トランプ関税が日本の自動車産業に突きつけた現実~ゴールドマン試算を起点に、製造業の論点と打ち手を整理する~


2026年3月期に向けて、日本の製造業が直面している最大の不確実性のひとつが、米国の関税政策です。とりわけ自動車は、日本にとって最大の対米輸出品目であり、乗用車の関税が従来の2.5%から27.5%へ引き上がり得るという前提のもとで、経済への押し下げ影響が議論されてきました。(Reuters Japan)

この局面で注目を集めたのが、ゴールドマン・サックス証券のアナリストによる試算です。ロイターは、関税の影響を相殺するため各社が値上げし、その結果として米国での販売台数が減少するという前提のもと、2026年3月期の営業利益押し下げ額を報じました。(Reuters Japan)

ただし重要なのは、数字を眺めるだけでは本質が見えない点です。関税は「輸出のコスト増」であると同時に、「需要の価格弾力性」「北米のサプライチェーン構造」「事務負担とキャッシュフロー」まで含めた経営課題として現れます。本稿では、ゴールドマン試算を出発点に、ビジネスパーソンが押さえるべき論点を深掘りします。

1 まず前提を更新する:関税率は動き、制度も複線化している

最初に押さえるべきは、関税が固定された単一の税率ではなく、政治交渉や大統領令で前提が動くリスクそのものだという点です。

2025年3月時点の報道では、乗用車関税は2.5%から27.5%への引き上げが見込まれました。(Reuters Japan)

その後、ドナルド・トランプ政権は日米合意の枠組みを進め、日本から輸入される自動車の関税を27.5%から15%へ引き下げる大統領令に署名したとロイターが伝えています。(Reuters)

この枠組みは、ホワイトハウスの文書でも、原則15%をベースラインにしつつ、自動車と自動車部品など一部はセクター別の扱いがあると明記されています。(The White House)

さらに、制度面では「15%は既存のMFN税率に上乗せして積み上がるのではなく、原則として込みの扱い」といった設計も整理されています。(Congress.gov)

一方で、関税が15%になったから安心、とはなりません。ロイターは、15%でも従来2.5%の6倍であり、負担水準としては依然高いことを指摘しています。(Reuters)

また、日米合意での引き下げは、メキシコやカナダなど北米の主要生産拠点から米国へ出荷する車両には適用されない点も報じられています。北米の貿易協定の条件を満たす車両は米国以外の内容分に課税される仕組みなど、制度は複雑です。(Reuters)

ここまででわかるのは、関税リスクは単年度の損益だけでなく、制度変更や適用範囲の違いを織り込むマネジメントが必要だということです。

2 ゴールドマン試算を読み解く:同じ金額でも重みが違う

まず、2026年3月期の営業利益押し下げについて、報道ベースの数字を整理します。ロイターは主要5社の押し下げ額を報じています。(Reuters Japan)

加えて、三菱UFJ銀行の情報サイトであるMoney Canvasは、スズキを除く日系6社として、減少率も含めた形で紹介しています。(Money Canvas 学びながらできる投資 | 三菱UFJ銀行)

以下は、その整理です。

メーカー2026年3月期 営業利益の押し下げ試算営業利益予想に対する減少率の目安
トヨタ自動車3,400億円6%
ホンダ1,200億円8%
日産自動車1,100億円56%
マツダ1,100億円59%
SUBARU900億円23%
三菱自動車300億円22%

出所:ロイター報道の押し下げ額(トヨタ、ホンダ、日産、マツダ、SUBARU)およびMoney Canvasで紹介された6社整理。(Reuters Japan)

ここでビジネス上の示唆は明確です。トヨタの3,400億円は金額として最大ですが、減少率でみれば一桁台にとどまる一方、日産やマツダは半分超の水準が示されています。(Money Canvas 学びながらできる投資 | 三菱UFJ銀行)

同じ関税ショックでも、利益体力と米国市場依存度によって「耐え方」がまるで違うのです。

加えて、ロイターが報じた前提は、関税を相殺するための値上げと、その結果としての販売減です。これは、関税が単なるコスト増ではなく、需要側の反応を通じて数量とミックスを揺らす、という意味になります。(Reuters Japan)

3 なぜ自動車が最も揺れるのか:3つの構造要因

1つ目は、対米輸出における構造的な比重です。財務省の貿易統計としてロイターが紹介したところによれば、2024年の対米輸出は21兆2,947億円で、そのうち自動車は28.3%の6兆264億円と最大割合です。部品まで含めると34.1%の7兆2,574億円に膨らむとされています。(Reuters Japan)

つまり自動車関税の揺れは、完成車メーカーだけの話ではなく、サプライヤーを含めた輸出ビジネス全体の話になります。

2つ目は、雇用と裾野の広さです。ロイターは、自動車が全産業の1割を雇用する基幹産業であり、輸送用機器全体ではGDPの約3%を占めると伝えています。(Reuters Japan)

この規模感から考えると、関税の影響は企業単体の損益を超え、地域経済、下請け、物流、設備投資の意思決定まで波及します。

3つ目は、北米にまたがる生産と輸出の実態です。日本自動車工業会のデータとしてロイターが示したところでは、2023年の国内生産は899万9,000台で、輸出は442万3,000台、米国向けは148万5,641台です。(Reuters Japan)

また、各社の米国販売と現地生産、日本からの輸出、さらにメキシコを含む北米の生産配置まで具体的に報じられています。(Reuters Japan)

このように、関税は「日本から米国へ輸出する車にかかる」だけで終わらず、「北米域内で部品と車が国境を越えるたびに影響し得る」構造を持っています。

4 経営インパクトは損益計算書だけではない:キャッシュフローと事務コスト

関税議論が損益の話に偏ると、見落としが出ます。近年、現場で効いているのはキャッシュフローと実務コストです。

日本貿易振興機構(ジェトロ)は、在米の日系自動車関連企業へのヒアリングとして、関税コストの価格転嫁だけでなく、関税率変更による支払い負担、価格交渉、関税が前払いでキャッシュフローに影響する点、さらに書類作成など事務負担が増えている点を紹介しています。(ジェトロ)

つまり、関税は「利益率を削るコスト」だけでなく、「運転資金を圧迫する前払い負担」と「バックオフィスの工数増」を同時に発生させます。ここは製造業全般で共通しやすい論点です。

またジェトロは、米国の平均車両販売価格が2025年11月に4万9,814ドルで前年同月比1.3%増にとどまったとし、現時点では価格転嫁が限定的だという見方も示しています。(ジェトロ)

