日米「15%相互関税」枠組みの適用範囲と時期


輸出側(日本企業)にとっては見積もりと契約条件、輸入側(米国側の輸入者)にとっては申告実務に直撃するのが、この「15%」です。ポイントは、15%が一律上乗せではなく、原則として米国の通常税率(Column 1=MFN)を含めた合算で15%になる設計だという点です。japan.kantei+1

1. 今回の「15%」は何を意味するのか

日米合意の実装として、米国は日本原産品について、原則「ベースライン15%」の関税枠組みを適用しました(ほぼ全品目が対象)。一方で、自動車・同部品、航空宇宙(民間航空機)などは別扱いのルールが設定されています。whitehouse+1

ここで誤解が多いのが、15%が「追加で15%」だと思われやすい点です。実務上のコアは次のロジックです。

2. 適用ロジック:MFN込みで合算15%

CBP(米国税関・国境警備局)のガイダンスでは、日本原産品の相互関税は、品目ごとのColumn 1税率(従価税、または従価税相当)に応じて決まります。whitehouse

基本ルール(一般品目)

Column 1税率が15%以上の場合
追加の相互関税は0%(実務上は専用のChapter 99番号9903.02.72を申告)whitehouse

Column 1税率が15%未満の場合
Column 1と相互関税の合算が15%になるように調整(いわば「15%までの上乗せ」、HTSUS番号9903.02.73を使用)whitehouse

特定税率(従量税など)の扱い

Column 1が従量税や複合税率の場合は、税額を課税価格で割って従価税相当に換算し、その換算率が15%未満かどうかで判定します。whitehouse

実務上の要点

ACE(米国の電子申告システム)は、所定のChapter 99番号を組み合わせて申告すると、結果として15%になるよう計算を置き換える運用が示されています。whitehouse

3. 適用範囲:対象と例外をどう切り分けるか

対象の基本

対象は「日本原産品」です。出荷地が日本かどうかではなく、米国の原産地判定(実質的変更など)で日本原産と扱われるかが起点になります。実務では、サプライチェーン上の加工地が絡む製品ほど、原産地の取り違えがコスト差に直結します。

例外1:民間航空機(Civil Aircraft Agreement)

民間航空機協定(WTOの民間航空機協定)に該当する日本原産の民間航空機(軍用機と無人機を除く)および関連部品等は、相互関税に加えて、アルミ・鉄鋼・銅など一部の232条追加関税から外れる扱いが明示されています(専用のChapter 99番号9903.96.02で申告)。whitehouse

例外2:232条対象品目は原則「相互関税の対象外」

日本原産品でも、232条措置(鉄鋼、アルミ、銅、自動車・同部品など)対象は、相互関税の上にさらに重ねるのではなく、232条側の枠組みで扱う整理が示されています。jetro+1

例外3:特定の医薬品や天然資源など(ゼロ化の可能性)

大統領令では、米国内で入手困難な天然資源やジェネリック医薬品などについて、相互関税率を0%に修正できる枠組みが置かれています。該当性の判断と運用は、今後の当局通知とHTS改正の具体化を前提に、個社での品目当て込みが必要です。whitehouse

4. 時期:いつから何が変わったのか(実務の時系列)

今回の論点は「発効日が1回ではない」ことです。大枠は次の理解が安全です。

重要日程

2025年8月7日(米国東部時間00:01以降)
日本原産品に対する相互関税の適用が開始されました。初期運用では専用のHTS番号9903.02.30で申告する扱いが示されました。japantimes+2

2025年9月4日
日米合意を実装する大統領令が公表され、15%ベースラインと、セクター別扱いの枠組みが明示されました。govinfo+1

2025年9月16日(米国東部時間00:01以降)
申告用のChapter 99番号が更新され、従来番号9903.02.30がACE上で使用不可となり、新番号9903.02.72と9903.02.73へ移行しました。加えて、自動車・同部品と民間航空機の取り扱いがこの日から明確に運用開始となっています。whitehouse

遡及と修正の実務

大統領令には、2025年8月7日以降の輸入に遡って適用する旨が置かれ、CBPが返金や修正の手順を案内する形になりました。特に2025年8月7日から9月15日の間に輸入実績がある企業は、当時の申告内容が新ルール下で適切か、輸入者と通関業者と一体で棚卸しする価値があります。federalregister+2

5. 自動車・同部品:別建てで「MFN込み15%」へ

自動車・同部品は232条の枠で再設計され、2025年9月16日以降に輸入される日本原産の自動車・同部品について、Column 1税率に応じて「合算15%」となるよう調整する運用が示されています。whitehouse

  • 自動車でColumn 1税率が15%以上:HTSUS 9903.94.40(追加関税0%)
  • 自動車でColumn 1税率が15%未満:HTSUS 9903.94.41(合算15%)
  • 自動車部品でColumn 1税率が15%以上:HTSUS 9903.94.42(追加関税0%)
  • 自動車部品でColumn 1税率が15%未満:HTSUS 9903.94.43(合算15%)whitehouse

6. ビジネスマン向け:現場が最初に確認すべき3点

自社品目のColumn 1税率が15%未満か
未満なら、原則として15%まで引き上げられるため、価格と利益への影響が大きくなります。whitehouse

232条対象に該当しないか(鉄鋼、アルミ、銅、自動車など)
相互関税で処理するのか、232条側で処理するのかで、申告番号も請求書の説明も変わります。jetro+1

申告の「番号」と「順番」
Chapter 99番号は付ければよいのではなく、複数の追加関税や救済関税が重なる場合に、CBPが示すシーケンスに沿って並べる必要があります。現場では、輸入者側の通関ルールとテンプレート改修が先行課題になります。whitehouse

まとめ

米日15%相互関税枠組みは、単純な一律上乗せではなく、MFN込みで合算15%に調整する設計です。発効は2025年8月7日、申告番号の更新と自動車・民間航空機の具体運用は2025年9月16日が節目となりました。まずは自社品目が「15%未満か」「232条か」「例外(民間航空機等)か」を切り分け、輸入者・通関業者と一緒に申告ルールと過去実績の点検まで進めるのが、最短で損失を止める動きになります。japan.kantei+2


免責事項
本稿は公開情報に基づく一般的な解説であり、個別案件の法的助言ではありません。実際の適用は、最新のHTS改正、CBPのCSMS、通関実務(ACE設定)に従って確認してください。


    1. https://japan.kantei.go.jp/103/statement/202508/07kaiken.html
    2. https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/08/4599e222a3e3b82d.html
    3. https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/07/further-modifying-the-reciprocal-tariff-rates/
    4. https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/09/implementing-the-united-states-japan-agreement/
    5. https://www.japantimes.co.jp/business/2025/08/07/economy/reciprocal-tariff-effective/
    6. https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2025-09-09/html/2025-17389.htm
    7. https://www.federalregister.gov/documents/2025/09/16/2025-17908/implementing-certain-tariff-related-elements-of-the-united-states-japan-agreement
    8. https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/09/df5c001da8c7a39e.html
    9. https://www.congress.gov/crs-product/IN12608
    10. https://www.youtube.com/watch?v=JRLUQvYLK1w
    11. https://www.thompsoncoburn.com/insights/u-s-japan-trade-agreement/
    12. https://www.nri.com/jp/media/column/kiuchi/20250708.html
    13. https://www.chrobinson.com/it-it/resources/insights-and-advisories/client-advisories/2025q3/09-17-2025-client-advisory-us-japan-agreement-implementation-trade-agreement-tariff-modifications/
    14. https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/08/df401b87949acc2a.html
    15. https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/us_tariff/pdf/00_20250822.pdf
    16. https://www.jetro.go.jp/ext_images/biz/seminar/2025/4692b7c6204944b6/gaiyo20250925.pdf
    17. https://www.pref.toyama.jp/documents/49618/2_jetro0827.pdf
    18. https://www.meti.go.jp/tariff_measures/pdf/2025_0901_02.pdf

    【2025年版】米国相互関税の新方針と実務対応:税率「合計15%」ルールと遡及還付の現場論点

    2025年から本格運用が始まった米国の「相互関税(Reciprocal Tariffs)」。
    この制度で企業の明暗を分けるのは、税率の高さそのものよりも、「どの申告コード(Chapter 99)を使い、どの例外を適用し、いつの貨物まで遡れるか」という実務精度の差です。

    相互関税はHTSUS第99章の追加コードで実装されますが、交渉結果や大統領令によって矢継ぎ早にルールが上書きされています。現場がこのスピードに追随できないと、過払いによるキャッシュフロー悪化、申告誤りによるペナルティ、そして数年後の事後調査(Audit)という「三重のリスク」を抱え込むことになります。

    本稿では、最新の大統領令とCBPガイダンスに基づき、見落としがちな実務リスクを整理します。


    1. 何が「新方針」なのか:一律課税から「トップアップ方式」へ

    制度開始当初(2025年4月5日)は、原則として「一律10%の追加(9903.01.25)」という単純な構造でした。しかし、その後の交渉と7月31日の大統領令により、現在はより複雑かつ精緻な「国別調整モデル」へと移行しています。

    「新方針」の核心は以下の3点です。

    1. 国別レートへの移行
      交渉状況や安全保障上の整合性を踏まえ、国ごとに調整された相互関税率(9903.01.43〜など)が適用されます。
    2. 「合計15%」の上限設計(トップアップ方式)
      EUや日本など特定のパートナー国に対し、「一般税率+相互関税=上限15%」となるよう追加税率を調整するルールが明文化されました。
    3. 迂回輸出への厳格な罰則
      第三国を経由した迂回(Transshipment)が認定された場合、通常の相互関税ではなく一律40%の懲罰的追加関税が課される仕組みが導入されました。

    CBPはこれに伴い、2025年8月7日以降の輸入に対し、新しい国別コード体系(9903.02シリーズ)を適用する運用を開始しています。


    2. 日本向けルールの深層:「合計15%」と遡及還付の罠

    日本企業にとって最も重要なのは、9月4日の大統領令で確定した「合計15%(Top-up to 15%)」ルールです。

    • 一般税率(Col.1)が15%未満の場合:不足分のみを相互関税として上乗せし、合計で15%にする。
    • 一般税率が15%以上の場合:相互関税の追加はゼロ(免除)。

    このルールは2025年8月7日の輸入分まで遡及適用(Retroactive Application)されますが、ここで実務上の「揉め事」が多発しています。

    最大の論点は「還付金(Refund)の帰属」です。
    過払い分の関税は、CBPから輸入者(Importer of Record)に対して還付されます。しかし、DDP取引などで輸出者が関税負担をしていた場合、あるいは事後精算条項がある場合、その還付金をサプライヤーや顧客にどう配分するか。ここが契約で曖昧なままだと、経理処理も含めて多大な調整コストが発生します。


    3. 通関現場が変わる:Chapter 99コードが「主役」に

    相互関税の導入により、通関申告は「第99章(Chapter 99)のコード選定」が最重要タスクとなりました。対象品目には課税コードを、対象外品目には除外コードを正確に付番する必要があります。

