猫すずプロジェクト進行中

FTA活用に関しての社内認知を高める活動を、最近「猫すずプロジェクト」と呼び、セミナーの度に呼びかけをしています。

FTAにおける原産地証明の企業内の問題、メガFTAが近い将来来ることによる問題の拡大とそれに伴うコンプライアンスリスク。

すべて、企業トップの認識がないと改善されません。

企業トップの意識づけをすることを推奨しているのですが、最近その活動が具体化している企業が多いのがとてもうれしいです。

この前も、私がFTAのコンプライアンス問題についてセミナーを企業に行いに行きました。

参加者は、専務、常務、取締役、事業部の上部管理職などそうそうためるメンバー。

ここで、FTAの監査を受けようということになりました。

経営陣も、その問題を報告されていないということで、聞いたらすぐに対応したのにとおっしゃっていたのが印象に残っています。

「猫すずプロジェクト」は声を上げることが、第一歩です。

FTA、「うちは輸出していないから」という理由が通じない時代に

最近の相談で多いのが、商品のサプライヤーの規模が小さく、輸出も全くしていない場合のFTA原産地証明取得のケース。

輸出なんて全くしていないサプライヤーなのだが、それを購入した商社など企業が海外に販売することで、結果として商品が輸出されている場合が増えてきた。

その際にFTAを活用したい商社など企業が原産地証明をとることに四苦八苦している。サプライヤーが、対応できないからだ。

小さい企業には、確かにFTAだの、原産地証明だの、同意通知だの、ちんぷんかんぷんだろう。

そういった場合にどうやって説得させて、彼らサプライヤーに証明をさせるか。

本当に一苦労である。

たいていの場合は、「EPA相談デスクにお誘いされたらどうですか。」と言うようにしている。ちゃんと説明を聞けば、わかるものである。

サプライヤーの皆さん、そうされては?

昨日の経済産業省入札説明:「TPP原産地証明制度啓発事業」

昨日、経済産業省の入札事業の説明がありました。

「TPP原産地証明制度啓発事業」

予算が(上限)5億円弱と、小さくない事業です。

説明に来られた企業は7社。

実施項目は5つ

  1. TPPの関税、原産地規則の解説書作成(有識者による委員会)
  2. 関税、原産地規則及び証明書の作成支援に関する実務ツール(ウェブサイト)
  3. 専門家の育成
  4. 事業者向けセミナー(150回!以上)
  5. 相談窓口の設置(全国に40箇所以上)

この事業は、TPPのみで今までのEPA(FTA)は対象外です。今後大筋合意がなされると思われる日EU EPAや、RCEP(ASEAN10カ国+6各国)も対象外です。

 

 

 

EPAの原産地証明: これはダメだろう!

先日のEPA活用の相談は、「これはダメだろう!」という内容。

日商からは原産地証明書が取得できており、それによる関税の減免も輸入国ですでに受けている。

だが、証拠書類を一切用意していない。

それをした担当者は、最近入った社員に、「この情報で証明書作っておいて」

どうしたものかと思案したその社員からの相談であった。

「この情報」というのも、あり合わせの部材表で証拠書類としての体をなしていない。

確信犯的行動である。

証拠書類を作る過程は説明をしたが、会社としてどうするかをまずは判断してもらってくれとお願いした。

もの的には原産性は証明できると思うが、本来の主旨を逸脱していい加減に行うのは、それも自分でその責任を取るのでは無く、新しく入った社員に押しつけるとはなんたること。

「問題なければOK」という会社の雰囲気だそうだ。

久しぶりに、怒りを覚えた。

こういう会社は一回痛い目に遭うべきである。

FTA(EPA)の原産地証明は片手間仕事か?