価格を上げ切れない局面では、利益の吸収とコスト削減が先行し、サプライチェーン全体の交渉が厳しくなります。

5 その後の現実:企業の見積もりはさらに大きくなることがある

ゴールドマン試算は重要な出発点ですが、その後の企業側の見積もりがさらに大きいケースが出ています。

ロイターによると、トヨタは米国向け輸入車関税などによる影響を約1.4兆円と見込み、2026年3月期の通期営業利益見通しを引き下げました。この見積もりには、米国内で日本から部品を輸入するサプライヤーが受ける影響なども含まれると説明されています。(Reuters)

ここから読み取れるのは、関税影響は「完成車の輸出分の単純計算」では収まらず、サプライヤー起因のコスト、域内越境の部品・車両移動、鉄鋼やアルミなど別関税の影響まで束ねて効き得るという点です。(Reuters)

また、ジェトロの整理でも、日系メーカーとしてトヨタ、ホンダ、日産、スバルが追加関税によるコストを試算していることが紹介されています。(ジェトロ)

数字の大小よりも、企業が外部環境を「見積もらざるを得ない」局面に入っていること自体が、投資計画や価格戦略の難易度を押し上げています。

6 ビジネスパーソン向け:自社で検討すべき打ち手の優先順位

最後に、製造業の実務としての打ち手を、優先順位の観点で整理します。ポイントは、関税率の議論に振り回されるのではなく、変動前提で動けるようにすることです。

1 価格転嫁の設計を、顧客別に分解する

一律の値上げは最も反発を招きやすい一方、何もしないと利益が削れます。製品別、顧客別、契約別に、どこまで転嫁でき、どこは数量が落ちるかを分解し、交渉の材料を事前に用意することが重要です。ジェトロのヒアリングでも、関税コストを開示して説明することで転嫁を進める企業がある一方、回収が遅れている例も示されています。(ジェトロ)

2 生産移管は、在庫と設備の時間軸で考える

生産移管は中長期の最適化ですが、短期は在庫政策と出荷ルートの見直しで凌ぐことが多い。特に北米では、メキシコやカナダから米国に入る車の扱いなど、適用範囲の違いが利益を左右します。(Reuters)

3 調達の現地化は、原産地要件とセットで見る

北米のサプライチェーンでは、原産地要件を巡る要求が強まることがあります。ジェトロは、米国OEMやティア1がティア2に対して北米以外から輸入された材料の使用中止を求める事例などを紹介しています。(ジェトロ)

現地化は調達先を変えるだけでなく、品質保証、監査、開発体制の再設計も必要です。

4 事務コストと資金繰りを、経営指標に組み込む

関税は前払いであり、書類の作成や申告手続きも増えます。これは販管費ではなく、キャッシュフローと運転資金、そして人員配置の問題です。(ジェトロ)

経理、物流、法務、調達が横串で動ける体制がないと、現場が詰まります。

5 公的支援や相談窓口を、早めに使う

国内では経済産業省が米国関税に関するワンストップの情報提供や相談窓口案内を行っています。自社だけで抱え込むより、制度確認や資金繰り相談を早めに繋ぐ方が、意思決定が速くなります。(経済産業省)

まとめ:製造業にとっての本当の論点は、変動前提の経営力

ゴールドマン試算の3,400億円は、確かに大きな数字です。しかし本質は、関税が利益を削るという一点よりも、制度変更が繰り返される中で、価格、数量、サプライチェーン、キャッシュフローが同時に揺さぶられることにあります。(Reuters Japan)

だからこそ、ビジネスパーソンに必要なのは、関税率の当てものではなく、どの税率でも破綻しない計画と、変更が来たときに即座に切り替えられる設計です。制度面でも、15%の扱いやセクター別措置、さらには履行状況によって見直され得る枠組みが整理されています。(Congress.gov)

製造業の強みは、本来、現場の改善とサプライチェーンの組み替えにあります。関税という外生ショックを、短期は守りの資金繰りと交渉で耐え、中長期は生産と調達の最適化で取り返す。その設計図を、今年度のうちに言語化しておくことが、2026年3月期の変動耐性を大きく左右します。


メキシコ自動車関税の即時実務整理

2026年1月1日施行の「関税引き上げ」を、経営判断と現場オペレーションに落とす

2025年12月29日、メキシコは官報(DOF)で輸入関税(IGI)を改定する政令を公布し、2026年1月1日から発効しました。対象は1,463の関税分類(タリフライン)に及び、税率は5%から50%まで引き上げられています。改定は多業種に広がりますが、完成車と主要部品が直撃領域で、サプライチェーンの意思決定を即座に迫る内容です。 (Sidof)

本稿では、関税率の事実関係を官報の条文ベースで押さえたうえで、輸出者(サプライヤー)と輸入者(メキシコ側)双方が「今日から何を変えるべきか」を、優先順位付きで整理します。


1 何が変わったのか

ポイントは「特定国向け関税」ではなく、「一般税率(IGI)の底上げ」です。メキシコと自由貿易協定(FTA)がある国であっても、協定の原産地規則を満たせない取引では一般税率が適用されます。つまり、実務上は「FTAを使えない輸入(または使わない輸入)」のコストが上がった、と理解するのが正確です。 (ジェトロ)

施行日は2026年1月1日です。官報の経過規定(Transitorios)で明記されています。 (Sidof)

加えて、同じ経過規定で、メキシコ経済省が「FTAが発効していない国からの輸入」について、国内の投入財確保の観点から追加の制度的手当てを実施し得る旨も書き込まれました。今後、例外措置やプログラムの調整が出る可能性があるため、改定後もウォッチが必要です。 (Sidof)


2 自動車で何が上がったのか

官報本文には、対象のHSコード(メキシコの関税分類)と税率が列挙されています。自動車関連では、完成車(HS 8703、8704)で50%が確認できます。あわせて、自動車部品(HS 8708)でも25%、35%、36%、一部7%など、品目により幅をもって設定されています。 (Sidof)

実務で効く範囲が伝わるよう、代表例を抜粋して示します(全件ではありません)。

区分代表例(メキシコ関税分類)政令で確認できる税率(IGI)コメント
乗用車8703.22.99、8703.23.99 ほか50%乗用車の複数区分で50%が列記
電気乗用車8703.80.01(電気、ただし中古を除く)50%EVでも50%が明記
貨物車8704.21.99、8704.31.99、8704.41.99 ほか50%トラック側も50%が列記
電気貨物車8704.60.02(電気、ただし中古を除く)50%商用EVも対象
部品(例)8708.10.03(バンパー類の一部)25%品目ごとに税率が異なる
部品(例)8708.40.08(ギアボックス用途の鍛造品の一部)35%部材系も対象に含まれる
部品(例)8708.29.06(車体関連の一部)36%25%以外の設定も存在

この改定は、報道上「非FTA国からの完成車が20%前後から最大50%へ」などと説明されることが多く、完成車・部品を中心にコスト上昇が見込まれるという整理は概ね一致します。 (El Economista)


