まず結論から:
以下のリストは、米国の「相互関税(Reciprocal Tariffs)」の国別追加関税率を、2025年12月7日時点で公表・報道されている範囲で整理したものです。
(※232条関税や301条など、別枠の追加関税は「備考」に簡単に触れるだけにしています)
1. 作業計画
- 定義と範囲の確認
- 「相互関税」=2025年の大統領令(EO14257ほか)に基づき、既存の関税に**上乗せされる“国別の追加従価税率”**と定義。
- 原則として、Annex I(国別レート表)+その後の修正大統領令を反映する。
- 一次情報の取得
- JETRO「相互関税」(2025年11月26日時点)PDFで69か国・地域の最新国別率を確認。
- 経産省「米国関税対策ワンストップポータル」で日本・EUの15%上限ルール等を確認。
- JETROビジネス短信や各国政府発表で、中国・スイス等の特別措置や一時停止を確認。
- 民間サイト(FTAニュースなど)で、カナダ・メキシコ・インドなどAnnex外/別枠国の整理を補完。
- ご指定の国だけ抜き出し
- 上記資料から、ユーザー指定60か国分のみを抽出し、
「国名 / 相互関税率(追加)/ 出所 / 備考」で一覧化。
- 上記資料から、ユーザー指定60か国分のみを抽出し、
- 全体チェック
- 同じ国について情報源同士が矛盾していないかを確認し、
矛盾がある場合は「備考」でその旨を明示。
- 同じ国について情報源同士が矛盾していないかを確認し、
2. 相互関税リスト(2025-12-07時点)
- 関税率:米国が課している「相互関税」の**追加率(%)**です。
- EU・日本・スイス・中国・カナダ・メキシコ・インド・ブラジルなどは別枠・一時停止・追加関税が絡むので、備考をよくご覧ください。
| 国名(ご指定表記) | 相互関税率(追加) | 出所(主) | 備考(要約) |
|---|---|---|---|
| Algeria | 30% | JETRO「相互関税」2025/11/26 | Annex Iに基づく標準レート。追加措置報道なし。 |
| Angola | 15% | 同上 | 同上。 |
| Bangladesh | 20% | 同上 | 同上。 |
| Bosnia & Herzegovina | 30% | 同上 | 同上。 |
| Botswana | 15% | 同上 | 同上。 |
| Brazil | 10% | 同上、JETRO関税要旨 | 相互関税10%に加え、別の大統領令で最大+40%(一部品目除外)=最大50%。農産品などは11月の農産品対象外措置でかなり免除。 |
| Brunei | 25% | JETRO「相互関税」 | 標準レート。10月時点で枠組み合意報道ありもレート自体は25%維持。 |
| Cambodia | 19% | 同上 | 枠組み合意済だがレートは19%維持。一部品目を将来0%候補とする方向。 |
| Cameroon | 15% | JETRO「相互関税」 | 標準レート。 |
| Canada* | 0%(相互関税対象外) | JETRO「相互関税」概要、FTAニュース | カナダ産品は相互関税のリスト外。代わりにIEEPAに基づく**別枠追加関税35%**が適用中(エネルギーなど一部除外)。USMCA原産品は別ルール。 |
| Chad | 15% | JETRO「相互関税」 | 標準レート。 |
| China* | 10%(相互関税分の一部のみ適用) | JETRO「相互関税」概要、JETRO中国ビジネス短信 | 本来の国別レート34%のうち24%分は2026年11月10日まで適用停止。相互関税として現在課されているのは10%のみ。別枠の対中追加関税(いわゆるフェンタニル関税10%)は10月合意で撤廃。 |
| Côte d’Ivoire | 15% | JETRO「相互関税」 | 標準レート。 |
| DR Congo | 15% | 同上 | 標準レート(コンゴ民主共和国)。 |
| EU | 最大15%(MFN込みの上限) | JETRO「相互関税」、経産省ポータル | EU向けは「MFN税率+相互関税=15%」となるよう加算。MFN税率が15%以上の品目は相互関税0%。品目ごとに実効レートは0〜15%の範囲。 |
| Falkland Islands | 10% | JETRO「相互関税」 | 相互関税率10%。 |
| Fiji | 15% | 同上 | 標準レート。 |
| Guyana | 15% | 同上 | 標準レート。 |
| India | 25%(相互関税) | JETRO「相互関税」、JETRO対印追加関税ニュース | 相互関税25%に加え、ロシア産石油輸入を理由とする**追加25%**が8月27日発効し、多くの品目で合計50%の追加関税。ここでは「相互関税部分」の25%を記載。 |
| Indonesia* | 19% | JETRO「相互関税」 | 4月の32%案から7月31日修正で19%に引き下げ。別途、対米協議枠組みあり。 |
| Iraq | 35% | JETRO「相互関税」 | 高めのレート。 |
| Israel | 15% | 同上 | 標準レート。 |
| Japan* | 最大15%(MFN込みの上限) | JETRO「相互関税」、経産省ポータル、JETRO日米合意ニュース | 9月4日大統領令でEUと同じ方式に修正:既存MFN税率が15%未満なら、相互関税を上乗せして合計15%、15%以上の品目には相互関税0%。自動車・同部品も別途15%で整理。 |
| Jordan | 15% | JETRO「相互関税」 | 標準レート。 |
| Kazakhstan | 25% | 同上 | 標準レート。 |
