「中国、米関税に報復示唆 100%の追加関税なら相応の措置」というニュースの内容を深掘りして整理しました

以下は2025年10月12日時点の整理です。あくまで情報の整理と勝手な推定です。

エグゼクティブ・サマリー

何が起きたか:トランプ米大統領が11月1日から中国からの輸入に100%の追加関税を課すと発表。あわせて「重要ソフトウェア」の対中輸出規制も示唆・準備中。発表はTruth Social投稿・記者団への発言ベースで、現時点で連邦官報(Federal Register)やUSTRの正式告示は未確認。したがって方針発表>実装手続きの途上という段階。

中国の反応:10月11日、商務省が「高関税で脅すのは正しい付き合い方ではない」「米国が独断専行を続けるなら**断固たる措置(resolute measures)**をとる」と表明。「関税戦争は望まないが恐れもしない(We do not want to fight, but we are not afraid to fight)」と一貫した立場を強調。背景として10月9日発表のレアアース輸出管理の強化を「正当かつ防衛的」と主張。直ちに追加関税で報復するとは言及せず、交渉余地を残す発信。

ビジネス影響の核

  • 100%は**既存の関税(基準10%+フェンタニル20%=30%)に”上乗せ”**の追加税と理解され、合計130%となる見込み
  • 原産地が中国かどうかが決定的(迂回組立や単純作業では原産地は変わらない)
  • 越境ECの”抜け道”だったデミニミス($800免税)も中国発は2025年5月2日で既に停止。小口でも課税
  • 中国は関税以外(輸出規制、アンチトラスト、不可靠実体リスト等)での非関税型の報復選択肢を多く持つ

タイムライン(直近)

10/9(木):中国が商務部公告2025年第61号でレアアース輸出規制を大幅強化。ホルミウム、エルビウム、ツリウム、ユーロピウム、イッテルビウムの5元素を追加し、計12元素を規制対象に。12月1日発効。

10/10(金):米大統領が中国全輸入への100%追加関税と重要ソフトウェアの輸出規制を示唆。発効は**11/1(またはそれ以前)**と発言。

10/11(日):中国商務省が「高関税で脅すのは正しい付き合い方ではない」「米国が独断専行を続けるなら断固たる措置を講じる」と表明。レアアース輸出規制は正当と反論。

:連邦官報やUSTRの正式通知に、当該100%の実装告示は未掲載(10/12時点)。制度発動には官報告示・HTSUS追補(Chapter 99)等が通常必要。

100%「追加関税」の実務解釈(通関の観点)

積み上げ型:現行の米中関税は基準10%+フェンタニル関税20%=30%(2025年5月合意、90日延長で11月期限)。100%追加が実装されれば、基準10%+フェンタニル20%+100%追加=合計130%

過去の301条税(25%等)の除外品目については、8月29日付でUSTRが178品目の除外を11月29日まで延長。しかし100%追加との関係は官報告示待ち

いずれもMerchandise Processing Fee(MPF 0.3464%)やHarbor Maintenance Fee(HMF 0.125%、海上のみ)は貨物価額に対して別途加算(関税額に対する料率ではない)。

計算の目安($100,000の貨物価額の仮例)

例A(基準10%、フェンタニル20%、100%追加)

  • 関税=$10,000(基準)+$20,000(フェンタニル)+$100,000(追加)=$130,000
  • MPF=0.3464%×$100,000=$346.40(最小・最大の閾内)
  • HMF(海上)=0.125%×$100,000=$125.00
  • 合計負担=$130,471.40

例B(301条除外品で基準10%、100%追加のみ)

  • 関税=$10,000+$100,000=$110,000
  • MPF=$346.40、HMF=$125.00
  • 合計負担=$110,471.40

※MPFの最低$33.58/最高$651.50(2025年10月1日改定)。

価格転嫁

2018–19年の米中関税では、輸入者・消費者へのパススルーがほぼ完全という実証が蓄積。関税は最終価格に反映されやすい。今回100%が実装されれば、相当程度の値上げは避けがたい。

「断固たる措置」—中国側の選択肢(非関税中心)

中国商務省は10月11日、「米国が誤った道を進むなら、中国は自国の正当な権利と利益を守るため**断固たる措置(resolute measures)**を講じる」と警告。具体的選択肢:

輸出規制の拡張:レアアース12元素(ホルミウム、エルビウム、ツリウム、ユーロピウム、イッテルビウム等)の輸出許可審査を厳格化。軍需・半導体向けの審査厳格化。民生用途は許可の可能性とするも、実務上の遅延・不透明化でサプライチェーンを締め上げる余地。12月1日発効。

行政的圧力:独禁調査やサイバー審査、データ越境規制の厳格化。直近ではQualcommへの審査着手報道も。10月14日から米船舶への港湾使用料賦課開始。

対外制裁法/不可靠実体リスト:取引・投資禁止、資産凍結、入国拒否など広範。9月マドリード会談以降、米国が複数の中国企業をエンティティリストおよびSDNリストに追加したことを非難し、中国側も同様の指定拡大を示唆。

港湾使用料等の相殺措置:米側措置に対し中国港での米船舶への料金賦課など、物流での摩擦を拡大。

どの品目が特に当たるか(米国の対中輸入の構成)

米国の対中輸入(2024年$4,387億)は電気機器(HS85)・機械(HS84)・家具(HS94)・玩具(HS95)・アパレル(61/62)が柱。100%追加は消費財セクターの最終価格に広く影響。

実装プロセスの見極めポイント(法的経路)

実装にはUSTR告示・連邦官報でのHTSUS Chapter 99追補・適用日・対象の正式特定が通常必要。10/12時点で未掲示。

手段は301の修正もしくはIEEPA等に基づく新たな宣言の可能性。過去の裁判でIEEPA権限の限界が指摘された例もあり、法廷争いや議会監督のリスクを内包。

BIS(商務省)のソフトウェア輸出規制の具体像(規制対象・除外・暫定一般許可)を要注視。最近もAI・半導体で相次ぐ規制更新あり。

既存制度との関係(重要)

301除外の延長:USTRは2025年8月29日付で178品目の301条除外を11月29日まで延長。仮に100%が発効しても、除外品の扱いがどうなるか(別枠の追加税がかかるのか)官報告示を要確認。

デミニミス($800):中国・香港発は2025年5月2日で既に免税終了。小口でも関税・通関が必要(EC事業者はDTC価格式の全面見直し必須)。

あなたの会社が直ちにやるべきこと

原産地棚卸し:全SKUの**最終実質的変更(substantial transformation)**の発生地を再確認。単純組立やリパックでは原産地は変わらない。

関税数理の即時計算:SKU別に基準10%+フェンタニル20%+100%での新想定税負担を試算し、粗利・販売価格への影響と在庫評価を更新。

契約条項のトリガー確認:Change in Law/タリフ・サーチャージ条項の発動条件、価格改定の通知義務、フォースマジュールの射程。

物流計画:11/1前納品への前倒しの可否(ただしルール確定前の駆け込みは通関事故リスクあり)。エントリー日・輸入申告時刻が発効判定の基準になるのが通例。

代替調達・加工の設計:ベトナム等での実質的加工による原産地変更は可だが実質的変更基準を満たす工程設計・コスト検証・**CBP事前裁定(Binding Ruling)**の活用を。

ドローバック戦略:輸出向け分は301等を含め最大全額の99%還付が可能(条件あり)。輸出・破棄・製造代替の各類型で5年内の請求設計を。

社内・販売先への説明キット:上記の価格影響、納期、代替策を1枚に要約。

中国側の非関税リスク:不可靠実体リスト/対外制裁法の指定拡大や当局検査の強化に備え、現地在庫・人員・データのBCPを更新。

サプライチェーン別の「当たりどころ」

**電機・ICT(HS85)/機械(HS84)/家具(HS94)/玩具(HS95)/アパレル(61/62)**は米国の対中輸入の中核。価格転嫁→需要鈍化の一次波及に加え、レアアース制約→部材ひっ迫の二次波及が重なる可能性。

シナリオと備え(確率は私見)

停戦維持(30%):官報告示が出ず交渉入り。市場は一時安堵。

段階的導入(45%):対象・時期に例外を付しつつ一部適用。輸出規制は並走。価格改定と代替調達の両睨みが必要。

全面発動(25%)+中国の非関税報復:輸出許可の絞り込みや企業への個別制裁が加速。在庫・受注の調整を即実行。

(注:現時点で中国は関税で即時報復を明言しておらず、非関税の比重が高い公算。)

実務メモ(細目)

MPF/HMF:MPFは0.3464%(10/1改定で最小$33.58/最高$651.50)。HMFは0.125%(海上)。関税額には掛からず、貨物価額に対し課金。

価格転嫁の経験則:2018–19の研究では輸入者負担が主。部材→最終製品まで広範なコスト上昇。

越境EC:中国発デミニミス廃止(2025年5月2日)でShein/Temu等の小口も通関・課税。小口多頻度のオペレーションは関税・通関コストを前提に再設計を。

直近2週間のプラン(72時間/2週間)