3 経営に効く論点は3つだけ

現場には論点が大量に発生しますが、経営判断としては次の3点に集約できます。

論点1 FTAが使える取引か(使えている取引か)

今回上がったのは一般税率です。従って、同じ部品でも、協定税率で輸入できれば影響は限定されます。一方で、原産地規則が曖昧なまま輸出している、証憑が弱い、サプライヤー宣誓が遅れる、といった状態だと、一般税率適用で一気にコストが跳ねます。 (ジェトロ)

論点2 完成車か、部品か、部材かで打ち手が変わる

完成車は関税が価格に直結します。部品や部材は、メキシコ側の生産(調達)に乗るかどうかで、価格転嫁の構造が変わります。特に8708は税率が一律ではなく、部品表(BOM)単位で「どこが上がるか」を切り分ける必要があります。 (Sidof)

論点3 今後の例外・プログラム調整の余地がある

経過規定で、経済省が投入財確保のための法的手当てを実施し得ることが明記されました。現時点で何が出るかは確定していませんが、メキシコ側のプログラム(産業分野別の優遇制度など)に動きが出る可能性は、実務上の重要リスクです。 (Sidof)


4 即時にやること 72時間で終えるチェックリスト

ここからが本題です。輸出者が主体でも、輸入者(メキシコの通関主体)と握らない限り対策は回りません。最短で回る順番に並べます。

1 該当品目の棚卸し(HSコード起点)

・メキシコ向けの輸出品目を、完成車、主要部品、材料、設備に分ける
・各品目について、メキシコの関税分類(8桁)で通関しているコードを回収する
・官報の改定対象に入っているかを照合する(8703、8704、8708は優先) (Sidof)

ここで重要なのは、社内のHSコードではなく、メキシコ側で実際に申告しているコードに合わせることです。現場では「日本側の品目コード」と「メキシコ側の申告コード」がズレているケースが珍しくありません。

2 原産地の棚卸し(FTA適用可否起点)

・現行取引が協定税率で入っているか、一般税率で入っているかをメキシコ側に確認する
・協定を使っているなら、原産地証憑の型式、保管場所、更新頻度、例外品目の扱いを点検する
・協定を使っていないなら、使えない理由を分類する(原産性不足、証明が間に合わない、体制がない、など)

「FTA締結国だから大丈夫」ではなく、「原産地規則を満たし、証憑が揃い、申告が回っているから大丈夫」です。 (ジェトロ)

3 コスト影響の即時計算(価格改定の根拠を作る)

・対象品目について、関税率、課税価格(CIFベース)、輸入頻度を並べる
・関税増分を、部品単価、車両1台当たり原価、年間影響額に落とす
・誰が負担するか(売価転嫁、仕入値調整、物流条件変更、在庫吸収)を役員判断に上げる

完成車は50%が見える一方、部品は25%以外も存在します。品目別に計算しないと誤差が大きくなります。 (Sidof)

4 契約とインコタームズの見直し(揉める前に線を引く)

・関税増分を誰が負担するかを、契約条項と運用で一致させる
・価格条項の改定ルール(発効日、遡及、在庫の扱い)を明文化する
・メキシコ側での通関主体(輸入者)の責任範囲を明確化する


5 中期で効く打ち手 30日で設計する

短期対応の次は、構造対応です。

A 調達国と生産地の再設計

今回の改定は「非FTAルートのコスト上昇」を意味します。従って、調達国の選定や、メキシコ域内生産、FTA圏内調達への切替が、定石になります。報道でも、非FTA国からの輸入が影響を受ける構図が繰り返し指摘されています。 (Reuters)

B 部品表(BOM)単位での関税最適化

8708の中でも税率は一様ではありません。自社のBOMのどこが改定対象かを特定し、代替可能な部材から順に入れ替えると、費用対効果が出やすいです。 (Sidof)

C 例外・支援策のウォッチ体制

経過規定により、経済省が投入財確保のための制度手当てを行い得ることが明記されています。追加の告示や運用が出た場合、先に気づいた企業がコスト面で優位に立ちます。 (Sidof)


6 まとめ

今回のメキシコ関税改定は、完成車と部品の収益構造を短期間で変え得るイベントです。結論はシンプルで、やるべきことは次の順番です。

・メキシコ側の申告HSコードで改定対象を特定する
・FTA適用の可否を、証憑と申告運用まで含めて点検する
・増分関税を品目別に試算し、価格と契約に落とす
・中期では、調達国、生産地、BOMの再設計に踏み込む
・経済省の追加措置の可能性を前提に、官報・通達を継続監視する (Sidof)

日英EPAの乗用車関税撤廃(2026年2月)

2026年2月1日。ついに、日本とイギリスの間で大きな経済の節目が訪れます。日英EPA(包括的経済連携協定)に基づき、日本から英国へ輸出される乗用車の関税が完全に「ゼロ」になります。

2021年の協定発効から段階的に引き下げられてきた関税が、ついに撤廃されるこの瞬間。日本の自動車産業、そして現地の消費者にとってどのような意味を持つのか、深掘り解説します。


1. 2026年2月、何が起きるのか?

日英EPAでは、日本から輸出される乗用車にかけられていた10%の関税を、8年かけて段階的に削減するスケジュールが組まれていました。

  • 2019年〜: 日EU・EPAのスケジュールを継承(いわゆる「キャッチアップ」)。
  • 2021年1月: 日英EPA発効。この時点で関税はすでに削減の途上(約7.5%)。
  • 2026年2月1日: 関税率 0%(完全撤廃)が実現。

これにより、日本で製造された車両をイギリスへ輸出する際のコストが大幅に抑えられ、欧州メーカーや韓国・中国メーカーとの価格競争において、日本車が再び強力な武器を手にすることになります。


2. なぜ「今」この撤廃が重要なのか?