    現場でミスが起きやすい4つのポイントを解説します。

    3-1. 「例外」の適用ミスは致命傷

    カナダ・メキシコ産品の除外コード(9903.01.26等)や、Annex IIリストに基づく特定品目除外(9903.01.32)は、「自動適用」ではありません。申告時に正しい除外コードを入力し忘れると、システム上で関税が計算されてしまいます。

    3-2. 「日付管理」が関税額を決定する

    制度変更の端境期にある貨物は、インボイス日付ではなく「輸出港の出港日」「米国港への到着日」で適用税率が決まります。特に「8月7日以前に積載され、10月5日までに輸入された貨物」への救済措置など、日付要件は極めて細かいため、B/L(船荷証券)の日付管理がそのままコストに直結します。

    3-3. エントリー分割(Split Lines)の要請

    製品価格の20%以上が米国原産である場合、その「米国原産部分」を相互関税の対象外にできるルールがあります。ただし、これを適用するには1つの製品を「米国原産分」と「それ以外」の2行(Two lines)に分割して申告する必要があり、インボイスの書き方から変えなければなりません。

    3-4. 「チャプター99」の優先順位

    セクション301、232条関税、そして今回の相互関税。複数の追加関税が重なる場合、CBPは「どの順番でコードを並べるか」を指定しています。ブローカー任せにしているとエラーの原因になるため、指示書での明確化が必要です。


    4. 見落としがちな実務論点:FTZとコンプラ

    4-1. FTZ(対外貿易地域)の「入域時」固定
    相互関税対象品をFTZに入れる場合、”Privileged Foreign Status”(特権的外国貨物)としての登録が求められるケースがあります。これにより、税率やHS分類が入域時点で固定されるため、「出すタイミングで税率が変わるかも」という期待が通じない可能性があります。

    4-2. 迂回輸出(Transshipment)のリスク管理
    7月31日の大統領令以降、CBPは原産地偽装の取り締まりを強化しています。単に第三国を経由しただけでなく、「実質的な変更を伴わない加工」を経て米国へ入った貨物が迂回と認定されると、40%の追加関税(9903.02.01)が課されます。調達部門は、サプライヤーの製造工程が「原産地規則を満たす実質的変更」に該当するかどうかを、従来以上に厳格に確認する必要があります。


    5. ビジネス向け実務チェックリスト

    過払いとコンプラ違反を防ぐため、以下の項目を社内タスクとして定着させましょう。

    1. 影響額の試算
      輸出品目ごとに、米国HTSUSの一般税率を確認し、「合計15%」ルール適用後の最終コストを算出する。
    2. 判定ロジックの確立
      相互関税の対象か、例外(Annex IIや232条対象)か、米国原産比率は20%を超えるか等の判定フローを作成する。
    3. 通関指示書の更新
      ブローカーに対し、適用すべきChapter 99コードと、複数の追加関税がある場合の申告順序を明確に指示する。
    4. 物流証憑の保全
      救済期間の適用可否を即断できるよう、「積載日」「出港日」「到着日」が分かる書類をセットで保管する。
    5. 契約条項の点検
      遡及適用による関税還付が発生した場合、その金銭を誰に帰属させるかを売買契約や覚書で明確にする。
    6. 2026年シナリオの準備
      相互関税の法的根拠を巡る訴訟リスクも含め、制度が変更・撤廃された場合の対応(Protestによる権利保全など)を準備しておく。

    まとめ

    2025年の相互関税は、単なるコストアップの問題ではなく、「複雑なルールの海をどう泳ぎ切るか」というコンプライアンス能力のテストでもあります。

    特に「合計15%」の遡及適用と還付実務は、企業の利益に直接影響します。足元の通関を確実に回しつつ、2026年以降の法的変動も見据えた「堅い」実務体制を構築してください。

    米国2025年関税が戦後最高水準に達した理由と日本企業の実務対応

    2025年の米国は、関税政策が「戦後最高水準」と評される領域に踏み込み、企業のコスト構造とサプライチェーン設計に直接影響を与える一年となりました。平均実効関税率は1930年代以来の水準に達したと推計され、関税がマクロ経済だけでなく、個社の価格決定や契約実務にまで波及しています。

    どこまで関税水準が上がったのか

    イェール大学The Budget Lab(TBL)は、2025年11月17日時点で、消費者が直面する平均実効関税率(消費シフト前)が16.8%に達し、1935年以来の高水準と推計しています。貿易構造の変化を織り込んだ「消費シフト後」の平均は14.4%で、こちらも1930年代後半以来の高さです。

    年初時点での平均関税は約2.4%とされており、そこからの上昇幅は極めて大きいものです。APは、2025年11月の実効関税率が消費シフト前で約17%となり、年初からおよそ7倍に跳ね上がったと報じています。

    「戦後最高水準」という表現が難しい理由

    関税水準は「どの母数で平均するか」によって数字が変わるため、実務では指標の違いを理解して読み解く必要があります。

    Banque de Franceは、2025年1〜9月に米国の平均関税が約14ポイント上昇し、制度上の平均が18〜20%程度に達したと分析する一方、税関収入と輸入額の比率で計る事後的な実効関税率は9.7%と整理しています。これは「制度上の税率は極めて高いが、免除や原産地ルール、調達・消費シフトの結果として、観測される実効負担は相対的に低く見える」という構造を示しています。

    TBLの「消費シフト前の実効関税率」は、消費や調達が動く前に家計・企業が直面するコストを示す指標であり、価格見積もりや契約交渉の前提を置くにはこちらの考え方が実務上なじみやすいといえます。野村の解説でも、2025年8月7日時点で平均関税率は約19%とされ、1930年代前半以来の水準に近いとの見立てが示されており、市場参加者の感覚とも整合的です。

    何が関税を押し上げたのか

    2025年の特徴は、単一の対中関税ではなく、複数の枠組みが短期間で積み上がった点にあります。

    対中関税の追加・強化に加え、カナダ・メキシコ向けの関税上乗せや、鉄鋼・アルミ、自動車とその部品、金属含有率の高い機器、銅関連などへの高関税が段階的に導入されました。2025年4月5日からは、多数の国・品目に広く適用される「相互関税(reciprocal tariffs)」と国別の上乗せ措置が開始され、結果として平均関税が一段と跳ね上がったと整理されています。

    Banque de Franceは、こうした措置の累積によって、2025年の米国関税水準がスムート・ホーリー法時代に近い水準へと接近したと指摘しています。

    企業コストとマクロへの影響

    TBLは、2025年の関税のマクロ影響を次のように推計しています。

    • 総合物価は短期で1.2%押し上げられ、平均世帯の負担増は約1,700ドルに相当
    • 実質GDP成長率は2025年に0.5ポイント、2026年に0.4ポイント押し下げられ、長期的には米経済規模が恒常的に約0.3%縮小
    • 失業率は2025年末に0.3ポイント上昇し、2025年末時点の雇用は約46万人分減少

    品目別の影響では、アパレル、金属含有率の高い電気機器やコンピューター、自動車などが特に大きな打撃を受けるとされています。自動車については、短期で価格が13%上昇(平均新車価格で約6,500ドル)、長期でも5%上昇(約2,500ドル)するとの推計が示されています。

    一方で財政面では、関税収入は急増しています。APによれば、2025年11月までの関税収入は2,360億ドル超に達しており、関税は事実上、大規模な間接増税として機能しています。もっとも、貿易赤字の改善や内需への波及は単純ではなく、駆け込み輸入などによって月次の貿易赤字が大きく変動した局面も報告されています。

    日本企業が今優先すべき7つの実務対応

    1. 品目別・通関単位で影響額を可視化する

    平均関税率の数字だけでは、自社の損益へのインパクトは見えません。HTS(HS)コード単位で棚卸しを行い、どの品目がどの関税枠組みの対象になっているかを整理し、月次輸入額ベースでインパクトを試算することが第一歩です。

    TBLが示すように、「消費シフト前」と「シフト後」で関税負担の見え方は変わるため、見積もり・価格転嫁の議論では、まずシフト前の実効関税率(16.8%など)を基準値として置く方が保守的で安全といえます。

    2. 価格条項とサーチャージ条項を再点検する

    2025年の米国関税は、「導入して上げる」だけでなく、「一時停止・除外・再導入」が繰り返される揺れの大きい年でした。売買契約では、関税変更を価格に反映するトリガーの定義、再交渉期限、サーチャージ(追加料金)の算定方法、下振れ時の価格調整の扱いまで、条項を具体化しておく必要があります。

    特に長期契約やTier構造のサプライチェーンでは、関税変動が下流でどのように転嫁・分担されるかを、価格調整条項と連動して明文化しておくことが実務上の安定につながります。

    3. 原産地とサプライチェーンの「二重最適化」

    関税回避のために単純に仕向国や積出国を変えるだけでは不十分な場合が多くあります。Banque de Franceが指摘するように、免除や協定適用の有無が平均コストを左右するため、原産地規則、FTA/EPAの活用、サプライヤー監査コストなどを含めた「原産地+サプライチェーン」の二重最適化が求められます。

    その際には、原産地証明書の取得・保存、サプライヤーからの原産地宣言の検証プロセス、米国側での通関立証に耐えうる記録管理体制までをパッケージで設計することが重要です。

    4. 自動車・金属系は多段階の「波及」を前提に設計する

    自動車や金属含有率の高い製品は、完成品だけでなく鋼材・部品・サブアセンブリなど、多段階で関税コストが累積します。価格転嫁が難しいサプライヤーほど、設計変更(素材変更・仕様簡素化)、代替材の検討、在庫調整や生産タイミングのシフトといったオプションを早い段階から検討する必要があります。

    特にEV関連部材やハイエンド電子部品は、特定国依存度が高いケースが多く、関税だけでなく制裁・輸出規制のリスクも重なるため、調達戦略全体を見直す契機として位置付けるのが現実的です。

    5. 「米国向け最終製品に組み込まれる部材」を把握する

    日本から直接米国に輸出していない場合でも、メキシコや東南アジアで組み立てられた製品に自社部材が組み込まれ、最終的に米国へ輸入されるケースでは、間接的に関税負担が取引条件に跳ね返ります。APが報じるとおり、中国からの輸入減少と同時に、メキシコ・ベトナム・台湾などからの輸入が増加する局面では、米国の関税政策を起点に調達再編が連鎖的に発生しています。

    そのため、Tier1だけでなく、海外拠点・主要サプライヤーを通じて、最終仕向国・最終用途をマッピングし、「対米向けに組み込まれる部材」のボリュームと価格条件を把握することが不可欠です。

    6. 「除外・例外」情報のモニタリングをルーチン化する

    TBLは、2025年秋の農産品などの関税除外拡大が、平均実効関税率の見え方に影響したと指摘しています。こうした除外リストや一時的な免除は企業の関税コストに直結する一方、更新頻度が高く、官報や通達をスポットで追うだけでは見落としやすいのが実情です。

    実務としては、週次程度で関係官庁・連邦官報・専門ニュースをモニタリングし、自社SKUへの該当性をチェックするフローを整備することが有効です。社内では、関税コスト削減の一環として、除外申請や制度利用の検討プロセスも含めて標準化しておきたいところです。