72時間

  • SKU別関税インパクト表(基準10%/フェンタニル20%/想定100%/MPF/HMF)を作成
  • 価格改定シナリオ(内外税、販社マージン、販促原資)
  • 在庫と発注の前倒し/見合わせの判断

~2週間

  • 原産地変更案のPoC(工程票・BOM・価値加算法)/Binding Ruling準備
  • ドローバックの要件確認(輸出・製造代替・破棄)とデータ整備
  • 契約見直し(タリフ・サーチャージ条項、Change in Law、Incoterms再定義)

今後の「確認すべき公式ソース」

USTRのプレス/官報告示:100%追加の対象・発効時刻・Chapter 99番号が出るかを最優先で確認。

BISの輸出規制:「重要ソフトウェア」の定義、暫定一般許可、猶予期間。

中国の商務省告知・輸出許可運用:レアアースの審査基準・許可遅延の実勢(12月1日発効に向けて)。

「中国のレアアース輸出規制に対するアメリカの11月1日からの中国に対する追加関税100%」詳細アップデートと日本ビジネスマンが知るべき点

60秒サマリー

米国は11月1日から対中輸入に「追加関税100%」を課すと発表。既存関税に上乗せで適用され、総負担は多くの品目で130%前後に達する見通し。加えて「重要ソフトウェア」の対中輸出規制も導入方針。発表は大統領のTruth Social投稿によるもので、詳細は未公表。状況次第で発動時期を前倒しまたは撤回する可能性に言及。

背景は中国のレアアース輸出規制の強化。中国はホルミウム、エルビウム、ツリウム、ユウロピウム、イッテルビウムの5元素を新たに規制対象に追加し、計12元素を規制下に置いた。精製装置・資材の輸出も規制対象とし、域外適用的な運用方針を打ち出した(中国産レアアースを0.1%以上含む磁石は審査対象)。主な発効は11月8日、一部は12月1日。

マーケットは株安・円高で反応。S&P500は2.7%安、ナスダックは3.6%安、円は対ドルで強含み。現行の米中「関税休戦」は11月10日に期限を迎える。

何が「決まった」か速報ベース

正確さに関しては、努力していますが、最終的には個々人でご確認下さい。

米側の措置

対中追加関税100%: 11月1日(またはそれ以前)に発動と大統領がTruth Socialで明言。既存の関税に「上乗せ」する形で適用。

重要ソフトウェアの対中輸出規制: 同じく11月1日から導入方針。ただし「重要ソフトウェア」の定義・該当ECCN・許可プロセス等の詳細は未公表。

背景: 今回の措置は中国のレアアース規制拡大への対抗。現行の米中関税休戦は11月10日に期限を迎える見通しで、11月1日発動は期限の9日前。

撤回条件への言及: 中国がレアアース規制を撤回すれば、追加関税の取り下げ余地があるとの発言も(ただし確約ではない)。

実務メモ: 現時点ではSNSでの政治判断の発表段階。HSコード範囲、免除、経過措置(積送中除外)などの実装細則は未発表。過去の追加関税(例:2025年2月の措置)の際は「船積み済み・積送中」への短期的な経過措置が官報で規定された前例あり(今回も同様とは限らないが注視が必要)。

中国側:レアアース規制の最新ポイント

規制拡大の中身: 5元素(Ho/Er/Tm/Eu/Yb)を追加し、計12元素を規制対象とした。精製技術・装置など多数を規制リストに追加。軍需用途は不許可、先端半導体関連は厳格審査。

域外適用の示唆: 中国資材・設備を使う海外生産や、中国レアアースを0.1%以上含む磁石製品についても中国の輸出許可が必要になり得るとの運用を明記。執行の実効性は未解明だが、サプライ停止リスクが抑止力として機能。

スケジュール: 規制拡大の主要部分は11月8日発効、一部規制は12月1日発効。

マーケットの初期反応(10月10-11日)

米株急落: S&P500は2.7%安(182ポイント減)、ナスダックは3.6%安(820ポイント減)、ダウは1.9%安(878ポイント減)。4月以来の大幅下落。円高進行も観測。

まだ不明な点(実務で「宿題」となる箇所)

適用範囲(HS): 一律100%を全品目に上乗せするのか、除外・猶予の設計はあるのか。官報(Federal Register)またはCBP通知待ち。

「重要ソフトウェア」の線引き: 対象ECCN、クラウド/SaaSやリモートアップデート等の「無形輸出」の扱い。BISからの追加ルールが出るまで社内フローは暫定対応が必要。

移行措置(積送中除外): 前例はあるが、今回の有無・期間は未定。

米中の追加対抗措置: 米側の輸出規制拡張、中国側の対抗課税・許可運用厳格化などの次手。

日本ビジネスが「今すぐ」押さえるべき要点

価格・コストと供給(11月1日リスク)

中国生産→米国向けの最終製品・部材は実質的に100%コスト上乗せが前提に(既存関税と合算で総負担は130%前後の水準に達する見立て)。在庫・出荷計画の前倒しや価格条項の見直しが急務。

原産地・迂回の誤解を回避

第三国経由の転送では原産地(CN)は変わらない。実質的な原産地変更(substantial transformation)や工程移管が必要。通関当局の取締り強化が予想され、形式的な迂回は高リスク。

レアアース・磁石のボトルネック

EV、風力、産業機械、HDD、ロボットなど磁石・レアアース多用業種は二重の供給制約(中国側規制+米側コスト増)に直面。BOM再点検、代替材・代替サプライヤの即時探索を。中国は処理で約90%、磁石で90%超のシェアを持つ。

米拠点からの「無形輸出」管理

米国子会社・米在勤者が関与するソフト配信、リモート保守、AIモデル提供等は輸出に当たり得る。「重要ソフトウェア」定義確定まで、対中向けの新規提供・更新に暫定ゲートを設け、案件審査を義務化。

契約・物流・金融の実務

価格転嫁条項(サーチャージ/関税条項)の発動条件を確認。インコタームズ(DAP/DDP等)に応じた関税負担者を明確化。船積みカット・通関所要の前倒しを運送・通関業者と共有。為替・金利・在庫のヘッジ方針を更新。積送中例外の有無に注意。

業界別・影響の当たり所(早見)

自動車(EV/HEV): 駆動用NdFeB磁石、モータ、パワエレ部材のレアアース依存+米向け中国生産部材のコスト急騰。

産業機械・ロボット: サーボモータ用磁石・精密センサ類の供給不確実性。

エレクトロニクス: 磁石(スピーカー/HDD)、レアアース触媒、中国EMS由来の部材などで影響波及。

再エネ(風力): 永久磁石式発電機で依存度が高く、調達・価格圧力が強まりやすい。

直近2週間の「ウォッチポイント」

米官報(Federal Register): 対象品目(HTS)、移行措置(積送中除外の有無・期間)、免除申請(除外枠)の有無。

米商務省BISの追加告示: 「重要ソフトウェア」定義・ライセンス運用の詳細。

中国商務部(MOFCOM)の運用通知: 許可審査の実際の厳格度、防衛・先端半導体関連の扱い。

米中首脳外交イベントの有無と追加対抗措置: 米側の輸出規制拡張、中国側の対抗課税・許可厳格化。

すぐに着手したい実務アクション(チェックリスト)

48時間以内

  • 米向けCN原産の出荷案件を全件洗い出し(最終製品・部材・補修品)。船積み前倒しの可否判断。
  • BOM単位でのCN原産比率と関税転嫁条項の有無を確認、価格・納期の顧客コミュニケーション草案を用意。
  • 米拠点からの対中ソフト配信の一時ゲート(新規配信・更新・リモート保守の承認制)を導入。

1週間以内

  • サプライヤ・代替源のRFI/RFQ開始(磁石・触媒・精製工程の代替可否)。
  • 通関ブローカー・フォワーダーと移行措置の有無を前提に申告ライン確認。
  • 契約・約款(価格調整・不可抗力・通関責任)見直し案のドラフト化。

今月内

  • 工程移管(原産地変更)の実行可能性評価と投資稟議の素案。
  • 在庫・為替・金利のヘッジ更新とシナリオ別PL感応度の提示。

主な修正点

  1. SNSプラットフォーム名の明記: 「SNS投稿」→「Truth Social投稿」に修正
  2. ナスダック下落率の修正: 「約3.5%安」→「3.6%安」に修正
  3. 中国レアアース規制の対象元素数: 「5元素を新たに規制対象に追加」に加え「計12元素」を明記
  4. 磁石の審査基準: 「微量以上」→「0.1%以上」に具体化
  5. 中国のシェア: 「9割超」→「処理で約90%、磁石で90%超」と詳細化
  6. 文章構成: 読みやすさ向上のため、セクション構成を整理し、重複を削減

米国とカナダの相互関税交渉:現在地

現状をまとめてみました。間違っている点があるかも知れませんが、ご容赦ください。

米国とカナダの相互関税交渉は複数回にわたり決裂と再開を繰り返しており、現時点(2025年10月)でも正式な合意には至っていません。以下、合意内容と対立点を整理します。bbc+2

