FTAの検認保険は可能か

様々なところで、FTAの検認に対する保険は可能かという議論をさせて頂いています。

検認時に、否認された場合、保険金やペナルティを支払ってもらう保険が想定されるものです。

そもそもリスクがあるのか、正しい証明をすれば要らない、という観点に立てば保険が成立する可能性も現実ないきもしますが、現状の原産地証明の支援環境を考えると、経営としてはあると助かる部分でもあります。

保険として成立しないと考えるのは、やはり、検認確率が明確に出来ないこと。特に官庁は検認の発生に関する情報をほとんど開示していません。

保険は「大数の法則」に基づくもの。その根拠となるデータが開示されない限り、保険の商品化は難しいでしょう。協定によりその発生率も違うのは保険の成立を阻むもので、成立するとしても協定別の掛け率となると思われます。

また、自動車と同じで、証明する企業、人により証明の精度が違うため、自動車保険の「等級」の様なものが必要でしょうし、生命保険時の「問診」のような、証明能力の査定も必要となると思われます。

現実味が少々薄い保険ですが、「出来るとすればどうやればいいか」を検討することも決してムダではないので、出来れば次回のFTA戦略的活用研究会で少しでも討議したいと思っています。

企業のFTAに対する姿勢:日本企業、これでいいの

昨日、とある企業から弊社へ電話を頂戴しました。

「原産地証明の作成支援をお願いしたい。その前に、一つ聞かせてくれ。」

「当社は商品を輸出しているが、商品を仕入れているのみで作っていない。」

「メーカーに聞かず、当社の情報だけで証明した場合、罪に問われるか。」

面倒なのかちゃんとした情報を集めずに原産地証明をしようとする日本企業が多くあります。

証明に必要な情報がきちんとあるのであれば、当然問題はないですが、その場合、日本商工会議所も私の会社も「証拠書類に生産者の捺印をもらってくださいね。」とアドバイスしています。

情報が正しければ、問題なく生産者は捺印するからです。

捺印が出来ないとなると、面倒なのか、やましいところがあるからでしょう。

今、日本商工会議所の多くの事務所は、「捺印をもらってくれ」と指導しています。

しかし、日EUなどで自己証明が進展すれば、捺印をもらう義務がなくなります。証明は企業に委ねられ、証明姿勢がいい加減でも減産としての宣誓は出来てしまいます。

罪に問われるかどうかを考える前に、企業として証明する事への姿勢を考えてほしいものです。

FTAにおけるサプライヤ証明の証明品質を確実にするには

現在のお客様で、FTAのサプライヤ証明に対して、当方のアドバイスを汲み、迅速に対応している企業があります。

サプライヤ証明は、自社の証明品質の一部を他社に委ねてしまうもので、その企業が確からしい証明をしているかどうか正直測りかねる、厄介なものです。

納入される商品の品質は、検査することで確認できますが、サプライヤ証明は、その証明書を信じるか、証拠書類も提出させ、品質の自社管理におくかどうかという施策になりがちです。

ロジスティックとしては、以下の流れで対応しています。

  • 自社商品の証明パターンを最初に整理する
  • サプライヤ証明が必要でないような、またはできる限り少ないサプライヤ証明に出来ないかを考える
  • 該当するサプライヤを絞る。サプライヤの経営陣に
  • サプライヤ証明での原産地規則はCTCとし、VAを使わない
  • 自社でサプライヤ証明の証拠書類を作成し、サプライヤにその妥当性を検証してもらう。サプライヤに手間をかけさせない(かけさせる方が証明品質が不確実となる)
  • 問題なければ、証拠書類に捺印(サイン)をしてもらう

今のお客様はたまたま、サプライヤ協力会の会合があったため、上記の整理をした上で、

  • 協力会の会長に事前にサプライヤ証明の必要性とそのアプローチ方法を説明し、納得を得る
  • お客様の社長から、協力会でFTAに対する企業アプローチとサプライヤ証明に対する取り組み、協力の依頼をしてもらう