    7. IEEPA関税を巡る訴訟と還付の「権利保全」

    IEEPA(国際緊急経済権限法)に基づく関税については、司法判断の帰趨によっては還付の余地が残るとされています。米議会調査局(CRS)は、米国国際貿易裁判所(CIT)が2025年5月に「IEEPAは関税賦課権限を付与しない」と判断したこと、最高裁が上訴審を受理し、2025年11月初旬に口頭弁論を予定したことなど、手続の流れを整理しています。

    JETROは、CITが2025年12月15日に清算手続の仮差止め申立てを棄却した一方、将来的に違法判断が出た場合の還付可能性や、清算と異議申立て(原則180日以内)のタイミングを巡る実務論点を詳しく解説しています。日本企業としては、輸入者としての立場か、サプライヤーとして価格条件に関与する立場かを踏まえ、清算・異議申立て・記録管理を含めた権利保全方針を、取引先との間で明確にしておく局面にあります。

    高関税が「新常態」になり得るという前提

    2025年の米国関税は、単なる税率変更ではなく、サプライチェーンと価格決定の前提を組み替えるイベントだったと位置付けられます。平均実効関税率が1930年代以来の水準に達したという推計が複数示されている以上、短期の例外措置や交渉結果に一喜一憂するより、「高関税が当面の標準シナリオである」という前提でコスト設計と契約実務を固めることが、企業にとって現実的なアプローチとなります。


    注記: 本稿は公開情報に基づく一般的な解説であり、個別案件の法務・税務・通関判断を代替するものではありません。最終判断は、自社の取引実態と最新の公式発表、並びに専門家の助言に基づいて行う必要があります。

    米国の相互関税・関連301動向

    本日の週次アップデートです。過去72時間の一次ソースだけで「米国の相互関税・関連301動向」を要点整理しました。

    発表日発効日施策/対象対象HS/HTS公式URL
    2025-12-102026-01-01開始(段階適用:2027-01-01=10%、2028-01-01=15%)セクション301:ニカラグア由来(CAFTA-DR非原産)に段階的追加関税。既存の相互関税18%等と累積可HS個別指定なし(原則「ニカラグア産すべて」うちCAFTA-DR原産除外)USTR発表。(United States Trade Representative)
    2025-12-12 公示追って実施通知(FR告示参照)上記301実施のFederal Register告示(段階適用の実装手続)同上USTR/FR告知(要旨)。(C.H. Robinson)
    2025-11-262026-11-10まで延長対中301「除外」178件の延長(産業・医療品等)該当HTSは除外リスト明細参照USTR発表/報道。(United States Trade Representative)
    2025-04-05/09(参考)運用中IEEPAに基づく「相互関税」9903.01.34のCBP実務:米国起源価額20%以上は米国分を非課税計算。申告行分割の要件HTS 9903.01.34(相互関税)CBPガイダンスFAQ。(U.S. Customs and Border Protection)

    補足メモ

    • ニカラグア措置は「CAFTA-DR非原産」のみ追加関税対象。CAFTA-DR原産は新設関税の適用外だが、相互関税18%(IEEPA)やMFNが別途乗る点に留意。サプライチェーン設計では、原産地判定と相互関税の“積み上げ”を前提にシミュレーションが必要です。(United States Trade Representative)
    • 申告実務では、相互関税の課税ベースは「米国起源価額を除く非米国分」。エントリーを米国分と非米国分で2行に分けるCBP運用が明示。(U.S. Customs and Border Protection)

    米国がニカラグア製品に段階的な301条関税を決定2026年は実質猶予、2027年以降にコストが上がる構図


    米国がニカラグア製品に段階的301条関税を決定

    米国はニカラグアに対する301条調査を受け、CAFTA-DRの原産要件を満たさないニカラグア産品に段階的な追加関税を導入することを決定しました。ustr+1
    税率は2026年に0%で開始し、2027年に10%、2028年に15%となる設計で、既存の相互関税18%と重なることで総負担が大きくなり得ます。trade+1


    1. 何が決まったのか

    USTRの発表および官報に示された決定内容の骨子は次のとおりです。govinfo+1

    • 2026年1月1日から新たな301条関税を導入するが、税率は0%で開始する
    • 2027年1月1日に301条関税を10%に引き上げる
    • 2028年1月1日に301条関税を15%に引き上げる
    • いずれも、当該日以降に「消費のために輸入される、又は保税蔵置場から引き取られる」貨物に適用されるとされるgeodis+1
    • 対象は、ドミニカ共和国・中米・米国自由貿易協定(CAFTA-DR)の原産地要件を満たさないニカラグア産品(CAFTA-DR非原産品)とされるustr+1
    • 追加関税は他の関税措置(いわゆる相互関税18%など)が存在する場合、それらに上乗せされ得るtradecomplianceresourcehub+1
    • ニカラグア側の行動に応じて、税率水準やスケジュールの修正可能性をUSTRが示しており、将来の上振れリスクを内包しているgovinfo+1

    ここで重要なのは、この301条関税が「ニカラグア産品一律」ではなく、「CAFTA-DR上の“原産品”ではないもの」に絞られている点です。govinfo
    同じニカラグア生産品でも、CAFTA-DR原産として認定されれば301条追加分は回避し得る一方、非原産と判断されれば301条関税が課される二分構造になります。greenworldwide+1

    参考として、税率の段階スケジュールは以下のとおりです。geodis+1

    適用開始日301条追加関税率対象
    2026年1月1日0%CAFTA-DR非原産のニカラグア産品govinfo
    2027年1月1日10%同上govinfo
    2028年1月1日15%同上govinfo

    制度上は2026年から始まるものの、0%でのスタートとなるため、実務的には2026年が「助走期間」、2027年以降がコストインパクトの本番という構図になります。ustr+1


    2. 301条の枠組みと今回の狙い

    通商法301条は、米国の通商に不当な負担を与える「不当・不合理・差別的」な外国政府の措置に対し、追加関税などの対抗措置をとり得る枠組みです。congress+1
    今回USTRは、ニカラグアの労働権・人権・法の支配に関する政策・慣行が不合理であり、米国の通商を負担・制約していると判断し、301条関税を発動したと説明しています。ustr+1

    実務的には、通商摩擦の対象が「関税水準」だけでなく、労働・人権・ガバナンスなどの非関税領域へ広がっていることを示す事案とも評価できます。ustr+1
    調達・生産委託の現場にとっては、価格だけでなく、人権・コンプライアンス面の評価がサプライヤー選定に直結する局面が一段と強まったと言えます。ustr+1


    3. 調査開始から最終決定までの時系列

    今回の追加関税は、短期間で決まったものではなく、以下のようなプロセスを経ています。ustr+1

    • 2024年12月10日:USTRがニカラグアに関する301条調査を開始ustr+1
    • 2025年10月20日:USTRが、最大100%の追加関税やCAFTA-DR優遇の停止等を含む対抗措置案を公表し、検討オプションとして提示reuters+1
    • 2025年11月19日まで:パブリックコメントを募集し、2000件超の意見が寄せられるgovinfo
    • 2025年12月10日:USTRが最終報告・アクションを公表し、「CAFTA-DR非原産品を対象とする段階的関税」を採用する方針を明示thompsonhinesmartrade+1
    • 2025年12月12日:官報に「アクション通知」が掲載され、影響を限定しつつ圧力を高める設計として「CAFTA-DR非原産に限定」「2年の段階導入(0%→10%→15%)」の趣旨が説明されるgovinfo+1

    官報では、コメントで賛否が拮抗したこと、複数業種から除外要望が出たことに触れたうえで、「CAFTA-DR非原産に限定すること」「2年かけて税率を引き上げること」により、混乱を抑えつつ企業にサプライチェーン移管の時間を与える判断をしたとされています。greenworldwide+1


    4. 米国・ニカラグアの貿易規模と影響業種

    USTRの国別ページによると、2024年の米国の対ニカラグア財輸入は46億ドル、財輸出は27億ドルで、財貿易総額は約74億ドルとされています。ustr
    サービスを含めた米国とニカラグアの総貿易額は87億ドルとされ、米国側の財貿易赤字は19億ドルです。ustr

    JETROは、USITC統計に基づき、米国の対ニカラグア輸入の主要品目として、点火用配線、綿製Tシャツ、金地金、葉巻たばこ、綿製セーター・プルオーバー、コーヒーなどを挙げています。jetro
    官報では、繊維・アパレル、葉巻、コーヒー、家具、医療機器、牛肉・食肉、カカオ、キャッサバ粉、園芸、米、シーフードなど、多様な産業から除外要請が出ていたことが列挙されており、これらの分野で影響への懸念が強かったことがうかがえます。govinfo

    日本企業にとっても、例えば「米国向け製品をニカラグアで組立・縫製し、第三国素材を多く使用しているケース」や「ニカラグア経由調達により原産判定が複雑化しているケース」では、CAFTA-DR原産判定の結果が米国側のコストに直結する構造になります。greenworldwide+1


    5. 見落としがちな論点:相互関税18%との二重構造

    今回の301条関税は、既存の相互関税などに上乗せされ得ると説明されています。tradecomplianceresourcehub+1
    相互関税そのものは、2025年4月2日の大統領令に基づく世界的な「レシプロカル関税」措置の一部であり、その後の7月31日付大統領令で国別税率が修正され、ニカラグアは18%に設定されています。whitehouse+1

    米国商務省系のTrade.gov解説でも、2025年4月2日に相互関税が発表され、ニカラグアが18%の相互関税対象国とされ、その水準がCAFTA-DRの無税メリットを事実上打ち消すものだと説明されています。trade
    そのうえで、CAFTA-DR非原産品については2027年以降、ここに301条関税10%/15%が上乗せされる可能性があるため、「相互関税+301条関税」という二重構造のコストを前提にした設計が必要になります。trade+1


    6. 企業が今すぐ確認すべきポイント

    官報は、2年の段階導入により、企業がCAFTA-DR域内の他国へ生産を移転する時間を確保する意図を明記しています。govinfo
    2026年の税率0%は「猶予」であり、2027年以降のコスト上昇に備えて、2026年中に以下の点を洗い出すことが肝要です。greenworldwide+1

    ニカラグア関連の米国向け取引の棚卸し

    • ニカラグア由来の完成品・部材・半製品のリストアップ
    • 米国側のImporter of Record(輸入者)の特定
    • どの品目がCAFTA-DR原産として運用されているか/できていないかの整理greenworldwide+1

    原産判定・証拠書類の整備

    • BOM、工程表、仕入先証明、原産地証明の運用状況の確認
    • グループ会社や委託先任せにせず、監査可能な形で証跡を整理することgreenworldwide+1

    今回の301条関税は「CAFTA-DR原産か否か」で課税の有無が分かれるため、原産管理の精度が粗利に直結します。chrobinson+1

    価格・契約条項の見直し

    • 2027年・2028年の関税上昇を織り込んだ価格改定条項(関税転嫁・再交渉条項・サーチャージ等)の検討
    • インコタームズと通関コスト負担者の再確認
    • 関税コストがどのPLに落ちるかを契約上明確化することgeodis+1