交渉の経緯

6月の決裂と再開

2025年6月27日、トランプ大統領はカナダとの全貿易交渉を「即時終了」すると発表しました。決裂の原因は、カナダが6月30日から施行予定だったデジタルサービス税(DST)で、米国のテクノロジー企業に対する「直接的かつ露骨な攻撃」と非難しました。両国は7月16日までに新経済・安全保障協定で合意する予定でしたが、この問題で頓挫しました。nytimes+2

6月29日、カナダのカーニー首相がDSTを撤回したことで、両国は交渉を再開し、7月21日までの合意を目指すことで合意しました。canada+2

10月の会談

7月21日の期限を逃した後、10月7日にトランプとカーニーがホワイトハウスで再会談しましたが、正式な合意や画期的な進展はありませんでした。x+3

合意された点

カナダがデジタルサービス税を撤回したことで交渉が再開されましたが、実質的な貿易協定の合意には至っていません。両首脳は以下の点で一致しました:bbc+1

  • USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の2026年レビューを通じて「誠実な交渉」を進めることbrookings+1
  • カナダ企業が数百億ドル規模の米国投資を行う意向があることx
  • 国境警備とNATO支出(GDP比5%への増額)などの安全保障面での協力強化x

トランプ大統領は「解決策を見出す公式に取り組んでいる」と楽観的な発言をしましたが、具体的な内容は明らかにしませんでした。bloomberg+1

意見対立の焦点

個別品目の関税

カナダが最も強く求めているのは、以下の品目に課されている米国の関税撤廃または削減です:politico+1

  • 鉄鋼・アルミニウム:米国が50%の関税を課し、カナダは25%の報復関税で対抗reuters+1
  • 自動車:追加関税が適用され、カナダの自動車産業に打撃nytimes+1
  • 針葉樹材(ソフトウッド):カナダの製材産業が「崩壊寸前」との指摘politico
  • :追加関税の対象politico

カナダのフォード・オンタリオ州首相は「カーニー首相が早急に合意できないなら、報復関税を強化すべき」と圧力をかけています。politico

USMCA見直しの争点

2026年7月に予定されているUSMCAの共同レビューでは、以下の点が対立軸となる見込みです:whitecase+2

  • 原産地規則の強化:米国は自動車、鉄鋼、アルミなどで域内調達率の引き上げを要求する可能性が高いcsis
  • 対中国政策:北米域内での中国企業の活動制限や強制労働輸入禁止の強化whitecase+1
  • 乳製品市場アクセス:米国が継続的に要求しているカナダの乳製品市場開放whitecase
  • 労働基準の執行:最低賃金規定や迅速対応メカニズム(RRM)の拡大適用csis

トランプ大統領は「異なる取引を行うことも可能」と述べ、USMCAの再交渉や二国間協定への移行を示唆しています。aljazeera+1

構造的な課題

カナダは輸出の77%以上を米国に依存している一方、カナダはG7諸国の中で唯一トランプ政権と貿易協定を結んでいません。米国は2025年にEU、英国、日本と個別協定を締結しましたが、カナダとの交渉は過去のトルドー政権下での報復関税やUSMCAの複雑性により遅れています。bbc+3

カナダの鉄鋼労組は「緊急の行動が必要で、これ以上の譲歩は不要」と政府に圧力をかけており、国内政治的にもカーニー首相は厳しい立場に置かれています。reuters+1

  1. https://www.bbc.com/news/articles/cj6xje2778go
  2. https://www.bloomberg.com/news/articles/2025-10-07/trump-says-us-and-canada-working-on-formula-for-tariff-deal
  3. https://english.news.cn/20251008/3feef6c749504beb99353f182e606eb2/c.html
  4. https://www.nytimes.com/2025/06/27/business/trump-ends-canada-trade-talks.html
  5. https://www.cnbc.com/2025/06/27/trump-canada-trade-talks-tariffs.html
  6. https://www.politico.com/news/2025/06/27/trump-canada-trade-talks-00429665
  7. https://www.canada.ca/en/department-finance/news/2025/06/canada-rescinds-digital-services-tax-to-advance-broader-trade-negotiations-with-the-united-states.html
  8. https://www.reuters.com/world/americas/canada-rescinds-digital-services-tax-bid-advance-trade-talks-with-us-2025-06-30/
  9. https://www.cnn.com/2025/06/29/economy/canada-rescind-digital-tax-us-trade-talks
  10. https://x.com/i/grok/share/IkCrh2TxebdLc2JtZgn26ARqu
  11. https://www.bbc.com/news/articles/c5yk9dqlvygo
  12. https://www.politico.com/news/2025/10/07/carney-wins-praise-from-trump-but-no-trade-deal-yet-00596259
  13. https://www.bbc.com/news/articles/c62553ywn77o
  14. https://www.brookings.edu/articles/the-us-has-formally-started-joint-review-of-usmca/
  15. https://www.reuters.com/world/americas/canadas-carney-makes-second-white-house-visit-talk-trade-2025-10-07/
  16. https://www.nytimes.com/2025/10/07/us/politics/carney-trump-canada-trade-relationship.html
  17. https://www.whitecase.com/insight-alert/north-america-prepares-2026-usmca-review-and-potential-renegotiation
  18. https://www.csis.org/analysis/usmca-review-2026
  19. https://www.aljazeera.com/economy/2025/10/7/canadas-carney-makes-second-white-house-visit-as-trade-tensions-loom
  20. https://www.bbc.co.uk/news/articles/cj6xje2778go
  21. https://www.tradecomplianceresourcehub.com/2025/10/06/trump-2-0-tariff-tracker/
  22. https://www.canada.ca/en/department-finance/programs/international-trade-finance-policy/canadas-response-us-tariffs.html
  23. https://dimerco.com/news-press/us-tariff-update-2025/
  24. https://www.cfib-fcei.ca/en/site/us-tariffs
  25. https://en.wikipedia.org/wiki/2025_United_States_trade_war_with_Canada_and_Mexico
  26. https://en.wikipedia.org/wiki/Tariffs_in_the_second_Trump_administration
  27. https://www.youtube.com/watch?v=stZ-LLbSGWo
  28. https://www.blakes.com/insights/us-canada-tariffs-timeline-of-key-dates-and-documents/
  29. https://uk.finance.yahoo.com/news/trump-tariffs-live-updates-china-drops-google-probe-as-focus-turns-to-nvidia-tiktok-175804326.html
  30. https://www.euronews.com/2025/10/08/trump-says-there-is-natural-conflict-with-canada-as-he-hosts-pm-mark-carney-at-the-oval-of
  31. https://www.kiplinger.com/taxes/whats-happening-with-trump-tariffs
  32. https://nationalpost.com/news/the-two-ways-trump-tariffs-on-canada-could-collapse
  33. https://www.bbc.com/news/articles/cn93e12rypgo
  34. https://www.aljazeera.com/economy/2025/6/28/what-is-canadas-digital-tax-and-why-is-trump-killing-trade-talks-over-it
  35. https://www.bdo.global/en-gb/insights/tax/indirect-tax/canada-government-to-scrap-dst-to-restart-trade-deal-talks-with-u-s
  36. https://www.nbcnews.com/politics/politics-news/canadas-mark-carney-visits-trump-frosty-relations-longtime-allies-rcna236151
  37. https://www.congress.gov/crs-product/IN12399
  38. https://www.cnn.com/2025/10/07/politics/canada-pm-mark-carney-trump
  39. https://www.wilsoncenter.org/sites/default/files/media/uploads/documents/24-174_USMCA-Review%20(1).pdf
  40. https://www.nytimes.com/2025/06/30/world/canada/canada-digital-tax-tariff-negotiations-trump.html

2025年米国鉄鋼・アルミニウム関税制度の概要と企業対応(2025年10月最新版)

下記情報は確実にと努力しましたが、不確定な部分もあり、あくまで参考としてください。

最新動向(2025年8月~10月)

2025年8月以降、Section 232関税制度は更なる拡大を続けています。8月18日に407品目の派生製品が追加され、9月にはインクルージョン申請の第2回受付期間が実施され、10月には木材・重トラック関税の新規措置が発表されました。

8月18日発効:407品目の大規模追加

商務省産業安全保障局(BIS)は、407の製品カテゴリーを232関税対象の「派生製品」リストに追加しました。この拡大により、年間輸入額2,000億ドル超に相当する400以上のHS番号が新たに対象となり、実効関税率が約1パーセントポイント上昇したと推定されています。

主な追加品目

  • 風力タービンおよび部品・コンポーネント
  • 移動式クレーン
  • ブルドーザーおよび重機
  • 鉄道車両
  • 家具
  • 圧縮機・ポンプ
  • オートバイ
  • 船舶用エンジン
  • 電気自動車用電気鋼材
  • 自動車排気システム部品
  • バス部品
  • 空調ユニット部品

