トランプ関税がもたらす「原産地」の重要性

本来、WTOに加盟している国は、基本的にどの国から輸入していても同じ関税が適用されます。

こういった貿易の仕組みをトランプ大統領は根本的に変えてしまいました。

トランプ関税で輸入する国の違いによって関税が違います。また商品によって商品によっても関税は違います。

これらが生じるのは、商品の原産国がどこかということですが、アメリカの判断する原産国は他の国とは違います。実質的変更基準のルールをCBPで採用しています。

これでは、「事案全体(totality of the circumstances)」 で判断します。
 ・主要部品の原産
 ・加工の複雑さ・技能・時間・コスト
 ・ファームウェアや設計の開発地
 ・テスト・調整の技術的意義 など

日本の商工会議所がいう非特恵の原産地証明とは違います。これはCTHというルールが定められていますが、これとは違います。

日本で作っているから原産国は日本になるだろうとはならないのがこの「事案全体で判断する」ルールです。

WTOのルールが機能しているときは、おおよそ関税はどこから輸入しても同じでした。しかし、これからは違います。最終組立が日本でもコア機能部品が中国産であれば、中国製になるのです。

そういう意味でアメリカへの輸出商品の「原産地」をもう一度確かめてはどうでしょうか。

そういったことも当社はお手伝いしています。

FTAニュースにもだしましたけど:トランプ大統領の相互関税の書簡

正式文章、翻訳が出ているわけではないので、参考までにしてください。

1. 原文(英語)

The White House, Washington
July 7, 2025

Dear Prime Minister Shigeru Ishiba,

I am honored to send you this letter, which reflects the strength and commitment of our trade relationship and indicates that, despite the significant trade deficit between the United States and Japan, the United States is still willing to continue cooperating with Japan.

However, we have decided to move forward with your country only on the premise of more balanced and fair trade. Therefore, we invite your country to participate in the extraordinary Economy of the United States, the Number One Market in the World, by far. We have discussed U.S.–Japan trade relations for many years and have concluded that we must eliminate these long-standing and persistent trade deficits, which are caused by Japan’s tariffs, non-tariff policies, and trade barriers.

Unfortunately, our trade relationship is no longer reciprocal.

Starting August 1, 2025, the United States will impose a uniform tariff of 25 percent on all goods exported from Japan to the United States (excluding existing industry-specific tariffs). Any goods attempting to circumvent this tariff through re-exportation via third countries will also be subject to a higher rate.

Please understand that this 25 percent tariff is far below the level needed to bridge the trade deficit between the United States and Japan. As you know, if Japanese companies decide to build factories or produce related products within the United States, they will not be subject to this tariff. In fact, we will make every effort to expedite the approval process quickly, professionally, and routinely—in other words, it can be completed in just a few weeks.

If your country decides to raise tariffs on U.S. goods for any reason, then, whatever the number you choose to raise them by, will be added onto the 25 percent that we charge. Please understand that the United States is taking this series of tariff measures to correct the unsustainable trade deficit caused by Japan’s tariffs, non-tariff policies, and trade barriers over the years. This trade deficit has become a significant threat to the U.S. economy and even national security.

Sincerely,

Donald J. Trump
President of the United States


2. 日本語訳(逐語訳)

ホワイトハウス(ワシントン)
2025 年 7 月 7 日

石破茂 日本国内閣総理大臣 閣下

拝啓
米国と日本の貿易関係の強さと相互のコミットメントを示すとともに、日米間に多額の貿易赤字が存在するにもかかわらず、米国は依然として日本との協力を継続する意思を有していることをお伝えしたく、本書簡をお送りいたします。

もっとも、今後は 「より均衡の取れた公正な貿易」 を前提としてのみ協力を進める所存です。このため、世界最大の市場である米国経済への積極的な参画 を貴国に強く要請いたします。長年にわたり日米貿易関係を協議してきた結果、日本の 関税・非関税措置・貿易障壁 に起因する恒常的かつ多額の貿易赤字を解消しなければならないとの結論に至りました。

残念ながら、現状の日米貿易関係はもはや 「相互主義(リシプロカル)」 ではありません。

2025 年 8 月 1 日より、既存の品目別関税を除き、日本から米国へ輸出されるすべての貨物 に対し 一律 25 % の関税 を課します。第三国経由での再輸出により同関税を回避しようとする貨物についても、より高い税率を適用します。