    生産・調達の「逃げ道」の設計

    • CAFTA-DR域内他国への生産移転・拠点分散(官報も企業が移転できる時間を確保する意図に言及)greenworldwide+1
    • 原材料・生産プロセスの見直しによるCAFTA-DR原産要件の充足
    • 物流ルートとして「ニカラグア経由」を続ける妥当性の再評価govinfo+1

    政策の上振れリスクを前提としたモニタリング

    • USTRは、ニカラグア側の改善状況に応じて税率やスケジュールの変更を行い得ると明記しており、今後も通知や追加ガイダンスのフォローが必須です。ustr+1

    7. ざっくり試算:2027年以降のコスト感

    最後に、追加関税のインパクトを把握するための簡易的な計算例です。実際の税額はHS/HTS分類、通常関税率、優遇の有無、評価方法等により変動しますが、「相互関税+301条関税」のオーダーを確認する目的です。trade+1

    前提

    • 相互関税:18%(ニカラグアに対して設定されたレシプロカル関税)sullcrom+1
    • 301条関税:2028年に15%(CAFTA-DR非原産品が対象)ustr+1

    ケースA:課税価格100(他の税なしと仮定)

    • 相互関税 18% → 18
    • 301条関税 15% → 15
    • 追加関税合計 → 33

    この場合、非原産品のまま米国へ輸入すると、2028年時点では「相互関税+301条追加関税だけで課税価格の33%」の上乗せとなり得ます。trade+1
    したがって、「CAFTA-DR原産として301条部分を回避できるか」「それでも残る相互関税18%を価格設計で吸収・転嫁できるか」が、調達・販売戦略の最重要ポイントになります。trade+2


    8. 2026年は準備年、2027年が分水嶺

    • 米国はニカラグア産品のうち、CAFTA-DR非原産品に対して301条追加関税を段階導入する(2026年0%、2027年10%、2028年15%)。ustr+1
    • この301条関税は、既存の相互関税18%等に上乗せされ得るため、累積負担が大きくなる可能性がある。tradecomplianceresourcehub+1
    • 官報は、「影響を限定しつつ圧力を高める設計」として、対象をCAFTA-DR非原産に限定し、2年の段階導入で企業の移転時間を確保する趣旨を説明している。govinfo
    • 日本企業の実務上の急所は、原産判定・証跡整備・価格/契約設計・代替生産/調達設計・政策モニタリングの5点に集約される。greenworldwide+1

    2026年の0%は「助かった」ではなく「準備せよ」というシグナルであり、2027年の10%時点でどこまで原産管理とサプライチェーン再設計を終えられるかが、粗利を守れるかどうかの分水嶺になると考えられます。greenworldwide+1

    1. https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2025-12-12/pdf/2025-22690.pdf
    2. https://ustr.gov/about/policy-offices/press-office/press-releases/2025/december/ustr-section-301-action-nicaraguas-acts-policies-and-practices-relating-labor-rights-human-rights
    3. https://www.trade.gov/country-commercial-guides/nicaragua-import-tariffs
    4. https://geodis.com/us-en/resources/customs-corner/us-trade-representative-announces-new-tariffs-nicaraguan-imports-not
    5. https://www.tradecomplianceresourcehub.com/2025/12/11/trump-2-0-tariff-tracker/
    6. https://www.greenworldwide.com/new-section-301-action-on-nicaragua-establishes-phased-tariffs-for-non-cafta-dr-imports/
    7. https://www.congress.gov/crs_external_products/IF/PDF/IF11346/IF11346.28.pdf
    8. https://ustr.gov/about-us/policy-offices/press-office/press-releases/2024/december/ustr-initiates-section-301-investigation-nicaraguas-acts-policies-and-practices-related-labor-rights
    9. https://www.ustr.gov/about-us/policy-offices/press-office/press-releases/2024/december/ustr-initiates-section-301-investigation-nicaraguas-acts-policies-and-practices-related-labor-rights
    10. https://www.reuters.com/world/americas/us-proposes-trade-measures-against-nicaragua-over-labor-rights-2025-10-20/
    11. https://www.strtrade.com/trade-news-resources/str-trade-report/trade-report/october/tariff-increase-cafta-dr-suspension-among-possible-actions-against-nicaragua
    12. https://www.thompsonhinesmartrade.com/2025/12/ustr-announces-section-301-tariffs-on-nicaragua/
    13. https://www.govinfo.gov/app/details/FR-2025-12-12/2025-22690
    14. https://ustr.gov/countries-regions/western-hemisphere/nicaragua
    15. https://www.jetro.go.jp/ext_images/theme/wto-fta/news/pdf/w_c_monthly_report-202511.pdf
    16. https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/07/further-modifying-the-reciprocal-tariff-rates/
    17. https://www.sullcrom.com/SullivanCromwell/_Assets/PDFs/Memos/Tariffs-Tracker-Updated-Modified-Reciprocal-Tariff-Rates.pdf
    18. https://www.chrobinson.com/en-us/resources/insights-and-advisories/client-advisories/2025q4/12-17-2025-client-advisory-ustr-announce-phased-section-301-tariffs-nicaraguan-goods-outside-cafta/
    19. https://passportglobal.com/us-tariff-rates-by-country-2025/
    20. https://www.ey.com/en_vn/technical/tax/tax-and-law-updates/customs-global-trade-alert-april-2025-trump-administration-executive-action-alert-implications-for-vietnam-businesses
    21. https://kpmg.com/us/en/taxnewsflash/news/2024/12/tnf-ustr-initiates-section-301-investigation-nicaragua-labor-human-rights.html
    22. https://www.cmtradelaw.com/2024/12/ustr-launches-section-301-investigation-of-nicaraguas-labor-and-human-rights-practices/
    23. https://unctad.org/system/files/official-document/ditcinf2025d3.pdf
    24. https://www.supplychainbrain.com/articles/42986-ustr-announces-15-tariffs-against-nicaragua-over-human-rights-abuses
    25. https://en.wikipedia.org/wiki/Tariffs_in_the_second_Trump_administration
    26. https://www.straitstimes.com/world/USTR-proposes-100-tariffs-on-Nicaraguan-goods-after-finding-labor-abuses
    27. https://www.whitecase.com/insight/ustr-opens-unprecedented-section-301-investigation-nicaraguan-labor-rights-practices
    28. https://www.as-coa.org/articles/tracking-trump-and-latin-america-trade-tariffs-threatened-mexico-over-water-sharing
    29. https://www.federalregister.gov/documents/2025/12/12/2025-22690/notice-of-action-nicaraguas-acts-policies-and-practices-related-to-labor-rights-human-rights-and
    30. https://www.federalregister.gov/d/2025-22690
    31. https://info.expeditors.com/newsflash/ustr-announces-section-301-action-on-nicaragua
    32. https://www.nnrglobal.com/insight/new-section-301-tariffs-on-products-of-nicaragua/
    33. https://havanatimes.org/news/us-proposes-axing-nicaragua-from-cafta-adding-100-tariffs/
    34. https://nicotineinsider.com/2025/10/21/nicaragua-faces-100-tariffs-after-ustr-report/
    35. https://www.chrobinson.com/it-it/resources/insights-and-advisories/client-advisories/2025q4/12-17-2025-client-advisory-ustr-announce-phased-section-301-tariffs-nicaraguan-goods-outside-cafta/
    36. https://www.strtrade.com/trade-news-resources/str-trade-report/trade-report/december/tariffs-other-enforcement-actions-possible-against-imports-from-nicaragua
    37. https://marcasur.com/en/noticia/united-states-announces-phased-tariff-measures-on-noncafta-nicaraguan-imports-5059&f=12-2025
    38. https://geodis.com/us-en/us-proposes-trade-sanctions-against-nicaragua-over-labor-and-human-rights-concerns
    39. https://ustr.gov/about-us/policy-offices/press-office/press-releases

    スイス追加関税要素の導入と遡及適用 — 企業実務で本当に効く“読み方”と打ち手


    米国は、スイスおよびリヒテンシュタインを対象としていた相互関税(Reciprocal Tariff)を改定し、従来の39%の追加関税を「実質15%」を上限とする新たな枠組みへ移行させることを正式に発表しました[1][2]。最大のポイントは、この新ルールが2025年11月14日に遡及適用されることです[3][4]。結果として、11月14日以降に旧税率(39%など)で納税した貨物について、条件を満たせば払い過ぎた関税の返金(リファンド)が実現します。

    1) 何が変わったのか:39%→15%への大幅な負担軽減

    今回の通知(米・商務省/USTR連名)の核心は、これまで課されていた高率の相互関税を、MFN税率(一般税率)との合計で「15%」に収まるよう調整する点にあります[5]。

    実務上の計算はシンプルです。

    • MFN税率が15%未満の場合: 追加関税(相互関税)= 15% − MFN税率
    • MFN税率が15%以上の場合: 追加関税(相互関税)= 0%(MFN税率のみ課税)

    このロジックは実質的に「“MFN税率か15%の高い方”を適用する」という内容になります。これにより、多くの品目で従来の39%の相互関税が撤廃され、15%が新たな上限として機能します。

    2) 「遡及適用」の範囲と返金対象

    通知は2025年12月10日頃に発表されましたが、HTSUS(米関税率表)の改定は、2025年11月14日 午前0時1分(米東部時間)以降に“消費のために搬入(entered for consumption)”または保税蔵置から“消費のために払い出し(withdrawn for consumption)”された貨物に適用されます[1]。

    この遡及措置により、11月14日から新ルール発表日までの間に、旧税率(MFN税率+39%など)で輸入申告・納税した貨物については、新ルール(上限15%)との差額が過大納付となり、返金の対象となります。

    3) “15%上限”だけじゃない:品目によっては「相互関税ゼロ」に

    さらに重要なのが、PTAAP(Potential Tariff Adjustments for Aligned Partners)に該当する品目は、相互関税の対象外(=MFN税率のみ適用)となる点です[6]。通知の関連AnnexではHTSUSコードのリストが示されており、主な対象カテゴリは以下の通りです。

    • 一部の農産品
    • 米国内で不足する天然資源(unavailable natural resources)
    • 航空機および関連部品
    • ジェネリック医薬品、その原料・成分、化学前駆体 など

    企業実務では、「自社品目が ①“合算15%”なのか、②“相互関税ゼロ(MFNのみ)”なのか」をHTSUSレベルで見極めることが、コスト削減効果の大小を分けます。

    4) 変わらないものも多い:誤解しやすい注意点

    スイス当局(連邦政府ニュース)や専門家のレポートでは、次の点が強調されています[1]。

    • 232条関税は別枠: 鉄鋼・アルミなどに対する232条追加関税は、今回の枠組みとは別に継続されます。
    • 高関税品目への誤解: 元々15%を超える高関税(例:トラック25%)が付いていた品目は、その税率が維持されます(「全てが一律15%になる」わけではありません)。
    • 調査中品目への配慮: 医薬品・半導体など、232条調査が進行中の分野については、追加関税が15%を超えないよう配慮する「意図」が示されています。

    5) 企業アクション:遡及返金を“取りこぼさない”ための段取り

    遡及適用がある局面で最も重要なのは、迅速な証憑の整理と手続きの設計です。

    (1) 対象期間(11/14以降)の輸入データを特定する
    Entry Summary(通関申告)単位で、課税額・HSコード・原産国・輸入者(IOR)をリスト化します。