この措置は、6月23日発効の家電製品追加に続く第2弾の大規模拡大であり、鉄鋼・アルミニウムの含有価額部分に50%の関税が課されます。

9月:第2回インクルージョン申請期間

BISは2025年9月15日から29日まで、第2回目のインクルージョン申請受付期間を実施しました。このプロセスは年3回(5月・9月・1月)実施され、国内生産者等が追加対象品目を申請できる制度です。申請から60日以内にBISが判断を行い、採用された品目は順次232関税の対象に追加されます。

10月14日発効:木材・木製品への新規232関税

9月29日の大統領布告により、針葉樹材・木材および木製派生製品に対する新たなSection 232関税が10月14日から適用されています。

税率

  • 針葉樹材・木材:10%
  • 室内装飾付き木製家具:25%(2026年1月1日から30%に引上げ)
  • キッチンキャビネット・洗面台:25%(2026年1月1日から50%に引上げ)

重複関税の取扱い

  • 相互関税(reciprocal tariffs)およびIEEPA関税とは重複適用されない
  • 232自動車関税と重複する場合は自動車関税のみ適用
  • 対カナダ・メキシコIEEPA関税と重複する場合は木材232関税のみ適用

11月1日発効予定:中・大型トラック関税

10月6日、トランプ大統領は中型・大型トラック(車両総重量10,000ポンド超)および部品に対する25%の232関税を11月1日から適用すると発表しました。当初は10月1日発効予定でしたが、米国自動車メーカーからのロビー活動を受けて1カ月延期されました。

4月に開始された商務省の232調査では、「少数の外国供給者が略奪的貿易慣行により米国輸入の大部分を占めている」と指摘されており、国家安全保障上の脅威と位置付けられています。主要な影響国は、メキシコ、カナダ、日本、ドイツ、フィンランドです。

米国トラック協会(ATA)は、この措置に加えてIEEPA関税や232鉄鋼・アルミ関税も適用されることで業界への負担が過大になるとして、緩和を求めています。

1. 2025年の大改定のポイント

関税率の大幅引上げ

2025年6月3日の大統領布告により、鉄鋼・アルミニウムおよびその派生製品に対する関税率が一律**50%**に引き上げられました(英国のみ25%)。これは通商拡張法第232条(Section 232)に基づく措置で、2025年6月4日(EDT)以降の輸入に適用されます。

課税方式の変更:「金属含有価額」ベース

従来の「総額課税」から「金属含有価額のみに対する課税」に変更されました。CBP(米国税関国境警備局)の実務通達により、派生製品やHS第73類(鉄鋼)・第76類(アルミニウム)の品目についても、製品全体ではなく鋼・アルミニウムの含有価額部分のみに232関税が課されます。

除外制度の終了と「インクルージョン制度」の創設

2025年2月10日の布告により、従来の232除外申請制度が終了しました。代わりに、派生製品を追加指定するための「インクルージョン手続」が年3回(5月・9月・1月)の受付期間で運用開始されています。

重複課税(スタッキング)の整理

複数の特定関税が同一貨物に重複して過剰となる事態を一定範囲で防ぐ手順が規定されました。ただし、232関税と対中制裁の「301関税」については累積適用されることが明記されています。

2. 派生製品の対象拡大

「派生製品(derivatives)」とは、基礎素材(鉄鋼・アルミニウム)からさらに加工された下流製品のことで、2018年の232措置では対象外だった製品分野にまで関税を適用するために指定されています。

2025年の主な追加項目

アルミニウム派生製品(4月4日発効)

  • 空のアルミ缶(HS 7612.90.10)
  • ビール(HS 2203.00.00)

鉄鋼派生製品(6月23日発効)

  • 家電製品(冷蔵冷凍庫、洗濯機、乾燥機、食洗機、オーブン・レンジ、生ごみ処理機)
  • 溶接ワイヤラック(HS 9403.99.9020)

トレーラー類(8月18日発効)

  • ドライバン・冷凍(リーファー)トレーラー(HS 8716.39.0040等)とそのサブアセンブリ

407品目の大規模追加(8月18日発効)

  • 風力タービンおよび部品・コンポーネント
  • 移動式クレーン
  • ブルドーザーおよび重機
  • 鉄道車両
  • 家具
  • 圧縮機・ポンプ
  • オートバイ
  • 船舶用エンジン
  • 電気自動車用電気鋼材
  • 自動車排気システム部品

木材派生製品(10月14日発効)

  • 針葉樹材・木材
  • 室内装飾付き木製家具
  • キッチンキャビネット・洗面台

中・大型トラック(11月1日発効予定)

  • 車両総重量10,000ポンド超の中型・大型トラックおよび部品

今後の展開

BISのインクルージョン制度により、国内生産者等の申請に基づいて派生製品は継続的に追加される見込みです(申請から60日以内に判断)。次回の申請期間は2026年1月に予定されています。

3. 関税算定の具体的方法

基本税率

  • 鉄鋼・アルミニウム・派生品:50%(英国原産品のみ25%)
  • 木材派生品:10~25%(段階的引上げあり)
  • 中・大型トラック:25%(11月1日~)

課税ベースの算定

  • HS第73類(鉄鋼)・第76類(アルミニウム)製品:金属の「含有価額」のみに課税
  • 派生製品:製品中の鋼・アルミニウム含有価額に対して課税
  • 鉄・アルミ両方を含む派生品:それぞれの含有価額に対してそれぞれの232関税を課税

申告方式:「2行計上」

CBPの指示により、以下の2行に分けて申告します:

  1. 1行目(非金属部分):本来のHS番号、原産国、「総額-金属含有価額」
  2. 2行目(金属含有価額):同一HS・原産国、数量0、価額=金属含有価額、HS第99類で50%課税

算定例

洗濯機(申告価額500ドル、うち鋼含有価額100ドル、アルミ含有価額20ドル)の場合:

  • 鋼部分:100ドル × 50% = 50ドル
  • アルミ部分:20ドル × 50% = 10ドル
  • 232関税合計:60ドル

中国原産品で301関税対象の場合、さらに25%が併課される可能性があります。

4. 重複関税の取扱い

232関税 vs 301関税(対中)

累積適用されます。中国原産で232対象品の場合、232(50%)+ 301(25%)が併課される可能性があります。

232関税(鉄鋼・アルミ) vs IEEPA(相互関税)

232に関わる金属部分にはIEEPAは重複適用されませんが、非金属部分にはIEEPAが課される場合があります。

232関税(木材) vs その他関税

木材関連の232関税は、相互関税・IEEPA関税(ブラジル40%、インド25%)とは重複適用されません。232自動車関税と重複する場合は自動車関税のみが適用されます。

その他の特則

  • ロシア関連アルミニウム:232とは別に200%の特則が存続
  • デューティードローバック不可
  • FTZは原則「特恵外国品扱い」が必要

5. 企業の実務対応チェックリスト

A. 分類・原産・含有価額の把握

HTS分類の見直し:新規派生指定品目について社内マスターを更新

  • 家電、トレーラー、空缶・ビール(既存)
  • 風力タービン、移動式クレーン、ブルドーザー、鉄道車両、家具、圧縮機、ポンプ、オートバイ、船舶用エンジン、EV用電気鋼材、排気システム部品(8月18日追加)
  • 木材、木製家具、キャビネット(10月14日追加)
  • 中・大型トラック(11月1日予定)

金属含有価額の算定体制整備:BOM・コスト表から鋼・アルミ含有価額を抽出できる仕組みの構築

原産性証明の取得

  • 鉄鋼:Melt & Pour(溶解・鋳造)国の証明
  • アルミニウム:Smelt & Cast(製錬・鋳造)国の証明
  • メキシコ経由品は2024年7月以降の厳格化に注意

B. 課税最適化戦略

調達先の見直し:英国原産品は25%(他国50%)の優遇税率を活用

米国内素材の活用:米国でMelt & Pour/Smelt & Castされた素材は0%免除の可能性

設計変更の検討:鋼・アルミ以外素材への置換、金属使用量削減による含有価額の圧縮

複数関税の影響分析:232 + 301 + AD/CVDの総負担試算

C. 契約・申請対応

価格条項の見直し:サプライ・販売契約に「232/301変動条項」を追加

インクルージョン申請の活用(国内生産者向け):年3回の申請機会を活用した競合品の追加指定

社内統制の強化:HTS・原産・含有価額・証憑の監査体制整備

6. 実際の企業事例

American Trailer Manufacturers Coalition

Great Dane、Stoughton、Strick、Wabashなどの米国トレーラーメーカー連合が2025年5月にBISへ派生指定追加を申請し、8月18日にドライバン・リーファートレーラーが派生製品として採用されました。

Whirlpool(米国家電メーカー)

家電の派生指定追加(6月23日)に対し、「金属含有価額課税」や重複関税整理を踏まえた支持表明を行い、国産比率の高さを背景に価格公平化効果を主張しています。

Ball Corporation(アルミ缶メーカー)

