知るべき事
FTA/EPAを活用するに当たり、知るべき事があります。まずはそのことを理解しましょう。
FTA/EPAを活用するために、必要な知識がいくつかあります。
これらのことをまず理解しておきましょう。
以下のことが、その項目です。
HSコード(Harmonized Commodity Description and Coding System: 商品の名称および分類についての統一的システム
HSコード(Harmonized Commodity Description and Coding System: 商品の名称および分類についての統一的システム)とは、1988年に国際貿易商品の名称と分類を世界的に統一したものです。
これによって、各国の関税がきまり、FTA/EPAのルールも決まっています。
HSコードは最初の6桁が世界統一コードで、残りの3~4桁が各国での裁量で使われるコードです。
最初の6桁も、各2桁ずつに部、類、項と分けられています。
HS8471.70.040というHSコードを見てみましょう。
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84xx.xx.xxx: 原子炉、ボイラー及び機械類並びにこれらの部品
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8471xx.xxx: 自動データ処理機械及びこれを構成するユニット並びに磁気式または光学式の読取機、データをデータ媒体に符号化して転記する機械及び符号化したデータを処理する機械(他の項に該当するものを除く)
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8471.70.xxx: 記憶装置(ここまでが世界共通)
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8471.70.040: CD-ROM装置(040部分は日本独自部分)
輸出する産品がどのHSコードに該当するかを知らないといけません。それも輸入国が認めるHSコードでなければいけません。
HSコードの最初の6桁は確かに世界共通ですが、残念ながらどのコードにその産品が属するかというのはその国の解釈となり、国間で比べると同じ商品であってもHSコードが違うことがあります。
そういった問題を解決するには、まずは同じ産品で過去に同じ国に輸出したときに先の国が認めたHSコードを確認することです。
最初ならば、その国が商品のHSコードを教えてくれる事前教唆制度があるかどうかを確認し、制度を使うべきでしょう。アジアではそれを行っている国があります。
もう一つ、大事なことがあります。HSコードは5年に1回見直されます。最近ですと2012年に見直されました。過去には2007年、2002年に見直しがなされています。
問題は、FTA/EPAで使われているHSコードがどの年度のものかということを確認する必要があることです。残念ながら、協定により、使われているHSコードの制定年次が違うのです。その理由は簡単で、FTA/EPA交渉がなされていた時のHSコードがそのまま協定に使われているということ。ですので、FTA/EPAの交渉をされた時期が最近であれば、HSコードの年次は新しいものに、古ければ古い年次になります。
FTA/EPAは時間が経てばその協定の内容を見直すことを行います。その際にHSコードを最新のものに直す作業も同時に行われます。しかし、HSコードの数は膨大で、それらをすべて見直すということは交渉する人の労力は尋常なものではありません。
しかし、使う方からすると今輸出入に使われていないHSコードを探し出さねばならない苦労は少なくないのも事実です。大変なことなのです。
5年単位の改定は抜本的なものではありません。特に電子機器関連のように5年も経てば分類しにくいものが出てきて、その分類を今流にすることが主目的ですので、ずっと違わないコードもあります。
MFN税率とFTA税率・EPA税率
(MFN税率とは)
MFN税率というものがあります。MFNとはMost Favored Nationという英語の略称で、最恵国という意味です。
通商条約などで、ある国が対象となる国に対して、関税などについて別の第三国に対する優遇処置と同様の処置をしなければならないのが「最恵国待遇」と呼びます。
会員制のクラブがあって、そのクラブ内のメンバーであれば皆等しく同じ条件で商いをしましょうねということです。
関税も同じで、メンバーすべてに等しく適用する同じ輸入税率をことを「MFN税率」と呼びます。WTO(世界貿易機関)加盟国はどう加盟国に対して等しくこのMFN税率を適用することになっています。ほとんどの国がこのWTO2加盟していますから、一部の国を除けば基本的にはこの税率が適応されることになるわけです。