    (2) “MFN vs 15%”計算で過大納付額を試算する
    MFN税率が低い品目(特に0%品目)に39%が課されていたケースが、最も返金余地が大きくなります。PTAAP Annex該当品はさらにインパクトが大きいです。

    (3) 返金手続きの手法を具体的に指示する
    返金請求は原則、米国側の輸入者(IOR)が行います。エントリーが未確定(Unliquidated)であれば「Post Summary Correction (PSC)」での訂正・還付が最速です[7]。確定済(Liquidated)の場合はProtest(異議申立て)となるため、米国側通関業者にステータス確認と最適な手続きを至急指示してください。

    (4) “暫定措置リスク”を契約に織り込む
    この枠組みは2026年3月31日までに最終合意に至らない場合、見直される可能性があるとされています[8]。長納期の取引では、関税変動リスクを織り込んだ価格調整条項を契約に盛り込むことを検討しましょう。

    6) 日本企業への示唆:スイス経由サプライチェーンの“原産地”がコストを決める

    スイスは医薬・精密機器・時計などの高付加価値品の集積地です。日本企業にとっても、スイスでの最終加工、スイス企業からの部材調達、スイス拠点を介した米国販売など、サプライチェーン上で今回の関税改定が着地コスト(landed cost)を左右します。枠組みには迂回輸出への対策も含まれており、原産地管理の重要性が一層高まっています。

    まとめ

    今回のニュースは単なる「関税引き下げ」ではなく、企業実務では次の3点に集約されます。

    1. 従来の39%相互関税が「実質15%上限」の差分課税に置き換わった。
    2. 11/14への遡及適用により、PSC等を通じた具体的な返金実務が発生する。
    3. PTAAP該当品は相互関税がゼロになる可能性があり、HSコードの特定精度が損益に直結する。

    (注)本稿は公開情報に基づく一般解説です。返金の可否やPSC・Protest等の最適手続は、個別の申告状況・品目・HSコード等で変わるため、必ず米国側通関業者/専門家と個別に確認してください。

    引用:
    [1] Reduction in US additional tariffs to enter into force retroactively https://www.news.admin.ch/en/newnsb/L6leIAwrwS1PWKnVDYNOY
    [2] Reciprocal US tariffs – overview and implications https://www.s-ge.com/en/article/news/2025-e-usa-ct10-reciprocal-tariffs
    [3] Switzerland says lower US tariffs to be applied retroactively … https://www.reuters.com/world/europe/switzerland-says-lower-us-tariffs-be-applied-retroactively-november-14-2025-12-10/
    [4] Switzerland says US tariff reduction statement published in … https://www.reuters.com/world/europe/lower-us-tariffs-switzerland-take-retroactive-effect-november-14-2025-12-09/
    [5] Tariff Adjustments on Imports from Switzerland Retroactive … https://www.strtrade.com/trade-news-resources/str-trade-report/trade-report/december/tariff-adjustments-on-imports-from-switzerland-retroactive-to-nov-15
    [6] U.S. Tariffs – Client Updates – GEODIS https://geodis.com/us-en/resources/customs-corner/us-tariffs-client-updates
    [7] CSMS # 66336270 – Guidance – Implementation of Tariff- … https://macmap.org/OfflineDocument/USADMIN/Measure_Extraordinary_USA_16.pdf
    [8] United States revises tariffs on products from Liechtenstein and … https://kpmg.com/us/en/taxnewsflash/news/2025/12/united-states-revises-tariffs-liechtenstein-switzerland.html

    【2025年12月合意】米英「医薬品ゼロ関税・薬価改革パッケージ」の全貌と実務インパクト


    2025年12月1日、米英両政府は医薬品貿易および薬価に関する歴史的な合意を発表しました。これは単なる「関税撤廃」のニュースではありません。**「米国市場へのアクセス権」と引き換えに「英国の医療制度(NHS)が相応の対価を支払う」**という、極めて戦略的かつ実利的な取引(ディール)です。

    本記事では、この合意が医薬品のサプライチェーン、薬価戦略、そして日本企業の投資判断に与える影響を解説します。

    1. 「米英医薬品合意」の核心:何を交換したのか?

    合意の要点は、**「英国が米国の要求通りに薬価・医療支出を引き上げる代わりに、米国は英国製医薬品を『追加関税』の脅威から完全に保護する」**というバーター取引です。

    米国側のコミットメント:完全なゼロ関税の保証

    • 対象: 英国原産の医薬品、原薬(API)、医療技術。
    • 内容: 少なくとも3年間、関税を0%に固定。
    • 特記事項: 通常のWTO関税だけでなく、通商拡張法232条(国家安全保障)に基づく追加関税や、通商法301条(不公正貿易)に基づく調査・報復措置からの免除を確約。

    英国側のコミットメント:市場の魅力向上

    • 薬価支出の拡大: 新規医薬品への純支出を約25%増額(過去20年で最大規模)。
    • NICE評価基準の緩和: 費用対効果の閾値(Threshold)を引き上げ、高額薬を採用しやすくする。
    • VPAGリベートの引き下げ: 2026年のリベート率を**14.5%**へ大幅に引き下げ、さらに向こう3年間は15%を上限とするキャップ制を導入。

    この合意は、本年5月に進展した「米英経済繁栄協定(EPD)」の具体的成果として位置づけられています。

    2. なぜ今「ゼロ関税」が重要なのか?(WTOとの違い)

    「医薬品の関税はWTO協定でもともとゼロではないか?」という疑問はもっともです。1994年のWTO医薬品協定(ゼロ・フォー・ゼロ)により、主要国間の医薬品関税は原則撤廃されています。

    しかし、2025年の地政学リスクは「WTOの外」にあります。

    米政権は「医薬品の海外依存は安全保障リスク(232条)」あるいは「各国の薬価統制は米国へのただ乗り(フリーライド)」であるとして、WTO税率とは別枠の10〜100%の追加関税を課す構想を掲げてきました。

    今回の合意のビジネス上の価値は、**「英国だけが、この追加関税リスクから『制度的に』免除された」**という点にあります。EUや日本からの輸出が潜在的な追加関税リスク(あるいは既に発動された措置)に晒される中、英国は「確実な避難所(Safe Haven)」としての地位を確保しました。

    3. 英国市場の変化:NICE改革とVPAG修正

    英国は米国市場へのアクセスを守るため、自国の医療財政ルールを大きく変更します。

    3-1. NICE(医療技術評価機構)の基準緩和

    費用対効果評価(HTA)の厳格さで知られるNICEですが、今回の合意により新薬の承認基準となる「閾値」を引き上げます。

    • 変更内容: 1QALY(質調整生存年)あたりの許容コストを、従来の2万〜3万ポンドから、2万5千〜3万5千ポンドへ上方修正。
    • 影響: これまで「高すぎる」として償還を拒否されていたがん治療薬、希少疾患薬、遺伝子治療などが、NHSで採用される可能性が飛躍的に高まります。

    3-2. VPAG(自発的制度)リベート率の適正化

    製薬業界にとって最大の朗報は、売上の一部を政府に返還する「VPAG」制度の見直しです。

    • 現状(2025年): 新薬に対するリベート率は**22.9%**まで高騰し、英国でのイノベーション投資を阻害する要因となっていました。
    • 合意後(2026年〜): リベート率は**14.5%**へ急低下し、さらに3年間は「上限15%」が保証されます。これにより、英国事業の予見可能性(Predictability)と利益率が大幅に改善します。

    4. サプライチェーンと投資への実務インパクト

    4-1. 「対米輸出ハブ」としての英国

    英国製造拠点の競争優位性は明確です。

    • 関税コスト差: 他国(EU・日本等)からの対米輸出に追加関税が課されるシナリオにおいて、英国産(0%)は圧倒的なコスト競争力を持ちます。
    • 規制調和: GMP相互承認(MRA)の活用により、査察コストも最小化されています。

    4-2. 投資判断のポイント

    ModernaやBMSなどが英国への追加投資を表明していますが、各社は以下のバランスを見て判断する必要があります。

    • プラス要因: 対米アクセスの保証、英国内の薬価環境改善。
    • リスク要因: ゼロ関税の保証期間が現時点では「少なくとも3年間」であること。また、VPAGの15%という水準は欧州他国と比較して依然として低くはないこと。

    5. 日本・アジア企業にとっての機会とリスク

    チャンス:3つの視点

    1. 対米輸出ルートの再構築:高マージンの新薬やバイオシミラーについて、追加関税リスクのある日本・EU拠点ではなく、英国拠点での製造・最終包装(Secondary Packaging)を行うことで関税を回避するスキーム。
    2. 英国市場での再挑戦:過去にNICEで償還不可となった製品や、採算性から投入を見送った希少疾患薬の再申請検討。
    3. CDMO・エコシステム活用:英国のCDMO(開発製造受託機関)への委託需要増を見越した提携や投資。

    リスク:2つの懸念

    1. 3年後の「クリフ」リスク:米国の政権交代や方針転換により、3年後にゼロ関税枠組みが延長されないリスク。投資回収期間のシミュレーションには保守的なシナリオが必要です。
    2. 英国財政の持続可能性:薬価支出を25%増やすことによるNHS財政への圧迫が、将来的に別の形での規制強化(処方制限など)につながる可能性があります。

    6. ビジネスパーソンが今すぐ行うべきアクション

    1. 関税インパクトの試算(P/Lシミュレーション):自社の主力対米輸出品について、「現状ルート(日本/EU発)」と「英国経由ルート」での関税・物流コスト総額を比較する。特に「セーフガード関税」が発動された場合の感度分析を行う。
    2. 英国薬価戦略のアップデート:新しいNICE閾値(£25k-£35k/QALY)とVPAGリベート(15% Cap)を前提に、英国での上市計画とプライシングを見直す。
    3. サプライチェーンのオプション検討:完全な工場移転ではなく、英国のパートナー企業(CDMO等)を活用した「製造の一部英国化」による原産地規則(Rules of Origin)クリアの可能性を探る。

    おわりに

    今回の合意は、医薬品ビジネスにおいて**「貿易政策」と「薬価政策」が不可分になった**ことを象徴しています。英国は「高い薬価(=イノベーションへの対価)」を受け入れることで、「産業の安全(=対米アクセス)」を買いました。

    今後、日米間や日欧間でも同様の「管理貿易的アプローチ」が議論される可能性があります。ヘルスケア産業の担当者は、薬事規制だけでなく、通商政策の動向を注視する必要があります。


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    米印関税協議の12月ラウンドで何が起きるのか──最大50%関税と「二本立て交渉」の行方を、ビジネスの現場目線で整理してみます


    1. 12月協議のスケジュールと全体像

    まずは事実関係をざっくり整理します。

    日程
    米国通商代表部(USTR)の高官団が、12月9〜11日前後にインドを訪問し、実質的な本格協議は10〜11日に行われる見通しです。reuters
    インド側や一部報道では「10〜12日の3日間協議」と説明されており、実務協議と取りまとめセッションを含めて3日分の枠を確保していると理解するのが妥当です。metroindia