2025年の関税環境下でも、調達・ヘッジ・価格見直しにより影響は限定的としており、財務・契約面での対応による影響平準化の好例となっています。

外国自動車メーカー連合

外国自動車メーカー連合は、EV用電気鋼材や排気システム部品の派生製品追加に対して、米国内に十分な生産能力がないことを理由に反対意見を提出しましたが、採用されませんでした。

Tesla

Teslaは、電気自動車モーターや風力タービンに使用される鉄鋼製品の追加指定について、米国内の生産能力が不足しているとして反対しましたが、8月18日の決定で対象に含まれました。

7. 今後の注意点

制度面のポイント

  • 232税率は原則50%(英国25%、木材10~25%)
  • 課税ベースは金属の「含有価額」のみで、2行計上が必要
  • 派生品範囲は今後もインクルージョン制度により拡大予定(年3回:5月・9月・1月)
  • 301関税(対中)とは累積適用される
  • 2026年1月には木製家具・キャビネット関税が段階的に引上げ(30%・50%)

企業の優先対応事項

緊急対応(~2025年11月)

  • 中・大型トラック輸入企業:11月1日発効の25%関税への対応準備
  • 木材・木製品輸入企業:10月14日発効の関税(10~25%)の影響分析と価格見直し

継続対応

  • HTS分類の再確認(407品目追加を反映)
  • 含有価額算定体制の整備
  • Melt & Pour/Smelt & Cast証憑の取得
  • 契約価格条項の見直し
  • 対中国301関税重複の影響分析
  • (国内生産者の場合)次回インクルージョン制度(2026年1月)の活用検討

情報収集

  • BISの連邦官報公告の定期的な確認(次回申請期間:2026年1月)
  • 自動車部品インクルージョン制度の動向監視(2025年10月1日から第1回申請期間開始)

この新制度により、米国への鉄鋼・アルミニウム関連製品の輸出入には従来以上に精緻な管理と戦略的対応が求められています。特に2025年8月の407

「トランプ政権、トヨタ・ホンダなどへの関税軽減措置を決定へ」の信憑性を評価する(2025年10月6日時点)

10月3日のロイター電以降に出ている一次・二次情報を突き合わせて、件の見出し「トランプ政権、トヨタ・ホンダなどへの関税軽減措置を決定へ」の信憑性を評価します。


結論

  • ロイター(10月3日)が伝えたのは「検討中(considering)」。正式決定はまだというのが記事本文のニュアンスです。ホワイトハウス関係者も「大統領の署名による公式行動がない限り、政策の議論は推測だ」とコメントしています。Reuters
  • その後の国内報道の多くはロイター電を基に「延長を近く決定へ/決定の見通し」と書きましたが、新たな公式文書や布告は未確認です(10月6日現在)。Yahoo!ファイナンス+2Mainichi+2
  • 現行の「関税相殺(Import Adjustment Offset)」制度は、2026年4月末までMSRPの3.75%、その後は2027年4月末まで2.5%という既存ルールのみが官報・大統領布告で有効。5年延長やエンジンまでの拡大はまだ告示されていません。The White House+2Federal Register+2

したがって、この見出しは方向性(軽減拡大の検討)自体は事実に沿う一方で、「決定へ」と断定的に読める点は行き過ぎ。“高い確度で検討中”だが“未決”というのが最新の整合的な読みです。


何が報じられたか(10/3のロイター)

  • 趣旨:米国で最終組立てを行う乗用車について、部品の232条関税に充当できる相殺額現行の3.75%(1年目)→2.5%(2年目)という暫定スケジュールから、3.75%を最大5年に延長し、米国製エンジンも対象に拡大する案を大統領が検討
    情報源はバーニー・モレノ上院議員(共和)および自動車業界関係者。ホワイトハウスは「署名までは推測」と述べ、正式決定は否定Reuters
  • 恩恵が想定されるメーカーとして、フォード、トヨタ、ホンダ、テスラ、GMなど米国内での国産比率が高いメーカーが名指しされました(記事内のモレノ氏コメント)。Reuters

10/3以降のフォロー報道(整理)

  • 日本メディアの後追い
    延長を近く決定する見通し」「負担軽減へ」といったトーンで配信(時事/Yahoo!ニュース、毎日新聞、電波新聞など)。いずれも根拠はロイター電で、新規の一次情報は付されていません。Yahoo!ファイナンス+2Mainichi+2
  • マーケット反応
    10/3の報道を受け、米自動車株が上昇(フォード、GM、トヨタ、ホンダなど)。バロンズは相殺延長観測を材料視と解説。Barron’s
  • 周辺コンテクスト(今日:10/6)
    対輸入全般の関税環境が厳しい中で、各社が米国内投資を増やす動きをロイターが総括。今回の相殺延長検討は、こうした潮流と整合しますが、個別制度の正式アップデートには触れていませんReuters

公式根拠(現行制度)

  • 大統領布告(4/29付)と連邦官報で、相殺率と適用期間が明確化:
    • MSRPの3.75%2025/4/3–2026/4/30の米国組立て分)
    • MSRPの2.5%2026/5/1–2027/4/30の米国組立て分)
    • 相殺額は部品の232条関税に充当未使用分は失効せずに繰越可能。
      これを超える延長・拡大の告示は10/6時点で未掲載The White House+2Federal Register+2

トヨタ・ホンダにとっての意味合い

  • 相殺の枠組みは「銘柄別の優遇」ではなく、米国で最終組立てを行うOEM全般が対象。トヨタ・ホンダも対象になり得ます。Reuters
  • 例:MSRP 4万ドルの米国組立車なら、3.75%=1,500ドル/台を部品関税の支払いに充当可能(現行制度)。これが5年に延長され、エンジン製造にも広がれば、米国内足場の強いトヨタ・ホンダのネット負担はさらに軽くなる可能性。※実際の効果は部品輸入構成や台数で変動。現時点では“検討段階”です。Federal Register+1

信憑性の評価

  • 一次性・具体性:ロイターは名指しの議員+業界関係者を情報源に、制度の具体数値(3.75%、5年、エンジン拡大)まで提示。信頼性は高め。ただしホワイトハウスは未決を明言しており、“方向性は確からしいが確定ではない”が妥当。Reuters
  • 公的裏取り連邦官報/大統領布告/商務省の新リリース延長告示は未掲載(10/6時点)。公式アクション未了Federal Register+2Federal Register+2
  • 二次報道の妥当性「決定へ」「延長へ」という表現は市場の期待を要約したものの、事実関係は「検討」レベル。表現が先走りの可能性。Yahoo!ファイナンス+1

これからの「正式決定」の見極めポイント

  1. ホワイトハウスの新たな大統領布告(Presidential Action)の公表。The White House
  2. 連邦官報(Federal Register)への制度改定の告示(5年延長やエンジン拡大の条項追加)。Federal Register
  3. 商務省(ITA/Trade.gov)のニュースリリースでの運用詳細更新。Trade.gov

上記のいずれかが出れば「決定・実施」に相当します。現行は2027年4月末までの2年相殺が有効で、それ以降や拡大は未確定です。Federal Register


参考(背景)

  • 2025年春以降、米国は自動車・部品に対する232条の25%追加関税を発動(既存の関税に上乗せ)。相殺制度はその痛みを一部緩和する狙い。Auto Care
  • こうした関税圧力のもと、海外企業の米国内投資拡大が相次いでいることをロイターが総括(10/6)。Reuters

2025年米国鉄鋼・アルミニウム関税制度の概要と企業対応

1. 2025年の大改定のポイント

関税率の大幅引上げ

2025年6月3日の大統領布告により、鉄鋼・アルミニウムおよびその派生製品に対する関税率が一律**50%**に引き上げられました(英国のみ25%)。これは通商拡張法第232条(Section 232)に基づく措置で、2025年6月4日(EDT)以降の輸入に適用されます。

課税方式の変更:「金属含有価額」ベース

従来の「総額課税」から「金属含有価額のみに対する課税」に変更されました。CBP(米国税関国境警備局)の実務通達により、派生製品やHS第73類(鉄鋼)・第76類(アルミニウム)の品目についても、製品全体ではなく鋼・アルミニウムの含有価額部分のみに232関税が課されます。

除外制度の終了と「インクルージョン制度」の創設

2025年2月10日の布告により、従来の232除外申請制度が終了しました。代わりに、派生製品を追加指定するための「インクルージョン手続」が年3回(5月・9月・1月)の受付期間で運用開始されています。

重複課税(スタッキング)の整理

大統領令第14289号(2025年4月29日)により、複数の特定関税が同一貨物に重複して過剰となる事態を一定範囲で防ぐ手順が規定されました。ただし、232関税と対中制裁の「301関税」については累積適用されることが明記されています。

2. 派生製品の対象拡大

「派生製品(derivatives)」とは、基礎素材(鉄鋼・アルミニウム)からさらに加工された下流製品のことで、2018年の232措置では対象外だった製品分野にまで関税を適用するために指定されています。

2025年の主な追加項目

アルミニウム派生製品(4月4日発効)

  • 空のアルミ缶(HS 7612.90.10)
  • ビール(HS 2203.00.00)