というプロセスを踏むことが出来ました。納得性を双方に作り出すことができ、サプライヤ証明の証明品質もまず問題なくなると思います。

FTAでの成功はやはり、経営者とサプライヤの理解が重要であることを再確認でき、うれしく思います。

 

サプライヤ証明:お願いする側の課題

最近のFTAに関するコンサルティングが多いのは「サプライヤ証明」をどうするかというものです。

サプライヤ証明は原産地証明の必要な部品の原産性を証明してもらうもので、ここが崩れると自社の証明も正しいものでなくなるので、大事な部分です。

昨今はサプライヤにFTAの原産地証明について対応してもらうための説明会を開き、証拠書類の作り方を説明する会社も増えています。

ただ、本当にそれで十分なのか、理解が足りているのか。

現実は、「サプライヤのFTA理解が不十分」というのが現状だと思います。

先日訪問した会社では、サプライヤ説明会の参集通知が来た場合、営業が参加するそうです。話を聞いて、それを本社に丸投げしてくるとのこと。参加した営業の価値は何だったのでしょうかね。

私がサプライヤ説明会を支援する場合は、必ず、「営業の参加があってもいいが、本社の担当者を呼ぶように」とアドバイスしています。ですが、半分以上の会社でそれを守って頂けませんね。

ケーススタディを用いたワークショップを行ったところで、効果もかなり限定的です。

説明会、ワークショップが限定的であれば、どうすればいいか。

現在、試行錯誤中ですが、方向性が見えてきた気がします。

どうすべきかは、またお話しするとしましょう。

ただ言えるのは、現在の状況ではサプライヤに依存した部分のある証明だと、問題を内包したままだと言うことです。

FTA原産地証明におけるリスクとその減らし方

最近、サプライヤ証明のリスクを感じることが多くあります。

依頼する側の認識不足は問題でありますが、サプライヤ証明を行うサプライヤの証明品質に依存するのはリスクが多くあることを痛感します。

FTAへの認識も広がっているとはいえ、残念ながらサプライヤが正しい認識をしているかと言えば、まだまだの状況だと言わざるを得ません。

証明書に捺印をするだけでいい、証拠はいらないという姿勢のサプライヤも少なくないのです。

このサプライヤ証明以外にも、証明上のリスクがいくつか存在します。日EU、TPP11と広がり、今後RCEP、アメリカがやってくると、証明業務量が飛躍的に増えるでしょう。それ以外にも検認数も増えてくるでしょうから、FTAの担当者は休まる暇がありません。海外間FTAの本社対応も仕事になると想像されます。

この環境下で実施すべきは、証明をいかに効率的にかつリスクを減らすかを考えることが肝心だと思い、コンサルティングのメインテーマにしています。特にサプライヤ証明の数を減らすこと、そして、実施する会社とは十分な情報共有を行うことが肝心ですね。

 

会社が大きくなると、やはり問題解決は難しくなるようです

昨日、FTAの監査報告を行いに、とある企業へ伺いました。

物流部が事業体のFTA支援をしている大きな会社なのですが、担当者が頑張っている中で、どうも、その部門の長ほかは関心がないようです。

FTAはサプライチェーンと同じで、部門間連携を取ることを求められますが、大企業では、個人は自分の領域にのみ関心があり、連携をとることに関心がないようです。

現実的には、この会社の原産証明は問題だらけです。今後のFTAの進展や、自己証明での体制では不安しかないと言っていい。

プレゼンテーションに対しても、部門の長含め管理職は感心のない姿勢で聞いていますし、部門調整を担当者に指示している。本来は長の仕事ではないかと思うのですが。担当者でできるなら、上長は要らないでしょう。