    参加プレーヤー
    米国側:リック・スウィッツァーUSTR次席代表(Deputy USTR)が代表。reuters+1
    インド側:ラジェシュ・アグラワル商務次官(Commerce Secretary)が首席交渉官として対応すると報じられています。metroindia

    交渉の「器」(フォーマット)

    • 二国間貿易協定(BTA)第1トランシュをまとめる交渉
    • 「相互関税(reciprocal tariffs)」問題を切り離して処理するための枠組み交渉
      (対印25%の相互関税と、ロシア産原油購入に紐づく25%の「オイル関税」という二層構造の整理)ey+2

    インド商務省は「年内に第1トランシュを決着させたい」と繰り返し発言しており、今回の12月ラウンドは「詰め」の色彩が強い局面と見るのが現実的です。metroindia


    2. なぜここまでこじれたのか:50%関税の現状

    2-1. 50%関税の中身

    2025年夏以降、米印の関税問題は一気にエスカレートしました。cnbc+2
    2025年8月初旬、トランプ大統領はインドからの輸入品に25%の追加関税を発動し、その後さらに25%を上乗せしたことで、多くのインド製品が実質50%課税の対象となっています。theguardian+3

    目的とされるのは、

    • インドによるロシア産原油の継続輸入に対する制裁
    • 米国が貿易赤字を抱える国に対して進める「相互主義的関税」政策の一環
      という二つの側面です。whitehouse+3

    経済紙の報道によれば、インド側の試算では、2024年の輸出額ベースで約482億ドル相当の対米輸出が、この50%関税の影響を受け得るとされています。thedailystar

    2-2. 通貨・マクロへのインパクト

    この関税ショックは、為替や資本フローにも跳ねています。tradingeconomics+2
    2025年12月初旬、ルピーは対ドルで1ドル=90ルピー台に乗せ、史上最安値圏まで下落しました。rediff+2

    背景として指摘されている要因は、

    • 最大輸出市場である米国向け輸出の減速(最大50%関税による採算悪化)
    • それに伴う外国株式投資の流出(年初来で数十億ドル規模のネット売り)
    • FDIの伸び鈍化や外貨需要超過
      などです。tradingeconomics+2

    インド最大手銀行の一つであるHDFCは、「対米通商合意が早期にまとまらなければ、ルピーは92まで下落する可能性がある」と警鐘を鳴らしています。ts2+1

    2-3. 「関係は良かったはず」からの反転

    ここまでこじれる直前まで、米印はむしろ「雪解けムード」にありました。
    2023年6月、WTO上の6件の係争を一括解決し、インドは米国の鉄鋼・アルミへの232条関税に対する報復関税を撤廃しました。thedailystar+1

    2024年1月の第14回米印貿易政策フォーラム(TPF)では、

    • 通関・サプライチェーン
    • 医薬品・医療機器
    • デジタル貿易・データ保護
    • ITハードの輸入規制
      など幅広い分野で協力ロードマップが整理されています。reuters+1

    ところが、ロシア産原油をめぐる政治要因をきっかけに、「232条の一件落着」から一転して新たな関税戦争に入ってしまった、という構図です。ey+2


    3. 12月協議で浮上しそうな論点の芽

    ここからが、ビジネスの観点で最も重要なポイントです。
    12月ラウンドで具体的にどのような論点がテーブルに載りそうか、「芽」の段階も含めて整理します。thedailystar+2

    論点①:50%関税の「出口」をどう描くか

    今回の協議の最大テーマは、言うまでもなく50%関税の扱いです。thedailystar+1

    インド側の狙いは、

    • 「オイル関税」25%の早期撤廃
    • 残り25%の「相互関税」についても、段階的引き下げスケジュールを確保すること
      とされています。metroindia+1

    米国側は、ロシア産原油問題が絡むため一括撤廃には慎重で、代わりに一定の対ロシア行動を条件とした「スナップバック条項付きの緩和」を検討する可能性があります。theguardian+2

    報道ベースでは、インド商務省が「まずは枠組み合意(tariff framework deal)で、関税問題のガードレールを先に敷く」と説明しており、12月ラウンドで「即時解決」よりも「出口の設計図」が示される公算が高いと見られます。thedailystar+1

    論点②:セクター別「バーター」の構図

    関税全体を下げる代わりに、どの分野で相互に市場を開放するかが、実務的には最大の交渉材料になります。metroindia+1

    インド側が関税引き下げを求める分野

    • 労働集約型輸出:繊維・衣料、革製品、宝飾(宝石・ジュエリー)、靴・玩具など
    • 一部農産品・水産品:えび・魚介類、油糧種子、ぶどう・バナナなどthedailystar

    米国側がインド市場の開放を求める分野

    • 工業製品・高付加価値製造業:産業機械・部品、EVを含む自動車、石化製品
    • 農産品・食品:乳製品、りんご・ナッツ類(ツリーナッツ)、一部GM作物
    • ワイン・アルコール飲料 などthedailystar

    ビジネスとしては、

    • どの分野から先に関税が引き下げられそうか
    • どの分野が最後まで政治カードとして残されそうか
      を見極めることで、自社の投資やサプライチェーン再編の優先順位をつけやすくなります。thedailystar

    論点③:ロシア産原油と「戦略的自律」

    今回の関税問題の根底には、インドによるロシア産原油輸入があります。cnbc+2

    米国は、ロシア産原油の割安輸入がロシアの軍事行動を間接的に支えていると批判し、50%関税の半分を「ロシア油へのペナルティ」と位置づけています。cnbc+2
    インドはエネルギー安全保障を理由に、「誰とどう付き合うかは主権の問題」と主張し、「戦略的自律(strategic autonomy)」を重ねて強調しています。thedailystar

    12月協議のテーブルでも、関税そのもの以上に「どの程度までロシアとのエネルギー取引を続けるか」という政治・安全保障の議論が、経済交渉の裏テーマとして動く可能性があります。ey+2

    ビジネス面では、

    • 対ロシア依存度の高いサプライチェーン
    • 原油・ガス価格がコスト構造に占める比重
      が、米印関係の「地政学的温度」に左右される点を意識しておく必要があります。ts2+2

    論点④:通貨・金利・マクロ安定性への副作用

    ルピー安と資本流出は、すでにインド企業・投資家にとって現実的な懸念材料になっています。rediff+2
    12月協議の結果は、

    • 「関税緩和シナリオ」:ルピー安に一定の歯止めがかかり、インド株・債券への資金回帰が期待される
    • 「決裂または先送りシナリオ」:ルピー90〜92レンジの長期化と、インド企業の海外調達コスト上昇
      という形でマクロ環境に直結する、という見方が出ています。ts2+1

    外からは「関税問題」として語られがちですが、企業の立場からは、為替・金利・資本コストの問題として捉える方が実務的です。rediff+2

    論点⑤:関税を超えた「非関税・デジタル」アジェンダ

    12月協議の公式アジェンダはまだ詳細が公表されていませんが、2024年のTPF共同声明で掲げられたテーマを踏まえると、少なくとも以下のような「芽」が常に背景にあります。reuters+1

    • ITハードの輸入管理(コンピュータ・サーバー・タブレットなど)
    • 医療機器の価格規制と基準
    • 医薬品サプライチェーン(API・KSMの分散)
    • デジタル貿易・個人データ保護(DPDPA)
    • 通関のデジタル化・貿易円滑化reuters+1

    これらは「12月で一気に決着する」性質のテーマではありませんが、「関税問題が一段落したあと、どこに規制・標準の焦点が移るか」という意味で、中長期の論点の芽としてウォッチ対象になります。reuters+1


    4. ビジネスマンが今から押さえたい3つの視点

    最後に、「自社ビジネスにどう関係してくるのか」という観点から、チェックポイントを3つに絞ります。tradingeconomics+2

    ① どのセクターが「最初に」関税緩和の候補になるか

    自社や主要取引先の事業が、

    • インド側の要望リスト(繊維・宝飾・労働集約型製造・一部農水産品など)に含まれるのか
    • 米国側の要望リスト(EV・高級車・石化・乳製品・果物・ナッツ類など)に含まれるのか
      を一度棚卸ししておく価値があります。thedailystar

    どちらの「陣営」に乗っているかによって、

    • 関税引き下げのタイミング
    • 求められる規制対応や品質標準
      が変わってくるためです。thedailystar

    ② 為替・資本コストのシナリオを「米印関係」とセットで見る

    インドに生産・開発拠点を持つ企業は、

    • ルピー90〜92レンジが半年〜1年続く前提のPLシナリオ
    • 「関税緩和→資本流入回復」でルピーが落ち着くシナリオ
      の少なくとも二本立てを準備しておくと、意思決定がしやすくなります。ts2+1

    調達・販売をドル建てで行っている場合、関税よりも為替インパクトの方が効くケースもあるため、あえて「通貨リスク中心」でシナリオ設計を行う割り切りも有効です。tradingeconomics+1

    ③ 「ポスト関税」の規制・デジタル議論に先回りする

    関税が落ち着いた後には、

    • データローカライゼーション
    • デジタル取引に対する税・規制
    • 医療・IT・EVなどの技術・安全基準
      が次の交渉テーマとなる可能性が高いと見られています。reuters+1

    今回の12月ラウンドを、「関税問題だけでなく、その先のアジェンダの入り口」と位置づけて情報収集しておくことで、中長期の戦略設計で差をつけやすくなります。reuters+1


    5. まとめ:12月協議は「終わり」ではなく大きな節目

    押さえておきたいのは、

    • 日程:12月10〜11日(前後も含めた3日枠)
    • 主役:BTA第1トランシュ+関税枠組み合意
    • 背景:最大50%の対印関税、ルピー安、ロシア産原油をめぐる地政学的要因
      という構図です。reuters+4

    この枠組みを頭に入れておくと、ニュースが出た際に「自社にとってプラスかマイナスか」を判断しやすくなります。
    12月ラウンドですべてが解決する可能性は高くありませんが、