鉄鋼派生製品(6月23日発効)

  • 家電製品(冷蔵冷凍庫、洗濯機、乾燥機、食洗機、オーブン・レンジ、生ごみ処理機)
  • 溶接ワイヤラック(HS 9403.99.9020)

トレーラー類(8月18日発効)

  • ドライバン・冷凍(リーファー)トレーラー(HS 8716.39.0040等)とそのサブアセンブリ

今後の展開

BISのインクルージョン制度により、国内生産者等の申請に基づいて派生製品は継続的に追加される見込みです(申請から60日以内に判断)。

3. 関税算定の具体的方法

基本税率

  • 鉄鋼・アルミニウム・派生品:50%(英国原産品のみ25%)

課税ベースの算定

  1. HS第73類(鉄鋼)・第76類(アルミニウム)製品:金属の「含有価額」のみに課税
  2. 派生製品:製品中の鋼・アルミニウム含有価額に対して課税
  3. 鉄・アルミ両方を含む派生品:それぞれの含有価額に対してそれぞれの232関税を課税

申告方式:「2行計上」

CBPの指示により、以下の2行に分けて申告します:

  • 1行目(非金属部分):本来のHS番号、原産国、「総額-金属含有価額」
  • 2行目(金属含有価額):同一HS・原産国、数量0、価額=金属含有価額、HS第99類で50%課税

算定例

洗濯機(申告価額500ドル、うち鋼含有価額100ドル、アルミ含有価額20ドル)の場合:

  • 鋼部分:100ドル × 50% = 50ドル
  • アルミ部分:20ドル × 50% = 10ドル
  • 232関税合計:60ドル

中国原産品で301関税対象の場合、さらに25%が併課される可能性があります。

4. 重複関税の取扱い

232関税 vs 301関税(対中)

累積適用されます。中国原産で232対象品の場合、232(50%)+ 301(25%)が併課される可能性があります。

232関税 vs IEEPA(相互関税)

232に関わる金属部分にはIEEPAは重複適用されませんが、非金属部分にはIEEPAが課される場合があります。

その他の特則

  • ロシア関連アルミニウム:232とは別に200%の特則が存続
  • デューティードローバック不可、FTZは原則「特恵外国品扱い」が必要

5. 企業の実務対応チェックリスト

A. 分類・原産・含有価額の把握

  1. HTS分類の見直し:新規派生指定品目(家電、トレーラー、空缶・ビール等)について社内マスターを更新
  2. 金属含有価額の算定体制整備:BOM・コスト表から鋼・アルミ含有価額を抽出できる仕組みの構築
  3. 原産性証明の取得
    • 鉄鋼:Melt & Pour(溶解・鋳造)国の証明
    • アルミニウム:Smelt & Cast(製錬・鋳造)国の証明
    • メキシコ経由品は2024年7月以降の厳格化に注意

B. 課税最適化戦略

  1. 調達先の見直し:英国原産品は25%(他国50%)の優遇税率を活用
  2. 米国内素材の活用:米国でMelt & Pour/Smelt & Castされた素材は0%免除の可能性
  3. 設計変更の検討:鋼・アルミ以外素材への置換、金属使用量削減による含有価額の圧縮
  4. 複数関税の影響分析:232 + 301 + AD/CVDの総負担試算

C. 契約・申請対応

  1. 価格条項の見直し:サプライ・販売契約に「232/301変動条項」を追加
  2. インクルージョン申請の活用(国内生産者向け):年3回の申請機会を活用した競合品の追加指定
  3. 社内統制の強化:HTS・原産・含有価額・証憑の監査体制整備

6. 実際の企業事例

American Trailer Manufacturers Coalition

Great Dane、Stoughton、Strick、Wabashなどの米国トレーラーメーカー連合が2025年5月にBISへ派生指定追加を申請し、8月18日にドライバン・リーファートレーラーが派生製品として採用されました。

Whirlpool(米国家電メーカー)

家電の派生指定追加(6月23日)に対し、「金属含有価額課税」や重複関税整理を踏まえた支持表明を行い、国産比率の高さを背景に価格公平化効果を主張しています。

Ball Corporation(アルミ缶メーカー)

2025年の関税環境下でも、調達・ヘッジ・価格見直しにより影響は限定的としており、財務・契約面での対応による影響平準化の好例となっています。

7. 今後の注意点

制度面のポイント

  • 232税率は原則50%(英国25%)、2025年6月4日以降適用
  • 課税ベースは金属の「含有価額」のみで、2行計上が必要
  • 派生品範囲は今後もインクルージョン制度により拡大予定
  • 301関税(対中)とは累積適用される

企業の優先対応事項

  1. HTS分類の再確認
  2. 含有価額算定体制の整備
  3. Melt & Pour/Smelt & Cast証憑の取得
  4. 契約価格条項の見直し
  5. 対中国301関税重複の影響分析
  6. (国内生産者の場合)インクルージョン制度の活用検討

この新制度により、米国への鉄鋼・アルミニウム関連製品の輸出入には従来以上に精緻な管理と戦略的対応が求められています。企業は早急に社内体制を整備し、適切な対応策を講じることが重要です。

FTAのデミニミス規定と米国のデミニミス免税停止について

経営者・実務担当者向け 完全ガイド(2025年9月14日現在)


【1分サマリー】重要ポイント

同じ「デミニミス」でも中身は別物

現在の取り扱い(要点)


【詳細解説】米国デミニミス免税の停止

何が変わったか

  • 2025/7/30:大統領令14324が公布。19 U.S.C. §1321(a)(2)(C)の無税デミニミス扱いを停止The White House
  • 2025/8/29 0:01(米東部)適用開始非郵便ACEでエントリー必須郵便は別建ての課税方式へ。The White House

区分別の運用

1) 宅配・航空・海上(非郵便)

  • エントリー:正式/非公式を問わずACEによる申告必須
  • Type 86ACEが全件リジェクト。Section 321の簡易放出は不可。GovDelivery

2) 国際郵便

  • 課税方式
    • 定額80/160/200ドル/品有効期間6か月)。
    • 従価有効IEEPAレート(原産国別)。2026/2/28以降は従価のみ
  • 実務原産国の申告、運送者または**“Qualified Party”による月次納付**。CBPへの新ワークシート提出U.S. Customs and Border Protection+2U.S. Customs and Border Protection+2

3) USMCA等の特恵関税との関係


【継続中】FTA/EPAのデミニミス規定(原産地の僅少許容)

基本:CTC(関税分類変更)を満たせない**“わずかな非原産材料”について、一定割合以下なら原産扱い**とする救済。数値や計算基準は協定ごとに異なる。

協定閾値(代表)特記事項
USMCA取引価額(国際運賃除外)または総コストの10%Art.4.12、繊維は別章。United States Trade Representative
CPTPP製品価額の10%Annex 3‑Cに例外、繊維は重量10%(Ch.4)。Global Affairs Canada+1
日EU・EPA10%(ex‑works/FOB)Art.3.6(Tolerances)、繊維は注記で別規定。Ministry of Foreign Affairs of Japan
RCEP10%(FOB)Art.3.7、繊維は重量10%Centre for International Law

活用のポイント

  • **CTC未達の“最後の手段”**として検討。
  • 例外付属書(CPTPP Annex 3‑C など)で適用不可品目を必ず確認。
  • 繊維重量基準が多い点に注意(一般品の価額基準と混同しない)。

【役割別】緊急アクションプラン

A. 経営者向け(意思決定の勘所)

  1. 収益影響の即時計算:旧「800ドル以下」案件の関税・通関費上乗せを反映し、売価・利益を再試算。
  2. 販売条件の再設計DDP/DAPの負担、リードタイム(通関)、返品費用を見直し。
  3. 原産最適化デミニミス+累積を用い、USJTA等の特恵による関税ゼロ/低率化を設計。
  4. 統制再構築ACE申告体制・ボンド・ブローカー契約と**KPI(分類正確性/差止率等)**を整備。
  5. 社内用語の分離:「原産地のデミニミス」と「米国輸入のデミニミス」を明確区分。

B. 実務担当向け(当面の実装手順)

米国向け:宅配・一般貨物(非郵便)

  • Type 86停止前提で非公式/公式エントリーへ切替(ACE)。
  • HTS10桁・原産国・売買当事者・インボイス値など前工程で確定
  • 関税・税金・手数料の計算とDDP/DAP別の回収フローを整備。GovDelivery

米国向け:国際郵便

  • 課税方式(定額 or 従価)の選択・適用を統一(月単位で変更可2026/2/28以降は従価のみ)。
  • 原産国申告+月次納付の新プロセス(Pay.govワークシート)を実装。
  • 特恵が必要な出荷ACEエントリーに切替。U.S. Customs and Border Protection+1

FTA原産判定(共通)