この 25 % 関税は、日米貿易赤字を解消するうえで必要とされる水準には遠く及ばないことをご理解ください。日本企業が米国内に工場を建設し、関連製品を生産する場合には同関税の対象外となります。許認可手続きについては迅速・専門的・定型的に対応し、数週間以内 に完了できるよう最大限努力します。

もし貴国が何らかの理由で米国製品への関税を引き上げる場合には、その引き上げ幅をそのまま 25 % に上乗せ いたします。今回の措置は、日本の関税・非関税措置・貿易障壁により長年にわたり生じてきた 持続不可能な貿易赤字 を是正するためのものです。この赤字は、米国経済ひいては国家安全保障への重大な脅威となっています。

敬具

ドナルド・J・トランプ
合衆国大統領


補足

  • 上記英文および和訳は、Truth Social 上の書簡画像を文字化した記事を基に作成しています。原文が画像のみで公開されているため、改行位置や句読点がわずかに異なる可能性があります。aicoin.com
  • 書簡末尾の署名行以外は一次情報に即して翻訳していますが、公式日本語訳は存在しません。実務で引用される際は、原文との対照をご推奨します。

アメリカへの輸出対策

アメリカは本当に特殊な国ですね。

また、大統領選挙が近いので、トランプ氏が大統領になると中国で作った製品をアメリカへ輸出するのが難しい(関税が極端に上がるなど)が起こります。

そのために対策を打ちたい企業は少なくありません。

相談を受けている中には、日本で最終加工をすればいいのではと思われる場合があります。

最終判断はアメリカ税関ですので、100%正しい答えは日本側で得る事はできませんが、気をつけるべき点はいくつかあります。

迂回輸出と思われないように、対応を気をつけてください。

知り合いの会社(の米法人)にアメリカから検認が入ったようです

知り合いの会社(の米法人)にアメリカから検認が入ったようです。

お教え頂きました。

アメリカの場合、検認はアメリカ側の輸入者に来るので、日本側は矢面に立つことはないのですが、当然輸入者から情報提示を要求されます。

このシステムは少々面倒で、輸入者が輸出者の原産性証明情報にアクセスしてくるものになります。 今回の場合、米法人なので開示に対しては障壁は低いと言えるでしょうが、相手が独立資本である場合、少々厄介です。 輸入者からの情報要求にどれだけ応えるのか。

また、第三者証明のように頼りになる人たちもいません。 (コンサル契約を民間としていたら別ですが。)

本当に検認が増えました。

特に今後のFTA業務は検認も想定した業務で対応する必要がありますね。

日米物品貿易協定セミナー@東京

おかげさまで、満席となりそうです。

申込みが多数なので、会場を椅子席にしてキャパを増やさせて頂きました。

ご参加者には、ご不便をおかけしますが、できるだけ多くの人に聞いていただきたいためです。

お許しください。

日本で初めて?日米物品貿易協定に関してのセミナーを11月5日に東京にて開催します

昨日、日米物品貿易協定が署名されたのを受け、協定文も出ましたね。努力目標だと思いますが、発効が来年の1月1日ととても急です。

そこで、我がGlobal Edge Forumでは、ロジスティックとTSストラテジーと協業して、「日米物品貿易協定とは?」というテーマでセミナーを行います。

日時は、11月5日(火)14:00〜17:00

会場は、東京国際フォーラム

申込みサイトは来週の水曜日にHPおよびメールにてアップする予定です。

・事前申し込みは受け付けておりませんので悪しからず

昨年の8月末に日EUのセミナーを開きましたが、1時間も経たずに100名の席が埋まりました。今回のお申し込みも同様のことが起こると思います。事前にお詫びいたします。

追記

本セミナーに本協定の交渉を担当された財務省経済連携課 酒井課長にご登壇いただくこととなりました。今後の展開があることを本日の産経が報じていますが、その辺りのお話も伺えればと思っております。

日米貿易協定の合意が発表されました

日米貿易協定の合意が日米両政府から発表されました。

かなり無茶なスケジュールで、ご担当の人は不眠不休のご努力をされ、ここに至ったと思います。

印象ですが、FTAとしてみれば失敗作。自動車の関税上昇を防いだと考えれば、合格なのではないでしょうか。

FTAとは呼べず、WTO協定違反とも言われています。

メリットのある産業はあるので、当社としても追いかけて行って、まずは、「協定を読み解く」冊子のシリーズに送球に加えたいと思います。