    • 関税引き下げの道筋が見えてくるかどうか
    • どのセクターが「先に」動きそうかのヒントが得られるか
      という意味で、ビジネスにとって重要な節目になると考えられます。tradingeconomics+2
    1. https://www.reuters.com/world/india/deputy-us-trade-representative-visit-india-december-10-11-2025-12-08/
    2. https://www.metroindia.net/news/articlenews/india-us-to-begin-day-trade-talks-from-dec-32713
    3. https://www.cnbc.com/2025/08/06/trump-trade-india-tariffs-russia.html
    4. https://www.ey.com/en_gl/technical/tax-alerts/us-imposes-additional-tariffs-on-india-for-buying-oil-from-russia
    5. https://tradingeconomics.com/india/currency
    6. https://www.theguardian.com/us-news/2025/aug/27/trump-tariff-india-russian-oil-purchase
    7. https://www.rediff.com/business/report/rupee-touches-rs-90-a-dollar-for-first-time-in-early-trade/20251203.htm
    8. https://www.reuters.com/world/india/trump-imposes-extra-25-tariff-indian-goods-ties-hit-new-low-2025-08-06/
    9. https://www.reuters.com/world/us/ustrs-greer-trump-would-love-stake-every-company-thats-doing-well-2025-09-30/
    10. https://www.whitehouse.gov/fact-sheets/2025/08/fact-sheet-president-donald-j-trump-addresses-threats-to-the-united-states-by-the-government-of-the-russian-federation/
    11. https://www.thedailystar.net/news/world/news/how-floundering-india-us-talks-led-high-tariffs-3971891
    12. https://www.rediff.com/money/report/rupee-touches-rs-90-a-dollar-for-first-time-in-early-trade/20251203.htm
    13. https://ts2.tech/en/usd-to-inr-today-3-december-2025-rupee-breaks-%E2%82%B990-per-dollar-whats-driving-the-slide-and-where-could-it-go-next/
    14. https://www.deccanherald.com/india/us-india-to-hold-trade-talks-on-december-10-11-3823923
    15. https://www.reuters.com/world/india/trump-says-us-getting-close-reaching-trade-deal-with-india-2025-11-10/
    16. https://money.rediff.com/amp/news/market/us-india-trade-talks-dec-10-11-agreement-expected/38269220251208
    17. https://www.china-briefing.com/news/trump-xi-meeting-outcomes-and-implications/
    18. https://www.reddit.com/r/WorldNewsHeadlines/comments/1pcua7y/rupee_falls_to_a_new_low_crosses_90mark_against/
    19. https://www.investing.com/news/world-news/us-trade-officials-to-visit-india-for-trade-talks-from-tuesday-3943927
    20. https://www.reddit.com/r/StockMarketIndia/comments/1pgepmi/us_diplomat_to_visit_india_from_december_711_to/

    米国の「相互関税(Reciprocal Tariffs)」の国別追加関税率(2025年12月7日時点)

    まず結論から:
    以下のリストは、米国の「相互関税(Reciprocal Tariffs)」の国別追加関税率を、2025年12月7日時点で公表・報道されている範囲で整理したものです。
    (※232条関税や301条など、別枠の追加関税は「備考」に簡単に触れるだけにしています)


    1. 作業計画

    1. 定義と範囲の確認
      • 「相互関税」=2025年の大統領令(EO14257ほか)に基づき、既存の関税に**上乗せされる“国別の追加従価税率”**と定義。
      • 原則として、Annex I(国別レート表)+その後の修正大統領令を反映する。
    2. 一次情報の取得
      • JETRO「相互関税」(2025年11月26日時点)PDFで69か国・地域の最新国別率を確認。
      • 経産省「米国関税対策ワンストップポータル」で日本・EUの15%上限ルール等を確認。
      • JETROビジネス短信や各国政府発表で、中国・スイス等の特別措置や一時停止を確認。
      • 民間サイト(FTAニュースなど)で、カナダ・メキシコ・インドなどAnnex外/別枠国の整理を補完。
    3. ご指定の国だけ抜き出し
      • 上記資料から、ユーザー指定60か国分のみを抽出し、
        「国名 / 相互関税率(追加)/ 出所 / 備考」で一覧化。
    4. 全体チェック
      • 同じ国について情報源同士が矛盾していないかを確認し、
        矛盾がある場合は「備考」でその旨を明示。

    2. 相互関税リスト(2025-12-07時点)

    • 関税率:米国が課している「相互関税」の**追加率(%)**です。
    • EU・日本・スイス・中国・カナダ・メキシコ・インド・ブラジルなどは別枠・一時停止・追加関税が絡むので、備考をよくご覧ください。
    国名(ご指定表記)相互関税率(追加)出所(主)備考(要約)
    Algeria30%JETRO「相互関税」2025/11/26Annex Iに基づく標準レート。追加措置報道なし。
    Angola15%同上同上。
    Bangladesh20%同上同上。
    Bosnia & Herzegovina30%同上同上。
    Botswana15%同上同上。
    Brazil10%同上、JETRO関税要旨相互関税10%に加え、別の大統領令で最大+40%(一部品目除外)=最大50%。農産品などは11月の農産品対象外措置でかなり免除。
    Brunei25%JETRO「相互関税」標準レート。10月時点で枠組み合意報道ありもレート自体は25%維持。
    Cambodia19%同上枠組み合意済だがレートは19%維持。一部品目を将来0%候補とする方向。
    Cameroon15%JETRO「相互関税」標準レート。
    Canada*0%(相互関税対象外)JETRO「相互関税」概要、FTAニュースカナダ産品は相互関税のリスト外。代わりにIEEPAに基づく**別枠追加関税35%**が適用中(エネルギーなど一部除外)。USMCA原産品は別ルール。
    Chad15%JETRO「相互関税」標準レート。
    China*10%(相互関税分の一部のみ適用)JETRO「相互関税」概要、JETRO中国ビジネス短信本来の国別レート34%のうち24%分は2026年11月10日まで適用停止。相互関税として現在課されているのは10%のみ。別枠の対中追加関税(いわゆるフェンタニル関税10%)は10月合意で撤廃。
    Côte d’Ivoire15%JETRO「相互関税」標準レート。
    DR Congo15%同上標準レート(コンゴ民主共和国)。
    EU最大15%(MFN込みの上限)JETRO「相互関税」、経産省ポータルEU向けは「MFN税率+相互関税=15%」となるよう加算。MFN税率が15%以上の品目は相互関税0%。品目ごとに実効レートは0〜15%の範囲。
    Falkland Islands10%JETRO「相互関税」相互関税率10%。
    Fiji15%同上標準レート。
    Guyana15%同上標準レート。
    India25%(相互関税)JETRO「相互関税」、JETRO対印追加関税ニュース相互関税25%に加え、ロシア産石油輸入を理由とする**追加25%**が8月27日発効し、多くの品目で合計50%の追加関税。ここでは「相互関税部分」の25%を記載。
    Indonesia*19%JETRO「相互関税」4月の32%案から7月31日修正で19%に引き下げ。別途、対米協議枠組みあり。
    Iraq35%JETRO「相互関税」高めのレート。
    Israel15%同上標準レート。
    Japan*最大15%(MFN込みの上限)JETRO「相互関税」、経産省ポータル、JETRO日米合意ニュース9月4日大統領令でEUと同じ方式に修正:既存MFN税率が15%未満なら、相互関税を上乗せして合計15%、15%以上の品目には相互関税0%。自動車・同部品も別途15%で整理。
    Jordan15%JETRO「相互関税」標準レート。
    Kazakhstan25%同上標準レート。
    Laos40%同上高レート(Annex I当初48%から引き下げ後の水準)。
    Lesotho15%同上標準レート。
    Libya30%同上高レート。
    Liechtenstein15%JETRO「相互関税」、スイス関連MOU報道Annex Iでは15%。スイスとのMOUはリヒテンシュタインにも及ぶとされ、スイスと同様15%上限で運用される見込み。
    Madagascar15%JETRO「相互関税」標準レート。
    Malawi15%同上標準レート。
    Malaysia19%同上相互関税19%維持で10月に枠組み合意。一部品目を将来0%候補に。
    Mauritius15%JETRO「相互関税」標準レート。
    Mexico*0%(相互関税対象外)JETRO「相互関税」概要、FTAニュースメキシコも相互関税リスト外。南部国境対策としてIEEPAに基づく**別枠25%**が継続中(USMCA原産等は例外)。
    Moldova25%JETRO「相互関税」標準レート。
    Mozambique15%同上標準レート。
    Myanmar40%同上高レート。政情等を背景に高水準のまま。
    Namibia15%同上標準レート。
    Nauru15%同上標準レート。
    Nicaragua18%同上やや中間的なレート。
    Nigeria15%同上標準レート。
    North Macedonia15%同上7月31日時点で15%に調整済み。
    Norway15%同上標準レート。
    Pakistan19%同上7月末の合意を受け19%。
    Philippines19%JETRO「相互関税」、各種報道相互関税19%で合意。追加の大幅変更は報じられていない。
    Serbia35%JETRO「相互関税」高レート。7月以前の37%案から若干引き下げ。
    South Africa30%同上高レート。
    South Korea15%JETRO「相互関税」、韓米ジョイント・ファクトシート相互関税は15%上限(韓米FTA/MFNと比較して高いほうを適用)。自動車など一部品目は15%に引き下げで合意。
    Sri Lanka20%JETRO「相互関税」標準よりやや高め。
    Switzerland39%(Annex Iレート、15%上限への合意あり)JETRO「相互関税」、スイス政府・JETRO短信、各種報道Annex Iでは39%とされるが、11月14日の米・スイス・リヒテンシュタイン共同声明・MOUで国別追加関税を最大15%に制限すると発表。実務上はEU・日本同様「MFN込み15%」に収れんさせる方向だが、JETRO最新版PDFはなお「39%(※未発動)」と表示しており、実務適用状況の確認が必要。
    Syria41%JETRO「相互関税」全リスト中最高水準。
    Taiwan20%同上4月時点32%から7月31日修正で20%まで引き下げ。
    Thailand19%JETRO「相互関税」ほか19%維持で米タイ枠組み合意。将来一部品目を0%候補とする方向。
    Tunisia25%JETRO「相互関税」標準より高め。
    Vanuatu15%同上標準レート。
    Venezuela15%同上標準レート。
    Vietnam20%同上4月の46%案から20%へ大幅引き下げ。米越枠組みでこのレート維持を確認。
    Zambia15%JETRO「相互関税」標準レート。
    Zimbabwe15%同上標準レート。

    3. 簡単な整理・注意点

    • この表は「相互関税」に限定しています。
      • 232条(鉄鋼・アルミ・自動車等)や301条、IEEPA別枠(カナダ・メキシコ・ブラジル・インドなど)の追加関税は、原則「備考」で言及するにとどめています。
    • **EU・日本・(合意後の)スイス/リヒテンシュタインは「MFN込みで15%」という“上限方式”**で、品目ごとに実効レートが変わります。
    • 中国は「高率部分(24%)」が2026年11月10日まで停止されており、いま実際に賦課されている相互関税は10%のみと整理されています。
    • カナダ・メキシコはそもそも相互関税のAnnex I対象外で、国境対策としてIEEPA関税(35%/25%)が別枠で掛かっています。
    • 特定品目(スマホ・半導体・多くの医薬品・最近追加された農産品など)は相互関税の対象外品目として繰り返し拡大されているため、実務ではHSコード単位の確認が必須です。

    もしこのリストをそのまま社内資料などに使う場合は、

    • 「相互関税=追加従価税率(Annex Iベース)」であること
    • EU・日本・スイスなどの**“15%上限方式”**
    • 中国・カナダ・メキシコ・インド・ブラジルの別枠措置/一時停止

    あたりを脚注として添えておくと、後から見ても誤解が少ないと思います。

    米EU15%関税合意と「安全弁」条項のポイント


    2025年7月末、米国とEUは「多くのEU製品に15%レベルの輸入関税を適用する代わりに、EU側が米国製工業品の関税を大幅に削減する」という合意で、30%関税発動寸前だった通商紛争を回避しました。 スコットランド・ターンベリーでのトランプ大統領とフォン・デア・ライエン欧州委員長による政治合意が、その起点です。bbc+3