自動車業界が100年に一度の変革期(CASE)にある中、この関税撤廃は単なる「値下げ」以上の意味を持ちます。

① EVシフトへの強力な後押し

現在、英国市場では「ZEV(ゼロエミッション車)販売義務化」が進んでいます。関税がゼロになることで、日本メーカー(トヨタ、日産、ホンダ、マツダなど)は、高価になりがちなEV(電気自動車)やハイブリッド車の価格を抑えて市場に投入しやすくなります。

② 英国市場での「日本車ブランド」の再定義

イギリスは伝統的に日本車への信頼が厚い市場ですが、近年は他国メーカーの台頭も目立ちます。関税コストが消えることで、浮いた資金をマーケティングやインフラ整備、アフターサービスに投資できるようになり、ブランド力の再強化が可能になります。

③ サプライチェーンの最適化

日英EPAでは、自動車部品の多くが既に即時撤廃されています。完成車関税がゼロになることで、「日本でコア技術を製造し、英国で最終組み立てを行う」あるいは「日本から完成車を輸出する」といった戦略の選択肢が広がり、物流の最適化が進みます。


3. 注意点:「原産地規則」の壁

関税が0%になるとはいえ、無条件ではありません。ここで重要になるのが**「原産地規則(Rules of Origin)」**です。

ポイント:

車両の価値のうち、一定割合(付加価値基準)が「日本産」または「英国産」である必要があります。特にEVの心臓部であるバッテリーに関しては、原材料の調達先が厳しくチェックされます。

もし、バッテリーの主要部材を日本や英国、EU以外から調達しすぎると、「日本産」と認められず、0%の優遇税率を受けられないリスクがあります。メーカーはこのルールをクリアするための調達戦略を2026年に向けて緻密に練り上げてきました。


4. 消費者・ビジネスへの影響まとめ

視点期待される影響
日本の自動車メーカー輸出コスト削減による収益性向上、EV市場での価格競争力強化。
英国の消費者日本車の選択肢が増え、高性能なハイブリッド車やEVがより手頃な価格に。
物流・商社日本からの輸出台数増加に伴う、日英間の貿易活発化。

結び:2026年、日英経済の絆は次のステージへ

乗用車関税の撤廃は、日英関係が「ポスト・ブレグジット(英国のEU離脱)」の混乱を乗り越え、強固なパートナーシップを構築した象徴とも言えます。2026年2月以降、イギリスの街中で最新の日本車がより多く走る姿を目にすることになるでしょう。

これは単なる貿易の数字の変化ではなく、日本の技術が世界で選ばれ続けるための大きな追い風です。


「日英EPAによる乗用車関税の完全撤廃(2026年2月)」は、日本の自動車メーカーにとって、イギリス市場での競争環境を劇的に変えるゲームチェンジャーとなります。

具体的にどの車種が恩恵を受けるのか、そしてメーカーが直面する「原産地規則」という新たな壁について深掘りします。


1. 恩恵を直接受ける「注目の車種」

現在、イギリスで販売されている日本車の多くは「英国産」または「欧州産」ですが、日本から直接輸出されている高付加価値モデルが、今回の関税撤廃で最も大きな恩恵を受けます。

① レクサス(Lexus)全般

レクサスの多くは日本国内(田原工場など)で生産され、イギリスへ輸出されています。

  • 対象モデル: RX, NX, UX, RZ(EV), LC, LSなど
  • メリット: 高級車セグメントでは数%の価格差が大きな競争力になります。メルセデス・ベンツやBMWといった欧州メーカーに対し、より攻めた価格設定や装備の充実が可能になります。

② スポーツモデル・趣味性の高い車

「日本専売」に近い形で製造され、世界に輸出されるモデルも恩恵を受けます。

  • トヨタ: GRヤリス、スープラ、GR86
  • ホンダ: シビック Type R
  • マツダ: MX-5(ロードスター)これらはファンが多く、関税撤廃による価格維持(または値下げ)は、ブランドロイヤリティを高める要因となります。

③ 最新の輸入EV・ハイブリッド車

  • 日産:アリア(Ariya)
    • 日産の主力EVですが、英国サンダーランド工場ではなく日本の栃木工場で生産されています。これまでかかっていた関税がゼロになることで、テスラや中国メーカー(BYDなど)との価格競争が激化する英国EV市場で有利に立ちます。
  • マツダ・スバル:CX-60, アウトバック, フォレスター
    • 輸出比率が高いこれらのブランドにとって、英国市場は収益性の高いエリアに変わります。

2. 「原産地規則」の壁:2027年の崖

関税がゼロになっても、手放しでは喜べないのが**「原産地規則(Rules of Origin)」**の問題です。特にEVについては、2027年に大きなルール変更が控えています。

EVバッテリーの「現地調達率」ルール

日英EPA(および英EU間ルール)では、関税ゼロの適用を受けるために、車両価値の一定割合を「日本・英国・欧州」の部品で構成する必要があります。

期間車両の現地調達率(RVC)要求バッテリーへの要求
〜2026年末まで40%〜45%(緩和措置中)比較的緩やかな基準
2027年1月〜55%以上セル・材料の多くが現地産であること

この「2027年の崖」をクリアできないと、**せっかく2026年2月に関税が0%になっても、2027年から再び10%の関税が課される(=原産地ルール違反)**という事態になりかねません。


3. 各社の最新動向:生き残りをかけた戦略

メーカー各社は、この「2027年ルール」をクリアするために、サプライチェーンの再構築を急いでいます。

  • 日産自動車(EV36Zero戦略):英国サンダーランド工場の隣に、パートナー企業のAESC(旧エンビジョンAESC)と共同で**巨大なギガファクトリー(バッテリー工場)**を建設中。英国産のバッテリーを搭載することで、2027年以降も関税ゼロを確実に維持する構えです。
  • トヨタ自動車:英国バーナストン工場でのハイブリッド車生産に加え、欧州域内でのバッテリー調達を強化。また、日本から輸出するEV(レクサスなど)についても、日本産バッテリーの付加価値を高めることで「日本産」としての認定を維持する戦略をとっています。
  • マツダ・スバル:両社は日本国内での生産比率が高いため、パナソニックなどの国内バッテリーメーカーとの連携を強化しています。日本で「材料から一貫生産したバッテリー」を搭載することで、日英EPAのルール下で「日本産」として認められる付加価値比率を確保しようとしています。

4. ブログのまとめ:2026年は「攻め」、2027年は「守り」

2026年2月の関税撤廃は、日本車にとっての**「輸出の春」です。しかし、その直後に控える2027年の原産地規則厳格化は、「バッテリーの自給自足」**を迫る厳しい試練でもあります。

読者へのメッセージ:

「イギリスで日本車が安くなる!」というニュースの裏には、各メーカーによる壮絶なバッテリー調達競争と、国境を越えたサプライチェーンの書き換えがあるのです。


中大型車両向け232関税を実務目線で整理する


2025年11月1日以降、米国は通商拡大法232条にもとづき、中型・大型車両(Medium- and Heavy-Duty Vehicles, MHDV)、その部品(Medium- and Heavy-Duty Vehicle Parts, MHDVP)、バス等に追加関税を課しています。 現場が混乱しやすいのは、対象品目そのものよりも、Chapter 99(第99類)の番号が細かく分岐し、他の232関税や相互関税・IEEPA関税との優先関係を含めて申告ロジックを組む必要がある点です。whitehouse+3

本稿では、CBP(米国税関・国境警備局)がCSMS #66665333で示したエントリー処理指針を、日系企業が実務で使えるレベルまで落とし込んで整理します。govdelivery