| Laos | 40% | 同上 | 高レート(Annex I当初48%から引き下げ後の水準)。 |
| Lesotho | 15% | 同上 | 標準レート。 |
| Libya | 30% | 同上 | 高レート。 |
| Liechtenstein | 15% | JETRO「相互関税」、スイス関連MOU報道 | Annex Iでは15%。スイスとのMOUはリヒテンシュタインにも及ぶとされ、スイスと同様15%上限で運用される見込み。 |
| Madagascar | 15% | JETRO「相互関税」 | 標準レート。 |
| Malawi | 15% | 同上 | 標準レート。 |
| Malaysia | 19% | 同上 | 相互関税19%維持で10月に枠組み合意。一部品目を将来0%候補に。 |
| Mauritius | 15% | JETRO「相互関税」 | 標準レート。 |
| Mexico* | 0%(相互関税対象外) | JETRO「相互関税」概要、FTAニュース | メキシコも相互関税リスト外。南部国境対策としてIEEPAに基づく**別枠25%**が継続中(USMCA原産等は例外)。 |
| Moldova | 25% | JETRO「相互関税」 | 標準レート。 |
| Mozambique | 15% | 同上 | 標準レート。 |
| Myanmar | 40% | 同上 | 高レート。政情等を背景に高水準のまま。 |
| Namibia | 15% | 同上 | 標準レート。 |
| Nauru | 15% | 同上 | 標準レート。 |
| Nicaragua | 18% | 同上 | やや中間的なレート。 |
| Nigeria | 15% | 同上 | 標準レート。 |
| North Macedonia | 15% | 同上 | 7月31日時点で15%に調整済み。 |
| Norway | 15% | 同上 | 標準レート。 |
| Pakistan | 19% | 同上 | 7月末の合意を受け19%。 |
| Philippines | 19% | JETRO「相互関税」、各種報道 | 相互関税19%で合意。追加の大幅変更は報じられていない。 |
| Serbia | 35% | JETRO「相互関税」 | 高レート。7月以前の37%案から若干引き下げ。 |
| South Africa | 30% | 同上 | 高レート。 |
| South Korea | 15% | JETRO「相互関税」、韓米ジョイント・ファクトシート | 相互関税は15%上限(韓米FTA/MFNと比較して高いほうを適用)。自動車など一部品目は15%に引き下げで合意。 |
| Sri Lanka | 20% | JETRO「相互関税」 | 標準よりやや高め。 |
| Switzerland | 39%(Annex Iレート、15%上限への合意あり) | JETRO「相互関税」、スイス政府・JETRO短信、各種報道 | Annex Iでは39%とされるが、11月14日の米・スイス・リヒテンシュタイン共同声明・MOUで国別追加関税を最大15%に制限すると発表。実務上はEU・日本同様「MFN込み15%」に収れんさせる方向だが、JETRO最新版PDFはなお「39%(※未発動)」と表示しており、実務適用状況の確認が必要。 |
| Syria | 41% | JETRO「相互関税」 | 全リスト中最高水準。 |
| Taiwan | 20% | 同上 | 4月時点32%から7月31日修正で20%まで引き下げ。 |
| Thailand | 19% | JETRO「相互関税」ほか | 19%維持で米タイ枠組み合意。将来一部品目を0%候補とする方向。 |
| Tunisia | 25% | JETRO「相互関税」 | 標準より高め。 |
| Vanuatu | 15% | 同上 | 標準レート。 |
| Venezuela | 15% | 同上 | 標準レート。 |
| Vietnam | 20% | 同上 | 4月の46%案から20%へ大幅引き下げ。米越枠組みでこのレート維持を確認。 |
| Zambia | 15% | JETRO「相互関税」 | 標準レート。 |
| Zimbabwe | 15% | 同上 | 標準レート。 |
3. 簡単な整理・注意点
- この表は「相互関税」に限定しています。
- 232条(鉄鋼・アルミ・自動車等)や301条、IEEPA別枠(カナダ・メキシコ・ブラジル・インドなど)の追加関税は、原則「備考」で言及するにとどめています。
- **EU・日本・(合意後の)スイス/リヒテンシュタインは「MFN込みで15%」という“上限方式”**で、品目ごとに実効レートが変わります。
- 中国は「高率部分(24%)」が2026年11月10日まで停止されており、いま実際に賦課されている相互関税は10%のみと整理されています。
- カナダ・メキシコはそもそも相互関税のAnnex I対象外で、国境対策としてIEEPA関税(35%/25%)が別枠で掛かっています。
- 特定品目(スマホ・半導体・多くの医薬品・最近追加された農産品など)は相互関税の対象外品目として繰り返し拡大されているため、実務ではHSコード単位の確認が必須です。
もしこのリストをそのまま社内資料などに使う場合は、
- 「相互関税=追加従価税率(Annex Iベース)」であること
- EU・日本・スイスなどの**“15%上限方式”**
- 中国・カナダ・メキシコ・インド・ブラジルの別枠措置/一時停止
あたりを脚注として添えておくと、後から見ても誤解が少ないと思います。
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