しかし、その中で、さらにプレミアムクラブを作って、プレミアムクラブ内での特別条件を適用するというのが、FTA税率であり、EPA税率です。特別会員向けの輸入税率というわけです。
この税率のおかげで、WTO加盟国(=世界のほとんどの国)からの輸入関税はMFN税率で統一されたというわかりやすい構造だったのが、FTA税率により輸入してくる国別に税率が変るという複雑な事にもなってしまったわけです。
ただこの複雑な状況も、FTAの世界的進展により、仮にすべての国に自由貿易化が広まれば、すべての国のすべての産品で関税0%ということになることもあり得ますし、その方向に進んでいる今は過渡期だということも言えます。
WTOは世界で一斉に自由貿易を進めようとした組織です。そのWTOが部分的なFTAを容認しているのも、いずれ部分的な自由貿易(FTA/EPA)が広まれば、結果としてWTOの目的にたっするだろうということからです。
(どうやって輸出先のMFN税率、FTA/EPA税率を知るか)
輸出する先の税率は知りたいものです。ではどうやってその税率、特にMFN税率やFTA税率/EPA税率を知ればいいでしょうか。
便利な方法があります。
アメリカのFedex Trade Network社が運営している世界の関税率情報データベース「World Tariff」を使えばいいのです。
このサービスは有料で決して安くないのですが、ジェトロ(日本貿易振興機構)が契約をしていて、日本の居住者は誰でも登録した上で、ジェトロのサイトからこのデータベースに無料でアクセスできます。
一度ジェトロのサイトに行ってみてください。
特定原産地証明書を発給してもらった後に起こりえること
FTA/EPAを利用するために、特定原産地証明書を発給してもらいました。しかし、いろいろなことが起こる可能性があります。
基本的に知っておくべきは、国と国との間の協定であるということです。
(記載事項の変更がある場合)
再発給は日本商工会議所のWebシステムで行います。
交付済みの証明書は返納し、変更後の発行には発給手数料がもう一度かかります。
(紛失した場合)
なくしたり、盗難にあったり、火災で燃えてしまったりしてなくした場合、そのなくなったことを証明する証明書(遺失届や罹災証明書)が必要となります。
(特定原産品でなかった場合)
厄介な問題ですね。
わかった場合、速やかに指定発給機関(日本メキシコEPAでは税関と輸入者)にも書面により通知をしなければなりません。
証明書の発給決定が取り消され、相手国の当局にも通知されます。
通知しない場合、罰金が科されます。
(報告要請・実地検査)
特定原産地証明書は、企業が適切な原産性の証明を行っているという前提で発給されます。
それゆえ、経済産業大臣または指定発給期間である日本商工会議所は、その内容に関して報告要請や実地検査を要請することがあります。
これらは強制措置ではないとのことですが、企業が対応しない場合、証明書の発給決定が取り消される事があるそうなので、実質的には強制と言えるでしょう。
(相手国からの確認要請)
相手国は当然の権利として、日本の企業が締結された協定の内容に則り、特定原産地証明がなされているかどうかの確認要請をすることができます。
ある国はサンプリングで確認要請を行っているようですので、ある割合ではその確認要請があり、それに応える必要があります。
以下の要請があります。
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締約相手国から日本国に対する情報提供の要請
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締約相手国が必要と認める場合に、日本国に対する追加の情報提供の要請
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上記2つで締約相手国が満足しない場合、日本国が締約相手国税関職員立ち会いの下に、生産設備などを確認することなどへの要請
これらのリクエストが締約相手国からあった場合、それに対する回答期限が協定ごとに定められており、その期限内に回答しない場合、不十分な回答の場合はFTA税率/EPA税率の適用が否認されます。
そうならないように、日本商工会議所では、すべてでは行っていませんが、サンプリングして企業が申請する際にその原産性の証明が正しいかどうかを確認することがあります。
FTA/EPAの活用コンサルティングをしていて、特に初めての申請の場合はその確率が高いなと実感しています。