1. 時系列と制度の骨格

  • 2025年10月17日付の大統領布告10984は、MHDVおよび特定MHDV部品に25%、バス等(HTS 8702の特定サブヘディング)に10%の追加関税を課す枠組みを定めています。whitehouse+1
  • 適用開始は、2025年11月1日0時1分(米東部時間)以降に「消費のために輸入」または「保税蔵置から消費のために引き出し」される貨物です。whitehouse+1

CBPはこの布告を受け、2025年10月28日付CSMS #66665333で輸入者・通関業者向けに、Chapter 99番号の使い分け、例外、申告上の留意点をまとめた「エントリー処理指針」を公表しました。buckland+1


2. 対象HTSの入口:どの品目が射程か

  • 車両(MHDV本体)は、主にHTS 8701、8704、8705、8706、8709のうち、USMCA用注記38(b)で列挙された特定10桁サブヘディング群が対象です。clarkhill+1
  • バス等は、同注記の(c)に列挙された8702の特定10桁サブヘディングが対象になります。whitehouse

代表例として、8701.21.00、8704.22.11、8705.40.00、8706.00.03、8709.11.00などのトラック・特殊車両用番号、バス側では8702.10.31、8702.40.61などが挙げられます(あくまで抜粋であり、権威あるリストはHTS本文および注記38の別紙とされています)。chrobinson+1

部品(MHDVP)はさらに広範囲で、ゴムホース、タイヤ、ガラス、ばね、ロック、エンジンおよびその部品、電装品、車体部品などが、40類・70類・73類・83類・84類・85類・87類・90類・94類といった複数章に散らばって列挙されています。htshub+1
ここが実務上の第一の落とし穴であり、日本側の感覚で「自動車部品」と一括りにしがちな品目でも、米国では「MHDV部品とみなすのか」「別用途としてMHDV関連の232関税の射程外とするのか」でChapter 99の選択が大きく分かれます。aacb+1


3. Chapter 99の全体像:どのコードを使うか

CBP指針の中心は、MHDV・バス・MHDV部品に関して、Chapter 99の9903.74.01〜9903.74.11を組み合わせて申告を構成する点にあります。govdelivery+1

3-1. 車両(MHDV)とバス

  • 9903.74.01:HTS 8701、8704、8705、8706、8709のうち注記38(b)に列挙されたMHDVに対して25%の追加関税。aacb+1
  • 9903.74.02:バス等(8702のうち注記38(c)に列挙されたサブヘディング)に対して10%の追加関税。chrobinson+1

整理用のコードとして、次のような例外枠も設けられています。

  • 9903.74.05:対象見出しに分類されるがMHDVに該当しないものは追加関税0%。whitehouse+1
  • 9903.74.07:輸入年の25年以上前に製造されたMHDV・バス・その他対象車両は追加関税0%。fedex+1

3-2. 部品(MHDVP)

  • 9903.74.08:U.S. Note 38(i)に列挙されるMHDV部品に対して25%の追加関税。htshub+1
  • 9903.74.11:見かけ上は注記38(i)の列挙HTSに当たるが、実態としてMHDV部品ではない場合に用いる0%の整理用コード。aacb+1

ここに、USMCAや用途証明(certification)に関連する特別なコードが加わります。govdelivery+1


4. USMCA絡み:車両と部品の扱いの違い

4-1. USMCA適格MHDV(車両本体)

布告10984は、USMCAの原産地要件を満たすMHDVについて、商務長官の承認を得た場合に「非米国コンテンツ部分」のみ25%を課す仕組み(9903.74.03と9903.74.06)を規定しています。whitehouse+1
一方で、CSMS #66665333は、非米国コンテンツ課税(9903.74.03)および米国コンテンツ側(9903.74.06)に関して、別途ガイダンスが出るまでは申告しないよう明確に指示しており、制度の枠は存在するものの実務運用はまだ開始されていない状態です。aacb+1

4-2. USMCA適格MHDV部品

部品については、USMCAの原産地要件を満たす「個別部品」について、原則として追加関税0%(9903.74.10)で申告できると整理されています(ただしノックダウンキット等の「部品詰め合わせ」は除外)。whitehouse+1
車両側は当面25%がフルにかかり得るのに対し、部品側はUSMCA適格であれば0%に落とせる可能性があるため、米国輸入者が原産地判定と証憑整備をどこまで行うかが、日系サプライヤーの価格・キャッシュフローに直接響きます。cassidylevy+1


5. 用途証明(certification)が求められる場面

CBP指針は、特に誤りが生じやすい部品領域について、輸入者が申告時点で「用途」を証明する仕組みを設けています。govdelivery+1

5-1. MHDV向け部品(9903.74.09)

  • 9903.74.09は、輸入者(Importer of Record)が「米国内のMHDV生産または修理用途に使用する」と証明した部品に適用される25%枠として定義されています。unisco+1
  • ただし、HTS72章・73章・76章(鉄鋼・アルミ等)に属する品目や、他の特定の部品枠に入る品目は対象外とされています。whitehouse

この用途証明は米国輸入者が行うものであり、日本側輸出者が単独で完結できません。輸出者としては、部品の仕様書、用途説明、投入される車種(MHDVか否か)など、MHDVへの投入実態を示す資料を事前に整備し、輸入者に提供できる状態にしておくことが重要です。aacb+1

5-2. 乗用車・ライトトラック部品の用途証明枠

今回のCSMSはMHDVだけでなく、乗用車・ライトトラック部品についても、米国内の生産・修理用途として使用する場合に適用されるChapter 99番号を示しています。govdelivery+1

  • 全世界一般の乗用車・ライトトラック部品で用途証明を行う場合は、9903.94.07で25%の追加関税を課す構造です。aacb

さらに、日本・EU・英国向けには差別化されたレート設計があります。

  • EUおよび日本については、通常税率(Column 1)が15%未満の場合、「通常税率+追加関税の合計が15%になる」よう設計されたコード(EU向け 9903.94.45、日本向け 9903.94.55)と、通常税率が15%以上の場合に追加関税0%とするコード(EU向け 9903.94.44、日本向け 9903.94.54)が用意されています。aacb
  • 英国については、合計10%になるよう設計された別枠(9903.94.33など)が設定されています。aacb

これらのコードでは、Chapter 99側に合計税率分の税額を計上し、通常のHTS行には価額のみを記載して税額0とする申告方式が明示されており、ACE上の記載癖として社内の通関チェックリストに反映しておく価値があります。govdelivery+1


6. ACE申告でのChapter 99の並び順

CBPは、Chapter 99を複数使用する際の「記載順序」について、CSMS #64018403で一般ルールを示しています。govdelivery+1

  • 原則:Chapter 98(該当があれば) → Chapter 99(追加関税等) → Chapter 1〜97(通常品目)という順序で記載すること。govdelivery
  • 貿易救済措置の並び順も明示されており、301条 → IEEPA → 232条・201条 → 割当、という優先順で積み上げるよう定められています。federalregister+1