当方も監査報告は営業の場でもあるので、「当方でしたらこのようなコンサルティングサービスで問題解決のお手伝いができます」という提案をします。

部長はプレゼンが終わるや、「コンサルティングはサスペンド(発注しない)するとして・・・」といきなり当の私のいる前での発言。当然、当方の提案を受けるかどうかは先方の決断ですし、自由なのですが、メンバー間や当方との意見交換もなくこの言葉を私の前でいきなり発するのもどうかと。形だけでも「検討します」と言えば角は立たないのに。部長とは初対面なので、嫌われることはしていないはずですが・・・

先方のマナーはさておき、組織問題はやはり根深いものがあると同時に、結果的に自己証明における対応がばらばらのまま、進まざるを得ないのでしょうね。かなりのリスクをしょっているのですが、それが現実化しないと動かないのかもしれません。

担当者は「本当になんとか変えたい」と思っているようなのですが、声が届かないようです。

FTA活用講座 基礎編 2-5「FTAにおける原産とは」~FTAのメリットを享受するためのプロセス(5)~

戦略的FTA活用ハンドブック 2018年度版の解説ビデオのアップデートです。

YouTube によるFTA活用講座の新しいパートをアップしました。

基礎編 2-5「FTAにおける原産とは」~FTAのメリットを享受するためのプロセス(5)~

FTAでは、輸出する商品のHSコード毎に原産地規則が設定されており、原産であることを示すために、原産地規則を満たしていることを示す必要があります。 その原産地規則の見つけ方を説明します。

 

チャンネル登録をお願いしますね。

FTA活用講座:オンライン講座リスト

FTA協定を読み解く(原産地規則・品目別規則)

第三者証明における商工会議所での所要時間は長くなっているのか

本日、とある商社から、「商工会議所でのEPA原産地判定の所要時間が長くなっていて困っている。他にも同様の事態は起こっているのか」との電話がありました。

全ての案件において、原産地判定の証拠書類の提出義務がなされてから、判定までにとても長い時間がかかり、2週間では終わらないことが多くなったそうです。

FTA戦略的活用研究会でも判定に時間がかかったかどうかを訪ねたところ、長くなったという声もある一方で、既に1週間以上かかっていたので、現実的にはさほど問題とはなっていないという声も上がっています。

「どういう対策を練るべきですか」との質問を受けましたが、こればっかりは商工会議所の処理のバックオーダーが尋常ではない数になっていることから、「輸出に対し、ゆとりを持って申請をするしかない」と言うことしか当方は言えません。

日本企業の証明の品質問題もさることながら、余りにも細すぎる指摘を商工会議所が行うことも課題だと思っています。

FTAが使いたくてもこの環境では使えなくなりつつある事実。「企業に責任がある」のなら、官庁・商工会議所は不介入とすべきです。

ガンビアが国内批准を終え、AfCFTAは発効準備が整いました

52カ国が署名したアフリカ、いえ、国数では世界最大のAfCFTAの発効条件が整いました。ガンビアが国内批准を終えたために、批准国が22カ国となったためです。

AfCFTAは昨年の同時期に署名を終えています。発効条件に到達するのに1年かかりました。

素晴らしいことです。

 

FTA原産地証明でなぜ協定の原産地規則を読まないのだろうか

先日のFTA監査でもあったことですが、協定を読めばわかることを、読まないことで悩み、そして証明を間違えているケースがすくなくありません。

FTAの協定文はそのボリュームが確かに多い。ですが、原産地規則の章に限れば大したページ数はありません。

目を通しておくだけで、こういった問題は十分回避できます。

こうなる理由は二つだと思います。

一つは、協定の日本語文が読みにくいため。縦書き、法律文書の難しさから敬遠して読まない。

もう一つが、FTAの活用を促進したいがために、セミナーなどで気をつけるべき点を省略しており、誤認識を誘発している。

FTAを利用されるみなさんはぜひ、協定の原産地規則に立ち戻ることを是非ともお勧めしますq。