    その後11月末、EU加盟国はこの合意をEU法に落とし込む条件として、輸入急増時に関税引き下げを一時的に止められるセーフガード(安全弁)と、2028年末までの影響評価レポートを求めました。 EU議会も18カ月サンセット条項など、追加の「安全装置」を検討しています。international.astroawani+3


    1. 米EU「15%関税合意」の骨格

    合意のタイミングと狙い

    • 2025年7月末、トランプ大統領とフォン・デア・ライエン委員長がターンベリーで政治合意し、8月から予定されていたEU製品への30%関税を回避しました。aljazeera+1
    • その後8月に米EU共同声明が公表され、9月25日付の連邦官報告示で具体的なHS(HTSUS)変更が実装されています。policy.trade.europa+2

    米国側:EU向け輸入関税を「15%レベル」に調整

    報道と連邦官報・実務解説を総合すると、米側の枠組みは次のイメージです。thompsoncoburn+2

    • 多くのEU原産品について、「通常のMFN税率+“リシプロカル関税”」の合計が概ね15%になるよう調整。
    • 自動車・自動車部品など、一部品目では従来25〜27.5%だった実効税率を15%水準まで引き下げる一方、元々低税率の品目では追加分を上乗せして15%近辺に合わせる構造です。bloomberg+1
    • ただし、航空機・一部化学品・半導体製造装置・重要原材料など戦略品はゼロ関税(あるいはMFNのみ)とする「ゼロ関税ゾーン」も設けられています。reuters+1

    鉄鋼・アルミニウムについては、セクション232に基づく50%水準の追加関税が維持されており、今後の協議で調整余地があるという位置付けです。reuters+1

    EU側:米国製工業品の関税をほぼ撤廃

    • EUは、米国製の多くの工業製品について関税を撤廃し、水産品・農産品の一部に関してはゼロ関税の関税割当(TRQ)を設定する方針を加盟国レベルで確認しました。gmk+1
    • さらに、エネルギーや防衛装備・半導体など米国製品・サービスを今後数年で数千億ドル規模購入するコミットメントや、追加的な対米投資拡大を盛り込んだと報じられています。bloomberg+1

    この結果、「EU→米国」は多くが15%レベル、「米国→EU」は工業品ほぼゼロという非対称なディールとなっている点が、欧州側の政治的論争点になっています。reuters+1


    2. EUが求める「安全弁」条項

    加盟国の共通方針:セーフガードと影響評価

    11月末時点で、EU加盟国政府は次のような共通方針をとっていると報じられています。gmk+1

    • 米国製工業品の関税撤廃と水産・農産物のゼロ関税枠設定には同意。
    • ただし、「米国からの輸入が急増し、EU産業に重大な損害またはそのおそれが生じた場合」に備え、関税引き下げを部分的・全面的に停止できるセーフガード条項を要求。
    • この発動には、加盟国からの要請→欧州委員会による調査→必要に応じた発動提案、というプロセスを想定しています。

    加えて、欧州委員会に対し、2028年末までに関税変更がEU市場に与えた影響を評価するレポート提出義務を課すことも求めています。 2028年末というタイミングは、次の米大統領選直後に重なり、「4年間試験運用し、必要なら見直す」という政治スケジュールを意識した設計とみられます。english.almayadeen+3

    欧州議会が検討する追加の「安全装置」

    欧州議会は、これに加えて次のような案を検討中とされています。international.astroawani+1

    • 18カ月のサンセット条項:合意発効から18カ月で自動失効し、継続には再承認を必要とする時限措置化。
    • 米国側の約束違反への自動対応メカニズム:米国が追加関税再引き上げなど合意逸脱を行った場合に、EUが迅速に対抗措置(関税復元等)を取れる枠組み。
    • 鋼鉄・アルミ派生品への50%関税対処:合意後に米国が風力タービン等407品目に50%関税を課したことに対し、米国がこれを撤回しない限り、EUも同種の米国製品への関税を維持すべきとの主張。reuters

    EU側は、「関税は下げるが、約束が崩れた場合は速やかに元に戻せる保険を条文に組み込む」ことを狙っていると言えます。english.almayadeen+1


    3. EUが慎重になる背景

    関税を政治カードとして使う米国への不信感

    トランプ政権はこれまでも、相手の対応次第で関税引き上げ・引き下げを繰り返すスタイルを取り、「関税=外交カード」という認識を定着させてきました。 今回の米EU合意でも、投資・エネルギー購入コミットメントが履行されなければ15%を再引き上げる権限を維持する、と米側が説明していると伝えられています。cnbc+1

    EUから見ると、「政治合意をしても、後から一方的に条件が変わり得る」というリスクがあるため、セーフティバルブの法的な組み込みに神経質にならざるを得ません。english.almayadeen+1

    ディールの非対称性への政治的反発

    数値だけ見ると、EU製品は広く15%関税、米国製工業品はEU市場でほぼゼロ関税という構図であり、エネルギー・防衛装備の巨額購入や追加的な対米投資コミットメントまで含めると、EU側の譲歩が大きいとの見方が根強くあります。 欧州議会内では、「譲歩しすぎたディールを安全弁なしで承認するのは難しい」との意見が多く、この政治事情も安全弁要求を後押ししています。reuters+3

    EU産業への“二重のリスク”

    • 一方で米国製工業品が関税ゼロでEU市場に流入し、欧州企業との価格競争が激化するリスク。gmk+1
    • 他方で、米国が約束を反故にして再び関税を上げる、あるいはEUが自らセーフガードを発動せざるを得なくなるという、上振れ・下振れ双方の政策不確実性。

    この“二重のリスク”が、EUに条文設計の「細部へのこだわり」を強いている背景といえます。reuters+1


    4. 日本企業・投資家への実務インパクト

    EU発・米国向け輸出(EU拠点の日本企業)

    欧州拠点から米国へ自動車・部品・機械・化学品・医薬品等を輸出しているケースでは、合意前より高かった関税が15%水準に「落ち着く」一方、依然として無視できない負担です。 長期契約では、15%関税と将来の変動リスクを前提に、価格転嫁の方針や「通商条件が大きく変わった場合の価格再協議条項」を組み込んでおく必要があります。federalregister+2

    米発・EU向けビジネスと競合する日本企業

    米国メーカーと欧州市場で競合する日本企業にとっては、米製品が関税ゼロ・低関税でEU市場に入ることで、価格競争が一段と厳しくなる可能性があります。 EU市場向けのビジネスモデルについて、gmk+1

    • EU域内生産
    • 日本・第三国からの直接輸出
    • 米国拠点からの供給
      の相対的メリットを再検討するタイミングといえます。thompsoncoburn+1

    サプライチェーン再設計の視点

    米国は日本とも「15%相互関税」の枠組みで合意しており、EUとのディールは日本モデルと類似した構造になっています。 その結果、世界の製造業にとっては、govdelivery+1

    • 米国向け輸出:日本・EU・第三国のどの拠点から出すのが最適か
    • EU向け輸出:米国経由の方が有利になる品目がないか
      といった「米国・EU二極プラットフォーム」を前提としたサプライチェーン見直しが、数年スパンで進む可能性があります。policy.trade.europa+1

    契約で押さえておきたい条項

    • 関税変動時の価格調整条項(特定の関税率変動や協定変更があった場合の再協議条項)。
    • 関税・公租公課の負担者を明確にする条項(輸入者負担を原則としつつ、相互関税については例外規定を設けるなど)。
    • 安全弁やサンセット条項を踏まえた、一定水準以上の関税に達した場合の契約解除・条件再協議のオプション。

    こうした条項は、連邦官報やEU側立法の最終文言を確認しつつ、専門家と調整する必要があります。federalregister+1


    5. 今後数カ月のチェックポイント

    • EU側立法プロセス:加盟国・欧州議会・理事会の三者協議を通じて、安全弁の発動条件や18カ月サンセット条項の有無がどう固まるか。international.astroawani+1
    • 米側運用:2025年9月25日連邦官報で実装されたHTS変更に加え、今後の大統領令や232・301の運用で追加の調整が行われるか。thompsoncoburn+1
    • デジタル政策とのリンク:米国は鉄鋼・アルミ追加関税の引き下げと引き換えに、EUのデジタル規制の「バランス調整」を求めていると報じられており、デジタル関連ビジネスはこのリンクにも注意が必要です。cnbc

    日本のビジネスパーソンにとっては、「15%」「安全弁」といった見出しをそのまま受け取るのではなく、自社の取引フロー・価格・契約・投資計画に引き直して影響を定量化し、EU・米国双方の立法・運用の動きをフォローし続けることが重要になります。reuters+1

    1. https://www.reuters.com/business/us-eu-avert-trade-war-with-15-tariff-deal-2025-07-28/
    2. https://policy.trade.ec.europa.eu/news/joint-statement-united-states-european-union-framework-agreement-reciprocal-fair-and-balanced-trade-2025-08-21_en
    3. https://www.reuters.com/sustainability/boards-policy-regulation/eu-members-seek-safeguards-us-tariff-deal-protect-industry-2025-11-28/
    4. https://www.thompsoncoburn.com/insights/54-october-2-2025-implementation-of-u-s-eu-trade-framework/
    5. https://www.federalregister.gov/documents/2025/09/25/2025-18660/implementing-certain-tariff-related-elements-of-the-us-eu-framework-on-an-agreement-on-reciprocal
    6. https://www.bbc.com/news/articles/cx2xylk3d07o
    7. https://www.aljazeera.com/economy/2025/7/27/us-and-eu-agree-on-trade-tariffs-to-avert-economic-standoff
    8. https://www.bloomberg.com/news/newsletters/2025-07-28/us-reaches-tariff-deal-with-eu-to-avert-painful-trade-blow
    9. https://international.astroawani.com/global-news/eu-members-seek-safeguards-us-tariff-deal-protect-industry-549649
    10. https://gmk.center/en/news/eu-countries-seek-safeguards-in-tariff-agreement-with-the-us/
    11. https://english.almayadeen.net/news/Economy/eu-seeks-to-shield-industry-in-tariff-deal-with-us
    12. https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2025-09-25/pdf/2025-18660.pdf
    13. https://www.cnbc.com/2025/08/17/eu-push-to-protect-digital-rules-holds-up-trade-statement-with-us-ft-reports.html
    14. https://content.govdelivery.com/accounts/USDHSCBP/bulletins/3f4360e
    15. https://www.lemonde.fr/en/economy/article/2025/07/27/eu-chief-and-trump-strike-trade-deal-in-transatlantic-standoff_6743785_19.html
    16. https://www.courthousenews.com/trump-eu-avert-trade-war-with-15-tariff-deal/
    17. https://www.cassidylevy.com/news/us-implements-certain-provisions-of-eu-framework-deal/
    18. https://www.axios.com/2025/07/27/trump-eu-trade-deal-tariffs
    19. https://uk.finance.yahoo.com/news/trump-tariffs-live-updates-us-may-exit-usmca-next-year-trump-meets-nvidias-ceo-to-talk-ai-chip-curbs-231853555.html
    20. https://www.reddit.com/r/europeanunion/comments/1pa29te/eu_members_seek_safeguards_in_us_tariff_deal_to/