今回のMHDV案件では、新設の232(9903.74)に加えて、相互関税(retaliatory tariffs)やIEEPA関連の追加税が絡む事案ほど、並び順の誤りによるACEリジェクトや誤課税が生じやすい構造になっています。govdelivery+1


7. 重複関税の扱い:累積させるものとさせないもの

7-1. AD/CVD等は原則上乗せ

CSMS #66665333は、反ダンピング(AD)・相殺関税(CVD)など、他法令にもとづく課税は、今回の232関税に加えて引き続き課されることを明示しています。govdelivery+1

7-2. 232系・相互関税等で「適用しない」もの

同CSMSは、MHDV・MHDVP・バス等について、銅・アルミ・鉄鋼およびその派生品に対する特定の追加関税(例:9903.01.77、9903.01.84など)が適用されないことを列挙し、一定の非累積ルールを示しています。aacb+1
これは、EO 14289(Addressing Certain Tariffs on Imported Articles)が定めた「複数の大統領措置が同一品目に重なる場合、不要なスタッキングを避ける優先順位付け」の枠組みとも整合しています。presidency.ucsb+2

7-3. 相互関税・IEEPAとMHDV 232の関係

CSMSは、特定の相互関税・IEEPA関連の追加税(9903.01.25など、9903.02.01〜9903.02.73の一部)が、MHDVおよびMHDV部品の一部(9903.74.01、.02、.03、.08、.09)には適用されないことを明示しています。govdelivery+1
さらに、MHDV・MHDVPにかかるChapter 99を申告する際に、相互関税やIEEPA関連追加税の免除を主張するためのコードとして、9903.01.33、9903.01.34、9903.01.83、9903.01.87等を使用する旨が示されており、実務上は輸入者と通関業者が「どのChapter 99をどの順に積むか」を個々の案件ごとに設計する必要があります。aacb+1


8. FTZ、ドローバック、Chapter 98のポイント

  • FTZ(外国貿易地域)に搬入する場合、2025年11月1日以降に搬入される対象品は、原則としてPrivileged Foreign Statusでの受け入れが求められ、後から有利な税率へ切り替える運用は取りにくくなっています。ghy+1
  • ドローバックについては、MHDV部品および特定の自動車部品に対する232関税に限って、Direct IdentificationとSubstitution Manufacturingの範囲で認めると整理され、その他のタイプは対象外とされています。govdelivery+1
  • Chapter 98の利用時も原則として232追加関税はかかり、9802.00.60については仕向け時のフルバリューに対して課税される点が明記されています。aacb+1

9. 日本企業が今すぐ取るべき実務アクション

9-1. 「HTS番号だけ」で該当性判定を終わらせない

注記38の別紙リストに含まれるHTSであっても、MHDVに該当しない車両やMHDV部品に該当しない部品については、整理用コード(9903.74.05、9903.74.11)を用いて0%に落とせる余地があります。whitehouse+1
そのため、輸出側は品名・用途・搭載先(MHDVか、乗用車か、汎用品か)を米側に説明できる状態にしておくことが必須です。buckland+1

9-2. 用途証明に備えた証跡パッケージの準備

9903.74.09や9903.94.07等は、米国輸入者による用途証明が前提条件です。whitehouse+1
輸出者側で、製品仕様書、適用車種、取引条件、組立・修理工程における投入方法などが分かる資料パッケージを整えておくことで、通関時のリジェクトや事後監査のリスクを大きく抑えられます。ghy+1

9-3. 申告の並び順と税額計上ルールを事前にすり合わせる

Chapter 99の積み方は、ACE上の記載順序がそのままエラー要因になります。govinfo+1
特に相互関税・IEEPAが絡む企業は、CSMS #64018403とEO 14289に基づく優先順位を前提に、通関業者と社内手順書をアップデートしておく必要があります。presidency.ucsb+1

9-4. USMCAは「車両」と「部品」で優先順位が違う

車両側の非米国コンテンツ課税枠(9903.74.03、9903.74.06)は制度として箱があるものの、CBPが「追って指示」としているため、短期的には25%のフル負担を前提にせざるを得ません。whitehouse+1
一方で、部品側はUSMCA適格であれば0%(9903.74.10)で申告できる枠が明確なため、原産地判定と証憑整備の優先順位を「部品」側から着手する戦略が現実的です。whitehouse+1


おわりに:日本側ができる最大の支援

中大型車両向け232関税は、税率(25%・10%)そのものよりも、Chapter 99の運用、他の追加関税との非累積ルール、相互関税・IEEPAとの関係整理が実務の中心になります。 CBPはCSMSを通じて、対象HTSリスト、申告コードの分岐、用途証明、ACEでの並び順、FTZやドローバックまで一通りの論点を提示しており、これをどこまで自社手順書に翻訳できるかが勝負です。govdelivery+3

日本側の輸出者ができる最大の支援は、米国輸入者が正しく申告できるだけの「用途と実体が分かる情報」を最初から揃えて渡すことです。 Chapter 99が複雑な局面ほど、最初の設計がそのままコンプライアンスとコストの差になるため、品目・用途・原産地情報を一体で設計する視点が求められます。govdelivery+3

  1. https://content.govdelivery.com/accounts/USDHSCBP/bulletins/3f93b75
  2. https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/10/adjusting-imports-of-medium-and-heavy-duty-vehicles-medium-and-heavy-duty-vehicle-parts-and-buses-into-the-united-states/
  3. https://www.whitehouse.gov/wp-content/uploads/2025/10/2025MediumandHeavyDutyVehicles.Parts_.Buses_.section232.prc_.rel-ANNEX.pdf
  4. https://www.aacb.com/trade-tariff-news/section-232-duties-on-medium–and-heavy-duty-vehicles-mhdvs-medium–and-heavy-duty-vehicle-parts-mhdvps
  5. https://content.govdelivery.com/accounts/USDHSCBP/bulletins/3e0a63e
  6. https://www.buckland.com/news/entry-filing-guidance-for-new-u-s-tariffs-on-medium-and-heavy-duty-vehicles-parts-buses/
  7. https://www.clarkhill.com/news-events/news/section-232-tariffs-expand-to-medium-and-heavy-duty-vehicles-parts-and-buses/
  8. https://www.chrobinson.com/en-us/resources/insights-and-advisories/client-advisories/2025q4/10-20-2025-client-advisory-section-232-tariffs-on-imports-trucks-truck-parts-and-buses/
  9. https://www.htshub.com/us-hs/detail/99037408
  10. https://www.fedex.com/content/dam/fedex/us-united-states/International/Implementation_of_Section_232_tariffs_on_medium_and_heavy_duty_vehicles_parts_and_buses.pdf
  11. https://www.cassidylevy.com/news/section-232-tariff-regimes-introduced-revised-on-trucks-autos/
  12. https://www.unisco.com/hts/99037409
  13. https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2025-05-02/html/2025-07835.htm
  14. https://www.federalregister.gov/documents/2025/05/20/2025-09066/notice-of-implementation-of-addressing-certain-tariffs-on-imported-articles-pursuant-to-the
  15. https://www.presidency.ucsb.edu/documents/executive-order-14289-addressing-certain-tariffs-imported-articles
  16. https://www.federalregister.gov/documents/2025/05/02/2025-07835/addressing-certain-tariffs-on-imported-articles
  17. https://www.ghy.com/trade-compliance/section-232-tariffs-on-heavy-medium-duty-trucks-and-buses-effective-nov-1/
  18. https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2025-05-02/pdf/2025-07835.pdf
  19. https://hts.usitc.gov/search?query=duties
  20. https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2025-12-04/html/2025-21940.htm