  1. PSR→CTC判定 → 未達ならデミニミス(10%)を評価(繊維は重量)。
  2. 例外付属書の適用可否確認。
  3. 材料内訳・計算書・サプライヤー宣誓等の証憑保管を徹底。

【混同防止】制度比較早見表

項目FTA/EPAのデミニミス(原産地)米国のデミニミス(輸入時の無税扱い)
目的原産地規則の救済(CTC未達の僅少分を許容)低額貨物の無税扱い現在は停止
閾値価額10%(繊維は**重量10%**等)800ドル以下免税停止
根拠各協定条文(例:USMCA 4.12/CPTPP 3.11/日EU 3.6/RCEP 3.7)大統領令14324、CBP告知(Type 86不可
実務原産判定・計算・証憑ACE申告郵便の新課税関税納付

GovDelivery+6United States Trade Representative+6Global Affairs Canada+6


【具体例】数値シミュレーション

CPTPP・原産地デミニミス

  • FOB:100万円
  • CTC未達の非原産材料:9万円
  • 判定:9% ≤ 10% → 原産品認定可(例外付属書対象は不可/繊維は重量基準)。Global Affairs Canada

米国向け・宅配(非郵便)

  • 価格:200ドルの小包 → 無税枠なしACEで申告し、関税等納付GovDelivery

米国向け・国際郵便(移行期間)


【主要根拠】(リンクは出典先)


ひとことアドバイス

社内では**「原産地のデミニミス(FTA/EPA)」「米国輸入のデミニミス(Section 321)」を別ラベルで管理してください。米国向け小口出荷は、通関・価格・販売条件(DDP/DAP)・返品まで含めた即時の設計見直し**が安全です。


本資料は一般的な解説です。個別案件では、該当協定本文・付属書、CBPの最新ガイダンス(CSMS/FAQ)、および連邦官報の実施告示をご確認ください。

米国『相互関税』下でのファーストセール活用の現状と実務

以下は、日本の経営層向けにまとめた**「米国『相互関税』下でのファーストセール活用の現状と実務」です。(本稿の数値・制度は2025年9月10日**時点)


エグゼクティブ・サマリー

  • 米国の「相互関税」は、2025年4月に導入(原則10%)。日本向けは当初国別追加率24%が適用予定だったが、9月4日付の大統領令で日本品目は「合計15%へのトップアップ」方式(MFNが15%未満の品目は合計15%に、15%以上は追加0%)へ変更。8月7日に遡って適用され、9月16日頃までに実装される見込み。これにより日本からの対米輸出の関税水準は実務上15%が目安The White House+2The White House+2Reuters
  • 関税上昇のなか、ファーストセール(First Sale)を使って課税価格を「製造者→仲介者」の第一次販売価格にできる取引への関心が世界的に上昇。欧州大手(L’Oréal等)も米国関税対策として採用検討との報道があり、企業の節税ニーズが顕在化。 Reuters
  • コンサル需要は増加。米国の通関実務を担うカスタムブローカーや通関・関税アドバイザーの依頼が急増し、費用も上昇傾向との報道。各大手アドバイザリーもFirst Sale関連のウェビナーやソリューションを拡充。 ReutersKPMG+1
  • 制度面の足元:米連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)のMeyer事件(2024/12/13)では、下級審の厳格すぎる解釈を退けFirst Saleの適用可能性を改めて示唆。一方でCBP(米税関)への「First Sale宣言(Fインジケータ)」や厳格な文書性は引き続き重要。 JustiaU.S. Customs and Border Protection+1

1. 米国「相互関税」の最新状況(日本企業に関係する部分)

タイムライン概要

  • 4/5:全パートナーへ10%のベース関税開始。4/9:国別上乗せ率発動(**日本は24%**に位置付け)。 The White House+1
  • 7/22:米日「枠組み合意」発表。日本向けは**合計15%**へ切替の方針が示唆。 The White House
  • 9/4:大統領令「Implementing the United States–Japan Agreement」発出。日本は「合計15%にトップアップ」。自動車・航空・一部医薬・資源等は別建て取扱い。8/7に遡って適用9/16頃までに施行見込みと日側が発表。 The White HouseReuters

相互関税の調査結果(日本企業向け要約)
(プロジェクト内の標準フォーマット)

国名関税率出所備考
アメリカ(日本向け)原則合計15%(MFNに対するトップアップ)White House EO(2025/9/4)2025/8/7に遡及適用。自動車・航空・一部医薬・資源は別建。 The White House

参考:当初の国別追加率表(Annex I)では日本24%だったが、対日合意で15%へ変更。実務は**「MFN + 追加=合計15%」**になる(MFN≧15%の品目には追加0%)。 The White House+1

(注)EU等他地域は別枠で15%(鋼アルミは50%等)が進行中。足元も政策は流動的で、実装スケジュールや対象は日々更新されるためFR(連邦官報)告示の確認が必須。 Reuters


2. ファーストセール(First Sale)活用の現在地

  • 需要の高まり:米国の広範な関税上昇の直撃を受け、メーカー価格(第一次売買価格)を基礎に課税できるFirst Saleへの関心と採用が拡大。欧州大手が公にFirst Saleの検討を表明したほか、各アドバイザリーが2025年入り後にFirst Sale関連の解説・支援を増強ReutersKPMG
  • 法的確度CAFC(Meyer事件)は、First Sale適用の判断で不要な“非市場影響の完全排除”まで求めた下級審を批判し差戻し。判示はNissho Iwai(1992)ラインの再確認で、適切な事実関係と文書があれば適用余地があることを改めて示唆。 Justia
  • 実務要件(要点)
    • ①ボナファイド(真正)な売買②米国向けの販売③アームズレングス(関連者間でも事情考慮で可)の立証。
    • 強固な文書性(製造者→仲介者、仲介者→輸入者の契約・PO・INV・支払証憑・船積書類・米国向け証跡)。
    • 申告面:**CBPへのFirst Sale申告(Fインジケータ)**等、エントリーでの適切な表示・内部統制。 U.S. Customs and Border Protection+1

(補足)相互関税以外でも**対中301関税の強化(EV100%等)**が続いており、First Saleの“節税レバー”の価値は総合的に上昇United States Trade Representative


3. コンサルティング需要・費用・リードタイムの所見

  • 需要関税環境の変動→ブローカー/関税アドバイザーへの相談が急増。業界報道では**「需要過多で費用も上昇」とされ、大手物流・通関企業の人員増強も見られる。First Saleを含む関税最適化相談の“枠”は逼迫**しがち。 ReutersNCBFAA – CMS
  • 費用の方向感:公開単価は限定的だが、需要超過とコンプライアンス・リスク上昇を背景にレート上振れの観測が増加。大手税務・通商アドバイザリーがFirst Sale専用チームやCOEを前面化しており、専門人材の需給タイトが続く見込み。 KPMG
  • ウエイティング:公式な待機列データは限定的だが、需要急増の報道各社の人員拡充から、ピーク時は着手までの待ち(数週間~)が発生しうる局面。期限が読みにくい相互関税の実装・改定も相まって早期着手が安全ReutersNCBFAA – CMS

※上記は市場全体の定性的トレンドです。貴社の規模・サプライチェーンの複雑性・対象HS範囲・必要書類の整備度により見積りは大きく変動します。


4. コンサルタントの選び方

  1. First Saleの実績製造者→仲介者→輸入者の三者文書を数百~数千行レベルで検証した経験/関連CBPバインディングルーリング実績。
  2. 訴訟・審査対応力Meyer等の判例動向を踏まえた関連者間価値検証(“circumstances of sale”)に強いこと。 Justia
  3. 通関実務との接続:ブローカーとのエントリー連携(Fインジケータ、行分割、PMI/MPF等の整合)。 U.S. Customs and Border Protection
  4. 日本語/日系サプライヤ対応工場側の原価・契約情報の開示交渉を日本語で粘り強く進める力。
  5. 相互関税の即応力合計15%トップアップ例外品目等、対日合意に基づく実装をエントリー設計へ反映できる体制。 The White House
  6. データガバナンス:PO/INV/支払・物流・原価の仕訳・紐付け・サンプリングの設計力。
  7. 移転価格・税務との整合First Sale とTP文書の一貫性(“all costs + profit”テスト等)に通じること。 Justia
  8. 体制・納期繁忙期でも確実に稼働できる要員計画(需要逼迫の環境前提)。 Reuters

5. 企業が取るべきプロセス案

Day 0–15:インパクト把握とGo/No‑Go

  • 対米出荷の関税影響マップ(相互関税15%・他救済含む)、First Sale適用余地(販売段階のマージン差)を定量化。概算ROIを算出(後掲の簡易式参照)。 The White House

Day 16–45:実行可能性(Feasibility)

  • サプライチェーン可視化(製造者→仲介者→輸入者)。
  • 文書回収:契約、PO/INV、支払、BL/AWB、米国向け特定証跡。
  • テストサンプルボナファイド/米国向け/アームズレングスの3要件を検証。必要に応じ契約条項の改訂U.S. Customs and Border Protection

Day 46–75:設計・パイロット

  • 申告設計Fインジケータ運用、行分割、第三者費用の扱い)。
  • パイロット申告(少量・限定SKU)→差異分析内規化U.S. Customs and Border Protection

