの日インドCEPAの利用を条件とした取引が多くなっていることが挙げられます。

前回のFTA戦略的活用研究会でも、インド向けの船の需要が大きくなっている印象を語っておられたメンバー様もいらっしゃいました。

ご存じの通り、日インドCEPAはCTCとVAの双方で証明をせねばならず、決して楽ではありません。

特にサプライヤ証明が必要な場合はそのサプライヤでもCTC+VAが必須となりますので、単独では、サプライヤの企業が難色を示すことが多く、当社のような第三者が間に入るとかえって有効に証明が出来ることが多いです。

日EU(イタリア)EPAで検認

お客さんからうれしいメールを頂戴しました。

私どもがアドバイスをした企業で、先日イタリアから日EU EPAでの検認を受けました。

アドバイスのおかげで、検認はスムーズにパスしたとのこと。

FTA、EPAの根幹をしっかり理解し、それを実践していれば検認は恐るるに足らず、ということですね。

対応がまだの企業は一度弊社の無料FTA監査を受けてみては如何でしょうか。

お問い合わせはこちらまで