メキシコ自動車関税案:「棚上げ」の深層と日本企業の対応策

1. 背景:50%関税案は「廃案」ではなく「延期」へ

2025年9月の改正案提出と衝撃
2025年9月、メキシコのシェインバウム政権は2026年度予算関連法案の一環として、輸出入関税法(LIGIE)の改正案を議会に提出しました。その核心は、一般関税率(MFN税率)の大幅な引き上げにあります 。spglobal+1

  • 対象品目: 自動車、同部品、鉄鋼、繊維など1,463品目
  • 関税率:
    • 自動車(EV含む):現行15〜25% → 最大50%argusmedia
    • 自動車部品:多くの品目で35%前後へ引き上げargusmedia
  • 影響範囲: メキシコとFTAを締結していない国(中国、韓国、インド、タイ、トルコ、ロシアなど)からの輸入約500億ドル相当photonpay+1

重要事項: 日墨EPAやCPTPP、USMCA(米国・カナダ)の要件を満たす「FTA相手国原産品」は、今回の引き上げ対象外です。日本原産品は引き続き無税または低関税が維持されます。

最新動向:2027年までの審議凍結
しかし、2025年10月28日、メキシコ連邦下院・経済通商競争委員会は、同法案の最終案取りまとめ期限を**「2027年8月末まで延長」**することを決定しました。これにより、法案が本会議で採決されるのは数年先となり、事実上の「棚上げ」となりました 。mex.news.o-abroad

【注意】ここが最大のリスクです
法案審議は止まりましたが、メキシコ憲法第131条および貿易法第4条に基づき、大統領は**「政令(Decreto)」によって関税率表(TIGIE)を随時変更する権限**を持っています。「包括的な法改正」は延期されましたが、「政令による特定品目のピンポイント利上げ」はいつでも発動可能な状態にある点に警戒が必要です 。whitecase+1

2. 延期の要因:国内産業の混乱と中国の反発

今回の決定の背景には、内外からの強い圧力がありました。

(1) 国内産業界からの悲鳴
急激な関税引き上げは、非FTA国からの輸入に依存するメキシコ国内産業を直撃します。

  • 自動車ディーラー協会(AMDA): 「中国ブランド車等を扱う約800店舗・3.2万人の雇用が危機に瀕する」と警告。
  • 自動車部品工業会(INA): 北米で調達不可能な部材をアジアに依存しており、製造コスト増による競争力低下を懸念。
  • 経営者団体(COPARMEX): 「中国対策の必要性は理解するが、一律50%への急激な引き上げはインフレを招く」として、段階的導入を要請しました 。bloomberg

(2) 中国による対抗措置の示唆
中国商務省は2025年9月、メキシコの関税方針に対し「貿易・投資障壁調査」の開始を発表し、強く牽制しました 。メキシコ新車市場における中国製車両(中国ブランドおよび欧米メーカーの中国生産車)のシェアは20.2%に達しており、経済的な結びつきは無視できないレベルにあります 。cfr+1

(3) 「2027年まで」の政治的意味
委員会による審査期限の延長は、以下のバランスを取るための高度な政治的判断といえます。

  • 財界へ: 「当面の間、急激な変更は行わない」という安心感を与える。
  • 中国へ: 「法案は確定していない」と逃げ道を残す。
  • 米国へ: 「法案自体は撤回していない」と対中姿勢をアピールする。

3. 延期の裏にある「3つの政治的意図」

公表情報と報道 から読み解く、政府の本音は以下の通りです。unav+1

  1. サプライチェーン再編のための時間稼ぎ
    名目は「国内生産の促進」ですが、現状のメキシコ産業はアジア製の部材・設備に依存しており、即時の50%関税に耐えられません。2027年までの猶予期間中に、調達網の北米シフト(ニアショアリング)を進めさせる狙いがあります。
  2. 米中対立の緩衝材(クッション)
    メキシコは「最大の顧客である米国」と「重要な供給元である中国」の板挟み状態にあります。期限延長は、米国の圧力(中国締め出し)に応える姿勢を見せつつ、中国からの即時の報復を回避するための「時間軸による調整弁」として機能しています。
  3. 2026年USMCA見直しへの「交渉カード」
    2026年に予定されるUSMCA(T-MEC)の再検討に向け、メキシコは「対中関税強化」というカードを温存しました。これを交渉材料として、米国から投資優遇や関税緩和などの有利な条件を引き出そうとする意図が透けて見えます 。reuters

4. 日本企業への影響:リスクと好機

4-1. 「日本原産」は安全だが、「メキシコ生産」は別問題
日本からの輸出品(日本原産)はEPA/CPTPPで守られますが、**「メキシコ工場がアジアから調達している部材」**はMFN関税引き上げの対象となり得ます。

4-2. リスクが高い企業の特徴

  • アジア部材依存型: 中国・韓国・タイ等の部材をメキシコで組み立てている(原産地規則上、非FTA原産となるケース)。
  • 経由輸出(迂回)型: 日本製品を中国・アジア経由でメキシコへ入れているケース。
  • IMMEX活用企業: 将来的に特定品目が免税対象から外れ、事後的に高関税が課されるリスク。

4-3. 日本企業にとってのチャンス
中国製品のコスト競争力が低下すれば、日本製品や北米生産品への回帰が進む可能性があります。品質と信頼性を武器に、メキシコ市場でのシェアを拡大する好機ともなり得ます 。automotivelogistics