Day 76–90:本番展開・監査耐性

  • SOP/権限/チェックリスト整備監査トレイル構築。
  • 必要に応じCBP事前教示(バインディングルーリング)年次レビュー枠組み(価格・原価変動追随)。
  • UFLPAや301/232等の他法令との同時整合も確認。 United States Trade Representative

6. 検討会向けROIの簡易算式

  • 年間輸入額(CIF)× 関税率 ×(最終売買価格に対する第一次売買価格の割引率)理論的な年次節税
  • 例:年間5,000万ドル、相互関税15%、第一次価格が20%低い場合
    5,000万 × 15% × 20%=150万ドルの削減ポテンシャル(他の特別関税・手数料・実装コストは別途考慮)。

7. リスクとコンプライアンスの勘所

  • 文書性の不足関連者間価格の説明不備は致命傷。Meyer判決は救済的だが、根拠資料の整備を前提とする点は不変。 Justia
  • 申告(Fインジケータ等)と現場オペの乖離は追徴・罰則の火種。中間業者の協力取り付け(コスト情報開示)が成功の鍵。 U.S. Customs and Border Protection
  • CBPの審査活発化を指摘する業界アラートが増加しており、監査耐性(サンプリング、追跡可能性)の事前構築が安全。 PCB USAMohawk Global

8. いま取るべきアクション

  1. 関税影響の棚卸し(HS別・SKU別、相互関税15%の影響を即時試算)。 The White House
  2. First Sale適用余地のスクリーニング(三者取引・マージン差のある品目の抽出)。
  3. サプライヤ・仲介者との合意形成(情報開示・契約改定の協議)。
  4. パイロットの早期実施(FR実装タイムラインに合わせ、9–10月の本格展開を見据えた先行準備)。 Reuters
  5. コンサル・ブローカーの確保(需要逼迫を踏まえ、着手枠の確保と見積を先行)。 Reuters

主要出典(抜粋)

  • 大統領令(相互関税の骨子)4/2 EOAnnex I(日本24%)9/4 日米合意実施EO(日本は合計15%トップアップ)The White House+2The White House+2
  • 実装見通し(施行時期)9/16頃までに低関税化が効く見込み(ロイター)。 Reuters
  • First Saleの活用・要件CAFC MeyerCBP First Sale Declaration/ガイダンスJustiaU.S. Customs and Border Protection+1
  • 需要・費用上昇の市況ブローカー需要急増・費用上昇(ロイター/業界団体再掲)。 ReutersNCBFAA – CMS
  • 欧州での活用機運大手がFirst Sale検討(ロイター)。 Reuters

付録:First Sale導入時の提案RFP項目(抜粋)

  • スコープ(HS/仕向け/サプライヤ階層)、成果物(適格性判断書、文書チェックリスト、SOP、パイロット申告支援、監査対応パック)、申告設計(Fインジケータ、行分割方針)、データ要件、移転価格連動、リードタイム、体制(マネジャー稼働率・バックアップ)、費用(固定+従量、成功報酬の可否)、守秘と情報開示合意(NDA/監査時の第三者閲覧)。

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相互関税 最新一覧(2025-09-10時点)

対象:米国の「相互関税(Reciprocal Tariff)」に関する、公表・報道ベースの最新国別レート。原則として 2025-07-31 公表の大統領令(Annex I)を基準に、日・EU・中国・加墨などの後続発表を注記。

凡例

  • 関税率(相互関税)=米国が当該国・地域原産品に課す追加関税(HTS 99章の相互関税)。
  • 出所=主要根拠(簡略表記)。
  • 備考=相互関税以外の別枠関税(232鉄鋼・アルミ、銅、自動車、薬物・国境関連など)がある場合は注記。詳細は本体チャットの脚注・出典参照。

国名関税率(相互関税)出所備考
Algeria(アルジェリア)30%WH EO 2025-07-31 Annex I
Angola(アンゴラ)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Bangladesh(バングラデシュ)20%WH EO 2025-07-31 Annex I
Bosnia & Herzegovina(ボスニア・ヘルツェゴビナ)30%WH EO 2025-07-31 Annex I
Botswana(ボツワナ)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Brazil(ブラジル)10%WH EO 2025-07-31 Annex I別枠:対ブラジル追加関税の大統領令(2025-07-30)あり(相互関税とは別)。
Brunei(ブルネイ)25%WH EO 2025-07-31 Annex I
Cambodia(カンボジア)19%WH EO 2025-07-31 Annex I
Cameroon(カメルーン)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Canada(カナダ)*10%(ベースライン)WH EO 2025-07-31 Sec.2(d)USMCA適格は追加関税免除(CBP 2025-03-08)。別枠で対加措置(35%)の大統領令あり。
Chad(チャド)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
China(中国)*10%(暫定)WH EO 2025-08-11(中国一時停止延長)2025-11-10まで高率の停止延長。低額輸入・フェンタニル関連等は別枠措置あり。
Côte d’Ivoire(コートジボワール)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
DR Congo(コンゴ民主共和国)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
EU(欧州連合)15%(MFNと合算し上限15%)WH EO 2025-07-31 Sec.2(c) / WH 共同声明 2025-08-21一部品目は相互関税免除(コルク、航空機、ジェネリック等)。
Falkland Islands(フォークランド諸島)10%WH EO 2025-07-31 Annex I
Fiji(フィジー)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Guyana(ガイアナ)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
India(インド)25%WH EO 2025-07-31 Annex I別枠:追加25%(2025-08-06)が上乗せの大統領令あり(相互関税とは別)。
Indonesia(インドネシア)*19%WH EO 2025-07-31 Annex I / WH Fact Sheet 2025-07-22米・インドネシア合意で19%に明示。
Iraq(イラク)35%WH EO 2025-07-31 Annex I
Israel(イスラエル)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Japan(日本)*15%(MFNと合算し上限15%)WH EO 2025-09-04(対日合意の実施)自動車・同部品などセクター別取扱いも同令で規定。
Jordan(ヨルダン)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Kazakhstan(カザフスタン)25%WH EO 2025-07-31 Annex I
Laos(ラオス)40%WH EO 2025-07-31 Annex I
Lesotho(レソト)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Libya(リビア)30%WH EO 2025-07-31 Annex I
Liechtenstein(リヒテンシュタイン)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Madagascar(マダガスカル)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Malawi(マラウイ)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Malaysia(マレーシア)19%WH EO 2025-07-31 Annex I
Mauritius(モーリシャス)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Mexico(メキシコ)*10%(ベースライン)WH EO 2025-07-31 Sec.2(d)USMCA適格は追加関税免除(CBP 2025-03-08)。別枠で対墨25%措置(2025-02-01)あり。
Moldova(モルドバ)25%WH EO 2025-07-31 Annex I
Mozambique(モザンビーク)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Myanmar(ミャンマー)40%WH EO 2025-07-31 Annex I
Namibia(ナミビア)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Nauru(ナウル)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Nicaragua(ニカラグア)18%WH EO 2025-07-31 Annex I
Nigeria(ナイジェリア)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
North Macedonia(北マケドニア)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Norway(ノルウェー)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Pakistan(パキスタン)19%WH EO 2025-07-31 Annex I
Philippines(フィリピン)19%WH EO 2025-07-31 Annex I
Serbia(セルビア)35%WH EO 2025-07-31 Annex I
South Africa(南アフリカ)30%WH EO 2025-07-31 Annex I
South Korea(韓国)15%WH EO 2025-07-31 Annex I自動車の232等は別枠。
Sri Lanka(スリランカ)20%WH EO 2025-07-31 Annex I
Switzerland(スイス)39%WH EO 2025-07-31 Annex I
Syria(シリア)41%WH EO 2025-07-31 Annex I
Taiwan(台湾)20%WH EO 2025-07-31 Annex I
Thailand(タイ)19%WH EO 2025-07-31 Annex I
Tunisia(チュニジア)25%WH EO 2025-07-31 Annex I
Vanuatu(バヌアツ)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Venezuela(ベネズエラ)15%WH EO 2025-07-31 Annex I別枠:ベネズエラ産原油輸入国への対抗関税制度あり。
Vietnam(ベトナム)20%WH EO 2025-07-31 Annex I
Zambia(ザンビア)15%WH EO 2025-07-31 Annex I
Zimbabwe(ジンバブエ)15%WH EO 2025-07-31 Annex I

注記

  • EU・日本:MFN(一般税率)と相互関税の合算が 15% になる設計(MFNが15%以上の品目は相互関税0%)。
  • 中国:相互関税の高率(125%等)は一時停止中で 10% に減免(~2025-11-10予定)。
  • カナダ・メキシコ:Annex I非掲載につき原則ベースライン10%。USMCA原産資格を満たす場合は追加関税免除(相互関税の適用外)。
  • 「別枠」:相互関税とは別に、鉄鋼・アルミ・銅、車、対ロシア・対ベネズエラ・薬物(フェンタニル)関連など独立の大統領令・布告が適用される場合がある。