先日、とある会社の方が相談に来られました。

本当に困っていらっしゃるようでした。本業は社長の秘書兼ドライバーだそうです。

誰もやる人がいないので、自分がしなければならないとのこと。

熱心な人なので、いろいろ説明しました。また、今度、原産地証明の取り方の寄り詳しいセミナーをするので案内をしたところ、来られるとのこと。

この企業は決して小さくありません。が、企業の管理職以上は、片手間仕事と思っていらっしゃるのでしょうね。誰でも簡単にできると。

決して簡単な仕事ではありません。また、間違うと企業のコンプライアンスに関わる問題です。確かに、専任者を置くだけのコンスタントな業務量が無いかもしれません。が、やる限りはちゃんとしなければ、大きなしっぺ返しが来ることも企業は理解すべきです。

社長の秘書であるなら、そのことをちゃんと社長に伝えてほしいと申し上げました。(伝えて理解してもらうことがそんな簡単なことでは無いことを知ってはいますが)

 

企業のFTA業務の生き字引の方の異動

本日、お客様からちょっとショックなお話を伺いました。

その会社は大企業で、FTA業務の生き字引の方。その人以外にその会社のFTAを語れないのです。

その人をその会社は人事異動で他部署に。

そして、新任の方が赴任。必ずしもFTAに明るい方ではありません。

もと担当の方の異動は本社内なので少し安心。新任の方も比較的聞きやすい環境にはあります。

このことは、会社はFTAのノウハウの問題を考えていないことの傍証です。

個人に帰属してしまっているFTAのノウハウを如何に一元化し、企業のものとするのか。それをしなければならない矢先の出来事。

この異動がアメリカなんかだったら、この企業はどうするのでしょうか。

人の異動は、その人の成長のためにも大切ですので、否定はしませんが、コンプライアンスに関わるFTAでその準備もできていないときの出来事。

明らかに企業はFTAのコンプライアンスの側の問題を考えていないことを露呈してしまいました。

FTA: 原産地規則とその解釈の難しさ

経済産業省委託事業でEPAアドバイザーをしていますが、いつも悩まされるは、経済産業省や日本商工会議所が記載していることと、企業がそれを解釈することのギャップです。

「生産者」の定義に関して、以前アドバイスをした企業から質問がEPAデスクにあったのですが、「経済産業省のHPと嶋のいうことが違う」というものでした。

設計や品質保証をしているだけでは「生産者」としては認められません。

ただ、企業からすれば「そこまでやっているのだから生産者だろう」という気持ちになります。残念ながら、証明ルール上はそうはならないのです。

ただ、その内容を説明資料の文言から読み解けないことも理解できます。

EPAデスクから丁寧に説明して頂くようお願いしましたが、アドバイザーとして本当に悩ましい。

国はEPA(FTA、TPP)を使え、というのですが、明確な原産地規則を企業がわからない以上、その要望の実現は困難であると思います。これは国のFTA活用推進の大きな課題でしょう。

とてもびっくりした

現在、自動車メーカーのアフターパーツのEPA適用のお手伝いをしています。

アフターパーツの大半は、自動車部品メーカに作ってもらった部品で、内政部品はごくわずかです。

EPAでの原産地証明書を取得するには、どうしても自動車パーツメーカーの協力が不可欠で、多くの企業にその協力依頼をしました。

多くの企業は(その温度差はあるのですが)好意的に対応していただきました。

その中に1社だけ、「当社は企業の方針としてEPAへの対応を行わない」と宣言された会社がありました。

自動車パーツで、EPAへの対応をしない宣言?

正直びっくりです。TPPでアメリカ、日EUでヨーロッパ、そしてRCEPもしくは日中韓FTAで中国が今後対象になってくるだろう中で、「企業の方針でEPAへの対応を行わない」とおっしゃるのです。

当然企業の戦略ですから、企業の自由になさればいいのですが、FTA、EPAへの対応を納品の条件とされる企業も増えている中で、そういう宣言をされる企業はとても大胆です。場合により仕事を失います。

よほど商品に自信がないとできないことですね。