5. 実務担当者が今すぐ取るべき5つのアクション

  1. 関税影響マップの作成(HSコード × 原産国)
    現在の輸入部材について、「現行税率」と「50%適用時の税率」を比較し、コストインパクトを可視化してください。これがサプライチェーンの健康診断となります。
  2. 「脱・非FTA国」調達のシミュレーション
    調達先を中国・非FTA国から、日本・北米・ベトナム(CPTPP加盟国)等へ切り替えた場合のコスト・リードタイムを試算してください。単価が多少上がっても、50%関税より安価なケースは多々あります。
  3. PROSEC / レグラ・オクターバの活用準備
    産業分野別生産促進プログラム(PROSEC)や、部材の無税輸入許可(レグラ・オクターバ)の適用可能性を確認してください。政令による突発的な関税変更に備え、事前登録だけでも済ませておくことを推奨します 。monarch-global
  4. 契約への「関税変動条項」の明記
    将来の関税上昇分を誰が負担するか、価格改定のトリガー条件などを、サプライヤーおよび顧客との契約書に明文化してください。
  5. 2026-2027年を見据えたシナリオプランニング
    「2026年 USMCA再交渉」と「2027年 法案審議期限」を節目として、関税が発動された場合の在庫戦略や資金繰りへの影響を今のうちにシミュレーションしておくことが重要です。

6. まとめ:猶予期間を活かせるか

  • 「廃案」ではなく「延期」: 2027年まで法案審議は止まるが、政令によるリスクは残る 。mex.news.o-abroad
  • ターゲットは明確: 自動車・電機・機械分野における「非FTA原産品」が狙い撃ちされている 。argusmedia
  • タイムリミットは2〜3年: この期間に関税耐性のあるサプライチェーンへ組み替えられた企業だけが、北米市場での勝者となります。

本記事は2025年11月27日時点の情報に基づいています。メキシコの通商政策は流動的であるため、最新の官報(DOF)および専門家のレポートを継続的に確認してください。

  1. https://www.spglobal.com/ratings/en/regulatory/article/mexican-tariffs-a-speedbump-to-chinese-auto-firms-overseas-expansion-s101645512
  2. https://www.whitecase.com/insight-alert/mexico-proposes-significant-customs-and-tariff-reforms-part-2026-economic-package
  3. https://www.argusmedia.com/en/news-and-insights/latest-market-news/2730867-mexico-to-raise-auto-import-tariffs-to-50pc
  4. https://www.reuters.com/business/autos-transportation/mexico-auto-industry-warns-complex-outlook-ahead-usmca-review-2025-10-02/
  5. https://mex.news.o-abroad.com/~/economy/178543-en-mexico-doubts-over-tariff-reform-approval-70-billion-peso-revenue-expected.html
  6. https://monarch-global.com/2025/08/16/friendshoring-brings-industrial-sized-investment-opportunity-2-2-5-3/
  7. https://www.photonpay.com/hk/blog/article/mexico-tariff-policy-2025?lang=en
  8. https://www.bloomberg.com/news/articles/2025-11-10/sheinbaum-s-china-tariffs-plan-meets-business-party-backlash
  9. https://www.cfr.org/article/china-latin-america-september-2025
  10. https://www.unav.edu/web/global-affairs/sheinbaums-trade-calculus
  11. https://www.reuters.com/business/autos-transportation/mexico-discuss-tariff-hikes-with-china-others-before-making-law-2025-10-09/
  12. https://www.automotivelogistics.media/supply-chain/port-congestion-competition-pressures-loom-as-mexico-set-to-increase-tariffs-on-chinese-vehicle-imports/1608705
  13. https://www.jetro.go.jp
  14. https://mexicobusiness.news/automotive/news/mexicos-auto-industry-prepares-tariff-supply-chain-shocks
  15. https://www.prodensa.com/insights/blog/how-tariffs-are-shaping-automotive-manufacturers-in-mexico
  16. https://radiocomply.com/mexico-ift-delays-enforcement-of-ift-seal-requirements-amid-institutional-changes/
  17. https://www.argusmedia.com/es/news-and-insights/latest-market-news/2745164-mexico-s-reforms-constrain-gdp-growth-imef
  18. https://economic-research.bnpparibas.com/Media-Library/en-US/impact-will-Mexico-tariffs-have-imports-example-automotive-sector-10/21/2025,c44343
  19. https://www.alvarezandmarsal.com/thought-leadership/mexico-s-2026-customs-law-key-changes-for-global-trade
  20. https://www.dallasfed.org/research/pubs/25trade/a3
  21. https://www.lemonde.fr/en/economy/article/2025/09/14/china-outraged-by-mexico-s-automotive-tariffs_6745399_19.html

【日経新聞より】トランプ氏、車関税20%に引き上げ案 米紙報道

トランプ氏、車関税20%に引き上げ案 米紙報道

2018年5月14日

日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30441260T10C18A5NN1000/

保護貿易になれば、国内経済が活性化するという間違った信念。

【日経新聞より】車生産に足かせ不可避 NAFTA再交渉期限迫る 原産地規則・賃金条項焦点に/米離脱なら混乱 *

車生産に足かせ不可避 NAFTA再交渉期限迫る 原産地規則・賃金条項焦点に/米離脱なら混乱 *

2018年5月14日

日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30437130S8A510C1EA2000/

自動車メーカーには困った原産地規則になりそうです。

でも、「誰得」なんでしょうかね。これでアメリカがよくなるとは限らない。

【ロイターより】米、NAFTA自動車部品調達比率75%要請 段階的に引き上げ

米、NAFTA自動車部品調達比率75%要請 段階的に引き上げ

2018年5月1日

ロイター

https://jp.reuters.com/article/us-nafta-idJPKBN1I12C7

より細かな部品調達率設定をアメリカ側が行っているようです。

日EU EPAにおけるPSR: 自動車(HS8701-8705)の原産地規則

日EU EPAの原産地規則が一部明らかになっています。(正しい答えは、正式な協定文まで待っていただき、あくまで参考としてください)

本日は自動車です。

自動車(HS8701-8705)の原産地規則は、非原産材料の比率が45%まで。

但し、乗用車(HS8703)は、条件が最初の6年は少し緩和されています。

  • 最初の3年はその比率が55%
  • 次の3年はその比率が50%

また、乗用車には、面白い既定が存在しています。

日本とEUがそれぞれ同じ国とFTAを結んでいる場合(例えばベトナム)、その国の原産材料を累積として使う事が出来る(累積)という条項があります。(自動的に適用できるのではなく、原産証明がある場合)

今あるのは、ベトナム、シンガポール、スイスですね。

ベトナム製の材料を原産材料として見ることも可能になるわけです。

今後、日本やEUのFTAが増え、共通の国が出来れば原産性を証明しやすくなります。

今後どうなるか分かりませんが、日=イギリス、EU=イギリス(EU離脱後にFTA)となれば、日本の部材でイギリスで製造した車に日本製部材を原産とみることも可能になるということです。